特許第6069142号(P6069142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デクセリアルズ株式会社の特許一覧

特許6069142アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法
<>
  • 特許6069142-アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法 図000003
  • 特許6069142-アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法 図000004
  • 特許6069142-アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法 図000005
  • 特許6069142-アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法 図000006
  • 特許6069142-アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法 図000007
  • 特許6069142-アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法 図000008
  • 特許6069142-アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法 図000009
  • 特許6069142-アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069142
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】アンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20170123BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 133/16 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   H01L21/60 311S
   C09J7/00
   C09J133/00
   C09J133/16
   C09J163/00
   C09J163/02
   C09J11/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-187980(P2013-187980)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-56464(P2015-56464A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】小山 太一
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−173834(JP,A)
【文献】 特開2013−175546(JP,A)
【文献】 特開2013−120804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
C09J 7/00
C09J 11/06
C09J 133/00
C09J 133/16
C09J 163/00
C09J 163/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンダ付き電極が形成された半導体チップを、ハンダ付き電極と対向する対向電極が形成された電子部品に搭載する前に、半導体チップに予め貼り合わされるアンダーフィル材であって、
エポキシ樹脂と、酸無水物と、アクリル樹脂と、有機過酸化物とを含有し、
60℃以上100℃以下のいずれかの温度で、非ビンガム流動性を示し、
動的粘弾性測定における貯蔵弾性率G’が、10E+02rad/s以下の角周波数領域に変曲点を有し、該変曲点以下の角周波数における貯蔵弾性率G’が、10E+05Pa以上10E+06Pa以下であるアンダーフィル材。
【請求項2】
前記動的粘弾性測定における動的粘性率η’が、前記変曲点以下の角周波数に対して10の1乗の傾きで反比例する請求項1記載のアンダーフィル材。
【請求項3】
前記変曲点以下の角周波数における貯蔵弾性率G’が、一定値である請求項1又は2記載のアンダーフィル材。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂であり、
前記酸無水物が、脂環式酸無水物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項5】
前記アクリル樹脂が、フルオレン系アクリレートであり、
前記有機過酸化物が、パーオキシケタールである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項6】
ハンダ付き電極が形成され、該電極面にアンダーフィル材が貼り合わされた半導体チップを、前記ハンダ付き電極と対向する対向電極が形成された電子部品に搭載する搭載工程と、
前記半導体チップと前記電子部品とを熱圧着する熱圧着工程とを有し、
