(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケトエステル含有官能基が、ジケテン、ジケテンアセトン付加体、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、tert−ブチルアセトアセテート、tert−ペンチルアセトアセテート及びこれらの組み合わせから選択されるアセトアセチル化剤から誘導される、請求項1又は2に記載のインク又はコーティング組成物。
側鎖Rが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、及びそれらの組み合わせから選択される化合物から誘導される、請求項4に記載のインク又はコーティング組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に対して参照を詳細に行い、その実施例を添付の図面で説明する。
【0017】
本発明の発明者らは、インク及びコーティング組成物で使用される新規の官能化されたポリマーに想到した。そのようなインク及びコーティング組成物は包装用途で有用である。インク及びコーティング組成物は、特に酸素の透過に耐えるガスバリアコーティングとして一般に定義される。用語「インク」及び「コーティング」は双方とも本出願で使用される。本出願者らは、本文でそのまま明白に記述しなくとも、本出願がインク及びコーティングの双方を包含することを明確にすることを強く望んでいる。本発明のコーティング組成物は、そのポリマー骨格に反応性カップリング基を介して連結された1つ以上のアミノシラン及び/又はアミノシラノール含有側鎖を有する、官能化されたビニルアルコールのホモポリマー及びコポリマー1種以上を含む。本明細書で使用されるとき、用語「反応性カップリング基」は、硬質、柔軟性の食品包装及び工業包装に使用するためのインク又はコーティング組成物での使用に好適なアミノシラン及び/又はアミノシラノール含有側鎖との結合形成を可能にする、ポリマー骨格に結合されている任意の化学基を意味する。コーティング組成物のポリマーはさらに、たとえば、オレフィン、ビニルモノマー、アセトアセトキシエチル、メタクリレート、ジアセトン、アクリルアミド及びそれらの組み合わせなどのモノマーを含有していてよい。別の実施形態では、コーティング組成物は、充填剤粒子に加えて官能化されたホモポリマー及びコポリマーを含み得る。充填剤は無機であってもよい。充填剤には、高アスペクト比の鉱物も含まれ得る。充填剤は一般に、コーティング組成物、たとえば、バリア層に、そのような充填剤を含まないコーティング組成物と比べて酸素バリア特性の向上を示す量で分散される。
【0018】
当該技術で既知のものとの関係における本インク及びコーティング組成物の多数の利益の1つは、ペンダントケトエステル基とアミノシランとの間でのイミンの形成によって達成されるシラン官能性を有するPVOH/EVOHポリマー骨格である。以下でさらに詳細に提示するように、本組成物は、様々な柔軟性プラスチック膜に適用(apply)された場合に、低湿度及び高湿度、たとえば、水分レベルで、優れた積層接着強度を示す。本発明に係るコーティング組成物のさらに別の利点は水に浸漬した場合でも接着強度を維持することである。
【0019】
本発明によれば、本発明に記載されるインク及びコーティング組成物は、式(I):
P−(R)
n (I)
の官能化されたビニルアルコールのホモポリマー、コポリマー又はそれらの組み合わせを、反応性カップリング基と反応させることによって形成されるバリア層である。式中、記号「P」は、ビニルアルコールのホモポリマー、コポリマー又はそれらの組み合わせを含む直鎖又は分枝鎖のポリマー骨格を表す。記号「R」は、反応性カップリング基を介してポリマー骨格に連結されたアミノシラン及び/又はアミノシラノール含有側鎖を表す。記号nは、側鎖の数を表し、それは、ポリマー骨格の約1〜約25モル%の量で存在する。その例となる実施形態では、インク又はコーティング組成物は、PVOH及び/又はEVOHなどのポリマー又はコポリマーと、アセトアセテート反応性カップリング基とを有する。このアセトアセテート基は、コポリマーの骨格に連結されるアミノシラン及び/又はアミノシラノール側鎖、例えば官能性アルコキシシランなど、と部分的に又は完全に反応している。さらなる例となる実施形態では、コーティング組成物は分散された粘土を含む。
【0020】
インク及びコーティング組成物は、グラビア印刷又はフレキソ印刷に好適な粘度を示す固形分を有する。インク又はコーティングの粘度は他のコーティング方法を可能にするように調整することもできる。固形分は、シラン官能性のPVOH及び/又はEVOH、及び任意で添加されるポリマー及び任意で添加される充填剤の少なくとも合計量を含む官能化されたポリマーの量で一般に構成される。溶液における充填剤及びポリマーの濃度は、少なくとも以下:(i)溶解性/分散性、(ii)コーティングが適用される方法、たとえば、グラビア、フレキソ、カーテン、コーティング、ロールコーティング、浸漬コーティング、スプレー等、及び(iii)基材を適正に被覆するのに十分な流動性を達成するのに必要とされる最少量で採用される溶媒の量、次第である。
【0021】
インク又はコーティング組成物の全体的な固形分は、約0.5〜15%(w/w)の範囲である。コーティング組成物の固形分は好ましくは約2〜8%であってよい。(w/w)での固形分は、0.5%;1%;1.5%;2%;2.5%;3.0%;3.5%;4.0%;4.5%;5.0%;5.5%;6.0;6.5%;7.0%;7.5%;8.0%;8.5%;9.0%;9.5%;10.0%;10.5%;11.0%;11.5%;12.0%;12.5%;13.0%;13.5%;14.0%;14.5%;15.0%であってよい。
【0022】
さらに別の実施形態では、総固形分の約30〜95%(w/w)は官能化されたポリマーを含み、残りは鉱物充填剤及び他の成分で構成される。好ましくは、範囲は約45〜75%(w/w)である。さらに好ましくは、範囲は約50〜75%(w/w)である。総粘土に基づく固形分(w/w)は、30%;31%;32%;33%;34%;35%;36%;37%;38%;39%;40%;41%;42%;43%;44%;45%;46%;47%;48%;49%;50%;51%;52%;53%;54%;55%;56%;57%;58%;59%;60%;61%;62%;63%;64%;65%;66%;67%;68%;69%;70%;71%;72%;73%;74%;75%;76%;77%;78%;79%;80%;81%;82%;83%;84%;85%;86%;87%;88%;89%;及び90%であってよい。
【0023】
本発明者らによれば、反応性カップリング基、すなわちケトエステル基とポリマー骨格との比、及び、アミノシラン側鎖と反応性カップリング基との比の、いずれか又は双方の比を慎重に制御することによって、温度及び湿度を条件とする種々の水分レベルで、所定の基材に適用した際のコーティング組成物又はインク組成物の優れた接着特性がもたらされる。その結果は、アミノシラン官能化がされていないコーティングを考慮して評価される。
【0024】
さらに別の例となる実施形態では、本発明のインク及びコーティング組成物を調製する方法を開示する。組成物は、そのコポリマーの骨格に連結されたアミノ基を有するアルコキシシラン側鎖(R)と反応するアセトアセチル基などの反応性カップリング基を有するポリビニルアルコール(PVOH)又はエチレンビニルアルコール(EVOH)のポリマー骨格(P)を有するコポリマーの、水溶液又は水分散液を調製することによって製造される。
【0025】
本発明のバリアコーティングを製造するためには、シラン官能性のPVOH/EVOHの水溶液を調製し、次いで粘土の水分散液と混合する。シラン官能性のPVOH/EVOHは水性溶媒に溶解し、それは、水混和性の共溶媒を含有していてよい。好まれる共溶媒は、アルコールであり、特にエタノール、n−プロパノール及びイソプロパノールである。用語「水性溶媒」は本明細書で使用されるとき、純粋な水、及び水と1以上の水混和性の共溶媒とを含む混合物を包含する。好ましくは、水は、水性溶媒の主要部分、たとえば、少なくとも50重量%を構成する。好ましくは、水混和性の共溶媒は、溶媒ブレンドの50重量%未満を構成する。さらに好ましくは、共溶媒は、総溶媒ブレンドの最大30重量%(最も好ましくは総溶媒ブレンドの5〜30重量%)及び全組成の20重量%未満を構成する。
【0026】
反応工程は、十分な混合を提供することが可能である任意の設備を用いて実施され得ることが十分に理解されるであろう。これらには、撹拌がオーバーヘッドスターラー、磁気スターラーによって提供され、最も好ましくは、混合が、適当な押出し機、z刃ミキサー、バッチミキサー、U溝ミキサー、RTミキサー、混合機、内部ミキサー、Banbury型ミキサー、2ロールミキサー、Branbender型ミキサー、幅広刃ミキサー(又は水中翼刃ミキサー)、水平(デルタ又はらせん)刃ミキサー、混練機/反応器、又はこれらのミキサーの1つの関連する変形体、たとえば、二重z刃ミキサー又は対スクリュー押出し機を用いて達成される反応器又は他の容器が挙げられ得る。系に導入される熱は、従来の手段によって又はマイクロ波照射から供給され得る。
【0027】
さらに別の例となる実施形態では、上述のインク又はコーティング組成物を含むラミネート包装を記述する。一実施形態では、ラミネートは食品包装に使用される。たとえば、食品包装は冷蔵食品用又は冷凍食品用であり得る。食品包装はまたポテトチップのような室温で保存される食品用であり得る。別の実施形態では、ラミネートは、たとえば、化粧品及び医薬品のような工業包装で使用される。本発明者らによれば、そのようなラミネートは、特に高い湿度環境において積層接着強度及び酸素バリア特性に関して驚くべき成績を提供する。
【0028】
