(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力を変換するための制御信号を生成する電力制御回路を備え、外部電源からの電力を、前記制御信号に基づいてパワー変換器を介して電池へ供給し、前記電池へ供給された電力を、前記制御信号に基づいて前記パワー変換器を介して前記外部電源へ放出する充放電装置において、
前記電力制御回路は、
所定の電流指令と、前記電池とパワー変換器との間で検出された電流との間の偏差を0にするための電流指令を生成する電流制御アンプ、
所定の電圧指令に所定のパルス指令を重畳させた指令と、前記電池とパワー変換器との間で検出された電圧との間の偏差を0にするための電圧指令を生成する電圧制御アンプ、及び、
前記電圧制御アンプにより生成された電圧指令を反映した、前記電流指令を抑制するための電流制限値を設定し、前記電流制御アンプにより生成された電流指令と前記電流制限値とを比較し、前記電流指令が前記電流制限値よりも小さい場合、前記電流指令を、前記制御信号を生成するための指令として出力し、前記電流指令が前記電流制限値以上である場合、前記電流制限値を、前記制御信号を生成するための指令として出力する電流制限器を備え、
前記電流指令から生成した制御信号により、電流一定制御を行い、前記電流制限値から生成した制御信号により、前記パルス指令が重畳した電圧一定制御を行うことを特徴とする充放電装置。
電力を変換するための制御信号を生成する電力制御回路を備え、外部電源からの電力を、前記制御信号に基づいてパワー変換器を介して電池へ供給し、前記電池へ供給された電力を、前記制御信号に基づいて前記パワー変換器を介して前記外部電源へ放出する充放電装置による充放電方法において、
所定の電流指令と、前記電池とパワー変換器との間で検出された電流との間の偏差を0にするための電流指令を生成する第1のステップと、
所定の電圧指令に所定のパルス指令を重畳させた指令と、前記電池とパワー変換器との間で検出された電圧との間の偏差を0にするための電圧指令を生成する第2のステップと、
前記第2のステップにより生成された電圧指令を反映した、前記電流指令を抑制するための電流制限値を設定する第3のステップと、
前記第1のステップにより生成された電流指令と前記第3のステップにより設定された電流制限値とを比較する第4のステップと、
前記第4のステップにより前記電流指令が前記電流制限値よりも小さい場合、前記電流指令を、前記制御信号を生成するための指令として出力する第5のステップと、
前記第4のステップにより前記電流指令が前記電流制限値以上である場合、前記電流制限値を、前記制御信号を生成するための指令として出力する第6のステップとを有し、
前記電流指令から生成した制御信号により、電流一定制御を行い、前記電流制限値から生成した制御信号により、前記パルス指令が重畳した電圧一定制御を行うことを特徴とする充放電方法。
【背景技術】
【0002】
従来、外部電源から電力エネルギーをリチウムイオン電池等の電池へ供給する充電処理と、当該電池に蓄積された電力エネルギーを外部電源へ放出する放電処理を行う充放電装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
一般に、充放電装置は、充電時に、一定の電流で電力エネルギーを電池へ供給する電流一定制御(CC制御)を行い、電池電圧が所定値(充電電圧値)になると、一定の電圧を維持するように電力エネルギーを電池へ供給する電圧一定制御(CV制御)を行う。電池電圧が充電電圧値になったときにCC制御からCV制御に切り換えるのは、電池電圧が異常に上昇し過剰充電による事故を回避し、また電池性能を低下させないようにするためである。一方、放電時には、充電時とは逆方向へ電流を流すことでCC制御を行い、また電池電圧が所定値の放電電圧に達するとCV制御を行う
【0004】
図10は、従来の充放電装置に備えた電力制御回路の構成を示すブロック図である。従来の充放電装置は、電力制御回路100、パワー変換器110、電流検出器120、電圧検出器130を備えている。尚、
図10は、従来の充放電制御を説明するために必要な構成のみを示しており、外部電源、交流電力を直流電力に変換するコンバータ等は省略してある。
【0005】
電力制御回路100は、CC制御及びCV制御を行い、電池140の電力を充電するための制御信号及び電池140の電力を放電するための制御信号をパワー変換器110に出力する。
【0006】
パワー変換器110は、充電時に、電力制御回路100から電池140を充電するためのゲート信号(制御信号)を入力し、入力したゲート信号に基づいて、商用電源(図示せず)から回生コンバータ(図示せず)を介して入力した直流電力を所定の充電電力に変換し、電源140へ供給する。これにより、電池140は充電され、電力エネルギーが蓄積される。また、パワー変換器110は、放電時に、電力制御回路100から電池140の電力を放電するためのゲート信号を入力し、電源140に蓄積された電力エネルギーを所定の放電電力に変換し、電源へ放電する。これにより、電池140に蓄積された電力は、DCDCコンバータ及び電源同期型のコンバータ等を介して商用電源へと放出することが可能となる。
【0007】
電流検出器120は、パワー変換器110から電池140へ供給または放出される電流(充電電流及び放電電流)を検出する。電流検出器120により検出された電流は電流FBとして電力制御回路100へ入力される。電圧検出器130は、パワー変換器110から電池140へ供給または放出される電圧(充電電圧及び放電電圧)を検出する。電圧検出器130により検出された電圧は電圧FBとして電力制御回路100へ入力される。
【0008】
図10に示すように、電力制御回路100は、減算器101、電流制御アンプ102、減算器103、電圧制御アンプ104及びスイッチ105を備えている。電力制御回路100は、充電時及び放電時に、減算器101及び電流制御アンプ102にてCC制御を行い、減算器103及び電圧制御アンプ104にてCV制御を行う。また、図示しない制御部は、充電を開始する場合、CC制御における充電電流の設定値として正極の充電電流指令を設定し、減算器101へ入力すると共に、CV制御における充電電圧の設定値として充電電圧指令を設定し、減算器103へ入力する。また、制御部は、放電を行う場合、CC制御における放電電流の設定値として負極の放電電流指令を設定し、減算器101へ入力すると共に、CV制御における放電電圧の設定値として放電電圧指令を設定し、減算器103へ入力する。
