特許第6069080号(P6069080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6069080エバポレータおよびこれを用いた車両用空調装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069080
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】エバポレータおよびこれを用いた車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20170116BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20170116BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20170116BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20170116BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20170116BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   F28F9/02 301D
   F28D1/053 A
   B60H1/32 613D
   B60H1/00 102H
   F25B39/02 C
   F28F9/22
   F28F9/02 301Z
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-90383(P2013-90383)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-214903(P2014-214903A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 基之
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−044504(JP,A)
【文献】 特開2012−047438(JP,A)
【文献】 特開2011−064379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02,9/22
F25B 39/02
B60H 1/00,1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を同方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンク間に、長手方向を両ヘッダタンクを結ぶ方向に向けた状態でヘッダタンクの長手方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなるチューブ列が、通風方向に間隔をおいて複数列設けられ、各ヘッダタンクが、通風方向に並んで設けられた風下側ヘッダ部および風上側ヘッダ部を備え、両ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部間にそれぞれ少なくとも1列のチューブ列が配置されるとともに、熱交換チューブの両端部が両ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部に接続され、いずれかのヘッダタンクの風下側ヘッダ部の一端部に冷媒入口が設けられ、いずれかのヘッダタンクの風上側ヘッダ部における冷媒入口と同一端部に冷媒出口が設けられ、冷媒入口から流入した冷媒が、すべての熱交換チューブを通過して冷媒出口から流出するようになされており、ヘッダタンクの長手方向外側から見て一方の第1ヘッダタンクが他方の第2ヘッダタンクに対して上側に位置するような傾斜状態で用いられるエバポレータであって、
両ヘッダタンクの風下側ヘッダ部に接続されたチューブ列および風上側ヘッダ部に接続されたチューブ列に、それぞれ複数の熱交換チューブからなり、かつ前記傾斜状態において冷媒が熱交換チューブ内を上側に位置する第1ヘッダタンクから下側に位置する第2ヘッダタンクに流れる下降流チューブ群と、複数の熱交換チューブからなり、かつ前記傾斜状態において冷媒が下側に位置する第2ヘッダタンクから上側に位置する第1ヘッダタンクに流れる上昇流チューブ群とが交互に設けられ、風下側チューブ列の冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群および風上側チューブ列の冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群が下降流チューブ群となるとともに両最遠チューブ群が通風方向に並んでおり、当該両最遠チューブ群により1つのパスが構成されているエバポレータにおいて、
前記傾斜状態において上側に位置する第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部に、両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画が設けられるとともに、両区画が分流制御部によって、熱交換チューブの長手方向に、熱交換チューブ側に位置する第1空間とこれとは反対側に位置する第2空間とに分けられ、当該両区画の両空間が分流制御部に形成された冷媒通過穴を介して通じさせられるとともに、冷媒が分流制御部の冷媒通過穴を通って第2空間から第1空間に流入するようになっており、当該両区画の第2空間どうしが両第2空間の間に設けられた連通部を介して通じさせられ、両区画の第1空間に熱交換チューブが通じさせられ、第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部における両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画において、前記傾斜状態において下側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積が、同じく上側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積よりも小さくなっているエバポレータ。
【請求項2】
前記傾斜状態において上側に位置する第1ヘッダタンクに冷媒入口および冷媒出口が設けられ、両ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部間にそれぞれ1列のチューブ列が配置され、風下側チューブ列に3つのチューブ群が設けられるとともに、風上側チューブ列に2つのチューブ群が設けられ、風下側チューブ列の冷媒入口に最も近い位置にある最近チューブ群および冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群が下降流チューブ群であるとともに中間チューブ群が上昇流チューブ群であり、風上側チューブ列の冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群が下降流チューブ群であるとともに冷媒出口に最も近い位置にある最近チューブ群が上昇流チューブ群であり、風下側チューブ列の最近チューブ群が第1パスとなり、同じく中間チューブ群が第2パスとなり、風下側および風上側チューブ列の最遠チューブ群が第3パスとなり、風上側チューブ列の最近チューブ群が第4パスとなっており、
風下側チューブ列の中間チューブ群から、前記傾斜状態において上側に位置する第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部に流入した冷媒が、第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部における風下側チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画の第2空間内に流入するようになされている請求項1記載のエバポレータ。
【請求項3】
