(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エッジシールを封止するステップが、前記ディスプレイ組立体を圧縮して前記第1の基板と前記第2の基板とを少なくとも部分的に互いに押し付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
前記ディスプレイ組立体が充填された後に、シール材料を塗布し前記ディスプレイ組立体の縁部に沿って位置するホールを充填するステップをさらに含み、前記ホールが前記エッジシール内の開口部を含む、請求項1に記載の方法。
前記ディスプレイ組立体を充填するステップが、前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方に流体を供給するステップを含み、前記流体が、前記流体の蒸気圧と実質的に等しい平衡蒸気圧で供給される、請求項1に記載の方法。
前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方に流体を供給するステップの後に、前記第1の基板及び前記第2の基板を揃えるステップをさらに含み、前記第1の基板及び前記第2の基板が、前記流体の蒸気圧と実質的に等しい平衡蒸気圧で揃えられる、請求項11に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を完全に理解できるように、次に、画像を表示する装置および方法を含む例示的な実施形態について説明する。しかし、当業者には、本明細書において説明するシステムおよび方法が、対処中の用途に対して適宜適合され修正されてよく、かつ本明細書において説明するシステムおよび方法が、他の適切な用途に使用されてよく、かつそのような他の追加および修正が本発明の範囲から逸脱しないことが理解されよう。
【0035】
図1Aは、本発明の例示的な実施形態による直視型MEMS方式ディスプレイ装置100の概略図である。ディスプレイ装置100は、行列状に配置された複数の光変調器102a〜102d(総称的に「光変調器102」)を含む。ディスプレイ装置100では、光変調器102aおよび102dは開状態であり、光を通過させる。光変調器102bおよび102cは閉状態であり、光の通過を妨げる。ディスプレイ装置100は、光変調器102a〜102dの状態を選択的に設定することによって、ランプ105によって照明される場合にバックライト付きディスプレイ用の画像104を形成するのに利用することができる。別の実装形態では、装置100は、装置の前方から生じる周囲光を反射することによって画像を形成してもよい。別の実装形態では、装置100は、ディスプレイの前方に位置するランプ、すなわちフロントライトからの光を反射することによって画像を形成してもよい。閉状態および開状態の一方では、光変調器102は、光路における光に干渉し、たとえば、制限なしに、光の特性または経路を遮断、反射、吸収、フィルタリング、偏光、回折、またはその他の方法で変更する。
【0036】
ディスプレイ装置100では、各光変調器102は、画像104内の画素106に対応する。他の実装形態では、ディスプレイ装置100は、複数の光変調器を利用して画像104内の画素106を形成してもよい。たとえば、ディスプレイ装置100は、3つの色特異的(color−specific)光変調器102を含んでもよい。ディスプレイ装置100は、特定の画素106に対応する1つまたは複数の色特異的光変調器102を選択的に開くことによって、画像104内に色画素106を生成してもよい。別の実施例では、ディスプレイ装置100は、画像104にグレースケールを実現する画素106当たり2つ以上の光変調器102を含む。画像に関して、「画素」は、画像の解像度によって形成される最小の絵素に相当する。ディスプレイ装置100の構造構成要素に関して、語「画素」は、画像の単一の画素を形成する光を変調するのに利用される機械的構成要素と電気的構成要素の組合せを指す。
【0037】
ディスプレイ装置100は、撮像光学機器を必要としないという点で直視型ディスプレイである。ユーザは、ディスプレイ装置100を直接見ることによって画像を見る。代替実施形態では、ディスプレイ装置100は投影ディスプレイに組み込まれる。そのような実施形態では、ディスプレイは、スクリーンまたは壁に光を投影することによって画像を形成する。投影用途では、ディスプレイ装置100は、投影される画像104よりも実質的に小さい。
【0038】
直視型ディスプレイは透過モードまたは反射モードのいずれかで動作してもよい。透過ディスプレイでは、光変調器が、ディスプレイの後方に位置するランプから発された光をフィルタリングまたは選択的に遮断する。ランプからの光は、任意に光導波路または「バックライト」に注入される。透過直視型ディスプレイ実施形態は、透明基板またはガラス基板上に構成され、光変調器を含む1枚の基板がバックライトの真上に位置するサンドイッチ組立体構成を容易にする。いくつかの透過ディスプレイ実施形態では、カラーフィルタ材料を各変調器102に関連付けることによって色特異性光変調器が作製される。他の透過ディスプレイ実施形態では、後述のように、それぞれの異なる原色を有するランプに交互に照明させることによりフィールド順次カラー方法を使用することによって色を生成することができる。
【0039】
各光変調器102は、シャッタ108と開口109とを含む。画像104内の画素106を照明するとき、シャッタ108は、光が開口109を通過して観察者の方へ送られるように位置する。画素106を照明しないようにするとき、シャッタ108は、光が開口109を通過するのを妨げるように位置する。開口109は、反射材料または光吸収材料を貫通するようにパターン化された開口部によって形成されている。
【0040】
ディスプレイ装置は、基板に接続されるとともにシャッタの移動を制御するために光変調器に接続された制御マトリックスも含む。制御マトリックスは、画素行当たり少なくとも1つの書込み許可配線110(「スキャンライン配線」とも呼ばれる)と、画素列ごとの1つのデータ配線112と、すべての画素または少なくともディスプレイ装置100内の複数の列と複数の行の両方における画素に共通の電圧を供給する1つの共通配線114とを含む、一連の電気配線(たとえば、配線110、112、および114)を含む。適切な電圧(「書込み許可電圧V
we」)が印加されたことに応答して、所与の画素行用の書込み許可配線110が、新しいシャッタ移動命令を受け入れるように行中の画素を用意する。データ配線112は、新しい移動命令をデータ電圧パルスの形で伝達する。データ配線に印加されたデータ電圧パルスは、いくつかの実装形態では、シャッタの静電移動に直接寄与する。他の実装形態では、データ電圧パルスは、スイッチ、たとえば、通常データ電圧よりも高い別個の作動電圧の光変調器102への印加を制御するトランジスタまたは他の非線形回路要素を制御する。これらの作動電圧を印加すると、シャッタ108が静電駆動されて移動する。
【0041】
図1Bはディスプレイ装置100のブロック
図150である。
図1Aおよび
図1Bを参照する。ディスプレイ装置100は、ブロック
図150に示されているような上述のディスプレイ装置100の素子だけでなく、複数のスキャンドライバ152(「書込み許可電圧源」とも呼ばれる)と複数のデータドライバ154(「データ電圧源」とも呼ばれる)とを含む。スキャンドライバ152は、スキャンライン配線110に書込み許可電圧を印加する。データドライバ154は、データ配線112にデータ電圧を印加する。ディスプレイ装置のいくつかの実施形態では、データドライバ154は、特に画像104のグレースケールがアナログ的に得られる場合に光変調器にアナログデータ電圧を供給するように構成される。アナログ動作では、光変調器102は、様々な中間電圧がデータ配線112を通して印加されるときに、シャッタ108において様々な中間開状態が生じ、したがって、画像104内に様々な中間照明状態すなわちグレースケールが生じるように設計される。
【0042】
他の場合には、データドライバ154は、縮小セットの2つ、3つ、または4つのデジタル電圧レベルのみを制御マトリックスに印加するように構成される。これらの電圧レベルは、各シャッタ108に開状態または閉状態のいずれかをデジタル的に設定するように設計される。
【0043】
スキャンドライバ152とデータドライバ154はデジタルコントローラ回路156(「コントローラ156」とも呼ばれる)に接続されている。コントローラ156は、入力画像信号157を処理してディスプレイ100の空間アドレス指定機能およびグレースケール機能に適切なデジタル画像フォーマットに変換する受信処理モジュール158を含む。各画像の画素位置およびグレースケールデータはフレームバッファ159に記憶され、したがって、データを必要に応じてデータドライバ154に供給することができる。データは、ほぼ連続的にデータドライバ154に送られ、行ごとおよび画像フレームごとにグループ分けされた所定のシーケンスとして構成される。データドライバ154は、直並列データ変換器、レベルシフティング、および用途によってはデジタルアナログ電圧変換器を含んでもよい。
【0044】
ディスプレイ装置100は任意に、共通電圧源とも呼ばれる1組の共通ドライバ153を含む。いくつかの実施形態では、共通ドライバ153は、たとえば一連の共通配線114に電圧を供給することによって、光変調器のアレイ103内のすべての光変調器にDC共通電位を供給する。他の実施形態では、共通ドライバ153は、コントローラ156からのコマンドに従って、光変調器のアレイ103に電圧パルスまたは信号、たとえばアレイ103の複数の行および列におけるすべての光変調器の同時作動を駆動および/または開始することのできるグローバル作動パルスを発行する。
【0045】
それぞれの異なる表示機能用のすべてのドライバ(たとえば、スキャンドライバ152、データドライバ154、および共通ドライバ153)に対して、コントローラ156内のタイミング制御モジュール160が時刻同期をとる。モジュール160からのタイミングコマンドは、ランプドライバ168を介した赤色ランプ、緑色ランプ、および青色ランプ、ならびに白色ランプ(それぞれ162、164、166、および167)の照明と、画素のアレイ103内の特定の行の書込み許可および順序付けと、データドライバ154からの電圧の出力と、光変調器を作動させる電圧の出力とを調和させる。
【0046】
コントローラ156は、アレイ103内の各シャッタ108を新しい画像104に適切な照明レベルに再設定することのできる順序付け方式またはアドレス指定方式を決定する。適切なアドレス指定技術、画像形成技術、およびグレースケール技術の詳細は、参照により全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/326696号明細書および米国特許出願第11/643042号明細書に記載されている。新しい画像104を周期間隔に設定してもよい。たとえば、ビデオディスプレイの場合、カラー画像104またはビデオフレームが10ヘルツから300ヘルツの範囲の周波数でリフレッシュされる。いくつかの実施形態では、アレイ103に対する画像フレームの設定とランプ162、164、および166の照明との同期がとられ、それによって、交互に代わる画像フレームが、赤色、緑色、および青色のような、交互に代わる一連の色によって照明される。それぞれの色ごとの画像フレームをカラーサブフレームと呼ぶ。フィールド順次カラー方法と呼ばれるこの方法では、カラーサブフレームが20Hzを超える周波数で交互に表示される場合、人間の脳は交互に代わるフレーム画像を平均化し、様々な連続した色を有する画像を認識する。代替実装形態では、原色を有する4つ以上のランプを、赤色、緑色、および青色以外の原色を使用するディスプレイ装置100において使用してもよい。
【0047】
いくつかの実装形態では、ディスプレイ装置100がシャッタ108を開状態と閉状態とにデジタル的に切り替えるように設計され、コントローラ156は、各画像フレーム間のアドレス指定順序および/または時間間隔を決定し、適切なグレースケールを有する画像104を生成する。特定のフレームにおいてシャッタ108が開かれる時間を調節することによって可変レベルのグレースケールを生成するプロセスを時分割グレースケールと呼ぶ。時分割グレースケールのいくつかの実施形態では、コントローラ156は、シャッタ108が開状態のままでいられる期間または各フレーム内の時間を、その画素の所望の照明レベルまたはグレースケールに応じて求める。他の実装形態では、コントローラ156は、画像フレームごとに、アレイ103の複数の行および列に複数のサブフレーム画像を設定し、かつコントローラは、各サブフレーム画像が、グレースケール用の符号語内に使用されるグレースケール値または有意値に比例して照明される持続時間を変更する。たとえば、一連のサブフレーム画像の照明時間をバイナリ符号化系列1、2、4、8・・・に比例して変更することができる。次に、アレイ103内の各画素用のシャッタ108を、グレーレベルの画素のバイナリ符号化語内の対応する位置の値に応じてサブフレーム内で開状態または閉状態に設定する。
【0048】
他の実装形態では、コントローラは、特定のサブフレーム画像に望ましいグレースケール値に比例してランプ162、164、および166からの光の強度を変更する。シャッタ108のアレイから色およびグレースケールを形成するのにいくつかの混成技術も利用可能である。たとえば、上述の時分割技術を画素当たりに複数のシャッタ108を使用する技術と組み合わせてもよく、あるいは特定のサブフレーム画像用のグレースケールを、サブフレームタイミングとランプ強度の両方を組み合わせることによって確立してもよい。これらの実施形態およびその他の実施形態の詳細は、上述の米国特許出願第11/643042号明細書に記載されている。
【0049】
いくつかの実装形態では、画像状態104に関するデータが、コントローラ156により、スキャンラインとも呼ばれる個々の行を順次アドレス指定することによって変調器アレイ103にロードされる。シーケンス内の行またはスキャンラインごとに、スキャンドライバ152が、アレイ103のその行用の書込み許可配線110に書込み許可電圧を印加し、その後データドライバ154が、所望のシャッタ状態に対応するデータ電圧を、選択された行における列ごとに供給する。このプロセスは、アレイ内のすべての行に対してデータがロードされるまで繰り返される。いくつかの実装形態では、データローディングに関して選択される行のシーケンスは線形であり、アレイ内を1番上から1番下まで進行する。他の実装形態では、選択される行のシーケンスは、視覚的アーチファクトを最低限に抑えるために疑似ランダム化される。他の実装形態では、順序付けが各ブロックによって構成され、あるブロックについては、画像状態104のある部分のみに関するデータが、たとえば、シーケンス内のアレイの5行目おきの行のみをアドレス指定することによってアレイにロードされる。
【0050】
いくつかの実装形態では、アレイ103に画像データをロードするプロセスがシャッタ108を作動させるプロセスと時間的に分離される。これらの実装形態では、変調器アレイ103はアレイ103内の画素ごとのデータメモリ要素を含んでよく、制御マトリックスは、共通ドライバ153からのトリガ信号を伝達し、メモリ要素に記憶されているデータに従って各シャッタ108の同時作動を開始するグローバル作動配線を含んでもよい。多くが米国特許出願第11/643042号明細書に記載されている様々なアドレス指定シーケンスをタイミング制御モジュール160によって調和させることができる。
【0051】
代替実施形態では、画素のアレイ103および画素を制御する制御マトリックスを矩形の行列以外の構成に配置してもよい。たとえば、各画素を六角形アレイまたは曲線行列に配置してもよい。一般に、本明細書では、語スキャンラインは、書込み許可配線を共有する複数の画素を指すものとする。
【0052】
