【文献】
Samuel E DePrimo, Carlo L Bello, John Smeraglia, et al.,Circulating protein biomarkers of pharmacodynamic activity opf sunitinib in patients with metastatic renal cell carcinoma: modulation of VEGF and VEGF-related proteins,Journal of Translational Medicine,米国,2007年,Vol. 5, No. 32, 1-11
【文献】
Alain C. Mita, Chris H. Takimoto, Monica Mita, et al.,Phase 1 Study of AMG 386, a Selective Angiopoietin 1/2-Neutralizing Peptibody, in Combination with Chemotherapy in Adults with Advanced Solid Tumors,Clinical Cancer Research,米国,2010年,Vol. 16, No. 11 pp. 3044-3056
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記Ang2阻害剤は、CVX−060、MEDI3617、DX−2240、REGN910、AZD−5180、CGI−1842、LC06、CGEN−25017、RG7594、CVX−241、またはTAvi6のうちの少なくとも1つである、請求項1−7のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0015] 本明細書において特に定義されない限り、本願に関連して使用される科学および専門用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。したがって、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「タンパク質(a protein)」への言及は、複数のタンパク質を含み、「細胞(a cell)」は、複数の細胞の集団を含む。
【0013】
[0016] 用語「Ang2」または「ヒトAng2」は、例えば、米国特許第6,166,185号の
図6(配列番号6)に記載される、アンジオポエチン2とも呼ばれるポリペプチド(「Tie2リガンド−2」)(全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)受託番号AAI26203もまた参照されたい)、ならびにポリペプチドの対立遺伝子変異体もしくは成熟形態等の関連天然(すなわち、野生型)ポリペプチド(シグナルペプチドがない)、またはスプライス変異体(アイソフォーム)を指す。
【0014】
[0017] 用語「Ang1」または「ヒトAng1」は、ヒトTie2受容体のリガンドである、ポリペプチドヒトアンジオポエチン1を指す。「Ang1阻害剤」は、ヒトAng1および/またはヒトTie2に特異的に結合し、それにより、ヒトAng1のヒトTie2受容体への特異的結合を阻害する、Ang1特異的結合剤を指す。
【0015】
[0018] 用語「Ang2阻害剤」は、ヒトAng2および/またはヒトTie2のそれぞれに特異的に結合し、それにより、ヒトAng2のヒトTie2受容体への結合を阻害し、腫瘍内皮細胞増殖または角膜マイクロポケットアッセイ等であるがこれらに限定されない血管新生の少なくとも1つの機能アッセイによって測定されるように、血管新生の統計的に有意な減少をもたらす、Ang2特異的結合剤および/またはTie2特異的結合剤を指す(Oliner et al.Cancer Cell 6:507−516,2004を参照されたい)。また、米国特許第5,712,291号および同第5,871,723号も参照されたい。角膜マイクロポケットアッセイは、血管新生の阻害を定量化するために使用され得る。このアッセイにおいて、血管新生活性に対して試験される薬剤は、ナイロン膜に吸収され、それは、麻酔されたマウスまたはラットの角膜上皮に形成されるマイクロポケット中に埋め込まれる。血管化は、血管化した角膜縁から正常な無血管角膜への血管内部成長の数および程度として測定される。平面移動および角膜ポケットアッセイを記載する、米国特許第6,248,327号を参照されたい。ある特定の実施形態において、Ang2阻害剤は、抗体、アビマー(Nature Biotechnology 23,1556−1561(2005))、ペプチボディ(Fc−ペプチド融合タンパク質、国際公開第00/24782号を参照されたい)、Fc−可溶性Tie2受容体融合(すなわち、「Tie2トラップ」)、または小分子Ang2阻害剤である。
【0016】
[0019] 用語「Ang2特異的結合剤」は、ヒトAng2に特異的に結合し、そのTie2との結合を阻害し、血管新生の統計的に有意な減少をもたらす、分子を指す。
【0017】
[0020] 用語「抗体」は、1)ヒト(例えば、CDRグラフト化)、ヒト化、およびキメラ抗体、ならびに2)単一特異的もしくは多特異性抗体、モノクローナル、ポリクローナル、または一本鎖(scFv)抗体の任意の組み合わせを含む(免疫付与を介して、組み換え技術によって、インビトロ合成手段を用いて、または別の方法で、全体または一部として、かかる抗体が産生されるかどうかに関係なく)、任意のアイソタイプまたはサブクラスのグリコシル化および非グリコシル化免疫グロブリンの両方の単離された形態への言及を含む。したがって、用語「抗体」は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)またはそれから調製されるハイブリドーマから単離される抗体、(b)抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離される抗体(例えば、トランスフェクトーマから)、(c)組み換え、コンビナトリアル抗体ライブラリから単離される抗体、および(d)免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作成、または単離される抗体等、組み換え手段によって調製、発現、作成、または単離されるものを含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、ヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体等のモノクローナル抗体である。典型的には、本発明の抗体は、IgG1またはIgG2サブクラス抗体である。抗体は、約10nM、5nM、1nM、または500pM未満のKdで、ヒトAng2またはヒトTie2に結合してもよい。
【0018】
[0021] 用語「二重特異性分子」は、少なくとも2つの異なる結合特異性を有する、任意の薬剤、例えば、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド複合体を含むことを目的とする。例えば、分子は、同一タンパク質の2つの異なるエピトープ、または2つの異なるタンパク質に特異的に結合してもよい。用語「二重特異性抗体」はまた、ダイアボディも含む。ダイアボディは、二価、二重特異性抗体であり、VHおよびVLドメインが一本鎖ポリペプチド上に発現されるが、同一鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それにより、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対にさせ、2つの抗原結合部位を作成する(例えば、Holliger,P.,et al(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448、Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121−1123を参照されたい)。
【0019】
[0022] 用語「多特異性分子」または「異種特異性分子」は、2つ以上の異なる結合特異性を有する、任意の薬剤、例えば、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド複合体を含むことを目的とする。したがって、本発明は、二重特異性、三重特異性、四重特異性、および他の多特異性分子を含むがこれらに限定されない。
【0020】
