(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フック(50)の軸部(60)が取付体(10)の軸支部(15)により軸支されて前記フック(50)と前記取付体(10)が回動自在に係合し、前記取付体(10)の前記軸支部(15)には前記軸支部(15)を貫通する軸孔(AO15)にして少なくとも前記フック(50)の前記軸部(60)を受け入れる軸孔(AO15)が設けられた連結具(100)であって、
前記フック(50)には当該フック(50)の欠きを封鎖するべき抜け止め構造(80)が一体又は別体に設けられ、当該抜け止め構造(80)が、前記取付体(10)の前記軸支部(15)の前記軸孔(AO15)内に配される端部(81)を有し、当該端部(81)が、前記フック(50)の前記軸部(60)と共に前記軸支部(15)により周囲され、
前記軸孔(AO15)は、スリットによる前記軸孔(AO15)の拡径により前記軸部(60)に結合した頭部(70)が前記軸孔(AO15)を通過するために前記軸部(60)の挿入を許容し、前記軸部(60)に結合した前記フック(50)のフック本体(51)の挿通を許容しない、連結具。
前記フック(50)と前記取付体(10)間の回動軸(AX)から離間する方向へ延びる少なくとも1つの着座面(51h、68h、88h)が前記フック(50)に設けられ、前記取付体(10)の前記軸支部(15)が前記着座面(51h、68h、88h)に着座可能である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の連結具。
前記フック(50)の前記軸部(60)には、前記フック(50)のフック先端(51n)側へ膨出した膨出部(68)が設けられ、少なくとも1つの前記着座面(68h)が前記膨出部(68)に設けられる、請求項4又は5に記載の連結具。
前記抜け止め構造(80)が、前記フック(50)に対して一体的に結合したバネであり、前記取付体(10)の前記軸支部(15)により周囲される基部(88a)と、前記フック(50)の前記欠きを閉じるべく前記基部(88a)から延びる延在部(88b)とを備え、
少なくとも1つの前記着座面(88h)が前記基部(88a)と前記延在部(88b)の間に設けられる、請求項4又は5に記載の連結具。
前記軸部(60)の外周側面には、当該軸部(60)を周囲する方向に所定間隔で設けられた少なくとも2つの切欠き(63p、63q)が設けられ、当該2つの切欠き(63p、63q)により挟まれた前記軸部(60)の取付部(64)に対して前記線状端部(83a、83e)が係止される、請求項8又は9に記載の連結具。
前記抜け止め構造(80)が、前記フック(50)に対して一体的に結合したバネであり、前記取付体(10)の前記軸支部(15)により周囲される基部(88a)と、前記フック(50)の前記欠きを閉じるべく前記基部(88a)から延びる延在部(88b)とを備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の連結具。
前記基部(88a)が、前記フック(50)と前記取付体(10)の回動軸(AX)沿いに第1基部(88a1)及び第2基部(88a2)を有し、前記軸部(60)が、前記回動軸(AX)沿いに第1軸部(62)及び第2軸部(61)を有し、
前記回転軸(AX)に直交する同一平面内に配される前記第2基部(88a2)と前記第2軸部(61)の合計幅が、前記回動軸(AX)に直交する同一平面内に配される前記第1基部(88a1)と前記第1軸部(62)の合計幅よりも広い、請求項11又は12に記載の連結具。
【背景技術】
【0002】
回動可能に連結した2つの部材、典型的にはフック及びリングから構成される連結具は、従来から様々な用途、例示的/代表的には鞄本体に対して鞄のベルトを連結する用途に用いられている。一般的に、フックがリングにより回動自在に軸支され、フックとリング間の回動自在な連結が確保される。フックには、被連結物、例えば鞄本体に固定のリングを通す欠きがあり、その欠きを閉じるべく金属製又は樹脂製の抜け止め構造がフックに設けられることが多い。
【0003】
特許文献1には、同文献の
図1に示すようにフックメンバー12にリテイナー14が回転自在に連結し、同文献の
図4乃至6から理解できるようにフックメンバー12の挿入部22がリテイナー14のリセプタクル30に圧入され、この過程で同文献の
図6に示すようにリセプタクル30が弾性変形し、また、同文献の
図5に示すようにリテイナー14自体も弾性変形することが開示されている。なお、同文献の
図1に示すように、フックメンバー12は、ベース16、ベース16側から口が開いたフック本体18、フック本体18の口を閉鎖するための閉鎖舌片20を有し、同文献の段落0009にはフックメンバー12がプラスチックの成型品であることが述べられている。
