特許第6069287号(P6069287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069287
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】自己注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20170123BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20170123BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20170123BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A61M5/168 540
   A61M5/168 514
   A61M5/20 510
   A61M5/142 522
   A61M5/145 504
【請求項の数】4
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-230724(P2014-230724)
(22)【出願日】2014年11月13日
(62)【分割の表示】特願2012-544447(P2012-544447)の分割
【原出願日】2009年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-37611(P2015-37611A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2014年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ソンダーレガー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】コーリー クリステンセン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイリン イングルビー
(72)【発明者】
【氏名】パティー チェイス
(72)【発明者】
【氏名】カート ビンガム
【審査官】 鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−538773(JP,A)
【文献】 特表2006−511582(JP,A)
【文献】 特開2005−270579(JP,A)
【文献】 特開2009−119012(JP,A)
【文献】 特表2007−502169(JP,A)
【文献】 特表平07−503162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/00−9/00
A61M 31/00
A61M 39/00−39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達装置であって、
本体であって、前記本体内に配置される、薬剤を収容できる液溜めを有する本体と、
患者の皮膚を刺通する注射針であって、前記液溜めと流体連通する注射針と、
加圧ユニットと、
前記液溜めから薬剤を排出するために前記加圧ユニットの力を受けて前記本体内を移動することができるプランジャと、
前記薬剤の送達が実質的に完了したことを示すための前記薬物送達装置の外から見ることができるインジケータ手段と、を備え、
前記プランジャの所定距離の移動が前記インジケータ手段に、前記薬物送達装置の外から見ることができる当該インジケータ手段の色の変化を起動させ、
前記プランジャは、前記所定距離の少なくとも一部を、前記インジケータ手段を起動することなく移動し、
前記インジケータ手段は、感圧性のストリップを備え、前記プランジャがその移動行程の終点に達すると、前記プランジャは、前記加圧ユニットの力により前記液溜め及び前記感圧性のストリップのうちの一つと接触し、前記液溜め及び前記感圧性のストリップのうちの前記一つに対する前記プランジャの圧力によって、前記感圧性のストリップの色の変化が引き起こされ、前記薬剤の送達が実質的に完了したことが示されることを特徴とする薬物送達装置。
【請求項2】
前記感圧性のストリップが、前記液溜め内に配置され、
前記プランジャの移動行程の終点で、前記液溜めに対する前記プランジャの圧力により前記感圧性のストリップの色の変化が引き起こされることを特徴とする請求項に記載の薬物送達装置。
【請求項3】
前記液溜めは、透明なドーム、および可撓性かつ非伸張性の液溜めドームシールを備え、
前記感圧性のストリップは、前記ドームの内面に配置され、
前記プランジャの移動行程の終点で、前記液溜めドームシールは、前記プランジャの圧力を前記感圧性のストリップに伝え、それによって前記感圧性のストリップの色の変化が引き起こされることを特徴とする請求項に記載の薬物送達装置。
【請求項4】
前記加圧ユニットは、加圧ばねを備えることを特徴とする請求項1に記載の薬物送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、患者にとっての便利さが向上し、使用しやすく効率的な物質送達装置に関する。さらに、本発明は、一般的に、様々な物質または薬剤を患者に送達するのに使用可能な、パッチ様の自己保持できる(self−contained)物質注入装置または自己注射装置に関する。より詳細には、本発明は、用量終了インジケータ(end−of−dose indicator)を有するパッチ様の注入装置または自己注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病などの病気を患う人々など、極めて多くの人々が、ブドウ糖レベルの厳密な制御を維持するためにインスリンを日々注入するなど、何らかの形態の注入治療を利用している。現在、インスリン注入装置の例では、2つの主な日常インスリン治療モードがある。第1のモードには、注射器およびインスリンペンがある。これらの装置は、使用が簡単で費用が比較的低いが、典型的には日に3から4回の注射の度に針を刺す必要がある。第2のモードには、注入ポンプ治療があり、約3年持つ高価なポンプを購入する必要がある。このポンプの費用が高く(注射器治療の日々の費用の約8から10倍)、その寿命が限られていることが、このタイプの治療の大きな障害になっている。インスリンポンプは、比較的古い技術であり、使用法が面倒である。さらに、生活様式の観点から、患者の腹部の送達部位にポンプを接続する(「注入セット」として知られる)管を配することは、極めて不都合であり、ポンプは比較的重く、したがってポンプの持ち運びは負担になる。しかし、患者の観点からすれば、ポンプを使用したことのある圧倒的多数の患者は、その後もずっとポンプを使い続けることのほうを好む。これは、注入ポンプは、注射器やペンよりも複雑ではあるが、インスリンを連続して注入でき、用量が精確であり、送達スケジュールをプログラム可能であるという利点があるからである。それによって、ブドウ糖がより厳密に制御され、健康状態が改善して感じられるようになる。
【0003】
より良い治療法への関心が高まっており、そのため、ポンプ治療が目に見えて伸び、日々の注射の件数が増加している。このような例また類似の注入例においてこの関心の高まりを完全に満たすのに必要とされるものは、日常の注射治療の最良の特徴(低費用および使い良さ)と、インスリンポンプの最良の特徴(連続注入および精確な用量)とが組み合わされ、それぞれの欠点を回避する、インスリンの送達すなわち注入の形態である。
【0004】
費用が安く使い易い携帯型すなわち「着用可能な」薬物注入装置を提供するいくつかの試みがなされている。これらの装置の中には、部分的または全面的に使い捨てとすることを意図したものがある。理論的には、このタイプの装置は、注入ポンプの利点の多くを提供することができ、付随する費用や不便さもない。しかし、遺憾ながら、これらの装置の多くは、(用いられる注射針のゲージおよび/または長さによる)患者の苦痛、送達される物質と注入装置の構成に使用される材料との適合性および相互作用、ならびに(例えば、装置の作動が早すぎることに起因する「浸潤」注射である)患者が正しく作動させないと正しく機能しない恐れがあるという欠点を伴う。特に、短く、かつ/または細いゲージの注射針を使用するときには、製造上の難点および針の貫入深さの制御上の難点にも遭遇する。使用済み装置に触れる人々の針刺しによる負傷の可能性も問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,569,143号明細書
【特許文献2】国際公開第02/083214号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Biochem Biophys Acta、1989年、67、1007頁
【非特許文献2】Rubins他、Microbial Pathogenesis、25、337〜342頁
【発明の概要】
【0007】
したがって、さらに製造が簡単で、インスリンおよびインスリン以外の用途での使用法が改善された、インスリン用注入ポンプなどの現在の注入装置に代わる形態が必要とされている。
【0008】
本発明の一態様は、皮膚に押し付けて好都合に着用でき、1本または複数の微小針を使用して所望の物質を注入し、苦痛を最小限に抑えることができる、パッチ様の注入装置または自己注射装置を提供することである。本発明のさらなる態様は、用量終了インジケータを有するそうした注入装置または自己注射装置を提供することである。
【0009】
本発明の上記および/または他の態様は、内部に配置される薬剤を収容できる液溜めを有する本体、患者の皮膚を刺通する注射針であって管腔を有し液溜めと連通する注射針、および液溜めを加圧する加圧システムを含む、患者の皮膚内にまたは皮膚を介して注射することにより患者の体内に薬剤を送達する装置を提供することによって達成される。装置は、装置の外から見ることができる、薬剤の送達が実質的に完了したことを示すインジケータ手段をさらに含む。
【0010】
本発明の上記および/またはその他の態様は、さらに、本体、本体内に配置される薬剤を収容できる液溜め、患者の皮膚を刺通し液溜めから薬剤を投与する注射針、および液溜めを加圧する加圧システムを含む、患者の皮膚内にまたは皮膚を介して注射することにより患者の体内に薬剤を送達する装置を提供することによって達成される。装置は、装置の外から見ることができる、薬剤の送達が実質的に完了したことを示す用量終了インジケータをさらに含む。
【0011】