前記アンダーフィル材は、エポキシ樹脂と、酸無水物と、アクリル樹脂と、有機過酸化物とを含有し、60℃以上100℃以下のいずれかの温度で、非ビンガム流動性を示し、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率G’が、10E+02rad/s以下の角周波数領域に変曲点を有し、該変曲点以下の角波数における貯蔵弾性率G’が、10E+05Pa以上10E+06Pa以下である半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの実装に用いられるアンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの実装方法において、工程短縮を目的に、半導体IC(Integrated Circuit)電極上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける「先供給型アンダーフィルフィルム(PUF:Pre-applied Underfill Film)」の使用が検討されている。
【0003】
この先供給型アンダーフィルフィルムを使用した実装方法は、例えば、以下のように行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
工程A:ウエハにアンダーフィルフィルムを貼り付け、ダイシングして半導体チップを得る。
工程B:アンダーフィルフィルムが貼り合わされた状態で、半導体チップを位置合わせして搭載する。
工程C:半導体チップを熱圧着し、ハンダバンプの金属結合による導通確保、及びアンダーフィルフィルムの硬化による接着を行う。
【0005】
先供給型アンダーフィルフィルムは、予めウエハにラミネートされた状態で使用されるため、基板への実装に対して、良好なハンダ接続性を実現するために溶融粘度が低く設定されている。例えば、貯蔵弾性率G’が10E+04Pa以下、損失弾性率G’’が10E+03Pa程度に設定されているものが多く、さらに溶融状態の流動性が非ビンガム流動性を示していないため、実装時のエアーの排除が不十分となり、ボイドを内在した実装体となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−28734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、ボイドレス実装及び良好なハンダ接合性を実現可能なアンダーフィル材、及びこれを用いた半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するために、本発明は、ハンダ付き電極が形成された半導体チップを、ハンダ付き電極と対向する対向電極が形成された電子部品に搭載する前に、半導体チップに予め貼り合わされるアンダーフィル材であって、エポキシ樹脂と、酸無水物と、アクリル樹脂と、有機過酸化物とを含有し、60℃以上100℃以下のいずれかの温度で、非ビンガム流動性を示し、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率G’が、10E+02rad/s以下の角周波数領域に変曲点を有し、該変曲点以下の角周波数における貯蔵弾性率G’が、10E+05Pa以上10E+06Pa以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、ハンダ付き電極が形成され、該電極面にアンダーフィル材が貼り合わされた半導体チップを、前記ハンダ付き電極と対向する対向電極が形成された電子部品に搭載する搭載工程と、前記半導体チップと前記電子部品とを熱圧着する熱圧着工程とを有し、前記アンダーフィル材は、エポキシ樹脂と、酸無水物と、アクリル樹脂と、有機過酸化物とを含有し、60℃以上100℃以下のいずれかの温度で、非ビンガム流動性を示し、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率G’が、10E+02rad/s以下の角周波数領域に変曲点を有し、該変曲点以下の角周波数における貯蔵弾性率G’が、10E+05Pa以上10E+06Pa以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶融時に非ビンガム流動性を示し、所定の貯蔵弾性率G’を有しているため、ボイドレス実装及び良好なハンダ接合性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】搭載前の半導体チップと回路基板とを模式的に示す断面図である。
図2】搭載時の半導体チップと回路基板とを模式的に示す断面図である。
図3】熱圧着後の半導体チップと回路基板とを模式的に示す断面図である。
図4】溶融状態のマスターカーブの一例を示すグラフである。
図5】本実施の形態における半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図6】ウエハ上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける工程を模式的に示す斜視図である。
図7】ウエハをダイシングする工程を模式的に示す斜視図である。
図8】半導体チップをピックアップする工程を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、下記順序にて詳細に説明する。
1.アンダーフィル材
2.半導体装置の製造方法
3.実施例
【0013】
<1.アンダーフィル材>
本実施の形態に係るアンダーフィル材は、ハンダ付き電極が形成された半導体チップを、ハンダ付き電極と対向する対向電極が形成された電子部品に搭載する前に、半導体チップに予め貼り合わされるものである。
【0014】
図1は、搭載前の半導体チップと回路基板とを模式的に示す断面図、図2は、搭載時の半導体チップと回路基板とを模式的に示す断面図、及び、図3は、熱圧着後の半導体チップと回路基板とを模式的に示す断面図である。
【0015】
図1図3に示すように、本実施の形態におけるアンダーフィル材20は、ハンダ付き電極が形成された半導体チップ10の電極面に予め貼り合わされて使用され、アンダーフィル材20が硬化した接着層21により半導体チップ10と、ハンダ付き電極と対向する対向電極が形成された回路基板30とを接合する。