【0004】
特許文献2には、なす環5の本体19に首部21が突設され、首部21の先端に頭部22が設けられ、ベルト連結部材4の嵌着孔13に対してなす環5の頭部22が挿入され、ベルト連結部材4のベルト支持杆11の拡張部12によりなす環5の本体19の首部21が収容されることが開示されている。同文献の
図3に示すように頭部22は、楕円形状を有し、
図2に示すように嵌着孔13の出口も同様であり、これに応じて、特になす環5とベルト連結部材4が直交する状態でのそれらの連結を強固にできることが同文献に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の連結具では、特にフックに設けられる抜け止め構造の外力に対する耐性が弱い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る連結具は、フックの軸部が取付体の軸支部により軸支されて前記フックと前記取付体が回動自在に係合し、前記取付体の前記軸支部には少なくとも前記フックの前記軸部を受け入れる空間が設けられた連結具であって、前記フックには当該フックの欠きを封鎖するべき抜け止め構造が一体又は別体に設けられ、当該抜け止め構造が、前記取付体の前記軸支部の前記空間内に配される端部を有し、当該端部が、前記フックの前記軸部と共に前記軸支部により周囲される。抜け止め構造の端部を取付体の軸支部で保護することができる。
【0008】
抜け止め構造の前記端部の幅が、前記空間の幅以下又は前記軸部の幅以下である、と良い。これにより、フックに一体又は別体の抜け止め構造によりフックと取付体間の回動が阻害されることを抑制することができる。
【0009】
前記軸支部の前記空間が前記軸支部を貫通する軸孔であり、前記軸部が挿入される前記軸孔の入口の開口径が他方の出口の開口径よりも大きく、前記軸部が、前記軸孔の前記入口側を規定する前記軸支部の内周側面側へ膨出した軸状膨出部を含み、前記軸支部の前記内周側面が前記軸状膨出部の外周側面上を摺動可能である、と良い。これにより、軸孔へ軸部を簡単に挿入でき、かつフックと取付体間のガタツキを抑制できる。
【0010】
前記フックと前記取付体間の回動軸から離間する方向へ延びる少なくとも1つの着座面が前記フックに設けられ、前記取付体の前記軸支部が前記着座面に着座可能である、と良い。取付体上でのフックの回動又はフック上での取付体の回動の安定化を図ることができる。
【0011】
前記フックは、前記軸部が結合し、かつ前記欠きが設けられたフック本体を備え、少なくとも1つの前記着座面は、前記フック本体と前記軸部の間に設けられる、と良い。これにより、取付体上でのフックの回動又はフック上での取付体の回動の安定化を図ることができる。
【0012】
前記フックの前記軸部には、前記フックのフック先端側へ膨出した膨出部が設けられ、少なくとも1つの前記着座面が前記膨出部に設けられる、と良い。取付体とフック間の回動安定性を更に高めることができる。
【0013】
前記抜け止め構造が、前記フックに対して一体的に結合したバネであり、前記取付体の前記軸支部により周囲される基部と、前記フックの前記欠きを閉じるべく前記基部から延びる延在部とを備え、少なくとも1つの前記着座面が前記基部と前記延在部の間に設けられる、と良い。取付体とフック間の回動安定性を更に高めることができる。
【0014】
前記抜け止め構造が、前記フックの前記軸部に係止する少なくとも1つの線状端部を備える線状バネであり、前記軸部に対して係止した前記線状端部の変位が、前記軸支部により規制される、と良い。
【0015】
前記線状端部の延長線上には前記軸支部の内周側面が存在する、と良い。
【0016】
前記軸部の外周側面には、当該軸部を周囲する方向に所定間隔で設けられた少なくとも2つの切欠きが設けられ、当該2つの切欠きにより挟まれた前記軸部の取付部に対して前記線状端部が係止される、と良い。軸部の取付部に対して係止される線状端部の配置空間を2つの切欠きにより好適に確保することができ、この際、線状端部により取付体の回動が阻害されることを回避、若しくは少なくとも低減することができる。
【0017】
前記抜け止め構造が、前記フックに対して一体的に結合したバネであり、前記取付体の前記軸支部により周囲される基部と、前記フックの前記欠きを閉じるべく前記基部から延びる延在部とを備えると良い。前記抜け止め構造の前記基部が前記延在部よりも幅狭の部分を含む、と良い。
【0018】
