【文献】
LG Electronics,Extending Rel-8/9 ICIC for heterogeneous network[online], 3GPP TSG-RAN WG1#60b R1-102430,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60b/Docs/R1-102430.zip>,2010年 4月16日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動通信システムにおいて干渉源基地局によってダウンリンクデータ送信に使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度を求める移動端末であって、前記移動端末が、サービング基地局のセル内に位置しており、前記干渉源基地局によって制御される隣接セルからのセル間干渉を経験し、
前記干渉源基地局によって使用可能な前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの中の特定のプリコーディング行列についての情報を、前記サービング基地局から受信するようにされている受信器と、
前記干渉源基地局と前記移動端末の間のチャネルの現在のチャネル状態を測定するようにされているプロセッサおよび前記受信器と、
前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれからの干渉を、前記測定された現在のチャネル状態に基づいて推定するようにされている前記プロセッサと、
前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度として、前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの干渉変動性を、前記推定されたプリコーディング行列の干渉に基づいて求めるようにされている前記プロセッサと、
を備え、
少なくとも2つのプリコーディング行列セットが事前定義され、そのうちの1つが前記干渉源基地局によって使用され、前記受信器および前記プロセッサが、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットのそれぞれのプリコーディング行列セットに対して、前記受信するステップ、前記推定するステップ、および前記求めるステップを行うようにされており、
前記プロセッサが、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットの前記求められた品質測度に基づいて求めるようにさらにされており、前記送信器が、前記好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を、前記サービング基地局を通じて前記干渉源基地局に報告するようにさらにされている、または、
前記送信器が、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットの前記求められた品質測度を前記サービング基地局に報告するようにされている、または、
前記プロセッサが、前記2つのプリコーディング行列セットの前記品質測度の差を計算するようにされており、前記送信器が、前記差に関する情報を前記サービング基地局に報告するようにされている、
移動端末。
前記送信器が、前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの前記品質測度を、好ましくはチャネル品質報告メッセージの中で前記サービング基地局に報告するようにされている、
請求項1に記載の移動端末。
前記通信システムの無線フレームが、少なくとも2つのサブフレームセットに分割され、前記干渉源基地局において、前記無線フレームの各サブフレームセットに対して、異なるプリコーディング行列セットが設定され、前記受信器および前記プロセッサが、各プリコーディング行列セットに対して、前記受信するステップ、前記推定するステップ、および前記求めるステップを行うようにされており、前記受信器が、サブフレームセットと各プリコーディング行列セットの対応関係についての情報を受信するようにさらにされている、または、
異なるサブバンド、もしくは、サブバンドとサブフレームの組合せ、またはその両方に対して、異なるプリコーディング行列セットが設定され、前記受信器および前記プロセッサが、各サブバンド、もしくは、サブバンドとサブフレームの各組合せ、またはその両方に対して、前記受信するステップ、前記推定するステップ、および前記求めるステップを行うようにされている、
請求項1または請求項2に記載の移動端末。
移動通信システムにおいて干渉源基地局によってダウンリンクデータ送信に使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度を求めるサービング基地局であって、移動端末が、前記サービング基地局のセル内に位置しており、前記干渉源基地局によって制御される隣接セルからのセル間干渉を経験し、
前記干渉源基地局によって使用可能な前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの中の特定のプリコーディング行列について前記移動端末に通知するようにされている送信器であって、前記移動端末が、前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれからの干渉を、測定される現在のチャネル状態に基づいて推定し、前記チャネルが、前記干渉源基地局と前記移動端末の間である、前記送信器と、
前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれの前記推定された干渉についての情報を、前記移動端末から受信するようにされている受信器と、
前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度として、前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの干渉変動性を、前記受信された推定されたプリコーディング行列の干渉に基づいて求めるようにされているプロセッサと、
を備え、
少なくとも2つのプリコーディング行列セットが事前定義され、そのうちの1つが前記干渉源基地局によって使用され、前記送信器、前記受信器、および前記プロセッサが、それぞれ、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットのそれぞれに対して、前記通知するステップ、前記受信するステップ、および前記求めるステップを行うようにされており、
− 前記プロセッサが、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットの前記求められた品質測度に基づいて求めるようにさらにされており、前記送信器が、前記好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を、前記干渉源基地局に報告するようにされている、
サービング基地局。
前記プロセッサが、前記プリコーディング行列セットの前記求められた干渉変動性に基づいて、無線フレームの特定のサブフレームにおいて前記移動端末をスケジューリングするようにされている、または、
前記プロセッサが、前記プリコーディング行列セットの前記求められた干渉変動性に基づいて、前記移動端末に送信するための変調・符号化方式を選択するようにされている、
請求項4に記載のサービング基地局。
移動通信システムにおいて干渉源基地局によってダウンリンクデータ送信に使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度を求める方法であって、移動端末が、サービング基地局のセル内に位置しており、前記干渉源基地局によって制御される隣接セルからのセル間干渉を経験し、
前記干渉源基地局によって使用可能な前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの中の特定のプリコーディング行列について、前記サービング基地局によって前記移動端末に通知するステップと、
前記干渉源基地局と前記移動端末との間のチャネルの現在のチャネル状態を前記移動端末によって測定するステップと、
前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの前記プリコーディング行列それぞれからの干渉を、前記測定された現在のチャネル状態に基づいて前記移動端末によって推定するステップと、
前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度として、前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの干渉変動性を、前記推定されたプリコーディング行列の干渉に基づいて求めるステップと、
を含み、
少なくとも2つのプリコーディング行列セットが事前定義され、そのうちの1つが前記干渉源基地局によって使用され、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットのそれぞれに対して、前記通知するステップ、前記推定するステップ、および前記求めるステップが行われ、前記方法が、
− 前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットの前記求められた品質測度に基づいて求め、前記好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を、前記移動端末から前記サービング基地局を通じて前記干渉源基地局に報告するステップ、または、
− 前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットの前記求められた品質測度を、前記移動端末から前記サービング基地局に報告し、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットの前記報告された品質測度に基づいて、前記サービング基地局によって求め、前記好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を前記サービング基地局から前記干渉源基地局に報告するステップ、または、
− 前記2つのプリコーディング行列セットの前記品質測度の差を前記移動端末によって計算し、前記差に関する情報を前記移動端末から前記サービング基地局に報告し、前記少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、前記報告された差に基づいて前記サービング基地局によって求め、前記好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を前記サービング基地局から前記干渉源基地局に報告するステップ、
をさらに含んでいる、方法。
前記推定されたプリコーディング行列の干渉に基づいて平均干渉を計算し、前記計算された平均干渉を、前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの前記品質測度に、前記干渉変動性に加えて含めるステップであって、前記平均干渉を計算する前記ステップにおいて前記重み情報が前記移動端末によって使用されることが好ましい、ステップ、
をさらに含んでいる、請求項6または請求項7に記載の方法。
前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの前記品質測度を、好ましくはチャネル品質報告メッセージの中で前記移動端末から前記サービング基地局に報告するステップと、
前記サービング基地局において、前記少なくとも1つのプリコーディング行列セットの前記報告された前記品質測度を考慮してスケジューリングを決定するステップと、
をさらに含んでいる、請求項6から請求項9のいずれかに記載の方法。
前記通信システムの無線フレームが、少なくとも2つのサブフレームセットに分割され、前記干渉源基地局において、前記無線フレームの各サブフレームセットに対して、異なるプリコーディング行列セットが設定され、前記プリコーディング行列セットそれぞれに対して、前記通知するステップ、推定するステップ、および求めるステップが行われ、前記通知するステップが、サブフレームセットと各プリコーディング行列セットの対応関係について前記移動端末に通知するステップをさらに含んでいる、
請求項6から請求項11のいずれかに記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ロングタームエボリューション(LTE)
WCDMA(登録商標)無線アクセス技術をベースとする第3世代の移動通信システム(3G)は、世界中で広範な規模で配備されつつある。この技術を機能強化または発展・進化させる上での最初のステップとして、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)と、エンハンストアップリンク(高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)とも称する)とが導入され、これにより、極めて競争力の高い無線アクセス技術が提供されている。
【0003】
ユーザからのますます増大する需要に対応し、新しい無線アクセス技術に対する競争力を確保する目的で、3GPPは、ロングタームエボリューション(LTE)と称される新しい移動通信システムを導入した。LTEは、今後10年間にわたり、データおよびメディアの高速伝送ならびに大容量の音声サポートに要求されるキャリアを提供するように設計されている。高いビットレートを提供する能力は、LTEにおける重要な方策である。
【0004】
