特許第6069265号(P6069265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069265
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】磁気抵抗性センサシールド
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/39 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   G11B5/39
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-151654(P2014-151654)
(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-28832(P2015-28832A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2015年6月29日
(31)【優先権主張番号】13/953,936
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Seagate Technology LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・マクニール
(72)【発明者】
【氏名】アイデン・ゴッギン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・オルムストン
(72)【発明者】
【氏名】ビクター・ボリス・サポツニコフ
【審査官】 岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−175038(JP,A)
【文献】 特開2012−133864(JP,A)
【文献】 特開2011−238339(JP,A)
【文献】 特開2004−146028(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0280774(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0087046(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0128647(US,A1)
【文献】 米国特許第6456467(US,B1)
【文献】 米国特許第6437949(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/33 − 5/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサスタックの第1の側に位置るシールドを備え、前記シールドは、
強磁性材料の第1の層と、
強磁性材料の第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層とを分離する結合スペーサ層とを含み、前記第1の層と前記第2の層との間の距離は、前記センサスタックからクロストラック方向に離れた第2の領域よりも前記センサスタックの近位の第1の領域において大きい、センサ装置。
【請求項2】
センサスタックの第1の側に位置るシールドを備え、前記シールドは、
強磁性材料の第1の層と、
強磁性材料の第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層とを分離する結合スペーサ層とを備え、前記第1の層と前記第2の層との間の距離は、前記センサスタックからクロストラック方向に離れた第2の領域よりも前記センサスタックの近位の第1の領域において大きく、さらに、
前記シールドを前記センサスタックから分離する第1非磁性層を備える、センサ装置。
【請求項3】
前記センサスタックのクロストラック側に側面シールドをさらに備え、