ラミネート包装の多数の利益の1つは、下塗り層(primer layer)を必要とすることなく、広い範囲のプラスチック膜、たとえば、基材にインク又はコーティング組成物を適用することである。従って、その上に適用された本発明のインク又はコーティング組成物を含むラミネートの一方が、その後、別のラミネートに固定され、低湿度及び高湿度、水浸漬等の様々な条件下で接着強度をさらに達成し得る。加えて、本インク又はコーティング組成物のラミネート包装は、高湿度環境でも優れたガスバリヤ性能を示す。1つの実験によれば、本発明のインク及びコーティングは、約50%を超える相対湿度(RH)で同時押出ししたEVOH構造と比較した場合、より良い特徴を達成する。別の利点は、本発明のインク及びコーティングが塩素化物質を必要としないことである。従って、従来のPVDCが有する毒性の懸念が克服される。
【0029】
本発明は、柔軟性のプラスチック膜基材との使用に好適であることも見い出した。柔軟性のプラスチック膜基材は一般に、おそらくその弾性特性に起因して、本質的に酸素バリア特性が乏しい。一般に、ガスバリア層を有さないラミネート材は、典型的に、23℃及び80%RHで少なくとも50cm
3/m
2/日、特に23℃及び80%RHで少なくとも80cm
3/m
2/日、及び場合によっては23℃及び80%RHで少なくとも1000cm
3/m
2/日の酸素透過率(OTR)を有する。一方、新規のインク及びコーティング組成物を1以上のプラスチック膜基材に適用する場合、高い相対湿度でさえ、有意に改善されたガスバリア特性が認められる。たとえば、好ましい酸素バリアは、20cm
3/m
2/日未満であり、一層さらに好ましい酸素バリアは、23℃及び80%RHで10cm
3/m
2/日未満のである。
【0030】
一層さらに、さらなる例となる実施形態では、ラミネート包装を調製する方法を記載する。本接着層は、基材の表面に直接適用することができる。インク又はコーティング組成物を別の基材の表面に適用し得る。或いは、接着層をプラスチック膜の表面上のインク又はコーティング上に適用し得る。例となる一実施形態では、ラミネート包装には、ガスバリアコーティング、接着剤及び別のプラスチック膜が含まれる。別の例となる実施形態では、他の物質で構成される追加の層が層のいずれかの間に置かれる。さらに別の例となる実施形態では、追加の層は、その間に本インク又はコーティング組成物を有する2つの柔軟性のプラスチック膜基材のいずれかの側に形成される。
【0031】
本発明の第1の態様に従って、インク及びコーティング組成物を以下に詳細に記述する。インク及びコーティング組成物は、式中、「P」がビニルアルコールのホモポリマー又はビニルアルコールのコポリマーである直鎖又は分枝鎖のポリマー骨格を表す式(I)
P−(R)
n (I)
の官能化されたビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーを少なくとも含み、任意で少なくとも1つの他のモノマーを含み、前記コポリマーは1以上の反応性カップリング基を含み;「R」は反応性カップリング基を介してポリマー骨格に連結されたアミノシラン及び/又はアミノシラノール含有側鎖を表し;nは、側鎖の数を表し、側鎖は、ポリマー骨格の約1〜約25モル%の量で存在する。
別の実施形態では、Pはビニルアルコールのホモポリマーである直鎖又は分枝鎖のポリマー骨格を表し、Rは3−アミノプロピルトリエトキシシランに由来する側鎖ではない。
【0032】
採用するポリビニルアルコール又はエチレンビニルアルコールコポリマーの性質に制約はない。好ましくは、鹸化の度合いは70%を超え、好ましくは90%を超え、一層さらに好ましくは95%を超えるべきである。好ましい実施形態では、鹸化の度合いは、70%;71%;72%;73%;74%;75%;76%;77%;78%;79%;80%;81%;82%;83%;84%;85%;86%;87%;88%;89%;90%;91%;92%;93%;94%;95%;96%;97%;98%;99%;及び100%であるべきである。
【0033】
特に好まれるのは、約40モル%を超えない濃度でのエチレンとビニルアルコールとのコポリマーである。特に好まれるコポリマーは、約30モル%未満のもの、一層さらに好まれるのは約20モル%未満のものである。この種の市販のポリマーには、クラレのExcevalの範囲が挙げられる。別の例となる実施形態では、濃度は、39%;38%;37%;36%;35%;34%;33%;32%;31%;30%;29%;28%;27%;26%;25%;24%;23%;22%;21%;20%;19%;18%;17%;16%;15%;14%;13%;12%;11%;10%;9%;8%;7%;6%;5%;4%;3%;2%;及び1%未満である。
【0034】
別の実施形態では、ポリマー骨格Pは、ビニルアルコールの直鎖若しくは分枝鎖のホモポリマー、又は、ビニルアルコール、少なくとも1の他のモノマー、及び1以上の反応性カップリング基のコポリマーである。Pは、ビニルアルコールと、たとえば、エチレン又はプロピレン、好ましくはエチレンのようなオレフィンとのコポリマーを表す。さらに好ましくは、オレフィンは、ポリマー骨格の約1〜50モル%、好ましくは約2〜約40モル%、さらに好ましくは約5〜約20モル%の量で存在する。さらなる実施形態では、オレフィンは、ポリマー骨格のモル%で、1%;2%;3%;4%;5%;6%;7%;8%;9%;10%;11%;12%;13%;14%;15%;16%;17%;18%;19%;20%;21%;22%;23%;24%;25%;26%;27%;28%;29%;30%;31%;32%;33%;34%;35%;36%;37%;38%;39%;40%;41%;42%;43%;44%;45%;46%;47%;48%;49%及び50%の量で存在する。
【0035】
代替的な実施形態では、Pは、ビニルアルコールと、ビニル性モノマー(たとえば、アクリルモノマー又はメタクリルモノマーなど)とのポリマーを表す。好適なビニルモノマーの例には、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルハロゲン化合物、ビニリデンハロゲン化合物、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドのビニルポリエーテル、たとえば、ギ酸ビニル、安息香酸ビニル又はビニルエーテル(たとえば、Momentive(登録商標)から入手可能なVeoVa(登録商標))などのビニルエーテル、複素環ビニル化合物のビニルエーテル、モノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のアルキルエステル、及び特にアクリル酸及びメタクリル酸のエステル;ヒドロキシル官能性を有するビニルモノマー:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルステアリルメタクリレート;N−メチロール(メタ)アクリレートを伴うビニルモノマー;ビニルポリマーの架橋又は接着促進又は後機能化のための追加の官能性を有するビニルモノマー、たとえば、ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、βカルボキシエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピルメタクリル酸ナトリウム、イタコン酸;N,N−ジメチルエチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルエチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルエチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルプロピルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルプロピルアミノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、アミノメチルスチレン、ビニルイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されず;塩基性アミンモノマーは、遊離のアミン、プロトン化塩又は四級化アミン塩として重合することができる。
【0036】
例示的な実施形態では、ビニルモノマーは、アクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチル、及びメタクリル酸n−ブチルから成る群から選択することができる。アクリル酸、メタクリル酸又はクロトン酸のコポリマーの場合、得られるコポリマーは5員環のラクトン環の形態で反応した付加体として存在し得る。
【0037】
さらに別の実施形態では、Pはビニルアルコール及びメタクリル酸アセトアセトキシエチルのコポリマーを表す。或いは、Pは、ジアセトンアクリルアミド及びビニルアルコールのコポリマーを表す。
【0038】
別の実施形態では、「P」の反応性カップリング基に関して、ケトン又はケトエステル含有の官能基、好ましくはケトエステル含有官能基が記載される。さらに好ましくは、反応性カップリング基は、アセトアセチル化剤(たとえば、ジケテン、ジケテンアセトン付加体、及び/又はtert−ブチルアセトアセテートなど)から誘導可能なケトエステル含有官能基を含む。一層さらに好ましくは、ケトエステル含有官能基は、−O(CO)CH−C(CH
3)=Oの部分を含む。
【0039】
好ましくは、反応性カップリング基は、ケトン又はケトエステル含有官能基、さらに好ましくはケトエステル含有官能基を含む。ケトエステル(すなわちアセトアセテート)基の生成が可能である好適な試薬は市販されており、アセトアセチル化剤と呼ばれる。好ましい実施形態では、反応性カップリング基は、アセトアセチル化剤から誘導されるケトエステル含有官能基を含む。好まれる市販のアセトアセチル化剤には、ジケテン(DK)、ジケテンアセトン付加体(DKAA)、及びtert−ブチルアセトアセテート(t−BAA)などのアルキルアセトアセテート:
【化1】
が挙げられ、DK及びDKAAは、広い有用性があり、使用に好適である重要なアセトアセチル化剤である。
【0040】