前記傾斜状態において下側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積が、同じく上側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積の5〜70%となっている請求項1または2記載のエバポレータ。
【請求項4】
前記傾斜状態において上側に位置する第1ヘッダタンクが、熱交換チューブが接続された第1部材、第1部材に接合されかつ第1部材における熱交換チューブとは反対側を覆う第2部材、ならびに第1部材と第2部材との間に配置され、かつ第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部内をそれぞれ上下方向に2つの空間に仕切る仕切部を有する第3部材を備え、第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部および風上側ヘッダ部の内部が、第3部材の仕切部に形成されたスリットに挿入された分割板により第1ヘッダタンクの長手方向に複数の区画に分割されており、第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部における冷媒入口および冷媒出口から最も遠い区画が、風下側および風上側チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画となり、熱交換チューブが第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部の第1空間内に通じており、第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部の両空間および風上側ヘッダ部の両空間が、それぞれ第3部材の仕切部に形成された冷媒通過穴より通じさせられ、第3部材の仕切部における両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画に存在する部分が分流制御部となっている請求項3記載のエバポレータ。
【請求項5】
内部に通風路を有するケーシングと、ケーシングに設けられかつケーシング内に送り込まれた空気の温度調節を行う温度調節部と、ケーシング内の通風路に空気を送り込むとともに、温度調節部において温度調節が行われた空気を車室内に吹き出す送風機とを備え、温度調節部がケーシング内の通風路に配置されたエバポレータを有する車両用空調装置であって、温度調節部のエバポレータが請求項1〜4のうちのいずれかに記載のエバポレータからなり、エバポレータが、ヘッダタンクの長手方向外側から見て一方の第1ヘッダタンクが他方の第2ヘッダタンクに対して上側に位置した傾斜状態で配置されている車両用空調装置。
【請求項6】
ケーシング内の通風路におけるエバポレータよりも空気流れ方向下流側に、空気加温部および空気加温部を迂回する迂回部が設けられ、温度調節部が、ケーシング内の通風路の空気加温部に配置されたヒータコアと、エバポレータを通過した後にヒータコアに送られる空気量およびエバポレータを通過した後にヒータコアを迂回する空気量の割合を調節するエアミックスダンパとを備えている請求項5記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載される冷凍サイクルである車両用空調装置に好適に使用されるエバポレータおよびこれを用いた車両用空調装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1図4図9の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
車両用空調装置に使用されるエバポレータとして、上下方向に間隔をおいて配置された1対のヘッダタンク間に、長手方向を上下方向に向けた状態でヘッダタンクの長手方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなるチューブ列が、通風方向に間隔をおいて複数列設けられ、各ヘッダタンクが、通風方向に並んで設けられた風下側ヘッダ部および風上側ヘッダ部を備え、両ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部間にそれぞれ少なくとも1列のチューブ列が配置されるとともに、熱交換チューブの両端部が両ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部に接続され、一方のヘッダタンクの風下側ヘッダ部の一端部に冷媒入口が設けられるとともに、同じく風上側ヘッダ部における冷媒入口と同一端部に冷媒出口が設けられ、両ヘッダタンクの風下側ヘッダ部に接続されたチューブ列および風上側ヘッダ部に接続されたチューブ列に、それぞれ複数の熱交換チューブからなりかつ冷媒が熱交換チューブ内を上から下に流れる下降流チューブ群と、複数の熱交換チューブからなりかつ冷媒が下から上に流れる上昇流チューブ群とが交互に設けられ、冷媒入口から流入した冷媒が、すべてのチューブ群の熱交換チューブを通過して冷媒出口から流出するようになされ、風下側チューブ列の冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群および風上側チューブ列の冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群がいずれも下降流チューブ群であるとともに、通風方向に並んだ両最遠チューブ群により1つのパスが構成されており、上ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部に、両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画が設けられ、当該両区画が両区画間の仕切部に設けられた連通穴を介して通じさせられているエバポレータが知られている(特許文献1の図12参照)。
【0004】
ところで、特許文献1記載のエバポレータにおいて、ヘッダタンクの長手方向外側から見て傾斜状態で用いられることがあるが、この場合、重力の影響によって、両最遠チューブ群が通じる上ヘッダタンクの2つの区画のうち下側に位置する区画に多くの冷媒が流入することになり、下側の区画に通じている最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒の量が、上側の区画に通じている最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒の量よりも多くなる。したがって、両最遠チューブ群により構成されるパスにおける風下側に位置する熱交換チューブおよび風上側に位置する熱交換チューブを流れる冷媒量が不均一になり、エバポレータの性能が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−156532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、上記問題を解決し、一方の第1ヘッダタンクが他方の第2ヘッダタンクに対して下側に位置するような傾斜状態で用いられる場合であっても、性能低下を抑制しうるエバポレータおよびこれを用いた車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0008】
1)長手方向を同方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンク間に、長手方向を両ヘッダタンクを結ぶ方向に向けた状態でヘッダタンクの長手方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなるチューブ列が、通風方向に間隔をおいて複数列設けられ、各ヘッダタンクが、通風方向に並んで設けられた風下側ヘッダ部および風上側ヘッダ部を備え、両ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部間にそれぞれ少なくとも1列のチューブ列が配置されるとともに、熱交換チューブの両端部が両ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部に接続され、いずれかのヘッダタンクの風下側ヘッダ部の一端部に冷媒入口が設けられ、いずれかのヘッダタンクの風上側ヘッダ部における冷媒入口と同一端部に冷媒出口が設けられ、冷媒入口から流入した冷媒が、すべての熱交換チューブを通過して冷媒出口から流出するようになされており、ヘッダタンクの長手方向外側から見て一方の第1ヘッダタンクが他方の第2ヘッダタンクに対して上側に位置するような傾斜状態で用いられるエバポレータであって、
