特許第6069091号(P6069091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6069091-コースターの製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069091
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】コースターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 23/032 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   A47G23/032
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-98505(P2013-98505)
(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-217554(P2014-217554A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】399096376
【氏名又は名称】増田紙工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕
(72)【発明者】
【氏名】左合 昌行
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3022178(JP,U)
【文献】 実開昭55−013207(JP,U)
【文献】 特開2006−144175(JP,A)
【文献】 特開平06−306793(JP,A)
【文献】 特開2009−056122(JP,A)
【文献】 実開平01−066174(JP,U)
【文献】 再公表特許第2006/028211(JP,A1)
【文献】 国際公開第95/011610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 23/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有した紙製の上部シートと開口部を有していない紙製の下部シートとを貼り合せた多層シートからなり、前記下部シートの上面のうち、前記開口部を通して外部に露出される部分には接着剤層を有しておらず、前記下部シートの上面に印刷された意匠が前記上部シートの前記開口部を通して視認できるコースターの製造方法であって、
前記上部シートおよび前記下部シートは、坪量が30〜1000g/m、厚みが40〜2000μmであり、
下記の工程によって製造されることを特徴とするコースターの製造方法。
(工程1)下部シートを構成する紙に図柄を印刷する。
(工程2)上部シートを構成する紙を開口部の外形形状で打ち抜いて、打ち抜かれた部位を取り除いて、開口部を形成する。
(工程3)開口部を打ち抜かれた前記上部シートを構成する紙の裏側に接着剤を塗布する。
(工程4)前記下部シートを構成する紙と前記上部シートを構成する紙とを貼り合わせる。
(工程5)貼り合わされた多層シートをコースター形状に打ち抜く。
【請求項2】
開口部を有した紙製の上部シートと開口部を有していない紙製の下部シートとを貼り合せた多層シートからなり、前記下部シートの上面のうち、前記開口部を通して外部に露出される部分には接着剤層を有しておらず、前記下部シートの上面に印刷された意匠が前記上部シートの前記開口部を通して視認できるコースターの製造方法であって、
前記上部シートおよび前記下部シートは、坪量が30〜1000g/m、厚みが40〜2000μmであり、
下記の工程によって製造されることを特徴とするコースターの製造方法。
(工程1)下部シートを構成する紙に図柄を印刷する。
(工程2)上部シートを構成する紙の裏側に接着剤を、後に打ち抜かれる部位以外の部分に塗布する。
(工程3)前記下部シートを構成する紙と前記上部シートを構成する紙とを貼り合わせる。
(工程4)貼り合わされた多層シートの前記上部シートを構成する紙だけについて、開口部の外形形状で打ち抜いて、打ち抜かれた部位を取り除いて、開口部を形成する。
(工程5)前記多層シートをコースター形状に打ち抜く。
【請求項3】
前記意匠が、文字、図形、模様、色彩から選ばれるいずれか1種または2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコースターの製造方法
【請求項4】
前記上部シートおよび前記下部シートは、紙力増強剤に界面活性剤を添加した塗工液を塗工したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコースターの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製のコースターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種材料を用い、各種機能を有したコースターが開発されてきている。