特に好まれるアセトアセチル化剤はt−BAAである。他のアルキルアセトアセテート、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、又はn−ブチル、t−ブチル、t−ペンチルアセトアセテートも使用することができる。アルキルアセテートがアセトアセチル化剤として使用される場合、脱離したアルコールを系から放出するように反応器を設計することは任意の態様である。
【0041】
使用前に、より効率的な反応を促進し、かつ/あるいは、さらに純粋な最終生成物を得るために、アセトアセチル化剤を任意に精製することができる。好適な精製法は、当技術分野で既知である。例として、アセトンに溶解し、その後、ヘキサンなどの炭化水素溶媒を添加して不純物の一部又はすべてを沈殿させ、純粋なDKAAを分離し、濃縮することによってDKAAを精製することができる。或いは、アセトアセチル化剤は、蒸留によって精製することができる。
【0042】
DKAAとアルコールとの反応は、アセチルケテン中間体を介して、アセトンの脱離を伴って進行すると当技術分野では一般的に考えられている(たとえば、「酢酸及びその誘導体」、米国ニューヨークのMarcel Dekker社、Victor H.Agreda及びJoseph R.Zoeller編集)。得られるアセチルケテンは、DKAAと平衡状態で存在する。したがって、過剰のアセトンが存在すると、アセチルケテンの形成及びアセトアセチル化の速度を遅くするDKAAに対する安定化効果がもたらされることが予測される。アセトンが、ポリマーをアセトアセチル化するのに使用する反応器系から放出され得る場合には、一般により良い結果が得られる。DKAAをアセトアセチル化剤として使用する場合には、生成されたアセトンを反応器から放出させる。
【0043】
t−BAAは特に好まれるアルキルアセトアセテートアセトアセチル化剤の例である。多数のアルキルアセトアセテートが容易に手に入るアセトアセチル化剤として使用され、ケトエステル基によるポリマーの官能化にて可能性を提供する。それらは、アルコールの形成を伴うトランスアセトアセチル化過程によってケトエステル基を形成し、それらは、反応物質との平衡状態を確立し得る。従って、t−BAAの場合、この工程によりtert−ブタノールの脱離が起こる。t−BAAの代わりとして、任意の他のアルキルアセトアセテート、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、又はn−ブチル、t−ペンチルアセトアセテートを使用することができる。立体障害のあるエステル、たとえば、t−ブチル又はt−ペンチル(t−アミルと同義)基は、メチル又はエチルアセトアセテートなどの立体障害の少ないエステルよりも有意に速く反応するが、アルコールの構造に応じて高い沸点を有するアルコール副生成物を生成し得る。アルキルアセトアセテートをアセトアセチル化剤として使用する場合、反応器が、脱離したアルコールを系から放出するように設計することは任意の態様である。
【0044】
ケトエステル含有官能基は、好ましくは、−O(CO)CH−C(CH
3)=Oの部分を含む。例として、ケトエステル官能化ポリ(ビニルアルコール)(PVOH−KE)は以下のように調製することができる:
【化2】
【0045】
前述したように、ケトエステル反応基が結合した官能性ポリマーPVOH/EVOHの調製は周知であり、親PVOH/EVOHを、たとえば、ジケテン又は他の好適な剤((2)で示したとおりのジケテン/アセトン付加体):
【化3】
と反応させることによって達成される。
【0046】
この種のポリマーは市販されており、日本合成のGohsefimerシリーズが典型的な例である。
【0047】
これらのケトエステル反応性基によりカップリングされたか又はケトエステル反応性基官能性を有するPVOH/EVOHポリマーは、ペンダントカルボニル基を介してアミノシランと容易に反応する。以下のスキーム(3)は、ケトエステル官能性PVOHと[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシランとが反応して、所望のイミン付加体が得られることを説明している。反応は普通、水溶液中で実施されるので、アルコキシシランの同時に起きる加水分解もおそらく起こると考えられ、このことも(3)に示す。
【化4】
【0048】
ケトン又はケトエステル含有官能基は、通常、ポリマー骨格の約1〜約25モル%、好ましくは約2〜約15モル%、一層さらに好ましくは約3〜約8モル%の量で存在する。例示的な実施形態では、ポリマー骨格に対する反応性カップリング基のモル%は、1%;2%;3%;4%;5%;6%;7%;8%;9%;10%;11%;12%;13%;14%;15%;16%;17%;18%;19%;20%;21%;22%;23%;24%;及び25%であり得る。
【0049】
さらに別の実施形態では、ポリマーの側鎖Rは、ポリマー骨格に存在する反応性カップリング基と反応することが可能である少なくとも1つの1級アミン基と、少なくとも1つのシラノール基(Si−OH)又はシラノールの前駆体基を含有するアミノシラン(例えば、アルコキシシラン若しくはアリールオキシシランなど)とから誘導される。一実施形態では、側鎖Rは、一般式(IIA):
【化5】
の化合物から誘導され、
式中、R
1、R
2及びR
3は、R
1、R
2又はR
3の少なくとも1つがC
1−9アルコキシ基又はアリールオキシ基を表すという条件で、独立に、H、C
1−9アルキル、アリール、C
1−9アルコキシ、又はアリールオキシを表し;
xは、0〜9、好ましくは0〜2の範囲であり;
yは、1〜9、好ましくは2〜6の範囲である。
【0050】
ポリマーの好ましい実施形態では、xは0、1又は2であり、yは3である。さらに好ましい実施形態では、R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも2つは、独立に、C
1−9アルコキシを表し、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシから成る群から選択される。
【0051】
或いは、一般式は、式IIBに従い得る:
【化6】
【0052】
R
1は炭素数1〜4のアルキル基又はアルキレン基であり、R
2及びR
3は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは水素原子又はアミノアルキル基であり、nは1又は0である。
【0053】
ポリマーのさらに好ましい実施形態では、側鎖Rは、以下の化合物:アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリプロポキシシラン、2−アミノエチルトリブトキシシラン、1−アミノエチルトリメトキシシラン、1−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピル−3−アミノプロピルジエチルエトキシシランエチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン、3−アミノプロピルエチルジプロポキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジエチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルプロポキシシラン、3−アミノプロピルジエチルプロポキシシラン、3−アミノプロピルジプロピルプロポキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、2−アミノプロピルトリブトキシシラン、1−アミノプロピルトリメトキシシラン、1−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−アミノプロピルトリプロポキシシラン、1−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリメトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノメチルアミノエチルトリエトキシシラン、N−アミノメチルアミノエチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−1−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−1−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチレン3−ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリプロポキシシラン及び/又はトリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミンの1以上から誘導され得る。
【0054】
一層さらに好ましくは、側鎖Rは、以下の化合物
(a)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APMES)
【化7】
(b)3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)
【化8】
(c)N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン(ETAPMS)
【化9】
(d)N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(ETAPES)
【化10】
(e)3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン(DETAPMS)
【化11】
(f)3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシラン(DETAPES)
【化12】
及び
(g)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(APMS)
【化13】
の1以上から誘導され得る。
【0055】
さらに好ましくは、側鎖Rは、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、又は3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシランから誘導され得る。
