特許第6069296号(P6069296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069296
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】累進多焦点眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20170123BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G02C7/06
   G02C13/00
【請求項の数】11
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2014-501550(P2014-501550)
(86)(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公表番号】特表2014-512023(P2014-512023A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】EP2012055146
(87)【国際公開番号】WO2012130736
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】11305381.3
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507229319
【氏名又は名称】エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラル ドプティック)
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】デ ロッシ,エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】モワーヌ,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】レゴ,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ギロ,マチュー
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−249992(JP,A)
【文献】 特開平11−194310(JP,A)
【文献】 特開2000−258732(JP,A)
【文献】 特開2010−002713(JP,A)
【文献】 特開平06−067124(JP,A)
【文献】 特開2006−163441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/06
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント表面及びリア表面を含む累進多焦点眼用レンズであって、各表面が各点において高さ(z)、平均球面値(SPHmean)及び円柱面値(CYL)を有し、
前記レンズの前記フロント表面が、
− 遠方視基準点(FV)を有する遠方視領域(26)、
− 近方視基準点(NV)を有する近方視領域(28)、
− 主要経線(32)
を含み、前記フロント表面が漸減的であり、かつ、
− 前記主要経線(32)の一部分、前記遠方視基準点(FV)及び前記近方視基準点(NV)を含む前記レンズの中央部分における任意の点において7.5010−1mm−1未満の球面勾配(GradSPH)正規化値、
− 前記レンズの前記中央部分における任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配(GradCYL)正規化値
を有する、眼用レンズ。
【請求項2】
少なくとも1つの表面が、2つの極小マーキングと、前記2つの極小マーキングを結ぶセグメントの中心に位置する中心点とを含み、前記レンズの前記中央部分が前記中心点に中央配置される40mmの円である、請求項1に記載の累進多焦点眼用レンズ。
【請求項3】
第1漸減表面および第2未仕上げ表面を有する半製品眼鏡レンズブランクであって、前記第1漸減表面が各点において高さ(z)、平均球面値(SPHmean)および円柱面値(CYL)を有し、前記第1漸減表面が、
− 遠方視基準点(FV)を有する遠方視領域(26)
− 近方視基準点(NV)を有する近方視領域(28)
− 主要経線(32)、
を含み、前記第1漸減表面が、前記主要経線(32)の一部分、前記遠方視基準点(FV)および前記近方視基準点(NV)を含む前記ブランクの少なくとも中央部分における任意の点において5.0l0−5mm−2.ジオプター−1未満の高さに関する第四次導関数(D)正規化値を有し、かつ、前記第1漸減表面が、
− 前記中央部分における任意の点における7.5010−1mm−1未満の球面勾配(GradSPH)正規化値と、
− 前記中央部分における任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配(GradCYL)正規化値と
を有する、半製品眼鏡レンズブランク。
【請求項4】
第1漸減表面及び第2未仕上げ表面を有する半製品眼鏡レンズブランクであって、前記第1漸減表面が各点において高さ(z)、平均球面値(SPHmean)及び円柱面値(CYL)を有し、前記第1漸減表面が、
− 遠方視基準点(FV)を有する遠方視領域(26)、
− 近方視基準点(NV)を有する近方視領域(28)、
− 主要経線(32)
を含み、前記第1漸減表面が、
− 前記主要経線(32)の一部分、前記遠方視基準点(FV)及び前記近方視基準点(NV)を含む前記ブランクの中央部分の任意の点における7.5010−1mm−1未満の球面勾配(GradSPH)正規化値と、
− 前記中央部分の任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配(GradCYL)正規化値と
を有する、半製品眼鏡レンズブランク。
【請求項5】
前記ブランクが前記ブランクの中心点の位置を定義するマーキングを有し、前記ブランクの前記中央部分が前記中心点に中央配置される40mm直径の円である、請求項3〜4のいずれか一項に記載の半製品眼鏡レンズブランク。
【請求項6】
半製品レンズブランクを製造する方法であって、
− 第1表面及び第2未仕上げ表面を定義するステップであって、第1表面が各点において高さ(z)、平均球面値(SPHmean)及び円柱面値(CYL)を有するステップと、
− 遠方視基準点(FV)を有する遠方視領域(26)、近方視基準点(NV)を有する近方視領域(28)、主要経線(32)、及び前記主要経線(32)の一部分と前記遠方視基準点(FV)と前記近方視基準点(NV)とを含む前記第1表面の中央部分を定義するステップと、
− 前記第1表面を決定するステップであって、
− 前記遠方視領域(26)の少なくとも一部と前記近方視領域(28)の少なくとも一部との間の前記平均球面値(ΔSPHmean)の漸減、
− 前記中央部分の任意の点における7.5010−1mm−1未満の球面勾配(GradSPH)正規化値、及び
− 前記中央部分の任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配(GradCYL)正規化値、
を有するステップと、
− 前記第1表面を表面加工又は成型するステップと
を含む、方法。
【請求項7】
累進多焦点眼用レンズを製造する方法であって、
− 着用者に関するデータを提供するステップと、
− 請求項3〜5のいずれか一項による半製品レンズブランクを選択するステップと、
− 着用者に関する前記データ及び前記ブランクの前記第1漸減表面に関する前記データに基づいて前記レンズの光学的最適化を行うステップと、
− 選択された前記半製品レンズブランクを供給し、かつ、前記ブランクの前記未仕上げ表面を前記光学的最適化の結果に従って表面加工又は成型するステップと
を含む、方法。
【請求項8】
平均球面値(ΔSPHmean)を有する累進多焦点眼用レンズを製造する方法であって、
− 着用者に関するデータを提供するステップと、
− 遠方視基準点(FV)を有する遠方視領域(26)、近方視基準点(NV)を有する近方視領域(28)、主要経線(32)を定義するステップと、
− 前記レンズの第1表面を定義するステップであって、
− 前記遠方視領域(26)の少なくとも一部と前記近方視領域(28)の少なくとも一部との間の前記平均球面値(ΔSPHmean)の漸減、
− 前記主要経線(32)の一部分、前記遠方視基準点(FV)及び前記近方視基準点(NV)を含む前記レンズの中央部分の任意の点における7.5010−1mm−1未満の球面勾配(GradSPH)正規化値、及び
− 前記レンズの前記中央部分の任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配(GradCYL)正規化値
を有するステップと、
− 前記着用者に関する前記データ及び前記レンズの前記第1表面に関する前記データに従って前記レンズの光学的最適化を行うステップと、
− 前記光学的最適化の結果に従って前記レンズの第2表面を決定するステップと、
− 前記第1及び第2表面を表面加工又は成型するステップと
を含む、方法。
【請求項9】
累進多焦点眼用レンズ及び/又は半製品レンズブランクを製造する一連の装置であって、請求項6〜8のいずれか一項による方法のステップを実行するように適合される装置。
【請求項10】
処理装置でアクセスでき、前記処理装置により実行されたとき請求項6〜8のいずれか一項のステップを前記処理装置に実行させる1つ以上の記憶された命令シーケンスを含むコンピュータ・プログラム製品。
