(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069356
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】線維症又は線維症関連疾患の治療に使用するための、抗血管新生性のインテグリンα5β1阻害剤であるキノリン化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4706 20060101AFI20170123BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20170123BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20170123BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20170123BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20170123BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20170123BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20170123BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20170123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20170123BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20170123BHJP
C07D 215/54 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
A61K31/4706
A61P11/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P17/00
A61P21/00
A61P19/04
A61P19/08
A61P9/00
A61P1/04
A61P15/00
A61P25/00
A61P15/08
A61P27/02
A61P35/00
A61K45/00
!C07D215/54
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-551221(P2014-551221)
(86)(22)【出願日】2013年1月4日
(65)【公表番号】特表2015-503580(P2015-503580A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】SE2013050003
(87)【国際公開番号】WO2013103317
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】61/583,353
(32)【優先日】2012年1月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510133894
【氏名又は名称】クラノテク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】カオ,イハイ
【審査官】
三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−503151(JP,A)
【文献】
特表2007−530491(JP,A)
【文献】
特表2007−524605(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/119771(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/133669(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/133672(WO,A1)
【文献】
特表2010−511712(JP,A)
【文献】
特表2006−527228(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/007747(WO,A1)
【文献】
Wagrowska-Danilewicz Malgorzata 他,Expression of alpha5beta1 and alpha6beta1 integrins in IgA nephropathy (IgAN) with mild and severe proteinuria. An immunohistochemical study.,International urology and nephrology,2004年,36(1),81-87
【文献】
Zhou, Xiaohong 他,Expression of fibronectin receptor, integrin α5β1 of hepatic stellate cells in rat liver fibrosis,Chinese Medical Journal (Beijing, English Edition) ,2000年,113(3),272-276
【文献】
Ou, Xue-Mei 他,VEGFR-2 antagonist SU5416 attenuates bleomycin-induced pulmonary fibrosis in mice,International Immunopharmacology,2009年,9(1),70-79
【文献】
Malmstroem, Niina K. 他,Vascular endothelial growth factor in chronic rat allograft nephropathy,Transplant Immunology,2008年,19(2),136-144
【文献】
Yoshiji, H. 他,Vascular endothelial growth factor and receptor interaction is a prerequisite for murine hepatic fibrogenesis,Gut,2003年,52(9),1347-1354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D215/00−215/60
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維症又は線維症関連疾患を治療するための医薬組成物であって、
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸、又はその医薬的に許容される塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸塩酸塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
線維症又は線維症関連疾患が、肺、肝臓、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、胃、大腸、小腸、結腸、子宮、神経系、精巣、副腎、動脈、静脈、胆管、又は眼に影響を及ぼす線維性疾患である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
線維性疾患が肝線維症である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
線維性疾患が腎線維症である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
線維性疾患が肺線維症である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
線維性疾患が皮膚線維症である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
線維性疾患が胃及び腸の線維症である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項9】
線維性疾患が眼線維症である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項10】
線維性疾患がリンパ脈管筋腫症(LAM)である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項11】
線維性疾患が外科的介入に関連している、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項12】
外科的介入が、濾過手術(線維柱帯切除術)、レーザー線維柱帯形成術、末期緑内障へのレーザー毛様体光凝固術(毛様体切除術)、急性閉塞隅角緑内障への手術、ドレナージインプラント(チューブシャント)、深層強膜切除術、エクスプレスミニシャント、トラベクトーム手術、虹彩切開術及び虹彩切除術、管形成術及び粘弾性管切開術、並びに隅角切開術より選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
(i)4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸、又はその医薬的に許容される塩;及び
(ii)免疫系を抑制する薬物、又は線維化に先行するプロセスを標的にした他の有益な効果を有する薬物、
を含む、同時的、分離的、又は連続的な投与のための、線維症又は線維症関連疾患を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規医薬療法へ向けられるものであり、より詳細には、線維症又は線維症関連疾患の治療に使用するためのある種のキノリン化合物へ向けられる。
【背景技術】
【0002】
組織線維化(瘢痕化)は、罹病及び死亡の主因である。特発性肺線維症、肝線維症、及び全身性硬化症のような線維性障害への現行の治療法は、炎症カスケードを標的とするが、それらは、主に、線維発生に関与する機序が炎症に関与するものと異なることが今や知られているが故に、著しく不首尾なままである(非特許文献1)。
【0003】
損傷組織の修復は、死細胞又は損傷細胞を炎症応答の間に秩序だって交換することを可能にする基本的な生体プロセスであり、生存に必須の機序である。組織損傷は、感染症、自己免疫反応、及び機械的損傷を含めた、重篤な急性又は慢性の刺激より生じる可能性がある。この修復プロセスには、2つの異なる段階:損傷細胞が同種の細胞に交換されて、永続的な損傷の証拠がなくなる再生相と、正常な実質組織に結合組織が入れ替わる、線維増殖又は線維化として知られている相が関与する。ほとんどの場合、いずれの段階でも、有害な作用体によって引き起こされた傷害を遅延させるか又は逆転させることが必要になる。しかしながら、当初は有益であっても、この創傷プロセスは、それが監視されないままであれば病原性になり得て、過度の組織再構築と永久的な瘢痕組織の形成をもたらす可能性がある。ある場合には、それが最終的には臓器不全と死を引き起こすこともある。線維性瘢痕化は、しばしば、食い違った創傷治癒反応として定義される(非特許文献1)。