両ヘッダタンクの風下側ヘッダ部に接続されたチューブ列および風上側ヘッダ部に接続されたチューブ列に、それぞれ複数の熱交換チューブからなり、かつ前記傾斜状態において冷媒が熱交換チューブ内を上側に位置する第1ヘッダタンクから下側に位置する第2ヘッダタンクに流れる下降流チューブ群と、複数の熱交換チューブからなり、かつ前記傾斜状態において冷媒が下側に位置する第2ヘッダタンクから上側に位置する第1ヘッダタンクに流れる上昇流チューブ群とが交互に設けられ、風下側チューブ列の冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群および風上側チューブ列の冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群が下降流チューブ群となるとともに両最遠チューブ群が通風方向に並んでおり、当該両最遠チューブ群により1つのパスが構成されているエバポレータにおいて、
前記傾斜状態において上側に位置する第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部に、両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画が設けられるとともに、両区画が分流制御部によって、熱交換チューブの長手方向に、熱交換チューブ側に位置する第1空間とこれとは反対側に位置する第2空間とに分けられ、当該両区画の両空間が分流制御部に形成された冷媒通過穴を介して通じさせられるとともに、冷媒が分流制御部の冷媒通過穴を通って第2空間から第1空間に流入するようになっており、当該両区画の第2空間どうしが両第2空間の間に設けられた連通部を介して通じさせられ、両区画の第1空間に熱交換チューブが通じさせられ、第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部における両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画において、前記傾斜状態において下側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積が、同じく上側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積よりも小さくなっているエバポレータ。
【0009】
2)前記傾斜状態において上側に位置する第1ヘッダタンクに冷媒入口および冷媒出口が設けられ、両ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部間にそれぞれ1列のチューブ列が配置され、風下側チューブ列に3つのチューブ群が設けられるとともに、風上側チューブ列に2つのチューブ群が設けられ、風下側チューブ列の冷媒入口に最も近い位置にある最近チューブ群および冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群が下降流チューブ群であるとともに中間チューブ群が上昇流チューブ群であり、風上側チューブ列の冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群が下降流チューブ群であるとともに冷媒出口に最も近い位置にある最近チューブ群が上昇流チューブ群であり、風下側チューブ列の最近チューブ群が第1パスとなり、同じく中間チューブ群が第2パスとなり、風下側および風上側チューブ列の最遠チューブ群が第3パスとなり、風上側チューブ列の最近チューブ群が第4パスとなっており、
風下側チューブ列の中間チューブ群から、前記傾斜状態において上側に位置する第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部に流入した冷媒が、第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部における風下側チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画の第2空間内に流入するようになされている上記1)記載のエバポレータ。
【0010】
3)前記傾斜状態において下側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積が、同じく上側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積の5〜70%となっている上記1)または2)記載のエバポレータ。
【0011】
4)前記傾斜状態において上側に位置する第1ヘッダタンクが、熱交換チューブが接続された第1部材、第1部材に接合されかつ第1部材における熱交換チューブとは反対側を覆う第2部材、ならびに第1部材と第2部材との間に配置され、かつ第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部内をそれぞれ上下方向に2つの空間に仕切る仕切部を有する第3部材を備え、第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部および風上側ヘッダ部の内部が、第3部材の仕切部に形成されたスリットに挿入された分割板により第1ヘッダタンクの長手方向に複数の区画に分割されており、第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部における冷媒入口および冷媒出口から最も遠い区画が、風下側および風上側チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画となり、熱交換チューブが第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部の第1空間内に通じており、第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部の両空間および風上側ヘッダ部の両空間が、それぞれ第3部材の仕切部に形成された冷媒通過穴より通じさせられ、第3部材の仕切部における両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画に存在する部分が分流制御部となっている上記3)記載のエバポレータ。
【0012】
5)内部に通風路を有するケーシングと、ケーシングに設けられかつケーシング内に送り込まれた空気の温度調節を行う温度調節部と、ケーシング内の通風路に空気を送り込むとともに、温度調節部において温度調節が行われた空気を車室内に吹き出す送風機とを備え、温度調節部がケーシング内の通風路に配置されたエバポレータを有する車両用空調装置であって、温度調節部のエバポレータが請求項1〜4のうちのいずれかに記載のエバポレータからなり、エバポレータが、ヘッダタンクの長手方向外側から見て一方の第1ヘッダタンクが他方の第2ヘッダタンクに対して上側に位置した傾斜状態で配置されている車両用空調装置。
【0013】
6)ケーシング内の通風路におけるエバポレータよりも空気流れ方向下流側に、空気加温部および空気加温部を迂回する迂回部が設けられ、温度調節部が、ケーシング内の通風路の空気加温部に配置されたヒータコアと、エバポレータを通過した後にヒータコアに送られる空気量およびエバポレータを通過した後にヒータコアを迂回する空気量の割合を調節するエアミックスダンパとを備えている上記5)記載の車両用空調装置。
【発明の効果】
【0014】