【請求項11】
請求項10の前記コンピュータ・プログラム製品の1つ以上の命令シーケンスを実行するコンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、累進多焦点眼用レンズに関する。本発明は、機械加工を経て累進多焦点眼用レンズとなる前の第1非球面表面及び第2未仕上げ表面を有する半製品レンズブランクにも関する。本発明は、かかる累進多焦点眼用レンズ及びかかる半製品レンズブランクを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
着用者は、正又は負の屈折力補正を処方される。眼科処方は、屈折力及び/又は乱視の処方を含むことがある。老眼のある着用者の場合には、屈折力補正の値は、近方視(near vision)における調整が困難であるために、遠方視(far vision)と近方視とにおいて相異なる。したがって、処方は、遠方視のパワーの値と、遠方視と近方視との間の屈折力の増分を表す加入度を含む。この加入度は、処方加入度と呼ばれる。老眼のある着用者に適する眼用レンズは、多焦点レンズであり、最も適するレンズは累進多焦点眼用レンズである。
【0003】
眼科処方は、乱視処方を含むことがある。かかる処方は、眼科医により軸値(度数単位)及び振幅値(ジオプトリ単位)から形成される対の形式で作成される。振幅値は、着用者の視覚障害を矯正することができる所与の方向における最小及び最大屈折率間の差異を表す。選択されている規則によると、軸は、基準軸との関係及び選択された回転方向における2つの屈折率の一方の向きを表す。一般的に、TABO規則(TABO convention)が使用される。この規則では、基準軸は水平であり、回転方向は各眼について着用者に向かって反時計方向である。したがって+45°の軸値は、着用者に向かって見て斜めを向く軸を表し、右上の象限から左下の象限に伸びる。かかる乱視処方は、遠方視で見る着用者について測定される。用語「乱視」は、前記の対(振幅、角度)を指示するために使用される。この使用法は厳密には正しくないが、この用語は乱視の振幅を指す場合にも使用される。当業者は、文脈からどちらの意味と考えるべきか理解できる。着用者について処方された屈折力及び乱視が一般的に球面(SPH)、円柱面(CYL)、及び軸と呼ばれることも当業者にはよく知られている。
【0004】
着用者処方に対応する累進多焦点眼用レンズを得るために、半製品眼用レンズブランクは、レンズ・メーカーから入手することができる。一般的に、半製品眼用レンズブランクは、光学基準表面に対応する第1表面、たとえば、在来の累進多焦点眼用レンズの場合の累進表面、及び第2未仕上げ表面から構成されている。適切な光学特性を有する半製品レンズブランクは着用者処方に基づいて選択され、かつ、未仕上げ表面は処方室により加工・研磨されて処方に準拠するレンズとなる。半製品レンズブランクは、成型又はデジタル表面加工により製造することができる。未仕上げ表面は、デジタル表面加工により機械加工することができる。
【0005】
累進多焦点眼用レンズもデジタル表面加工装置を使用して両方の表面を直接機械加工することにより製作することができる。列レンズブランクが供給される。第1非球面表面を機械加工し、次に第2非球面表面を機械加工するが、この際、第2非球面表面は、第1非球面表面に関するデータ及び着用者に関するデータに基づく光学的最適化により決定される。このようにして処方に準拠する眼用レンズが得られる。
【0006】
半製品レンズブランクから開始するか、あるいは両方の表面をデジタル表面加工により機械加工するか、いずれの技術を使用するにせよ、レンズの光学的特性を実現するためにデジタル表面加工機械におけるレンズの正確な位置付けが必要である。
【0007】
国際公開第A−2010/072749号パンフレットは、デジタル表面加工により眼用レンズを製造する方法を開示し、かつ、ブロッカー上においてレンズ部材を正確に位置付けする課題を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、レンズの光学的品質を維持しつつ累進多焦点眼用レンズの製造を容易にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、フロント表面及びリア表面からなる累進多焦点眼用レンズにより達成される。これらの各表面は、各点において、高度、平均球面値及び円柱面値を有しており、また、レンズのフロント表面は、
− 遠方視基準点を有する遠方視領域、
− 近方視基準点を有する近方視領域、
− 主要経線
を含み、フロント表面は漸減的であり、かつ
− 主要経線の一部分を含むレンズの中心部分の任意の点における7.50.10−1mm−1未満の球面勾配正規化値、遠方視基準点及び近方視基準点、
− レンズの中心部分の任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配正規化値
を有する。
【0010】
1つの実施形態に従って、レンズのフロント表面は、さらに、レンズの中心部分の任意点において5.0.10−5mm−2.ジオプター−1未満の高さに関する第四次導関数正規化値を有する。
【0011】
本発明の目的は、また、フロント表面及びリア表面を含む累進多焦点眼用レンズによっても達成される。これらの各表面は、各点において、高度、平均球面値及び円柱面値を有しており、また、レンズのフロント表面は、
− 遠方視基準点を有する遠方視領域、
− 近方視基準点を有する近方視領域、
− 主要経線
以下を含み、フロント表面は漸減的であり、主要経線の一部分を含むレンズの中心部分の任意点において5.0.10−5mm−2.diopte−1未満の高さに関する第四次導関数正規化値、遠方視基準点及び近方視基準点を有する。
【0012】
1つの実施形態に従って、レンズの少なくとも1つの表面は、2つの極小マーキング及びこれらの2つの極小マーキングを結合するセグメントの中心に位置する中心点を含んでおり、レンズの中心部分は、中心点上の中心に置かれている直径40mmの円である。
【0013】
本発明の目的は、第1漸減表面及び第2未仕上げ表面を有する半製品眼鏡レンズブランクによっても達成される。第1漸減表面は、各点において、高さ、平均球面値及び円柱面値を有する。ただし、第1漸減表面は、遠方視基準点を有する遠方視領域、近方視基準点を有する近方視領域及び主要経線を有しており、また、第1漸減表面は、主要経線の一部分、遠方視基準点及び近方視基準点を含むブランクの少なくとも中心部分の任意点において5.0.10−5mm−2.ジオプター−1未満の高さに関する第四次導関数正規化値、遠方視基準点及び近方視基準点、遠方視基準点及び近方視基準点を有する。
【0014】
1つの実施形態によると、第1の漸減表面は、さらに以下を含んでいる。
【0015】
− 中心部分の任意の点における7.50.10−1mm−1未満の球面勾配正規化値、
− 中心部分の任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配正規化値。
【0016】
本発明の目的は、第1漸減表面及び第2未仕上げ表面を有する半製品眼鏡レンズブランクによっても達成される。第1漸減表面は、各点において、高さ、平均球面値及び円柱面値を有する。ただし、第1漸減表面は、遠方視基準点を有する遠方視領域、近方視基準点を有する近方視領域及び主要経線を有しており、また、第1漸減表面は、以下を有する。
【0017】
− 主要経線の一部分、遠方視基準点及び近方視基準点を含む中心部分の任意の点における7.50.10−1mm−1未満の球面勾配正規化値、
− 中心部分の任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配正規化値。
【0018】
1つの実施形態によると、ブランクは、ブランク中心点の位置を定めるマーキングを有しており、ブランクの中心点はこの中心点上に中心の位置に置かれた直径40mmの円である。
【0019】
本発明は、半製品レンズブランクを製造する方法にも関し、以下のステップを含む。
【0020】
− 第1表面及び第2未仕上げ表面を定義するステップであって、この第1表面が各点に高さ、平均球面値及び円柱面値を有するステップ、
− 遠方視基準点を有する遠方視領域、近方視基準点を有する近方視領域、主要経線及び第1表面の中心部分(主要経線の一部分、遠方視基準点及び近方視基準点を含む)を定義するステップ、
− 以下を有する第1表面を決定するステップ:
・ 遠方視領域の少なくとも一部と近方視領域の少なくとも一部との間の平均球面値の漸減、及び
・ 中心部分の任意点における5.0.10−5未満の高さに関する第四次導関数正規化値、
− 第1表面を表面加工又は成型するステップ。
【0021】
本発明は、さらに、半製品レンズブランクを製造する方法に関し、以下のステップを含む。
【0022】
− 第1表面及び第2未仕上げ表面を定義するステップであって、この第1表面は、各点において高さ、平均球面値及び円柱面値を有するステップ、
− 遠方視基準点を有する遠方視領域、近方視基準点を有する近方視領域、主要経線及び第1表面の中心点(主要経線の一部分、遠方視基準点及び近方視基準点を含む)を定義するステップ、
− 以下を有する第1表面を決定するステップ:
・ 遠方視領域の少なくとも一部と近方視領域の少なくとも一部との間の平均球面値の漸減、及び
・ 中心部分の任意の点における7.50.10−1mm−1未満の球面勾配正規化値、及び
・ 中心部分の任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配正規化値、
