特許第6069342号(P6069342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ コーニング(チャイナ)ホールディング カンパニー リミテッドの特許一覧

特許6069342フルオロシリコーンゴム層をシリコーンゴム層へ接着する方法
<>
  • 特許6069342-フルオロシリコーンゴム層をシリコーンゴム層へ接着する方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069342
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】フルオロシリコーンゴム層をシリコーンゴム層へ接着する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/12 20060101AFI20170123BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20170123BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20170123BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C08J5/12CEQ
   C08L83/07
   C08L83/08
   C08K5/14
   C08L83/05
   C09J183/04
   C09J5/00
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-545070(P2014-545070)
(86)(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公表番号】特表2015-502431(P2015-502431A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】CN2012084439
(87)【国際公開番号】WO2013082989
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2015年8月3日
(31)【優先権主張番号】201110406819.4
(32)【優先日】2011年12月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513099717
【氏名又は名称】ダウ コーニング(チャイナ)ホールディング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】シャオフイ・ワン
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540754(JP,A)
【文献】 特開2009−120829(JP,A)
【文献】 特開2010−215763(JP,A)
【文献】 特開2006−328303(JP,A)
【文献】 特開2011−093996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
B29C 65/00−65/82
C09J 1/00− 5/10
C09J 9/00−201/10
B32B 1/00−43/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒドロシリル化硬化プロセスを用いて硬化可能なフルオロシリコーンゴム層を、ペルフルオロアルキル基を全く含まず、かつ非ヒドロシリル化硬化プロセスを用いて硬化可能なシリコーンゴム層へ接着する方法であって、
i)硬化前に、ヒドロシリル化触媒、又はケイ素結合水素基を少なくとも2つ含有するシロキサンのいずれかを、フルオロシリコーンゴム組成物に加える工程と、
ii)硬化前に、ヒドロシリル化触媒、又はケイ素結合水素基を少なくとも2つ含有するシロキサンの他方を、別のシリコーンゴム組成物に加える工程と、
iii)工程(i)及び工程(ii)の生成物を含み、かつ40:60〜60:40の範囲内で、工程(ii)の生成物に対する工程(i)の生成物の重量比を有する混合化合物を調製する工程と、
iv)工程(i)、工程(ii)及び工程(iii)の生成物を所望の形状に成形する工程と、
)工程(i)の成形物と工程(ii)の成形物との間工程(iii)の成形物を配置する工程であって、前記工程(iii)の成形物は前記工程(i)の成形物及び前記工程(ii)の成形物と接触する、工程と、
vi)工程(v)の生成物を硬化させることによって、互いに接触している成形物を接着させる工程と、を含む方法。
【請求項2】
工程(vi)の前に、工程(iii)の生成物は未硬化のままであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(vi)の前に、工程(i)の生成物、工程(ii)の生成物及び工程(iii)の生成物は全て未硬化のままであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(vi)の前に、及び/又は工程(vi)の間に、工程(i)、工程(ii)、及び工程(iii)の生成物の間の接触面に圧力が加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(vi)は室温〜200℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒドロシリル化触媒は、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム又はルテニウム系触媒を含む群から選択される白金族金属系触媒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ケイ素結合水素含有シロキサンは、式
MeSiO(MeSiO)[R’’CHCHSi(Me)O](MeHSiO)SiMe
で表される、ケイ素結合水素ラジカルを有する直鎖構造であることを特徴とし、
式中、各R’’は、同一であっても異なっていてもよく、1〜8個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖ペルフルオロアルキルラジカルを示し、rの値はゼロ以上、t及びzの値はそれぞれゼロより大きく、フルオロシリコーンポリマーが1〜10モル%の水素結合シロキサン単位と、少なくとも5モル%のフッ素化シロキサン単位と、残部のジメチルシロキサン単位及び上述した式により表されるような鎖硬化ラジカルとを含有するような値であり、rの値がゼロの場合、t及びzの値はそれぞれゼロより大きく、フルオロシリコーンポリマーが20〜50モル%のフッ素化シロキサン単位を含有し、かつ25℃で10〜10000mPa・sの粘度を有するような値である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ケイ素結合水素含有シロキサンは、
HMeSiO(MeHSiO)[R’’QSi(Me)O]SiMeH、
HMeSiO(MeHSiO)(R’’QHSiO)SiMeH、
R’’QMeHSiO(MeHSiO)(R’’QHSiO)SiMeHRQ、
MeSiO(MeSiO)0.95m(MeHSiO)0.05m(R’’QMeSiO)SiMe3、
HMeSiO(MeSiO)(R’’QMeSiO)SiMeH、
HMeR’’QSiO(R’’QMeSiO)SiMeR’’QH、
MeR’’QSiO(R’’QMeSiO)0.95f(R’’QHiSiO)0.05f及び
MeSiO(MeSiO)(R’’QMeSiO)0.90f(R’’QHSiO)0.10fSiMe
を含み、
