特許第6069361号(P6069361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069361
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】液状甘味料組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20170123BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20170123BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20170123BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20170123BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A23L27/00 E
   A23L2/00 T
   A23L2/00 F
   A23L2/38 A
   A23L2/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-554167(P2014-554167)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2013054485
(87)【国際公開番号】WO2014103349
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-283377(P2012-283377)
(32)【優先日】2012年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391026210
【氏名又は名称】日本コーンスターチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和紀
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−000032(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/152370(WO,A1)
【文献】 特開2011−045305(JP,A)
【文献】 再公表特許第00/024273(JP,A1)
【文献】 特開2011−072219(JP,A)
【文献】 特開平02−238862(JP,A)
【文献】 特開2001−078703(JP,A)
【文献】 特開2009−028042(JP,A)
【文献】 特開平11−276131(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/070836(WO,A1)
【文献】 食品用素材(糖化製品),日本食品化工株式会社 製品情報 [online],2013年 4月26日,URL,http://www.nisshoku.co.jp/product/food/saccharify/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00− 2/40
A23L 27/00−27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果糖、ぶどう糖、果糖及びぶどう糖以外の還元糖、並びに水からなる液状甘味料組成物であって、次の1)及び2)を満たす液状甘味料組成物。
1)無水物換算重量比において、果糖を67.5〜70重量%、ぶどう糖を10〜35重量%、果糖及びぶどう糖以外の還元糖を1〜5重量%含む(ただし、果糖、ぶどう糖、果糖及びぶどう糖以外の還元糖の含有率の和は100重量%である)
2)水分が15〜30重量%である
【請求項2】
果糖の含有率が70重量%である請求項1に記載の液状甘味料組成物。
【請求項3】
果糖及びぶどう糖以外の還元糖がマルトース、マルトトリオース及びマルトテトラオースから選択される少なくとも1種の還元糖である請求項1又は2に記載の液状甘味料組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状甘味料組成物を固形分として0.1〜10%含む清涼飲料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状甘味料組成物を固形分として0.1〜10%含むスポーツ飲料。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状甘味料組成物を固形分として0.1〜10%含む炭酸飲料。
