(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伝達ギヤにヘリカル噛合した前記アイドルギヤのヘリカルねじれ方向は、前記エンジンが始動して前記リングギヤの回転数が前記駆動ギヤの回転数を上回ったときに、前記駆動ギヤを前記リングギヤ側に移動させる方向のスラスト荷重を発生するよう設定されていることを特徴とする請求項1に記載のスタータ。
前記アイドルシャフトは、前記ハウジングに、軸受を介し、前記アイドルシャフトの中心軸方向に移動自在、かつ前記中心軸周りに回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のスタータ。
前記アイドルシャフトまたは前記支持シャフトの少なくとも一方に、前記支持シャフトの先端部と前記穴との間の空間に連通する空気通路が形成されていることを特徴とする請求項8に記載のスタータ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態に係るスタータについて、図面を参照して説明をする。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態におけるスタータ1の断面図である。
図2は、スタータの斜視図、
図3は、スタータの概略構成を示す部品展開図である。
図4は、駆動ピニオンギヤでエンジンを始動している状態におけるスタータの断面図である。
図5は、シール部材を示す正面図および側断面図である。
図6は、シール部材の装着状態を示す断面図である。
図7は、スタータのレイアウト例を示す図である。
【0029】
図1に示すように、スタータ1は、不図示のエンジンの始動に必要な回転力を発生するためのものであって、モータ部3と、モータ部3の一方側(
図1における左側)に連結されているドライブシャフト4と、ドライブシャフト4上にスライド移動可能に設けられたクラッチ機構5と、ドライブシャフト4の回転力を不図示のエンジンのリングギヤ23に伝達するアイドルギヤユニット100と、モータ部3に対する電源供給路を開閉するスイッチユニット7と、スイッチユニット7の可動接点板8を軸方向に沿って移動させるための電磁装置9とを有している。
【0030】
モータ部3は、ブラシ付直流モータ51と、ブラシ付直流モータ51の回転軸52に連結され、この回転軸52の回転力をドライブシャフト4に伝達するための遊星歯車機構2とにより構成されている。
ブラシ付直流モータ51は、略円筒状のモータヨーク53と、モータヨーク53の径方向内側に配置され、モータヨーク53に対して回転自在に設けられているアーマチュア54とを有している。モータヨーク53の内周面には、複数(本実施形態では6個)の永久磁石57が、周方向に磁極が交互となるように設けられている。
【0031】
モータヨーク53の他方側(
図1における右側)の端部には、モータヨーク53の開口部53aを閉塞するエンドプレート55が設けられている。エンドプレート55の径方向中央には、回転軸52の他方側端を回転自在に支持するための滑り軸受56a、およびスラスト軸受56bが設けられている。
アーマチュア54は、回転軸52と、回転軸52の永久磁石57に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア58と、回転軸52のアーマチュアコア58よりも遊星歯車機構2側(
図1における左側)に外嵌固定されているコンミテータ61とにより構成されている。
【0032】
アーマチュアコア58は、放射状に形成された複数のティース(不図示)と、周方向に隣接する各ティース間に形成された複数のスロット(不図示)とを有している。周方向に所定間隔をあけた各スロット間には、コイル59が例えば波巻により巻装されている。コイル59の端末部は、コンミテータ61に向かって引き出されている。
【0033】
コンミテータ61には、複数枚(例えば、この実施形態では26枚)のセグメント62が周方向に沿って、かつ互いに電気的に絶縁されるように所定間隔を空けた状態で設けられている。
各セグメント62のアーマチュアコア58側端には、折り返すように曲折形成されたライザ63が設けられている。ライザ63には、アーマチュアコア58に巻装されているコイル59の端末部が接続されている。
【0034】
モータヨーク53のエンドプレート55とは反対側には、有底筒状のトッププレート12が設けられている。トッププレート12には、アーマチュアコア58側の内面に、遊星歯車機構2が設けられている。
遊星歯車機構2は、回転軸52と一体形成されたサンギヤ13と、サンギヤ13に噛合され、サンギヤ13を中心に公転する複数のプラネタリギヤ14と、これらプラネタリギヤ14の外周側に設けられた環状の内歯リングギヤ15とにより構成されている。
【0035】
複数のプラネタリギヤ14は、キャリアプレート16により連結されている。キャリアプレート16には、各プラネタリギヤ14に対応する位置に複数の支持シャフト16aが立設されており、ここにプラネタリギヤ14が回転自在に支持されている。また、キャリアプレート16の径方向中央には、ドライブシャフト4がセレーション係合により噛合っている。
【0036】
内歯リングギヤ15は、トッププレート12のアーマチュアコア58側の内面に一体成形されている。トッププレート12の内周面における径方向中央には、滑り軸受12aが設けられている。滑り軸受12aは、回転軸52と同軸上に配置されているドライブシャフト4の他方側端(
図1における右側端)を回転自在に支持している。
【0037】
また、トッププレート12には、不図示のエンジンにスタータ1を固定するためのハウジング17が装着されている。
図2、
図3に示すように、ハウジング17は、トッププレート12に固定され、一方側(
図1における左側)と他方側(
図1における右側)にそれぞれ開口部171a,171cを有する筒状ハウジング171と、筒状ハウジング171の一方側(
図1における左側)に装着されたギヤカバー172と、から構成されている。筒状ハウジング171,ギヤカバー172は、それぞれアルミニウム製で、ダイカスト鋳造にて形成されている。このハウジング17には、ドライブシャフト4とクラッチ機構5とアイドルギヤユニット100と電磁装置9等が内装されている。
【0038】
図1に示したように、筒状ハウジング171の開口部171a側には、トッププレート12が開口部171aを閉塞するように接合されている。
筒状ハウジング171の開口部171a側の外周面には、軸方向に沿うように雌ネジ部171bが刻設されている。また、モータヨーク53の他方側(
図1における右端側)に配置されたエンドプレート55には、雌ネジ部171bに対応する位置にボルト孔55aが形成されている。このボルト孔55aにボルト95を挿入し、雌ネジ部171bにボルト95を螺入することによって、モータ部3と筒状ハウジング171とが一体化される。
【0039】
筒状ハウジング171の内壁には、後述するクラッチアウタ18のモータ部3側への変位を規制するリング状のストッパ94が設けられている。このストッパ94は、樹脂やゴム等により形成され、クラッチアウタ18が当接した際の衝撃を緩和できるようになっている。
【0040】
図2、
図3に示すように、筒状ハウジング171の開口部171c側には、外周側に張り出したフロントブラケット部171tが一体的に形成されている。フロントブラケット部171tにおいて、ギヤカバー172に対向する側(
図1における左側)には、開口部171cの側方に、後述するアイドルシャフト102の一方の端部102aを挿入するシャフト孔174が形成されている。また、フロントブラケット部171tの外周部には、周方向に間隔をあけて複数のボルト挿通孔175が形成されている。
【0041】
図1に示すように、ギヤカバー172は、筒状ハウジング171に対向する側に、フロントブラケット部171tに接合される接合面172sを有している。接合面172sの外周部には、前記ボルト挿通孔175と合致する位置に不図示の雌ネジ孔が形成されている。フロントブラケット部171tのボルト挿通孔175に締結ボルト177を挿通させ、雌ネジ孔にねじ込むことによって、筒状ハウジング171とギヤカバー172とが一体に接合されている。
また、ギヤカバー172は、接合面172sに対して外周側に張り出した取付ブラケット部172tを有している。取付ブラケット部172tにはボルト挿通孔172bが複数形成され、不図示のエンジンや車体シャーシ等に固定できるようになっている。