前記第1非磁性層は、前記シールドを前記側面シールドから分離する、請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記センサスタックの近位の前記第1の領域は、前記センサスタックと前記シールドとが積層される方向において、前記センサスタックの中心に整列した領域を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記結合スペーサ層は可変厚さを有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記第1の層と前記第2の層との間に第2非磁性層をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記第2非磁性層は、前記クロストラック方向の前記センサスタックの長さよりも大きい、前記クロストラック方向の長さを有する、請求項6に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記第2非磁性層は、前記シールドに対向する前記センサスタックの表面を越えて前記クロストラック方向に延在する両縁端を有する、請求項6に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
磁気データ記憶および検索システムにおいて、磁気読み書きヘッドは、磁気ディスク上に格納された、磁気的に符号化された情報を検索するための磁気抵抗性(MR)センサを有するリーダ部分を含む。ディスク表面からの磁束は、MRセンサの検知層の磁化ベクトルの回転を招き、これはMRセンサの電気抵抗率の変化を招く。MRセンサの抵抗率の変化は、MRセンサに電流を通過させ、MRセンサにわたる電圧降下を測定することによって検出されることができる。外付け回路が次に電流情報を適当な形式に変換し、この情報を操作してディスク上に符号化された情報を回復する。
【0002】
磁気記憶媒体技術の改善は、今日利用可能な磁気ディスク上の面の記録密度を可能にする。しかしながら、面の記録密度が高まるにつれて、より小型の、より高感度のMRセンサが所望される。MRセンサのサイズが小さくなるにつれて、MRセンサは適用される場に対する磁気ディスクからの望ましくない磁気応答を示す潜在的可能性を有する。効果的なMRセンサは、磁気ノイズを低減または排除し得、ディスク上に書き込まれたデータの正確な回復のために十分な振幅を持つ信号を提供し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書に記載および主張される実装例は、センサスタックの第1の側面上に位置付けられたシールドを提供し、このシールドは、強磁性材料の第1の層、強磁性材料の第2の層、および第1の層と第2の層とを分離する結合スペーサ層を含み、第1の層と第2の層との間の距離は、センサスタックから離れた領域よりも、センサスタックの近位の領域において大きい。
【0004】
本概要は、以下の発明を実施するための形態においてさらに説明される概念の選択を簡略化された形式で紹介するために提供される。本概要は、特許請求の範囲に記載された対象の重要な特徴または必要不可欠な特徴を特定することを意図せず、また特許請求の範囲に記載された対象を制限するように用いられることも意図しない。特許請求の範囲に記載された対象の他の特徴、詳細、効用、および利点は、付随する図面においてさらに図示され、添付の特許請求の範囲において画定される種々の実装例および実装例の以下のより具体的な、書面による発明を実施するための形態から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、滑動部上に磁気抵抗性センサ(MR)センサを含むディスクドライブアセンブリの例の平面図を図示したものである。
図2図2は、上部シールドと底部シールドの両方のSAF構造の中に局所的に増強された透磁性を有するMRセンサの一例を図示したものである。
図3図3は、上部シールドのSAF構造の中に局所的に増強された透磁性を有するMRセンサの一例を図示したものである。
図4図4は、局所的に増強された透磁性を持つSAF構造を含む、分離された上部シールドを含むMRセンサの一例を図示したものである。
図5図5は、合成反強磁性(SAF)構造の形成中に実施される蒸着作業を図示したものである。
図6図6は、SAF構造の形成中に実施されるマスキングおよびフライス作業を図示したものである。
図7図7は、SAF構造の形成中に実施されるマスク除去および追加的な蒸着作業を図示したものである。
図8図8は、SAF構造の形成中に実施される蒸着作業を図示したものである。
図9図9は、SAF構造の形成中に実施されるマスキングおよび蒸着作業を図示したものである。
図10図10は、SAF構造の形成中に実施されるマスク除去および追加的な蒸着作業を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
