(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)ポリオレフィン、ここで上記ポリオレフィンは、不飽和LDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとの不飽和LDPEコポリマーから選択される不飽和LDPEポリマーである、
(b)パーオキシド、および
(c)ポリマー組成物の総重量に基づいて0.0001〜0.045重量%の量の無機アニオン交換剤、ここで上記無機アニオン交換剤は、ハイドロタルサイト型のアニオン交換剤である
を含むポリマー組成物。
ポリオレフィン(a)が、ビニル基を有する、不飽和LDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとの不飽和LDPEコポリマーであり、不飽和LDPEに存在するビニル基の総量が、本明細書の「測定法」に記載された「二重結合の量の測定法」にしたがって測定されるとき、0.11超/炭素原子1000個である、請求項1に記載のポリマー組成物。
ポリオレフィン(a)が、エチレンと少なくとも1の多不飽和コモノマーとの不飽和LDPEコポリマーであり、上記多不飽和コモノマーが、少なくとも8個の炭素原子を有しかつ複数の非共役二重結合の間に少なくとも4個の炭素原子を有する炭素直鎖からなり、かつ上記複数の非共役二重結合のうちの少なくとも1が末端にあるところのものである、請求項1または2に記載されたポリマー組成物。
上記多不飽和コモノマーが、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、またはそれらの混合物から選択されるジエンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載されたポリマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、イオン交換剤(c)としての好ましいアニオン交換剤のラメラ構造を一般的に示すための、2つのラメラおよびそれらの間の中間層の模式的部分図である。安定なラメラ層は連続層として示され、丸形の種は、中間層の交換可能なアニオンを示す。
【0011】
予期せぬことに、上記または下記で定義されるように、ポリオレフィン(a)がイオン交換剤(c)と一緒にされ、そして任意的に、パーオキシド(b)(例えば、周知のジクミルパーオキシド)を使用して架橋されると、ポリマー組成物の電気DC伝導度が著しく低下される、すなわち著しく低くなる。
【0012】
何ら理論に縛られることなく、イオン交換剤(c)が、電気DC伝導度を悪くする(増加させる)イオン種、例えば、ポリオレフィン(a)に存在し得る有害なアニオン種、例えば塩素を捕獲すると考えられる。
【0013】
したがって、上記ポリマー組成物は、電気用途および通信用途、好ましくはワイヤおよびケーブル用途、特に電力ケーブル層のために非常に望ましい。さらに、本発明のポリマー組成物は、低下された、すなわち低い電気DC伝導度として表わされる電気特性を有し、それによって、例えば、電力ケーブルの、特にDC電力ケーブルの絶縁層における、望ましくない熱形成が最小にされ得る。したがって、本発明は、ケーブルに特に有利である。
【0014】
本発明はさらに、上記または下記で定義される、
(a)ポリオレフィン、
(b)任意的にパーオキシド、ここで、上記パーオキシドは、存在するならば、35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量で存在する、および
(c)イオン交換剤
を含むポリマー組成物を、上記ポリマー組成物を含む電気デバイスまたは通信デバイスを製造するために、好ましくは電気デバイスまたは通信デバイスの絶縁体を製造するために使用する方法を提供する。そのようなデバイスは、例えばケーブル、ケーブル用途における末端ジョイントなどのジョイント、キャパシタ膜などである。本発明の最も好ましい使用方法は、上記ポリマー組成物を、ケーブルの層を製造するために使用する方法である。
【0015】
本発明のポリマー組成物はまた、以下において短く「ポリマー組成物」と呼ばれる。上記で定義されたその成分はまた、以下において短く「ポリオレフィン(a)」、「パーオキシド(b)」および「イオン交換剤(c)」とそれぞれ呼ばれる。表現「35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量で」は、パーオキシドが存在する、すなわち特定量のパーオキシドがポリマー組成物に添加されることを意味する。
【0016】
好ましくは、本発明のポリマー組成物は架橋可能である。「架橋可能な」は、ケーブル層が、その最終用途での使用の前に架橋され得ることを意味する。架橋可能なポリマー組成物は、ポリオレフィン(a)、イオン交換剤(c)および、上記、下記または特許請求の範囲で定義された量のパーオキシド(b)を含む。さらに、架橋されたポリマー組成物または架橋されたポリオレフィン(a)は、架橋の前にポリマー組成物に存在する、特許請求の範囲に記載された量のパーオキシド(b)を使用してラジカル反応によって架橋される。架橋されたポリマー組成物は、当該分野で周知のように、典型的な網目構造、特にポリマー間の架橋(橋)を有する。当業者に明らかなように、架橋されたポリマーは、本明細書に記載されまたは本明細書から明らかなように、架橋の前または後にポリマー組成物またはポリオレフィン(a)に存在する特徴を有し得、そして本明細書においてそのように定義される。例えば、ポリマー組成物におけるパーオキシドの存在および量またはポリオレフィン成分(a)の種類および組成特性、例えばMFR、密度および/または不飽和度は、特に断らない限り、架橋前に定義され、架橋後の特徴、例えば電気伝導度は、架橋されたポリマー組成物から測定される。
【0017】
本発明はさらに、架橋されたポリオレフィン(a)を含む架橋されたポリマー組成物を提供する。ここで、上記ポリマー組成物は、架橋前に(すなわち架橋される前に)、
(a)ポリオレフィン、
(b)パーオキシド、好ましくは35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量のパーオキシド、および
(c)イオン交換剤
を含む。
【0018】
本発明のポリマー組成物がパーオキシド(b)を含むのが最も好ましい。したがって、本発明の架橋されたポリマー組成物が好ましく、そして、上記または下記で定義される量のパーオキシド(b)による架橋によって得られ得る。
【0019】
本発明はさらに、イオン交換剤(c)の存在下で35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量のパーオキシド(b)によって架橋されたポリオレフィン(a)を含む架橋されたポリマー組成物を提供する。
【0020】
表現「架橋によって得られ得る」、「によって架橋される」および「架橋されたポリマー組成物」は、本明細書において交換可能に使用され、そしてカテゴリー「プロダクトバイプロセス」を、すなわち生成物が、下記で説明される架橋工程故の技術的特徴を有することを意味する。
【0021】
単位「ミリモル−O−O−/ポリマー組成物kg」は、本明細書において、架橋前のポリマー組成物を用いて測定されるとき、ポリマー組成物1kg当たりのパーオキシド官能基の含量(ミリモル)を意味する。例えば、35ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgは、ポリマー組成物の総重量(100重量%)に基づいて周知のジクミルパーオキシド0.95重量%に相当する。
【0022】
「架橋されたポリマー組成物」はまた、本明細書において短く「ポリマー組成物」と言う。また、「架橋可能なポリマー組成物」はまた、本明細書において短く「ポリマー組成物」と言う。意味は、文脈から明らかである。
【0023】
電気伝導度は、本明細書において、「測定法」に記載されたDC伝導度法に従って測定される。本明細書において交換可能に使用される「低下された」または「低い」電気伝導度は、DC伝導度法によって得られる値が低い、すなわち低下されたことを意味する。
【0024】
好ましいポリオレフィン(a)は、高圧法(HP)で製造されたポリエチレンである。ポリオレフィン(a)は、その好ましいサブ群を含めて、下記または特許請求の範囲でより詳細に記載される。
【0025】
ポリマー組成物のイオン交換剤(c)について:
本発明のポリマー組成物のイオン交換剤(c)は、ポリマー組成物にそれ自体を、すなわち単品(neat)として添加され、または添加剤製造者によって供給された添加剤組成物として添加され得る。添加剤組成物は、例えば担体物質、例えば担体ポリマー、および任意的に更なる添加剤を含み得る。さらに、そのようなイオン交換剤(c)またはその添加剤組成物は、ポリマー組成物にそれ自体を、例えば添加剤製造者によって供給されたままで添加され得、または更なる担体物質中で、例えばポリマー担体中で、例えばいわゆるマスターバッチ(MB)で添加され得る。下記および特許請求の範囲に与えられるイオン交換剤(c)の量は、ポリマー組成物の総重量(量)(100重量%)に基づいて、上記イオン交換剤(c)自体の、すなわち単品としての重量(量)である。
【0026】
本発明のポリマー組成物のイオン交換剤(c)は、好ましくは無機イオン交換剤、より好ましくは無機アニオン交換剤である。さらに好ましくはアニオン交換剤(c)が、アニオンをハロゲンと交換する(すなわちハロゲンを捕獲する)ことができ、好ましくはアニオンを少なくとも塩素に基づく種と交換することができる。さらに好ましくは、イオン交換剤(c)がラメラ構造を有する。
【0027】
イオン交換剤(c)の好ましい実施態様は、ラメラ状のアニオン交換剤、好ましくはアニオン中間層を有するラメラ状のアニオン交換剤である。好ましいラメラ状のイオン交換剤(c)は、安定なホスト格子を形成する複数のラメラ層を有し、交換可能なアニオン中間層が上記複数のラメラの間にある。ここで、アニオン中間層は、上記中間層が、ラメラ層に弱く結合しかつポリマー組成物のポリマー(a)中に存在するアニオン種と交換可能なアニオンを含有することを意味する。
図1は、好ましいイオン交換剤(c)としてのアニオン交換剤のラメラ構造(2のラメラとそれらの間の中間層を示す模式的部分図)を一般的に示す。この好ましい実施態様では、ラメラ状のアニオン交換剤(c)の中間層が好ましくは、ポリマー組成物中に、例えばポリオレフィン(a)中に存在するアニオン種と交換可能なCO
32−アニオンを含有する。さらに、この好ましい実施態様では、安定なラメラが好ましくは、例えばMg、Al、Fe、Cr、Cu、NiまたはMnカチオンに基づく種、またはそれらの混合物から選択される、より好ましくは少なくともMg
