特許第6069307号(P6069307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シミック・アイピー・リミテッド・ライアビリティー・カンパニーの特許一覧

特許6069307ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン、その製造および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069307
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン、その製造および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20170123BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C07K7/08ZNA
   A61L27/00 G
【請求項の数】10
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2014-512111(P2014-512111)
(86)(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公表番号】特表2014-518879(P2014-518879A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】US2012039404
(87)【国際公開番号】WO2012162534
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】61/489,602
(32)【優先日】2011年5月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/550,621
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516253400
【氏名又は名称】シミック・アイピー・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】SYMIC IP, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】アリッサ・パニッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・シー・バーンハード
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・イー・パデリ
(72)【発明者】
【氏名】シャイリ・シャルマ
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−515499(JP,A)
【文献】 特表2005−528933(JP,A)
【文献】 特表2008−542404(JP,A)
【文献】 J. Biol. Chem. (1991) vol.266, no.2, p.894-902
【文献】 Cell (1989) vol.56, issue 6, p.1057-1062
【文献】 Nat. Rev. Mol. Cell Biol. (2003) vol.4, issue 1, p.33-45
【文献】 J. Exp. Med. (2000) vol.192, no.6, p.769-779
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
PubMed
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンドロイチン硫酸に結合した合成ペプチドを含むヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンであって、合成ペプチドが、GAHWQFNALTVRGGのアミノ酸配列、または、GAHWQFNALTVRGGに保存的アミノ酸置換を含めることにより改変されたアミノ酸配列を含保存的アミノ酸置換が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2(式中、X1−X8は非酸性アミノ酸であり、B1およびB2は塩基性アミノ酸である)で定義されるモチーフを変更しない、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン。
【請求項2】
合成ペプチドが、GAHWQFNALTVRGGのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の合成ペプチドグリカン。
【請求項3】
合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、請求項1または請求項に記載の合成ペプチドグリカン。
【請求項4】
合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システインを有する、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の合成ペプチドグリカン。
【請求項5】
合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、リンカーを介してコンドロイチン硫酸に結合している、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の合成ペプチドグリカン。
【請求項6】
リンカーが1個ないし約30個の炭素原子を含む、請求項5に記載の合成ペプチドグリカン。
【請求項7】
リンカーがアミノ酸を含む、請求項6に記載の合成ペプチドグリカン。
【請求項8】
合成ペプチドグリカンがマトリックスメタロプロテアーゼに抵抗性である、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の合成ペプチドグリカン。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の合成ペプチドグリカンを含む組成物であって、コンドロイチン硫酸に結合している合成ペプチドの数が平均3個ないし10.5個である、組成物。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の合成ペプチドグリカンまたは請求項9に記載の組成物、および、1種またはそれ以上の医薬的担体または希釈剤を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2011年5月24日に出願された米国仮出願番号61/489,602および2011年10月24日に出願された米国仮出願番号61/550,621に、35U.S.C.§119(e)の優先権を主張する。両方の開示を出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
技術分野
本発明は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン(a hyaluronic acid-binding synthetic peptidoglycan)、その形成および使用方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景および概要
関節軟骨は、身体の骨の保護に重要な成分である。特に、関節軟骨は、骨の運動のために殆ど摩擦のない表面を提供し、関節に圧縮強度も提供することにより、関節の骨を損傷から保護するように機能する。関節軟骨は、広義には、3種の主要な成分:コラーゲン足場(scaffold)、ヒアルロン酸(HA)およびアグリカンに由来する細胞外マトリックス(ECM)を含む。関節軟骨の材料組成は、その組織の生物学的、化学的および機械的特性を定める。健康な軟骨の細胞外マトリックス(ECM)は、主として、コラーゲン原線維のネットワーク(湿重量15−22%、II型コラーゲン)、プロテオグリカン(湿重量4−7%)、糖タンパク質、水(60−85%)および電解質からなり、深度に依存する構造的および機械的異方性を有する粘弾性組織を生じさせる。
【0004】
軟骨の分解および摩耗は、骨関節症(OA)の特徴である。OAの初期段階で、軟骨の主要なプロテオグリカンであるアグリカンは、早期に分解される成分である。アグリカンの単量体は、グリコサミノグリカン(GAG)側鎖を共有結合で有するタンパク質コアであり、球状ドメインおよび連結タンパク質を介して糸状のヒアルロン酸に結合する。アグリカナーゼなどのプロテアーゼは、アグリカンを特定の部位で切断し、HAに再結合できないタンパク質断片および遊離GAG鎖を創製する。それどころか、これらの遊離GAG鎖は、マトリックスから突き出し、圧縮強度を減ずるのみならず、炎症促進性サイトカインおよびマトリックスメタロプロテアーゼの増加も起こす。アグリカンの存在は、プロテアーゼの拡散を低減し、根底にあるコラーゲン線維をタンパク質分解的切断から保護すると示された。アグリカンの損失は正常な軟骨でも起こり、直ちにOAと相関づけられるものではない。しかしながら、II型コラーゲンの損失は不可逆的過程であると考えられ、早発性の摩耗を導く。
【0005】
骨関節症は、関節炎の最も一般的な形態であり、米国のみで2700万人を冒している。最も蔓延している骨関節症の症状には、強い疼痛、関節の硬化および圧痛のある炎症関節が含まれる。進行した段階の骨関節症は、関節軟骨の完全な分解をもたらし、関節の不動および根底にある骨への損傷を引き起こし得る。米国における関節炎の直接的なコストは、毎年約1855億ドルと見積もられている。
【0006】
生活様式が変化し、骨関節症の処置に複数の薬物療法がしばしば使用されているが、欠損した軟骨の再生および軟骨の損失に起因する症状の軽減においては、ほとんど成功がなかった。骨関節症の進行を停止し、既存の損傷を修復することに対するこの無力さは、典型的には、侵襲性の最終段階の軟骨置換術をもたらす。従って、骨関節症の代替的な処置選択肢が、強く望まれている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、軟骨再生用の改良された生体材料を説明する。それは、罹患者の損傷した軟骨を再建するのに利用できるヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含み、この合成ペプチドグリカンの形成および使用方法を伴う。さらに、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、機能的にはアグリカンを模倣し、アグリカナーゼ分解に抵抗し、タンパク質分解を制限するように設計されている。アグリカンに見られる天然アミノ酸配列の不在により、これらの分子はタンパク質分解的切断を受けにくい。
【0008】
以下の番号を付けた実施態様が企図され、それらは非限定的である:
1.グリカンに結合した合成ペプチド(a synthetic peptide conjugated to a glycan)を含み、合成ペプチドがヒアルロン酸結合配列を含む、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン。
2.合成ペプチドが、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第1項の合成ペプチドグリカン。
【0009】
3.合成ペプチドが、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第1項または第2項の合成ペプチドグリカン。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
【0010】
4.グリカンが、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第1項ないし第3項のいずれかの合成ペプチドグリカン。
5.グリカンがコンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第1項ないし第4項のいずれかの合成ペプチドグリカン。
6.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第1項ないし第5項のいずれかの合成ペプチドグリカン。
7.合成ペプチドグリカンが凍結乾燥されている、第1項ないし第6項のいずれかの合成ペプチドグリカン。
【0011】
8.式P
(式中、nは1ないし20であり;
式中、xは1ないし20であり;
式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして、
式中、Gはグリカンである)
の化合物。
【0012】
9.式(PL)
(式中、nは1ないし20であり;
式中、xは1ないし20であり;
式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
式中、Lはリンカーであり;そして、
式中、Gはグリカンである)
の化合物。
【0013】
10.式P(LG
(式中、nは1ないし20であり;
式中、xは1ないし20であり;
式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
式中、Lはリンカーであり;そして、
式中、Gはグリカンである)
の化合物。
【0014】
11.式P
(式中、nはMWG/1000であり;
式中、MWGは、最も近い1kDaに端数処理したGの分子量であり;
式中、xは1ないし20であり;
式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして、
式中、Gはグリカンである)
の化合物。
【0015】
12.式(PL)
(式中、nはMWG/1000であり;
式中、MWGは、最も近い1kDaに端数処理したGの分子量であり;
式中、xは1ないし20であり;
式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
式中、Lはリンカーであり;そして、
式中、Gはグリカンである)
の化合物。
【0016】
13.合成ペプチドが、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第8項ないし第12項のいずれかの化合物。
【0017】
14.合成ペプチドが、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第8項ないし第13項のいずれかの化合物。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
【0018】
15.グリカンが、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第8項ないし第14項のいずれかの化合物。
16.グリカンがコンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第8項ないし第15項のいずれかの化合物。
17.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第8項ないし第16項のいずれかの化合物。
【0019】
18.重合したコラーゲン、ヒアルロン酸、および、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む、人工コラーゲンマトリックス。
19.コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびこれらの組合せからなる群から選択される、第18項の人工コラーゲンマトリックス。
【0020】
20.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第18項または第19項の人工コラーゲンマトリックス。
【0021】
21.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第18項ないし第20項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
【0022】
22.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第18項ないし第21項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
23.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第18項ないし第22項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
24.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第18項ないし第23項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
25.マトリックスが組織移植片として有効である、第18項ないし第24項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
26.組織移植片が患者に移植される、第25項の人工コラーゲンマトリックス。
27.マトリックスがゲルの形態である、第18項ないし第24項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
28.ゲルが注入により患者に投与される、第27項の人工コラーゲンマトリックス。
29.マトリックスが細胞のインビトロ培養用の組成物として有効である、第18項ないし第24項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
30.マトリックスが、さらに、外来性の細胞集団を含む、第29項の人工コラーゲンマトリックス。
31.細胞が軟骨細胞および幹細胞からなる群から選択される、第30項の人工コラーゲンマトリックス。
32.幹細胞が、骨芽細胞、骨原性細胞および間葉性幹細胞からなる群から選択される、第31項の人工コラーゲンマトリックス。
33.1種またはそれ以上の栄養分をさらに含む、第18項ないし第32項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
34.1種またはそれ以上の増殖因子をさらに含む、第18項ないし第33項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
