(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の表面処理方法では、均一な表面処理は可能であるが、ろ過、洗浄、乾燥等の複数の工程を必要とするため、工程が煩雑である。また、湿式の表面処理の場合は、処理溶液の処理が難しい。また、表面処理の程度(例えば表面処理の深さ等)を精度良く制御することは極めて困難である。
【0005】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、簡易な工程で表面処理し、その表面処理の程度を精度良く制御した表面処理微粒子、表面処理装置及び微粒子の表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る表面処理微粒子は、加熱又はプラズマ雰囲気によって微粒子を表面処理したことを特徴とする。尚、前記プラズマ雰囲気にはスパッタリングによるプラズマ雰囲気も含むものとする。
【0007】
本発明に係る表面処理微粒子は、内部の断面形状が略円形を有する容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながら該微粒子を表面処理したことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る表面処理微粒子は、内部の断面形状が多角形を有する容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながら該微粒子を表面処理したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る表面処理微粒子において、前記表面処理は、前記微粒子の表面を酸化、窒化、フッ化又は炭化する処理であることも可能である。
また、本発明に係る表面処理微粒子において、前記表面処理は、前記微粒子の表面をプラズマによってクリーニングする処理、又は、前記微粒子の表面をプラズマエッチングして該微粒子の表面に凹凸を形成する処理であることも可能である。前記クリーニングする処理の場合は、ガスとしてArなどの不活性ガスを使用しても良い。また、前記微粒子の表面に凹凸を形成する処理を行うことによりアンカリング効果が期待できる。
本発明に係る微粒子の表面処理方法は、容器内に微粒子を収容し、
加熱又はプラズマ雰囲気によって該微粒子を表面処理することを特徴とする。尚、前記プラズマ雰囲気にはスパッタリングによるプラズマ雰囲気も含むものとする。
【0010】
本発明に係る微粒子の表面処理方法は、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながら該微粒子を表面処理することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る微粒子の表面処理方法は、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながら該微粒子を表面処理することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る表面処理装置は、微粒子を載置する容器と、
前記容器を収容するチャンバーと、
前記容器に載置された微粒子を加熱する加熱機構と、
前記チャンバー内にガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
前記微粒子を表面処理することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る表面処理装置は、微粒子を収容する容器であって、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させる回転機構と、
前記容器内に収容された微粒子を加熱する加熱機構と、
前記容器内にガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
前記回転機構を用いて前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながら該微粒子を表面処理することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る表面処理装置は、微粒子を収容する容器であって、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させる回転機構と、
前記容器内に収容された微粒子を加熱する加熱機構と、
前記容器内にガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
前記回転機構を用いて前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながら該微粒子を表面処理することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る表面処理装置は、微粒子を載置する容器と、
前記容器を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にガスを導入するガス導入機構と、
前記チャンバー内に配置され、前記容器に対向するように配置された電極と、
を具備し、