2+カチオンに基づく種から選択される、より好ましくはMg
2+およびAl
3+カチオンに基づく種から選択されるカチオン種を含有する。
【0028】
この好ましい実施態様では、最も好ましいイオン交換剤(c)が、ハイドロタルサイト型のラメラ状のアニオン交換剤、好ましくは、交換可能なCO
32−アニオンを含むアニオン中間層を有する合成ハイドロタルサイト型のラメラ状のアニオン交換剤、さらにより好ましくは一般式Mg
xR
y(3+)(OH)
z(CO
3)
k・nH
2O(R
(3+)=Al、CrまたはFe、好ましくはAlである)を有する合成ハイドロタルサイト型のラメラ状のアニオン交換剤である。上記一般式において、好ましくはxが4〜6であり、yが2であり、zが6〜18であり、kが1であり、nが3〜4である。上記比は、例えば結晶水などの量に依存して変わり得ることが明らかである。非制限的例として、一般式Mg
6R
2(3+)(OH)
16CO
3・4H
2O(R
(3+)=Al、CrまたはFe、好ましくはAlである)が挙げられ得る。
【0029】
さらに、この好ましい実施態様では、イオン交換剤(c)、好ましくは上記、下記または特許請求の範囲において特定されたハイドロタルサイトが、周知のように改変され得る、例えば表面処理され得る。
【0030】
本発明に適するイオン交換剤(c)は、例えば市販されている。好ましいイオン交換剤(c)のうち、市販されている合成ハイドロタルサイト(IUPAC名:ジアルミニウムヘキサマグネシウムカーボネートヘキサデカヒドロキシド、CAS番号11097−59−9)が挙げられ得、例えばKisuma ChemicalsからDHT−4Vの商品名で供給されている。
【0031】
上述したように、任意的なおよび好ましいパーオキシド(b)がポリマー組成物中に、少なくとも2.0ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは少なくとも3.0ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは少なくとも4.0ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgの量で存在する。より好ましくは、本発明の好ましい架橋されたポリマー組成物が、架橋前に、パーオキシド(b)を34ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは33ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは5.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは7.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは10.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、さらにより好ましくは15〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgの量で含む。パーオキシド(b)含量は所望の架橋レベルに依存し、1実施態様では、架橋前のパーオキシド(b)含量が、さらに好ましくは17〜29ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgであるのが望ましい。さらに、ポリオレフィン(a)が不飽和であり得、パーオキシド(b)含量が上記不飽和度に依存し得る。
【0032】
より好ましくは、本発明の架橋されたポリマー組成物が、「測定法」に記載されたDC伝導度法にしたがって測定されたとき、架橋後に<0.01(DC伝導度測定によって検出できない、より低い値)〜100fS/m、より好ましくは<0.01〜90fS/m、より好ましくは<0.01〜80fS/m、より好ましくは<0.01〜70fS/m、より好ましくは<0.01〜60fS/m、より好ましくは<0.01〜50fS/m、より好ましくは<0.01〜30fS/m、より好ましくは<0.01〜20fS/m、より好ましくは0.01〜15fS/m、最も好ましくは、0.05〜10fS/m、さらに最も好ましくは1.0〜10fS/mの電気伝導度を有する。
【0033】
さらに、本発明のポリマー組成物の電気伝導度は、架橋後に揮発性副生物を除去しなくても、すなわち脱ガスしなくても、慣用の量のパーオキシドで架橋された脱ガスされていないポリマー組成物の電気伝導度と比較して、驚くほど低い。したがって、所望により、本発明のポリマー組成物を含む架橋されたケーブルの脱ガス工程がかなり短縮され得、および/またはケーブル製造中に、要求のあまり厳しくない条件で行われ得、それは製造効率を当然改善する。したがって、所望ならば、ケーブル製造中の脱ガス工程が短縮され得る。
【0034】
さらに予期せぬことに、パーオキシド(b)含量が、電力ケーブル層のために重要である、得られた架橋されたポリマー組成物の機械的特性を犠牲にすることなく、低下され得る。すなわち、予期せぬことに、本発明のポリマー組成物の低下された電気伝導度に加えて、PENT(ペンシルバニアノッチ試験)から選択される機械的特性の1以上、より好ましくは全部、ならびに破断時応力および破断時歪みとして表わされる引張特性の1または両方が、適したままであり、またはケーブル層において使用される従来の架橋されたポリマー組成物の機械的特性と少なくとも同様のレベルのままである。改善された電気伝導度と良好な機械的特性との間の有利なバランスの理由は、完全には理解されない。何ら理論に縛られることなく、上記理由の1つは、慣用の濃度のパーオキシドを用いて得られた結晶化度と比較して、架橋されたポリマーの予期せぬほど高い結晶化度(%)が維持されることであり得る。したがっておよびさらに好ましくは、本発明のポリマー組成物が、電気特性と機械的特性との間の予期せぬバランスを有し、それは、例えばDC電力ケーブルに、および驚くべきことにHVDCまたはEHVDC電力ケーブルに非常に有利である。
【0035】
したがって、本発明の好ましい架橋されたポリマー組成物は、さらに好ましくは、「測定法」に記載されたように、PENT試験に従って2MPaの荷重下で70℃のエージング温度で測定されるとき、200時間以上、好ましくは400時間以上のPENT寿命を有する。PENTは、低速亀裂成長耐性を示し、値が高いほど、上記耐性が良好である。
【0036】
さらに好ましくは、本発明の好ましい架橋されたポリマー組成物が有利な引張特性を有する。この特性は、本明細書において破断時応力または破断時歪みとして表わされ、それらの各々は、ISO527−2:1993に従う引張試験法にしたがってサンプル形状5Aを使用して測定されるとき、2つの温度で定義される。
【0037】
したがって、本発明の架橋されたポリマー組成物は、その電気特性および好ましい機械的特性を決定するために使用される。架橋されたポリマー組成物のそれぞれのサンプル作製は、下記の「測定法」に記載される。
【0038】
さらに、電気DC伝導度は非常に低いが、好ましいパーオキシド(b)の含量は上記、下記または特許請求の範囲で定義されるように非常に低く、そして更に驚くべきことに、ワイヤおよびケーブル用途に必要とされる非常に良好な機械的特性が維持され得る。
【0039】
本発明のポリマー組成物の低い電気伝導度は、特に電力ケーブルに非常に有利であり、そして、低い電気DC伝導度故に、直流(DC)電力ケーブル、好ましくは低電圧(LV)、中電圧(MV)、高電圧(HV)または超高電圧(EHV)DCケーブル、より好ましくは任意の電圧、好ましくは36kV超で作動するDC電力ケーブル、例えばHVDCケーブルのために好ましい。
【0040】
本発明はさらに、1以上の層によって囲まれた導体を含むケーブル、好ましくは電力ケーブル、より好ましくは電力ケーブル、さらにより好ましくは直流(DC)電力ケーブルを提供し、ここで、上記層の少なくとも1が、上記、下記または特許請求の範囲で定義された、
(a)ポリオレフィン、
(b)任意的におよび好ましくはパーオキシド、ここで、上記パーオキシドは、好ましくは存在し、より好ましくは、35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量で存在する、および
(c)イオン交換剤
を含むポリマー組成物を含み、好ましくは上記ポリマー組成物から成る。上記ケーブルの上記少なくとも1の層が絶縁層であるのが好ましい。
【0041】
より好ましくは、本発明は、少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に囲まれた導体を含む電力ケーブル、好ましくは直流(DC)電力ケーブル、より好ましくはHVDCまたはEHVDC電力ケーブルに向けられ、ここで、少なくとも1の層、好ましくは上記絶縁層が、上記、下記または特許請求の範囲で定義された、
(a)ポリオレフィン、
(b)任意的におよび好ましくはパーオキシド、ここで、上記パーオキシドは、好ましくは存在し、より好ましくは、35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量で存在する、および
(c)イオン交換剤
を含む本発明のポリマー組成物を含み、好ましくは上記ポリマー組成物から成る。
【0042】
本発明のケーブルは架橋可能であるのが好ましい。本発明はさらに、1以上の層によって囲まれた導体を含む架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋された直流(DC)電力ケーブルに向けられ、ここで、上記層の少なくとも1が、ポリオレフィン(a)およびイオン交換剤(c)を含む架橋されたポリマー組成物を含み、好ましくは上記ポリマー組成物から成り、上記ポリマー組成物は、上記、下記または特許請求の範囲で定義された、35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量のパーオキシド(b)で架橋されている(すなわち、架橋によって得られた)。より好ましくは、本発明は、少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に囲まれた導体を含む架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋された直流(DC)電力ケーブル、より好ましくは架橋されたHVDCまたはEHVDC電力ケーブルに向けられ、ここで、少なくとも1の層、好ましくは上記絶縁層が、
(a)ポリオレフィン、
(b)35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量のパーオキシド、および
(c)イオン交換剤