本発明の追加および/または他の態様および利点は、以下の説明である程度述べられ、説明からある程度明らかになるであろうし、本発明の実施によっても習得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の上記および/またはその他の態様および利点は、添付の図面と併せて以下のより詳細な説明を読めばより容易に理解されよう。
【0013】
図1】作動させる前の作動前状態にある、パッチ様の注入装置または自己注射装置の一実施形態の斜視図である。
図2】作動前状態にある、図1の注入装置の部分分解図である。
図3】より詳細にわかるように作動ボタンを外に回転させた、作動前状態にある、図1の注入装置の部分分解図である。
図4】作動前状態にある、図1の注入装置の完全に分解した図である。
図5】作動前状態にある、図1の注入装置の断面図である。
図6】作動ボタンを外に回転させた、作動前状態にある、図1の注入装置の断面図である。
図7】安全機構を装着中の、図1の注入装置の部分分解図である。
図8】作動後の、図1の注入装置の部分分解図である。
図9】作動後の、図1の注入装置の完全に分解した図である。
図10】作動後の、図1の注入装置の断面図である。
図11】安全機構の展開後の、図1の注入装置の部分分解図である。
図12】安全機構の展開後の、図1の注入装置の断面図である。
図13】安全機構の底面図である。
図14】安全機構の構造のさらに別の図である。
図15A図1の注入装置における用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図15B図1の注入装置における用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図15C図1の注入装置における用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図15D図1の注入装置における用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図16A図1の注入装置における他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図16B図1の注入装置における他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図17A】さらに他の用量終了インジケータの図である。
図17B】さらに他の用量終了インジケータの図である。
図18図1の注入装置内に配置されている図17Aの用量終了インジケータの図である。
図19A】さらに他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図19B】さらに他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図20A図1の注入装置における図19Aの用量終了インジケータの動作の図である。
図20B図1の注入装置における図19Aの用量終了インジケータの動作の図である。
図21A】さらに他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図21B】さらに他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図22A図1の注入装置における図21Aの用量終了インジケータの動作の図である。
図22B図1の注入装置における図21Aの用量終了インジケータの動作の図である。
図23A】薬剤の送達の進捗状況を示すマーカの実施形態の図である。
図23B】薬剤の送達の進捗状況を示すマーカの実施形態の図である。
図23C】薬剤の送達の進捗状況を示すマーカの実施形態の図である。
図24A】さらに他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図24B】さらに他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図25A図1の注入装置における図24Aの用量終了インジケータの動作の図である。
図25B図1の注入装置における図24Aの用量終了インジケータの動作の図である。
図26A】他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図26B】他の用量終了インジケータおよびその動作の図である。
図27A図1の注入装置における図26Aの用量終了インジケータの動作の図である。
図27B図1の注入装置における図26Aの用量終了インジケータの動作の図である。
図28】注射ポートを有する注入装置の一実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を詳細に言及する。実施形態の例は添付の図面に示してある。図面全体を通して同じ参照番号は同じ要素を示す。説明する実施形態は、図面を参照して本発明を例示する。
【0015】
以下で説明する本発明の実施形態は、予め測定された用量の液体薬物または薬剤などの物質を患者にある期間にわたってまたは一度に送達する好都合なパッチ様の注入装置または自己注射装置100として使用することができる。装置は、好ましくは、予め充填された状態、すなわち薬物または薬剤が装置の液溜め内にすでに入っている状態で使用者に提供される。本明細書で説明する(例えば図1に示す)パッチ様の注入装置または自己注射装置100は、患者および/または介護者が用いることができるが、便宜上、以下、装置の使用者を「患者」と称する。さらに、便宜上、「垂直の」および「水平の」また「上部の」および「底部の」などの用語は、水平面に配置された注射装置100に対する相対的な方向を表すのに用いる。しかし、注射装置100は、そうした向きに限定されるものではなく、あらゆる向きで用いることができると理解されよう。さらに、本発明を実施する装置を説明するのに「注入装置」か「自己注射装置」という用語のどちらか一つを選んで使用することは、意味を狭めるものではない。自己注射機能がない注入装置も、連続的な注入を実行しない自己注射装置として本発明の範囲内に入る。便宜上、限定目的ではないが、「注入装置」という用語を以下の説明で使用する。
【0016】
図1のパッチ様の注入装置100は、自己充足型であり、(以下でより詳細に説明するように)注入装置100の底面に配置される粘着剤によって患者の皮膚表面に取り付けられる。一度、患者によって適切に位置決めされ作動されると、装置内の可撓性の液溜め上で解放されたばねの圧力を使用して、針マニホールドを介して1本または複数の患者用針(例えば微小針)により液溜めの内容物を空にすることができる。次いで、液溜め内の物質が、皮膚に刺し込まれた微小針によって患者の皮膚を介して送達される。ばねの代わりに、本質的に機械的、電気的および/または化学的なものであってよい異なるタイプのエネルギ蓄積装置を使用する他の実施形態も可能であると理解されよう。
【0017】
当業者には明らかであるように、本明細書で開示するパッチ様の注入装置100を構成かつ使用する方法は数多くある。図面および以下の説明で示す実施形態を参照するが、本明細書で開示する実施形態は、ここで開示する発明に包含される様々な代替の設計および実施形態を網羅しているわけではない。ここで開示する各実施形態において、装置は、注入装置を指すが、典型的な注入装置によって一般的に実現されるよりもはるかに速い(適用量一回分の)速度で物質を注射することもできる。例えば、数秒という短い期間で、または数日という長い期間で内容物を送達することができる。
【0018】
図1から図12に示す装置の実施形態では、装置の作動および付勢が単一の多機能/ステッププロセスで行われる押しボタン式のパッチ様の注入装置100が示されている。図1は、作動前の状態の注入装置100の組み付け済み実施形態を示す。図2〜6は、作動前の状態の注入装置100の部分的に分解された断面図を示す。図7は、安全機構を装着中の注入装置100の部分分解図を示す。図8〜10は、作動後の注入装置100の分解断面図を示す。図11、12は、安全機構が展開した後の注入装置100の分解断面図を示す。注入装置100は、(例えば図1、2、5に示す)作動前の状態と、(例えば図8〜10に示す)作動すなわち始動状態と、(例えば図11、12に示す)格納すなわち安全状態との間で動作するように構成される。
【0019】
図1に示すように、パッチ様の注入装置100の実施形態は、底部エンクロージャ104、安全機構108、可撓性針カバー112、上部エンクロージャ116、液溜めサブアセンブリ120、用量終了インジケータ(EDI)124、および患者との境界面132を含む作動ボタン128を含む。さらに、図2〜6に示すように、注入装置100は、ロータすなわち作動リング136、加圧ばね140、ドーム様の金属製プランジャ144および駆動ばね148をさらに含む。
【0020】
可撓性針カバー112は、(以下でより詳細に説明する)少なくとも1本の針152を保護し無菌障壁をもたらすことによって患者および装置に安全性をもたらす。針カバー112は、装置の製造中に針152を保護し、使用する前に患者を保護し、除去前のあらゆる時点で無菌障壁をもたらす。一実施形態によれば、針カバー112は、少なくとも1本の針152が内部に配置される針マニホールドと共に圧入により取り付けられる。さらに、一実施形態によれば、安全機構108の(以下でより詳細に説明する)針開口156は、針カバー112の外周部と密接に相関する形状である。
【0021】
例えば、図2、3、5、6、8、10、12に示すように液溜めサブアセンブリ120は、液溜め160、液溜めドームシール164、弁168、少なくとも1本の針152、および弁168と針152の間に配置されその間に流路を作り出すチャネルアーム172内の少なくとも1つの溝又はチャネル174(例えば図2及び図8参照)を含む。液溜め160はドーム176を含む。さらに、液溜めサブアセンブリ120は、少なくとも1本の針152を選択的に覆う脱着可能な針カバー112を含む。一実施形態によれば、液溜めサブアセンブリ120は、チャネルアーム172を覆う液溜めアームシール180をさらに含む。好ましくは、針152は、針マニホールドおよび複数の微小針152を含む。
【0022】