【0009】
充電時及び放電時において、制御部は、一般的には最初にCC制御を行うため、電流制御アンプ102の出力側のスイッチ105をオンして導通状態にし、電圧制御アンプ104の出力側のスイッチ105をオフして非導通状態にする。これにより、減算器101及び電流制御アンプ102によるCC制御にて生成される電流指令Icがゲート信号に変換され、パワー変換器110へ出力される。充電時には電池140の電池電圧は上昇し、放電時には電池電圧は下降する。
【0010】
そして、制御部は、充電時に、電圧検出器130からの電圧FBである電池電圧を監視し、電池電圧が充電電圧値になったことを検出すると、CC制御からCV制御に切り換えてCV制御を行うため、電流制御アンプ102の出力側のスイッチ105をオフして非導通状態にし、電圧制御アンプ104の出力側のスイッチ105をオンして導通状態にする。一方、制御部は、放電時に、電池電圧が放電電圧値になったことを検出すると、CC制御からCV制御に切り換えて制御を行うため、充電時と同様にスイッチ105をオンオフする。これにより、減算器103及び電圧制御アンプ104によるCV制御にて生成される電圧指令Vcがゲート信号に変換され、パワー変換器110へ出力される。
【0011】
電力制御回路100がCC制御を行う場合、減算器101は、所定の充電または放電電流値に設定された電流指令を入力すると共に、電流検出器120から電流FBを入力し、電流指令から電流FBを減算することで、電流偏差を算出する。そして、電流制御アンプ102は、減算器101により算出された電流偏差が0になるように、電流指令Icを生成する。生成された電流指令Icは、PWM回路(図からは省略)にてゲート信号に変換され、ゲート信号がパワー変換器110へ出力される。これにより、所定の電流指令を基準にしたCC制御が行われ、充電時には電池140の電池電圧は上昇し、放電時には電池電圧は下降する。
【0012】
電力制御回路100がCV制御を行う場合、減算器103は、充電時には所定の充電(上限)電圧値に設定された電圧指令を入力し、放電時には所定の放電(下限)電圧値に設定された電圧指令を入力すると共に、電圧検出器130から電圧FBを入力し、電圧指令から電圧FBを減算することで、電圧偏差を算出する。そして、電圧制御アンプ104は、減算器103により算出された電圧偏差が0になるように、電圧指令Vcを生成する。生成された電圧指令Vcは、電池140へ電力を供給するための電圧指令としてPWM回路にてゲート信号に変換され、ゲート信号がパワー変換器110へ出力される。これにより、所定の電圧指令を基準としたCV制御が行われ、充電時には充電電流は徐々に減少し、放電時には放電電流は徐々に減少する。
【0013】
制御部は、充電時に、充電を開始後に、所定時間経過した場合、またはCV制御に切り替わった後に所定時間経過し、電流が一定値以下になった場合、充電処理を停止する。または、制御部は、充電電力量(一般にはSOCと呼ばれる)が所定値になったときに、充電処理を停止する。一方、放電時にはCV制御を行っているときに、電池電圧が放電(下限)電圧にまで降下し、放電電流が一定値以下になったときに、または放電電力量が所定値になったときに、放電処理を停止する。
【0014】
図11は、従来技術の充電時における電流及び電圧等の特性を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は電流値、電圧値及び電力値を示す。この特性は、充電時のCC制御における充電電流、充電電圧及び充電電力の推移、並びに、CV制御に移行した後のCV制御における充電電流、充電電圧及び充電電力の推移を示している。一般に、充電電力(W)は、充電時に発生する損失を無視すれば、電池140へ供給される充電電流(A)と充電電圧(V)の積で表され、これに充電時間を乗算した結果が、電池140に蓄積される充電電力量である電力エネルギー(Wh)となる。
【0015】
充電時のCC制御では、電池140へ供給する電流が所定の電流指令である充電電流AHになるように、電流値一定に制御される。これにより、電池140の電池電圧(充電電圧)は上昇し、充電電力も短時間に増加する。
【0016】
そして、電池電圧が充電(上限)電圧VHになると、CC制御からCV制御に切り替わる。充電時のCV制御では、電池電圧が所定の電圧指令である充電(上限)電圧VHになるように、充電電流を減少させることで電池電圧は一定に制御される。これにより、電池電流が充電(上限)電流AHから減少し、併せて充電電力も減少する。そして、所定時間経過したとき、または充電電力量が所定値になったとき等を判定し、充電処理を停止する。
【0017】
図12は、従来技術の放電時における電流及び電圧等の特性を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は電流値、電圧値及び電力値を示す。この特性は、放電時のCC制御における放電電流、放電電圧及び放電電力の推移、並びに、CV制御に移行した後のCV制御における放電電流、放電電圧及び放電電力の推移を示している。尚、縦軸の電流値及び放電電流は、
図11に示した電流とは逆の極性である。後述する
図4に対する
図6、及び
図7に対する
図8も同様に、電流の極性は逆になる。一般に放電時に発生する損失を無視すると、放電電力(W)は、電池140から放出される放電電流(A)と放電電圧(V)の積で表され、これに放電時間を乗算した結果が、電池140から放電される放電電力量(Wh)となる。
【0018】
放電時のCC制御では、電池電流が所定の電流指令である放電(上限)電流AH(充電時とは極性を逆にした上限電流AH)になるように、電流一定値に制御される。これにより、電池140の電池電圧は充電(上限)電圧VHから減少し、放電電力も減少する。
【0019】
そして、電池電圧が放電(下限)電圧VLになると、CC制御からCV制御に切り替わる。放電時のCV制御では、電池電圧が所定の電圧指令である放電(下限)電圧VLになるように、電圧一定値に制御される。これにより、電池電流が放電(上限)電流AHから減少し、放電電力も減少する。そして、放電電力量が所定値になったときに、または放電電圧が所定値になったときに若しくは放電(下限)電圧になり放電電流が一定値以下になったときに、放電処理を停止する。
【0020】