を架橋前に含む架橋されたポリマー組成物を含み、好ましくは上記ポリマー組成物から成り、ポリオレフィン(a)が上記(b)パーオキシドによって架橋されている。
【0043】
本発明はさらに、ポリオレフィンを含み、任意的におよび好ましくはパーオキシドによって架橋された、任意的におよび好ましくは架橋されたポリマー組成物の電気伝導を低下させる、すなわち低い電気伝導度を提供する方法に向けられ、ここで上記方法は、
(a)ポリオレフィン、
(b)任意的におよび好ましくはパーオキシド、ここで上記パーオキシドは、存在するならば、好ましくは、35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは34ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは33ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは30ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは5.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは7.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは10.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgの量で存在する、および
(c)イオン交換剤
を一緒に混合することによって、特許請求の範囲で定義されたポリマー組成物を製造し、そして、任意的におよび好ましくはポリオレフィン(a)を上記パーオキシド(b)の存在下で架橋する工程を含む。
【0044】
より好ましくは、本発明は、少なくとも絶縁層によって囲まれた、好ましくは少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に囲まれた導体を含む、任意的におよび好ましくは架橋された電力ケーブル、好ましくは任意的におよび好ましくは架橋された直流(DC)電力ケーブル、より好ましくは任意的におよび好ましくは架橋されたHVDCまたはEHVDC電力ケーブルの任意的におよび好ましくは架橋されたポリマー組成物の電気伝導度を低下させる方法に向けられ、ここで、少なくとも上記絶縁層が、上記、下記または特許請求の範囲で定義された、
(a)ポリオレフィン、
(b)任意的におよび好ましくはパーオキシド、ここで、上記パーオキシドは、好ましくは存在し、より好ましくは、35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量で存在する、および
(c)イオン交換剤
を含むポリマー組成物を含み、任意的におよび好ましくはポリオレフィン(a)がパーオキシド(b)の存在下で架橋される。
【0045】
本発明はまた、上記または下記で定義された、ケーブル、好ましくは電力ケーブル、より好ましくは架橋可能なおよび架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋可能なおよび架橋された直流(DC)電力ケーブルを製造する方法に向けられる。
【0046】
本発明はさらに、上記、下記または特許請求の範囲で定義された、
(a)高圧法で製造されたポリエチレンであるポリオレフィン、
(b)任意的にパーオキシド、ここで、上記パーオキシドは、存在するならば、好ましくは、35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kgの量で存在する、および
(c)イオン交換剤
を含むポリマー組成物のサブ群を提供する。
【0047】
本発明のポリマー組成物(非架橋のポリマー組成物および架橋されたポリマー組成物を包含する)またはその成分のための、上記または下記で定義された、上記特性、さらなる特性、変形および実施態様のさらなる好ましいサブ群は、本発明の、電気伝導度を低下させる方法に、電力ケーブル、好ましくは架橋可能なおよび架橋されたDC電力ケーブルに、ならびに電力ケーブル、好ましくは架橋可能なおよび架橋されたDC電力ケーブルを製造する方法に等しくかつ独立して当てはまる。
【0048】
(a)ポリオレフィン成分
本発明のポリマー組成物に適するポリオレフィン成分の下記の好ましい実施態様、特性およびサブ群は、それらが任意の順序でまたは組合せで使用されてポリマー組成物の好ましい実施態様をさらに定義することができるように一般化され得る。さらに、与えられた記載は、任意的なおよび好ましくは架橋される前のポリオレフィン(a)に当てはまることが明らかである。
【0049】
用語ポリオレフィン(a)は、オレフィンホモポリマーおよびオレフィンと1以上のコモノマーとのコポリマーの両方を意味する。周知のように、「コモノマー」は、共重合可能な単位を意味する。
【0050】
ポリオレフィン(a)は、任意のポリオレフィン、例えば任意の慣用のポリオレフィンであり得、電気ケーブル、好ましくは電力ケーブルの層、好ましくは絶縁層におけるポリマーとして適するものである。
【0051】
ポリオレフィンは、例えば市販のポリマーであり得、または化学文献に記載された公知の重合法にしたがってまたは上記方法と同様にして製造され得る。
【0052】
より好ましくは、ポリオレフィン(a)が、高圧法(HP)で製造されたポリエチレン、より好ましくは高圧法で製造された低密度ポリエチレンLDPEである。LDPEポリマーの意味は周知であり、文献に記載されている。用語LDPEは低密度ポリエチレンの略号であるが、上記用語は密度範囲を限定するものでないと理解され、低密度、中密度およびより高い密度を有するLDPE様のHPポリエチレンをカバーする。用語LDPEは、オレフィン重合触媒の存在下で製造されたPEと比較される、典型的な特徴、例えば異なる分岐構造を有するHPポリエチレンの性質のみを記載し、区別する。
【0053】
上記ポリオレフィン(a)としてのLDPEは、エチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマーと言う)またはエチレンと1以上のコモノマーとの低密度コポリマー(LDPEコポリマーと言う)であり得る。LDPEコポリマーの1以上のコモノマーは好ましくは、上記または下記で定義された、極性コモノマー、非極性コモノマーまたは極性コモノマーと非極性コモノマーとの混合物から選択される。さらに、上記ポリオレフィン(a)としての上記LDPEホモポリマーまたはLDPEコポリマーは、任意的に不飽和であり得る。
【0054】
上記ポリオレフィン(a)としてのLDPEコポリマーのための極性コモノマーとして、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基またはこれらの混合を含有するコモノマーが使用され得る。より好ましくは、カルボキシルおよび/またはエステル基を含有するコモノマーが、上記極性コモノマーとして使用される。さらにより好ましくは、LDPEコポリマーの極性コモノマーが、アクリレート、メタクリレートまたはアセテートまたはそれらの任意の混合物の群から選択される。上記LDPEコポリマーに存在するならば、極性コモノマーは好ましくは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートまたはビニルアセテート、またはそれらの混合物の群から選択される。さらに好ましくは、上記極性コモノマーが、C
1〜C
6アルキルアクリレート、C
1〜C
6アルキルメタクリレートまたはビニルアセテートから選択される。さらにより好ましくは、上記極性LDPEコポリマーが、エチレンとC
1〜C
4アルキルアクリレート、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチルアクリレート、またはビニルアセテート、またはそれらの任意の混合物とのコポリマーである。
【0055】
上記ポリオレフィン(a)としてのLDPEコポリマーのための非極性コモノマーとして、上述した極性コモノマー以外のコモノマーが使用され得る。好ましくは、非極性コモノマーが、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基を含有するコモノマー以外である。好ましい非極性コモノマーの1群は、モノ不飽和(=1つの二重結合)コモノマー、好ましくはオレフィン、好ましくはα−オレフィン、より好ましくはC
3〜C
10α−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、1−オクテン、1−ノネン;多不飽和(=1より多い二重結合)コモノマー;シラン基含有コモノマー;またはそれらの任意の混合物を含み、好ましくはそれらから成る。上記多不飽和コモノマーは、不飽和LDPEコポリマーに関して以下にさらに記載される。
【0056】
ポリオレフィン(a)が、コポリマーであるLDPEポリマーであるならば、好ましくは、0.001〜50重量%、より好ましくは0.05〜40重量%、さらにより好ましくは35重量%未満、さらにより好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満の1以上のコモノマーを含む。
【0057】
本発明のポリマー組成物、好ましくはそのポリオレフィン(a)成分、より好ましくはLDPEポリマーが、任意的に不飽和であり得る。すなわち、ポリマー組成物、好ましくはポリオレフィン(a)、好ましくはLDPEポリマーが、炭素−炭素二重結合を含み得る。「不飽和」は、本明細書において、ポリマー組成物、好ましくはポリオレフィンが、炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個を、少なくとも0.4個/炭素原子1000個の総量で含有する。
【0058】
周知であるように、不飽和は、特にポリオレフィン(a)、低分子量(Mw)化合物、例えば架橋ブースターまたはスコーチ遅延剤、またはそれらの任意の組合せによって本発明のポリマー組成物に付与され得る。二重結合の総量は、本明細書では、不飽和に寄与することが知られ、そのために故意に添加される源から決定される二重結合を意味する。不飽和を与えるために使用されるべき2以上の上記二重結合源が選択されるならば、本発明のポリマー組成物中の二重結合の総量は、それらの二重結合源に存在する二重結合の和を意味する。定量的赤外線(FTIR)決定を可能にするために、各選択された源のために、較正のための特徴的なモデル化合物が使用されることは明らかである。
【0059】
任意の二重結合の測定が、架橋の前に行われる。
【0060】
