特許第6069321号(P6069321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6069321フェノチアジン誘導体によるMALT1プロテアーゼの選択的阻害
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069321
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】フェノチアジン誘導体によるMALT1プロテアーゼの選択的阻害
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5415 20060101AFI20170123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A61K31/5415
   A61P35/00
   A61P43/00 123
   A61P37/08
   A61P37/02
   A61P11/06
   A61P25/00
   A61P1/04
   A61P17/06
   A61P11/00
   A61P29/00
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P29/00ZNA
【請求項の数】14
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-523321(P2014-523321)
(86)(22)【出願日】2012年8月1日
(65)【公表番号】特表2014-521678(P2014-521678A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2012065072
(87)【国際公開番号】WO2013017637
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】11006346.8
(32)【優先日】2011年8月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597121382
【氏名又は名称】ヘルムホルツ ツェントラム ミュンヘン ドイチェス フォーシュングスツェントラム フュール ゲズントハイト ウント ウンヴェルト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】HELMHOLTZ ZENTRUM MUENCHEN DEUTSCHES FORSCHUNGSZENTRUM FUER GESUNDHEIT UND UMWELT GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・クラップマン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ナゲル
(72)【発明者】
【氏名】ドロレス・シェンデル
(72)【発明者】
【氏名】ステファーニ・スプレンガー
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0009506(US,A1)
【文献】 特表2004−517915(JP,A)
【文献】 特表2010−502621(JP,A)
【文献】 特表2011−513319(JP,A)
【文献】 再公表特許第97/033871(JP,A1)
【文献】 英国特許出願公開第00774882(GB,A)
【文献】 特表平10−508826(JP,A)
【文献】 米国特許第03156692(US,A)
【文献】 特表2007−535510(JP,A)
【文献】 国際公開第03/062388(WO,A1)
【文献】 特開昭60−155165(JP,A)
【文献】 特表2009−515851(JP,A)
【文献】 ZHELEV ZHIVKO,CANCER CHEMOTHERAPY AND PHARMACOLOGY,SPRINGER VERLAG,2004年 3月 1日,V53 N3,P267-275
【文献】 CHAMBA,A. et al,LEUKEMIA RESEARCH,2010年,Vol.34,pp.1103-1106
【文献】 MEREDITH,E.J. et al,The FASEB Journal,2005年,Vol.19, No.9,pp.1187-1189
【文献】 RAYNOLDS,I.J. et al,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,1988年,Vol.247, No.3,pp.1025-1031
【文献】 BAUR,E.W. et al,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,1971年,Vol.177, No.1,pp.219-226
【文献】 MAURER,H. et al,Journal of Chromatography,1984年,pp.125-145
【文献】 SZABO,W.A. et al,J.Org.Chem.,1980年,Vol.45,pp.744-746
【文献】 HEWICK,D.S. et al,Biochem.J.,1971年,Vol.122, No.5,pp.59-60
【文献】 MOTOHASHI,N. et al,ANTICANCER RESEARCH,1996年,Vol.16, No.5A,pp.2525-2532
【文献】 GAYTE-SORBIER,A. et al,Annales Pharmaceutiques Francaises,1981年,Vol.39, No.5,pp.435-443
【文献】 HERRMANN,R. et al,Journal of Biomolecular Screening,2008年,Vol.13, No.1,pp.1-8
【文献】 NIESCHULZ,O. et al,Arzneimittel-Forschung,1960年,Vol.10,pp.156-165
【文献】 MADRID,P.B. et al,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2007年,Vol.17, No.11,pp.3014-3017
【文献】 MATTHEWS,N. et al,Biochemical Pharmacology,1995年,Vol.50, No.7,pp.1053-1061
【文献】 MATSUDA,K. et al,ARZNEIMITTEL FORSCHUNG = DRUG RESEARCH,1970年,Vol.20, No.10,pp.1596-1604
【文献】 MAYER,M. et al,Chemistry & Biology,2006年,Vol.13,pp.993-1000
【文献】 BOURQUIN,J.P. et al,HELEVITICA CHIMICA ACTA,1959年,Vol.42,pp.259-281
【文献】 BARRON,D.I. et al,J.Med.Chem.,1963年,Vol.6,pp.705-711
【文献】 HAILFINGER,S. et al,PNAS,2009年,Vol.106, No.47,pp.19946-19951
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を含む、(i)MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存する癌、または(ii)MALT1依存性免疫疾患の治療のための医薬組成物であって、
前記化合物が一般式(I)
【化1】
[式中、
XはNであり、
YはSであり、
()ZはC1〜C5鎖アルキル鎖であり、
AはNR3R4またはOR5またはHETであり、
R1およびR2は出現毎に独立して-H、-CH3、-OH、-OCH3、-SCH3、-F、-Clおよび-CF3ら選択され、
R3、R4、およびR5はHまたはC1〜C5直鎖もしくは分枝アルキル基であり、
HETは5、6または7員複素環であり、環原子がC、OまたはNであってもよく、環が飽和しているかまたは芳香族であってもよく、環がHまたはC1〜C5直鎖もしくは分枝アルキル基で置換されていてもよく、または
AはNR3R4であり、R3はCH3であり、R4は-CH3、-C2H5またはC3〜C5直鎖アルキル鎖であり、前記鎖はO、NまたはSが割り込んでいてもよく、()Zの炭素原子と共に飽和環を形成している
を有し、または
前記化合物が、一般式(I)の薬学的に許容される塩、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ混合物、結晶型、アモルファス型、非溶媒和型もしくは溶媒和物である、
医薬組成物
【請求項2】
XはNであり、
YはSであり、
()Zは直鎖C1〜C5アルキル鎖であり、
R1は-Hであり、
R2は-Hまたは-SCH3である、
請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
AはHETであり、HETはNR3が割り込んでいる5員から7員の炭素環である、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項4】
AはNR3R4であり、R3はHまたはCH3であり、R4は-CH3である、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項5】
AはNR3R4であり、R3はCH3であり、R4は-CH3、-C2H5またはC3〜C5直鎖アルキル鎖であり、前記鎖はO、NまたはSが割り込んでいてもよく、()Zの炭素原子と共に飽和環を形成している、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項6】
AはNR3R4であり、R3はCH3であり、R4はC3〜C5直鎖アルキル鎖であり、前記鎖は()Zの炭素原子と共に飽和環を形成しており、前記形成された飽和環が、Nが割り込んでいる5員から7員の炭素環である、請求項5に記載の医薬組成物
【請求項7】
AはHETであり、HETはN-メチルピペリジン-2-イルまたはN-メチルピペリジン-3-イルである、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記化合物が、
【化2】
である、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項9】
MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存する前記癌が、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の活性化B細胞サブタイプまたはMALTリンパ腫である、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記MALT1依存性免疫疾患がアレルギー性炎症である、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記MALT1依存性免疫疾患が免疫系の過敏または慢性炎症である、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項12】
前記MALT1依存性免疫疾患がアレルギーまたは喘息である、請求項11に記載の医薬組成物
【請求項13】
前記MALT1依存性免疫疾患が自己免疫疾患である、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項14】
前記MALT1依存性免疫疾患が多発性硬化症、炎症性腸疾患、エリテマトーデス、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチおよび乾癬性関節炎からなる群から選択される、請求項13に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療における使用のための化合物であって、癌がMALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存し、化合物が一般式(I)
【0002】
【化1】
【0003】