【0042】
ギヤカバー172は、筒状ハウジング171に対向する側に開口して、クラッチ機構5および伝達ピニオンギヤ(伝達ギヤ)70と、後述するアイドルギヤ101を収容する収容凹部173が形成されている。
収容凹部173の底部173bには、ドライブシャフト4と同軸に、有底の軸受穴47が形成されている。また、収容凹部173の底部173bには、軸受穴47の側方に、後述するアイドルシャフト102が貫通するシャフト貫通孔179が形成されている。
【0043】
軸受穴47は、内径がドライブシャフト4の外径よりも大きく形成されている。軸受穴47には、ドライブシャフト4の一方側端(
図1における左側端)を回転自在に支持するための滑り軸受178が圧入固定されている。この滑り軸受178には所望の基油からなる潤滑油が含浸されており、ドライブシャフト4を円滑に摺接させることができるようになっている。
【0044】
また、軸受穴47の底部と、ドライブシャフト4の一方側端面4cとの間には、荷重受部材50が配置されている。
荷重受部材50は、平板状の金属部材であり、例えばプレスにより形成されたリング状のワッシャが採用される。荷重受部材50は、硬度がドライブシャフト4よりも高く耐摩耗性に優れた材料により形成されている。荷重受部材50の材料としては、例えばSK85等の炭素工具鋼が好適である。
【0045】
荷重受部材50を配置することにより、一方側(
図1における左側)に向かってドライブシャフト4にスラスト荷重が発生したときでも、ギヤカバー172に設けた荷重受部材50でドライブシャフト4の移動を規制しつつ、ドライブシャフト4のスラスト荷重を受けることができる。また、ドライブシャフト4の回転時には、ドライブシャフト4の一方側端面4cと荷重受部材50とが摺接するので、ドライブシャフト4の一方側端面4cとギヤカバー172とが直接摺接するのを防止できる。したがって、ギヤカバー172の摩耗を防止して耐久性に優れたスタータ1とすることができる。
【0046】
なお、荷重受部材50の周囲には、ドライブシャフト4の一方側端面4cとの摺接時の摩擦を軽減するためのグリスが塗布されるが、このグリスに、滑り軸受178に含浸される潤滑油と同種の基油を含むものが採用されているため、滑り軸受178の潤滑油を長期間保持できるようになっている。
【0047】
ドライブシャフト4の他方側端(
図1における右側端)には、回転軸52の一方側端(
図1における左側端)を挿入可能な凹部4aが形成されている。凹部4aの内周面には、滑り軸受4bが圧入されており、ドライブシャフト4と回転軸52とが相対回転可能に連結されるようになっている。
【0048】
(クラッチ機構)
ドライブシャフト4の軸方向略中央には、ヘリカルスプライン19が形成されている。ヘリカルスプライン19には、クラッチ機構5がヘリカル噛合されている。
クラッチ機構5は、略円筒状のクラッチアウタ18と、このクラッチアウタ18と同軸に形成されたクラッチインナ22と、クラッチアウタ18およびクラッチインナ22を一体的に固定するクラッチカバー6と、を有している。
【0049】
クラッチ機構5には、クラッチアウタ18側からの回転力はクラッチインナ22に動力を伝達するが、クラッチインナ22側からの回転力はクラッチアウタ18に伝達しない、所謂公知のワンウェイクラッチ機能が設けられている。これにより、エンジン始動時に、クラッチアウタ18よりもクラッチインナ22の方が速くなるオーバーラン状態になった際には、エンジンのリングギヤ23側からの回転力を遮断するように構成されている。また、クラッチ機構5は、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との間に生じるトルク差、および回転速度差が所定値以内の場合、互いに回転力を伝達する一方、トルク差および回転速度差が所定値を越えた場合、回転力の伝達が遮断される所謂トルクリミッタ機能も備えている。
【0050】
クラッチアウタ18の他方側(
図1における右側)には、縮径されたスリーブ18aが一体形成されており、この内周面に、ドライブシャフト4のヘリカルスプライン19に噛合するヘリカルスプライン18bが形成されている。これにより、クラッチ機構5は、ドライブシャフト4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられる。
クラッチアウタ18の内周面におけるスリーブ18aの一方側には、段部18cが形成されている。段部18cの内周面は、スリーブ18aの内周面よりも大径に形成されている。
クラッチアウタ18の外周面には、後述するクラッチカバー6が、例えばカシメ等により固定されている。
【0051】
クラッチインナ22は、クラッチアウタ18のスリーブ18aよりも拡径形成されており、クラッチインナ22および段部18cの内周面と、ドライブシャフト4との間には、空間が形成されている。この空間には、後述するリターンスプリング21が配置されている。
クラッチインナ22の外周面には、クラッチアウタ18の一方側端面と径方向で対応した位置に、略円盤状のクラッチワッシャ64が外嵌固定されている。
【0052】
クラッチカバー6は、本体筒部68と、本体筒部68の一方側(
図1における左側)の底壁66と、を有する有底筒状の部材であり、例えば鉄等の金属板材を絞り加工することにより形成されている。
本体筒部68は、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に外挿され、本体筒部68の他方側の縁部をクラッチアウタ18の他方側端面にカシメることにより、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に固定される。
底壁66の略中央には、一方側と他方側とを貫通する開口が形成され、この開口から軸方向の一方側に向かって延びる補強筒部67が形成されている。補強筒部67は、ドライブシャフト4と同心円状に形成され、ドライブシャフト4が挿通されている。
【0053】
ドライブシャフト4には、ヘリカルスプライン19よりも一方側(
図1における左側)に、移動規制部20が設けられている。
移動規制部20は、ドライブシャフト4に外嵌された略リング状の部材であり、サークリップ20aによって軸方向一方側への移動が規制された状態に設けられるとともに、クラッチアウタ18に形成された段部18cと干渉可能なように、段部18cの内周面よりも大径に形成されている。後述するようにクラッチ機構5が一方側にスライド移動したときには、クラッチアウタ18の段部18cと移動規制部20とが干渉する。これにより、クラッチ機構5の一方側へのスライド移動量が規制される。
【0054】
移動規制部20とクラッチアウタ18のスリーブ18aとの間であって、段部18cの内周面とドライブシャフト4の外周面との間には、ドライブシャフト4を取り囲むように形成されたリターンスプリング21が圧縮変形した状態で設けられている。これにより、クラッチアウタ18は、常時モータ部3側へ向かって押し戻されるように付勢された状態になる。
【0055】
このように形成されたクラッチ機構5には、クラッチインナ22の先端に、伝達ピニオンギヤ70が一体的に設けられている。
伝達ピニオンギヤ70は、ドライブシャフト4に摺動可能に外嵌されている筒部70aと、この外周面に一体成形され、後述のアイドルギヤ101に噛合される外歯車部70bとから形成されている。そして、筒部70aとクラッチインナ22とが一体成形されている。
【0056】
また、筒部70aの基端側であるクラッチ機構5側には、伝達ピニオンギヤ70の外歯車部70bとは軸方向に間隔をあけて外フランジ部73が一体成形されている。筒部70aの内周面の軸方向両側に、ドライブシャフト4に伝達ピニオンギヤ70を摺動可能に支持するための2つの滑り軸受72,72が設けられている。
【0057】
(アイドルギヤユニット)
アイドルギヤユニット100は、ドライブシャフト4と平行に配置されたアイドルシャフト102と、アイドルシャフト102の軸方向中間部に一体に形成され、伝達ピニオンギヤ70に噛み合うアイドルギヤ101と、アイドルシャフト102の他方の端部102bに設けられ、エンジン(不図示)のリングギヤ23に噛合可能な駆動ピニオンギヤ(駆動ギヤ)110と、を備えている。
【0058】