ポリマー組成物が、架橋の前に不飽和であるならば、不飽和が、少なくとも不飽和のポリオレフィン(a)成分由来であるのが好ましい。より好ましくは、不飽和のポリオレフィン(a)が不飽和ポリエチレン(a)であり、より好ましくは不飽和LDPEポリマー、さらにより好ましくは不飽和LDPEホモポリマーまたは不飽和LDPEコポリマーである。多不飽和コモノマーが、上記不飽和ポリオレフィン(a)としてのLDPEポリマーに存在するとき、LDPEポリマーは、不飽和LDPEコポリマーである。
【0061】
好ましい態様では、用語「炭素−炭素二重結合の総量」は、不飽和のポリオレフィン(a)から定義され、特に断らない限り、存在するならば、ビニル基、ビニリデン基およびトランス−ビニレン基由来の二重結合の合計量を意味する。当然、ポリオレフィン(a)は必ずしも上記3種類の二重結合を全て含むわけではない。しかし、上記3種類のいずれかが、存在するとき、「炭素−炭素二重結合の総量」に計算される。各種類の二重結合の量は、「測定法」に示されるように測定される。
【0062】
上記ポリオレフィン(a)としてのLDPEホモポリマーが不飽和であるならば、不飽和は、例えば、連鎖移動剤(CTA)、例えばプロピレン、によっておよび/または重合条件によって付与され得る。LDPEコポリマーが不飽和であるならば、不飽和は、下記手段:連鎖移動剤(CTA)、1以上の多不飽和コモノマー、または重合条件、の1以上によって付与され得る。選択された重合条件、例えばピーク温度および圧力、が不飽和度に影響を及ぼし得ることは周知である。不飽和LDPEコポリマーの場合には、好ましくは、エチレンと少なくとも1の多不飽和コモノマーおよび任意的に他のコモノマー、例えばアクリレートまたはアセテートコモノマーから好ましくは選択される極性コモノマー、との不飽和LDPEコポリマーである。より好ましくは、不飽和LDPEコポリマーが、エチレンと少なくとも1の多不飽和コモノマーのとの不飽和LDPEコポリマーである。
【0063】
不飽和のポリオレフィン(a)に適する多不飽和コモノマーは好ましくは、少なくとも8個の炭素原子を有しかつ複数の非共役二重結合間に少なくとも4個の炭素原子を有する炭素直鎖からなり、上記複数の非共役二重結合のうち少なくとも1は末端である。より好ましくは、上記多不飽和コモノマーがジエンであり、好ましくは少なくとも8個の炭素原子を含み、第一の炭素−炭素二重結合が末端であり、第二の炭素−炭素二重結合が第一のものに対して非共役の関係にあるジエンである。好ましいジエンは、C
8〜C
14非共役ジエンまたはそれらの混合物から選択され、より好ましくは、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、またはそれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、ジエンが、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、またはそれらの任意の混合物から選択されるが、上記ジエンに限定されない。
【0064】
例えばプロピレンがコモノマーとしてまたは連鎖移動剤(CTA)としてまたは両方として使用され得、それによって炭素−炭素二重結合の総量に、好ましくはビニル基の総量に寄与し得ることは周知である。本明細書では、コモノマーとしても作用し得る化合物、例えばプロピレン、が二重結合を付与するためのCTAとして使用されるとき、上記共重合可能なコモノマーは、コモノマー含量の計算に入れない。
【0065】
ポリオレフィン(a)、より好ましくはLDPEポリマーが不飽和であるならば、それは、好ましくは、存在するならば、ビニル基、ビニリデン基およびトランス−ビニレン基に由来する炭素−炭素二重結合を0.5超/炭素原子1000個の総量で有する。上記ポリオレフィンに存在する炭素−炭素二重結合の量の上限は限定されないが、好ましくは、5.0未満/炭素原子1000個、好ましくは3.0未満/炭素原子1000個であり得る。
【0066】
いくつかの態様、例えば低いパーオキシド含量でより高い架橋度が望ましいところの態様では、不飽和LDPE中の、存在するならば、ビニル基、ビニリデン基およびトランス−ビニレン基に由来する炭素−炭素二重結合の総量が、好ましくは0.50超/炭素原子1000個、好ましくは0.60超/炭素原子1000個である。そのようなより高い量の二重結合は、例えば高いケーブル製造速度が望ましく、および/または、例えば所望の最終用途および/またはケーブル製造プロセスに依存して、生じ得る垂れの問題を最小にするまたは回避することが望ましいならば、好ましい。本発明の「低い」パーオキシド(b)含量と組み合わせられたより高い二重結合含量はまた、層物質、好ましくは絶縁層物質のために非常に要求の厳しい機械的特性および/または耐熱性が必要であるところのケーブルの態様、例えばDC電力ケーブルにおいて好ましい。
【0067】
より好ましくは、ポリオレフィン(a)が不飽和であり、かつ少なくともビニル基を有し、ビニル基の総量が、好ましくは0.05超/炭素原子1000個、さらにより好ましくは0.08超/炭素原子1000個、最も好ましくは0.11超/炭素原子1000個、さらにより好ましくは0.15以上/炭素原子1000個である。好ましくは、ビニル基の総量が、4.0/炭素原子1000個までである。より好ましくは、架橋前のポリオレフィン(a)が、0.20超/炭素原子1000個、さらにより好ましくは0.30超/炭素原子1000個、最も好ましくは0.40超/炭素原子1000個の総量のビニル基を有する。いくつかの要求の厳しい実施態様、好ましくは電力ケーブル、より好ましくはDC電力ケーブルでは、少なくとも1の層、好ましくは絶縁層が、0.50超/炭素原子1000個の総量のビニル基を有するLDPEポリマー、好ましくはLDPEコポリマーを含む。
【0068】
予期せぬことに、不飽和はさらに、低い伝導度と機械的特性との上記望ましいバランスに寄与する。ポリマー組成物における使用のための好ましいポリオレフィン(a)は、エチレンと少なくとも1の多不飽和コモノマー、好ましくは上記で定義されたジエン、および任意的に他のコモノマーとの不飽和LDPEコポリマーである。さらに好ましくは、そのような、エチレンと少なくとも1の多不飽和コモノマー、好ましくは上記で定義されたジエン、および任意的に他のコモノマーとの不飽和LDPEコポリマーがビニル基を有する。この実施態様では、ビニル基の総量が好ましくは、上記、下記または特許請求の範囲で定義された通りである。上記不飽和LDPEコポリマーは、好ましくは、電力ケーブル、好ましくはDC電力ケーブルの絶縁層の、架橋されたポリマー組成物の電気伝導度をさらに低下させるための方法に非常に有用である。
【0069】
典型的には、および好ましくは、ワイヤおよびケーブル(W&C)用途において、ポリオレフィン(a)、好ましくはLDPEポリマー、の密度が860kg/m
3より高い。好ましくは、ポリオレフィン(a)、好ましくはLDPEポリマー、エチレンホモポリマーまたはコポリマー、の密度が960kg/m
3以下であり、好ましくは900〜945kg/m
3である。ポリオレフィン(a)、好ましくはLDPEポリマー、のMFR
2(2.16kg、190℃)は好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.1〜20g/10分、最も好ましくは0.2〜10g/10分である。
【0070】
したがって、本発明のポリオレフィン(a)は好ましくは、フリーラジカル開始重合によって高圧で製造される(高圧(HP)ラジカル重合と言う)。HP反応器は、例えば周知の管状反応器またはオートクレーブ反応器、またはそれらの混合、好ましくは管状反応器であり得る。好ましいポリオレフィン(a)は任意的におよび好ましくは、上記で定義された、エチレンと1以上のコモノマーとの不飽和LDPEホモポリマーまたはLDPEコポリマーである。本発明の方法によって得られ得るLDPポリマーは好ましくは、上記または下記で定義される有利な電気特性を与える。高圧(HP)重合および、所望の末端用途に依存してポリオレフィン(a)の他の特性をさらに適応させるためのプロセス条件の調整は周知であり、文献に記載されており、そして当業者によって容易に使用され得る。適する重合温度は400℃までであり、好ましくは80〜350℃である。圧力は70MPaからであり、好ましくは100〜400MPaであり、より好ましくは100〜350MPaである。圧力は、少なくとも圧縮工程および/または管状反応器の後に測定され得る。温度は、全工程中のいくつかの時点で測定され得る。
【0071】
分離後、得られたポリマーは典型的にポリマー溶融物の形状であり、それは通常、HP反応器系に連結して配置されたペレット化部分、例えば造粒押出機、において混合されそしてペレット化される。任意的に、添加剤、例えば酸化防止剤、が公知のやり方でこの混合機に添加されて本発明のポリマー組成物を与え得る。
【0072】
エチレン(コ)ポリマーの高圧ラジカル重合による製造のさらなる詳細は、特に、the Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.6 (1986), pp 383-410およびEncyclopedia of Materials:Science and Technology, 2001 Elsevier Science Ltd.: “Polyethylene:High-pressure, R. Klimesch, D. Littmannand F.-O. Mahling pp. 7181-7184に見られ得る。
【0073】
エチレンの不飽和LDPEコポリマーが製造されるとき、周知のように、炭素−炭素二重結合量は、不飽和LDPEコポリマーのために望ましいC−C二重結合の性質および量に応じて、エチレンを、例えば1以上の多不飽和コモノマー、連鎖移動剤、プロセス条件、またはそれらの任意の組合せの存在下で、モノマー、好ましくはエチレン、および多不飽和コモノマーおよび/または連鎖移動剤の間の望ましい供給比を使用して、重合することにより調整され得る。特に国際公開第9308222号パンフレットは、エチレンと多不飽和モノマーとの高圧ラジカル重合を記載している。その結果、不飽和が、ランダム共重合法においてポリマー鎖に沿って均一に分配され得る。また、例えば国際公開第9635732号パンフレットは、エチレンとある種の多不飽和α,ω−ジビニルシロキサンとの高圧ラジカル重合を記載している。
【0074】
ポリマー組成物