【0004】
線維増殖性疾患は、全世界で罹病及び死亡の重要な原因である。線維性の変化は、心疾患、脳疾患、及び末梢血管系疾患を含めた様々な血管系障害において、並びに、皮膚、腎臓、肺、眼、膀胱、心臓、関節、腸組織、結合組織、生殖組織、骨組織、及び肝臓を含めた主要な組織及び臓器において起こり得る。線維症は、罹患個体数が増加している厄介な問題であって、特発性肺線維症、進行性腎疾患、及び肝硬変のような多くの持続性の炎症性疾患で一般的な病的後遺症なのである(非特許文献1)。
【0005】
米国政府の推定では、米国における死亡数の45%が線維性障害に起因する可能性がある。線維症は、ほとんどすべての組織及び器官系に影響を及ぼす。肺の炎症及び線維化を特徴とする間質性肺疾患(ILD)は、線維化が罹病及び死亡の主因となる障害の例である。ILDは、サルコイドーシス、珪肺症、膠原血管病、全身性強皮症のようないくつかの原因を有することが知られている。しかしながら、特発性肺線維症のような一般的なILDのタイプの原因は不明である。他の臓器線維性障害には、肝硬変;慢性B型及びC型肝炎感染症より生じる肝線維症;腎疾患;心疾患;黄斑変性と網膜及び硝子体の網膜症のような眼疾患;全身性及び局所性の強皮症;ケロイドと肥厚性瘢痕;アテローム性動脈硬化症と再狭窄;術後合併症;化学療法剤誘発線維症;不慮の損傷;及び熱傷が含まれる(非特許文献1)。
【0006】
創傷治癒と、線維化をもたらす脱調節事象には、いずれもある特定の細胞種(組織依存的)の増殖及び分化、主に線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化と細胞外マトリックスの沈着を伴う。線維芽細胞が局所に由来するのかどうか、又はそれらが循環する前駆体集団に由来しているのかどうかは不明である。線維細胞は、末梢血の単球に由来して組織損傷の部位へ入って血管新生及び創傷治癒を促進する、線維芽細胞様細胞の別個の集団である。
【0007】
低酸素状態や炎症性傷害への眼の応答は、典型的には、網膜又は脈絡膜の新血管生成をもたらす。発生の間、このプロセスは、高度に調節され、十分に組織化された、成熟した脈管構造の確立をもたらす。成人の眼では、これがそうならない場合が多く、関連した神経膠細胞(例えば星状細胞及びミュラー細胞)、小膠細胞、RPE細胞が、内皮細胞と共に増殖して線維化と瘢痕形成をもたらす。増殖する血管系細胞とそれらの環境の間の関係を調節することにおける、インテグリンのような細胞接着分子の役割については、多くの研究の焦点となってきた(非特許文献2)。
【0008】
線維芽細胞分化の間にα5β1インテグリンと細胞外マトリックスの相互作用が関与することを示唆する十分な証拠がある。活性化された線維芽細胞では高発現のα5β1インテグリンが見出され、線維芽細胞が線維化状態へ移行するときにはα5β1インテグリンの強い蓄積がある(非特許文献3)。増殖性の胎児RPE細胞、活性化されたARPE−19細胞(網膜色素細胞)、及び増殖性硝子体網膜症患者のPVR膜では、高レベルのα5β1インテグリンが検出された(非特許文献4、非特許文献5)。インテグリンα5β1は、肺線維芽細胞(PFb)の活性化、増殖、及び分化を誘導するのに重要な役割を担い、肺の線維形成の間の細胞外マトリックス合成の増加を引き起こす。増殖した間質細胞では、線維芽細胞及び筋線維芽細胞の分化とともに、強いインテグリンα5β1の発現が見られる。FNにおける変化は、α5β1インテグリンのそれと同様であった。PFbでは、TGF−β1投与の後で、α5β1、フィブロネクチン(FN)mRNA、及びそれらの関連タンパク質の発現が増加する(非特許文献6)。T細胞と気管支線維芽細胞の相互作用は、線維形成促進性サイトカインであるIL−6の産生を増加させる。喘息状態では、この相互作用にCD40L/α5β1インテグリンが関与する。喘息では、T細胞と構造細胞のクロストークにより局所の粘膜炎症が維持される可能性がある(非特許文献7)。さらに、手掌線維腫症では、筋線維芽細胞リッチな細胞領域においてα5β1インテグリンが発現され、そこに限定されている(非特許文献8)。肝線維症では、肝星細胞(HSC)が不可欠な役割を担っている。HSC活性化は、フィブロネクチンα5β1インテグリン受容体の発現を高め、α5β1インテグリンとフィブロネクチンの間の相互作用は、コラーゲン合成を増加させる。結合組織増殖因子(CCN2)の産生は、肝線維症の特徴であって、肝星細胞(HSC)の一次培養物においてインテグリン発現を調節し、細胞表面α5β1インテグリンとの結合を介してHSC接着を支援する(非特許文献9、非特許文献10)。軽度及び重度タンパク尿症の患者の腎生検において、α5β1インテグリンの間質発現と間質皮質容積比の間に正の関連があることは、慢性進行性腎疾患の発病においてα5β1インテグリンが何らかの役割を担う可能性があることを示唆する。間質性α5β1インテグリン免疫発現の強度は、間質性線維症の度合いと正に相関する(非特許文献11)。
【0009】
AMDでは、抗VEGF治療の後に網膜の線維性牽引が見られ、AMDとPDRの両方において、新血管生成から線維化病変が生じる。AMDの線維化病変は、抗VEGFで治療可能ではなく、AMD患者で抗VEGFに対する非応答者は、線維化病変のある患者である。
【0010】
現在、線維性障害には、コルチコステロイドのような免疫抑制薬や他の抗炎症治療薬を含めた治療法が利用可能である。しかしながら、線維化の調節に関与する機序は、炎症のそれとは異なっているらしく、線維化を抑制及び予防するのに、抗炎症治療は必ずしも有効ではない。
【0011】
PDR患者が現行の抗血管新生療法(抗VEGF)で治療可能でないこと、そして抗VEGFに対して非応答者であるAMD患者が線維化病変を有する患者であるということは、特に線維化を抑制及び予防して線維性疾患を制御するのに、重大な未充足医療ニーズが依然として残っていることを示している。
【0012】
特許文献1〜特許文献3は、抗血管新生性のインテグリンα5β1阻害剤である特定のキノリン化合物と、療法におけるそれらの使用を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2009/063070
【特許文献2】WO2010/133669
【特許文献3】WO2010/133672
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Wynn, T. 2004: Nat. Rev. Immunol. 4(8): pp. 583-594
【非特許文献2】Martin Friedlander, Journal of Clinical Investigation, http://www.jci.org Volume 117 Number 3 March 2007
【非特許文献3】Thannickal 2003, J. Biol. Chem. 278, 12384
【非特許文献4】G Zahn et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2010 1028-35
【非特許文献5】Rong Li et al. Inv Ophth Vis Sci 2009, 50(12) 5988-5996
【非特許文献6】Wu H, et al. Zhonghua Bing Li Xue Za Zhi. 1999 Dec; 28(6): 427-31 中国語の論文
【非特許文献7】Loubaki L, et al. Mol Immunol. 2010 Jul; 47(11-12): 2112-8
【非特許文献8】Magro G. et al. Gen Diagn Pathol. 1997 Dec; 143(4): 203-8
【非特許文献9】Milliano MT et al. J Hepatol. 2003 ;39(1): 32-7
【非特許文献10】Huang G et al. J Cell Mol Med. 2011; 15(5): 1087-95
【非特許文献11】Wagrowska-Danilewicz M et al. Int Urol Nephrol. 2004; 36(1): 81-7
【非特許文献12】Fini, M. E. 1999. Prog. Retin. Eye Res. 18: 529-551
【非特許文献13】Hwang JC et al. Ophthalmic Surg Lasers Imaging. 2011 Jan-Feb; 42(1):6-11
【非特許文献14】Mariani A et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2011 Nov; 249(11)
【非特許文献15】Muriel MA et al. Arch Soc Esp Oftalmol. 2011 Aug; 86(8): 254-9
【非特許文献16】Rosenfeld PJ et al. Ophthalmology. 2011 Mar; 118(3): 523-30
【非特許文献17】Ramasubramanian A et al. Br J Ophthalmol. Br J Ophthalmol bjophthalmol-2011-300141 Published Online First: 7 June 2011
【非特許文献18】Robinson, 2002, Exp. Eye Res, 74, 309; Geroski, 2000, 41, 961
【非特許文献19】Bourlais, 1998, Prog. Retin Eye Res. 17, 33
【非特許文献20】Cuzzocrea S, et al. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. (2007) 292: L1095-104
【発明の概要】
【0015】
本発明の1つの側面は、線維症又は線維症関連疾患の治療に使用するための、式I:
【0017】
[式中:
nは、0、1、又は2であり;
R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素;飽和又は不飽和、分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−10アルキル又はC
3−12シクロアルキル;及び置換又は非置換のフェニル又はベンジルより選択され;
R