特許文献1には、裏シートに記載された隠し表示を表シートの一部を剥がすことで表示可能とする多層コースターが開示されている。この多層コースターは、剥離シートをはぎ取ることを可能とするために、特殊な剥離ニスを塗布することを必要とするものである。
【0003】
特許文献2には、紙の多層シートからなるコースターが開示されている。しかし、このコースターは、吸水性能の向上のみを狙ったものである。特許文献3には、水変色性インキを用いて、水に濡れると文字や図形が発色するコースターが開示されている。しかし、このコースターは、水変色性インキや微細孔を有した素材という特殊な材料を必要とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−56122号公報
【特許文献2】特開2006−144175号公報
【特許文献3】登録実用新案第3033832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コースターには、グラスやジョッキなどから滴り落ちて溜まる水や飲料を吸収して、テーブル上が濡れるのを抑制するという機能を有するものである。そうした機能の発揮に留まらず、様々な形状、模様、色を有したしゃれたデザインのコースターとすることによって、飲食の場の雰囲気を変えるための演出やアメニティ等の目的のためにも使用し得るものである。
【0006】
本発明は、このような要望に対応するために、比較的身近な紙を素材としながらも、コースターとしての機能を保持しつつ、従来にない意匠性を付与することができるコースターを簡便に提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、薄くて軽量で取扱性に優れた素材として、紙に着目し、紙の持つ特性を生かして、上記課題を解消するための検討を進めてきた。その結果、上部シートと下部シートからなる多層シートであって、上部シートに開口部を設けて、紙素材の特性を生かすことによって、上記課題を解消し得ることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
即ち、本発明は次のような構成を有するものである。
1.開口部を有した紙製の上部シートと開口部を有していない紙製の下部シートとを貼り合せた多層シートからなり、前記下部シートの上面のうち、前記開口部を通して外部に露出される部分には接着剤層を有しておらず、前記下部シートの上面に印刷された意匠が前記上部シートの前記開口部を通して視認できるコースターの製造方法であって、前記上部シートおよび前記下部シートは、坪量が30〜1000g/m、厚みが40〜2000μmであり、下記の工程によって製造されることを特徴とするコースターの製造方法。
(工程1)下部シートを構成する紙に図柄を印刷する。
(工程2)上部シートを構成する紙を開口部の外形形状で打ち抜いて、打ち抜かれた部位を取り除いて、開口部を形成する。
(工程3)開口部を打ち抜かれた前記上部シートを構成する紙の裏側に接着剤を塗布する。
(工程4)前記下部シートを構成する紙と前記上部シートを構成する紙とを貼り合わせる。
(工程5)貼り合わされた多層シートをコースター形状に打ち抜く。
2.開口部を有した紙製の上部シートと開口部を有していない紙製の下部シートとを貼り合せた多層シートからなり、前記下部シートの上面のうち、前記開口部を通して外部に露出される部分には接着剤層を有しておらず、前記下部シートの上面に印刷された意匠が前記上部シートの前記開口部を通して視認できるコースターの製造方法であって、前記上部シートおよび前記下部シートは、坪量が30〜1000g/m、厚みが40〜2000μmであり、下記の工程によって製造されることを特徴とするコースターの製造方法。
(工程1)下部シートを構成する紙に図柄を印刷する。
(工程2)上部シートを構成する紙の裏側に接着剤を、後に打ち抜かれる部位以外の部分に塗布する。
(工程3)前記下部シートを構成する紙と前記上部シートを構成する紙とを貼り合わせる。
(工程4)貼り合わされた多層シートの前記上部シートを構成する紙だけについて、開口部の外形形状で打ち抜いて、打ち抜かれた部位を取り除いて、開口部を形成する。
(工程5)前記多層シートをコースター形状に打ち抜く。
【0009】
.前記意匠が、文字、図形、模様、色彩から選ばれるいずれか1種または2種以上の組み合わせであることを特徴とする前記1または前記2に記載のコースターの製造方法
【0011】
4.前記上部シートおよび前記下部シートは、紙力増強剤に界面活性剤を添加した塗工液を塗工したものであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のコースターの製造方法
【発明の効果】
【0012】
コースターとしての機能を保持しつつ、従来にない意匠性を付与することができるコースターを簡便に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明の実施形態に係るコースターの構成を示す斜視図である。(b)は、(a)のA−A位置における断面図である。
図2】(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態に係るコースターのデザイン的な使い方の具体例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、本発明の実施形態は以下に示す実施形態に限られるわけではない。