式中、ポリマーの粘度は自由に流動する液体から緩やかに流動するガムまでの範囲にわたり、m及びfは0〜10,000以上の値を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フルオロシリコーンゴム組成物は、
(A)100,000を超える重量平均分子量を有し、かつ式(R’’Q)(R’) SiO(4−a−b)/2を有するフッ素化シロキサン単位、及び式(R’)SiO(4−c)/2を有する非フッ素化シロキサン単位(式中、前記フッ素化及び非フッ素化シロキサン単位において、R’’は、1〜8個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖ペルフルオロアルキルラジカルを示し、Qは、少なくとも2個の炭素原子を介してR’’ラジカルをケイ素原子に連結させる二価炭化水素、炭化水素エーテル又は炭化水素チオエーテルラジカルを示し、R’は、飽和又は不飽和のケイ素結合一価炭化水素基を示し、a=1〜2,b=0〜2,c=0〜3である)をポリマー中に含むポリオルガノシロキサン100重量部と、
(B)好適な充填剤5〜200重量部と、
(E)1分子あたり平均少なくとも2個のケイ素結合水素ラジカル含有するフルオロシリコーンポリマーと、
(C)有機過酸化物0.1〜10重量部と、
(D)100,000を超える重量平均分子量及び平均単位式RSiO(4−y)/2(式中、Rは、不飽和であってよいが、フルオロ置換基を含有しない置換又は非置換一価炭化水素基であり、yは、1.96〜2.03の数である)を有する第2のポリオルガノシロキサン0〜20重量部と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
使用可能なシリコーンゴム組成物は、
(i)請求項9の成分(E)に記載の任意の種類のオルガノポリシロキサンと、(ii)請求項9の成分(B)に記載の任意の種類の充填剤又は充填剤群と、(iii)請求項9の成分(C)として定義される任意の種類の硬化剤と、
1つ以上のレオロジー改質剤、顔料、着色剤、抗接着剤、可塑剤、接着促進剤、発泡剤、防火剤及び防湿剤の群から選択される任意の添加剤と、を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によってシリコーンゴムに接着されたフルオロシリコーンゴムを含むホースを調整する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ヒドロシリル化硬化プロセスを用いて硬化可能なフルオロシリコーンゴムを、非ヒドロシリル化硬化プロセスを用いて硬化可能な別のシリコーンゴムに接着するために改良された方法に関し、前記方法を使用して作製された生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロシリコーンゴム組成物、特に、多くのフルオロアルキル(特にペルフルオロアルキル基)の割合を有するオルガノポリシロキサンポリマーをベースとするフルオロシリコーンゴム組成物は、硬化すると、熱、凍結、薬品、及び油に対する暴露に対して耐性を持たせる特性がある。したがって、これらの組成物は、自動車及び航空機産業において広く使用されている。しかしながら、硬化されたフルオロシリコーンゴムが有するある重要な問題は、他のシリコーンゴム組成物などの他の基材に対して良好に接着しないことである。
【0003】
フルオロシリコーンゴムの別のシリコーンゴム系基材及び他の基材表面に対する接着を改良するために、様々な方法が提案されてきた。これらは、接着を改良するために、フルオロシリコーンゴム及び/又は他のシリコーンゴムにおける、複数のケイ素−水素結合又は複数のアルケニル基を含有する物質の添加を含む。また、フルオロシリコーンゴム及び/又は他のシリコーンゴムにおける、シアヌレート及び/又はイソシアヌレート系化合物(例えば、トリアリールシアヌレート又はトリアリールイソシアヌレート)などの接着促進剤が導入されてもよいが、適合性の問題をもたらす場合がある。
【0004】
特許文献1において、非ヒドロシリル化硬化プロセスを用いて硬化可能なフルオロシリコーンゴム層を、ペルフルオロアルキル基を実質的に含有しないシリコーンゴム層へ接着する方法が開示されている。この方法は、
i)硬化前に、ヒドロシリル化触媒、又はケイ素結合水素基を少なくとも2つ含有するシロキサンのいずれかを、フルオロシリコーンゴム組成物に加える工程と、
ii)硬化前に、他のヒドロシリル化触媒、又はケイ素結合水素基を少なくとも2つ含有するシロキサンを、別のシリコーンゴム組成物に加える工程と、
iii)工程(i)及び工程(ii)の生成物を所望の形状に成形する工程と、
iv)工程(iii)の成形物を互いに接触させる工程と、
v)これらの成形物の間でヒドロシリル化反応を生じさせることによって、互いに接触している成形物を接着させる工程と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0308227号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の実施形態において、非ヒドロシリル化硬化プロセスを用いて硬化可能なフルオロシリコーンゴム層を、ペルフルオロアルキル基を実質的に含有せず、かつ非ヒドロシリル化硬化プロセスを用いて硬化可能なシリコーンゴム層へ接着する方法が提供され、本方法は、
i)硬化前に、ヒドロシリル化触媒、又はケイ素結合水素基を少なくとも2つ含有するシロキサンのいずれかを、フルオロシリコーンゴム組成物に加える工程と、
ii)硬化前に、他のヒドロシリル化触媒、又はケイ素結合水素基を少なくとも2つ含有するシロキサンを、別のシリコーンゴム組成物に加える工程と、
iii)工程(i)及び工程(ii)の生成物を含み、かつ40:60〜60:40の範囲内で、工程(ii)の生成物に対する工程(i)の生成物の重量比を有する混合化合物を調製する工程と、
iv)工程(i)、工程(ii)及び工程(iii)の生成物を所望の形状に成形する工程と、
v)工程(iv)の成形物を工程(i)の生成物と工程(ii)の生成物との間の工程(iii)の生成物に接触させる工程と、
vi)工程(v)の生成物を硬化させることによって、互いに接触している成形物を接着させる工程と、を含む。
【0007】
好適な実施形態において、工程(vi)の前に、工程(iii)の生成物は、未硬化のままである。
【0008】
他の好適な実施形態において、工程(vi)の前に、工程(i)の生成物、工程(ii)の生成物及び工程(iii)の生成物の全てが、未硬化のままである。
【0009】
その他の好適な実施形態において、工程(vi)の前及び/又は工程(vi)の間に、工程(iv)の生成物の間の接触面に圧力が加えられる。
【0010】
他の好適な実施形態において、工程(vi)は室温〜200℃の温度で行われる。
【0011】
その他の好適な実施形態において、ヒドロシリル化触媒は、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム又はルテニウム系触媒を含む群から選択される白金族金属系触媒である。
【0012】
他の好適な実施形態において、ケイ素結合水素含有シロキサンは、以下の式により表されるような、ケイ素結合水素ラジカルを有する直鎖構造である。
MeSiO(MeSiO)[R’’CHCHSi(Me)O](MeHSiO)SiMe