【0056】
好適なヒドラジン又はヒドラジドで官能化されたアミノシランも採用することができる。
【0057】
ポリマーの好ましい実施形態では、側鎖Rは、ポリマー骨格の約1〜25モル%の量で、好ましくは約2〜15モル%の量で、一層さらに好ましくは約3〜約8モル%の量で存在する。例示的な実施形態では、ポリマーの骨格に対する側鎖のモル%は、1%;2%;3%;4%;5%;6%;7%;8%;9%;10%;11%;12%;13%;14%;15%;16%;17%;18%;19%;20%;21%;22%;23%;24%;及び25%であってよい。
【0058】
或いは、ポリマー合成の間、反応性カップリング基に対して過剰のアミノシラン及び/又はアミノシラノールを採用し得る。そのような例では、アミノシラン及び/又はアミノシラノールの一部は、未反応の形態で存在し、したがってポリマー骨格に連結していない。
【0059】
ポリマーの好ましい実施形態では、側鎖R、又は代わりに式(IIA)で表されるアミノシランは、ポリマー骨格に存在する反応性カップリング基の量に対して約25〜約200モル%、約50〜約150モル%、好ましくは約75〜約125モル%の量で存在する。別の実施形態では、ポリマー骨格に存在する反応性カップリング基に対する側鎖の量は、25%;26%;27%;28%;29%;30%;31%;32%;33%;34%;35%;36%;37%;38%;39%;40%;41%;42%;43%;44%;45%;46%;47%;48%;49%;50%;51%;52%;53%;54%;55%;56%;57%;58%;59%;60%;61%;62%;63%;64%;65%;66%;67%;68%;69%;70%;71%;72%;73%;74%;75%;76%;77%;78%;79%;80%;81%;82%;84%;85%;86%;87%;88%;89%;90%;91%;92%;93%;94%;95%;96%;97%;98%;99%;100%;101%;102%;103%;104%;105%;106%;107%;108%;109%;110%;111%;112%;113%;114%;115%;116%;117%;118%;119%;120%;121%;122%;123%;124%;125%;126%;127%;128%;129%;130%;131%;132%;133%;134%;135%;136%;137%;138%;139%;140%;141%;142%;143%;144%;145%;146%;147%;148%;149%;150%;151%;152%;153%;154%;155%;156%;157%;158%;159%;160%;161%;162%;163%;164%;165%;166%;167%;168%;169%;170%;171%;172%;173%;174%;175%;176%;177%;178%;179%;180%;181%;182%;184%;185%;186%;187%;188%;189%;190%;191%;192%;193%;194%;195%;196%;197%;198%;199%;及び200%である。
【0060】
例示的な実施形態では、ポリマーは、酢酸、又はそのアルカリ金属塩(たとえば、酢酸ナトリウムなど)を実質的に含まない。特に、架橋を促進するために、酢酸又はその金属塩を添加しない。
【0061】
一連のアミノシランが本発明に適合する。以下の非限定のリストは式(1)に従う、本出願に適合する物質を示す:アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリプロポキシシラン、2−アミノエチルトリブトキシシラン、1−アミノエチルトリメトキシシラン、1−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリブトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、2−アミノプロピルトリブトキシシラン、1−アミノプロピルトリメトキシシラン、1−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−アミノプロピルトリプロポキシシラン、1−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリメトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリトリプロポキシシラン、N−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−1−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−1−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチレン3−ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン等。これらの物質は単独で使用してもよいし、又は組み合わせて使用してもよい。
【0062】
ケトエステル反応性基がカップリングしているか又はケトエステル反応性基官能性であるPVOH/EVOHポリマー又はコポリマーと反応させるのに使用するアミノシランの好ましい比は、2つの試薬の相対重量に基づいて1:2〜1:100の範囲である。これらの比は、Revolmerの最初の出願及び我々の仮出願に記載されている。好ましい比は、2〜100部の官能性PVOH/EVOHに対して1部のアミノシランの比であることが意図される。アミノシラン:ケトエステル官能性PVOH/EVOHのさらに好ましい比は、1:2〜1:20である。例示的な実施形態では、比は、1:2;1:3:1:4;1:5;1:6;1:7;1:8;1:9;1:10;1:11;1:12;1:13;1:14;1:15;1:16;1:17;1:18;1:19;1:20;1:21;1:22;1:23;1:24;1:25;1:26;1:27;1:28;1:29;1:30;1:31;1:32;1:33;1:34;1:35;1:36;1:37;1:38;1:39;1:40;1:41;1:42;1:43;1:44;1:45;1:46;1:47;1:48;1:49;1:50;1:51;1:52;1:53;1:54;1:55;1:56;1:57;1:58;1:59;1:60;1:61;1:62;1:63;1:64;1:65;1:66;1:67;1:68;1:69;1:70;1:71;1:72;1:73;1:74;1:75;1:76;1:77;1:78;1:79;1:80;1:81;1:82;1:83;1:84;1:85;1:86;1:87;1:88;1:89;1:90;1:91;1:92;1:93;1:94;1:95;1:96;1:97;1:98;1:99;及び1:100である。
【0063】
代替的な実施形態では、アミノシラン:ケトエステル官能性PVOH/EVOHの比は等モルであってよく、又はそれに相当近くてもよい。たとえば、比は2:1〜1:100であってよい。さらに好ましくは、比は2:1〜1:10である。一層さらに好ましくは、比は1.5:1〜5:1である。
【0064】
本発明の別の態様によれば、上述した種類の官能化されたビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーの調製方法が提供され、この方法は、
(a)酢酸ビニルの直鎖若しくは分枝鎖のホモポリマー、又は酢酸ビニルと少なくとも1つの他のモノマーとのコポリマーを調製する工程と;
(b)工程(a)の酢酸ビニルのホモポリマー又はコポリマーを加水分解してビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーを得る工程と;
(c)工程(b)のビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーを、好適な反応性カップリング剤と反応させて、1以上の反応性カップリング基を含むビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーを得る工程と;
(d)得られた工程(c)の1以上の反応性カップリング基を含むビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーを、好適なアミノシラン及び/又はアミノシラノールと反応させる工程と;
(e)そのように形成されたコポリマーを任意に単離する工程と
を含む。
【0065】
上記方法の工程(a)〜(d)で詳説した各反応の完了後に得られるポリマーは、その後の工程の開始の前に単離してもよいし、その場で反応させてもよい。
【0066】
上記方法の工程(a)の一実施形態では、酢酸ビニルを少なくとも1つの他のモノマーと反応させて直鎖又は分枝鎖の酢酸ビニルコポリマーを得る。その後、工程(b)に従って、酢酸ビニルのコポリマーを加水分解してビニルアルコールのコポリマーを得る。例として、エチレンを酢酸ビニルと共重合させてエチレン/酢酸ビニルコポリマーを得、その後それを加水分解して以下のようにエチレン/ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を形成し得る:
【化14】
【0067】
或いは、酢酸ビニルを重合して直鎖又は分枝鎖の酢酸ビニルホモポリマー、すなわちポリ(酢酸ビニル)を得る。その後、工程(b)に従って、酢酸ビニルのホモポリマーを以下のようにポリ(ビニルアルコール)に加水分解する。
【化15】
【0068】
PVOHは、たとえば、ポリ(ギ酸ビニル)、ポリ(安息香酸ビニル)又はポリ(ビニルエーテル)などの他のポリ(ビニルエステル)の加水分解によって調製することもできる。EVOHなどのビニルアルコールのコポリマーも、関連するモノマーをビニルアルコール以外のビニルエステルと共重合し、得られたポリマーを加水分解することによって調製することができる。
【0069】