プラズマを用いて前記微粒子を表面処理することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る表面処理装置は、微粒子を収容する容器であって、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させる回転機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記容器内にガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
前記回転機構を用いて前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらプラズマを用いることで、該微粒子を表面処理することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る表面処理装置は、微粒子を収容する容器であって、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させる回転機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記容器内にガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
前記回転機構を用いて前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらプラズマを用いることで、該微粒子を表面処理することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る表面処理装置において、前記ガス導入機構は、酸素ガス、窒素ガス、フッ素ガス及び炭化水素ガスのうちの少なくとも一つのガスを導入する機構であることも可能である。前記炭化水素ガスとしては例えばメタンガスを用いることができる。
また、本発明に係る表面処理装置において、前記表面処理は、前記微粒子の表面をプラズマによってクリーニングする処理、又は、前記微粒子の表面をプラズマエッチングして該微粒子の表面に凹凸を形成する処理であることも可能である。
また、本発明に係る表面処理装置において、前記ガス導入機構は、前記電極からシャワー状のガスを前記容器内に導入する機構を有することも可能である。
また、本発明に係る表面処理装置においては、前記容器を収容するチャンバーと、該チャンバー内を真空排気する真空排気機構と、をさらに具備することも可能である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、簡易な工程で表面処理し、その表面処理の程度を精度良く制御した表面処理微粒子、表面処理装置及び微粒子の表面処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1によるサーマル表面処理装置の概略を示す構成図である。このサーマル表面処理装置は、微粒子(又は粉体)を表面処理するための装置である。
【0021】
サーマル表面処理装置は、粉体(微粒子)1、例えば金属粉体を載置又は収容する容器2を有している。この容器2の下部には、粉体1を加熱する加熱機構としてのヒーター4が配置されている。容器2及びヒーター4はチャンバー3内に配置されている。
【0022】
また、サーマル表面処理装置は、チャンバー3の内部にガスを導入するガス導入機構を備えている。ガス導入機構は、O
2ガスを導入するガス導入機構を有している。ガス導入機構は、配管5〜7、バルブ12、マスフローコントローラ(MFC)14及びO
2ガス供給源を有している。
【0023】
配管5の先端はチャンバー3に接続されており、配管5の先端からO
2ガスをチャンバー3内に噴き出すようになっている。配管5の基端はバルブ12の一方側に接続されており、バルブ12の他方側は配管6の一端に接続されている。配管6の他端はマスフローコントローラ14の一端に接続されており、マスフローコントローラ14の他端は配管7の一端に接続されている。配管7の他端はO
2ガス供給源に接続されている。
【0024】
また、サーマル表面処理装置は、チャンバー3の内部を真空引きする真空ポンプ16を備えている。この真空ポンプ16は配管11によってチャンバー3に接続されている。
【0025】
次に、上記サーマル表面処理装置を用いて粉体(微粒子)1を表面処理する表面処理方法について説明する。
まず、容器2内に多くの微粒子が集まった粉体1を収容する。容器2内に収容する粉体1の量は、微粒子からなる層を2〜3層積層させる程度が好ましい。微粒子からなる層の積層数を多くすると、下層の方の微粒子には酸素(O
2)ガスが到達しにくいため、下層の微粒子の表面処理状態が悪くなるからである。尚、微粒子1を構成する母材は、種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では例えばSi粉体又はTi粉体を用いる。また、微粒子1は、単一種類の微粒子である必要は必ずしも無く、複数種類の微粒子を用いることも可能である。また、微粒子1の形状は、種々の形状を用いることが可能であり、例えば球又は球に近い形状とすることが好ましい。
【0026】
次いで、ヒーター4で容器2を介して粉体1を所定の温度(例えば400〜800℃程度)まで加熱しながら、真空ポンプ16を用いてチャンバー3内を所定の圧力(例えば10
−2〜10