[0023] 用語「結合ポリペプチド」は、ポリペプチドが標的に特異的に結合する、ポリペプチドを含む分子を指す。例示的な結合ポリペプチドとしては、抗体、ペプチボディ、アビマー、Fc−可溶性受容体融合リガンドトラップ(例えば、Fc−可溶性Tie2融合)、CovXボディ(国際公開第2008/056346号を参照されたい)、または特異的に結合するペプチド(ペプチドライブラリをスクリーニングすることから得られるもの等)が挙げられる。本発明の結合ポリペプチドは、単一エピトープに結合するもの、ならびに2つのエピトープ(二重特異性)、3つ(三重特異性)、4つ(四重特異性)、またはそれ以上のエピトープに結合する多特異性結合ポリペプチドを含む。
【0021】
[0024] 本明細書で使用されるとき、ヒトRCCの治療に関連した用語「臨床的有益性」は、固形腫瘍のための応答評価基準(RECIST)等であるがこれらに限定されない、標準的な基準によって測定されるような、以下のうちの少なくとも1つの統計的に有意な減少:腫瘍増殖速度、腫瘍増殖の停止、または腫瘍のサイズ、質量、代謝活性、または体積の低減、あるいは対照での治療と比較した生存(PFSおよび/またはOS)の統計的に有意な増加を指す。
【0022】
[0025] VEGFR阻害剤と組み合わせて投与されるAng2阻害剤に関して使用されるとき、用語「有効量」または「治療有効量」は、対照と比較して、統計的に有意な大きさのヒトRCC癌患者集団における腎細胞癌(RCC)進行の統計的に有意な阻害(すなわち、サイズ、質量、代謝活性、または体積における)を提供すると決定される量を指す。当業者は、有効量が患者集団から決定され、したがって、個々の患者が治療有効量から臨床的有益性を得る可能性と、得ない可能性があるが、関連患者集団中の統計的に有意な数の患者が臨床的有益性を得ることを認識するであろう。
【0023】
[0026] 本発明の抗体またはペプチボディと関連した用語「Fc」は、典型的には完全ヒトFcであり、免疫グロブリンのいずれかであってもよいが、IgG1およびIgG2が好ましい。しかしながら、部分的ヒトであるか、または非ヒト種から得られるFc分子もまた、本明細書に含まれる。
【0024】
[0027] 用語「Fc−ペプチド融合」は、Fcに直接的または間接的に共有結合したペプチドを指す。例示的なFc−ペプチド融合分子としては、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第03/057134号に開示されるようなペプチボディ、ならびにTie2受容体のAng2特異的結合フラグメントに直接的または間接的に共有結合したFc(すなわち、「Tie2トラップ」)が挙げられる。
【0025】
[0028] 用語「ヒト化抗体」は、定常領域の実質的に全部がヒトから得られる一方で、1つ以上の可変領域の全部または一部が、別の種、例えば、マウスから得られる抗体を指す。
【0026】
[0029] 用語「ヒト抗体」は、ヒト抗体が、ヒト宿主に投与されるとき、それ自体に対する免疫原性反応、好ましくは検出可能な免疫原性反応を実質的に引き出さないように、定常領域および骨格の両方が、完全または実質的にヒト配列からなる抗体を指す。
【0027】
[0030] 用語「可能性が高いこと」または「臨床的有益性を得る可能性が高いこと」は、対照群と比較して、特定の治療後の治療を受けた個人の群による、臨床的有益性を得る統計的に有意な確率を意味する。例示的な統計的検定としては、PFSまたはOSのCox比例ハザード検定(0.05以下のp値をもたらす)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0028】
[0031] 本明細書で使用されるとき、用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一結合特異性および親和性を示す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する、単一結合特異性を示す抗体を指す。用語「モノクローナル」は、抗体を作製するための任意の特定の方法に限定されない。
【0029】
[0032] 用語「全生存」または「OS」は、定義された期間にわたって生存した試験中の患者の割合を指す。
【0030】
[0033] 用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、または「タンパク質」は、全体にわたって同じ意味で使用され、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」はまた、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、水酸化、およびADP−リボシル化が挙げられるがこれらに限定されない修飾も含む。
【0031】
[0034] 用語「ペプチボディ」は、少なくとも1つのペプチドに付着した抗体Fcドメインを含む分子である、特異的結合剤を指す。ペプチボディの産生は概して、参照により本明細書に組み込まれる、2000年5月4日公開のPCT国際公開第00/24782号に記載される。例示的なペプチドは、ペプチドライブラリ(例えば、ファージディスプレイライブラリ)で運ばれる、化学合成によって生成される、タンパク質の消化によって得られる、または組み換えDNA技術を用いて生成される等、そこに記載される方法のいずれかによって生成され得る。
【0032】
[0035] 用語「PLGF」または「胎盤増殖因子」は、ヒト胎盤増殖因子、増殖因子のVEGFファミリーのメンバー、およびVEGFR−1の特異的リガンドを指す。本発明と関連したPLGFは、4つの既知のアイソフォーム、PLGF−1、PLGF−2、PLGF−3、およびPLGF−4に含むよう意図される。NCBI受託番号NP002623を参照されたい。
【0033】
[0036] 用語「PLGF濃度パラメータ」は、患者PLGF濃度が比較されるPLGF濃度を指す。
【0034】
[0037] 用語「患者PLGF濃度」は、ヒト腎細胞癌(RCC)患者における胎盤増殖因子(PLGF)の濃度を指す。濃度は、組織または体液(血漿、血清、または尿が挙げられるがこれらに限定されない)中で測定され得る。
【0035】
[0038] PLGF等のバイオマーカーと関連した用語「予測的(predictive)」または「予測すること(predicting)」は、バイオマーカーが、治療有効量のVEGFR阻害剤およびAng2阻害剤を用いた治療等の治療によって、患者が臨床的有益性(PFSおよび/またはOS)を得る可能性が高いことを、直接的または間接的に識別する手段を提供することを意味する。したがって、これに関連して、本発明は、治療有効量の本発明のVEGFR阻害剤およびAng2阻害剤を投与される前に、臨床的有益性の可能性が高いRCC患者を「識別する」または「決定する」手段を提供する。反対に、用語はまた、バイオマーカーが、対照と比較して、かかる治療から臨床的有益性をあまり得ない可能性が統計的に高い患者を、直接的または間接的に予測する手段を提供する状況にも適用され得る。
【0036】
[0039] 用語「無進行生存」または「PFS」は、治療の開始から疾病進行までの時間間隔を指す。それは、治療からの臨床的有益性の評価基準である。
【0037】
[0040] バイオマーカーと関連した用語「予後」は、バイオマーカーが、治療にかかわらず、患者が臨床的有益性を得る可能性が高いことを識別することを意味する。
【0038】
[0041] 用語「腎細胞癌」もしくは「RCC」または「進行腎細胞癌」もしくは「進行RCC」は、以下の組織構造のうちの少なくとも1つであると分類されるヒト腎臓癌を指す:明細胞癌、乳頭状腎細胞癌(1型または2型)、嫌色素性腎癌、好酸性顆粒細胞腫。典型的には、RCCは、少なくとも明細胞癌であるが、RCC患者は、2、3、または4つ全ての組織構造を集合的に示し得る。
【0039】
[0042] 用語「特異的に結合する」は、本発明の特異的結合剤の能力であって、ランダムなペプチドまたはポリペプチドの大きな集合に対して、その親和性が、同一の特異的結合剤の平均親和性よりも少なくとも10倍、任意に50倍、100、250、もしくは500倍、または少なくとも1000倍も大きくなるように標的分子に結合するための、特異的結合条件下での本発明の特異的結合剤(Ang2特異的結合剤、Tie2特異的結合剤、またはVEGFR特異的結合剤等)の能力を指す。特異的結合剤は、その同種標的に対して、または複数の結合特異性(多特異性)がある場合、その複数の同種標的に対して、「結合特異性」を有する。特異的結合剤は、単一標的分子にのみ結合する必要はないが、標的と非標的(例えば、パラログまたはオーソログ)との間の構造の類似性によって、非標的分子に特異的に結合してもよい。当業者は、異なる種の動物において同一の機能を有する分子(すなわち、オーソログ)、または標的分子として実質的に同様のエピトープを有する分子(例えば、パラログ)への特異的結合が、特有の非標的(ランダムなポリペプチド)の統計的に有効なサンプリングに対して決定される用語「特異的結合」の範囲内であることを認識するであろう。したがって、本発明の特異的結合剤は、2つ以上の異なる種の標的分子に特異的に結合し得る。固相ELISA免疫測定は、特異的結合を決定するために使用され得る。概して、特異的結合は、少なくとも約1×10