35.マトリックスが滅菌されている、第18項ないし第34項のいずれかの人工コラーゲンマトリックス。
【0023】
36.ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む、軟骨細胞または幹細胞のインビトロ培養用の組成物。
37.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第36項の組成物。
【0024】
38.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第36項または第37項の組成物。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
【0025】
39.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第36項ないし第38項のいずれかの組成物。
40.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第36項ないし第39項のいずれかの組成物。
41.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第36項ないし第40項のいずれかの組成物。
42.幹細胞が、骨芽細胞、骨原性細胞および間葉性幹細胞からなる群から選択される、第36項ないし第41項のいずれかの組成物。
43.1種またはそれ以上の栄養分をさらに含む、第36項ないし第42項のいずれかの組成物。
44.1種またはそれ以上の増殖因子をさらに含む、第36項ないし第43項のいずれかの組成物。
45.組成物が滅菌されている、第36項ないし第44項のいずれかの組成物。
【0026】
46.既存の生体材料の軟骨または骨置換材料に添加するためのヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む、生体材料の軟骨または骨置換組成物用の添加物。
47.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第46項の添加物。
【0027】
48.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第46項または第47項の添加物。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
【0028】
49.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第46項ないし第48項のいずれかの添加物。
50.グリカンが、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第46項ないし第49項のいずれかの添加物。
51.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第46項ないし第50項のいずれかの添加物。
【0029】
52.ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを患者に投与する段階を含み、合成ペプチドグリカンが関節炎に関連する症状を低減する、患者の関節炎の処置方法。
53.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第52項の方法。
【0030】
54.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第52項または第53項の方法。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
【0031】
55.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第52項ないし第54項のいずれかの方法。
56.グリカンが、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第52項ないし第55項のいずれかの方法。
57.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第52項ないし第56項のいずれかの方法。
58.関節炎が骨関節症である、第52項ないし第57項のいずれかの方法。
59.関節炎がリウマチ性関節炎である、第52項ないし第57項のいずれかの方法。
60.合成ペプチドグリカンが注入により患者に投与される、第52項ないし第59項のいずれかの方法。
61.注入が関節内注入である、第60項の方法。
62.注入が患者の関節包へのものである、第60項の方法。
63.合成ペプチドグリカンが針または点滴用装置を使用して投与される、第52項ないし第62項のいずれかの方法。
64.合成ペプチドグリカンが潤滑剤として作用する、第52項ないし第63項のいずれかの方法。
65.合成ペプチドグリカンが、骨が接触する関節(bone on bone articulation)を防止するか、または、軟骨の損失を防止する、第52項ないし第64項のいずれかの方法。
【0032】
66.合成ペプチドグリカンおよび既存の生体材料または骨軟骨置換材料を合わせる段階を含む、生体材料または骨軟骨置換物の製造方法。
67.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第66項の方法。
【0033】
68.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第66項または第67項の方法。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
【0034】
69.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第66項ないし第68項のいずれかの方法。
70.グリカンが、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第66項ないし第69項のいずれかの方法。
71.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第66項ないし第70項のいずれかの方法。
【0035】
72.患者にヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを投与することを含む、患者におけるヒアルロン酸の分解を低減または防止する方法。
73.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第72項の方法。
【0036】
74.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第72項または第73項の方法。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
【0037】
75.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第72項ないし第74項のいずれかの方法。
76.グリカンが、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第72項ないし第75項のいずれかの方法。
77.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第72項ないし第76項のいずれかの方法。
78.合成ペプチドグリカンが注入により患者に投与される、第72項ないし第77項のいずれかの方法。
79.注入が関節内注入である、第78項の方法。
80.注入が患者の関節包へのものである、第78項の方法。
81.ヒアルロン酸の分解速度が低減される、第72項ないし第88項のいずれかの方法。
【0038】
82.組織欠損にヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを投与することを含み、欠損が矯正または修正される、患者の組織欠損を矯正または修正する方法。
83.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第82項の方法。
【0039】
84.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第82項または第83項の方法。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
【0040】
85.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第82項ないし第84項のいずれかの方法。
86.グリカンが、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第82項ないし第85項のいずれかの方法。
87.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第82項ないし第86項のいずれかの方法。
88.合成ペプチドグリカンが注入により患者に投与される、第82項ないし第87項のいずれかの方法。
89.注入が皮下である、第88項の方法。
90.欠損が美容的欠損である、第82項ないし第89項のいずれかの方法。
【0041】
91.ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む皮膚注入剤。
92.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第91項の皮膚注入剤。
【0042】
93.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第91項または第92項の皮膚注入剤。
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)またはN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。
94.さらにヒアルロン酸を含む、第91項ないし第93項のいずれかの皮膚注入剤。
【0043】
95.ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを、コラーゲンの存在下でヒアルロン酸と接触させる段階、および、
コラーゲンの分解を低減または防止する段階
を含む、コラーゲンの分解を低減または防止する方法。
96.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第95項の方法。
【0044】
97.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第95項または第96項の方法。
【0045】
98.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第95項ないし第97項のいずれかの方法。
99.グリカンが、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第95項ないし第98項のいずれかの方法。
100.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第95項ないし第99項のいずれかの方法。
101.ヒアルロン酸の分解速度が低減される、第95項ないし第100項のいずれかの方法。
【0046】
102.コラーゲン、ヒアルロン酸、および、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを合わせる段階、および、
マトリックスの孔のサイズを大きくする段階、
を含む、人工コラーゲンマトリックスの孔のサイズを大きくする方法。
103.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第102項の方法。
【0047】
104.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第102項または第103項の方法。
【0048】
105.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第102項ないし第104項のいずれかの方法。
106.グリカンが、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第102項ないし第105項のいずれかの方法。
107.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第102項ないし第106項のいずれかの方法。
108.マトリックスが滅菌されている、第102項ないし第107項のいずれかの方法。
109.マトリックスが軟骨細胞または幹細胞をさらに含む、第102項ないし第108項のいずれかの方法。
110.幹細胞が、骨芽細胞、骨原性細胞および間葉性幹細胞からなる群から選択される、第109項の方法。
111.マトリックスが1種またはそれ以上の栄養分をさらに含む、第102項ないし第110項のいずれかの方法。
112.マトリックスが1種またはそれ以上の増殖因子をさらに含む、第102項ないし第111項のいずれかの方法。
【0049】
113.ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを、コラーゲンの存在下でヒアルロン酸と接触させる段階、および、
コンドロイチン硫酸の分解を低減または防止する段階
を含む、コンドロイチン硫酸の分解を低減または防止する方法。
114.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、第113項の方法。
【0050】
115.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第113項または第114項の方法。
【0051】
116.合成ペプチドグリカンのグリカン成分が、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される、第113項ないし第115項のいずれかの方法。
117.グリカンが、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される、第113項ないし第116項のいずれかの方法。
118.合成ペプチドグリカンがアグリカナーゼに抵抗性である、第113項ないし第117項のいずれかの方法。
119.コンドロイチン硫酸の分解速度が低減される、第113項ないし第118項のいずれかの方法。
【0052】
120.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システイン(GC)を有する、先行する項目のいずれかの合成ペプチドグリカン、化合物、人工コラーゲンマトリックス、組成物、添加物、方法または皮膚注入剤。
121.合成ペプチドグリカンのペプチド成分が、ペプチドのN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有する、先行する項目のいずれかの合成ペプチドグリカン、化合物、人工コラーゲンマトリックス、組成物、添加物、方法または皮膚注入剤。
122.合成ペプチドグリカンがマトリックスメタロプロテアーゼに抵抗性である、先行する項目のいずれかの合成ペプチドグリカン、化合物、人工コラーゲンマトリックス、組成物、添加物、方法または皮膚注入剤。
123.マトリックスメタロプロテアーゼがアグリカナーゼである、第122項の合成ペプチドグリカン、化合物、人工コラーゲンマトリックス、組成物、添加物、方法または皮膚注入剤。
124.合成ペプチドグリカンの用量が、約0.01uMないし約100uMの濃度範囲にある、先行する項目のいずれかの合成ペプチドグリカン、化合物、人工コラーゲンマトリックス、組成物、添加物、方法または皮膚注入剤。
125.合成ペプチドグリカンの用量が、約0.1uMないし約10uMの濃度範囲にある、先行する項目のいずれかの合成ペプチドグリカン、化合物、人工コラーゲンマトリックス、組成物、添加物、方法または皮膚注入剤。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図面の簡単な説明
図1図1は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を製造するための反応スキームを示す。反応段階を太字で詳細に示す。
図2図2は、注入されたBMPHの量(mg)に基づく、N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジドトリフルオロ酢酸塩(以後、「BMPH」)の吸光度(215nm)の標準曲線を示す。この標準曲線を、カップリング反応中に消費されたBMPHの量を測定するのに使用した。
図3図3は、固定化されたヒアルロン酸(HA)への、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの結合を示す。9種のHA結合ペプチド(例えば、GAHWQFNALTVRGGGC;以後「GAH」または「mAGC」)を、官能化されたグリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、以後「CS」)主鎖に結合させた。合成ペプチドグリカンの濃度を、0.01μMから100μMへ高めた。
図4図4は、レオロジー的周波数掃引(rheological frequency sweep)により測定した合成ペプチドグリカンのHA結合を示す(パネルA)。HA混合物の貯蔵弾性率を5.012Hzの発振周波数で分析した。この周波数で、HA鎖の完全性を維持したまま、注目すべき負荷が与えられた。統計学的分析(α=0.05)は、HA+CSおよびHAが有意に異なること(*で示す)、および、HA+10.5GAH−CSおよびHA+CSが有意に異なることを示した(**で示す)。パネルBは、パネルAに示した同じデータの別の表示である。
図5図5は、コラーゲン原線維形成中のI型コラーゲン+処置群の濁度の定量を示す。313nmでの吸光度を3分毎に測定した。1時間(即ち、時点数20)後、全ての処置群は完全にネットワークを形成した。最大吸光度または最大半量吸光度までの時間に関して、処置群間に有意差(α=0.05)はなかった。