前記基部が、前記フックと前記取付体の回動軸沿いに第1基部及び第2基部を有し、前記軸部が、前記回動軸沿いに第1軸部及び第2軸部を有し、前記回転軸に直交する同一の平面内に配される前記第2基部と前記第2軸部の合計幅が、前記回動軸に直交する同一の平面内に配される前記第1基部と前記第1軸部の合計幅よりも広い、と良い。基部と軸部とが協働して取付体の回動を案内することができ、またフックと取付体間のガタツキの防止も図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フックに設けられる抜け止め構造の外力に対する耐性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。各実施形態は、個々に独立したものではなく、過剰説明をするまでもなく、当業者をすれば、適宜、組み合わせ可能であり、この組み合わせによる相乗効果も把握可能である。実施形態間の重複説明は、原則として省略する。
【0022】
参照図面は、発明説明を主目的とするものであり、適宜、簡略化されている。これらの図においては、適宜、フック及びリング間で通常一致する回動軸である回動軸AXを図示する。説明の便宜上、回動軸AXに直交する任意の平面内において回動軸AXに近づく方向を内側/半径方向内側と呼び、回動軸AXから離れる方向を外側/半径方向外側と呼ぶ場合がある。また、回動軸AXに沿う方向を「縦」と呼び、回動軸AXに直交する方向を「横」と呼ぶ場合がある。「縦」に対応付けて「高さ」を把握し、「横」に対応付けて「幅」を把握して説明する場合がある。上下左右といった方向を示す用語は、図面を正面視することを前提として用いるが、説明の一貫性を保つため、そのように用いられない場合もある。
【0023】
<第1実施形態>
図1乃至
図4を参照して第1実施形態について説明する。
図1は、抜け止め片を装着したフックをリングに取付ける前の連結具の概略的な分解斜視図である。
図2は、組立後の連結具の概略的な斜視図である。
図3は、組立後の連結具の概略的な縦断面構成を示す模式図である。
図4は、フックがリングにより軸支される箇所の構成を示す概略的な模式図である。なお、
図1乃至
図4に示す具体的な構成は、本開示の一例にしか過ぎず、その他に様々な変形態様が考えられることは言うまでもない。
【0024】
図1及び
図2に示すように、連結具100は、閉じた環であるリング(取付体)10、環の一部に欠きがあるナス状のフック50、及びフック50の欠きを閉じるべくフック50に取付けられた線材から成る抜け止め片(抜け止め構造)80を備え、フック50がリング10により軸支され、フック50がリング10に対して/リング10がフック50に対して回動軸AX周りに回動自在である。なお、リング10及びフック50は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートといった樹脂材料を用い、金型成型により製造され、抜け止め片80は金属線材の曲げ/切断加工により製造される。連結具100を単になす環と呼んでも構わない。
【0025】
リング10及びフック50は、任意の物の取付体/保持体であり、例示的/典型的な場合、リング10に取付けられる物が鞄のベルトであり、フック50に取付けられる物が鞄本体に固定されたリングである。鞄のベルトがリング10に通され、鞄本体のリングがフック50に掛かることにより、鞄のベルトと鞄に固定されたリングとが連結具100を介して相互に連結する。なお、鞄のベルトは、リング10に挿通されて保持され、鞄のリングは、フック50の抜け止め片80の押込みを介してフック50の環内に進入してフック50により保持される。なお、リング10、フック50に取付けられる被取付物の種類は任意であり、例えば、リング10に別のフックを引っ掛け、フック50に別のフックを引っ掛けても良い。
【0026】
リング10は、扁平なショルダーベルト等の挿通に適するように構成されており、端的には、縦幅が狭く横幅が広いリング枠体11から成り、リング枠体11にはリング枠体11と同様に縦幅が狭く横幅が広いリング開口RO11が設けられ、リング開口RO11に対してショルダーベルト等が挿通される。リング枠体11の外周形状は角取りが為されており、全ての角が丸み付けられ、これにより、接触時の痛み等の発生を回避できる。
【0027】
リング枠体11の具体的構成は任意であるが、ここでは単一樹脂材料の成型品であり、横長であり縦に並列した引掛杆12と基杆13を具備する。引掛杆12は、ショルダーベルト等が引っ掛けられる杆部である。基杆13は、引掛杆12と対を為す杆部であり、フック50との係合を確保する軸支構造が設けられる。基杆13は、その中央から横端に向かって弧状に反った形を呈し、つまり、その横方向中央がその横方向両端部よりも引掛杆12から離れる態様で反っている。基杆13の横両端が、引掛杆12の一対の横端部に対して一対の結合部14(14m、14n)を介して個別に結合している。引掛杆12は、基杆13よりも薄い扁平に構成され、その扁平な態様を保ちつつ横方向にほぼ直線的に延びる。このような構成により、扁平なショルダーベルト等の摺動が容易になる。
【0028】