7M
−1、およびしばしば少なくとも1×10
8M
−1、1×10
9M
−1、または1×10
10M
−1の会合定数で進行する。
【0040】
[0043] 用語「Tie2特異的結合剤」は、分子であって、ヒトTie2に特異的に結合し、そのAng2との結合を阻害し、および/またはヒトTie2シグナル変換を阻害し、腫瘍内皮細胞増殖または角膜マイクロポケットアッセイ等の血管新生の少なくとも1つの機能アッセイによって測定されるように、血管新生の統計的に有意な減少をもたらす、分子を指す(Oliner et al.Cancer Cell 6:507−516,2004)。米国特許第5,712,291号および同第5,871,723号(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。ある特定の実施形態において、Tie2阻害剤は、抗体、アビマー(Nature Biotechnology 23,1556−1561(2005))、ペプチボディ、または小分子Ang2阻害剤である。
【0041】
[0044] 用語「VEGFR」は、VEGFR−1、VEGFR−2、およびVEGFR−3を含む、ヒト血管内皮因子受容体(VEGFR)を指す。
【0042】
[0045] 用語「VEGFR阻害剤」は、ヒト血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)の天然の内因性リガンドであるVEGFと、VEGFRとの間の相互作用を阻害する分子を指す。概して、VEGFR阻害剤は、血管新生を阻害するために、少なくともVEGFR−2(KDRとしても既知)と少なくとも1つの天然リガンドVEGF(血管内皮増殖因子)との間のシグナル伝達を妨げる。本発明のVEGFR阻害剤は、ソラフェニブおよびフルオロ−ソラフェニブ(レゴラフェニブ)を含む。
【0043】
PLGF濃度パラメータ
[0046] PLGF(胎盤増殖因子)濃度パラメータは、患者PLGF濃度が比較され得る参照値を提供する。本発明の方法による治療のために選択されるRCC患者(単数または複数)は、PLGF濃度パラメータよりも低いPLGF濃度(「患者PLGF濃度」)を有する。PLGF濃度パラメータは、複数のRCC患者から決定されるPLGF濃度である。PLGF濃度値の得られる分布から、PLGF濃度パラメータが計算される。PLGF濃度を決定するために評価されるRCC患者は概して、VEGFR阻害剤およびAng2阻害剤の組み合わせを用いた治療前に、またはRCC患者から得られるPLGF濃度値が、この組み合わせを用いた治療もしくは他の治療によって有意に影響を受けないほど十分な時間が経過した後に(すなわち、十分なウォッシュアウトの後に)、彼らのPLGF濃度が決定される。例えば、PLGF濃度は、癌治療のためにAng2阻害剤および/もしくはVEGFR阻害剤が投与されてから、またはPLGF濃度に実質的に影響を及ぼした他の治療の後、少なくとも15、20、30、40、50、60、または75日が経過した場合、RCC患者において測定され、PLGF濃度パラメータを決定するために使用され得る。
【0044】
[0047] PLGF濃度パラメータの決定において採用されるRCC患者の数は異なり得るが、概して、統計的に有意義な値を得るのに十分な数である。いくつかの実施形態において、PLGF濃度パラメータは、少なくとも10、20、30、40、50、75、100、200、300、500、または1000人のRCC患者の統計的サンプリングから得られる値である。RCC患者は、統計的に比例するRCC組織構造を表してもよいが、患者の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または100%が明細胞癌を有するように選択されてもよい。
【0045】
[0048] PLGF濃度パラメータが所望の要件によって種々の方法で決定され得る特定の生体試料。いくつかの実施形態において、PLGF濃度は、RCC患者の全血から決定される。他の実施形態において、PLGF濃度パラメータは、全血の構成成分から(血清もしくは血漿から等)、または尿から決定される。血清、血漿、または尿からPLGF濃度を決定するための方法は、当該技術分野において既知である。血清、血漿、および尿PLGF濃度は、例えば、サンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)および電気化学発光多重サンドイッチ免疫測定(Meso−Scale Discovery[MSD],Gaithersburg,MD)によって分析され得る。例えば、血清、血漿、および/または尿中のPLGF濃度を分析するために使用され得るQuantikine(登録商標)ヒトPLGF免疫測定もまた参照されたい。当業者は、PLGF濃度パラメータを決定する特定の方法が、患者PLGF濃度との統計的に有意義な比較を可能にするために十分な正確さおよび精度の値を提供するべきであることを認識するであろう。さらに、当業者は、異なる方法から、または異なる組織生体試料(例えば、血漿および血清)から得られるPLGF濃度が使用され得るが、それらの値は概して、値を全て共通の尺度にもってくることができるように、互いに対して正規化されることを認識するであろう。
【0046】
[0049] 決定されるPLGF濃度パラメータの値は概して、試験のために選択される患者集団間で異なる。したがって、例えば、いくつかの実施形態において、RCC患者の統計的サンプリングからのヒト血清から決定されるときの(かつ電気化学発光多重サンドイッチ免疫測定(Meso−Scale Discovery[MSD],Gaithersburg,MD)によって決定されるような)PLGF濃度パラメータの値は、概して、約22pg/mL〜約40pg/mLに及ぶ。したがって、いくつかの実施形態において、ヒト血清から決定されるようなPLGF濃度パラメータは、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40の値(pg/mLで表される)を有し得る。
【0047】
[0050] いくつかの実施形態において、RCC患者からのPLGF濃度の中間(平均)値は、PLGF濃度パラメータを決定するために使用される。他の実施形態において、PLGF濃度パラメータは、RCC患者の平均PLGF濃度の1標準偏差内であり、しばしば、値は、中央PLGF濃度である。所望に応じて、より厳密な値が選択され得る。したがって、臨床的有益性が決定されるいくつかの実施形態において、PLGF濃度パラメータは、分布中の第25、第30、第35、第40、第45、第50、第55、第60、第65、第70、第75、第80、第85、または第90百分位数の値である。したがって、いくつかの実施形態において、臨床医は、本発明の併用療法を用いた治療から、上位10の百分位数(すなわち、第90百分位数)を除外することを望む場合がある。
【0048】
患者PLGF濃度
[0051] 患者PLGF濃度は、治療有効量のVEGFR阻害剤およびAng2阻害剤を用いた治療が考慮されているRCC患者に対して得られる。典型的には、PLGF濃度パラメータの場合のように、患者PLGF濃度の測定は、片方または両方の薬剤によって変化しない値を得るために、VEGFR阻害剤および/またはAng2阻害剤を用いた治療の前に決定される。しかしながら、薬剤のうちの片方もしくは両方、または任意の他の薬剤のPLGF濃度レベルへの任意の影響を実質的に低減するほど十分な時間が経過した場合、片方または両方の薬剤を用いた治療の後に、患者PLGF濃度の測定が続く。したがって、片方または両方の薬剤を用いた治療が行われた場合、患者PLGF濃度は、患者PLGF濃度に有意に影響を及ぼす薬剤または複数の薬剤を用いた治療の停止後に測定され得る。例えば、患者PLGF濃度は、治療の停止の1、2、3、4、5、6、7、8週間後に測定され得る。
【0049】