アイドルギヤ101は、アイドルシャフト102の外周面に一体成形され、アイドルシャフト102から外周側に拡径して形成され、その外周面に、外歯車部101bが形成されている。
【0059】
アイドルギヤ101および伝達ピニオンギヤ70は、ヘリカルギヤ(はすば歯車)で構成されている。アイドルギヤ101の歯のねじれ方向は、後述の駆動ピニオンギヤ110の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている一方、伝達ピニオンギヤ70の歯のねじれ方向は、リングギヤ23の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている。
【0060】
アイドルシャフト102は、一方の端部102aが筒状ハウジング171のフロントブラケット部171tに形成されたシャフト孔174に、滑り軸受103を介して、回転自在、かつ軸方向(スラスト方向)に移動自在に支持されている。また、アイドルシャフト102は、シャフト貫通孔179を貫通して、他方の端部102bが、ギヤカバー172の外方に突出している。シャフト貫通孔179の内周面には、ボールベアリング180が設けられ、アイドルシャフト102は、アイドルギヤ101と他方の端部102bとの間においてボールベアリング180により軸周りに回転自在に支持されている。
【0061】
アイドルシャフト102の外周部には、アイドルギヤ101に対してクラッチ機構5側に、円板状のアイドルワッシャ104が外嵌されている。アイドルワッシャ104のクラッチ機構5側への抜け方向への移動は、アイドルシャフト102に取り付けられている止め輪105によって規制されている。また、アイドルワッシャ104の外径は、外歯車部101bの外径と略同一になるように設定されている。さらに、アイドルワッシャ104は、その外周部が、伝達ピニオンギヤ70の外歯車部70bと外フランジ部73との環状の隙間に挿入されている。これにより、アイドルギヤ101を有したアイドルシャフト102は、アイドルワッシャ104を介して、伝達ピニオンギヤ70と共に、軸方向に追従して移動可能となっている。
ここで、アイドルワッシャ104は、伝達ピニオンギヤ70とアイドルギヤ101との間の摺動性を向上させるための役割を有しており、潤滑剤としてのグリス等が塗布されている。
【0062】
また、アイドルシャフト102において、ボールベアリング180に挿通された部分よりもアイドルギヤ101側には、その外径が拡径することによって段差部102dが形成されている。
図4に示すように、この段差部102dがボールベアリング180に突き当たることによって、アイドルシャフト102の、駆動ピニオンギヤ110側への移動量が規制されている。
【0063】
アイドルシャフト102の端部102bがギヤカバー172から外部に露出するシャフト貫通孔179には、シャフト貫通孔179の底部179bとボールベアリング180との間に、シール部材190が設けられている。
図5、
図6に示すように、シール部材190は、弾性を有するゴム材により形成されたものであって、ボールベアリング180の先端に接触するように形成されたリング部191と、リング部191の内周縁に一体形成されたリップ部192とにより構成されている。
【0064】
リング部191は、外径がシャフト貫通孔179の内径と略同一に設定されている。そして、リング部191の両面には、軸方向平面視で略円環状の凸条部193が突出形成されている。この凸条部193は、ボールベアリング180とシャフト貫通孔179の底部179bに押し当てることにより圧縮変形し、ボールベアリング180とシャフト貫通孔179の底部179bとの間におけるシール性を高め、外部からスタータ1の内部への水分や異物の侵入を防止するためのものである。
【0065】
また、リング部191の内周縁に一体成形されているリップ部192は、リング部191の内周縁から径方向内側に向かうに従って漸次アイドルシャフト102の他端側(
図1における左側)、つまり駆動ピニオンギヤ110の進行方向前方に向かうように斜めに延出形成されている。
リップ部192は、その内径d3がアイドルシャフト102の外径よりも若干小さくなるよう設定されている。
【0066】
リップ部192の内周縁には、断面略円形状の小リング部194が一体成形され、この小リング部194がアイドルシャフト102の外周面に摺接している。小リング部194は断面略円形状に形成されているので、換言すれば小リング部194は、この内径が駆動ピニオンギヤ110の進行方向前方に向かうに従って漸次拡径するように形成されていることになる。
また、小リング部194の外表面には、不図示のフッ素樹脂コートが形成されている。このフッ素樹脂コートにより、シール部材190とアイドルシャフト102との摺動摩擦抵抗が低減される。
【0067】
図1に示すように、アイドルシャフト102において、シャフト貫通孔179を貫通してギヤカバー172の外方に突出した他方の端部102bの外周面には、スプライン108が形成されている。駆動ピニオンギヤ110の内周面の先端側には、スプライン108にスプライン110aが形成されている。アイドルシャフト102側のスプライン108は、駆動ピニオンギヤ110のスプライン110aよりも軸方向に長く、これにより、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110とは、互いに相対回転不能かつ軸方向にスライド移動可能に設けられた状態になる。
【0068】
また、アイドルシャフト102には、スプライン108よりも他方側に、スプライン108側よりも拡径した段差部102cが形成されている。
一方、駆動ピニオンギヤ110の他方側(
図1における右側)の端面には、他方側に向かって延びる延長筒部110dが設けられている。延長筒部110dは、アイドルシャフト102と同心円状に形成されている。延長筒部110dは、駆動ピニオンギヤ110が軸方向の他方側(
図1における右側)にスライド移動したとき、段差部102cと当接可能となっている。すなわち、駆動ピニオンギヤ110がアイドルシャフト102に対して軸方向にスライド移動したとき、延長筒部110dが段差部102cに突き当たることで、駆動ピニオンギヤ110の他方側への移動を規制する。
【0069】
アイドルシャフト102の端部102bには、アイドルシャフト102に外嵌固定された止め輪106が設けられている。これにより、駆動ピニオンギヤ110が、アイドルシャフト102に対してアイドルシャフト102の一方側に抜けるのを規制している。
【0070】
ここで、駆動ピニオンギヤ110は、外歯車部110gのピッチ径D1が、アイドルギヤ101の外歯車部101bのピッチ径D2に対し、
D1≦D2
を満足するように設定するのが好ましい。
さらには、
D1<D2
を満足するように設定するのが好ましい。
外歯車部110gのピッチ径D1よりもアイドルギヤ101の外歯車部101bのピッチ径D2が大きいと、外歯車部101bで得られるトルクが、駆動ピニオンギヤ110から出力されるトルクよりも大きくなる。つまり、アイドルギヤ101側、つまりドライブシャフト4側から駆動ピニオンギヤ110へのトルク伝達が効率良く行うことができる。
【0071】
リングギヤ23および駆動ピニオンギヤ110は、ヘリカルギヤで構成されており、リングギヤ23と駆動ピニオンギヤ110との歯のねじれ方向は、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23を駆動する状態で、駆動ピニオンギヤ110に、リングギヤ23に対して飛び込み方向のスラスト荷重が発生するように設定されている。
【0072】
また、エンジン始動時におけるクランキングの際には、リングギヤ23の回転速度に変動が生じやすい。ここで、ヘリカル噛合している駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23との間に回転速度差が発生すると、駆動ピニオンギヤ110にかかるスラスト荷重の向きが変化する。
リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも低いときには、駆動ピニオンギヤ110にはリングギヤ23に接近する方向にスラスト荷重が発生するようになっている。また、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも高いときには、駆動ピニオンギヤ110にはリングギヤ23から離反する方向(