上記1)〜4)のエバポレータによれば、ヘッダタンクの長手方向外側から見て一方の第1ヘッダタンクが他方の第2ヘッダタンクに対して上側に位置するような傾斜状態において、上側に位置する第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部に、両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画が設けられるとともに、両区画が分流制御部によって、熱交換チューブの長手方向に、熱交換チューブ側に位置する第1空間とこれとは反対側に位置する第2空間とに分けられ、当該両区画の両空間が分流制御部に形成された冷媒通過穴を介して通じさせられるとともに、冷媒が分流制御部の冷媒通過穴を通って第2空間から第1空間に流入するようになっており、当該両区画の第2空間どうしが両第2空間の間に設けられた連通部を介して通じさせられ、両区画の第1空間に熱交換チューブが通じさせられ、第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部における両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画において、前記傾斜状態において下側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積が、同じく上側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積よりも小さくなっているので、ヘッダタンクの長手方向外側から見て一方の第1ヘッダタンクが他方の第2ヘッダタンクに対して上側に位置するような傾斜状態において用いられる場合であっても、次のようにして、両最遠チューブ群により構成されるパスにおける風下側に位置する熱交換チューブおよび風上側に位置する熱交換チューブを流れる冷媒量が均一化され、エバポレータの性能低下が抑制される。すなわち、冷媒は、両最遠チューブ群が通じる第1ヘッダタンクの2つの区画の第2空間に流入する際に、重力の影響によって、当該2つの区画のうち下側に位置する区画の第2空間に多量に流入する。しかしながら、下側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積が、同じく上側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積よりも小さくなっているので、下側に位置する区画においては、上側に位置する区画に比べて、第2空間から第1空間に流入する冷媒の流れに対する抵抗が大きくなり、下側に位置する区画においては、上側に位置する区画に比べて、第2空間から第1空間に流入する冷媒量が低減される。したがって、下側に位置する区画の第1空間から最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量と、上側に位置する区画の第1空間から最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量とが均一化され、両最遠チューブ群により構成されるパスにおける風下側に位置する熱交換チューブおよび風上側に位置する熱交換チューブを流れる冷媒量が均一化されてエバポレータの性能低下が抑制される。
【0015】
上記3)のエバポレータによれば、ヘッダタンクの長手方向外側から見て一方の第1ヘッダタンクが他方の第2ヘッダタンクに対して下側に位置するような傾斜状態において用いられた際に、下側に位置する区画の第1空間から最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量と、上側に位置する区画の第1空間から最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量とが、効果的に均一化される。
【0016】
上記4)のエバポレータによれば、前記傾斜状態において上側に位置する第1ヘッダタンクの風下側および風上側ヘッダ部に、両チューブ列の最遠チューブ群が通じる区画が設けること、両区画を分流制御部によって上下2つ空間に分けること、分流制御部に冷媒通過穴を形成すること、両区画の第2空間どうしを通じさせる連通部を両第2空間の間の仕切部に設けること、ならびに前記傾斜状態で用いられた際に下側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積を、同じく上側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積よりも小さくすることを、比較的簡単に行うことができる。
【0017】
上記5)および6)の車両用空調装置によれば、冷媒は、エバポレータの両最遠チューブ群が通じる第1ヘッダタンクの2つの区画の第2空間に流入する際に、重力の影響によって、当該2つの区画のうち下側に位置する区画の第2空間に多量に流入する。しかしながら、エバポレータの第1ヘッダタンクにおける下側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積が、同じく上側に位置する区画の分流制御部に形成された冷媒通過穴の合計断面積よりも小さくなっているので、下側に位置する区画においては、上側に位置する区画に比べて、第2空間から第1空間に流入する冷媒の流れに対する抵抗が大きくなり、下側に位置する区画においては、上側に位置する区画に比べて、第2空間から第1空間に流入する冷媒量が低減される。したがって、下側に位置する区画の第1空間から最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量と、上側に位置する区画の第1空間から最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量とが均一化され、その結果両最遠チューブ群により構成されるパスにおける風下側に位置する熱交換チューブおよび風上側に位置する熱交換チューブを流れる冷媒量が均一化されてエバポレータの性能低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明のエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
図2】一部を省略した図1のA−A線拡大断面図である。
図3】一部を省略した図1のB−B線拡大断面図である。
図4】一部を省略した図2のC−C線拡大断面図である。
図5図2のD−D線断面図である。
図6図1のエバポレータの第1ヘッダタンクを示す分解斜視図である。
図7図1のエバポレータの第2ヘッダタンクを示す分解斜視図である。
図8図1のエバポレータにおける冷媒の流れを示す図である。
図9図1のエバポレータを用いた車両用空調装置を概略的に示す垂直断面図である。
図10図1のエバポレータの第1ヘッダタンクに用いられる第3部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。以下に述べる実施形態は、この発明によるエバポレータを車両用空調装置を構成する冷凍サイクルに適用したものである。
【0020】
なお、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0021】
また、以下の説明において、隣接する熱交換チューブどうしの間の通風間隙を流れる空気の下流側(図面に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとし、図1図3の左右を左右というものとする。
【0022】
図1はこの発明のエバポレータを適用したエバポレータの全体構成を示し、図2図7はその構成を概略的に示し、図8図1のエバポレータにおける冷媒の流れを示す。
【0023】
図1図5において、エバポレータ(1)は、長手方向を同方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置されたアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)の間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えており、ヘッダタンク(2)(3)の長手方向外側(左方または右方)から見て第1ヘッダタンク(2)が第2ヘッダタンク(3)に対して上側に位置するような傾斜状態で用いられるものである。なお、ここでは第1ヘッダタンク(2)が第2ヘッダタンク(3)に対して風上側に位置するようになっている。