パルススリミング(例えば、磁気抵抗性(MR)センサによって検出される磁気信号の幅を減少させる)は、MRセンサの線形の濃度分解能を改善する1つの方途である。PW50縮小とも称されるパルススリミングは、センサシールドの透過性を増加させることによって到達され得る。しかしながら、シールドの透過性を増加させることは、偶発的にシールドの安定性を減少させることがある。包括的に増大された透過性を持つシールドは、トランデューサヘッドの書き込み要素または外部の漂遊磁界に結合する傾向が強く、磁気媒体から読み出された信号の信号対雑音(SNR)比を低下させる。よって、PW50を改善するためにシールドの透過性を増大させることと、MRセンサにおけるシールドの安定性を維持するためにシールドの透過性を低く保つことの両方の相反する目的が存在する。
【0007】
本明細書に開示される実装例は、信号品質における偶発的な減少を緩和する一方で、所望されるPW50減少を達成するためのセンサスタックの近位にある局所的に増強されたシールド透過性を可能とするMRセンサシールド設計を提供する。具体的には、本明細書に開示されるMRセンサの例は、局所的に増強された透磁性の領域を持つ合成反強磁性(SAF)シールドを含む。一実装例によれば、センサスタックの近位にある領域におけるSAFシールドの異方性を減少させるために、1対の強磁性層の間に非磁性層が挿入される。減少された異方性のこの領域は、SAFシールドの包括的な透過性を上回る透過性(例えば、局所透過性)を有する。本明細書において用いられる場合、「包括的な透過性」という用語は、MRセンサシールドの1つ以上のシールド要素の全体的な透過性を指す。
【0008】
本明細書に開示される技術は、種々の異なる種類のMRセンサ(例えば、異方性磁気抵抗性(AMR)センサ、トンネリング磁気抵抗性(TMR)センサ、巨大磁気抵抗性(GMR)センサなど)とあわせて用いられ得る。そのため、本明細書に開示される実装例はまた、面内スピンバルブ(LSV)、スピンホール効果(SHE)、スピントルク振動(STO)などの新しい物理現象に基づく新しいMRセンサ設計にも適用され得る。
【0009】
図1は、ディスクドライブアセンブリ100の例の平面図を図示したものである。ディスクドライブアセンブリ100の例は、アクチュエータアーム109の遠位端上に媒体ディスク108にわたって位置付けられる滑動部120を含む。アクチュエータ回転軸106を中心として回転する回転式ボイスコイルモータが、滑動部120をデータトラック(例えば、データトラック140)上に位置決めするために用いられ、またディスク回転軸111を中心として回転するスピンドルモータが、媒体ディスク108を回転させるために用いられる。特に表示Aを参照して、媒体108は、外径102および内径104を含み、その間には円形の点線で図示されるいくつものデータトラック(例えば、データトラック140)がある。フレックスケーブル130は、動作の間、アクチュエータアーム109の旋回軸で回転する動きを可能にする一方で、滑動部120への必須の電気的接続経路を提供する。
【0010】
滑動部120は、さまざまな機能を実施するさまざまな層を持つ積層構造である。滑動部120は、ヨークまたは台座によってリターン磁極または対向する磁極に磁気的に結合された主書き込み磁極を有する書き込み部(図示せず)を含む。書き込みパルスを書き込み磁極の中に誘導するために、磁化コイルがヨークまたは台座を取り囲む。
【0011】
滑動部120はまた、媒体ディスク108からデータを読み取るための1つ以上のMRセンサも含む。表示Bは、ディスクドライブアセンブリ100の使用時に、媒体ディスク108の空気ベアリング表面(ABS)に面するMRセンサ116の側面を図示したものである。よって、表示Bに示されるMRセンサ116は、表示Aに示される滑動部120に操作的に取り付けられたとき、約180度で(例えば、z軸を中心として)回転し得る。
【0012】
滑動部120のMRセンサ116はセンサスタック114を含み、これは、複数の機能を実施する複数の層を含む。種々の実装例では、かかる層の数およびそれらの関連付けられる機能はさまざまであり得る。しかしながら、図1のセンサスタック114の例は、第1の軟質磁性層130および第2の軟質磁性層118を含む。第1の軟質磁性層130(「ピン止め層」とも称される)は、AFM層132によって所与の方向にバイアスされる帯磁方向を有する。これもまた軟質磁性材料からなり得る参照層138は、第1の軟質磁性層130を第2の軟質磁性層118から磁気的に分離する。よって、第2の軟質磁性層118は、外部場に応じて自由に回転し、「自由層」と呼ばれる。かかる回転は、底部シールド136と上部シールド134との間のセンサスタック114の電気抵抗率の変化を招く。センサスタック114の電気抵抗率の変化は、媒体ディスク108上の磁気的に偏極した領域と相関し、これは順に磁気媒体上に格納されたデータに対応する。