−4Torr程度)まで排気する。そして、バルブ12を開けてマスフローコントローラ14によって流量制御された酸素ガスを、配管5〜7を通してチャンバー3の内部に導入する。これにより、粉体1の各々の微粒子表面を酸化する表面処理を行い、用いた金属の酸化物からなる表面を有する微粒子を作製することができる。また、本実施の形態では、酸素ガスを用いているので酸化物が形成されるが、炭化水素ガスを用いれば炭化物が形成され、窒素ガスを用いれば窒化物が形成され、H
2Sガスを用いれば硫化物が形成される。
【0027】
図2は、
図1に示すサーマル表面処理装置によって微粒子を表面処理した表面処理微粒子の一例を示す断面図である。
表面処理微粒子18は、微粒子1が比較的に均一性よく表面処理され、該微粒子1の表面に酸化膜17が形成されたものである。ただし、前記サーマル表面処理装置では、容器2に収容された微粒子1を静止させた状態でサーマル表面処理しているため、微粒子1の底部(容器2と接する側の部分)の表面処理によって形成された酸化膜の厚さは薄くなる。
【0028】
上記実施の形態1によれば、サーマル表面処理装置を用いることにより、微粒子又は粉体に簡易な工程で表面処理することができ、その表面処理の程度を精度良く制御することができる。つまり、粉体の凝集を抑えた状態で熱を加えて表面処理を行うため、簡易な工程で且つ表面処理の程度を精度良く制御できる。
尚、本実施の形態において、Siからなる微粒子の表面を酸化する表面処理を行った場合、前記微粒子の表面を絶縁化することができる。
【0029】
(実施の形態2)
図3(A)は、本発明に係る実施の形態2によるサーマル表面処理装置の概略を示す断面図であり、
図3(B)は、
図3(A)に示す3B−3B線に沿った断面図である。このサーマル表面処理装置は、微粒子(又は粉体)を表面処理するための装置である。
【0030】
このサーマル表面処理装置は円筒形状のチャンバー3を有している。このチャンバー3の両端はチャンバー蓋20によって閉じられている。チャンバー3の内部には容器19が配置されている。この容器19は円筒形状の部分(丸型バレル)を有しており、この丸型バレルの内部に粉体(微粒子)1が収容されるようになっている。
図3(B)で示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、断面形状が略円形の容器19を用いているが、これに限定されるものではなく、断面形状が略楕円形の容器を用いることも可能である。
【0031】
容器19には回転機構(図示せず)が設けられており、この回転機構により容器19を矢印のように回転させることで該容器19内の粉体(微粒子)1を攪拌あるいは回転させながら表面処理を行うものである。前記回転機構により容器19を回転させる際の回転軸は、略水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。また、容器19の外面には、粉体1を加熱する加熱機構としてのヒーター21が配置されている。
【0032】
また、サーマル表面処理装置は、容器19の内部にガスを導入するガス導入機構を備えている。ガス導入機構は、O
2ガスを導入するガス導入機構を有している。ガス導入機構の構造は実施の形態1と略同様である。また、サーマル表面処理装置は、チャンバー3の内部を真空引きする真空ポンプ(図示せず)を備えている。
【0033】
次に、上記サーマル表面処理装置を用いて粉体(微粒子)1、例えばTiやSiなどの金属粉体を表面処理する方法について説明する。
まず、容器19内に多くの微粒子が集まった粉体1を収容する。尚、粉体1としては種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では実施の形態1と同様に例えばSi粉体又はTi粉体を用いる。
【0034】
次いで、ヒーター4で容器19を介して粉体1を所定の温度(例えば400〜800℃程度)まで加熱しながら、真空ポンプ16を用いてチャンバー3内を所定の圧力(例えば10
−2〜10
−4Torr程度)まで排気する。そして、ガス導入機構によって流量制御された酸素ガスを容器19の内部に導入し、回転機構により容器19を所定の回転速度(例えば15rpm)で所定時間(例えば120分)回転させることで、容器19内の粉体1を回転させ、攪拌させる。これにより、粉体1の各々の微粒子表面を均一性よく酸化する表面処理を行い、用いた金属の酸化物からなる表面を有する微粒子を作製することができる。
【0035】
上記実施の形態2においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、丸型バレルの容器19自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌できるため、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子を簡易な工程で表面処理することができ、その表面処理の程度を精度良く制御することができる。
【0036】
(実施の形態3)
図4(A)は、本発明に係る実施の形態3によるサーマル表面処理装置の概略を示す断面図であり、
図4(B)は、
図4(A)に示す4B−4B線に沿った断面図である。
図4において
図3と同一部分には同一符号を付し、同一部分の説明は省略する。
【0037】
チャンバー3の内部には容器22が配置されている。この容器22は、
図4(B)に示すようにその断面が六角形のバレル形状(六角型バレル形状)を有している。そして、容器22の内部に粉体(微粒子)1が収容されるようになっている。