図13は、従来技術のパルス方式を用いた場合の充電時における電流及び電圧等の特性を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は電流値、電圧値及び電力値を示す。この特性は、充電時のCC制御におけるパルス電流、充電電流(実効値)、パルス電圧、充電電圧(実効値)、パルス充電電力及び充電電力(実効値)の推移、並びに、CV制御に移行した後のCV制御におけるパルス電流、充電電流(実効値)、パルス電圧、充電電圧(実効値)、パルス充電電力及び充電電力(実効値)の推移を示している。
【0021】
図11に示した充電時の特性は、電池140へ一定の充電電流による電力及び一定の充電電圧による電力を供給したときの推移を示しているが、
図13に示す特性は、電池140へパルス電流による電力及びパルス電圧による電力を供給したときの推移を示すものである。
図13のパルス方式を用いた制御は、CC制御において充電電流の実効値が一定であり、CV制御において充電電圧の実効値が一定である点において、
図11に示した制御と同等であるといえる。
【0022】
このような充放電制御方式では、CC制御からCV制御に切り替えていたことから、充電時には、充電が進むに従って充電電流が減少し、放電時には、放電が進むに従って放電電流が減少してしまう。このため、充電時間及び放電時間が長くなるという問題があった。
【0023】
一般に、前述の充放電制御方式を用いてリチウムイオン電池等の電池を製造する装置では、生産、出荷時に充放電が繰り返し行われ、また、電池を開発する時だけでなく、電池の中古市場での評価試験の時にも、充放電が繰り返し行われるために充放電時間の短縮が望まれていた。
【0024】
このような問題を解決するために、充電時間を短縮するための技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。この技術では、充電装置が、所定電圧のパルス制御により大電流で充電する。具体的には、充電装置は、CC制御により、充電電圧が電圧V1になるまで一定電流で充電し、その後、電圧V1に規制したパルス制御によりパルス電圧で充電する。そして、充電装置は、電圧V1よりも低い電圧V2によるCV制御により、一定電圧で充電する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔充放電システム〕
まず、電池の充放電を行う充放電装置を含む充放電システムについて説明する。
図1は、本発明の実施形態による充放電装置を含む充放電システムの全体構成を示すブロック図である。この充放電システムは、商用電源(外部電源)1、充放電装置30、リアクタ14、コンデンサ15、コモンチョークコイル16、電流検出器17、電圧検出器18及び電池20を備えて構成される。
【0036】
充放電装置30は、リチウムイオン電池等の電池20の製造装置または試験装置等で、電池20の生産時及び評価時等に用いられる。充放電装置30は、絶縁トランス2、電源同期型コンバータ21及びDCDCコンバータ22を備えている。絶縁トランス2は、商用電源1と電源同期型コンバータ21との間で絶縁が必要な場合に設置される。
【0037】
電源同期型コンバータ21は、電源回生型のコンバータであり、商用電源1から絶縁トランス2を介して取得した交流電力を直流電力に変換する。一方、DCDCコンバータ22は、電源同期型コンバータ21により変換された直流電力を、電力制御回路12を介してCC制御及びCV制御による指令が反映されたゲート信号に従ってパワー変換し、当該指令に基づいた直流電力を電池20へ供給する。
【0038】
充放電装置30の電源同期型コンバータ21は、リアクタ3、パワー変換器4、リアクタ5、コンデンサ6、制御回路7、直流電源制御回路8、電流検出器9及び電圧検出器10を備えている。
【0039】
リアクタ3は、パワー変換器4により高周波にスイッチングすることで電池20への充電、または電池20からの放電エネルギ-等、充放電の電力エネルギーを蓄積、伝搬する役割を持つ。パワー変換器4は、商用電源1側の交流電力を直流電力に変換し、または、電池20側の直流電力を交流電力に逆変換する変換回路(回生コンバータ)である。リアクタ5及びコンデンサ6は、直流電力を平滑するために設置される。
【0040】
制御回路7は、商用電源1から供給された交流電力の電圧位相を検出する回路を具備し、パワー変換器4で電源回生機能を実現し、また他の制御用基板を駆動するための電源を生成する。直流電源制御回路8は、制御回路7から制御基板駆動用の電源が供給され、パワー変換器4から出力される電流を電流検出器9から取り込み、また電圧検出器10から電圧を取り込むことで、任意の電力変換を行うための演算回路等で構成され、パワー変換器4のパワー素子を駆動するためのゲート信号を生成する。
【0041】
DCDCコンバータ22は、電池20へ供給する電流及び電圧によって充電電力及び放電電力を任意に制御するための変換器であり、一般に、IGBT素子を採用した主回路と電力制御回路とにより構成される。さらに、DCDCコンバータ22は、パワー変換器11、電力制御回路12及びマイナーループ制御用の電流検出器13を備えている。
【0042】
パワー変換器11は、主回路用にIGBT素子を使用したパワー変換回路を備え、電力制御回路12により生成されたゲート信号に基づいて、電源同期型コンバータ21により生成された直流電力を、電池20の容量及び特性に応じた任意の直流電力に変換する。この場合、パワー変換器11は、任意の直流電力に対応する電流及び電圧を生成する。尚、パワー変換器11は、双方向型のコンバータであり、パワー変換器4から供給される電力を電池20に充電し、または充電時の電流方向とは反対向きの電流を流すことで電池20の電力を商用電源1に放出させる役割を担っている。
【0043】
電力制御回路12は、パワー変換器4から供給される電圧及び電流を検出して電力制御する回路、及び、パワー変換器4の出力電力を電池20に必要な電力に変換するためにパワー変換器11のIGBT素子のゲート回路を生成する機能を具備し、IGBT素子をスイッチングすることで所要の電力を得る回路により構成されている。また、電力制御回路12は、電流検出器13から電流制御の安定化を図るためのマイナーループ制御用の電流を取り込み、充放電電力制御用の電流検出器17から電流FBを入力すると共に、電圧検出器18から電圧FBを入力することで電力演算及び制御を可能にしている。そして、電力制御回路12は、後述する充放電制御を行うための電流指令Itrを生成し、電流検出器13から入力した電流を用いて、電流マイナーループで安定的な制御状態を得ると共に、IGBT素子をスイッチング駆動するためのゲート信号をPWM回路で生成し、生成したゲート信号をパワー変換器11に出力して所要の電力を得ている。