【0013】
上部シールド134および底部シールド136は、電磁干渉、主にz方向の干渉からセンサスタック114を隔離し、処理する電子機器(図示せず)に接続されたおよび導電性の第1および第2の導線としての役割をする。一実装例では、底部シールド136および上部シールド134は、他の、隣接するデータビットの磁場干渉を低減または遮断する一方で、センサスタック114が、センサスタック114の直下のデータビットの磁場による影響を受けることを容認する。動作中、媒体ディスク108上のトラック140に沿ったデータビットは、上部シールド134の下に、センサスタック114の下に、次に底部シールド136の下に連続的に通過し得る。したがって、上部シールド134の近位にあるセンサスタック114のエッジは、センサスタックの「前縁」と称されることができ、および底部シールド136の近位にあるセンサスタック114のエッジは、センサスタック114の「後縁」と称されることができる。
【0014】
MRセンサ116の上部シールド134は、反強磁性(AFM)ピニング層128および合成反強磁性(SAF)構造150を含む。SAF構造150は、上部強磁性層144、結合スペーサ層146、非磁性挿入層148、および下部強磁性層142を含む。他のSAF構造のように、強磁性層144および142は、実質的に逆の向きと実質的に同一の大きさの磁気モーメントを有する。AFMピニング層128は、上部強磁性層144の帯磁方向を設定方向にピン止めし、および結合スペーサ層146は、上部強磁性層144と下部強磁性層142との間の強い反強磁性結合をもたらすRKKY(Ruderman−Kittel−Kasuya−Yosida)反応を提供する。この結合は強い反平行結合であり、包括的に増大された磁気異方性を提供し、これが増大したシールド安定性へと転換される。
【0015】
上部強磁性層144および下部強磁性層142はそれぞれ、結合スペーサ層146を実質的に上回るz方向の厚さを有する。一実装例では、上部強磁性層144および下部強磁性層142はそれぞれ、およそ10−40ナノメータのz方向の厚さを有し、結合スペーサ層146は、約0.3〜1.0nmのz方向の厚さを有する。上部および下部強磁性層144および142は、例えば、CoFe、NiFe、CoNiFe、またはCoFeBなどの強磁性合金材料であることができる。結合スペーサ層146は、例えば、Ru、Cu、Cr、またはMoを含む、RKKY相互作用を提供する能力を持つ非磁性材料であることができる。一実装例では、結合スペーサ層146は、約1nmの厚さのルテニウムの層である。
【0016】
非磁性挿入層148は、上部強磁性層144と下部強磁性層142との間の、センサスタック114の中心と軸方向に整列(z方向に沿って)した領域における距離を増大させる。下部強磁性層142と上部強磁性層144との間の増大した分離は、RKKY結合を局所的に分断または切断し、またSAF構造150の異方性を低下させる。かかる局所的に低下された異方性は、センサスタック114の前縁の近位にある領域における透過性の局在的な増大へと転換される。その結果、MRセンサ116によって観測されたPW50は、上部シールド134の安定性に著しく影響を与えることなく低下する。上部シールド134の安定性は、少なくとも一実装例において、透過性とは無関係に最適化され得る。
【0017】
Ru、Ta、Cr、Cu、Pt、およびかかる材料の非磁性合金(例えば、NiRu、NiCr、NiPtなど)を含むがこれらに制限されない、さまざまなふさわしい材料が非磁性スペーサ層148層に用いられ得る。非磁性スペーサ層148は、センサスタック114のクロストラック長よりも大きいクロストラック長(x方向)を有し得る。図1において、非磁性スペーサ層148は、センサスタック114のどちらかの側を超える距離だけクロストラック方向(x方向)に延在する。実装の一例では、センサスタック114は50nm以下のクロストラック長を有し、非磁性スペーサ層148は約50から200nmの間のクロストラック長を有する。
【0018】
上述の層に加えて、MRセンサ116はまた、センサスタック114の反対側に隣接する側面シールド110および112をも含み、これはセンサスタック114をx方向(クロストラック)の干渉から隔離することにより、MRセンサ116のクロストラック分解能を改善する。
【0019】