方法の工程(b)の間、多数の酢酸ビニル基が、得られたポリマー中で加水分解されないままである。本発明の例示的な実施形態では、工程(b)には、酢酸ビニルのホモポリマー又はコポリマーの、たとえば、約25〜約100%加水分解などの部分加水分解が含まれる。さらに好ましくは、部分加水分解は、約50〜約100%加水分解の範囲である。一層さらに好ましくは、部分加水分解は約70〜約100%加水分解の範囲である。なお一層さらに好ましくは、部分加水分解は約80〜約100%加水分解の範囲である。
【0070】
上述した方法で使用するために好適なポリ(ビニルアルコール)には、市販のアルコール及び従来の合成法によって調製されるアルコールが挙げられる。たとえば、ポリ(ビニルアルコール)は、商品名Gohsenol(登録商標)のもとで日本合成から、又は商品名Poval(登録商標)のもとでクラレから市販されている。本発明の方法で使用するためのビニルアルコール(たとえば、EVOH)の好適なコポリマーは市販されており、又は従来の合成法で調製され得る。たとえば、エチレンとビニルアルコールのコポリマーは、商品名Exceval(登録商標)のもとでクラレから、又は商品名Soarnol(登録商標)のもとで日本合成から市販されている。
【0071】
方法の工程(c)に従って、ビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーを好適な反応性カップリング剤と反応させて1以上の反応性カップリング基を有するビニルアルコールのコポリマーを得る。一般に、工程(c)は、好適な溶媒(すなわち、ビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーと反応性カップリング剤との双方を溶媒和することが可能であり、双方に対して不活性である溶媒)、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、又はジメチルアセトアミド(DMAc)中で約90〜190℃の範囲の高められた温度、たとえば、約135℃にて実施する。
【0072】
或いは、本方法は、濃縮された相において、あるいは、本質的に溶媒を含まない方法を用いて実行することができる。例として、米国特許第5,719,231号は、高温で固形ポリマーにアセトアセテート形成性組成物をスプレーすることによる、固相におけるアセトアセテート形成組成物とビニルアルコール系ポリマーとの反応を記載している。類似の方法が本発明で採用され得る。
【0073】
或いは、水などの溶媒、又は両性非プロトン性の溶媒、又は有機酸などの非溶媒中のポリマーのペースト又は分散物を調製することができる。例として、ジケテンとの反応の前に、酢酸を、(JP9291185Aに記載された類似の方法で)ビニルアルコールのポリマーに吸着させ、スプレーし又は混合してもよい。或いは、任意で高温にて、ポリマーを水と混合して高い強度で撹拌することによって、あるいは、たとえば真空下でポリマーの存在する溶液を濃縮することによって、水中のビニルアルコールポリマーのペーストを調製することができる。官能化は、ポリマーを、アセトアセチル化剤にとって良溶媒である液体媒体に分散した又は懸濁した状態で、実行することができる。例として、ヘキサンなどの炭化水素溶媒又は酢酸などの有機酸にポリマーを分散させて、この混合物にジケテンを添加することができる。アセトアセチル化剤のポリマーとの反応に続いて、濾過によって液体を分離し、任意に再利用することによって、本方法における高い効率性を得るために利用するができる。未反応のアセトアセチル化剤又は溶媒/分散媒体(例えば酸など)は、蒸発によって、あるいは好適な溶媒によって物質から洗い流すことによって除去することができる。
【0074】
或いは、ケトエステルで官能化されたエチレン/ビニルアルコールコポリマー(EVOH/KE)は以下のように調製され得る:
【化16】
【0075】
工程(c)で調製される種類のケトエステルで官能化されたビニルアルコールのホモポリマー及びコポリマーは、他の技法を用いても調製され得る。アセトアセテート基を有する好適なビニルモノマーを、ラジカル機構によってビニルアルコールコポリマーにグラフトすることができる。たとえば、Eastman社から市販されているメタクリル酸アセトアセトキシエチル(AAEM)を、溶液又は分散液において、ビニルアルコールポリマー及びラジカル開始剤(たとえば、アゾ化合物又は過酸化化合物など)と組み合わせることができる。或いは、アセトアセテート基を有する好適なビニルモノマーを、酢酸ビニル又は別のビニルエステルと共重合させ、得られたポリマーを選択的に加水分解することができる。このような方法論は方法の代替的な実施形態を構成する。
【0076】
方法の工程(d)に従って、工程(c)で得られた1以上の反応性カップリング基を含むビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマー(たとえば、EVOH/KE又はPVOH/KE)を、好適なアミノシラン及び/又はアミノシラノールと反応させる。アミノシランにおけるアミノ基を、たとえば、以下のような2級アミンを形成させるために、ポリマー骨格上の反応性カップリング基(たとえば、ケトエステル基)と反応させる:
【化17】
【0077】
アミノシランは、加水分解されていない形態で使用してもよいし、あるいは、ポリマーへの添加に先立って水中で加水分解させてもよい。好ましくは、工程(d)で使用する溶媒は、ポリマー骨格と、得られるアミノシラン官能化ポリマーとが、水、又は(DMF又はDMSOを含む)両性非プロトン性溶媒中で、良好な溶解性を有する溶媒である。1以上のそのような溶媒と、別の混和性溶媒〔たとえば、アルコール、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノール、好ましくはn−プロパノールなど〕との混合物中で反応を実施する。本発明の官能化されたポリ(ビニルアルコール)又はビニルアルコールコポリマーと、水、又は水とC
1−4アルコールとの混合物とを含む組成物は、好ましくは、酸触媒を含まず、本発明の官能化されたビニルアルコールのホモポリマー及びコポリマーを含有するコーティングを調製するのに使用することができる。
【0078】
採用されるアミノシラン及びアミノシラノールは市販されており、かつ/あるいは、従来の合成法によって調製することができる。
【0079】
3−アミノプロピルトリメトキシシランは、Sigma−Aldrichから、商品名PC1110(登録商標)のもとでPower Chemical社から、及び商品名A301(登録商標)のもとでOnichemから市販されている。
【0080】
3−アミノプロピルトリエトキシシランは、Sigma−Aldrichから、商品名GeniosilGF(登録商標)のもとでWacker Chemieから、及び商品名SIA0610.0(登録商標)のもとでGelestから市販されている。
【0081】
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランは、商品名Dynasylan DAMO(登録商標)のもとでEvonikから、及び商品名Z−6094 Silane(登録商標)のもとでDow Corningから市販されている。
【0082】
3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシランは、商品名T2910(登録商標)のもとでUCTから、及び商品名Dynasylan TRIAMO(登録商標)のもとでEvonikから市販されている。
【0083】
3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシランは、Tianjin Zhongxinから市販されている。
【0084】
3−アミノプロピルメチルジメトキシシランは、商品名SiSiB PC1130(登録商標)のもとでPower Chemical社から市販されている。
【0085】
官能化されたビニルアルコールポリマーは、従来の手段によって、たとえば、蒸発又はスプレー乾燥によって溶液から任意に単離され得る。
【0086】
インク又はコーティング組成物中の官能化されたビニルアルコールのホモポリマー及びコポリマーは、1以上のシラノール(Si−OH)基を有する。アミノシランのシラノール基は、以下の一般方程式:
2T−Si(T
2)−OH → T−Si(T
2)−O−Si(T
2)−T + H
2O
に従って架橋してSi−O−Siネットワークを形成し得ることが知られている。
(式中、Tは、たとえば、アルキル、H、OH又はアルコキシなどの適当な官能基である)。
【0087】
本技術に係る架橋ポリマーは、摩耗に対する耐性を高める。これは特に、ポリマーが可溶性である溶媒の存在下にある場合に顕著である。ビニルアルコールのホモポリマー及びコポリマーは、一般式(III)の特定のアミノシランによって官能化されると、加熱した際、容易に架橋して、酸触媒の添加なしで耐性コーティングを形成する。式(III)は以下のとおりである:
【化18】
式中、R
1、R
2及びR
3は式(IIA)を参照して以前定義したとおりであり;
xは2〜9の範囲であり、好ましくは2であり;
yは3〜9の範囲であり、好ましくは3である。
【0088】
一連の組成物を、以下の表1に示すように、市販のケトエステル官能化ポリマーに特定のアミノシランを反応させることによって、あるいは、アセトアセチル化剤によってその後官能化されるビニルアルコールのホモポリマー及びコポリマーから調製した。
【表1】
【0089】
ケトエステルのモル%は、ケトエステル(KE)官能基(functionality)を有する反復単位の比率として定義される。10%のレベルでは、ポリマーにおけるPVOH単位、すなわち、ヒドロキシル含有のビニルアルコール単位の10のうち1がKEで官能化されるであろう。架橋剤のモル%は、アミノシランと反応するKE官能基の比率として定義される。50%のレベルでは、これはKE基の半分が架橋剤と反応すべきであることを意味する。グラフトされた実際のKE官能基についての推定値はFT−IRを用いて得られる。AQ4104(登録商標)について引用される値は100%のビニルアルコール物質と同等である。
【0090】