【0024】
第1ヘッダタンク(2)は、風下側(前側)に位置しかつ長手方向を左右方向に向けた風下側ヘッダ部(5)と、風上側(後側)に位置しかつ長手方向を左右方向に向けた風上側ヘッダ部(6)と、両ヘッダ部(5)(6)を相互に連結一体化する連結部(7)とを備えている。第2ヘッダタンク(3)は、風下側(前側)に位置しかつ長手方向を左右方向に向けた風下側ヘッダ部(8)と、風上側(後側)に位置しかつ長手方向を左右方向に向けた風上側ヘッダ部(9)と、両ヘッダ部(8)(9)を相互に連結一体化する連結部(11)とを備えている。以下の説明において、第1ヘッダタンク(2)の風下側ヘッダ部(5)を風下側上ヘッダ部、第2ヘッダタンク(3)の風下側ヘッダ部(8)を風下側下ヘッダ部、第1ヘッダタンク(2)の風上側ヘッダ部(6)を風上側上ヘッダ部、第2ヘッダタンク(3)の風上側ヘッダ部(9)を風上側下ヘッダ部というものとする。風下側上ヘッダ部(5)の右端部に冷媒入口(12)が設けられ、風上側上ヘッダ部(6)の右端部に冷媒出口(13)が設けられている。
【0025】
熱交換コア部(4)は、長手方向を両ヘッダタンク(2)(3)を結ぶ方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された複数のアルミニウム押出形材製扁平状熱交換チューブ(14)からなるチューブ列(15)(16)が、前後方向に並んで2列設けられ、各チューブ列(15)(16)の隣接する熱交換チューブ(14)どうしの間の通風間隙および左右両端の熱交換チューブ(14)の外側に、それぞれ前後両チューブ列(15)(16)の熱交換チューブ(14)に跨るようにアルミニウム製コルゲートフィン(17)が配置されて熱交換チューブ(14)にろう付され、左右両端のコルゲートフィン(17)の外側にそれぞれアルミニウム製サイドプレート(18)が配置されてコルゲートフィン(17)にろう付されることにより構成されている。風下側チューブ列(15)の熱交換チューブ(14)の上下両端部は、風下側上下両ヘッダ部(5)(8)内に突出するように挿入された状態で両ヘッダ部(5)(8)に連通状に接続され、風上側チューブ列(16)の熱交換チューブ(14)の上下両端部は、風上側上下両ヘッダ部(6)(9)内に突出するように挿入された状態で両ヘッダ部(6)(9)に連通状に接続されている。なお、風下側チューブ列(15)の熱交換チューブ(14)の数と風上側チューブ列(16)の熱交換チューブ(14)の数とは等しくなっている。コルゲートフィン(17)は、風下側チューブ列(15)および風上側チューブ列(16)を構成する前後の熱交換チューブ(14)に共有されている。
【0026】
風下側チューブ列(15)には、左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブ(14)からなる3つのチューブ群(15A)(15B)(15C)が、右端から左端に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列(16)には、左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブ(14)からなる2つ(風下側チューブ列(15)のチューブ群の数よりも1つ少ない数)のチューブ群(16A)(16B)が、左端から右端に向かって並んで設けられている。ここで、風下側チューブ列(15)の3つのチューブ群(15A)(15B)(15C)を冷媒入口(12)側端部(右端部)から他端部(左端部)に向かって第1〜第3チューブ群といい、風上側チューブ列(16)の2つのチューブ群(16A)(16B)を冷媒出口(13)とは反対側の端部(左端部)から冷媒出口(13)側端部(右端部)に向かって第4〜第5チューブ群というものとする。
【0027】
図2図6に示すように、第1ヘッダタンク(2)は、風下側上ヘッダ部(5)および風上側上ヘッダ部(6)の下部を形成し、かつ両チューブ列(15)(16)の熱交換チューブ(14)が接続されたアルミニウム製第1部材(20)と、第1部材(20)にろう付されかつ第1部材(20)における熱交換チューブ(14)とは反対側(上側)を覆って風下側上ヘッダ部(5)および風上側上ヘッダ部(6)の上部を形成するアルミニウム製第2部材(21)と、第1部材(20)と第2部材(21)との間に配置され、かつ風下側上ヘッダ部(5)内および風上側上ヘッダ部(6)内をそれぞれ上下両空間(5a)(5b)(6a)(6b)に仕切る前後両仕切部(23)(24)を有するアルミニウム製第3部材(22)と、冷媒入口(12)および冷媒出口(13)が設けられかつ第1〜第3部材(20)(21)(22)の右端部にろう付されたエンド部材(25)とを備えている。
【0028】
第1部材(20)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されており、風下側上ヘッダ部(5)の下側部分を形成する横断面略上向きU字状の第1ヘッダ形成部(26)、風上側上ヘッダ部(6)の下側部分を形成する横断面略上向きU字状の第2ヘッダ形成部(27)、および両ヘッダ形成部(26)(27)どうしを連結しかつ連結部(7)の下側部分を構成する連結壁(28)よりなる。第1部材(20)の両ヘッダ形成部(26)(27)に、それぞれ前後方向に長いチューブ挿入穴(29)が、左右方向に間隔をおくとともに左右方向の同一部分に位置するように形成されており、熱交換チューブ(14)の上端部がチューブ挿入穴(29)に挿入されて第1部材(20)のろう材層を利用して第1部材(20)にろう付されている。
【0029】
第2部材(21)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されており、風下側上ヘッダ部(5)の上側部分を形成する横断面略下向きU字状の第1ヘッダ形成部(31)、風上側上ヘッダ部(6)の上側部分を形成する横断面略下向きU字状の第2ヘッダ形成部(32)、および両ヘッダ形成部(31)(32)どうしを連結しかつ連結部(7)の上側部分を構成する連結壁(33)よりなる。第2部材(21)における第3チューブ群(15C)が設けられている位置に、熱交換チューブ(14)側に開口しかつ上方に凹んだ凹陥部(34)が、第1ヘッダ形成部(31)、第2ヘッダ形成部(32)および連結壁(33)を変形させることによって、左右方向に間隔をおいて形成されている。
【0030】
第3部材(22)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されており、前後両仕切部(23)(24)どうしは、第1部材(20)の連結壁(28)と第2部材(21)の連結壁(33)との間に介在させられて両連結壁(28)(33)にろう付され、かつ連結部(7)の上下方向の中央部を形成する連結壁(36)によって連結一体化されている。そして、第3部材(22)の連結壁(36)によって、第2部材(21)の凹陥部(34)の下端開口が塞がれており、これにより風下側上ヘッダ部(5)の上空間(5a)内と風上側上ヘッダ部(6)の上空間(6a)内とを通じさせる連通路(37)が設けられている。
【0031】