[式中、XはNまたはCであり、YはS、O、SO2、SO、NH、CO、CH2、CH=CHまたはCH2-CH2であり、()ZはC1〜C5直鎖または分枝アルキル鎖であり、AはNR3R4またはOR5またはHETであり、R1およびR2は出現毎に独立して-H、-CH3、-OH、-OCH3、-SCH3、-F、-Cl、-CF3、-NH2および-COOHから選択され、R3、R4、およびR5はHまたはC1〜C5直鎖もしくは分枝アルキル基であり、HETは5、6または7員複素環であり、環原子がC、O、NまたはSであってもよく、環が飽和しているかまたは芳香族であってもよく、環がHまたはC1〜C5直鎖もしくは分枝アルキル基で置換されていてもよい複素環である]を有する化合物、または前記化合物の薬学的に許容される塩、プロドラッグ、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ混合物、結晶型、アモルファス型、非溶媒和型もしくは溶媒和物に関する。本発明の化合物はさらに、MALT1依存性免疫疾患の治療に使用することができる。
【0004】
本明細書では、特許出願および製造者の手順書を含むいくつかの文書を引用する。これらの文書の開示は、本発明の特許権に関連すると考えられなくても、全体が参照により本明細書に組み込まれる。より詳細には、参考にした文書は全て、それぞれ個々の文書が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されるのと同程度に、参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0005】
粘膜関連リンパ組織リンパ腫転座タンパク質1(MALT1)は、T細胞受容体刺激によって活性化される機能的システインプロテアーゼである。MALT1はA20(TNFAIP)をarg439の後で迅速に切断し、そのNF-κB阻害機能を損なわせる(Coornaert他(2008)、Nature Immun. 9: 263〜271頁)。
【0006】
抗原刺激時、MALT1はリンパ球活性化、生存および分化を制御する上流NF-κBシグナル伝達の重要なメディエーターである1。CARMA1(CARD11としても知られる)およびBCL10と一緒になって、MALT1は、標準NF-κB経路のゲートキーパーであるIκBキナーゼ(IKK)複合体に近位の抗原受容体シグナル伝達事象を橋渡しするいわゆるCBM複合体を組み立てる2。T細胞抗原受容体(TCR)/CD28を同時刺激すると、MALT1は、TRAF6、CASP8およびA20のようなその他の重要なシグナル伝達分子をCBM複合体に動員するタンパク質骨格として作用する1。さらに、E3リガーゼTRAF6によって触媒されるMALT1の共有結合的ユビキチン修飾は、2つの下流タンパク質キナーゼ複合体TAB2-TAK1およびNEMO-IKKα/βの会合を容易にし、最終的にIKK活性化を導く3
【0007】
MALT1は、哺乳類のカスパーゼならびに植物および真菌のメタカスパーゼに高い相同性を表すパラカスパーゼドメインを含有する4。メタカスパーゼと同様に、MALT1は基質をアルギニン残基の後ろで切断し、その酵素的切断活性は、一般的にP1位にアスパラギン酸を必要とするカスパーゼとは全く異なることを示している5。MALT1タンパク質分解活性はTCR/CD28刺激によって誘導され、それによって基質BCL10、A20およびCYLDの切断が促進される6〜8。元々植物のメタカスパーゼの阻害剤として設計されたアンタゴニストテトラペプチドZ-VRPR-FMKによるMALT1プロテアーゼ活性の阻害は、T細胞における最適なNF-κB活性化およびIL-2産生を損なわせる7、9。同様に、触媒性システイン464の突然変異は、MALT1のタンパク質分解を不活性にし、MALT1欠損T細胞補完後のIL-2産生も損なわせる9
【0008】
MALT1プロテアーゼの活性の調節不全は、いくつかの疾患、特に、MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存する癌およびMALT1依存性免疫疾患の進行に決定的な役割を果たす。MALT1が腫瘍を促進する役割は、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)の一部および粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫において見出されている10。遺伝子発現プロファイリングによって、DLBCLは異なる実体に分類することができ、最も豊富なサブタイプは「活性化B細胞様」(ABC-)DLBCLおよび「胚中心B細胞様」(GCB-)DLBCLである11〜15。遺伝子発現特性に基づいて、ABC-DLBCLサブタイプは、B細胞抗原受容体(BCR)によって刺激されたBリンパ球に由来する。ABC-DLBCL患者の5年生存率は約30%で、ABC-DLBCL細胞の侵襲性の臨床的特徴を反映して予後は最悪である16。GCB-DLBCLではなく、ABC-DLBCLである細胞の特徴は、NF-κBシグナル伝達経路の構成的活性化である11、17。異なる分子異常が同定されたことによって、ABC-DLBCLにおける生存促進性NF-κBシグナル伝達は、BCRシグナル伝達の調節解除が原因であることが示唆された。ABC-DLBCL患者の中にはCARMA1発癌変異を有する患者もいるが18、ABC-DLBCL細胞の大部分は慢性的に活性であるBCRシグナル伝達が特徴で、突然変異はBCR近位の調節因子CD79AおよびBに見出されることが多い19。BCRシグナル伝達における必要性と一致して、RNA干渉スクリーニングによって、NF-κB活性化、ABC-DLBCLの生存および増殖の重要な調節因子としてCARMA1、BCL10またはMALT1が同定された10。さらに、Z-VRPR-FMKによってMALT1タンパク質分解活性を阻害すると、NF-κB依存性遺伝子発現が阻害され、特にABC-DLBCL細胞に毒性効果が表れる20、21。Ferch他(2009)、J. Exp. Med. 206: 2313〜2320頁は、侵襲性の活性化B細胞様(ABC)びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)細胞は、A20を継続的かつ選択的にプロセシングする構成的に組み立てられたCARD11-BCL10-MALT1(CBM)複合体を有するが、胚中心B細胞様(GCB)DLBCLは有さないことを示した。MALT1の阻害によってA20およびBCL10切断が阻止され、NF-κB活性が低下し、NF-κB標的BCLXL(BCL2L1)、IL6およびIL10の発現が減少する。MALT1パラカスパーゼの阻害によって、ABC-DLBCL細胞死および増殖遅延が引き起こされる。Ferch他(2009)は、MALT1パラカスパーゼ活性は、特にABC-DLBCL細胞において増殖促進の役割を有すると結論づけ、MALT1プロテアーゼ活性はABC-DLBCLの薬理学的処置の標的として見込みがあることを提唱した。
【0009】
MALTリンパ腫は、B細胞リンパ球の癌である。通常、60代の高齢者が発症する。ほとんどの非ホジキンリンパ腫(NHL)はリンパ節で開始するが、MALTリンパ腫は粘膜関連リンパ組織(MALT)と称されるリンパ組織の1種で開始する。胃は、MALTリンパ腫が発症する最も一般的な領域であるが、肺、甲状腺、唾液腺または腸などのその他の臓器でも開始することがある。MALTリンパ腫はリンパ節の外側で発症するので、節外性リンパ腫としても知られる。胃MALTリンパ腫は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の存在の結果である慢性炎症にしばしば随伴する(72〜98%)(Parsonnet J (1994). N Engl J Med 330 (18): 1267〜71頁)。最初の診断は、食道胃十二指腸内視鏡検査(EGD、上部消化管内視鏡検査)における疑わしい病変の生検によって下される。H.ピロリの同時検査はまた、この微生物の存在を検出するために実施される。その他の部位では、病理発生において慢性の免疫刺激も疑われる(例えば、シェーグレン症候群および橋本甲状腺炎などの慢性自己免疫疾患と唾液腺および甲状腺のMALTリンパ腫の間の関連)。MALTリンパ腫では、頻繁な転座t(11;18)(q21;q21)が、パラカスパーゼドメインを含むMALT1のC末端とIAP2のN末端との間の融合を生成する22。IAP2-MALT1融合タンパク質のパラカスパーゼドメインは、NIKの切断を触媒し、それによって非標準NF-κB活性化を促進し、アポトーシス耐性を付与する23
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Coornaert他(2008)、Nature Immun. 9: 263〜271頁
【非特許文献2】Ferch他(2009)、J. Exp. Med. 206: 2313〜2320頁
【非特許文献3】Parsonnet J (1994). N Engl J Med 330 (18): 1267〜71頁
【非特許文献4】Ansel他、「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」、第7版、Lippincott Williams & Wilkins Publishers、1999
【非特許文献5】E.W. Martin、「Remington's Pharmaceutical Sciences」
【非特許文献6】LordおよびArchibald (1957)、Can J Comp Med Vet Sci.、21(11): 391〜394頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
要約すると、MALT1パラカスパーゼに対する新規薬剤は、調節解除されたMALT1活性に関連するリンパ腫およびMALT1依存性免疫疾患の治療に有益であり得る。特に、ABC-DLBCL患者の約30%しかない5年全生存率は、特にこの種類のリンパ腫において代わりとなる治療法の明らかな必要性があることを強調する16。したがって、本発明の目的は、前述の疾患の治療において使用できるMALT1に対する新規薬剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、第1の実施形態において、癌の治療における使用のための化合物であって、癌がMALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存し、化合物が一般式(I)、
【0013】
【化2】
【0014】
[式中、XはNまたはCであり、YはS、O、SO2、SO、NH、CO、CH2、CH=CHまたはCH2-CH2であり、()ZはC1〜C5直鎖または分枝アルキル鎖であり、AはNR3R4またはOR5またはHETであり、R1およびR2は出現毎に独立して-H、-CH3、-OH、-OCH3、-SCH3、-F、-Cl、-CF3、-NH2および-COOHから選択され、R3、R4、およびR5はHまたはC1〜C5直鎖もしくは分枝アルキル基であり、HETは5、6または7員複素環であり、環原子がC、O、NまたはSであってもよく、環が飽和しているかまたは芳香族であってもよく、環がHまたはC1〜C5直鎖もしくは分枝アルキル基で置換されていてもよい複素環である]を有する化合物、または前記化合物の薬学的に許容される塩、プロドラッグ、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ混合物、結晶型、アモルファス型、非溶媒和型もしくは溶媒和物に関する。
【0015】
本明細書では「MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存する癌」という用語は、非生理的に上昇したMALT1の(タンパク質分解)活性によって部分的に、または優勢に引き起こされる癌を定義する。MALT-1の酵素活性は、システインプロテアーゼ活性(EC 3.4.22.システインエンドペプチダーゼ)を含む。下記の実施例から明らかなように、本発明者は、本発明の化合物がMALT1の活性を特異的に阻害することを発見した。本明細書で上記に詳細に記載したように、MALT1活性は抗原受容体刺激T細胞における最適なNF-κB活性化およびIL-2産生に関与する。このことは、MALT1活性が生理学的なリンパ球活性化に必須であることを示している。したがって、MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存する癌は、好ましくはMALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存するリンパ腫である。MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存するリンパ腫の好ましい例は、本明細書で以下により詳細に記載するびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の活性化B細胞サブタイプ(ABCサブタイプ)およびMALTリンパ腫である。