【0015】
本発明は、テーブル上に敷かれて、その上にグラスやジョッキなどの食器を載せて用いられるコースターに係る。
【0016】
本実施形態のコースターの構成を、図1を参照しつつ説明する。
本実施形態のコースター1は、開口部を有した紙製の上部シート4と開口部を有していない紙製の下部シート5とを貼り合せた多層シートから構成されている。上部シート4は、非開口部2と開口部3とからなる(図1)。図1(b)は、図1(a)のA−A位置における断面図である。図1(a)の上面シート4の中央部分のドットを付した部位は、上部シート4の開口部3を通して外部に露出される下部シート5の上面を示している。
【0017】
本実施形態のコースター1を構成する上部シート4および下部シート5はいずれも紙製であり、上部シート4と下部シート5とは互いに、接着剤等で貼り合わされている。そのため、本実施形態のコースター1は、少なくとも2層を有する多層シートからなっている。多層シートとなっていることによって、形態は安定し、強度を付与することができ、取扱性が向上する。
【0018】
本実施形態のコースター1の上部シート4と下部シート5とを貼り合わせる方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、紙用の公知の接着剤、粘着剤や圧着加工法等を使用することができる。接着剤としては、液状接着剤、ホットメルト接着剤等を使用することができる。また、接着剤は、水に対して接着力の低下が少ないものが好ましい。
【0019】
上部シート4は、下部シート5の上側に貼り合わされる。上部シート4および下部シート5はそれぞれ、1枚の紙素材に限定されるわけではなく、2枚以上の紙素材を積層して、それぞれのシートとして使用することもできる。
【0020】
上部シート4は、開口部3を有しており、その開口部3の内側に、グラスやジョッキなどの食器の底面が収まるようにすることができる。このときは、下部シート5の上面のうち、開口部3を通して外部に露出される部分に食器が載置され、下部シート5の上に積層された上部シート4の厚みによって、上部シート4は、グラスやジョッキなどの食器から滴り落ちて開口部3内に溜まる水や飲料が開口部3の外部に漏れ出ないように、堰き止められる働きをすることとなる。
【0021】
また、上部シート4は、開口部3を有しており、その開口部3の内側に、グラスやジョッキなどの食器の底面が収まらないような設計にすることもできる。このときは、食器から滴り落ちて溜まる水や飲料は、上部シート4の開口部3内だけでなく、上部シート4の開口部ではない部分2にも溜まることとなる。コースター1のデザイン性を重視して、開口部3の形状が決められるときには、このような使い方が生じることとなる。
【0022】
上部シート4の開口部3の形状や数に特に制約があるわけではない。グラスやジョッキなどの食器の底面が収まるようにするという観点から、円形や四角形等の形状にすることもできる。また、デザイン性を重視する観点から、上部シート4や下部シート5の上面に印刷等で施す種々の文字、図形、模様、色との関係から、種々の形状の開口部を適宜設計して、採用することができる。開口部3の数は、1つに限定されるわけではない。2つ以上の複数の開口部3を設けることもできる(図2(c)参照)。
【0023】
本実施形態について、デザイン的な使い方の具体例として、図2(a)、(b)、(c)に、その一例を示した。上部シート4の図柄、下部シート5の図柄と相まって、開口部3もデザイン面から形状が決められている。
尚、図2において、ドットを付した部位は、上部シート4の開口部3を通して外部に露出される下部シート5の上面を示している。
【0024】
上部シート4に開口部3を設ける方法には、特に制約はない。開口部3を打ち抜いてある上部シート4を下部シート5に貼り合せる方法や、多層シートを形成した後に上部シート4を開口部3の形状で打ち抜く方法などがある。
【0025】
コースター1の使用方法の具体例として、以下のような方法が考えられる。
(1)開口部3を形成した状態で包装・販売し、使用時に包装を開いて、そのまま使用に供する、という使用方法を取ることができる。
(2)上部シート4を開口部3の形状で打ち抜いた後、打ち抜かれた部位を取り除くことをせずに、そのまま保持しておく。使用するときに初めて、使用者等が打ち抜かれた部位を自ら取り除いて、開口部3を形成させてから、使用に供する、という使用方法を取ることができる。このとき、打ち抜かれた部位の取り外しによって、取り外し前後で何らかの視覚的効果を生じさせることができる。
(3)上部シート4を開口部3の形状で一部を除いて打ち抜いた後、打ち抜かれた部位を取り除くことをせずに、そのまま保持しておく。使用するときに初めて、使用者等が打ち抜かれた部位を自ら開け閉めして、開口部3を形成させてから、使用に供する、という使用方法を取ることができる。このとき、打ち抜かれた部位の開閉によって、何らかの視覚的効果を生じさせることができる。