【請求項7】
さらに高甘味度甘味料を甘味料として0.001〜0.007重量%添加する請求項4に記載の清涼飲料。
【請求項8】
さらに高甘味度甘味料を甘味料として0.001〜0.007重量%添加する請求項5に記載のスポーツ飲料。
【請求項9】
さらに高甘味度甘味料を甘味料として0.001〜0.007重量%添加する請求項6に記載の炭酸飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果糖分が90部以上の高果糖液糖と同等の甘味・キレを再現した液状甘味料組成物に関する。また、この液状甘味料組成物を使用した飲料、特に清涼飲料、スポーツ飲料等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、清涼飲料水の出荷量増加や、夏場の水分補給用として清涼飲料水の需要が高まったことから、清涼飲料水の原料である異性化液糖、果糖の不足が懸念されている。
異性化液糖にはぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、高果糖液糖が含まれるが、特に、果糖ぶどう糖液糖を原料とする清涼飲料水が非常に多い。従って、夏場等の大量需要が予想される際には、特に、このような糖が安定して供給されることが重要である。
【0003】
果糖ぶどう糖液糖の製造は、1)液状ぶどう糖を原料とし、異性化反応により果糖分を55%まで増加させて製造する方法、又は2)液状ぶどう糖を原料とし、異性化反応により果糖分が42%のぶどう糖果糖液糖と、果糖分が90%以上の高果糖液糖を製造しブレンドする方法、の2種類が存在する。
このうち上記2)の製造を行う場合では、果糖ぶどう糖液糖の製造において高果糖液糖が必須であるので、高果糖液糖の供給量が増加すると果糖ぶどう糖液糖を安定して供給するのが困難になるという問題がある。
なお、果糖は低温で強い甘味を感じる糖質であり、甘味のパターンにおいても砂糖より早く甘味を感じ、また、キレが早いという特徴がある。その為、低温で清涼感を求める清涼飲料水の原料として、果糖が非常に適しているといえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、果糖の配合割合を減らしつつも高果糖液糖と同様の甘味質、キレを再現できる液状甘味料組成物を提供することである。また、これを使用した清涼飲料水、特にスポーツドリンク等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために従来技術の問題点より鋭意研究したところ、液状甘味料組成として、無水物換算重量比において、果糖を65部以上85部以下、ぶどう糖を5部以上35部以下、果糖及びぶどう糖以外の還元糖を1部以上10部以下含み、かつ、水分が10〜30重量%である液状甘味料組成物が、果糖分を90部以上含む液状甘味料組成物と同等の甘味質・キレを有することを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明の液状甘味料組成物を使用することにより、すっきりしたおいしい甘味を有する飲料、特に清涼飲料水やスポーツドリンクを提供できることも見出した。さらに、これに高甘味度甘味料を併用した場合にはボディ感を付与できる効果があることも見出した。
【0006】
すなわち本発明は、かかる知見に基づいて開発された、下記の液状甘味料組成物等に関するものである;
[1]次の1)および2)を満たす液状甘味料組成物。
1)無水物換算重量比において、果糖を65部以上85部以下、ぶどう糖を5部以上35部以下、果糖及びぶどう糖以外の還元糖を1部以上10部以下含む
2)水分が10〜30重量%である
[2]次の1)および2)を満たす液状甘味料組成物。
1)無水物換算重量比において、果糖を67.5部以上77.5部未満、ぶどう糖を10部以上35部以下、果糖及びぶどう糖以外の還元糖を1部以上5部以下含む
2)水分が15〜30重量%である
[3]次の1)および2)を満たす液状甘味料組成物。
1)無水物換算重量比において、果糖を77.5部以上82.5部以下、ぶどう糖を10部以上25部以下、果糖及びぶどう糖以外の還元糖を1部以上5部以下含む
2)水分が15〜30重量%である
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の液状甘味料組成物を固形分として0.1〜10%含む清涼飲料。