例えば図5に示すように、液溜めサブアセンブリ120の液溜めドームシール(可撓性フィルム)164は、プランジャ144とドーム176の間に配置される。注入装置100の(例えば医療用材料である)液溜めの内容物は、液溜めドームシール164とドーム176の間の空間に配置される。液溜めドームシール164、ドーム176およびそれらの間の空間を組み合わせると液溜め160が画成される。ドーム176は、好ましくは、液溜めの内容物を見ることができるように透明である。液溜めドームシール164は、金属で被覆されたフィルムまたは他の同様の物質などの非伸張性材料または積層物で作製することができる。例えば、液溜めドームシール164に使用できる1つの可能な可撓性の積層フィルムは、第1のポリエチレン層、第3の金属層に付着機構をもたらす当業者には既知の第2の化学層、障壁特徴に基づいて選ばれる第3の金属層、ならびにポリエステルおよび/またはナイロンを含む第4の層を含む。金属で被覆されたフィルムまたは金属化したフィルムを剛性部分(例えばドーム176)と併せて使用することによって、液溜め160の障壁特性が向上し、それによって、液溜めに含まれる内容物の貯蔵期間が延長すなわち改善されるようになる。例えば、液溜めの内容物がインスリンを含む場合、液溜め160の接触部の主な材料は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、環状オレフィンコポリマー(COC)およびテフロン(登録商標)を含む。以下でより詳細に説明するように、残りの流路における液溜めの内容物との接触部の主な材料は、COCおよびLLDPE、ならびに熱可塑性エラストマ(TPE)、医療用アクリル、ステンレス鋼、針粘着剤(例えばUV硬化の粘着剤)をさらに含むことができる。液溜め160の内容物と長期間にわたって接触したままになるそうした材料は、ISO 10−993および他の該当する生物学的な適合性試験に合格することが好ましい。
【0023】
液溜めサブアセンブリ120は、内容物に悪影響を及ぼすことなく該当する制御された環境において液溜めの内容物の所定の貯蔵期限にわたって保存することができ、様々な環境条件に適用可能であることがさらに好ましい。さらに、所望の貯蔵期間を満たすのに許容し得るよりも速い速度で内容物中に気体、液体および/または固体状の材料が出入りすることができない障壁が、液溜めサブアセンブリ120の構成要素によって提供される。上述の実施形態では、液溜めの材料は、華氏約34度(1℃)から華氏約120度(49℃)の温度範囲で保管し動作させることができ、貯蔵期間を2年以上とすることができる。
【0024】
安定性要件を満たすことに加えて、液溜めサブアセンブリ120は、例えば漏れることなくサンプルを30psi(21g/mm2)で20分保持するなど、任意の数の漏れ試験に合格することによってその動作をさらに保証することができる。さらに、液溜めの構成に起因する充填、保管および送達の追加の利点には、上部空間の最小化および以下でより詳細に説明するような適合性がある。
【0025】
一実施形態では、液溜め160は、充填前に空にする。液溜め160を充填前に空にし、ドーム176にわずかなくぼみしかないようにすることによって、液溜め160内の上部空間および過度の無駄を最小限に抑えることができる。さらに、液溜めの形状は、(例えば加圧ばね140およびプランジャ144である)付勢機構のタイプに適合するように構成することができる。さらに、充填時に、空にした可撓性の液溜め160を使用すると、充填した液溜め160内の任意の空気または気泡が最小限に抑えられる。可撓性の液溜め160の使用は、やはりまた、注入装置100が外部の圧力または温度の変動を受け、それによって液溜めの内圧が増加する恐れがあるときにも極めて有益である。そうした場合、可撓性の液溜め160は、液溜めの内容物と共に膨張収縮し、それによって膨張収縮力により生じる漏れがなくなる。
【0026】
液溜め160のさらに他の特徴は、充填時に自動的にまたは使用時に患者によって、微粒子の検査を行うことができることである。ドーム176などの1つまたは複数の液溜めの障壁は、透明の澄んだプラスチック材料で成形することができ、それによって液溜め内の物質の検査が可能になる。透明の澄んだプラスチック材料は、透明度および明瞭度が高く、抽出物が少なく、液溜め160内に含まれる物質と生物学的に適合することを特徴とする、環状オレフィンコポリマーが好ましい。適当な材料は、Luisville、KYのZeon Chemicals、L.P.から「BD CCP Resin」という名称で市販されており、U.S.Food and Drug Administration and DMF16368に列挙されている。そうした応用例では、検査を妨げ得る液溜め160の形状は最小限に抑えられる(すなわち検査中に回転することが可能である)。
【0027】
チャネルアーム172は、弁168から針マニホールドまたは微小針152まで延在する少なくとも1つの可撓性の弓状アームの形で設けられる。弓状アームは、内部に形成される溝174(例えば図2参照)を有する。液溜めアームシール180は、溝174を覆い、弁168と針マニホールドまたは微小針152の間に流体流路をもたらす。液溜め160と微小針152の間の(例えば図8に示す、チャネルアーム172内に配置される)流体流路は、上述の液溜め160の材料と類似または同一の材料で構成する。例えば、チャネルアーム172はドーム176と同じ材料で構成することができ、液溜めアームシール180は液溜めドームシール164と同じ材料で構成してもよい。一実施形態によれば、両方のチャネルアーム172は、弁168と針マニホールドまたは微小針152の間の流体流路として用いられ得る。他の実施形態によれば、チャネルアーム172の一方だけが流体流路として用いられ、残りのチャネルアーム172は構造的な支持をもたらす。そうした実施形態では、溝174は、流体流路として使用されるべきチャネルアーム172内だけに、弁168から針マニホールドまたは微小針152まで全体に延在する。
【0028】
チャネルアーム172は、作動の力に耐えるのに十分な可撓性を有する必要がある。図2図8のチャネルアーム172の位置を対比させてみると、(図2では液溜めアームシール180によって覆われており、明確にするために図8では液溜めアームシール180が取り外されている)チャネルアーム172は、微小針152が患者の皮膚に刺し込まれるとき弾性的に変形する(これについては以下でより詳細に説明する)。そうした変形の間、チャネルアーム172は、弁168と針マニホールドまたは微小針152の間の流体流路の完全性を維持しなければならない。さらに、チャネルアーム172の材料は、多数の生物学的な適合性試験および保管試験に適合する。例えば、下記の表1に示すように、注入装置がインスリンを含む場合、液溜め160内の接触部の主な材料は、直鎖状低密度ポリエチレン、環状オレフィンコポリマー(COC)およびテフロン(登録商標)を含み、透明な澄んだプラスチックをさらに含むことができる。液溜め160と針マニホールドの微小針152の間の残りの流路における接触部の主な材料は、COCおよび/または医療用アクリル、LLDPE、TPE、ステンレス鋼、ならびに針の粘着剤を含む。
【0029】
【表1】
【0030】
より具体的には、微小針152は、ステンレス鋼で構成することができ、針マニホールドは、ポリエチレンおよび/または医療用アクリルで構成することができる。そうした材料は、液溜めの内容物と長期間接触する場合、ISO 10−993の生物学的な適合性試験に合格することが好ましい。
【0031】
液溜め160とチャネルアーム172の間に配置される弁168は、選択的に、それらの間の流体流れを許可および制限する。弁168は、(例えば図2、3、6に示す)作動前の位置と(例えば図8〜10に示す)作動位置との間で移動する。弁は、作動位置にあるとき、液溜め160とチャネルアーム172の間の流体流れ、したがって針マニホールドおよび微小針152への流体流れを可能にする。
【0032】
使用の際、弁168は、最終的に、作動ボタン128の移動によって作動位置へと押される。これは図5図10の間における弁168の移動によって最も良く示されている。図10に示すように、弁168の運動によって、拡張された弁168の遠位端が前進し、それによって、薬物が液溜め160からチャネルアーム172に流入して流体流路を下り針マニホールドまで流れることができるようになる。
【0033】
上述の実施形態は、少なくとも1本の針152または微小針152を含むが、数本、例えば2本の図示の微小針152を含んでもよい。各微小針152は、好ましくは、少なくとも31番ゲージ以下、例えば34番ゲージとし、液溜め160と流体連通するように配置し得る患者用針マニホールド内に固定する。微小針152は、2本以上を注入装置100に含める場合、長さが異なるもの、ゲージが異なるもの、または長さおよびゲージがともに異なるものの組み合わせとすることができ、本体の長さに沿って、好ましくは微小針152の先端近くまたは微小針152のいずれかが先端面取り部を有する場合にはその付近に配置される、1つまたは複数のポートを含むことができる。
【0034】
一実施形態によれば、微小針152のゲージは、注入装置100の液溜めの内容物の送達速度を決定する。34番ゲージの微小針152を使用して液溜めの内容物を送達する方が、はるかに大きなカニューレまたは針を必要とする注射器による直接注射に一般的に関連するよりも長期にわたって注入を行う場合には実用的である。開示の実施形態では、皮内または皮下の空間のいずれかを対象とする任意の微小針152が使用可能であるが、例示の実施形態は、長さ1mmから7mmの間(すなわち4mm)の皮内微小針152を含む。微小針152の配置は、直線または非直線の配列であってよく、特定の用途に必要に応じて任意の数の微小針152を含むことができる。
【0035】
上述のように、微小針152は、針マニホールド内で位置決めされる。針マニホールドには、それぞれの微小針152について少なくとも1つの流体連通経路が設けられる。マニホールドは、単に1つまたは複数の微小針152についての経路を1つだけ設けることもできるし、各微小針152に液溜めの内容物を別々に送る多数の流体経路またはチャネルを設けてもよい。これらの経路またはチャネルは、内容物を移動させるための蛇行経路をさらに含むこともできる。この蛇行経路は、流体の圧力および送達速度に影響を及ぼし、流れを制限するものとして動作する。針マニホールド内のチャネルまたは経路は、用途に応じて幅、深さおよび構成を変えることができ、チャネル幅は、典型的には約0.015インチ(0.38mm)から約0.04インチ(1.02mm)、好ましくは0.02インチ(0.51mm)であり、マニホールド内の空所を最小限にするように構成する。
【0036】