【0044】
充放電装置30と電池20との間に設置されたリアクタ14及びコンデンサ15は、パワー変換器11からの充電電流、または電池20からの放電電流を平滑化する。コモンチョークコイル16は、高周波スイッチングによる漏れ電流を抑制するために設置される。電流検出器17は、充電電流または放電電流である、電池20に流れる電流FBを検出する。電圧検出器18は、充電電圧または放電電圧である、電池20に供給する電圧FBを検出する。
【0045】
このように、電源同期型コンバータ21は、充電動作時には商用電源1からパワー変換器4を介して電池20へ充電するための電力を供給し、放電動作時にはDCDCコンバータ22を介して、電池20から放出される放電電力エネルギーを、パワー変換器4を介して商用電源1へ放出する回生制御の役割を有する、交流を直流へ、直流を交流へ変換する双方向型のコンバータである。一方、充放電装置30のDCDCコンバータ22は、充電動作時には電源同期型コンバータ21から供給された電力エネルギーを、パワー変換器11を介して任意の電力を電池20へ供給する役割と共に、放電動作時にはパワー変換器11を介して、電池20の電力を任意にパワー変換器4を経由して商用電源1へ放出する役割を有している。
【0046】
〔電力制御回路〕
次に、
図1に示した電力制御回路12について、実施例を挙げて詳細に説明する。以下に説明する実施例1は、電流制限器からの電流指令が反映されたゲート信号をパワー変換器へ出力する電力制御回路12において、CC制御を行った後に、電圧指令にパルス指令を加えたCV制御(以下、パルスCV制御といい、電圧指令にパルス指令を加えた結果をパルスCV電圧指令という。)を行い、電流制限器の上限値(電流制限値)を、パルスCV制御にて生成した電圧指令で変化させることにより、ゲート信号の元となる電流指令を上限値に追従させ、減少する充電電流または放電電流を、従来の減少曲線に対してパルス状にパルス指令分だけ大きくなるように変化させるものである。具体的には、電力制御回路12に備えた電圧制御アンプに、さらに電池20にて許容可能な微小な電圧範囲内で、すなわち電池20の定格電圧と電池20の許容最大電圧または許容最低電圧以内で、パルス波形を繰り返し与えることにより、充電時には、電池20へ供給する充電電流、充電電圧及び充電電力を増加させる。また、放電時には、電池20から放出する放電電流及び放電電力を増加させる。これにより、充放電の時間を短縮することができる。また、充電電流及び放電電流は、パルスCV制御時に、減少曲線に沿ってパルス状に減少するから、電池への負担の少ない充放電を実現することができる。
【0047】
実施例2は、実施例1におけるパルスCV制御の回路に積分器等を追加したものである。これにより、実施例1の効果に加え、パルスCV制御を一層安定的に動作させることができる。
【0048】
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、前述のとおり、CC制御を行った後に、電圧指令にパルス指令を加えたパルスCV電圧指令に基づくパルスCV制御を行うものである。
【0049】
(構成/実施例1)
まず、実施例1による電力制御回路12の構成について説明する。
図2は、その構成を示すブロック図である。この実施例1による電力制御回路12−1は、加減算器31、電圧制御アンプ32、減算器33、電流制御アンプ34、電流制限器35及びダイオード38を備えている。尚、
図2に示す電力制御回路12−1の構成は、充放電制御の特徴を説明するために必要な箇所のみを示しており、充放電制御の特徴に直接関係しない構成は省略してある。
【0050】
電力制御回路12−1は、充電時に、正極の充電電流値の電流指令を減算器33に与え、充電電圧値の電圧指令を加減算器31に与える。そして、電力制御回路12−1は、CC制御を行っているときに、電圧検出器18で検出した電圧FBである電池電圧(充電電圧)が所定の充電電圧VHになったときに、CC制御からパルスCV制御に切り替わる。CC制御は、減算器33及び電流制御アンプ34により生成される電流指令Icに基づいて行われ、パルスCV制御は、加減算器31及び電圧制御アンプ32により生成される電圧指令Vcに基づいて行われる。
【0051】
また、電力制御回路12−1は、放電時に、負極の放電電流値の電流指令を減算器33に与え、放電電圧値の電圧指令を加減算器31に与える。そして、電力制御回路12−1は、CC制御を行っているときに、電圧検出器18で検出した電圧FBである電池電圧(放電電圧)が所定の放電電圧VLになったときに、CC制御からパルスCV制御に切り替わる。充電時と同様に、CC制御は、減算器33及び電流制御アンプ34により生成される電流指令Icに基づいて行われ、パルスCV制御は、加減算器31及び電圧制御アンプ32により生成される電圧指令Vcに基づいて行われる。
【0052】
加減算器31は、所定の電圧指令及び所定のパルス指令を入力し、これらの指令を加算した加算信号(パルスCV電圧指令)を生成し、電池20の電圧検出器18から電圧FBを入力し、この2つの信号の演算結果から電圧偏差を算出して電圧制御アンプ32に入力する。
【0053】
充電時には、所定の電圧指令として電池20の充電電圧値の電圧指令が入力され、所定のパルス指令として正極の矩形波、三角波、正弦波等が入力される。放電時には、所定の電圧指令として電池20の放電電圧値の電圧指令が入力され、所定のパルス指令として負極の矩形波、三角波、正弦波等が入力される。
【0054】
電圧制御アンプ32は、加減算器31から電圧偏差を入力し、電圧偏差が0になるように電圧指令Vcを生成し、生成した電圧指令Vcを、ダイオード38を介して電流制限器35に出力する。電圧制御アンプ32から出力される電圧指令Vcは、電池20の電圧がパルスCV電圧指令に到達するまでは出力一定に維持され、電池20の電圧がパルスCV電圧指令に到達した後は積分的に大きな出力を発生するように設計されており、電流制限器35の上限値Hに反映される。
【0055】