図6図6は、1%/秒の工学ひずみ(engineering strain)の適用に基づき、コラーゲンゲルによって耐えられる工学的圧縮応力(compressive engineering stress)を示す。統計学的分析(α=0.05)は、10.5GAH−CSの添加が、5%、7.5%および10%の工学ひずみで分析された工学的応力に加えて、ピークの工学的応力に有意差をもたらすことを立証した。
図7図7は、0.5012Hzの発振周波数で測定したコラーゲン混合物の貯蔵弾性率を示す。統計学的分析(α=0.05)は、10.5GAH−CSの添加が、コラーゲンゲルの貯蔵弾性率の有意な増加をもたらすことを立証した(*で示す)。
図8図8は、混合物にヒアルロニダーゼを添加することによる、HA混合物の分解割合を示す(パネルA)。HA混合物の動粘性の変化により、分解割合を測定した。動粘性の測定は、最初に混合物で行い、分解割合を算出するベースラインとして供した。0時間の時点は、ヒアルロニダーゼの添加、サンプルの十分な混合およびレオメータのステージへのピペットによる添加の後とし、ヒアルロニダーゼの添加と動粘性の測定の間に約2分間が経過した。統計学的分析は、10.5GAH−CSサンプルの分解割合に、0時間および2時間の両時点で有意差(α=0.05)を立証した。パネルBは、ヒアルロニダーゼの添加によるHA混合物の動粘性を標準化して表した同じデータを示す(平均±SE、n=3)。動粘性測定は、最初に、ヒアルロニダーゼを添加する前の混合物で行い、これらの値を、標準化された動粘性を算出するベースラインとして供した。標準化された動粘性は、ヒアルロニダーゼの添加後に動粘性を各々測定し、この値をそのサンプルの最初の動粘性で割ることにより決定した。統計学的分析(α=0.05)を実施した。10.5GAH−CSサンプルにつき、0時間および2時間の両時点で、標準化された分解に有意差が見られた。
図9図9は、各軟骨ECM複製物を伴うCI足場の代表的な凍結SEM画像(倍率10,000x、5μmのスケールバー)。パネルAは、CI対照を表す。パネルBは、CI+HA+CSを表す。パネルCは、CI+HA+10.5GAH−CSを表す。
図10図10は、50時間の期間にわたりMMP−Iに曝されたECM複製物におけるCIの分解割合(平均±SE、n=3)を示す。様々な処理の統計学的分析(p<0.05)は、3種すべての処理(CI対照、CI+HA+CSおよびCI+HA+10.5GAH−CS)が相互に有意に異なることを解明した。
図11図11は、IL−1βで刺激した/しなかった培地中での8日間の培養期間にわたる、累積的なコンドロイチン硫酸(CS)の損失を示す。CS損失は、DMMBアッセイにより測定した。mAGCの添加は、足場からのCSの損失に有意な影響を与えた(p<0.001)。**は、アグリカン模倣物を用いずに調製された足場と、mAGCを用いて調製されたものとの間の統計学的有意性を示す。+は、IL−1βで処理した/しなかった足場間の統計学的有意性を示す(p<0.05)。バーは、平均±SEM(n=3)を示す。
図12図12は、IL−1βで刺激した/しなかった培地中での8日間の培養期間にわたる、累積的なコラーゲンの崩壊を示す。コラーゲンの崩壊は、Sircol アッセイで測定した。アグリカン模倣物の添加は、足場からのコラーゲンの損失に有意な影響を与えた(p<0.02)。**は、アグリカン模倣物を用いずに調製された足場と、mAGCを用いて調製されたものとの間の統計学的有意性を示す。+は、IL−1βで処理した/しなかった足場間の統計学的有意性を示す(p<0.05)。バーは、平均±SEM(n=3)を示す。
図13図13は、ペプチドグリカンのエクスビボでの効力を調べるための基盤を表す。0.5%トリプシンを使用して、ウシ軟骨外植片から天然のアグリカンを除去した。アグリカンの除去は、DMMBアッセイにより確認した。グラフは、正の対照と比較して、除去されたアグリカンの量を表す。
図14図14は、軟骨マトリックスを介するペプチドグリカンの拡散をモニターするアッセイを示す。Y軸は、ペプチドグリカンで処理した/しなかったアグリカン枯渇軟骨プラグから読み取られる、DMMBアッセイの吸光度の差異を表す。X軸は、軟骨の関節表面から、肋軟骨下の骨までの距離を表す。バーは、平均の差±SEM(n=3)を示す。
図15図15は、ウシ軟骨外植片のサフラニンOおよびアビジン−ビオチン染色を示す。マトリックスを介して正中矢状切開を行い、各々、残りのアグリカン(上のパネル、濃い染色)およびビオチン(下のパネル、濃い染色)を調べた。II型コラーゲンに結合するペプチドグリカン[WYRGRLGC;「mAG(II)C」]は、外植片を介して拡散した。この組織切片をさらに拡大すると(20X)、mAG(II)Cが約200umにわたり組織に浸透することを示した。
図16図16は、軟骨外植片のアビジン−ビオチン染色を示す。ペプチドグリカン(mAG(II)CおよびmAGC)は、軟骨外植片を介して拡散した。画像は、各々の浸透の深さを示す(濃い染色)。
図17図17は、アグリカン枯渇(AD)外植片におけるペプチドグリカンの添加が圧縮剛性を高めることを示す。HAに結合するペプチドグリカン(mAGC)の添加は、軟骨外植片の剛性を、II型コラーゲンに結合するペプチドグリカン(mAG(II)C)と匹敵するほど高く、有意に回復させた。*で示される有意性は、ADおよびAD+mACGで増強された外植片の間に、圧縮剛性の増加を特定した(p<0.005)。データは、平均±SEM(n=5)として提示する。
図18A図18(A)は、MMP−13に結合したプローブの図解による描写を示す。BHQ−3ブラックホールクエンチャー3およびCY5.5は、各々、695nmで吸光および発光する。矢印およびイタリックは、切断部位を示す。
図18B図18(B)は、MMP−13が有る場合/無い場合で、プローブ活性の濃度プロファイルを示す:左、96ウェルマイクロプレートの蛍光イメージングセクション;右、蛍光発光強度の回復(695nm)。
図19図19は、ペプチドグリカンで処理した/しなかった Sprague-Dawley ラットにおける、手術の4、6および8週間後の、MMP−13プローブにより示される炎症の程度を示す。
図20図20は、Sprague-Dawley ラットの膝関節のx線画像を示し、OA誘導の6週および8週間後に、傷害された膝(各々パネルAおよびD)、ペプチドグリカン処置の傷害された膝(各々パネルBおよびE)、および、骨関節症誘導手術の6週間後の正常な膝(パネルC)を示す。
図21図21は、OA誘導手術の6および8週間後の新しい軟骨の再成長を示す Sprague-Dawley ラットのマイクロCTを示す。OA誘導の6週および8週間後の傷害された膝を、各々パネルAおよびDに示す。ペプチドグリカン処置後の傷害された膝を、各々パネルBおよびEに示す。正常な膝をパネルCに示す。
図22図22は、コラーゲン足場へのmAGCの添加が貯蔵弾性率および圧縮剛性を高めることを示す。コラーゲン足場の周波数掃引(A)は、0.1−2.0Hzの範囲にわたる貯蔵弾性率の増加を示した。同様に、圧縮剛性(B)は、mAGCを添加して足場を調製したときに値の増加を示した。有意性を*と示す(p<0.0001)。データは、平均±SEM(n=5)で提示する。
図23図23は、IL−1βで刺激した/しなかった培地中での8日間の培養期間にわたる、累積的なコンドロイチン硫酸(CS)の損失を示す。CSの損失は、DMMBアッセイで測定した。足場の組成(A−H)を表3に記載する。mAGCの添加は、足場からのCSの損失に有意な影響を有した(p<0.001)。*は、足場AとCの間、および、足場EとGの間の統計学的有意性を示す(p<0.05)。バーは、平均±SEM(n=3)を示す。
図24図24は、IL−1βで刺激した/しなかった培地中での8日間の培養期間にわたる、累積的なコラーゲンの崩壊を示す。コラーゲンの崩壊は、Sircol アッセイで測定した。足場の組成(A−H)を表3に示す。アグリカン模倣物の添加は、足場からのコラーゲンの損失に有意な影響を有した(p<0.02)。*は、足場AとCの間、および、足場EとGの間の統計学的有意性を示す(p<0.05)。バーは、平均±SEM(n=3)を示す。
図25図25は、整列していない(A)および整列した(B)コラーゲン足場で培養されるウシ軟骨細胞により発現されるアグリカンおよびII型コラーゲンのリアルタイムPCR分析を示す。内在性GAPDHの発現で値を標準化した。mAGCの添加は、アグリカンおよびII型コラーゲンの発現を、各々統計学的に変化させた(pアグリカン<0.02およびpコラーゲン<0.001)。整列していない/整列した足場の間にも、アグリカンおよびII型コラーゲンの発現の統計学的差異があった(p<0.001)。同様に、アグリカンおよびII型コラーゲンの発現は、IL−1βで処理した/しなかった足場間で異なった(p<0.01)。足場の組成(A−H)を表3に示す。バーは、平均±SEM(n=4)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
例示的実施態様の詳細な説明
本明細書で使用するとき、「ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン」は、グリカンに結合した合成ペプチドであって、ペプチドがヒアルロン酸結合配列を含むものを意味する。
【0055】
本発明の様々な実施態様を以下の通り本明細書で説明する。本明細書に記載するある実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンが提供される。ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、グリカンに結合した合成ペプチドであって、ペプチドがヒアルロン酸結合配列を含むものを含む。
【0056】
他の実施態様では、式Pの化合物が記載され、式中、nは1ないし20であり;式中、xは1ないし20であり;式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして、式中、Gはグリカンである。
【0057】
また他の実施態様では、式(PL)Gの化合物が記載され、
式中、nは1ないし20であり;
式中、xは1ないし20であり;
式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
式中、Lはリンカーであり;そして、
式中、Gはグリカンである。
【0058】
他の実施態様では、式P(LGの化合物が記載され、
式中、nは1ないし20であり;
式中、xは1ないし20であり;
式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
式中、Lはリンカーであり;そして、式中、Gはグリカンである。
【0059】
また他の実施態様では、式Pの化合物が記載され、
式中、nはMWG/1000であり;
式中、MWGは、最も近い1kDaに端数処理したGの分子量であり;
式中、xは1ないし20であり;
式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして、
式中、Gはグリカンである。
【0060】
他の実施態様では、式(PL)Gの化合物が記載され、
式中、nはMWG/1000であり;
式中、MWGは、最も近い1kDaに端数処理したGの分子量であり;
式中、xは1ないし20であり;
式中、Pは、ヒアルロン酸結合配列を含む約5個ないし約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
式中、Lはリンカーであり;そして、
式中、Gはグリカンである。
【0061】
この開示のために、先行する段落に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンおよび化合物は、集合的に「ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン」または「合成ペプチドグリカン」と呼ばれる。
【0062】
上記のペプチド実施態様の各々において、合成ペプチドグリカンは、5−15個のペプチド分子(nは5−15である)、5−20個のペプチド分子(nは5−20である)、1−20個のペプチド分子(nは1−20である)、または1−25個のペプチド分子(nは1−25である)を含み得る。ある実施態様では、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24および25個のペプチド分子からなる群から選択される。
【0063】
本明細書に記載する他の例示的実施態様では、人工コラーゲンマトリックスが提供される。マトリックスは、重合したコラーゲン、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む。他の実施態様では、軟骨細胞または幹細胞のインビトロ培養用の組成物が提供される。組成物は、この開示に記載するヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンのいずれかを含む。
【0064】
本明細書に記載する他の実施態様では、人工コラーゲンマトリックスの孔のサイズを大きくする方法が提供される。この方法は、コラーゲン、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを合わせる段階、および、マトリックスの孔のサイズを大きくする段階を含む。
【0065】
また他の例示的実施態様では、患者の軟骨の摩耗または糜爛を低減する方法が提供される。この方法は、患者にヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを投与する段階を含み、合成ペプチドグリカンは軟骨の摩耗または糜爛を低減する。ある実施態様では、軟骨の糜爛または摩耗は、関節炎に起因し得る。ある実施態様では、軟骨の糜爛または摩耗は、加齢、肥満、外傷または傷害、解剖学的異常、遺伝学的疾患、代謝の不均衡、炎症などに起因し得る。
【0066】
また他の例示的実施態様では、患者の関節炎の処置方法が提供される。この方法は、患者にヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを投与する段階を含み、合成ペプチドグリカンは関節炎に関連する症状を低減する。
【0067】
他の例示的実施態様では、患者におけるヒアルロン酸の分解を低減または防止する方法が提供される。この方法は、患者にヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを投与することを含む。
【0068】
他の例示的実施態様では、コラーゲンの分解を低減または防止する方法が提供される。この方法は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを、コラーゲンの存在下でヒアルロン酸と接触させる段階、および、コラーゲンの分解を低減または防止する段階を含む。
【0069】
また他の例示的実施態様では、患者の組織欠損を矯正または修正する方法が提供される。この方法は、組織欠損にヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを投与することを含み、欠損が矯正または修正される。本明細書に記載の他の例示的実施態様では、皮膚注入剤が提供される。この注入剤は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む。ある実施態様では、注入剤は、さらにヒアルロン酸を含む。
【0070】
また他の実施態様では、生体材料の軟骨または骨置換組成物用の添加物が提供される。この添加物は、既存の生体材料の軟骨または骨置換材料に添加するためのヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む。本明細書に記載の他の実施態様では、生体材料または骨軟骨置換の製造方法が提供される。この方法は、合成ペプチドグリカンおよび既存の生体材料または骨軟骨置換材料を合わせる段階を含む。
【0071】
様々な実施態様において、合成ペプチドグリカンのペプチド成分は、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X8は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む。
【0072】
他の実施態様において、合成ペプチドグリカンのペプチド成分は、式B1−X1−B2−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−B3
(式中、X9は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、
式中、B3は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X9は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含み得るか、または、これであり得る。
【0073】
他の実施態様において、合成ペプチドは、式B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2−X9−B3
(式中、X8は、存在するか、または存在せず、
式中、B1は塩基性アミノ酸であり、
式中、B2は塩基性アミノ酸であり、
式中、B3は塩基性アミノ酸であり、そして、
式中、X1−X9は、非酸性アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含み得るか、または、これであり得る。
【0074】
本明細書で使用するとき、「塩基性アミノ酸」は、リシン、アルギニンまたはヒスチジンからなる群から選択される。本明細書で使用するとき、「非酸性アミノ酸」は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択される。
【0075】
本明細書に記載の様々な例示的実施態様において、合成ペプチドグリカンのペプチド成分は、
GAHWQFNALTVRGG;
GDRRRRRMWHRQ;
GKHLGGKHRRSR;
RGTHHAQKRRS;
RRHKSGHIQGSK;
SRMHGRVRGRHE;
RRRAGLTAGRPR;
RYGGHRTSRKWV;
RSARYGHRRGVG;
GLRGNRRVFARP;
SRGQRGRLGKTR;
DRRGRSSLPKLAGPVEFPDRKIKGRR;
RMRRKGRVKHWG;
RGGARGRHKTGR;
TGARQRGLQGGWGPRHLRGKDQPPGR;
RQRRRDLTRVEG;
STKDHNRGRRNVGPVSRSTLRDPIRR;
RRIGHQVGGRRN;
RLESRAAGQRRA;