本発明のポリマー組成物は典型的に、ポリマー組成物に存在するポリマー成分の総重量に基づいて少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは80〜100重量%、より好ましくは85〜100重量%のポリオレフィン(a)を含む。好ましいポリマー組成物は、唯一のポリマー成分としてのポリオレフィン(a)から成る。上記表現は、本発明のポリマー組成物が、更なるポリマー成分を含まず、唯一のポリマー成分としてポリオレフィン(a)を含むことを意味する。しかし、本発明のポリマー組成物は、ポリオレフィン(a)、任意的なおよび好ましくはパーオキシド(b)、およびイオン交換剤(c)を除く更なる成分、例えば、イオン交換剤(c)として、担体ポリマーとの混合物で、すなわちいわゆるマスターバッチで任意的に添加され得る更なる添加剤を含み得ることが理解されるべきである。
【0075】
イオン交換剤(c)、好ましくは上記、下記または特許請求の範囲において定義されたハイドロタルサイトの量は、所望の最終用途(例えば所望の伝導度レベル)に当然依存し、当業者によって適応され得る。好ましくは、ポリマー組成物は、上記、下記または特許請求の範囲で定義されたイオン交換剤(c)、好ましくはハイドロタルサイトを、それ自体として、すなわち単品として、ポリマー組成物の総重量に基づいて、1重量%未満、好ましくは0.8重量%未満、好ましくは0.000001〜0.7重量%、好ましくは0.000005〜0.6重量%、より好ましくは0.000005〜0.5重量%、より好ましくは0.00001〜0.1重量%、より好ましくは0.00001〜0.08重量%、より好ましくは0.00005〜0.07重量%、より好ましくは0.0001〜0.065重量%、より好ましくは0.0001〜0.06重量%、より好ましくは0.0001〜0.05重量%、より好ましくは0.0001〜0.045重量%、より好ましくは0.00015〜0.035重量%、より好ましくは0.0002〜0.025重量%、より好ましくは0.0003〜0.015重量%、より好ましくは0.0005〜0.01重量%、より好ましくは0.0008〜0.005重量%、より好ましくは0.001〜0.004重量%、より好ましくは0.0015〜0.0035重量%の量で含む。
【0076】
任意的なおよび好ましいパーオキシド(b)の量は、上記または特許請求の範囲で定義された通りである。任意的なおよび好ましい架橋の前に、本発明のポリマー組成物は、少なくとも1の−O−O−結合を含有する少なくとも1のパーオキシド(b)を含む。当然、2以上の異なるパーオキシド生成物がポリマー組成物において使用される場合には、上記、下記または特許請求の範囲で定義された−O−O−/ポリマー組成物kgの量(ミリモル)が、各パーオキシド生成物の−O−O−/ポリマー組成物kgの量の合計である。適する有機パーオキシド(b)の非制限的例として、ジ−t−アミルパーオキシド、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ(t−ブチル)パーオキシド、ジクミルパーオキシド、ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジベンゾイルパーオキシド、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、またはそれらの任意の混合物が挙げられ得る。好ましくは、パーオキシドが、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ(t−ブチル)パーオキシド、またはそれらの混合物から選択される。最も好ましくは、パーオキシド(b)がジクミルパーオキシドである。
【0077】
さらに、本発明のポリマー組成物は、任意的なおよび好ましい架橋の前に、ポリオレフィン(a)、任意的なおよび好ましいパーオキシド(b)およびイオン交換剤(c)に加えて、更なる成分、例えばポリマー成分および/または添加剤、好ましくは添加剤、例えば、ポリマー分野で知られている、酸化防止剤、スコーチ遅延剤(SR)、架橋ブースター、安定剤、加工助剤、難燃剤、水トリー遅延剤、さらなる酸またはイオンスカベンジャー、無機フィラーおよび電圧安定剤を含み得る。ポリマー組成物は、好ましくは、W&C用途のために慣用的に使用される添加剤、例えば1以上の酸化防止剤および任意的に1以上のスコーチ遅延剤、好ましくは少なくとも1以上の酸化防止剤を含む。添加剤の使用される量は、慣用のものであり、当業者に周知であり、例えば上記「発明の記載」に既に記載されている通りである。
【0078】
本発明のポリマー組成物は好ましくは、唯一のポリマー成分として、任意的におよび好ましくは架橋前に不飽和である、ポリオレフィン(a)、好ましくはポリエチレン、より好ましくはLDPEホモポリマーまたはコポリマー、から成る。
【0079】
本発明の最終使用および最終用途
本発明の新規なポリマー組成物は、ポリマーの種々の最終用途において非常に有用である。本発明のポリマー組成物の好ましい使用は、上記、下記または特許請求の範囲で定義した、ポリマー組成物およびその成分の好ましいサブ群および特性と任意の順序で組み合わせられ得る、その好ましいサブ群を包含する、W&C用途、より好ましくは電力ケーブルの1以上の層におけるものである。
【0080】
電力ケーブルは、任意の電圧レベルで作動する、エネルギーを伝えるケーブルであると定義される。本発明のポリマー組成物は、36kVより高い電圧で作動する電力ケーブルのために非常に適する。そのようなケーブルは、当該分野で周知であるように、高電圧(HV)電力ケーブルおよび超高電圧(EHV)電力ケーブルをカバーし、後者は、はるかにより高い電圧ですら作動する。上記用語は周知の意味を有し、したがって、そのようなケーブルの作動レベルを示す。HVDCおよびEHVDC電力ケーブルに関して、作動電圧は、本明細書において、接地と高電圧ケーブルの導体との間の電圧として定義される。典型的に、HVDCおよびEHVDC電力ケーブルは、40kV以上の電圧で、さらには50kV以上の電圧で作動する。非常に高い電圧で作動する電力ケーブルは、EHVDC電力ケーブルとして知られており、実際には、900kVと高くあり得るが、それに限定されない。
【0081】
本発明のポリマー組成物は、上記で定義したように、電力ケーブル、好ましくは直流(DC)電力ケーブル、より好ましくは36kVより高い電圧で作動するDC電力ケーブル、例えば周知のHVDCまたはEHVDC電力ケーブルのための層物質としての使用に非常に適する。
【0082】
1以上の層によって、好ましくは少なくとも絶縁層によって、より好ましくは少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に囲まれた導体を含むケ−ブル、好ましくは電力ケーブル、より好ましくは架橋可能な電力ケーブル、好ましくは架橋可能なDC電力ケーブルが提供され、ここで、上記層の少なくとも1、好ましくは絶縁層が、上記、下記または特許請求の範囲で定義された、
(a)ポリオレフィン、好ましくは高圧法で製造されたポリエチレン、より好ましくは不飽和LDPEコポリマー、
(b)任意的におよび好ましくはパーオキシド、好ましくは上記パーオキシドが存在し、より好ましくは35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは34ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは33ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは5.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは5.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは7.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは10.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、さらにより好ましくは15〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgの量で存在する、および
(c)イオン交換剤、
を含むポリマー組成物を含み、好ましくは上記ポリマー組成物から成る。
【0083】
ポリマー組成物、好ましくはポリオレフィン(a)の所望の架橋レベルおよび不飽和度に依存して、幾つかの場合のポリマー組成物のパーオキシド(b)含量はさらにより好ましくは17〜29ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgであり得る。
【0084】
用語「導体」は、本明細書の上記および下記において、導体が1以上のワイヤを含むことを意味する。さらに、ケーブルは、1以上のそのような導体を含み得る。好ましくは、導体が電気導体であり、1以上の金属ワイヤを含む。
【0085】
周知のように、ケーブルは任意的に、さらなる層、例えば絶縁層または存在するならば外側半導電層を囲む層、例えばスクリーン、ジャケット層、他の保護層またはそれらの任意の組合せを含み得る。
【0086】
本発明はまた、ケーブルを製造する方法を提供し、ここで、上記方法は、
(a)ポリマー組成物を用意しそして混合する、好ましくは押出機中で溶融混合すること、
(b)工程(a)で得られたポリマー組成物の溶融混合物を少なくとも、好ましくは(共)押出によって、導体上に施与して1以上の層、好ましくは少なくとも絶縁層を形成すること、および
(c)任意的におよび好ましくは、少なくとも、上記少なくとも1の層、好ましくは絶縁層におけるポリマー組成物を架橋すること、ここで、上記少なくとも1の層、好ましくは上記絶縁層が、上記または特許請求の範囲で定義された、
(a)ポリオレフィン、
(b)任意的におよび好ましくはパーオキシド、さらに好ましくは上記パーオキシドの量が、35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは34ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは33ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは30ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは5.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは7.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは10.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgである、および
(c)イオン交換剤、
を含むポリマー組成物を含み、好ましくは上記ポリマー組成物から成る。
【0087】
好ましい方法は、内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に囲まれた導体を含む電力ケ−ブル、好ましくはDC電力ケーブル、より好ましくはHVDC電力ケーブルを製造するためであり、ここで、上記方法は、