基杆13の横方向中央には、フック50を回動自在に軸支する軸支部15が一体的に設けられる。軸支部15には、回動軸AXに沿って縦に延びる軸孔(空間)AO15が設けられ、この軸孔AO15の横両隣には、スリットSL16及びスリットSL17が軸孔AO15に対して連続、換言すれば分断されずに設けられ、基杆13を貫通する軸孔AO15、スリットSL16、及びスリットSL17が横方向に連続する。軸孔AO15は、後述のフック軸部60を受け入れるために設けられる。軸孔AO15は、入口及び出口を有する孔であり、軸孔AO15の入口には、フック50がその頭部70側から挿入され、フック50の頭部70が軸孔AO15の出口から飛び出すまで軸孔AO15に頭部70及びフック軸部60が挿入され、これによりリング10とフック50が結合する。スリットSL16、SL17は、軸孔AO15の開口径の拡大を許容して頭部70の軸孔AO15の通過を許容するために設けられる。なお、リング10がフック50を軸支するという観点からすれば、軸孔AO15は、必ずしも基杆13を貫通する必要はなく、他の様々な態様が考えられる。フック50の頭部70及びフック軸部60を包括してフック50の挿入部と把握しても良い。軸孔AO15の入口は、軸支部15のフック50に臨む下面に設けられ、軸孔AO15の出口は、軸支部15の引掛杆12に臨む上面に設けられる。
【0029】
軸支部15は、軸孔AO15を囲むスカートであり、その側面視形状は下方に幅広になるテーパーに構成されている。軸支部15をスカート状に構成することにより、リング10に対するフック50の取付時のハンドリングと、リングに対するフック50の取付後の回動安定性を両立することができる。
図3に示すように、軸支部15の最大厚は、後述のフック軸部60の高さH60未満に設定され、製造誤差等がフック50とリング10の組立に影響しないようにされているが、これに限らず、軸支部15の最大厚をフック軸部60の高さH60に一致させても構わない。軸支部15がスカートとして構成されることに準じて、軸孔AO15も、軸支部15と同様にテーパー状となり、回動軸AX沿いに上方から下方へ開口径が徐々に広くなる。
【0030】
なお、リング10の具体的な構成は任意であり、必ずしも樹脂等の一体成型品である必要はない。例えば、引掛杆12を金属棒で構成し、これをその他のリング枠体にインサート成型しても後付しても構わない。更に述べれば、リング10は、取付体の一例であり、そもそも閉じた環である必要はない。
【0031】
フック50は、環に欠きが設けられたフック本体51、及びフック本体51から回動軸AX沿いに縦に順に連続したフック軸部(軸部)60及び頭部70を有する。フック50のフック開口FO51は、フック本体51により周囲され、かつ上述の欠きにより部分的に解放している。フック本体51は、環の欠きに応じてフック基端51mとフック先端51nを有し、フック基端51mとフック先端51n間の欠きが上述の抜け止め片80により封鎖される。
【0032】
フック本体51は、フック基端51mとフック先端51nとの間に、回動軸AX沿いに縦に弧状に延びる弧状延在部51jと、その延在に続いて屈曲して逆方向に延びてフック先端51nに至る屈曲部51kを有する。フック先端51nには、抜け止め片80の自由端が係合する係合溝52が設けられ、フック50に掛けられた物、例えば鞄本体に固定のリングがフック本体51と抜け止め片80との隙間に押し入ってフック50内から脱することを抑制することができる。
【0033】
フック軸部60は、フック本体51のフック基端51m側の部分に結合し、そこから回動軸AX沿いに縦に延びる。頭部70は、フック軸部60を介してフック本体51に結合し、フック軸部60と同様、回動軸AX沿いに縦に延びる。
図3に示すようにフック軸部60の右半分は、フック本体51のフック基端51mのリング10が着座可能な着座面51hに設けられ、フック軸部60の左半分はフック本体51のフック基端51mに直接的に結合していない。着座面51hは、フック本体51とフック軸部60の間に設けられ、回動軸AXから離間する方向に一致する半径方向外側へ延在する平坦面であり、フック軸部60/回動軸AXを周囲する周方向において所定範囲を占める。
【0034】
頭部70は、フック軸部60上に設けられたフック軸部60よりも幅広の部分であり、フック軸部60よりも回動軸AXから離間する方向に一致する半径方向外側へ膨大し、これにより、リング10からのフック50の抜けが回避される。なお、頭部70は上面視して楕円状であり、これにより、スリットSL16、SL17の働きもあってリング10の基杆13の軸孔AO15に圧入可能、かつ通過可能に構成されている。また、頭部70は、フック軸部60よりも低背に構成され、
図3に示すように、その高さH70は、フック軸部60の高さH60以下である。
【0035】