(式中、各R’’は、同一であっても異なっていてもよく、1〜8個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖ペルフルオロアルキルラジカルを示し、rの値はゼロ以上、t及びzの値はそれぞれゼロより大きく、フルオロシリコーンポリマーが1〜10モル%の水素結合シロキサン単位と、少なくとも5モル%のフッ素化シロキサン単位と、残部のジメチルシロキサン単位及び上述した式により表されるような鎖硬化ラジカルとを含有するような値であり、rの値がゼロの場合、t及びzの値はそれぞれゼロより大きく、フルオロシリコーンポリマーが20〜50モル%のフッ素化シロキサン単位を含有し、かつ25℃で10〜10000mPa・sの粘度を有するような値である。)
【0013】
その他の好適な実施形態において、ケイ素結合水素含有シロキサンは、
HMeSiO(MeHSiO)[R’’QSi(Me)O]SiMeH、
HMeSiO(MeHSiO)(R’’QHSiO)SiMeH、
R’’QMeHSio(MeHSiO)(R’’QHSiO)SiMeHRQ、
MeSiO(MeSiO)0.95m(MeHSiO)0.05m(R’’QMeSiO)SiMe
HMeSiO(MeSiO)(R’’QMeSiO)SiMeH、
HMeR’’QSiO(R’’QMeSiO)SiMeR’’QH、
MeR’’QSiO(R’’QMeSiO)0.95f(R’’QHiSiO)0.05f及び
MeSiO(MeSiO)(R’’QMeSiO)0.90f(R’’QHSiO)0.10fSiMe
を含む(式中、ポリマーの粘度は自由に流動する液体から緩やかに流動するガムまでの範囲にわたり、m及びfは0〜10,000以上の値を有する)。
【0014】
他の好適な実施形態において、フルオロシリコーンゴム組成物は、
(A)100,000を超える重量平均分子量を有し、かつ式(R’’Q)(R’) SiO(4−a−b)/2を有するフッ素化シロキサン単位、及び式(R’)SiO(4−c)/2を有する非フッ素化シロキサン単位(式中、前記フッ素化及び非フッ素化シロキサン単位において、R’’は、1〜8個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖ペルフルオロアルキルラジカルを示し、Qは、少なくとも2個の炭素原子を介してR’’ラジカルをケイ素原子に連結させる二価炭化水素、炭化水素エーテル又は炭化水素チオエーテルラジカルを示し、R’は、飽和又は不飽和のケイ素結合一価炭化水素基を示し、a=1〜2,b=0〜2,c=0〜3である。)をポリマー中に含むポリオルガノシロキサン100重量部と、
(B)好適な充填剤5〜200重量部と、
(E)1分子あたり平均少なくとも2個のケイ素結合水素ラジカルを含有するフルオロシリコーンポリマーと、
(C)有機過酸化物0.1〜10重量部と、
(D)100,000を超える重量平均分子量及び平均単位式RSiO(4−y)/2(式中、Rは、不飽和であってよいが、フルオロ置換基を含有しない置換又は非置換一価炭化水素基であり、yは、1.96〜2.03の数である)を有する第2のポリオルガノシロキサン0〜20重量部と、を含む。
【0015】
その他の好適な実施形態において、使用可能なシリコーンゴム組成物は、
(i)成分(E)に記載の任意の種類のオルガノポリシロキサンと、
(ii)成分(B)に記載の任意の種類の充填剤又は充填剤群と、
(iii)成分(C)として定義される任意の種類の硬化剤と、
(iv)成分(F)に記載の任意の種類のヒドロシリル化触媒と、
1つ以上のレオロジー改質剤、顔料、着色剤、抗接着剤、可塑剤、接着促進剤、発泡剤、防火剤及び防湿剤などの群から選択される任意の添加剤と、を含む。
【0016】
本発明の第2の実施形態において、上述の方法によってシリコーンゴムに接着されたフルオロシリコーンゴムを含むホースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】典型的なターボチャージャホースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態において、工程(i)の生成物又は工程(ii)の生成物のいずれか、又は工程(i)の生成物及び工程(ii)の生成物の両方は、工程(vi)の前に予備硬化されてもよい。あるいは、工程(i)の生成物及び工程(ii)の生成物の両方が、工程(vi)において工程(iii)の生成物と同時に硬化される。工程(iii)の生成物は、工程(vi)の前に未硬化のままであることが好ましい。必要であれば、この3つの生成物を接着させる場合に圧力が加えられてもよい。圧力は、モールド、バンデージを使用して、あるいはオートクレーブ装置で加えることができる。フルオロシリコーンゴム生成物と混合化合物との間の接合面、及び高稠度のシリコーンゴム生成物と混合化合物との間の接合面での反応は、室温又は室温〜約200℃の任意の温度において行ってもよい。
【0019】
工程(i)で利用されるフルオロシリコーンポリマー組成物は、任意の好適なフルオロシリコーンゴム組成物であってもよい。
【0020】
好ましくは、フルオロシリコーンポリマー組成物は以下の成分を含む。
A)フッ素化ポリジオルガノシロキサンポリマー
B)1つ以上の補強充填剤及び/又は非補強充填剤
C)好適な非ヒドロシリル化硬化触媒
【0021】
好ましくは、フッ素化ポリジオルガノシロキサンAは、100,000を超える重量平均分子量及び/又は25℃で少なくとも10,000mPa・sの粘度を有し、フッ素化シロキサン単位及び任意に非フッ素化シロキサン単位を含む。重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン標準に沿って測定され得る。フッ素化シロキサン単位は以下の式を有することが好ましい。
(R’’Q)(R’)SiO(4−a−b)/2
【0022】
式中、
各R’’は、同一であっても異なっていてもよく、1〜8個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖フルオロアルキルラジカルを示し、
各Qは、同一であっても異なっていてもよく、少なくとも2個の炭素原子を含有する二価炭化水素、炭化水素エーテル又は炭化水素チオエーテルを示す。各R’’ラジカルは、Q基を介してケイ素原子に連結されている。
【0023】
各R’は、同一であっても異なっていてもよく、任意に置換された飽和又は不飽和ケイ素結合一価炭化水素基を示し、
式中、a=0〜2,b=0〜2であり、aが0である場合、単位あたりの少なくとも1つのR’基は1つ以上の炭素−フッ素結合を含有する。
【0024】
本出願の目的において、「置換(された)」とは炭化水素基中の1つ以上の水素原子が別の置換基で置換されることを意味する。かかる置換基の例としては、塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素などのハロゲン原子、クロロメチル、パーフルオロブチル、トリフルオロエチル、及びノンアフルオロヘキシルなどのハロゲン原子含有基、酸素原子、(メタ)アクリル、及びカルボキシルなどの酸素原子含有基、窒素原子、アミノ官能基、アミド官能基、及びシアノ官能基などの窒素原子含有基、硫黄原子、並びにメルカプト基などの硫黄原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
好適な飽和R’ラジカルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル及びデシルなどのC〜C10のアルキルラジカルが挙げられる。フルオロシリコーンポリマーにおいて、好ましくは、aが0より大きい場合、少なくとも90%のR’ラジカル、更に好ましくはアルケニルラジカルを除いて、全てのR’ラジカルは、メチルラジカルである。好ましくは、aが0である場合、単位あたり少なくとも1つのR’は少なくとも1つの炭素−フッ素結合を含有し、最も好ましくはCF−を含有する。
【0026】