一実施形態によれば、液溜めサブアセンブリ120は、底部エンクロージャ104に対する液溜めサブアセンブリ120の位置合わせの助けとなる一対の孔184、188を有する。底部エンクロージャ104の(以下でより詳細に説明する)第1のポスト192および第2のポスト196は、それぞれの孔184、188を通って挿入される。
【0037】
液溜めサブアセンブリ120が取り外されている分解図である図4、7、9は、底部エンクロージャ104が、加圧ばね140およびプランジャ144が内部に配置される実質的に円筒形のハウジング200を含むことを示している。一実施形態によれば、円筒形ハウジング200は、複数のくぼんだチャネル204を含む。くぼんだチャネル204は、プランジャ144がハウジング200内を移動するときプランジャ144のそれぞれの複数の脚部208および末端部212を案内する。脚部208は、末端部212と相まってプランジャタブ214を構成する。図4、7、9に示すように、例えば、くぼんだチャネル204は、円筒形ハウジング200の上部から下がったところの途中までしか延在しない。くぼんだチャネル204の下には開口216があり、そこを通ってプランジャ144の末端部212が円筒形ハウジング200の外まで延在することができる。開口216は、実質的にL字形であり、円筒形ハウジング200の基部にある水平部分、およびくぼんだチャネル204と実質的に整列する垂直部分を有する。
【0038】
注入装置100が作動前の状態にあるとき、加圧ばね140は、(例えば図4〜6に示すように)プランジャ144によって圧縮されており、プランジャ144の末端部212は、実質的に、開口216の水平部分内に配置されている。加圧ばね140の力によって、プランジャ144の末端部212が開口216の水平部分の上部(すなわち円筒形ハウジング200のレッジ)に対して付勢されている。以下でより詳細に説明するように、加圧ばね140はプランジャ144と相まって、注入装置100が作動されるときに液溜め160を加圧する加圧システムを形成する。
【0039】
以下でより詳細に説明するように、ロータ136は、(例えば図2〜4に示す)作動前の位置と(例えば図8〜10に示す)作動位置との間で円筒形ハウジング200の基部まわりを回転する。ロータ136が作動前の位置から作動位置まで回転すると、(例えば図4に示す)ロータ136の少なくとも1つの末端部が係合する表面220が、プランジャ144の末端部212の少なくとも1つと係合しプランジャ144を回転させ、それによって末端部212が開口216の垂直部分およびくぼんだチャネル204と整列するようになる。この時点で、加圧ばね140は、末端部212が隆起したチャネル204によって案内されるかたちで、プランジャ144を上方に動かす。
【0040】
加圧ばね140は、注入装置100に含まれ、液溜め160に本質的に均一な力を加えて液溜め160から内容物を押しだす。加圧ばね140は、使用の際に解放されると液溜め160を加圧するエネルギを蓄えるのに使用される。加圧ばね140は、プランジャ144の末端部212と円筒形ハウジング200の間における係合によって圧縮された状態で保持される。この係合によって、保管中、加圧ばね140が液溜め160の(以下で説明する)フィルムまたは(底部エンクロージャ104およびプランジャ144以外の)任意の残りの装置の構成要素に応力をかけないようになる。プランジャ144は、ばね張力および変形に耐えられるように十分に剛直であり、常用荷重下で破損してはならない。
【0041】
上述のように、ロータ136が作動前の位置から作動位置まで回転すると、ロータ136はプランジャ144の末端部212の少なくとも1つと係合し、プランジャ144を回転させて末端部212を開口216の垂直部分およびくぼんだチャネル204と整列させる。圧縮されていた加圧ばね140は、次いで、プランジャを上方に動かし、そうすることで液溜め160のフィルム上に力を加える。加圧ばね140は、液溜め160内に、好ましくは約1psi(0.7g/mm2)から約50psi(35g/mm2)、より好ましくは約2psi(1.4g/mm2)から約25psi(17.5g/mm2)の圧力を生成して、液溜めの内容物が皮内送達されるように構成することができる。皮下注射または注入の場合には、約2psi(1.4g/mm2)から約5psi(3.5g/mm2)であれば十分であろう。
【0042】
一実施形態によれば、作動ボタン128は、患者が注入装置100を作動させるために押す患者との境界面132を含む。作動ボタン128は、(例えば図3に両方とも示す)ヒンジアーム224および作動アーム228をさらに含む。作動ボタン128のヒンジアーム224は、開口付きの円筒形部分を含む。作動アーム228は、タブ230を含む(例えば図3参照)。一実施形態によれば、タブ230は、支承面232、および支承面232の片持ちにされた端部に隣接して配置される係止面234を含む。一実施形態によれば、タブ230は、作動アーム228の主部分に対して鋭角を形成する。
【0043】
底部エンクロージャ104上に配置される第1のポスト192は、底部エンクロージャ104から上方に延在する。(例えば図4、7に示すような)一実施形態によれば、第1のポスト192の基部は、一対の平らな側部236と一対の丸みを帯びた側部240を含む。さらに、例えば図4、7に示すように、第2のポスト196、第1の駆動ばねの基部244および第2の駆動ばねの基部248は、底部エンクロージャ104から上方に延在する。以下でより詳細に説明するように、第1の駆動ばねの基部244および第2の駆動ばねの基部248は、駆動ばね148の各端部を固定する。第1の駆動ばねの基部244は、第2のポスト196に隣接して、第2のポスト196と間隔を置いた状態で配置される。
【0044】
一実施形態によれば、図3、6は、作動ボタン128を組み付けるのに底部クロージャ104に対して作動ボタン128を位置決めするところを示している。この位置では、ヒンジアーム224の円筒形部分の開口によって、作動ボタン128が水平方向に(平らな側部236を通過して)滑動して第1のポスト192と係合できるようになる。次いで、ヒンジアーム224(したがって作動ボタン128)を、第1のポスト192まわりに回転させることができる。作動アーム228が第2のポスト196と第1の駆動ばねの基部244の間の空間に入ると、タブ230の支承面232の片持ちされた端部が第2のポスト196の保持面252を通過するまで、タブ230および作動アーム228の少なくとも一方が弾性的に変形する。保持面252(例えば図4参照)を通過するタブ230の支承面232の片持ちされた端部の移動、およびタブ230の係止面234と保持面252との係合によって、可聴のクリック音及び触覚的フィードバックが提供され、それによって作動ボタン128が作動前の位置にあることが伝わる。
【0045】
図2〜4および図7〜9に戻って参照すると、ロータ136は、さらに、作動突起256および駆動ばねホルダ260を含む。作動ボタン128の作動アーム228は、患者が作動ボタン128を押し下げると作動突起256と係合し、それによってロータ136が作動前の位置から作動位置まで回転する。
【0046】
駆動ばねホルダ260は、ロータ136が作動前の位置にあるとき、駆動ばね148を作動前の位置で維持する。上述のように、第1の駆動ばねの基部244および第2の駆動ばねの基部248は、駆動ばね148の両端を固定する。駆動ばね148の概ね中間には、例えば図2、3に示すような、ロータ136の駆動ばねホルダ260と係合するための実質的にU字形の突起がある。したがって、ロータ136が作動前の位置にあり駆動ばね148が駆動ばねホルダ260と係合しているとき、駆動ばね148は緊張状態で維持される。そして駆動ばねホルダ260が駆動ばね148を解放すると(すなわち、例えば図8〜10に示すようにロータが作動前の位置から作動位置まで回転すると)、駆動ばね148によって微小針152が底部エンクロージャ104の開口300(および以下でより詳細に説明する安全機構108の開口)を通って、注入装置100の外に延ばされる。
【0047】
したがって、以下でより詳細に説明するように、単一の多機能/ステッププロセスで行われる注入装置100の作動および付勢は、患者による作動ボタン128の押し下げ、および作動ボタン128の作動アーム228とロータ136の作動突起256の係合によるロータ136の回転を含む。上述のように、ロータ136の回転は、プランジャ144を回転させかつ解放し、それによって液溜め160内の流体が加圧される。さらに、ロータ136の回転によって駆動ばね148が駆動ばねホルダ260から解放され、それによって微小針152が動かされて注入装置100の外に延ばされる。単一の多機能/ステッププロセスは、作動ボタン128が押し下げられるときに作動ボタン128が弁168と係合しそれを動かすことによる、弁168の作動前の位置から作動位置までの移動をさらに含み、それによって、液溜めと微小針152の間におけるチャネルアーム172を介した流体流れが開始される。
【0048】
上述のように、パッチ様の注入装置100は、安全機構108をさらに含む。意図せず、または誤って針を刺すことによる損傷を防ぎ、装置の意図的な再利用を防ぎ、露出した針を遮蔽するために、係止式の針安全機構108が設けられる。安全機構108は、患者の皮膚表面から注入装置100を取り外した直後に自動的に作動する。以下でより詳細に説明する一実施形態によれば、可撓性の粘着パッド264は、底部エンクロージャ104の底部部分と安全機構108の底部部分に粘着する。粘着パッド264は、使用中、患者の皮膚と接触し、注入装置100を皮膚表面上の所定位置で保持する。例えば図11、12に示すように、皮膚表面から注入装置100を取り外すと、安全機構108が微小針152を遮蔽する位置まで延びる。安全機構は、完全に延びると、所定位置に係止し、それによって過失による負傷または患者用針152への暴露が防止される。
【0049】
一般に、受動的な安全システムが最も望ましい。これによって、万一誤って取り外してしまった場合または患者が安全ステップがあることを忘れたとしても、この装置はそれ自体で保護され得る。この注入装置100の1つの典型的な使用法は、ヒト成長ホルモンを供給することであり、それは通常夜間に行われるので、装置を身につける(子供などの)患者が、送達に10分もかからないことが予想される場合でも、実際には一晩中この装置を身につけることが予想される。受動的システムがない注入装置100が剥がれてしまったら、微小針152が患者または介護者を再度刺す恐れがある。この解決法は、使用中の活動を制限すること、または受動的な安全システムを含むことのいずれかである。
【0050】