ここで、CC制御を行っているときには、パルスCV電圧指令と電池20の電圧との差は徐々に0に近づくが、積分型の電圧制御アンプ32により生成される電圧指令Vcの出力は、加減算器31の結果が反転するまでは負極性で電池20への充電電流を増加させる方向へ飽和している。しかし、この充電電流を増加させる負極性の電圧指令Vcの出力は、内蔵された一方向性のダイオード38、またはソフト的に通過しないように設計されており、電流制限器35の上限値Hに影響を与えることはない。したがって、この場合の電流制限器35の上限値Hは、電流制限器35において電流制限がなされる値ではなく、電流指令Ic(電流制御アンプ34により出力される電流指令Ic)は、電流制限の影響を受けることなく出力される。
【0056】
これに対し、パルスCV充電は電池20の電圧がパルスCV電圧指令値に到達すると同時にCC制御から自動的にパルスCV制御に切り替える必要がある。このため、電圧制御アンプ32は、加減算器31が入力する電池20の電圧がパルスCV電圧指令値に到達し、出力が正極性に反転した瞬間から素早く、CC制御に優先してパルスCV制御を実行する。以降、電池20の電圧は、充電電流が供給されることでさらに上昇する指向性があるので、パルスCV制御を行っているときには、積分型の電圧制御アンプ32の電圧指令Vcは、正極性に反転後もさらに増加しようとする。結果、充電が進むにつれて電流制限器35の上限値Hの制限幅が拡大し、電流指令Icを抑制することでパルスCV電圧指令値を維持するように動作する。したがって、パルスCV制御を行っているときは、電圧指令Vcが反映された電流制限器35の上限値Hに基づいてゲート信号が生成され、パワー変換器11において電力変換が行われる。詳細については後述する。
【0057】
減算器33は、入力された所定の電流指令と、電流検出器17で検出した電池20へ充放電する際に発生する電流(FB)を比較するサミング回路である。この信号を比較演算することで得られた電流の微小偏差を電流制御アンプ34で入力して、目標値である電流指令Icに見合った電流を得るべくPI(比例積分)制御する。充電時には、所定の電流指令として正極の充電電流値の電流指令が入力され、放電時には、所定の電流指令として負極の放電電流値の電流指令が入力される。
【0058】
電流制御アンプ34は、減算器33で得られた電流の微小偏差信号を受けて、目標値である電流指令に見合った電流(電流指令Ic)を得るためのPI(比例積分)制御回路である。このPI制御回路は、電流指令と実際の電池20に流れる電流の偏差をゼロにするような制御信号を取り出す。この制御信号を用いることで電力制御回路12及びパワー変換回路11により、電池20へ供給する電流、電力を得ている。
【0059】
電流制限器35は、電流制御アンプ34の出力である電流指令Icと、電池20の電圧がパルスCV電圧指令値内に収まっているかを判断し、制御モードを自動選択する回路、電圧制御アンプ32の電圧指令Vcに基づいて電流指令Icを増減または抑制し、電池20の電圧を一定に維持する回路を有する。電流制限器35は、入力した電流指令Icと、設定した充電時の充電電圧に対応した上限値H及び予め設定された放電時の放電電圧に対応した下限値Lとを比較し、電流指令Icが上限値Hよりも小さくかつ下限値Lよりも大きい場合、入力した電流指令Icを電流指令Itrとしてそのまま出力してCC充放電する。一方、電池20の電圧がパルスCV電圧に到達もしくは超えた場合には、電圧制御アンプ32の出力である電圧指令Vcは正極性で電流制限器35に供給され、充電電流を引き下げる方向に作用する。したがって、電流指令Icは上限値H以下になるように抑制され、入力した電流指令Icに代えて上限値Hを電流指令Itrとして出力し、パルスCV充電へ移行する。この場合、上限値Hは電圧指令Vcに応じた値となる。尚、放電時は電流の極性が逆になるだけで電流指令(−)Ic及び上限値(−)Hとなる。
【0060】
つまり、電流制限器35は以下の処理を行う。電流制限器35には、充電時の充電電圧に対応した上限値H、及び放電時の放電電圧に対応した下限値Lが予め設定されており、電流制限器35は、電流制御アンプ34から電流指令Icを入力すると共に、電圧制御アンプ32からダイオード38を介して電圧指令Vcを入力し、電圧指令Vcに応じて上限値Hを変更する。そして、電流制限器35は、電流指令Icと上限値H及び下限値Lとを比較し、電流指令Icが上限値Hよりも小さくかつ下限値Lよりも大きい場合、入力した電流指令Icを電流指令Itrとしてそのまま出力する。一方、電流制限器35は、電流指令Icが上限値Hを超える場合、入力した電流指令Icに代えて上限値Hを電流指令Itrとして出力する。ここで、入力した電圧指令Vcが無信号の場合(電池20の電圧がパルスCV電圧に到達していないため、電圧制御アンプ32から負極性の電圧指令Vcが出力され、負極性の電圧指令Vcがダイオード38を通過しない場合)、電流制限器35は、上限値Hを変更しない。そして、電流指令Icが上限値Hよりも小さくかつ下限値Lよりも大きいから、入力した電流指令Icを電流指令Itrとしてそのまま出力する。これにより、CC制御による充放電が行われる。一方、入力した電圧指令Vcが無信号でない場合(電池20の電圧がパルスCV電圧に到達または超えているため、電圧制御アンプ32から正極性の電圧指令Vcが出力され、正極性の電圧指令Vcがダイオード38を通過した場合)、電流制限器35は、正極性の電圧指令Vcを入力し、この電圧指令Vcに応じて上限値Hを変更する。後述するように、上限値Hはパルス状に減少する値となる。そして、電流制限器35は、電流指令Icが変更した上限値Hを超えると、入力した電流指令Icに代えて上限値Hを電流指令Itr(予め設定された元の上限値H以下となる抑制された指令)として出力する。これにより、CCパルス制御による充放電が行われる。
【0061】
ここで、CC制御を行っているときには、電流制御アンプ34から入力した電流指令Icは、電圧制御アンプ32から入力した電圧指令Vcが反映された上限値Hよりも小さく、かつ下限Lよりも大きくなる。したがって、電流制限器35は、入力した電流指令Icを電流指令Itrとしてそのまま出力する。これにより、CC制御を行っているときには、従来技術と同様に、所定の電流指令に基づいた電流及び電圧の特性が得られる。これに対し、パルスCV制御を行っているときには、電流制御アンプ34から入力した電流指令Icは、電圧制御アンプ32から入力した電圧指令Vcが反映された上限値H以上となる。したがって、電流制限器35は、入力した電流指令Icに代えて上限値Hを電流指令Itrとして出力する。これにより、電流制限器35における上限値Hは所定のパルスCV電圧指令に基づいて設定されるから、パルスCV制御を行っているときには、従来技術とは異なり、所定のパルスCV電圧指令に基づいた電流及び電圧の特性が得られる。詳細については後述する。