[5]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の液状甘味料組成物を固形分として0.1〜10%含むスポーツ飲料。
[6]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の液状甘味料組成物を固形分として0.1〜10%含む炭酸飲料。
[7]さらに高甘味度甘味料を甘味料として0.001〜0.007重量%添加する上記[4]記載の清涼飲料。
[8]さらに高甘味度甘味料を甘味料として0.001〜0.007重量%添加する上記[5]記載のスポーツ飲料。
[9]さらに高甘味度甘味料を甘味料として0.001〜0.007重量%添加する上記[6]記載の炭酸飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、高果糖液糖と同等の甘味質・キレを再現した良好な甘味質を有する液状甘味料組成物が提供できる。本発明の液状甘味料組成物を、夏場等の異性化液糖の大量需要期に高果糖液糖の代わりに供給することで、高果糖液糖の使用量減少による果糖ぶどう糖液糖の安定的な供給も可能になる。
さらに、本発明の液状甘味料組成物は、果糖分が90部以上の高果糖液糖と同等の甘味・キレを再現したものであることから、清涼飲料水、スポーツ飲料等の最終製品に、高果糖液糖と同量添加した場合でも同等の甘味質・キレを維持しながら、価格は大幅に削減できるという利点がある。さらに高甘味度甘味料を併用した場合にはボディ感を付与できるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の「液状甘味料組成物」は、無水物換算重量比において、果糖を65部以上85部以下、ぶどう糖を5部以上35部以下、果糖及びぶどう糖以外の還元糖を1部以上10部以下含み、かつ、水分が10〜30重量%である組成物のことをいう。
このような本発明の「液状甘味料組成物」は、果糖が90部以上の高果糖液糖と同等の甘味とキレを有するものである。「液状甘味料組成物」として、果糖が65部未満であると甘味度とキレが不足し、85部を超えると大幅な価格削減には不足となる。また、ぶどう糖が5部未満であるとボディ感が不足し、35部を超えるとキレが不足となる。
このうち「果糖及びぶどう糖以外の還元糖」とは、社団法人 日本農林規格協会(JAS協会)のJAS規格で規定される果糖及びぶどう糖以外の還元糖のことをいい、例えば、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース等が挙げられる。
【0009】
本発明の「液状甘味料組成物」はさらに、無水物換算重量比において、果糖を67.5部以上77.5部未満、ぶどう糖を10部以上35部以下、果糖及びぶどう糖以外の還元糖を1部以上5以下含み、かつ、水分が10〜30重量%である液状甘味料組成物であることが好ましい。
また、無水物換算重量比において、果糖を77.5部以上82.5部以下、ぶどう糖を10部以上25部以下、果糖及びぶどう糖以外の還元糖を1部以上5以下含み、かつ、水分が10〜30重量%である液状甘味料組成物であることも好ましい。
【0010】
このような本発明の「液状甘味料組成物」の製造にあたり、果糖の原料として、ぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、又は高果糖液糖等の異性化糖や、結晶果糖を溶解して液状としたもの等が挙げられる。これらは一種を原料としても、二種以上を組み合わせて原料としても良い。
また、ぶどう糖の原料としては、異性化糖、液状ぶどう糖、水あめ、結晶ぶどう糖を溶解して液状としたもの等が挙げられる。これらも一種を原料としても、二種以上を組み合わせて原料としても良い。
【0011】
本発明の「清涼飲料」とは、アルコール分1%未満の飲用の液体であって、味や香りがある飲料水のことをいい、本発明の「液状甘味料組成物」を固形分として0.1〜10%含み、果糖が90部以上の高果糖液糖を固形分として0.1〜10%含む清涼飲料と同等の甘味質・キレを有するものであることが好ましい。
また、本発明の「スポーツ飲料」とは、発汗等によって体から失われてしまった水分やミネラル分を効率良く補給することを目的とした飲料のことをいい、本発明の「液状甘味料組成物」を固形分として0.1〜10%含み、果糖が90部以上の高果糖液糖を固形分として0.1〜10%含むスポーツ飲料と同等の甘味質・キレを有するものであることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の「炭酸飲料」とは、飲用に適した水に二酸化炭素を圧入した飲料のことをいい、これに甘味料、酸味料、フレーバリング、果汁等を加えたものも含まれる。本発明の「液状甘味料組成物」を固形分として0.1〜10%含み、果糖が90部以上の高果糖液糖を固形分として0.1〜10%含む炭酸飲料と同等の甘味質・キレを有するものであることが好ましい。