安全システムに関して、一般的には3つの選択肢がある。第1の選択肢は、針152を装置に引っ込めることである。第2の選択肢は、アクセスできないように針152を遮蔽することである。第3の選択肢は、針刺しによる損傷を防止するように針152を破壊することである。能動的なシステムなどの他のシステムは、手動での遮蔽および/もしくは破壊、または追加でボタンを押すもしくは類似の動作による安全機構の手動解除を使用する。本発明の受動的安全実施形態の詳細は以下で説明する。
【0051】
本発明の1つの安全実施形態は、安全機構108のように受動的で完全に密閉する引出し式設計の実施形態である。図5、10、12は注入装置100の部分的に切り取った斜視図であり、作動前、作動後、および安全機構108の展開後の安全機構108をそれぞれ示している。
【0052】
皮膚から注入装置100を取り外すと、(底部エンクロージャ104の底面と安全機構108の底面の両方に粘着されている)可撓性の粘着パッド264は、安全機構108を引出し、皮膚表面を放す前に安全機構108を所定位置に係止する。言い換えれば、皮膚表面から粘着パッドを取り外すのに必要な力は、安全機構108を展開するのに必要な力よりも大きい。一実施形態によれば、例えば図13に示すような安全機構108は、患者の皮膚と接触する平らな表面部分268を含む。平らな表面268は、(図13に点線で示す)粘着パッド264の一部が安全機構108に貼り付けられるところであり、患者が注入装置100を皮膚から取り外すと、粘着パッド264が注入装置100から安全機構108を展開する働きをし、それによって微小針152が遮蔽される。そうでないと患者から注入装置100を取り外した後、微小針152が露出してしまう。安全機構108は、完全に延びると、所定位置で係止し、過失による負傷または微小針152への暴露を防止する。
【0053】
一実施形態によれば、粘着パッド264は、実質的に2つの部分として提供され、1つが底部エンクロージャ104の底面の大部分の上にあり、もう1つは安全機構108の底面上にある。注入装置100を取り外すと、2つのパッチが独立して動き、安全機構108が底部エンクロージャ104に対して回転可能になる。他の実施形態によれば、2つの部分が一体の可撓性の粘着パッド264として形成され、1つの部分が底部エンクロージャ104の底面の大部分の上に配置され、もう1つの部分が安全機構108の底面に配置される。
【0054】
一実施形態によれば、安全機構108は、打ち抜きされた金属製の部分である。他の実施形態によれば、安全機構108は、底部エンクロージャ104と実質的に同じ材料で作製される。図14に示すように、安全機構108は、前方遮蔽部272、安全機構108の後方部分に配置される一対の挿入タブ276、安全機構108の縁部284の上方後方端部にそれぞれ配置される一対の旋回タブ280、安全機構108の実質的に平らな底部内面から上方に延在する案内ポスト288、および安全機構108の底部内面からやはり上方に延在する係止ポスト292を含む。前方遮蔽部272は、縁部284より上まで延在し、安全機構108の展開のときに患者を微小針152から遮蔽する。案内ポスト288は、内部に切欠きを含む。切欠きは、ロータ136が作動前の位置にあるとき(例えば図7、9に示す)ロータ136の安全を保持する突起296と係合し、それによって安全機構108が注入装置100の作動前に展開しないようになる。
【0055】
さらに、上述のように、安全機構108は、針開口156を含む。安全機構108の展開の前、針開口156は、底部エンクロージャ104の開口300と少なくとも部分的に重なり、微小針152が動くための空間を提供する。係止ポスト292は、針開口156の前方の側縁部に隣接してそれぞれ設けられる。底部エンクロージャ104は、(例えば図7、9に示す)案内ポスト開口304、底部エンクロージャ104の互いに反対にある側縁部に隣接して配置される(例えばそのうちの1つを図4に示す)一対の挿入タブ開口308、および(例えば図7、9に示す)底部エンクロージャ104の両側に配置される一対の旋回レスト312を含む。
【0056】
図14を再び参照すると、挿入タブ276はそれぞれ接続部分316および延長部分320を含む。一実施形態によれば、接続部分316は、安全機構108の底部内面から注入装置100後方に向かって、安全機構108の底部内面に対して垂直ではない角度に延在する。延長部分320は接続部分316から実質的に垂直に安全機構108のそれぞれの外側に向かって延在する。安全機構108を底部エンクロージャ104に組み付けるには、安全機構108を底部エンクロージャ104に対して約45°で保持し、挿入タブ276を挿入タブの開口308を通して挿入する。次いで、案内ポスト288を案内ポストの開口304を通して挿入し、安全機構108の底部内面が底部エンクロージャ104の底面と実質的に平行に接触するように、安全機構108を所定位置まで回転させる。
【0057】
図7、9を再び参照すると、これらの図面は、作動位置にあるロータ136を示しているが、図7、9の分解された状態は、安全機構108を底部エンクロージャ104に組み付ける工程を示すのに好都合である。しかし、安全機構108は、作動前に底部エンクロージャに組み付けなければならないと理解されよう。図4に示すように、安全機構108を上方に回転させた後、安全機構108を底部エンクロージャ104に対して後方に平行移動させ、それによって旋回タブ280が旋回レスト312のそれぞれの前縁部を越えて旋回レスト312の上に配置され、係止ポスト292が底部エンクロージャ104の開口300の側縁部に隣接して配置され、ロータ136の安全を保持する突起296が案内ポスト288と係合するようになる。
【0058】
図14を参照すると、係止ポスト292のそれぞれは、安全機構108の平らな底部内面から実質的に垂直に延在するポスト延長部分324、およびポスト延長部分324の端部に配置される楔形部分328を含む。楔形部分328は、高さが安全機構108の底部内面に対して増大するにつれて幅も増大する。
【0059】
安全機構108が展開し底部エンクロージャ104に対して下方に回転すると、楔形部分328は底部エンクロージャ104の開口300のそれぞれの側縁部に対して作用し、それによって係止ポスト292が互いの方に向かって弾性的に変形する。安全機構108が完全に展開されると、旋回タブ280が旋回レスト312内で固定される。さらに、楔形部分328の縁部が開口300の底部縁部を通過し、係止ポスト292が実質的に非変形状態に急に戻り、それによってはっきり聞こえる音が出て、押し応えが感じられ、安全機構108が完全に配置されしたがって微小針152が覆われたことが伝わる。図11、12に戻って参照すると、安全機構108が完全に展開され、係止ポスト292が実質的に非変形状態に急に戻ると、楔形部分328の上縁部が開口300に隣接する底部エンクロージャ104の底面と係合し、それによって安全機構108が底部エンクロージャ104に対して上方に回転しなくなり、微小針152の露出が防止される。さらに、上述のように、前方遮蔽部272が微小針152から患者を遮蔽する。
【0060】
したがって、安全機構108は、単一部分として設けられ、人間による荷重下でも押しつぶされない良好な係止部を提供する受動的な安全機構の実施形態である。この受動的な安全機構の場合、注射の間、皮膚に追加の力が加えられることがなく、微小針152は使用後に注入装置100内で安全に保持される。
【0061】
注入装置100の使用後、患者は、全用量が送達されたことを確実にするために、装置を再度検査することができる。この点に関連して、図15A〜Dに示す一実施形態によれば、注入装置100は、用量終了インジケータ(EDI)124を含む。EDI124は、主本体またはポスト332、主本体332の上部に対して実質的に水平に延在する第1のアーム336および第2のアーム340を含む。
【0062】
EDI124は、主本体332の上部から上方に湾曲するばねアーム344をさらに含む。一実施形態によれば、ばねアーム344は、液溜めサブアセンブリ120の底側部を押し、それによってEDI124が底部エンクロージャ104の方に弾性的に付勢され、例えば注入装置100の出荷中および取り扱い中にEDI124が注入装置100から出て自由に動かないことが保証されるようになる。一実施形態によれば、ばねアーム344は、ドーム176の底側部を押す。
【0063】
図4に戻って参照すると、主本体332は、EDIチャネル348内に配置され、EDIチャネル348内を実質的に垂直に平行移動する。一実施形態によれば、EDIチャネルは、プランジャ144の脚部208および末端部212を案内するくぼんだチャネル204のうちの1つに隣接して配置される。第1のアーム336は、くぼんだチャネル204の上部を横切って延在する。
【0064】
図15Aに戻って参照すると、垂直突き出し部すなわち合図を出すポスト352は、第2のアーム340の端部から上方に延在する。液溜めの内容物が送達されると、合図を出すポスト352が、上部エンクロージャ116のEDI開口356を通って延び(例えば図15C参照)、用量の終わりに達したことを知らせる。一実施形態によれば、EDI124は、一体構造として形成される。
【0065】
図15Bに示すように、作動後に加圧ばね140によりプランジャ144が円筒形ハウジング200内を上方に移動すると、プランジャ144の末端部212の1つがEDI124の第1のアーム336と接触する。末端部212はEDI124を上方に持ち上げ、ばねアーム344の付勢に打ち勝ち、それによって液溜めの内容物の送達中に合図を出すポスト352がEDI開口356を通って次第に延びていく。図10に戻って参照すると、作動後に液溜め160から薬物が押し出されると、合図を出すポスト352が注入装置100から部分的に延びる。液溜めの内容物の送達が完了し、プランジャがその全行程に達すると、図15Dに示すように、垂直突き出し部又は合図を出すポスト352が完全に延びる。したがって、EDI124はプランジャ144の直線運動を用いて、注入装置100の外から見える、液溜めの内容物の送達を知らせるEDI124の直線運動を生成する。
【0066】
図16A、16Bは、他の用量終了インジケータ(EDI)360および注入装置100内でのその動作を示す。図16Aに示すように、EDI360の合図を出すポスト368の基部364は、合図を出すポスト368の残りの部分とは異なる色をしている。図16Bに示すように、注入装置100の外から基部364が見えるということは、薬剤の送達が実質的に完了したことの合図である。他の点では、EDI360はEDI124と実質的に同様である。
【0067】