[0052] 患者PLGF濃度は、PLGF濃度パラメータを測定するために利用される特定の方法によって測定され得る。便利なことに、利用される方法は、測定値のよりよい相関を確実にするために両方に対して同一である。したがって、例えば、PLGF濃度パラメータが血清、血漿、または尿から決定される場合、患者PLGF濃度もまた、便利なことに、血清、血漿、または尿のそれぞれから測定される。同様に、測定の特定の分析方法も概して、相違を最小限に抑えるために実質的に同一である。しかしながら、異なる生体試料および/または分析方法もまた、PLGF濃度パラメータおよび/または患者PLGF濃度を決定するために利用され得るが、それにより得られる値は、典型的には、各値を共通の尺度にもってくるために相対的に正規化される。
【0050】
臨床的有益性
[0053] 本発明は、VEGFR阻害剤のみを投与される対照RCC患者と比較して、RCC患者が、治療有効量のVEGFR阻害剤およびAng2阻害剤から臨床的有益性を得る可能性が高いかどうかを予測するための手段を提供する。したがって、この治療的組み合わせに有利に反応する統計的可能性に基づき、RCC患者を階層化することができる。本発明の方法は、参照PLGF濃度値(「PLGF濃度パラメータ」)を、ヒトRCC患者のPLGF濃度(「患者PLGF濃度」)と比較することを含む。PLGF濃度パラメータよりも低い患者PLGF濃度を有するRCC患者が、VEGFR阻害剤のみを用いた治療と比較して、治療有効量のVEGFR阻害剤およびAng2阻害剤を用いた治療から臨床的有益性を受ける可能性が高いと予測される。
【0051】
[0054] 当業者は、PLGF濃度パラメータよりも低い患者PLGF濃度を有するRCC患者が、間接的ならびに直接的に識別され得ることを認識するであろう。したがって、それらのRCC患者を、PLGF濃度パラメータよりも高い患者PLGF濃度を有するRCC患者の群から識別することによって、PLGF濃度パラメータ以下の患者PLGF濃度を有するものも黙示的に識別する。同様に、同様の黙示的プロセスによって、RCC患者の群中のRCC患者を識別することによって、PLGF濃度パラメータよりも高い患者PLGF濃度を有するRCC患者を識別することができる。したがって、本発明の方法は、1つは直接的、および1つは間接的または黙示的な、両方の群の識別にまで及ぶ。
【0052】
Ang2阻害剤
[0055] 本発明の少なくとも1つのVEGFR阻害剤と組み合わせて投与される、本発明のAng2阻害剤は、小分子(約1000ダルトン未満)または巨大分子(約1000ダルトンよりも大きいポリペプチド)であってもよい。いくつかの例示的なAng2阻害剤としては、AMG386(2XCon4C)(Amgen Inc.、米国特許第7,723,499号を参照されたい)、H4L4(Amgen Inc.、米国特許出願第12/378,993号を参照されたい)、CVX−060(CovX/Pfizer)、MEDI3617(MedImmune/AstraZeneca)、DX−2240(Dyax/Sanofi−Aventis)、REGN910(Regeneron/Sanofi−Aventis)、CGI−1842(CGI Pharmaceuticals)、LC06(Roche)、CGEN−25017(Compugen)、RG7594(Roche)、CVX−241(CovX/Pfizer)、LP−590(Locus Pharmaceuticals)、CEP−11981(Cephalon/Sanofi−Aventis)、MGCD265(Methylgene)、レゴラフェニブ(Bayer)、またはCrossMab(Roche)が挙げられる。
【0053】
[0056] いくつかの実施形態において、Ang2阻害剤およびVEGFR阻害剤は、フルオロ−ソラフェニブ(レゴラフェニブ、Bayer)等であるがこれに限定されない、同一の多特異性分子上に位置する官能性部分である。したがって、いくつかの実施形態において、Ang2阻害剤は、二重Ang2およびVEGFR阻害機能を有する(「二重Ang2およびVEGFR阻害剤」)。いくつかの実施形態において、Ang2阻害剤は、Ang2阻害剤およびヒトDLL4(Δ様リガンド4)阻害剤を含み、少なくとも二重特異性である(「二重Ang2およびDLL4阻害剤」)。いくつかの実施形態において、Ang2阻害剤もまた、Tie2受容体へのAng1の結合を阻害する(「二重Ang2およびAng1阻害剤」)。Ang2阻害剤は、ペプチド、ペプチボディ、抗体、F(ab)もしくはF(ab’)2フラグメント等の抗体結合フラグメント、Fc−Tie2細胞外ドメイン(ECD)融合タンパク質(「Tie2トラップ」)等の巨大分子、および小分子、又はそれらの組み合わせ等を含む。いくつかの実施形態において、二重Ang2およびAng1阻害剤は、AMG386(Amgen Inc.)またはH4L4(Amgen Inc.)である。いくつかの実施形態において、VEGFR阻害剤は、少なくとも二重特異性、例えば、二重VEGFRおよびDLL4阻害剤である。小または巨大分子のAng2阻害剤を、本発明のVEGFR阻害剤等の他の特異的結合剤と結合するための方法は、当該技術分野において既知である。したがって、例えば、本発明の二重VEGFRおよびAng2阻害剤としての役割を果たす二重特異性抗体もまた、既知の技術を使用して作製され得る。
【0054】
[0057] いくつかの実施形態において、Ang2阻害剤は、結合ポリペプチドである。結合ポリペプチドは、全抗体の修飾等の当業者に既知の方法によって産生されてもよく、または組み換えDNA技術もしくはペプチド合成を使用して、新たに合成されてもよい。ヒトもしくはヒト化抗体または抗原結合領域は、当該技術分野においてよく知られている技術を使用して、ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、および他の技術が挙げられるがこれらに限定されない、ディスプレイ型技術によって生成され得、得られる分子は、親和性成熟等のさらなる成熟に供され得、かかる技術は、当該技術分野において既知である。Hanes and Plucthau PNAS USA 94:4937−4942(1997)(リボソームディスプレイ)、Parmley and Smith Gene 73:305−318(1988)(ファージディスプレイ)、Scott TIBS 17:241−245(1992)、Cwirla et al.PNAS USA 87:6378−6382(1990)、Russel et al.Nucl.Acids Research 21:1081−1085(1993)、Hoganboom et al.Immunol.Reviews 130:43−68(1992)、Chiswell and McCafferty TIBTECH 10:80−84(1992)、および米国特許第5,733,743号。
【0055】
[0058] 免疫付与によって、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能である、トランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらす。かかる生殖系列変異マウスにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子配列の導入は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immunol.,20 7:33(1993)を参照されたい。XenoMouse(登録商標)等のトランスジェニックマウス株から産生される市販の抗体が記載されている。Green et al.Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照されたい。
【0056】
[0059] 本発明の結合ポリペプチドの全部または一部をコードする核酸は、当該技術分野において既知のインビトロオリゴヌクレオチド合成の方法によって直接的に合成され得る。あるいは、当該技術分野において既知の組み換え方法を使用して、より小さいフラグメントが合成され、より大きいフラグメントを形成するように結合され得る。FabまたはF(ab’)
2に対するような抗体結合領域は、無傷タンパク質の開裂によって、例えば、プロテアーゼまたは化学開裂によって調製されてもよい。あるいは、切断遺伝子が設計され得る。
【0057】