【0016】
本発明にはまた、一般式(I)の薬学的に許容される塩、プロドラッグ、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ混合物、結晶型、非結晶型、アモルファス型、非溶媒和型および溶媒和化合物が包含される。
【0017】
本明細書では、「薬学的に許容される塩」という用語には、本発明の化合物に見出される特定の置換基に依存して、比較的非毒性の(すなわち、薬学的に許容される)酸または塩基で調製された一般式(I)の化合物の塩が含まれる。例えば、本発明の化合物が酸性官能基を含有するならば、未希釈かまたは適切な不活性溶媒中で、十分な量の所望する塩基とこのような化合物の中性型を接触させることによって、塩基添加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基添加塩の非限定的例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、またはマグネシウム塩、または類似の塩が含まれる。本発明の化合物が塩基性官能基を含有するならば、未希釈かまたは適切な不活性溶媒中で、十分な量の所望する酸とこのような化合物の中性型を接触させることによって、酸添加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸添加塩の非限定的例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、リン酸、部分的に中和されたリン酸、硫酸、部分的に中和された硫酸、ヨウ化水素酸または亜リン酸などの無機酸から得られた塩ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的非毒性の有機酸から得られた塩が含まれる。アルギニン酸などのアミノ酸の塩およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる。本発明のある種の特定の化合物は、化合物が塩基または酸添加塩のいずれかに変換するのを可能にする塩基性および酸性官能基両方を含有していてもよい。本発明の化合物の中性型は、塩を塩基または酸と接触させ、従来の方法で親化合物を単離することによって再生することができる。親型の化合物は、極性溶媒中での溶解性などのある種の物理的特性が様々な塩型とは異なるが、その他の点では塩は本発明のための親型の化合物と均等である。
【0018】
本発明の化合物は、キラルまたは不斉炭素原子(光学中心)および/または2重結合を有していてもよい。ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の光学異性体は本発明に包含される。本発明の化合物は、非溶媒和型ならびに水和型を含む溶媒和型で存在していてもよい。一般的に、溶媒和型は、非溶媒和型と均等であり、これも本発明に包含される。本発明の化合物はさらに、多結晶型またはアモルファス型で存在していてもよい。
【0019】
塩型に加えて、本発明の化合物は、プロドラッグ型であってもよい。本発明の化合物のプロドラッグは、本発明の化合物を提供するための生理学的条件下で容易に化学変化を受ける化合物である。さらに、プロドラッグは、エキソビボ環境において化学的または生化学的方法によって本発明の化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグは、例えば、適切な酵素または化学試薬と共に経皮パッチ貯蔵体に入れた場合、本発明の化合物にゆっくり変換され得る。
【0020】
本明細書で記載した本発明の化合物は、適切な用量で対象に投与することができる。本発明の化合物は、好ましくは飼育動物およびペット動物などの哺乳類に投与する。飼育動物およびペット動物の非限定的例は、ブタ、ウシ、水牛、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ウマ、ロバ、ニワトリ、アヒル、ネコ、イヌ、モルモットまたはハムスターである。最も好ましくは、ヒトに投与する。好ましい投与方法は、本発明の化合物の形態(一般式(I)を有する)に依存する。本明細書で前述した様に、一般式(I)を有する化合物は、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ混合物、結晶型、非結晶型、アモルファス型、非溶媒和型および溶媒和物の形態であってもよい。本発明の化合物は、経口的に、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、クモ膜下腔内、経皮的、経粘膜的、硬膜下など非経口的に、イオン導入を介して局所的もしくは局部的に、吸入スプレー、噴霧剤によって舌下に、または直腸内などに、従来の薬学的に許容される賦形剤を場合によってさらに含む投与単位製剤で投与してもよい。
【0021】
本発明に従って使用するための本発明の化合物は、1種または複数の生理学的担体または賦形剤を使用して、医薬組成物として製剤化することができ、例えば、Ansel他、「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」、第7版、Lippincott Williams & Wilkins Publishers、1999を参照のこと。
【0022】
経口投与では、本発明の医薬組成物は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム)、潤沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ)、崩壊剤(例えば、馬鈴薯デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム)または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤と共に、従来の手段によって調製した、例えば、錠剤またはカプセルの形態をとることができる。医薬組成物は、生理学的に許容される担体と共に患者に投与することができる。特定の実施形態では、「薬学的に許容される」という用語は、動物、特にヒトにおいて使用するために規制当局またはその他の一般的に認められている薬局方によって承認されたことを意味する。「担体」という用語は、それらと共に治療薬を投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤または媒体を意味する。このような医薬担体は、水および、ピーナツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などの石油、動物、植物または合成由来のものが含まれる油などの滅菌液体であってもよい。水は、医薬組成物を静脈内投与するときに好ましい担体である。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液はまた、特に注射溶液用の液体担体として使用することができる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、ナトリウムイオン、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物はまた、所望するならば、微量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することができる。これらの組成物は、軟膏、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態であってもよい。好ましい形態は軟膏である。組成物は、伝統的な結合剤およびトリグリセリドなどの担体と共に座剤として製剤化することができる。経口製剤は、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的担体を含むことができる。適切な医薬担体の例は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、患者に適切に投与するための形態を提供するために、適切な量の担体と一緒に、好ましくは精製された形態で、治療有効量の前述の化合物を含有する。製剤は、投与様式に適合するべきである。
【0023】
経口投与用の液体調製物は、例えば、液剤、シロップ、もしくは懸濁剤の形態であってもよく、または水もしくはその他の適切な媒体で使用前に構成するための乾燥生成物として提供することができる。このような液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトール、シロップ、セルロース誘導体、水素添加食用脂)、乳化剤(例えば、レシチン、アラビアガム)、非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、分画植物油)、保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシカーボネート、ソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物と共に従来の手段によって調製することができる。調製物はまた、適切と考えられるならば、緩衝塩、矯臭剤、着色剤および甘味剤を含有することができる。経口投与用の調製物は、本発明の医薬組成物の制御放出を行うために適切に製剤化することができる。
【0024】
吸入による投与では、本発明の医薬組成物は、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の適切なガス)を使用して、加圧パックまたは噴霧器から噴霧スプレー状の形態で便利に送達される。加圧噴霧の場合、投与単位は、計量された量を送達するバルブを形成することによって測定することができる。吸入器または注入器で使用するため、本発明の医薬組成物およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末ミックスを含有する、例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジを製剤化することができる。
【0025】
本発明の医薬組成物は、注射による、例えば、大量瞬時投与または継続注入による、非経口投与用に製剤化することができる。注射部位には、静脈内、腹腔内または皮下が含まれる。注射用製剤は、単位剤形(例えば、バイアル中、多用量容器中)で、保存剤を添加して提供することができる。本発明の医薬組成物は、油性もしくは水性媒体中の懸濁剤、液剤または乳剤などの形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。あるいは、薬剤は、使用前に適切な媒体(例えば、滅菌発熱性物質除去水)で構成するための粉末形態であってもよい。通常、静脈内投与用組成物は、滅菌等張水性緩衝液中に溶かした溶液である。必要であれば、組成物はまた、可溶化剤および注射部位の疼痛を和らげるためにリグノカインなどの局所麻酔剤を含むことができる。一般的に、成分は、別々に、または単位剤形中に一緒に混合して、例えば、活性薬剤の量を示したアンプルまたはサシェなどの密閉容器に入れた凍結乾燥粉または水を含まない濃縮物として供給される。組成物を注入によって投与する場合、滅菌した医薬品等級の水または生理食塩水を含有する注入ビンで投薬することができる。組成物を注射によって投与する場合、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルは、投与前に成分を混合できるように準備することができる。
【0026】
本発明の医薬組成物はまた、所望するならば、薬剤を含有する1個または複数の単位剤形を含有できるパックまたはディスペンサー装置に入れて提供できる。パックは、例えば、ブリスターパックなど、金属またはプラスチック箔を含むことができる。パックまたはディスペンサー装置は、投与のための指示書を添付することができる。
【0027】
本発明の医薬組成物は、単独の活性薬剤として投与することも、その他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。
【0028】
第1の実施形態によれば、XはNであることが好ましい。さらに、YはSであることが好ましい。()Zは、好ましくは直鎖C1〜C5アルキル鎖であり、より好ましくは直鎖C1〜C3アルキル鎖である。R1は好ましくは-Hであり、R2は好ましくは-Hまたは-SCH3である。好ましい実施形態は、互いに独立して存在できることが好ましい。さらに好ましい実施形態では、好ましい実施形態全ての特徴が存在する。