第3部材(22)の前側仕切部(23)における第1チューブ群(15A)と第2チューブ群(15B)との間の部分、および第2チューブ群(15B)と第3チューブ群(15C)との間の部分、ならびに第3部材(22)の後側仕切部(24)における第4チューブ群(16A)と第5チューブ群(16B)との間の部分に、それぞれ前後方向に長いスリット(38)が形成されている。前側仕切部(23)のスリット(38)に、風下側上ヘッダ部(5)内を左右方向に風下側チューブ列(15)のチューブ群(15A)(15B)(15C)と同数の区画(40)(41)(42)に分割する分割板(43)(44)が挿入されて第1〜第3部材(20)(21)(22)にろう付されている。後側仕切部(24)のスリット(38)に、風上側上ヘッダ部(6)内を、左右方向に風上側チューブ列(16)のチューブ群(16A)(16B)と同数の区画(45)(46)に分割する分割板(43)が挿入されて第1〜第3部材(20)(21)(22)にろう付されている。分割板(43)(44)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートによって形成されている。なお、風下側上ヘッダ部(5)内および風上側上ヘッダ部(6)内が、第3部材(22)の前後両仕切部(23)(24)により上下両空間(5a)(5b)(6a)(6b)に仕切られているので、各区画(40)(41)(42)および(45)(46)内も上下両空間(40a)(40b)(41a)(41b)(42a)(42b)および(45a)(45b)(46a)(46b)に仕切られることになる。すなわち、各区画(40)(41)(42)および(45)(46)内が、熱交換チューブ(15)の長手方向に、熱交換チューブ(14)側に位置する下空間(第1空間)(40b)(41b)(42b)(45b)(46b)と、これとは反対側に位置する上空間(第2空間)(40a)(41a)(42a)(45a)(46a)とに仕切られている。風下側上ヘッダ部(5)の第2区画(41)と第3区画(42)との間の分割板(44)における上空間(5a)内に位置する上側部分に、両区画(41)(42)の上空間(41a)(42a)どうしを通じさせる貫通穴(47)が形成されている。
【0032】
風下側上ヘッダ部(5)における第1区画(40)と第2区画(41)の左右方向の合計長さは、風上側上ヘッダ部(6)における第5区画(46)の左右方向の長さと等しく、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(42)の左右方向の長さは、風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(45)の左右方向の長さと等しくなっている。
【0033】
ここで、風下側上ヘッダ部(5)の3つの区画(40)(41)(42)を、冷媒入口(12)側端部(右端部)から他端部(左端部)に向かって第1〜第3区画というものとし、風上側上ヘッダ部(6)の2つの区画(45)(46)を、冷媒出口(13)とは反対側の端部(左端部)から冷媒出口(13)側端部(右端部)に向かって第4〜第5区画というものとする。第1〜第3区画(40)(41)(42)の下空間(40b)(41b)(42b)に第1〜第3チューブ群(15A)(15B)(15C)の熱交換チューブ(14)が通じ、第4〜第5区画(45)(46)の下空間(45b)(46b)に第4〜第5チューブ群(16A)(16B)の熱交換チューブ(14)が通じている。
【0034】
第3部材(22)の前側仕切部(23)における第3チューブ群(15C)よりも左側の部分、および後側仕切部(24)における第4チューブ群(16A)よりも左側の部分に、それぞれ前後方向に長いスリット(48)が形成されている。前側仕切部(23)のスリット(48)に、風下側上ヘッダ部(5)の左端部を閉鎖する閉鎖板(49)が挿入されて第1〜第3部材(20)(21)(22)にろう付され、後側仕切部(24)のスリット(48)に、風上側上ヘッダ部(6)の左端部を閉鎖する閉鎖板(49)が挿入されて第1〜第3部材(20)(21)(22)にろう付されている。閉鎖板(49)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートによって形成されている。
【0035】
風下側上ヘッダ部(5)の第1〜第3区画(40)(41)(42)の上下両空間(40a)(40b)(41a)(41b)(42a)(42b)どうし、および風上側上ヘッダ部(6)の第5区画(46)の上下両空間(46a)(46b)どうしは、第3部材(22)の前側仕切部(23)および後側仕切部(24)に形成された前後方向に長い長穴からなる冷媒通過穴(51)により通じさせられている。冷媒通過穴(51)の前後方向の長さは熱交換チューブ(14)の前後方向の幅よりも短く、熱交換チューブ(14)の前後両端部がそれぞれ冷媒通過穴(51)の前後両端部よりも前後方向外方に突出している。
【0036】
風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(45)の上下両空間(45a)(45b)どうしは、第3部材(22)の後側仕切部(24)の前後方向の中央部に、左右方向に間隔をおいて形成された複数の円形冷媒通過穴(52)を介して通じさせられている。ここで、複数の円形冷媒通過穴(52)の合計断面積は、前側仕切部(23)の第3区画(42)の上下両空間(42a)(42b)どうしを通じさせる複数の冷媒通過穴(51)の合計断面積の5〜70%となっていることが好ましい。
【0037】
第3部材(22)の前後両仕切部(23)(24)には、その右端から切り欠き(53)が形成されており、前側仕切部(23)の切り欠き(53)によって第1区画(40)の上下両空間(40a)(40b)が相互に通じさせられるとともに、冷媒入口(12)が上下両空間(40a)(40b)に通じさせられ、後側仕切部(24)の切り欠き(53)によって第5区画(46)の上下両空間(46a)(46b)が相互に通じさせられるとともに、冷媒出口(13)が両空間(46a)(46b)に通じさせられている。
【0038】
風下側上ヘッダ部(5)における冷媒入口(12)から最も遠い位置にある第3区画(42)の上空間(42a)と、風上側上ヘッダ部(6)における冷媒出口(13)から最も遠い位置にある第4区画(45)の上空間(45a)とは、連通路(37)を介して通じさせられている。
【0039】
図2図4および図7に示すように、第2ヘッダタンク(3)は第1ヘッダタンク(2)とほぼ同様な構成であり、第1ヘッダタンク(2)とは上下逆向きに配置されている。第2ヘッダタンク(3)における第1ヘッダタンク(2)と同一部分には同一符号を付す。なお、第2ヘッダタンク(3)には冷媒入口(12)および冷媒出口(13)は設けられておらず、したがってエンド部材(25)も備えていない。そして、第1部材(20)が風下側下ヘッダ部(8)および風上側下ヘッダ部(9)の熱交換チューブ(14)側となる上部を形成し、第2部材(21)が第1部材(20)における熱交換チューブ(14)とは反対側を覆って風下側下ヘッダ部(8)および風上側下ヘッダ部(9)の下部を形成する。また、第3部材(22)の前側仕切部(23)が風下側下ヘッダ部(8)内を上下方向に2つの空間(8b)(8a)に仕切り、後側仕切部(24)が風上側下ヘッダ部(9)内を上下方向に2つの空間(9b)(9a)に仕切る。風下側下ヘッダ部(8)および風上側下ヘッダ部(9)の下空間(8b)(9b)が風下側上ヘッダ部(5)および風上側上ヘッダ部(6)の上空間(5a)(6a)と同様な構成となり、同じく上空間(8a)(9a)が下空間(5b)(6b)と同様な構成となっている。なお、第2ヘッダタンク(3)の第1部材(20)および第2部材(21)は第1ヘッダタンク(2)の第1部材(20)および第2部材(21)と同一の構成である。
【0040】
第3部材(22)の前側仕切部(23)における第2チューブ群(15B)と第3チューブ群(15C)との間の部分に、前後方向に長いスリット(38)が形成されており、スリット(38)に、風下側下ヘッダ部(8)内を、左右方向に風下側チューブ列(15)のチューブ群(15A)(15B)(15C)の数よりも1つ少ない区画(54)(55)に分割する分割板(43)が挿入されて第1〜第3部材(20)(21)(22)にろう付されている。風下側下ヘッダ部(8)の2つの区画(54)(55)を、冷媒入口(12)側端部(右端部)から他端部(左端部)に向かって第1〜第2区画というものとする。また、風上側下ヘッダ部(9)内は、全体が風上側チューブ列(16)のチューブ群(16A)(16B)よりも1つ少ない数の区画(56)となっており、当該区画(56)を第3区画というものとする。なお、風下側下ヘッダ部(8)内および風上側下ヘッダ部(9)内が、第3部材(22)の前後両仕切部(23)(24)により上下両空間(8b)(8a)(9b)(9a)に仕切られているので、各区画(54)(55)(56)内も上下両空間(54b)(54a)(55b)(55a)および(56b)(56a)に仕切られることになる。第1〜第2区画(54)(55)の上空間(54b)(55b)に第1〜第3チューブ群(15A)(15B)(15C)の熱交換チューブ(14)が通じ、第3区画(56)の上空間(56b)に第4〜第5チューブ群(16A)(16B)の熱交換チューブ(14)が通じている。