(4)開口部3には取り外し可能な蓋(不図示)が設置されている。使用するときに初めて、使用者等が前記蓋を取り外すことによって、開口部3を形成させてから、使用に供する、という使用方法を取ることができる。このとき、前記蓋の取り外しによって、取り外し前後で何らかの視覚的効果を生じさせることができる。
【0026】
上部シート4を構成する紙の種類としては、形状の安定性、強度、開口部の形成のし易さ、水や飲料に対する耐久性、吸水性、等を考慮して、種々の紙の中から選択して使用することができる。
【0027】
上部シート4を構成する紙としては、例えば、以下のようなものが好ましく用いられる。すなわち、特開平6−306793号公報に記載のようにパルプスラリー中にサイズ剤を添加して抄紙した紙の少なくとも片面に紙力増強剤、界面活性剤を配合させた塗被液を塗被、乾燥した紙や、特開2006−16730号公報、特開2006−144175号公報に記載のように特定の吸水度を有する2層以上の多層抄き紙等が挙げられる。
【0028】
上部シート4を構成する紙の坪量や厚みは、形状の安定性、強度、開口部3の形成のし易さ、水や飲料に対する耐久性、吸水性、等を考慮して、適宜選択することができる。これらの観点から、坪量は、30〜1000g/mが好ましい。また厚みは、40〜2000μmが好ましい。
【0029】
下部シート5を構成する紙の種類としては、形状の安定性、吸水時の強度、水や飲料に対する耐久性、吸水性、等を考慮して、種々の紙の中から選択して使用することができる。
【0030】
下部シート5を構成する紙としては、例えば、以下のようなものが好ましく用いられる。すなわち、特開平6−306793号公報に記載のようにパルプスラリー中にサイズ剤を添加して抄紙した紙の少なくとも片面に紙力増強剤、界面活性剤を配合させた塗被液を塗被、乾燥した紙や、特開2006−16730号公報、特開2006−144175号公報に記載のように特定の吸水度を有する2層以上の多層抄き紙等が挙げられる。
【0031】
下部シート5を構成する紙の坪量や厚みは、形状の安定性、吸水時の強度、水や飲料に対する耐久性、吸水性、等を考慮して、適宜選択することができる。これらの観点から、坪量は、30〜1000g/mが好ましい。また厚みは、40〜2000μmが好ましい。
【0032】
上部シート4および下部シート5は、グラスやジョッキなどから滴り落ちる水や飲料が、テーブル上に落ちて、テーブル上を濡らすことをできるだけ防止するようにするために、特に、吸水性に優れた紙素材とすることが好ましい。
【0033】
吸水性に優れた紙としては、以下のようなものを挙げることができる。
すなわち、特開平6−306793号公報に記載のように、オフセット印刷時に要求される紙の表面ピッキング強度を大きくするために紙力増強剤等の塗工剤の紙層内部への浸透を抑制するためにパルプスラリーに常法により内添サイズ剤を添加して抄紙される。この紙にサイズプレスでポリビニルアルコール、澱粉、変性澱粉、アクリル系樹脂エマルション等の紙力増強剤を塗工するに際し、同時に紙力増強剤の塗工液中に水に対する湿潤、浸透効果を有する界面活性剤を添加して塗工すると、紙料に内添されているサイズ剤によってサイズプレス塗工液の過剰な内部浸透が抑制されて表面強度が大きくなり、サイズプレス塗工剤に添加された湿潤、浸透性の界面活性剤の作用によりサイズ剤の効果を低減して易吸水性となる。上記塗工剤を紙の両面に塗工すれば紙の表裏両面の表面強度が大きく、全層が易吸水性の紙が得られる。また、紙の片面に上記塗工剤を塗工すれば片面のみ表面強度が大きく、片面易吸水性、片面難吸水性の紙が得られる。
【0034】
使用する内添サイズ剤としてはロジン系サイズ剤が最も一般的であり、ロジンに無水マレイン酸あるいはフマール酸を熱付加してマレイン化ロジン、フマール化ロジンとし、アルカリを加えて溶液にした強化ロジンサイズ剤、これに乳化剤を用いて水に分散させたエマルションサイズ剤がある。ロジンサイズ剤はパルプへの定着性、疎水化剤として硫酸アルミニウムが併用される。合成サイズ剤は原料ナフサを熱分解して得られるC、C留分を3〜4量体のオリゴマーとして後、無水マレイン酸を反応させてアルカリ鹸化させたもの、中性サイズ剤であるアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等に分類でき、このいずれも本発明に使用できる。
【0035】
サイズ剤内添の紙に紙力増強剤とともに使用して易吸水性とする界面活性剤は、水に対する湿潤性、浸透性を有することが好ましく、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、硫酸ラウリルポリオキシエチレンナトリウム、ポリエチレングリコールオキシノニルフェニルエーテル等のアニオン、ノニオン、カチオン、両性の各種界面活性剤等が本発明に使用できる。
【0036】