【0029】
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明によって使用するための化合物は、式(I)を有し、式(I)において、XはNであり、YはSであり、()Zは直鎖C1〜C5アルキル鎖であり、R1は-Hであり、R2は-Hまたは-SCH3である。
【0030】
本発明のより好ましい実施形態によれば、本発明によって使用するための化合物は、式(I)を有し、式(I)において、AはHETであり、HETは場合によってNR3が割り込んでいる5員から7員の炭素環である。
【0031】
これに関して、HETは6員炭素環が好ましい。HETはNR3が割り込んでいて、R3がCH3である6員炭素環がさらにより好ましい。
【0032】
本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、本発明によって使用するための化合物は、式(I)を有し、式(I)において、AはNR3R4であり、R3はHまたはCH3であり、R4は-CH3である。
【0033】
これに関して、R3およびR4は-CH3であることが最も好ましい。
【0034】
本発明の別のより好ましい実施形態によれば、本発明によって使用するための化合物は、式(I)を有し、式(I)において、AはNR3R4であり、R3はCH3であり、R4は-CH3、-C2H5またはC3〜C5直鎖アルキル鎖であり、その鎖はO、NまたはSが割り込んでいてもよく、()Zの炭素原子で飽和環を形成している。これに関して、R4は-CH3であることが最も好ましい。
【0035】
本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、本発明によって使用するための化合物は、式(I)を有し、式中、飽和環はNが割り込んでいる5員から7員の炭素環である。
【0036】
これに関して、場合によってNが割り込んでいる5員から7員のアルキレン環は、6員アルキレン環であることが好ましい。飽和環は、5員から7員の飽和炭素環(Nが割り込んでいない)であることも好ましく、飽和6員炭素環(Nが割り込んでいない)がより好ましい。
【0037】
本発明のより好ましい実施形態によれば、本発明によって使用するための化合物は、式(I)を有し、式(I)において、AはHETであり、HETはN-メチルピペリジン-3-イルである。
【0038】
本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、本発明によって使用するための化合物は、式(I)を有し、式(I)において、(a)Z=3であり、AはNR3R4であり、R3およびR4は-CH3であるか、(b)Z=1であり、AはN-メチルピペリジン-3-イルであるか、または(c)Z=2であり、AはN-メチルピペリジン-2-イルである。
【0039】
本発明の最も好ましい実施形態によれば、本発明によって使用するための化合物は、以下の通りである。
【0040】
【化3】
【0041】
式(II)の化合物は、当技術分野ではメパジンとして知られている。メパジンは、最初に精神安定剤として使用されたフェノチアジンである(LordおよびArchibald (1957)、Can J Comp Med Vet Sci.、21(11): 391〜394頁)。
【0042】
式(III)の化合物は、当技術分野ではチオリダジンとして知られている。チオリダジンもフェノチアジン薬群に属する。チオリダジンは、当技術分野では抗精神病薬として知られており、統合失調症および精神障害の治療に広く使用されていた。
【0043】
式(IV)の化合物は、当技術分野ではプロマジンとして知られている。プロマジンはフェノチアジンの誘導体である。プロマジンは、当技術分野では例えば統合失調症を治療するための抗精神病薬として使用される。
【0044】
下記の実施例で分析した3種類のフェノチアジン誘導体(PD)は全て、臨床試験に入っており、抗精神病薬および/または鎮静薬として使用されており、その活性はドーパミンD2受容体アンタゴニストとして機能を果たす能力に主に基づいていると考えられる30。メパジンは、50年代後半および60年代前半において、商品名パカタールで、抗精神病薬および精神安定剤として評価された。臨床研究の中には抗精神病効果を証明したものもあるが、証明できなかったものもある25、31。メパジン治療後の喘息発作の低下を含むいくつかの副作用が報告されており、ある種の免疫抑制活性を示している31。本発明者の知る限り、癌患者に対して有益な効果を有する可能性があることに関する所見は報告されていない。試験計画だけでなくコホートの大きさによっても、メパジン、チオリダジンおよびプロマジンが特異的にMALT1を阻害することができるという結論を導くことはできない。チオリダジン(商品名メレリル)は今でも市販されているが、その他の抗精神病薬に応答しない統合失調症患者の治療に対する処方は控えられている。チオリダジンはまた、様々な癌細胞系に毒性効果を発揮するので、その他の医学的応用に有益であると考えられる29、32。しかし、本発明者は、チオリダジンがタンパク質分解MALT1活性に依存する癌細胞系に対して毒性効果を発揮することを示すか、または指示する先行技術は承知していない。さらに、チオリダジンは結核またはマラリアの治療の候補薬と考えられるが、その抗菌作用および抗寄生虫作用の根拠は現在のところわかっていない33、34。プロマジン(商品名スパリン)は、MALT1依存性ABC-DLBCLに対して非常に弱い毒性を示し、今でも落ち着きのない行動(restless behavior)を治療するために使用されている。
【0045】
したがって、式(II)、(III)および(IV)の化合物は、当技術分野では抗精神病薬として最初に使用された。下記の実施例では、メパジン、チオリダジンおよびプロマジンはMALT1の3種類の低分子阻害剤として同定された。本発明者の知る限り、これらの化合物はいずれもMALT1プロテアーゼの活性を阻害することは知られていなかった。本発明の実施例で例示した結果によって、式(II)、(III)および(IV)の化合物は、MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存する癌の治療に使用できることが初めて示された。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存する癌は、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の活性化B細胞サブタイプまたはMALTリンパ腫である。
【0047】
本明細書で前述したように、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)は、侵襲性のリンパ腫の1種である。その遺伝子活性に基づいて同定されたDLBCLの主要な1サブタイプは、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫のB細胞サブタイプ(ABC-DLBCL)である。本明細書で前述したように、Ferch他 (2009)、J. Exp. Med. 206: 2313〜2320頁は、侵襲性の活性化B細胞様(ABC)びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)細胞は継続的かつ選択的にA20をプロセシングする構成的に組み立てられたCARD11-BCL10-MALT1(CBM)複合体を有することを示した。さらに、MALT1パラカスパーゼの阻害によって、ABC-DLBCL細胞死および増殖遅延が引き起こされる。したがって、フェノチアジン誘導体メパジン、チオリダジンおよびプロマジンがMALT1を特異的に阻害することを示す本明細書の以下の実施例は、ABC-DLBCLが本発明の化合物を使用することによって治療できることを初めて示している。
【0048】
本明細書で前述したように、MALTリンパ腫は、B細胞リンパ球の癌である。ほとんどのNHLはリンパ節で開始するが、MALTリンパ腫は粘膜関連リンパ組織(MALT)で開始する。MALTリンパ腫は通常、感染のあった身体の領域で、またはヒトがその領域に罹患する自己免疫状態を有するときに開始する。胃に罹患するMALTリンパ腫のほとんどの症例が、ヘリコバクター・ピロリと称する細菌による感染と関連がある。その他の部位では、病理発生において慢性的な免疫刺激も疑われる(例えば、シェーグレン症候群および橋本甲状腺炎などの慢性自己免疫疾患と唾液腺および甲状腺のMALTリンパ腫の間の関係)。MALTリンパ腫と関係がある3種類の転座、すなわち、API2-MLT融合遺伝子を生じるt(11;18)(q21;q21)、BCL10を調節解除するt(1;14)(p22;q32)、およびMALT1を調節解除するt(14;18)(q32;q21)が同定された。3種類の転座は全て、同じ経路、すなわち、API2-MALTの経路で始まると考えられている。したがって、フェノチアジン誘導体メパジン、チオリダジンおよびプロマジンがMALT1を特異的に阻害することを示す本明細書の以下の実施例は、MALTリンパ腫が本発明の化合物を使用することによって治療できることを初めて示している。
【0049】
本発明によれば、フェノチアジン誘導体(PD)は、組換え細胞性MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性を効果的および選択的に阻害する低分子阻害剤の最初の種類として同定された。実施例からわかるように、最良の阻害活性は、メパジン、チオリダジンおよびプロマジンで得られた。3種類のPDは全て、活性化T細胞またはABC-DLBCL細胞それぞれの誘導性または構成的MALT1活性を妨害することが示されている。さらに、これらのPDは、プロセスがMALT1活性に大いに依存することが示されたT細胞活性化障害ならびにDLBCL細胞のABCサブタイプに選択的な生存能低下を引き起こす9、20、21。したがって、細胞データはさらに、薬理学的MALT1阻害剤としてのPDの有効性を立証する。
【0050】
様々なアッセイ条件を最初に試験し、組換え完全長MALT1の切断活性をより詳細に特徴付けるために広域プロテアーゼ阻害剤の効果を試験した。興味深いことに、MALT1のタンパク質分解活性はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のメタカスパーゼAtMC4および9に類似しており5、パラカスパーゼとメタカスパーゼドメインの構造的相同性が類似の基質結合性および切断特性を引き起こすことを強調している。MALT1は、その他のヒトカスパーゼと比較すると全く異なった特性を備えた唯一のヒトパラカスパーゼであり、本発明によって定義された特定の阻害剤は、その発癌活性を選択的に不活性化するために明らかに期待できる候補である。選択性は、MALT1以外のカスパーゼの阻害によるアポトーシスの実行が損なわれるとリンパ腫療法に耐えることができない副作用を誘発する可能性があるので、極めて重要である。実際に、試験したPDは全てMALT1に対し高い選択性を示し、誘導型カスパーゼCASP8および実行型カスパーゼCASP3には作用していない。さらに、CASP8はMALT1と連携し、T細胞におけるNF-κBシグナル伝達に必要なので27、PDによってCASP8阻害が明らかにないことはまた、最適なT細胞活性化を誘発するためにはタンパク質分解MALT1活性が必要であることを裏付ける。比較的短いPDインキュベーション後であっても細胞性MALT1活性が強く阻害されることは、この物質がMALT1プロテアーゼに直接影響を及ぼすことを明らかに示している。
【0051】
さらに、本発明のMALT1阻害化合物のT細胞活性化に対する阻害作用は、例えば、アレルギーおよび喘息の治療において、軽い免疫抑制剤として内科的に使用できる可能性を示す。
【0052】
したがって、MALT1依存性免疫疾患の治療において使用するための本発明の化合物も本発明に包含される。
【0053】
それらの好ましい実施形態によれば、MALT1依存性免疫疾患はアレルギー性炎症である。
【0054】
対象に薬学的に有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、対象におけるMALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存する癌の治療方法も本明細書で記載する。これに関して、MALT1プロテアーゼのタンパク質分解活性に依存する癌は、好ましくはびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の活性化B細胞サブタイプまたはMALTリンパ腫である。さらに、対象は、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。