LTE(ロングタームエボリューション)に関する作業項目(WI)の仕様は、E−UTRA(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access(UTRA):進化したUMTS地上無線アクセス)およびE−UTRAN(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access Network:進化したUMTS地上無線アクセスネットワーク)と称され、最終的にリリース8(LTEリリース8)として公開される。LTEシステムは、パケットベースの効率的な無線アクセスおよび無線アクセスネットワークであり、IPベースの全機能を低遅延かつ低コストで提供する。LTEでは、与えられたスペクトルを用いてフレキシブルなシステム配備を達成するために、スケーラブルな複数の送信帯域幅(例えば、1.4MHz、3.0MHz、5.0MHz、10.0MHz、15.0MHz、および20.0MHz)が指定されている。ダウンリンクには、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、かかる無線アクセスは、低いシンボルレートのため本質的にマルチパス干渉(MPI)を受けにくく、また、サイクリックプレフィックス(CP)を使用しており、さらに、さまざまな送信帯域幅の構成に対応可能だからである。アップリンクには、SC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access:シングルキャリア周波数分割多元接続)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、ユーザ機器(UE)の送信出力が限られていることを考えれば、ピークデータレートを向上させるよりも広いカバレッジエリアを提供することが優先されるからである。LTEリリース8/9では、数多くの主要なパケット無線アクセス技術(例えば、MIMO(多入力多出力)チャネル伝送技術)が採用され、高効率の制御シグナリング構造が達成されている。
【0005】
LTEアーキテクチャ
図1は、LTEの全体的なアーキテクチャを示し、
図2は、E−UTRANのアーキテクチャをより詳細に示している。E−UTRANは、eNodeBから構成され、eNodeBは、UE向けの、E−UTRAのユーザプレーン(PDCP/RLC/MAC/PHY)および制御プレーン(RRC)のプロトコルを終端処理する。eNodeB(eNB)は、物理(PHY)レイヤ、メディアアクセス制御(MAC)レイヤ、無線リンク制御(RLC)レイヤ、およびパケットデータ制御プロトコル(PDCP)レイヤ(これらのレイヤはユーザプレーンのヘッダ圧縮および暗号化の機能を含む)をホストする。eNBは、制御プレーンに対応する無線リソース制御(RRC)機能も提供する。eNBは、無線リソース管理、アドミッション制御、スケジューリング、交渉によるアップリンクQoS(サービス品質)の実施、セル情報のブロードキャスト、ユーザプレーンデータおよび制御プレーンデータの暗号化/復号化、ダウンリンク/アップリンクのユーザプレーンパケットヘッダの圧縮/復元など、多くの機能を実行する。複数のeNodeBは、X2インタフェースによって互いに接続されている。
【0006】
また、複数のeNodeBは、S1インタフェースによってEPC(Evolved Packet Core:進化したパケットコア)、より具体的には、S1−MMEによってMME(Mobility Management Entity:移動管理エンティティ)、S1−Uによってサービングゲートウェイ(SGW:Serving Gateway)に接続されている。S1インタフェースは、MME/サービングゲートウェイとeNodeBとの間の多対多関係をサポートする。SGWは、ユーザデータパケットをルーティングして転送する一方で、eNodeB間のハンドオーバー時におけるユーザプレーンのモビリティアンカーとして機能し、さらに、LTEと別の3GPP技術との間のモビリティのためのアンカー(S4インタフェースを終端させ、2G/3GシステムとPDN GWとの間でトラフィックを中継する)として機能する。SGWは、アイドル状態のユーザ機器に対しては、ダウンリンクデータ経路を終端させ、そのユーザ機器へのダウンリンクデータが到着したときにページングをトリガーする。SGWは、ユーザ機器のコンテキスト(例えばIPベアラサービスのパラメータ、ネットワーク内部ルーティング情報)を管理および格納する。さらに、SGWは、合法傍受(lawful interception)の場合にユーザトラフィックの複製を実行する。
【0007】
MMEは、LTEのアクセスネットワークの主要な制御ノードである。MMEは、アイドルモードのユーザ機器の追跡およびページング手順(再送信を含む)の役割を担う。MMEは、ベアラの有効化/無効化プロセスに関与し、さらには、最初のアタッチ時と、コアネットワーク(CN)ノードの再配置を伴うLTE内ハンドオーバー時とに、ユーザ機器のSGWを選択する役割も担う。MMEは、(HSSと対話することによって)ユーザを認証する役割を担う。非アクセス階層(NAS:Non-Access Stratum)シグナリングはMMEにおいて終端され、MMEは、一時的なIDを生成してユーザ機器に割り当てる役割も担う。MMEは、サービスプロバイダの公衆陸上移動網(PLMN:Public Land Mobile Network)に入るためのユーザ機器の認証をチェックし、ユーザ機器のローミング制約を実施する。MMEは、NASシグナリングの暗号化/整合性保護においてネットワーク内の終端点であり、セキュリティキーの管理を行う。シグナリングの合法傍受も、MMEによってサポートされる。さらに、MMEは、LTEのアクセスネットワークと2G/3Gのアクセスネットワークとの間のモビリティのための制御プレーン機能を提供し、SGSNからのS3インタフェースを終端させる。さらに、MMEは、ローミングするユーザ機器のためのホームHSSに向かうS6aインタフェースを終端させる。
【0008】
LTE(リリース8)におけるコンポーネントキャリアの構造
【0009】
【0010】
【0011】
「コンポーネントキャリア」という用語は、数個のリソースブロックの組合せに言及する。LTEの将来のリリースにおいて、「コンポーネントキャリア」という用語はもはや使用されない。代わりに、この用語は「セル」に変更される。「セル」は、ダウンリンクリソースおよび任意でアップリンクリソースの組合せに言及する。ダウンリンクリソースのキャリア周波数とアップリンクリソースのキャリア周波数との連結(linking)は、ダウンリンクリソースで送信されるシステム情報に示される。
【0012】
LTEのさらなる発展(LTE−A)
世界無線通信会議2007(WRC−07)において、IMT−Advancedの周波数スペクトルが決定された。IMT−Advancedのための全体的な周波数スペクトルは決定されたが、実際に利用可能な周波数帯域幅は、地域や国によって異なる。しかしながら、利用可能な周波数スペクトルのアウトラインの決定に続いて、3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)において無線インタフェースの標準化が開始された。3GPP TSG RAN #39会合において、「Further Advancements for E-UTRA (LTE-Advanced)」に関する検討項目の記述が承認された。この検討項目は、E−UTRAを進化・発展させるうえで(例えば、IMT−Advancedの要求条件を満たすために)考慮すべき技術要素をカバーしている。現在、LTE−Aのための2つの主要な技術要素が検討されており、以下ではこれらについて説明する。
【0013】
より広い帯域幅をサポートするためのLTE−Aにおけるキャリアアグリゲーション
LTE−Advancedシステムがサポートできる帯域幅は100MHzであるが、LTEシステムは20MHzをサポートできるのみである。最近、無線スペクトルの不足によって無線ネットワークの発展が妨げられており、結果として、LTE−Advancedシステムのための十分に広いスペクトル帯域を見つけることが困難である。したがって、より広い無線スペクトル帯域を得るための方法を見つけることが緊急課題であり、1つの可能な答えがキャリアアグリゲーション機能である。
【0014】
キャリアアグリゲーションでは、最大で100MHzの広い送信帯域幅をサポートする目的で、2つ以上のコンポーネントキャリアがアグリゲートされる。LTE−Advancedシステムでは、LTEシステムにおけるいくつかのセルが、より広い1つのチャネルにアグリゲートされ、このチャネルは、たとえLTEにおけるこれらのセルが異なる周波数帯域である場合でも100MHzに対して十分に広い。
【0015】
少なくとも、アグリゲートされるコンポーネントキャリアの数がアップリンクとダウンリンクとで同じであるとき、すべてのコンポーネントキャリアをLTEリリース8/9互換として設定することができる。ユーザ機器によってアグリゲートされるすべてのコンポーネントキャリアが必ずしもLTEリリース8/9互換でなくてよい。リリース8/9のユーザ機器がコンポーネントキャリアにキャンプオンする(camp on)ことを回避するため、既存のメカニズム(例:バーリング(barring))を使用することができる。
【0016】
ユーザ機器は、自身の能力に応じて1つまたは複数のコンポーネントキャリア(複数のサービングセルに対応する)を同時に受信または送信することができる。キャリアアグリゲーションのための受信能力もしくは送信能力またはその両方を備えた、LTE−Aリリース10のユーザ機器は、複数のサービングセル上で同時に受信する、もしくは送信する、またはその両方を行うことができ、これに対して、LTEリリース8/9のユーザ機器は、コンポーネントキャリアの構造がリリース8/9の仕様に従う場合、1つのみのサービングセル上で受信および送信を行うことができる。
【0017】
チャネル品質報告
リンクアダプテーション(link adaptation)の原理は、パケット交換データトラフィックに対する効率的な無線インタフェースの設計にとって重要である。ほぼ一定のデータレートを持つ回線交換サービスをサポートするために高速閉ループ電力制御を利用したUMTS(Universal Mobile Telecommunication System)の初期バージョンと異なり、LTEのリンクアダプテーションは、各ユーザに対する現行の無線チャネル容量に適合させるために、送信データレート(変調方式およびチャネル符号化率)を動的に調整する。
【0018】
LTEのダウンリンクデータ送信に関して、eNodeBは、通常、ダウンリンクチャネル状態の予測に応じて変調方式および符号化率(MCS)を選択する。この選択処理に対する重要な入力は、eNodeBへのアップリンクにおいてユーザ機器(UE:User Equipment)によって送信されるチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)フィードバックである。
【0019】
チャネル状態情報は、例えば3GPP LTEのようなマルチユーザ通信システムにおいて、一人以上のユーザに対するチャネルリソースの品質を決定するのに使用される。一般に、eNodeBは、CSIフィードバックに応えて、QPSK、16QAM、および64QAMの変調方式、ならびに幅広い符号化率から選択することができる。このCSI情報は、チャネルリソースを異なるユーザに割り当てるマルチユーザスケジューリングアルゴリズムに役立たせたり、あるいは、割り当てられたチャネルリソースを最大限に生かすよう、変調方式や符号化率、送信電力などのリンクパラメータを適合させたりするのに利用される。
【0020】
CSIは、コンポーネントキャリアごとに、また、報告モードおよび帯域幅に応じて、コンポーネントキャリアの異なるサブバンド群ごとに、報告される。チャネルリソースは、
図4に例示された「リソースブロック」として定義することができる。
図4は、例えば、3GPPのLTE作業項目で議論されたOFDMを採用したマルチキャリア通信システムを想定している。より一般的に、リソースブロックは、スケジューラによって割り当て可能な移動通信の無線インタフェース上の最小リソースを示すものと考えることができる。リソースブロックの次元(dimensions)は、移動通信システムで用いられるアクセス方式に応じて、時間(例えば、時分割多重(TDM)のためのタイムスロットやサブフレーム、フレームなど)や周波数(例えば、周波数分割多重(FDM)のためのサブバンドやキャリア周波数など)、コード(例えば、符号分割多重(CDM)のための拡散コード)、アンテナ(例えば、多入力多出力(MIMO:Multiple Input Multiple Output))の任意の組合せが可能である。
【0021】
最小の割り当て可能なリソース単位がリソースブロックであるとして、理想的な場合において、それぞれのリソースブロックすべておよびそれぞれのユーザすべてに対するチャネル品質情報は常に利用可能でなければならない。しかし、フィードバックチャネルは容量が制約されているため、それは、ほとんど実現可能ではなく、不可能でさえある。したがって、チャネル品質フィードバックシグナリングのオーバーヘッドを削減するために、例えば、あるユーザに対する一部のリソースブロックのみに対するチャネル品質情報を送信するなど、削減または圧縮の技術が必要である。
【0022】
3GPP LTEでは、チャネル品質が報告される最小単位はサブバンドと呼ばれている。サブバンドは、周波数方向に隣接する(frequency-adjacent)複数のリソースブロックで構成されている。
【0023】