KE基で官能化されたZ−200(登録商標)及びOKS−3551(登録商標)(O3551)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)は日本合成から得られた。他のポリマー骨格すべてはDMSO溶液にてMowiol4−98(登録商標)(M4−98(登録商標)、クラレ)又はExceval(登録商標)AQ−4104(AQ−4104(登録商標)、クラレ)にジケテンアセトン付加体を反応させることによって調製した。M4−98(登録商標)は4.0〜5.0MPasの粘度及び98.0〜98.8%程度の加水分解度のPVAである。AQ−4104(登録商標)は約14%のエチレン、3.8〜4.5MPasの粘度及び98.0〜99.0%程度の加水分解度のPVAである。試料AS1GはKE官能化PVAを含まない対照として製造した。
【0091】
本発明の別の態様によれば、インク及びコーティング組成物は充填剤を含み得る。充填剤には、以下:タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪灰石、雲母、粘土、カオリン、シリカ、珪藻土、アルミナ、亜鉛白、酸化マグネシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス粉、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特に好まれる充填剤は粘土である。
【0092】
粘土コンパウンドは有利には、水性媒体に容易に分散する粘土であり、最大のバリア性能を提供するために鉱物薄層の剥離が高い程度で要求される。使用される粘土は好ましくはナノ粒子状である。ナノ粒子状の粘土は、ナノメートル範囲、すなわち、100nm未満の寸法を少なくとも1つ有する粒子の粘土である。通常、ナノ粒子状の粘土粒子は100nm未満の最大厚さ寸法、たとえば、50nm未満の最大寸法、たとえば、20nm未満の最大寸法を有する。
【0093】
それが、水性媒体に十分に分散性であり、分散の間、挿入され得る又は剥離され得る及び/又は酸素バリアコーティングでの使用に好適であるという条件で、本発明で使用される粘土の種類には制約はない。剥離された形態では、粘土のアスペクト比、すなわち、単一の粘土「シート」の長さと厚さの間の比は達成される酸素バリアのレベルに影響を有する。アスペクト比が大きければ大きいほど、乾燥コーティング及びラミネートを介した酸素拡散の速度は大きく減少する。有利なことに、粘土はその剥離された形態で約20を超えるアスペクト比を有する。20〜10,000の間のアスペクト比を持つ粘土鉱物が通常使用される。特に好まれるのは、約50より大きい、たとえば、約100より大きい、さらに好ましくは250より大きいアスペクト比を有するそれら鉱物である。
【0094】
好適な粘土の例には、カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルガイト、イライト、ベントナイト、ハロイサイト、カオリン、雲母、バーミキュライト、珪藻土、及びフーラー土、焼成ケイ酸アルミナム、水和ケイ酸アルミナム、ケイ酸マグネシウムアルミナム、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸マグネシウムが挙げられる。これらの物質は単独で使用してもよいし、組み合わせで使用してもよい。特に好まれる粘土はバーミキュライト科のものである。好適な物質の市販試料は、W.R.GranceのMicroliteのような予め作製された分散物として利用可能である。好ましい実施形態では、粘土はバーミキュライトである。
【0095】
本発明者らによれば、新規のシリル官能性ポリマーとの組み合わせた上述した粘土は、改善された接着強度を示す一方で、高湿度においても良好なバリア性能を維持する。結果を以下にさらに詳細に提供する。
【0096】
本発明のさらに別の態様では、インク及びコーティング組成物を基材に適用する。柔軟性の基材の性質に特定の制約はないが、プラスチック製のポリマー膜が好まれる。しか、本発明のコーティング膜で包装される物質が食品又は医薬品である場合、プラスチック膜又は他の基材は食品等級であることが普通好まれる。
【0097】
好適な物質の例には、たとえば、ポリエチレン又はポリプロピレンのようなポリオレフィン;たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンナフテネートのようなポリエステル;ナイロン−6又はナイロン−66のようなポリアミド;及びたとえば、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、アクリルポリマー、ポリスチレン、セルロース又はポリ塩化ビニリデンのような他のポリマーが挙げられる。これらのポリマーを作製するのに使用される相溶性の2以上のモノマーのコポリマーを使用することも可能である。さらに、本発明の組成物は、接着的に形成されたラミネートを含む紙基材(たとえば、一般に食品包装で遭遇するポリエステル及びポリオレフィンで被覆した板紙)に含まれ得る。
【0098】
当該技術で既知の他の処理法も許容できるが、好ましくはコロナ放電によって、基材を、好ましくは本発明の組成物によって被覆される直前に処理する。この方法は当該技術で周知であり、たとえば、1986年Van Nostrand Reinhold社によって出版された、Donatas Satasによって編集された「Plastics Finishing and Decoration」の80〜86ページに記載されている。2つの柔軟性のポリマー膜は互いに同一であってもよいし、又はそれらは互いに異なっていてもよい。
【0099】
例となる食品包装用途には、たとえば、調理された(冷蔵の)肉、チーズ、ヨーグルト等のようなMAP(調整気相包装)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのプラスチック包装にはN
2とCO
2の制御された混合物である調整気相が入っている。従って、酸素が包装から排除されて、酸化又は好気性細菌作用による製品の損傷を妨げるのに役立つ。良好なレベルの酸素バリアを必要とする他の種類の包装には、ポテトチップ及びナッツのような風味製品が挙げられる。これらの製品から酸素を排除し、これらに含有される脂肪の酸化を遅らせる及び/又は妨げることが重要である。柔軟性のバリア包装は、コーヒーの包装、ワインの包装及びジュースの包装を含む多くのさらなる用途で使用される。
【0100】
その酸素バリア性能について測定したPET−A1膜の試料は、1.0〜7.5cm
3/m
2の範囲の酸素透過率の値を有する。この種の膜の利点の1つは、酸素バリア性能が相対湿度に無関係であるということである。しかし、膜は不透明であり、これらの膜の酸素バリア性能は膜が曲げられた場合、亀裂によって劣化する。
【0101】
同様に、薄いセラミックで被覆したプラスチック膜も一般に使用されている。これらは、薄い酸化アルミニウム(「AlOx」)又は酸化珪素(「SiOx」)を被覆した膜のいずれか、特にPETである。PET−Alコーティングと同様に、これらの膜の酸素バリア性能は相対湿度に無関係であるが、それらも曲がる傾向があり、亀裂がガスバリア性能の喪失の原因となる。測定されたOTRは、PET−AlOxについては2〜10、及びPET−SiOxについては1〜6の範囲である。
【0102】
さらに無機物被覆膜は、その製造に特殊な高真空の設備を必要とする。本コーティングは、従来の印刷法によってプラスチック膜上に適用することができ、それにより潜在的にはるかに多用途である。さらに、プリンタは、種々の膜、たとえば、PET、PET−SiOx等を準備する必要がなく、被覆していないベース膜を準備し、そのベース膜に独自のバリアコーティングを適用することができる。
【0103】
本発明の一層さらなる別の態様によれば、上述したインク及びコーティング組成物を有する基材上に接着剤を適用し得る。使用される接着剤の性質には特定の制約はなく、2以上のプラスチック膜の接着に一般に使用される接着剤を本発明で使用し得る。好適な接着剤の例には、たとえば、Henkel(LiofolUR3969/UR6055,LiofolUR3640/UR6800,LiofolUR3894/UR6055),Rohm&Haas(Adcote811/9L10)及びCoim(CA2525/2526、NC250/CA350)のような溶媒に基づいた(ポリウレタン)種類;たとえば、HenkelのLiofol7780/UR6082,UR7750/UR6071のような溶媒を含まないポリウレタン接着剤が挙げられ、Rohm&HaasのMor−FreeELM−415A/Mor−FreeCR140も使用することができる。さらに、Lamal408−40A/C5083のようなエポキシ系接着剤も使用し得る。Aqualam300A/300Dのような水性接着剤、Rohm&Haasのエポキシ系も使用し得る。この層は酸素バリア層を保護層又は上述のような層に接着する。
【0104】
この層のための物質の例には、不飽和カルボン酸、不飽和ポリカルボン酸又はそれらの無水物によってポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン/酢酸ビニルコポリマーをグラフト修飾することによって得られる極性基含有の修飾オレフィン;エチレン/酢酸ビニルコポリマー及びその鹸化生成物;エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、そのようなコポリマーを金属イオンで架橋することによって得られるイオノマー;及びブタジエンとのスチレンのブロックコポリマーが挙げられる。これらは好ましくは、酸素バリア層及び保護層を形成するのに使用される合成樹脂と相溶性である合成樹脂である。
結果及び考察
【0105】
図1で説明するように、未修飾のポリ(ビニルアルコール)ポリマー骨格M4−98(登録商標)の層、およびケトエステル修飾したポリ(ビニルアルコール)ポリマー骨格Z−200(登録商標)の層を追加すると、接着性に形成したラミネートの接着強度が弱体化した。それに対してアミノシランで修飾したポリマーは同等の、場合によっては高められた、ラミネート層間の接着を保持した。
