(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069252
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】スクラップチョッパ
(51)【国際特許分類】
B23D 19/02 20060101AFI20170123BHJP
B23D 25/14 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
B23D19/02 A
B23D25/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-100572(P2014-100572)
(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2015-217448(P2015-217448A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年6月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】田邉 祐治
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠之
(72)【発明者】
【氏名】原田 英穂
【審査官】
青山 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−025131(JP,A)
【文献】
特開2000−158229(JP,A)
【文献】
実開昭59−160117(JP,U)
【文献】
特開平10−043930(JP,A)
【文献】
特開2002−224912(JP,A)
【文献】
米国特許第03295401(US,A)
【文献】
米国特許第05940971(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 19/00 − 19/08
B23D 25/00 − 25/14
B23D 35/00
B26D 1/20
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動刃体と、基台に固定された固定刃体とを備え、前記固定刃体と前記可動刃体との間に供給される帯状スクラップを前記固定刃体と前記可動刃体とにより剪断するスクラップチョッパであって、
前記固定刃体は、幅方向に沿って延在する4つの角に刃が設けられた長方形状部材により構成されており、
前記締結部材による前記基台に対する前記固定刃体の固定が解除されて、前記固定刃体の向きが上下方向及び表裏方向に反転されることで、前記4つの角の刃が前記帯状スクラップの剪断に使用されるように構成されており、
前記可動刃体は、回転移動可能に設けられており、
前記4つの角には、前記可動刃体の回転半径と同じ曲率半径を有する複数の曲線部が前記幅方向に並べて設けられており、
前記締結部材による前記基台に対する前記固定刃体の固定が解除されて、前記固定刃体が前記幅方向に変位されることで、各曲線部に位置する刃が前記帯状スクラップの剪断に使用されるように構成されている
ことを特徴とするスクラップチョッパ。
【請求項2】
前記固定刃体は、締結部材により1か所で前記基台に固定されている
ことを特徴とする請求項1記載のスクラップチョッパ。
【請求項3】
前記刃の表面には、窒化処理が施されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスクラップチョッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状スクラップを固定刃体と可動刃体とにより剪断するスクラップチョッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種のスクラップチョッパとしては、例えば下記の特許文献1等に示されている構成を挙げることができる。すなわち、従来構成では、可動刃体と基台に固定された固定刃体との間に供給される帯状スクラップが可動刃体と固定刃体とにより剪断される。固定刃体は、幅方向に沿って延在する1つの角に刃が設けられた長方形状部材により構成されるとともに、複数の締結部材により複数個所で基台に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−90329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定刃体の刃は、帯状スクラップの剪断を繰り返すうちに摩耗される。上記のような従来のスクラップチョッパでは、固定刃体の幅方向に沿って延在する1つの角にしか刃が設けられていない。このため、ある固定刃体を一定期間使用した場合、その固定刃体を他の固定刃体に交換する必要がある。各固定刃体には寸法公差や使用後の切削による再利用等によりそれぞれ寸法差があるので、固定刃体を他の固定刃体に交換する際には、シム等と呼ばれる調節部材を用いて固定刃体の固定位置を微調整する必要がある。この調節作業には相応の時間が必要とされるので、固定刃体を一定期間使用するたびに、帯状スクラップの剪断処理を所定時間停止する必要がある