【0055】
さらに、対象に薬学的に有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、対象におけるMALT1依存性免疫疾患の治療方法を本明細書で記載する。これに関して、MALT1依存性免疫疾患は好ましくはアレルギー性炎症である。MALT1依存性免疫疾患はまた、T細胞応答が実施例5などの化合物によって相殺されるT細胞による疾患であってもよい。これに関して、MALT1依存性免疫疾患は、免疫系の過敏またはアレルギー(上記の通り)または喘息などの慢性炎症であってもよい。さらに、MALT1依存性免疫疾患は自己免疫疾患であってもよく、限定はしないが、多発性硬化症、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)、エリテマトーデス、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチまたは乾癬性関節炎などの疾患が含まれる。さらに、対象は、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。
【0056】
本明細書で前述した好ましい実施形態はまた、本明細書で記載した治療方法にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】ハイスループットスクリーニング(HTS)のためのインビトロMALT1切断アッセイの確立を示す図である。(A)MALT1プロテアーゼアッセイの図式。BCL10由来のMALT1切断部位を含有する蛍光発生ペプチドAc-LRSR-AMCに対するGSTMALT1のタンパク質分解作用による蛍光色素AMCの放出は、蛍光の増加を引き起こす。(B)MALT1切断反応の動態。細菌発現から精製した組換えGSTMALT1をAc-LRSR-AMC 50μMと共に30℃で1時間インキュベートし、タンパク質分解活性はAMC蛍光の増加を測定することによって決定した。触媒的に不活性なMALT1 C453Aは基質を切断することはできなかったが、阻害性ペプチドZ-VRPR-FMK 1nMによる阻害によってMALT1活性の約50%の減少が引き起こされた。(C)MALT1はZ-VRPR-FMKによって阻害される。ペプチドの量を増加させると、MALT1活性の全消失が引き起こされた。データを評価するために、未処理対照の相対的蛍光を100%に設定し、それに応じて阻害剤処理ウェルの値を計算した。(D)パン-カスパーゼ阻害剤Ac-DEVD-CHOは、200μMでもMALT1に対して有意な活性は示さなかった。(E)様々なプロテアーゼ阻害剤を使用したMALT1パラカスパーゼの酵素的特徴付け。MALT1活性は、システインプロテアーゼ阻害剤アンチパイン(1μM)およびキモスタチン(100μM)の一般的な濃度によって減弱するが、高濃度のE-64(100μM)または低濃度のロイペプチン(1μM)では減弱しなかった。アスパルチル-プロテアーゼ阻害剤ペプスタチンA(100μM)、セリンプロテアーゼ阻害剤アプロチニン(5μg/ml)およびセリン/システインプロテアーゼ阻害剤TLCK(1μM)はMALT1活性に対して効果を有さなかった。阻害プロファイルをシロイヌナズナメタカスパーゼAtMC4およびAtMC9と比較した(図9参照)。グラフは、少なくとも3回の独立した実験の平均を示しており、エラーバーはSDを示す。
図2】HTSによって同定されたフェノチアジン誘導体はMALT1活性を阻害することを示す図である。(A)見込みのあるMALT1阻害剤として同定されたPDの化学構造。フェノチアジン誘導体(PD)である化合物A(メパジン;10-[(1-メチル-3-ピペリジニル)メチル]-10H-フェノチアジンアセテート)、B(2-クロロフェノチアジン)およびC([2-(3-イソブトキシ-10H-フェノチアジン-10-イル)エチル]ジメチルアミン)ならびに構造的にPDに関連のある化合物D。(B)PDの量を5から50μMに増加させて処理するとGSTMALT1活性の用量依存的減少が引き起こされるが、CASP8の酵素作用は有意には低下しなかった。(C)フェノチアジン1、5および20μMによる用量依存的なGSTMALT1活性の阻害。グラフは、(Bにおいて)2つの内の典型的な1つを示しているか、または(Cにおいて)少なくとも3回の独立した実験の平均を示しており、エラーバーはSDを示す。
図3A】3種類の阻害化合物、メパジン、チオリダジンおよびプロマジンの分子構造を示す図である。3種類は全て、類似の原子組成および空間で、窒素に短い疎水性側鎖を有する。
図3B】メパジン、チオリダジンおよびプロマジンの選択的MALT1阻害における用量反応曲線およびIC50値を示す図である。
図3C】メパジン、チオリダジンおよびプロマジンの選択的MALT1阻害を示す図である。メパジンは、非競合MALT1阻害剤として作用する。ミカエリスメンテン速度式は、メパジン1μMの有無の下でLRSR-AMC基質の濃度を増加させることによって測定した。メパジンはMALT1のVMAXは低下させるが、KMは低下させない。
図3D】メパジン、チオリダジンおよびプロマジンの選択的MALT1阻害を示す図である。メパジンは、可逆的MALT1阻害剤として作用する。グルタチオンセファロースビーズに結合させたGSTMALT1をメパジン(10、20または50μM)で30分間処理した。MALT1活性は、切断反応を開始する前に、ビーズを0、3または6回洗浄した後アッセイした。
図3E】メパジン、チオリダジンおよびプロマジンの選択的MALT1阻害を示す図である。PDは選択的MALT1阻害剤で、50μMの濃度まではCASP3および8の活性を有意には阻害しない。データは、少なくとも3回の独立した実験の平均を表しており、エラーバーはSDを示す。
図4A】メパジンおよびチオリダジンは、MALT1の阻害を媒介し、初代マウスCD4+T細胞、ヒトPBMCおよびジャーカットT細胞においてT細胞活性化障害を引き起こすことを示す図である。ジャーカットT細胞は未処理のままか、またはメパジンもしくはチオリダジン10μMで3時間インキュベートし、その後無刺激のままか、または抗CD3/CD28で15、30、60、90および120分間刺激した。メパジンおよびチオリダジンの添加によって、細胞性MALT1活性の活性化の強い減少が引き起こされた。グラフは、少なくとも3回の独立した実験の平均を示している。エラーバーはSDを示す。
図4B】メパジンおよびチオリダジンは、MALT1の阻害を媒介し、初代マウスCD4+T細胞、ヒトPBMCおよびジャーカットT細胞においてT細胞活性化障害を引き起こすことを示す図である。メパジンおよびチオリダジンでジャーカットT細胞を処理すると、RelBの刺激およびMALT1依存的切断が用量依存的に妨害された。ジャーカットT細胞を溶媒またはメパジンもしくはチオリダジン2、5、10もしくは20μMのいずれかで4時間処理し、RelB切断断片(RelBΔ)を安定化させるためにMG132で1時間処理した。細胞はP/Iで30分間刺激した。RelBおよびRelBΔをウェスタンブロットによって分析した。ブロットは、少なくとも3回の独立した実験の典型を示す。
図4C】メパジンおよびチオリダジンは、MALT1の阻害を媒介し、初代マウスCD4+T細胞、ヒトPBMCおよびジャーカットT細胞においてT細胞活性化障害を引き起こすことを示す図である。T細胞活性化に対するPDの阻害の影響を分析するために、メパジンまたはチオリダジン5および10μMの有無の下で、P/Iまたは抗CD3/CD28刺激20時間後に、ジャーカットT細胞のIL-2分泌をELISAによって測定した。いずれの化合物もT細胞活性化後に細胞外IL-2レベルの減弱をもたらした。グラフは、少なくとも3回の独立した実験の平均を示している。エラーバーはSDを示す。
図4D】メパジンおよびチオリダジンは、MALT1の阻害を媒介し、初代マウスCD4+T細胞、ヒトPBMCおよびジャーカットT細胞においてT細胞活性化障害を引き起こすことを示す図である。PD化合物の初代マウスCD4+T細胞活性化に対する影響。定量的PCRを使用して、メパジンまたはチオリダジンによる3時間の前処理および抗CD3/CD28による4時間の誘導の後で、IL-2 mRNAレベルを測定した。IL-2 mRNAレベルは、溶媒処理対照細胞と比較して化合物処理細胞において有意に低下した。その結果、両化合物で細胞を処理し、その後抗CD3/CD28抗体で20時間T細胞を活性化すると分泌IL-2レベルの低下が生じた。グラフは、少なくとも3回の独立した実験の平均を示している。エラーバーはSDを示す。
図4E】メパジンおよびチオリダジンは、MALT1の阻害を媒介し、初代マウスCD4+T細胞、ヒトPBMCおよびジャーカットT細胞においてT細胞活性化障害を引き起こすことを示す図である。2人のドナーの初代ヒトPBMCにメパジンおよびチオリダジン5および10μMを与えてから3時間後に抗CD3/CD28で20時間誘導した。ドナー全員において、細胞外IL-2レベルは、両化合物の存在下で用量依存的に低下する。
図5】PD処理は、ABC-DLBCL細胞においてMALT1活性およびその後の基質切断を損なわせることを示す図である。(A)DLBCLにおける細胞性MALT1活性は、メパジンおよびチオリダジンで4時間インキュベーションした後に分析した。MALT1は、抗体をベースにした沈殿法によって単離し、そのタンパク質分解活性は放出されたAMC蛍光色素の蛍光発光を検出するプレートリーダーで測定した。両化合物は、細胞系またはPDに応じて変化しながら、ABC-DLBCL細胞のMALT1プロテアーゼ活性を用量依存的に阻害した。グラフは、少なくとも3回の独立した実験の平均を示しており、エラーバーはSDを示す。(B)メパジンおよびチオリダジンでDLBCL細胞を処理すると、用量依存的にBCL10の構成的MALT1依存的切断を妨害することができた。細胞は、様々な用量の化合物で20時間処理し、BCL10および切断生成物BCL10Δ5の存在をウェスタンブロットによって分析した。データは、少なくとも3回の独立した実験の典型を表す。
図6】メパジン処理は、ABC-DLBCL細胞におけるNF-κB標的遺伝子の結合および発現を損なうことを示す図である。(A)ABC-DLBCL細胞をメパジン10および20μMで20時間処理し、その後EMSAによってNF-κB DNA結合を分析した。4種類の細胞系全てにおいて、NF-κB標的遺伝子結合が損なわれた。したがって、メパジンによる処理は、抗アポトーシスNF-κB標的BCL-XLおよびc-FLIP-Lのタンパク質レベルを減少させた。データは、3回の独立した実験の典型を表す。(B)NF-κB標的遺伝子発現に対する効果を決定するために、ABC-およびGCB-DLBCL対照細胞をメパジンで20時間処理し、構成的に分泌したサイトカインIL-6およびIL-10のレベルをELISAによって分析した。細胞の処理によって、ABC細胞系におけるIL-6およびIL-10分泌の約50%の減少が生じた。個々の細胞系における細胞性IL-6およびIL-10分泌の激しい変化を説明するために、IL量を2種類の異なる規模で例示する。グラフは、少なくとも3回の独立した実験の平均を示しており、エラーバーはSDを示す。
図7A】PDは、ABC-DLBCL細胞に選択的な毒性を有することを示す図である。ABC-DLBCL細胞の生存能に対するPDの効果を試験するために、4種類の異なるABC細胞系ならびに対照細胞として3種類のGCB-DLBCL細胞系BJAB、Su-DHL-6およびSu-DHL-4を示されている濃度のメパジンまたはチオリダジンで処理した(単回処理)。その後、細胞の生存能を2日後にMTT細胞傷害性試験で分析した。いずれの化合物も、GCB-DLBCL細胞に有意な影響を及ぼすことなく、ABC-DLBCL細胞系における細胞生存能の減少を促進することができた。グラフは、少なくとも3回の独立した実験の平均を示しており、エラーバーはSDを示している。
図7B】PDは、ABC-DLBCL細胞に選択的な毒性を有することを示す図である。PDは、ABC-DLBCL細胞に選択的な毒性を有することを示す図である。ABC-DLBCL細胞の生存能に対するPDの効果を試験するために、4種類の異なるABC細胞系ならびに対照細胞として3種類のGCB-DLBCL細胞系BJAB、Su-DHL-6およびSu-DHL-4を示されている濃度のメパジンまたはチオリダジンで処理した(単回処理)。その後、細胞の生存能を4日後に細胞計数によって分析した。いずれの化合物も、GCB-DLBCL細胞に有意な影響を及ぼすことなく、ABC-DLBCL細胞系における細胞生存能の減少を促進することができた。データは、3回の独立した実験の平均である。