上記のように、ユーザ機器は、通常、設定されているが非アクティブ化されたダウンリンクコンポーネントキャリアのCSI測定を実行・報告することはなく、RSRP(Reference Signal Received Power)およびRSRQ(Reference Signal Received Quality)のような無線リソースの管理に関連する測定を行うのみである。ダウンリンクコンポーネントキャリアをアクティブ化する場合、効率的なダウンリンクスケジューリングのための適切なMCSを選択できるようにするために、eNodeBが、新たにアクティブ化されたコンポーネントキャリアに対するCSI情報を迅速に獲得することが重要である。CSI情報がなければ、eNodeBは、ユーザ機器のダウンリンクチャネル状態についての情報がなく、ダウンリンクデータ送信に対して積極的すぎるMCSか消極的すぎるMCSを選択してしまう可能性が高い。いずれの場合も、再送が要求されまたは利用されていないチャネル容量のため、かえってリソースの利用が非効率になってしまう。
【0024】
チャネル状態情報のフィードバック要素
一般に、移動通信システムは、チャネル品質フィードバックを伝えるのに用いる特別の制御シグナリングを定義する。3GPP LTEには、チャネル品質のフィードバックとして与えることができるあるいはできない3つの基本要素が存在する。これらのチャネル品質要素は、
− 変調・符号化方式インジケータ(MCSI:Modulation and Coding Scheme Indicator)(LTE仕様書ではチャネル品質インジケータ(CQI:Channel Quality Indicator)とも呼ばれる)
− プリコーディング行列インジケータ(PMI:Precoding Matrix Indicator)
− ランクインジケータ(RI:Rank Indicator)
である。
【0025】
MCSIは、送信に使用すべき変調・符号化方式を提案するのに対し、PMIは、RIによって与えられる送信行列の階数(rank)を使用する、特別の多重化およびマルチアンテナ送信(MIMO)に用いられるプリコーディング行列/ベクトルを示す。関連する報告・送信メカニズムの詳細は、非特許文献2、非特許文献3、および非特許文献4(どの文献も3GPPのウェブサイトで入手可能であり、参照することにより本明細書に組み込まれている)に記載されている。
【0026】
3GPP LTEでは、上記3つのチャネル品質要素のすべてがいつでも報告されるわけではない。注目すべきは、3GPP LTEは、2つのコードワードの送信もサポートしている(例えば、ユーザデータ(トランスポートブロック)の2つのコードワードを1つのサブフレームに多重化して1つのサブフレームで送信することができる)ため、1つのコードワードまたは2つのコードワードのいずれかについてフィードバックすればよいことである。詳細は、20MHzのシステム帯域幅を使用したシナリオの一例について、次節および下記の表1に与えられている。注意すべきは、この情報は非特許文献4のsection 7.2.1に基づくことである。
【0027】
ヘテロジニアス(異種)ネットワーク
来年以降、ヘテロジニアスネットワーク(HetNet)と称される新しいネットワークアーキテクチャの配備が事業者によって開始されるであろう。3GPP内で現在検討されている一般的なHetNet配備は、マクロセルおよびピコセルからなる。ピコセルは、低電力のeNBによって形成され、このeNBは、マクロセルからのトラフィックをオフロードする目的でトラフィックのホットスポットに有利に配置することができる。マクロeNBおよびピコeNBは、互いに独立してスケジューリングを実施する。高電力のマクロセルと低電力のピコセルとを混用することによって、追加の容量を提供し、カバレッジを改善することができる。
【0028】
ピコセルには、このような配備におけるスループット性能を高めるための手段としてのセル領域拡張(CRE)技術を、さらに設けることができる。ユーザ機器は、最も強いピコeNBからの受信電力よりも少なくともGdBだけ受信電力が大きい場合にのみ、マクロeNBに接続し、Gは、半静的に設定されるCREバイアスである。一般的な値は、0〜20dBの範囲であるものと予測される。
【0029】
図5は、このようなHetNetシナリオを示しており、1つのマクロセルの領域内にさまざまなピコセルが設けられている。ピコセルは、2つのエッジ(縁部)を有するように描いてあり、一方の縁部はCREを使用しないピコセルエッジを意味し、他方の縁部はCREを使用するピコセルを意味する。さまざまなセル内に位置するさまざまなユーザ機器を示している。
【0030】
しかしながら、ピコセル内のユーザ機器が経験する信号干渉のため、小さいセルによって提供される追加容量が失われることがある。マクロeNBは、ピコUE(すなわちピコeNBに接続されているユーザ機器)にとっての単一の主干渉源である。このことは、CREの使用時にセルエッジに位置するピコUEに特にあてはまる。
【0031】
さらに、以下に説明するように、マルチアンテナ送信が使用されるとき、干渉問題はさらに複雑になる。
【0032】
マルチアンテナシステム
スループットおよびスペクトル効率の高い要件を達成する目的で、多入力多出力(MIMO)システムは、LTEの本質的な部分を形成する。多入力多出力とは、通信性能を改善するため送信器と受信器の両方において複数のアンテナを使用することである。多入力多出力は、スマートアンテナ技術のいくつかの形態のうちの1つである。なお、入力および出力という用語は、アンテナを有する装置のことではなく、信号を伝える無線チャネルを意味する。
【0033】
高いレベルの観点からは、MIMOは、3つの主たるカテゴリとして、ビームフォーミング、空間多重化、およびダイバーシチ符号化に分けることができる。
【0034】
MIMO送信は、一般的にはプリコーディングに基づいており、プリコーディングは、狭義にはマルチストリームのビームフォーミングとみなすことができる。より広義には、送信器において行われるあらゆる空間処理とみなされる。ビームフォーミングは、干渉を利用して、送信される信号の指向性を変更する。送信時、ビームフォーマは、波面における強め合う干渉および弱め合う干渉のパターンを形成する目的で、各送信器における信号の位相および相対振幅を制御する。
【0035】
シングルレイヤビームフォーミングにおいては、信号電力が受信器の入力において最大になるように、位相(および場合によっては利得)の適切な重み付けを行って、送信アンテナそれぞれから同じ信号が出力される。ビームフォーミングの恩恵は、異なるアンテナから発せられる信号を強め合うように重ねることによって、受信される信号電力レベルが増大することと、マルチパスフェージング効果が低減することである。この効果はビームフォーミング利得として知られている。散乱が存在しないときには、ビームフォーミングによって良好な指向性パターンが得られるが、典型的な携帯電話のビームとは異なる。システム内に複数の受信器(移動端末)が存在するとき、これらの受信器が空間的に十分に隔てられている場合、複数の送信ビームの重ね合わせを実行することができる。ビームフォーミングのためのプリコーディングを行うには、チャネルへの最適なアダプテーションを提供する目的で、送信器がチャネル状態情報(CSI)を認識していることが要求される。なお、シングルレイヤビームフォーミングにおいては、一般的に移動端末側に複数の受信アンテナは要求されない。
【0036】
空間多重化では、複数の送信アンテナおよび受信アンテナが要求される。空間多重化においては、高速信号が複数のより低速のストリームに分割され、各ストリームが、送信アンテナのセットにマッピングされる空間レイヤにおいて同じ周波数チャネルで送信される。これらの信号が、十分に異なる空間シグネチャ(spatial signature)で受信器のアンテナアレイに到達する場合、受信器は、これらのストリームを(ほぼ)平行なチャネルに分離することができる。空間多重化は、高い信号対雑音比(SNR)においてチャネル容量を増大させるための極めて強力な技術である。空間ストリームの最大数は、送信器のアンテナ数と受信器のアンテナ数のうち小さい方の数によって制限される。空間多重化は、送信チャネルの情報の有無にかかわらず使用することができる。さらに、空間多重化は、複数の受信器(移動端末)に同時に送信する目的にも使用でき、これはマルチユーザMIMOとして知られている。異なる空間シグネチャを使用して受信器をスケジューリングすることによって、良好な分離性を確保することができる。
【0037】
送信器側にチャネルの情報が存在しないときには、ダイバーシチ符号化技術を使用することができる。ダイバーシチ法では、(空間多重化における複数のストリームとは異なり)単一のデータストリームが送信されるが、信号は、空間−時間符号化と呼ばれる技術を使用して符号化される。信号は、完全な直交符号またはほぼ完全な直交符号として送信アンテナそれぞれから発せられる。ダイバーシチ符号化では、複数のアンテナリンクにおける独立したフェージングを利用して信号のダイバーシチを高める。送信器側にはチャネルの情報が存在しないため、ダイバーシチ符号化からのビームフォーミング利得はない。
【0038】
送信器側にチャネルの情報が存在する場合、空間多重化とビームフォーミングを組み合わせることもでき、あるいは、復号化の高い信頼性が要求される場合、空間多重化とダイバーシチ符号化を組み合わせることができる。
【0039】
プリコーディング
ダウンリンクMIMOの場合、各基地局(eNB)は、移動局へのデータ送信を現在の無線チャネル条件に適合させるため、送信アンテナに対するプリコーディングを実行する。反射のない無線チャネルの場合、このことは、受信側の移動端末の方向に送信ビームを向けることに相当する。これは、送信する前に信号ベクトルにプリコーディング行列Wを乗じることによって達成される。コードブックベースの閉ループMIMOを使用する場合、移動端末は無線チャネルを推定し、基地局および移動端末側に認識されている事前定義されたコードブックから選択される最適なプリコーディング行列Wを選択する。最適なプリコーディング行列とは、最大容量を提供するプリコーディング行列である。プリコーディング行列は、非特許文献2の第6.3.4.2.3章「Codebook for precoding」の中の対応する表による、コードブックインデックスに対応するプリコーディング行列インジケータ(PMI)値によって識別される。上記の表から明らかであるように、PMIは、送信に使用されるアンテナポートおよび対応するランクインジケータ(RI)に応じて、2ビット長または3ビット長とすることができる。
【0040】
このフィードバックは基地局に提供される。利用可能な帯域幅に応じて、この情報はリソースブロックごとに、またはリソースブロックのグループごとに利用可能となり、なぜなら最適なプリコーディング行列はリソースブロックごとに変わりうるためである。移動端末が選択することのできるコードブックのサブセットは、ネットワークによって設定することができる。
【0041】
基地局のスケジューラは、基地局と移動局との間の無線チャネルの特性に主として基づいてプリコーディング行列を選択する。隣接するセルにおいてどのプリコーディング行列が使用されているかを考慮しない場合、複数の異なるセルによって形成される電力放射パターン(ビーム)が互いに衝突することがあり、結果として、セルの周縁部のユーザにおいて実質的なセル間干渉が発生する。PMI調整については後から説明する。
【0042】
セル間干渉および調整
セルの周縁部のユーザは、通常では受信信号強度が比較的低く、強いセル間干渉を受ける。送信電力を上げることにより、受信信号強度を高めることができるが、別のセルの周縁部のユーザにおいてより強いセル間干渉が発生し、したがってこれらのユーザのスループットが減少する。したがって、セル間干渉およびセル内干渉の軽減策を提供することが重要である。
【0043】
干渉源側においてプリコーディングを行うマルチアンテナ送信においては、干渉されるセル内の移動端末は、干渉する側の基地局における異なるプリコーディング行列の使用によって強く影響されることがある。
【0044】
基本的な干渉の影響は以下のとおりである。
− 極めて高い平均干渉レベル
− 強い干渉フラッシュライト効果(flashlight effect)による、SINR(CQI)推定の極めて高い不確実性
【0045】
干渉フラッシュライト効果とは、干渉する側の基地局によって使用される各プリコーディング行列(干渉源プリコーディング行列インジケータ(IPMI)によって記述される)によって、干渉の影響を受ける移動端末側において異なる干渉電力レベルが発生することを意味する。干渉源は、(マルチユーザスケジューリングに応じて)異なるタイミングにおいて異なるIPMIを使用するため、干渉の影響を受ける移動端末は、干渉源(干渉源基地局)によって使用されるIPMIに応じて強い干渉変動を経験する。この変動はフラッシュライト効果として知られており、干渉の影響を受ける移動端末側における干渉レベルの推定に関して重大な不確実性につながることがある。
【0046】
セルの周縁部の移動端末のスループット性能を改善するためには、これらの移動端末がダウンリンク送信用にスケジューリングされるリソースにおいて干渉の影響を低減しなければならない。セル間干渉調整(ICIC:Inter-Cell Interference Coordination)の目的は、電力制約を受けるマルチセルスループットを最大化する、セル間シグナリングの制限、公平性の達成、および最小ビットレート要件である。
【0047】
干渉を軽減するための1つの解決策は、異なる干渉統計値(interference statistics)を有するサブフレームパターンを使用することである。異なるサブフレームセットの異なる干渉パターン(例:異なる平均干渉電力レベル)を形成するコンセプトは、3GPP RAN1に指定されているように、設定されたサブフレームセットにおける制約された干渉測定値によってサポートされる。
・ 異なるサブフレームセット(例:ABS(Almost Blank Subframe)、非ABS)の報告プロセス
・ 報告は、基準リソースの平均推定干渉レベルに基づく
【0048】