フック軸部60は、回動軸AX沿いに延びる円柱状部分であり、フック本体51側が頭部70側よりも拡径されており、端的には、径大の下部軸部(第2軸部)61及び径小の上部軸部(第1軸部)62を有し、下部軸部61が上部軸部62よりも回動軸AXから離間する方向に一致する半径方向外側へ膨出し、これを軸状膨出部と呼ぶ。上部軸部62の頭部70側の外周側面62kがリング10の回動をガイドするガイド面として機能し、上部軸部62の頭部70側の外周側面62k上をリング10の軸支部15の内周側面が摺動可能である。下部軸部61の外周側面61kがリング10の回動をガイドするガイド面として機能し、下部軸部61の外周側面61k上をリング10の軸支部15の内周側面が摺動可能である。このようにフック軸部60の外周側面を少なくとも部分的にリング10の回動をガイドするガイド面として機能させることが望ましい。フック軸部60の外周側面上を軸支部15の内周側面が摺動してフック50とリング10間の回動が安定する。
【0036】
フック軸部60の外周側面には、
図4に示すように、抜け止め片80の一組の取付端に対応する一組の切欠き63(63p、63q)が設けられる。切欠き63の組により横方向から挟まれた横一定幅の部分を取付部64と呼ぶ。取付部64には、横方向に同部分を貫通する貫通孔(保持孔)の組が縦に同一直線上に間隔をあけて設けられる。取付部64の各貫通孔には、抜け止め片80の各取付端が挿入されて係止される。取付部64の貫通孔の中心間の間隔H80は、フック軸部60の高さH60以下である。
【0037】
抜け止め片80の各取付端の係止という観点からすれば、取付部64の貫通孔は取付部64を貫通する必要はなく、これを上位概念化して単に「係止部」と呼ぶこともできる。しかしながら、その貫通態様によりフック軸部60に対する抜け止め片80の取付の安定性を高めることができる。切欠き63は、下部軸部61と上部軸部62間に亘る態様で縦方向に連続して設けられている。
【0038】
図3に示すように、下部軸部61の下には、フック本体51のフック先端51n側へ膨出した膨出部68が一体的に設けられる。膨出部68には、フック本体51の着座面51hと実質的に同一面内にある着座面68hが設けられ、これにより、これが無い場合と比較して、リング10の回動を安定化することができる。着座面51h及び着座面68hは、各々、回動軸AXから離間する方向に一致する半径方向外側へ延在する平坦面であり、軸部60/回動軸AXを周囲する周方向において異なる範囲を占める。また、フック軸部60に対して膨出部68を持たせることにより、その構造的な強度を高めることもできる。
【0039】
抜け止め片80は、線状バネとして構成され、抜け止め片80をフック50に取付けた状態においてフック基端51m側からフック先端51n側へ延在する。抜け止め片80は、フック50のフック軸部60との関係において基端であり、フック軸部60に対して固定される固定端部(端部)81を有する。抜け止め片80は、更に、フック軸部60との関係において他端であり、固定端部81と対を為す自由端部(端部)82を有する。
【0040】
抜け止め片80は、フック50の欠きを封鎖するべく付勢された状態でフック50に対して取付けられており、このとき、その自由端部82が、フック本体51のフック先端51nの係合溝52に収容されている。また、このとき、抜け止め片80には歪が生じており、弧状延在部51j側へ抜け止め片80を押して離すと抜け止め片80が自律的に固定端部81周りに枢動し、自由端部82が再び係合溝52により収容される。なお、このように抜け止め片80にバネ性を具備させることは必ずしも必須ではなく、抜け止め片80を枢動自在にフック50に取付けても構わない。
【0041】
抜け止め片80の具体的構成は任意であるが、本例では、所定長の金属線が4か所で屈曲したものであり、端的には、一端横棒部(線状端部)83a、第1縦棒部83b、接続棒部83c、第2縦棒部83d、及び他端横棒部(線状端部)83eが連続したものである。一端横棒部83a及び他端横棒部83eは、横方向に直線的に延び、フック軸部60の取付部64の各貫通孔に挿入される。第1縦棒部83bと第2縦棒部83dは、所定間隔を保ちつつ縦方向に平行に延在する。接続棒部83cは、横方向に直線的に延び、第1縦棒部83bと第2縦棒部83dの先端間を接続する。なお、各棒部間には略90°に屈曲した屈曲部が設けられている。フック50に対して抜け止め片80が取り付けられた状態において、一端横棒部83aの延長線上には軸支部15の内周側面が存在し、他端横棒部83eについても同様の説明が当てはまり、これにより、一端横棒部83aと他端横棒部83eの回動軸AXから離間する方向に一致する半径方向外側への変位が軸支部15により好適に阻止される。
【0042】