図17A、17Bは、さらに他の用量終了インジケータ(EDI)372を示す。図17A、17Bに示すように、EDI372は、主本体376、主本体376から延在する第1のアーム380、やはりまた主本体376から延在する第1のばねアーム384および第2のばねアーム388を含む。さらに、合図を出すポスト392は、第1のアーム380の端部から延在する。一実施形態によれば、合図を出すポスト392は、基部396および上部400を含む。一実施形態によれば、基部396の少なくとも一部は、合図を出すポスト392の残りの部分とは異なる色をしている。そうした実施形態では、注入装置100の外から基部396の異なる色の部分が見えるということは、薬剤の送達が実質的に完了したことの合図である。
【0068】
図17Aに示すように、EDI372は、主本体376から延在する一対の安定化アーム412、416をさらに含む。安定化アーム412、416は、EDI372の動作中にそれを安定化する。図18は、注入装置内に配置されるEDI372を示す。図18に示すように、円筒形ハウジング200は、EDI372の主本体376を移動可能に収容するチャネル420を含む。安定化アーム412、416は、円筒形ハウジング200の外面と接触し、EDI372の動作中にそれを安定化する。
【0069】
作動後にプランジャ144が円筒形ハウジング200内を移動すると、プランジャ144の末端部212がEDI372の主本体376と接触してそれを持ち上げ、それによって、プランジャ144の運動が主本体376の運動に、したがって合図を出すポスト392の運動に変換される。
【0070】
第1のばねアーム384および第2のばねアーム388は、それぞれの端部に配置されるばねアームポスト404、408をそれぞれ有する。一実施形態によれば、ばねアームポスト404、408は、液溜めサブアセンブリ120の底側部と接触し、ばねアーム384、388と相まって上部エンクロージャ116に対して内側にEDI372を弾性的に付勢し、例えば注入装置100の出荷中および取り扱い中である、用量の終了前にEDI372が注入装置100から外に延びないことを確実にする。一実施形態によれば、ばねアームポスト404、408は、ドーム176の底側部を押す。
【0071】
プランジャ144がその移動行程の終点に達すると、プランジャ144に掛っている加圧ばね140の力が第1のばねアーム384および第2のばねアーム388の付勢に打ち勝ち、それによって合図を出すポスト392が注入装置100の外に延ばされ、薬剤の送達が実質的に完了したことを合図する。
【0072】
図19A、19Bは、さらに他の用量終了インジケータ(EDI)424およびその動作をそれぞれ示す。図19Aに示すように、EDI424は、らせん状面432を有するポスト428を含む。EDI424は、ポスト428の端部から延在するアーム436、およびアーム436の端部から延在する垂直突き出し部すなわち合図を出すポスト440を含む。合図を出すポスト440は、上部エンクロージャ116のEDI開口444(図20A参照)を通り、それによって注入装置100の外から見ることができるようになる。一実施形態によれば、EDI開口444は弓状のスロットである。ポスト428は、EDI424を底部エンクロージャ104に回転可能に連結するための基部448をさらに有する。
【0073】
図19Bは、プランジャ144の側縁部と接触するらせん状面432を示す。図20Aは、作動前状態の注入装置100を示す。一実施形態によれば、EDI424のらせん状面432は、プランジャが動いている間中プランジャ144の縁部を支承する。したがって、作動後にプランジャ144が円筒形ハウジング200内を上方に移動すると、プランジャ144の縁部とらせん状面432の間の接触によってEDI424の回転が引き起こされる。一実施形態によれば、プランジャ144の運動中におけるらせん状面432とプランジャ144の縁部との相互作用によって、ポスト428の1回の全回転には満たない回転が引き起こされる。言い換えれば、らせん状面432のピッチが、プランジャ144の運動中、ポスト428の1回の全回転には満たない回転を引き起こす。
【0074】
EDI424が回転すると、それに対応して、合図を出すポスト440がEDI開口444内で回転する。合図を出すポスト440が図20Bに示すようにEDI開口444の端部に達すると、EDI424は薬剤の送達が実質的に完了したことを示す。
【0075】
図19A、19Bと類似して、図21A、21Bは、さらに他の用量終了インジケータ(EDI)452およびその動作を示す。図21Aに示すように、EDI452は、らせん状面460を有するポスト456を含む。さらに、ポスト428は、EDI452を底部エンクロージャ104に回転可能に連結するための基部462を有する。EDI452は、その上部に合図を出すインジケータ464をさらに含む。合図を出すインジケータ464は、上部エンクロージャ116のEDI開口468(図22A参照)を通り、それによって注入装置100の外から見ることができるようになる。
【0076】
図21Bは、プランジャ144の側縁部と接触するらせん状面460を示す。図22Aは、作動前状態の注入装置100を示す。一実施形態によれば、EDI452のらせん状面460は、プランジャが動いている間中プランジャ144の縁部を支承する。したがって、作動後にプランジャ144が円筒形ハウジング200内で上方に移動すると、プランジャ144の縁部とらせん状面460の接触によってEDI452の回転が引き起こされる。図19AのEDI424と比較すると、らせん状面460はより細かいピッチを有する。したがって、EDI452は、プランジャ144およびEDI424の行程中よりも多く回転する。一実施形態によれば、プランジャ144の運動中におけるらせん状面460とプランジャ144の縁部との相互作用によって、ポスト456の少なくとも1回の全回転が引き起こされる。言い換えれば、らせん状面460のピッチが、プランジャ144の運動中、ポスト456の少なくとも1回の全回転を引き起こす。一実施形態によれば、EDI452は、プランジャ144の行程中、1回の全回転よりも多く回転する。
【0077】
一実施形態によれば、合図を出すインジケータ464は、例えば矢印である。それに対応して、EDI開口468に隣接する上部エンクロージャ116の外側部分上には、少なくとも1つのマーカ472がある。EDI452がプランジャ144の行程によりEDI開口468内で回転すると、マーカ472に対する合図を出すインジケータ464の相対的な回転が注入装置100の外から見え、それによって薬剤の送達の進捗状況が示される。
【0078】
一実施形態によれば、らせん状面460のピッチは、プランジャ144の行程中、ポスト456の少なくとも2回の全回転に若干満たない回転を引き起こすように定める。したがって、図22Bに示すように、2回の全回転よりも若干少なく移動した後、EDI452は、薬剤の送達が実質的に完了したことを示す。
【0079】
図23A〜23Cに示すように、上部エンクロージャ116のEDI開口に隣接して、薬剤の送達の進捗状況を示す様々なマーカを用いることができる。例えば、図23Aは、段階付きの目盛を含むマーカ476を示す。EDI開口と対になったそうしたマーカ476は、EDI424と共に用いることができる。しかし、一般的に、様々なマーカを様々な形状のEDI開口と様々なEDIの実施形態と共に使用してもよいと理解されよう。
【0080】
図23Bは、液溜め160の満杯の状態を表示するアイコンを含むマーカ480を示す。例えば、1つのアイコンは、液溜め160が実質的に満杯であることを示し、中間のアイコンは、液溜め160が実質的に半分満たされておりしたがって薬剤の送達が実質的に半分完了していることを示し、第3のアイコンは、液溜め160が実質的に空でありしたがって薬剤の送達が実質的に完了していること示す。
【0081】
図23Cは、対応するEDIの回転の方向に応じて変わる、液溜め160の満杯状態を表示する分数アイコン、すなわち完了した薬物送達の分数を含むマーカ484を示す。例えば、矢印で合図を出すインジケータを有する時計回りに回転するEDIをマーカ484と共に用いる場合、そのようなEDIの動きは、液溜め160の満杯状態を示す。対照的に、矢印で合図を出すインジケータを有する反時計回りに回転するEDIをマーカ484と共に用いる場合、そのようなEDIの動きは、完了した薬剤送達の分数を示すことになる。
【0082】
図24A、24Bは、さらに他の用量終了インジケータ(EDI)488およびその動作を示す。一実施形態によれば、EDI488は、感圧性のストリップ488である。プランジャ144がその移動行程の終点に達すると、(加圧ばね140の力による)プランジャ144の圧力が感圧性のストリップ488にもたらされる。感圧性のストリップ488に対する圧力は、色の変化を引き起こし、それによって薬剤の送達が実質的に完了したことが示される。液溜めの上部(例えばそこにある窓)が透明であるので、色の変化を見ることができる。
【0083】
一実施形態によれば、EDI488は、液溜め160内部の例えば透明なドーム176の内面に配置される。プランジャ144の移動行程の終点において、液溜めドームシール164に対するプランジャ144の圧力が、液溜めドームシール164によって感圧性のストリップ488に伝えられ、それによって色の変化が引き起こされる。
【0084】
図24A、25Aは、作動前の状態の注入装置100を示す。図24A、25Aに示す一実施形態によれば、EDI488は、注入装置100の外から見ることができるように注入装置100の本体内に配置される。さらに、EDI488は、プランジャ144がその移動行程の終点に達するとプランジャ144の末端部212が加圧ばね140の力により感圧性のストリップ488と接触し、感圧性のストリップ488に対する末端部212の圧力が感圧性のストリップ488の色の変化を引き起こすように配置される。図24B、25Bは、末端部212が感圧性のストリップ488と接触し色の変化を引き起こした後の注入装置100を示しており、薬剤の送達の完了が示されている。
【0085】
図26A、26Bは、他の用量終了インジケータ(EDI)492およびその動作を示す。一実施形態によれば、EDI492は、少なくとも2つの別個のチャンバ496、500を有する染料パックである。プランジャ144がその移動行程の終点に達すると、(加圧ばね140の力による)プランジャ144の圧力が染色パック492にもたらされ、それによって2つのチャンバ496、500の間の仕切り504が破裂する。仕切り504が破裂すると、2つのチャンバ496、500の内容物が混ざり、混合物の色が変わり、それによって薬剤の送達が実質的に完了したことが示される。