ディスプレイ100は、タイミング制御モジュール160、フレームバッファ159、スキャンドライバ152、データドライバ154、ならびにドライバ153および168を含む複数の機能ブロックで構成されている。各ブロックは、区別可能なハードウェア回路および/または実行可能なコードのモジュールを表すものと理解することができる。いくつかの実装形態では、各機能ブロックは、回路基板および/またはケーブルによって互いに接続されたそれぞれの異なるチップまたは回路として設けられる。あるいは、これらの回路の多くは、同じガラス基板またはプラスチック基板上に画素アレイ103と一緒に製造されてもよい。他の実装形態では、ブロック
図150における複数の回路、ドライバ、プロセッサ、および/または制御機能を、後で画素アレイ103を保持する透明基板に直接結合される単一のシリコンチップ内に一緒に集積してもよい。
【0053】
コントローラ156は、コントローラ156内で実施されるアドレス指定アルゴリズム、色アルゴリズム、および/またはグレースケールアルゴリズムを特定の用途の要件に応じて変更するのを可能にするプログラミングリンク180を含む。いくつかの実施形態では、プログラミングリンク180は、周囲光センサまたは周囲温度センサのような環境センサから情報を伝達し、それによって、コントローラ156は環境条件に応じて撮像モードまたはバックライトパワーを調整することができる。コントローラ156は、ランプに必要であるとともに光変調器の作動に必要なパワーを供給する電力供給入力182も備える。ドライバ152、153、154、および/または168は、必要に応じて、182の入力電圧を、シャッタ108の作動またはランプ162、164、166、および167などのランプの照明に十分な様々な電圧に変換するためのDC−DC変換器を含むかあるいはそのようなDC−DC変換器に関連付けられてもよい。
【0054】
MEMS光変調器
図2Aは、本発明の例示的な実施形態による
図1AのMEMS方式ディスプレイ装置100に組み込むのに適した例示的なシャッタ方式光変調器200の斜視図である。シャッタ方式光変調器200(シャッタ組立体200とも呼ばれる)は、アクチュエータ204に結合されたシャッタ202を含む。アクチュエータ204は、2005年10月14日に出願された米国特許出願第11/251035号明細書に記載された2つの別個の適合電極ビームアクチュエータ205(「アクチュエータ205」)から形成されている。シャッタ202は一方の側においてアクチュエータ205に結合されている。アクチュエータ205は、シャッタ202を、表面203の上方において、表面203に実質的に平行な運動面内を横方向に移動させる。シャッタ202の反対側は、アクチュエータ204によって加えられる力に対抗する復元力を加えるばね207に結合されている。
【0055】
各アクチュエータ205は、シャッタ202をロードアンカー208に連結する適合ロードビーム206を含む。ロードアンカー208は、適合ロードビーム206と一緒に、機械的支持体として働き、シャッタ202を表面203の近くに懸垂した状態に維持する。ロードアンカー208は、適合ロードビーム206およびシャッタ202を表面203に物理的に連結し、ロードビーム206をバイアス電圧、場合によってはグランドに電気的に接続する。
【0056】
各アクチュエータ205は、各ロードビーム206に隣接して位置する適合駆動ビーム216も含む。各駆動ビーム216は、一方の端部の所で、各駆動ビーム216に共有される駆動ビームアンカー218に結合されている。各駆動ビーム216の他方の端部は自由に動く。各駆動ビーム216は、駆動ビーム216の自由端部およびロードビーム206の固定端部の近くにおいてロードビーム206に最も近くなるように湾曲している。
【0057】
表面203は、光を通過させるための1つまたは複数の開口211を含む。シャッタ組立体200が、たとえばシリコンで作られた不透明基板上に形成される場合、表面203は基板の表面であり、開口211は、基板に穴のアレイをエッチングすることによって形成される。シャッタ組立体200が、たとえばガラスまたはプラスチックで作られた透明基板上に形成される場合、表面203は、基板上に付着させた遮光層の表面であり、開口は、表面203に穴211のアレイをエッチングすることによって形成される。開口211は、概ね円形、楕円形、多角形、蛇行形状、または不規則形状であってもよい。
【0058】
動作時には、光変調器200を組み込んだディスプレイ装置は、駆動ビームアンカー218を介して駆動ビーム216に電位を加える。ロードビーム206に第2の電位を印加してもよい。結果として得られる駆動ビーム216とロードビーム206との電位差によって、駆動ビーム216の自由端がロードビーム206の固定端部の方へ引かれ、ロードビーム206のシャッタ端部が駆動ビーム216の固定端部の方へ引かれ、それによって、シャッタ202が横方向に駆動アンカー218の方へ駆動される。適合部材206はばねとして働き、したがって、ビーム206および216の両端間の電圧を除去すると、ロードビーム206がシャッタ202をその最初の位置に押し戻し、ロードビーム206に蓄積していた応力を解放する。
【0059】
シャッタ組立体200は、弾性シャッタ組立体とも呼ばれ、電圧が除去された後でシャッタをその休止位置または弛緩位置に戻すための、ばねのような受動復元力を組み込んでいる。いくつかの弾性復元機構および様々な静電継手を静電アクチュエータに組み込むように設計するかあるいは静電アクチュエータと連動するように設計することができ、シャッタ組立体200に示されている適合ビームは一例に過ぎない。他の実施例は、参照により全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/251035号明細書および第11/326696号明細書に記載されている。たとえば、「開」動作状態と「閉」動作状態との急激な遷移を優先し、多くの場合、シャッタ組立体の双安定動作特性またはヒステレシス動作特性を実現する、非線形性の高い電圧ずれ応答を実現することができる。アナロググレースケール動作に好ましい場合がある、より増分的な電圧ずれ応答およびかなり低減されたヒステレシスを有する他の静電アクチュエータを設計してもよい。
【0060】
弾性シャッタ組立体内のアクチュエータ205は、閉位置または作動位置と弛緩位置とに切り替わって動作すると言える。しかし、設計者は、アクチュエータ205がその弛緩位置にあるときはいつでも、シャッタ組立体200が光を通過させる「開」状態と光を遮断する「閉」状態のいずれかになるように開口211を配置することを選択してもよい。例示のために、本明細書において説明する弾性シャッタ組立体は弛緩状態において開かれるように設計されていると仮定する。
【0061】
多くの場合、制御電子機器がシャッタを開状態および閉状態の各々に静電駆動することができるように、「開」アクチュエータと「閉」アクチュエータの二重セットをシャッタ組立体の一部として設けることが好ましい。
【0062】
ディスプレイ装置100は、代替実施形態では、上述のシャッタ組立体200のような、横シャッタ方式光変調器以外の光変調器を含む。たとえば、
図2Bは、本発明の例示的な実施形態による、
図1AのMEMS方式ディスプレイ装置100の代替実施形態に組み込むのに適したローリングアクチュエータシャッタ方式光変調器220の断面図である。参照により全体が本明細書に組み込まれる、「Electric Display Device」という名称の米国特許第5233459号明細書および「Spatial Light Modulator」という名称の米国特許第5784189号明細書にさらに記載されているように、ローリングアクチュエータ方式光変調器は、固定電極の反対側に配置され、電界が印加されたときに好ましい方向に移動してシャッタを形成するように付勢される可動電極を含む。いくつかの実施形態では、光変調器220は、基板228と絶縁層224との間に配置された平面電極226と、絶縁層224に取り付けられた固定端部230を有する可動電極222とを含む。印加された電圧が存在しない場合、可動電極222の可動端部232は、自由に固定端部230の方へ丸まり、丸まった状態を形成する。電極222と電極226の間に電圧を印加すると、可動電極222が展開し、絶縁層224にぴったりと接し、それによって、可動電極222は、光が基板228を透過するのを妨げるシャッタとして働く。可動電極222は、電圧が除去された後で弾性復元力によって丸まった状態に戻る。丸まった状態への付勢は、可動電極222を異方性応力状態を含むように製造することによって実現することができる。
【0063】
図2Cは、例示的な非シャッタ方式MEMS光変調器250の断面図である。光タップ変調器250は、本発明の例示的な実施形態による、
図1AのMEMS方式ディスプレイ装置100の代替実施形態に組み込むのに適している。参照により全体が本明細書に組み込まれている、「Micromechanical Optical Switch and Flat Panel Display」という名称の米国特許第5771321号明細書にさらに記載されているように、全内部反射減衰原則に従って光タップが作用する。すなわち、光252が光導波路254に導入され、干渉を受けることなく、光252の大部分は、全内部反射のために、光導波路254からその前面または背面を通過して漏れることができない。光タップ250は、タップ部材256が光導波路254に接触したことに応答して、タップ部材256に隣接する光導波路254の表面に入射した光252がタップ部材256を通過して光導波路254から観察者の方へ漏れ、それによって画像の形成に寄与するほど高い屈折率を有するタップ部材256を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、タップ部材256は、可撓性の透明材料のビーム258の一部として形成される。各電極260は、ビーム258の一方の側の一部を被覆している。光導波路254上に互いに向かい合う電極260が配置されている。電極260同士の間に電圧を印加することによって、光導波路254に対するタップ部材256の位置を、光導波路254から光252を選択的に抽出するように調節してもよい。
【0065】
図2Dは、本発明の様々な実施形態に含めるのに適した例示的な第2の非シャッタ方式MEMS光変調器の断面図である。具体的には、
図2Dは、エレクトロウェッティング方式光変調器アレイ270の断面図である。エレクトロウェッティング方式光変調器アレイ270は、本発明の例示的な実施形態による、
図1AのMEMS方式ディスプレイ装置100の代替実施形態に組み込むのに適している。光変調器アレイ270は、光学キャビティ274上に形成された複数のエレクトロウェッティング方式光変調器セル272a〜272d(総称的に「セル272」)を含む。光変調器アレイ270は、セル272に対応する1組のカラーフィルタ276も含む。
【0066】
各セル272は、水(または他の透明な導電性流体もしくは極性流体)の層278と、光吸収オイルの層280と、透明電極282(たとえば、インジウムスズ酸化物から作られる)、光吸収オイルの層280と透明電極282との間に位置する絶縁層284とを含む。そのようなセルの例示的な実装形態が、2005年5月19日に公開され、「Display Device」という名称を有し、全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2005/0104804号明細書に記載されている。本明細書に記載された実施形態では、電極がセル272の背面の一部を占有する。
【0067】
切替え速度を速くするには、エレクトロウェッティングディスプレイ内の2つの液体成分278および280の少なくとも一方の粘度を低くし、好ましくは70センチポイズよりも低くし、より好ましくは10センチポイズよりも低くすべきである。2つの液体成分の少なくとも一方が、分子量が400グラム/モルよりも少なく、好ましくは400グラム/モルよりも少ない材料を含む場合に粘度を容易に低下させることができる。適切な低粘度流体には、水、アルコール、フッ素化シリコーンオイル、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタン、およびジエチルベンゼンが含まれる。
【0068】
適切な低粘度非極性オイルには、パラフィン、オレフィン、エーテル、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオイル、あるいは他の天然溶剤もしくは合成溶剤または天然潤滑材もしくは合成潤滑材が制限なしに含まれる。有用なオイルは、ヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンのようなポリジメチルシロキサン、またはヘキシルペンタメチルジシロキサンなどのアルキルメチルシロキサンであってよい。有用なオイルは、オクタンまたはデカンのようなアルカンであってもよい。有用なオイルはニトロメタンなどのニトロアルカンであってもよい。有用なオイルは、トルエンまたはジエチルベンゼンのような芳香族化合物であってよい。有用なオイルはブタノンまたはメチルイソブチルケトンのようなケトンであってもよい。有用なオイルは、クロロベンゼンなどのクロロカーボンであってもよい。有用なオイルは、ジクロロフルオロエタンまたはクロロトリフルオロエチレンのようなクロロフルオロカーボンであってもよい。これらのオイルを染料と混合して、シアン、マゼンタ、および黄色のような特定の色における光吸収性を高めるか、あるいは黒色インクを形成するようにより広範囲のスペクトルにわたって光吸収性を高めることができる。
【0069】
多くの実施形態では、上記のオイルの混合物を組み込むと有用である。たとえば、混合物が様々な分子量を有する分子を含む、アルカン同士の混合物またはポリジメチルシロキサン同士の混合物が有用である場合がある。それぞれの異なる族の流体同士またはそれぞれの異なる特性を有する流体同士を混合することによって特性を最適化してもよい。たとえば、ヘキサメチルジシロキサンの表面濡れ性をブタノンの低粘度と組み合わせて、改良された流体を生成してもよい。
【0070】
光変調器アレイ270はまた、光導波路288と、光294を光導波路288に導入する1つまたは複数の光源292とを含む。光導波路の背面上の、前向き反射層290の近くに一連の光リダイレクタ291が形成されている。光リダイレクタ291は、拡散反射器または鏡面反射体であってもよい。変調アレイ270は、セル272ごとに1つの開口を有する一連の開口としてパターン化された開口層286を含み、光線294をセル272に通過させて観察者の方へ送る。
【0071】
いくつかの実施形態では、開口層286は、パターン化された開口を除いて光が通過するのを妨げるように光吸収材料で構成されている。別の実施形態では、開口層286は、表面開口を通過しない光を光導波路288の後部の方へ反射する反射材料で構成されている。反射光は、光導波路に戻った後、前向き反射層290によってさらに再循環することができる。
【0072】
動作時には、セルの電極282に電圧を印加すると、セル内の光吸収オイル280がセル272の一部に流入するかあるいはその部分に溜まる。その結果、光吸収オイル280はもはや、反射開口層286に形成された開口を光が通過するのを妨げなくなる(たとえば、セル272bおよび272cを参照されたい)。開口の所で光導波路288から漏れた光は次いで、セルを通過し、1組のカラーフィルタ276内の対応するカラー(たとえば、赤色、緑色、または青色)フィルタを通過して漏れ、画像内にカラー画素を形成することができる。電極282を接地すると、光吸収オイル280が(セル272a内の)その以前の位置に戻り、反射開口層286の開口を覆い、反射開口層286を通過しようとするあらゆる光294を吸収する。
【0073】
ローラ方式光変調器220、光タップ250、およびエレクトロウェッティング方式光変調器アレイ270は、本発明の様々な実施形態に含めるのに適したMEMS光変調器の唯一の例ではない。他のMEMS光変調器が存在してよく、かつ他のMEMS光変調器を本発明に有効に組み込めることが理解されよう。
【0074】
米国特許出願第11/251035号明細書および米国特許出願第11/326696号明細書は、適切なグレースケールを有する画像、多くの場合動画を生成するようにシャッタのアレイを制御マトリックスを介して制御するのを可能にする様々な方法について説明している。場合によっては、制御は、ディスプレイの周囲のドライバ回路に接続された行配線および列配線の受動マトリックスアレイによって実現される。他の場合には、アレイの各画素内に切替え素子および/またはデータ記憶素子を含めて(いわゆる能動マトリックス)ディスプレイの速度、グレースケール、および/または電力拡散性能を向上させるのが適切である。