[0060] 抗体またはその抗原結合領域を発現させるために、部分または完全長軽鎖および重鎖をコードするDNA(デオキシリボ核酸)が、標準的な分子生物学技術(例えば、PCR(ポリメラーゼ鎖反応)増幅、部位特異的突然変異誘発法)によって得られ得、遺伝子が転写および翻訳制御配列に動作可能に結合されるように発現ベクターに挿入され得る。本発明の抗体または抗原結合領域をコードする核酸は、好適な発現ベクターにクローン化され、好適な宿主において発現され得る。発現のための好適な系は、当業者によって決定され得る。
【0058】
[0061] 本発明のポリヌクレオチドを含む核酸は、好適な哺乳類または非哺乳類宿主細胞のトランスフェクションで使用され得る。いくつかの実施形態において、軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクター(単数または複数)は、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラントランスフェクション等、原核または真核宿主細胞への外因性DNAの導入のために一般的に使用される幅広い種類の技術を包含することを目的とする。原核または真核宿主細胞のいずれかにおいて本発明の抗体を発現させることが、理論的には可能であるが、真核細胞、最も好ましくは哺乳類宿主細胞における抗体の発現が、最も典型的であり、それは、かかる真核細胞、特に哺乳類細胞が、正しく折り畳まれた、かつ免疫学的に活性な抗体または抗原結合領域を集合および分泌させる可能性が、原核細胞よりも高いためである。
【0059】
[0062] 発現ベクターは、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、YAC(酵母人工染色体)、EBV(エプスタイン・バーウイルス)由来エピソーム等を含む。便利なベクターは、機能的に完全なヒトCH(定常重鎖)またはCL(定常軽鎖)免疫グロブリン配列をコードするものであり、任意のVHまたはVL配列が容易に挿入および発現され得るように適切な制限部位が操作される。かかるベクターにおいて、スプライシングは通常、挿入されたJ領域中のスプライスドナー部位とヒトC領域に先行するスプライス受容部位との間、およびヒトCHエクソン内で生じるスプライス領域において起こる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域の下流の天然染色体部位において起こる。
【0060】
[0063] 発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。本発明の抗体可変重鎖核酸および抗体可変軽鎖核酸は、別々のベクターに挿入され得るか、またはしばしば、両方の遺伝子が、同一の発現ベクターに挿入される。核酸は、標準的な方法(例えば、抗体核酸フラグメントおよびベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合、平滑末端ライゲーション)によって、発現ベクターに挿入され得る。抗体の重鎖および軽鎖可変領域は、VH断片がベクター内のCH断片(単数または複数)に動作可能に結合され、VL断片がベクター内のCL断片に動作可能に結合されるように、それらを、所望のアイソタイプ(およびサブクラス)の重鎖定常および軽鎖定常領域をすでにコードしている発現ベクターに挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作成するために使用され得る。さらに、またはあるいは、発現ベクターは、宿主細胞からの抗体または抗原結合領域鎖の分泌を促進する、シグナルペプチドをコードすることができる。抗体または抗原結合領域鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体/抗原結合領域鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで結合されるように、ベクターにクローン化され得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であってもよい。
【0061】
[0064] CDR(相補性決定領域)を含む配列に加えて、本発明の発現ベクターは、宿主細胞中の配列の発現を制御する調節配列を担持する。用語「調節配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むよう意図される。かかる調節配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載される。調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の要因によって決まり得ることが当業者によって理解されるであろう。哺乳類宿主細胞発現用の例示的な調節配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサー等、哺乳類細胞中の高レベルのタンパク質発現を行うウイルス要素を含む。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはβ−グロビンプロモーター等、非ウイルス調節配列が使用されてもよい。
【0062】
[0065] 抗体または抗原結合領域の核酸および調節配列に加えて、本発明の発現ベクターは、宿主細胞(例えば、複製の起点)および選択可能マーカー遺伝子中のベクターの複製を調節する配列等、さらなる配列を担持してもよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を促進する(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、および同第5,179,017号(全てAxel et al.による)を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサート等の薬物への耐性を与える。例示的な選択可能マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅で、dhfr宿主細胞で使用するため)、およびネオ遺伝子(G418選択のため)が挙げられる。
【0063】
[0066] 本発明の組み換え抗体または抗原結合領域を発現させるための好ましい哺乳類宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されるようなDHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)選択可能マーカーと使用される、Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されるdhfr−CHO細胞を含む)、NS/0骨髄腫細胞、COS細胞、およびSP2.0細胞が挙げられる。特にNS/0骨髄腫細胞で使用するために、他の好ましい発現系は、国際公開第87/04462号、国際公開第89/01036号、および欧州特許第EP338 841号に開示されるGS遺伝子発現系である。本発明の発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入されるとき、抗体または抗原結合領域は、宿主細胞中の抗体または抗原結合領域の発現、またはより好ましくは、宿主細胞が増殖させられる培養培地中への抗体または抗原結合領域の分泌を可能にするのに十分な期間にわたって、宿主細胞を培養することによって産生される。
【0064】
[0067] いったん発現すると、本発明の抗体および抗原結合領域は、HPLC精製、分画カラムクロマトグラフィ、ゲル電気泳動等(例えば、Scopes,Protein Purification,Springer−Verlag,NY,1982を参照されたい)を含む、当該技術分野において標準的な方法に従って精製され得る。ある特定の実施形態において、ポリペプチドは、クロマトグラフィおよび/または電気泳動技術を使用して精製される。例示的な精製方法としては、硫酸アンモニウムによる沈降;PEGによる沈降;免疫沈降;熱変性、続く遠心分離;親和性クロマトグラフィ(例えば、タンパク質−A−セファロース)、イオン交換クロマトグラフィ、排除クロマトグラフィ、および逆相クロマトグラフィが挙げられるがこれらに限定されない、クロマトグラフィ;ゲル濾過;ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ;等電点電気泳動;ポリアクリルアミドゲル電気泳動;ならびにかかる技術および他の技術の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態において、ポリペプチドは、高速タンパク質液体クロマトグラフィまたは高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって精製される。