【0062】
電力制御回路12−1は、電流制限器35から出力された電流指令Itrを補正信号として、パワー変換器11を制御するためのゲート信号を図示しないPWM回路にて生成し、ゲート信号をパワー変換器11に出力する。これにより、パワー変換器11は、CC制御において、所定の電流指令に基づいた電力変換を行う。また、パワー変換器11は、パルスCV制御において、所定のパルスCV電圧指令に基づいた電力変換を行う。つまり、パワー変換器11は、CC制御を行っているときに、所定の電流指令に基づいて、大容量の電流及び電圧による直流電力を生成し、パルスCV制御を行っているときには、所定のパルスCV電圧指令に基づいて、パルス指令がない場合の従来技術よりも大容量の電流及び電圧による直流電力を生成する。
【0063】
(実施例1の処理)
電力制御回路12−1の処理について説明する。
図3は、電力制御回路12−1の処理を示すフローチャートであり、
図4は、矩形波を重畳した場合の充電時における電圧及び電流等の特性を示す図であり、
図5は、矩形波を重畳した場合の充電時における電圧FB、電圧偏差、電圧指令Vc及び電流指令Itrの特性を示す図である。また、
図6は、矩形波を重畳した場合の放電時における電圧及び電流等の特性を示す図である。
【0064】
(充電処理)
まず、充電処理について説明する。オペレータによる充電開始の指示を受けると、電力制御回路12−1の図示しない制御部は、所定の電流指令として正極の充電電流AHの電流指令を設定し、所定の電圧指令として充電電圧VHの電圧指令を設定し、所定のパルス指令として正極の矩形波等のパルス指令を設定し、充電処理を開始する。
【0065】
電力制御回路12−1の電圧制御アンプ32は、加減算器31から電圧偏差を入力して電圧指令Vcを生成し、電流制御アンプ34は、減算器33から電流偏差を入力して電流指令Icを生成する。そして、電流制限器35は、電圧指令Vcに基づいて上限値Hを設定し、電流指令Icと上限値Hとを比較する。
【0066】
充放電装置30は、電池20に蓄えた電力エネルギーが少ない場合に、CC制御及びパルスCV制御による充電動作を開始する。
図3に示すようにステップ301〜305において、電力制御回路12−1は、パルスCV電圧指令(電圧指令にパルス指令を加算した指令)よりも電池20の電圧(電圧FB)が小さい場合、制御モードとしてCC制御を選択する。逆に、電池20の電圧がパルスCV電圧指令以上の場合、制御モードとしてパルスCV制御を選択する。ステップ301〜305の動作は連続的に繰り返される。CC制御では所定の電流指令として正極の指令を設定し、同時に上限値Hも設定する。所定の電流指令は電流制御アンプ34から電流指令Itcとして出力される。パルスCV電圧指令よりも電池20の電圧が小さい場合であれば電圧制御アンプ32の出力である電圧指令Vcは負極性となるから、電圧指令Vcは、
図2に示したダイオードにより電流制限器35ヘは供給されない。したがって、パルスCV電圧制御系の制限を受けることなくS302のルートで、Ic=Itcとしてパワー変換器11へ送られて電力(電流)を電池20へ供給する。電流制御アンプ34は、電流指令と電流検出器17からの電流FBとを比較し、これらの偏差がゼロになるように制御する。所謂、CC制御を行う。一方、電池20の電圧がパルスCV電圧指令以上の場合、ステップS301により自動的に制御モードとしてパルスCV制御を選択することになる。このパルスCV制御の制御モードでは、電圧制御アンプ32の出力である電圧指令Vcは正極特性となり積極的に電流指令を抑制する信号として電流制限器35に供給される。このため、電流制御アンプ34から出力された電流指令Icは、電流制限器35で電圧制御アンプ32の出力である電圧指令Vcの制限を受けて、上限値Hよりも低い値で変換器へ出力される。
【0067】
このように、ステップS301,ステップS302及びステップS304を繰り返すことで、電流指令Icに基づいたCC制御が行われる。
図4及び
図5(1)に示すように、充電時にCC制御を行っているときには、電圧FBである電池20の電圧は、所定の電圧指令である充電電圧VHよりも小さい。このため、加減算器31の偏差に基づく積分型の電圧制御アンプ32により出力される電圧指令Vcは負極性となり、正極性しか通さないように構成された今回の回路では電流制限器35に出力されることはなく、CC制御では電流指令に基づいた電流が電池20へ供給される。
【0068】
図3に戻って、ステップS301の処理は電圧制御アンプ32により行われ、電池20の電圧がパルスCV電圧指令よりも小さい場合はステップS302が選択され、一方、電池20の電圧がパルスCV電圧指令以上の場合にはステップS303が選択され、さらにステップS302またはステップS303の処理を経て、ステップS304の処理によりパワー変換器11が電池20へ電力を供給する。
【0069】
このように、ステップS301、ステップS302及びステップS304を繰り返すことでCC制御を、またステップS301、ステップS303及びステップS304を繰り返すことで、電圧指令Vcが反映された上限値Hに基づいたパルスCV制御が行われる。つまり、電圧指令Vcにて電流制限器35の出力を制限し電流指令Itrを制御することにより、パルスCV制御による電圧一定制御を行う。尚、電流制限器35において、電流制御アンプ34の出力である電圧指令Vcに電圧制御アンプ32の出力を加減算する方式の他、一定の比率を掛ける方式もある。
【0070】
この場合の電圧指令Vcには、充電電圧VHの電圧指令に重畳されたパルス指令が反映されている。
図4及び
図5(1)に示すように、充電時にパルスCV制御を行っているときには、電圧FBである電池20の充電電圧は、所定の電圧指令である充電電圧VHにパルス指令を加えた指令であるパルスCV電圧指令を維持するように制御され、加減算器31により出力される電圧偏差は、0を基準にしてパルス状に変化する。この場合、
図5(2)に示すように、電圧制御アンプ32により出力される電圧指令Vcは、減少曲線に沿ってパルス状に徐々に減少して0に近づき、
図5(3)に示すように、電圧制御アンプ32により出力される電圧指令Vcが反映された上限値Hも、減少曲線に沿ってパルス状に徐々に減少する。これにより、電流制限器35は、入力した電流指令Icを制限制御するかまたは上限値H以上であることを判定し、入力した電流指令Icの代わりに上限値Hを電流指令Itrとして出力する。