図4(B)で示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、六角型バレル形状の容器22を用いているが、これに限定されるものではなく、六角形以外の多角形のバレル形状の容器を用いることも可能である。
【0038】
容器22には実施の形態2と同様に回転機構(図示せず)が設けられている。この回転機構により容器22を矢印のように回転させることで該容器22内の粉体(微粒子)1を攪拌あるいは回転させながら表面処理を行うものである。前記回転機構により容器22を回転させる際の回転軸は、略水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。
【0039】
また、容器22の外面には実施の形態2と同様に加熱機構が配置されている。また、本サーマル表面処理装置は実施の形態2と同様にガス導入機構及び真空ポンプを備えている。
【0040】
次に、上記サーマル表面処理装置を用いて粉体(微粒子)1を表面処理する方法について説明する。
まず、容器19内に多くの微粒子が集まった粉体1を収容する。尚、粉体1としては種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では実施の形態1と同様に例えばTi粉体又はSi粉体を用いる。
【0041】
次いで、ヒーター4で容器22を介して粉体1を所定の温度まで加熱しながら、真空ポンプを用いてチャンバー3内を所定の圧力まで排気する。そして、ガス導入機構によって流量制御された酸素ガスを容器22の内部に導入し、回転機構により容器を所定の回転速度で所定時間回転させることで、容器22内の粉体1を回転させ、攪拌させる。これにより、粉体1の各々の微粒子表面を均一性よく酸化する表面処理を行い、用いた金属の酸化物からなる表面を有する微粒子を作製することができる。
【0042】
図5は、
図4に示すサーマル表面処理装置によって微粒子を表面処理した表面処理微粒子の一例を示す断面図である。
表面処理微粒子23は、微粒子1が均一性よく表面処理され、該微粒子1の表面に酸化膜17が均一性よく形成されたものである。前記サーマル表面処理装置では、容器22を回転させることで微粒子1を回転させ攪拌しながら表面処理を行っているため、微粒子1の表面全体に均一性よく表面処理することができ、微粒子の表面に酸化膜を均一性よく形成することができる。また、微粒子1の表面に凹凸又は窪みがある場合でも、凹凸又は窪みに均一性よく表面処理することができる。
【0043】
上記実施の形態3においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、六角型バレル形状の容器22自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌でき、更にバレルを六角型とすることにより、粉体を重力により定期的に落下させることができる。このため、実施の形態2に比べて攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。つまり回転により攪拌と、凝集した粉体の粉砕を同時かつ効果的に行うことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子を簡易な工程で表面処理することができ、その表面処理の程度を精度良く制御することができる。具体的には、粒径が50μm以下の微粒子を表面処理することが可能となる。
【0044】
尚、本発明は、上記実施の形態1〜3に限定されるものではなく、次のように変形して実施することも可能である。例えば、プラズマクリーニング又はプラズマエッチングを行った後に、他の表面処理を行うことも可能である。すなわち、Arガスによってプラズマクリーニングを行った後、Ar以外のガス(例えばO
2ガス)によって表面処理を行うことも可能である。
また、上記実施の形態1〜3では、ガス導入機構により酸素ガスを導入しているが、酸素ガスに限定されるものではなく、他のガス、例えば窒素ガス、フッ素ガス、炭化水素ガス、窒素又はフッ素を含むガス等をガス導入機構により導入することも可能である。例えば、ガス導入機構により窒素ガス又は窒素を含むガスを導入し、Siからなる微粒子の表面を窒化する表面処理を行った場合、前記微粒子の表面にはSi
3N
4からなる窒化膜が形成され、この窒化膜によって微粒子の表面を硬化することができる。また、例えば、ガス導入機構によりフッ素ガス又はフッ素を含むガスを導入し、Cからなる微粒子の表面をフッ化する表面処理を行った場合、前記微粒子の表面にはCF
4膜が形成される。
【0045】
(実施の形態4)
図6は、本発明に係る実施の形態4によるプラズマ表面処理装置の概略を示す構成図である。このプラズマ表面処理装置は、微粒子(又は粉体)を表面処理するための装置である。
【0046】
プラズマ表面処理装置はチャンバー3を有している。チャンバー3内には、コーティング対象の粉体(微粒子)1を収容する容器2が配置されている。この容器2はプラズマ電源31又は接地電位に接続されるようになっており、両者はスイッチ32により切り替え可能に構成されている。
【0047】