【0065】
[0068] 本発明の多特異性分子は、化学技術(例えば、D.M.Kranz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:5807(1981)を参照されたい)、「ポリドーマ」技術(Readingの米国特許第4,474,893号を参照されたい)、または組み換えDNA技術を使用して作製され得る。具体的に、本発明の多特異性分子は、成分結合特異性を結合させることによって調製され得る。例えば、多特異性分子の各結合特異性は、別々に生成され、互いに結合され得る。種々のカップリングまたは架橋剤がペプチドの共有共役のために使用され得る。架橋剤の例としては、タンパク質A、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(スルホ−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al.(1984)J.Exp.Med.160:1686、Liu,M A et al.(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照されたい)。他の方法としては、Paulus(Behring Ins.Mitt.(1985)No.78,118−132)、Brennan et al.(Science(1985)229:81−83)、およびGlennie et al.(J.Immunol.(1987)139:2367−2375)に記載されるものが挙げられる。好ましい共役剤は、SATAおよびスルホ−SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.(Rockford,Ill.)から入手可能である。「リンカー」基は、結合ポリペプチドの任意の成分である。存在するとき、それは主にスペーサーとしての役割を果たすため、その化学構造は重要ではない。リンカーは、ペプチド結合によって一緒に結合されるアミノ酸で構成され得る。したがって、いくつかの実施形態において、リンカーは、ペプチド結合によって結合される1〜20のアミノ酸で構成され、ここで、アミノ酸は、20の自然発生的アミノ酸から選択される。これらのアミノ酸のうちの1つ以上は、当業者によってよく理解されるように、グリコシル化されてもよい。あるいは、両方の結合特異性が同一ベクター中でコードされ、同一宿主細胞中で発現および集合させられ得る。二重および多特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,455,030号、米国特許第4,881,175号、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,476,786号、米国特許第5,013,653号、米国特許第5,258,498号、および米国特許第5,482,858号に記載される。
【0066】
治療有効量のVEGFR阻害剤およびAng2阻害剤
[0069] 本発明は、腫瘍の進行を阻害する、中断させる、食い止める、または別様に、対照を用いた治療と比較して、無進行生存(すなわち、悪化しない腎癌の患者が生きている治療中および治療後の時間の長さ)、または全生存(「生存率」とも呼ばれる。すなわち、RCCと診断された、またはRCCの治療を受けた後、ある特定の期間にわたって生きている、試験または治療群の人々の割合)の統計的に有意な増加をもたらすために、治療有効量のVEGFR阻害剤およびAng2阻害剤を用いてヒトRCC患者を治療するための方法を含む。
【0067】
[0070] 本発明の方法において、治療有効量のAng2阻害剤は、本発明の予測方法によって決定されるように、かかる投与から臨床的有益性を得る可能性があるRCC患者に、VEGFR阻害剤と組み合わせて投与され得る。治療有効量の特異的結合剤は、細胞培養アッセイにおいて、またはマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、もしくはサル等の動物モデルにおいて、最初に推定され得る。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与経路を決定するためにも使用され得る。次いで、かかる情報は、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定するために使用され得る。正確な用量は、治療を必要とする対象に関連した要因を考慮して決定される。用量および投与は、活性化合物の十分なレベルを提供するように、または所望の効果を維持するように調節される。考慮され得る要因としては、病態の重症度、対象の全体的な健康、対象の年齢、体重、および性別、投与の時間および頻度、薬物の組み合わせ(単数または複数)、反応感度、ならびに治療反応性が挙げられる。長時間作用型医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス率に応じて、3〜4日毎、毎週、または隔週投与されてもよい。
【0068】
[0071] 投薬頻度は、使用される製剤中の結合剤分子の薬物動態パラメータによる。典型的には、組成物は、所望の効果をもたらす用量が達成されるまで投与される。したがって、組成物は、長い時間をかけて単回投与もしくは複数回投与(同一または異なる濃度/用量で)として、または持続注入として投与されてもよい。適切な用量のさらなる微調整は、定期的に行われる。適切な投与量は、適切な用量反応データの使用によって確認されてもよい。
【0069】
[0072] 特異的結合剤は、当業者によって容易に決定される用量および速度で投与される。いくつかの実施形態において、特異的結合剤は、週1回静脈内投与される抗体またはペプチボディである。いくつかの実施形態において、タキサンは、3週間にわたって週1回投与され(例えば、静脈内)、4週サイクルの4週目には投与されない。いくつかの実施形態において、本発明のAng2阻害剤は、0.3〜30mg/kgの患者の体重に及ぶ用量で、しばしば、1〜20mg/kg、または3〜15mg/kgで患者に投与される。ある特定の実施形態において、VEGFR阻害剤(例えば、ソラフェニブ、フルオロ−ソラフェニブ)は、約40〜120mg/m
2(患者表面積の平方メートル)で、しばしば、50〜80mg/m2の間で、いくつかの特定の実施形態において、約80mg/m
2で、週1回投与される。他の実施形態において、3週間に一回投与されるとき、タキサンの用量は、50〜225mg/m
2の間、しばしば135〜200mg/m
2の間に及ぶ。便利なことに、本発明のAng2阻害剤の用量は、標準的な薬物動態パラメータAUC(曲線下面積)を使用して計算され、ここで、投与量範囲は、5〜40mg時/mL、しばしば6〜25mg時/mLである。いくつかの実施形態において、投与されるペプチボディAMG386(2XCon4(C))のミリグラムでの用量は、式530+(5.0*ベースラインクレアチニンクリアランス[mL/分で])で計算され、ここで、ベースラインクレアチニンクリアランス(CrCL)は、コッククロフト・ゴールト式によって決定されるものとする(Nephron 1976 16:31−41)。したがって、CrCLが40〜70の間であるとき、計算された用量は、840mgの2XCon4(C)であり、CrCLが70〜90であるとき、計算された用量は、960mgであり、CrCLが90〜110であるとき、計算された用量は、1080mgであり、CrCLが110〜140であるとき、計算された用量は、1200mgであり、CrCLが140〜160の間であるとき、計算された用量は、1320mgであり、CrCLが160〜190の間であるとき、計算された用量は、1440mgであり、CrCLが190〜200の間であるとき、計算された用量は、1560mgの2XCon4(C)である。いくつかの実施形態において、AMG386の投与量は、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、または30mg/kgである(ミリグラム/キログラムの体重で)。
【0070】