図1において右方)にスラスト荷重が発生する。
【0073】
しかし、この場合、アイドルギヤ101の回転速度が伝達ピニオンギヤ70の回転速度よりも高いため、アイドルギヤ101には伝達ピニオンギヤ70から、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23から作用するスラスト荷重とは反対方向のスラスト荷重が作用する。このため、駆動ピニオンギヤ110に作用する、リングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重が相殺されるようになっている。すなわち、アイドルギヤ101の歯のねじれ方向は、駆動ピニオンギヤ110の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている一方、伝達ピニオンギヤ70の歯のねじれ方向は、リングギヤ23の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されているので、駆動ピニオンギヤ110で発生するスラスト荷重の方向と、アイドルギヤ101で発生するスラスト荷重の方向が逆になり、両者のスラスト荷重が相殺されるようになっている。
このとき、駆動ピニオンギヤ110の離反する方向へのスラスト荷重が、アイドルギヤ101に作用する反対方向へのスラスト荷重よりも大きくなるよう設定するのが好ましい。さらに、駆動ピニオンギヤ110の離反する方向へのスラスト荷重は、電磁装置9による吸引力よりも小さいのが好ましい。
【0074】
駆動ピニオンギヤ110の内周面には、スプライン110aの後端側に、段差部110bを介して拡径された拡径部111が形成されており、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110との間に収納部112が形成されるようになっている。
収納部112においてアイドルギヤ101側に形成されている開口部は、アイドルシャフト102のスプライン108におけるアイドルギヤ101側の端部に拡径して設けられた段差部102eによって閉塞された状態になっている。
【0075】
収納部112には、アイドルシャフト102の外周面を取り囲むように形成されたピニオンスプリング113が収納されている。ピニオンスプリング113は、例えばコイルスプリングからなる。
ピニオンスプリング113は、収納部112に収納された状態で、駆動ピニオンギヤ110の拡径部111の段差部110bと、アイドルシャフト102の段差部102eとにより圧縮変形されている。これにより駆動ピニオンギヤ110は、アイドルシャフト102に対してリングギヤ23側に向かって付勢された状態になる。
ピニオンスプリング113は、後述するように、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが当接したときに軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収する、ダンパ機構として機能している。これにより、駆動ピニオンギヤ110およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、スタータ1の耐久性向上を図っている。
【0076】
(電磁装置)
ハウジング17の内周面には、クラッチ機構5よりもモータ部3側に、電磁装置9を構成するヨーク25が内嵌固定されている。ヨーク25は磁性材からなる有底筒状に形成されており、底部25aの径方向中央の大部分が大きく開口されている。
また、ヨーク25の底部25aとは反対側端には、磁性材からなる円環状のプランジャホルダ26が設けられている。プランジャホルダ26の径方向内側は、軸方向の他方側に向かって延出された円筒部26aとなっている。これにより、後述するギヤプランジャ80の鉄心88との離間距離が狭くなるので、プランジャホルダ26による鉄心88の吸引力(以下、単に「吸引力」ということがある。)を上げることができる。
ヨーク25、およびプランジャホルダ26によって径方向内側に形成される収納凹部25bには、略円筒状に形成された励磁コイル24が収納されている。励磁コイル24は、コネクタを介してイグニションスイッチ(何れも不図示)に電気的に接続されている。
【0077】
励磁コイル24の内周面とドライブシャフト4の外周面との間の空隙には、プランジャ機構37が励磁コイル24に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
プランジャ機構37は、磁性材で形成された略円筒状のスイッチプランジャ27と、このスイッチプランジャ27とドライブシャフト4の外周面との間の空隙に配置されたギヤプランジャ80とを有している。これらスイッチプランジャ27とギヤプランジャ80とは、互いに同心円上に設けられ、軸方向に相対移動可能に設けられている。また、プランジャホルダ26とスイッチプランジャ27との間には、両者を離反方向に付勢する板ばね材からなるスイッチリターンスプリング27aが配設されている。
【0078】
スイッチプランジャ27のモータ部3側端には、外フランジ部29が一体成形されている。この外フランジ部29の外周部側には、スイッチシャフト30がホルダ部材30aを介して軸方向に沿って立設されている。このスイッチシャフト30は、モータ部3のトッププレート12および後述するブラシホルダ33を貫通している。スイッチシャフト30のトッププレート12から突出した端部には、ブラシ付直流モータ51のコンミテータ61に隣接配置された、スイッチユニット7の可動接点板8が連結されている。
【0079】
可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向に沿ってスライド移動可能に取り付けられていると共に、スイッチスプリング32によって浮動的に支持されている。そして、可動接点板8は、後述のブラシホルダ33に固定されている、スイッチユニット7の固定接点板34に対して接近離反可能になっている。
【0080】
固定接点板34は、スイッチシャフト30を挟んでコンミテータ61側である径方向内側に配置された第一固定接点板34aと、コンミテータ61とは反対側である径方向外側に配置された第二固定接点板34bとに分割構成されている。これら第一固定接点板34a、および第二固定接点板34bに、可動接点板8が跨るように当接するようになっている。可動接点板8がドライブシャフト4に沿ってストロークし、第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bに当接することにより、第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bがON状態となって電気的に接続される。
【0081】
また、スイッチプランジャ27の内周面には、後述するギヤプランジャ80と当接および離反するリング部材27rが一体的に設けられている。リング部材27rは、スイッチプランジャ27がリングギヤ23側へ向かって移動する際、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧するためのものである。
【0082】
クラッチ機構5のクラッチアウタ18は、リターンスプリング21によりプランジャインナ81へ向かって付勢されている。したがって、スタータ1の静止状態(
図1参照)において、クラッチ機構5は、ギヤプランジャ80およびリング部材27rを介して、スイッチプランジャ27を他方側(
図1における右側)に押圧している。これにより、可動接点板8は他方側に押圧されて、固定接点板34と離反したOFF状態となっている。
【0083】
電磁装置9が伝達ピニオンギヤ70と可動接点板8とを一方側(
図1における左側)にスライド移動させると、可動接点板8がON状態となるとともに、伝達ピニオンギヤ70がリングギヤ23に当接する。
【0084】
スイッチプランジャ27の径方向内側に配置されたギヤプランジャ80は、径方向内側に配置されたプランジャインナ81と、径方向外側に配置されたプランジャアウタ85と、プランジャインナ81とプランジャアウタ85との間に配置されるプランジャスプリング91と、を備えている。