【0075】
図3Aは、本発明の例示的な実施形態による、
図1AのMEMS方式ディスプレイ装置100に組み込まれた光変調器を制御するのに適した制御マトリックス300の概略図である。
図3Bは、本発明の例示的な実施形態による、
図3Aの制御マトリックス300に接続されたシャッタ方式光変調器のアレイ320の斜視図である。制御マトリックス300は、画素のアレイ320(「アレイ320」)をアドレス指定することができる。各画素301は、アクチュエータ303によって制御される、
図2Aのシャッタ組立体200のような弾性シャッタ組立体302を含む。各画素は、開口324を含む開口層322も含む。シャッタ組立体302およびその変形例のようなシャッタ組立体のさらなる電気的な説明および機械的な説明は、米国特許出願第11/251035号明細書および米国特許出願第11/326696号明細書に記載されている。代替制御マトリックスの説明も、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/607715号明細書に記載されている。
【0076】
制御マトリックス300は、シャッタ組立体302が形成された基板304の表面上に、拡散電気回路または薄膜蒸着電気回路として製造される。制御マトリックス300は、制御マトリックス300内の画素301の行ごとのスキャンライン配線306と、制御マトリックス300内の画素301の列ごとのデータ配線308とを含む。各スキャンライン配線306は、画素301から成る対応する行内の各画素301に書込み許可電圧源307を電気的に接続している。各データ配線308は、画素301から成る対応する列内の各画素301にデータ電圧源(「Vd源」)309を電気的に接続している。制御マトリックス300では、データ電圧Vdが、シャッタ組立体302を作動させるのに必要なエネルギーの大部分を供給する。したがって、データ電圧源309は作動電圧源としても働く。
【0077】
図3Aおよび
図3Bを参照する。制御マトリックス300は、画素のアレイ320内の画素301ごとまたはシャッタ組立体302ごとに、トランジスタ310とキャパシタ312とを含む。各トランジスタ310のゲートは、アレイ320内の、画素301が配置された行のスキャンライン配線306に電気的に接続されている。各トランジスタ310のソースは、対応するデータ配線308に電気的に接続されている。各シャッタ組立体302のアクチュエータ303は2つの電極を含む。各トランジスタ310のドレーンは、対応するキャパシタ312の一方の電極、および対応するアクチュエータ303の一方の電極に並列に電気的に接続されている。キャパシタ312の他方の電極およびシャッタ組立体302内のアクチュエータ303の他方の電極は、共通電位またはグランド電位に接続されている。代替実装形態では、トランジスタ310を半導体ダイオードおよび/または金属−絶縁体−金属サンドイッチ型切替え素子と交換してもよい。
【0078】
動作時には、画像を形成するために、制御マトリックス300が、各スキャンライン配線306にV
weを印加することによってアレイ320内の各行を順次書込み許可する。書込み許可された行については、行内の画素301のトランジスタ310のゲートにV
weを印加すると、データ配線308を通しトランジスタ310を通して電流を流しシャッタ組立体302のアクチュエータ303に電位を印加することが可能になる。行が書込み許可されている間、データ電圧V
dがデータ配線308に選択的に印加される。アナロググレースケールを実現する実装形態では、各データ配線308に印加されるデータ電圧が、書込み許可されたスキャンライン配線306とデータ配線308の交差点に配置された画素301の所望の明るさに対して変更される。デジタル制御方式を実現する実装形態では、データ電圧として、比較的低い電圧(すなわち、グランドに近い電圧)またはV
at(作動しきい値電圧)を満たすかもしくは超えるような電圧が選択される。データ配線308にV
atを印加したことに応答して、対応するシャッタ組立体302内のアクチュエータ303が作動し、シャッタ組立体302内のシャッタを開く。データ配線308に印加された電圧は、制御マトリックス300が行へのV
weの印加を停止した後でも画素301のキャパシタ312に格納されたままになる。したがって、待機して、シャッタ組立体302が作動するのに十分な時間にわたって行上に電圧Vweを保持することが不要になり、このような作動は、行から書込み許可電圧が除去された後に開始することができる。キャパシタ312は、アレイ320内のメモリ素子としても働き、画像フレームを照明するのに必要な期間にわたって作動命令を記憶する。
【0079】
アレイ320の画素301と制御マトリックス300は基板304上に形成される。アレイは、基板304上に配置され、アレイ320内のそれぞれの画素301用の1組の開口324を含む、開口層322を含む。開口324は、各画素内のシャッタ組立体302に揃えられている。一実装形態では、基板304は、ガラスまたはプラスチックのような透明材料で作られる。別の実装形態では、基板304は、不透明材料で作られるが、開口324を形成するように穴がエッチングされる。
【0080】
シャッタ組立体302の各構成要素は、制御マトリックス300と同時に加工されるか、あるいは同じ基板上で以後の加工ステップにおいて加工される。制御マトリックス300内の電気構成要素は、液晶ディスプレイ用の薄膜トランジスタアレイの製造と同様に多数の薄膜技術を使用して製造される。利用可能な技術は、参照により全体が本明細書に組み込まれているDen Boer、「Active Matrix Liquid Crystal Displays」 (Elsevier, Amsterdam, 2005)に記載されている。シャッタ組立体は、マイクロマシーニング技術と同様の技術を使用して製造されるかあるいはマイクロメカニカル(すなわち、MEMS)デバイスを製造することによって製造される。適用可能な多数の薄膜MEMS技術が、参照により全体が本明細書に組み込まれているRai−Choudhury ed.、「Handbook of Microlithography, Micromachining & Microfabrication」 (SPIE Optical Engineering Press, Bellingham, Wash, 1997)に記載されている。ガラス基板上に形成されるMEMS光変調器に固有の製造技術は、参照により全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/361785号明細書および米国特許出願第11/731628号明細書に記載されている。たとえば、これらの出願に記載されているように、シャッタ組立体302は、化学蒸着プロセスによって蒸着された非晶質シリコンの薄膜から形成されてもよい。
【0081】
シャッタ組立体302は、アクチュエータ303とともに双安定性を有してもよい。すなわち、シャッタは、シャッタをいずれの位置に保持するにも電力がほとんどまたはまったく必要とされない少なくとも2つの均衡位置(たとえば、開位置または閉位置)に存在してもよい。特に、シャッタ組立体302は機械的に双安定性を有してもよい。シャッタ組立体302のシャッタが所定の位置に設定された後、その位置を保持するのに電気エネルギーも保持電圧も必要とされない。シャッタ組立体302の物理的要素に対する機械的応力によってシャッタを所定の位置に保持してもよい。
【0082】
シャッタ組立体302は、アクチュエータ303とともに電気的な双安定性を有してもよい。電気的な双安定性を有するシャッタ組立体では、閉じられたアクチュエータに印加された場合に(シャッタは開かれている場合も閉じられている場合もある)、対抗する力がシャッタに加えられる場合でも、アクチュエータを閉状態に保持し、かつシャッタを所定の位置に保持する、シャッタ組立体の作動電圧よりも低い様々な電圧がある。シャッタ方式光変調器200内のばね207のようなばねによって対抗する力を加えても、あるいは「開かれた」または「閉じられた」アクチュエータのような対抗するアクチュエータによって対抗する力を加えてもよい。
【0083】
光変調器アレイ320は、画素当たりに単一のMEMS光変調器を有するように示されている。各画素に複数のMEMS光変調器を設け、それによって、各画素にバイナリの「オン」光学状態または「オフ」光学状態以上の可能性をもたらす他の実施形態も可能である。画素に複数のMEMS光変調器が設けられ、各光変調器に関連付けられた各開口34の面積が等しくない、ある形態の符号化領域分割グレースケールが可能である。
【0084】
他の実施形態では、光変調器アレイ320内のシャッタ組立体302をローラ方式光変調器220、光タップ250、またはエレクトロウェッティング方式光変調器アレイ270、ならびに他のMEMS方式光変調器と置き換えてもよい。
【0085】
図4Aおよび
図4Bは、本発明の様々な実施形態に含めるのに適した代替シャッタ方式光変調器(シャッタ組立体)400を示している。光変調器400はデュアルアクチュエータシャッタ組立体の一例であり、
図4Aに開状態で示されている。
図4Bは、閉状態のデュアルアクチュエータシャッタ組立体400の図である。シャッタ組立体400は、上記で参照した米国特許出願第11/251035号明細書に詳細に記載されている。シャッタ組立体200とは異なり、シャッタ組立体400は、シャッタ406の各側にアクチュエータ402および404を含んでいる。各アクチュエータ402および404は独立に制御される。第1のアクチュエータ、すなわちシャッタ開アクチュエータ402は、シャッタ406を開く働きをする。第2の対抗アクチュエータ、すなわちシャッタ閉アクチュエータ404は、シャッタ406を閉じる働きをする。どちらのアクチュエータ402および404も適合ビーム電極アクチュエータである。アクチュエータ402および404は、実質的に、シャッタが懸垂される開口層407に平行な平面内で、シャッタ406を駆動することによってシャッタ406を開閉する。シャッタ406は、アクチュエータ402および404に取り付けられたアンカー408によって開口層407から短い距離だけ上方に懸垂されている。シャッタ406の両端にその運動軸に沿って取り付けられた支持体を含めることによって、シャッタ406の面外運動が低減され、運動が実質的に基板に平行な平面に制限される。
図3Aの制御マトリックス300と同様に、シャッタ組立体400と一緒に使用するのに適した制御マトリックスは、対抗するシャッタ開アクチュエータ402およびシャッタ閉アクチュエータ404の各々に1つのトランジスタおよび1つのキャパシタを含んでもよい。
【0086】
シャッタ406は、光が通過することのできる2つのシャッタ開口412を含む。開口層407は1組の3つの開口409を含む。
図4Aでは、シャッタ組立体400が開状態にあり、そのため、シャッタ開アクチュエータ402が作動しており、シャッタ閉アクチュエータ404がその弛緩位置にあり、開口412の中心線と開口409の中心線が一致している。
図4Bでは、シャッタ組立体400が閉状態に移動しており、そのため、シャッタ開アクチュエータ402がその弛緩位置にあり、シャッタ閉アクチュエータ404が作動しており、シャッタ406の遮光部はすでに、開口409を通る光の通過を妨げる所定の位置にある(点線で示されている)。
【0087】
各開口はその周囲に少なくとも1つの縁部を有する。たとえば、矩形の開口409は4つの縁部を有する。開口層407に円形、楕円形、卵形、またはその他の曲線状の開口が形成される代替実装形態では、各開口は、単一の縁部のみを有してよい。他の実装形態では、各開口を分離したり、数学的な意味で互いに素にしたりする必要はなく、その代わりに連結してもよい。すなわち、開口の各部または形作られた各部分が各シャッタとの対応を維持してもよいが、開口の連続的な単一の周縁が複数のシャッタによって共有されるようにこれらの部分のいくつかを互いに連結してもよい。
【0088】
様々な出射角度を有する光を開状態の開口412および409を通過させるには、開口層407の開口409の対応する幅またはサイズよりも大きな幅またはサイズをシャッタ開口412が有すると有利である。閉状態において光が漏れるのを効果的に防ぐには、シャッタ406の遮光部が開口409と重なり合うことが好ましい。
図4Bは、シャッタ406内の遮光部の縁部と開口層407に形成された開口409の1つの縁部との間の事前に定められたオーバーラップ416を示している。
【0089】
静電アクチュエータ402および404は、その電圧ずれ挙動がシャッタ組立体400に双安定性を付与するように設計されている。シャッタ開アクチュエータおよびシャッタ閉アクチュエータの各々について、アクチュエータが閉じられている間に印加された場合に(シャッタは開かれている場合も閉じられている場合もある)、対抗するアクチュエータに作動電圧が加えられた後でも、アクチュエータを閉状態に保持し、かつシャッタを所定の位置に保持する、作動電圧よりも低い様々な電圧がある。そのような対抗する力に対してシャッタの位置を維持するのに必要な最小電圧を維持電圧V
mと呼ぶ。双安定性動作特性を利用するいくつかの制御マトリックスが、上記に参照した米国特許出願第11/607715号明細書に記載されている。
【0090】
図5は、本発明の例示的な実施形態による、シャッタ方式光変調器(シャッタ組立体)502を組み込んだディスプレイ装置500の断面図である。各シャッタ組立体は、シャッタ503およびアンカー505を組み込んでいる。アンカー505とシャッタ503の間に連結されたときに、シャッタを表面から短い距離だけ上方に懸垂するのを助ける適合ビームアクチュエータは図示されていない。シャッタ組立体502は、好ましくはプラスチックまたはガラスで作られた透明基板504上に配置されている。後ろ向き反射層、すなわち反射膜506は、基板504上に配置されており、シャッタ組立体502のシャッタ503の閉位置の下方に配置された複数の表面開口508を形成する。反射膜506は、表面開口508を通過しない光をディスプレイ装置500の後部の方へ反射する。反射開口層506は、スパッタリング、蒸発、イオンめっき、レーザアブレーション、または化学蒸着を含むいくつかの蒸着技術によって薄膜状に形成される含有要素を含まない密金属膜であってもよい。別の実装形態では、後ろ向き反射層506を誘電体反射鏡などの反射鏡から形成してもよい。誘電体反射鏡は、屈折率の高い材料と屈折率の低い材料が交互に配置された誘電体薄膜のスタックとして製造される。シャッタ503を反射膜506から分離し、内部をシャッタが自由に移動することのできる垂直ギャップは、0.5マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲である。垂直ギャップの大きさは、
図4Bに示されているオーバーラップ416のような、閉状態におけるシャッタ503の縁部と開口508の縁部との横方向のオーバーラップよりも小さいことが好ましい。
【0091】
ディスプレイ装置500は、基板504を平面光導波路516から分離する任意の拡散器512および/または光輝度強化膜514を含む。光導波路は、透明な材料、すなわちガラスまたはプラスチックの材料で構成される。光導波路516は、バックライトを形成する1つまたは複数の光源518によって照明される。光源518はたとえば、制限なしに、白熱灯、蛍光灯、レーザ、または発光ダイオード(LED)であってもよい。反射器519はランプ518からの光を光導波路516の方へ送るのを助ける。バックライト516の後方に前向き反射膜520が配置されており、光をシャッタ組立体502の方へ反射する。シャッタ組立体502のうちの1つを通過しないバックライトからの光線521などの光線は、バックライトに戻され、再び膜520から反射される。このように、第1のパスにおいてディスプレイから出て画像を形成することができなかった光を再循環させ、シャッタ組立体502のアレイの開かれた他の開口を通過させることができる。このような光の再循環は、ディスプレイの照明効率を高めることが分かっている。