チャネル品質は、受信器側における予測されるSINRレベルの量子化に対応するCQI(チャネル品質インジケータ)報告の形で、サービング基地局に報告される。しかしながら、異なるサブフレームセットに対するCQI報告は、干渉電力レベルの予測される変動性(すなわちフラッシュライト効果)に関して何らの情報も提供しない。平均干渉電力レベルのみが考慮される。
【0049】
重要な点として、干渉電力レベルの変動性(すなわちフラッシュライト効果)が強いと、受信器側におけるブロック誤り率(BLER)が大幅に高まることがあり、結果としてスペクトル効率が低下する。
【0050】
干渉を軽減するためのベストコンパニオン(Best Companion)コンセプトが公知であり、サイト間で交換されるベスト(最良)重みインデックス(すなわちPMI)に加えて、追加のコードブックベースのチャネル状態情報が導入される。特に、移動端末(ユーザ機器)は、チャネルを測定し、自身のサービング基地局にとってのベストビームインデックス(ランク1 PMI)、すなわち、雑音およびセル間干渉を考慮したとき、(移動端末によってサポートされている受信器アルゴリズムに応じて)受信器出力におけるSINRが最大となる自身の送信重みのコードブックインデックスを報告する。移動端末は、サービング基地局にとってのいわゆるベストコンパニオンインデックス(BCI)、すなわち、受信器出力におけるSINRが最大となる、一緒にスケジューリングされる可能性のある干渉源のコードブックインデックス(例:PMIおよび候補BCIに基づいて計算されるリニアMMSE受信行列)を報告する。移動端末は、BCIが使用されない場合にはCQIを報告する。ベストBCIが使用される場合、デルタCQIが報告される。デュアルストリームMU−MIMOの場合、この追加情報に基づいてセル内干渉を最小にする目的で、基地局は2基の移動端末n、mを対にすることができ、この場合、mのPMIがnのBCIであり、nのPMIがmのBCIである。結果として、スペクトル効率が高まる。
【0051】
セル間干渉を低減するための別の方法として、干渉側のeNBにおいてプリコーディング行列を制約する。特に、コードブックベースの閉ループMIMOシステムの場合、隣接セルからのセル間干渉を軽減するため、PMI調整(制約または推奨)が採用されている。ビームフォーミングのマルチセル調整には、送信器側にチャネルの情報(例えば干渉側の隣接セル(基地局)の情報)が要求される。干渉側基地局は、干渉の影響を受けている移動端末(ユーザ機器)からのフィードバック報告に基づいてプリコーディングを制約する。
【0052】
ワーストコンパニオンインデックス(WCI:Worst Companion Index)が従来技術から公知であり、この場合、フィードバックはプリコーディングコードブックインデックスを使用して情報を効率的に提供する。ユーザ機器は、主要な干渉側セル(基地局)のセットからのチャネルを測定し、干渉側セルのセットについて、セルと、ワーストコンパニオン(すなわち最も強い干渉プリコーダ)PMI(WCI)を報告する。したがって、1つのWCIは、セルの識別子とプリコーディング行列インジケータ(干渉源PMI)の対である。さらに、WCIは、干渉の影響を受ける移動端末のサービングリンクに結合される古典的なチャネル品質インジケータと、デルタCQIとを提供することができ、デルタCQIは、報告されるWCIが干渉側の隣接セルによって使用されない場合における推定利得を示す(例:WCIありとなしの場合の平均信号対雑音干渉比(SINR)の差を反映する)。この追加情報に基づいてセル間干渉を最小にする目的で、ビーム調整を行うことができる。一例として、WCIを報告する場合、低レイテンシのバックホール上の中央のスケジューラは、与えられた時間−周波数リソースにおいて、報告されるWCIから干渉が起こらず、したがってシステムの全体的な干渉が低減するように、複数の異なるセルのユーザ(移動端末)をスケジューリングすることができる。結果として、特にセルの周縁部のユーザのスループットが増大し、さらにシステムのスペクトル効率が高まる。
【0053】
干渉源基地局では、干渉の影響を受ける移動端末からのワーストコンパニオンインデックスの報告に基づいて、プリコーディング行列の使用が制約される。干渉の影響を受ける移動端末は、自身において予測される最大の干渉を引き起こす、干渉源基地局によって使用される「ワースト(最悪の)」PMIについて、ネットワークに通知する。当然ながら、異なる移動端末は、それぞれの位置に応じて異なるWCIを報告しうる。この場合、干渉源基地局において適用される制約は、関与するすべての移動端末から報告されるWCIの和集合に基づく。
【0054】
干渉の影響を受ける移動端末(ユーザ機器)からのWCI報告に基づいてPMI(IPMI)を制約することによって、干渉の影響を受ける移動端末において最大の干渉をもたらすIPMIを干渉源基地局(eNB)が使用することが防止される。しかしながら、WCIの報告によって、フラッシュライト効果が最小となるIPMI制約に必ずしもつながらないことがあり、なぜならこのコンセプトの主眼は、平均干渉電力レベルを最小にすることであり、フラッシュライトを低減することではないためである。特に、干渉の影響を受ける1つの移動端末にとって「悪い」高干渉IPMIが、干渉の影響を受ける別の移動端末にとっては「良好な」低干渉IPMIとなることがある。さらには、平均SINRが大幅には低減しないことがある。さらに、WCIの報告に基づくIPMI制約に起因して、CQIの測定に基づくSINR推定の不確実性(すなわちフラッシュライト効果)が依然として極めて高い、またはさらに高まることがある。
【0055】
このことについて、
図6および
図7において例示的に説明する。
図6および
図7は、干渉側基地局の6つの異なるプリコーダa〜fと、それによって移動端末(ユーザ機器)において引き起こされる干渉電力レベルに関して、干渉の影響を受ける移動端末側における測定結果を示している。この場合、3基の異なるユーザ機器1〜3が1つのセルに位置しており、隣接セルからのセル間干渉を経験し、干渉のレベルは、隣接セルの基地局(eNB)によって使用される干渉プリコーディング行列(IPMI)に依存するものと想定する。さらに、
図6は、ユーザ機器によってネットワークに報告されるワーストプリコーディング行列(すなわちWCI)を示している。したがって、ユーザ機器1はプリコーディング行列cを報告し、ユーザ機器2はプリコーディング行列bを報告し、ユーザ機器3はプリコーディング行列eを報告する。WCIの報告の結果として、干渉側eNBは、プリコーディング行列c、b、eが使用されないようにプリコーディング行列の使用を制約するように(すなわちPMI制約)指示される。
図7は、各ユーザ機器について、PMI(IPMI)制約の後の結果としてのセル間干渉を描いている。この図から明らかであるように、さまざまな(残りの)プリコーダの干渉レベルが大きく変動する結果としての干渉フラッシュライト効果は、大幅には低減していない。
【0056】
マクロセルおよびピコセル(基地局)からなる一般的なヘテロジニアスネットワーク(HetNet)のシナリオにおいては、受信器側における有効干渉電力レベル(I)は、主干渉源セルからの寄与分(I
D)と、残りの干渉源セルからの寄与分(I
R)とに分けることができる。両方の干渉電力寄与分は、時間に依存する確率過程である。
【0057】
【数1】
【0058】
特に
図5に示したように、一般的なHetNetシナリオの場合、以下を想定することができる。
【0059】
【数2】
【0060】
したがって、主干渉側セル(基地局)からの干渉統計推定値に焦点を当てることは妥当である。主干渉源が、制約されたプリコーディング行列のセットのみを使用すると想定すると、その干渉源からの干渉電力レベルも特定の一連の電力レベルに制限される。主干渉源の干渉チャネルの状態は、干渉側基地局の基準シンボル(LTEシステムの場合にはCRSまたはCSI−RS)の測定によって、干渉の影響を受ける移動端末側において既知であると想定する。
【0061】
単一主干渉源セル(基地局)それぞれからの干渉電力レベルの寄与分は、M×Nの行列H
D(Mは受信器のアンテナポートの数、Nは送信アンテナポートの数)と、N×Lのプリコーディング行列W
D(Lは送信されるレイヤの数)とによって定義される干渉チャネル状態の関数によって求められる。プリコーディング行列W
Dは、L個の列(ビームフォーミング)ベクトルw
DIからなり、各列は空間レイヤiのプリコーディングである。干渉の影響を受ける移動端末の受信器入力における干渉電力レベルの時間依存(サブフレームnに依存する)関係は、次式によって与えられる。
【0062】
【数3】
【0063】
【0064】
一般的に、移動端末は、サブフレームn+1におけるデータ送信の予測される干渉電力レベルを、前のサブフレームにおける測定に基づいて、推定しなければならない。
【0065】
一般的な方法として、サブフレームn+1の推定される干渉電力レベルは、前のS個のサブフレームの測定された干渉電力レベルの平均によって与えられる。
【0066】
【数4】
【0067】
この方法は、LTEにおけるチャネル品質(CQI)報告に現在使用されているが、以下の本質的な問題を示す。
a) 主干渉源の影響と残りの干渉源の影響とを区別することができない。
b) 測定する移動端末は、干渉源によってどのサブフレームにおいてどのプリコーディング行列(IPMI)が使用されたかを認識しない。
c) 測定する移動端末は、測定されるサブフレームにおける干渉電力レベルに対するチャネル状態の影響と干渉プリコーディング行列(IPMI)の影響とを区別することができない。
【0068】
セル間干渉およびセル内干渉を軽減するための上に提示したコンセプトでは、フラッシュライト効果(言い換えれば、干渉側基地局によって使用されるプリコーディング行列に依存してセル間干渉が大幅に変化しうるという効果)を考慮していない。これにより、サービング基地局が、干渉の影響を受ける移動端末のスケジューリングに関して「誤った」決定を行うことがある。以下ではこの点についてさらに詳しく説明する。
【0069】
フラッシュライト効果の影響
サービング基地局におけるスケジューリングの決定に対する、フラッシュライト効果のマイナスの影響について、2つの異なるシナリオを使用して示す。
【0070】
説明を容易にするため、
図8に示した以下の単純なシナリオを想定する。2基の移動端末(ユーザ機器)UE1およびUE2が、基地局1(eNB1)のネットワークの中に位置している。基地局2(eNB2)によって制御される隣接セルに起因して、基地局1のセルにおいてセル間干渉が発生する。
【0071】
UE1およびUE2それぞれは、無線チャネルを測定し、サービングeNB1への送信誤りが存在しないものと想定して、特定の公称ビットレートに対応するCQIを報告する。
図9の表から明らかであるように、UE1は、8dBの平均SINRを測定し、量子化されたCQIである9を報告し、この値は、ブロック誤り率(BLER)を0%と想定したときの公称ビットレート1.92ビット/シンボルに対応する。UE2は、10dBの平均SINRを測定し、量子化されたCQIである10を報告し、この値は公称ビットレート2.73ビット/シンボルに対応する。これに対応して、eNB1は、CQIが指す対応する無線リソースに対するCQIが高い方であるUE2をスケジューリングする。しかしながら、強いフラッシュライト効果のため、UE2をスケジューリングする結果として、37%という高いBLERと1.72(ビット/シンボル)のスループットとなるのに対して、UE1をスケジューリングする結果として、5%のBLERと1.82(ビット/シンボル)のスループットとなる。したがって、報告されたCQIレベルが高いためUE2が選択されたが、UE1をスケジューリングすれば、より高いスループットと、したがってより高いスペクトル効率が得られる。
【0072】
同様に、
図10に示した別のコンスタレーションにおいては、両方のUEが10dBの平均SINRを測定し、したがってCQIとして10を報告する。これにより明らかであるように、CQIの報告からは優先順位を得ることができず、したがって基地局のスケジューラは、UE1およびUE2を任意に選択することができる。しかしながら、
図10に示したように、UE1およびUE2によって達成可能なスループットは、2.59および1.72と大きく異なる。
【0073】
別のシナリオにおいては、干渉側基地局(eNB)によって無線フレームの特定のサブフレームセットに特定のIPMI制約が適用されるものと想定する。より詳細には、
図8の干渉源eNB2は、第1のサブフレームセットに対して、すべての利用可能なプリコーディング行列(PMI)のうちの第1のプリコーディング行列のセットを使用し、第2のサブフレームセットに対して第2のプリコーディング行列のセットを使用する。
図11はこの状況を示している。しかしながら、干渉の影響を受けるユーザ機器(UE)は、干渉側eNBによって特定のサブフレームに対してどの干渉源プリコーディング行列が使用されるかを認識していない。
【0074】
図12は、干渉源プリコーディング行列の2つの異なるセット(
図11のIPMIセットAおよびIPMIセットB)の場合の、干渉の影響を受ける移動端末(UE)における干渉測定の結果を示している。両方のIPMIセットがそれぞれ4つの異なるプリコーディング行列からなるものと想定すると、移動端末は、
図12に示したように干渉レベルを測定する。この図から明らかであるように、IPMIセットAの場合に測定される平均干渉レベルは、IPMIセットBの場合に推定される平均干渉レベルよりも低い。平均干渉レベルは、基地局(eNB)に送信される古典的なCQI報告の基本である。したがって、(eNB2がサブフレームセットAに使用する)IPMIセットAの方が、(eNB2がサブフレームセットBに使用する)IPMIセットBよりも好ましいように見える。この時点で、eNB1は、スループットおよびスペクトル効率を最大にするためにはどのサブフレームにおいてユーザ機器をスケジューリングするべきかを決定しなければならない。したがって、eNB1は、サブフレームセットAのサブフレームにおける干渉レベルが他方のサブフレームセットBのサブフレームの場合よりも低いと予測されるものと推定する。したがって、eNB1は、IPMIセットBに起因するサブフレームセットBにおけるより高い平均干渉レベルを回避するため、好ましくはサブフレームセットAのリソースにおいてユーザ機器をスケジューリングする。しかしながら、より低い干渉変動(すなわちフラッシュライト効果)のため、実際にはサブフレームセットBがより良好な選択である。