− 第1表面を表面加工又は成型するステップ。
【0023】
本発明は、さらに、累進多焦点眼用レンズを製造する方法に関し、以下のステップを含む。
【0024】
− 着用者に関するデータを提供するステップ、
− 本発明に従って半製品レンズブランクを選択するステップ、
− 着用者に関するデータ及びブランクの第1漸減表面に関するデータに基づいてレンズの最適化を行うステップ、
− 選択された半製品レンズブランクを提供するステップ及び光学的最適化の結果に従ってブランクの未仕上げ表面を表面加工又は成型するステップ。
【0025】
本発明は、さらに、累進多焦点眼用レンズを製造する方法に関し、以下のステップを含む。
【0026】
− 着用者に関するデータを提供するステップ、
− 遠方視基準点を有する遠方視領域、近方視基準点を有する近方視領域、主要経線を定義するステップ、
− 以下を有する第1表面を定義するステップ:
・ 遠方視領域の少なくとも一部と近方視領域の少なくとも一部との間の平均球面値の漸減、
・ 主要経線の一部分、遠方視基準点及び近方視基準点を含むレンズの中心部分の任意の点における7.50.10−1mm−1未満の球面勾配正規化値、
・ レンズの中心部分の任意の点における1.45mm−1未満の円柱面勾配正規化値、
− 着用者に関するデータ及びレンズの第1表面に関するデータに基づいてレンズの最適化を行うステップ、
− 光学的最適化の結果に従ってレンズの第2表面を決定するステップ、
− 第1及び第2表面を表面加工又は成型するステップ。
【0027】
本発明は、累進多焦点眼用レンズを製造する方法にも関し、以下のステップを含む。
【0028】
− 着用者に関するデータを提供するステップ、
− 遠方視基準点を有する遠方視領域、近方視基準点を有する近方視領域、主要経線を定義するステップ、
− 以下を有するレンズの第1表面を定義するステップ:
・ 遠方視領域の少なくとも一部と近方視領域の少なくとも一部との間の平均球面値の漸減、
・ 主要経線の一部分、遠方視基準点及び近方視基準点を含むレンズの中心部分の任意の点における5.0.10−5未満の高さに関する第四次導関数正規化値、
− 着用者に関するデータ及びレンズの第1表面に関するデータに基づいてレンズの最適化を行うステップ、
− 光学的最適化の結果に従ってレンズの第2表面を決定するステップ、
− 第1及び第2表面を表面加工又は成型するステップ。
【0029】
本発明は、累進多焦点眼用レンズ及び/又は半製品レンズブランクを製造するための一連の装置にも関する。これらの装置は、本発明による方法のステップを実行するように適合化される。
【0030】
本発明は、さらに、処理装置でアクセスできる1つ以上の命令記憶シーケンスを含むコンピュータ・プログラム製品に関する。これらのシーケンスは、処理装置により実行されたとき、処理装置に本発明による方法のステップを実行させる。本発明は、本発明のコンピュータ・プログラム製品の1つ以上の命令シーケンスを実行するコンピュータ読み取り可能媒体にも関する。
【0031】
遠方視基準点(resp.近方視基準点)は、たとえば、制御点でよい。より一般的に言うと、遠方視基準点(resp.近方視基準点)は、遠方視領域(resp.近方視領域)中のフロント表面の任意の他の点とすることができる。
【0032】
球面及び円柱面の変化(球面の勾配及び円柱面の勾配とも呼ばれる)及び/又は球面及び円柱面の変化の加速度は、本発明に従って累進多焦点眼用レンズのフロント表面上で制御される。したがって、レンズの光学的品質を維持しつつ、リア表面のデジタル表面加工機械による機械加工の高度な技術的実行可能性を確保することができる。
【0033】
本発明のさらなる特徴及び長所は、以下に列挙する添付図面を参照しつつ非限定的な例示として与えられる本発明の実施形態に関する以下の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のグラフである。
図2】第1比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図3】第1比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図4】第1比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図5】第1比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図6】第2比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のグラフである。
図7】第2比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図8】第2比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図9】第2比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図10】第2比較例による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図11】本発明の第1の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のグラフ、である。
図12】本発明の第1の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図13】本発明の第1の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図14】本発明の第1の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図15】本発明の第1の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図16】本発明の第2の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のグラフ、である。
図17】本発明の第2の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図18】本発明の第2の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図19】本発明の第2の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図20】本発明の第2の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図21】本発明の第3の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のグラフ、である。
図22】本発明の第3の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図23】本発明の第3の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図24】本発明の第3の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図25】本発明の第3の実施形態による、半製品レンズブランクのフロント表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図26】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図27】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図28】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図29】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図30】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図31】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図32】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図33】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図34】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図35】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図36】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図37】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図38】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図39】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図40】検討下のレンズの公称性能の光学的分析を示す。
図41図1〜5の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のグラフである。