GGPRRHLGRRGH;
VSKRGHRRTAHE;
RGTRSGSTR;
RRRKKIQGRSKR;
RKSYGKYQGR;
KNGRYSISR;
RRRCGQKKK;
KQKIKHVVKLK;
KLKSQLVKRK;
RYPISRPRKR;
KVGKSPPVR;
KTFGKMKPR;
RIKWSRVSK;および
KRTMRPTRR
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0076】
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システインおよび/または、ペプチドのN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。本明細書に記載の様々な実施態様において、合成ペプチドグリカンのペプチド成分は、前の段落に記載のいずれかのアミノ酸配列、または、これらのアミノ酸配列に80%、85%、90%、95%、98%または100%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンのペプチド成分として含まれ得るさらなるペプチドには、出典明示により本明細書の一部とする Amemiya et al., Biochem. Biophys. Acta, vol. 1724, pp. 94-99 (2005) に記載のペプチドが含まれる。これらのペプチドは、Arg−Argモチーフを有し、
RRASRSRGQVGL;
GRGTHHAQKRRS;
QPVRRLGTPVVG;
ARRAEGKTRMLQ;
PKVRGRRHQASG;
SDRHRRRREADG;
NQRVRRVKHPPG;
RERRERHAVARHGPGLERDARNLARR;
TVRPGGKRGGQVGPPAGVLHGRRARS;
NVRSRRGHRMNS;
DRRRGRTRNIGN;
KTAGHGRRWSRN;
AKRGEGRREWPR;
GGDRRKAHKLQA;
RRGGRKWGSFEG;および、
RQRRRDLTRVEG
からなる群から選択されるペプチドを含む。
【0078】
上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システインを有してもよい。上記のペプチドの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。本明細書に記載の様々な実施態様において、合成ペプチドグリカンのペプチド成分は、前の段落に記載のいずれかのアミノ酸配列、または、これらのアミノ酸配列に80%、85%、90%、95%、98%または100%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
他の実施態様では、出典明示により本明細書の一部とする Yang et al., EMBO Journal, vol. 13, pp. 286-296 (1994)、および、出典明示により本明細書の一部とする Goetinck et al., J. Cell. Biol., vol. 105, pp. 2403-2408 (1987) に記載のペプチドを、本明細書に記載のヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンにおいて使用でき、これには、RDGTRYVQKGEYR、HREARSGKYK、PDKKHKLYGVおよびWDKERSRYDVからなる群から選択されるペプチドが含まれる。これらの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのC末端に結合したグリシン−システインを有してもよい。これらの実施態様の各々において、ペプチドは、ペプチドのN末端に結合したグリシン−システイン−グリシン(GCG)を有してもよい。他の実施態様では、合成ペプチドグリカンのペプチド成分は、これらのアミノ酸配列のいずれかに、80%、85%、90%、95%、98%または100%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0080】
様々な実施態様において、本明細書に記載の合成ペプチドグリカンのペプチド成分は、1個またはそれ以上の保存的アミノ酸置換の包含により改変され得る。当業者に周知の通り、ペプチドの決定的ではない任意のアミノ酸を保存的置換により変更することは、置換アミノ酸の側鎖が置換前のアミノ酸の側鎖と同様の結合および接触を形成し得るので、そのペプチドの活性を有意に変更しない。非保存的置換は、ペプチドのヒアルロン酸結合活性に過剰に影響しない限り、可能である。
【0081】
当分野で周知の通り、アミノ酸の「保存的置換」またはペプチドの「保存的置換変異体」は、1)ペプチドの二次構造;2)アミノ酸の電荷または疎水性;および3)側鎖のかさ高さ、または、これらの特徴の1つまたはそれ以上を維持するアミノ酸置換を表す。例示的には、周知の用語法「親水性残基」は、セリンまたはスレオニンに関する。「疎水性残基」は、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンまたはアラニンなどを表す。「正荷電残基」は、リシン、アルギニン、オルニチンまたはヒスチジンに関する。「負荷電残基」は、アスパラギン酸またはグルタミン酸を表す。「かさ高い側鎖」を有する残基は、フェニルアラニン、トリプトファンまたはチロシンなどを表す。例示的な保存的アミノ酸置換のリストを、表1に示す。
【0082】
表1
【表1】
【0083】
ある実施態様では、本明細書に記載の分子に適用できる保存的アミノ酸置換は、B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2の式、B1−X1−B2−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−B3の式、B1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−B2−X9−B3の式またはArg−Argモチーフからなるモチーフを変更しない。
【0084】
本明細書に記載の様々な実施態様において、本明細書に記載の合成ペプチドグリカンのグリカン(例えばGAGと略されるグリコサミノグリカン、または多糖類)成分は、デキストラン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択され得る。ある実施態様では、グリカンは、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸からなる群から選択される。他の例示的実施態様では、グリカンはコンドロイチン硫酸である。
【0085】
本明細書に記載のある実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、コンドロイチン硫酸に結合した(GAHWQFNALTVRGG)10を含み、ペプチドグリカン分子の各ペプチドは、別々にコンドロイチン硫酸に連結している。本明細書に記載の他の実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、コンドロイチン硫酸に結合した(GAHWQFNALTVRGGGC)11を含み、ペプチドグリカン分子の各ペプチドは、別々にコンドロイチン硫酸に連結している。上記のペプチドの実施態様の各々では、ペプチドの数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24および25個のペプチド分子からなる群から選択され得る。
【0086】
本明細書に記載の様々な実施態様では、合成ペプチドグリカンは、アグリカナーゼに抵抗性である。アグリカナーゼは、アグリカンを切断すると知られている任意の酵素として当分野で特徴付けられている。
【0087】
ある例示的な態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、滅菌されていてよい。本明細書で使用するとき「滅菌」または「滅菌する」または「滅菌された」は、内毒素および感染性物質を含むがこれらに限定されない望まれない混入物を除去することにより、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを殺菌することを意味する。
【0088】
様々な例示的実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、プロピレンオキシドまたはエチレンオキシド処理、気体プラズマ滅菌、ガンマ線照射(例えば、1−4Mradのガンマ線照射または1−2.5Mradのガンマ線照射)、電子ビーム、および/または、過酢酸などの過酸による滅菌を含む常套の滅菌技法を使用して、殺菌および/または滅菌できる。ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの構造および生体栄養的(biotropic)特性に悪影響を与えない滅菌技法を使用できる。ある実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを、1つまたはそれ以上の滅菌過程に付すことができる。他の例示的実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを滅菌濾過に付す。ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、プラスチック包装またはホイル包装を含む任意の種類の容器に包装し、さらに滅菌し得る。ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、当業者に周知の標準的技法を使用して容易に達成し得る滅菌条件下で、例えば、凍結乾燥により、製造し得る。
【0089】
本明細書に記載の様々な実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを、ミネラル、アミノ酸、糖、ペプチド、タンパク質、ビタミン(アスコルビン酸など)またはラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリン、エラスチンまたはアグリカン、または増殖因子、例えば、上皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子ベータまたは線維芽細胞増殖因子、および、グルココルチコイド、例えば、デキサメサゾン、または、粘弾性を変更する物質、例えば、イオン性および非イオン性水溶性ポリマー;アクリル酸ポリマー;親水性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、およびポリビニルアルコール;セルロース由来ポリマーおよびセルロース由来ポリマー誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびエーテル化セルロース;ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸のコポリマー、または天然および合成の他の重合性物質と組み合わせることができる。
【0090】
本明細書に記載の様々な実施態様では、合成ペプチドグリカンのペプチド成分を、当業者に周知の固相ペプチド合成プロトコールに従って合成する。ある実施態様では、ペプチド前駆体を周知のFmocプロトコールに従って固体支持体上で合成し、トリフルオロ酢酸により支持体から切り離し、当業者に公知の方法に従ってクロマトグラフィーにより精製する。
【0091】
本明細書に記載の様々な実施態様では、合成ペプチドグリカンのペプチド成分を、当業者に周知のバイオテクノロジーの方法を利用して合成する。ある実施態様では、所望のペプチドのアミノ酸配列情報をコードするDNA配列を、当業者に公知の組み換えDNA技法により発現プラスミド(例えば、ペプチドの親和性精製用の親和性タグを組み込むプラスミド)に連結し、プラスミドを発現用の宿主生物に形質移入し、次いで、当業者に公知の方法に従って(例えば、親和性精製により)ペプチドを宿主生物または培養培地から単離する。組み換えDNA技術の方法は、出典明示により本明細書の一部とする Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (2001) に記載されており、当業者に周知である。
【0092】
本明細書に記載の様々な実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンのペプチド成分を、当業者に公知の方法を利用して、ペプチドの遊離アミノ基をグリカンのアルデヒド官能基と還元剤の存在下で反応させることによりグリカンに結合させ、ペプチドグリカン結合体(conjugate)を得る。ある実施態様では、グリカン(例えば、多糖類またはグリコサミノグリカン)のアルデヒド官能基は、当業者に公知の方法に従って、グリカンをメタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応させることにより形成する。
【0093】
ある実施態様では、合成ペプチドグリカンのペプチド成分を、グリカンのアルデヒド官能基を3−(2−ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)と反応させて中間体のグリカンを形成させ、さらに、中間体のグリカンを、遊離チオール基を含むペプチドと反応させることによりグリカンに結合させ、ペプチドグリカン結合体を得る。また他の実施態様では、合成ペプチドグリカンのペプチド成分の配列を、グリシン−システインセグメントを含むように改変し、グリカンまたはグリカン−リンカー結合体への結合点を提供し得る。本明細書に記載の任意の実施態様において、架橋剤は、N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド(BMPH)であり得る。
【0094】
特定の実施態様を先行する段落に記載したが、本明細書に記載のヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、ペプチドのグリカン(例えば、多糖類またはグリコサミノグリカン)への結合のために当分野で認識されている任意の方法を使用して作成できる。これには、直接的な、または、二価リンカーなどの連結する基を介する間接的な、共有、イオンまたは水素結合が含まれ得る。結合体は、典型的には、結合体の各成分上にある酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノまたはヒドラゾ基の間のアミド、エステルまたはイミノ結合の形成を介して、ペプチドのグリカンへの共有結合により形成される。これらの方法のすべては、当分野で公知であるか、または、本願の実施例のセクション、もしくは、出典明示により本明細書の一部とする Hermanson G.T., Bioconjugate Techniques, Academic Press, pp.169-186 (1996) にさらに記載されている。リンカーは、典型的には約1個ないし約30個の炭素原子を、より典型的には約2個ないし約20個の炭素原子を含む。典型的には、低分子量のリンカー(即ち、概算で約20ないし約500の分子量を有するもの)を用いる。
【0095】
加えて、結合体のリンカー部分の構造的改変が、本発明において企図されている。例えば、リンカーにアミノ酸が含まれ得、数々のアミノ酸置換を結合体のリンカー部分に行い得る。これには、天然産生のアミノ酸並びに常套の合成方法から入手できるものが含まれるが、これらに限定されない。他の態様では、ベータ、ガンマおよび長鎖アミノ酸を、1個またはそれ以上のアルファアミノ酸の代わりに使用し得る。他の態様では、リンカーは、含まれるアミノ酸の数を変更することにより、または、ベータ、ガンマまたは長鎖アミノ酸をより多くまたは少なく含めることにより、短くしても長くしてもよい。同様に、本明細書に記載のリンカーの他の化学的フラグメントの長さおよび形状を、改変し得る。
【0096】
本明細書に記載の様々な実施態様では、リンカーは、各々置換されていることもあるアルキレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、シクロヘテロアルキレン、アリーレンおよびヘテロアリーレンからなる群から各例で独立して選択される1個またはそれ以上の二価のフラグメントを含み得る。本明細書で使用するとき、ヘテロアルキレンは、直鎖または分枝鎖のアルキレン基中の1個またはそれ以上の炭素原子を、酸素、窒素、リンおよび硫黄からなる群から各例で独立して選択される原子で置き換えることから生じる基を表す。代替的実施態様では、リンカーは存在しない。
【0097】
本明細書に記載のある実施態様では、人工コラーゲンマトリックスが提供される。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載の人工コラーゲンマトリックスに適用できる。ある実施態様では、人工コラーゲンマトリックスは、重合したコラーゲン、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む。ある実施態様では、人工コラーゲンマトリックスは、重合したコラーゲンおよびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む。様々な例示的実施態様では、カルボジイミド、アルデヒド、lysl−オキシダーゼ、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジドおよびマレイミドなどの架橋剤、並びに、ゲニピンなどを含む様々な天然の架橋剤を、溶液中のコラーゲンの重合の前、間、または後に添加できる。
【0098】