好ましくは、R’’は、5〜100モル%のフッ素化シロキサン単位の全範囲にわたって、1〜8個の炭素原子を有するフルオロアルキルラジカルを示す。存在する各フルオロアルキルラジカルは、少なくとも1つの−C−F結合を有する。R’’ラジカルは、同一であっても異なっていてもよく、標準的な構造又は分岐鎖構造を有してもよい。好ましくは、少なくともいくつか、最も好ましくは、少なくとも50%のフルオロアルキル基はペルフルオロアルキル基である。それらの例としては、CF−、C−、CFCFCF−又は(CFCF−などのC−、CFCFCFCF−、(CFCFCF−、(CFC−及びCFCF(CF)CF−などのC−、CFCFCFCFCF−などのC11、CF(CFCF−などのC13−、CF(CFCF−などのC14−、並びにC17−が挙げられる。
【0027】
各ペルフルオロアルキルラジカルは、Q、すなわち炭素、水素及び任意に、エーテル及びチオエーテル結合としてそれぞれ存在する酸素及び/又は硫黄原子を含有する二価スペーサーラジカル(spacing radical)によってケイ素原子に結合される。硫黄及び酸素原子が存在する場合、炭素原子のみに結合されなければならない。
【0028】
各Qラジカルは、以下に挙げる元素を含有する任意の構造を有することができるが、各Qラジカルは、標準的な構造又は分枝鎖構造を有するC〜C10のアルキレンラジカルであることが好ましい。好適なアルキレンラジカルの例としては、−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、(CHCH−及び−CH(CH)CHCHが挙げられる。
【0029】
各フッ素化ラジカルR’’Qは、式R’’CHCH−を有することが好ましい。
【0030】
任意に、フッ素化ポリオルガノシロキサンは、1分子あたりの全単位数が好ましくは25%未満、更に好ましくは15%未満の割合の、式(R’’’)SiO(4−c)/2を有する非フッ素化シロキサン単位を更に含む。
【0031】
式中、R’’’は、任意に置換された飽和又は不飽和ケイ素結合一価炭化水素基を示し、c=0〜3であるが、好ましくは、cの平均値は約2である。各R’’’は、フッ素を含有せず、したがって、R’’’は、上述の「置換基」の一般定義において言及したフルオロ含有置換基のいずれも含有することができない。
【0032】
先に示したように、R’’’は、任意に置換された飽和又は不飽和ケイ素結合一価炭化水素基を示している。好ましくは、各R’’’は同一であっても異なっていてもよく、C〜C10のアルキル基、ビニル若しくはアリール基などのC〜Cのアルケニル基、並びに/又はフェニル、トリル、ベンジル、β−フェニルエチル、及びスチリルなどのアリール基から選択されてもよい。好ましくは、1分子あたり少なくとも2つのR’’’置換基が、アルケニル基であり、最も好ましくは、ビニル基である。
【0033】
本発明の一つの好ましい実施形態において、フルオロシリコーンポリマーは、2〜8個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基、好ましくはビニル基を含有する。
【0034】
成分Aの例として、ジメチルシロキシ単位と(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルシロキシ単位と(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシロキシ単位とビニルメチルシロキシ単位との共重合体、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシロキシ単位とビニルメチルシロキシ単位との共重合体、及びポリ(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシロキサンが挙げられる。これらの分子鎖上の末端基は、トリメチルシロキシ基、ビニルメチルシロキシ基、ジメチルヒドロキシシロキシ基、及び(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルヒドロキシシロキシ基から選択される。
【0035】
任意の好適な充填剤又は充填剤の混合物(成分(B))を利用することができる。これらは、補強充填剤単独で、又は非補強充填剤との混合物を含んでもよい。補強充填剤としては、粉砕シリカ(ground silica)、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、シリカエアロゲル、炭酸カルシウムが挙げられる。非補強充填剤としては、ウォラストナイト、石英、カオリン、雲母、パイロフィライト炭酸マグネシウム及びその他の粒子状無機固体が挙げられる。
【0036】
成分(B)は、処理済の形態又は未処理の形態で組成物に導入することができる。処理済の充填剤は、充填剤/ポリマー混合プロセスにおいて補助するために、疎水性を有する充填剤を提供する物質で予備処理されている。場合によっては、混合プロセスの間に処理剤を本発明の組成物に添加する場合に、その場で充填剤を処理することが有益であり得る。任意の好適な処理剤を利用してもよい。これらは、例えば、シラン、シラザン又は短鎖オルガノポリシロキサンポリマーを含む1つ以上の群を含んでもよい。いくつかの好適なシランとしては、例えば、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのフェニルトリアルコキシシラン、又はビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシランが挙げられる。所望であれば、カオリン充填剤用の処理剤として、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルプロパンジシラザン、及び1,3−ジビニルテトラメチルジシラザンなどのシラザンを使用することもできる。短鎖オルガノポリシロキサンとしては、例えば、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジアルキルアルキルアルケニルシロキサン、及び末端基であってもよい、少なくとも1つのSi−H基を含むオルガノオポリシロキサンを挙げることができる。短鎖ヒドロキシ末端ポリ3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン、フルオロアルキルトリアルコキシシラン及びフルオロアルキルシランを、処理剤として代替的に利用してもよい。
【0037】
好ましい充填剤は補強充填剤であり、例えば、ヒュームドシリカ、沈殿シリカを含み、籾殻灰(rice hull ash)、ある程度の炭酸カルシウム及び/又はカオリンを含む。また、粉砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン及びカーボンブラック、タルク、ウォラストナイトなどの非補強充填剤も使用してもよい。単独で、又は上記の充填剤に加えて使用することができる他の充填剤としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンなどの粘土、酸化アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム(水滑石)、黒鉛、炭酸銅(例えば、マラカイト)、炭酸ニッケル(例えば、ザラカイト(zarachite))、炭酸バリウム(例えば、毒重石)、及び/又は炭酸ストロンチウム(例えば、ストロンチアナイト)が挙げられる。
【0038】
この充填剤は9未満のpHを有することが好ましい。更に、十分な補強効果を得るために、好ましくは、補強充填剤は50m/gを超える比表面積を有する。充填剤の量は、成分(A)の100重量部あたり、5〜200重量部、好ましくは20〜80重量部である。充填剤の量が200重量部を超えると、フルオロシリコーンゴムは、加工及び硬化後にその機械的特性を失うであろう。