図4に示すように、パルスCV制御を行っているときには、充電電圧は、一定の電圧指令にパルスを加えた値に制御され、電流FBである充電電流は、上限電流AHから徐々に減少し、減少曲線に沿ってパルス状に下降する。充電電力も同様に下降する。
【0071】
尚、
図4に示すように、電池20を保護するために充電時には、電池20の最大電圧を維持する必要があり、パルスCV制御下でも充電電圧が電池20の最大電圧を超えた許容最大電圧VHHよりも高くならないように制御される。
【0072】
図3に戻って、制御部は、ステップS304から移行して、充電の停止条件を満たすか否かを判定し(ステップS305)、停止条件を満たすと判定した場合(ステップS305:Y)、充電を停止する。一方、制御部は、ステップS305において、停止条件を満たさないと判定した場合(ステップS305:N)、ステップS301へ移行する。
【0073】
前述のとおり、充電の停止条件は、例えば、充電が開始した後に所定時間経過していること、パルスCV制御に切り替わった後に所定時間経過していること、または、充電電力量が所定値になっていること等である。
【0074】
(放電処理)
次に、放電処理について説明する。オペレータによる放電開始の指示を受けると、電力制御回路12−1の図示しない制御部は、所定の電流指令として、充電時とは極性が逆である負極の上限電流AHの電流指令を設定する。負極の電流指令により、電流方向を充電時に対して逆にすることができる。また、制御部は、所定の電圧指令として下限電圧VLの電圧指令を設定し、所定のパルス指令として、充電時とは極性が逆である負極の矩形波等のパルス指令を設定し、放電処理を開始する。尚、この場合の加減算器31は、電圧指令から負極のパルス指令を加算し、加算結果から電圧FBを減算して電圧偏差を求める。電圧指令に負極のパルス指令を加算(以下、加算結果をパルスCV放電電圧指令という。)することは、電圧指令に正極のパルス指令(充電時のパルスCV電圧指令)を減算することと同じである。
【0075】
放電処理は充電処理と同様であり、
図3に示した処理が適用される。ステップS301〜ステップS304における電流指令Ic,Itr及び上限値Hは、充電時とは異なり極性が逆になる。したがって、
図5(4)及び
図6に示す電流指令Itr、上限値H及び放電電流AHも、充電時とは異なり極性が逆になる。上限値Hは負側の上限を示す。
【0076】
充放電装置30は、電池20に蓄えた電力エネルギーを外部で利用する場合に、CC制御及びパルスCV制御による放電動作を開始する。放電動作は、
図3に示したステップS301〜305において、電力制御回路12−1は、パルスCV電圧指令(電圧指令にパルス指令を加算した指令)よりも電池20の電圧(電圧FB)が大きい場合、制御モードとしてCC制御を選択する。逆に、電池20の電圧がパルスCV電圧指令以下の場合、制御モードとしてパルスCV制御を選択する。ステップS301〜305の動作は連続的に繰り返される。CC制御では所定の電流指令として負極の指令を設定し、同時に負極のレベルとして上限値Hも設定する。所定の電流指令は電流制御アンプ34から電流指令Itcとして出力される。パルスCV電圧指令よりも電池20の電圧が大きい場合であれば電圧制御アンプ32の出力である電圧指令Vcは負極性となるから、電圧指令Vcは、
図2に示したダイオードにより電流制限器35ヘは供給されない。したがって、パルスCV電圧制御系の制限を受けることなくステップS302のルートで、Ic=Itcとしてパワー変換器11へ送られて電力を電池20へ供給する。電流制御アンプ34は、電流指令と電流検出器17からの電流FBとを比較し、これらの偏差がゼロになるように制御する。所謂、CC制御を行う。一方、電池20の電圧がパルスCV電圧指令以下の場合、ステップS301により自動的に制御モードとしてパルスCV制御を選択することになる。このパルスCV制御の制御モードでは、電圧制御アンプ32の出力である電圧指令Vcは正極特性となり積極的に電流指令を抑制する信号として電流制限器35に供給される。このため、電流制御アンプ34から出力された電流指令Icは、電流制限器35で電圧制御アンプ32の出力である電圧指令Vcの制限を受けて、上限値Hよりも低い値で変換器へ出力される。
【0077】
このように、ステップS301,ステップS302及びステップS304を繰り返すことで、電流指令Icに基づいたCC制御が行われる。
図4及び
図5(1)に示すように、放電時にCC制御を行っているときには、電圧FBである電池20の電圧は、所定のパルスCV放電電圧指令である放電電圧VL−(マイナス)パルス分重畳電圧よりは大きい。このため、加減算器31の偏差に基づく積分型の電圧制御アンプ32により出力される電圧指令Vcは負極性となり、正極性しか通さないように構成された今回の回路では電流制限器35に出力されることはなく、CC制御では電流指令に基づいた電流が電池20から放出される。
【0078】
また、
図3のステップS301,ステップS303及びステップS304を繰り返すことで、電圧指令Vcが反映された上限値Hに基づいたパルスCV制御が行われる。この場合の電圧指令Vcには、放電電圧VLの電圧指令に重畳されたパルス指令が反映されている。
図6に示すように、パルスCV制御時には、電圧FBである放電電圧は、所定の電圧指令である下限電圧VLにパルス指令を加えた指令(パルスCV放電電圧指令)になるように制御され、加減算器31により出力される電圧偏差は、0を基準にしてパルス状に変化する。電圧制御アンプ32により出力される電圧指令Vcは、減少曲線に沿ってパルス状に徐々に減少して0に近づき、電圧制御アンプ32により出力される電圧指令Vcが反映された上限値Hも、減少曲線に沿ってパルス状に徐々に減少する。これにより、電流制限器35は、入力した電流指令Icが上限値H以上であることを判定し、入力した電流指令Icの代わりに上限値Hを電流指令Itrとして出力する。
図6に示すように、パルスCV制御時には、放電電圧は、一定の電圧指令にパルスを加えた値に制御され、電流FBである放電電流は、放電電流AHから減少曲線に沿って徐々にパルス状に下降する。
【0079】
尚、
図6に示すように、放電時には、電池20の最低電圧を維持する必要があり、少なくとも放電電圧が電池20の定格電圧を超えた許容最低電圧VLLよりも低くならないように制御される。
【0080】
また、
図3のステップS304において、放電の停止条件は、前述のとおり、例えば、パルスCV制御において、放電電流または電圧FBである電池20の電圧が所定値まで下降したこと、または放電電力量が所定値になっていること等である。