プランジャインナ81は、樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャインナ81の内径は、ドライブシャフト4に外挿可能なように、ドライブシャフト4の外径よりも若干大きく形成されている。これにより、プランジャインナ81は、ドライブシャフト4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
【0085】
プランジャインナ81の一方側端81a(
図1における左側端)は、径方向外側に張り出した外フランジ部82が一体的に形成されている。後述するようにプランジャインナ81が一方側にスライド移動したとき、プランジャインナ81の一方側端81aがクラッチアウタ18の他方側端と当接し、クラッチ機構5および伝達ピニオンギヤ70を一方側にスライド移動させている。
プランジャインナ81の他方側端81b(
図1における右側端)は、他方側から一方側に向かって漸次外径が大きくなる爪部83が周方向に複数個所設けられている。また、爪部83の一方側(
図1における左側)には、周方向に沿って溝部84が形成されている。
【0086】
プランジャアウタ85は、プランジャインナ81と同様に樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャアウタ85の内径は、プランジャインナ81の外フランジ部82の外径よりも若干大きく形成されており、プランジャインナ81に外挿されている。
プランジャアウタ85の他方側端85a(
図1における右側端)には、径方向内側に張り出した内フランジ部86が一体的に形成されている。内フランジ部86の内径は、プランジャインナ81の爪部83の外径よりも小さく、かつプランジャインナ81の溝部84の底部の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、プランジャインナ81の溝部84内にプランジャアウタ85の内フランジ部86を配置することで、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とが一体化され、プランジャ機構37が構成される。
【0087】
プランジャアウタ85の内フランジ部86の厚さは、プランジャインナ81の溝部84の幅よりも薄く形成されている。これにより、プランジャアウタ85の内フランジ部86とプランジャインナ81の溝部84との間にはクリアランスが設けられる。したがって、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とは、プランジャアウタ85の内フランジ部86とプランジャインナ81の溝部84とのクリアランス分だけ、軸方向に相対的にスライド移動可能となっている。
【0088】
プランジャアウタ85の他方側端85a(
図1における右側端)には、径方向外側に張り出した外フランジ部87が一体的に形成されている。外フランジ部87は、スイッチプランジャ27のリング部材27rと当接する当接部として機能している。
また、外フランジ部87の一方側(
図1における左側)であって、プランジャアウタ85の外周面には、リング状の鉄心88が設けられている。鉄心88は、例えば樹脂モールドにより、プランジャアウタ85と一体成型されている。鉄心88は、後述するように励磁コイル24に電流が供給されたときに発生する磁束により、所定の吸引力で電磁装置9に吸引される。
【0089】
プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86との間には、収納部90が形成されている。収納部90には、プランジャインナ81の外周面を取り囲むように形成されたプランジャスプリング91が収納されている。
プランジャスプリング91は、収納部90に収納された状態で、プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86とにより圧縮変形させられている。そして、プランジャインナ81は一方側(
図1における左側)に向かって、プランジャアウタ85は他方側(
図1における右側)に向かって、互いに付勢された状態となっている。
【0090】
これにより、プランジャスプリング91により、プランジャインナ81は一方側(
図1における左側)に向かって、プランジャアウタ85は他方側(
図1における右側)に向かって、互いに付勢されており、プランジャインナ81の一方側端81aとクラッチアウタ18の他方側端とは接しておらず、これにより、クラッチアウタ18はリターンスプリング21のばね荷重によって、ストッパ94に押し付けられた状態となっている。これにより、スタータ1の静止状態では、プランジャスプリング91のばね荷重によって、クラッチ機構5を押出さない、つまり、伝達ピニオンギヤ70を不用意に押出さないように設定されている。
【0091】
また、
図4に示すように、スタータ1の通電状態では、ギヤプランジャ80が一方側(
図4における左側)に最大変位したとき、プランジャインナ81の一方側端81aは常にクラッチ機構5のクラッチアウタ18の他方側端と当接した状態となっている。
すなわち、プランジャスプリング91は、クラッチ機構5とギヤプランジャ80との間における軸方向の空隙の発生を防止し、クラッチ機構5のガタつきを吸収するガタ吸収機構を構成している。
【0092】
電磁装置9および遊星歯車機構2よりも他方側(
図1における右側)には、ブラシホルダ33が設けられている。ここで、第二固定接点板34bの外周側には、軸方向に折曲して一体形成された切起し部34cが設けられ、この切起し部34cの挿通孔を介して軸端子44aがブラシホルダ33の外壁33aを貫通してスタータ1の径方向外側に突出するよう設けられている。さらに、軸端子44aの突出側の先端には、バッテリの陽極が電気的に接続されるターミナルボルト44bが設けられている。
【0093】
なお、このブラシホルダ33には、固定接点板34、スイッチシャフト30周りを保護するカバー45が装着されている。ブラシホルダ33およびカバー45は、モータヨーク53および筒状ハウジング171に挟持された状態で固定されている。ブラシホルダ33には、コンミテータ61の周囲に4個のブラシ41が、径方向に沿って進退可能に配置されている。
各ブラシ41の基端側には、ブラシスプリング42が設けられている。このブラシスプリング42によって、各ブラシ41がコンミテータ61側に向かって付勢され、各ブラシ41の先端がコンミテータ61のセグメント62に摺接するようになっている。
【0094】
4個のブラシ41は、2個の陽極側ブラシと2個の陰極側ブラシとで構成され、このうち2個の陽極側ブラシが不図示のピグテールを介して固定接点板34の第一固定接点板34aに接続されている。一方、固定接点板34の第二固定接点板34bには、ターミナルボルト44bを介して不図示のバッテリの陽極が電気的に接続される。
【0095】
すなわち、固定接点板34に可動接点板8が当接した際、ターミナルボルト44b、固定接点板34およびピグテール(不図示)を介して4個のブラシ41のうちの2個の陽極側ブラシに電圧が印加され、コイル59に電流が供給されるようになっている。
【0096】
また、4個のブラシ41のうち、2個の陰極側ブラシは、不図示のピグテールを介してリング状のセンタープレートに接続されている。そして、このセンタープレート、ハウジング17、および不図示の車体を介して、バッテリの陰極に4個のブラシ41のうちの2個の陰極側ブラシが電気的に接続されるようになっている。
【0097】
(スタータの動作)
続いて、図面を用いてスタータ1の動作について説明をする。
図1に示すように、励磁コイル24に電流を供給する前のスタータ1の静止状態にあっては、リターンスプリング21に付勢されたクラッチアウタ18が、伝達ピニオンギヤ70と一体化されているクラッチインナ22を引っ張った状態で、モータ部3側(
図1における右側)へ一杯に付勢されている。そして、クラッチ機構5のクラッチアウタ18がストッパ94に当接した位置で停止している。これに伴い、伝達ピニオンギヤ70に噛み合ったアイドルギヤ101を有するアイドルギヤユニット100は、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが離反した状態で結合が断たれている。
【0098】
また、スイッチプランジャ27は、スイッチリターンスプリング27aにより押し戻され、モータ部3側(