3は、水素;あるいは飽和又は不飽和、分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−10アルキル又はC
3−12シクロアルキルであり;
R
4は、置換又は非置換のC
6−C
10アリール又はC
5−C
9ヘテロアリール(ここで、ヘテロ原子は、独立して、N、O、及びSより選択される);あるいは置換又は非置換の単環式若しくは二環式C
3−12シクロアルキル又はC
5−C
9ヘテロシクリル(ここで、ヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)である]の化合物、又はその医薬的に許容される塩である。
【0018】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための、式Iの化合物であり、ここで、R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素;C
1−4アルキル;及びC
3−4シクロアルキルより選択される。
【0019】
本発明の更なる側面は、線維症の治療に使用するための式Iの化合物であり、ここで、R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素及びC
1−4アルキルより選択される。
【0020】
本発明の更なる側面は、線維症の治療に使用するための式Iの化合物であり、ここで、R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素及びメチルより選択される。
【0021】
本発明の更なる側面は、線維症の治療に使用するための式Iの化合物であり、ここで、R
1は水素である。
【0022】
本発明の更なる側面は、線維症の治療に使用するための式Iの化合物であり、ここで、R
3は水素又はC
1−4アルキルである。
【0023】
本発明の更なる側面は、線維症の治療に使用するための式Iの化合物であり、ここで、R
4は置換又は未置換フェニルである。
【0024】
本発明の更なる側面は、線維症の治療に使用するための式Iの化合物であり、ここで、nは0又は1である。
【0025】
本発明の更なる側面は、線維症の治療に使用するための式Iの化合物であり、ここで、nは0である。
【0026】
本発明の1つの側面は、線維症又は線維症関連疾患の治療に使用するための、式II:
【0028】
[式中、
nは、0又は1であり;
mは、0、1、又は2であり;
R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
8アルキル、C
2−C
8アルケニル、又はC
2−C
8アルキニル;単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
3−C
8カルボシクリル;及び単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
3−C
7ヘテロシクリルより選択され(ここで、それぞれのヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択され;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル又はヘテロシクリルは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよい);
R
3は、単環式若しくは二環式C
6−C
10アリール;及び単環式若しくは二環式C
3−C
9ヘテロアリール又はヘテロシクリルより選択され(ここで、前記ヘテロアリール及びヘテロシクリルにおいて、それぞれのヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択され;前記アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルは、1、2、3、4、又は5個のR
b基で置換されていてもよい);
R
4は、−OC(O)R
7;−C(O)OR
7;−NR
7R
8;−C(O)NR
7R
8;単環式若しくは二環式C
3−C
9ヘテロアリール;及び単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
5−C
9ヘテロシクリルより選択され(ここで、前記ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、環中にオキソ基を含有していてもよく、そして、前記ヘテロアリール及びヘテロシクリルにおいて、それぞれのヘテロ原子は、独立して、N、O、及びSより選択され;前記ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよい);
R
5とR
6は、それぞれ独立して、水素;及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルより選択され(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは、フッ素及び塩素より独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);
R
7は、水素;及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル;及びフェニルより選択され(前記アルキル、アルケニル、アルキニル及びフェニルは、フッ素及び塩素より独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);
R
8は、水素;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル;単環式若しくは二環式C
6−C
10アリール;−S(O)
2R
9;−C(O)OR
9;及び−C(O)R
10より選択され(前記アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールは、1、2、又は3個のハロゲンで置換されていてもよい);
R
9は、水素;及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルより選択され(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは、フッ素及び塩素より独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);
R
10は、水素;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル;及びC
6アリールより選択され(前記アリールは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよく;そして前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、フッ素及び塩素より独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);
Yは、−C(O)−;−S(O)−;及び−S(O)
2−より選択され;
Xは、−NR
c−;−O−;及び−S−より選択され;
それぞれのR
aは、ハロゲン;ヒドロキシ;カルボニル;メトキシ;ハロメトキシ;ジハロメトキシ;及びトリハロメトキシより独立して選択され;
それぞれのR
bは、ハロゲン;カルボキシ;ヒドロキシ;シアノ;C
1−C
4アルキル;C
2−C
4アルケニル;C
2−C
4アルキニル;C
1−C
4アルキルオキシ;C
2−C
4アルケニルオキシ;C
2−C
4アルキニルオキシ;C
1−C
4アルキルチオ;C
2−C
4アルケニルチオ;C
2−C
4アルキニルチオ;C
1−C
4アルキル;C
2−C
4アルケニル又はC
2−C
4アルキニル二級若しくは三級アミノ;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル又はC
2−C
4アルキニル二級若しくは三級アミド;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルカルボニル;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルスルホニル;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルスルホニルオキシ;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル二級若しくは三級スルホンアミド;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルシリル;及び、C
1−C
4アルキルオキシ、C
2−C
4アルケニルオキシ、又はC
2−C
4アルキニルオキシカルボニルより独立して選択され(ここで、どのアルキル、アルケニル、及びアルキニル部分も、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、ハロメトキシ、ジハロメトキシ、及びトリハロメトキシより独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);そして
R
cは、水素;及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルより選択され;
ここで、p≧4の炭素原子を有するどのC
pアルキル、アルキニル、又はアルケニル基も、q個の炭素原子のC
q炭素環式部分を含んでいてもよい(それにより、3≦q<p)]の化合物、又はその医薬的に許容される塩である。
【0029】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素、C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、及びC
2−C
4アルキニルより選択される(前記アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、又はヘテロシクリルは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよく;R
aはハロゲンである)。
【0030】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、R
1は水素を表し、R
2はC
1−C
4アルキルを表す。
【0031】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、Yは−C(O)である。
【0032】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、nは0である。