図42図1〜5の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図43図1〜5の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図44図1〜5の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図45図1〜5の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図46図6〜10の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のグラフである。
図47図6〜10の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図48図6〜10の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図49図6〜10の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図50図6〜10の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図51図11〜15の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のグラフである。
図52図11〜15の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図53図11〜15の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図54図11〜15の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図55図11〜15の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図56図16〜20の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のグラフである。
図57図16〜20の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図58図16〜20の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図59図16〜20の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図60図16〜20の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図61図21〜25の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のグラフである。
図62図21〜25の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの平均球面のマップである。
図63図21〜25の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面のマップである。
図64図21〜25の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの球面勾配のマップである。
図65図21〜25の半製品レンズブランクを使用したときの、リア表面の経線沿いの円柱面勾配のマップである。
図66】位置決め不良が発生した場合の、第1の比較例によるレンズの性能の光学的分析を示す。
図67】位置決め不良が発生した場合の、第1の比較例によるレンズの性能の光学的分析を示す。
図68】位置決め不良が発生した場合の、第1の比較例によるレンズの性能の光学的分析を示す。
図69】位置決め不良が発生した場合の、本発明の第3の実施形態によるレンズの性能の光学的分析を示す。
図70】位置決め不良が発生した場合の、本発明の第3の実施形態によるレンズの性能の光学的分析を示す。
図71】位置決め不良が発生した場合の、本発明の第3の実施形態によるレンズの性能の光学的分析を示す。
図72】公称性能の光学的分析と位置決め不良が発生した場合の性能の光学的分析を比較する。
図73】公称性能の光学的分析と位置決め不良が発生した場合の性能の光学的分析を比較する。
図74】公称性能の光学的分析と位置決め不良が発生した場合の性能の光学的分析を比較する。
図75】公称性能の光学的分析と位置決め不良が発生した場合の性能の光学的分析を比較する。
図76】公称性能の光学的分析と位置決め不良が発生した場合の性能の光学的分析を比較する。
図77】公称性能の光学的分析と位置決め不良が発生した場合の性能の光学的分析を比較する。
図78】検討下の各レンズについて公称性能からの最大偏差を示すグラフである。
図79】極小マーキングを有する表面について、極小マーキングに関して定義された基準を示す。
図80】極小マーキングをもたない表面について、極小マーキングに関して定義された基準を示す。
図81】多焦点累進レンズの略図である。
図82】ブロッカーに置かれるレンズブランクの透視図である。
図83】本発明によるレンズを製造する方法のステップのフローチャートである。
【0035】
これらの図面の要素は、単純性及び明晰性を意図して図示されており、必ずしも実際の寸法の縮尺表示でないことが見てとれるであろう。たとえば、これらの図面中の要素の一部の寸法は、本発明の実施形態のより良い理解に資するために他の要素に対して誇張されている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
累進レンズは、2つの非回転的に対象な非球面表面、たとえば、累進表面、漸減表面、トーリック表面又はアトーリック表面を含むがこれらに限定されない表面を含む。
【0037】
よく知られているように、非球面表面の各点は、高さzを有する。表面の各点について、最小曲率CURVminは、次の等式により与えられる:
【0038】
【数1】
【0039】
ただし、Rmaxは、メートル単位で表した局所的最大曲率半径であり、CURVminは、ジオプター単位で表されている。
【0040】
同様に、最大曲率CURVmaxは、非球面表面上の任意の点において次式により定義することができる。
【0041】
【数2】
【0042】
ただし、Rminは、メートル単位で表した局所的最小曲率半径であり、CURVmaxは、ジオプター単位により表されている。
【0043】
表面が局所的に球面である場合、局所的最小曲率半径Rmin及び局所的最大曲率半径Rmaxは、同じであり、したがって、最小及び最大曲率半径CURVmin及びCURVmaxも等しい。
【0044】
最小及び最大曲率半径CURVmin及びCURVmaxのこれらの式から、SPHmin及びSPHmaxと示される最小及び最大球面は、検討下の表面の性質に従って導き出すことができる。
【0045】
検討下の表面が対象側表面(フロント表面とも呼ばれる)である場合、これらの式は、次のようになる:
【0046】
【数3】
【0047】
ここでnは、レンズの構成材料の屈折率である。
【0048】
検討下の表面が眼球側(リア表面とも呼ばれる)である場合、これらの式は、次のようになる:
【0049】
【数4】
【0050】
ここで、nは、レンズの構成材料の屈折率である。
【0051】
よく知られているように、非球面表面の任意の点における平均球面SPHmeanも次式により定義することができる:
【0052】
【数5】
【0053】
− 円柱面CYLも、式CYL=SPHmax−SPHminにより定義される。
【0054】
レンズの任意の複合表面の特性は、局所的平均球面及び局所的円柱面の手段により表すことができる。表面は、円柱面が少なくとも0.25ジオプターである場合、局所的に非球面であるとみなすことができる。
【0055】
レンズがその非球面表面の1つを参照することにより特徴付けられる場合には常に、それぞれ極小マーキングを有する表面及び極小マーキングをもたない表面について、基準は図79及び80に示した極小マーキングに関して定義される。
【0056】
累進レンズは、整合規格ISO 8990−2により必須とされている極小マーキングを含んでいる。一時的マーキングもレンズの表面に適用することができ、たとえば遠方視の制御点、近方視の制御点、プリズム基準点及び合わせ十字など、レンズ上の制御点の位置を指示する。一時的マーキングが存在しない場合又は消去された場合、当業者は、いつでも実装チャート又は永久極小マーキングを使用することによりレンズ上に制御点を位置付けることができる。レンズ製造業者は、制御点における処方を保証する必要がある。
【0057】
極小マーキングは、レンズの両方の表面の基準を定義することも可能にする。
【0058】
図79は、極小マーキングを有する表面の基準を示す。表面の中心(x=0,y=0)は、表面の点である。この点において表面への法線Nが2つの極小マーキングを連結するセグメントの中心を横切る。MGは、2つの極小マーキングにより定義される共線単位ベクトルである。基準のベクトルZは、単位法線に等しい(Z=N)。基準のベクトルYは、MGによるZのベクトル積に等しい。基準のベクトルXは、ZによるYのベクトル積に等しい。したがって{X,Y,Z}は、直接正規直交三面体を形成する。基準の中心は、表面の中心x=0mm,y=0mmである。X軸は水平軸であり、Y軸は垂直軸である。
【0059】
図80は、極小マーキングを有する表面の反対側の表面の基準を示す。この第2表面の中心(x=0,y=0)は、第1表面上の2つの極小マーキングを結合するセグメントの中心を横切る法線Nが第2表面を横切る点である。第2表面の基準は、第1表面の基準と同じ方法で構築される。すなわち、ベクトルZは、第2表面の単位法線に等しい。ベクトルYは、MGによるZのベクトル積に等しい。ベクトルXは、ZによるYのベクトル積に等しい。第1表面に関しては、X軸は水平軸であり、Y軸は。この表面の基準の中心もx=0mm,y=0mmである。