[0073] 本発明のVEGFR阻害剤は、本発明の特異的結合剤の前および/もしくは後(集合的に「連続治療」)、ならびに/または同時(「併用治療」)に投与され得る。組み合わせの連続治療(前治療、後治療、または重複治療)はまた、薬物が交互に入れ替えられるか、または一構成成分が長期にわたって投与され、他の構成成分(単数または複数)が断続的に投与される、レジメンも含む。組み合わせの構成成分は、同一または別々の組成物で、かつ同一または異なる投与経路で投与されてもよい。化学療法剤を投与する方法および投与量は、当該技術分野において既知である。標準的な投与量および投与方法は、例えば、食品医薬品局(FDA)ラベルに従って使用され得る。本発明のVEGFR阻害剤は、静脈に挿入されたカニューレ(IV)を通して、鎖骨付近の静脈へと皮下に挿入される中心ラインを通して、または末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)ラインを通して、点滴(注入)としてとして与えられてもよい。VEGFR阻害剤の用量はしばしば、30分等の固定時間で投与される。あるいは、用量は、固定速度(例えば、10mg/m
2/分)で投与され得る。
【0071】
医薬製剤および投与
[0074] 本発明のAng2阻害剤を含む医薬組成物は、例えば、組成物のpH、オスモル濃度、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着、または透過を変更、維持、または保存するための製剤材料を含有してもよい。
【0072】
[0075] 医薬組成物中の主な媒体または担体は、本質的に水性または非水性のいずれかであってもよい。例えば、好適な媒体または担体は、場合によっては非経口投与のための組成物中でよく見られる他の材料が添加される、注射用水または生理食塩水であってもよい。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンと混合される生理食塩水は、さらなる例示的な媒体である。他の例示的な医薬組成物は、約pH7.0〜8.5のトリス緩衝液または約pH4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含み、それはさらに、ソルビトールまたはその好適な代替物を含んでもよい。本発明の一実施形態において、結合剤組成物は、所望の純度を有する選択された組成物を、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で、任意の製剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、上記を参照)と混合することによって、保存のために調製されてもよい。さらに、結合剤生成物は、スクロース等の適切な賦形剤を使用して、凍結乾燥物として製剤化されてもよい。
【0073】
[0076] 製剤構成成分は、投与部位に許容される濃度で存在する。例えば、緩衝液は、典型的には約5〜約8の範囲のpH内の、生理学的pHで、またはわずかに低いpHで、組成物を維持するために使用される。非経口投与に特に好適な媒体は、結合剤が適切に保存される滅菌等張液として製剤化される、滅菌蒸留水である。さらに、別の調製は、次に蓄積注射によって送達され得る生成物の制御または持続放出を提供する、注射用マイクロスフェア、生体内分解性粒子、高分子化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸)、ビーズ、またはリポソーム等の薬剤を用いた所望の分子の製剤を含むことができる。
【0074】
[0077] 別の態様において、非経口投与に好適な医薬製剤は、水溶液、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、または生理緩衝食塩水等の生理学的に適合する緩衝液中で製剤化されてもよい。水性懸濁注射剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン等、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよい。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性懸濁注射剤として調製されてもよい。好適な親油性溶媒または媒体としては、ごま油等の脂肪油、またはオレイン酸エチル、トリグリセリド、もしくはリポソーム等の合成脂肪酸エステルが挙げられる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーもまた、送達のために使用され得る。任意に、懸濁液はまた、化合物の溶解性を増加させ、高濃度溶液の調製を可能にするために、好適な安定剤または薬剤を含有してもよい。
【0075】
[0078] インビボ投与に使用される医薬組成物は典型的には、滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合、この方法を使用した滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかに実施され得る。非経口投与用の組成物は、凍結乾燥形態で、または溶液中で保存されてもよい。さらに、非経口組成物は概して、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針で穿刺可能なストッパーを有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
【0076】
[0079] いったん医薬組成物が製剤化されると、それは、溶液、懸濁液、ゲル、乳液、固体、または脱水もしくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアル中に保存されてもよい。かかる製剤は、すぐに使える形態あるいは投与前に再構成を必要とする形態(例えば、凍結乾燥)のいずれかで保存されてもよい。特定の実施形態において、2XCon4(C)等の凍結乾燥ペプチボディは、国際公開第2007/124090号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように製剤化される。
【0077】
[0080] 特定の実施形態において、本発明は、単回用量投与単位を生成するためのキットに関する。キットはそれぞれ、乾燥タンパク質を有する第1の容器および水性製剤を有する第2の容器の両方を含有してもよい。また、シングルおよびマルチチャンバプレフィルドシリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ)を含有するキットも、本発明の範囲内に含まれる。
【0078】
[0081] 上記の列挙は、例示目的のみであり、当業者によって既知である、または本明細書に記載されるガイドラインを使用して当業者によって達せられ得る、本明細書に記載する化合物と同時に使用され得る他の化合物または治療の使用を除外しない。
【0079】
[0082] ここで、本発明は、以下の限定されない実施例を参照してさらに説明される。
【実施例】
【0080】
実施例1
[0083] 本実施例は、無進行生存(PFS)の改善を推定し、腎臓の進行明細胞癌を患う対象の治療における、ソラフェニブと組み合わせたAMG386の安全性および耐性を評価するための、第2相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設試験を記載する。試験設計のより完全な説明は、clinicaltrials.govに開示され、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
[0084] 登録される患者数は、約150人であった。試験に適格な患者は、少なくとも18歳であった。男女共に適格であったが、健康な患者は適格ではなかった。測定された主要転帰はPFSであり、一方で、二次転帰は、客観的奏効率、反応の持続時間、および腫瘍組織量の連続測定の変化を含んだ。
【0082】
【表1】
【0083】
[0085] 試験対象患者基準は以下の通りであった。
1)対象は、明細胞成分を有する組織学的に確認された転移性RCCを有しなければならない。
2)メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC))の予後リスク分類に従って、低または中程度のリスク。
3)修正を加えたRECISTガイドラインによって、少なくとも1つの一次元で測定可能な病変を有する、測定可能な疾患。
4)スクリーニングで実施される臨床検査によって明らかとなるような、十分な臓器および血液機能。
5)0または1のECOG(Eastern Cooperative Oncology Group(米国東海岸がん臨床試験グループ))一般状態。
【0084】
[0086] 除外基準は以下の通りであった。
疾患関連
1)中枢神経系転移の既知の病歴。
2)進行または転移性腎細胞癌の以前の治療(手術および姑息的放射線治療を除く)。