【0033】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、R
3は、1、2、3、4、又は5個のR
b基で置換されていてもよいフェニルである。
【0034】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、R
3は1個のR
b基で置換されていてもよいフェニルである。
【0035】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、Xは−NR
c−である。
【0036】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、R
cは水素である。
【0037】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、R
4は、−OC(O)R
7;−C(O)OR
7;−NR
7R
8;及び−C(O)NR
7R
8より選択される。
【0038】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、R
7は、C
1−C
4アルキル及びフェニルより選択され;R
8は、C
1−C
4アルキル、−S(O)
2R
9、−C(O)OR
9、及び−C(O)R
10より選択され;R
9はC
1−C
4アルキルを表し;そしてR
10はフェニルを表す。
【0039】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、R
4は、単環式若しくは二環式C
5−C
9ヘテロアリール、又は単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
3−C
9ヘテロシクリルである(ここで、それぞれのヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)。
【0040】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、R
4は、単環式C
1−C
4ヘテロアリール;あるいは単環式で飽和又は不飽和のC
1−C
4ヘテロシクリルである(ここで、それぞれのヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)。
【0041】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、R
4は単環式C
1−C
4ヘテロアリールである(ここで、それぞれのヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)。
【0042】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、それぞれのR
bは、C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルより独立して選択される(前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、1、2、又は3個のハロゲンで置換されていてもよい)。
【0043】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、それぞれのR
bは、C
1−C
4アルキルオキシ、C
2−C
4アルケニルオキシ、及びC
2−C
4アルキニルオキシより独立して選択される(前記アルキルオキシ、アルケニルオキシ、及びアルキニルオキシは、1、2、又は3個のハロゲンで置換されていてもよい)。
【0044】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、それぞれのR
bは、クロロ、フルオロ、又はトリフルオロメチルより選択される。
【0045】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIの化合物であり、ここで、それぞれのR
bはハロゲンである。
【0046】
本発明の1つの側面は、線維症又は線維症関連疾患の治療に使用するための、式III:
【0048】
[式中:
nは、0又は1であり;
R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
8アルキル、C
2−C
8アルケニル、又はC
2−C
8アルキニル;単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
3−C
8カルボシクリル;及び単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
3−C
7ヘテロシクリルより選択され(ここで、へテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択され;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、又はヘテロシクリルは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよい);
R
3は、単環式若しくは二環式C
6−C
10アリール;及び単環式若しくは二環式C
5−C
9ヘテロアリールより選択され(ここで、へテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択され;前記アリール又はヘテロアリールは、1、2、3、4、又は5個のR
b基で置換されていてもよい);
Yは、−C(O)−;−S(O)−;及び−S(O)
2−より選択され;
Xは、−NR
c−;−O−;及び−S−より選択され;
それぞれのR
aは、ハロゲン;ヒドロキシ;カルボニル;メトキシ;ハロメトキシ;ジハロメトキシ;及びトリハロメトキシより独立して選択され;
それぞれのR
bは、ハロゲン;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキルオキシ、C
2−C
4アルケニルオキシ、又はC
2−C
4アルキニルオキシ;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキルチオ、C
2−C
4アルケニルチオ、又はC
2−C
4アルキニルチオより独立して選択され(前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキルチオ、アルケニルチオ、又はアルキニルチオ基は、1、2、又は3個のハロゲンで置換されていてもよい);
R
cは、水素、及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルより選択される]の化合物、又はその医薬的に許容される塩である。
【0049】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物であり、ここで、nは0である。
【0050】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物であり、ここで、R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素、並びに分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
8アルキル、C
2−C
8アルケニル、及びC
2−C
8アルキニルより選択される(前記アルキル、アルケニル、又はアルキニルは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよい)。
【0051】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物であり、ここで、R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
8アルキルより選択される(前記アルキルは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよい)。
【0052】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物であり、ここで、R
1は水素であり、R
2はC
1−C
4アルキルより選択される。
【0053】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物であり、ここで、R
3は、1、2、3、4、又は5個のR
b基で置換されていてもよいフェニルである。
【0054】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物である、ここで、Yは−C(O)である。
【0055】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物であり、ここで、Xは−NR
c−である。
【0056】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物であり、ここで、それぞれのR
aはハロゲンである。
【0057】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物であり、ここで、それぞれのR
bは、ハロゲン;及びC
1−C
4アルキル;及びC
1−C
4アルキルオキシより独立して選択される(ここで、どのアルキル又はアルキルオキシも、1、2、又は3個のハロゲンで置換されていてもよい)。
【0058】
本発明の1つの側面は、線維症の治療に使用するための式IIIの化合物であり、ここで、R
cは水素である。
【0059】
本発明に従って使用される式I、式II、又は式IIIの化合物は、医薬的に許容される塩として存在し得る。
【0060】
本明細書に記載の有用な式I、式II、又は式IIIの化合物の医薬的に許容される塩の例は、例えばアミノ官能基にて、酸付加塩を形成することができる。これらは、例えば、鉱酸(例えば硫酸、リン酸、又はハロゲン化水素酸)のような強い無機酸;未置換であるか又は(例えばハロゲンにより)置換されている1〜4個の炭素原子のアルカンカルボン酸(例えば酢酸)、飽和又は不飽和のジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、又はテレフタル酸)、ヒドロキシカルボン酸(例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸)、アミノ酸(例えばアスパラギン酸若しくはグルタミン酸、又はリジン若しくはアルギニン)、又は安息香酸のような強い有機カルボン酸;未置換であるか又は(例えばハロゲンにより)置換されている(C
1−C
4)アルキル又はアリールスルホン酸のような有機スルホン酸(例えばメチル−又はp−トルエン−スルホン酸)により形成され得る。所望により、追加的に存在する塩基性中心を有する対応の酸付加塩も形成され得る。