図1における右側)へ一杯に移動している。そして、スイッチプランジャ27の外フランジ部29がトッププレート12に当接した状態で停止している。さらに、外フランジ部29に立設されているスイッチシャフト30の可動接点板8は、固定接点板34に対して離間しており、電気的に切断されている。
【0099】
この状態から車両のイグニションスイッチ(不図示)をオンすると、励磁コイル24に電流が供給されて励磁され、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80を磁束が通る磁路が形成される。これにより、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。
このとき、スイッチプランジャ27の内周面にリング部材27rが一体的に設けられていることから、このリング部材27rがギヤプランジャ80を押圧し、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧することで、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80とが一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。
【0100】
また、クラッチアウタ18は、ドライブシャフト4にヘリカルスプライン噛合されており、スリーブ18aがギヤプランジャ80のプランジャインナ81と当接している。したがって、クラッチアウタ18は、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側へスライド移動すると、ドライブシャフト4に対して、ヘリカルスプライン18bの傾斜角度分、若干相対回転しながら押出される。さらに、伝達ピニオンギヤ70とアイドルギヤユニット100も、クラッチ機構5を介してギヤプランジャ80のスライド移動に連動し、リングギヤ23側へ押出される。
【0101】
さらにスイッチプランジャ27がリングギヤ23側へ向かって移動すると、外フランジ部29、およびスイッチシャフト30を介して可動接点板8が固定接点板34側に向かって移動し、固定接点板34に接触する。可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向変位可能に浮動支持されているので、スイッチスプリング32の押圧力が可動接点板8および固定接点板34に加わることになる。
【0102】
固定接点板34に可動接点板8が接触すると、4個のブラシ41のうちの2個の陽極側ブラシにバッテリ(不図示)の電圧が印加され、コンミテータ61のセグメント62を介してコイル59が通電される。
すると、アーマチュアコア58に磁界が発生し、この磁界とモータヨーク53に設けられている永久磁石57との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、アーマチュア54が回転し始める。そして、アーマチュア54が回転することにより、このアーマチュア54の回転軸52の回転力(モータ部3の回転力)が遊星歯車機構2を介してドライブシャフト4に伝達され、ドライブシャフト4が回転し始める。
【0103】
ドライブシャフト4が回転することにより、ドライブシャフト4のヘリカルスプライン19に噛合うクラッチアウタ18が連れ回り、クラッチ機構5に慣性力が作用する。そして、慣性力によってクラッチ機構5がヘリカルスプライン19に沿うようにリングギヤ23側へ向かって押し出される。ここで、ギヤプランジャ28には、リングギヤ23側へ向かう力が作用しているので、クラッチ機構5の移動に伴ってギヤプランジャ28もリングギヤ23側へ向かって移動する。
【0104】
クラッチ機構5がリングギヤ23側へ向かって押し出されることにより、クラッチ機構5と一体化している伝達ピニオンギヤ70に連動してアイドルギヤ101がリングギヤ23側へと回転しながら押し出される。すると、アイドルシャフト102の端部102bに設けられた駆動ピニオンギヤ110も、アイドルギヤ101と一体に、リングギヤ23側へと回転しながら押し出される。
【0105】
駆動ピニオンギヤ110が回転し始めると、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fとリングギヤ23の他方側端面23aとが当接していた場合には、その当接状態が解除され、各ギヤ同士が噛合される。そして、
図4に示すように、ピニオンスプリング113の付勢力により、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23側に押出され、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが噛合し始める。
【0106】
このとき、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fとリングギヤ23の他方側端面23aとは、互いに当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となっている。このため、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fとリングギヤ23の他方側端面23aとが互いに当接していた場合には、駆動ピニオンギヤ110がさらに押出されると、ピニオンスプリング113が縮む。これにより、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fは、リングギヤ23の他方側端面23aに向かって付勢される。
【0107】
すなわち、ピニオンスプリング113は、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが当接したときのスラスト荷重を吸収するダンパ機構を構成している。したがって、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fとリングギヤ23の他方側端面23aとが互いに当接していた状態であっても、スイッチプランジャ27を所定の位置にまで押出すことができるとともに、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fおよびリングギヤ23の他方側端面23aの摩耗を抑制でき、スタータ1の耐久性向上を図ることができる。
【0108】
このとき、前述のように、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とがヘリカル噛合していることから、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23方向(飛び込み方向)へのスラスト荷重が発生する。そして、このスラスト荷重によって駆動ピニオンギヤ110はリングギヤ23側(
図4における左側)へ向かって移動する。また、クラッチアウタ18も、慣性力によってヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側へ向かって押し出される。
【0109】
このとき、ギヤプランジャ80には、リングギヤ23側へ向かう所定の吸引力が作用している。したがって、ギヤプランジャ80は、クラッチアウタ18のスライド移動に連動するように、クラッチアウタ18を押圧しつつリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。このようにして、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23側に押し出され、リングギヤ23が所定の噛み合い位置で噛合する。
このようにしてリングギヤ23と駆動ピニオンギヤ110が噛合い、ドライブシャフト4の回転力がリングギヤ23に伝達されることによって、エンジンが始動する。
【0110】
ここで、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とはヘリカル噛合しているため、ドライブシャフト4の回転力を駆動ピニオンギヤ110からリングギヤ23に伝達すると、駆動ピニオンギヤ110には一方側(
図4における左側)に向かってスラスト荷重が発生する。駆動ピニオンギヤ110に発生したスラスト荷重は、駆動ピニオンギヤ110の一方側に設けられた止め輪106に伝達された後、アイドルシャフト102、アイドルギヤ101、伝達ピニオンギヤ70、クラッチインナ22、クラッチアウタ18および移動規制部20、サークリップ20aを介して、ドライブシャフト4に伝達される。このため、ドライブシャフト4には一方側(