【0075】
図13は、特定のIPMIセットのうちの4つの異なるIPMIの場合の干渉レベルのグラフを示している。ユーザ機器は、送信窓の中の干渉統計値を推定する目的で、測定窓の期間中(各IPMIは同じ確率で使用されうる)、特定の干渉サンプルを測定する。
図13から明らかであるように、測定窓の中で異なるタイミングにおいて6つのサンプルが採取されている。サンプルは、未知のIPMIを使用しての干渉側セル内でのPDSCH送信に対応する。干渉の影響を受ける測定側のユーザ機器によってサンプルが採取される時点で、干渉側eNBによって異なるIPMIが使用されている。IPMIa、b、cに対して2つのサンプルが採取されるのに対して、IPMIdに対してはサンプルが採取されないものと想定し、なぜなら、IPMIdは測定窓の中で干渉側eNBによって使用されなかったためである。この結果として、
図13に示したような測定された干渉変動性(範囲)となり、これは、さまざまなサンプルの測定干渉レベルの最小値と最大値とに基づく。この測定された干渉変動性を、送信窓における推定値とみなすことができる。
【0076】
さらに、
図13には、送信窓の中で経験される真の干渉変動性(範囲)も示してあり、これは、送信窓における干渉グラフの最小値および最大値に依存する。図から明らかであるように、送信窓における干渉推定値は、実際の干渉変動性とは大幅に異なっている。測定窓の中の測定サンプルから予測できるよりもフラッシュライト効果が実際にはずっと強い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0078】
本発明は、上に挙げたさまざまな欠点を回避するように対策を講じる。
【0079】
本発明の1つの目的は、プリコーディング行列セットのより信頼性の高い品質測度を求めるメカニズムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0080】
本目的は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0081】
第1の態様によると、本発明は、プリコーディング行列セットの品質測度を求める方法を提案する。より詳細には、以下のシナリオを想定し、このシナリオでは、移動端末は、サービング基地局によって制御されるセル(ネットワーク)の中に位置している。隣接セルは、干渉源基地局によって制御されている。隣接する2つのセルの間でセル間干渉が発生し、したがって、移動端末はそのようなセル間干渉を経験する。さらに、移動端末におけるセル間干渉を軽減する目的で、干渉源基地局によって使用可能なプリコーディング行列のセットが制約される。言い換えれば、干渉源基地局は、プリコーディングコードブックのすべての可能なプリコーディング行列のうちのプリコーディング行列の特定のセットのみを使用することが許可される。プリコーディング行列セットの制約以外には、干渉側セルの間でスケジューリングは調整されない。すなわち、1つの基地局(セル)は、干渉側セルによってどのタイミングでどのプリコーディング行列が使用されるかを認識していない。
【0082】
従来技術のシステムでは、一般に、移動端末によって経験される、干渉源基地局からの平均干渉を報告することができる。したがって、移動端末は、干渉源基地局によってどのプリコーディング行列が実際に使用されたかを認識することなしに、測定窓(通常ではいくつかのサブフレーム)内で特定のタイミングで干渉を測定することができ、次いで、測定窓の間に経験された、計算された平均干渉を、サービング基地局に報告する。しかしながら、この手順は多くのシナリオにおいて十分ではなく、サービング基地局におけるスケジューリング上の好ましくない決定につながることがある。例えば、プリコーディング行列セットの異なるプリコーディング行列によって引き起こされる強く変動する干渉に起因してフラッシュライト効果が発生し、移動端末によって測定および計算される平均干渉に関する高い程度の不確実性が生じ、なぜなら、干渉の影響を受ける移動端末は、制約されたセットのうちのどのプリコーディング行列が、干渉側基地局によってどのサブフレームにおいて使用されるかに関する情報を認識していないためである。
【0083】
本発明は、以下のようにこの問題を回避することのできるメカニズムを実施する。
【0084】
干渉源基地局によって使用されるプリコーディング行列セットを構成している特定のプリコーディング行列について、移動端末にサービング基地局によって通知する。移動端末は、干渉源基地局との無線チャネルを絶え間なく測定し、プリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれによって自身に引き起こされる干渉を、現在のチャネル状態の測定値を使用して推定することができる。言い換えれば、移動端末は、プリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれによる自身における干渉を、過去の時間(測定窓)の間に実際に経験される干渉を測定する代わりに、(例えば1つのサブフレームの)現在のチャネル状態に基づいて推定する。
【0085】
移動端末は、さまざまな干渉推定値(プリコーディング行列ごとに1つ)に基づいて、プリコーディング行列セットの干渉変動性を求めることができ、これを品質測度として使用してプリコーディング行列セットを評価することができる。したがって、1つのサブフレームの中で、前のチャネル状態ではなく現在のチャネル状態に基づいて、干渉フラッシュライト効果を予測することができる。
【0086】
プリコーディング行列セットの例えば平均干渉に加えて、またはこれに代えて、品質測度としての干渉変動性によって、干渉源基地局がそのプリコーディング行列セットを使用することによって引き起こされる(または引き起こされるであろう)干渉を、より正確に評価することができる。
【0087】
この情報はさまざまな方法で使用することができ、以下ではその一部のみについて説明する。
【0088】
本発明の一実施形態によると、干渉変動性は、プリコーディング行列セットの品質測度として、移動端末からそのサービング基地局に送信される。したがって、サービング基地局は、この追加情報を使用して、移動端末のスケジューリングを改善することができる。例えば、サービング基地局は、移動端末からサービング基地局に報告されるチャネル品質情報に加えて、干渉変動性を考慮することで、その移動端末と別の移動端末のうち、干渉源基地局からのセル間干渉の影響がより小さい方の移動端末をスケジューリングするように決定することができる。これに代えて、またはこれに加えて、サービング基地局は、移動端末へのダウンリンク送信をスケジューリングするとき、報告された干渉変動性に基づいて変調・符号化方式を選択することができる。
【0089】
本発明の別の実施形態によると、干渉変動性は、干渉源基地局によって使用される複数のプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを求める目的に使用される。特に、移動端末には、複数のプリコーディング行列セットと、それぞれに対応するプリコーディング行列とに関する情報が提供されるものと想定する。さまざまなプリコーディング行列セットの追加の品質測度として、推定される干渉変動性を使用することにより、干渉源基地局によって使用される好ましい行列セットとして、移動端末に引き起こされる干渉ができる限り小さく、かつ小さい変動性を有する行列セットを求めることが可能である。このような行列セットを求めるステップは、移動端末、サービング基地局、干渉源基地局のいずれかにおいて行うことができる。
【0090】
本発明は、移動通信システムにおいて干渉源基地局によってダウンリンクデータ送信に使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度を求める方法を提供する。移動端末は、サービング基地局のセル内に位置しており、干渉源基地局によって制御される隣接セルからのセル間干渉を経験する。本方法によると、干渉源基地局によって使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの中の特定のプリコーディング行列について、サービング基地局によって移動端末に通知される。次いで、移動端末は、干渉源基地局と移動端末との間のチャネルの現在のチャネル状態を測定し、少なくとも1つのプリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれからの干渉を、測定された現在のチャネル状態に基づいて推定する。少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度として、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの干渉変動性が、推定されたプリコーディング行列の干渉に基づいて求められる。
【0091】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの中の特定のプリコーディング行列について移動端末に通知するステップは、物理層、メディアアクセス制御層、または上位層のメッセージを使用することによって行われる。これに加えて、またはこれに代えて、通知するステップは、干渉源基地局によって使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの各プリコーディング行列の使用確率に関する重み情報について移動端末に通知する。したがって、この重み情報は、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの干渉変動性を求めるステップにおいて、移動端末によって好ましく使用することができる。
【0092】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、推定されたプリコーディング行列の干渉に基づいて、平均干渉が計算される。計算された平均干渉は、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度に、干渉変動性に加えて含められる。重み情報は、平均干渉を計算するステップにおいて移動端末によって使用されることが好ましい。
【0093】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、干渉変動性は、1)少なくとも1つのプリコーディング行列セットのすべてのプリコーディング行列からの干渉の標準偏差、2)少なくとも1つのプリコーディング行列セットのすべてのプリコーディング行列からの干渉の分散、3)少なくとも1つのプリコーディング行列セットのいずれかのプリコーディング行列の最小干渉もしくは最大干渉またはその両方、4)少なくとも1つのプリコーディング行列セットのすべてのプリコーディング行列からの干渉の範囲であって、好ましくは少なくとも1つのプリコーディング行列セットのいずれかのプリコーディング行列の最大干渉と最小干渉の差、のうちの少なくとも1つである。
【0094】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度は、好ましくはチャネル品質報告メッセージの中で移動端末からサービング基地局に報告される。サービング基地局において、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの報告された品質測度を考慮してスケジューリングを決定する。
【0095】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、サービング基地局は、プリコーディング行列セットの報告された品質測度に基づいて、無線フレームの特定のサブフレームにおいて移動端末をスケジューリングする、または、プリコーディング行列セットの報告された品質測度に基づいて、移動端末に送信するための変調・符号化方式を選択する。
【0096】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、少なくとも2つのプリコーディング行列セットが事前定義され、そのうちの1つが干渉源基地局によって使用され、少なくとも2つのプリコーディング行列セットのそれぞれに対して、通知するステップ、推定するステップ、および求めるステップが行われる。
【0097】
移動端末は、少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、少なくとも2つのプリコーディング行列セットの求められた品質測度に基づいて求め、好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を、移動端末からサービング基地局を通じて干渉源基地局に報告する。
【0098】
これに代えて、少なくとも2つのプリコーディング行列セットの求められた品質測度が、移動端末からサービング基地局に報告される。次いで、サービング基地局は、少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、少なくとも2つのプリコーディング行列セットの報告された品質測度に基づいて求める。次いで、サービング基地局は、好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を干渉源基地局に報告する。
【0099】