【0039】
任意の好適な有機過酸化物を、本発明の成分(C)として利用してもよい。いくつかの一般に使用される有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、1,4−ジクロロベンジルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、1,4−ジメチルベンジルペルオキシド、2,4−ジメチルベンジルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ジクミル、ターシャリーブチルパーベンゾエート、モノクロロベンジルペルオキシド、ジターシャリーブチルペルオキシド、2,5−ビス−(ターシャリーブチル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ターシャリーブチルトリメチルペルオキシド、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、及びt−ブチルパーベンゾエートが挙げられる。最も好適なペルオキシド系硬化剤は、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、及び過酸化ジクミルである。
【0040】
この成分はまた、シリコーンオイル中に分散させることによってペースト状に形成されてもよい。成分(C)は、成分(A)100重量部あたり、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜2.0重量部の量で使用されることが推奨される。
【0041】
組成物はまた、100,000を超える重量平均分子量及び平均単位式RSiO(4−y)/2(式中、Rは、更に不飽和であってもよい(例えば、アルケニル基又はアルキル基を有していてもよい)が、いかなるフルオロ基も含有しない、置換又は非置換一価炭化水素基であり、yは1.96〜2.03の数である)を有する成分(D)である第2のポリオルガノシロキサンを0〜20重量部含むことができる。重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン標準に沿って測定され得る。例えば、成分(A)がポリ(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシロキサンである場合、本明細書の特許請求の範囲に記載した組成物はまた、100,000を超える重量平均分子量を有し、かつ3,3,3−トリフルオロプロピル基を含有しないオルガノポリシロキサンの形態の任意の成分(D)と組合せることができる。ポリオルガノシロキサンにおいてケイ素原子と結合される有機基は、C〜C10のアルキル基、ビニル基又はアリール基などのC〜Cのアルケニル基、及びフェニル基などのアリール基により表される。以下は、ポリオルガノシロキサンの具体例である。ポリジメチルシロキサン、ポリビニルメチルシロキサン、ジメチルシロキシ単位とメチルフェニルシロキシ単位との共重合体、及びジメチルシロキシ単位とビニルメチルシロキシ単位との共重合体。ポリオルガノシロキサンは、混合後に、ケイ素原子に結合された全ての一価炭化水素基に対して3,3,3−トリフルオロプロピル基の含有量が少なくとも20モル%となるような量で使用されることが推奨される。
【0042】
本発明のフルオロシリコーンゴム組成物の必須成分は、成分(A)、(B)、(C)、及び任意の(D)である。しかしながら、必要であれば、この組成物は以下の添加剤と組合せられる。添加剤としては、シリコーンゴム組成物と共に通常使用されるジオルガノシロキサンオリゴマーなどの可塑剤、金属石鹸又は加工助剤、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム又は耐油性向上剤などが挙げられる。本発明に従って組成物に含まれてもよいその他の追加的な成分としては、鎖延長剤、染料、着色剤、顔料、粘度調整剤、浴寿命延長剤(bath life extender)、阻害剤、溶媒、防火剤(fire retardancy agent)、離型剤、発泡剤、難燃剤(flame retardant)、導電性及び/又は熱伝導性充填剤、及び乾燥剤、処理剤(handling agent)、過酸化物硬化助剤(peroxide cure co−agent)、酸受容体、紫外線安定剤及び軟化剤が挙げられる。好適な防火剤としては、例えば、ハロゲン化化合物、リン酸塩及び酸化アンチモン(III)が挙げられる。酸化セリウム及びカーボンブラックなどの熱安定剤も使用してもよい。
【0043】
本発明のフルオロシリコーンゴム組成物は、例えば、2本ロールニーダー混合機などの従来の混合装置において、必要な場合は適切な添加物と共に、成分(A)〜(C)及び存在する場合に(D)を均一に混合するような任意の好適な方法によって調製することができる。あるいは、加熱条件下で成分(A)及び(B)を混合することによって、成分(A)及び(B)を予備混合し、フルオロシリコーンゴム系化合物を得た後、成分(C)と組み合わせることができる。
【0044】
出願人は、その結果として得られる組成物が硬化する場合、かかる硬化フルオロシリコーンが、非常に改良された耐油性老化結果(aging result)及び他の硬化シロキサンゴム基材への良好な接着をもたらすことを発見した。
【0045】
工程(ii)で利用されるシリコーンゴムは、高稠度のシリコーンゴム(HCR)組成物である。通常、高稠度のシリコーンゴム(HCR)組成物は、100,000を超える重量平均分子量及び/又は25℃で1,000,000mPa・sを超える粘度を有する。重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン標準に沿って測定され得る。しかし、シリコーンゴムは、例えばブチルゴム、エチレンビニルアセテートゴム、EPDM、ニトリルゴムなどの任意の好適な有機ゴムを含むシリコーン変性有機ゴムを代替的に含んでもよい。
【0046】
一般的に、高稠度のシリコーンゴム組成物は、一般式RSiO4−a/2(式中、各Rは同一であっても異なっていてもよく、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、1〜18個の炭素原子を有する置換炭化水素基、又は18個以下の炭素原子を有する炭化水素オキシ基を示す)の単位を有するオルガノポリシロキサンポリマー(A1)を含む。好ましくは、Rは、8個以下の炭素原子を有する任意に置換されたアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基又はアラルキル基である。アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルであってもよい。アルケニル基は、例えば、ビニル、アリール、プロペニル、及びブテニルであってもよい。アリール基及びアラルキル基は、例えば、フェニル、トリル、及びベンジルであってもよい。好ましい基は、メチル、エチル、フェニル及びビニルである。好ましくは、全R基の少なくとも80%がメチル基又はフェニル基であり、最も好ましくは、メチルである。オルガノポリシロキサンは、好ましくは、末端基の単位を除くほどんど全ての単位についてaの値が2であり、かつシロキサンは実質的に直鎖ポリマーである。かかるオルガノポリシロキサンの粘度は、25℃で数百万mPa・sであってもよく、その場合、オルガノポリシロキサンは一般的に容易に流動せず、また、粘性の観点から定義される可能性のあるガムとして典型的に言及される。
【0047】