【0060】
同様に、半製品レンズブランクについて、規格ISO 10322−2は、極小マーキングの適用を要求する。したがって半製品レンズブランクの非球面表面の中心は、上述したように決定され、かつ、基準とすることができる。
【0061】
さらに、累進多焦点レンズも、これらのレンズを着用する人の状況を考慮しつつ、光学的特性により定義することができる。たとえば光学的特性によりレンズを定義している欧州特許出願公開第A−0 927 377号明細書、欧州特許出願公開第A−0 990 939号明細書又は国際公開第A−2010/100528号パンフレットを参照することができる。
【0062】
本来的に知られているように、着用者の屈折力及び乱視は、各視線方向において定義することができる。
【0063】
着用条件におけるレンズの屈折力及び乱視の可能な定義は、B.Bourdoncleほかによる“Ray tracing through progressive ophthalmic lenses”と題されている論文(1990 International Lens Design Conference,D.T.Moore ed.,Proc.Soc.Photo.Opt.Instrum.Eng.)において説明されているように計算することができる。着用条件は、所与のレンズについて光線追跡プログラムから計算することができる。さらに、屈折力及び乱視は、自分の眼鏡を前記着用条件で着用する着用者のために処方が満たされるように計算することができる。屈折力及び乱視は、フロントフォコメータにより測定することもできる。
【0064】
光学項における値は、注視方向について表すことができる。注視方向は、通常、枠(その原点が眼の回転の中心である)におけるその低下角度及び方位角により与えられる。レンズが眼の前に取り付けられたとき、合わせ十字と呼ばれる点が瞳孔の前又は主要注視方向の眼の眼球回転中心Q’の前に置かれる。主要注視方向は、着用者が真っ直ぐ前を見ている状況に対応する。選択された枠において、合わせ十字は、したがって、合わせ十字が置かれている表面がリア表面であるか又はフロント表面であるかに関係なく0°の低下角α及び0°の方位角βに対応する。
【0065】
これからの記述において、「上部」、「下部」、「水平」、「垂直」、「上に」、「下に」又は関係位置を示すその他の用語を使用する。これらの用語は、レンズの着用条件に関して理解されるべきである。特にレンズの「上の」部分は、負の低下角α<0°に対応し、また、レンズの「下の」部分は、正の低下角α>0°に対応する。同様にレンズ又は半製品レンズブランクの表面の「上の」部分は、図79及び80について前記において定義した枠におけるy軸沿いの正の値、好ましくは合わせ十字におけるy_値より大きいy軸沿いの値に対応し、また、レンズ又は半製品レンズブランクの表面の「下の」部分は、y軸沿いの負の値、好ましくは合わせ十字におけるy_値より小さいy軸沿いの値に対応する。
【0066】
レンズを通して観察される視野域を図81に大まかに示す。レンズは、レンズの上部に位置する遠方視領域26、レンズの下部に位置する近方視領域28,及びレンズの下方に遠方視領域26と近方視領域28の間に位置する中間域30を含む。レンズは、3つの領域を通過して鼻側及びこめかみ側を画定する主要経線32も含んでいる。一般的に、遠方視領域26は、遠方視制御点FVを含み、また、近方視領域28は、近方視制御点NVを含んでいる。レンズの表面を考察するとき、遠方視領域及び近方視領域は、上で定義した域の表面に対する投影として定義することができる。レンズ又は半製品レンズブランクの表面を考察する場合、遠方視領域、近方視領域は、それぞれ、レンズが使用されるときに、遠距離視界域、近距離視界域に貢献する域として定義することができる。
【0067】
本発明の目的のために、累進レンズの経線32は、以下のとおり定義される:合わせ十字に対応する注視方向と近方視領域に存在する注視方向間のα=α1の視野角の各低下について、局所的残余乱視が最小となる注視方向(α1,β1)を求める。したがって、この方法により定義されたすべての注視方向は、エルゴラマ接眼レンズ・システムの経線を形成する。このレンズの経線は、着用者が遠方視から近方視に移行するときの着用者の平均注視方向の軌跡を表す。このレンズの表面の経線32は、次のように定義することができる:レンズの光学経線に属する各注視方向(α,β)は、点(x,y)において表面と交差する。この表面の経線は、レンズの経線の注視方向に対応する点の集合である。レンズの非球面表面の、又は半製品レンズブランクの非球面表面の経線32は、次のように定義することもできる:表面の基準の中心(x=0mm;y=0mm)と表面の底部の間の各ラインyについて、局所的円柱面が最小となる点(x,y)を求める。
【0068】
図81に示すように、経線32は、レンズを鼻領域及びこめかみ領域に分離する。予想どおりに、鼻領域は、経線と着用者の鼻の間にあるレンズの領域であるのに対し、こめかみ領域は、経線と着用者のこめかみの間にある領域である。
【0069】
本発明は、志願者による歪みの観察に依存している。特に、志願者は、漸減フロント表面が最終レンズ上の周辺視力の光学的歪みを改善すること確認した。志願者は、フロント表面が漸減的であればあるほど、歪みがよりよく補償されることを観察した。
【0070】
「漸減的表面」の意味は、遠方視領域、近方視領域及び遠方視領域と距離視力域を接続する逓減平均球面値領域を有する連続非球面表面である。「累進的表面」の意味は、遠方視領域、近方視領域及び遠方視領域と距離視力域を接続する逓増平均球面値領域を有する連続非球面表面である。
【0071】
「表面の加入度」は、近方視領域に属する近方視基準点(NV)と遠方視領域に属する遠方視基準点(FV)間の平均球面変化として定義することができる。基準点は、たとえば制御点を含むがそれに限定されない。表面の加入度は、以下のように表現することができる。
Addsurface=SPHmean(NV)−SPHmean(FV)
Addsurface>0の場合、表面は累進表面
Addsurface<0の場合、表面は漸減表面
表面加入度の絶対値が最大になるように遠方視基準点及び近方視基準点が遠距離及び近方視領域中に選択された場合、この加入度値は、表面の最大加入度値と呼ばれる。
【0072】
本発明によるレンズブランクの漸減表面は、少なくとも遠方視領域の一部の中に平均球面値を有しており、それは近方視領域の少なくとも一部の中の平均球面値より大きい。
【0073】
しかしながら、フロント表面が漸減的である場合、すなわち、遠方視領域の少なくとも一部の中の平均球面値が近方視領域の少なくとも一部の中の平均球面値より大きい場合、リア表面は、最終レンズ上で正の屈折力加入度を得るためになお一層強い加入度をもたなければならない。処方された加入度の2ジオプターの処方に適する累進レンズについて、フロント表面がたとえば約3ジオプターの負の加入度を有する場合、リア表面は、このレンズに約2ジオプターの正の屈折力加入度を確保するために約5ジオプターの正の加入度を有するべきである。
【0074】
リア表面上のかかる強い球面変化は、強い円柱面変化も引き起こす。球面及び円柱面の強い変化は、表面の機械加工時の複雑さを増大する。
【0075】
実際に、レンズの表面を機械加工する際、最初に研削ステップを行い、このステップにおいてレンズの表面から材料を取り去り、求められている表面特性を得るために必要な形状にできるだけ近い表面を形成する。次に研磨ステップを行い、研削ステップで得られた形状を保存しつつ、透明な表面を得る。
【0076】
研削ステップ中、球面及び円柱面の勾配は、機械加工工具の加速に影響を及ぼす。勾配が大きいほど、加速は急峻となり、それは研削で得られた表面の劣化、ひいては光学特性の劣化に通ずることがある。
【0077】
研磨ステップ中、勾配は除去される傾向にある。勾配が鋭く変化する場合には常に、研磨は、この変化を和らげようとし、それは研磨により得られる表面の劣化、特に経線沿いの劣化に通ずることがある。
【0078】
さらに、球面と円柱面の強い勾配及び勾配の大きな変化は、両表面を相互の位置決めに対して非常に敏感にする。両表面間の位置決め誤差は、製造工程により、たとえば未仕上げ表面から第2表面を作成するためにレンズブランクをデジタル表面加工機械のブロッカーに配置するときに引き起こされる。
【0079】
図82は、デジタル表面加工機械のレンズ・ブロッキング装置20の基準フレームへのレンズブランク10の位置付けを示す。
【0080】
ブロッカー20中のレンズブランク10の基準枠は、以下により定義することができる。
【0081】
− 値Tx、Tyを有する水平面XYにおける平行移動Tx及びTy。これらは、それぞれ、この水平面におけるレンズ・ブロックの中心点0のX及びY方向沿いのオフセットを定義する;
− 垂直軸Z沿いの平行移動TZ
− 垂直Z軸の周りのレンズブランクの向きRZ
− 水平Y軸の周りのレンズブランクの向きRY
− 水平X軸の周りのレンズブランクの向きRX。
【0082】
レンズブランクの位置決めの誤差、すなわち、平行移動及び/又は回転は、第2表面を第1表面に関するオフセットで表面仕上げすることに通じ、その結果、最終レンズの光学性能が公称性能(公称性能は、製造誤差を考慮しないレンズの理論性能である)に合致しないことになる。レンズ製造時の位置決め誤差を補償する1つの方法は、国際公開第A−2010/072749号パンフレットにおいて開示されている。しかし、表面が難しい設計、すなわち、球面と円柱面の大きな勾配及び勾配の大幅な変化を伴う場合、位置決めのごくわずかな誤差でもレンズの光学性能と公称性能間の大幅な光学的相違をもたらす。