様々な例示的実施態様では、人工コラーゲンマトリックスを製造するために本発明で使用するコラーゲンは、いかなる種類のコラーゲンでもよく、IないしXXVIII型コラーゲンを、単独で、または、任意の組合せで含み、例えば、I、II、IIIおよび/またはIV型コラーゲンを使用し得る。いくつかの実施態様では、人工コラーゲンマトリックスの製造に使用するコラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびこれらの組合せからなる群から選択される。ある実施態様では、人工コラーゲンマトリックスは、購入できるコラーゲン(例えば、Sigma, St. Louis, MO)を使用して形成される。代替的な実施態様では、コラーゲンは、腸、膀胱または胃組織などの粘膜下層を含有する組織材料から精製できる。さらなる実施態様では、コラーゲンは尾腱から精製できる。さらなる実施態様では、コラーゲンは皮膚から精製できる。様々な態様では、コラーゲンは、また、コラーゲンに結合する合成ペプチドグリカンに加えて、内在性または外来性に添加された非コラーゲンタンパク質、例えば、フィブロネクチンまたはシルクタンパク質、ポリタンパク質、および、多糖類なども含有できる。本明細書に記載の方法で製造された人工コラーゲンマトリックスは、移植または注入の部位で関連する組織の特徴をとり得る組織移植片(例えば、ゲルの形態で)の形態であり得る。ある実施態様では、人工コラーゲンマトリックスは、患者に移植できる組織移植片である。他の実施態様では、人工コラーゲンマトリックスは、注入により患者に投与できる。いずれの実施態様でも、マトリックスは、例えば、ゲルまたは粉末の形態であり得る。
【0099】
ある実施態様では、人工コラーゲンマトリックス中のコラーゲンは、マトリックスの約40ないし約90乾燥重量(wt)%、マトリックスの約40ないし約80乾燥重量%、マトリックスの約40ないし約70乾燥重量%、マトリックスの約40ないし約60乾燥重量%、マトリックスの約50ないし約90乾燥重量%、約50ないし約80乾燥重量%、マトリックスの約50ないし約75乾燥重量%、マトリックスの約50ないし約70乾燥重量%、または、マトリックスの約60ないし約75乾燥重量%を占める。他の実施態様では、人工コラーゲンマトリックス中のコラーゲンは、マトリックスの約90乾燥重量%、約85乾燥重量%、約80乾燥重量%、約75乾燥重量%、約70乾燥重量%、約65乾燥重量%、約60乾燥重量%、約50乾燥重量%、約45乾燥重量%、約40乾燥重量%または約30乾燥重量%を占める。
【0100】
ある実施態様では、ゲル形態のマトリックス中の最終コラーゲン濃度は、約0.5ないし約6mg/mL、約0.5ないし約5mg/mL、約0.5ないし約4mg/mL、約1ないし約6mg/mL、約1ないし約5mg/mLまたは約1ないし約4mg/mLである。ある実施態様では、マトリックスの最終コラーゲン濃度は、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mLまたは約5mg/mLである。
【0101】
ある実施態様では、人工コラーゲンマトリックス中のヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、マトリックスの約2ないし約60乾燥重量(wt)%、マトリックスの約2ないし約50乾燥重量%、マトリックスの約5ないし約50乾燥重量%、マトリックスの約10ないし約50乾燥重量%、マトリックスの約10ないし約20乾燥重量%、マトリックスの約10ないし約30乾燥重量%、マトリックスの約10ないし約25乾燥重量%、マトリックスの約15ないし約30乾燥重量%またはマトリックスの約15ないし約45乾燥重量%を占める。他の実施態様では、人工コラーゲンマトリックス中のヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、マトリックスの約2乾燥重量%、約5乾燥重量%、約10乾燥重量%、約15乾燥重量%、約20乾燥重量%、約25乾燥重量%、約30乾燥重量%、約35乾燥重量%、約40乾燥重量%、約45乾燥重量%または約50乾燥重量%を占める。
【0102】
他の実施態様では、人工コラーゲンマトリックスはヒアルロン酸を含み、人工コラーゲンマトリックス中のヒアルロン酸は、マトリックスの約2ないし約60乾燥重量(wt)%、マトリックスの約2ないし約50乾燥重量%、マトリックスの約5ないし約50乾燥重量%、マトリックスの約10ないし約50乾燥重量%、マトリックスの約10ないし約20乾燥重量%、マトリックスの約10ないし約30乾燥重量%、マトリックスの約10ないし約25乾燥重量%、マトリックスの約15ないし約30乾燥重量%、または、マトリックスの約15ないし約45乾燥重量%を占める。他の実施態様では、人工コラーゲンマトリックス中のヒアルロン酸は、マトリックスの約2乾燥重量%、約5乾燥重量%、約10乾燥重量%、約15乾燥重量%、約20乾燥重量%、約25乾燥重量%、約30乾燥重量%、約35乾燥重量%、約40乾燥重量%、約45乾燥重量%または約50乾燥重量%を占める。
【0103】
ある実施態様では、人工コラーゲンマトリックスはヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む。人工コラーゲンマトリックス中のヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、マトリックスの約10ないし約60乾燥重量(wt)%、マトリックスの約20ないし約60乾燥重量%、マトリックスの約30ないし約60乾燥重量%、マトリックスの約40ないし約60乾燥重量%、マトリックスの約10ないし約50乾燥重量%、マトリックスの約20ないし約50乾燥重量%、マトリックスの約25ないし約50乾燥重量%、マトリックスの約30ないし約50乾燥重量%、または、マトリックスの約25ないし約40乾燥重量%を占める。他の実施態様では、人工コラーゲンマトリックス中のヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、マトリックスの約10乾燥重量%、約15乾燥重量%、約20乾燥重量%、約25乾燥重量%、約30乾燥重量%、約35乾燥重量%、約40乾燥重量%、約50乾燥重量%、約55乾燥重量%、約60乾燥重量%または約70乾燥重量%を占める。
【0104】
ある例示的な態様では、人工コラーゲンマトリックスは、滅菌されていてよい。本明細書で使用するとき「滅菌」または「滅菌する」または「滅菌された」は、内毒素、核酸混入物および感染性物質を含むがこれらに限定されない望まれない混入物を除去することにより、マトリックスを殺菌することを意味する。
【0105】
様々な例示的実施態様では、人工コラーゲンマトリックスは、グルタルアルデヒドなめし(tanning)、酸性pHでのホルムアルデヒドなめし、プロピレンオキシドまたはエチレンオキシド処理、気体プラズマ滅菌、ガンマ線照射(例えば、1−4Mradのガンマ線照射または1−2.5Mradのガンマ線照射)、電子ビーム、および/または、過酢酸などの過酸による滅菌を含む常套の滅菌技法を使用して、殺菌および/または滅菌できる。マトリックスの構造および生体栄養的特性に悪影響を与えない滅菌技法を使用できる。ある実施態様では、人工コラーゲンマトリックスを、1つまたはそれ以上の滅菌過程に付すことができる。例示的な実施態様では、溶液中のコラーゲンを、重合に先立ち、滅菌または殺菌することもできる。人工コラーゲンマトリックスは、プラスチック包装またはホイル包装を含む任意の種類の容器に包装し、さらに滅菌し得る。
【0106】
これらの実施態様のいずれでも、人工コラーゲンマトリックスは、外来性の細胞集団をさらに含み得る。加えられる細胞集団は、1種またはそれ以上の細胞集団を含み得る。様々な実施態様において、細胞集団は、非角質化または角質化上皮性細胞の集団、または、内皮細胞、中胚葉由来の細胞、中皮細胞、滑膜細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、多能性前駆細胞(例えば、骨髄前駆細胞を含む幹細胞)、および、骨原性細胞からなる群から選択される細胞集団を含む。いくつかの実施態様では、細胞集団は、軟骨細胞および幹細胞からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、幹細胞は、骨芽細胞、骨原性細胞および間葉性幹細胞からなる群から選択される。様々な実施態様において、人工コラーゲンマトリックスは、1種またはそれ以上の細胞タイプと組み合わせて播種できる。
【0107】
様々な態様では、本発明の人工コラーゲンマトリックスまたは人工移植片構築物を、ミネラル、アミノ酸、糖、ペプチド、タンパク質、ビタミン(アスコルビン酸など)またはラミニンを含む栄養分、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリン、エラスチンまたはアグリカン、または増殖因子、例えば、上皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ、または線維芽細胞増殖因子、および、グルココルチコイド、例えば、デキサメサゾン、または、粘弾性を変更する物質、例えば、イオン性および非イオン性水溶性ポリマー;アクリル酸ポリマー;親水性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、およびポリビニルアルコール;セルロース由来ポリマーおよびセルロース由来ポリマー誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびエーテル化セルロース;ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸のコポリマー、または天然および合成の他の重合性物質と組み合わせることができる。他の例示的実施態様では、カルボジイミド、アルデヒド、lysl−オキシダーゼ、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジドおよびマレイミドなどの架橋剤、並びに、ゲニピンなどを含む天然の架橋剤を、細胞添加の前、同時、または後に添加できる。
【0108】
上記の通り、ある実施態様によると、コラーゲンの重合後またはコラーゲンの重合中に、人工コラーゲンマトリックスまたは人工移植片構築物に細胞を添加できる。その後、細胞を含む人工コラーゲンマトリックスを、人工移植片構築物として使用するために、宿主に注入または移植できる。他の実施態様では、患者への移植または注入に先立ち、細胞数を増やすか、または、所望のリモデリングを誘導するために、人工コラーゲンマトリックス上または内の細胞を予め定めた期間にわたりインビトロで培養できる。
【0109】
本明細書に記載のある実施態様では、軟骨細胞または幹細胞のインビトロ培養用(即ち、後に患者に移植または注入しない細胞のインビトロ培養用)の組成物が提供される。インビトロ培養用の組成物は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載のインビトロ培養用の組成物に適用できる。
【0110】
様々な態様では、本発明のインビトロ培養用の組成物を、ミネラル、アミノ酸、糖、ペプチド、タンパク質、ビタミン(アスコルビン酸など)またはラミニンを含む栄養分、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリン、エラスチンまたはアグリカン、または増殖因子、例えば、上皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ、または線維芽細胞増殖因子、および、グルココルチコイド、例えば、デキサメサゾンと組み合わせることができる。
【0111】
いくつかの実施態様では、インビトロ培養用の組成物は、骨芽細胞、骨原性細胞および間葉性幹細胞からなる群から選択される幹細胞を含む。様々な実施態様では、インビトロ培養用の組成物を、1種またはそれ以上の細胞タイプと組み合わせて播種できる。
【0112】
ある例示的な態様では、インビトロ培養用の組成物は、滅菌されていてよい。本明細書で使用するとき、「滅菌」または「滅菌する」または「滅菌された」は、内毒素、核酸混入物および感染性物質を含むがこれらに限定されない望まれない混入物を除去することにより、組成物を殺菌することを意味する。先行する段落で提供された滅菌手法、方法および実施態様を、本明細書に記載のインビトロ培養用の組成物にも適用できる。インビトロ培養の組成物は、患者への移植または注入用の細胞集団を拡大するために使用し得る。
【0113】
本明細書に記載のある実施態様では、生体材料の軟骨置換組成物用の添加物が提供される。添加物は、既存の生体材料の軟骨置換材料に添加するための、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載の添加物に適用できる。
【0114】
本明細書で使用するとき、「既存の生体材料の軟骨置換材料」という語句は、体内の損傷した、欠損した、または失われている軟骨の置換に利用できる生物学的に適合する組成物を意味する。様々なタイプの既存の生体材料の軟骨置換組成物が当分野で周知であり、企図されている。例えば、既存の生体材料の軟骨または骨の置換組成物には、DeNovo(登録商標) NT Natural Tissue Graft (Zimmer)、MaioRegen(商標)(JRI Limited)、または、Biomet により生産されている、凍結保存された骨関節組織のコレクションが含まれる。
【0115】
ある実施態様では、生体材料または骨軟骨置換物の製造方法が提供される。この方法は、合成ペプチドグリカンおよび既存の生体材料または骨軟骨置換材料を合わせる段階を含む。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載の方法に適用できる。
【0116】
ある実施態様では、患者の関節炎の処置方法が提供される。この方法は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを患者に投与する段階を含み、合成ペプチドグリカンが関節炎に関連する1つまたはそれ以上の症状を低減する。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載の方法に適用できる。
【0117】
様々な実施態様において、関節炎の処置方法で使用される合成ペプチドグリカンは、関節炎に関連する1つまたはそれ以上の症状を低減する。様々な症状が関節炎と関連すると当分野で知られており、疼痛、硬直、圧痛、炎症、膨潤、発赤、温感および易動度の低下が含まれるがこれらに限定されない。関節炎の症状は、関節、腱または身体の他の部分に存在し得る。本明細書で使用するとき、「低減する」は、関節炎の症状を予防するか、または、完全または部分的に軽減することを意味する。
【0118】
様々な実施態様において、関節炎は骨関節症またはリウマチ性関節炎である。骨関節症およびリウマチ性関節炎の病因および臨床症状は、当分野で周知である。この方法のある実施態様では、合成ペプチドグリカンは、投与後に潤滑剤として作用するか、または、軟骨の損失を防止する。他の実施態様では、合成ペプチドグリカンは、患者における骨の関節を防止する。例えば、合成ペプチドグリカンは、軟骨の減少または損傷を伴う、患者における骨が接触する関節を阻害する。
【0119】
ある実施態様では、患者におけるECM成分の分解を低減または防止する方法が提供される。例えば、患者の軟骨におけるECM成分の分解を低減または防止する方法が提供される。この方法は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを患者に投与することを含む。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載の方法に適用できる。ある実施態様では、合成ペプチドグリカンは、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばアグリカナーゼに抵抗性である。
【0120】
他の実施態様では、患者におけるヒアルロン酸の分解を低減または防止する方法が提供される。この方法は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを患者に投与することを含む。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載の方法に適用できる。
【0121】
他の実施態様では、コラーゲンの分解を低減または防止する方法が提供される。この方法は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを、コラーゲンの存在下でヒアルロン酸と接触させ、コラーゲンの分解を低減または防止することを含む。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載の方法に適用できる。
【0122】
他の実施態様では、コンドロイチン硫酸の分解を低減または防止する方法が提供される。この方法は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを、コラーゲンの存在下でヒアルロン酸と接触させ、コンドロイチン硫酸の分解を低減または防止することを含む。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載の方法に適用できる。
【0123】
ECM成分の分解、例えば、ヒアルロン酸、コラーゲンまたはコンドロイチン硫酸の分解を「低減する」は、各々、ヒアルロン酸、コラーゲンまたはコンドロイチン硫酸の分解を完全または部分的に低減することを意味する。
【0124】
ある実施態様では、患者におけるヒアルロン酸の分解を低減することは、ヒアルロン酸の分解速度を低減することを意味する。例えば、本願の実施例のセクションに記載の図8は、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの混合物におけるヒアルロン酸の分解速度が、合成ペプチドグリカンの添加により有意に低減されることを示す。
【0125】
ある実施態様では、コラーゲンの分解を低減することは、コラーゲンの分解速度を低減することを意味する。例えば、本願の実施例のセクションに記載の図10は、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの存在下でのコラーゲンの分解速度が、合成ペプチドグリカンの添加により有意に低減されることを示す。
【0126】
ある実施態様では、コンドロイチン硫酸の分解を低減することは、コンドロイチン硫酸の分解速度を低減することを意味する。例えば、本願の実施例のセクションに記載の図11は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの存在下で、コンドロイチン硫酸の分解速度が、合成ペプチドグリカンの添加により有意に低減されることを示す。
【0127】
本明細書に記載のある実施態様では、患者の組織欠損を矯正または修正する方法が提供される。この方法は、組織欠損にヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを投与することを含み、欠損が矯正または修正される。先に記載したヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの実施態様を、本明細書に記載の方法に適用できる。ある実施態様では、組織欠損は美容的欠損である。