フック50への抜け止め片80の取付け前の状態において、一端横棒部83a及び他端横棒部83eが非同軸であり、かつ、一端横棒部83aと接続棒部83cを含む第1平面と他端横棒部83eと接続棒部83cを含む第2平面との間には角度差がある。他方、フック50のフック軸部60の取付部64の貫通孔の組は、回動軸AX沿いの縦に同一直線上にある。従って、フック50のフック軸部60の取付部64へ抜け止め片80を取り付けて抜け止め片80をフック50内に捩じり込むと、抜け止め片80には歪が生じ、抜け止め片80の自由端部82が常にフック本体51のフック先端51nを押す付勢状態とすることができる。これにより、抜け止め片80の自律的な枢動を確保して抜け止め片80がフック50内に押し込まれない限りフック50を閉じた状態に保つことができる。なお、抜け止め片80の枢動の回転軸は、抜け止め片80の各取付端に対応して存在する。
【0043】
連結具100の組立は上述の説明から理解できるだろう。例示的に説明すれば次のとおりである。初めに抜け止め片80をフック50へ取り付ける。この際、まず、抜け止め片80の自由端部82をフック50の係合溝52に配した状態で、抜け止め片80の一端横棒部83aをフック軸部60の取付部64の一方の貫通孔に入れ、次に、抜け止め片80を捩じりながら抜け止め片80の他端横棒部83eをフック軸部60の取付部64の他方の貫通孔に入れる。
【0044】
次に、フック50を頭部70側からリング10の軸支部15の軸孔AO15に対して差し込み、リング10とフック50を係合/連結させる。基杆13の軸孔AO15の横にスリットSL16、SL17を設けているため、フック50の頭部70が軸孔AO15を通過する際に軸孔AO15が拡径し、好適にその通過を確保でき、軸孔AO15よりも幅広の部分を有する頭部70が軸孔AO15を突き抜ける。軸孔AO15の入口の開口径が軸孔AO15の出口の開口径よりも広く、軸孔AO15への頭部70及びフック軸部60の挿入が容易になっている。
【0045】
上述のように組み立てると、フック軸部60がリング10の軸支部15により周囲され、頭部70がリング10のリング開口RO11内にあって軸支部15上に配される。フック軸部60に頭部70を一体的に設けると軸孔AO15へのフック軸部60の挿入が容易ではなくなるが、リング10からフック50が自然と抜け落ちることを簡便な態様にて回避することができる。つまり、頭部70は、リング10からのフック50の抜け止めとして機能する。なお、この抜け止めの具体的な態様は任意であり、必ずしもこの例に限られるものではない。
【0046】
本実施形態においては、抜け止め片80の固定端部81が、フック50のフック軸部60と共にリング10の軸支部15により周囲される。これにより、何らかの外力が抜け止め片80に作用したとしても、フック50からの抜け止め片80の抜け落ちを阻止することができる。例示的に述べれば、仮に第1縦棒部83bと第2縦棒部83dの間隔が開く力が抜け止め片80に生じたとしても、それらがリング10の軸支部15に衝突することにより、その間隔が更に拡大することが阻止され、一端横棒部83aと他端横棒部83eがフック軸部60の取付部64の貫通孔から抜けることが阻止される。
【0047】
本実施形態においては、リング10の軸支部15の軸孔AO15内に配置される抜け止め片80の固定端部81によりリング10とフック50間の回動が阻害されず、フック軸部60周りの軸支部15の回動が好適に確保されている。
図4に示すように、抜け止め片80の固定端部81の幅W80が、軸孔AO15の入口の径RAO15以下であり、抜け止め片80の固定端部81が、リング10の軸支部15内において軸支部15の内周側面に非接触である。なお、リング10とフック50間の回動が確保される限りにおいて固定端部81が軸支部15の内周側面に当接しても構わない。
【0048】
更に、
図4に示すように、リング10の軸支部15内における抜け止め片80の固定端部81の幅W80が、リング10の軸支部15内におけるフック50のフック軸部60の幅W60未満であり、これにより、抜け止め片80の固定端部81ではなく、フック軸部60の下部軸部61の外周側面61kが軸支部15の内周側面に当接する状態を確保でき、結果として、フック軸部60周りの軸支部15の良好な回動を確保することができる。
【0049】
本実施形態においては、フック本体51のフック基端51mには、リング10が着座可能な着座面51hが設けられる。これにより、フック50に対するリング10の回動を安定化することができる。更に、本実施形態においては、この着座面51hと実質的に同一面内に位置する着座面を更に設ける。ここでは、フック本体51の着座面51hと実質的に同一面内にある着座面68hをフック軸部60の膨出部68に設ける。これにより、同一面内にある複数の着座面により、フック50に対するリング10の回動をより安定化することができる。