【0092】
光導波路516は、ランプ518からの光の方向を開口508の方へ変更し、したがって、ディスプレイの前面の方へ変更する1組の幾何学的光リダイレクタまたはプリズム517を含む。光リダイレクタは、光導波路516のプラスチック本体に成形されてよく、断面が三角形、台形、または曲線状であってもよい形状を有する。プリズム517の密度は、概してランプ518からの距離に応じて高くなる。
【0093】
代替実施形態では、開口層506を光吸収材料で作ってもよく、代替実施形態では、シャッタ503の表面を光吸収材料または光反射材料のいずれかによって被覆してもよい。代替実施形態では、開口層506を光導波路516の表面上に直接付着させてもよい。代替実施形態では、開口層506をシャッタ503およびアンカー505と同じ基板上に付着させる必要はない(後述のMEMSダウン構成を参照されたい)。ディスプレイ照明システムのこれらの実施形態およびその他の実施形態については、参照により全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/218690号明細書および米国特許出願第11/528191号明細書に詳しく記載されている。
【0094】
一実装形態では、光源518はそれぞれの異なる色、たとえば赤色、緑色、および青色のランプを含んでよい。人間の脳が様々な色の画像を単一の多色画像として平均化するのに十分な速度で様々な異なる色のランプによって画像を順次照明することによって、カラー画像を形成してもよい。シャッタ組立体502のアレイを使用して、様々な色特異的画像が形成される。別の実装形態では、光源518は、3つよりも多くの異なる色を有するランプを含む。たとえば、光源518は、赤色、緑色、青色、および白色のランプまたは赤色、緑色、青色、および黄色のランプを有してもよい。
【0095】
カバープレート522はディスプレイ装置500の前面を形成している。カバープレート522の背面は、コントラストを高めるようにブラックマトリックス524によって覆われていてよい。代替実装形態では、カバープレートは、それぞれの異なるシャッタ組立体502に対応するカラーフィルタ、たとえば赤色フィルタ、緑色フィルタ、および青色フィルタを含む。カバープレート522は、シャッタ組立体502から所定の距離だけ離して支持されており、ギャップ526を形成している。ギャップ526は、機械的支持体もしくはスペーサ527および/またはカバープレート522を基板504に取り付ける接着剤シール528によって維持されている。
【0096】
接着剤シール528は作動流体530を封じ込める。作動流体530は、粘度が好ましくは約10センチポイズよりも低く、比誘電率が好ましくは約2.0よりも高く、絶縁破壊強度が約10
4V/cmを超えるように調整される。作動流体530は潤滑材として働いてもよい。一実装形態では、作動流体530は高表面濡れ性を有する疎水性液体である。代替実施形態では、作動流体530の屈折率は、基板504の屈折率よりも高いかあるいは低い。
【0097】
MEMS方式ディスプレイ組立体が作動流体530用の液体を含むとき、この液体はMEMS方式光変調器の可動部の少なくとも一部を囲む。作動電圧を低下させるために、液体の粘度は好ましくは70センチポイズよりも低く、より好ましくは10センチポイズよりも低くなっている。粘度が70センチポイズよりも低い液体は、低分子量、すなわち4000グラム/モルよりも少なく、場合によっては400グラム/モルよりも少ない材料を含んでもよい。適切な作動流体530には、制限なしに、脱イオン水、メタノール、エタノールおよびその他のアルコール、パラフィン、オレフィン、エーテル、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオイル、あるいはその他の天然溶剤もしくは合成溶剤または天然潤滑材もしくは合成潤滑材が含まれる。有用な作動流体は、ヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンのようなポリジメチルシロキサン、またはヘキシルペンタメチルジシロキサンなどのアルキルメチルシロキサンであってよい。有用な作動流体は、オクタンまたはデカンのようなアルカンであってもよい。有用な流体はニトロメタンなどのニトロアルカンであってもよい。有用な流体は、トルエンまたはジエチルベンゼンのような芳香族化合物であってよい。有用な流体はブタノンまたはメチルイソブチルケトンのようなケトンであってもよい。有用な流体は、クロロベンゼンなどのクロロカーボンであってもよい。有用な流体は、ジクロロフルオロエタンまたはクロロトリフルオロエチレンのようなクロロフルオロカーボンであってもよい。これらのディスプレイ組立体用に検討される他の流体には酢酸ブチル、ジメチルホルムアミドが含まれる。
【0098】
多くの実施形態では、上記の流体同士の混合物を組み込むと有利である。混合物が様々な分子量を有する分子を含む、アルカン同士の混合物またはポリジメチルシロキサン同士の混合物が有用である場合がある。それぞれの異なる族の流体同士またはそれぞれの異なる特性を有する流体同士を混合することによって特性を最適化することも可能である。たとえば、ヘキサメチルジシロキサンの表面濡れ性をブタノンの低粘度と組み合わせて、改良された流体を生成してもよい。
【0099】
シートメタルまたは成形プラスチック組立体ブラケット532は、カバープレート522、基板504、バックライト516、およびその他の構成部品を縁部の周りに一緒に保持する。組立体ブラケット532がねじまたはインデントタブによって固定され、組み合わされたディスプレイ装置500に剛性を付加している。いくつかの実装形態では、光源518はエポキシポッティング化合物によって所定の位置に成形される。反射器536は、光導波路516の縁部から漏れた光を光導波路に戻すのを助ける。
図5には、制御信号と電力をシャッタ組立体502およびランプ518に供給する電気配線は示されていない。
【0100】
ディスプレイ装置500の製造方法を含むさらなる詳細および代替構成は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/361785号明細書および米国特許出願第11/731628号明細書に記載されている。
【0101】
他の実施形態では、ディスプレイ組立体500内のシャッタ組立体502をローラ方式光変調器220、光タップ250、またはエレクトロウェッティング方式光変調器アレイ270、ならびに他のMEMS方式光変調器と置き換えてもよい。
【0102】
ディスプレイ装置500はMEMSアップ構成と呼ばれ、MEMS方式光変調器が基板504の前面、すなわち観察者の方を向いた表面に形成されている。シャッタ組立体502は反射開口層506上に直接組み立てられている。MEMSダウン構成と呼ばれる本発明の代替実施形態では、シャッタ組立体が、反射開口層が形成された基板とは別個の基板上に配置される。複数の開口を形成する反射開口層が形成された基板を、本明細書では開口プレートと呼ぶ。MEMSダウン構成では、MEMS方式光変調器を保持する基板は、ディスプレイ装置500のカバープレート522に代わり、MEMS方式光変調器が上部基板の背面、すなわち観察者から離れバックライト516の方を向いた表面上に位置するように向きを定められる。それによって、MEMS方式光変調器は、反射開口層と向かい合いかつ反射開口層からギャップを置いて位置している。ギャップは、開口プレートと、MEMS変調器が形成された基板とを連結する一連のスペーサポストによって維持されてもよい。いくつかの実装形態では、スペーサはアレイの各画素内または各画素間に配置される。MEMS光変調器をそれに対応する開口から分離するギャップまたは距離は、好ましくは10マイクロメートル未満であるか、あるいはオーバーラップ416のような、シャッタと開口との間のオーバーラップよりも短い距離である。MEMSダウンディスプレイ構成の詳細および代替実施形態は、上記に参照した米国特許出願第11/361785号明細書、米国特許出願第11/528191号明細書、および米国特許出願第11/731628号明細書に記載されている。
【0103】
図6の開口プレート2700は、MEMSダウン構成に使用される開口プレートの一実装形態内の詳細な構造を示している。開口プレート2700は、基板2702と、誘電的に強化された金属反射鏡2704と、光吸収層2706と、スペーサポスト2708とを含む。誘電的に強化された金属反射鏡と光吸収層がパターン化されて開口2709が形成されている。
【0104】
基板2702は、好ましくは透明材料、たとえばガラスまたはプラスチックである。誘電的に強化された金属反射鏡2704は、基板から上にSi3N4の薄膜2710、SiO2の薄膜2712、Si3N4の別の薄膜2710、SiO2の別の薄膜2712、およびアルミニウムの薄膜2714を含む材料の5層スタックで構成されている。これらの層の相対厚さおよび好ましい屈折率をTable 1(表1)に示す。
【0106】
光吸収層2706は、酸化物マトリックスまたは窒化物マトリックス中に浮遊するクロム金属粒子の複合材料であるブラッククロムの薄膜から形成されてもよい。この例には、Cr2O3マトリックス中のCr粒子またはSiO2マトリックス中のCr粒子が含まれる。他の実装形態では、ブラッククロムは、CrOx(またはクロムの亜酸化物)の薄膜が成長するかあるいは堆積したクロムの薄い金属膜から形成されてもよい。ブラッククロムの好ましい厚さは150nmである。
【0107】
開口部窓2709は、フォトリソグラフィおよびエッチングまたはフォトリソグラフィおよびリフトオフのような当技術分野で知られているプロセスによって材料2704および2706の薄膜スタックからパターン化されてよい。エッチングプロセスでは、フォトレジストの層が薄膜スタックの頂部に付加され、次いでマスクを通じてUV光に当てられる。フォトレジストの露光された層の開口パターンを形成した後、開口2709の領域においてスタック全体を基板2702までエッチングする。このようなエッチングは、湿潤化学物質への浸漬、ドライプラズマまたはイオンビームエッチング、あるいはそれらの任意の組合せによって実現されてもよい。リフトオフプロセスでは、薄膜スタックを堆積させる前にフォトレジストの層をガラスに付加し、レジストをエッチングマスクパターンを反転させたパターンに形成する。次いで、薄膜スタックをフォトレジスト上に堆積させ、したがって、薄膜スタックが開口2709の領域を除いてガラスのあらゆる位置に接触する。薄膜スタックの堆積が完了した後、フォトレジストとフォトレジスト上に付着させたあらゆる薄膜材料とを溶解させるかあるいは除去する化学物質の槽に基板を浸漬させる。
【0108】
スペーサポスト2708は、感光性エポキシ(特にノバラックエポキシ)または感光性ポリイミド材料のような感光性ポリマーから形成される。感光性形態で用意することができ、かつこの用途に有用である他のポリマー族には、ポリアリレン、パリレン、ベンゾシクロブタン、ペルフルオロシクロブタン、シルセキオキサン、およびシリコーンポリマーが含まれる。スペーサ用途に有用な特定の感光性レジストには、マサチューセッツ州ニュートンに本社を置く化薬マイクロケム社から市販されているNano SU−8材料がある。
【0109】
最初に開口2709をパターン化した後、ポリマースペーサ材料を薄膜スタック2704および2706上に薄膜として堆積させる。次に、感光性ポリマーをマスクを通してUV光に当てる。位置合わせマークによって、結果として得られるスペーサ2708が開口2709に対して正しく配置される。たとえば、開口2709をエッチングするプロセスの間にディスプレイの周囲に位置合わせ基準を形成してもよい。このような基準を露光マスク上の対応する1組の基準に位置合わせして、スペーサ2708を正しく配置する。次いで、UV光に当てられた部分を除いてすべてのポリマーを除去するうえで現像プロセスが有効である。代替方法では、露光マスク上の微細形状を開口2709のような基板2702上のディスプレイ微細形状に直接位置合わせしてもよい。
【0110】
一実装形態では、スペーサポストの高さは8マイクロメートルであってよい。他の実装形態では、スペーサの高さは約2マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲であってよく、たとえば4マイクロメートルである。スペーサは、基板2702の横断面で切断されたときに、幅が2マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲であり、たとえば4マイクロメートルの円筒形または矩形のような規則的な形状をとってもよい。あるいは、スペーサは、開口2709のような基板上の他の構造同士の間に嵌め合わされる際のスペーサの接触面積を最大限に抑えるように設計された複雑で不規則な断面を有してもよい。好ましい実装形態では、スペーサのサイズ、形状、および配置は、スペーサがシャッタ406などのシャッタまたはディスプレイ装置400のアクチュエータ404のような他のMEMS構成要素の移動に干渉しないように定められる。
【0111】
他の実施形態では、スペーサポスト2708は、ポリマー材料としては設けられず、その代わりに熱リフロー可能なはんだ合金のような接合材料で構成される。はんだ合金には、はんだ合金自体が向かい合う基板上の合わせ面を濡らしこの合わせ面に結合するのを可能にする溶融ステップまたはリフローステップを施してもよい。したがって、はんだ合金は、開口プレートと変調器基板との接合材料としてのさらなる機能を実行する。リフロープロセスによって、はんだ合金は通常、弛緩してはんだバンプと呼ばれる楕円の形状になる。はんだバンプの平均材料量を調整することによって基板同士の間の所定の間隔を維持することができる。はんだバンプは、薄膜蒸着、ステンシルマスクによる厚膜蒸着、または電気めっきによって開口プレート2700に塗布されてもよい。
【0112】
別の実施形態では、光学層2704および2708を形成するステップの後で開口プレート2700にサンドブラスティング処理を施してもよい。サンドブラスティングは、基板表面を開口2709の領域において選択的に粗面化する効果を有する。開口2709の所の粗面化された表面は、ディスプレイの視角を広くするという利点をもたらすことのできる光拡散器として働く。別の実施形態では、エッチングプロセスによって開口2709の所に拡散面が設けられ、その場合、エッチングは、フォトレジストをフォトマスクにさらした後で開口2709の領域に選択的に施される。フォトマスクを適切に設計することによってエッチングピットまたはトレンチを形成してもよく、ウェットエッチングプロセスまたはドライエッチングプロセスのいずれかによってピットまたはトレンチの側壁角度または深さを調節してもよい。このように、拡散の広がりの程度を制御する光学構造を形成してもよい。このように、光を好ましい光軸に沿って偏向させ、放出された光の楕円形コーンおよび/または多方向コーンを形成する異方性拡散器を基板表面に形成してもよい。
【0113】
別の実施形態では、実質的に開口2709のアレイの周囲に沿って(すなわち、アクティブディスプレイ領域の周囲において)ディスプレイを囲むエッチングされたトレンチを基板2702に設けてもよい。エッチングされたトレンチは、開口プレート2700を向かい合う基板に封止するのに使用される接着剤528のような接着剤の動きまたは流れを制限する機械的な位置決め構造として働く。
【0114】
上述の材料およびプロセスに関する詳細は、2006年2月23日に出願され、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/361785号明細書に記載されている。たとえば、この出願は、開口、光吸収層、およびスペーサポストを含む誘電的に強化された金属反射鏡の形成に関するさらなる材料および処理方法を含む。誘電反射鏡およびスペーサは、この出願では、一体型(たとえばMEMSアップ)ディスプレイ設計の文脈で記載されているが、同様のプロセスを開口プレート2700のような開口プレートの製造に適用できることが理解されよう。
【0115】