【0128】
以下の実施態様は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを患者に投与する本明細書に記載の方法に適用できる。様々な実施態様において、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、注入または移植できる(例えば、軟骨修復組成物または装置に組み込まれる)。本明細書に記載のいくつかの実施態様では、注入は、関節内注入である。他の本明細書に記載の実施態様では、注入は、患者の関節包へのものである。他の実施態様では、注入は、皮膚注入剤の場合のように、皮下注入である。適する注入手段には、針(マイクロニードルを含む)の注射器または点滴用装置が含まれる。
【0129】
例示的な実施態様では、患者に投与するためのヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンと共に使用するための医薬製剤は:a)医薬的に活性な量のヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン;b)約pH4.5ないし約pH9の範囲のpHをもたらす医薬的に許容されるpH緩衝化剤;c)約0ないし約300ミリモル濃度の濃度範囲の、イオン強度を改変する物質;および、d)製剤の総重量の約0.25%ないし約10%の濃度範囲の、水溶性の粘性を改変する物質、または、任意の個別の成分a)、b)、c)またはd)、または、a)、b)、c)およびd)の任意の組合せを含む。
【0130】
本明細書に記載の様々な実施態様では、pH緩衝化剤は当業者に公知の物質であり、例えば、酢酸、ホウ酸、炭酸、クエン酸およびリン酸バッファー、並びに、塩酸、水酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、リン酸一カリウム、重炭酸塩、アンモニア、炭酸、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酢酸、リン酸水素二ナトリウム、ホウ砂、ホウ酸、水酸化ナトリウム、ジエチルバルビツール酸およびタンパク質、並びに、様々な生物学的バッファー、例えば、TAPS、Bicine、Tris、Tricine、HEPES、TES、MOPS、PIPES、カコジル酸またはMESが含まれる。
【0131】
本明細書に記載の様々な実施態様では、イオン強度を改変する物質には、当分野で知られている物質、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトール、グルコース、デキストロース、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび他の電解質が含まれる。
【0132】
有用な粘性を改変する物質には、イオン性および非イオン性水溶性ポリマー;架橋アクリル酸ポリマー、例えば「カルボマー(carbomer)」ファミリーのポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)の商標で購入し得るカルボキシポリアルキレン;親水性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーおよびポリビニルアルコール;セルロース由来ポリマーおよびセルロース由来ポリマー誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびエーテル化セルロース;ガム、例えば、トラガカントおよびキサンタンガム;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン、ヒアルロン酸およびこれらの塩、キトサン類、ジェラン(gellan)類またはこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。典型的には、製剤の所望のpHの達成を助長するために、非酸性の粘性増強剤、例えば、中性または塩基性の物質を用いる。
【0133】
本明細書に記載の様々な実施態様では、注入用の製剤は、適する媒体、例えば、無菌のパイロジェンを含まない水と共に使用するために、滅菌非水性溶液として、または、乾燥形態(例えば、凍結乾燥)として、適切に製剤化し得る。無菌条件下での注入用の製剤の製造は、例えば、凍結乾燥により、当業者に周知の標準的な医薬の技法を使用して、容易に達成し得る。ある実施態様では、ヒアルロン酸を含有する溶液の粘性は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの添加により高められる。
【0134】
本明細書に記載の様々な実施態様では、注入により投与するための製剤の製造において使用するヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの溶解度は、適当な製剤技法の使用により、例えば、可溶性を増強する組成物、例えば、マンニトール、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリキサマーおよび当業者に知られている他のものを導入することにより、高められ得る。
【0135】
本明細書に記載の様々な実施態様では、注入により投与するための製剤は、即時放出および/または改変された放出用に製剤化され得る。改変された放出の製剤には、遅延、持続、パルス化、制御、標的化およびプログラムされた放出の製剤が含まれる。従って、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、固体、半固体またはチキソトロピーの液体として、移植されたデポーとして投与するために製剤化し得、活性化合物の改変された放出を提供する。そのような製剤の例示的な例には、薬物で被覆されたステントおよびコポリマー(dl−乳酸、グリコール酸)酸(PGLA)ミクロスフェアが含まれる。他の実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンまたはヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを含む組成物は、適するならば、継続的に投与され得る。
【0136】
本明細書に記載の実施態様のいずれにおいても、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、単独で、または、適する医薬的担体または希釈剤と組み合わせて投与し得る。ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの製剤において使用される希釈剤または担体成分は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの所望の効果を減少させないように選択できる。ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン製剤は、任意の適する形態であり得る。適する投与形態の例には、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの水性液剤、例えば、等張塩水、5%グルコースまたは他の周知の医薬的に許容される液体担体、例えば、アルコール、グリコール、エステルおよびアミド中の液剤が含まれる。
【0137】
ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの適する投与量は、標準的な方法により、例えば、実験動物モデルまたは臨床試験で用量応答曲線を確立することにより、決定できる。本明細書に記載の様々な実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの投与量は、患者の状態、処置される疾患の状態、投与経路および組織分布、並びに、他の治療的処置の同時利用の可能性によって、有意に変動し得る。例示的には、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの適する投与量(単回のボーラスで、または時間をかけて、投与される)には、約1ng/kgないし約10mg/kg、約100ng/kgないし約1mg/kg、約1μg/kgないし約500μg/kg、または、約100μg/kgないし約400μg/kgが含まれる。これらの実施態様の各々で、用量/kgは、患者の質量または体重1kg当たりの用量を表す。他の例示的態様では、有効用量は、約0.01μgないし約1000mg/投与、約1μgないし約100mg/投与、または、約100μgないし約50mg/投与、または、約500μgないし約10mg/投与、または、約1mgないし10mg/投与、または、約1ないし約100mg/投与、または、約1mgないし5000mg/投与、または、約1mgないし3000mg/投与、または、約100mgないし3000mg/投与、または、約1000mgないし3000mg/投与の範囲にあり得る。ある実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの適する投与量には、約0.01uMないし約100uM、約0.05ないし約100uM、約0.1uMないし約100uM、約0.1uMないし約50uM、約0.1uMないし約20uM、約0.1uMないし約10uM、約0.5uMないし約10uM、約0.5uMないし約50uMおよび約0.5uMないし約100uMの範囲の濃度が含まれる。他の実施態様では、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの適する投与量には、約0.01uM、0.1uM、0.2uM、0.5uM、1uM、2uM、5uM、10uM、20uM、50uMおよび100uMの濃度が含まれる。
【0138】
ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、賦形剤中で製剤化できる。本明細書に記載のいずれの実施態様においても、賦形剤は、約0.4mg/mlないし約6mg/mlの範囲の濃度を有し得る。様々な実施態様において、賦形剤の濃度は、約0.5mg/mlないし約10mg/ml、約0.1mg/mlないし約6mg/ml、約0.5mg/mlないし約3mg/ml、約1mg/mlないし約3mg/ml、約0.01mg/mlないし約10mg/mlおよび約2mg/mlないし約4mg/mlの範囲にあり得る。
【0139】
ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを軟骨修復組成物または装置(例えば、移植用ゲル)の一部として移植する実施態様では、上記のいかなる適当な製剤も使用し得る。
【0140】
ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを投与するためのいかなる有効なレジメンも使用できる。例えば、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンは、単回投与として、または、複数回投与する毎日のレジメンとして投与できる。さらに、ずらしたレジメン、例えば、週に1日ないし5日を、毎日の処置の代わりに使用できる。
【0141】
本明細書に記載の様々な実施態様では、患者は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの複数回の注入で処置される。ある実施態様では、患者は、ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンを、複数回(例えば、約2回から約50回まで)、例えば、12−72時間の間隔または48−72時間の間隔で、注入される。ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンのさらなる注入を、最初の注入後、数日または数ヶ月の間隔で患者に行うことができる。
【0142】
本明細書に記載の実施態様のいずれでも、ペプチド部分、グリカン部分または両方が異なる2種またはそれ以上のヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの組合せを、単一のヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカンの代わりに使用できることが理解される。
【0143】
先行する実施態様において、化合物、組成物および方法の一定の態様は、選択的に列挙で、例えば、例示的には、GおよびPの1つまたはそれ以上についての選択で、示されていることも認識される。従って、本発明の様々な代替的実施態様には、それらの列挙の個々の構成員、並びに、それらの列挙の様々な部分が含まれると理解される。それらの組合せの各々は、列挙により本明細書に記載されていると理解される。
【0144】
以下の例示的実施例では、用語「アグリカン模倣物」および「模倣物」を、用語「ヒアルロン酸結合合成ペプチドグリカン」と同義に使用する。
【実施例】
【0145】
実施例1
ペプチド合成
すべてのペプチドは、Symphony ペプチド合成機 (Protein Technologies, Tucson, AZ) を使用し、FMOCプロトコールを Knorr レジンで利用して合成した。粗製のペプチドをTFAでレジンから離し、AKTAexplorer (GE Healthcare, Piscataway, NJ) での逆相クロマトグラフィーにより、Grace-Vydac 218TP C-18 逆相カラムおよび水/アセトニトリル0.1%TFAの勾配を利用して精製した。Dansyl で修飾されたペプチドは、レジンから解離する前に、dansyl-Gly (Sigma) とのさらなるカップリング段階を加えることにより製造した。ペプチド構造を質量分析により確認した。以下のペプチドを上記の通り製造した:GAHWQFNALTVRGGGC、KQKIKHVVKLKGCおよびKLKSQLVKRKGC。
【0146】
実施例2
コンドロイチン硫酸の官能化および合成ペプチドグリカンの形成
アグリカン模倣物(即ち、GAH)の創製のための反応スキームを、図1に見ることができる。コンドロイチン硫酸(CS)(Sigma, St. Louis, MO)の官能化は、過ヨウ素酸ナトリウム(Thermo Scientific, Waltham, MA)を使用してCSを酸化することにより達成された。反応期間および過ヨウ素酸ナトリウムの濃度を変えることにより、酸化反応により産生されるアルデヒド基の数を制御した。値を表2に示す。表2は、CS鎖1本当たり所望の数のアルデヒド基を得るのに必要な過ヨウ素酸ナトリウム濃度および反応期間を詳細に示す。図1に図解する連続的な化学反応により、CS鎖1本当たりの結合するBMPHの数は、産生されるアルデヒドの数および結合するヒアルロン酸(HA)結合ペプチドの数と等しいと想定される。反応期間および過ヨウ素酸ナトリウムの濃度に基づき、CS鎖1本当たりのペプチドの数(平均)を表2に示す。
【0147】
表2
【表2】
【0148】
CSの濃度は、すべての酸化反応において20mg/mLで一定に維持した。測定したCSおよび過ヨウ素酸ナトリウムの量を、0.1M酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)中で、特定された期間にわたり反応させ、光から保護した。反応の完了は、ポリアクリルアミドビーズを詰めた Bio-Scale Mini Bio-Gel カラム (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA) で、AKTA Purifier FPLC (GE Healthcare, Piscataway, NJ) を使用してゲル濾過クロマトグラフィーを実施することによって、過ヨウ素酸ナトリウムを除去することにより達成された。脱塩過程に使用したバッファーは、1xリン酸緩衝塩水(PBS、pH7.4、Invitrogen, Carlsbad, CA) であった。
【0149】
N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド、トリフルオロ酢酸塩(BMPH, Pierce, Rockford, IL)を、50M過剰で、脱塩および酸化されたCSと、1xPBS中で反応させた。BMPHのヒドラジド末端が反応して、新たに創製されたアルデヒドを介して官能化CSに共有結合し、シッフ塩基中間体を形成する。ナトリウムシアノボロハイドライド(5M、Pierce)を反応に添加し、シッフ塩基中間体イミンをより安定なアミンに還元した。過剰のBMPHを、脱イオン水中でのFPLC脱塩により溶液から除去した。AKTA Purifier FPLC の吸光検出能力のために、過剰のBMPHの量が測定された。小さいサイズおよび低分子量のBMPH(297.19g/mol)は、分離したかなり遅い時点でカラムから溶出された。多数の単結合および時折の二重結合の存在により、BMPHは、215nm波長(単結合に特徴的)および254nm波長(二重結合に特徴的)の両方で、強い吸光スペクトルをもたらした。従って、既知のBMPHの質量を215nmの吸光スペクトルの統合面積に相関させて、標準曲線を作成した(図2)。この標準曲線を用いて、過剰のBMPHの質量を決定した。過剰のBMPHの質量を元の反応質量から差し引くことで、反応で消費されたBMPHの質量を決定できる。消費された質量を使用して、酸化されたCSに結合したBMPHの数を算出した。集めたCS−BMPH生成物を凍結し、凍結乾燥し、−80℃で保存した。
【0150】