【0016】
半導体チップ10は、シリコンなどの半導体11表面に集積回路が形成され、バンプと呼ばれる接続用のハンダ付き電極を有する。ハンダ付き電極は、銅などからなる電極12上にハンダ13を接合したものであり、電極12の厚みとハンダ13の厚みとを合計した厚みを有する。
【0017】
ハンダとしては、Sn−37Pb共晶ハンダ(融点183℃)、Sn−Biハンダ(融点139℃)、Sn−3.5Ag(融点221℃)、Sn−3.0Ag−0.5Cu(融点217℃)、Sn−5.0Sb(融点240℃)などを用いることができる。
【0018】
回路基板30は、例えばリジット基板、フレキシブル基板などの基材31に回路が形成されている。また、半導体チップ10が搭載される実装部には、半導体チップ10のハンダ付き電極と対向する位置に所定の厚みを有する対向電極32が形成されている。
【0019】
アンダーフィル材20は、膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、酸無水物と、アクリル樹脂と、有機過酸化物とを含有する。
【0020】
膜形成樹脂は、重量平均分子量が10×10以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10×10〜100×10の重量平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、アクリルゴムポリマー、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の種々の樹脂を用いることができる。これらの膜形成樹脂は、1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、本実施の形態では、膜強度及び接着性の観点から、グリシジル基を有するアクリルゴムポリマーが好適に用いられる。また、アクリルゴムポリマーのガラス転移温度Tgは、−30℃以上20℃以下であることが好ましい。これにより、アンダーフィル材20の可撓性を向上させることができる。
【0021】
エポキシ樹脂としては、例えば、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、テトラキス(グリシジルオキシメチルフェニル)エタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)メタン、トリキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリキス(グリシジルオキシフェニル)メタン等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α?ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、本実施の形態では、高接着性、耐熱性の点から、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
酸無水物は、ハンダ表面の酸化膜を除去するフラックス機能を有するため、優れた接続信頼性を得ることができる。酸無水物としては、例えばヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、テトラプロペニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸などの脂肪族酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物などを挙げることができる。これらのエポキシ硬化剤は、1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらのエポキシ硬化剤の中でもこれらのうちハンダ接続性の点から、脂環式酸無水物を用いることが好ましい。
【0023】
また、硬化促進剤を添加することが好ましい。硬化促進剤の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩(DBU塩)、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などが挙げられる。
【0024】
アクリル樹脂としては、単官能(メタ)アクリレート、2官能以上の(メタ)アクリレートを使用可能である。単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、フルオレン系アクリレート、ビスフェノールF―EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA―EO変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのアクリル樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本実施の形態では、フルオレン系アクリレートが好適に用いられる。
【0025】
有機過酸化物としては、例えば、パーオキシケタール、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等を挙げることができる。これらの有機過酸化物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本実施の形態では、パーオキシケタールが好適に用いられる。
【0026】
また、その他の添加組成物として、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを含有することにより、圧着時における樹脂層の流動性を調整することができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0027】