上述に従う高稠度のゴム組成物は、典型的に充填剤(B1)及び好適な触媒(C1)を更に含む。典型的に、(B1)及び(C1)は、フルオロシリコーンゴム組成物について上述した成分(B)及び(C)と同じである。シリコーンゴム組成物はまた、フルオロシリコーンゴム組成物について上述した任意の添加剤のいずれかを含んでもよい。
【0048】
高稠度のシリコーンゴム組成物は、例えば、2本ロールニーダー混合機などの従来の混合機において、必要な場合は適切な添加物と共に、成分(A1)〜(C1)を均一に混合するなど任意の好適な方法によって調製することができる。あるいは、加熱条件下で成分(A1)及び(B1)を混合することによって、それらを予備混合して、フルオロシリコーンゴム系化合物を得た後、成分(C1)と組み合わせることができる。
【0049】
発明者らは、いずれの組成物も少なくとも2つのケイ素結合水素基を含有するシロキサン及び触媒の両方を含有しないとすると、どの組成物が少なくとも2つのケイ素結合水素基を含有するシロキサン(以降、成分(E)とする)を含有し、どの組成物がヒドロシリル化触媒(以降、成分(F)とする)を含有するかについて優先傾向はないことを発見した。したがって、成分(E)がシリコーンゴム組成物中に存在する場合、フルオロシリコーンゴムは成分(F)を含有し、逆もまた同様である。
【0050】
少なくとも2つのケイ素結合水素基を含有する任意の好適なシロキサンは、フルオロシリコーンゴム組成物又は高稠度のゴム組成物のいずれかにおいて成分(E)として使用されてもよい。成分(E)中のケイ素原子に結合した水素原子の量は0.2重量%以上であり、好ましくは、0.4重量%以上である。成分(E)のケイ素結合水素原子の量が0.2重量%未満である場合、基材への接着が低下するであろう。
【0051】
成分(E)において、ケイ素結合水素原子以外の基は、置換又は非置換の、C〜Cのアルキル基などの一価炭化水素基フェニルなどのアリール基、及び3,3,3−トリフルオロプロピル及び/又は1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキシル基などのペルフルオロ基などによって表される。通常、成分(E)は、直鎖又は環状分子構造を有するが、部分的に分岐するか三次元であってもよい。成分(E)の重合度は5より大きく、好ましくは、10〜150の範囲内の重合度を有することが推奨される。
【0052】
以下は、成分(E)の例である。成分(E)は、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、メチルハイドロジェンシロキシ単位とジメチルシロキシ単位との共重合体、及びメチルハイドロジェンシロキシ単位とジメチルシロキシ単位とペルフルオロアルキル(例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル及び/又は1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキシル基)メチルシロキシ単位との共重合体を含む。成分(E)の分子鎖の末端基は、トリメチルシロキシ基又はジメチルハイドロジェンシロキシ基によって表される。成分(E)の量は、シリコーンゴムポリマー100重量部あたり0.01〜10重量部の範囲内であることが推奨される。成分(E)は、アルケニル系の又はアセチレンの不飽和を含まなくすべきである。
【0053】
好ましくは、成分(E)は、高稠度のシリコーンゴム組成物中に存在する場合、いかなるフルオロ含有基も含まない。
【0054】
成分(E)がフルオロシリコーンゴム組成物中に存在する場合、成分(E)はペルフルオロアルキル基を含有してもよいが、含有しなくてもよい。しかしながら、フルオロシリコーンゴム組成物中の成分(E)中のペルフルオロアルキル基の存在は、かかる基の存在により、成分(E)をフルオロシリコーンゴム組成物とはるかに適合可能にするので、有利であり得る。
【0055】
1つ以上のフルオロアルキル基を任意に含有する成分(E)は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素ラジカルを含有するフルオロシリコーンポリマーを含んでもよい。
【0056】
好ましくは、成分(E)は、フルオロシリコーンポリマー中のシロキサン単位の総数に基づいて、少なくとも2モル%のフッ素化シロキサン単位と、非フッ素化シロキサン単位であるポリマー中の残部の任意のシロキサン単位とを含み、前記フッ素化シロキサン単位は、式(R’’Q)(R(H)SiO(3−x−e)/2を有し、前記非フッ素化シロキサン単位は、式(R(H)SiO(4−g−d)/2(式中、前記フッ素化及び非フッ素化シロキサン単位では、R’’及びQは上述の通りであり、Rは、脂肪族不飽和を含有しないケイ素に結合した一価炭化水素ラジカルを示し、そして、x=0〜2、e=0〜2、x+e=0〜2、g=0〜3、d=0〜3及びg+d=0〜3である)を有する。
【0057】
本発明のフルオロシリコーンゴム組成物において使用されるこのようなフルオロシリコーン系の成分(E)は、ケイ素結合水素ラジカル、フッ素化シロキサン単位、及び任意に非フッ素化シロキサン単位から本質的になるオルガノポリシロキサンである。
【0058】
フッ素化シロキサン単位による成分(E)において、それはケイ素原子に適切に結合したペルフルオロアルキルラジカルを含むシロキサンポリマー単位を意味する。フッ素化シロキサン単位は、式(R’’Q)(R(H)SiO(3−x−e)/2を有し、その一般的な例として、例えば、(R’’Q)(R’)SiO1/2、(R’’Q)(H)SiO1/2及び(R’’Q)(R)(H)SiO1/2などの式(R’’Q)(R(H)SiO1/2(式中、x+eの合計は2である)を有する鎖停止(chain−terminating)シロキサン単位と、式(R’’Q)(R)SiO2/2及び(R’’Q)(H)SiO2/2を有する鎖延長シロキサン単位、並びに式(R’’Q)SiO3/2を有する鎖分岐(chain−branching)シロキサン単位が挙げられる。あるいは、成分Cは、(R’’Q)(R(H)SiO(1−x−e)/2(式中、x及びeはいずれも0〜1であり、x+e=0〜1である)であってもよい。
【0059】
各フッ素化ラジカルR’’Qは、好ましくは、式R’’CHCH−を有し、成分(E)の場合、R’’ラジカルは、本発明の組成物で硬化された場合に所望の接着特性を提供するフルオロシリコーンポリマーを有するために、CFCFCFCF−ラジカルよりも小さくすることが必要である。したがって、本発明の硬化可能な組成物において使用されるフルオロシリコーンポリマーは、好ましくは、上述したフッ素化シロキサン単位を含有し、そのR’’Qラジカルは、構造CFCFCFCFQ−、最も好ましくは、CFCFCFCFCHCH−又は(CFCFCHCHCH−を有する。
【0060】
非フッ素化シロキサン単位は、存在する場合、式(R’’’)(H)SiO(4−g−d)/2を有し、その一般的な例としては、(R’’’)SiO1/2、(R’’’)(H)SiO1/2、(R’’’)(H)SiO1/2及び(H)SiO1/2などの式(R’’’)(H)SiO1/2(式中、g+dの合計は3である)を有する鎖停止シロキサン単位と、(R’’’)SiO2/2、(R’’’)(H)SiO2/2及び(H)SiO2/2などの上述の式(式中、c+dの合計は2である)を有する鎖延長シロキサン単位、並びに(R’’’)SiO3/2、(H)SiO3/2及びSiO4/2などの上述の式(式中、g+dの合計は1又は0である)を有する鎖分岐シロキサン単位が挙げられる。それぞれのR及びR’’’は同じ基であってよいことが理解されるであろう。
【0061】