【0041】
なお、風下側下ヘッダ部(8)における第1〜第2区画(54)(55)の左右方向の合計長さは、風上側下ヘッダ部(9)の第3区画(56)の左右方向の長さと等しくなっている。また、風下側下ヘッダ部(8)の第2区画(55)の左右方向の長さは、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(42)および風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(45)の左右方向の長さと等しく、風下側下ヘッダ部(8)の第1区画(54)の左右方向の長さは、風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(40)と第2区画(41)との合計長さ、および風上側上ヘッダ部(6)の第5区画(46)の左右方向の長さと等しくなっている。
【0042】
風下側下ヘッダ部(8)の第1〜第2区画(54)(55)の上下両空間(54b)(54a)(55b)(55a)どうし、および風上側下ヘッダ部(9)の第3区画(56)の上下両空間(56b)(56a)どうしは、前側仕切部(23)および後側仕切部(24)に形成された前後方向に長い長穴からなる冷媒通過穴(51)により通じさせられている。冷媒通過穴(51)の前後方向の長さは熱交換チューブ(14)の前後方向の幅よりも短く、熱交換チューブ(14)の前後両端部がそれぞれ冷媒通過穴(51)の前後両端部よりも前後方向外方に突出している。
【0043】
風下側下ヘッダ部(8)の第2区画(55)の下空間(55a)と、風上側下ヘッダ部(9)の第3区画(56)の下空間(56a)とは、連通路(37)を介して通じさせられている。また、第3部材(22)の前側仕切部(23)における第1チューブ群(15C)よりも右側の部分、および後側仕切部(24)における第5チューブ群(16B)よりも右側の部分に、それぞれ前後方向に長いスリット(48)が形成されており、前側仕切部(23)のスリット(48)に、風下側下ヘッダ部(8)の右端部を閉鎖する閉鎖板(49)が挿入されて第1〜第3部材(20)(21)(22)にろう付され、後側仕切部(24)のスリット(48)に、風上側下ヘッダ部(9)の右端部を閉鎖する閉鎖板(49)が挿入されて第1〜第3部材(20)(21)(22)にろう付されている。
【0044】
上述のようにして冷媒入口(12)、冷媒出口(13)、連通路(37)、区画(40)(41)(42)(45)(46)、分割板(43)(44)、冷媒通過穴(51)、円形冷媒通過穴(52)、切り欠き(53)、区画(54)(55)(56)が設けられることによって、冷媒は、第1チューブ群(15A)、冷媒入口(12)から最も遠い位置にある第3チューブ群(15C)(風下側チューブ列(15)の最遠チューブ群)および冷媒出口(13)から最も遠い位置にある第4チューブ群(16A)(風上側チューブ列(16)の最遠チューブ群)の熱交換チューブ(14)内を上から下に流れることになり、これらのチューブ群(15A)(15C)(16A)が下降流チューブ群となっている。また、冷媒は、第2チューブ群(15B)および第5チューブ群(16B)の熱交換チューブ(14)内を下から上に流れることになり、これらのチューブ群(15B)(16B)が上昇流チューブ群となっている。風下側チューブ列(15)における冷媒入口(12)から最も遠い位置にある第3チューブ群(15C)(最遠チューブ群)、および風上側チューブ列(16)における冷媒出口(13)から最も遠い位置にある第4チューブ群(16A)(最遠チューブ群)の熱交換チューブ(14)における冷媒の流れ方向は同一方向である。
【0045】
したがって、図8に示すように、冷媒入口(12)から流入した冷媒は、次のように2つの経路を流れて冷媒出口(13)から流出するようになされている。第1の経路は、第1区画(40)、第1チューブ群(15A)、第1区画(54)、第2チューブ群(15B)、第2区画(41)、第3区画(42)、第4区画(45)、第4チューブ群(16A)、第3区画(56)、第5チューブ群(16B)および第5区画(46)であり、第2の経路は、第1区画(40)、第1チューブ群(15A)、第1区画(54)、第2チューブ群(15B)、第2区画(41)、第3区画(42)、第3チューブ群(15C)、第2区画(55)、第3区画(56)、第5チューブ群(16B)および第5区画(46)である。そして、第1チューブ群(15A)が第1パス、第2チューブ群(15B)が第2パス、第3および第4チューブ群(15C)(16A)が第3パス、第5チューブ群(16B)が第4パスを構成している。
【0046】
ここで、第1ヘッダタンク(2)の第3部材(22)の前後両仕切部(23)(24)における最遠チューブ群である第3および第4チューブ群(15C)(16A)が通じる区画(42)(45)を上下両空間(42a)(42b)(45a)(45b)に仕切る部分が、第3パスの両チューブ群(15C)(16A)への冷媒の分流を制御する分流制御部(57)(58)となっている。したがって、ヘッダタンク(2)(3)の長手方向外側から見て第1ヘッダタンク(2)が第2ヘッダタンク(3)に対して上側に位置するような傾斜状態で配置された際に下側に位置する第4区画(45)の分流制御部(58)に形成された円形冷媒通過穴(52)の合計断面積が、同じく上側に位置する第3区画(42)の分流制御部(57)に形成された冷媒通過穴である冷媒通過穴(51)の合計断面積よりも小さくなっており、円形冷媒通過穴(52)の合計断面積が、第3区画(42)の分流制御部(57)に冷媒通過穴(51)の合計断面積の5〜70%となっている。
【0047】
上述したエバポレータ(1)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサおよび減圧器としての膨張弁とともに冷凍サイクルを構成し、図9に示すような車両用空調装置として車両、たとえば自動車に搭載される。
【0048】
図9において、車両用空調装置(70)は、内部に通風路(72)を有する合成樹脂製ケーシング(71)と、ケーシング(71)に設けられ、かつエバポレータ(1)を備えるとともにケーシング(71)内に送り込まれた空気の温度調節を行う温度調節部(73)と、ケーシング(71)内の通風路(72)に空気を送り込むとともに、温度調節部(73)において温度調節が行われた空気を車室内に吹き出す送風機(図示略)とを備えている。
【0049】
ケーシング(71)には、送風機から送り込まれる空気を取り入れる空気取り入れ口(74)、デフロスタ開口部(75)、フェイス開口部(76)およびフット開口部(77)が設けられており、空気取り入れ口(74)と、デフロスタ開口部(75)、フェイス開口部(76)およびフット開口部(77)とがケーシング(71)内に設けられた通風路(72)によって通じさせられている。エバポレータ(1)は、通風路(72)における空気取り入れ口(74)に近い空気流れ方向上流側部分に、ヘッダタンク(2)(3)の長手方向外側から見て第1ヘッダタンク(2)が第2ヘッダタンク(3)に対して上側に位置するような傾斜状態で配置されている。
【0050】