これらの「清涼飲料」、「スポーツ飲料」及び「炭酸飲料」は、さらに高甘味度甘味料を甘味料として0.001〜0.007重量%添加したものであってもよい。「高甘味度甘味料」は、飲用に適したものであればいずれのものであってもよく、例えばスクラロース等が挙げられる。
【実施例】
【0013】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)75.0kg、高果糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFS−95、水分24.5%)25.0kgを攪拌混合し、液状甘味料組成物1を製造した。
(実施例2)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)62.5kg、高果糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFS−95、水分24.5%)37.5kgを攪拌混合し、液状甘味料組成物2を製造した。
(実施例3)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)50.0kg、高果糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFS−95、水分24.5%)50.0kgを攪拌混合し、液状甘味料組成物3を製造した。
(実施例4)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)37.5kg、高果糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFS−95、水分24.5%)62.5kgを攪拌混合し、液状甘味料組成物4を製造した。
上記実施例1〜4にて製造した各液状甘味料組成物について原料の糖組成を測定し、それぞれ配合比から求められた組成(%)、果糖、ぶどう糖、果糖及びぶどう糖以外の還元糖の割合、水分(重量%)を表1に示した。
【0014】
【表1】
【0015】
(実施例5)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)78.652kg、結晶果糖(Tate&Lyle社製、果糖99.97%)16.123kg、精製水5.225kgを攪拌混合し、液状甘味料組成物5を製造した。
(実施例6)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)67.416kg、結晶果糖(Tate&Lyle社製、果糖99.97%)24.609kg、精製水7.975kgを攪拌混合し、液状甘味料組成物6を製造した。
(実施例7)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)56.180kg、結晶果糖(Tate&Lyle社製、果糖99.97%)33.094kg、精製水10.726kgを攪拌混合し、液状甘味料組成物7を製造した。
(実施例8)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)44.944kg、結晶果糖(Tate&Lyle社製、果糖99.97%)41.580kg、精製水13.476kgを攪拌混合し、液状甘味料組成物8を製造した。
上記実施例5〜8にて製造した各液状甘味料組成物について原料の糖組成を測定し、それぞれ配合比から求められた組成(%)、果糖、ぶどう糖、果糖及びぶどう糖以外の還元糖の割合、水分(重量%)を表2に示した。
【0016】
【表2】
【0017】
(実施例9−12)
上記実施例1−4と同様に製造した液状甘味料組成物1−4をそれぞれ26.49gと精製水173.51gを混合し、固形分として10%含む水溶液を表3に示した混合割合で処方した。
【0018】
<比較試験1>
実施例9−12にて処方した水溶液と、次の比較例1〜3として処方した水溶液について官能評価を行い、甘味質、キレ等を比較した。また、グラニュー糖(砂糖)と比較した場合のコストメリットについても評価した。
(比較例1)
グラニュー糖(株式会社パールエース製)20.01gと精製水179.99gを混合し、固形分として10%含む水溶液を表3に示した混合割合で処方した。