上記のように、パルプスラリー中に内添したサイズ剤によって発現した紙の水浸透防止能を、サイズプレスにて塗工する紙力増強剤中に添加する湿潤、浸透効果を有する界面活性剤によって低減せしめるには、使用するサイズ剤と界面活性剤の種類、組合せ、添加量の微妙なバランス制御が重要であり、このバランスが崩れると表面強度は有するがサイズ効果が残ったり、また逆に易吸水性であるがオフセット印刷が可能な表面強度が発現しない等のトラブルが発生するおそれがある。また、片面易吸水、片面撥水を意図して紙の片面にのみ界面活性剤添加の塗工液を塗工しても場合によっては全層が吸水性となる等、使用する内添サイズ剤、サイズプレス塗工液中の界面活性剤の組合せ、種類と添加量の設定は特に重要である。通常は、パルプ100質量部に対してサイズ剤0.01〜5質量部、紙力増強剤100質量部に対して界面活性剤1〜30質量部程度である。また、紙に対する紙力増強剤の塗工量は、0.01〜1.0質量%程度である。
【0037】
上部シート4と下部シート5は、同じ種類の紙を用いてもよいし、異なる種類の紙を用いてもよい。印刷を重視するときには、表面の印刷特性に優れた紙種を選択することが好ましい。コースター1としたときに、保管時や使用時にカールや変形をすることがないように、上部シート4および下部シート5の温度や湿度による収縮膨張挙動は、同等のものとすることが望ましい。特に、上部シート4と下部シート5を同じ種類の紙にすると上部シート4と下部シート5を貼り合せた際のカールの発生を効果的に抑制することができるため好ましい。
【0038】
本実施形態のコースター1は、上記のとおり、紙製であり、外形を種々の形状とすることが可能である。正面形状は、四角形状、円形状、楕円形状やキャラクターの形状等、目的、用途に応じて自由に選択することができる。コースター1の大きさについても、同様に目的、用途に応じて自由に選択することができる。
【0039】
上部シート4および下部シート5には、種々の文字、図形、模様、色を印刷等によって付与することが可能である。宣伝・広告、情報の提供、アメニティ等の種々の目的に応じて、自由に設計することができる。
特に、上部シート4と下部シート5とで段差を有しており、また、上部シート4の開口部3も種々の形状にすることが可能であり、上部シート4、下部シート5に施す種々の印刷とともに、デザイン的に優れた商品設計をすることができる。3次元的な視覚効果を催すことも可能である。印刷方法は特に制限されない。吸水することによって、着色したり、変色したりするようなインクを印刷に用いれば、さらに奇抜な効果を生み出すこともできる。
【0040】
(製造方法)
次に、本実施形態のコースター1の製造方法について説明する。
コースター1の製造方法として、代表的な製造プロセスを以下に示す。第1の製造方法は以下の工程を有するものである。
(1)上部シート4、下部シート5に図柄を印刷する。
(2)前記上部シート4の所定の箇所を開口部3の外形形状で打ち抜いて、打ち抜かれた部位を取り除いて、開口部3を形成する。
(3)開口部を打ち抜かれた前記上部シート4の裏側に接着剤を塗布する。
(4)前記下部シート5の上に前記上部シート4を置き、両者を貼り合わせる。
(5)貼り合わされた多層シートを所定のコースター形状に打ち抜く。
【0041】
第2の製造方法は以下の工程を有するものである。
(1)上部シート4、下部シート5に図柄を印刷する。
(2)前記上部シート4の裏側に接着剤を、後に打ち抜かれる部位以外の部分に塗布する。
(3)前記下部シート5の上に前記上部シート4を置き、両者を貼り合わせる。
(4)貼り合わされた多層シートの前記上部シート4だけについて、所定の箇所を開口部3の外形形状で打ち抜いて、打ち抜かれた部位を取り除いて、開口部3を形成する。
(5)多層シートを所定のコースター形状に打ち抜く。
ここで、第2の製造方法の工程(2)においては、接着剤は、開口部3となる領域には塗布されないように、塗布することが必要である。
【0042】
上記の製造方法を採用する結果、下部シート5の上面のうち、開口部3を通して外部に露出している部分には接着剤層や剥離剤層等は存在していない。そのため、食器の底面に接着剤等が付着したり、開口部3内の下部シート5の上面の吸水性能が低下するようなことは生じなくなる。
【0043】
以上の説明から分かるように、本実施形態は、その実施の形態によって、以下に記載するような優れた効果を発揮し得るものである。
(1)単に紙を積層した構造であるため、薄くて軽量であり、包装、運搬、保管、取扱性に優れている。
(2)紙自体が元々有している、液体の吸収、保持、拡散能力を利用するものであり、比較的簡便に、大量に製造することができる。
(3)コースターの大きさは、目的に応じて、種々のものを容易に設計し、製造することができる。
(4)紙の厚み、空孔率、パルプの種類、添加剤等を変更することによって、吸水性能を比較的容易に制御することができる。
(5)上部シートの開口部は、段差を有しており、水や飲料が開口部の外部に漏れ出ないように、堰き止める機能を有している。
(6)上部シートと下部シートに種々の文字、模様、色を印刷等によって付与することが可能であり、宣伝・広告、情報の提供、アメニティ等の種々の目的に応じて、自由に設計することができる。上部シートの開口部も種々の形状にすることが可能であり、段差を利用して、デザイン性に優れた製品とすることができる。
(7)基本的に紙を主体に構成されているため、焼却等によって容易に廃棄処分することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 コースター
2 上部シートの非開口部
3 上部シートの開口部
4 上部シート
5 下部シート
図1
図2