HA結合ペプチドの配列を、Mummert により同定した。同定された配列のわずかな改変は、この研究で使用した特異的なHA結合配列であるGAHWQFNALTVRGGGC(GAHと表記)をもたらした。このペプチドは、Genscript (Piscataway, NJ) により産生され、そこから購入された。チオエーテル結合形成によるBMPHのマレイミド基へのカップリングを可能にするために、システインアミノ酸を含めた。この反応は1:1の比で起こり、官能化CSに結合したBMPHの数は結合したGAHペプチドの数と等しいとの仮定を可能にする。カップリングしたBMPHの数/鎖に対して1モル濃度過剰でGAHペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO, Sigma)に溶解し、全量の4分の1ずつをCS−BMPH溶液に15分間隔で添加した。最後のGAHペプチドの添加後に、反応を2時間進行させた。この間に、過剰のGAHペプチドは微粒子を形成した。溶液を精製してGAHで官能化されたCSを得る前に、溶液をAcrodisc 0.8μm孔直径フィルター(Pall, Port Washington, NY)に通し、過剰のペプチド微粒子を除去した。次いで、溶液を脱イオン水と共に AKTA Purifier FPLC に通し、GAH−CS化合物を精製した。次いで、集めた化合物を−80℃で凍結し、凍結乾燥し、所望のアグリカン模倣物を得た。実験室の慣例により、アグリカン模倣物は(結合したペプチドの#)(ペプチド配列の最初の3文字)−(官能化されたGAGの略号)により命名された。即ちアグリカン模倣物の3GAH−CSは、コンドロイチン硫酸GAG主鎖に官能化した3個のGAH HA結合ペプチドを表す。
【0151】
実施例3
ヒアルロン酸への合成ペプチドグリカンの結合
固定化されたヒアルロン酸への合成ペプチドグリカンの結合
4mg/mLの濃度でヒアルロン酸(HA, Streptococcus equi, Sigmaより)を96ウェルプレート(Costar, blk/clr, Corning, Corning, New York)に終夜4℃で固定した。ビオチン標識GAHペプチドを、BMPHを利用して、官能化CSに1個のビオチン−GAH/CS鎖の濃度で結合させた。非標識のGAHペプチドを、CSの残りの未反応のアルデヒドに結合させた。標準的なビオチン−ストレプトアビジン検出方法を利用して、固定化されたHAへのアグリカン模倣物の結合の程度を測定した。HA表面のブロッキングを、1時間、1xPBS溶液中の1%ウシ血清アルブミン(BSA, Sera Care Life Sciences, Milford, MA)で行った。1xPBSで洗浄した後、ビオチンで標識されたアグリカン模倣物をウェル中で30分間インキュベートし、次いで、1xPBSで洗浄した。ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(R&D Systems, Minneapolis, MN)溶液を各ウェルに添加し、20分間反応させた。反応の完了および洗浄の後、色素原溶液を添加し(Substrate Reagent Pack, R&D Systems)、15分間発色させた。15分後に、硫酸(Sigma)を直接各ウェルに添加し、反応を停止させた。次いで、ウェルプレートを M5 SpetraMax Plate Reader (Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で、450および540nmの波長で読み取った。得られた2つの吸光度の読み取り値を差し引き、結合したビオチン標識化アグリカン模倣物による吸光度を決定した。
【0152】
GAHペプチド1個/アグリカン模倣物を、ビオチンで標識されたGAHペプチドおよび現在標識されたアグリカン模倣物で置き換え、固定化されたHAとインキュベートした。購入できるビオチン検出製品(ストレプトアビジンおよびHRPによる)は、固定化されたHAへの模倣物結合の程度を示した(図3参照)。1μMの濃度で出発して、アグリカン模倣物は、固定化されたHAの存在下で用量依存的増加を示し、模倣物がHAに結合していたことを証明した。しかしながら、模倣物の結合親和性の測定は、固定化されたHAの量が不確かであるため、行わなかった。
【0153】
レオメータで導かれる合成ペプチドグリカンのヒアルロン酸への結合
より生理学的に意味のある状況でアグリカン模倣物のHAへの結合能力を試験するために、HA溶液を創製した。アグリカン模倣物のHAに結合する能力は、HA架橋を示す溶液の貯蔵弾性率の模倣物による改善により推定した。アグリカン模倣物のHAに結合する能力を試験するために、1xPBS pH7.4中で複数の処理を行った:2.5wt%HA対照、CS:HAモル比25:1のHA+CS、25:1のHA+3GAH−CS、25:1のHA+7.2GAH−CS、25:1のHA+10.5GAH−CS。
【0154】
AR-G2 Rheometer (TA Instruments, New Castle, DE)を使用して、周波数(0.1−100Hz、2.512Pa)および応力(0.1−100Pa、1.0Hz)掃引を実施し、各溶液の貯蔵弾性率を測定した。
【0155】
レオロジーは、力の適用に応じた物質の流動を研究するものであり、粘弾性材料を測定するときにしばしば使用される。特に、レオメータは、適用された力に対する物質のフィードバックに基づき、貯蔵弾性率および損失弾性率を測定する。貯蔵弾性率は、物質により弾力的に吸収されるエネルギー量の尺度であり、損失弾性率は、熱により失われるエネルギー量を示す。高い貯蔵弾性率は、より堅く、弾力のある構造を有するゲル様の物質を示す;一方、低い貯蔵弾性率および高い損失弾性率は、適用された負荷を弾力的に保持しない粘性の物質を示す。高分子量のHA(約1.5MDa)は、HA鎖の絡み合いにより形成される偽性ゲルにより、適用された負荷の一部を弾力的に保持する、非常に粘性のある物質である。創製されたアグリカン模倣物は複数のHA結合ペプチドを含み、それらは、適切な模倣物のHAへの結合をとる一種のHA鎖架橋剤として作用できる。高分子量のHAを含む溶液中で、アグリカン模倣物は溶液の剛性を高め、より高い貯蔵弾性率をもたらし得るという仮説が設けられる。より高い貯蔵弾性率は、長いHA架橋を示すものであり、混合物中に存在するアグリカン模倣物とHA鎖の間に強い結合親和性をもたらす。複数のバージョンのアグリカン模倣物を試験し、官能化されたCS鎖当たりの結合したGAHペプチドの数(平均で3、7.2または10.5)で区別した。
【0156】
図4に示す実験結果は、CSの付加はHA溶液の貯蔵弾性率を有意に(α=0.05)下げることを示した。CSに伴う高密度の負電荷の付加は、HA鎖の拡散を助け、HAの絡み合いの程度を和らげ、適用されたエネルギーを貯蔵する偽性ゲルを除去する。この仮説に合致して、CS当たりのGAHペプチドの数が3から10.5に増加するにつれて、混合物の貯蔵弾性率も上昇した。この上昇は、アグリカン模倣物当たり、より多数のGAHペプチドを有することの、2つの有益な性質に起因し得る。第1に、CS1個につきより多くのGAHペプチドが結合し、模倣物の結合力がより高いほど、より強い模倣物のHA分子への結合をもたらす。第2に、CS1個につきより多くのGAHペプチドが結合するほど、模倣物がHA分子間の架橋剤として作用する見込みが高まる。両方の効果が、よりゲル様の混合物に貢献し、より高い貯蔵弾性率の測定をもたらす。より弱い模倣物とHAとの間の結合は、偽性ゲルを回復せず、レオメータから適用されるエネルギーを貯蔵できないであろう。貯蔵弾性率の上昇は、図3に示す通り、固定化されたHAへの模倣物の強い結合を裏付ける。特に、CS鎖当たり10.5個のGAHペプチドで、貯蔵弾性率はHA+CS対照より有意に(α=0.05)高く、HA対照に近い平均貯蔵弾性率に達した。
【0157】
実施例4
合成ペプチドグリカンの圧縮の研究
コラーゲンゲルの形成と濁度
天然の軟骨細胞外マトリックスを模倣するために、コラーゲンを利用して、HAおよびアグリカン模倣物の凝集物を天然の足場内に封入した。II型コラーゲン(CII)を2つの異なる商業的供給源(Affymetrix, Santa Clara, CA および Sigma)から得た。天然の成分の分析に従って、軟骨ECM成分の混合物をTESバッファー(60mM TES、20mM NaHPO、0.56M NaCl、Sigma の化学物質)pH7.6中で調製した。ここで、CIIは70乾燥重量%を占め、HAおよびアグリカン模倣物/CS対照は、混合物の残りの30乾燥重量%を形成した。ゲル中のCIIの最終濃度は、2mg/mlであった。サンプルは、CII対照、CII+HA+CS対照およびCII+HA+アグリカン模倣物(10.5GAH−CS)からなった。成熟前の原線維形成およびゲル形成を防止するために、溶液を氷中で、酸性pHで維持した。成分の溶液混合物を384ウェルプレート(Greinier blk/clr, Monroe, NC)に入れ、37℃および生理学的pHに置き、原線維形成を開始させ、M5 SpectraMax で313nmでモニターし、ゲル形成を測定した。CIIは、処理を変えて含めても、ゲルを形成できなかった(補足情報参照)。従って、I型コラーゲン(CI、High Concentration Rat Tail Collagen Type 1, BD Biosciences, Bedford, MA)をゲル形成に利用した。成分の質量をCI最終濃度4mg/mLに移動したこと以外は、同じ処理および手法をCIで使用した。CIをすべての以下の実験に使用した。
【0158】
CIでの濁度測定を実施し、軟骨複製物の形成を測定した。結果を図5に示す。立証される通り、HA+10.5GAH−CSの添加は、コラーゲン線維の原線維形成に影響を与えなかった。すべての処理は類似の曲線に従い、類似の吸光度ピークにほぼ同時に到達した。HA+10.5GAH−CS処理は、成熟前のCI線維形成のためではなく、アグリカン模倣物が1xPBS溶液中で自己凝集体を形成する傾向のために、高い初期吸光度を有した。10.5GAH−CSの凝集は、最初のHAレオメータ試験中に認識されたが、凝集はアグリカン模倣物がHAに結合する能力を阻害しなかった。
【0159】
コラーゲンゲルの特性試験
20ミリメートルのパラレルプレートジオメトリーを使用する AR-G2 Rheometer を使用して(TA Instruments)、コラーゲンをベースとするゲルの圧縮試験および周波数掃引を実施した。375μLのゲル混合物を氷上で調製し、レオメータベースプレートにピペットで移した。このジオメトリーを1mmの間隙距離まで下げ、溶液を37℃に加熱した。湿気のトラップを利用してゲルの脱水を防止しながら、混合物を2時間にわたりゲル化させた。この2時間の値は、濁度データから示されたゲル化にかかる時間のデータにより決定した。この2時間の期間の後、試験に応じてゲルを圧縮するか、または振動させた。圧縮試験は、1%(10μm)/秒の工学ひずみ速度で行った。ジオメトリーヘッドで間隙距離および垂直抗力を測定した。周波数掃引は、0.1から1Hzへの対数ベースで10の周波数の増加中に、創製されたゲルの貯蔵弾性率を測定した。
【0160】
垂直抗力および変位を同時に測定し、各処理について工学的応力およびひずみを算出した。図6に示す通り、アグリカン模倣物の包含は、ゲル複合体の圧縮強度を有意に(α=0.05)高めた。コラーゲン+HA+AGG模倣物のピークの工学的応力は、9%の工学ひずみで7.5kPaに達し、コラーゲン+HA+CS対照は、4%で4.8kPaのピークに達し、コラーゲン対照は15%のひずみで4.2kPaのピークに達した。
【0161】
2つの要素がCI+HA+10.5ゲルの圧縮強度の増加に貢献した。第1は、模倣物の水を引きつける能力であり、第2は、アグリカン模倣物のHA架橋能力である。天然の軟骨では、HAおよびCSにより提供される支配的な封入された負電荷が水を引きつけ、その軟骨からの拡散を妨げる。圧縮力を軟骨に適用すると、この水は滑液包に拡散できない。この圧縮できない水を保持していることが、この構造の圧縮強度を高める。試験したゲル複合体でも同様に、CSに伴う負電荷がゲルに含まれることは、同じ引力を提供する。図6に見られる通り、CSおよび10.5GAH−CSの両方の処理が、圧縮強度の増加を伴う。CS処理は、CI複合体(HAに結合していない)内に固定されず、従って、小さい圧縮変形の後に、CSおよびその引きつけられた水は複合体から周りの液体に拡散する。複合体からのCSおよび水の拡散は、複合体の圧縮強度を低下させ、結果的にゲルの圧縮プロファイルをコラーゲン足場の対照と似たものにする。対照的に、10.5GAH−CSは、絡み合ったHAに結合している。従って、模倣物のHAへの結合を克服し、CSおよび引きつけられた水を複合体から拡散させるには、大幅に高い圧縮応力が必要とされる。
【0162】
第2に、アグリカン模倣物がHA架橋剤として作用する能力は、より高いHAおよび模倣物の封入の程度をもたらす。効果的に、HA架橋の性質は、コラーゲン複合体内に、天然のアグリカン/HA凝集体と同様の大きい凝集体を創製する。アグリカン模倣物と天然アグリカンの主な違いは、分子の大きさである。アグリカンのタンパク質主鎖は単独で約220kDaであるが、アグリカン模倣物は、全体で約30kDaでしかない。従って、100個以上のアグリカン分子がHAに結合した天然の凝集複合体は、アグリカン模倣物がもたらし得るものよりも大幅に大きい凝集体をもたらす。しかしながら、HA鎖間の架橋剤として作用することにより、アグリカン模倣物は、その独自の形態の凝集体を産生でき、それはまた、天然の凝集体の主な特徴、即ち、かさばる負荷電の構造も描く。アグリカン模倣物のHA架橋剤としての役割を、上記のCIゲルのレオロジー試験により、剪断負荷を適用することにより、さらに調べた。これらの実験の結果を、図7に見ることができる。
【0163】
10.5GAH−CSを含めることは、形成されるゲルの貯蔵弾性率を有意に(α=0.05)高めた。模倣物のHAへの結合により創製されるネットワークは、CIマトリックスの既存の剛性を補い、剪断負荷により適用されたエネルギーの弾性吸収を増加させた。この研究は、10.5GAH−CSの架橋能力および代替的凝集形態の創製を立証したので、重要であった。
【0164】
実施例5
ヒアルロン酸分解の合成ペプチドグリカン保護
AR−G2を使用して、HA溶液の動粘性の値を測定した。高分子量HA溶液は、長い鎖の長さに起因する大規模な鎖の絡み合いのために、高い粘性を有する。ヒアルロニダーゼ(ヒツジ精巣由来のII型、Sigma)はHA鎖を切断し、絡み合いの少ない短い鎖を創製する。短いHA鎖は、測定可能な低い粘性を有する。HA溶液を100ユニット/mLのヒアルロニダーゼとインキュベートした。一定の角周波数および振動応力で時間掃引を使用して、開始時並びに2および4時間の時点で動粘性を測定した。サンプル(0.5wt%のHA)は、HA、HA+CSおよびHA+10.5GAH−CSからなった。処理の値を、75:1の処理対HAのモル比で加えた。最初の粘性を、測定された粘性から最初の粘性を引いた差と分けることにより、分解の割合を各測定について算出した。
【0165】
Pratta et al. および Little et al. の仕事は、軟骨成分の分解の防止におけるアグリカンの重要性を示した。骨関節症における軟骨マトリックスの解体は、アグリカンプロテオグリカン類の切断で始まる。プロテオグリカンのGAGに富む領域の除去は、残りの成分、即ちCIIおよびHAを、分解酵素に露出させる。分解の防止におけるアグリカンの重要性の知識を得て、HA分解の防止におけるアグリカン模倣物の能力を測定する研究を行った。
【0166】
HA溶液の粘性は、HA鎖の大きさに依存する。絡み合いのために、より大きいHA鎖はより高い粘性をもたらす。ヒアルロニダーゼにさらされたとき、HA鎖は小さい単位に切断される。従って、HAの大きさおよびHAの絡み合いの量は減少する。この減少は、測定される粘性に同様の減少を促す。ヒアルロニダーゼの存在下でのHA溶液の粘性の変化の割合は、HAが受けた分解の量に重要な情報を与える。図8は、HA対照、対、関連する処理の分解の割合を示す。理解できるように、AGG模倣物のGAHは、有意にHAの分解速度を低下させ、それがECM成分の保護において、天然AGGと同様に振る舞うことを示す。
【0167】
ヒアルロニダーゼを用いない各処理(TESバッファーがヒアルロニダーゼの体積を置き換えた)の粘度を最初に測定し、分解割合を算出するためのベースラインとして供した。0時間の時点は、ヒアルロニダーゼの添加、溶液の混合、レオメータへのピペットによる移動、開始時の機械の平衡化操作を含んだ。従って、0時間の時点は、ヒアルロニダーゼ添加の約2分後であった。高濃度のヒアルロニダーゼ(25ユニット/mL)を利用して、起こり得る最悪のシナリオを再現した。加えて、HA分子を、コラーゲンネットワークに密に織り込むよりも、溶液中に分散させた。図8から理解できるように、HA対照およびHA+CS処理は、0時間の時点でほぼ完全なHA溶液の分解をもたらした。対照的に、10.5GAH−CSの添加は、HA分解の量を有意に(α=0.05)減少させた。実際に、10.5GAH−CSの存在は、粘性をベースライン値より高く増加させた。ヒアルロニダーゼの添加はいくらかの過剰のHAを切断すると考えられる。これは、10.5GAH−CSがより良好に残りの無傷の鎖を架橋し、より高い粘性をもたらすより濃厚なゲルを創製することを可能にする。
【0168】
2時間の時点で、HA対照とHA+CSは両方とも90%を超える分解割合で完全に分解されたが、10.5GAH−CSを含むHA溶液は有意に(α=0.05)低い分解割合であった。最後に、4時間の時点で、すべての処理は、すべて90%を超える分解割合で分解された。3つの時点の中で、10.5GAH−CSはHA分解を完全に防止できなかったが、HA対照およびHA+CSの分解と比較すると、分解速度を大幅に低下させた。この速度の低下は、10.5GAH−CSがHA鎖の分解を防止することを立証する。この防止は、HA鎖上のヒアルロニダーゼ切断点の競合阻害により達成されると考えられる。模倣物のHA鎖への非共有結合は、HA鎖の穏やかな分解速度と共に、この考えを裏付けると思われる。加えて、10.5GAH−CS溶液の分解速度は、依然として人為的に高いと考えられる。HA溶液中での模倣物のインキュベーションの際に、HA+10.5GAH−CS凝集物が形成された。しかしながら、これらの凝集物は、溶液の体積全体に均一に拡散しなかった。従って、他のサンプルと同様に、測定を行う前に溶液を混合した。溶液の混合は凝集物を崩壊させ、10.5GAH−CSを追い出し、ヒアルロニダーゼ切断点を露出させる。完全な分解が起こったと推定される4時間の時点の後でさえ、実質的なHA+10.5GAH−CSの凝集は依然として起こった。軟骨のECMのような緻密なマトリックス中では、10.5GAH−CSは有意に分解速度を低減させるのみならず、HAの分解を抑制することが可能である。
【0169】
実施例6
凍結走査型電子顕微鏡法(SEM)
ECMをベースとする構築物を、濁度測定について記載した通りに、SEMプレート上に37℃で終夜形成させた。SEMプレートをホルダーに固定し、半解けの液体窒素に埋めた。サンプルを Gatan Alto 2500 プレ−チャンバーに移す際に、サンプルに減圧をかけた。−170℃に冷却したチャンバー内で、冷却したメスを使用して、サンプル上に自由な破壊された表面を創製した。サンプルを−85℃で15分間昇華させ、続いて白金で120秒間スパッター被覆した。スパッター被覆の後、サンプルを顕微鏡のステージに移し、−130℃で画像を得た。