図7C】PDは、ABC-DLBCL細胞に選択的な毒性を有することを示す図である。ABC-DLBCL細胞の生存能に対するPDの効果を試験するために、4種類の異なるABC細胞系ならびに対照細胞として3種類のGCB-DLBCL細胞系BJAB、Su-DHL-6およびSu-DHL-4を示されている濃度のメパジンまたはチオリダジンで処理した(単回処理)。その後、細胞の生存能を2日後にMTT細胞傷害性試験で分析した。いずれの化合物も、GCB-DLBCL細胞に有意な影響を及ぼすことなく、ABC-DLBCL細胞系における細胞生存能の減少を促進することができた。グラフは、少なくとも3回の独立した実験の平均を示しており、エラーバーはSDを示している。
図7D】PDは、ABC-DLBCL細胞に選択的な毒性を有することを示す図である。PDは、ABC-DLBCL細胞に選択的な毒性を有することを示す図である。ABC-DLBCL細胞の生存能に対するPDの効果を試験するために、4種類の異なるABC細胞系ならびに対照細胞として3種類のGCB-DLBCL細胞系BJAB、Su-DHL-6およびSu-DHL-4を示されている濃度のメパジンまたはチオリダジンで処理した(単回処理)。その後、細胞の生存能を4日後に細胞計数によって分析した。いずれの化合物も、GCB-DLBCL細胞に有意な影響を及ぼすことなく、ABC-DLBCL細胞系における細胞生存能の減少を促進することができた。データは、3回の独立した実験の平均である。
図7E】PDは、ABC-DLBCL細胞に選択的な毒性を有することを示す図である。メパジン処理後のABC-DLBCL細胞系におけるアポトーシスの分析。5種類のABC-DLBCL細胞系および2種類のGCB-DLBCL細胞系をメパジン15μMで5日間処理した。アポトーシス細胞はFACS分析によってアネキシンV-PE陽性および7-AAD陰性細胞と同定された。アポトーシスはGCB-DLBCL対照細胞系では増加しなかったが、アポトーシス細胞集団の10%から25%の範囲の増加がABC-DLBCL細胞系全てにおいて検出された。グラフは、少なくとも3回の独立した実験の平均を示しており、エラーバーはSDを示している。
図8】メパジンおよびチオリダジンは、インビボにおいてABC-DLBCL細胞系OCI-Ly10の増殖を妨害し、アポトーシスを誘導することを示す図である。(A) matrigel(BD)に再懸濁したOCI-Ly10またはSu-DHL-6細胞のNOD Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスの側腹部への移植を0日目に実施した。腫瘍の大きさは、ノギスによる測定で決定した。溶媒、メパジン(300μg/d)またはチオリダジン(400μg/d)の各群3匹ずつのマウスへの腹腔内投与は、移植24時間後に開始し、全処置期間中24時間毎に継続的に行った。いずれのPDも、ABC-DLBCL細胞系OCI-Ly10の増殖を選択的に損なわせる。統計学的解析は、2元配置分散分析試験を使用して実施したところ、16日から22日まではp値<0.0001で高い有意性が生じた。(B)フェノチアジンはインビボにおいてOCI-Ly10細胞ではアポトーシスを増強するが、Su-DHL-6細胞では増強しない。アポトーシスは、22日間の処置の後にTUNEL染色によって腫瘍切片において測定した。写真は、典型的な腫瘍切片の染色を示す。(C)メパジンおよびチオリダジンは、OCI-Ly10腫瘍においてRelB切断を阻害する。RelBの発現およびMALT1依存性切断生成物RelBΔは、22日後にウェスタンブロットによってOCI-Ly10腫瘍標本の抽出物において検出された。ブロットは、溶媒、メパジンまたはチオリダジンで処置したマウスの結果を示しており、それぞれについて3回の独立した試料を表している。
図9】MALT1の阻害プロファイルが、シロイヌナズナメタカスパーゼとの高い類似性を意味することを示す図である。AtMC4およびAtMC9と同様に、100μMのアスパルチルプロテアーゼ阻害剤ペプスタチンAもセリンプロテアーゼ阻害剤アプロチニン(5μg/ml)もMALT1タンパク質分解活性を阻害することはできなかった。キモスタチン(100μM)およびアンチパイン(1μM)はMALT1およびメタカスパーゼを強力に阻害することができたが、ロイペプチン(1μM)はAtMC4/9に強い効果を有し、一方、システインプロテアーゼ阻害剤E-64はMALT1を阻害せず、両メタカスパーゼに対して軽い効果を有した。TLCK(1μM)はメタカスパーゼに少し影響を及ぼしたが、MALT1活性は影響を受けなかった。高用量(100μM)のDEVDテトラペプチドカスパーゼ阻害剤は、MALT1またはAtMC4/9を阻害しなかった。
図10】MALT1 HTSのパラメータを示す図である。1次スクリーニングでは、ChemBioNet多様性ライブラリーの約18,000種の低分子を最終濃度10μMでGSTMALT1 170nMに対して384ウェル様式において試験した。得られた最も優れた阻害能力のある陽性300種をさらに、2次アッセイで5から50μMの様々な用量を使用して検証した。2次では陽性15種が同定され、元のライブラリーの約0.08%に相当した。
図11】CASP8活性を示す図である。(A)タンパク質分解CASP8アッセイの確立。活性の組換えCASP8の様々な量(0.25、0.5および1μg)をカスパーゼ基質Ac-DEVD-AMC 50μMで試験した。酵素活性は、GSTMALT1アッセイに従って測定した。CASP8に対するPDの阻害の影響を分析するために、250pgを使用した。データは、2回の独立した実験の典型を表す。(B)Ac-DEVD-CHOの存在下でのAc-DEVD-AMCに対するCASP8活性は、50pMの濃度で酵素活性のほとんど全ての減少を引き起こした。グラフは、3回の独立した実験の平均を示している。エラーバーはSDを示す。
図12A】プロマジンが細胞性MALT1活性を阻害することを示す図である。ABC-DLBCLにおける構成的MALT1活性は細胞をプロマジンで4時間処理した後に低下する。データは、3回の独立した実験の平均である。エラーバーはSDを示す。
図12B】プロマジンはABC-DLBCL細胞生存能を損なわせることを示す図である。細胞性MALT1切断アッセイで得られた結果と矛盾せず、プロマジンはABC-DLBCL細胞生存能に対して最も軽い効果を有した。データは、3回の独立した実験の平均である。エラーバーはSDを示す。
図12C】プロマジンはABC-DLBCL細胞生存能を損なわせることを示す図である。細胞性MALT1切断アッセイで得られた結果と矛盾せず、プロマジンはABC-DLBCL細胞生存能に対して最も軽い効果を有した。データは、3回の独立した実験の平均である。
図12D】(D)および(E)Malt1非活性プロメタジンは、ABC-DLBCL生存能に影響を及ぼさない。ABC-およびGCB-DLBCL細胞系をプロメタジン10および20μMで4日間処理しても、両DLBCLサブグループの生存能は有意には損なわれなかった。データは、3回の独立した実験の平均である。
図12E】Malt1非活性プロメタジンは、ABC-DLBCL生存能に影響を及ぼさない。ABC-およびGCB-DLBCL細胞系をプロメタジン10および20μMで4日間処理しても、両DLBCLサブグループの生存能は有意には損なわれなかった。データは、3回の独立した実験の平均である。エラーバーはSDを示す。
図13】フェノチアジン誘導体およびMALT1の構造活性相関(SAR)の解明を示す図である。医薬品化学によって設計された様々なフェノチアジンの化学構造およびMALT1阻害能力を示す。これらの化学構造は、本明細書で上記に示した一般式(I)の範囲下である。このことは、一般式(I)による化合物は強力なMALT1阻害剤であることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0058】
実施例は本発明を例示する。
【0059】
実施例1
実験方法
細胞培養および試薬
DLBCL細胞系は、20%FCSおよびペニシリン/ストレプトマイシン100U/mlを補給したRPMI1640培地(Invitrogen)で培養したが、ただし、ABC系OCI-Ly10はヒト血漿20%、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびβ-メルカプトエタノール50μMを含むIMDM(Invitrogen)で培養した。ジャーカットT細胞は、DLBCL細胞系に従って10%FCSを含めて培養した。ヘパリン処理した(1000U/ml)全血からのヒト単核細胞(PBMC)の単離は、Lymphoprepで製造者(Axis-shield)に従って実施した。マウスCD4+T細胞の単離は、T細胞特異的Dynabeads(Invitrogen)によって実施した。初代細胞は、β-メルカプトエタノール50μMを含有するジャーカット培地で培養した。ジャーカットT細胞、ヒトPBMCおよびマウスCD4+T細胞の刺激は、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA;200ng/ml)およびイオノマイシン(I;300ng/ml)(いずれもCalbiochem)かまたはhCD3/hCD28およびmIgG1/mIgG2a抗体(BD Biosciences)のいずれかを添加することによって惹起した。Z-VRPR-FMK(Alexis Biochemicals)、メパジン酢酸塩(Chembridge)、プロマジン塩酸塩、チオリダジン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩(全てSigma Aldrich)およびその他の試験したPD全て(ChembridgeまたはSigma)はDMSOに溶解した。
【0060】
組換えおよび内在性MALT1切断アッセイ
GSTMALT1タンパク質は、コンピテントBL21 RIL大腸菌(E. coli)で産生された。タンパク質産生は、イソプロピル-α-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)50μMで18℃で16時間でOD6000.8で誘導された。細菌を収集し、溶解緩衝液(HEPES 50mM、pH7.5、10%グリセロール、0.1% Triton X-100、ジチオスレイトール 1mM、NaCl 150mM、MgCl2 2mM、プロテアーゼ阻害剤を含む)中で超音波処理によって溶解した。GSTMALT1は、AKTA(商標)液体クロマトグラフィー系によって、グルタチオンFastTrapカラム(GE Healthcare)を使用して精製した。384ウェルマイクロプレートにおける切断アッセイでは、タンパク質200ngおよびBCL-10由来基質Ac-LRSR-AMC 50μMを使用した。30℃で30分間インキュベーション後、切断したAMCの蛍光をSynergy 2マイクロプレートリーダー(Biotek)を使用して1時間測定した。プロテアーゼ活性は、相対的蛍光単位で表し、DMSO処理対照を100%に設定し、化合物処理ウェルの蛍光を適切に計算した。したがって、ヒト組換えCASP3(BioVision)およびCASP8(Cayman Chemical)の切断は、基質としてAc-DEVD-AMCおよびタンパク質50および250pgそれぞれに対してアッセイした。内在性MALT1プロテアーゼDLBCLまたはジャーカットT細胞(5×106細胞)は未処理のままなので、阻害剤(それぞれ4時間および3時間)またはP/IおよびCD3/CD28で処理し、溶解緩衝液中で4℃で溶解した。免疫沈降法では、抗MALT1抗体(H-300、Santa Cruz Biotechnology)4μlを清澄化させた溶解物400μlに添加した。4℃で16時間インキュベーション後、PBSで洗浄したタンパク質G-セファロースビーズ(Roche)15μlを添加し、試料をさらに1時間インキュベートした。ビーズをPBSで3回洗浄し、切断アッセイ緩衝液(MES 50mM、pH6.8、NaCl 150mM、10%[wt/vol]スクロース、0.1%[wt/vol]CHAPS、クエン酸アンモニウム 1M、ジチオスレイトール 10mM)40μlに再懸濁し、384ウェルマイクロウェルプレートに移した。ペプチド基質Ac-LRSR-AMCを最終濃度20μMまで添加し、活性を組換えGSTMALT1アッセイに従って測定した。使用した阻害剤は全てDMSOに溶解し、対照細胞は適切な量の溶媒で処理した。