【0086】
一実施形態によれば、チャンバ496は黄色染料を有し、チャンバ500は青色染料を有する。仕切り504が破裂すると、青色染料および黄色染料が混ざり緑色染料を形成し、それによって薬剤の送達が実質的に完了したことが示される。
【0087】
一実施形態によれば、EDI492は、液溜め160内の例えば透明なドーム176の内面に配置される。プランジャ144の移動行程の終点において、液溜めドームシール164に対するプランジャの圧力が液溜めドームシール164によって染料パック492に伝えられ、それによってその色の変化が引き起こされる。
【0088】
図26A、27Aは、作動前の状態の注入装置100を示す。図26A、27Aに示す一実施形態によれば、EDI492は、注入装置100の外から見えるように注入装置100の本体内に配置される。さらに、EDI492は、プランジャ144がその移動行程の終点に達するとプランジャ144の末端部212が加圧ばね140の力により染料パック492と接触し、染料パック492に対する末端部212の圧力により仕切り504が破裂して染料パックの色の変化が引き起こされる。図26B、27Bは、末端部212が染料パック492と接触し色の変化が引き起こされた後の注入装置100を示しており、薬剤の送達の完了が示されている。
【0089】
図28は、注射ポート704がある注入装置700の一実施形態を示す。注射ポートは、空にされたまたはある程度満たされた液溜め708へのアクセスを提供し、それによって患者は物質または物質の組み合わせを作動前に液溜めに入れることができるようになる。あるいは、製薬業者または薬物師が注射ポート704を用いて、販売前に物質または物質の組み合わせで注入装置700を満たすこともできる。実質的に、他のあらゆる点において、注入装置700は、すでに述べた注入装置100と同様である。
【0090】
次に、注入装置100の動作について説明する。上述の本発明の実施形態は、好ましくは、押しボタン(作動ボタン128)設計を含む。注入装置100を皮膚表面に対して位置決めし貼り付け、作動ボタン128を押すことによって付勢し、かつ/または作動させることができる。より具体的には、第1のステップで、患者は、無菌パッケージ(図示せず)から装置を取り出し、粘着パッド264のカバー(図示せず)を取り外す。患者は、さらに針カバー112を取り外す。パッケージから注入装置100を取り出した後、使用する前に(例えば図1、2、4、5参照)、作動前の状態にある注入装置100によって、患者は装置だけでなくその内容物についても、構成要素がなくなっていないか、または損傷していないか、1つまたは複数の有効期限、薬物のくもりまたは色の変化などの検査も含めて、検査することができる。
【0091】
次のステップは、注入装置100を患者の皮膚表面に位置決めし、貼り付けることである。薬用パッチのように、患者は、注入装置100を皮膚にしっかりと押しつける。粘着パッド264の一方側は、底部エンクロージャ104の底面および安全機構108の底面に粘着し、粘着パッド264の反対側は注入装置100を患者の皮膚に固定する。(底部エンクロージャ104および安全機構108の)これらの底面は、平らにする、身体の形に合わせる、または任意の適切な形状にすることもでき、その上に粘着パッド264が固定される。一実施形態によれば、出荷前に、フィルムなどの粘着パッド264のカバーが、出荷中の粘着性を保つように粘着パッド264の患者側につけられる。上述のように、使用前、皮膚に配置するために、患者は粘着剤のカバーを剥がして粘着パッド264を露出させる。
【0092】
粘着剤のカバーを取り外した後、患者は、注入装置100を皮膚に配置し、押しつけて粘着が適切に行われるようにすることができる。上述のように、装置は、適切に位置決めされた後で、作動ボタン128を押すことによって作動される。この作動ステップによりプランジャ144および加圧ばね140が解放され、それによってプランジャ144が液溜め160の可撓性フィルム(液溜めドームシール164)を押すことができるようになり、液溜めが加圧される。この作動ステップは、駆動ばね148をロータ136の駆動ばねホルダ260から解放するようにも働き、それによって微小針152が注入装置100の外に(底部エンクロージャ104の開口300および安全機構108の針開口156を通って)延び患者に微小針152が設置される。さらに、作動ステップは、弁168を開いて、液溜め160と微小針152の間のチャネルアーム172を介した流体連通経路(例えば図8〜10参照)を確立する。大きな利益となるのは、1回の押しボタン動作で各動作を実現し得ることである。さらに、別の大きな利益は、液溜めサブアセンブリ120内に完全に含まれる連続的な流体連通経路を使用することである。
【0093】
作動させると、患者は通常、ある期間(例えば10分から72時間)にわたって注入装置100を定位置に残し、すなわちこの装置を着用して、液溜めの内容物が完全に送達されるようにする。その後、薬剤の送達の完了が、例えばEDI124であるEDIによって示される。次いで、患者は、下にある皮膚または組織に損傷を与えることなく、装置を取り外して破棄する。意図的または誤って取り外されると、1つまたは複数の安全機能が展開されて、露出した微小針152が遮蔽される。より具体的には、患者が注入装置100を皮膚から取り外すと、粘着パッド264が安全機構108を注入装置100から展開するように働き、それによって微小針152が遮蔽され、そうでないと微小針152が患者から注入装置100の取り外し後に露出されてしまう。安全機構108は、完全に延びると、所定位置で係止し、それによって不慮の負傷または微小針152への暴露が防止される。しかし、安全機能は、作動ボタン128が押されておらず微小針152が延びていない場合には展開されないように構成することができ、それによって使用前に安全機構が展開されないようになる。使用後、患者は全用量が送達されたことを確実にするために装置を再び検査することができる。例えば、患者は、透明なドーム176を通してリザーバ内部を見る、かつ/またはEDI124を検査することができる。
【0094】
上述の実施形態は、薬剤および薬物を含む様々な物質を患者、特に人間の患者に投与するのに使用するのに適している。本明細書では、薬物は、体膜および体表面、特に皮膚を介して送達し得る生物活性を有する物質を含む。以下でより詳細に列挙する例には、抗生物質、抗ウィルス剤、鎮痛剤、麻酔薬、食欲抑制剤、抗関節炎薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗悪性腫瘍薬、DNAワクチンを含むワクチンなどがある。患者の皮内または皮下に送達し得る他の物質には、ヒト成長ホルモン、インスリン、タンパク質、ペプチドおよびその断片がある。タンパク質およびペプチドは、自然に存在するもの、合成生成物、または組換え生成物があり得る。さらに、この装置は、細胞治療での樹状細胞の皮内注入時に使用することができる。本発明の方法に従って送達し得る他の物質は、病気の予防、診断、軽減、処置、治療で使用する薬物、ワクチンなどからなる群から選択することができる。これらとともに用いる薬物には、α1−アンチトリプシン、抗血管形成剤、アンチセンス、ブトルファノール、カルシトニンおよび類似物、セレデース、COX−II阻害剤、皮膚病薬、ジヒドロエルゴタミン、ドーパミン作用薬およびドーパミン拮抗薬、エンケファリンおよびその他のオピオイドペプチド、上皮成長因子、エリスロポエチンおよび類似物、卵胞刺激ホルモン、G−CSF、グルカゴン、GM−CSF、グラニセトロン、(成長ホルモン放出ホルモンを含む)成長ホルモンおよび類似物、成長ホルモン拮抗剤、ヒルジンおよびヒルログなどのヒルジン類似物、IgE抑制剤、インスリン、インシュリノトロピンおよび類似物、インスリン様成長因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモンおよび類似物、低分子量ヘパリン、M−CSF、メトクロプラミド、ミダゾラム、モノクローナル抗体、麻薬性鎮痛薬、ニコチン、非ステロイド系抗炎症剤、オリゴ糖、オンダンセトロン、上皮小体ホルモンおよび類似物、上皮小体ホルモン拮抗薬、プロスタグランジン拮抗薬、プロスタグランジン、組換え可溶性受容体、スコポラミン、セロトニン作用薬およびセロトニン拮抗薬、シルデナフィル、テルブタリン、血栓溶解剤、組織プラスミノーゲン活性化因子、TNFおよびTNF拮抗薬、予防薬および治療抗原を含む、キャリア/アジュバントを含むワクチンまたはキャリア/アジュバントを含まないワクチン(サブユニットタンパク質、ペプチドおよび多糖体、多糖結合体、トキソイド、遺伝子ワクチン、弱毒性、再集合体、不活化、全細胞、ウィルスおよび細菌のベクタを含むが、これらに限定されるものではない)がある。これらは、依存症、関節炎、コレラ、コカイン依存症、ジフテリア、破傷風、HIB、ライム病、髄膜炎、麻疹、おたふく風邪、風疹、水痘、黄熱病、呼吸器多核体ウィルス、ダニ媒介日本脳炎、肺炎球菌、連鎖球菌、腸チフス、インフルエンザ、A型、B型、C型、およびE型を含む肝炎、中耳炎、狂犬病、ポリオ、HIV、パラインフルエンザ、ロタウィルス、エプスタインバーウィルス、CMV、クラミジア、型別不能ヘモフィルス、モラクセラカタラーリス、ヒトパピローマウィルス、BCGを含む結核、淋疾、喘息、アテローム硬化性マラリア、大腸菌、アルツハイマー、ヘリコバクターピロリ、サルモネラ症、糖尿病、癌、単純ヘルペス、ヒトパピローマなどに関連するものである。他の物質には、感冒用の作用剤など、あらゆる主要な治療薬、抗依存症薬、抗アレルギー剤、制吐剤、抗肥満症薬、抗骨粗鬆症薬、抗感染症薬、鎮痛剤、麻酔薬、食欲抑制剤、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗片頭痛薬、乗物酔い治療薬、制嘔吐剤、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、鎮痒薬、精神病治療薬、解熱剤、抗コリン薬、ベンゾジアゼピン拮抗薬、全身血管、冠動脈、末梢血管、脳血管を含む血管拡張剤、骨作動薬、中枢神経興奮薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドその他の巨大分子、覚醒剤、鎮静薬、性機能低下および精神安定薬、ならびにツベルクリンその他の過敏症薬などの主要な診断薬がある。これらは文献に記載されているものである(例えば、「Method of Intradermally Injecting Substances」という名称の特許文献1参照。この内容全体を参照により明示的に本明細書に組み込む)。