開口プレート2700のいくつかの実装形態では、基板2702に透明プラスチック材料を使用することが望ましい。適用可能なプラスチックには、制限なしにポリメチルメタクリレート(PMMA)およびポリカーボネートが含まれる。プラスチック材料を使用すると、スペーサポスト2708を形成するのに射出成形プロセスまたは打抜きプロセスを利用することが可能になる。このようなプロセスでは、誘電的に強化された金属反射鏡2704を塗布する前にまず、スペーサポストが型またはスタンパ内に形成される。次いで、誘電的に強化された金属反射鏡2704のすべての層を、すでにスペーサポスト2708を含む基板上に順次堆積させる。光吸収層2706を誘電反射鏡2704上に堆積させる。開口窓2709をパターン化するために、スペーサポスト2708が存在することによる妨害を受けることなく薄膜の表面を一様に被覆する特殊なフォトレジストを塗布する。適切なフォトレジストには、スプレーオンフォトレジストおよび電気めっきフォトレジストが含まれる。あるいは、スピンオンレジストを塗布し、その後、開口2709の領域内の薄膜面全体にわたって均一のレジスト厚さをもたらすリフローステップを実施する。次いで、上述のように、レジストの露光、現像、および薄膜層のエッチングを実施する。フォトレジストを除去した後、プロセスが完了する。上述のように、リフトオフプロセスを使用して誘電的に強化された反射鏡をパターン化してもよい。スペーサポスト2708を形成するのに成形プロセスまたは打抜きプロセスを使用すると、開口プレート2700の製造に必要な材料コストを削減する助けになる。
【0116】
いくつかのディスプレイ実装形態では、開口プレート、たとえば開口プレート2804を光導波路516などの光導波路と組み合わせ、本明細書では単体バックライトまたは複合バックライトと呼ばれ、それぞれ米国特許出願第11/218690号明細書および米国特許出願第11/528191号明細書にさらに記載されている1つの固体本体に形成する。どちらの出願も参照により本明細書に組み込まれている。誘電的に強化された金属反射鏡2704、光吸収層2706、および/またはスペーサポスト2708を形成するための上述のすべてのプロセスを、光導波路に結合され、場合によってはその光導波路と区別できない基板に同じく適用してもよい。薄膜が塗布される単体バックライトの表面は、ガラスであっても、スペーサ527などのスペーサポストを形成するように成形されたプラスチックを含むプラスチックであってもよい。
【0117】
一実装形態では、開口プレート2700を変調器基板に位置合わせする前にスペーサポスト2708を形成するかあるいは開口プレート2700に取り付ける。ディスプレイ装置500の代替実装形態では、変調器基板504を開口プレートに揃える前にスペーサポスト527を変調器基板504上にあるいは変調器基板504の一部として製造する。このような実装形態は、前述の米国特許出願第11/361785号明細書内の
図20に関して記載されている。
【0118】
図7は、本発明の例示的な実施形態によるディスプレイの断面図である。ディスプレイ組立体2800は、変調器基板2802と開口プレート2804とを備える。ディスプレイ組立体2800はまた、1組のシャッタ組立体2806と反射開口層2808とを備える。反射開口層2805は開口2810を含む。互いに向かい合う1組のスペーサ2812および2814によって基板2802と基板2804の間に所定のギャップまたは離隔距離が維持されている。スペーサ2812は、変調器基板2802上にあるいは変調器基板2802の一部として形成されている。スペーサ2814は、開口プレート2804上にあるいは開口プレート2804の一部として形成されている。組立て時には、変調器基板2802上のスペーサ2812がそれぞれのスペーサ2814に接触するように2枚の基板2802および2804を揃える。
【0119】
この例示的な例の離隔距離または距離は8マイクロメートルである。この離隔距離を確立するために、各スペーサ2812は高さが2マイクロメートルであり、各スペーサ2814は高さが6マイクロメートルである。あるいは、両方のスペーサ2812および2814の高さが4マイクロメートルであるか、あるいはスペーサ2812の高さが6マイクロメートルであり、一方スペーサ2814の高さが2マイクロメートルであってもよい。そればかりではなく、スペーサの全高が所望の離隔距離H12を確立するかぎり、スペーサ高さの任意の組合せを使用してよい。
【0120】
両方の基板2802および2804にスペーサを設け、次いで組立て時に基板2802および2804を揃えるかあるいは嵌め合わせると、材料コストおよび加工コストに関して有利である。スペーサ2708のような非常に高い(たとえば、8マイクロメートル)スペーサを設けるとコストがかかることがあり、感光性ポリマーの硬化、露光、および現像を実施するのにかなり時間がかかることがある。ディスプレイ組立体2800のような嵌合いスペーサを使用すると、各基板上でより厚いポリマーコーティングを使用することができる。
【0121】
別の実装形態では、変調器基板2802上に形成されるスペーサ2812を、シャッタ組立体2806を形成するのに使用したのと同じ材料およびパターン化ステップによって形成してもよい。たとえば、シャッタ組立体2806に使用されるアンカーは、スペーサ2812と同様の機能を実行してもよい。この実装形態では、スペーサを形成するうえでポリマー材料を別に塗布する必要がなく、かつスペーサ用の別個の露光マスクは必要とされない。
【0122】
セル組立て方法
ディスプレイモジュールの組立ては、2枚の基板を揃えて結合することを含んでもよい。たとえば、基板504などの光変調器基板をカバープレート522などのカバープレートに揃えることが望ましい。あるいは、基板2806などの光変調器基板を開口プレート2804などの開口プレートに揃えることが望ましい。
図8は、本発明の例示的な実施形態による位置合わせプロセスを実施する位置合わせ装置3300を示している。位置合わせ装置3300は、固定チャック3302と、1組の並進駆動装置またはモータ3304と、ビジョンシステム3305と、1組のUV露光ランプ3306とを備える。チャック3302に変調器基板3308がしっかりと取り付けられている。開口プレート3310が所定の位置に保持されており、モータ3304によって案内される。モータ3304は、基板3310を3つの並進方向に並進させ、たとえば基板3310のプレート内のx座標およびy座標に沿って並進させ、さらにz座表に沿って並進させ、2枚の基板3308および3310間の距離を確立しかつ変化させる。また、
図8には示されていないが、基板3308および3310の共平面性とx−y平面における基板3308および3310の適切な回転関係とを確立する、さらなる任意の1組の3つの回転モータを設けてもよい。すべての並進モータ3304は、開口プレート3310に取り付けられて示されているが、他の実施形態では、2枚の基板の間に異なるようにモータを取り付けてもよい。たとえば、x−y並進モータを開口プレート3310に取り付けてもよく、一方、z軸並進モータおよびシータ回転モータ(z軸を中心とする回転)をチャック3302に取り付けてもよい。
【0123】
モータ3304には様々な種類のモータを利用することができる。いくつかの実施形態では、これらのモータは、デジタル的に制御されるステッパモータであってもよく、場合によっては、これらのモータは線形ねじ駆動装置であってよく、場合によっては、磁気駆動ソレノイド駆動装置であってもよい。これらのモータを基板3310などの基板を直接移動させるように構成する必要はない。その代わりに、これらのモータは、加工品または基板3310がしっかりと取り付けられたステージまたはプラッタを移動させるように設計されてもよい。可動ステージを使用すると有利である。なぜなら、可動ステージの並進位置を1マイクロメートルを上回る精度で連続的に測定することができるさらなる光学測定システム(場合によってはレーザ干渉システム)を可動ステージ用に設けることができるからである。モータ3304と光学測定システムとの間にフィードバック電子機器を使用してステージ位置の精度と安定性の両方を向上させることができる。
【0124】
装置3300のいくつかの実施形態では、チャック3302と光学移動ステージの両方が、ヒータおよび/または温度調節デバイスを備え、基板3308および3310全体にわたって温度を一様にすることができる。温度が一様であると、特に対角線が約20cmを超える2枚の基板上のパターン同士を適切に揃える助けになる。
【0125】
位置合わせ装置3300は、2枚の基板3308および3310の相対位置を検出するためのビジョンシステム3305を組み込んでいる。好ましい実施形態では、基板3308および3310の各々の薄膜に位置合わせマークがパターン化される(たとえば、
図9の位置合わせマーク3408および3412を参照されたい)。ビジョンシステムは、2枚の基板の各々の位置合わせマークがそれぞれの異なる表面、すなわちz軸上の異なる位置に配置されているにもかかわらず、これらのマークを同時に撮像することができる。
【0126】
例示された実施形態では、ビジョンシステム3305は、2枚の撮像レンズ3312および3313と、分割磁場撮像が可能な顕微鏡または2つのカメラ3314および3315のいずれかを組み込んでいる。したがって、ビジョンシステム3305は、分離された2組の位置合わせマークを実質的に同時に撮像することができる。2組の位置合わせマークは、変調器アレイまたはパネルの遠い側または隅部に配置されることが好ましい。
【0127】
動作時には、オペレータは、ビジョンシステム3305を使用してマーク3408および3412のような位置合わせマークの相対位置を表示し、それによって、2枚の基板間の位置ずれの方向および程度を測定する。オペレータは次いで、2枚の基板の位置合わせマークが示す位置ずれが許容される程度のエラーよりも小さくなるまで駆動モータ3304を使用して基板3308および3310同士の位置合わせを調整することができる。位置ずれが十分に小さくなった後、オペレータは、基板3308または3310の1つの基板上のスペーサ1010のいずれかのようなスペーサが向かい合う基板3308または3310あるいは向かい合うスペーサに接触するまでz軸モータを駆動する。多くの例では、基板の向きに誤りが生じるかあるいは基板同士が非平面性を有するので、オペレータは、2枚の基板間のz軸距離が短くなるにつれて基板同士のx−y位置合わせを連続的に調整する必要がある。いくつかの実施形態では、最終的なx、y、およびシータの補正を基板同士の接触を確立した後に行ってもよい。
【0128】
接触が確立された後、2枚の基板間に接着剤3318も接触する。いくつかの実施形態では、方法3301の最後のステップとして、接着剤が少なくとも部分的に硬化され、一方、位置合わせ装置3300が2枚の基板を所定の位置に保持する。UV露光ランプ3306を使用して接着剤の硬化を開始または加速し、それによって2枚の基板同士を互いに結合してもよい。いくつかの実施形態では、基板ステージまたはチャック3302は、接着剤3318の熱硬化に影響を及ぼすヒータを備える。位置合わせマーク、たとえばマーク3408および3412は通常、同時にパターン化されエッチングされ、開口をパターン化するのに使用されるマスクと同じフォトマスクから印刷される。したがって、位置合わせマークは、基準マーカ機能用に設計され、すなわち位置合わせマーク同士を十分に揃えたオペレータは、近傍のアレイのシャッタおよび開口も適切に揃えられることを確信する。
【0129】
ディスプレイ装置の説明によれば、オーバーラップは2マイクロメートル以上であることが好ましい。実際、オーバーラップW2は、製造時に確実に実現され、マスクに設計された安全マージンおよび位置合わせ精度または公差によって決定される。精度または実現可能な公差は、位置合わせ装置3300の設計、位置合わせマークの設計、ならびに温度、圧力、およびシール材料の粘度または可塑性のようなプロセス変数に基づく値である。許容公差設計に関する2つの例を示す。第1の例では、製造時に位置合わせのかなり広い変動が許容され、シャッタおよび開口のアレイは、公称オーバーラップが22マイクロメートルになるように設計され、すなわち完全に揃えられた場合、シャッタは開口と22マイクロメートルだけ重なり合うように設計される。その場合、装置3300において可能な位置合わせ繰返し精度が±20マイクロメートルである場合、設計者はすべての(あるいは信頼性をどのように指定するかに応じて99.99%)シャッタのオーバーラップを少なくとも2マイクロメートルにすることができる。しかし、密な画素アレイの場合、すなわち高解像度ディスプレイの場合、通常、アレイ設計では22マイクロメートルのオーバーラップを利用することができない。したがって、より厳密な位置合わせ機能が望ましい。
【0130】
第2の例では、マスクにおける公称オーバーラップが1マイクロメートル程度にされ、装置3300は、第1の基板上のパターンと第2の基板上のパターンとの位置合わせ精度が±1マイクロメートル以内になるように設計される。この精度を実現するために、a)ビジョンシステム3305は解像度が1マイクロメートルよりも小さく、b)モータ3304(または関連する並進ステージ)は、解像度が1マイクロメートルよりも小さくなるように安定した駆動を実現して位置の差を解消し、c)位置合わせマークが、解像度が1マイクロメートルよりも向上するような精度の縁部、寸法、および/または配置を有するようにパターン化されエッチングされる。現在、半導体マスクの位置合わせ、光電子構成要素組立体、およびマイクロ医療デバイスを対象として自動化されたサブミクロンの精度を有する位置合わせシステムが市販されている。これらのシステムの代表的な供給業者には、カナダオンタリオ州ケンブリッジのAutomation Tooling Systems Corp.およびドイツカールスルーエのPhysik Instrumente LPが含まれる。
【0131】
一般に、ビジョンシステムの設計、駆動モータ、および位置合わせマークの設計に注目した場合、シャッタと開口とのオーバーラップが0マイクロメートルよりも大きくかつ20マイクロメートルよりも小さくなるようにすることができる位置合わせ装置3300および位置合わせ方法を実現することが可能である。好ましい設計では、この位置合わせ方法は、0マイクロメートルよりも大きくかつ4マイクロメートルよりも小さなオーバーラップを確保することができる。
【0132】
上述の位置合わせ方法は、モータ3304の能動制御を人間のオペレータに割り当てる位置合わせ方法の一例として実現された。他の方法では、位置合わせを実現するうえでオペレータの介入は必要とされない。2枚の基板上の基準同士の位置ずれの方向と量を測定することができ、次いで測定された位置ずれが事前に指定されたレベルよりも小さくなるまでモータ3304を自動的に駆動することができる、装置3300用のインテリジェントビジョン(マシンビジョン)システム(すなわち、デジタルカメラとコンピュータ画像処理とを含むシステム)が、たとえば上記に識別された販売会社から市販されている。
【0133】
装置3300によって使用される位置合わせマークまたは基準は、以下に
図9に関して図示または説明する形態以外の多数の形態をとってもよい。いくつかの実施形態では、オペレータまたはマシンビジョンシステムが、シャッタ組立体または開口の形状のような、基板上の特定の機能パターンを認識することができる。それによって、ビジョンシステムは、シャッタと開口との位置ずれを直接測定し最小限に抑える。別の実施形態では、ディスプレイ縁部がシャッタおよび開口の位置に対して厳密な位置に切断またはダイシングされる。それによって、ビジョンシステムは、2枚の基板の縁部同士の位置ずれを測定し最小限に抑える。
【0134】
人間のオペレータまたは自動位置合わせシステムが基板同士を揃え、2枚の基板間に接触を確立した後、UV露光ランプ3306を使用して接着剤3318を少なくとも部分的に硬化することができる。接着剤結合材料3318は、装置3300において位置合わせが実現された後、基板3308と基板3310が相対的に移動するのを防止する。位置合わせ後2枚の基板を揃った状態に維持するための代替手段が利用可能である。このような代替手段は、位置合わせガイド、およびスペーサのような熱リフロー可能なスペーサ材料を使用することを含む。