(比較例2)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)26.49gと精製水173.51gを混合し、固形分として10%含む水溶液を表3に示した混合割合で処方した。
(比較例3)
高果糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFS−95、水分24.5%)26.49gと精製水173.51gを混合し、固形分として10%含む水溶液を表3に示した混合割合で処方した。
【0019】
<官能評価>
パネラー5名で次の1〜4の評価項目について、それぞれ比較例1のグラニュー糖を含む水溶液に近ければ「0」、比較例3の高果糖液糖を含む水溶液に近ければ「5」として、0、1、2、3、4、5点のいずれかの点数を与え、5名の平均点が、1点未満であれば「−」、1点以上2点未満であれば「×」、2点以上3点未満であれば「△」、3点以上4点未満であれば「○」、4点以上であれば「◎」と評価した。
【0020】
<評価項目>
1.甘味の発現の早さ:0(遅い:砂糖)〜5(早い:高果糖液糖)
2.甘味トップの高さ:0(低い:砂糖)〜5(高い:高果糖液糖)
3.甘味トップの幅:0(広い:砂糖)〜5(狭い:高果糖液糖)
4.キレ:0(悪い:砂糖)〜5(良い:高果糖液糖)
【0021】
<コストメリットの評価>
グラニュー糖を1とした場合、高果糖液糖は0.8〜0.95で、異性化糖(果糖分70%)は0.7〜0.85、異性化糖(果糖分55%)は0.65〜0.8であるとし、原料の配合割合に応じて、より安価でコストメリットが大きいものを「◎」(非常に大きい)とし、以下「○」(大きい)、「△」(やや大きい)、「×」(小さい)として評価した。
【0022】
【表3】
【0023】
その結果、表3に示したように、比較例1のグラニュー糖を含む水溶液は、1.甘味の発現の早さが遅く、2.甘味トップの高さが低く、3.甘味トップの幅が広く、4.キレが悪く、清涼感を感じにくかった。
比較例2の果糖ぶどう糖液糖を含む水溶液は、1.甘味の発現の早さ、4.キレともに比較例1より良く、清涼感をやや感じやすかった。
比較例3の高果糖液糖を含む水溶液は、比較例1や比較例2の水溶液より、1.甘味の発現の早さが早く、2.甘味トップの高さも高く、3.甘味トップの幅も狭く、また4.キレも非常に良く、清涼感を強く感じた。ただ、比較例1や比較例2の水溶液より甘味トップの幅が狭いため、ややボディ感・飲み応えに欠ける傾向があった。
【0024】
実施例9の水溶液は、1.甘味の発現の早さが比較例1のグラニュー糖を含む水溶液より良く、3.甘味トップの幅が広く、4.キレも良い為、清涼感と飲み応えを感じた。しかし、2.甘味のトップが低く、甘さが物足りなくも感じた。また、グラニュー糖とのコストメリットが大きかった。
実施例10の水溶液は、1.甘味の発現の早さや、4.キレが比較例3の高果糖液糖を含む水溶液に近く、2.甘味トップの高さも実施例9の水溶液より高く、清涼感を強く感じた。また、3.甘味トップに幅がややあるため、比較例3の水溶液よりややボディ感を感じた。グラニュー糖とのコストメリットは、実施例9の水溶液よりやや低いものの十分なコストメリットがあった。
実施例11の水溶液は、1.甘味の発現の早さや、2.甘味トップの高さは比較例3の水溶液と同様の傾向があるが、4.キレが悪く不満足であった。
実施例12の水溶液は、1.甘味の発現の早さ、2.甘味トップの高さ、3.甘味トップの幅ともに実施例9より良く、清涼感を感じた。また、グラニュー糖とのコストメリットは、実施例9−11の水溶液より低いものであった。
【0025】
(実施例13−16)
上記実施例5−8と同様に製造した液状甘味料組成物5−8をそれぞれ26.49gと精製水173.51gを混合し、固形分として10%含む水溶液を表4に示した混合割合で処方した。
【0026】
<比較試験2>
実施例13−16にて処方した水溶液と、上記の比較例1、2及び次の比較例4として処方した水溶液について、比較試験1と同様に官能評価を行い、甘味質、キレ等を比較した。
(比較例4)
結晶果糖液(Tate&Lyle社製、果糖99.97%)20.01gと精製水179.99gを混合し、固形分として10%含む水溶液を表4に示した混合割合で処方した。
【0027】
【表4】
【0028】
その結果、表4に示したように、比較例4の結晶果糖液を含む水溶液は、比較例3の高果糖液糖を含む水溶液と同様に、1.甘味の発現の早さ、2.甘味トップの高さ、4.キレとも非常に良く、清涼感を強く感じた。