これに代えて、移動端末は、2つのプリコーディング行列セットの品質測度の差を計算し、その差に関する情報をサービング基地局に報告する。サービング基地局は、少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、報告された差に基づいて求め、好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を干渉源基地局に報告する。
【0100】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、通信システムの無線フレームが、少なくとも2つのサブフレームセットに分割される。干渉源基地局において、無線フレームの各サブフレームセットに対して、異なるプリコーディング行列セットが設定される。プリコーディング行列セットそれぞれに対して、通知するステップ、推定するステップ、および求めるステップが行われる。さらには、通知するステップは、サブフレームセットと各プリコーディング行列セットの対応関係について移動端末に通知するステップをさらに含んでいる。
【0101】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、異なるサブバンド、もしくは、サブバンドとサブフレームの組合せ、またはその両方に対して、異なるプリコーディング行列セットが設定される。各サブバンド、もしくは、サブバンドとサブフレームの各組合せ、またはその両方に対して、通知するステップ、推定するステップ、および求めるステップが行われる。
【0102】
本発明は、移動通信システムにおいて干渉源基地局によってダウンリンクデータ送信に使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度を求める移動端末をさらに提供する。本移動端末は、サービング基地局のセル内に位置しており、干渉源基地局によって制御される隣接セルからのセル間干渉を経験する。移動端末の受信器は、干渉源基地局によって使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの中の特定のプリコーディング行列についての情報を、サービング基地局から受信する。移動端末のプロセッサおよび受信器は、干渉源基地局と移動端末の間のチャネルの現在のチャネル状態を測定する。プロセッサは、少なくとも1つのプリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれからの干渉を、測定された現在のチャネル状態に基づいて推定する。プロセッサは、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度として、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの干渉変動性を、推定されたプリコーディング行列の干渉に基づいて求める。
【0103】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、受信器は、干渉源基地局によって使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの各プリコーディング行列の使用確率に関する重み情報についての情報を受信する。プロセッサは、この重み情報を使用して、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの干渉変動性を求める。
【0104】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、プロセッサは、推定されたプリコーディング行列の干渉に基づいて、平均干渉を計算する。計算された平均干渉は、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度に、干渉変動性に加えて含められる。プロセッサは、重み情報を使用して平均干渉を計算することが好ましい。
【0105】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、送信器は、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度を、好ましくはチャネル品質報告メッセージの中でサービング基地局に報告する。
【0106】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、少なくとも2つのプリコーディング行列セットが事前定義され、そのうちの1つが干渉源基地局によって使用される。受信器およびプロセッサは、少なくとも2つのプリコーディング行列セットのそれぞれのプリコーディング行列セットに対して、受信するステップ、推定するステップ、および求めるステップを行う。
【0107】
プロセッサは、少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、少なくとも2つのプリコーディング行列セットの求められた品質測度に基づいて求める。送信器は、好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を、サービング基地局を通じて干渉源基地局に報告する。
【0108】
これに代えて、送信器は、少なくとも2つのプリコーディング行列セットの求められた品質測度をサービング基地局に報告する。
【0109】
これに代えて、プロセッサは、2つのプリコーディング行列セットの品質測度の差を計算し、送信器が、その差に関する情報をサービング基地局に報告する。
【0110】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、通信システムの無線フレームが、少なくとも2つのサブフレームセットに分割される。干渉源基地局において、無線フレームの各サブフレームセットに対して、異なるプリコーディング行列セットが設定される。受信器およびプロセッサは、各プリコーディング行列セットに対して、受信するステップ、推定するステップ、および求めるステップを行う。受信器は、サブフレームセットと各プリコーディング行列セットの対応関係についての情報を受信する。
【0111】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、異なるサブバンド、もしくは、サブバンドとサブフレームの組合せ、またはその両方に対して、異なるプリコーディング行列セットが設定される。受信器およびプロセッサは、各サブバンド、もしくは、サブバンドとサブフレームの各組合せ、またはその両方に対して、受信するステップ、推定するステップ、および求めるステップを行う。
【0112】
本発明は、移動通信システムにおいて干渉源基地局によってダウンリンクデータ送信に使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度を求めるサービング基地局をさらに提供する。移動端末は、サービング基地局のセル内に位置しており、干渉源基地局によって制御される隣接セルからのセル間干渉を経験する。サービング基地局の送信器は、干渉源基地局によって使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの中の特定のプリコーディング行列について移動端末に通知する。移動端末は、少なくとも1つのプリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれからの干渉を、測定される現在のチャネル状態に基づいて推定し、このチャネルは、干渉源基地局と移動端末の間のチャネルである。サービング基地局の受信器は、少なくとも1つのプリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれの推定された干渉についての情報を、移動端末から受信する。サービング基地局のプロセッサは、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの品質測度として、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの干渉変動性を、受信された推定されたプリコーディング行列の干渉に基づいて求める。
【0113】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、受信器は、干渉源基地局によって使用可能な少なくとも1つのプリコーディング行列セットの各プリコーディング行列の使用確率に関する重み情報を受信する。プロセッサは、少なくとも1つのプリコーディング行列セットの干渉変動性を、受信された重み情報に基づいて求める。
【0114】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、プロセッサは、プリコーディング行列セットの求められた干渉変動性に基づいて、無線フレームの特定のサブフレームにおいて移動端末をスケジューリングする。これに加えて、またはこれに代えて、プロセッサは、プリコーディング行列セットの求められた干渉変動性に基づいて、移動端末に送信するための変調・符号化方式を選択する。
【0115】
上の実施形態に加えて、または代えて使用することのできる、本発明の有利な実施形態によると、少なくとも2つのプリコーディング行列セットが事前定義され、そのうちの1つが干渉源基地局によって使用される。送信器、受信器、およびプロセッサは、少なくとも2つのプリコーディング行列セットのそれぞれに対して、通知するステップ、受信するステップ、および求めるステップを行う。プロセッサは、少なくとも2つのプリコーディング行列セットのうち好ましいプリコーディング行列セットを、少なくとも2つのプリコーディング行列セットの求められた品質測度に基づいて求める。送信器は、好ましいプリコーディング行列セットに関する情報を、干渉源基地局に報告する。
【0116】
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。図面において類似または対応する箇所には同じ参照番号を付している。
【発明を実施するための形態】
【0118】
以下の段落では、本発明のさまざまな実施形態について説明する。例示のみを目的として、実施形態のほとんどは、3GPP LTE(リリース8/9)およびLTE−A(リリース11)の移動通信システムによる無線アクセス方式に関連して概説してあり、これらの技術の一部については上の背景技術のセクションに説明してある。なお、本発明は、例えば、上の背景技術のセクションに説明されている3GPP LTE−A(リリース11)通信システムなどの移動通信システムにおいて有利に使用することができるが、本発明は、この特定の例示的な通信ネットワークにおける使用に限定されないことに留意されたい。本発明は、例えば、WIMAXなどの非3GPPシステムにおいて使用することができる。
【0119】
本発明の一態様は、隣接セル内の干渉源基地局によって使用されうるプリコーディング行列セットの、より有意な品質測度を求めることである。干渉源基地局は、干渉の影響を受ける移動端末のセルにおけるセル間干渉を低減するため、プリコーディング行列(IPMI)制約を適用するものと想定する。特に、干渉源基地局は、自身のセル内での送信(すなわちPDSCH送信)のために、プリコーディング行列セットを構成している特定のプリコーディング行列のみを使用する。
【0120】
本発明の基本的な実施形態について、
図14を参照しながら説明する。
図14は、本発明の実施形態のさまざまなステップを示したシグナリング図である。
【0121】
この図から明らかであるように、サービング基地局(干渉の影響を受ける移動端末が位置しているセルを制御する基地局)は、干渉源基地局によって使用することのできるIPMIセットに関する情報を、干渉の影響を受ける移動端末に報告する。サービング基地局には、干渉源基地局によって使用される(1つまたは複数の)IPMIセットについて、異なる基地局の間のX2インタフェースを通じたシグナリングを介して、以前に通知されている。
【0122】
干渉の影響を受ける移動端末への報告は、例えば、プリコーディング行列セットを構成している与えられたプリコーディングコードブックのうちの特定のプリコーディング行列をビットマップを使用して識別することによって、達成することができる。これに代えて、プリコーディングコードブック内のプリコーディング行列のインデックスを、サービング基地局から移動端末に直接報告することができる。いずれの場合にも、移動端末は、干渉源基地局によって使用され、その移動端末において経験されるセル間干渉に影響するプリコーディング行列すべてを認識する。
【0123】
図14に示されている次のステップは、移動端末において行われるチャネル測定である。より詳細には、主干渉源基地局と、干渉の影響を受ける移動端末との間の干渉無線チャネルH
Dを、移動端末において測定することができる。公知の基準信号(データを伝えない)を使用して、チャネルを測定することができる。行列H
DはM×N行列であり、Mは受信器のアンテナポートの数、Nは送信アンテナポートの数である。
【0124】
LTEでは、各基地局は、セルに固有な基準シンボル(セル内のすべての移動端末(ユーザ機器)において利用可能であるため、しばしば「共通」基準シンボルと称される)を定期的に送信する。第2のタイプの基準シンボルは、専用の基準シンボルを意味し、この基準シンボルは、移動端末に固有なものとすることができ、したがってその固有な移動端末へのデータに埋め込むことができる(UEに固有なRS)。
【0125】
さらなる可能な方法として、CSI−RS(チャネル状態情報基準シンボル)を使用して、干渉源基地局と干渉の影響を受ける移動端末との間のダウンリンクチャネルの状態を求める。CSI−RSは、例えばセル間チャネルの測定のためチャネル状態情報の取得の精度を高める目的で、LTEリリース10において導入されたものである。さらに、セルがCRSなしで動作する場合に、CSIを測定するためにCSI−RSを使用することができる。