【0135】
位置合わせ装置3300の機能はMEMSダウン構成におけるディスプレイ500の例に用いられる機能であるが、同様の位置合わせ技術が、ディスプレイ装置500によって示されているように、MEMSアップ構成に適用されたときに有効であることがある。ディスプレイ組立体500では、シャッタ組立体502が基板504上に形成され、一方、ブラックマトリックスおよび関連する開口524が基板522上に形成される。2枚の基板504および522は、シャッタ503の少なくとも一方の縁部とブラックマトリックス524内の対応する開口の縁部との間にオーバーラップが存在するように位置合わせ装置3300を使用して揃えられてもよい。位置合わせ装置3300は、縁部同士の間のオーバーラップが0マイクロメートルから20マイクロメートルの間になるようにする。好ましい設計では、この位置合わせ方法は0マイクロメートルよりも大きくかつ5マイクロメートルよりも小さく、場合によっては4マイクロメートルよりも小さなオーバーラップを確保する。
【0136】
位置合わせ装置3300の機能について、シャッタ組立体のような横シャッタ方式光変調器を組み込んだディスプレイに関して説明したが、上述の位置合わせ装置3300および位置合わせ方法を代替MEMS光変調器技術に有効に適用できることが理解されよう。たとえば、エレクトロウェッティング変調器アレイは、遮光状態、フィルタリング状態、または暗状態においてオイルの縁部と開口の縁部との間にオーバーラップが確立されるように開口プレートが変調器基板に揃えられるときに有利である。同様に、光変調器220などのローリングアクチュエータ光変調器を同様に製造し揃えることができ、第1の基板上のローラアクチュエータ変調器の遮光縁部と、第2の基板上にパターン化された対応する開口の縁部との間にオーバーラップが設けられる。
【0137】
他の非シャッタ方式変調器に上述の位置合わせ装置3300および位置合わせ方法が有利であることがある。たとえば、第1の基板上に製造された光変調器250のようなMEMS干渉変調器またはMEMS光タップ変調器を、第2の基板上に製造されたブラックマトリックスの縁部に揃えてもよい。光変調器の詳細は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6674562号明細書および米国特許第5771321号明細書に記載されている。
【0138】
パネル製造プロセス
複数のディスプレイ用の変調器アレイを同じガラス基板またはプラスチック基板上に並列に組み立てることができるときはいつでも生産性が向上する。パネルと呼ばれる大きなガラス基板および関連する製造機器は現在、最大2m四方のサイズが市販されている。
図9は、本発明の例示的な実施形態によって、MEMS光変調器の複数のアレイを1つの大きな変調器基板3402上に形成し、一方、開口穴の複数のアレイを大きな開口プレート3404上に形成するにはどうすればよいかを示している。パネル3402は、1組の6つの変調器アレイ3406と1組の4つの変調器位置合わせマーク3408とを含む。パネル3404は、1組の6つの開口アレイ3410と1組の4つの開口位置合わせマーク3412とを含む。各変調器アレイ3406は、1つの開口アレイ3410に対応するように設計され、したがって、パネル3402および3404が互いに揃えられ、封止されたときに、対応する変調器アレイ−開口アレイ対はそれぞれ、セル組立体とも呼ばれるディスプレイ組立体を形成する。その場合、6つのセル組立体を同時に揃え封止するには、基板3402および3404間で1回の位置合わせ封止動作を実施すれば十分である。
図9に示されている例の場合、ガラスパネル3402および3704は対角線が30cmであり、一方、各セル組立体またはディスプレイ領域は対角線が10cmである。他の実施形態では、対角線が50cm以上のパネルを使用して、パネル当たりに、対角線が10cmの最大25個のディスプレイを製造することができる。
【0139】
また、エポキシ接着剤ライン(一種のシール材料)3414と、開口プレート3404上の各アレイに付加されたスペーサポスト3416とが示されている。ディスプレイ組立体に関して説明したように、開口プレート3404上の各アレイの内部に様々なスペーサが塗布されている。以下に、接着剤を塗布するプロセスについて、セル組立体ステップ3614に関して説明する。
【0140】
本発明の例示的な実施形態による、パネル3402および3404の位置合わせおよび封止が完了した後のパネル組立体3500が
図10に示されている。2枚の基板が首尾よく揃えられたことが、変調器位置合わせマーク3408が開口位置合わせマーク3412内に入れ子になっていることによって示されている。位置合わせマークは、マーク3412の内側縁部とマーク3408の外側縁部との間に公称1マイクロメートルのギャップが許容されるように設計されている(
図10ではこれらのギャップの大きさが図示のために誇張されている)。この位置合わせ設計では、オペレータおよび/または自動位置合わせシステムは、入れ子にされた位置合わせマークのx方向とy方向の両方に適切なギャップが確認されるまで、たとえば、どのラインも交差したり接触したりすることがなくなるまで、ツール3300内の基板の相対位置を調整する。適切なギャップが確認されたときに、位置合わせが成功したとみなされ、すなわち、位置ずれが許容される誤差内に低減され、アレイ3406および3410の各々における変調器と開口との間に予期されたオーバーラップが実現されている。
【0141】
位置合わせマーク同士の間の公称ギャップは、位置合わせプロセスの予期される精度に一致するように設計してもよく、たとえばギャップは、所望の位置合わせ精度に応じて10マイクロメートル、4マイクロメートル、2マイクロメートル、または1マイクロメートルであってよい。代替設計では、一方の位置合わせマークは円形のドットであり、他方のマークはリング状である。ドットとリングの間に、所望の位置合わせ精度に対応するギャップを設計してもよい。いくつかの位置合わせマシン設計では、位置合わせマーク同士の間のギャップは必要とされず、その代わり、マシンはデジタルカメラを使用してドットとリングの両方の中心点を推定する。この位置合わせソフトウェアは次いで、ドットの中心点とリングの中心点を揃えることを試みる。2枚のパネル3402および3404は接着剤によって所定の位置に結合される。以下に、この接着剤の硬化について、セル組立体ステップ3620に関して説明する。
【0142】
図10は、パネル組立体3500上に重ね合わされた1組のダイシングライン3502も示している。ダイシングライン3502は、ディスプレイまたはセル組立体とも呼ばれる個々のアレイをパネルから分離できるようにパネルを切断する際に用いられるラインを示す。シンギュレーションとも呼ばれるこの分離プロセスは、分断方法によって実現されてもよい。このプロセスでは、ダイヤモンドまたはカーバイドチップを使用して、ライン3502の所でガラスパネルの表面に沿ってラインが刻まれる。次いで、単純な屈曲プロセスを使用してパネルをケガキ線に沿って破断してもよい。別の実施形態では、ダイシングソーによって分離またはシンギュレーションプロセスが実施される。基板3402と基板3408の両方を同じダイシングラインに沿って切断する必要はない。変調器基板を開口基板について定められた周縁幅よりも広い周縁幅に合わせてダイシングすると有利であることが多い。この場合、セル組立てが完了した後、変調器基板の縁部上にドライバチップを結合するためのスペースが得られる。二重フィルホールを使用するときなどに、パネルは軸3504に沿って切断することによって各ストリップに分離される。
【0143】
図11は、本発明の例示的な実施形態による、MEMS光変調器を組み込んだディスプレイ装置を組み立てる第1の方法3600(セル組立て方法3600とも呼ばれる)を示している。方法3600の第1の実施形態について、MEMSダウンディスプレイ組立体に関して説明する。その後に、MEMSアップ構成におけるディスプレイの組立てに関する第2の実施形態について説明する。
【0144】
MEMSダウンディスプレイ用のセル組立て方法3600では、まずステップ3602および3604において2枚の基板を用意する。これらの基板はどちらも透明であり、ガラスまたはプラスチックで作られている。この組立て方法では次に、ステップ3606において制御マトリックスを製造し、ステップ3608においてMEMS変調器アレイを製造する。一実施形態では、制御マトリックスと変調器アレイの両方を、変調器基板と呼ばれる第1の基板上に製造する。一実施形態では、気泡封じ込め領域とも呼ばれるトレンチを変調器基板に設ける。しかし、ディスプレイ組立体3100に関して説明したように、制御マトリックスを変調器基板とは異なる基板上に製造し、この基板に導電スペーサによって電気的に接続することができる実施形態がある。変調器基板の製造についての詳細は、上記に参照した米国特許出願第11/361785号明細書に記載されている。
【0145】
MEMSダウン組立て方法3600では、ステップ3610において開口層を製造する。開口層は、好ましくは透明材料、たとえばプラスチックまたはガラスで作られた第2の基板上に製造される。MEMSダウン構成では、第2の基板を開口プレートと呼ぶ。一実施形態では、ステップ3611において、気泡封じ込め領域とも呼ばれるトレンチを開口プレートの表面に設ける。他のMEMSダウン実施形態では、開口層が製造される第2の基板は光導波路としても利用される。いくつかの実施形態では、開口層は、一連の開口としてパターン化される光吸収材料で構成される。一実施形態では、開口層は、基板から入射した光を基板の方へ反射するように設計される。
【0146】
この方法では次に、2枚の基板の一方または他方にスペーサ(ステップ3612)および封止材料(ステップ3614)を塗布し、次いで、基板同士を揃えて結合する。方法3600では次に、ステップ3612においてスペーサが塗布される。したがって、上述の製造方法を含めスペーサ2708、2812、または2814によって示されているスペーサのいずれもステップ3612において組み込むことができる。スペーサは、第1の基板および第2の基板のいずれかに形成されても、両方に形成されてもよい。
【0147】
方法3600では次に、ステップ3614においてエポキシシール材料528などのシール材料を塗布する。シール材料は、方法3600によって使用される第1の基板および第2の基板のいずれかに塗布されても、両方に塗布されてもよい。シール材料は、位置合わせステップの後に第1の基板および第2の基板の位置を維持する接着剤結合材料である。シール材料を使用して、ステップ3624において付加すべき流体を2枚の基板間のギャップ内に封じ込める。適用可能なシール材料は、エポキシ材料、アクリレート材料、またはシリコーン材料のようなポリマー材料であってよく、あるいはシール材料は、はんだバンプのような熱リフロー可能なはんだ材料から形成されてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、シール材料は異方性導電接着剤3214などの複合材料であってもよい。シール材料は、
図9のディスプレイパネル3404に示されているように各変調器アレイまたは開口アレイの周囲に沿って移動するノズルから供給されてもよい。
【0149】
シール材料3414は、ディスプレイパネル3404上の各ディスプレイ領域の周囲を完全に囲んでいるわけではない。フィルホールと呼ばれる1つまたは複数のギャップ3418を意図的に周囲シールに残してステップ3624においてセルに流体を充填できるようにしている。一実施形態では、これらを両側に形成しても、同じ側に沿って形成しても、あるいは任意の側に形成してもよい。いくつかの実施形態では、このギャップは、気泡封じ込め領域の隣に開放されたままにされ、それによって、シールによって囲まれた空間内に気泡を意図的に導入することができる。
【0150】
方法3600では次に、ステップ3616において任意に導電接着剤を塗布する。ステップ3612および3614において付加されるスペーサまたはシール材料が導電性を有さない場合、この特性を有するさらなる接着剤を付加すると有利であることが多い。ステップ3616において付加される導電接着剤は、第1の基板上の制御マトリックスと第2の基板上の開口層とを電気的に接続するのを可能にする。ステップ3616において付加された接着剤は通常、ディスプレイ領域の周囲に沿ってある点に配置される。
【0151】
供給後、シール材料は、硬化ステップを施されて比較的硬く剛性になる。シール材料は、ステップ3614の一部として部分的に硬化されてもよいが、多くの実施形態では、ステップ3618または3620のいずれかが実施されるまで最終的な硬化は行われない。シール材料は、乾燥硬化、UVすなわち紫外線硬化、熱硬化、またはマイクロ波硬化を含む他の多数の種類の硬化が可能になるように調製されてもよい。装置3300などの位置合わせツールを使用する際、UV硬化エポキシが好ましい場合がある。
【0152】
図11に示されているように、制御マトリックス3606を製造するステップ、MEMS変調器3608を製造するステップ、開口層3610を製造するステップ、スペーサ3612を塗布するステップ、およびシール材料3614を塗布するステップはすべて、パネルレベルで実施されてもよく、複数のディスプレイが、大きなガラスパネルまたはプラスチックパネル上に同時に製造される。あるいは、これらのステップをより小さな基板上の個々のディスプレイについて実施してもよい。組立てステップ3606、3608、3610、および3612についての製造上の詳細は、上記に参照した米国特許出願第11/361785号明細書に記載されている。
【0153】
方法3600では、次にステップ3618において、
図8の位置合わせ装置3300に関して説明したように第1の基板と第2の基板を揃える。位置合わせ装置3300は、位置合わせが許容される程度の誤差の範囲内であることを確認するためのカメラおよび/または顕微鏡を含む。第1の基板と第2の基板を位置合わせステップ3618の一部としてスペーサによって接触させる。
【0154】
位置合わせステップ3618の一部として、接着剤結合材料を少なくとも部分的に硬化して2枚の基板を結合するかあるいは2枚の基板の相対位置を維持する。位置合わせ装置3300は、接着剤の硬化に影響を及ぼすヒータおよび/またはUV露光ランプを含む。いくつかの実施形態では、シール3414などの周縁シールをステップ3618の一部として少なくとも部分的に硬化する。他の実施形態では、位置合わせの前に、熱硬化可能なシール材料3414に加えて、複数のUV硬化可能な接着剤ドットを基板上に設ける。この実施形態では、位置合わせステップ3618の一部としてエポキシドットのみが硬化され、一方、残りのシール材料は後でステップ3620において硬化される。
【0155】
方法3600では、次にステップ3620において、シール材料を硬化する。多くの実施形態では、第1の基板と第2の基板を適切に揃えることができるのは、シール材料が比較的高い剛性を有する接着剤として働くときだけである。ステップ3620において接着剤が硬化すると、シールの剛性が確保される。ステップ3620での硬化は、熱硬化によって実施されても、UV硬化によって実施されても、あるいはマイクロ波硬化によって実施されてもよい。いくつかの実施形態では、ステップ3620において、組立体を炉またはUV露光システムもしくはマイクロ波露光システムに入れるか、組立体に圧力を加えるか、あるいは組立体をプレスのプレート同士の間に配置することによって実施されてもよい。このプレスは、接着剤が硬化されている間基板の屈曲または反りを最小限に抑える働きをする。プレスは、各基板をスペーサにしっかりと接触させることによってギャップを維持するのを助ける。
【0156】
方法3600では、次にステップ3622において、任意に、複数のディスプレイアレイを含む大きなパネルから個々のディスプレイアレイを分離する。このような分離が必要になるのは、この時点までのセル組立てステップが、
