(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069225
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ヘアスタイリング組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20170123BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q5/06
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-552914(P2013-552914)
(86)(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公表番号】特表2014-505083(P2014-505083A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2012051891
(87)【国際公開番号】WO2012107366
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2014年12月2日
(31)【優先権主張番号】11153793.2
(32)【優先日】2011年2月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アキンペルー,アキンウオール・オラデイラン
(72)【発明者】
【氏名】ポール,プレム・クマール・チエヤラザガン
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,クリストフアー・ジヨン
【審査官】
松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−047205(JP,A)
【文献】
特表2014−528448(JP,A)
【文献】
特表2013−525500(JP,A)
【文献】
特表2013−504645(JP,A)
【文献】
特開平02−262508(JP,A)
【文献】
SOFW Journal,2010年,136,12-2010,p.55-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘアトリートメント組成物であって、
i)ポリアクリレートクロスポリマー−6、
ii)アクリル系感圧接着剤、および
iii)水
からなり、
前記ポリアクリレートクロスポリマー−6が、全組成物の0.2〜5重量%であり、
前記アクリル系感圧接着剤が、ブチルアクリレートとメタクリル酸とからなるランダムコポリマーであって、ブチルアクリレートとメタクリル酸との重量比が98:2である、ヘアトリートメント組成物。
【請求項2】
クリーム、ジェルもしくはワックスである、請求項1に記載のヘアトリートメント組成物。
【請求項3】
リーブイン組成物である、請求項1に記載のヘアトリートメント組成物。
【請求項4】
請求項1に記載される組成物を髪に塗布することを含む、髪を非−永久的にスタイリングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘアトリートメント組成物および髪の処理におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
US5166276、EP408311、EP412707およびEP412704に記載されるように、感圧接着剤(PSA)は既にヘアケア組成物に使用されている。しかしながら、これらのPSAは、水性及び水/アルコール系ヘアケア製品において、加水分解する傾向がある。
【0003】
WO2007/071308は優れた発泡性を有する、感圧接着剤を含む組成物を開示している。
【0004】
WO2004/037217は糖類及び膜形成剤を含む熱活性化耐久性スタイリング組成物を記載している。
【0005】
WO2008/012733はパーマネント整髪用組成物を開示している。該組成物は活性剤としてのN−アルキル−2−メルカプトアセトアミド並びにマルトトリオースを含め一連の膨潤剤及び浸透強化剤を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5166276号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第408311号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第412707号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第412704号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/071308号
【特許文献6】国際公開第2004/037217号
【特許文献7】国際公開第2008/012733号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、髪にスタイリング効果をもたらしかつ安定なヘアケア組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、第1の態様において本発明は、ヘアケア組成物であって、
i)ポリアクリレートクロスポリマー並びに
ii)アクリル系感圧接着剤であって、
a)少なくとも4個の炭素原子を伴う側鎖を有するアクリル基(例えば、n−ブチルアクリレートもしくは2−エチルヘキシルアクリレート)及び、
b)メタクリレートなどのC
1−C
6側鎖のアクリル基
を含むアクリル系感圧接着剤
を含む、ヘアケア組成物に関する。