ケーシング(71)内の通風路(72)におけるエバポレータ(1)よりも空気流れ方向下流側に、空気加温部(72a)および空気加温部(72a)を迂回する迂回部(72b)が設けられている。温度調節部(73)は、エバポレータ(1)に加えて、ケーシング(71)内の通風路(72)の空気加温部(72a)に配置されたヒータコア(78)と、エバポレータ(1)を通過した後に空気加温部(72a)のヒータコア(78)に送られる空気量、およびエバポレータ(1)を通過した後に迂回部(72b)に送られてヒータコア(78)を迂回する空気量の割合を調節するエアミックスダンパ(79)とを備えている。エアミックスダンパ(79)は、エバポレータ(1)を通過したすべての空気を空気加温部(72a)のヒータコア(78)に送る第1の位置(図8鎖線参照)と、エバポレータ(1)を通過したすべての空気を迂回部(72b)に送ってヒータコア(78)を迂回させる第2の位置(図8実線参照)との間において開度が適宜変更され、これによりヒータコア(78)を通過する空気の流量とヒータコア(79)を迂回する空気の流量との割合が調節される。
【0051】
ケーシング(71)内の通風路(72)における空気加温部(72a)および迂回部(72b)よりも空気流れ方向下流側に、3つの吹き出しモード切替ドア(81)(82)(83)が設けられており、これらの吹き出しモード切替ドア(81)(82)(83)によって、温度調節部(73)において温度調節された空気が、デフロスタ開口部(75)から送り出されるとともにデフロスタダクト(図示略)を通ってフロントウィンドに向かって吹き出される場合と、フェイス開口部(76)から送り出されるとともにフェイスダクト(図示略)を通って乗員の頭部に向かって吹き出される場合と、フット開口部(77)からフットダクト(図示略)を通って乗員の足元に向かって吹き出される場合とに切り替えられるようになっている。
【0052】
車両用空調装置(70)の稼働時には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した冷媒が、上述した2つの経路を通って、冷媒入口(12)から流入するとともに冷媒出口(13)から流出し、冷媒が風下側チューブ列(15)の熱交換チューブ(14)内、および風上側チューブ列(16)の熱交換チューブ(14)内を流れる間に、熱交換コア部(4)の通風間隙を通過する空気と熱交換をし、空気は冷却され、冷媒は気相となって流出する。
【0053】
エバポレータ(1)が、ヘッダタンク(2)(3)の長手方向外側から見て第1ヘッダタンク(2)が第2ヘッダタンク(3)に対して上側に位置するような傾斜状態で配置されているので、上述した第1および第2の経路において第3区画(42)の上空間(42a)内に流入した冷媒は、重力の影響によって、第3区画(42)の下空間(42b)を経て第3チューブ群(15C)の熱交換チューブ(14)内に流入するよりも、連通路(37)を通って第4区画(45)の上空間(45a)内に流入しかつ下空間(45b)を経て第4チューブ群(16A)の熱交換チューブ(14)内に流入しやすくなる。しかしながら、第3区画(42)よりも下側に位置する第4区画(45)の分流制御部(58)に形成された円形冷媒通過穴(52)の合計断面積が、第3区画(42)の分流制御部(57)に形成された冷媒通過穴(51)の合計断面積よりも小さく、好ましくは5〜70%となっているので、冷媒通過穴(52)を通って第4区画(45)の上空間(45a)から下空間(45b)に流入する冷媒の流れに対する抵抗が、冷媒通過穴(51)を通って第3区画(42)の上空間(42a)から下空間(42b)に流入する冷媒の流れに対する抵抗よりも大きくなり、第4区画(45)において上空間(45a)から下空間(45b)に流入する冷媒量が、第3区画(42)において上空間(42a)から下空間(42b)に流入する冷媒量に比べて低減される。したがって、両区画(42)(45)の上空間(42a)(45a)から下空間(42b)(45b)に流入する冷媒の量が均一化されることになり、第3チューブ群(15C)の熱交換チューブ(14)に流入する冷媒量と、第4チューブ群(16A)の熱交換チューブ(14)に流入する冷媒量とが均一化される。その結果、通風方向に並んで設けられて1つの第3パスを構成しているとともに熱交換チューブ(14)内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つのチューブ群(15C)(16A)の熱交換チューブ(14)内を流れる冷媒量を均一化することが可能になって、エバポレータ(1)の性能低下が抑制される。
【0054】
図10は上述したエバポレータ(1)の第1ヘッダタンク(2)に用いられる第3部材の変形例を示す。
【0055】
図10に示す第3部材(60)の場合、後仕切部(24)における第4チューブ群(16A)が通じる区画(45)を上下両空間(45a)(45b)に仕切る部分である分流制御部(58)の風上側縁部に、複数の円形冷媒通過穴(61)が左右方向に間隔をおいて形成されている。この第3部材(60)においても、分流制御部(58)に形成された円形冷媒通過穴(61)の合計断面積は、第3区画(42)の分流制御部(57)に形成された冷媒通過穴(51)の合計断面積よりも小さくなっており、前者の合計断面積が後者の合計断面積の5〜70%であることが好ましい。
【0056】
上述した実施形態のエバポレータ(1)は、図4に示す状態とは逆に傾斜した状態で配置されることもある。この場合、第3区画(42)が第4区画(45)よりも下側に位置することになるので、第4区画(45)を上下両空間(45a)(45b)に仕切る分流制御部(58)に、前後方向に長い複数の冷媒通過穴(51)を左右方向に間隔をおいて形成し、第3区画(42)を上下両空間(42a)(42b)に仕切る分流制御部(57)に、複数の円形冷媒通過穴(52)(61)を左右方向に間隔をおいて形成する。この場合にも、分流制御部(57)の円形冷媒通過穴(52)の合計断面積を分流制御部(58)に形成された冷媒通過穴(51)の合計断面積よりも小さくし、前者の合計断面積を後者の合計断面積の5〜70%とすることが好ましい。
【0057】
なお、上述した実施形態においては、冷媒入口(12)および冷媒出口(13)が同一のヘッダタンクに設けられているが、これに限定されるものではなく一方のヘッダタンクに冷媒入口が設けられ、他方のヘッダタンクに冷媒出口が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明によるエバポレータは、車両用空調装置を構成する冷凍サイクルのエバポレータに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
(1):エバポレータ
(2):第1ヘッダタンク
(3):第2ヘッダタンク
(5):第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部(風下側上ヘッダ部)
(5a):上空間
(5b):下空間
(6):第1ヘッダタンクの風上側ヘッダ部(風上側上ヘッダ部)
(6a):上空間
(6b):下空間
(8):第2ヘッダタンクの風下側ヘッダ部(風下側下ヘッダ部)
(8a):下空間
(8b):上空間
(9):第2ヘッダタンクの風上側ヘッダ部(風上側下ヘッダ部)
(9a):下空間
(9b):上空間
(12):冷媒入口
(13):冷媒出口
(14):熱交換チューブ
(15):風下側チューブ列
(15A)(15B)(15C):第1〜第3チューブ群
(16):風上側チューブ列
(16A)(16B):第4〜第5チューブ群
(20):第1部材
(21):第2部材
(22)(60):第3部材
(23):前側仕切部
(24):後側仕切部
(37):連通路(連通部)
(38):スリット
(42):風下側上ヘッダ部の第3区画
(42a):上空間(第2空間)
(42b):下空間(第1空間)
(43)(44):分割板
(45):風上側上ヘッダ部の第4区画
(45a):上空間(第2空間)
(45b):下空間(第1空間)
(51):冷媒通過穴
(52)(61):円形冷媒通過穴
(57)(58):分流制御部
(70):車両用空調装置
(71):ケーシング
(72):通風路
(72a):空気加温部
(72b):迂回部
(73):温度調節部
(78):ヒータコア
(79):エアミックスダンパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10