また、プラズマ表面処理装置は、チャンバー3内にガスを導入するガス導入機構を備えている。このガス導入機構は筒状のガスシャワー電極24を有しており、このガスシャワー電極24はチャンバー3内に配置されている。ガスシャワー電極24の一方側には、単数又は複数のガスをシャワー状に吹き出すガス吹き出し口が複数形成されている。このガス吹き出し口は容器に収容された粉体1と対向するように配置されている。ガスシャワー電極24の他方側は真空バルブ26を介してマスフローコントローラ(MFC)27の一方側に接続されている。マスフローコントローラ27の他方側は図示せぬ真空バルブ及びフィルターなどを介してガス導入源28に接続されている。このガス導入源28は、粉体の表面処理によって導入するガスの種類が異なるが、酸化による表面処理を行う場合は酸素ガス又は酸素を含むガスの導入源であり、窒化による表面処理を行う場合は窒素ガス又は窒素を含むガスの導入源であり、フッ化による表面処理を行う場合はフッ素ガス又はフッ素を含むガスの導入源であり、炭化による表面処理を行う場合はメタン等の炭化水素ガスの導入源であり、プラズマクリーニングによる表面処理を行う場合はアルゴン等の不活性ガスの導入源である。
【0048】
また、プラズマ表面処理装置はプラズマパワー供給機構を備えており、このプラズマパワー供給機構はガスシャワー電極24にスイッチ33を介して接続されたプラズマ電源25を有している。プラズマ電源25,31は、高周波電力(RF出力)を供給する高周波電源、マイクロ波用電源、DC放電用電源、及びそれぞれパルス変調された高周波電源、マイクロ波用電源、DC放電用電源のいずれかであればよい。例えばプラズマ電源が高周波電力を供給するものである場合、図示せぬインピーダンス整合器(マッチングボックス)を高周波電源とガスシャワー電極24との間に配置することが好ましい。つまり、この場合、ガスシャワー電極24はマッチングボックスに接続されており、マッチングボックスは同軸ケーブルを介して高周波電源(RF電源)に接続されている。
尚、ガスシャワー電極24及び容器2のいずれか一方にプラズマ電源が接続され、他方に接地電位が接続されていても良いし、ガスシャワー電極24及び容器2の両方にプラズマ電源が接続されていても良い。
【0049】
また、プラズマ表面処理装置は、チャンバー3内を真空排気する真空排気機構を備えている。例えば、ガスシャワー電極12にはチャンバー3内を排気する排気口(図示せず)が複数設けられており、排気口は真空ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0050】
次に、上記プラズマ表面処理装置を用いて粉体1を表面処理する方法について説明する。
まず、複数の微粒子からなる粉体1を容器2内に収容する。容器2内に収容する粉体1の量及び粉体の材質は実施の形態1と同様である。この後、真空ポンプを作動させることによりチャンバー3内を所定の圧力(例えば10
−2〜10
−4Torr程度)まで排気する。
【0051】
次いで、真空バルブ26を開き、ガス導入源28においてガス(例えば酸素ガス)をマスフローコントローラ27に導入させ、このマスフローコントローラ27によって流量制御し、この流量制御されたガスをガスシャワー電極24の内側に導入する。そして、ガスシャワー電極のガス吹き出し口からガスを吹き出させる。
【0052】
この後、ガスシャワー電極24に例えばマッチングボックスを介してプラズマ電源25の一例である高周波電源(RF電源)から例えば13.56MHzのRF出力が供給される。この際、容器2は接地電位に接続されている。これにより、ガスシャワー電極24と容器2との間にプラズマを着火する。このとき、マッチングボックスは、容器2とガスシャワー電極24のインピーダンスに、インダクタンスL、キャパシタンスCによって合わせている。これによって、チャンバー3内にプラズマが発生し、微粒子1の表面を均一性よく酸化する表面処理を行い、用いた金属の酸化物からなる表面を有する微粒子を作製することができる。
【0053】
上記実施の形態4によれば、プラズマ表面処理装置を用いることにより、微粒子又は粉体を簡易な工程で表面処理することができ、その表面処理の程度を精度良く制御することができる。例えば、ガス導入機構により酸素ガス又は酸素を含むガスを導入し、Siからなる微粒子の表面を酸化する表面処理を行った場合、前記微粒子の表面には酸化膜が形成され、この酸化膜によって微粒子の表面を絶縁化することができる。また、ガス導入機構により窒素ガス又は窒素を含むガスを導入し、Siからなる微粒子の表面を窒化する表面処理を行った場合、前記微粒子の表面にはSi
3N
4からなる窒化膜が形成され、この窒化膜によって微粒子の表面を硬化することができる。また、ガス導入機構によりフッ素ガス又はフッ素を含むガスを導入し、Cからなる微粒子の表面をフッ化する表面処理を行った場合、前記微粒子の表面にはCF
4膜が形成される。また、ガス導入機構によりメタン等の炭化水素ガスを導入し、微粒子の表面を炭化する表面処理を行った場合、前記微粒子の表面に炭化物が形成される。また、ガス導入機構によりアルゴンガスを導入し、微粒子の表面をプラズマクリーニングする表面処理を行った場合、前記微粒子の表面をプラズマクリーニングすることができる。例えば、表面に酸化膜が形成された微粒子をプラズマクリーニングした場合、微粒子における表面の酸化膜を除去することができ、活性な表面を有する微粒子を形成することができる。また、エッチングによる表面処理では、表面に微小な凹凸を形成でき、表面修飾等においてアンカリング効果が得られる。
【0054】