【0009】
本発明はさらに、上記に記載の組成物を髪に塗布する段階を含む、髪をスタイリングする方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の文脈において安定な組成物は、貯蔵時に凝集もしくは凝固しない組成物に関連する。典型的な貯蔵条件は室温(20℃で1週間)で、好ましくは1か月間である。
【0011】
感圧接着剤
本発明の組成物はアクリル系感圧接着剤を含む。
【0012】
「感圧接着剤」(PSA)材料は室温で永久的に粘着性であり及び単純な接触もしくは軽い圧力をかけることにより、表面に測定可能な接着をもたらすことができる。一般的には熱を必要としない。接着剤と接着物との間に化学反応は起きず、接着剤の硬化を必要とせず並びに接着過程において排除されるべき溶剤も必要としない。
【0013】
本発明のアクリル系PSAは:
i)少なくとも4個の炭素原子を伴う側鎖を有するアクリル基(例えば、n−ブチルアクリレートもしくは2−エチルヘキシルアクリレート)、及び
ii)メタクリレートなどのC
1−C
6側鎖のアクリル基
を含むランダムコポリマーである。
【0014】
短い側鎖のアクリル基ii)対アクリル基i)の重量比は、1.9:98.1から4.0:96.0、好ましくは1.9:98.1から2.5:97.5である。
【0015】
コポリマーにはアクリル酸が含まれないことが好ましい。
【0016】
コポリマーの分子量(Mn)は8×10
4から1×10
4、好ましくは6×10
4から2×10
4であることが好ましい。
【0017】
基本的に、Tgの調整及び散逸特性の最適化のために粘着付与剤など小分子の添加剤を含んでいてもよいが、必須ではない。
【0018】
アクリル系感圧接着剤は、好ましくはエマルジョンの形態にある。適切な水性アクリル系感圧接着剤はRohm and Haas社製Roderm MD−5800を含む。
【0019】
好ましくは、アクリル系感圧接着剤は全組成物の0.01重量%から10重量%の濃度で存在する。本発明の組成物におけるアクリル系感圧接着剤の、より好ましい量は、組成物の0.1重量%から5重量%、さらにより好ましくは0.5重量%から3.5重量%である。
【0020】
ポリアクリレートクロスポリマー
本発明の組成物はポリアクリレートクロスポリマーを含み、好ましくは該ポリマーがアンモニウム2アクリルアミド2メチルプロパンスルホネートを含むコポリマーであり、最も好ましくはポリアクリレートクロスポリマー−6(トリメチロールプロパントリアクリレートにより架橋された、アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート、ジメチルアクリルアミド、ラウリルメタクリレート及びラウレス−4メタクリレートのコポリマー)である。
【0021】
全組成物中に存在するポリアクリレートの濃度は0.05重量%から10重量%、より好ましくは0.2重量%から5重量%、最も好ましくは0.5重量%から4重量%である。
【0022】
好ましくは、ポリアクリレートクロスポリマー対アクリル系PSAの比は0.5:5から2:1、より好ましくは1:1から1:4である。
【0023】
別のスタイリングポリマー
本発明のいくつかの態様において、組成物が追加的なスタイリングポリマーをさらに含むことが非常に望ましい。
【0024】
本発明にとって特に有用なスタイリング補助剤はヘアスタイリングポリマーである。ヘアスタイリングポリマーは周知の商品であり、ポリマーにカチオン性、アニオン性、両性もしくは非イオン性の性質を与える部分を含有する多くのこうしたポリマーが市場にて入手可能である。これらのポリマーは合成品であっても天然由来のものであってもよい。
【0025】
ビニル系ポリマーなどのスタイリング補助剤が好ましく、特にブロックポリマーが好ましい。
【0026】
ヘアスタイリングポリマーの量は、組成物の総重量を基準として0.1重量%から10重量%、好ましくは0.5重量%から8重量%、より好ましくは0.75重量%から6重量%の範囲にあってよい。
【0027】
製品の形態
本発明の組成物は、ヘアスタイリング性を求めるヘアケア組成物中に配合される。組成物は、好ましくは人の髪を非−永久的にスタイリングするために使用されるものであって、より好ましくはそのように包装及び表示される。非−永久的に、という用語は、スタイリングの過程中に、シスチン−ジスルフィド間の結合が壊されないことを意味する。これはヘアケア組成物中に還元剤が含まれないことを意味する。
【0028】
製品は髪への塗布後残存させ、すぐ(塗布後、1時間以内)に洗い流さないことが好ましい。このような製品はリーブイン組成物として知られる。
【0029】
好ましい製品形態は、ジェル、ワックス及びクリームなどのリーブオン配合物である。
【0030】
代替的なスタイリング剤の形態はムース、スプレー及びエアロゾルを含む。
【0031】
こうしたスタイリング製品はしばしば担体及び別の追加的な成分を含む。こうした製品を処方するために必要とされる担体及び追加的な成分は製品のタイプにより異なり、当業者により慣例的に選ぶことができる。以下に、これらの担体及び追加的な成分のいくつかを記載する。
【0032】
別の成分
本発明のヘアケア組成物は髪への塗布に適した担体、もしくはこのような担体の混合物を含むことができる。担体は、組成物の約0.5%から約99.5%、好ましくは約5.0%から約99.5%、より好ましくは約10.0%から約98.0%の量で存在する。本明細書で使用される場合、「髪への塗布に適した」という語句は、担体が髪の美感を損なわずもしくは悪影響を与えず、あるいは頭皮への刺激要因にならないことを意味する。
【0033】