実施例13の水溶液は、実施例9の水溶液と同様に、1.甘味の発現の早さが比較例1のグラニュー糖を含む水溶液より良く、また3.トップの幅が広く、4.キレもある為、清涼感と飲み応えを感じた。
実施例14の水溶液は、実施例10の水溶液と同様に、1.甘味の発現の早さ、4.キレが比較例4の結晶果糖液を含む水溶液に近く、また3.甘味トップの高さも実施例9の水溶液より高く、清涼感を強く感じた。また、3.甘味トップに幅がややあるため比較例4の結晶果糖液を含む水溶液よりややボディ感を感じた。
実施例15の水溶液は、実施例11の水溶液と同様に、1.甘味の発現の早さ、3.甘味トップの高さは比較例4の結晶果糖液を含む水溶液と同様の傾向があるが、4.キレが悪く不満足であった。
実施例16の水溶液は、実施例12の水溶液と同様に、1.甘味の発現の早さ、4.キレ、3.甘味トップの高さが実施例9の水溶液や実施例13の水溶液より良く、清涼感を強く感じた。
【0029】
また、比較試験1及び比較試験2の結果を比較したところ、実施例9−12は高果糖液糖を果糖の原料として使用しており、実施例13−16は結晶果糖を使用している。これらの糖は、果糖以外の糖の組成が異なるが同等の果糖量(実施例9と実施例13、実施例10と実施例14、実施例11と実施例15、実施例2と実施例16)においては甘味に違いは認められなかった。従って、この結果より、1.甘味の発現の早さや4.キレにおいて、使用する液状甘味料組成物の果糖割合が重要であることが確認できた。
【0030】
(実施例17−20)
上記実施例1−4と同様に製造した液状甘味料組成物1−4をそれぞれ11.92gと、クエン酸0.3g、食塩0.08g、スクラロース0.00384g、グレープフルーツフレーバー0.2g、精製水残部からなるスポーツ飲料を表5−1に示した混合割合で処方した。
【0031】
<比較試験3>
実施例17−20にて処方したスポーツ飲料と、次の比較例5−8として処方したスポーツ飲料について、比較例5のグラニュー糖を含むスポーツ飲料に近ければ「0」とした以外は比較試験1と同様に官能評価を行い、甘味質、キレ等を比較した。また、この官能評価とともに、次の評価項目5、6についても官能評価を行った。このうち、ボディ感については、水に近ければ「0」とし、比較例5のグラニュー糖を含むスポーツ飲料に近ければ「5」とした。
【0032】
<評価項目>
5.フレーバーとの相性:0(悪い:砂糖)〜5(良い:高果糖液糖)
6.ボディ感:0(弱い:水)〜5(強い:砂糖)
【0033】
(比較例5)
グラニュー糖(株式会社パールエース製)を9.00g、クエン酸0.3g、食塩0.08g、スクラロース0.00384g、グレープフルーツフレーバー0.2g、精製水残部からなるスポーツ飲料を表5−2に示した混合割合で処方した。
(比較例6)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)を11.92g、クエン酸0.3g、食塩0.08g、スクラロース0.00384g、グレープフルーツフレーバー0.2g、精製水残部からなるスポーツ飲料を表5−2に示した混合割合で処方した。
(比較例7)
高果糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFS−95、水分24.5%)を11.92g、クエン酸0.3g、食塩0.08g、スクラロース0.00384g、グレープフルーツフレーバー0.2g、精製水残部からなるスポーツ飲料を表5−2に示した混合割合で処方した。
(比較例8)
結晶果糖液(Tate&Lyle社製、果糖99.97%)を9.00g、クエン酸0.3g、食塩0.08g、スクラロース0.00384g、グレープフルーツフレーバー0.2g、精製水残部からなるスポーツ飲料を表5−2に示した混合割合で処方した。
【0034】
【表5-1】
【0035】
【表5-2】
【0036】
その結果、表5−2に示したように、比較例5のグラニュー糖を含むスポーツ飲料は、1.甘味の発現の早さが遅く、2.甘味トップの高さが低く、3.甘味トップと幅が広く、4.キレが悪く清涼感を感じにくかった。また、甘味とフレーバーを同時に感じてしまい、フレーバーリリースが良くなかった。さらに、甘味料として添加している高甘味度甘味料のスクラロースは砂糖に近い甘味質であるため、比較例1のグラニュー糖を含む水溶液よりもキレが悪く清涼感を感じにくい飲料であった。