3)無作為化から14日以内の骨転移による痛みの緩和のための焦点放射線療法。
【0085】
[0087] 投薬
1)VEGFの阻害剤で現在または以前に治療されている。
2)アンジオポエチンまたはTie2の阻害剤で現在または以前に治療されている。
3)ベバシズマブで現在または以前に治療されている。
【0086】
[0088] 全般的医療
1)急性膵炎の診断。
2)心筋梗塞、脳血管発作、一過性脳虚血発作、経皮経管冠動脈形成術/ステント、鬱血性心不全、グレード2以上の末梢血管疾患、外来投薬治療によって制御されない不整脈、または無作為化の前1年以内の不安定狭心症。
3)無作為化前30日以内の大手術、または以前の手術からまだ回復中。
4)拡張期90mmHg超または収縮期150mmHg超として定義されるような管理不良高血圧。降圧薬は許可される。
【0087】
[0089] その他
1)他の治験中の処置は除外される。
2)対象は、他の治験用デバイスまたは薬物試験(単数または複数)に現在登録されているか、またはそれらの終了から少なくとも30日にまだ達していない。または対象は、他の治験薬(単数または複数)を投与されている。
【0088】
実施例2
[0090] 本実施例は、実施例1に記載される第2相試験に登録されている患者の患者PLGF濃度とPFS(無進行生存)との間の関係の分析を記載する。
【0089】
[0091] 腎癌患者のタンパク質胎盤増殖因子(PLGF)の血中濃度を、多くの他の分析物と共に分析し、AMG386およびソラフェニブを用いた治療の後に、彼らがどれほど良好に反応するかを予測したか決定した。臨床試験(実施例1)において、腎癌を患う患者を、400mgのBID(1日2回)ソラフェニブ、および10mg/kgのQW(週1回)AMG386、3mg/kgのQW AMG386、あるいはプラセボAMG386のいずれかで治療した。治療の前に血清試料を採取し(ベースライン)、タンパク質PLGFの血中濃度を測定するために使用した。ベースライン患者PLGF濃度を分析し、患者が治療レジメンにどれほど良好に反応するかの情報を提供したか決定した。
【0090】
[0092] 患者PLGF濃度を決定し、無進行生存(PFS)時間との統計的関連性について試験した。患者PLGF濃度は、患者のベースラインPLGFが「高い」(中央PLGF濃度パラメータを上回る)か、または「低い」(中央PLGF濃度パラメータを下回る)かどうかに応じて患者を分類したとき、AMG386およびソラフェニブの併用療法への反応を予測することがわかった(p=0.017)。患者分類は、全体の中央ベースラインPLGF(中央PLGF濃度パラメータ)による二分化に基づいた。PLGF、コホート、およびPLGFとコホートとの間の相互作用等の因子によって、PFSのコックス比例ハザードモデルを用いて、予測有意性を決定した。相互作用因子が0.05超のp値を有した場合、患者PLGF濃度がPFSを予測すると見なした。
【0091】
[0093] PLGFと生存との間の関係は、カプラン・マイヤー(KM)プロット(
図1〜4)で図示される。KMプロット中の各曲線は、PFSを有する患者の割合が、治療開始後、時間と共にどのように変化するかを示す。生存曲線間の差は、コックス比例ハザード検定で評価される。治療にかかわらず、全患者をPLGF高群および低群に分類したとき、低いベースライン患者PLGF濃度を有する患者は、より長いPFSを有した(
図1、ハザード比=1.92、p=0.00217)。PLGFレベルに基づくPFSの差は、VEGF受容体阻害剤ソラフェニブのみを投与された患者において見られなかった(
図4、ハザード比=0.83、p=0.59)。対照的に、AMG386で治療されたコホートの両方において、有意な差が見られた(
図2および3、ハザード比=それぞれ2.76&3.51、p<0.01)。
【0092】
[0094] AMG386で治療された患者における患者PLGF濃度と生存との間の有意な関連性、およびソラフェニブのみで治療された患者における非関連性の観察は、ベースラインPLGFが、AMG386対プラセボへの反応を予測することを示す。低い患者PLGF濃度を有する腎癌患者は、彼らが、ソラフェニブのみを用いた治療と対比して、ソラフェニブと組み合わせたAMG386を用いて治療されるとき、高い患者PLGF濃度を有する患者よりも長く生存することが予測される。
本発明は、非限定的に以下の態様を含む。
[態様1]
治療有効量のVEGFR阻害剤およびAng2阻害剤からの臨床的有益性を得る可能性が高いヒト腎細胞癌(RCC)患者を、それらを用いた治療の前に予測する方法であって、前記方法は、患者PLGF濃度をPLGF濃度パラメータと比較することを含み、前記PLGF濃度パラメータより低い前記患者PLGF濃度は、臨床的有益性の可能性が高いことを予測する、方法。
[態様2]
前記Ang2阻害剤は、AMG386であり、前記VEGFR阻害剤は、ソラフェニブまたはフルオロソラフェニブである、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記Ang2阻害剤は、H4L4であり、前記VEGFR阻害剤は、ソラフェニブまたはフルオロソラフェニブである、態様1に記載の方法。
[態様4]
前記Ang2阻害剤は、CVX−060、MEDI3617、DX−2240、REGN910、AZD−5180、CGI−1842、LC06、CGEN−25017、RG7594、CVX−241、またはTAvi6のうちの少なくとも1つである、態様1に記載の方法。
[態様5]
前記PLGF濃度パラメータは、22pg/mL以上〜40pg/m以下の血清PLGF濃度パラメータである、態様1に記載の方法。
[態様6]
前記PLGF濃度パラメータは、中央血清PLGF濃度パラメータである、態様1に記載の方法。
[態様7]
前記PLGF濃度パラメータは、平均血清PLGF濃度の1標準偏差内である、態様1に記載の方法。
[態様8]
前記血清PLGF濃度パラメータは、平均血清PLGF濃度パラメータである、態様7に記載の方法。
[態様9]
前記患者PLGF濃度は、血漿PLGF濃度または血清PLGF濃度である、態様1に記載の方法。
[態様10]
前記VEGFR阻害剤は、ソラフェニブまたはフルオロ−ソラフェニブである、態様1に記載の方法。
[態様11]
前記VEGFR阻害剤は、ソラフェニブである、態様10に記載の方法。
[態様12]
前記VEGFR阻害剤および前記Ang2阻害剤は、同時に投与される、態様1に記載の方法。
[態様13]
臨床的有益性は、無進行生存である、態様1に記載の方法。
[態様14]
臨床的有益性は、全生存である、態様1に記載の方法。
[態様15]
前記Ang2阻害剤はまた、Ang1阻害剤でもある、態様1に記載の方法。
[態様16]
前記Ang2阻害剤は、結合ポリペプチドである、態様1に記載の方法。
[態様17]
前記結合ポリペプチドは、抗Ang2抗体である、態様16に記載の方法。
[態様18]
前記Ang2阻害剤は、抗Tie2抗体である、態様16に記載の方法。
[態様19]
前記結合ポリペプチドは、二重特異性結合ポリペプチドである、態様16に記載の方法。
[態様20]
前記二重特異性結合ポリペプチドは、抗VEGFRおよび抗Ang2二重特異性結合ポリペプチドである、態様16に記載の方法。
[態様21]
前記二重特異性結合ポリペプチドは、抗DLL4および抗Ang2二重特異性結合ポリペプチドである、態様16に記載の方法。
[態様22]
前記結合ポリペプチドは、可溶性Tie2−Fc融合ポリペプチドである、態様16に記載の方法。
[態様23]
臨床的有益性の可能性が高い前記ヒトRCC患者は、前記治療有効量の前記VEGFR阻害剤および前記Ang2阻害剤が投与される、態様1に記載の方法。
[態様24]
前記VEGFR阻害剤は、ソラフェニブまたはフルオロ−ソラフェニブである、態様23に記載の方法。
[態様25]
治療有効量のVEGFR阻害剤およびAng2阻害剤からの臨床的有益性を得る可能性が高いヒト腎細胞癌(RCC)患者を、それらを用いた治療の前に予測する方法であって、前記方法は、PLGF濃度パラメータに対して、患者PLGF濃度に基づき、少なくとも2つの群に前記RCC患者を階層化することを含み、前記PLGF濃度パラメータに対して低い患者PLGF濃度を有するRCC患者は、前記臨床的有益性を得る可能性が高い、方法。
[態様26]
前記患者PLGF濃度は、血清患者PLGF濃度であり、前記PLGF濃度パラメータは、血清PLGF濃度パラメータである、態様25に記載の方法。
[態様27]
前記血清PLGF濃度パラメータは、22pg/mL以上〜40pg/mL以下である、態様26に記載の方法。