【0081】
以上の説明は、
図4及び
図6に示したように、矩形波のパルス指令を用いた場合の処理であるが、電力制御回路12−1は、矩形波以外のパルス指令を用いた場合も同様の処理を行う。
【0082】
図7は、正弦波を重畳した場合の充電時における電圧及び電流等の特性を示す図であり、
図8は、正弦波を重畳した場合の放電時における電圧及び電流等の特性を示す図である。
図7及び
図8に示す正弦波のパルス指令を用いる場合も、
図4及び
図6に示した矩形波のパルス指令を用いる場合と同様の特性となる。
【0083】
以上のように、実施例1による電力制御回路12−1を用いた充放電装置30によれば、電力制御回路12−1の加減算器31は、所定の電圧指令に所定のパルス指令を加算した新たな電圧指令(パルスCV電圧指令、パルスCV放電電圧指令)を生成し、電圧制御アンプ32は、新たなパルス指令が重畳した電圧指令に基づいた電圧指令Vcを生成し、電流制限器35は、電圧指令Vcを反映した上限値Hを設定するようにした。電力制御回路12−1は、減算器33及び電流制御アンプ34にて生成した電流指令Icを電流指令Itrとして、パワー変換器11を制御することでCC制御を行い、電流指令IcをパルスCV制御で上限値Hを制限して電流指令Itrを抑制し、パワー変換器11を制御することでパルスCV制御を行うようにした。これにより、パルスCV制御時に、電流指令Itrを電流制限器35の上限値Hに追従させ、減少する充電電流及び放電電流を減少曲線に沿ってパルス状に変化させることができる。この場合、パルス指令を重畳させない場合に比べ、充電電流、放電電流、充電電力及び放電電力をパルス状に増加させることができる。
【0084】
つまり、
図4及び
図6に示すように、パルスCV制御により、パルス指令に応じて充電電圧を許容最大電圧近くまで上昇させ、より大きな充電電流及び充電電力を電池20へ供給することができる。また、パルス指令に応じて放電電圧を許容最低電圧近くまで下降させ、より大きな放電電流及び放電電力を電池20から放出することができる。したがって、電池20の充放電時間を短縮することができ、効率的な充放電を実現することができる。
【0085】
また、スイッチング素子を用いることなくパルスCV制御を行うようにしたから、充電電流及び放電電流は0まで下がることがなく、減少曲線に沿ってパルス状に変化して減少する。したがって、電池20への負担の少ない充放電を実現することができ、切り替え時の損失に伴う発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0086】
充電電圧である上限電圧VH及び放電電圧である下限電圧VLは、電池20特有の特性電圧である。加減算器31に与える所定の電圧指令及び減算器33に与える所定の電流指令を電池20の仕様に応じた指令とすることにより、充放電電流を任意に制御することででき、所望の充放電制御を実現することができる。
【0087】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例2は、実施例1と同様に、CC制御を行った後に、電圧指令にパルス指令を加えたパルスCV制御を行うものであり、実施例1におけるパルスCV制御の回路に制御的な安定性を得るべく積分器等を追加したものである。
【0088】
図9は、実施例2による電力制御回路12の構成を示すブロック図である。この実施例2による電力制御回路12−2は、加減算器31、電圧制御アンプ32、減算器33、電流制御アンプ34、電流制限器35、積分器36、加算器37及びダイオード38を備えている。尚、
図9に示す電力制御回路12−2の構成は、充放電制御の特徴を説明するために必要な箇所のみを示しており、充放電制御の特徴に直接関係しない構成は省略してある。また、
図9において、
図2に示した電力制御回路12−1の構成と共通する部分には
図2と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0089】
積分器36は、電圧制御アンプ32から電圧指令Vcを入力し、電圧指令Vcの移動平均等の処理により平均値を算出する。加算器37は、電圧制御アンプ32から電圧指令Vcを入力すると共に、積分器36から平均値を入力し、電圧指令Vcに平均値を加算し、加算結果を新たな電圧指令Vcとして、ダイオード38を介して電流制限器35に出力する。
【0090】
これにより、電圧制御アンプ32が入力する電圧偏差に一層追従可能な新たな電圧指令Vcを生成することができ、充放電電圧特性を改善することができる。実施例2による充電処理及び放電処理は実施例1と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0091】
以上のように、実施例2による電力制御回路12−2を用いた充放電装置30によれば、実施例1の電力制御回路12−1における電圧制御アンプ32の後段に、積分器36及び加算器37を加えるようにした。これにより、電圧偏差に追従した新たな電圧指令Vcを生成することができ、充放電電圧特性を改善することができるから、実施例1の効果に加え、パルスCV制御を一層安定的に動作させることができる。
【0092】
以上、実施例1,2を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。前記実施例1,2による電力制御回路12−1,12−2では、
図2及び
図9に示したように、アナログ回路をベースに充放電制御を行っているが、コンピュータによるソフトウエアにて実現することも可能である。充放電装置30に備えた電力制御回路12−1,12−2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。電力制御回路12−1,12−2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。電力制御回路12−1に備えた加減算器31、電圧制御アンプ32、減算器33、電流制御アンプ34及び電流制限器35等は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。電力制御回路12−2に備えた加減算器31、電圧制御アンプ32、減算器33、電流制御アンプ34、電流制限器35、積分器36及び加算器37等も同様である。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。