図2は、センサスタック204のどちらかの側に局所的に増強された透磁性の領域を有するMRセンサ200の一例を図示したものである。MRセンサ200は、第1のSAF構造226を持つ上部シールド230と、第2のSAF構造228を持つ底部シールド232とを含む。SAF構造226および228のそれぞれが、1対の強磁性層(例えば、第1の1対の強磁性層206および208、ならびに第2の1対の強磁性層216および218)を含む。追加的に、SAF構造226および228のそれぞれが、結合スペーサ層(例えば、結合スペーサ層212および222)、および非磁性挿入層(例えば、非磁性挿入層210および234)を含む。第1および第2のSAF構造226および228の縁端に各々隣り合うAFMピニング層214および236は、隣接する強磁性層208および218の帯磁方向を好ましい方向(例えば、強磁性層208および218内に矢印で図示される方向)にバイアスする。結合スペーサ層212および222はそれぞれ、それぞれの1対の強磁性層の間(例えば、1対の強磁性層208および206、または1対の強磁性層216および218)に強いRKKY反強磁性結合を提供する。この強結合は、非磁性挿入層210および234によって局所的に切断され、これが非磁性挿入層210および234を含む領域に増強された透過性を生じさせる。
【0020】
MRセンサ200のセンサスタック204は、複数の機能を実施する複数の層(図示せず)を含む。硬質磁性または軟質磁性材料からなり得る側面シールド220および224は、センサスタック204の反対側上に位置付けられ、センサスタック204をクロストラック方向(例えば、x方向)の電磁場から遮蔽する。側面シールド220および224のそれぞれの帯磁方向(側面シールド220および224内の矢印によって示される)は、隣接する強磁性層206および216(強磁性層206および216内の矢印によって示される)のうちの一方または両方の帯磁方向によってバイアスされる。
【0021】
非磁性挿入層210および234はそれぞれ、センサスタック238の後縁と隣接する結合スペーサ層212または222との間に位置付けられる。しかしながら、他の実装例では、非磁性挿入層210または234の一方または両方が、隣接する結合スペーサ層212または222の反対側に位置付けられる。例えば、非磁性挿入層210は、結合スペーサ層212と強磁性層208との間に置かれ得る。
【0022】
非磁性挿入層210は、結合スペーサ層212の厚さと同一または類似であるz方向の厚さを有し得る。一実装例では、非磁性挿入層210および234の一方または両方のz方向の厚さは、およそ1nmである。MRセンサ200の他の特徴は、図1に関して上述されたものと同一かまたは類似であり得る。
【0023】
SAF構造226および228は全く同一であるように示されているが、かかる構造は組成または構造において互いに異なり得る。SAF構造226および228の一方または両方は、示されているものに追加して層を含み得る。他の実装例は、示されているもののうちの1つ以上の層を省略するか、または1つ以上の層を同等に機能する代替的な構造で置換し得る。少なくとも一実装例において、SAF構造(例えば、SAF構造228)は底部シールドに含まれるが上部シールドには含まれない。
【0024】
図3は、上部シールド330のSAF構造326の中に局所的に増強された透磁性を有するMRセンサ300の一例を図示したものである。SAF構造326は、結合スペーサ層312のどちらかの側に1対の強磁性層306および308を含む。結合層312は、MRセンサ300の重心軸350の近くでエッジの近くよりも大きい可変厚さ(z方向の厚さ)を有する。動作中、結合スペーサ層312は、MRセンサ300のエッジの近くの強磁性層306と308との間に強いRKKY反強磁性結合を提供する。しかしながら、このRKKY結合効果は、結合スペーサ層312が増大した厚さを有する場合、センサスタック304と軸方向に整列した中央領域で低下または排除される。その結果として、上部シールド330は、結合スペーサ層312の増大された厚さの領域内に局所的に増強された透磁性を有する。
【0025】
実装の一例では、結合スペーサ層312は、実質的にMRセンサ300の全体のクロストラック(x方向)長に及び、これは例えば、約10〜50μmである。結合スペーサ層312内の増大した厚さの中央領域は、クロストラック方向に約50〜200nmに及ぶ。
【0026】
MRセンサ300の外側エッジ(例えば、クロストラック方向の平面を横切るエッジ)の近位にある結合スペーサ層312の領域は、約1nmのz方向の厚さを有してもよく、一方増大した厚さの中央領域は、約2〜3nmのz方向の厚さを有してもよい。
【0027】