【0126】
無線チャネルの測定は、1つのサブフレームの測定窓の中で行われる。無線チャネルの測定は、ユーザ機器において定期的に行うことができる、または、特定のイベント(IPMIセット情報の受信など)によってトリガーすることができる。
【0127】
しかしながら、別の形のチャネル推定も可能であり、本発明は、移動端末が干渉源基地局によって送信される基準シンボルに基づいて行う上述したチャネル推定法に限定されない。
【0128】
次いで、移動端末は、測定されたチャネル状態行列H
Dを使用して、プリコーディング行列セットのプリコーディング行列それぞれによって引き起こされる干渉を推定する。より詳細には、現在の干渉チャネル状態の場合に特定のプリコーディング行列(IPMI)によって引き起こされる受信器の入力における干渉電力レベルI
IPMIは、次式によって与えられる。
【0131】
上述したように、干渉無線チャネルH
Dは、サブフレームnに対して測定される。さらには、前のステップで行われるIPMIセットの報告によって、移動端末は、どのプリコーディング行列が干渉源基地局によって実際に使用されるかを認識することができ、したがって移動端末はベクトルw
IPMi,lを認識する。
【0132】
したがって、移動端末は、各IPMIiについて、式(5)を使用して干渉電力レベルI
IPMIを推定する、すなわち、すべての空間レイヤについて現在のチャネル状態とプリコーディングベクトルの積を合計する。結果として、移動端末は、プリコーディング行列セットの各プリコーディング行列の干渉推定値(言い換えれば、プリコーディング行列セットに対応する一連の干渉電力レベル)を取得する。
【0133】
このことは
図15に示してあり、
図15は、
図13において説明した4つの干渉グラフを示している。2つの図の比較から明らかであるように、
図15の測定窓は、従来技術の測定におけるよりもずっと短く、すなわち1サブフレーム長である。さらに、移動端末は、4つのプリコーディング行列それぞれの干渉レベルを推定するのに対して、
図13に関連して説明した従来技術では、測定窓の期間中、IPMIdが実際には干渉側基地局によって使用されておらず、したがって正しく考慮されていない。したがって、本発明の一実施形態による式(5)の推定プロセスにおいて、各プリコーディング行列の影響が推定される。推定には現在の無線チャネルが使用され、測定窓がかなり短いため、推定結果は、さまざまなプリコーディング行列からの予測される干渉をより正確に反映する。このことは、特に、高速に変化するチャネルの場合にあてはまる。結果として、
図15に示した推定される干渉変動性は、実際に予測される干渉を基準としたとき、ずっと正確である。
【0134】
現在の干渉チャネル状態において推定される一連の干渉電力レベルは、次式によって記述することができる。
【0136】
移動端末は、さまざまなプリコーディング行列によって引き起こされる干渉フラッシュライト効果が適切に反映されるように、プリコーディング行列セットの品質測度(さまざまなプリコーディング行列の干渉変動性を含む)を推定結果に基づいて計算することができる。
【0137】
干渉変動性は、さまざまな方法で表すことができる。1つの可能な方法は、プリコーディング行列セットのさまざまなプリコーディング行列に対して推定される干渉の分散である。分散は、干渉が互いにどれだけ広がっているか、特に、干渉が干渉の平均値からどれだけ離れているかの測度である。別のオプションは、プリコーディング行列セットの干渉変動性として、すべての干渉の標準偏差を計算することである。さらに別のオプションは、プリコーディング行列セットの干渉変動性として、すべての推定された干渉値のうちの最小干渉値もしくは最大干渉値またはその両方を求めることである。この最小/最大干渉値に基づいて、干渉値の範囲を計算することも可能であり、したがって、干渉値の範囲によって干渉変動性が反映される。さらに、上記のオプションの2つ以上の組合せを使用して、プリコーディング行列セットの干渉変動性を示すことも可能である。
【0138】
品質測度は、上に説明した干渉変動性に加えて、さらなる情報を含んでいることができる。例えば、移動端末は、プリコーディング行列セットのさまざまなプリコーディング行列のすべての推定された干渉から平均干渉値を計算することができる。この平均干渉値もプリコーディング行列セットの品質指示情報として使用することができ、品質測度に含めることができる。
【0139】
なお、上記の平均干渉値は、移動端末が自身のサービング基地局にチャネル品質報告の中で報告する平均干渉とは必ずしも同じではないことに留意されたい。後者の平均干渉は、測定された干渉から計算される平均干渉を意味し(
図13を参照)、例えばすべてのプリコーディング行列が考慮されないことがあり、長い測定窓によって、高速に変化するチャネルでは有意な誤差が発生することがあり、長い測定窓のために現在のチャネル状態の影響が失われる。これとは異なり、現在のチャネル条件に基づいて、プリコーディング行列セットのすべてのプリコーディング行列の情報を使用して推定される平均干渉は、より正確であり、現時点の干渉を予測することができる。
【0140】
プリコーディング行列セットの品質測度として干渉変動性を使用することによって、移動端末におけるプリコーディング行列セットのフラッシュライト効果を考慮することができる。特に、CQI報告の測定された平均干渉または推定された平均干渉いずれかとの組合せにおいて、移動端末に対するプリコーダ行列セットの干渉の影響を、より正確かつ高い信頼性で評価することができる。
【0141】
干渉変動性は、さらなる処理のためさまざまな方法で符号化することもできる。例えば、移動端末において、干渉変動性を量子化し、送信されるコードワード上の異なるコードポイントにマッピングすることができる。
【0142】
ここまでは、説明のみを目的として、1つのみのプリコーディング行列セットの場合について記載してきた。当然ながら、上に説明した原理は、干渉源基地局がいくつかのプリコーディング行列セットを使用するときにも等しく適用することができる。この場合、
図14に関連して示されている説明したステップは、プリコーディング行列セットそれぞれに対して一緒に、または個別に行われる。
【0143】
同様に、ここまでは、1基のみの(主)干渉源基地局が考慮されているが、上の原理は、さまざまな干渉源のセル間干渉が考慮されるシナリオにも等しく適用することができる。この場合、各干渉源基地局は、1つまたは複数の異なるプリコーディング行列セットを使用することができる。移動端末は、上記の説明に従って、干渉源基地局それぞれとの無線チャネルを測定し、各プリコーディング行列の干渉を、対応する干渉無線チャネルに基づいて推定する必要がある。
【0144】
本発明の別の実施形態によると、干渉源基地局は、異なるサブフレームセットに対して異なるプリコーディング行列セットを使用する。より具体的には、時間−周波数リソースが、さまざまなサブフレームから構成される無線フレームに分割される。LTEでは、無線フレームは10msであり、それぞれ1ms長の10個のサブフレームを有する。例えば、基地局が、特定のサブフレームのみに対して特定のプリコーダ行列セットを使用するのに対して、その干渉側基地局が残りのサブフレームに対して別のプリコーダ行列セットを使用するものと想定することができる。このような場合、干渉の影響を受ける移動端末は、各サブフレームセットごとに、およびサブフレームセットに対応するプリコーディング行列セットの中の各プリコーディング行列ごとに、異なるセル間干渉を経験する。したがって、各サブフレームにおいて各プリコーディング行列セットに対して発生する干渉変動性を認識することが有利である。
【0145】
さらには、干渉側基地局(eNB)は、異なるサブバンドに対して、またはサブバンドとサブフレームの組合せに対して、異なるIPMI制約を適用することができる。干渉の影響を受ける移動端末(ユーザ機器)は、さまざまなサブバンド/サブフレームにおいて干渉の影響を上に説明したように推定する。
【0146】
本発明のさらなる実施形態によると、プリコーディング行列セットの中のプリコーディング行列それぞれに特定の重み係数が割り当てられ、この重み係数は、例えば、干渉源基地局によるそのプリコーディング行列の使用確率に対応する。より詳細には、干渉源基地局が、プリコーディング行列セットの各プリコーディング行列を同じ回数だけ使用しないものと想定することができる。むしろ一般には、プリコーディング行列セットの特定のプリコーディング行列が他のプリコーディング行列よりも頻繁に干渉源基地局によって使用される可能性が高い。したがって、他のプリコーディング行列よりも頻繁に使用されるプリコーディング行列は、当然ながら干渉に対する影響がより大きい。
【0147】
なお、重み係数は、干渉源基地局によるプリコーディング行列の使用確率を意味するのみならず、これに代えて、プリコーディング行列セットのさまざまなプリコーディング行列に関連する別の側面を意味することができることに留意されたい。
【0148】
この側面を考慮する目的で、サービング基地局から移動端末にIPMIを報告するステップに重み係数を導入することができる。
【0150】
重み係数を導入することによって、IPMIセットの干渉統計値の平均および標準偏差の両方について、求める式が次のように変化する。
【0153】
干渉の影響を受ける移動端末に、複数の異なる重み係数が報告される。サービング基地局には、干渉源基地局によって使用されるプリコーディング行列セットのさまざまなプリコーディング行列について通知することができ、さらに、ネットワーク側におけるこれらのプリコーディング行列それぞれの重みについて、異なる基地局の間のX2インタフェースを通じたシグナリングを介して通知される。次いで、サービング基地局は、この情報(例えばIPMI(すなわちプリコーディング行列)のリストおよび量子化された重み係数γ
iを含む)を移動端末に転送することができる。
【0154】
以下の例示的な実施形態では、IPMI重み係数のコードポイントマッピングについて説明する。
【0156】
本発明のこの実施形態の場合、重み係数は2ビットを使用して報告されるものと想定し、したがって、プリコーディング行列ごとに4つの異なる種類の重み係数が可能である。例えば、マッピングBを使用するとき、重み係数は、IPMIセットのサイズRに直接依存する。さらには、コードポイント[11]の場合、1つのIPMIの重みを大きくすることができる。
【0157】
したがって、移動端末は、プリコーダ行列それぞれについて、考慮される対応する重み係数を認識する。
【0158】
本発明の上の実施形態では、移動端末は、1つまたは複数のプリコーディング行列セットの品質測度として干渉変動性を計算することができ、必要な場合、さまざまな干渉源基地局を対象とする。この情報は多くの方法で使用することができ、以下ではそのうちのいくつかについてさらに詳しく説明する。
【0159】
本発明の実施形態によると、プリコーディング行列セットの品質測度としての干渉変動性を使用して、サービング基地局におけるスケジューリングを改善することができる。この場合、例えば、干渉変動性は、干渉の範囲(max(IPMI)−min(IPMI))または標準偏差のいずれかとすることができる。
図16は、IPMIセットの品質測度を移動端末からサービング基地局に報告する追加のステップを示している。
【0160】
品質測度をサービング基地局に報告するため、品質測度を量子化して、B個のビットのセットにマッピングすることができる。これらのビットを使用することで、B
2個の干渉変動性状態(コードポイント)を区別することができる。これらの状態(コードポイント)への品質測度値の割当ては、表によって、または閉じた数式(closed mathematical expression)によって行うことができる。
【0161】
一例として、次の表は、IPMIセットの干渉変動性のための1つの可能なコードポイントマッピング、特に、干渉レベルの標準偏差または干渉の範囲の場合の可能な量子化マッピングを示している。
【0163】
表から明らかであるように、量子化にB=2ビットが使用されており、結果として、2
2=4個の状態(コードポイント)が可能である。上の表には、3つの異なる例示的なマッピングが示してあり、マッピングAおよびマッピングBは、等距離の量子化間隔(それぞれ1.5dBおよび2dBの間隔)に基づいている。マッピングCは、コードポイントへの干渉変動性値の不均一なマッピングの一例である。ビットBが変動性値を量子化するのに使用されない限り、大きな変動性値に対しては量子化の粒度が減少する。
【0164】
上記の干渉変動性の報告では、要求されるビット数が少ないため、誤り率およびシグナリングオーバーヘッドに関する性能が大幅に低下することなしに、LTEにおける既存のCQI報告フォーマットを拡張することが可能であり、以下ではこれについて説明する。本発明の一実施形態によると、IPMIセットの品質測度の報告は、LTEによって定義されているチャネル品質報告と一緒に実施することができる。
【0165】
特に、IPMIセットの品質測度の報告は、PUCCHまたはPUSCHに基づいて行うことができる。
【0166】
報告は、新規のPUCCH報告タイプに基づくことができる。次の表は、現在のLTE仕様(TS 36.213)によって現在定義されている報告タイプについてまとめたものである。
【0168】
表中のモードは、PMI報告とCQI報告の異なる組合せを記載している。
− モード1−0: PMIなし、広帯域CQI
− モード1−1: 単一PMI、広帯域CQI
− モード2−0: PMIなし、サブバンドCQI(UEが選択)
− モード2−1: 単一PMI、サブバンドCQI(UEが選択)
【0169】
IPMIセットの品質測度(例:干渉変動性のみ)を報告するため、上記を報告タイプ7によって次のように拡張することができる。
【0171】
Bは、品質測度(例:干渉変動性のみ)を符号化するために使用されるビットの数である。