。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、帯状スクラップの剪断処理を停止する時間を短縮できるスクラップチョッパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスクラップチョッパは、可動刃体と、基台に固定された固定刃体とを備え、固定刃体と可動刃体との間に供給される帯状スクラップを固定刃体と可動刃体とにより剪断するスクラップチョッパであって、固定刃体は、幅方向に沿って延在する4つの角に刃が設けられた長方形状部材により構成され
ており、締結部材による基台に対する固定刃体の固定が解除されて、固定刃体の向きが上下方向及び表裏方向に反転されることで、4つの角の刃が帯状スクラップの剪断に使用されるように構成されて
おり、可動刃体は、回転移動可能に設けられており、4つの角には、可動刃体の回転半径と同じ曲率半径を有する複数の曲線部が幅方向に並べて設けられており、締結部材による基台に対する固定刃体の固定が解除されて、固定刃体が幅方向に変位されることで、各曲線部に位置する刃が帯状スクラップの剪断に使用されるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスクラップチョッパによれば、固定刃体は、幅方向に沿って延在する4つの角に刃が設けられた長方形状部材により構成され
ており、締結部材による基台に対する固定刃体の固定が解除されて、固定刃体の向きが上下方向及び表裏方向に反転されることで、4つの角の刃が帯状スクラップの剪断に使用されるように構成されているので、帯状スクラップの剪断処理を停止する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1によるスクラップチョッパを示す側面図である。
【
図2】
図1の可動刃体及び固定刃体を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態2によるスクラップチョッパの固定刃体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1によるスクラップチョッパを示す側面図であり、
図2は
図1の可動刃体1及び固定刃体2を示す正面図であり、
図3は
図2の固定刃体2を示す斜視図である。
図1及び
図2に示すように、本実施の形態のスクラップチョッパは、2つの可動刃体1と固定刃体2とを含んでいる。なお、可動刃体1の数は、1でもよいし3以上でもよい。
【0010】
図1及び
図2に示すように、各可動刃体1は、金属製の円板状部材により構成されており、回転体10にそれぞれ軸支されている。すなわち、各可動刃体1は、回転体10の軸体10aを中心に回転移動可能に設けられるとともに、各可動刃体1の軸体1aを中心に自転可能に設けられている。可動刃体1の回転半径は、回転体10の軸体10aの中心位置と可動刃体1の軸体1aの中心位置との間の距離Dと可動刃体1の半径dとを加算した値(
図2参照)によって定義される。
【0011】
固定刃体2は、
図3に示す金属製の長方形状部材により構成されている。幅方向2wに沿って延在する4つの角2co
1〜2co
4(上部表角2co
1、上部裏角2co
2、下部表角2co
3及び下部裏角2co
4)には刃が設けられており、少なくともこれらの刃の表面には窒化処理が施されている。幅方向2wとは、可動刃体1が変位する面と平行な方向であって、可動刃体1が固定刃体2に接離する高さ方向と直交する方向である。4つの角2co
1〜2co
4に刃が設けられるとは、各角2co
1〜2co
4を形成する2つの面の間の角度が直角とされていることを意味する。刃の表面に窒化処理を施すとは、刃の表面に窒素を浸透させて刃の表面を硬化させることを意味する。
【0012】
4つの角2co
1〜2co
4には、可動刃体1の回転半径(距離D+半径d)と同じ曲率半径を有する曲線部2cuがそれぞれ形成されている。当然ながら、4つの角2co
1〜2co
4の刃は曲線部2cuにも設けられている。
【0013】
固定刃体2の表面には、裏面まで連通された1つの締結孔2hが設けられている。固定刃体2の表面及び裏面は点対称な形状を有しており、締結孔2hは表面及び裏面の中心位置に設けられている。
図1に示すように、固定刃体2は締結部材20(ボルト20a及びナット20b)によって基台21に1か所で固定されている。締結孔2hには、締結部材20を構成するボルト20aが挿通されている。固定刃体2と基台21との間には、シム等と呼ばれる調節部材22が介在されている。調節部材22は、固定刃体2ごとの寸法差を補正するように固定刃体2の固定位置を調節するためのものである。