【0106】
未修飾のポリマー骨格をアミノシラン(AS1G)と混合した配合物を調製し、このポリマーを有するラミネートの得られる接着性を測定した。骨格にはアミノ基がそれ自体をポリマー骨格に結合するための基はなく、2つは混合物として溶液中に存在しており、その結果、得られたラミネートにおけるシート間の接着性は、予想したとおり非常に貧弱なものであった。この例では、アミノシランで官能化したビニルアルコールのホモポリマー及びコポリマーの優れた接着性が、他のポリマーでは不可能である用途を可能にするであろう。
【0107】
一般に、未修飾のホモポリマー及びコポリマーのビニルアルコール膜は水分又は水における浸漬からの攻撃に感受性である。予想外なことに、ポリマー骨格におけるケトエステル及びアミノシランによる官能化の賢明な程度によって、配向されたポリプロピレン(PP)膜及びポリエチレン(PE)膜のラミネートの接着性が顕著に高められることが見出された。
【0108】
幾つかの異なるアミノシランを、日本合成から得たケトエステルポリ(ビニルアルコール)(OKS3551(登録商標))と混合し、乾燥させたガラススライド上に成形した膜を100℃で硬化させた。「溶液摩擦を用いた有機コーティングの溶媒耐性を評価する標準的技法」と題するASTM試験法番号ASTM D5402−06方法Aを用い、メチルエチルケトンを水で置き換えて、水溶媒に暴露することによって、得られたコーティングの堅牢度を調べた。この試験法に準拠して、ヒトの手によって、およそ1〜2kgの一定量の力でポリマーの膜に沿って水で湿らせた布を前後に擦った。膜が役に立たなくなるのに必要とされる前後の摩擦の数を記録した。OKS3551(登録商標)に反応したアミノシランと水摩擦への耐性の間の関係を記載する以下の表2にて結果を要約する。
【表2】
【0109】
未修飾のポリ(ビニルアルコール)は湿った布に接触した際、本質的に直ちに溶解し始める。それに対して、APTMS、APTES及びETAPMSで修飾したPVOHは、そのさらに疎水性の組成と高い接着のためにやや長く持ちこたえることが分かった。しかしながら、これらの厳しい条件下で数回の摩擦の後、それらもほとんど架橋を有さないか又は架橋を有さないため、剥離し始めた。DETAPMSの膜は、硬化後は十分な又は実質的な程度に架橋を有し、その結果、試験の持続時間(200回の摩擦)に耐えることができた。従って、場合により、本発明の高い接着性についても、複数の反復エチレンアミン単位を有するアミノシランを用いる架橋からの利益が得られ、優れた機械的接着性が得られる。
【0110】
硬質、柔軟性の食品包装及び工業包装で使用するためのインク又はコーティング組成物における官能化されたビニルアルコールのホモポリマー及びコポリマーの接着特性を評価するために、包装材を代表的な基材上にその溶液の膜を成形し、風乾した。包装材には、包装ラミネートで使用するための適当な膜形式で、配向したポリアミド(OPA),及びたとえば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンが含まれていた。上述した方法で試験した基材は、新たにコロナ放電処理した、12μmのMelinexS、25μmのOPP(25MB400;ex.Exxon Mobil膜)、及びSun Chemical(USA)から供給された25μmのOPA(ナイロン膜)であった。
【0111】
次いで、インク又はコーティング組成物を、たとえば、RK Print UK社から供給されるNo.1K-Barで塗布し、約6μmの湿った膜厚を基材上に形成させた。コーティングを温風で乾燥させた(たとえば、ラボプリントをヘアドライヤーで乾かした)。Mocon Oxtran2/21気体透過性テスターを用いて、被覆した基材試料の酸素透過率を評価した。結果を以下にさらに詳細に提供する。
【0112】
プラスチック膜の処理した側にインク又はコーティング組成物を適用することによってラミネート包装を調製し、乾燥させたそのコーティング上に接着剤を適用し、膜のさらなる層(例えば、30μmゲージのポリ(エチレン)膜)を最上部に置いた。ラミネート包装から気泡を擦り取った。接着剤は、CoimからのNC250/CA350を入手し、製造元の指示書に従って調製し、約2.5gの最終乾燥膜重量を達成するように適用した。ラミネートを25℃で約10〜14日間保存し、イソシアネート系接着剤の完全な硬化を確実にした。
【0113】
得られたラミネート包装を試験用の細片(15mm幅)に切断した。従来のT剥離試験を用いて、被覆したプラスチック膜とその後接着した膜との間の接着強度を評価した。試験には、2つを機械的に引き離すことによって2つのポリマー膜を分離するのに必要とされるニュートン(N)での力を測定することが含まれた。本発明の官能化されたポリマーによって構成されたラミネートを引き離すのに必要とされる力を、未修飾であり、かつケトエステル官能化されたポリマー骨格で作製した類似のラミネートと比較した。
【0114】
本明細書でさらに詳しく記載するように、ポリマー配合物の3つの試料、実施例A、B及びCを以下に提供する。コーティング配合物、1a/b、2a/b、3a/b、4a/b、5a/b、6a/b及び7a/bは、実施例A、B及びCの少なくとも1つを含む。酸素透過率及び接着強度は2つの基材、Melinex S及び25MB400を用いて調べた。比較例1a/b、2a/b及び3a/bも提供する。
実施例A:シラン官能性EVOH#1の調製
【0115】
60℃に加熱することによって、25gのn−プロパノールと67gの脱イオン水との混合物に、8.0gのRevBarDK6(>97.5%固体(w/w)、Revolymerから供給されたケトエステル官能性EVOH)を溶解させた。60分後、ポリマーはすべて溶解し、溶液を22℃に放冷した。撹拌しながら、2.16gの(3−アミノプロピル)トリエトキシシランを加え、混合物を2分間撹拌した。次いでこの混合物を、60℃で12日間保存し、ポリマー上のペンダントケトン基とシランの1級アミンとの間の反応を確実に完了させた。
実施例B:シラン官能性EVOH#2の調製
【0116】
60℃に加熱することによって、25gのn−プロパノールと67gの脱イオン水との混合物に、8.0gのRevBarDK6(>97.5%固体(w/w)、Revolymerから供給されたケトエステル官能性EVOH)を溶解させた。60分後、ポリマーはすべて溶解し、溶液を22℃に放冷した。撹拌しながら、2.88gの(3−アミノプロピル)トリエトキシシランを加え、混合物を2分間撹拌した。次いでこの混合物を60℃で12日間保存し、ポリマー上のペンダントケトン基とシランの1級アミンとの間の反応を確実に完了させた。
実施例C:シラン官能性EVOH#3の調製
【0117】
60℃に加熱することによって、25gのn−プロパノールと67gの脱イオン水との混合物に、8.0gのRevolymerから供給されたケトエステル官能性EVOHであるRevBarDK6を溶解させた。60分後、ポリマーはすべて溶解し、溶液を22℃に放冷した。撹拌しながら、2.52gの(3−アミノプロピル)トリエトキシシランを加え、混合物を2分間撹拌した。次いで混合物を60℃で12日間保存し、ポリマー上のペンダントケトン基とシランの1級アミンとの間の反応を確実に完了させた。
実施例1:ガスバリアコーティングの調製
【0118】
5.6gの水を27.6gの実施例Aに加え、次いで、16.8gのMicrolite963(W.R.Graceによって供給されたバーミキュライトの約7.8%固体の水性分散液)をそれに加えた。Ultra TurraxT2ブレンダ―を用いて2分間、混合物を混合した。6gsm(濡れた)で12ミクロンゲージのポリエステル膜(MelinexS)にコーティングを適用し、温風で乾燥させた。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて9.07cm
3/m
2/日であると測定された(非被覆PET膜の酸素バリアは105.6cm
3/m
2/日で測定された)。次いでコーティングをPET膜及びOPP膜に適用し、上述により概説した手順に従ってPE膜に積層させた(laminated)。表1に、実施例1〜7についての接着強度試験の結果を示す。50%RH及び23℃にて被覆したPETについてのOTRは1.0cm
3/m
2/日未満であった。
実施例2:ガスバリアコーティングの調製
【0119】
5.6gの水を22.8gの実施例Aに加え、次いで、21.6gのMicrolite963をそれに加えた。実施例4と同様の方法でコーティングを調製し、試験した。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて7.60cm
3/m
2/日であると測定された。50%RH及び23℃にて被覆したPETについてのOTRは1.0cm
3/m
2/日未満であった。
実施例3:ガスバリアコーティングの調製
【0120】
3.0gのエタノール/水と4.2gの脱イオン水との混合物を、23.6gの実施例Bに加え、次いで19.2gのMicrolite963をそれに加えた。実施例1と同様の方法で、コーティングを調製し、試験した。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて6.63cm
3/m
2/日であると測定された。50%RH及び23℃にて被覆したPETについてのOTRは1.0cm
3/m
2/日未満であった。
実施例4:ガスバリアコーティングの調製
【0121】
3.0gのエタノール/水と4.2gの脱イオン水との混合物を、26.8gの実施例Cに加え、次いで16.8gのMicrolite963をそれに加えた。実施例1と同様の方法で、コーティングを調製し、試験した。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて12.85cm
3/m
2/日であると測定された。50%RH及び23℃にて被覆したPETについてのOTRは1.0cm
3/m
2/日未満であった。
実施例5:ガスバリアコーティングの調製
【0122】