【0061】
MALT1低分子阻害剤のハイスループットスクリーニング(HTS)
MALT1切断アッセイは、ベルリンのLeibniz Institute for Molecular Pharmacology (FMP)でChemBioNetライブラリーの約18000種の低分子をスクリーニングするために使用した35。384ウェル非結合アッセイプレート(Corning)中におけるスクリーニング体積は11μlであり、化合物の最終濃度10μMに対してGSTMALT1 170nmolとした。アッセイは、Ac-LRSR-AMC基質50μMで30℃で20分間実施した。陰性対照としては組換えMALT1変異体C453Aを使用し、中程度の阻害対照(medium inhibition control)としてはZ-VRPR-FMKペプチド1nMを使用した。アッセイの品質は、標準的Zファクター測定(約0.7)によって確認した。陽性を検証するために、1次スクリーニングから最も阻害効果のある300種の化合物を0.7から90.9μMの範囲の8つの異なる化合物濃度で2回アッセイした。
【0062】
RNAのリアルタイムRT-PCRによる定量
cDNAの合成は、DNAを含まないRNA試料(RNeasy Mini Kit、Qiagen)で、ランダムヘキサマーおよびSuperscript II(Invitrogen)による逆転写によって、製造者のプロトコールに従って実施した。リアルタイムPCRは、LC 480 Lightcyclerシステム(Roche)でLC 480 SybrGreen PCRミックス(Roche)を使用して実施した。サイトカインRNAの定量は、β-アクチンハウスキーピング遺伝子に正規化することによって実行した。相対的発現比は、Pfaffl 2001に従って計算した。以下のプライマーを使用した:mIL-2フォワード5'-GAGTGCCAATTCGATGATGAG-3'(配列番号1);mIL-2リバース5'-AGGGCTTGTTGAGATGATGC-3'(配列番号2);mβ-アクチンフォワード5'CCTCTATGCCAACACAGTGC3'(配列番号3);mβ-アクチンリバース5'-GTACTCCTGCTTGCTGATCC-3'(配列番号4)36
【0063】
電気泳動移動度シフト測定法(EMSA)、ウェスタンブロットおよびELISA
全細胞抽出物、ウェスタンブロットおよびEMSAは、既に記載されたように実施した9。使用した抗体は、BCL-XL(Cell signaling)、MALT1(H300、B12)、BCL10(H197)、c-FLIP(Alexis Biochemicals)およびβ-アクチン(I-19)であった。BCL10切断は、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫細胞を様々な用量のPDで20時間処理した後に視覚化した。ヒトおよびマウスIL-2 ELISA(BenderMed Systems)は、製造者のプロトコールに従って、ジャーカットT細胞ならびに初代ヒトおよびマウス細胞をメパジンおよびチオリダジンで3時間予備処理し、その後T細胞受容体を20時間刺激した後で実施した。IL-6およびIL-10 ELISA(Immunotools)は、DLBCL細胞系で阻害剤を20時間インキュベートした後実施した。
【0064】
生存能、MTTおよびアポトーシスアッセイ
DLBCL細胞系の生存能は、DMSO処理対照細胞と比較して、用量依存的に阻害剤で処理した4日後にトリパンブルー染色細胞の細胞数アッセイによって、2日後にMTT(3-4,5-ジメチルチアゾール-2-イル-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)細胞傷害性試験によって分析した。細胞依存性のMTTからホルマザンへの還元は、μQuantマイクロプレート分光光度計(Biotek)によってλ=450nmで測定した。アポトーシス速度は、化合物処理の5日後に、FACS分析(LSRII、BD)によって7AAD細胞のPE-アネキシンV染色(BD Pharmingen)で測定した。データは、FlowJoソフトウェア(Treestar)を使用して解析した。
【0065】
実施例2
MALT1パラカスパーゼは、ヒトカスパーゼと異なるタンパク質分解活性を示す
MALT1プロテアーゼ活性を阻害することができる低分子量化合物をスクリーニングするため、組換えGSTMALT1を大腸菌から精製して、ハイスループットスクリーニング(HTS)に適したインビトロプロテアーゼ切断アッセイを確立した。GSTMALT1を、BCL10のC末端のMALT1切断部位から得られるテトラペプチド基質Ac-LRSR-AMC 50μMの存在下で30℃で1時間インキュベートした7。タンパク質分解活性は、切断および随伴する蛍光色素AMCの放出後に発光する蛍光の増加を測定することによって決定した(図1AおよびB)。Ac-LRSR-AMCのMALT1触媒切断は、蛍光強度が経時的に着実に増加することから明白である。MALT1(アイソフォームB)のパラカスパーゼドメイン内の保存されたシステインの突然変異(C453A)によって、MALT1触媒活性は完全に消失した(図1A)。アルギニン-リシン特異的メタカスパーゼと同様に、MALT1プロテアーゼはアルギニン残基後の切断に高い選択性を有する。メタカスパーゼアンタゴニストペプチドとして最初に設計されたこのZ-VRPR-FMKと矛盾せず24、低ナノモル濃度でMALT1切断活性も完全に遮断するので、植物メタカスパーゼに対するパラカスパーゼの高い類似性が強調される(図1BおよびC)。対照的に、CASP8活性をピコモル濃度でも効果的に遮断した強力なカスパーゼ阻害ペプチドAc-DEVD-CHO(図11)は、200μMの濃度を使用してもわずかにMALT1活性を低下させるのみだった(図1D)。
【0066】
カスパーゼおよびMALT1の異なる基質特異性は、カスパーゼ依存性アポトーシス機構を妨げずにMALT1依存性生存促進性シグナル伝達20、21を妨害する低分子阻害剤を同定する可能性が強調される。MALT1パラカスパーゼは、植物メタカスパーゼの唯一の哺乳類相同体なので4、MALT1酵素活性および基質選択性をさらに特徴付けた。MALT1切断は、プロテアーゼ阻害剤の存在下でアッセイし(図1E)、図9に要約したように、効果を、植物メタカスパーゼAtMC4およびAtMC9で得られた阻害プロファイルと比較した5。AtMC4およびAtMC9と同様に、アスパルチルプロテアーゼ阻害剤ペプスタチンA(100μM)もセリンプロテアーゼ阻害剤アプロチニン(5μg/ml)もMALT1活性を強くは阻害しなかった。広域スペクトルセリン/システインプロテアーゼ阻害剤キモスタチン(100μM)およびアンチパイン(1μM)はMALT1およびAtMC4/9を同様の範囲まで阻害するが、ロイペプチン(1μM)は植物メタカスパーゼに対してより強く作用した。興味深いことに、AtMC4には軽い効果を有するが、AtMC9には効果を有さないことが示されたシステインプロテアーゼ阻害剤E-64(100μM)はMALT1を阻害しない。対照的に、AtMC9を強く阻害し、AtMC4の阻害はずっと弱いセリン/システインプロテアーゼ阻害剤TLCK(1μM)は、MALT1活性に軽い影響を及ぼすのみであった。予測通り、テトラペプチドカスパーゼ阻害剤は、MALT1またはAtMC4/9活性を阻害しなかった。まとめると、基質特異性および阻害プロファイルは、MALT1パラカスパーゼと植物メタカスパーゼAtMC4/9の間の高い類似性を示す。
【0067】
実施例3
選択的MALT1プロテアーゼ阻害剤としてのフェノチアジン誘導体の同定
MALT1プロテアーゼの低分子阻害剤を同定するために、ChemBioNetコレクションの約18,000種の化合物を図10で示したアッセイ様式を使用してスクリーニングした。1次スクリーニングは、384ハーフウェル様式で、各化合物10μMの存在下で、アッセイ時間は20分でAMC蛍光の増加を測定することによって実施した。300種の1次陽性が阻害能力を示したので、2次陽性検証のために選択し、2次陽性検証は、各化合物の用量範囲を0.7から90.9μMに増加させて同じ様式で2回実施した。この検証によって、1次スクリーニングの約0.08%に相当する15種の1次陽性が得られた。
【0068】
15種の1次陽性の構造を調べると、最も効果的で選択性のある化合物の3つ(図2A:化合物A、BおよびC)は、内側の環の窒素および硫黄原子に結合した2つの外側のベンゼン環を含有する3環式フェノチアジンの誘導体であることがわかった。阻害剤Dに見出された複素環コアはまた、フェノチアジンに高い構造的類似性を示すが、窒素は炭素に置換されている。これらの最初の結果は、ある種のフェノチアジン誘導体(PD)がMALT1阻害剤として作用し得ることを示唆した。MALT1阻害を確認し、特異性を評価するために、同定された4種類のPDによるMALT1およびCASP8活性の阻害を試験した。4種類の物質全てが50μMでMALT1プロテアーゼ活性を用量依存的に10%未満まで低下させた(図2B)。対照的に、CASP8活性は、最高の阻害剤濃度50μMでもわずかな影響しか受けず、4種類のPDがMALT1に選択的に作用することを示している。いかなる修飾も有さないフェノチアジン骨格も試験し、用量依存的にMALT1活性を阻害していることが発見された(図2C)。特に、最初の結果は、化合物Aの修飾のみがMALT1に対するフェノチアジン主構造の阻害能力を有意に改善すると考えられることを示唆した。興味深いことに、化合物Aは、精神安定剤として使用されていた公知の薬物メパジン(以前の商品名パカタール)に対応する25。これらの結果は、フェノチアジンが選択的MALT1阻害剤として有望な候補であり得ることを示唆した。
【0069】
実施例4
メパジン、チオリダジンおよびプロマジンは強力な選択的MALT1パラカスパーゼ阻害剤として作用する
メパジンならびにその他の市販の25種類のPDは、阻害能力を試験するために得た。ほとんどの化合物(12〜26)が阻害能力を有さないか、または非常に弱い阻害能力を示すのみであるが(IC50>20μM)、8種類の化合物(4〜11)はおよそ5〜20μMの間のIC50でMALT1活性を阻害した。3種類のPDのみが5μM未満のIC50を有した。したがって、PDの小部分のみがMALT1を効果的に阻害することができた。最も強力な3種類の化合物は、プロマジン、チオリダジンおよびメパジンであり、後者は最初スクリーニングで同定された(図3A)。阻害能力を確認するために、各化合物の組換え完全長(FL)GSTMALT1ならびにパラカスパーゼのアミノ酸および325から760のC末端Ig様(Ig3)ドメインを包含する酵素的に活性な切断型MALT1タンパク質の正確なIC50値を測定した(図3B)。メパジンは、GSTMALT1 FLをIC50値0.83μMで、GSTMALT1 325〜760を0.42μMで阻害し、最も有効であった。チオリダジンおよびプロマジンも用量依存的にGSTMALT1 FLおよびGSTMALT1 325〜760を阻害したが、IC50値はメパジンと比較すると約4分の1(GSTMALT1 FL)または8分の1(GSTMALT1 325〜760)の低さだった。対照的に、ある種の精神障害の治療に今でも使用されており、3種類の活性であるPDと高い関連性のある薬物であるプロメタジンは、最高20μMの濃度でもいかなる有意なMALT1の阻害も引き起こさなかった。これらの結果は、PDの群内でも、MALT阻害の特異性の程度が高いことを示している。
【0070】
作用様式を試験するために、蛍光発生MALT1切断アッセイに基づいてミカエリスメンテン速度式におけるメパジンの効果を測定した(図3C)。GSTMALT1 FLは、VMAX約170RFU/分を示し、ミカエリスメンテン定数(KM)は約48μMと計算され、以前に測定された範囲内であった(Hachmann他、2012)。メパジンをおよそIC50(1μM)の濃度で添加すると、VMAXは約58RFU/分まで強く減少するが、48μMのKMは変化しなかった。メパジンおよびその他のフェノチアジンは、反応基を含有しない。しかし、メパジンが非共有結合的可逆的阻害剤として作用することを確認するために、グルタチオンセファロースビーズに結合したGSTMALT1を使用した洗浄実験を実施した(図3D)。さらに、メパジンはMALT1切断活性を阻害したが、GSTMALT1ビーズを数回洗浄すると、最高濃度の化合物であっても(50μM)完全な阻害の喪失が生じた。したがって、メパジンのMALT1酵素活性に対する効果は、非競合的で可逆的な様式のフェノチアジンによるMALT1阻害であることが明らかになった。
【0071】