先に述べたように、Rは、脂肪族不飽和を含まない、ケイ素に結合した一価炭化水素ラジカルを示す。好ましくは、各Rは、同じであるか異なってもよく、好ましくは1〜10の炭素原子を有する、ケイ素結合一価炭化水素ラジカルを示す。好適なRラジカルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル及びデシルなどのアルキルラジカル、並びにフェニル、トリル、ベンジル、β−フェニルエチル及びスチリルなどのアリールが挙げられる。フルオロシリコーンポリマーにおいて、好ましくは、Rラジカルの少なくとも90%、好ましくは全てがメチルラジカルである。
【0062】
成分(E)は(25℃で)数百万mPa・sまでの任意の粘度を有することができるが、ポリマーが、ゲル又は固形などの非流体でない必要があると考えられている。したがって、前記鎖分岐シロキサン単位は、存在する場合、少量でのみ存在するべきである。
【0063】
前記選択されたシロキサン単位の特定の例としては、MeSiO1/2、MeHSiO1/2、R’’QMeSiO1/2、R’’QMeHSiO1/2、MeSiO2/2、MeHSiO2/2、R’’QMeSiO2/2及びR’’QHSiO2/2(式中、R’’は、例えば、ペルフルオロブチルである)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
フルオロ基を含有する場合の好ましい成分(E)の一般的な例としては、以下の式が挙げられるが、これらに限定されない。
HMeSiO(MeHSiO)[R’’QSi(Me)O]SiMe
HMeSiO(MeHSiO)(R’’QHSiO)SiMe
R’’QMeHSiO(MeHSiO)(R’’QHSiO)SiMeHRQ
MeSiO(MeSiO)0.95m(MeHSiO)0.05m(R’’QMeSiO)SiMe
HMeSiO(MeSiO)(R’’QMeSiO)SiMe
HMeR’’QSiO(R’’QMeSiO)SiMeR’’QH
MeR’’QSiO(R’’QMeSiO)0.95f(R’’QHiSiO)0.05f及び
MeSiO(MeSiO)(R’’QMeSiO)0.90f(R’’QHSiO)0.10fSiMe
(式中、ポリマーの粘度は自由に流動する液体から緩やかに流動するガムまでの範囲にわたり、m及びfは0〜10,000以上の値を有する。)を含む。
【0065】
好ましくは、任意のフルオロ含有成分(E)は、以下の式によって表されるようにケイ素結合水素ラジカルを有する線状構造を有する。
MeSiO(MeSiO)[R’’CHCHSi(Me)O](MeHSiO)SiMe
式中、rの値はゼロ以上であり、t及びzの値はそれぞれゼロより大きく、かつ、フルオロシリコーンポリマーが1〜95モル%の水素結合シロキサン単位と、少なくとも5モル%のフッ素化シロキサン単位及び残部のジメチルシロキサン単位を含有し、かつ、25℃で10〜10000mPa・sの粘度を有するような値である。
【0066】
シロキサン単位についての上述の式において、x、e、g及びdの値は整数を示し、その値は記載した通りである。
【0067】
直鎖フルオロシリコーンポリマーについてのm、f、r、t及びzの値は、当該技術分野において公知の通り平均値を示し、ポリマーが必要量のフッ素化シロキサン単位を含有し、かつ25℃で所望の粘度を有するような値である。したがって、m、f、m+f、r、t、z及びr+t+zの値は、フッ素化シロキサン単位の含有量、フッ素化ラジカルの構造及びポリマーの粘度に応じて大きく変化するであろう。ポリマー中のフッ素化シロキサン単位のモルパーセント及び/又はポリマー中のフッ素化ラジカルの大きさが増加するにつれて、ポリマーの粘度も増加する。
【0068】
r、t及びzの値は1と小さくすることができる一方、r及びtの値は、10,000以上に及ぶことができ、zの値は1/100〜2/10のようなr+t+zの合計の分数に典型的に限定される。
【0069】
最も好ましくは、フルオロ含有成分(E)は、トリメチルシロキシ末端メチルペルフルオロアルキルメチルハイドロジェンシロキサンである。最も好ましくは、ペルフルオロアルキル基は、ペルフルオロブチルエチル基などである。
【0070】
成分(E)の量は、成分(A)100重量部あたり0.01〜10重量部の範囲内であることが推奨される。成分(E)が0.01重量部未満で存在する場合、硬化及び接着特性を改良することは不可能である。
【0071】
したがって、成分(E)を含む場合のフルオロシリコーンゴム組成物は、
(A)100,000を超える重量平均分子量を有し、かつ式(R’’Q)(R’) SiO(4−a−b)/2を有するフッ素化シロキサン単位、及び式(R’)SiO(4−c)/2を有する非フッ素化シロキサン単位(式中、前記フッ素化及び非フッ素化シロキサン単位において、R’’は、1〜8個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖ペルフルオロアルキルラジカルを示し、Qは、少なくとも2個の炭素原子を介してR’’ラジカルをケイ素原子に連結させる二価炭化水素、炭化水素エーテル又は炭化水素チオエーテルラジカルを示し、R’は、飽和又は不飽和のケイ素結合一価炭化水素基を示し、a=1〜2,b=0〜2,c=0〜3である。)をポリマー中に含むポリオルガノシロキサン100重量部と、
(B)好適な充填剤5〜200重量部と、
(E)1分子あたり平均少なくとも2個のケイ素結合水素ラジカル含有するフルオロシリコーンポリマーと、
(C)有機過酸化物0.1〜10重量部と、
(D)100,000を超える重量平均分子量及び平均単位式RSiO(4−y)/2(式中、Rは、不飽和であってよいが、フルオロ置換基を含有しない置換又は非置換一価炭化水素基であり、yは、1.96〜2.03の数である)を有する第2のポリオルガノシロキサン0〜20重量部と、を含む。
【0072】
成分(E)を含有しない本発明に従う組成物への成分(F)の添加は、本発明のフルオロシリコーンポリマー及び高稠度のゴム組成物への接着を改良することを、出願人は発見した。ヒドロシリル化触媒の添加により、成分(E)との反応を引き起こし、その結果、2つの硬化生成物の互いに対する接着を顕著に増加させると考えられる。
【0073】
ケイ素結合水素基を含有するポリマーがフルオロシリコーンゴム組成物中に存在することが好ましいが、これは必須ではなく、ヒドロシリル化触媒はフルオロシリコーンゴム組成物の一部を形成してもよく、ケイ素結合水素原子を含む好適なシロキサン化合物は、高稠度のシリコーンゴム組成物中で提供されてもよい。
【0074】
任意の好適なヒドロシリル化触媒を利用してもよい。好ましくは、ヒドロシリル化触媒は、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム、又はルテニウム触媒から選択される白金族金属系触媒である。本組成物の硬化を触媒するのに有用な白金族金属含有触媒としては、ケイ素結合水素原子とケイ素結合アルケニル基との反応を触媒することが知られている任意のものであり得る。ヒドロシリル化によって本組成物の硬化を行う触媒として使用するための好ましい白金族金属は白金である。本組成物を硬化するためのいくつかの好ましい白金系ヒドロシリル化触媒は、白金金属、白金化合物、及び白金錯体である。代表的な白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及びかかる化合物の低分子量ビニル含有オルガノシロキサンを含有する錯体が挙げられる。本発明において使用に好適なその他のヒドロシリル化触媒としては、例えば、[Rh(OCCH、Rh(OCCH、Rh(C15、Rh(C、Rh(C)(CO)、Rh(CO)[PhP](C)、RhX[(RS]、(RP)Rh(CO)X、(RP)Rh(CO)H、Rh、HRholefinCl、Rh(O(CO)R3−n(OH)などのロジウム触媒が挙げられる。式中、Xは、水素、塩素、臭素又はヨウ素であり、Yは、メチル又はエチルなどのアルキル基、CO、C14又は0.5 C12であり、Rは、アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル又はアリールラジカルであり、Rは、アルキルラジカル、アリールラジカル又は酸素置換ラジカルであり、aは0又は1であり、bは1又は2であり、cは1〜4を含めた整数であり、そして、dは2、3又は4であり、nは0又は1である。Ir(OOCCH、Ir(C3、[Ir(Z)(En)、又は(Ir(Z)(Dien)](式中、Zは、塩素、臭素、ヨウ素、又はアルコキシであり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである)などの任意の好適なイリジウム触媒も使用してもよい。