(a)内側半導電層のための、ポリマー、カーボンブラックおよび任意的に更なる成分を含む第一の半導電性組成物を用意しそして混合する、好ましくは押出機で溶融混合すること、
絶縁層のための絶縁性組成物を用意しそして混合する、好ましくは押出機で溶融混合すること、
外側半導電層のための、ポリマー、カーボンブラックおよび任意的に更なる成分を含む第二の半導電性組成物を用意しそして混合する、好ましくは押出機中で溶融混合すること、
(b)内側半導電層を形成するための、工程(a)で得られた第一の半導電性組成物の溶融混合物、
絶縁層を形成するための、工程(a)で得られた絶縁性組成物の溶融混合物、および
外側半導電層を形成するための、工程(a)で得られた第二の半導電性組成物の溶融混合物
を導体上に、好ましくは共押出によって、施与すること、および
(c)任意的におよび好ましくは、得られたケーブルの絶縁層の絶縁性組成物、内側半導電層の第一の半導電性組成物および外側半導電層の第二の半導電性組成物の1以上、好ましくは少なくとも絶縁層の絶縁性組成物、より好ましくは絶縁層の絶縁性組成物、内側半導電層の第一の半導電性組成物および外側半導電層の第二の半導電性組成物を架橋条件で架橋すること、
を含み、少なくとも上記絶縁性組成物は、上記、下記または特許請求の範囲で定義された、
(a)ポリオレフィン、
(b)任意的におよび好ましくはパーオキシド、さらに好ましくは上記パーオキシドの量が、35ミリモル未満の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは34ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは33ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは30ミリモル以下の−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは5.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは7.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは10.0〜30ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgである、および
(c)イオン交換剤、
を含むポリマー組成物を含み、好ましくは上記ポリマー組成物から成る。
【0088】
第一および第二の半導電性組成物のポリマーは好ましくは、オレフィン重合触媒の存在下で製造されたポリオレフィンであり(低圧ポリオレフィンとしても知られる)、これは好ましくは、低圧ポリエチレンまたは本発明のポリマー組成物に関して記載されたポリオレフィン(a)である。カーボンブラックは、DC電力ケーブルの半導電層、好ましくはDC電力ケーブルの半導電層に使用される任意の慣用的なカーボンブラックであり得る。好ましくはカーボンブラックが下記特性の1以上を有する。a)ASTM D3849−95a、散乱法Dに従う数平均粒径として定義される一次粒径が少なくとも5nmである、b)ASTM D1510に従うヨウ素価が少なくとも30mg/gである、c)ASTM D2414にしたがって測定される油吸収値が少なくとも30ml/100gである。カーボンブラックの非制限的例は、例えばアセチレンカーボンブラック、ファーネスカーボンブラックおよびケッチェンカーボンブラックであり、好ましくはファーネスカーボンブラックおよびアセチレンカーボンブラックである。好ましくは、第一および第二の半導電性ポリマー組成物が、半導電性組成物の重量に基づいて10〜50重量%のカーボンブラックを含む。
【0089】
溶融混合は、得られた混合物の少なくとも主要なポリマー成分の融点より上で混合することを意味し、典型的には、ポリマー成分の融点または軟化点より少なくとも10〜15℃上の温度で行われる。
【0090】
本明細書において用語「(共)押出」は、周知であるように、2以上の層の場合には、上記層が別々の工程で押し出され得、または上記層の少なくとも2または全てが、同じ押出工程で共押出され得ることを意味する。用語「(共)押出」はまた、本明細書において、層の全部または一部が、1以上の押出ヘッドを使用して同時に形成されることを意味する。
【0091】
周知のように、本発明のポリマー組成物および任意的なおよび好ましい第一および第二の半導電性組成物は、ケーブル製造プロセスの前またはその製造プロセスの間に製造され得る。さらに、本発明のポリマー組成物および任意的なおよび好ましい第一および第二の半導電性組成物は各々独立して、ケーブル製造プロセスの(溶融)混合工程a)へ導入する前にその成分の一部または全部を含み得る。
【0092】
好ましくは、本発明のポリマー組成物および任意的に第一および第二の半導電性組成物は、粉末、顆粒またはペレットの形状でケーブル製造プロセスに供給される。本明細書においてペレットは、(反応器から直接得られた)反応器で作られたポリマーから、反応器後の変形によって固体ポリマー粒子に形成された任意のポリマー生成物を一般的に意味する。周知の反応器後の変形は、ポリマー生成物および任意的な添加剤の溶融混合物をペレット化装置においてペレット化して固体ペレットにすることである。ペレットは、任意の大きさおよび形状を有し得る。
【0093】
本発明の提供されたポリマー組成物および好ましい第一および第二の半導電性組成物の混合工程(a)は好ましくは、ケーブル押出機において行われる。ケーブル製造プロセスの工程a)は任意的に、例えばケーブル製造ラインのケーブル押出機に結合しかつ先行して配置されたミキサーにおける、別個の混合工程を含み得る。先行する別個のミキサーでの混合は、成分の外部加熱(外部の源による加熱)を伴ってまたは伴わないで混合することにより行われ得る。本発明のポリマー組成物および任意的なおよび好ましい第一および第二の半導電性組成物の任意的なおよび好ましいパーオキシド(b)またはイオン交換剤(c)の少なくとも1、または任意的な更なる成分、例えば更なる添加剤、の一部または全部が、ケーブル製造プロセス中にポリオレフィンに添加される場合には、上記添加は、混合工程(a)中の任意の段階で、例えばケーブル押出機に先行する任意的な別個のミキサーでまたはケーブル押出機の任意の時点で、行われ得る。パーオキシドおよび任意的な添加剤の添加は、そのようなものとして、好ましくは液体形状で、または周知のマスターバッチで、混合工程(a)中の任意の段階で、同時にまたは別々になされ得る。
【0094】
第二の実施態様では、任意的なおよび好ましいパーオキシド(b)およびイオン交換剤(c)と組み合わされたポリオレフィン(a)を含むポリマー組成物の予め作られたペレットが上記方法の工程(a)に供給される。そのような実施態様では、そのようなもの(単品)としてまたはマスターバッチ(MB)としての少なくともイオン交換剤(c)および任意的に任意的なおよび好ましいパーオキシド(b)が、ポリオレフィン(a)に添加され、上記混合物が溶融混合され、得られた溶融混合物が固体ペレットにペレット化された後、ケーブル製造プロセスの工程(a)に供給される。しかし、この実施態様では、任意的なおよび好ましいパーオキシド(b)が好ましくは、ポリオレフィン(a)およびイオン交換剤(c)を含む形成されたペレットに含浸される。任意的な添加剤のポリオレフィン(a)への添加は、イオン交換剤(c)または任意的なおよび好ましいパーオキシド(b)に関して上述したように行われ得る。
【0095】
ポリマー組成物は最も好ましくは、上記第二の実施態様に従ってケーブル製造プロセスに供給される。
【0096】
ケーブル製造プセスの好ましい実施態様では、架橋可能な電力ケーブル、好ましくは架橋可能なDC電力ケーブル、より好ましくは架橋可能なHVDC電力ケーブル、が製造される。ここで、絶縁層が、架橋可能なポリオレフィン(a)、任意的におよび好ましくは不飽和LDPEホモポリマーまたはコポリマー、上記または下記に記載された量のパーオキシド(b)、およびイオン交換剤(c)を含む本発明のポリマー組成物を含み、次いで、得られたケーブルの絶縁層における架橋可能なポリオレフィン(a)が架橋条件で工程c)で架橋される。より好ましくは、この実施態様では、架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋されたDC電力ケーブル、より好ましくは架橋されたHVDC電力ケーブルが製造され、上記ケーブルは、第一の半導電性組成物を含む、好ましくは上記第一の半導電性組成物から成る内側半導電層、上記、下記または特許請求の範囲で定義された本発明のポリマー組成物を含む、好ましくは上記ポリマー組成物から成る絶縁層、および任意的におよび好ましくは第二の半導電性組成物を含む、好ましくは上記第二の半導電性組成物から成る外側半導電層によって囲まれた導体を含み、少なくとも、上記絶縁層のポリマー組成物ならびに任意的におよび好ましくは内側半導電層および外側半導電層のそれぞれ第一および第二の半導電性組成物の少なくとも1、好ましくは両方が、工程(c)で架橋条件で架橋される。絶縁層のポリマー組成物の架橋は、上記または特許請求の範囲で定義された量のパーオキシド(b)の存在下で行われ、内側半導電層の第一の半導電性組成物の任意的なおよび好ましい架橋は、架橋剤の存在下で、好ましくはフリーラジカル発生剤、好ましくはパーオキシドの存在下で行われる。
【0097】
本発明の絶縁層のポリマー組成物の架橋は、したがって、最も好ましくは、上記、下記または特許請求の範囲で定義された、本発明の「低い量」のパーオキシド(b)の存在下で行われる。
【0098】
架橋剤は、架橋工程c)に導入する前に、任意的な第一および第二の半導電性組成物に存在し得、または架橋工程中に導入され得る。パーオキシドは、上記任意的な第一および第二の半導電性組成物のための好ましい架橋剤であり、好ましくは、半導電性組成物が上述したケーブル製造プロセスにおいて使用される前に、上記組成物のペレットに含められる。
【0099】
架橋は、高められた温度で行われ得、上記温度は、周知のように、架橋剤の種類に依存して選択される。例えば、150℃より上の温度、例えば160〜350℃が典型的であるが、それに限定されない。
【0100】
プロセス温度およびデバイスは周知であり、例えば慣用のミキサーおよび押出機、例えば単軸または二軸押出機、が本発明の方法に適する。
【0101】