3.0gのエタノール/水と3.1gの脱イオン水との混合物を、24.7gの実施例3に加え、次いで19.2gのMicrolite963をそれに加えた。実施例1と同様の方法で、コーティングを調製し、試験した。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて7.90cm
3/m
2/日であると測定された。50%RH及び23℃にて被覆したPETについてのOTRは1.0cm
3/m
2/日未満であった。
実施例6:ガスバリアコーティングの調製
【0123】
3.0gのエタノール/水と3.0gの脱イオン水との混合物を、22.7gの実施例Cに加え、次いで21.6gのMicrolite963をそれに加えた。実施例1と同様の方法で、コーティングを調製し、試験した。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて6.41cm
3/m
2/日であると測定された。この被覆した膜の酸素バリアは、23℃で50%及び75%の相対湿度でも測定し、それぞれ0.34及び4.43のバリアを提供することが分かった。
実施例7:アスペクト比の低い粘土によるガスバリアコーティングの調製
【0124】
ベントナイト粘土分散物(SunBar(SX012)O
2バリア1.1、パートB;ex.Sun Chemical)の3.9%(w/w)分散物30.2gを、19.8gの実施例Bに加えた。実施例1と同様の方法でコーティングを調製し、試験した。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて72.31cm
3/m
2/日であると測定された。50%RH及び23℃にて被覆したPETについてのOTRは1cc/m
2/日未満だった。この被覆した膜の酸素バリアは50%の相対湿度でも測定し、0.95cm
3/m
2/日のバリアを提供することが分かった。
比較例1:シランを含まず、ケトエステルを含まないガスバリアコーティング
【0125】
25gのn−プロパノールと67gの脱イオン水との混合物に、クラレから供給されたPVOHである8.0gのExcevalAQ4104を溶解させ、85℃に加熱した。60分後、ポリマーは溶解し、溶液を22℃に冷却した。3.0gのエタノールと3.0gの脱イオン水との混合物を26.3gのこの溶液に加え、次いで17.9gのMicrolite963をそれに加えた。実施例1と同様の方法でコーティングを調製し、試験した。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて3.63cm
3/m
2/日であると測定された。
比較例2:シランとケトエステルを含まず、アスペクト比の低い粘土を含有するガスバリアコーティング
【0126】
25gのn−プロパノールと67gの脱イオン水との混合物に、クラレから供給されたPVOHである8.0gのExcevalAQ4104を溶解し、85℃に加熱した。60分後、ポリマーは溶解し、溶液を22℃に冷却した。ベントナイト粘土分散物(SunBar(SX012)O
2バリア1.1、パートB;ex.Sun Chemical)の3.9%(w/w)分散物29.0gを、21.0gのこの溶液に加えた。実施例1と同様の方法でコーティングを調製し、試験した。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて46.06cm
3/m
2/日であると測定された。
比較例3:シランを含まないガスバリアコーティング
【0127】
25gのn−プロパノールと67gの脱イオン水との混合物に、8.0gのRevolymerから供給されたケトエステル官能性EVOHであるRevBarDK6を溶解させ、60℃に加熱した。60分後、ポリマーはすべて溶解し、溶液を22℃に冷却した。3.0gのエタノールと4.0gの脱イオン水との混合物を19.5gのこの溶液に加え、次いで13.3gのMicrolite963をそれに加えた。実施例1と同様の方法でコーティングを調製し、試験した。被覆した膜の酸素バリアは、23℃及び相対湿度80%にて36.04cm
3/m
2/日であると測定された。
【表3】
1ラミネートを22℃及び45%RHにて6時間乾燥させた場合、接着強度は22℃及び45%RHにて以前測定したものに完全に回復した。
2水に浸漬した後、これらのラミネートは破局故障の兆候を示し始め、PE膜はPET又はOPPを被覆した膜から離れるようになった。
【0128】
浸漬接着強度の性能への主要な寄与は、ケトエステルの大半がその後アミノシランと反応する場合には、ケトエステルの出発濃度である。本発明者らは、ケトエステルの濃度が4.0モル%を超えるが10モル%未満であることを好む。我々は、4〜7モル%のケトエステルで修飾され、その後アミノシランで大きく置換されたExcevalAQ4104によって酸素バリア性能と接着強度性能の最良のバランスを達成している。ケトエステル官能性のPVOHがアミノシランで修飾されなければ、そのときは、その後の接着強度は、特に高湿度で及び水浸漬後、貧弱(<0.5N/15mm)である。同等に、十分なレベルの未反応のアミノシランはバーミキュライト分散物の綿状沈殿(イオン性不安定化)の原因となる。このことは、少量のアミノシラン(APTEOS)をバーミキュライト分散物に添加することによってこれを示される。
【0129】
実施例1a/b及び2a/bは、ポリマーRevBarDK6を含む。これらの実施例は、たとえば、22℃で45%RHにて2日間保存された低湿度にて、及び、たとえば、28℃で85〜90%RHにて1日保存された高湿度にて、良好な酸素バリア性能を示した。双方の実施例は、高湿度で最低限度の接着強度を示した一方、低湿度では良好な接着強度を示した。すなわち、1a/b及び2a/bはそれぞれ、3.2N/15mm、3.3N/15mm、3.3N/15mm及び3.6N/15mmの接着強度を示した。実施例1a/b及び2a/bの高湿度での接着強度は0.6N/15mm、0.8N/15mm、0.4N/15mm及び0.7N/15mmだった。MelinixS基材の水中での2時間の浸漬、その後の6時間の回復後、実施例1b及び2bについても良好な接着強度が示された。
【0130】
実施例3a/b及び5a/bは、ポリマーRevBarDK8を含む。これらの実施例は低湿度及び高湿度で良好な酸素バリア性能を示した。これらの実施例が示す良好な接着強度性能は、表3で説明すように、水浸漬後に示された。
【0131】
実施例4a/bは、実施例3a/b及び5a/bとの関連で、少ない量の粘土と共にポリマーRevBarDK8が含まれており、低い相対湿度及び高い相対湿度で良好な酸素バリア性能を示した。しかし、本成績は、実施例3a/b及び5a/bほど好ましくはなかった。表3に示すように、良好な接着強度性能は、低湿度及び高湿度で示された。良好な接着強度性能は、MelinexS基材を利用した実施例4bについて水浸漬後も示された。
【0132】
実施例6a/bは、実施例3a/b、4a/b及び5a/bとの関連で、多量の粘土と共にポリマーRevBarDK8が含まれている。実施例6a/bは低湿度及び高湿度で良好な酸素バリア性能を示した。表3に示したように、良好な接着強度性能は、低湿度及び高湿度で示された。加えて、良好な接着強度性能は、MelinexS基材を利用した実施例4bについて水浸漬後に示された。
【0133】
実施例7a/bは、DK8及びアスペクト比の低い粘土を含むコーティングを含む。コーティングは低湿度で良好な酸素バリア性能を示したが、高い相対湿度での酸素バリア性能は実施例1a/b〜6a/bほど好ましくはなかった。実施例7a/bは、水浸漬後の良好な接着強度のみならず、低湿度及び高湿度で良好な接着強度を示した。
【0134】
比較例1a/bは、シランおよびケトエステルを含まない酸素バリアコーティングを含む。実施例1a/bは、低い相対湿度及び高い相対湿度で良好な酸素バリア性能を示した。しかし、比較例1a/bは、表3で示したように低湿度及び高湿度にて、及び水に浸漬した場合に、貧弱な接着強度を示した。
【0135】
比較例2a/bは、シランおよびケトエステルを含まず、アスペクト比の低い粘土を含有する酸素バリアコーティングを含む。比較例2a/bは、高湿度で貧弱な酸素バリア性能を示した。しかしながら、比較例2bは、低湿度で良好な接着強度を示す。それとは逆に、比較例2aは、表3で示したように低湿度で貧弱な接着強度を示した。双方の比較例は、高湿度にて貧弱な接着強度及び水浸漬特性を示した。
【0136】
比較例3a/bは、シランを含まない酸素バリアコーティングを含む。比較例3a/bは、高い相対湿度で貧弱な酸素バリア性能を示した。比較例3a/bは、表3に示したように、高湿度及び低湿度で貧弱な接着強度並びに貧弱な水浸漬特性を示した。
図2に示すように、23℃での24時間保存について、種々のポリマーの種々の相対湿度を試験する。Gen2は本発明に係るポリマーである。図示されているとおり、Gen2は65〜78%の間の所与の相対湿度で試験した4つの試料の間で最も低いOTRを有する。約65%未満の相対湿度にて出願者らのSunBar−PETは匹敵するOTRを有する。実施例6はGen2の試料である。Gen2は
図2では細い実線として描かれている。SunBar−PETは、製造元の指示書に従って調製されたSunBar(SX011-SX012)O
2バリアコーティングの6ミクロンの湿った膜で被覆された12ミクロンのPET膜である。SunBar−PETは、
図2では太い破線として描かれている。PE/EVOH/PE−PETは、PE、EVOH及びPEの3層の同時押出しした膜に積層された12ミクロンのPET膜の接着的に形成されたラミネートであり、EVOH層の厚さは3〜5ミクロンのオーダーであり、3重層膜の総厚さは50〜60ミクロンのオーダーである。PE/EVOH/PE−PETは、
図2では太い実線として描かれている。最後に、PVdC−PETはPVdCのおよそ3ミクロンの厚さのコーティングを有する12ミクロンのPET膜である。PVdC−PETは
図2では太い破線として描かれている。
【0137】
その好ましい実施形態を含めて本発明を詳細に記載してきた。しかし、当業者には、本開示を考慮する際、本発明の範囲及び精神の中に入る改変及び/又は改善を本発明にて行い得ることが十分に理解されるであろう。