【0061】
少なくとも1つの酸性基(例えばCOOH)を有する式I、式II、又は式IIIの化合物は、塩基により塩を形成することもできる。塩基との好適な塩は、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のような金属塩(例えばナトリウム、カリウム、又はマグネシウム塩)、あるいはアンモニア又は有機アミン(モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ、ジ、又はトリ低級アルキルアミン、例えばエチル、tert−ブチル、ジエチル、ジイソプロピル、トリエチル、トリブチル、又はジメチルプロピル−アミン、あるいはモノ、ジ、又はトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばモノ、ジ、又はトリエタノールアミンなど)との塩である。さらに、対応する内部塩も形成され得る。医薬用途には不適切であるが、例えば、式Iの遊離化合物又はそれらの医薬的に許容される塩を単離又は精製するために利用することができる塩も含まれる。
【0062】
本発明に従って有用な式Iの化合物の例は、以下の化合物番号:I−1〜I−6より選択される化合物である。
【0064】
本発明に従って有用な式IIの化合物の例は、以下の化合物番号:II−1〜II−15より選択される化合物である。
【0068】
本発明に従って有用な式IIIの化合物の例は、以下の化合物番号:III−1〜III−9より選択される化合物である。
【0071】
しかしながら、注目すべきは、本明細書に定義されるような式IIIの範囲内に化合物I−2及びI−4も含まれる一方で、本明細書に定義されるような式Iの範囲内に化合物III−1〜III−9も含まれることである。
【0072】
本発明に従って有用な式Iの化合物は、特許文献1に記載のように製造することができる。
【0073】
本発明に従って有用な式IIの化合物は、特許文献2に記載のように製造することができる。
【0074】
本発明に従って有用な式IIIの化合物は、特許文献3に記載のように製造することができる。
【0075】
本発明の1つの側面は、肺、肝臓、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、胃、大腸、小腸、結腸、子宮、神経系、精巣、副腎、動脈、静脈、胆管、又は眼に影響を及ぼす線維性疾患のような線維性疾患の治療に使用するための上記の式I、式II、又は式IIIによる化合物である。
【0076】
本明細書に開示の式I、式II、又は式IIIの化合物が有用であり得る線維性疾患の例は、以下の通りである。
【0077】
肝臓の線維症:肝線維症;肝硬変;肝移植後の再灌流損傷;壊死性肝炎。
【0078】
腎線維症:糸球体腎炎;IgA腎症;腎移植後の再灌流損傷;慢性移植腎機能障害;アミロイドーシス;糖尿病性腎症;メサンギウム増殖性糸球体腎炎;腎硬化症。
【0079】
肺線維症:特発性肺線維症のような間質性肺疾患(ILD);嚢胞性線維症(CF);間質性肺線維症;薬物誘発性線維症;サルコイドーシス;びまん性肺胞傷害疾患;肺高血圧症;慢性閉塞性肺疾患;呼吸窮迫性症候群;リンパ脈管筋腫症。
【0080】
皮膚線維症:強皮症;ケロイド;肥厚性瘢痕;皮膚線維腫;慢性創傷;乾癬;デュピュイトラン拘縮;類天疱瘡;熱傷。
【0081】
胃及び腸の線維症:腸運動異常;肥大性幽門狭窄;ヒルシュスプルング病;まだら症の巨大結腸;特発性閉塞;膠原線維性大腸炎;絨毛萎縮及び陰窩過形成;ポリープ形成;クローン病の線維症;胃潰瘍。
【0082】
眼線維症:急性及び線維性交感性眼炎;グレイブス病;緑内障手術後の線維症;白内障手術後の線維症;前嚢白内障;角膜瘢痕;類天疱瘡;糖尿病性微小動脈瘤;水晶体嚢混濁;瞼裂斑及び翼状片(角膜表面上の線維血管増殖)を生じる結膜のエラストイド変性;瞼裂斑に続発する視力喪失;濾過胞存続疾患;黄斑変性;又は増殖性糖尿病性網膜症及び増殖性硝子体網膜症(PVR)のような網膜及び硝子体の網膜症。
【0083】
他の線維症:子宮内膜症;子宮筋腫;線維筋痛症;全身性硬化症;アテローム性動脈硬化症;再狭窄;慢性骨髄増殖性障害;進行性骨化性線維異形成症;脊髄形成異常;骨粗鬆症;骨髄線維症;骨硬化症;慢性関節リウマチ及び骨関節炎におけるリウマチ性パンヌス形成;腹膜線維症;心筋線維症;膵臓線維症;慢性膵炎;HIVにおけるグリア性瘢痕組織形成;関連した認知−運動疾患及び海綿状脳症;又は薬物や線維嚢胞症に続発する歯肉肥大症。
【0084】
脈絡膜血管新生と関連しており、線維症を伴う可能性がある眼疾患:眼ヒストプラズマ症候群;高度近視;網膜色素線条症;脈絡膜破裂;視神経乳頭ドルーゼン;視窩;急性後極部多発性板状色素上皮症;匍行性脈絡膜炎;原田病;シュタルガルト病;トキソプラズマ症;サルコイドーシス;中心性漿液性網膜症;先天性風疹;コロボーム;朝顔症候群;脈絡膜血管腫;脈絡膜黒色腫;脈絡膜母斑;脈絡膜骨腫;トキソカラ症;網膜分枝静脈閉塞症;網膜中心静脈閉塞症;房中心窩毛細血管拡張症;網膜色素変性;ベスト症;成人中心窩黄斑ジストロフィー;光凝固術後の問題、又は網膜血管疾患(例えば高血圧性網膜症;糖尿病性網膜症;鎌状赤血球網膜症;未熟児網膜症;底辺網膜症など);新血管形成及び/又はインテグリン媒介相互作用に関連した他の眼疾患(例えば増殖性硝子体網膜症;増殖性糖尿病性網膜症;ベーチェット病;網膜の海綿状血管腫;脈絡膜破裂;網膜末梢血管拡張症;嚢胞様黄斑症;イールズ病;特発性中心性漿液性網膜症;虹彩新血管形成;脈絡膜悪性黒色腫;網膜前黄斑線維症;眼ヒストプラズマ症;網膜末梢血管腫;網膜腫瘍;虹彩及び毛様体の腫瘍;病理学的な角膜新血管形成を伴う疾患;翼状片など)。
【0085】
本発明の更なる側面は、リンパ脈管筋腫症(LAM)の治療に使用するための、本明細書に開示されるような式I、式II、又は式IIIによる化合物である。
【0086】
線維症と炎症は外科療法の失敗の原因となり得ることが知られている。故に、本発明の更なる側面は、外科的処置に関連した、線維症又は線維性若しくは炎症性障害の治療に使用するための、本明細書に開示されるような式I、式II、又は式IIIによる化合物である。本発明の化合物の投与の併用治療(外科的介入の前若しくは後又はその前と後の両方)より利益を受け得る外科的介入の例は:濾過手術(線維柱帯切除術)、レーザー線維柱帯形成術、末期緑内障へのレーザー毛様体光凝固術(毛様体切除術)、急性閉塞隅角緑内障への手術、ドレナージインプラント(チューブシャント)、深層強膜切除術、エクスプレスミニシャント、トラベクトーム手術、虹彩切開術及び虹彩切除術、管形成術及び粘弾性管切開術、並びに隅角切開術である。
【0087】
従って、本発明の1つの側面は、濾過手術(線維柱帯切除術)、レーザー線維柱帯形成術、末期緑内障へのレーザー毛様体光凝固術(毛様体切除術)、急性閉塞隅角緑内障への手術、ドレナージインプラント(チューブシャント)、深層強膜切除術、エクスプレスミニシャント、トラベクトーム手術、虹彩切開術及び虹彩切除術、管形成術及び粘弾性管切開術、並びに隅角切開術より選択される外科的介入と関連した線維症の治療に使用するための、本明細書に開示されるような式I、式II、又は式IIIの化合物である。
【0088】
本発明の1つの側面は、本明細書に開示されるような式I、式II、又は式IIIの化合物の、線維症の治療に使用するための医薬を製造するための使用である。
【0089】
本発明の更なる側面は、線維症の治療方法であり、それにより、治療的有効量の式I、式II、又は式IIIの化合物を、そのような治療を必要とする患者へ投与する。
【0090】
「線維症」という文言は、本明細書において線維増殖性疾患として定義される。一般に、線維性障害は、非癌性で、ほとんどが線維芽細胞性の細胞の不適正な過剰増殖又は分化転換を特徴とする。
【0091】
「線維症関連疾患」という文言は、本明細書において、線維症の結果として生じ得るか、又は線維症と関連するか若しくはそれによって悪化する疾患又は病態として定義される。制限せずに言えば、そのような線維症関連疾患の例は、固形癌、慢性炎症、感染症、及び乾癬である。線維症関連疾患は、外科的介入後の線維症発症の結果として生じる病態であってもよい。
【0092】
「間質性肺疾患(ILD)」という文言には、肺の炎症及び線維症が病理の最終的な一般経路となる、広範囲の別個の障害が含まれる。サルコイドーシス、珪肺症、薬物反応、感染症、及び慢性関節リウマチのような膠原血管病、及び全身性硬化症(強皮症としても知られている)を含め、150を越えるILDの原因がある。
【0093】
「特発性肺線維症」という文言は、間質性肺疾患(ILD)のごく一般的なタイプであって、公知の原因がない。
【0094】
「肝硬変」という文言は、間質性肺疾患(ILD)に類似した原因を有し、ウイルス性肝炎、住血吸虫症、慢性アルコール中毒が全世界でその主因である。
【0095】
「線維性腎疾患」という文言は、腎臓を傷害して瘢痕化させ得る糖尿病によって引き起こされる場合があり、それが進行性の機能損失をもたらす。
【0096】
角膜の疾患は、感染(例えば疱疹性角膜炎)又は炎症(例えば翼状片)に続発して獲得される可能性がある。結膜のエラストイド変性は、瞼裂斑及び翼状片(角膜表面上の線維血管増殖)を生じる。これらの疾患のすべてにおいて、最終の一般的な事象は、しばしば、新血管形成に関連した炎症性の変化、組織浮腫、及び究極的には、混濁化と視覚低下をもたらす角膜基質の線維化である(非特許文献12)。
【0097】
「外傷に関連した瘢痕化」という文言には、限定されるものではないが、内臓の間に形成され、拘縮、疼痛、及び、場合によっては不妊を引き起こす可能性があり、永続的であるときは重篤になり得る、瘢痕組織を伴う術後合併症が含まれる。更なる例は、熱傷による線維症である。
【0098】
「化学療法剤誘発線維症」という文言には、限定されるものではないが、薬物誘発性肺疾患、又はベバシズマブ若しくはラニビズマブのような抗VEGFモノクローナル抗体治療によって引き起こされ得る眼線維症のような、ある種の医薬品によって引き起こされる線維症が含まれる(非特許文献13〜非特許文献17)。
【0099】
「放射線誘発性線維症(RIF)」という文言には、限定されるものではないが、慢性疼痛、神経障害、関節の限定運動、及びリンパ節の腫脹を引き起こす場合がある、放射線療法の重篤で一般的な合併症である線維症が含まれる。それは、ごく頻繁に、乳房、頭部、頚部、及び結合組織に生じる。RIFは、放射線療法への曝露後4〜6ヶ月から1〜2年の間に発症し得て、経時的により重篤になる。RIFを発症する危険因子には、高い放射線量、放射線へ曝露された組織体積の大きさ、及び放射線を外科療法、化学療法、又はその両方と組み合わせることが含まれる。
【0100】