また、本実施の形態では、プラズマを用いて表面処理を行うため、100℃以下の低温でも微粒子を均一性よく表面処理することが可能である。従って、100℃以上の高温で分解しやすい微粒子や相変化を起こしやすい微粒子、或いは表面変質しやすい微粒子を表面処理することが可能となる。
【0055】
(実施の形態5)
図7(A)は、本発明に係る実施の形態5によるプラズマ表面処理装置の概略を示す断面図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示す7B−7B線に沿った断面図である。このプラズマ表面処理装置は、微粒子(又は粉体)を表面処理するための装置である。
【0056】
プラズマ表面処理装置は円筒形状のチャンバー3を有している。このチャンバー3の両端はチャンバー蓋20によって閉じられている。チャンバー3の内部には容器29が配置されている。この容器29は円筒形状の部分(丸型バレル)を有しており、この丸型バレルの内部にコーティング対象物としての粉体(微粒子)1が収容されるようになっている。また、容器29は、電極としても機能し、プラズマ電源31又は接地電位に接続されるようになっており、両者はスイッチ32により切り替え可能に構成されている。
図7(B)で示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、断面形状が略円形の容器29を用いているが、これに限定されるものではなく、断面形状が略楕円形の容器を用いることも可能である。
【0057】
容器29には回転機構(図示せず)が設けられており、この回転機構によりガスシャワー電極24を回転中心として容器29を矢印のように回転させることで該容器29内の粉体(微粒子)1を攪拌あるいは回転させながら表面処理を行うものである。前記回転機構により容器29を回転させる際の回転軸は、略水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。また、チャンバー3内の気密性は、容器29の回転時においても保持されている。
【0058】
また、プラズマ表面処理装置は、チャンバー3内にガスを導入するガス導入機構を備えている。このガス導入機構は筒状のガスシャワー電極24を有しており、このガスシャワー電極24は容器29内に配置されている。即ち、容器29の一方側には開口部が形成されており、この開口部からガスシャワー電極24が挿入されている。ガスシャワー電極24には、単数又は複数のガスをシャワー状に吹き出すガス吹き出し口が複数形成されている。このガス吹き出し口は容器に収容された粉体1と対向するように配置されている。ガス吹き出し口は、
図7(B)に示すように重力方向15に対して容器29の回転方向に1°〜90°程度の方向に配置されている。
【0059】
ガスシャワー電極24は、実施の形態4と同様に真空バルブ、マスフローコントローラ(MFC)、真空バルブ、フィルター、ガス導入源に接続されている(図示せず)。このガス導入源は、実施の形態4の場合と同様であるので説明を省略する。
【0060】
また、プラズマ表面処理装置はプラズマパワー供給機構を備えており、このプラズマパワー供給機構は実施の形態4と同様の構造を有している。また、プラズマ表面処理装置は、チャンバー3内を真空排気する真空排気機構を備えており、真空排気機構の構造は実施の形態4と略同様である。
【0061】
次に、上記プラズマ表面処理装置を用いて粉体1を表面処理する方法について説明する。
まず、複数の微粒子からなる粉体1を容器2内に収容する。尚、粉体1としては種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では実施の形態1と同様に例えばTi粉体又はSi粉体を用いる。この後、真空ポンプを作動させることによりチャンバー3内を所定の圧力(例えば10
−2〜10
−4程度)まで排気する。これと共に、回転機構により容器29を回転させることで、その内部に収容された粉末(微粒子)1が容器内面において重力方向30とそれに対して回転方向に90°の間を転がりながら動く。
【0062】
次いで、ガス導入源においてガス(例えば酸素ガス)をマスフローコントローラに導入させ、このマスフローコントローラによって流量制御し、この流量制御されたガスをガスシャワー電極24の内側に導入する。そして、ガスシャワー電極のガス吹き出し口からガスを吹き出させる。これにより、容器29内を転がりながら動いている微粒子1にガスが吹き付けられ、制御されたガス流量と排気能力のバランスによって、表面処理に適した圧力に保たれる。
【0063】
この後、ガスシャワー電極24に、例えばマッチングボックスを介してプラズマ電源25の一例である高周波電源(RF電源)から例えば13.56MHzのRF出力が供給される。この際、容器29は接地電位に接続されている。これにより、ガスシャワー電極24と容器29との間にプラズマを着火する。このとき、マッチングボックスは、容器2とガスシャワー電極24のインピーダンスに、インダクタンスL、キャパシタンスCによって合わせている。これによって、容器29内にプラズマが発生し、微粒子1の表面を均一性よく酸化する表面処理を行い、SiO
2又はTiOからなる表面を有する微粒子を作製することができる。つまり、容器29を回転させることによって微粒子1を転がしているため、微粒子1の表面全体に均一性よく表面処理を行うことが容易にできる。
【0064】