【0050】
本実施形態においては、抜け止め片80が金属線から成り、フック50を閉じる姿勢へ付勢された態様でフック50に取り付けられる。このような場合、抜け止め片80内に歪が蓄積されていることに起因して、抜け止め片80に対して外力がかかると抜け止め片80がフック50から外れてしまうことが懸念される。本実施形態においては、上述のようにリング10の軸支部15により抜け止め片80の固定端部81の変位が規制されているため、上述のように抜け止め片80が付勢状態でフック50に装着する場合であってもフック50からの抜け止め片80の外れを阻止することができる。
【0051】
本実施形態においては、更に、抜け止め片80を捩じってフック50に装着する際、仮に抜け止め片80の固定端部81がフック50を傷つけたとしても、リング10の軸支部15によりその傷の露出を抑えることができる。これにより、外観検査時の不良品の発生を回避して連結具100の歩留まり向上を図ることができる。
【0052】
<第2実施形態>
図5乃至
図8を参照して第2実施形態について説明する。
図5は、連結具の概略的な分解斜視図であり、抜け止め片が一体化されたフックをリングに取付ける前の状態を示す。
図6は、組立後の連結具の概略的な斜視図である。
図7は、組立前のフックの概略的な側面図であり、フック本体の欠きが開いた組立前の通常状態を示す。
図8は、組立後の連結具の概略的な断面構成を示す模式図である。
【0053】
本実施形態においては、第1実施形態の抜け止め片80の固定端部81に対応する抜け止め片80の端部81が、フック50のフック軸部60と共にリング10の軸支部15により周囲される。これにより、抜け止め片80の外力に対する耐性を高めることができる。
【0054】
本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、抜け止め片80が、フック50に対して別体の線状バネではなく、フック50に対して一体的に設けられる。このような場合であっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、第1実施形態と比較して、部品点数を減じ、また、別体の抜け止め片をフックに取付ける工程も省略することができ、トータルコストを減じることが期待できる。
【0055】
図5に示すように、抜け止め片80は、回動軸AX沿いに縦に延びる部材であり、フック50に対して、詳細にはそのフック軸部60と頭部70に対して一体的に結合しており、フック軸部60に対しては横方向からその頭部70側の部分に結合している。抜け止め片80は、頭部70側から順に抜け止め基部(基部)88aと抜け止め延在部(延在部)88bが連続して成る。抜け止め延在部88bは、屈曲して結合した第1胴部88b1と第2胴部88b2とから成る。抜け止め基部88aは、フック50のフック軸部60の横に隙間OP55を介して配され、抜け止め延在部88bは、フック50のフック本体51の欠きを閉じるべく抜け止め基部88aから下方へ延在する。
【0056】
抜け止め基部88aは、フック軸部60と協働してフック軸部60周りの軸支部15の回動をガイドし、端的にはその外周側面88kがフック軸部60周りの軸支部15の回動をガイドするガイド面として機能し、外周側面88k上を軸支部15の内周側面が摺動可能である。抜け止め基部88aは、フック軸部60の上部軸部62に対応し、かつこれと協働して軸支部15の回動をガイドする上部基部(第1基部)88a1と、フック軸部60の下部軸部61に対応し、かつこれと協働して軸支部15の回動をガイドする下部基部(第2基部)88a2とが連続したものである。
【0057】
上部基部88a1は、回動軸AXに沿って縦に延びる棒状部分であり、下部基部88a2は、回動軸AXに直交する平面に存する半円状の平板部である。
図5に示すように、上部基部88a1の幅W88a1は、第1胴部88b1と第2胴部88b2の幅W88bcよりも十分に狭く、これにより、抜け止め片80を捩じりながらフック50をリング10に対して装着しやすくなる。なお、
図5等から明らかなように、上部基部88a1の幅W88a1は、フック軸部60の幅よりも十分に狭い。
【0058】
抜け止め基部88aの上部基部88a1とフック軸部60の上部軸部62とにより、第1実施形態で説明した上部軸部に対応する軸構造が構成され、抜け止め基部88aの下部基部88a2とフック軸部60の下部軸部61とにより、第1実施形態で説明した下部軸部に対応する軸構造が構成される。端的に述べれば、本形態に係るフック軸部60は、第1実施形態のフック軸部60の左半分が欠落したものであり、その欠落した構造を抜け止め片88に持たせたものである。なお、