【0172】
IPMIセットの品質測度の、PUCCHベースの定期的な報告は、(報告の間隔および報告の開始に関して)サービング基地局と移動端末との間のチャネルの、送信モード依存のCSI報告とは独立して設定することができる。
【0173】
IPMIセットの干渉変動性の報告方法としての別のオプションは、CQI情報を伝える既存のPUCCH報告タイプを修正する形である。次の表は、本発明の別の実施形態による、修正されたPUCCH報告タイプを示している。
【0175】
報告するために要求されるビットの数(B)は、品質測度として何が報告されるかと、品質測度情報を量子化するために使用されるビットの数とに応じて異なる。さらに、異なるPUCCH報告モードにおいて異なる報告粒度(すなわちビットの数)を使用することも可能である。
【0176】
サブバンドCQIと、IPMIセットの干渉変動性の報告とを組み合わせる場合、IPMIの干渉レベルの推定は同じサブバンドに対して行うべきである。
【0177】
すでに前に説明したように、本発明の別の実施形態によると、IPMIセットの干渉変動性の、PUSCHベースの報告も可能である。PUSCHベースのCSI報告は、アップリンクDCIフォーマット内のCSI要求フィールドによってトリガーされる。単一IPMIセットの干渉変動性の報告、または複数の異なるIPMIセットの品質の比較のいずれかを要求する目的で、CSI要求フィールドを拡張することができる(IPMIセットの比較については、本発明の後からの実施形態を参照)。
【0178】
別のオプションは、既存のPUSCHベースのCSIフィードバックタイプを、PUSCHベースのCSIフィードバックの基準リソース(サブバンドとサブフレームの組合せ)において使用されるIPMIセットの干渉変動性によって拡張することである。
【0179】
PUSCHベースのCSI報告のためのリソースは動的に割り当てられるため、PUSCHベースのCSIフィードバックメッセージのサイズを、Bビットだけ、またはより多くのビットだけ、容易に拡張することができる。
【0180】
本発明の別の実施形態によると、IPMIセットの品質測度(例:干渉変動性)の報告を、上位層(例えば第2層またはそれより上位の層)において行うことも可能である。この場合の利点として、報告あたりのビット数に課される制約がゆるやかである。欠点としては、上位層の報告では、第1層の報告よりも層レイテンシが大きく、これは報告の精度に影響し、なぜなら、IPMIセットの干渉変動性はチャネル状態に依存し、したがって時間に依存するためである。
【0181】
上に説明した任意の実施形態によると、移動端末は、移動端末のスケジューリングを改善できるように、推定および計算されたIPMIセットの品質測度をサービング基地局に報告することができる。例えば、サービング基地局は、どの移動端末をスケジューリングするか、もしくは、移動端末へのデータ送信にどの変調・符号化方式を使用するか、またはその両方を決定するときに、好ましくは標準のCQI報告に加えて、IPMIセットの品質測度を考慮する。LTEにおいて指定されているCQI報告では、移動端末は、平均測定干渉電力レベルにおいて特定のブロック誤り率(BLER)が提供される最も高い変調・符号化方式を報告する。サービング基地局は、CQI報告を解釈することに加えて干渉変動性を考慮することによって、スケジューリングを改善することができ、したがってBLERが減少し、スペクトル効率が高まる。
【0182】
より詳細には、サービング基地局は、報告されたIPMIセットの干渉変動性と、CQI報告からの情報(特に平均干渉、平均SINR)とを組み合わせることで、スケジューリングの決定を行うときの基本情報となる有効なメトリック(metric)を形成することができる。サービング基地局は、有効なメトリックとして、例えば、平均SINRレベル[dB]−IPMIセットの標準偏差[dB]、または、平均SINRレベル[dB]−0.5×IPMIレベルの範囲[dB]を計算することができる。
【0183】
図17および
図18は、2つの表を示しており、例えば、干渉源基地局がサブフレームセットAに対してIPMIセットAを使用し、サブフレームセットBに対してIPMIセットBを使用するときの、2つの異なるIPMIセットAおよびIPMIセットBを比較している。
図9および
図10と比較すると、サービング基地局は、IPMI干渉変動性に関する(この場合には標準偏差としての)情報を有し、したがって、上記に従って有効品質を計算する。干渉変動性(IPMI標準偏差)を追加的に考慮し、次いでスケジューリングに関して決定するための基準として有効品質を使用することによって、スケジューリングの決定が改善される。
図17の特定のケースでは、有効品質は、IPMIセットAでは7dB、IPMIセットBでは5dBと計算されている。表から理解できるように、IPMIセットのIPMI干渉変動性値(すなわちフラッシュライト効果)は、決定の基準としての有効品質に対して大きく影響する。サービング基地局は、有効品質がより高いことを考慮してIPMIセットA(すなわちサブフレームセットA)を選択する。したがって、サービング基地局は、サブフレームセットAのサブフレームにおいて移動端末をスケジューリングする。これにより、より高いスループット1.82につながる。
【0184】
同様に、
図18のシナリオにおいては、報告されるCQI(量子化されたSINR平均)は、両方のIPMIセットにおいて同じであるが、結果としてのフラッシュライト効果に関する追加の情報によって、スケジューラは明確な決定を行うことができる。報告される干渉変動性に基づいて求められる有効品質値がより高いことを考慮して、移動端末をスケジューリングするためにサブフレームセットAからのサブフレームが選択される。
【0185】
本発明の別の実施形態によると、IPMIセットの干渉変動性の計算を使用して、例えば異なるサブフレームセットに関連して干渉源基地局によって使用されるさまざまなIPMIセットの品質を比較することができる。
【0186】
この実施形態においては、干渉源基地局によって使用されるさまざまなIPMIセットがネットワークによって構築されるものと想定する。これは、例えば、複数の異なるセルからの前のWCI報告に基づいて行うことができる。さまざまなIPMIセットのうち、どのIPMIセットが干渉源基地局によって実際に使用されるべきであるかを評価する目的で、セル間干渉を経験するであろう対応する移動端末に、IPMIセットに関する情報が提供される。より詳細には、
図14に関連して説明したように、サービング基地局は、各IPMIセットについて、そのIPMIセットを構成しているプリコーディング行列に関する情報を報告する。この報告は、例えば、複数の異なるIPMIセットと、それらを構成するIPMIとを記述するビットマップによって行うことができる。次いで、移動端末は、干渉源基地局との現在のチャネルを測定することができ、次いで、各プリコーディング行列セットの各プリコーディング行列について、干渉源基地局がそれを使用した場合に移動端末に引き起こされる干渉を推定する。
【0187】
最終的に、移動端末は、各プリコーディング行列セット(IPMIセット)の干渉変動性に基づいて、品質測度を構築することができる。この品質測度を使用することで、さまざまなIPMIセットが比較され、したがって、さまざまなIPMIセットのうち、好ましくは移動端末における干渉の影響が最小となる、干渉源基地局によって使用される1つのIPMIセットが選択される。
【0188】
繰り返しになるが、干渉変動性は、いくつかの値、例えば、干渉電力レベルの標準偏差、分散、範囲(最小値と最大値との差)、IPMIセットのすべてのプリコーディング行列に対して推定される干渉の最小値および最大値、のうちの少なくとも1つとすることができる。IPMIセットの品質測度(干渉変動性を含む)を定義するための1つのオプションは、以下の線形結合である。
【0190】
Aの妥当な設定のいくつかの例は、例えば以下のとおりである。
(1) α
1=1.0 α
2=0.0 α
3=0.0 α
4=0.0
IPMIセットの品質は、干渉電力レベルの平均によって与えられる。
(2) α
1=1.0 α
2=0.0 α
3=0.0 α
4<0.0
IPMIセットの品質は、干渉電力レベルの平均と加重標準偏差の和によって与えられる。
(3) α
1=0.0 α
2=1.0 α
3=0.0 α
4=0.0
IPMIセットの品質は、干渉電力レベルの最大値によって与えられる。
(4) α
1=0.0 α
2=1.0 α
3=−1.0 α
4=0.0
IPMIセットの品質は、干渉電力レベルの最大値と最小値の差によって与えられる。これは範囲とも称する。
(5) 1.0<α
1<0.0 α
2=1.0−α
1 α
3=0.0 α
4=0.0
IPMIセットの品質は、干渉電力レベルの平均と最大値との間の値である。
【0191】
上に説明したように、品質測度は各IPMIセットについて求められる。干渉源基地局によって使用される好ましいIPMIセットを求める目的で、さまざまな品質測度が比較され、最良の品質測度(メトリックの定義に応じて最大または最小のメトリック値)を提供するIPMIセットが、好ましいIPMIセットとして採用される。
【0193】
別の解決策によると、品質測度が移動端末において計算され、次いでサービング基地局に報告される。次いで、サービング基地局は、比較を行い、最良の品質測度を有するIPMIセットを好ましいIPMIセットとして実際に選択する。なお、すべてのIPMIセットのすべての品質測度を報告する必要がないことがある。K個のIPMIセットの品質測度を報告すれば十分なことがあり、K個の報告されるIPMIセットは、最良/最悪の品質測度を有するIPMIセットである。Kの値は、半静的に設定することができる。この場合、要求されるビットの数は、品質測度の設定に依存する(例えば上の行列Aを参照)。品質測度においてIPMIセットの変動性と平均干渉レベルの両方が考慮されるときには、干渉変動性を報告するのみの場合よりも多くのビットが要求される。
【0194】
次の表は、IPMIセットの品質メトリックの均一な量子化の例を記載しており、量子化にはB=4ビットが使用され、結果として2
4=16個の可能な状態(コードポイント)となる。
【0196】
さらに別の実施形態においては、品質測度はそのまま報告されるのではなく、移動端末が2つ以上のIPMIセットの間で差を計算し、その差を量子化する。次いで、量子化された差が、比較されたIPMIセットのインデックスと一緒にサービング基地局に報告される。この場合、報告に要求されるビットは、比較されるIPMIセットの品質測度を個々に報告するよりも少ない。干渉変動性の量子化と同様に、品質測度値の差は均一または不均一にとることができる。サービング基地局は、IPMIセットの比較の結果について、LTE配備におけるX2インタフェースを通じたシグナリグを介して干渉源基地局に通知する。
【0197】
いずれの場合も、好ましいIPMIセット(セル間干渉を低減するために今後使用される対応する好ましいIPMIセット)に関する情報が干渉源基地局に提供される。
【0198】
本発明の上の実施形態すべては、ヘテロジニアスネットワーク(HetNet)のシナリオにおいて実施することができ、この場合、干渉源基地局はマクロ基地局であり、干渉の影響を受ける移動端末は、ピコ基地局(eNB)によって制御されるピコセル内である。このようなHetNetシナリオでは、干渉変動性を考慮することは特に有利であり、なぜなら、強い干渉フラッシュライト効果のためにSINR(CQI)推定の不確実性が極めて高いためである。
【0199】
本発明のハードウェアおよびソフトウェア実装
本発明の他の実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアを用いて、上記したさまざまな実施形態を実施することに関する。これに関連して、本発明は、ユーザ機器(移動端末)およびeNodeB(基地局)を提供する。ユーザ機器は、本発明の方法を実行するようにされている。さらに、eNodeBが備える手段は、eNodeBがそれぞれのユーザ機器のIPMIセットの品質を、ユーザ機器から受信されるIPMIセットの品質情報から評価し、異なるユーザ機器のスケジューリングにおいて、異なるユーザ機器のIPMIセットの品質をスケジューラが考慮することを可能にする。
【0200】
本発明のさまざまな実施形態は、コンピューティングデバイス(プロセッサ)を使用して実施または実行され得るものとさらに認識される。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または、その他プログラマブルロジックデバイスなどである。本発明のさまざまな実施形態は、これらのデバイスの組合せによっても実行または具体化され得る。
【0201】
さらに、本発明のさまざまな実施形態は、ソフトウェアモジュールによっても実施され得る。これらのソフトウェアモジュールは、プロセッサによって実行され、または、ハードウェアにおいて直接実行される。また、ソフトウェアモジュールとハードウェア実装の組合せも可能である。ソフトウェアモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読記憶媒体、例えば、RAMやEPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD−ROM、DVDなどに格納され得る。
【0202】
さらには、本発明の複数の異なる実施形態の個々の特徴は、個々に、または任意の組合せにおいて、別の本発明の主題とすることができることに留意されたい。
【0203】
具体的な実施形態に示した本発明には、広義に記載されている本発明の概念または範囲から逸脱することなく、さまざまな変更もしくは修正またはその両方を行うことができることが、当業者には理解されるであろう。したがって、本明細書に示した実施形態は、あらゆる点において例示的であり、本発明を制限するものではないものとみなされる。