【0170】
図9に示す通り、代表的な画像を10,000xの倍率で得た。パネルAは、CI対照を示し、主要な原線維間の大規模な架橋および比較的小さいマトリックスの孔サイズを特徴とする。パネルBはCI+HA+CSを示し、大規模な架橋を含むが、大きいHA鎖の存在により、孔サイズはより大きい。パネルCはCI+HA+10.5GAH−CSを示し、非常に大きい孔サイズに加えて、顕著に小さい架橋の程度を例示する。AGG模倣物はHAに結合でき、CIの架橋を妨げる、比較的大きい厄介な複合体を創製する。
【0171】
代表的な画像で認識できるように、HA+CSの添加は、コラーゲン原線維の直径の多様性に効果がなかったが、HA+CSサンプルはより大きい代表的な空隙空間を有した。対照の群との比較では、HAを伴うAGG模倣物の添加は、限定された数の小さい原線維の直径のために、コラーゲン原線維の直径の小さい変動をもたらし、全体的なサンプルの空隙空間の増加をもたらす。HA分子へのAGG模倣物の結合は、コラーゲン足場内に捕らえられる凝集複合体を創製し、立体障害により、より大きい原線維間でのより小さい原線維の形成を排除した。
【0172】
実施例7
コラーゲンの保護
コラーゲン単独、コラーゲン+HA+CSまたはコラーゲン+HA+10.5GAH−CSを含有するECMをベースとする構築物を、以前に記載された通りに、8個のウェルのあるチャンバースライド中で創製した。最終サンプル体積は200μLであり、0.8mgのI型コラーゲンからなる。マトリックスメタロプロテアーゼ−I(MMP-I, R&D Systems, Minneapolis, MN)を、0.133mg/mLの濃度で、製造業者の指示書に詳述されるプロトコールに従って活性化した。簡単に述べると、製造業者のバッファー(50mM Tris、10mM CaCl、150mM NaCl、0.05%Brij−35、pH7.5)に既に溶解したMMP−1を、等体積のDMSO中の25mM APMA(Sigma)と37℃で2時間合わせ、酵素を活性化した。活性化の際に、MMP−1溶液を水で2倍に希釈し、100μLの上清としてサンプルに添加した。サンプルを37℃で穏やかに振盪しながらインキュベートした。最初の酵素溶液の添加の25時間後に、上清を除去し、新鮮な酵素のバッチで置き換えた。全部で50時間の酵素とのインキュベーションの後、残っているゲルをチャンバースライドから除去し、脱イオン水で洗浄して酵素溶液または分解産物を除去し、12M HCl中に再溶解した。サンプルを水中で希釈し、6M HClの最終濃度に到達させ、終夜110℃で加水分解した。加水分解に続き、Reddy, et al. (Clin Biochem, 1996, 29: 225-9) により開発されたプロトコールに従って、ヒドロキシプロリン(hyp)の量を分析した。簡単に述べると、加水分解したサンプルをクロラミンT溶液(0.56M)と25分間室温でインキュベートし、その後、エールリッヒ試薬を添加し、続いてクロロフォア(chlorophore)を20分間65℃で発色させた。クロロフォアの発色後、サンプルを分光光度計で、550nmの波長で読み取った。吸光度の読み取り値を、既知濃度のコラーゲンから得られたものと比較し、各サンプル中に残っているコラーゲンの量を測定した。
【0173】
0.8mgのCIを用いて各々の複製サンプルを構築し、分解後、Reddy et al. により開発されたプロトコールにより、残っているCI量を測定し、それをCI標準によりCIの量に変換した。残っているCIを最初のCIから引き、最初のCIにより割り、100を掛けることにより、分解割合を決定した。3種の処理の分解割合を図10に示す。すべての処理は、相互に有意に異なった(p<0.05)。特に、AGG模倣物サンプルの分解割合(CI+HA+10.5GAH−CS=41.0%)は、他の2種の処理(CI=64.5%およびCI+HA+CS=74.7%)に比べて有意に低かった(p<0.05)。AGG模倣物の存在は、有意にCI分解を低減した。AGG模倣物の存在は、分解酵素の切断部位への妨害物として作用できる。コラーゲン足場内に密に捕らわれたHAを含む大きい凝集体を創製することにより、AGG模倣物は、コラーゲンに近い空間を占めることができ、分解位置への酵素の接近を防止する。
【0174】
実施例8
軟骨マトリックスを介するペプチドグリカンの拡散
3ヶ月齢のウシの膝関節の荷重負荷領域から軟骨外植片を得た。回収した軟骨外植片から天然アグリカンを除去し、主にII型コラーゲンおよび残りのGAGからなるマトリックスを残した。これは、外植片を、0.5%(w/v)トリプシンで、HBSS中、3時間、37℃で処理することにより達成された(図13)。トリプシン処理の後、外植片をHBSS中で3回洗浄し、20%FBSとインキュベートして残りのトリプシン活性を不活性化した。ペプチドグリカンを蒸留水に10μMの濃度で溶解し、溶液10μLを10分毎に1時間、室温で表面に置くことにより、軟骨外植片の関節表面を介して拡散させた(図14)。正常な軟骨およびアグリカン枯渇軟骨を、各々正および負の対照として、1XPBSで処理した。拡散後、外植片を1XPBSで3回洗浄し、さらに試験するまで−20℃で保存した。組織の正中矢状切開をストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ染色で染色することにより、ペプチドグリカンの拡散を確認した。ストレプトアビジン染色はビオチン標識分子に結合し、茶色を呈する(図15および16)。
【0175】
実施例9
バルクの圧縮試験
0.01−50Nの範囲の垂直抗力を検出できるフォーストランスデューサーを備えたAR G2レオメータ(TA Instruments)で、変位制御された非拘束圧縮を実施した。疎水性印刷スライドガラス(Tekdon)の底に外植片を接着し、1XPBS浴で覆った。直径20mmのステンレス鋼のパラレルプレートジオメトリーのヘッドを、最初の接触がなされるまで下げた。デジタルのマイクロメータ(Duratool)を使用して、外植片の高さを測定した。公称ひずみ0−30%(5%間隔)からの圧縮負荷を、5秒間の勾配期間(即ち、1.0%/秒のひずみ速度)および30秒間の保持時間を含む段階的な負荷で外植片に適用した。各保持セクション中にコンピュータで算出した平衡応力値の傾きを、各ひずみ値に対して、線形フィットモデルに基づいて使用することにより、圧縮剛性の値を得た。バルクの圧縮について試験した足場には:1)正常な軟骨、2)アグリカン枯渇軟骨(AD)、および3)AD+mAGCが含まれた(図17)。HAに結合するペプチドグリカン(mAGC)の添加は、II型コラーゲンに結合するペプチドグリカン(mAG(II)C)に匹敵するほど高く、軟骨外植片の硬度を有意に回復させた。
【0176】
実施例10
動物モデル
Sprague-Dawley ラット(250〜300g)を外科手術に使用した。膝蓋腱、前および後十字靱帯、並びに、内側、外側側副靱帯を横切した。内側および外側半月を、全体的に半月板切除した。吸収性の縫合糸で膝の関節包を修復し、4−0モノフィラメントナイロンで皮膚を閉じた。4週で開始し、10μlの1μm mAGCを毎週投与した。
【0177】
外科手術の4、6および8週間後にペプチドグリカンで処置した/しなかった Sprague-Dawley ラットにおいて、炎症の程度を、MMP−13のプローブ(図18)により示した(図19)。Sprague-Dawley ラットの膝関節のX線画像は、骨関節症誘導手術の6週間後に、OA誘導の6週および8週間後の傷害された膝(図20、各々パネルAおよびD)、ペプチドグリカン処置を伴う傷害された膝(図20、各々パネルBおよびE)、および、正常な膝(図20、パネルC)を示した。Sprague-Dawley ラットのマイクロCTは、OA誘導手術の6および8週間後に、新しい軟骨の再成長を示した。OA誘導の6および8週間後の傷害された膝(図21、各々パネルAおよびD)、ペプチドグリカン処置後の傷害された膝(図21、各々パネルBおよびE)、並びに、正常な膝(図21、パネルC)を示す。
【0178】
実施例11
試薬
ペプチドGAHWQFNALTVRGGGC(GAH)を、Genscript (Piscataway, NJ) から購入した。N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド、トリフルオロ酢酸塩(BMPH)を、Pierce (Rockford, IL) から購入した。ラット尾のI型コラーゲンを、BD Biosciences (Bedford, MA) から購入した。ヒト組み換えインターロイキン−1βを、Peprotech (Rocky Hill, NJ) から購入した。すべての他の必需品を、特記しない限り、VWR (West Chester, PA) または Sigma-Aldrich (St. Louis, MO) から購入した。
【0179】
実施例12
コラーゲン足場の合成
コラーゲン足場を、TESバッファー(60mM TES、20mM NaPO、0.56M NaCl)中、pH7.6で調製した。機械的試験およびインビトロ炎症性モデル研究のための足場の組成は、各々のセクションで説明されている。37℃で原線維形成が開始されるまで、すべての溶液を氷上に維持した。コラーゲン溶液を9.4テスラの磁石(Chemagnetics CMX400)のアイソセンタに37℃で1時間置くことにより、整列したコラーゲン足場を創製した。同様に、しかし磁気暴露なしで、整列していないゲルを調製した。コラーゲン溶液を含有するスライドを磁場と平行に置き、コラーゲン線維をスライドの底に対して垂直の方向へ向けた。次いで、蒸発を防ぐ湿度制御されたチャンバー中で、37℃で24時間ゲルを維持した。
【0180】
実施例13
レオロジーの機械的試験
応力制御型AR G2レオメータ (TA Instruments) で、直径20mmのステンレス鋼のパラレルプレートジオメトリーヘッドを使用して、剪断および圧縮の試験を実施した。コラーゲン足場を、直径20mmの疎水性印刷スライドガラス (Tekdon) 上に調製した。剪断試験には、隙間高さ950μmで接触が為されるまで、ジオメトリーヘッドを下げた。予備的な周波数および応力掃引を実施し、線形かつ応力に依存しない貯蔵弾性率の範囲を決定した。次いで、0.2Paの振動応力で、0.1ないし2Hzにわたる周波数の範囲で、すべてのゲルに周波数掃引を実施した。圧縮試験には、隙間高さ1000μmで足場との接触が為されるまで、ジオメトリーヘッドを下げた。公称ひずみ0−30%(5%間隔)からの圧縮負荷を、5秒間の勾配期間(即ち、1.0%/秒のひずみ速度)および30秒間の保持時間を含む段階的な負荷でコラーゲン足場に適用した。各保持セクション中にコンピュータで算出した平衡応力値の傾きを、各ひずみ値に対して、線形フィットモデルに基づいて使用することにより、圧縮剛性の値を得た。機械的試験用のコラーゲン足場組成物は、1)整列していないコラーゲン、2)整列したコラーゲン、3)整列していないコラーゲン+mAGC、および4)整列したコラーゲン+mAGCであった。
【0181】
バルクの機械的分析:アグリカン模倣物のmAGCは、線維の整列に関係なく、足場のバルクの機械的特性を高めた(図22)。剪断試験では、0.5Hzでの貯蔵弾性率は、整列していない/整列したコラーゲンゲルについて、各々104.1±3.6Paおよび49.9±5.4Paであった。コラーゲン足場へのmAGCの添加は、整列していない/整列したゲルの貯蔵弾性率に、113.9±4.6Paおよび76.6±3.6Paへの有意な増加を示した(p<0.001)。整列していないゲルは、整列したゲルよりも高い貯蔵弾性率を示した(p<0.0001)。圧縮試験では、整列した足場の圧縮剛性(2478±250Pa)は、整列していない足場(3564±315Pa)よりも低かった(p<0.001)。これらの足場システムへのmAGCの添加は、整列した/整列していない足場の圧縮剛性を、各々4626±385Paおよび5747±306Paに高めた(p<0.0001)。
【0182】
実施例14
インビトロ炎症モデル
軟骨細胞を播いたコラーゲン足場を、IL−1βで刺激し、分解産物について評価した。
軟骨細胞の単離:初代軟骨細胞を、屠殺場から屠殺後24時間以内に得た3ヶ月齢のウシの膝関節から回収した(Dutch Valley Veal)。厚さ150−200μmの軟骨切片を、外側大腿骨顆部から削ぎ取り、無血清DMEM/F−12培地(50μg/mLアスコルビン酸2−ホスフェート、100μg/mLピルビン酸ナトリウム、0.1%ウシ血清アルブミン、100ユニット/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび25mM HEPES)で3回洗浄し、その後、3%ウシ胎児血清(FBS)および0.2%コラゲナーゼ−P(Roche Pharmaceuticals)で、37℃で6時間切断した。解放された軟骨細胞を、70μm細胞濾過器で濾過し、1000rpmで3回、各5分間、10%FBSを添加した上記の培地中で、遠心分離した。10%FBSを添加した培地で細胞のペレットを再懸濁し、10cmディッシュに、細胞10,000個/mLで、37℃で、5%COの加湿インキュベーター中に、コンフルエントまで置いた。
【0183】
足場の製作:コンフルエントに達したら、細胞をトリプシン処理し、細胞10,000個/mLでコラーゲン足場内に包み(表3)、処置前に3日間平衡化させた。
表3:インビトロ試験用の足場組成物
【表3】
【0184】
炎症モデル:5%FBSおよび抗生物質(100ユニット/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン)を添加した化学的に定義された培地中、20ng/mLIL−1βを含めて、または、含めずに、構築物をインキュベートした。培養培地を2日毎に交換した。取り出した培地の抽出物を、さらに試験するまで、−80℃で保存した。
【0185】
分解アッセイ:ジメチルメチレンブルー(DMMB)染色アッセイを使用して細胞培養培地中に放出されたCSを測定することにより、GAGの分解をモニターし、コンドロイチン−6−サルフェート標準曲線を用いてコンピュータ計算した。同様に、細胞培養培地におけるI型コラーゲンの分解を、製造業者が指定するプロトコール(Bio-Color)を使用する Sircol コラーゲンアッセイを使用してモニターした。GAGおよびコラーゲン分解を、8日間の培養期間にわたる累積的放出として報告した。
【0186】
タンパク質分解の分析:細胞培養培地に放出されるCSおよびコラーゲンの量は、足場がmAGCを含有する場合に有意に減少した(図11、12、23および24)(各々pCS<0.001およびpコラーゲン<0.02)。整列したコラーゲンゲルは、整列していないコラーゲン線維と比較して、統計学的に高い培地へのCSおよびコラーゲンの放出を示した(p<0.001)。
【0187】
本明細書に記載の通り、ヒアルロン結合合成ペプチドグリカンは、足場中のHAおよび根底にあるコラーゲン線維をタンパク質分解的切断から保護できる。ヒアルロン結合合成ペプチドグリカンの合成は、CSの軟骨保護的利点を利用した。CSは、マトリックスメタロプロテアーゼの産生を下方調節すると示された。我々の本明細書に記載する合成ペプチドグリカンの設計は、CS鎖がHAに結合し、両分子の分解を防止することを可能にした。合成ペプチドグリカンをタンパク質分解酵素に富む環境に置くことにより、ECM成分の過剰な損失を防止する能力が立証された。
【0188】
実施例15
リアルタイムPCR
細胞培養研究に続き、構築物を RNAlater 溶液 (Ambion) 中、4℃で1週間未満保存した。Nucleospin RNA II (Clontech) を製造業者のプロトコールに従って使用して、総mRNAを抽出した。すべてのサンプルから抽出されたmRNAを、Nanodrop 2000 分光光度計 (Thermo Scientific) を使用して定量し、High Capacity cDNA Reverse Transcriptase Kit (Applied Biosystems) を使用してcDNAに逆転写した。Taqman Gene Expression Assays (Applied Biosystems) を以下のプライマー:GAPDH(Bt03210913_g1)、アグリカン(Bt03212186_m1)およびII型コラーゲン(Bt03251861_m1)で使用して、リアルタイムPCRを実施した。関心のある2つの遺伝子および内在性遺伝子について、20μLの反応毎に、cDNAテンプレート60ngを調製した。Taqman PCR Master Mix および 7500 Real-Time PCR System (Applied Biosystems) を使用してリアルタイムPCR分析を実施した。報告されたデータを、GAPDH遺伝子発現で標準化した。
【0189】
mRNA発現の分析:コラーゲン整列は、アグリカン模倣物およびIL−1βによる刺激の存在下で、有意にアグリカン(palignment<0.001、pペプチドグリカン<0.02およびpIL−1β<0.001)およびII型コラーゲン(palignment<0.01、pペプチドグリカン<0.001およびpIL−1β<0.015)の発現をもたらした。mAGCの存在は、足場からのCSの過剰な損失を制限し、低いアグリカン発現をもたらした(p<0.02)(図25)。mAGCの存在は、コラーゲン分解も制限した。しかしながら、II型コラーゲンの発現は、分解中に失われたコラーゲンの程度に依存した(図25)。整列していない足場では、II型コラーゲンの発現レベルはmAGCを用いずに調製された足場で高く、一方、整列したコラーゲン足場では、II型コラーゲンのレベルは、mAGCを用いて調製した足場で高かった(p<0.05)。
【0190】
実施例16
統計学的分析
各実験を、各データセットにおいて少なくともn=3で、2回繰り返した。機械的試験のデータの統計学的有意性は、整列およびペプチドグリカンの添加を要因として、2要因のANOVAで分析した。細胞培養のデータは、整列、ペプチドグリカンの添加およびIL−1β処理を要因として、3要因のANOVAを使用して分析した。事後のテューキーの一対比較(α=0.05)を使用して、各システムで、アグリカン模倣物で調製した/しなかった足場を直接比較した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]