上記実施の形態5においても実施の形態4と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、丸型バレルの容器29自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌できるため、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子を簡易な工程で表面処理することができ、その表面処理の程度を精度良く制御することができる。
【0065】
(実施の形態6)
図8(A)は、本発明に係る実施の形態6によるプラズマ表面処理装置の概略を示す断面図であり、
図8(B)は、
図8(A)に示す8B−8B線に沿った断面図である。
図8において
図7と同一部分には同一符号を付し、同一部分の説明は省略する。
【0066】
チャンバー3の内部には容器30が配置されている。この容器30は、
図8(B)に示すようにその断面が六角形のバレル形状(六角型バレル形状)を有している。そして、容器30の内部にはコーティング対象物である粉体(微粒子)1が収容されるようになっている。また、容器30は、電極としても機能し、プラズマ電源31又は接地電位に接続されるようになっており、両者はスイッチ32により切り替え可能に構成されている。
図8(B)で示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、六角型バレル形状の容器30を用いているが、これに限定されるものではなく、六角形以外の多角形のバレル形状の容器を用いることも可能である。
【0067】
容器30には実施の形態5と同様に回転機構(図示せず)が設けられている。この回転機構により容器30を矢印のように回転させることで該容器30内の粉体(微粒子)1を攪拌あるいは回転させながら表面処理を行うものである。前記回転機構により容器30を回転させる際の回転軸は、略水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。
【0068】
また、プラズマ表面処理装置は実施の形態5と同様にガス導入機構及び真空排気機構を備えている。このガス導入機構は実施の形態5と同様に筒状のガスシャワー電極24を有している。また、プラズマ表面処理装置は実施の形態5と同様にプラズマパワー供給機構を備えている。
【0069】
次に、上記プラズマ表面処理装置を用いて粉体(微粒子)1を表面処理する方法について説明する。
まず、複数の微粒子からなる粉体1を容器30内に収容する。尚、粉体1としては種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では実施の形態1と同様に例えばTi粉体又はSi粉体を用いる。この後、真空ポンプを作動させることによりチャンバー3内を所定の圧力(例えば10
−2〜10
−4Torr程度)まで排気する。これと共に、回転機構により容器30を回転させることで、その内部に収容された粉末(微粒子)1が容器内面において攪拌又は回転される。
【0070】
次いで、ガス導入源においてガス(例えば酸素ガス)をマスフローコントローラに導入し、このマスフローコントローラによって流量制御し、この流量制御されたガスをガスシャワー電極24の内側に導入する。そして、ガスシャワー電極のガス吹き出し口からガスを吹き出させる。これにより、容器30内を攪拌又は回転しながら動いている微粒子1にガスが吹き付けられ、制御されたガス流量と排気能力のバランスによって、表面処理に適した圧力に保たれる。
【0071】
この後、ガスシャワー電極24に、例えばマッチングボックスを介してプラズマ電源25の一例である高周波電源(RF電源)から例えば13.56MHzのRF出力が供給される。この際、容器30は接地電位に接続されている。これにより、ガスシャワー電極24と容器30との間にプラズマを着火する。このとき、マッチングボックスは、容器2とガスシャワー電極24のインピーダンスに、インダクタンスL、キャパシタンスCによって合わせている。これによって、容器30内にプラズマが発生し、微粒子1の表面を均一性よく酸化する表面処理を行い、SiO
2又はTiOからなる表面を有する微粒子を作製することができる。つまり、容器30を回転させることによって微粒子1を攪拌し、回転させているため、微粒子1の表面全体を均一性よく表面処理することが容易にできる。
【0072】
上記実施の形態6においても実施の形態4と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、六角型バレル形状の容器30自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌でき、更にバレルを六角型とすることにより、粉体を重力により定期的に落下させることができる。このため、実施の形態5に比べて攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。つまり回転により攪拌と、凝集した粉体の粉砕を同時かつ効果的に行うことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子を簡易な工程で表面処理することが可能となる。具体的には、粒径が50μm以下の微粒子を表面処理することが可能となる。
【0073】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、微粒子を表面処理する条件を適宜変更することも可能である。