図4における左側)に向かってスラスト荷重が発生し、一方側に向かってスライド移動する。
【0111】
しかし、ハウジング17のギヤカバー172には、荷重受部材50が設けられている。これにより、ドライブシャフト4は、一方側端面4cが荷重受部材50に当接し、ドライブシャフト4の一方側(
図4における左側)へのスライド移動が規制され、これにより、ドライブシャフト4に加わるスラスト荷重を効果的に受けることができる。
【0112】
一方、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23との噛合後、エンジン始動時におけるクランキングの際には、リングギヤ23の回転速度に変動が生じる。これにより、駆動ピニオンギヤ110には一方側(
図4における左側)および他方側(
図4における右側)に向かってスラスト荷重が発生する。具体的には、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも低いときには、駆動ピニオンギヤ110にはリングギヤ23に接近する方向(
図4における左側)にスラスト荷重が発生する。また、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも高いときには、駆動ピニオンギヤ110にはリングギヤ23から離反する方向(
図4における右側)にスラスト荷重F2が発生する。
特に、アイドルストップ機能を備えた車両においては、エンジンの停止/始動が頻繁に行われ、一般のスタータよりも使用頻度が高まるため、上述のようなスラスト荷重が頻繁に発生する。
【0113】
しかし、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも高いときには、駆動ピニオンギヤ110にはリングギヤ23から離反する方向(
図4における右側)にスラスト荷重F2が発生するが、この場合、アイドルギヤ101と伝達ピニオンギヤ70とのヘリカル噛合部から、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23から作用するスラスト荷重とは反対方向のスラスト荷重が作用する。
【0114】
すなわち、アイドルギヤ101の歯のねじれ方向は、駆動ピニオンギヤ110の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている一方、伝達ピニオンギヤ70の歯のねじれ方向は、リングギヤ23の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている。このような状態において、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも高いのに対し、アイドルギヤ101の回転速度が伝達ピニオンギヤ70の回転速度よりも高い状態になる。このため、駆動ピニオンギヤ110に作用する、リングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重を相殺することができる。
したがって、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23から離反する方向にスラスト荷重F2が発生しても、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とのヘリカル噛合が解除されることなく、適切な安定したヘリカル噛合状態を維持できる。
【0115】
また、駆動ピニオンギヤ110に発生したスラスト荷重は、駆動ピニオンギヤ110の一方側に設けられた止め輪106に伝達された後、アイドルシャフト102、クラッチインナ22、クラッチワッシャ64を介してクラッチカバー6の底壁66に伝達される。しかし、底壁66には補強筒部67が一体的に形成されているので、クラッチカバー6の軸方向への変形が抑制される。
【0116】
エンジンが完全に始動し、駆動ピニオンギヤ110の回転速度がドライブシャフト4の回転速度を上回ると、クラッチ機構5のワンウェイクラッチ機能が作用して駆動ピニオンギヤ110が空転する。また、エンジンが始動に伴って励磁コイル24への通電を停止すると、クラッチアウタ18に対するリターンスプリング21の付勢力により、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23から離脱すると共に、可動接点板8が固定接点板34から離反してブラシ付直流モータ51が停止する。
【0117】
(効果)
本実施形態によれば、リングギヤ23とアイドルシャフト102に設けられた駆動ピニオンギヤ110とがヘリカル噛合するとともに、アイドルシャフト102に設けられたアイドルギヤ101とドライブシャフト4に設けられた伝達ピニオンギヤ70とがヘリカル噛合する構成とされている。これにより、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも高いときに、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23から離反する方向(
図4における右側)にスラスト荷重F2が発生しても、アイドルギヤ101と駆動ピニオンギヤ110とのヘリカル噛合部から反対方向のスラスト荷重を作用させることができる。これにより、駆動ピニオンギヤ110に作用する、リングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重が相殺することができる。したがって、リングギヤ23から駆動ピニオンギヤ110が不用意に離脱するのを防ぐことができる。このとき、電磁装置9における電磁力を増大させる必要もなく、スタータ1の大型化、重量増を招くこともない。
【0118】
さらに、リングギヤ23と駆動ピニオンギヤ110とのヘリカル噛合、アイドルギヤ101と伝達ピニオンギヤ70とのヘリカル噛合により、スタータ1作動時の騒音を低減することができる。
【0119】
また、本実施形態によれば、駆動ピニオンギヤ110の外歯車部110gのピッチ径D1を、アイドルギヤ101のピッチ径D2に対し、
D1≦D2
を満足するように設定することで、アイドルギヤ101側、つまりドライブシャフト4側から駆動ピニオンギヤ110へのトルク伝達が効率良く行える。つまり、スタータ1におけるエンジンの始動性を向上させることができる。
【0120】
さらに、本実施形態によれば、アイドルシャフト102の端部102bがギヤカバー172から外部に露出するシャフト貫通孔179にシール部材190が設けられ、このシール部材190のリップ部192は、その内径d3がアイドルシャフト102の外径よりも小さくなるよう設定されている。これにより、アイドルシャフト102が軸方向に移動しても、シャフト貫通孔179におけるシール性を高く維持することができ、外部からの水分や異物の侵入を確実に防ぐことができる。
【0121】
また、ドライブシャフト4に対し、オフセットして配置されたアイドルシャフト102に駆動ピニオンギヤ110を設けることによって、例えば、
図7に示すように、周囲のスペースが限られている場合であっても、スタータ1のレイアウト性を高めることができる。
【0122】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかるスタータの第2の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態においては、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図8は、本発明の第2の実施形態におけるスタータの要部を示す図であって、(a)は、駆動ピニオンギヤでエンジンを始動している状態におけるスタータの断面図、(b)は、駆動ピニオンギヤを離反させた状態におけるスタータの断面図である。
【0123】
図8に示すように、本実施の形態において、アイドルギヤユニット100は、ドライブシャフト4と平行に配置された支持シャフト121と、支持シャフト121に外装された有底筒状のアイドルシャフト122と、アイドルシャフト122の外周部に形成され、伝達ピニオンギヤ70に噛み合うアイドルギヤ101と、支持シャフト121の他方の端部121bに設けられ、エンジン(不図示)のリングギヤ23に噛合可能な駆動ピニオンギヤ110と、を備えている。