本発明による組成物は緩衝剤もしくはpH調整剤を含む。好ましい緩衝剤もしくはpH調整剤はグリシン/水酸化ナトリウム、クエン酸、乳酸、コハク酸、酢酸及びこれらの塩などのような弱酸及び塩基を含む。クエン酸ナトリウムとクエン酸などの、緩衝系の混合物がよく用いられる。
【0034】
本発明のヘアケア組成物に用いるのに適切な担体は、例えば、ヘアスプレー、ムース、トニック、ヘアウォーター、クリームジェル、シャンプー、コンディショナー、及びリンスの配合物に用いられるものを含む。適当な担体の選択は配合される特定の製品に依存することになる。本明細書において用いられる担体は慣習的にヘアケア組成物に用いられている多くの成分を含むことができる。担体は、使用されるスタイリング化合物を溶解もしくは分散させるための溶媒を含むことができ、水、C
1−C
6アルコール、低級アルキルアセテート及びこれらの混合物が好ましい。担体はまた、様々な追加的な材料、例えばアセトン、炭化水素(イソブタン、ヘキサン、デセンなど)、ハロゲン化炭化水素(フレオン(登録商標)など)及びシクロメチコンなどの揮発性シリコーンを含むことができる。
【0035】
ヘアケア組成物がヘアスプレー、トニック、ジェル、もしくはムースである場合、好ましい溶媒は水、エタノール、揮発性シリコーン誘導体、及びこれらの混合物を含む。こうした混合物に用いられる溶媒は互いに相溶性であっても非相溶性であってもよい。ヘアムース及びエアロゾルヘアスプレーは、材料を泡として(ムースの場合)もしくは微細で均一なスプレーとして(エアロゾルヘアスプレーの場合)送るために、任意の慣習的な噴射剤を含むこともできる。適切な噴射剤の例は、例えばトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジフルオロエタン、ジメチルエーテル、プロパン、n−ブタンもしくはイソブタンを含む。低い粘度を有するトニックもしくはヘアスプレー製品は乳化剤を用いてもよい。適切な乳化剤は、例えば非イオン性、カチオン性、陰イオン性界面活性剤、又はこれらの混合物を含む。こうした乳化剤が用いられる場合、組成物の総重量を基準として、約0.01重量%から約7.5重量%の濃度で存在するのが好ましい。噴射剤の濃度は所望の濃度に調整することができるが一般的には、ヘアムース組成物については総重量を基準として約3重量%から約30重量%であり、ならびにエアロゾルヘアスプレー組成物については総重量を基準として約15重量%から約50重量%である。
【0036】
ヘアスタイリングワックス、クリームもしくはジェルはまた、典型的には構造剤(structurant)もしくは増粘剤を、典型的には0.01重量%から10重量%の量で含有する。
【0037】
適切なスプレー容器は当該技術分野において周知であり、慣習的な非−エアロゾルポンプスプレー、即ち「噴霧器」、上記記載のような噴射剤を有するエアロゾル容器もしくは缶、及び圧縮空気を噴射剤として用いるポンプエアロゾル容器を含む。
【0038】
配合物は界面活性剤、髪に適したカチオン性コンディショナー、四級シリコーンポリマー、シリコーンベースのコンディショナー及びそのエマルジョン並びにアミノ官能性シリコーン及びそのエマルジョンなどのコンディショニング材料を含んでもよい。
【0039】
全ての製品形態にとって適切な別の一般的な成分は、ヘアシャンプー及びコンディショナー用のサンスクリーニング剤、抗フケ活性剤、カルボン酸ポリマー増粘剤並びに本発明の組成物の種々の担体成分を乳化させるための乳化剤を含む。
【0040】
本発明の組成物はまた、ヘアケアに適した補助剤を含有していてもよい。一般的にこうした成分は個別に、全組成物の2重量%まで、好ましくは1重量%までの濃度で含まれる。
適切なヘアケア補助剤はアミノ酸、糖及びセラミドを含む。
【0041】
本発明の方法は、好ましくは自然乾燥もしくは送風機を補助として用いた乾燥のみの後、本発明の組成物を塗布することを含む。
【0042】
以下、非限定的な実施例により、本発明の好ましい実施形態をさらに例示する。実施例中及び本明細書中で言及される全ての百分率は、別に指示がない限り、総重量を基準とする重量による値である。
【実施例】
【0043】
実験 1
以下のベース配合物を調製した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
MD5800の異なる濃度を有する上記配合物の安定性を以下に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
実験 2
上記配合物を用いて、該配合物で処理した髪のスタイリング性を以下のように評価した。
【0049】
ダークブラウンのウェーブのかかったヘアピース(25cm、重さ2グラム)をSunsilk (Lively clean and
fresh)で洗浄及びコンディショニングした。濡れたヘアピースを櫛漉きし、トリートメントポリマーを含有する水溶液を各ヘアピースに0.35グラム塗布し、揉み込んだ。ヘアピースを乾燥させてからアイロンで伸ばし、30℃及び相対湿度80%の映像分析チャンバー内に置いて、さらに30分間振とうした。最初と30分後の時点で、ヘアピースの体積を記録した。高湿度及び振とうによりヘアピースは毛羽立ち−スタイルが乱れることになる。続いて、ヘアピースを5回櫛掛けしてスタイリングし直し、親指と他の指の間で強く握り、そして5回繰り返した。スタイリングし直した後の体積も記録した。
【0050】
初めにアイロンで伸ばした時の体積をV0、30分間の高湿度での振とう後の体積をV1、及びスタイリングし直した後の体積をV2とすると、
スタイリング指数=(V1−V0)×100/(V1−V2)
となる。
【0051】
【表4】
【0052】
上記表から、本発明の配合物は髪に塗布した時に、髪にスタイリング効果をもたらすことが示される。