【0083】
したがって、本発明は、非常に容易な設計の漸減表面を有する半製品レンズブランクを提案する。かかる容易な設計は、勾配があまりにも急激に変化しないことを保証する。それにより、目標の光学設計及び着用者の処方を実現するようにブランクの未仕上げ表面が機械加工されるときに、球面と円柱面の勾配の値及び変化もよりよく制御される。
【0084】
本発明は、非常に容易な設計のフロント漸減表面を有する累進レンズも提案する。以下において、半製品レンズブランクの第1漸減表面に関して詳細な記述を行う。しかし、以下の記述は、累進レンズのフロント漸減表面について同様な用語で行い得る。
【0085】
これまでに説明したように、非球面表面は、局所的に平均球面又は円柱面として定義することができる。
【0086】
球面及び円柱面の勾配も定義することができる。勾配は、在来から、それぞれ平均球面(それぞれ円柱面)のこの軸沿いの偏導関数に等しいこの軸沿いの両座標を有するベクトルとして定義される。以下は用語の誤用であるが、この勾配ベクトルのノルムは、勾配と呼ばれる、すなわち:
【0087】
【数6】
【0088】
球面及び円柱面の勾配は、球面及び円柱面における局所的変化を表す。球面の勾配は、表面の加入度が小幅又はゆるやか、すなわち、急激ではないので、それだけ小さい。それにも関わらず、必要な累進的又は漸減的表面は、ゼロではない球面勾配を有する。
【0089】
円柱面は、局所的表面が球面表面から偏位している程度を表す。球面における変化は、必然的に円柱面における変化をもたらし、そして円柱面がレンズ表面全面にわたり皆無であることはあり得ない。
【0090】
高さzに関する第四次導関数も非球面表面の各点において定義することができる。かかる第四次導関数は、次のとおり表すことができる:
【0091】
【数7】
【0092】
第四次導関数Dは、勾配値の変化の急速性、すなわち、球面及び円柱面の変化の加速度を表す。
【0093】
本発明は、レンズブランクの第1表面の第四次導関数Dの値を制御することを提案する。かかる制御は、したがって、これからさらに詳しく説明するように、レンズの第2表面を機械加工する場合及びデジタル表面加工技術を使用するときにこの第1表面を機械加工する場合の研磨ステップにおける表面劣化の可能性をかなり低減することに貢献する。
【0094】
この数量は、少なくともレンズブランクの第1表面の中心部分について制御される。この中心部分は、主要経線の一部分、遠方視領域の基準点及び近方視領域の基準点を含む。これらの基準点は、上で定義した制御点とすることができるが、その他の基準点も選択することができる。たとえば、Dの値は、40mm直径の円内、すなわちレンズブランク中心の周りの20mm半径内で制御される。これは、レンズ着用者により頻繁に使用されないレンズの縁の領域を除くことになる。レンズの光学性能は、一般的に、眼の回転の中心に中心配置される+/−40°の円錐開口部内に含まれる視線方向については、中心部分内にあると考えられている。本発明は、表面の加入度の関数ではない数量を得るために第四次導関数の値を正規化することも提案する。正規化係数は、加入度値を含む。
【0095】
本発明は、特に、半製品レンズブランクの漸減表面を決定するときに第四次導関数Dに対する限界値を設定することを提案する。より具体的には、第四次導関数Dの正規化値をレンズブランクの少なくとも中心部分について5.0.10−5mm−2.ジオプター−1に制限し、かつ、望ましくは、ブランクの3.5.10−5mm−2.ジオプター−1に制限する。
【0096】
レンズブランクの非球面表面の経線沿いに位置する第四次導関数の最大値D、第四次導関数Dの正規化値は、経度線+/−5mmにより区切られるレンズブランクの部分について5.0.10−5mm−2.ジオプター−1に制限し、かつ、より望ましくは、3.5.10−5mm−2.ジオプター−1に制限できる。しかし、第四次導関数Dの値は、この中心部分についてゼロとなることはできず、1.0.10−6mm−2.ジオプター−1の最小値が期待される。正規化係数は、表面の加入度の最大値に等しい。
【0097】
本発明は、レンズブランクの第1表面について球面及び円柱面の勾配の値を制御することも提案する。かかる制御は、レンズの第2表面を機械加工する場合及びデジタル表面加工技術を使用するときにこの第1表面を機械加工する場合の研削ステップにおける表面劣化の可能性をかなり低減することに貢献する。
【0098】
球面及び円柱面の勾配は、少なくともレンズブランクの第1表面の中心部分について制御される。たとえば、球面及び円柱面の勾配は、上で定義した40mm直径の円内で制御される。球面及び円柱面の勾配の限界値は、表面の加入度の関数ではない数量を得るために正規化することができる。
【0099】
本発明は、特に、半製品レンズブランクの漸減表面を決定するときに球面勾配の限界値を設定することを提案する。より具体的には、球面傾斜の正規化値は、レンズブランクの少なくとも中心部分について7.50.10−1mm−1に制限し、かつ、好ましくはブランクの中心部分について6.50.10−1mm−1に制限する。しかし、球面傾斜の値は中心部分についてゼロとすることはできず、1.0.10−2mm−1の最小値が期待される。正規化係数は、表面の加入度の最大値に等しい。
【0100】
さらに、本発明は、半製品レンズブランクの漸減表面を決定するときに円柱面勾配の限界値を設定することも提案する。より具体的には、円柱面傾斜の正規化値は、レンズブランクの少なくとも中心部分について1.45mm−1に制限し、かつ、好ましくはブランクの中心部分について1.25mm−1に制限する。しかし、球面傾斜の値は中心部分についてゼロとすることはできず、1.0.10−2mm−1の最小値が期待される。正規化係数は、表面の加入度の最大値に等しい。
【0101】
以下において、われわれは、x軸がレンズの水平軸に対応し、y軸が垂直軸に対応する正規直交座標系を使用する。基準枠の中心Oは、図79及び80に関して定義したレンズブランクの表面の幾何学的中心である。以下の記述においては、両軸はミリメートル目盛とする。
【0102】
図1〜25は、半製品レンズブランクの表面、すなわち最終レンズのフロント表面の図示である。図1〜5及び図6〜10は、本発明の範囲外の比較例による表面の図示である。図11〜15及び図16〜20及び図21〜25は、本発明の3つの実施形態による表面の図示である。以下において、2つの比較例についてレンズ1及びレンズ2を参照し、本発明の3つの例についてレンズ3、レンズ4,及びレンズ5を参照する。
【0103】
これらの5つの例は、直径60mmの半製品レンズブランクについて0ジオプターの遠方視の処方光学屈折率、0ジオプターの遠方視の処方乱視及び2.5ジオプターの処方加入度を処方された着用者のレンズについて与えられている。遠方視制御点における平均球面値は、4.72ジオプターである。
【0104】
図1は、第1比較例の表面に関する経線沿いの遠方視制御点の平均球面値に対する平均球面変化のグラフである。x軸はジオプター単位の目盛、y軸値はmm単位である。遠方視制御点は、表面上で0mmのx軸値及び8mmのy軸値を有し、かつ、4.72ジオプターの球面及び0.02ジオプターの円柱面を有する。近方視制御点は、表面上で3mmのx軸値及び−14mmのy軸値を有し、かつ、2.20ジオプターの球面及び0.04ジオプターの円柱面を有する。公称表面加入度は、制御点における平均球面間の差異として計算して、−2.52ジオプターである。
【0105】
図6は、第2比較例の表面に関する経線沿いの遠方視制御点の平均球面値に対する平均球面変化のグラフである。x軸はジオプター単位の目盛、y軸値はmm単位である。遠方視制御点は、表面上で0mmのx軸値及び8mmのy軸値を有し、かつ、4.72ジオプターの球面及び0.02ジオプターの円柱面を有する。近方視制御点は、表面上で3mmのx軸値及び−14mmのy軸値を有し、かつ、2.20ジオプターの球面及び0.06ジオプターの円柱面を有する。公称表面加入度は、制御点における平均球面間の差異として計算して、−2.52ジオプターである。
【0106】
図11は、本発明の第1例による表面の経線沿いの平均球面のグラフである。x軸はジオプター単位の目盛、y軸値はmm単位である。遠方視制御点は、表面上で0mmのx軸値及び8mmのy軸値を有し、かつ、4.72ジオプターの球面及び0.07ジオプターの円柱面を有する。近方視制御点は、表面上で3mmのx軸値及び−14mmのy軸値を有し、かつ、2.20ジオプターの球面及び0.08ジオプターの円柱面を有する。公称表面加入度は、制御点における平均球面間の差異として計算して、−2.51ジオプターである。
【0107】
図16は、本発明の第2例による表面の経線沿いの平均球面のグラフである。x軸はジオプター単位の目盛、y軸値はmm単位である。遠方視制御点は、表面上で0mmのx軸値及び8mmのy軸値を有し、かつ、4.72ジオプターの球面及び0.07ジオプターの円柱面を有する。近方視制御点は、表面上で3mmのx軸値及び−14mmのy軸値を有し、かつ、2.20ジオプターの球面及び0.08ジオプターの円柱面を有する。公称表面加入度は、制御点における平均球面間の差異として計算して、−2.51ジオプターである。
【0108】