【0014】
回転体10とともに回転移動する可動刃体1と基台21に固定された固定刃体2との間には、帯状スクラップ3が連続的に供給される。帯状スクラップ3は、例えば冷延鋼帯の幅方向両側が切り取られたトリム屑等により構成されるものである。帯状スクラップ3は、可動刃体1と固定刃体2とにより所定長さに剪断される。具体的には、帯状スクラップ3は、4つの角2co
1〜2co
4の刃のうちの1つと、回転移動する可動刃体1の外縁とにより剪断される。
【0015】
ここで、帯状スクラップ3の剪断に現在使用されている刃が上部表角2co
1(
図3参照)の刃とする。このとき、締結部材20による基台21に対する固定刃体2の固定を解除して、固定刃体2の向きを上下方向に反転させると、下部表角2co
3の刃を帯状スクラップ3の剪断に用いることができる。同様に、上部表角2co
1の刃を使用しているときに、固定刃体2の向きを表裏方向に反転することで、上部裏角2co
2の刃を帯状スクラップ3の剪断に使用できる。また、上部表角2co
1の刃を使用しているときに、固定刃体2の向きを表裏方向及び上下方向に反転することで、下部裏角2co
4の刃を帯状スクラップ3の剪断に用いることができる。すなわち、固定刃体2の向きを上下方向及び表裏方向に反転させることで、固定刃体2の4つの角2co
1〜2co
4の刃を帯状スクラップ3の剪断に使用できる。これにより、固定刃体の1つの角にしか刃が設けられていない従来構成と比較して、1つの固定刃体の使用期間を4倍にすることができる。このため、調節部材22を変更する手間を低減でき、帯状スクラップ3の剪断処理を停止する時間を短縮できる。また、締結部材20により固定刃体2が基台21に1か所で固定されているので、容易に固定刃体2の固定を解除でき、帯状スクラップ3の剪断処理を停止する時間を短縮できる。
【0016】
このようなスクラップチョッパによれば、固定刃体2は、幅方向2wに沿って延在する4つの角2co
1〜2co
4に刃が設けられた長方形状部材により構成されるとともに、締結部材20により1か所で基台21に固定されており、締結部材20による基台21に対する固定刃体2の固定が解除されて、固定刃体2の向きが上下方向及び表裏方向に反転されることで、4つの角2co
1〜2co
4の刃が帯状スクラップ3の剪断に使用されるように構成されているので、帯状スクラップ3の剪断処理を停止する時間を短縮できる。
【0017】
また、刃の表面に窒化処理が施されているので、刃の摩耗を遅くでき、1つの刃を帯状スクラップ3の剪断に使用できる期間を長くできる。これにより、帯状スクラップ3の剪断処理を停止する時間を短縮できる。
【0018】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2によるスクラップチョッパの固定刃体2を示す斜視図である。なお、実施の形態1と同じ又は同様の構成には、同じ符号を付して説明する。
図4に示すように、本実施の形態の固定刃体2の4つの角2co
1〜2co
4には、可動刃体1の回転半径(距離D+半径d)と同じ曲率半径を有する複数の曲線部2cuが幅方向2wに並べて設けられている。具体的には、各角2co
1〜2co
4に2つの曲線部2cuが設けられている。
【0019】
締結部材20による基台21に対する固定刃体2の固定が解除されて、固定刃体2が幅方向2wに変位されることで、各曲線部2cuに位置する刃が帯状スクラップ3の剪断に使用される。すなわち、本実施の形態の固定刃体2(各角2co
1〜2co
4に2つの曲線部2cuが設けられている固定刃体2)は、実施の形態1の構成と比較して1つの固定刃体の使用期間を2倍にすることができ、従来構成と比較して1つの固定刃体の使用期間を8倍にすることができる。各角2co
1〜2co
4により多くの曲線部2cuを設けることで、1つの固定刃体の使用期間をさらに長くすることができる。なお、
図4の固定刃体2には複数の締結孔2hが設けられているが、固定刃体2は締結部材20により1か所で基台21に固定される。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0020】
このようなスクラップチョッパでは、4つの角2co
1〜2co
4に、可動刃体1の回転半径(距離D+半径d)と同じ曲率半径を有する複数の曲線部2cuが幅方向2wに並べて設けられており、締結部材20による基台21に対する固定刃体2の固定が解除されて、固定刃体2が幅方向2wに変位されることで、各曲線部2cuに位置する刃が帯状スクラップ3の剪断に使用されるので、実施の形態1の構成と比較して1つの固定刃体の使用期間を延長でき、調節部材22を変更する手間をさらに低減できる。これにより、帯状スクラップ3の剪断処理を停止する時間をさらに短縮できる。
【符号の説明】
【0021】
1 可動刃体
2 固定刃体
2co
1〜2co
4 4つの角
2cu 曲線部
20 締結部材
21 基台
3 帯状スクラップ