SAF構造326に加えて、MRセンサ300は、強磁性層308の帯磁方向を好ましい方向(例えば、強磁性層308内に矢印で図示される帯磁方向)にバイアスするAFMピニング層314を含む。側面シールド320および324は、センサスタック304の反対側上に位置付けられ、センサスタック304をクロストラック方向の電磁場から遮蔽する。MRセンサ300の他の特徴は、図1図2に関して上述されたものと同一かまたは類似であり得る。
【0028】
SAF構造326をセンサスタック304ならびに側面シールド320および324から減結合することは、局所的に増強された透磁性の領域内(例えば、増大された厚さの結合スペーサ層312、または図1図2に関して示され記載された非磁性挿入層の領域内)のより磁気的な回転を可能にすることにより、分解能利得をさらに促進し得る。これに基づき、図4は、局所的に増強された透磁性を持つSAF構造426を含む減結合された上部シールド430を含むMRセンサ400の一例を図示したものである。
【0029】
上部シールド430は、反強磁性(AFM)ピニング層414およびSAF構造426を含む。SAF構造426は、1対の強磁性層406および408、結合スペーサ層412、ならびに非磁性挿入層410をさらに含む。結合スペーサ層412は、強磁性層406と408との間で結合する強いRKKY反強磁性を提供する。しかしながら、このRKKY結合効果は、非磁性挿入層410を含むセンサスタック404と軸方向に整列した中央領域で低下または排除される。RKKY結合を局所的に切断することは、センサスタック404の前縁と軸方向に整列したMRセンサ400の中央領域における異方性を局所的に低下させる効果を有する。
【0030】
上部シールド430は、非磁性減結合層416によってセンサスタック404ならびに側面シールド420および424から減結合される。かかる減結合は、側面シールド420および424が、SAF構造426における隣接する強磁性層406(強磁性層406内の矢印によって示される)の帯磁方向と異なる帯磁方向(側面シールド要素420および424内の矢印によって示される)を有することを容認する。一実装例では、側面シールド420および424の帯磁方向は、強磁性層406の帯磁方向の逆か、実質的に逆である。
【0031】
図4のSAF構造426が側面シールド420および424から減結合されるため、MRセンサ400によって観測されるPW50は、SAF構造426が側面シールド420および424から減結合されていない実装例(例えば、図1図3)と比較して改善される。一実装例によれば、MRセンサ400は、側面シールド410および420に結合されたSAF構造426を用いたその他の点では全く同一の実装例を超える、1〜1.5nmのPW50利得を出す。
【0032】
図5図7は、局所的に増強された透磁性の領域を持つSAFシールドを作成するための作業例を図示したものである。図5は、局所的に増強された透磁性を持つSAF構造の形成中に実施される蒸着作業500を図示したものである。蒸着作業500において、強磁性材料の層506および非磁性材料の層510が部分的に形成されたMRセンサ530上に蒸着される。部分的に形成されたMRセンサ530は、底部シールド536、センサスタック504、ならびに側面シールド520および524を含む。強磁性材料の層506は、強磁性材料506が側面シールド520および524、ならびにセンサスタック504の両方と接触するように、部分的に形成されたMRセンサ530にわたって実質的に均等に蒸着される。非磁性材料の層510は、強磁性材料の層506にわたって実質的に均等に蒸着される。
【0033】
図6は、局所的に増強された透磁性を持つSAF構造の形成中に実施されるマスキングおよびフライス作業600を図示したものである。マスキングおよびフライス作業600の間、液体フォトレジストの薄層(図示せず)が、部分的に形成されたMRセンサ630にわたって実質的に均等に蒸着される。部分的に形成されたMRセンサ600は、底部シールド636、センサスタック604、側面シールド620および624、強磁性材料の層606、ならびに非磁性材料の層610を含む。液体フォトレジストの一部分は強い光に曝露され、曝露された部分または曝露されない部分(フォトレジストの種類に依存する)の溶解度を変更する。フォトレジストの変更されていない部分は、現像溶液によって除去され、部分的に形成されたMRセンサ630の中央領域にわたって硬化フォトレジストマスク622をあとに残す。マスキングされていない非磁性材料(図示せず)が部分的に形成されたMRセンサ630のエッジの近くで破砕される一方で、硬化フォトレジストマスク622は、中央領域における下層の非磁性材料610を保護する。