図21は、本発明の第3例による表面の経線沿いの平均球面のグラフである。x軸はジオプター単位の目盛、y軸値はmm単位である。遠方視制御点は、表面上で0mmのx軸値及び8mmのy軸値を有し、かつ、4.71ジオプターの球面及び0.10ジオプターの円柱面を有する。近方視制御点は、表面上で3mmのx軸値及び−14mmのy軸値を有し、かつ、2.21ジオプターの球面及び0.10ジオプターの円柱面を有する。公称表面加入度は、制御点における平均球面間の差異として計算して、−2.50ジオプターである。
【0109】
図1及び図6図11図16及び図21と比較することにより、漸減値はすべての表面についてほぼ同じであるが、制御点の近傍における球面変化は本発明による球面上において弱めであることが分かる。より具体的には、制御点近くに位置する球面及び円柱面の鋭い変化は、特にレンズ5の例において、本発明による表面上で抑制されている。上記において定義した第四次導関数Dの最大値は、球面及び円柱面のこれらの鋭い変化を表す。Dは、球面及び円柱面の加速に直接関連している。少なくとも経線、近方視制御点及び遠方視制御点を含む表面の中心部分についてDに対する限界値を設定した場合、平均球面の加速が最強である経線の領域が軟化される。
【0110】
図2、7、12、17及び22は、それぞれ、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4及びレンズ5のフロント表面の遠方視制御点の平均球面値に対する平均球面変化を示すマップである。これらのマップは、(x,y)平面に対する表面の投影を示す。上記において定義した(x,y)基準枠及び主要経線の存在が分かる。遠方視及び近方視の制御点は、それぞれ、(0;8)及び(3;−14)の座標を有する。
【0111】
図2、7、12、17及び22では、等球面線、換言すると同一平均球面値を有する点を結合する線が見られる。比較例の表面との比較により、本発明による表面上では、球面勾配がかなり小さい、すなわち等球面線がよりまばらであることが分かる。
【0112】
図3、8、13、18及び23は、それぞれ、レンズ1,レンズ2,レンズ3、レンズ4、レンズ5のフロント表面の円柱面のマップである。図2、7、12、17及び22の場合と同じ図示規約及び表示を使用するが、ただ、これらの図では球面の代わりに円柱面を示す。比較例の表面との比較により、本発明による表面上では、円柱面勾配がかなり小さい、すなわち等円柱面面線がよりまばらであることが分かる。
【0113】
図4、9、14、19及び24は、それぞれ、レンズ1,レンズ2,レンズ3、レンズ4、レンズ5のフロント表面の球面勾配のマップである。これらのマップから、本発明による表面の球面勾配は困難な設計をもたらす比較例の表面の球面勾配よりかなり小さいことが分かる。特に、公称表面加入度に正規化された球面勾配は、本発明の表面の中心点O上に中心配置された40mmの円内の任意の点において7.50.10−1mm−1より小さい。なお、これらのマップは球面勾配の非正規化値を示していることに注意されたい。
【0114】
図5、10、15、20及び25は、それぞれ、レンズ1,レンズ2,レンズ3、レンズ4、レンズ5のフロント表面の円柱面勾配のマップである。これらのマップから、本発明による表面の円柱面勾配が困難な設計をもたらす比較例の表面の円柱面勾配よりかなり小さいことが分かる。特に、公称表面追加に正規化された円柱面勾配は、本発明の表面の中心点O上に中心配置された40mmの円内の任意の点において1.45mm−1より小さい。なお、これらのマップは円柱面勾配の非正規化値を示していることに注意されたい。
【0115】
図14〜15、19〜20、24〜25における等勾配線は、図4〜5及び9〜10に比較して、レンズの中心部分でかなりまばらであり、お互いに接近していないことも分かる。レンズ3,レンズ4及びレンズ5のフロント表面上の勾配の変化は、レンズ1及びレンズ2のフロント表面上の勾配の変化よりかなり小さい。これは、第四次導関数Dが本発明の表面上で比較例の表面と比較して小さい値を有することを示している。
【0116】
さらに、遠方視領域におけるDの最大値は、遠方視制御点近く、すなわちy軸沿いの表面の中心の上少なくとも4mmに位置しており、好ましくはy軸沿いの表面の中心の上少なくとも8mmに位置する。また、近方視領域におけるDの最大値は、近方視制御点の下、すなわち表面の中心の下少なくとも8mmに位置しており、好ましくは表面の中心の下少なくとも14mmに位置する。その結果、勾配変化は、半製品レンズブランクの第1表面の中心部分上でより小さい。また、計算されたリア表面のDの最大値もより小さく、かつ、表面加工もより正確となる。
【0117】
下の表Iは、検討下のレンズのフロント表面の第四次導関数D、球面勾配及び円柱面勾配の正規化最大値をまとめて示している。
【0118】
【表1】
【0119】
図26〜40は、検討下のレンズの公称性能の光学分析である。公称性能は、当該レンズ上の光学的欠陥の再配分からもたらされる選択最善妥協として定義される。次に目標光学機能を定義し、レンズの表面特性を定義するときに光学的最適化中に使用する。製造され最終的に得られたレンズは、特に機械加工限界及び位置付け欠陥のために公称性能からわずかに偏位する光学性能を有するであろう。
【0120】
図26、29、32、35、38は、それぞれ、レンズ1,レンズ2、レンズ3,レンズ4及びレンズ5の主経線沿いの公称屈折率を表している。光学的加算は、遠方視制御点における屈折率をゼロとして、レンズ1及びレンズ2では2.69ジオプター、レンズ3では2.67ジオプター、レンズ4及びレンズ5では2.66である。経線沿いの光学性能がすべてのレンズについて同じであることは、すぐに分かる。
【0121】
図27、30、33、36及び39は、それぞれ、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4及びレンズ5を使用する着用者により知覚される公称屈折率を示す。図28、31、34、37及び40は、それぞれ、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4及びレンズ5による結果の乱視を示す。光学性能がすべてのレンズについて実質的に同じであることは、すぐに分かる。
【0122】
本発明による半製品レンズブランクを使用すると、これから説明するようにレンズの光学性能を維持しつつレンズを容易に製造することが可能になる。
【0123】
図41から65は、図1〜25のレンズブランクから製造されたレンズの第2表面、すなわち、検討されたレンズ、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4及びレンズ5のリア表面の図示である。
【0124】
図41、46、51、56及び61は、それぞれ、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4及びレンズ5のリア表面の経線沿いの平均球面変化のグラフである。公称表面累進多焦点は、制御点における平均球面間の差異として計算して、レンズ1及びレンズ2については4.76ジオプター、レンズ3、レンズ4及び5については4.77ジオプターである。
【0125】
41及び46を図51、56及び61と比較することにより制御点における球面及び円柱面の鋭い変化が、特に図56及び61において、よりなだらかであることが分かる。第2表面の製造は、したがってより容易となる。
【0126】
図42、47、52、57及び62は、それぞれ、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4及びレンズ5のリア表面の遠方視制御点の平均球面値に対する平均球面変化を示すマップである。図43、48、53、58及び63は、それぞれ、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4及びレンズ5のリア表面の円柱面を示すマップである。図44、49、54、59及び64は、それぞれ、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4及びレンズ5のリア表面の球面勾配を示すマップである。図45、50、55、60及び65は、それぞれ、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4及びレンズ5のリア表面の円柱面勾配を示すマップである。
【0127】
本発明による第1表面を有するレンズブランクを使用した場合、比較例による第1表面を有するレンズブランクを使用した場合に比べて、第2表面上の球面及び円柱面の勾配が小さくなることが分かる。図54〜55、59〜60、64〜65の等勾配線がレンズの中央部分において図44〜45及び49〜50と比べてまばらになり、お互いに近接していないことも分かる。これは、第四次導関数Dが本発明によるフロント表面を有するレンズのリア表面上において比較例によるフロント表面を有するレンズのリア表面に比べて小さい値を有することを示している。
【0128】
下の表IIは、検討下のレンズのリア表面の第四次導関数D、球面勾配及び円柱面勾配の正規化最大値をまとめて示している。
【0129】
【表2】
【0130】
フロント表面上の球面及び円柱面の勾配の制御のため、球面及び円柱面の勾配はリア表面上で低減することができ、かつ、デジタル表面加工工具の加速度はレンズの表面の表面加工中に制限される。したがって、表面の研削は、より正確となる。
【0131】
フロント表面上の第四次導関数制御のため、レンズのリア表面の表面加工中の勾配の鋭い変化も回避される。それにより、リア表面の研磨の受ける悪影響も少なくなる。
【0132】
したがって、本発明による半製品レンズブランクの使用は、容易な設計及び第四次導関数値の制御とあいまって、レンズの製造を容易にするとともに、第2表面の表面加工後に得られるレンズの光学品質をさらに改善する。