「リンパ脈管筋腫症(LAM)」という文言は、不規則な平滑筋成長(平滑筋腫)の肺全体と細気管支、肺胞中隔、血管周囲腔、及びリンパ管での増殖をもたらし、小気道の閉塞(肺嚢胞形成と気胸をもたらす)とリンパ管の閉塞(乳糜胸水をもたらす)を生じる、稀な肺疾患である。LAMは、散発的な形態で起こり、通常は妊娠可能年齢である女性だけが罹患する。LAMは、結節性硬化症を有する患者にも起こる。
【0101】
「網膜下線維症」という文言は、本明細書において加齢黄斑変性(ARMD)として定義される。65歳以上のアメリカ人において、視力喪失の主因はARMDであり;65歳以上の1,200〜1,500万人のアメリカ人がこの疾患を有しており、そのうち10%〜15%が脈絡膜(網膜下)の新血管形成及び線維症の直接的な結果として中心視力を失う。
【0102】
本発明の更なる側面は、
(i)式I:
【0104】
[式中:
nは、0、1、又は2であり;
R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素;飽和又は不飽和、分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−10アルキル又はC
3−12シクロアルキル;及び置換又は非置換のフェニル又はベンジルより選択され;
R
3は、水素;あるいは飽和又は不飽和、分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−10アルキル又はC
3−12シクロアルキルであり;
R
4は、置換又は非置換のC
6−C
10アリール又はC
5−C
9ヘテロアリール(ここで、ヘテロ原子は、独立して、N、O、及びSより選択される);あるいは置換又は非置換の単環式若しくは二環式C
3−12シクロアルキル又はC
5−C
9ヘテロシクリル(ここで、ヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)である]の化合物、又はその医薬的に許容される塩;及び
(ii)免疫系を抑制する薬物、又は線維化に先行するプロセスを標的にした他の有益な効果を有する薬物、
を含む、同時的、分離的、又は連続的な投与のための併用医薬である。
【0105】
本発明の更なる側面は、
(i)式II:
【0107】
[式中:
nは、0又は1であり;
mは、0、1、又は2であり;
R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
8アルキル、C
2−C
8アルケニル、又はC
2−C
8アルキニル;単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
3−C
8カルボシクリル;及び単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
3−C
7ヘテロシクリルより選択され(ここで、それぞれのヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択され;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、又はヘテロシクリルは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよい);
R
3は、単環式若しくは二環式C
6−C
10アリール;及び単環式若しくは二環式C
3−C
9ヘテロアリール又はヘテロシクリルより選択され(ここで、前記ヘテロアリール及びヘテロシクリルにおいて、それぞれのヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択され;前記アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルは、1、2、3、4、又は5個のR
b基で置換されていてもよい);
R
4は、−OC(O)R
7;−C(O)OR
7;−NR
7R
8;−C(O)NR
7R
8;単環式若しくは二環式C
3−C
9ヘテロアリール;及び単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
5−C
9ヘテロシクリルより選択され(ここで、前記ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、環中にオキソ基を含有していてもよく、そして、前記ヘテロアリール及びヘテロシクリルにおいて、それぞれのヘテロ原子は、独立して、N、O、及びSより選択され;前記ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよい);
R
5とR
6は、それぞれ独立して、水素;及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルより選択され(前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、フッ素及び塩素より独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);
R
7は、水素;及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル;及びフェニルより選択され(前記アルキル、アルケニル、アルキニル、及びフェニルは、フッ素及び塩素より独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);
R
8は、水素;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル;単環式若しくは二環式C
6−C
10アリール;−S(O)
2R
9;−C(O)OR
9;及び−C(O)R
10より選択され(前記アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールは、1、2、又は3個のハロゲンで置換されていてもよい);
R
9は、水素;及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルより選択され(前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、フッ素及び塩素より独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);
R
10は、水素;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル;及びC
6アリールより選択され(前記アリールは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよく;そして前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、フッ素及び塩素より独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);
Yは、−C(O)−;−S(O)−;及び−S(O)
2−より選択され;
Xは、−NR
c−;−O−;及び−S−より選択され;
それぞれのR
aは、ハロゲン;ヒドロキシ;カルボニル;メトキシ;ハロメトキシ;ジハロメトキシ;及びトリハロメトキシより独立して選択され;
それぞれのR
bは、ハロゲン;カルボキシ;ヒドロキシ;シアノ;C
1−C
4アルキル;C
2−C
4アルケニル;C
2−C
4アルキニル;C
1−C
4アルキルオキシ;C
2−C
4アルケニルオキシ;C
2−C
4アルキニルオキシ;C
1−C
4アルキルチオ;C
2−C
4アルケニルチオ;C
2−C
4アルキニルチオ;C
1−C
4アルキル;C
2−C
4アルケニル又はC
2−C
4アルキニル二級若しくは三級アミノ;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル二級若しくは三級アミド;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルカルボニル;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルスルホニル;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルスルホニルオキシ;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル二級若しくは三級スルホンアミド;C
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルシリル;及びC
1−C
4アルキルオキシ、C
2−C
4アルケニルオキシ、又はC
2−C
4アルキニルオキシカルボニルより独立して選択され(ここで、どのアルキル、アルケニル、及びアルキニル部分も、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、ハロメトキシ、ジハロメトキシ、及びトリハロメトキシより独立して選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい);そして
R
cは、水素;及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルより選択され;
ここで、p≧4の炭素原子を有するどのC
pアルキル、アルキニル、又はアルケニル基も、q個の炭素原子のC
q炭素環式部分を含んでいてもよい(それにより、3≦q<p)]の化合物、又はその医薬的に許容される塩;及び
(ii)免疫系を抑制する薬物、又は線維化に先行するプロセスを標的にした他の有益な効果を有する薬物、
を含む、同時的、分離的、又は連続的な投与のための併用医薬である。
【0108】
本発明の更なる側面は、
(i)式III:
【0110】
[式中:
nは、0又は1であり;
R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
8アルキル、C
2−C
8アルケニル、又はC
2−C
8アルキニル;単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
3−C
8カルボシクリル;及び単環式若しくは二環式、飽和又は不飽和のC
3−C
7ヘテロシクリルより選択され(ここで、へテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択され;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、又はヘテロシクリルは、1、2、又は3個のR
a基で置換されていてもよい);
R
3は、単環式若しくは二環式C
6−C
10アリール;及び単環式若しくは二環式C
5−C
9ヘテロアリールより選択され(ここで、へテロ原子は、独立して、N、O、及びSより選択され;前記アリール又はヘテロアリールは、1、2、3、4、又は5個のR
b基で置換されていてもよい);