比較例6の果糖ぶどう糖液糖を含むスポーツ飲料は、1.甘味の発現の早さ、4.キレともに比較例1のグラニュー糖を含む水溶液より良く、清涼感がやや感じやすかった。さらに、甘味とグレープフルーツの爽やかさを同時に感じ、フレーバーリリースが良くなかった。また、高甘味度甘味料のスクラロースとも近い甘味のパターンであるが、比較例5のグラニュー糖を含むスポーツ飲料より清涼感がやや感じやすい飲料であった。
【0037】
比較例7の高果糖液糖を含むスポーツ飲料は、比較例5や比較例6のスポーツ飲料より、1.甘味の発現の早さ、2.甘味トップの高さ、4.キレとも非常に良く、清涼感を感じた。さらに、比較例7のスポーツ飲料は高甘味度甘味料のスクラロースの添加によって、3.甘味トップの持続がやや長くなり、ややボディ感が付与される傾向であった。比較例7のスポーツ飲料はキレを感じ始めるとグレープフルーツの爽やかさを感じるため、フレーバーリリースが良い飲料であった。また、スクラロースの添加によって後味が引っ張られてしまい、比較例3の高果糖液糖を含む水溶液に比べるとキレはやや弱く感じられたが、清涼感と飲み応えがあるおいしい飲料であった。
比較例8の結晶果糖液を含むスポーツ飲料は、比較例7のスポーツ飲料と同様の甘味質であり、果糖の由来が結晶果糖でも高果糖液糖でも大きく甘味質には変わりはなかった。フレーバーとの相性も比較例7と同様であった。
【0038】
実施例17のスポーツ飲料は、1.甘味の発現の早さ、4.キレが良く、3.トップの幅がある為、清涼感と飲み応えを感じた。また、2.甘味のトップは低いものの高甘味度甘味料のスクラロースに後味が引っ張られておらず、キレと清涼感が感じやすかった。また、グレープフルーツの爽やかさが甘味のキレと重なって感じる為、フレーバーリリースが良い飲料であった。また、6.ボディ感も十分であった。
実施例18のスポーツ飲料は、1.甘味の発現の早さ、4.キレが比較例7、比較例8のスポーツ飲料に近く、2.甘味トップの高さも実施例17のスポーツ飲料より良く、清涼感を強く感じた。また、甘味トップにやや幅がありボディ感を感じると共にスクラロースに後味が引っ張られておらず、比較例7、比較例8のスポーツ飲料よりキレと清涼感をやや強く感じるおいしい飲料であった。また、強いキレと共にグレープフルーツの爽やかさを感じることによって清涼感のある飲料であった。また、6.ボディ感も十分であった。
【0039】
実施例19のスポーツ飲料は、1.甘味の発現の早さ、2.甘味トップの高さ、4.キレが実施例18のスポーツ飲料より良く、清涼感を強く感じた。また、3.甘味トップにやや幅がありボディ感を感じると共にスクラロースに後味が引っ張られておらず、実施例18のスポーツ飲料よりキレと清涼感をやや強く感じるおいしい飲料であった。また、強いキレと共にグレープフルーツの爽やかさを感じることによって清涼感のある飲料であり、比較例7、比較例8のスポーツ飲料より飲んでいて飽きが来ないため、飲み易い飲料であった。また、6.ボディ感も良好であった。
実施例20のスポーツ飲料は、1.甘味の発現の早さ、4.キレ、3.甘味トップの高さが実施例18のスポーツ飲料より良く、清涼感を強く感じた。さらに、高甘味度甘味料のスクラロースの添加によって甘味トップの持続がやや長くなり、ややトップの幅が付与される傾向であった。また、スクラロースの添加によって後味がやや引っ張られてしまい、キレはやや弱いと感じられたが、清涼感と飲み応えがあるおいしい飲料であった。また、グレープフルーツの爽やかさが甘味のキレと重なって感じる為、フレーバーリリースが良い飲料であった。また、6.ボディ感も良好であった。
これら、実施例17−20のスポーツ飲料は果糖量を調整した飲料となっているが、スクラロースの後味の引っ張り、甘味トップの高さ、甘味トップの幅、フレーバーとの相性、キレなどが果糖量に関与していた。従って、これらの結果より、使用する液状甘味料組成物の果糖割合が重要であることが確認できた。
【0040】
(実施例21−24)
上記実施例1−4と同様に製造した液状甘味料組成物1−4をそれぞれ26.49gと、クエン酸0.2g、サイダーフレーバー0.2g、炭酸水残部からなる炭酸飲料を表6−1に示した混合割合で処方した。
【0041】
<比較試験3>
実施例21−24にて処方した炭酸飲料と、次の比較例9−12として処方した炭酸飲料について、比較例9のグラニュー糖を含む炭酸飲料に近ければ「0」とした以外は比較試験1、比較試験2と同様に1.甘味の発現の早さ、4.キレ、5.フレーバーとの相性について官能評価を行った。また、6.ボディ感については、水に近ければ「0」とし、比較例5のグラニュー糖を含む炭酸飲料に近ければ「5」として官能評価を行った。
【0042】