【0124】
支持シャフト121は、一方の端部121aが筒状ハウジング171のフロントブラケット部171tに形成されたシャフト孔174に挿入され、筒状ハウジング171の外部からねじ込まれたネジ部材123によって固定されている。なお、一方の端部121aには一方取り加工が施されており、シャフト孔174の底部には、この一方取り形状に適合する段差加工が施されている。
支持シャフト121は、他方の端部121bが、シャフト貫通孔179に設けられたボールベアリング180の内方に位置するよう配置されている。
【0125】
アイドルシャフト122は、クラッチ機構5側に開口した有底状のシャフト挿入穴(穴)122hが形成されている。シャフト挿入穴122hの内周面に、2つの滑り軸受124,124が設けられ、その内側に支持シャフト121が挿入されている。これにより、アイドルシャフト122は、支持シャフト121の軸方向に移動自在とされるとともに、その軸周りに回転自在に支持されている。
【0126】
また、アイドルシャフト122の外周面には、アイドルギヤ101が一体に形成されている。そして、このアイドルシャフト122は、シャフト貫通孔179を貫通して、他方の端部122bが、ギヤカバー172の外方に突出している。シャフト貫通孔179の内周面には、ボールベアリング180が設けられ、アイドルシャフト122は、アイドルギヤ101と他方の端部122bとの間においてボールベアリング180により軸周りに回転自在に支持されている。
【0127】
アイドルシャフト122の外周部には、アイドルギヤ101に対してクラッチ機構5側に、円板状のアイドルワッシャ104が外嵌されている。アイドルワッシャ104のクラッチ機構5側への抜け方向への移動は、アイドルシャフト122に取り付けられている止め輪105によって規制されている。また、アイドルワッシャ104の外径は、外歯車部101bの外径と略同一になるように設定されている。さらに、アイドルワッシャ104は、その外周部が、伝達ピニオンギヤ70の外歯車部70bと外フランジ部73との間の環状の隙間に挿入されている。これにより、アイドルギヤ101を有した支持シャフト121は、アイドルワッシャ104を介して、伝達ピニオンギヤ70と共に、軸方向に追従して移動可能となっている。
【0128】
支持シャフト121には、中心軸に沿って連続し、アイドルシャフト122のシャフト挿入穴122hの底部側の先端面121cに開口する空気抜き孔(空気通路)125が形成されている。この空気抜き孔125は、支持シャフト121の基部側でシャフト挿入穴122hの外部に露出した位置に形成された空気抜き孔(空気通路)126に連通している。
【0129】
このようなアイドルギヤユニット100においては、上記第1の実施形態と同様、
図8(a)に示すように、エンジンの始動時には、ドライブシャフト4に設けられたクラッチ機構5が、リングギヤ23側へ向かって押し出されることにより、クラッチ機構5と一体化している伝達ピニオンギヤ70と連動してアイドルギヤ101がリングギヤ23側へと回転しながら押し出される。すると、アイドルシャフト122に設けられた駆動ピニオンギヤ110も、アイドルギヤ101と一体に、リングギヤ23側へと回転しながら押し出される。これにより、シャフト挿入穴122hと支持シャフト121の先端面121bとの間に形成される空間Sの体積が減少する。このとき、空間S内の空気が、空気抜き孔125および空気抜き孔126を通してシャフト挿入穴122h内から排出されるようになっている。
【0130】
図8(b)に示すように、エンジンの始動完了後、駆動ピニオンギヤ110とともにアイドルシャフト122がリングギヤ23から離反する方向に移動するときには、シャフト挿入穴122h内の空間Sの体積が増加することになる。このとき、外部から空気抜き孔125および空気抜き孔126を通して空間Sに空気が導入される。
【0131】
本実施形態におけるスタータ1においては、アイドルギヤユニット100の支持シャフト121に、空気抜き孔125および空気抜き孔126を形成しておくことで、シャフト挿入穴122hとシャフト挿入穴122hとの間の空間Sに溜まる空気を円滑に抜くことができる。したがって、空間S内に溜まった空気をポンピングすることによって生じる圧縮抵抗を抑えることができ、アイドルギヤユニット100の円滑な動作を実現することができる。
【0132】
また、支持シャフト121は、他方の端部121bが、シャフト貫通孔179に設けられたボールベアリング180の内方に位置するよう配置されているので、アイドルシャフト122がいかなる位置にある状態でも、アイドルシャフト122を内側から支持し、ラジアル荷重を受けることができる。
【0133】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0134】
例えば、上記第二実施形態において、支持シャフト121に、空気抜き孔125および空気抜き孔126を形成するようにしたが、アイドルシャフト122側に空気通路を形成してもよい。
【0135】
また、上記実施形態では、電磁装置(プランジャ機構37)の軸と回転軸52とドライブシャフト4とを同軸上に配置したうえで、ドライブシャフト4と平行にアイドルシャフト102,122を配置したスタータを例示したが、これに限るものではなく、例えば電磁装置(プランジャ機構37)の軸と回転軸52とドライブシャフト4とを異なる軸上に配置したスタータ等、様々な形式のスタータに本発明を適用してもよい。
【0136】
さらに、本実施形態では、ドライブシャフト4にヘリカルスプライン19を形成し、クラッチアウタ18にヘリカルスプライン18bを形成して、クラッチ機構5をドライブシャフト4にスプライン噛合することにより、クラッチ機構5をドライブシャフト4に対して軸方向にスライド移動可能としている場合について説明した。このときの、ドライブシャフト4のヘリカルスプライン19およびクラッチアウタ18のヘリカルスプライン18bの傾斜角度は、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側へスライド移動し始めたとき、クラッチアウタ18がドライブシャフト4に対して若干相対回転しながら押出されるように設定されていればよい。
【0137】
そして、本実施形態では、アイドルシャフト102の先端側に、スプライン108が形成されている一方、駆動ピニオンギヤ110の内周面の先端側に、スプライン108に噛合うスプライン110aが形成されていた。これにより、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110とは、互いに相対回転不能かつ軸方向にスライド移動可能に設けられていた。
しかしながら、上述のように、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110とをスプライン噛合によりスライド移動可能に形成する場合に限られない。例えば、アイドルシャフト102にキーを設ける一方、駆動ピニオンギヤ110にキー溝を設け、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110とをスライド移動可能に形成してもよい。
【0138】
また、電磁装置9が駆動ピニオンギヤ110と可動接点板8とを一方側(
図1における左側)にスライド移動させたときに、可動接点板8がON状態となる前に、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23に当接するようにしてもよい。
【0139】
さらに、本実施形態では、自動車の始動用に用いられるスタータ1を例に挙げて説明をしているが、スタータ1の適用は自動車に限定されることはなく、例えば自動二輪車、エンジン式発電機等に適用してもよい。
【0140】
また、本実施形態のスタータ1は、上述のように、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが安定してヘリカル噛合できる。したがって、スタータ1が適用される自動車の中でも、特にスタータ1の使用頻度の高いアイドリングストップ機能を備えた自動車に好適である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。