【0133】
実際、図26〜40に関して前述したように、公称光学性能は、すべてのレンズについて実質的に同じである。それはそれとして、本発明のレンズは、製造中の位置決め欠陥に対する高い耐性を有する。
【0134】
図66〜68は、フロント表面についてT=+0.2mm、T=+0.2mm、R=+0.5°及びリア表面についてT=−0.2mm、T=−0.2mm、R=−0.5°のシミュレーション位置決め欠陥を有するレンズ1の光学性能である。図69〜71は、同じシミュレーション位置決め欠陥を有するレンズ5の光学性能である。図72〜74は、公称光学性能及びレンズ1の位置決め欠陥を有するシミュレーション光学性能の重ね合わせ、すなわち、図26〜28と図66〜68の重ね合わせである。図75〜77は、公称光学性能及びレンズ5の位置決め欠陥を有するシミュレーション光学性能の重ね合わせ、すなわち、図38〜40と図69〜71の重ね合わせである。図78は、検討下のレンズの公称性能と位置決め欠陥を有するシミュレーション光学性能間の最大偏差を示すグラフである。位置決め欠陥の影響は、レンズの中央部分及び特に視線方向−40°<α<40°及び−40°β<40°について評価された。図78のグラフを得るために、公称屈折率/結果乱視とシミュレーション屈折率/結果乱視の間の偏差を各レンズについて上記で定義した中央部分における各視線方向について計算した。次に最大偏差をレンズの中央部分のすべての視線方向の偏差値から評価する。これから直ちに明らかとなることは、同一の位置決め誤差をシミュレートしたにも関わらず、本発明によるフロント漸減を有するレンズが比較例によるフロント漸減を有するレンズより小さい公称性能からの偏差を有することである。したがって、本発明によるレンズブランクから製造されたレンズは、製造された後に強化される光学品質を有する。
【0135】
レンズの漸減フロント表面を定義するときに球面勾配、円柱面勾配及び第四次導関数について設定された最大値は、前に説明したようにリア表面が研削及び研磨中に多数の欠陥を生ずることなく製造できることを保証するのみならず、小さな位置決め誤差が製造されるレンズの光学性能にわずかな影響しか及ぼさないことも保証する。すなわち、着用者の視力は実際には悪影響を受けない。
【0136】
屈折力及び結果の乱視欠陥に関する着用者の視力を分析するために、いくつかの研究が行われた。特に次の刊行がある:“Influence of combined power error and astigmatism on visual acuity”in Ophthalmic and Visulal Optics Technical Digest,(Optical Society of America,Washington,D.C.,1995),Vol.1,p151−154)[Catherine FAUQUIER,Thierry BONNIN,Christian MIEGE,Eric ROLAND]Essilor International.0.31ジオプターの平均屈折力の偏差が公称性能からの0.39ジオプター(レンズ1)の結果の乱視の偏差と組み合わされた場合、大部分の着用者によりかなり感知されるレベルである33%を超える視力低減に通ずるのに対し、0.22ジオプターの平均屈折力の偏差が公称性能からの0.27ジオプター(レンズ5)の結果の端子の偏差と組み合わされた場合には、一部の着用者によりわずかに感知されるレベルである25%未満の視力低減に通ずると考えられる。
【0137】
表IIIは、検討下のレンズの平均屈折力の偏差値ΔP及び結果の乱視の最大偏差値ΔAを要約するとともに、上で引用したFauquierほかによる刊行物において示されている関係による結果の視力低減を示す。
【0138】
【表3】
【0139】
出願人は、30%の視力低減AC(%)を識別的な値と考える。
【0140】
第4次導関数Dの5.0.10−5mm−2.ジオプター−1の正規化限界値及び/又はフロント漸減表面の少なくとも中央部分に関する球面/円柱面勾配の7.5.10.10−1mm−1/1.45mm−1.ジオプター−1の限界値は、公称光学性能を満たしつつレンズを容易に製造できることをもたらす。
【0141】
本発明の半製品レンズブランクは、デジタル表面加工又は成型により製造できる。半製品レンズブランクの第1表面は、遠方視領域26と近方視領域28間の平均球面値の漸減及び中央部分における任意の点における5.0.10−5mm−2.ジオプター−1未満の高さに関する第四次導関数D値を設定することにより決定される。これまでに定義したその他の基準、特に球面勾配及び円柱面勾配の限界値も半製品レンズブランクの第1表面を決定するときに利用できる。
【0142】
決定された第1表面に関するデータは、半製品レンズブランクの第1表面を製造するモールドの機械加工又はデジタル表面加工機械を制御するために使用される。
【0143】
累進レンズは、本発明による半製品レンズブランクを使用して製造することができる。
【0144】
図83は、本発明による累進多焦点眼用レンズの製造のために行われ得るステップの例のフローチャートである。
【0145】
着用者に関するデータを供給する(ステップ74)。これは、第1の場所、すなわち眼鏡販売業者(眼鏡技師)のところで行うことができる。このデータを第1の場所から第2の場所に転送する(ステップ75)。第2の場所において、半製品レンズブランクが選択され(ステップ77)また、着用者に関するデータ及び半製品レンズブランクの第1漸減表面に関するデータに基づいてレンズの光学的最適化が行われる(ステップ78)。これは、レンズ設計者の作業室で行い得る。半製品レンズブランクは、着用者データ、たとえば処方された加入度に基づいて選択できる。光学的最適化の結果を送付し(ステップ80)、次に光学的最適化の結果に基づいてレンズの第2表面を決定する(ステップ81)。これは、同じ作業室において、又は別の場所で行うことができる。第2表面に関するデータをレンズ製造業者に送付する(ステップ82)。選択されたレンズブランクを使用して、レンズ製造業者は、決定された第2表面に従ってブランクの未仕上げ表面を表面加工する(ステップ83)。ブランクの未仕上げ表面は、デジタル表面加工又は成型により製造することができる。
【0146】
本発明の累進レンズは、半製品レンズブランクを使用せずに製造することもできる。
【0147】
着用者に関するデータを与える(ステップ74)。データを第1の場所から第2の場所に転送する(ステップ75)。第2の場所において第1表面を決定する(ステップ76)。これは、レンズ作業者の作業室で行うことができる。前に定義した基準及び特に遠方視領域26の少なくとも一部と近方視領域28の少なくとも一部との間の平均球面値の漸減、レンズの中央部分の任意の点における7.50.10−1mm−1未満の球面勾配値、レンズの中央部分の任意の点における1.45.mm−1未満の円柱面勾配値、レンズの中央部分の任意の点における5.10−5mm−2.ジオプター−1未満の高さに関する第四導関数(D)を使用して第1表面を決定する。
【0148】
第1表面に関するデータを送付し、次に、着用者に関するデータ及び第1表面に関するデータに基づいてレンズの光学的最適化を行う(ステップ78)。これは、第1表面の決定と同じ作業室において、又は異なる作業室において行うことができる。光学的最適化の結果を送付し(ステップ80)、次に光学的最適化の結果に従ってレンズの第2表面を決定する(ステップ81)。これは、やはり、同じ作業室において、又は異なる作業室において行うことができる。第1表面及び第2表面に関するデータをレンズ製造業者に転送する(ステップ82)。次に両面デジタル表面加工(ステップ84)又は成型によりレンズが製造される。
【0149】
これらの方法は、コンピュータ上で実現することができる。1つ以上の記憶された命令シーケンスを含むコンピュータ・プログラム製品を供給することができ、1つ以上の記憶された命令シーケンスは処理装置でアクセスでき、処理装置により実行されたとき、処理装置に上記の方法のステップを実行させる。
【0150】
かかるコンピュータ・プログラムは、フロッピー・ディスク、光ディスク、CD−ROM、磁気光学ディスク、読み取り専用記憶(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、電気的プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能かつプログラム可能読み取り専用記憶(EEPROM)、磁気又は光カード又は電子命令の記憶に適し、かつ、コンピュータ・システムバスに接続できるその他のタイプの媒体を含む任意の種類のディスクを含むがこれらに限定されないコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶することができる。したがって、このコンピュータ・プログラム製品の命令の1つ以上のシーケンスを記憶するコンピュータ読み取り可能媒体を提案する。これは、この方法を任意の場所で実行することを可能にする。
【0151】
製造方法を実行するように適合されている累進多焦点眼用レンズを製造する一連の装置も提案する。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
図9
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図11
図12
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