【0034】
図7は、局所的に増強された透磁性を持つSAF構造の形成中に実施されるマスク除去および追加的な蒸着作業700を図示したものである。マスク除去および層構築作業700の間、底部シールド736、センサスタック704、側面シールド720および724、強磁性材料の層706、ならびに非磁性材料の層710の形成後にMRセンサ730から硬化フォトレジストマスク(例えば、図6の硬化フォトレジストマスク622と同一または類似のマスク)を除去するためにフォトレジスト溶剤が用いられる。硬化フォトレジストマスクが除去された後、結合スペーサ層712が非磁性材料710の上に、および非磁性材料710と接触して蒸着され、別の強磁性層708が結合スペーサ層712の上に、および結合スペーサ層712と接触して蒸着され、AFM層714が強磁性層708の上に、および強磁性層708と接触して蒸着される。
【0035】
図8図10は、局所的に増強された透磁性の領域を持つSAFシールドを作成するための追加的な作業の例を図示したものである。図8は、局所的に増強された透磁性を持つSAF構造の形成中に実施される蒸着作業800を図示したものである。蒸着作業800中、強磁性材料の層806が部分的に形成されたMRセンサ830上に蒸着される。部分的に形成されたMRセンサ820は、形成されたセンサスタック804を持つ底部シールド836ならびにその上に形成された側面シールド820および824を含む。強磁性材料の層806は、強磁性材料806が側面シールド820および824、ならびにセンサスタック804と接触するように、部分的に形成されたMRセンサ830にわたって実質的に均等に蒸着される。
【0036】
図9は、SAF構造の形成中に実施される、局所的に増強された透磁性を持つマスキングおよび蒸着作業900を図示したものである。マスキングおよび蒸着作業900の間、液体フォトレジストの薄層(図示せず)は、MRセンサ930にわたって実質的に均等に蒸着され、底部シールド936、センサスタック904、側面シールド920および924、ならびに強磁性材料の層906を含む。液体フォトレジストの一部分は強い光に曝露され、曝露された部分または曝露されない部分(フォトレジストの種類に依存する)の溶解度を変更する。フォトレジストの変更されていない部分は、現像溶液によって除去され、部分的に形成されたMRセンサ930の外側エッジ領域にわたって硬化フォトレジストマスク922をあとに残す。硬化フォトレジストマスク922は、強磁性材料906を中央領域で曝露したままとする一方で、外側エッジ領域における下層の強磁性材料906を保護する。硬化フォトレジストマスクが所定の位置にある間、非磁性材料の層910は、部分的に形成されたMRセンサ930にわたって実質的に均等に蒸着される。
【0037】
図10は、局所的に増強された透磁性を持つSAF構造の形成中に実施されるマスク除去および追加的な蒸着作業1000を図示したものである。マスク除去および層構築作業1000の間、底部シールド1036、センサスタック1004、側面シールド1020および1024、強磁性材料の層1006、ならびに非磁性材料の層1010の形成後、MRセンサ1030から硬化フォトレジストマスク(例えば、図9の硬化フォトレジストマスク922と同一または類似のマスク)を除去するためにフォトレジスト溶剤が用いられる。硬化フォトレジストマスクが除去された後、非磁性材料1010の上に、かつ非磁性材料1010と接するように、結合スペーサ層1012が蒸着され、別の強磁性層1008が、結合スペーサ層1012の上に、かつ結合スペーサ層1012と接するように蒸着され、AFM層1014が強磁性層1008の上に、かつ強磁性層1008と接するように蒸着される。
【0038】
本明細書において開示される実装例のそれぞれに関して検討された特定のステップは、選択できるものであり、利用される材料および/または所与のシステムの設計基準に依存し得る。上記の仕様、例、およびデータは、本発明の例示的実装例の構造および使用の完全な説明を提供する。本発明の精神および範囲を逸脱することなく本発明の多くの実装例がなされることができるため、本発明は以下に添付される特許請求の範囲の中に属する。
図1
図2
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図4
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図6
図7
図8
図9
図10