さらに、必要に応じて、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などのシランカップリング剤を添加してもよい。
【0028】
このように硬化反応の比較的遅いエポキシ系と、硬化反応の比較的速いアクリル系とを併用することにより、ボイドレス実装及び良好なハンダ接合性を実現することができる。
【0029】
また、アンダーフィル材は、60℃以上100℃以下のいずれかの温度において、ある一定以上の応力(降伏応力)を与えないと流動を起こさないという挙動を示す非ビンガム流動性を示す。非ビンガム流動性は、例えば、動的粘弾性測定における動的粘性率η’が角周波数に対して10の1乗の傾きで反比例する関係から知ることができる。
【0030】
図4は、動的粘弾性測定による溶融状態のマスターカーブの一例を示すグラフである。アンダーフィル材は、図4に示すマスターカーブにおいて、貯蔵弾性率G’が、10E+02rad/s以下の角周波数領域に変曲点を有し、変曲点以下の角周波数における貯蔵弾性率G’が、10E+05Pa以上10E+06Pa以下の範囲で一定値となる。これにより、ボイドレス実装及び良好なハンダ接合性を実現することができる。
【0031】
また、アクリル樹脂と有機過酸化物との合計質量と、エポキシ樹脂と酸無水物との合計質量との比は、7:3〜4:6であることが好ましい。これにより、ボイドレス実装及び良好なハンダ接合性を実現するアンダーフィル材を得ることができる。
【0032】
次に、前述したアンダーフィル材が膜状に形成された先供給型アンダーフィルフィルムの製造方法について説明する。先ず、膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、酸無水物と、アクリル樹脂と、有機過酸化物とを含有する接着剤組成物を溶剤に溶解させる。溶剤としては、トルエン、酢酸エチルなど、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。樹脂組成物を調整後、バーコーター、塗布装置などを用いて剥離基材上に塗布する。
【0033】
剥離基材は、例えば、シリコーンなどの剥離剤をPET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methylpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などに塗布した積層構造からなり、組成物の乾燥を防ぐとともに、組成物の形状を維持するものである。
【0034】
次に、剥離基材上に塗布された樹脂組成物を熱オーブン、加熱乾燥装置などにより乾燥させる。これにより、所定の厚さの先供給型アンダーフィルフィルムを得ることができる。
【0035】
<2.半導体装置の製造方法>
次に、前述した先供給型アンダーフィルフィルムを用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0036】
図5は、本実施の形態における半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。図5に示すように、本実施の形態における半導体装置の製造方法は、アンダーフィルフィルム貼付工程S1と、ダイシング工程S2と、半導体チップ搭載工程S3と、熱圧着工程S4とを有する。
【0037】
図6は、ウエハ上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける工程を模式的に示す斜視図である。図6に示すように、アンダーフィルフィルム貼付工程S1では、ウエハ1の直径よりも大きな直径を有するリング状又は枠状のフレームを有する治具3によりウエハ1を固定し、ウエハ1上にアンダーフィルフィルム2を貼り付ける。アンダーフィルフィルム2は、ウエハ1のダイシング時にウエハ1を保護・固定し、ピックアップ時に保持するダイシングテープとして機能する。なお、ウエハ1には多数のIC(Integrated Circuit)が作り込まれ、ウエハ1の接着面には、図1に示すようにスクライブラインによって区分される半導体チップ10毎にハンダ付き電極が設けられている。
【0038】
図7は、ウエハをダイシングする工程を模式的に示す斜視図である。図7に示すように、ダイシング工程S2では、ブレード4をスクライブラインに沿って押圧してウエハ1を切削し、個々の半導体チップに分割する。
【0039】
図8は、半導体チップをピックアップする工程を模式的に示す斜視図である。図8に示すように、各アンダーフィルフィルム付き半導体チップ10は、アンダーフィルフィルムに保持されてピックアップされる。
【0040】
半導体チップ搭載工程S3では、図2に示すように、アンダーフィルフィルム付き半導体チップ10と回路基板30とをアンダーフィルフィルムを介して配置する。また、アンダーフィルフィルム付き半導体チップ10をハンダ付き電極と対向電極32とが対向するように位置合わせして配置する。そして、加熱ボンダーによって、アンダーフィルフィルムに流動性は生じるが、本硬化は生じない程度の所定の温度、圧力、時間の条件で加熱押圧し、搭載する。
【0041】
搭載時の温度条件は、30℃以上155℃以下であることが好ましい。また、圧力条件は50N以下であることが好ましく、より好ましくは40N以下である。また、時間条件は0.1秒以上10秒以下であることが好ましく、より好ましくは0.1秒以上1.0秒以下である。これにより、ハンダ付き電極が溶融せずに回路基板30側の電極と接している状態とすることができ、アンダーフィルフィルムが完全硬化していない状態とすることができる。また、低い温度で固定するため、ボイドの発生を抑制し、半導体チップ10へのダメージを低減することができる。