本発明はさらに、1以上の層によって、好ましくは少なくとも絶縁層によって、より好ましくは少なくとも、内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に囲まれた導体を有する、架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋されたDC電力ケーブル、好ましくは架橋されたHVDCまたはEHVDC電力ケーブルを提供する。ここで、少なくとも絶縁層が、本発明の架橋されたポリマー組成物(上記または特許請求の範囲で定義されたその好ましいサブ群または実施態様を包含する)を含む。任意的におよび好ましくは、内側半導電性組成物および任意的なおよび好ましい外側半導電性組成物の1または両方、好ましくは両方が架橋される。
【0102】
もちろん、本発明のケーブルの少なくとも1のケーブル層、好ましくは絶縁層において使用される本発明のポリマー組成物は、架橋されると、上記または特許請求の範囲で定義された有利な電気特性および好ましくは機械的特性の任意または全部を有する。
【0103】
本発明はさらに、少なくとも1の層によって、好ましくは少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に囲まれた導体を含む架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋された(DC)電力ケーブル、好ましくは架橋されたHVDCまたはEHVDC電力ケーブルの少なくとも1の層、好ましくは少なくとも絶縁層における、上記または特許請求の範囲で定義された本発明のポリマー組成物、またはその好ましいサブ群または実施態様の使用を提供する。本発明はまた、少なくとも1の層によって、好ましくは少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に囲まれた導体を含む架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋された(DC)電力ケーブル、好ましくは架橋されたHVDCまたはEHVDC電力ケーブルの少なくとも1の層、好ましくは少なくとも絶縁層を製造するための、上記または特許請求の範囲で定義された本発明のポリマー組成物、またはその好ましいサブ群または実施態様の使用を提供する。
【0104】
電力ケーブル、好ましくはDCケーブル、より好ましくはHVDCまたはEHVDC電力ケーブルの絶縁層の厚さは典型的に、ケーブルの絶縁層の断面で測定されたとき、2mm以上、好ましくは少なくとも3mm、好ましくは少なくとも5〜100mm、より好ましくは5〜50mmである。
【0105】
測定法
説明および実験部分において特に断らない限り、下記方法が特性の決定のために使用された。
wt%は重量%である。
【0106】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO1133に従って測定され、g/10分で示される。MFRは、ポリマーの流動性、したがって加工性、の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度が低い。MFRはポリエチレンの場合には190℃で測定され、種々の荷重、例えば2.16kg(MFR
2)または21.6kg(MFR
21)、で測定され得る。
【0107】
密度
密度は、ISO1183−2に従って測定された。サンプルの作製は、ISO1872−2表3Q(圧縮成形)に従って行われた。
【0108】
コモノマー含量
a)NMR分光法による直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンにおけるα−オレフィン含量の定量
コモノマー含量は、基本的割り当ての後、定量的13C核磁気共鳴(NMR)分光法によって決定された(J. Randall JMS - Rev. Macromol. Chem.Phys., C29(2&3), 201-317(1989))。実験パラメータが、この特定の仕事のための定量的スペクトルの測定を確実にするために調整された。
【0109】
特に溶液状態のNMR分光法が、Bruker AvanceIII 400分光計を使用して用いられた。ヒートブロックおよび回転管オーブンを使用して140℃で10mmサンプル管において約0.200gのポリマーを2.5mlの重水素化テトラクロロエテンに溶解することにより均一なサンプルを調製した。NOE(powergated)を伴うプロトンデカップリングされた13C単パルスNMRスペクトルが下記の取得パラメータを使用して記録された:90°のフリップ角、4個のダミースキャン、4096積算回数(transients)1.6sのアクイジションタイム、20kHzのスペクトル幅、125℃の温度、2元準位(bilevel)WALTZプロトンデカップリングスキームおよび3.0sの緩和遅延。得られたFIDは、下記のプロセッシングパラメータを使用して処理された:32kデータポイントへのゼロ充填(zero-filling)および、ガウス窓関数を使用するアポダイゼーション;自動ゼロ次および一次位相補正および、関係領域に限定された5次多項式を使用する自動基線補正。
【0110】
従来周知の方法に基づいて代表的位置のシグナルの積分の簡単な較正された比を使用して量が計算された。
【0111】
b)低密度ポリエチレンの極性コモノマーのコモノマー含量
(1)>6重量%の極性コモノマー単位を含有するポリマー
コモノマー含量(重量%)が、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法によって較正されるフーリエ変換赤外分光法(FTIR)に基づいて公知のやり方で決定された。下記に、エチレンエチルアクリレート、エチレンブチルアクリレートおよびエチレンメチルアクリレートの極性コモノマー含量の決定を例示する。ポリマーのフィルムサンプルが、FTIR測定のために作製された。0.5〜0.7mm厚さがエチレンブチルアクリレートおよびエチレンエチルアクリレートのために使用され、0.10mmフィルム厚さが>6重量%の量のエチレンメチルアクリレ-トのために使用された。フィルムが、Specacフィルムプレスを使用して、150℃で約5トンで1〜2分間プレスされ、次いで制御されないやり方で冷水を用いて冷却された。得られたフィルムサンプルの正確な厚さが測定された。
【0112】
FTIRによる分析の後、吸光度モードにおける基線が、分析されるべきピークのために引かれた。コモノマーのための吸光度ピークが、ポリエチレンの吸光度ピークによって正規化された(例えば、3450cm
−1でのブチルアクリレートまたはエチルアクリレートのためのピーク高さを、2020cm
−1でのポリエチレンのピーク高さで割った)。NMR分光法の較正手法が、文献に十分記載され、下記で説明される慣用のやり方で行われた。
【0113】
メチルアクリレートの含量の決定のために、0.10mm厚さのフィルムサンプルが作製された。分析後、3455cm
−1でのメチルアクリレートのためのピークの最大吸光度から2475cm
−1での基線の吸光度が差し引かれた(A
メチルアクリレート−A
2475)。次いで、2660cm
−1でのポリエチレンのピークのための最大吸光度から、2475cm
−1での基線の吸光度が差し引かれた(A
2660−A
2475)。次いで、文献に十分記載されている慣用のやり方で、(A
メチルアクリレート−A
2475)と(A
2660−A
2475)との比が計算された。重量%は、計算によってモル%に変換され得る。それは、文献に十分記載されている。
【0114】
NMR分光法によるポリマー中のコポリマー含量の定量
コノモマー含量が、基本的割り当ての後、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法によって決定された(例えば、”NMR Spectra of Polymers and Polymer Additives(ポリマーおよびポリマー添加剤のNMRスペクトル)”, A. J. Brandolini and D. D. Hills, 2000,Marcel Dekker, Inc. New York)。実験パラメータが、この特定の仕事のための定量的スペクトルの測定を確実にするために調整された(例えば、”200 and More NMR Experiments: A Practical Course”, S. Berger and S. Braun, 2004, Wiley-VCH, Weinheim)。従来公知のやり方で代表的位置のシグナルの積分の簡単な補正された比を使用して量が計算された。
【0115】
(2)6重量%以下の極性コモノマー単位を含有するポリマー
コモノマー含量(重量%)が、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法によって較正されるフーリエ変換赤外分光法(FTIR)に基づいて公知のやり方で決定された。下記に、エチレンブチルアクリレートおよびエチレンメチルアクリレートの極性コモノマー含量の決定を例示する。FTIR測定のために、0.05〜0.12mm厚さのフィルムサンプルが、上記方法1)に記載されたように作製された。得られたフィルムサンプルの正確な厚さが測定された。
【0116】
FTIRによる分析の後、吸光度モードにおける基線が、分析されるべきピークのために引かれた。コモノマーのためのピーク(例えば、1164cm
−1でのメチルアクリレートおよび1165cm
−1でのブチルアクリレート)の最大吸光度から、1850cm
−1での基線の吸光度が差し引かれた(A
極性コモノマー−A
1850)。次いで、2660cm
−1でのポリエチレンのピークのための最大吸光度から、1850cm
−1での基線の吸光度が差し引かれた(A
2660−A
1850)。次いで、(A
極性コモノマー−A
1850)と(A
2660−A
1850)との比が計算された。NMR分光法の較正手法が、文献に十分記載された慣用のやり方で、上記方法1)に記載されたように行われた。重量%は、計算によってモル%に変換され得る。それは、文献に十分記載されている。
【0117】
PENT(ペンシルバニアノッチ試験)
低速亀裂成長耐性が、ISO16241:2005に従って(ただし幾つかの変更を伴う)ペンシルバニアノッチ試験(PENT)を使用して評価された。
【0118】
各物質の圧縮成形されたプレート(plaque)が、下記手法に従って作製された。顆粒が、閉じられた型において、180℃で15分間、加圧することなく加熱された。熱が切られ、そして1.7MPaの公称圧力が12.5時間かけられ、その間にサンプルおよび型は自然に冷却させた。
・試験片の寸法:60mmx25mmx10mm
・主要なノッチ:3.5mm深さ
・サイドノッチ:0.7mm深さ
・試験片の試験温度:70℃
・試験応力(ノッチのない断面積に基づいて計算された):2.0MPa
・1物質につき2の試験片