【0095】
本発明のシステムおよび方法に従って送達することができるワクチン製剤は、ヒト病原体に対して免疫反応を誘発し得る抗原または抗原組成物からなる群から選択することができる。これらの抗原または抗原組成物は、HIV−1(tat、nef、gp120またはgp160など)、gDまたはその誘導体あるいはHSV1またはHSV2からのICP27などの前初期タンパク質などのヒトヘルペスウィルス(HSV)、サイトメガロウィルス((特にヒト)CMV)(gBまたはその誘導体など)、ロタウィルス(弱毒生ウィルスを含む)、エプスタインバーウィルス(gp350またはその誘導体など)、水痘帯状疱疹ウィルス(VZV:gpl、II、およびIE63など)、または、B型肝炎ウィルス(例えば、B型肝炎表面抗原またはその誘導体)、A型肝炎ウィルス(HAV)、C型肝炎ウィルス、およびE型肝炎ウィルスなどの肝炎ウィルス由来のもの、または、パラミクソウィルス、すなわち、呼吸器多核体ウィルス(RSV:Fタンパク質およびGタンパク質またはそれらの誘導体など)、パラインフルエンザウィルス、麻疹ウィルス、ムンプスウィルス、ヒトパピローマウィルス(HPV:例えば、HPV6、11、16、18)、フラビウィルス(例えば、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス、ダニ媒介脳炎ウィルス、日本脳炎ウィルス)、あるいはインフルエンザウィルス(生ウィルスまたは不活化ウィルスの全体、卵またはMDCK細胞内で成長させた分離インフルエンザウィルスあるいは、インフルエンザビロゾーム全体、またはその精製タンパク質または組換えタンパク質、例えば、HA、NP、NAまたはMタンパク質あるいはこれらの組合せ)などの他のウィルス病原体由来のもの、ナイセリアゴノレエおよびナイセリアメニンジティディス(例えば、莢膜多糖体およびその結合体、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、付着因子)を含むナイセリア属、ストレプトコッカスピオジェネス(例えば、Mタンパク質またはその断片、C5Aプロテアーゼ、リポタイコ酸)、ストレプトコッカスアガラクティエ、ストレプトコッカスミュータンス、ヘモフィルスデュクレイ、ブランハメラカタラーリスとしても知られるモラクセラカタラーリス(例えば、高分子量および低分子量の接着因子および侵入因子)を含むモラクセラ属、ボルデテラペルツーシス(例えば、パータクチン、百日咳毒素またはその誘導体、糸状ヘマグルチニン、アデニル酸シクラーゼ、卵管采)、ボルデテラパラパータシス、およびボルデテラブロンキセプチカを含むボルデテラ属、マイコバクテリウムテュバキュローシス(例えば、ESAT6、抗原85A、抗原85B、または抗原85C)、マイコバクテリウムボビス、マイコバクテリウムレプレ、マイコバクテリウムアビウム、マイコバクテリウムツベルクローシス、マイコバクテリウムスメグマチスを含むマイコバクテリウム属、レジオネラニューモフィラを含むレジオネラ属、毒素原性大腸菌(例えば、定着因子、易熱性毒素またはその誘導体、耐熱性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸管病原性大腸菌(例えば、志賀毒素様毒素またはその誘導体)を含むエシェリキア属、ビブリオコレラ(例えば、コレラ毒素またはその誘導体)を含むビブリオ属、シゲラソンネ、シゲラディッセンテリイ、シゲラフレックスネリを含むシゲラ属、エルシニアエンテロコリチカ(例えば、Yopタンパク質)、エルシニアペスチス、エルシニアシュードツベルクローシスを含むエルシニア属、カンピロバクタージェジュニ(例えば、毒素、接着因子、および侵入因子)およびカンピロバクターコリを含むカンピロバクター属、サルモネラチフィ、サルモネラパラチフィ、サルモネラコレラスイス、サルモネラエンテリティデスを含むサルモネラ属、リステリアモノサイトゲネスを含むリステリア属、ヘリコバクターピロリ(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素)を含むヘリコバクター属、シュードモナスアルギノーサを含むシュードモナス属、スタフィロコッカスオーレウス、スタフィロコッカスエピデルミデスを含むスタフィロコッカス属、エンテロコッカスファカリス、エンテロコッカスフェシウムを含むエンテロコッカス属、クロストリジウムテタニ(例えば、破傷風毒素およびその誘導体)、クロストリジウムボツリナム(例えば、ボツリナム毒素およびその誘導体)、クロストリジウムディフィシル(例えば、クロストリジウム毒素AまたはBおよびそれらの誘導体)を含むクロストリジウム属、バチルスアンスラシス(例えば、ボツリナム毒素およびその誘導体)を含むバチルス属、コリネバクテリウムジフセリエ(例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体)を含むコリネバクテリウム属、ボレリアブルグドルフェリ(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアガリニ(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアアフゼリ(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアアンダーソニー(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアハームシーを含むボレリア属、エーリキアエクイおよびヒト顆粒球エーリキア病原体を含むエーリキア属、リケッチシアリケッチーを含むリケッチア属、クラミジアトラコマチス(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、クラミジアニューモニエ(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、クラミジアシッタシを含むクラミジア属、レプトスピラインタロガンスを含むレプトスピラ属、トレポネーマパリダム(例えば、希薄外膜タンパク質)、トレポネーマデンティコーラ、トレポネーマハイオディセンテリーを含むトレポネーマ属などの細菌病原体由来のもの、または、プラスモジウムファルシプラムを含むプラスモジウム属、トキソプラズマゴンディ(例えば、SAG2、SAG3、Tg34)を含むトキソプラズマ属、エントアメーバヒストリテカを含むエントアメーバ属、バベシアミクロッティを含むバベシア属、トリパノソーマクルジイを含むトリパノソーマ属、ジアルジアランブリアを含むジアルジア属、森林型熱帯リーシュマニアを含むリーシュマニア属、ニューモシスティスカリニを含むニューモシスティス属、トリコモナスヴァジナリスを含むトリコモナス属、マンソン住血吸虫を含むシストソーマ属などの寄生生物由来のもの、カンジダアルビカンスを含むカンジダ属、クリプトコッカスネオフォルマンスを含むクリプトコッカス属などの酵母菌由来のものである。これらは文献に記載されているものである(例えば、「Vaccine Delivery System」という名称の特許文献2参照。この内容全体を参照により明示的に本明細書に組み込む)。
【0096】
これらは、例えば、Tb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38−1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2、およびhTCC1など、マイコバクテリウムテュバキュローシス用の他の好ましい特定の抗原も含む。マイコバクテリウムテュバキュローシス用のタンパク質には、融合タンパク質およびその変異体も含まれる。これらは、マイコバクテリウムテュバキュローシスの少なくとも2つ、好ましくは3つのポリペプチドが融合してより大きなタンパク質になったものである。好ましい融合体には、Ra12−TbH9−Ra35、Erd14−DPV−MTI、DPV−MTI−MSL、Erd14−DPV−MTI−MSL−mTCC2、Erd14−DPV−MTI−MSL、DPV−MTI−MSL−mTCC2、TbH9−DPV−MTIがある。クラミジア用の最も好ましい抗原には、例えば、高分子量タンパク質(HWMP)、ORF3、および推定上の膜タンパク質(Pmps)がある。好ましい細菌ワクチンは、ストレプトコッカスニューモニエ(例えば、莢膜多糖体およびその結合体、PsaA、PspA、ストレプトリジン、コリン結合タンパク質)ならびにタンパク質抗原ニューモリジン(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)およびその突然変異解毒誘導体を含むストレプトコッカス属由来の抗原を含む。他の好ましい細菌ワクチンは、ヘモフィルスB型インフルエンザ(「Hib」、例えば、PRPおよびその結合体)、型別不能ヘモフィルスインフルエンザ、例えばOMP26、高分子量接着因子、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびペプチド由来のフィンブリンあるいはその多数の複製変異体または融合タンパク質を含む、ヘモフィルス属由来の抗原を含む。B型肝炎表面抗原の誘導体は、当技術分野ではよく知られており、とりわけ、PreS1、PreS2のS抗原を含む。好ましい一態様では、本発明のワクチン製剤は、特にCHO細胞内で発現させるときには、HIV−1抗原、gp120を含む。別の実施形態では、本発明のワクチン製剤は、上記で定義したgD2tを含む。
【0097】
上記で挙げた物質の送達に加えて、注入装置100は、患者から物質を抜き取る、または患者の体内の物質のレベルを監視するのにも使用可能である。監視または抜き取ることができる物質の例には、血液、間質液または血漿がある。次いで、抜き取られた物質について、分析物、グルコース、薬物などを分析することができる。
【0098】
以上、本発明の例示的な実施形態のいくつかだけを詳細に説明してきたが、これらの例示的な実施形態において、本発明の新規な教示および利点から大きく逸脱することなく、多くの修正形態が可能であることが当業者には容易に理解されよう。したがって、すべてのそうした修正形態は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に入るものとする。
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