【0042】
次の熱圧着工程S4では、例えば第1の温度から第2の温度まで所定の昇温速度で昇温させるボンディング条件で、ハンダ付き電極のハンダを溶融させて金属結合を形成させるとともに、アンダーフィルフィルムを完全硬化させる。
【0043】
また、ボンダーヘッドは、搭載後のアンダーフィルフィルムの溶融開始温度まで樹脂の弾性率により一定の高さに保たれた後、昇温に伴う樹脂溶融により一気に下降し、ヘッドの最下点に達する。この最下点は、ヘッドの下降速度と樹脂の硬化速度との関係により決まる。樹脂硬化がさらに進行した後、ヘッドの高さは、樹脂とヘッドの熱膨張により徐々に上昇する。このように、第1の温度から第2の温度に昇温する時間内にボンダーヘッドを最下点まで下降させることにより、樹脂溶融に伴うボイドの発生を抑制することができる。
【0044】
第1の温度は、アンダーフィル材の最低溶融粘度到達温度と略同一であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることが好ましい。これによりアンダーフィル材の硬化挙動をボンディング条件に合致させることができ、ボイドの発生を抑制することができる。また、昇温速度は、50℃/sec以上150℃/sec以下であることが好ましい。また、第2の温度は、ハンダの種類にもよるが、200℃以上280℃以下であることが好ましく、より好ましくは220℃以上260℃以下である。これにより、ハンダ付き電極と基板電極とを金属結合させるとともに、アンダーフィルフィルムを完全硬化させ、半導体チップ10の電極と回路基板30の電極とを電気的、機械的に接続させることができる。
【0045】
このように本実施の形態における半導体装置の製造方法は、エポキシ樹脂と、酸無水物と、アクリル樹脂と、有機過酸化物とを含有し、60℃以上100℃以下のいずれかの温度で、非ビンガム流動性を示し、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率G’が、10E+02rad/s以下の角周波数領域に変曲点を有し、該変曲点以下の角周波数における貯蔵弾性率G’が、10E+05Pa以上10E+06Pa以下であるアンダーフィル材20を、ハンダ付き電極が形成された半導体チップ10に予め貼り合わせることにより、ボイドレス実装及び良好なハンダ接合性を実現することができる。
【0046】
なお、前述の実施の形態では、アンダーフィルフィルムをダイシングテープとして機能させることとしたが、これに限られるものではなく、ダイシングテープを別に用い、ダイシング後にアンダーフィルフィルムを使用してフリップチップ実装を行ってもよい。
【0047】
[他の実施の形態]
また、本技術は、半導体チップに設けた小さな孔に金属を充填することによって、サンドイッチ状に積み重ねた複数のチップ基板を電気的に接続するTSV(Through Silicon Via)技術にも適用可能である。
【0048】
すなわち、ハンダ付き電極が形成された第1の面と、第1の面の反対側にハンダ付き電極と対向する対向電極が形成された第2の面を有する複数のチップ基板を積層する半導体装置の製造方法にも適用可能である。
【0049】
この場合、第1のチップ基板の第1の面側にアンダーフィルフィルムを貼り付けた状態で、第2のチップ基板の第2の面に搭載する。その後、第1のチップ基板の第1の面と第2のチップ基板の第2の面とをハンダ付き電極のハンダの融点以上の温度で熱圧着することにより、複数のチップ基板を積層した半導体装置を得ることができる。
【実施例】
【0050】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、先供給型のアンダーフィルフィルムを作製し、動的粘弾性測定を行った。そして、アンダーフィルフィルムを用いてハンダ付き電極を有するICチップと、これに対向する電極を有するIC基板とを接続させて実装体を作製し、ボイド及びハンダ接合状態を評価した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
動的粘弾性測定、実装体の作製、ボイドの評価、及びハンダ接合の評価は、次のように行った。
【0052】
[動的粘弾性測定]
各アンダーフィルフィルムについて、レオメータ(TA社製ARES)を用いて、設定温度を80℃として、角周波数に対する動的粘性率η’、及び角周波数に対する貯蔵弾性率G’のマスターカーブを作成し、変曲点(塑性降伏点)、変曲点以下の角周波数における貯蔵弾性率G’、及び変曲点以下の角周波数に対する動的粘性率η’の傾きを求めた。
【0053】
[実装体の作製]
アンダーフィルフィルムをウエハ上にプレス機にて、50℃−0.5MPaの条件で貼り合わせ、ダンシングしてハンダ付き電極を有するICチップを得た。
【0054】
ICチップは、その大きさが7mm□、厚み200μmであり、厚み20μmのCuからなる電極の先端に厚み16μmのハンダ(Sn−3.5Ag、融点221℃)が形成されたペリフェラル配置のバンプ(φ30μm、85μmピッチ、280ピン)を有するものであった。
【0055】
また、これに対向するIC基板は、同様に、その大きさは7mm□、厚み200μmであり、厚み20μmのCuからなる電極が形成されたペリフェラル配置のバンプ(φ30μm、85μmピッチ、280ピン)を有するものであった。
【0056】
次に、フリップチップボンダーを用いて、80℃−0.5秒−30Nの条件でIC基板上にICチップを搭載した。
【0057】
その後、フリップチップボンダーを用いて、80℃から250℃まで50℃/secの昇温速度で熱圧着した。また、80℃から250℃に昇温する時間内にボンダーヘッドを最下点まで下降させた(30N)。さらに、150℃−2時間の条件でキュアし、実装体を得た。なお、フリップチップボンダー使用時における温度は、熱電対によりサンプルの実温を測定したものである。