図8に示す組立後の状態において、上部基部88a1が上部軸部62と回動軸AXに直交する同一の平面内にあり、下部基部88a2が下部軸部61と回動軸AXに直交する同一の平面内にある。
【0059】
図5に示すように、抜け止め基部88aの下部基部88a2と抜け止め延在部88bの第1胴部88b1との間には、フック本体51の着座面51hと実質的に同一面内にある着座面88hが設けられ、これにより、フック50に対するリング10の回動を安定化することができる。着座面51h及び着座面88hは、各々、回動軸AXから離間する方向に一致する半径方向外側へ延在する平坦面であり、回動軸AXを周囲する周方向において異なる範囲を占める。このようにフック50のフック軸部60に限らず、抜け止め片80に着座面を設けても良い。
【0060】
第1胴部88b1と第2胴部88b2は、扁平な部分であり、両者の間には屈曲部88dが設けられる。屈曲部88dを設けることにより、抜け止め片80がヒトの指により押される際、屈曲部88dに指が最初に接触し、フック先端51nに指が最初に接触することが抑制される。これにより、ヒトの指による抜け止め片80の押しやすさを好適に確保することができる。また、第2胴部88b2が第1胴部88b1よりもフック本体51側に配されることにより、フック50に掛かった物のフック50からの外れを抑制することができる。
【0061】
リング10に対するフック50の取付けに関しては、リング10の軸支部15の軸孔AO15にフック50を頭部70側から差し込む際、
図7に示すように通常状態でフック本体51の環外にある抜け止め片80をフック本体51の環内に捩じり込みながら行う。これにより、
図7及び
図8の対比から明らかなように、フック本体51の欠きが閉じられ、かつ、上述の隙間OP55が閉じられる。
【0062】
図8に示すフック本体51の環内にある弾性変位後の抜け止め片80には、
図7に示すフック本体51の環外にある弾性変位前の状態へと弾性復帰する力が付与されており、これにより、抜け止め片80による自律的なフック本体51の欠きの閉動作が確保される。使用時の抜け止め片80の枢動中心は、抜け止め片80の基部88aと延在部88bの接続箇所にあると説明できるが、
図8に示すように抜け止め片80の基部88aがフック軸部60の下部軸部61に当接していなく、抜け止め片80の基部88aとフック軸部60の下部軸部61の間に隙間がある場合には、抜け止め片80の基部88a自体も僅かに枢動するだろう。
【0063】
本実施形態においては、抜け止め片80の抜け止め基部88aを連結具100の組立時に捩じる部分とし、抜け止め片80の延在部88bを連結具100の使用時に外力が付与される部分として区分する。これにより、抜け止め基部88a、端的には上部基部88a1を抜け止め延在部88bよりも細くして捩じりの容易性を確保し、かつ抜け止め延在部88bの幅を十分に確保してその捩れ等に起因して使用時にフックに掛けられた物がフックから外れることを抑制することができる。
【0064】
本実施形態においては、リング10の軸支部15の軸孔AO15内に配置される抜け止め片80の抜け止め基部88aによりリング10とフック50間の回動が阻害されない。むしろ、抜け止め基部88aは、フック軸部60と協働してリング10の回動をガイドするべく構成され、これにより、リング10とフック50間の回動を円滑化することができる。
【0065】
本実施形態においては、軸支部15の軸孔AO15の開口径が、フック本体51から離間するに応じて段階的に狭くなり、端的には、
図8に示すように、軸支部15が、同一平面にある下部軸部61と下部基部88a2を囲む部分の開口径W15qと同一平面にある上部軸部62と上部基部88a1を囲む部分の開口径W15pを有し、ここでW15p<W15qを満足する。これにより、軸孔AO15内の余分な空間が減じ、リング10の軸支部15がフック50の頭部70とフック本体51との間で挟まれたとき、抜け止め基部88aとフック軸部60がリング10の軸支部15により好適に保持される態様を確保でき、フック50とリング10間のガタツキ低減を図ることができる。なお、同一平面にある下部軸部61と下部基部88a2の合計幅が上述の開口径W15pに一致し、同一平面にある上部軸部62と上部基部88a1の合計幅が上述の開口径W15qに一致する。
【0066】
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。リングは閉じた環である必要はなく、任意の物が任意の態様で取り付けられる限りにおいて全ての物/構造を包含する。フックの具体的な形状は任意であり、欠いた環を有する物/構造であれば全てが含まれる。抜け止め片の具体的構成は任意であり、必ずしも、フックの欠きを自律的に閉じるように構成する必要はない。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。