・破壊までの時間が記録され、2の試験片の平均が計算された。
【0119】
DC伝導度法
プレートが、試験ポリマー組成物のペレットから圧縮成形される。最終のプレートは、試験ポリマー組成物から成り、1mmの厚さおよび330mmの直径を有する。
【0120】
プレートが、130℃で12分間圧縮成形され、その間に圧力は2MPaから20MPaに徐々に高められる。その後、温度が高められ、5分後に180℃に達する。温度は次いで、180℃で15分間一定に保たれ、その間に、プレートは試験ポリマー組成物に存在するパーオキシドによって完全に架橋される。最後に、圧力が開放されるときに室温に達するまで、温度が15℃/分の冷却速度を使用して低下される。プレートは、揮発性物質の損失を防ぐために、圧力の開放後直ちに金属製ホイルで包まれる。
【0121】
試験サンプルに電圧をかけるために、高電圧源が、上方電極に連結される。サンプルを通って得られた電流が電位計を用いて測定される。測定セルは、真鍮電極を有する3電極系である。真鍮電極は、高められた温度での測定を容易にしかつ試験サンプルの均一の温度を付与するために、加熱サーキュレーターに連結された加熱パイプを備えている。測定電極の直径は100mmである。電極の丸い端部からのフラッシュオーバーを回避するために、シリコーンゴムのスカート部が真鍮電極端部と試験サンプルとの間に置かれる。
【0122】
適用された電圧は30kVDCであり、これは、30kV/mmの平均電場を意味する。温度は70℃であった。プレートを通る電流が、24時間続く実験全体にわたって記録された。24時間後の電流が、絶縁体の伝導度を計算するために使用された。
【0123】
この方法および伝導度測定のための測定手順の模式図は、Nordic Insulation Symposium 2009 (Nord-IS 09)、スウェーデン国イェーテボリ、2009年6月15〜17日、55〜58頁、Olssonら、”Experimental determination of DC conductivity for XLPE insulation”に完全に記載されている。
【0124】
ポリマー組成物またはポリマー中の二重結合の量の測定法
A)IR分光法による炭素−炭素二重結合の量の定量
定量的赤外(IR)分光法が、炭素−炭素二重結合(C=C)の量を定量するために使用された。既知の構造の代表的低分子量モデル化合物中のC=C官能基のモル吸光係数の事前の決定により較正が達成された。
【0125】
これらの基の各々の量(N)が、下記式によって、炭素原子1000個当たりの炭素−炭素二重結合の数(C=C/1000C)として決定された。
N=(A×14)/(E×L×D)
ここで、Aは、ピーク高さとして定義される最大吸光度であり、Eは、係る基のモル吸光係数(l・モル
−1・mm
−1)であり、Lはフィルム厚さ(mm)であり、Dは物質の密度(g・cm
−1)である。
【0126】
炭素原子1000個当たりのC=C結合の総量は、個々のC=C含有成分のNを合計することによって計算され得る。
【0127】
ポリエチレンサンプルの場合には、固体状態の赤外スペクトルが、FTIR分光計(PerkinElmer 2000)を使用して、圧縮成形された薄い(0.5〜1.0mm)フィルムについて4cm
−1の分解能で記録され、吸収モードで分析された。
【0128】
1)>0.4重量%の極性コモノマーを有するポリエチレンコポリマーを除く、ポリエチレンホモポリマーおよびコポリマーを含むポリマー組成物
ポリエチレンのために、3種類のC=C含有官能基が定量された。各々は特徴的な吸収を有し、個々の吸光係数をもたらす異なるモデル化合物に対して較正された。
E=13.13l・モル
−1・mm
−1を与える1−デセン[デク−1−エン]に基づく910cm
−1によるビニル(R−CH=CH2)
E=18.24l・モル
−1・mm
−1を与える2−メチル−1−ヘプテン[2−メチルヘプト−1−エン]に基づく888cm
−1によるビニリデン(RR’C=CH2)
E=15.14l・モル
−1・mm
−1を与えるトランス−4−デセン[(E)−デク−4−エン]に基づく965cm
−1によるトランス−ビニレン(R−CH=CH−R’)
【0129】
<0.4重量%の極性コモノマーを有するポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーのために、約980cm
−1と840cm
−1との間に線状基線較正が適用された。
【0130】
2)>0.4重量%の極性コモノマーを有するポリエチレンコポリマーを含むポリマー組成物
>0.4重量%の極性コモノマーを有するポリエチレンコポリマーのために、2種類のC=C含有官能基が定量された。各々は、特的な吸収を有し、個々の吸光係数をもたらす異なるモデル化合物に対して較正された。
E=13.13l・モル
−1・mm
−1を与える1−デセン[デク−1−エン]に基づく910cm
−1によるビニル(R−CH=CH2)
E=18.24l・モル
−1・mm
−1を与える2−メチル−1−ヘプテン[2−メチルヘプト−1−エン]に基づく888cm
−1によるビニリデン(RR’C=CH2)
【0131】
EBA:
ポリ(エチレン−コ−ブチルアクリレート)(EBA)系のために、約920cm
−1と870cm
−1との間に線状基線較正が適用された。
EMA:
ポリ(エチレン−コ−メチルアクリレート)(EMA)系のために、約930cm
−1と870cm
−1との間に線状基線較正が適用された。
【0132】
3)不飽和低分子量分子を含むポリマー組成物
低分子量C=C含有種を含む系のために、上記低分子量種自体におけるC=C吸収のモル吸光係数を使用する直接の較正が行われた。
【0133】
B)IR分光法によるモル吸光係数の定量
モル吸光係数が、ASTM D−3124−98およびASTM D6248−98に示された手法に従って決定された。溶液状態の赤外スペクトルが、0.1mm光路長の液体セルを備えたFTIR分光計(Perkin Elmer 2000)を使用して4cm
−1の解像度で記録された。モル吸光係数(E)は、下記式によって、l・モル
−1・mm
−1として決定された。
E=A/(C×L)
ここで、Aはピーク高さとして定義される最大吸光度であり、Cは濃度(モル・l
−1)であり、Lはセル厚さ(mm)である。少なくとも3つの二硫化炭素(CS
2)中の0.18モルモル・l
−1溶液が使用され、モル吸光係数の平均値が決定された。
【実施例】
【0134】
実験
本発明の実施例のポリマーおよび参照例のポリマーの調製
全てのポリマーが、高圧反応器で製造された低密度ポリエチレンであった。CTA供給に関して、例えばPA含量は、リットル/時またはkg/時として示され得、検算のために0.807kg/リットルのPAの密度を使用していずれかの単位に変換され得る。
【0135】
LDPE1
エチレンが、再循環されたCTAと共に、中間の冷却を伴って5−段階プレ圧縮器および2−段階ハイパー圧縮器において圧縮されて約2628バールの初期反応圧力に達した。合計の圧縮器処理量は約30トン/時であった。圧縮器領域では、約4.9リットル/時のプロピオンアルデヒド(PA、CAS番号:123−38−6)が連鎖移動剤としての約81kgのプロピレン/時とともに添加されて1.89g/10分のMFRを維持した。ここでまた、1,7−オクタジエンが27kg/時の量で反応器に添加された。圧縮された混合物が、約40mmの内径および1200mの全長を有するフロント供給2−ゾーン管状反応器の予熱セクションで157℃に加熱された。イソドデカンに溶解された市販のパーオキシドラジカル開始剤の混合物が、プレヒーターのすぐ後で、発熱重合反応が約275℃のピーク温度に達するのに十分な量で注入され、その後、約200℃に冷却された。続く第二のピーク反応温度は264℃であった。反応混合物は、キックバルブ(kick valve)によって減圧され、冷却され、ポリマーが未反応ガスから分離された。
【0136】
【表1】
【0137】
使用された添加剤は市販品である。
イオン交換剤(c):合成ハイドロタルサイト(IUPAC名:ジアルミニウムヘキサマグネシウムカーボーネートヘキサデカヒドロキシド、CAS番号11097−59−9)、DHT−4Vの商品名でKisuma Chemicalsによって供給
パーオキシド(PO):DCP=ジクミルパーオキシド(CAS番号80−43−3)、市販品
酸化防止剤(AO):4,4’−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)(CAS番号96−69−5)、市販品
スコーチ遅延剤(SR):2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(CAS番号6362−80−7)、市販品
【0138】
DCPの量は、−O−O−官能基/ポリマー組成物kgの含量のミリモルで示される。上記量はまた、重量%(wt%)として括弧書きで示される。
【0139】
本発明のポリマー組成物および参照組成物(イオン交換剤(c)を含まず、本発明のポリマー組成物と同量のパーオキシドで架橋された)の成分が、DC伝導度の結果とともに、表2に示される。
【0140】
ポリマー組成物の配合:ポリマーペレットが、架橋剤およびSR以外の添加剤(ペレットに存在しない場合)とともに、パイロット規模の押出機(Prism TSE 24TC)に添加された。得られた混合物が、下記表に示された条件で溶融混合され、そして慣用のやり方でペレットに押し出された。
【0141】
【表2】
【0142】
架橋剤、ここではパーオキシド、およびSRが、存在するならば、液体形状でペレットに添加され、得られたペレットが実験に使用された。
【0143】
【表3】
【0144】
ケーブルの製造:本発明のポリマー組成物を使用して、電力ケーブルの絶縁層が製造された。
【0145】
電力ケーブル押出
3層を有するケーブルが、内側および外側層としての市販の半導電性組成物を使用して作られた。真ん中の絶縁層は、本発明のポリマー組成物で形成された。ケーブルの構造は、50mm
2の撚り合わせたAl導体および5.5mm厚さの絶縁体であった。内側および外側半導電層は、それぞれ1mmおよび1mmの厚さを有した。ケーブルラインは、カテナリーNokia Maillefer 1+2系であった。即ち、内側半導電層のための1の押出ヘッドおよび絶縁体+外側半導電層のための別の押出ヘッドであった。架橋されていないケーブルが水中で冷却された。
【0146】
ケーブルが架橋されるならば、架橋は、窒素下で硫化管中で行われ、その後水中で冷却された。
【0147】
得られたケーブルは低い伝導度を有し、本発明のポリマー組成物の、電力ケーブル、例えばHVDC電力ケーブル用途におけるケーブル層としての、好ましくは絶縁層としての適用性を示す。