【0058】
[ボイドの評価]
実装体をSAT(Scanning Acoustic Tomograph, 超音波映像装置)を用いて観察した。ボイドが発生していない場合を「○」と評価し、実装体にボイドが発生している場合を「×」と評価した。一般的に、ボイドが生じると、長期信頼性に悪影響を及ぼす可能性が高くなる。
【0059】
[ハンダ接合の評価]
実装体のサンプルを切断し、断面研磨を行い、ICチップの電極とIC基板の電極との間のハンダの状態をSEM(Scanning Electron Microscope)観察した。ハンダ接続、ハンダ濡れ共に良好な状態を「○」と評価し、実装体のハンダ接続、又はハンダ濡れが不十分な状態を「×」と評価した。
【0060】
<実施例1>
膜形成樹脂としてのアクリルゴムポリマー(品名:テイサンレジンSG−P3、ナガセケムテックス社製)を40質量部、エポキシ樹脂(品名:JER1031S、三菱化学社製)を30質量部、酸無水物(品名:リカシッドHNA−100、新日本理化社製)を20質量部、硬化促進剤としてのイミダゾール(品名:U−CAT−5002、サンアプロ社製)を1質量部、アクリル樹脂(品名:オクゾールEA−0200、大阪有機化学社製)を49質量部、有機過酸化物(品名:パーヘキサV、日油社製)を1質量部、フィラー(品名:アエロジルR202、日本アエロジル社製)を15質量部配合し、アクリル/エポキシが50/50の樹脂組成物を調製した。これを、剥離処理されたPET(Polyethylene terephthalate)にバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンで3分間乾燥させ、厚み50μmのアンダーフィルフィルムを作製した(カバー剥離PET(25μm)/アンダーフィルフィルム(50μm)/ベース剥離PET(50μm))。
【0061】
表1に、アンダーフィルフィルムの動的粘弾性測定の結果、及び実装体の評価結果を示す。変曲点は10E+1.9rad/s、貯蔵弾性率G’は10E+5.3Pa、η’の傾きは10の1乗であり、アンダーフィルフィルムは、非ビンガム流動性を示した。このアンダーフィルフィルムを用いて作製した実装体のボイドの評価は○、ハンダ接合の評価は○であった。
【0062】
<比較例1>
膜形成樹脂としてのアクリルゴムポリマー(品名:テイサンレジンSG−P3、ナガセケムテックス社製)を40質量部、エポキシ樹脂(品名:JER1031S、三菱化学社製)を55質量部、酸無水物(品名:リカシッドHNA−100、新日本理化社製)を44質量部、硬化促進剤としてのイミダゾール(品名:U−CAT−5002、サンアプロ社製)を2質量部、フィラー(品名:アエロジルR202、日本アエロジル社製)を15質量部配合し、アクリル/エポキシが50/50の樹脂組成物を調製した。これを、剥離処理されたPET(Polyethylene terephthalate)にバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンで3分間乾燥させ、厚み50μmのアンダーフィルフィルムを作製した(カバー剥離PET(25μm)/アンダーフィルフィルム(50μm)/ベース剥離PET(50μm))。
【0063】
表1に、アンダーフィルフィルムの動的粘弾性測定の結果、及び実装体の評価結果を示す。変曲点は10E+4.0rad/s、貯蔵弾性率G’は10E+4.3Pa、η’の傾きは10の1乗未満であり、アンダーフィルフィルムは、非ビンガム流動性を示さなかった。このアンダーフィルフィルムを用いて作製した実装体のボイドの評価は○、ハンダ接合の評価は×であった。
【0064】
<比較例2>
膜形成樹脂としてのアクリルゴムポリマー(品名:テイサンレジンSG−P3、ナガセケムテックス社製)を40質量部、アクリル樹脂(品名:オクゾールEA−0200、大阪有機化学社製)を96質量部、有機過酸化物(品名:パーヘキサV、日油社製)を5質量部、フィラー(品名:アエロジルR202、日本アエロジル社製)を15質量部配合し、アクリル/エポキシが50/50の樹脂組成物を調製した。これを、剥離処理されたPET(Polyethylene terephthalate)にバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンで3分間乾燥させ、厚み50μmのアンダーフィルフィルムを作製した(カバー剥離PET(25μm)/アンダーフィルフィルム(50μm)/ベース剥離PET(50μm))。
【0065】
表1に、アンダーフィルフィルムの動的粘弾性測定の結果、及び実装体の評価結果を示す。変曲点は明確ではなく、10E+02rad/s以下の貯蔵弾性率G’は10E+6.5Pa、10E+02rad/s以下のη’の傾きは10の1乗超であり、アンダーフィルフィルムは、非ビンガム流動性を示さなかった。このアンダーフィルフィルムを用いて作製した実装体のボイドの評価は×、ハンダ接合の評価は×であった。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例のように溶融時に非ビンガム流動性を示すアンダーフィルフィルムを用いることにより、ボイドレス実装及び良好なハンダ接合性を実現することができた。
【符号の説明】
【0068】
1 ウエハ、 2 アンダーフィルフィルム、 3 治具、 4 ブレード、 10 半導体チップ、11 半導体、12 電極、13 ハンダ、20 アンダーフィル材、21 第1の接着剤層、22 第2の接着剤層、 30 回路基板、31 基材、32 対向電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8