(比較例9)
グラニュー糖(株式会社パールエース製)を20.00g、クエン酸0.2g、サイダーフレーバー0.2g、炭酸水残部からなる炭酸飲料を表6−2に示した混合割合で処方した。
(比較例10)
果糖ぶどう糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFM−75、水分24.5%)を26.49g、クエン酸0.2g、サイダーフレーバー0.2g、炭酸水残部からなる炭酸飲料を表6−2に示した混合割合で処方した。
(比較例11)
高果糖液糖(日本コーンスターチ株式会社製、HFS−95、水分24.5%)を26.49g、クエン酸0.2g、サイダーフレーバー0.2g、炭酸水残部からなる炭酸飲料を表6−2に示した混合割合で処方した。
(比較例12)
結晶果糖液(Tate&Lyle社製、果糖99.97%)を20.00g、クエン酸0.2g、サイダーフレーバー0.2g、炭酸水残部からなる炭酸飲料を表6−2に示した混合割合で処方した。
【0043】
【表6-1】
【0044】
【表6-2】
【0045】
その結果、表6−2に示したように、比較例9のグラニュー糖を含む炭酸飲料は、1.甘味の発現の早さが遅く、2.キレが悪く清涼感を感じにくかった。また、4.ボディ感を感じやすく、昔ながらのおいしいサイダーであった。
比較例10の果糖ぶどう糖液糖を含む炭酸飲料は、1.甘味の発現の早さ、2.キレともに比較例1のグラニュー糖を含む水溶液より良く、清涼感がやや感じやすかった。さらに、甘味とフレーバーを同時に感じてしまい、サイダー感が弱く、また嫌な後味を感じた。
【0046】
比較例11の高果糖液糖を含む炭酸飲料は、比較例9や比較例10の炭酸飲料より、1.甘味の発現の早さ、2.キレとも非常に良く、清涼感を感じた。比較例11の炭酸飲料はキレを感じ始めるとサイダーの爽やかさを感じるため、フレーバーリリースが良い飲料であった。また、ボディ感が弱く、スッキリとした炭酸飲料である為、飲み応えを弱く感じるサイダーであった。
比較例12の結晶果糖液を含む炭酸飲料は、比較例11の炭酸飲料と同様の甘味質であり、果糖の由来が結晶果糖でも高果糖液糖でも大きく甘味質には変わりはなかった。フレーバーとの相性も比較例11と同様であった。
【0047】
実施例21の炭酸飲料は、1.甘味の発現の早さ、2.キレが良く、清涼感と飲み応えを感じた。また、サイダーの爽やかさが甘味のキレと重なって感じる為、フレーバーリリースが良い飲料であった。また、4.ボディ感も十分であった。
実施例22の炭酸飲料は、1.甘味の発現の早さ、2.キレが比較例11、比較例12の炭酸飲料に近く、清涼感を強く感じた。また、甘味トップにやや幅がありボディ感を感じると共に、比較例11、比較例12の炭酸飲料よりキレと清涼感をやや強く感じるおいしい飲料であった。また、強いキレと共にサイダーの爽やかさを感じることによって清涼感のある飲料であり、比較例9、比較例10の炭酸飲料と同程度のボディ感もあり、比較例11、比較例12の炭酸飲料より飲んでいて飽きが来ないため、飲み応えがあり、飲み易い炭酸飲料であった。
【0048】
実施例23の炭酸飲料は、1.甘味の発現の早さ、2.キレが実施例22の炭酸飲料より良く、清涼感を強く感じた。また、甘味トップにやや幅がありボディ感を感じると共に、実施例22の炭酸飲料よりキレと清涼感をやや強く感じるおいしい飲料であった。
また、強いキレと共にサイダーの爽やかさを感じることによって清涼感のある飲料であり、比較例11、比較例12の炭酸飲料より飲んでいて飽きが来ないため、飲み易い炭酸飲料であった。
実施例24の炭酸飲料は、1.甘味の発現の早さ、2.キレが実施例22の炭酸飲料より良く、清涼感を強く感じた。また、サイダーの爽やかさが甘味のキレと重なって感じる為、フレーバーリリースが良く、清涼感と飲み応えがあるおいしい飲料であった。
これら、実施例21−24の炭酸飲料は果糖量を調整した飲料となっているが、甘味の発現、甘味トップの高さ、甘味トップの幅、フレーバーとの相性、キレ、ボディ感などが果糖量に関与していた。従って、これらの結果より、使用する液状甘味料組成物の果糖割合が重要であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、経済的意義も非常に大きい。すなわち、高果糖液糖と同等の甘味質・キレを再現でき、コストダウンできるので食品産業において魅力ははかりしれない。また、高果糖液糖の供給を減らすことにより、需要の大きな果糖分が55%の果糖ぶどう糖液糖をより多く安定的に供給できる為、食品産業において魅力ははかりしれない。