Yは、−C(O)−;−S(O)−;及び−S(O)
2−より選択され;
Xは、−NR
c−;−O−;及び−S−より選択され;
それぞれのR
aは、ハロゲン;ヒドロキシ;カルボニル;メトキシ;ハロメトキシ;ジハロメトキシ;及びトリハロメトキシより独立して選択され;
それぞれのR
bは、ハロゲン;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニル;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキルオキシ、C
2−C
4アルケニルオキシ、又はC
2−C
4アルキニルオキシ;分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキルチオ、C
2−C
4アルケニルチオ、又はC
2−C
4アルキニルチオより独立して選択され(前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキルチオ、アルケニルチオ、又はアルキニルチオ基は、1、2、又は3個のハロゲンで置換されていてもよい);
R
cは、水素、及び分岐鎖又は非分岐鎖のC
1−C
4アルキル、C
2−C
4アルケニル、又はC
2−C
4アルキニルより選択される]の化合物、又はその医薬的に許容される塩;及び
(ii)免疫系を抑制する薬物、又は線維化に先行するプロセスを標的にした他の有益な効果を有する薬物、
を含む、同時的、分離的、又は連続的な投与のための併用医薬である。
【0111】
免疫系を抑制する薬物又は線維化に先行するプロセスを標的にした他の有益な効果を有する薬物であって、本明細書に記載されるような式I、式II、又は式IIIの化合物との組合せにおいて有用であり得る薬物の例は、プレドニゾンのようなコルチコステロイド;メトトレキセートのような細胞増殖抑制剤;シクロスポリン;アジスロマイシンのような抗生物質;アセチルシステインのような粘液溶解薬;スルファサラジンのような抗リウマチ薬;ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ペガプタニブ(Macugen(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、又はVEGFトラップ(EYLEA(登録商標))のような抗VEGF薬である。
【0112】
「同時的投与」という文言は、本明細書において、免疫系を抑制する薬物又は線維化に先行するプロセスを標的にした他の有益な効果を有する薬物と一緒に投与される、式I、式II、又は式IIIの化合物の患者への投与として定義される。
【0113】
本発明の1つの側面において、同時的投与は、式I、式II、又は式IIIの化合物と、免疫系を抑制する薬物又は線維化に先行するプロセスを標的にした他の有益な効果を有する薬物とを、医薬的に許容されるアジュバント及び/又は担体と混合して含む、医薬製剤のような一定用量の組合せとしてでもよい。
【0114】
本発明の更なる側面では、線維症に罹患している被験者へ、免疫系を抑制する薬物又は線維化に先行するプロセスを標的にした他の有益な効果を有する薬物を投与し、続いて本明細書に記載されるような式I、式II、又は式IIIの化合物を投与してもよい。
【0115】
本明細書及び特許請求の範囲を通して記載される式I、式II、又は式IIIの化合物のすべての置換基は、特許文献1〜特許文献3に開示のそれぞれの置換基についての定義に従って定義される。
【0116】
従って、例えば、ある置換された実体では、どの置換基も、飽和又は不飽和、分岐鎖、非分岐鎖、又は環式の低級アルキル;ヒドロキシル、アミン、スルフィド、シリル、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、スルホン酸、低級アルコキシ、低級アルキル二級若しくは三級アミン、低級アルキルアミド、低級アルキルエーテル、低級アルキルケトン、低級アルキルスルフィド、低級アルキルカルボン酸エステル、低級アルキルスルホン酸エステル、低級アルキルスルホン、低級アルキルスルホキシド、低級アルキルスルホンアミド、低級アルキルアルコール、低級アルキルアセチル、低級ジアルキルジスルフィドより選択され得る。本明細書に使用するように、「低級アルキル」という用語は、C
1−C
6アルキル、例えばC
1−C
4アルキル(C
1−C
3アルキルなど)を意味する。
【0117】
医薬製剤
臨床用途では、線維症に使用するための本明細書に記載される式I、式II、又は式IIIの化合物を、経口投与用医薬製剤として投与することができる。
【0118】
本発明の1つの側面では、線維症に使用するための本明細書に記載される式I、式II、又は式IIIの化合物を、例えば眼内注射又は眼周囲注射により、又は局部インプラントの形態で眼に局部的に投与しても、点眼剤の形態又は軟膏剤の形態で局所的に投与してもよい。
【0119】
眼内注射剤の例は、硝子体内注射剤、前房腔内注射剤、又は網膜下注射剤である。眼周囲注射剤の例は、結膜下注射剤、眼球傍/後部注射剤、近位強膜注射剤、及び薄膜下注射剤である。
【0120】
局部インプラントの事例では、医薬化合物の眼への一定の徐放性を可能にするために、特殊持続放出デバイスを眼内又は眼周囲経路にて投与することができる(非特許文献18)。他の持続放出システムは、ミクロスフェア剤、リポソーム剤、ナノ粒子剤、又は他の高分子マトリックス剤である(非特許文献19)。
【0121】
本発明の更なる側面では、本明細書に記載される式I、式II、又は式IIIの化合物を硝子体内(IVT)投与経路により投与することができる。
【0122】
本明細書に使用される「治療的有効量」という用語は、本明細書に開示される式I、式II、又は式IIIのいずれか1つの化合物のような治療剤の量を意味する。この量は、治療効果、予防効果、又は改善効果を示すのに十分な量である。その効果には、例えば、本明細書に列挙した病態の治療又は予防を含めることができる。ある被験者に対する正確な有効量は、被験者のサイズ及び全身状態、治療される病態の性質及び程度、治療医の推奨事項、並びに経口投与の症例における投与に選択される治療剤又は治療剤の組合せに依存するものであり、投与量は、式I、式II、又は式IIIのいずれか1つの化合物、あるいはその医薬的に許容される塩の約0.01mg/日〜約1000mg/日で変動し得る。
【実施例】
【0123】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸(上記の化合物I−4)塩酸塩の製造
特許文献1の実施例3に記載のように入手した6−(メチルカルバモイル)−4−[(4−メトキシルフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチル塩酸塩より、化合物:4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸(上記の化合物I−4、特許文献1の実施例4に開示のように製造)の塩酸塩を入手した。
【0124】
6−(メチルカルバモイル)−4−[(4−メトキシルフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチル塩酸塩(100.0g、0.2636モル、1.0当量)のTHF(4.0L)溶液へ、1N NaOH水溶液(1.320L、52.8g、1.3モル、5.0当量)を室温で加えた。この澄明な赤色溶液を一定に撹拌しながら50℃まで3時間加熱した。この反応は、TLC(CHCl
3中の10% MeOH、Rf:0.1)でモニターした。この反応混合物をそのまま室温に維持し、H
2O(5.0L)で希釈した。2つの層が形成された。この懸濁液を減圧下にて蒸発させ、大部分のTHFを除去した。残った赤色の水性部分をMTBE(2×2.5L)で洗浄した。薄黄色の水層を0℃まで冷却し(氷バッチ)、激しく撹拌させながら、この反応混合物のpHが1に達するまで、1N HCl水溶液(2.0L)で酸性化した。この時間の間に黄色の固形物が析出した。添加完了後、この混合物を室温で16時間激しく撹拌した。この黄色の固形物をブフナー漏斗に通して濾過し、H
2O(2×500mL)、続いてMTBE(500mL)で洗浄した。この黄色の固形物を45時間凍結乾燥させ、最終化合物、I−4(86.0g、93%)を自由浮遊性の黄色粉末として得た。
【0125】
MW 351.37 (遊離塩基), MW 387.83 塩酸塩。
1H NMR (300 MHz, D6-DMSO) 9.05 (s, 1H, 芳香族), 8.70 (bm, 2H, 芳香族 及び NH), 8.20 (d, 1H, 芳香族), 8.00 (d, 1H, 芳香族), 7.4 (d, 2H, 芳香族), 7.00 (d, 2H, 芳香族), 3.88 (s, 1H, -OCH
3), 2.7 (s, 3H, -NCH
3); LC-MS (m/z) 352.0 (M+1)。
【0126】
生物学的評価
ブレオマイシン誘発性肺線維症マウスモデル
肺線維症は、肺への様々な傷害に対してよくある応答であり、肺間質の慢性炎症及び進行性線維化を特徴とする、間質性肺疾患(ILD)として知られる数多くの異質な障害群の終着点である。肺線維症の動物モデルに最も一般的に使用されるのは、抗腫瘍剤ブレオマイシン(BLM)の髄腔内点滴である。
【0127】
本試験では、重量27.5±0.4gの30匹の雄性CD−1マウス(入手先:Harlan Nossan、ミラノ、イタリア)を使用し、食餌と水を自由に摂取させた。このマウスを、各ケージに3匹の動物で、一定の温度及び湿度で層流室にて飼育した。この層流室の温度は20〜26℃の間に制御し、層流室の湿度は40〜70%の間に制御した。
【0128】
マウスは、生理食塩水(0.9%)、又は硫酸ブレオマイシン(BLM、0.1IU/マウス)含有生理食塩水の単回気管内点滴を100μlの容量で受けた。次いで、7日後に、ペントバルビトン過量によってマウスを犠牲にした。
【0129】
各群10匹の3種の実験群へ動物を無作為化し、BLMの気管内点滴から30分後とその後試験の完了まで12時間毎にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(0.5%)/HPβシクロデキストリン(20%)(5ml/kg、皮下注射液として)で、又はBLMの気管内点滴から30分後とその後試験の完了まで12時間毎に化合物I−4×HCl(4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸塩酸塩)(30mg/kg、皮下注射液として)で処置した。
【0130】
表1:実験デザイン
【0131】
【表4】
【0132】
肺浮腫の測定
BLM注射後7日目に、他の隣接した付着組織から肺を慎重に切除することにより、肺の湿重量を測定した。次いで、この肺を180℃まで48時間曝露して、乾燥重量を測定した。次いで、湿重量より乾燥重量を差し引くことによって水分含量を算出した。