図9において説明したような大形パネルプロセスに従って進行している場合だけである。変調基板および開口プレートがステップ3606から3614において個々のディスプレイとして製造される場合、シンギュレーションステップも分離ステップも必要とされない。この分離は、分断方法またはダイシングソーのいずれかによって実現されてもよい。
【0157】
この方法は、個々のディスプレイをより大きなパネル組立体から分離または単一化すること(ステップ3622)と、2枚の基板間のギャップに流体または潤滑材を充填すること(ステップ3624)と、ディスプレイ組立体に流体を充填することを含む。ディスプレイ装置500の説明に示されているように、ディスプレイ装置の2枚の基板は、ギャップ526などのギャップによって分離され、ギャップに作動流体530などの流体を充填することが好ましい。多くのディスプレイでは、流体は、MEMS光変調器を実質的に囲む潤滑材として働く。流体は、上述のように一定の電気的特性および光学特性も有する。一実施形態では、ステップ3626において、1つまたは複数のフィルホールを封止する。その後、ステップ3625において、気泡封じ込め領域内に気泡を意図的に導入する。別の実施形態では、ステップ3628において気泡封じ込め領域に気泡を誘導した後にあらゆるフィルホールを封止する。
【0158】
次に、セル組立て方法3600をMEMSアップディスプレイ構成に適用する場合について検討する。一例として
図5のディスプレイ組立体500について説明する。MEMSアップディスプレイ構成の場合、ステップ3606および3608において制御マトリックスとMEMS変調器アレイの両方を第1の基板上に製造する。一例として変調器基板について説明する。ステップ3610において第2の基板上に開口層を堆積させる。
【0159】
ディスプレイ組立体3100に関して説明したように、第1の基板上にMEMS変調器アレイが製造され、一方、第2の基板上に制御マトリックスを製造することができる実施形態がある。2枚の基板は導電スペーサによって電気的に連絡する。
【0160】
MEMSアップディスプレイ構成では、第2の基板はカバープレート522のようにカバープレートと呼ばれる。開口層は、ステップ3610において製造され、ブラックマトリックス524のようにブラックマトリックス層と呼ばれ、開口のアレイとしてパターン化される。ブラックマトリックス層は、ディスプレイの周囲コントラストを向上させるように光吸収材料で構成されることが好ましい。組立て後、ブラックマトリックス開口は、変調器基板上に配置されたMEMS光変調器と重なり合うことが好ましい。
【0161】
MEMSアップディスプレイ組立て方法3600では、カバープレート、すなわちステップ3604において設けられた第2の基板は、透明材料、すなわちプラスチックまたはガラスで作られることが好ましい。しかし、MEMSアップ組立て方法では、ステップ3602において設けられる変調器基板をシリコンなどの不透明材料から作ってもよい。たとえば、反射MEMSアップディスプレイの場合、ステップ3606またはステップ3608のいずれかにおいて第1の基板、たとえばシリコンを反射層によって被覆してもよい。透過MEMSアップディスプレイの場合、第1の基板に使用される不透明材料に、開口508などの開口の位置において貫通穴のアレイをエッチングしてもよい。
【0162】
MEMSアップディスプレイ組立体3600では、ステップ3612においてスペーサを塗布し、ステップ3614において第1の基板または第2の基板のいずれか、すなわち光変調器基板またはカバープレートのいずれかにシール材料を塗布する。MEMSダウンの場合と同様に、シールによって囲まれた空間の周囲全体にシール材料を塗布し、上記にMEMSダウンについて説明したのと同様に後で封止される1つまたは複数の開口部を残す。
【0163】
MEMSアップディスプレイ組立て方法3600における以後のステップは、位置合わせステップ3618、ステップ3620におけるシール材料の硬化、ステップ3622における複数のディスプレイのパネルからの分離、ステップ3624における流体充填、ならびに最終充填ステップ3626および3628を含め、MEMSダウンディスプレイ組立て方法3600と同様である。
【0164】
位置合わせ装置3600に関して説明したように、エレクトロウェッティングディスプレイおよびローリングアクチュエータディスプレイを含むいくつかの代替MEMS光変調器技術にMEMSアップ構成またはMEMSダウン構成のいずれかの組立て方法3600を適用可能である。MEMSアップディスプレイ組立て方法3600は特に、干渉変調器ディスプレイおよびMEMS光タップ変調器ディスプレイに適用可能である。
【0165】
流体充填プロセス(ステップ3624)の詳細について、本発明の例示的な実施形態による、
図12に示されている流体充填装置3700に関して説明する。流体充填装置は、作動流体3704の槽によって部分的に充填される真空チャンバ3702から形成されている。パネル組立体3500のような、揃えられ部分的に封止されたセル組立体またはパネル組立体が、ワンド3706または可動プラッタによって流体槽の上方に懸垂されている。真空ポンプに至るポート3708、および真空チャンバの内部を通気して大気圧にするのに使用されるポート3710が、真空チャンバに取り付けられている。
図12には示されていないが、ポート3708および3710の各々に弁が組み合わされている。
【0166】
動作時には、組立体3500などのパネル組立体における基板同士の間のギャップを充填するプロセスは2ステッププロセスである。第1に、2枚のプレートの間から空気または他の気体を除去し、第2にギャップに流体を充填する。真空ポンプの弁を開き、チャンバ3702全体を1トルよりも実質的に低い圧力まで低下させると、2枚のプレート間から空気が除去される。次に、真空弁を閉じ、ワンド3706を使用してパネル組立体3500を作動流体の槽3704に浸漬させる。パネル組立体3500を浸漬させた後、通気弁を大気に対して開放するか、あるいはボトルから窒素またはアルゴンガスを除去する。還気はすべての流体に対する圧力を大気圧(または600トルよりも高い圧力)に戻す。次いで、作動流体は、圧力下でセル組立体3500の基板同士の間のギャップに押し込まれる。セル組立体をチャンバ3702から取り出すと、セル組立体に流体が充填され、したがって、組立てステップ3624が完了する。
【0167】
代替設計では、パネル組立体3500をワンド3706などの可動ワンドによって懸垂させる必要はない。その代わり、パネル組立体を所定の位置に固定することができ、一連の弁によって潤滑材3705を真空チャンバ3702から出し入れすることができる。チャンバは、チャンバに流体がほとんど存在しない間真空排気される。真空排気の後、さらなる流体がチャンバに流入することによってチャンバ内の液面が高くなる。流体は、組立体3500が流体に浸漬されるまで添加される。パネルを流体に浸漬させた後、システムを通気して大気圧にし、ギャップに流体を充填する。
【0168】
別の実施形態では、チャンバ3702に液体3704などの液体が充填されず、その代わり、チャンバを真空排気した後ガスが逆充填される。逆充填ガスの例には、不活性ガス(アルゴン、窒素)、蒸気相潤滑材、ある反応性ガス、またはそれらの任意の組合せが含まれる。反応性ガスは、MEMS変調器の移動表面と反応するかあるいはこの移動表面上に堆積することのできる気体である。反応性ガスは、移動表面の表面エネルギーを低減させることによって移動表面の粘着性を化学的に緩和または低下させることができる。反応性ガスの例には、ジメチルジクロロシラン(DDMS)、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)、およびヘプタデカフロロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリクロロシラン(FDTS)が制限なしに含まれる。蒸気相潤滑材は、デバイスの実質的に動作全体にわたって蒸気相のままであるガスであり、同様に表面を緩和することができる。蒸気相潤滑材の例には、六フッ化硫黄、およびメタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコル、グリセロル、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオイル、ジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、およびジエチルベンゼン、またはそれらの任意の混合物が制限なしに含まれる。
【0169】
チャンバ3702内の流体充填プロセスはセルレベルまたはパネルレベルのいずれかで実行されてよい。組立てプロセス3600では、シンギュレーションステップ3622が流体充填ステップ3624の前に実施され、すなわち、個々のディスプレイのセル組立体が流体を充填するために真空チャンバ3702に装填される。真空充填チャンバ3702は、単一のポンプダウン動作において複数の個々のディスプレイを保持し浸漬させることができるプラッタを含んでもよく、したがって、複数のディスプレイに同時に流体を充填することができる。あるいは、これらのステップの順序を逆転し、組立体3500のような完全なパネル組立体を真空チャンバに装填することが可能である。次いで、パネル上の各ディスプレイ内のギャップの真空排気と充填を同時に行う。次いで、流体充填ステップ3624が完了した後でダイシングプロセスまたはシンギュレーションプロセス3622を実施する。
【0170】
方法3600では、ステップ3626において、セルの組立てを完了し、フィルホールを封止する。ステップ3614において周縁シールに残されたフィルホール3418を通して、ステップ3624において基板同士の間の空間に流体を導入するかあるいは押し込む。この穴には組立てプロセスの終了時に接着剤を充填してディスプレイ組立体から流体が漏れるのを防止する。ステップ3626の一部として、フィルホールを封止する前に、プレスを介してセルに圧力を加えてもよい。プレスは2枚の基板を圧縮し、一方の基板上に製造されたスペーサを他方の基板にぴったりと接触させる。これによって、2枚の基板の間に一様なギャップまたは間隔が確立される。次いで、ディスプレイから圧力を除去する前にフィルホール3418を接着剤によって封止する。封止後、セル内の密閉され流体が充填されたチャンバは、周囲条件の下で基板同士が分離するのを防止する。ステップ3626において使用される接着剤は、熱硬化、UV硬化、またはマイクロ波硬化を使用して硬化されるポリマー接着剤であってもよい。
【0171】
次に、セル組立て方法3600をMEMSアップディスプレイ構成に適用する場合について検討する。一例としてディスプレイ組立体500について説明する。MEMSアップディスプレイ構成の場合、ステップ3606および3608において制御マトリックスとMEMS変調器アレイの両方を第1の基板上に製造する。一例として変調器基板504または2418について説明する。ステップ3610において第2の基板上に開口層を堆積させる。
【0172】
ディスプレイ組立体3100に関して説明したように、第1の基板上にMEMS変調器アレイが製造され、一方、第2の基板上に制御マトリックスを製造することができる実施形態がある。2枚の基板は導電スペーサによって電気的に連絡する。
【0173】
MEMSアップディスプレイ構成では、第2の基板はカバープレート522のようにカバープレートと呼ばれる。開口層は、ステップ3610において製造され、ブラックマトリックス524のようにブラックマトリックス層と呼ばれ、開口のアレイとしてパターン化される。ブラックマトリックス層は、ディスプレイの周囲コントラストを向上させるように光吸収材料で構成されることが好ましい。組立て後、ブラックマトリックス開口は、変調器基板上に配置されたMEMS光変調器と重なり合うことが好ましい。
【0174】
MEMSアップディスプレイ組立て方法3600では、カバープレート、すなわちステップ3604において設けられた第2の基板は、透明材料、すなわちプラスチックまたはガラスで作られることが好ましい。しかし、MEMSアップ組立て方法では、ステップ3602において設けられる変調器基板をシリコンなどの不透明材料から作ってもよい。たとえば、反射MEMSアップディスプレイの場合、ステップ3606またはステップ3608のいずれかにおいて第1の基板、たとえばシリコンを反射層によって被覆してもよい。透過MEMSアップディスプレイの場合、第1の基板に使用される不透明材料に、開口508などの開口の位置において貫通穴のアレイをエッチングしてもよい。
【0175】
MEMSアップディスプレイ組立体3600では、ステップ3612においてスペーサを塗布し、ステップ3614において第1の基板または第2の基板のいずれか、すなわち光変調器基板またはカバープレートのいずれかにシール材料を塗布する。
【0176】
MEMSアップディスプレイ組立て方法3600における以後のステップは、位置合わせステップ3618、ステップ3620におけるシール材料の硬化、ステップ3622における個々のディスプレイのパネルからの分離、およびステップ3624における流体充填を含め、MEMSダウンディスプレイ組立て方法3600と同様である。
【0177】
位置合わせ装置3600に関して説明したように、MEMSアップ構成またはMEMSダウン構成のいずれかにおける組立て方法3600をエレクトロウェッティングディスプレイおよびローリングアクチュエータディスプレイを含むいくつかの代替MEMS光変調器技術に適用することができる。MEMSアップディスプレイ組立て方法3600は特に、干渉変調器ディスプレイおよびMEMS光タップ変調器ディスプレイに適用可能である。
【0178】
図13は、MEMS光変調器を組み込んだディスプレイ装置を組み立てる代替方法を示している。方法3800を使用して、方法3600に関して説明したようにディスプレイをMEMSダウン構成またはMEMSアップ構成のいずれかに組み立ててもよい。方法3600と同様に、組立て方法3800ではまず、ディスプレイ構成要素が製造された(ステップ3806、3608、および3810)2枚の基板を用意する(ステップ3802および3804)。方法3800では次に、2枚の基板の一方または他方にスペーサを塗布する(ステップ3812)とともに封止材料を塗布する(ステップ3814)。方法3800は、ディスプレイ組立体のギャップに流体を充填することも含む(ステップ3118)。しかし、方法3600とは異なり、流体充填ステップ(ステップ3818)とディスプレイ組立て(ステップ3820、3822、および3824)の順序が逆転される。組立て方法3800をワンドロップフィル(one−drop fill)方法と呼ぶこともある。
【0179】
組立て方法3800ではまず、第1の基板および第2の基板を用意し(ステップ3802および3804)、次に、制御マトリックスを製造し(ステップ3806)、MEMS変調器アレイを製造し(ステップ3808)、開口層を製造し(ステップ3810)、スペーサを塗布する(ステップ3812)。これらのステップには、組立て方法3600の対応するステップで使用したのと実質的に同様の組立てプロセスを含む。
【0180】
方法3800では、次にステップ3814において、シール材料を塗布する。シール塗布ステップ3612に使用したのと同様のシール材料および同様の塗布材料をステップ3814において塗布してもよい。しかし、ステップ3814では、ディスプレイのアクティブ領域の周囲のシール材料にギャップやフィルホールを残さない。
【0181】
次いで、ステップ3616の接着剤塗布と同様に、ステップ3816において任意に導電接着剤を塗布する。
【0182】
方法3800では、ステップ3818において液体を供給する。潤滑特性ならびにその他の電気的特性、機械的特性、および光学的特性を有する適用可能な液体についてはディスプレイ装置500に関して説明した。液体充填ステップ(ステップ3800)では、装置3700などの真空充填装置は必要とされない。第1の基板および第2の基板の一方の開放面上に正しい量の流体を直接供給してもよい。流体は、開口層が形成された第2の基板上に供給することが好ましい。なぜなら、この基板は概して、空気の気泡が溜まることがあるキャビティまたは再入面を含むMEMS構成要素を有さないからである。基板が、パネル3404と同様に複数のディスプレイを組み込んだ大形パネルであるとき、各アレイのアクティブ領域に正しい量の流体が供給される。概して、流体は、シール材料3414の周縁によって拘束されるまで基板の面上に広がる。正しい量の流体が、周縁シールによって形成されるキャビティを完全に充填する。いくつかの実施形態では、光学測定ツールを使用して、充填の前に、パネル上の個々のアレイの実際の周縁寸法を測定することによって、各キャビティの正確な体積が求められる。