【0075】
成分(F)は、組成物の100万部あたり白金族金属元素のわずか0.001重量部に相当する量で、本発明の組成物に添加されてもよい。好ましくは、組成物中の白金族金属の濃度は、少なくとも1ピー・ピー・エムの白金族金属元素に相当する濃度とすることができる。約3〜50ピー・ピー・エムの白金族金属元素と同等の濃度を提供する触媒濃度は、概して好ましい量である。
【0076】
工程(iii)において利用される混合化合物は、工程(i)のフルオロシリコーンゴム組成物及び工程(ii)の高稠度のシリコーンゴム組成物を含む。混合組成物は、例えば、2本ロールニーダー混合機などの従来の混合機においてゴム組成物の両方を均一に混合するような、任意の好適な方法によって調製されてもよい。混合組成物におけるフルオロシリコーンゴム組成物及び高稠度のシリコーンゴム組成物の比率は、40:60〜60:40の範囲内とするべきである。混合の比率が40:60〜60:40の範囲外の場合、基材への接着は低下する。
【0077】
かかる混合化合物が、硬化されたフルオロシリコーンゴム基材及び硬化されたシロキサンゴム基材の両方に対して非常に改良された接着をもたらすことを出願人は発見した。
【0078】
本願は、上述の2つの層の間の接着を必要とする任意の目的、及び改良された耐油性が必要とされる場面で使用されるフルオロシリコーンゴム組成物において役に立つ。これらの潜在用途の両方に関連する1つの用途は、ターボチャージャホースなどの自動車用部品の製造である。
【0079】
典型的なターボチャージャホースは図1に示される。図1において、内部フルオロシリコーンライナー(2)、混合層(3)、高稠度のシリコーンゴム内層(4)、アラミドなどの好適な補強布地から典型的に製造される補強層(5)、及び高稠度のシリコーンゴム外層(6)を有するターボチャージャホース(1)が提供されている。
【0080】
以降、実施例を用いて本発明を説明する。
【実施例】
【0081】
以下の実施例において利用されるフルオロシリコーンゴム組成物は、以下のものを含む(全ての値は、重量部として与えられる)。
【0082】
[FSR組成物1]
67重量部の、GPC(1重量%のトルエン溶液、rI検出器、ポリスチレン標準)によって測定される重量平均分子量が610,000である、ヒドロキシ末端トリフルオロプロピルメチルシロキサンビニルメチルシロキサン共重合体(ビニル基含有量:0.13重量%)。
23重量部のヒュームドシリカ。
8重量部のヒドロキシ末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン。
0.3重量部のジメチルビニルシロキシ末端ジメチル、メチルビニルシロキサン。
1.8重量部の、25℃で35mm/sの粘度を有する、トリメチルシリル基末端メチル(ペルフルオロブチルエチル)シロキサンメチルハイドロジェンシロキサン共重合体(SiH含有量:0.5重量%)。
1重量%の、シリコーンオイル中の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン触媒45%のペーストの組成物。
【0083】
利用される高稠度のシリコーンゴム組成物は以下の組成物を有する。
[HCR1]
62重量部の、GPC(0.1重量%のテトラヒドロフラン溶液、基準指標検出器、及びポリスチレン標準がGPC分析のための較正曲線を構成するために利用された)によって測定された重量平均分子量が680,000であるジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量:0.02重量%)。
1重量部の、25℃で17000mPa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量:7.8重量%)。
31.4重量部のヒュームドシリカ。
5重量部の、21mPa・sまでの粘度を有するヒドロキシ−末端ジメチルシロキサン。
0.4重量部の、25℃で20mPa・sの粘度を有するヒドロキシ−末端ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量:10重量%)。
0.2重量部の、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体とジメチルビニルシロキシ基末端ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体との混合物(白金金属含有量:0.5重量%)。
1重量%の、シリコーンオイル中の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン触媒45%のペーストの組成物。
【0084】
別段の指定がない限り、白金触媒は、組成物の0.5重量%の、白金の1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体含む。
【0085】
[試料調製]
反対の記載がない限り、以下の実施例に記述される接着性試験に使用された全ての試料は、以下の方法で作製された。
【0086】
150×150×1mmの寸法を有するフルオロシリコーンゴムの未硬化スラブ、高稠度のゴム、及びフルオロシリコーンゴムと高稠度のゴムとの混合物が押し出された。これらは、その後、硬化後に分離できるようにするために、一端で層間にPETシートを挿入しながら一緒に結合させた。そして、結合されたシートは、170℃で10分間、熱風炉において2mmの深さのモールド内で硬化され、200℃で4時間、後硬化された。好適な切削工具を使用して25mmの一片に切断され、得られた試験試料は、2つの層の間の接着性のレベルについて分析された。
【0087】
[接着性試験]
実施例1〜4において調製された試料に対して、50mm・min−1のクロスヘッド速度でインストロン張力計を使用して180°剥離試験が行われた。
【0088】
(実施例1)
この実施例において、未硬化及び予備成形フルオロシリコーンゴム(FSR)及び高稠度のゴム(HCR)試料を、各化合物の試料が、本発明の一実施形態に従って、互いに硬化及び接着されるように、上述の試料調製方法を使用する硬化の前にHCR及びFSRの混合物と結合させた。HCR及びFSRの混合物は、表1に記載の比率で、2本ロールミルで均一に調製された。
【0089】
【表1】
【0090】
表1において、60:40〜40:60の混合比率でのHCR及びFSRの混合試料の接着性は、HCR層及びFSR層の両方について、顕著に改良された剥離試験結果をもたらすことが分かるであろう。
【0091】
50:50の混合重量比でのHCR、FSR及びこれらの混合物の物理的特性が表2に示される。行われた全ての物理試験は、以下に示す同じ方法を使用した。
【0092】
【表2】
【符号の説明】
【0093】
1 ターボチャージャホース
2 内部フルオロシリコーンライナー
3 混合層
4 シリコーンゴム内層
5 補強層
6 シリコーンゴム外層
図1