【0133】
組織学的検査
BLM注射後7日目に肺生検を採取した。緩衝化ホルムアルデヒド溶液(リン酸緩衝化生理食塩水[PBS]中の10%溶液)で室温にて固定した後、組織切片を調製し、ヘマトキシリン−エオジンによって染色して、Axiovision Ziess顕微鏡(ミラノ、イタリア)で観察した。
【0134】
肺線維症のスコア付けは、無作為に選択した切片を、各試料につき5ヶ所の視野で、100倍の拡大率にて検査することによって、0〜8のスケールで等級付けした。肺線維症を等級付けるための判定基準は、以下の通りであった:グレード0、正常肺;グレード1、肺胞壁又は細気管支壁の軽微な線維性肥厚化;グレード3、肺構造への明白な傷害を伴わない、中等度の肺壁肥厚化;グレード5、肺構造への明確な傷害を伴う線維化の増加と線維帯又は小線維塊の形成;グレード7、構造の重篤な歪みと大きな線維性領域;及びグレード8、視野全体の線維性閉塞(非特許文献20)。
【0135】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)アッセイ
BLM注射後7日目にミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を定量した。肺を取り出し、秤量し、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)に溶かした0.5%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム含有溶液中でホモジェナイズし、20,000g、4℃で30分間遠心分離させた。次いで、上清のアリコートを、テトラメチルベンジジン(1.6mM)及び0.1mM H
2O
2の溶液とともにそのまま反応させた。吸光度の変化率を分光光度法により650nmにて測定した。MPO活性は、37℃で1分につき1μモルの過酸化水素を分解する酵素の量として定義し、湿組織重量(g)当たりの単位として表した。
【0136】
チオバルビツール酸反応性物質の測定
脂質過酸化の良好な指標とみなされているチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の測定値を、BLM投与後7日目に採取した肺組織において定量した。指定の時間に採取した肺組織を1.15% KCl溶液中でホモジェナイズした。このホモジェネートの100μlアリコートを、200μlの8.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1.5mlの20%酢酸(pH3.5)、1.5mlの0.8%チオバルビツール酸、及び600μlの蒸留水を含有する反応混合物へ加えた。次いで、試料を95℃で1時間煮沸させ、3,000gで10分間遠心分離させた。上清の吸光度を分光光学法により650nmにて測定した。TBARSのレベルは、μM/100mgの湿組織として表す。
【0137】
サイトカインの測定
BLM投与後7日目に採取した肺組織より、TNF−αレベルとIL−1βレベルを評価した。簡潔に言えば、2ミリモル/Lのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF、シグマ・アルドリッチ社)を含有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、ICN Biomedicals、ミラノ、イタリア)中で肺組織の一部をホモジェナイズした。このアッセイは、市販の比色定量キット(R&D system、ミラノ、イタリア)を製造業者の説明書に従って使用して行った。いずれのサイトカイン定量も、同一2検体の連続希釈液において実施した。
【0138】
iNOS、COX−2、ニトロチロシン、TGF−β、及びPARの免疫組織化学的な定位
BLM投与後7日目に肺組織を10% PBS緩衝化ホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋組織より7μm切片を調製した。脱パラフィン後、60%メタノール中0.3%過酸化水素で30分間、内因性ペルオキシダーゼをクエンチした。この切片をPBS中0.1% Triton X−100で20分間透過処理した。この切片をPBS中2%正常ヤギ血清中で20分間インキュベートすることにより、非特異的な吸着を最小化した。ビオチン及びアビジン(Vector Laboratories、カリフォルニア州バーリンゲーム)とそれぞれ15分間連続インキュベーションすることにより、内因性のビオチン又はアビジン結合部位を遮断した。切片を以下と共に一晩インキュベートした:1)抗iNOS精製ポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology、PBS中1:500);又は2)精製抗COX−2抗体(Santa Cruz Biotechnology、PBS中1:500);又は3)ウサギ抗ニトロチロシンポリクローナル抗体(Upstate、PBS中1:500);又は4)抗TGF−βポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology,PBS中1:500);又は5)抗PAR抗体(BioMol、PBS中1:200)。切片をPBSで洗浄し、二次抗体と共にインキュベートした。ビオチン化ヤギ抗ウサギIgGとアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(DBA)で、特異的標識化を検出した。ニトロチロシン、PAR、TGF−β、COX−2、及びiNOSについての結合特異性を立証するために、いくつかの切片は、一次抗体のみ(二次抗体無し)又は二次抗体のみ(一次抗体無し)ともインキュベートした。これらの状況では、切片に陽性染色が見出されなかったので、行ったすべての実験において免疫反応が陽性であることを示した。
【0139】
観察事実
定型的なモニタリングの時点で、この動物について、運動のような通常行動、食餌及び水の摂取(目視のみによる)、体重増加/損失(体重は毎日測定した)、眼/毛髪のもつれ(matting)に対する急性肺損傷及び処置のあらゆる効果と他のあらゆる異常効果を調べた。それぞれの亜集合内の動物の数に基づいて、死亡と観察される臨床徴候を記録した。
【0140】
統計学的評価
本文及び図面中のすべてのデータは、平均±s.e.として提示しており、平均は、n回の観測結果の平均であって、ここで、nは試験した動物数を表す。いずれの統計解析も、GraphPad Prism5(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ、アメリカ)を使用して計算した。反復測定値のないデータは、マン・ホイットニーのU検定(t検定)によって評価した。反復測定値のあるデータは、2元配置分散分析に続くボンフェローニの事後検定によって評価した。0.05未満のP値を統計学的に有意であるとみなした。
【0141】
結果
表2:組織学上の線維症スコア
【0142】
【表5】
【0143】
BLMの気管内点滴から30分後、及びその後試験の完了まで12時間毎に、30mg/kgの用量の化合物I−4×HCl(4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸塩酸塩)で処置することにより、線維症の組織学的スコア付け、急性肺損傷、体重損失、肺炎症、及び肺浮腫の有意な減弱化をもたらした。
【0144】
3群(A、B、及びC)において、様々な線維症マーカーのレベルを測定した。各マーカーについて、ブレオマイシン損傷、担体処置群(BLM+担体)において測定したレベルを100%とした。表3には、担体で処置した「シャム損傷」群(シャム+担体)と化合物I−4で処置したブレオマイシン損傷群(BLM+I−4×HCl)についての対応するマーカーレベルを、BLM+担体群のレベルに対する百分率として示す。
【0145】
表3:線維症マーカーレベル
【0146】
【表6】
【0147】
ブレオマイシンによって誘導されたマーカーのレベルは、動物を化合物I−4で処置したとき統計学的に有意に低下した。化合物I−4で処置した群では、これらマーカーのいくつか(iNOS、COX−2、ニトロチロシン、TGF−β、及びポリ−ADP−リボース(PAR))のレベルが、シャム群のそれに類似したレベルまで低下した。上記の結果は、化合物I−4の強力な抗線維化及び抗炎症効果を示す。
【0148】
細胞接着アッセイ
細胞接着アッセイは、眼や他の臓器における抗線維化効果を予測するためのin vitro法として、線維芽細胞又はRPE細胞(網膜上皮細胞)又はHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)のフィブロネクチンに対する細胞付着(接着)の阻害を研究するために使用される。
【0149】
48ウェルプレートを、10μg/mLのヒトフィブロネクチンで+4℃にて一晩コーティングし、次いでPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)中2%BSA(ウシ血清アルブミン)で37℃にて1時間ブロックする。
【0150】
細胞(マウス線維芽細胞(3T3)、ヒト線維芽細胞、ヒト網膜上皮細胞(RPE)、又はARPE19細胞株、血管内皮細胞等)を、緩衝液3(0.14M NaCl、4.7mM KCl、0.65mM MgSO
4、1.2mM CaCl
2、10mM Hepes pH7.4)で2回洗浄し、計数して、緩衝液3中の適正な濃度へ希釈する。所望の最終濃度の2倍の濃度の対照物質(抗体又はRGDペプチド)又はCLT−28643と共に、細胞を氷上にて30分間プレインキュベートする。
【0151】
このプレートを緩衝液3で3回洗浄し、次いで各ウェルへ0.1mLの緩衝液3を加える。プレートを氷上に置き、そのウェルへ細胞溶液を加える(0.1mL/ウェル)。プレートを37℃へ移し、15、30、又は60分間インキュベートする(各時点につき1つのプレート)。指定のインキュベーション時間の後、プレートを37℃より取り出して、細胞溶液を捨てる。ウェルを緩衝液3で2回慎重に洗浄し、各ウェルへ0.1mLの基質溶液(3.75mM p−ニトロフェノール−N−アセチル−β−D−グルコサミド、0.25% Triton X−100、0.05Mクエン酸ナトリウム、pH5.0)を加える。プレートを−20℃で保存する。
【0152】
接着細胞の検出:先の48ウェルプレートの各ウェルより50μLを96ウェルプレート中のウェルへ移し、37℃で適正な時間(細胞種によって30分〜4時間)インキュベートする。細胞量が既知である細胞試料を使用し、同じ時間での標準曲線を作成する。75μL/ウェルの発色緩衝液(45mMグリシン、4.5mM EDTA、pH10.4)の添加により先のプレートを発色させ、405nmでの吸光度を読み取る。