次に、哺乳類におけるMALT1に構造的に最も密接に関連したカスパーゼに対するPDの効果(Uren他、2000)をアッセイした。重要なことに、3種類のPDは全て、最高50μMの濃度であっても、CASP3またはCASP8活性を有意に阻害せず(図3E)、MALT1阻害剤としての化合物の選択性を反映している。
【0072】
実施例5
フェノチアジンはT細胞におけるMALT1活性およびIL-2誘導を阻害する
生理学的条件下では、MALT1プロテアーゼはT細胞応答に関与することが示されている。MALT1の活性キャビティ(active cavity)における触媒性システイン残基の突然変異は、抗CD3/CD28同時刺激に応答した最適なIL-2産生を妨害する(Duwel他、2009)。したがって、PDのT細胞におけるMALT1活性およびIL-2産生に対する効果を測定した(図4)。ジャーカットT細胞のタンパク質を免疫沈降(IP)した後にMALT1切断アッセイを実施した(図4A)。細胞は未処理のままか、またはメパジンもしくはチオリダジン10μMで3時間インキュベートし、その後無刺激のままか、または抗CD3/CD28で刺激した。MALT1プロテアーゼ活性は、刺激無しではほとんど検出不可能で、CD3/CD28処理後30〜60分がピークであった。メパジンまたはチオリダジンのいずれかを添加すると、どの時点においても、刺激を受けたジャーカットT細胞におけるMALT1プロテアーゼ活性の強い低下が引き起こされた(図4A)。両方のフェノチアジンが細胞内部のMALT1活性を阻害していることを確かめるために、ジャーカットT細胞刺激後のRelBのMALT1切断をモニターした(図4B)。RelB切断産物RelBΔは、不安定なRelBトランケーションの分解を妨害するために、ジャーカットT細胞をP/Iで刺激する前にプロテアソーム阻害剤MG132でインキュベートしたとき、検出することができた(Hailfinger他、2011)。RelBΔレベルの減少および並行した完全長RelBの発現増加から明らかなように、メパジンおよびチオリダジンは用量依存的にRelB切断を損なわせた(図4B)。組換えMALT1の状況と同様に、メパジンは細胞性MALT1切断活性の阻害により効果的で、2〜5μMの間でRelBΔの出現を有意に低下させたが、チオリダジンは5μMを超えると効果的であった。T細胞活性化に対するPDによるMALT1阻害の効果を測定するために、メパジンまたはチオリダジンの有無の下で、ジャーカットT細胞のP/Iまたは抗CD3/CD28刺激後に分泌されたIL-2の量をELISAによって測定した。いずれの化合物もT細胞活性化後、PD処理細胞の培地中におけるIL-2レベルの減少を引き起こした(図4C)。PDの阻害能力も初代T細胞において検出可能であることを確認するために、マウスCD4陽性Th1 T細胞を単離精製し、メパジンまたはチオリダジン5および10μMの有無の下で、抗CD3/CD28コライゲーション後のIL-2 mRNA誘導をqPCRによって、タンパク質レベルをELISAによって測定した(図4D)。いずれも、IL-2 mRNA誘導およびタンパク質発現を用量依存的に低下させた。最後に、3人のドナーの初代ヒトPBMCを使用して、MALT1活性の阻害も初代ヒトT細胞におけるIL-2産生の減少を促進するかどうかを評価した(図4E)。以前の結果と一致して、メパジンおよびチオリダジン処理は3人のドナー全てのPBMCにおけるIL-2分泌の有意な減少を引き起こした。
【0073】
実施例6
フェノチアジンはABC DLBCL細胞におけるMALT1活性およびNF-κB標的遺伝子の誘導を阻害する
全ABC-DLBCL細胞の特性は既に示されたように、MALT1基質A20およびBCL10の構成的切断と一致して、MALT1プロテアーゼ活性は促進された26。細胞性MALT1活性に対するフェノチアジンの効果を測定するために、ABC-DLBCL細胞をメパジン、チオリダジンおよびプロマジン5または10μMで4時間インキュベートした。抗MALT1 IPを実施し、MALT1プロテアーゼ活性は、基質AC-LRSR-AMCを沈殿物に添加することによって測定した。3種類のPDは全て、ABC-DLBCL細胞のMALT1プロテアーゼ活性を用量依存的に阻害した(図5A)。細胞性MALT1活性の阻害は個々の細胞系および化合物に依存して変化するが、メパジンは一般的に最も強い効果を有し、10μMで全ABC-DLBCL細胞においてMALT1活性の少なくとも75%の低下を引き起こした。チオリダジンはまた、ABC-DLBCL細胞系全てにおいてMALT1活性を阻害した。しかし、チオリダジン10μMは、HBL1、U2932およびTMD8において80%超MALT1を阻害したが、OCI-Ly3およびOCI-Ly10では約50%の減少しか認められなかった。プロマジンは細胞性MALT1活性の最も弱い阻害剤であった。
【0074】
次に、2つの最強の化合物メパジンおよびチオリダジンによるMALT1阻害が、ABC-DLBCL細胞における公知のMALT1基質BCL10の細胞性切断も妨害するかどうかを評価した(図5B)。MALT1は、BCL10の最もC末端の5個のアミノ酸を切断し、切り詰められた切断産物を生じる(BCL10Δ5)。ABC-DLBCL細胞は、用量を増加させた各化合物で20時間処理した。実際に、メパジンまたはチオリダジンによる処理は、用量依存的にBCL10Δ5の検出を妨害した。
【0075】
MALT1活性は、ABC-DLBCL細胞における最適なNF-κB活性化および標的遺伝子発現に関与する20、21。したがって、MALT1活性に最も強く影響を及ぼすメパジンがABC-DLBCL細胞において構成的NF-κB DNA結合およびその後のNF-κB標的遺伝子発現も損なわせるかどうかを測定した(図6)。このために、DLBCL細胞をメパジン10および20μMで20時間処理し、EMSAによってNF-κB DNA結合を分析した(図6A)。メパジンの濃度を増加させると、ABC-DLBCL細胞におけるNF-κB標的DNA結合の低下が生じた。これと一致して、メパジン処理は抗アポトーシスBCL-XLおよびFLIP-Lタンパク質の用量依存的な減少を引き起こした。メパジンのその他のNF-κB依存遺伝子に対する効果をさらにモニターするために、ABC-またはGCB-DLBCL細胞をメパジン10μMで20時間処理し、サイトカインIL-6およびIL-10の分泌をELISAによって測定した(図6B)。GCB-DLBCL細胞は少量のIL-6またはIL-10を発現しているが、ABC-DLBCL細胞は様々な範囲であっても両方のサイトカインを分泌しており、このことは異なる細胞系間の不均一性の程度を反映している。重要なことに、メパジンはABC-DLBCL細胞全てにおいて可溶性IL-6およびIL-10の発現を減少させたが、GCB-DLBCL細胞においては減少させず、NF-κB標的遺伝子発現に対する直接的な効果を実証している。
【0076】
実施例7
ABC DLBCL細胞における選択的毒性およびフェノチアジンによるアポトーシスの誘導
3種類のPDはインビトロおよびインビボにおいてMALT1プロテアーゼ活性を効果的に阻害するので、ABC-DLBCL細胞の生存能に対する影響を試験した(図7)。対照として、3種類のGCB-DLBCL細胞系BJAB、Su-DHL-6およびSu-DHL-4を使用し、それらの増殖および生存はMALT1タンパク質分解活性に依存しないことが以前に示された20。細胞傷害性効果は、漸増濃度のメパジン、チオリダジンおよびプロマジンを使用して2日間インキュベーションした後(単回処理)、MTTアッセイによって測定した(図7A、Cおよび図12B)。いずれの化合物も、GCB-DLBCL細胞に有意な影響を及ぼすことなく、ABC-DLBCL細胞、HBL1、OCI-Ly3、U2932およびTMD8において、MTT反応によって測定された細胞生存能の減少を促進した。さらに、細胞生存能は、処理4日後に細胞計数によって測定した(図7B、Dおよび図12C)。MTTアッセイと一致して、PDはまた、生きたABC-DLBCL細胞の全体数を減少させた。さらに、低下した生存能は、ABC-DLBCL細胞において非常に著しいが、GCB-DLBCL細胞は化合物の最高濃度であってもわずかに損なわれただけであった。細胞性MALT1切断アッセイで得られた結果と矛盾せず(図11A)、プロマジンは一般的にABC-DLBCL細胞の生存能に対して最も軽い影響を有した。異なるPDを投与した後のABC-DLBCL細胞の生存能の減少がMALT1阻害と関連があることをさらに検証するため、DLBCL細胞をプロメタジンで処理した(図12E)。プロメタジンは構造的にプロマジンと密接な関連があるにも関わらず、最高20μMの濃度でもMALT1プロテアーゼ活性を阻害しなかった(図12D)。実際に、プロメタジンは処理4日後にABCまたはGCB-DLBCL細胞の生存能を有意には阻害せず、メパジン、チオリダジンおよびプロマジンの細胞効果はMALT1阻害に依存することのさらなる証拠をもたらした。
【0077】
最後に、最も強力なMALT1阻害剤としてのメパジンがアポトーシスを促進することによってABC-DLBCL細胞の生存能に影響を及ぼすかどうかを測定した(図7D)。このために、DLBCL細胞をメパジン15μMで5日間処理し、アポトーシス細胞をFACSによってアネキシンV-PE陽性および7-AAD陰性細胞として同定した。メパジンは、全ABC-DLBCL細胞においてアポトーシス速度の増強を惹起したが、アポトーシスは2種類のGCB-DLBCL対照細胞では増加しなかった。したがって、PDはABC-DLBCL細胞に対して選択的毒性があり、毒性は一部には影響を受けたリンパ腫細胞において促進したアポトーシスに起因し、メパジンおよび構造的に関連した化合物をABC-DLBCL療法に使用できる可能性は明らかである。
【0078】
実施例8
メパジンおよびチオリダジンはインビボにおけるABC-DLBCLの増殖を妨げる
精神障害の治療におけるフェノチアジン、特にチオリダジンの長い歴史ならびにそれらの薬理および毒性の詳細な知識によって、ABC-DLBCLと診断された患者を処置するために適用外の使用を促進することができた。したがって、メパジンおよびチオリダジンが、マウスDLBCL異種腫瘍モデルにおいてインビボでのリンパ腫増殖にも効果を発揮することができるかどうかを測定した。このために、ABC-DLBCL細胞系OCI-Ly10およびGCB-DLBCL細胞系Su-DHL-6をNOD/scid IL-2Rgnull(NSG)マウスに皮下異種移植として注射した(図8A)。両腫瘍細胞系を個々のマウスの反対側腹部に同時に移植した。注射後1日目から、溶媒またはメパジン(12mg/kg)もしくはチオリダジン(16mg/kg)のいずれかの腹腔内投与を開始して、マウスを処置した。対照処置マウスでは、移植3週間以内に両方のDLBCL細胞系から大きな腫瘍が増殖した。メパジンまたはチオリダジンを毎日投与すると、ABC-DLBCL細胞系OCI-Ly10の増大が強く損なわれた。対照的に、両PDは、同じ動物におけるGCB-DLBCL細胞系Su-DHL-6の進行に対していかなる阻害効果も全く発揮することはできなかった。
【0079】
メパジンおよびチオリダジンが腫瘍細胞に直接作用することを確かめるために、腫瘍組織におけるアポトーシスの誘導を測定した。治療期間の最後に移植した腫瘍を取り出し、腫瘍組織の切片をTUNEL染色することによってアポトーシス細胞を視覚化した(図8B)。インビボにおける選択的毒性と一致して、メパジンまたはチオリダジン処置は、異種移植したABC-DLBCL細胞系OCI-Ly10においてアポトーシス細胞の数を増加させたが、GCB-DLBCL細胞系Su-DHL-6においてはアポトーシスの誘導は認められなかった。さらに、MALT1基質RelBの構成的切断は、異種移植したOCI-Ly10腫瘍の標本においてメパジンおよびチオリダジン処置後に損なわれ、マウスにおいてもこの化合物は実際に腫瘍細胞内でMALT1活性を阻害することによって作用していることが明らかになった(図8C)。したがって、マウス腫瘍モデルは、フェノチアジンによるMALT1阻害がインビボにおいてMALT1依存性DLBCLを選択的に殺滅することの証拠をもたらした。マウス腫瘍モデルはまた、ABC-DLBCL療法において公知の化合物の使用の潜在的な治療上の有益性を示している。
【0080】
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図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13
【配列表】
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