【0183】
方法3800では、次にステップ3820において、2枚の基板を揃える。すでに一方の基板に潤滑流体が供給されているので、ステップ3800に必要な位置合わせ装置は装置3300によって示されている位置合わせ装置とは異なる。主な違いとして、位置合わせ動作は、低圧条件または真空条件下で実施されることが好ましい。このことは、次に、第1の基板および第2の基板と、位置合わせ用に設けられた可動部品およびビジョンシステムの部品の多くとが、位置合わせチャンバと呼ばれる真空チャンバ内で動作することを意味する。
【0184】
動作時には、2枚の基板が位置合わせチャンバに導入され、チャンバが真空排気される。(すでにステップ3818において供給されている)流体の蒸発を防止するために、チャンバを潤滑流体の平衡蒸気圧まで逆充填してもよい。2枚の基板を揃えて一緒にした後、潤滑流体が2枚の基板の各基板の表面に接触し、MEMS光変調器の各可動部品を実質的に囲む。基板同士が接触し、流体がすべての表面を濡らした後、(ステップ3822において)位置合わせチャンバを通気して大気圧にする。基板同士を接触させた後で接着剤を部分的に硬化させてもよい。接着剤は、熱的手段または真空チャンバ内に設置されたUVランプによって硬化されてもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、潤滑流体の蒸気圧が高いとき、すなわち、潤滑流体が周囲温度で急速に蒸発する場合、パネルを位置合わせチャンバに導入する前にステップ3818において流体を供給するのは実際的でない場合がある。この実施形態では、位置合わせチャンバを真空排気し、潤滑材の蒸気圧によって逆充填した後、2枚の基板を揃えるステップの直前に一方の基板上に潤滑流体を供給するノズルを設けてもよい。
【0186】
ステップ3820での位置合わせ動作の間にシール材料が完全には硬化しなかった範囲で、ステップ3824においてさらなる硬化ステップを施す。ステップ3824での硬化は、熱硬化、UV硬化、またはマイクロ波硬化のいずれかとして実施されてもよい。
【0187】
方法3800はステップ3826において完了し、任意に、複数のディスプレイアレイを含む大きなパネルから個々のディスプレイアレイを分離する。このような分離が必要になるのは、この時点までのセル組立てステップが、
図9および
図10において説明したような大形パネルプロセスに従って進行している場合だけである。変調基板および開口プレートがステップ3806から3814において個々のディスプレイとして製造される場合、最終的な分離ステップは必要とされない。この分離は、分断方法またはダイシングソーの使用のいずれかによって実現されてもよい。
【0188】
方法3600が完了した後のディスプレイを組み立てるための最終ステップは、集合的にモジュール組立てプロセスと呼ばれることが多い。モジュール組立体は、制御駆動回路を備えるシリコンチップをガラス基板に直接取り付けるステップと、可撓性の回路同士を結合してディスプレイを外部デバイスと相互接続するステップと、コントラストフィルタなどの光学膜同士を結合するステップと、バックライトを固定するステップと、ディスプレイを支持構造またはエンクロージャ内に取り付けるステップとを含む。可撓性の回路は、単純な配線で構成されてもよく、あるいは抵抗器、キャパシタ、インダクタ、トランジスタ、または集積回路のようなさらなる電気的要素を含んでもよい。
【0189】
図14は、本発明の例示的な実施形態による、ディスプレイ装置を組み立てる代替方法4000を示している。方法4000は、ディスプレイの動作時に蒸気気泡が形成されるのを防止し回避するのを助ける低温封孔プロセスを表している。組立て方法4000は、キャビティ内の流体の最終的な封止が低温で実施されることを除いて、組立て方法3600と類似しており、かつ組立て方法3600と同じプロセスステップを多数含む。
【0190】
組立て方法4000は、特に流体充填ステップ、セル冷却ステップ、セル圧縮ステップ、および低温封孔ステップを含む。ステップ4002において、第1の基板とセルギャップを形成する第2の基板とを含むMEMSディスプレイセルを用意する。各基板は透明である。第1の基板は光変調器のアレイを含んでもよい。第2の基板は、カバープレート522のようなカバープレートまたは開口プレート2804のような開口プレートのいずれかを備えてもよい。
【0191】
ディスプレイセルでは、第2の基板は第1の基板に隣接するように位置し、したがって、第1の基板は第2の基板からギャップによって分離される。第1の基板および開口プレートは、任意の適切な材料、たとえばプラスチックまたはガラスから形成されてもよい。第1の基板と第2の基板との間に複数のスペーサを形成し(ステップ4004)、ギャップの実質的な部分を維持する。スペーサは第1の基板と第2の基板のいずれかに形成されてもよい。一実施形態では、ディスプレイ組立体2800と同様に、スペーサは第1の基板と第2の基板の両方に形成される。開口プレート2700およびスペーサ2708に関して説明した材料または製造方法のうちのどれでも制限なしにこの目的に適用してよい。
【0192】
組立て方法4000では次に、エッジシールを塗布する(ステップ4006)。エッジシールは、光変調器のアレイの周縁の少なくとも一部に塗布される。シール材料は、第1の基板と第2の基板を互いに結合するための接着剤として設けられる。ステップ3614に関して説明したエポキシ接着剤をシール材料のうちのどれでも制限なしにこの目的に使用してよい。いくつかの実施形態では、ディスプレイ組立体を充填した後にシールを硬化する。シールを硬化する前に、上述のように基板同士を揃えてもよい。ギャップに流体を充填できるように、エッジシールの周縁に少なくとも1つのフィルホールが設けられている。一実施形態では、シール材料は、内部にスペーサ材料を含む複合材料である。含まれているスペーサ材料は、プラスチック、ガラス、セラミック、またはその他の材料であってもよい。この目的に適したシール材料は、ナガセケムテックス株式会社から市販されており製品名XNR5570を有するUV硬化可能なエポキシである。シール材料XNR5570は、半径が12マイクロメートルである集結された1つまたは複数のガラス玉と混合することによってスペーサ機能を実現するように拡張されてよい。スペーサは圧縮不能であってよい。スペーサ用の適切な微小構造にはビードまたは球が含まれる。ただし、他の形状および微小構造も制限なしに適切であってよい。いくつかの実施形態では、シール材料によって確立されるスペーサ高さは、ディスプレイセル内に配置された各スペーサ、たとえばスペーサ2708の高さよりも実質的に高い。
【0193】
次にステップ4008において、ディスプレイ組立体にフィルホールを介して作動流体を充填する。この充填は流体充填チャンバ内で行ってもよく、充填プロセスは充填装置3700に関して説明した充填プロセスに類似している。作動流体は、MEMS光変調器の可動部分を実質的に囲む。適切な作動流体には、流体530に関して説明した流体が制限なしに含まれる。さらなる適切な流体について以下に説明する。いくつかの実施形態では、流体は、ディスプレイ構成要素(機械的可動部材の前面および背面を含む)の表面を濡らし、静摩擦を低減させかつディスプレイの光学性能および電気機械性能を向上させる働きをする無色の作動流体である。ステップ4002〜4008は室温で実施されてもよい。室温は、約18℃から約30℃の範囲の温度、たとえば約20℃、約22℃、約24℃、約26℃、または約28℃であってもよい。代替実施形態では、充填プロセスは、室温よりも実質的に高い温度、すなわち実質的に30℃よりも高い温度で実施される。
【0194】
代替実施形態では、組立て方法4000を液晶ディスプレイまたはエレクトロウェッティングディスプレイに適用してもよい。液晶ディスプレイの場合、第1の基板および第2の基板は、液晶変調器のアレイの一部、たとえばアクティブマトリックス基板およびカラーフィルタプレートに対応してもよい。ステップ4008における流体充填ステップは、セルに液晶材料を充填することを含む。エレクトロウェッティングディスプレイの場合、第1の基板および第2の基板はそれぞれ、制御マトリックス基板およびブラックマトリックス基板を備える。ステップ4008における流体充填ステップは、上述の流体278、280の一方または両方をセルに充填することを含む。
【0195】
次に、引き続き組立て方法4000を参照して
図15〜
図20について説明する。
図15〜
図20は、例示的な実施形態による封止されたディスプレイセルを示している。図を簡略化するために、MEMSディスプレイセルのいくつかの微細構造、たとえばMEMS光変調器、光導波路、反射層は
図15〜
図20から省略されている。これらの微細構造の構成、動作、および位置合わせの詳細は、
図1〜
図10に関してすでに説明した特徴を制限なしに含むものと理解される。
【0196】
図15は、開口プレートと第1の基板が実質的に平行であるMEMSディスプレイセル4100を示している。ディスプレイセル4100は、光変調器基板4102と、光変調器アレイ(不図示)と、開口プレート4104と、エッジシール4106と、それぞれ基板4102および4104上に形成された第1のスペーサおよび第2のスペーサ(4108および4110)とを備える。ステップ4106においてエッジシールを結合する前に第1の基板のスペーサと第2の基板上のスペーサを揃えてもよい。
図15に示されているディスプレイセル4100の形状は、ディスプレイセルが封止される前に有する形状である。第1の基板と開口プレートを流体充填ステップ4008の前に周囲圧力において平行なプレートボンダー上で揃えてもよい。基板同士の間の距離は実質的に、エッジシール4106の高さとエッジシール4106に含まれるスペーサ材料とによって決定される。開口プレート4104上のスペーサと基板4102上のスペーサは接触しない。
【0197】
ディスプレイセル内に流体を封止するには、まずステップ4008において室温で流体充填チャンバからディスプレイセルを取り出す。引き続き方法4000について説明する。各ディスプレイセルのフィルホールを作動流体に浸漬させたままにしてディスプレイセルギャップに気泡が進入するのを防止しつつ、ディスプレイを保持する機器(たとえば、キャリア)を約−15℃〜約−20℃の範囲の温度に冷却する。いくつかの実施形態では、キャリアを約0℃、約−5℃、約−10℃、約−15℃、約−25℃、約−30℃、または約−40℃に冷却する。次いで、セルプレスを約−20℃(ステップ4010)、または約5℃〜約0℃、または約0℃〜約−5℃、約−5℃〜約−10℃、約−10℃〜約−15℃、約−20℃〜約−25℃、約−25℃〜約−30℃、約−30℃〜約−35℃、もしくは約−35℃〜約−40℃に冷却する。代替実施形態では、セルプレスを約−10℃〜約−25℃の範囲の任意の温度に冷却してもよい。別の実施形態では、セルプレスを約0℃よりも低い温度に冷却してもよい。ディスプレイをキャリアから取り外し、セルプレスに配置する(ステップ4012)。セルプレスを周囲圧力よりも高い所定の圧力まで加圧し(すなわち、各基板の外面に接触する外部弾性ブラダを膨張させ)、それによってディスプレイセルを圧縮する(ステップ4014)。ディスプレイを圧縮すると、流体がフィルホールから押し出される。流体が除去され、シールエポキシがフィルホール内に注入される(ステップ4016)。
【0198】
ディスプレイセルが冷却された機器温度に保持されている間、フィルホール内のシール材料はステップ4020において少なくとも部分的に硬化される。このような硬化は、エポキシの成分同士の化学反応またはUV照射のいずれかによって実現されてもよい。
【0199】
図16〜
図19は、例示的な実施形態による、ステップ4014中の圧縮下のディスプレイセルを示している。
図16は、
図15における同じディスプレイセル4100がセルプレスによって圧縮されており、より低い温度に保持されているときの形状を示している。セルプレスは、開口プレート上のスペーサ4110の大部分が変調器基板上のスペーサ4108と接触するようにセルを圧縮する。接触しない残りのスペーサは、温度または圧力の変化に応答してさらなるセル圧縮を可能にし、それによって、蒸気気泡が形成される可能性がさらに低くなる。
【0200】
図17は、封止温度よりも低い温度でさらに圧縮された後の状態の同じディスプレイセル4100を示している。
図17に示されているディスプレイセル4100は、基板4102と基板4104との間に2つの異なるギャップまたは離隔距離を有する。ディスプレイ組立体の中央では、ギャップの大きさがマーカー「B」によって示されている。離隔距離「B」は、ディスプレイの内部のスペーサ同士の接触によって確立され、離隔距離「B」は、スペーサ4108および4110の高さの和と実質的に同じである。ディスプレイ組立体の縁部には、「A」と示された異なるギャップがエッジシール4106の高さによって確立されている。ギャップ「A」はエッジシールの高さに実質的に等しい。シール材料4106が複合材料である実施形態では、離隔距離「A」はエッジシール内に含まれるスペーサ材料またはビードの高さによって確立される。ギャップ「A」の高さは8マイクロメートル〜14マイクロメートルの範囲であることが好ましい。ただし、この目的には4マイクロメートル〜20マイクロメートルの範囲のセルギャップが有用である場合もある。ギャップAとギャップBとの差は約0.5マイクロメートルから4マイクロメートルの間であってよく、したがって、「B」<「A」である。2つのセルギャップ「A」および「B」が存在するので、
図16および
図17の基板はもはや平坦ではなく、その代わりいくらか曲がるかあるいはたわみ、2つの異なるセルギャップに対処している。
【0201】
図16においてディスプレイ組立体4100に関して示されているたわみと
図17においてディスプレイ組立体4100に関して示されているたわみを比較すると有用である。
図17のディスプレイ組立体4100は、
図16の同じディスプレイ組立体に対して相対的により圧縮された位置にあり、基板4102および4104の形状がより顕著にたわんでいる。ディスプレイの縁部に近いスペーサ1408および1410のうちで互いに接触しているスペーサは相対的に
図17の方が多い。セルギャップ「A」とセルギャップ「B」が異なるので、ディスプレイ組立体は、基板のたわみに基づいて、全体としてより低い温度で実質的に圧縮可能になっている。このセル圧縮可能性は、環境温度が変化したときに蒸気気泡が形成されるのを回避するための有用な特徴である。
【0202】
図18は、セルがセル圧力または温度の低下によってさらなる圧縮を受けている同じディスプレイセル4100を示している。
図17と同様に、
図18のディスプレイ組立体4100は2つの異なるセルギャップを備える。エッジシールによって確立されるギャップ高さは、スペーサによってディスプレイ組立体の中央の近くで確立されるギャップ高さよりも高い。
図18では、より低い温度での圧縮に対処するように基板4102と基板4104の両方が曲がるかあるいはたわんでいる。
【0203】
図19Aは、スペーサが弾性材料で作られ、すなわちスペーサ4308および4310が、弾性係数を小さくする材料として選択された材料から形成される、本発明の例示的な実施形態によるディスプレイ組立体4300を示している。このようなスペーサは、圧縮性および弾性がより高く、したがって、スペーサ同士が接触した後でもさらなるセル収縮を可能にする。スペーサの弾性係数は、適切な硬化方法を使用して変更されてもよい。標準的なフォトレジストの弾性係数は約7GPa〜10GPaであるが、適切な硬化方法を使用する場合、弾性係数をさらに小さくしてある程度の圧縮を可能にし、それにもかかわらず開口プレートがMEMSシャッタに接触するのを防止することができる。
【0204】
図19Bは、セルが温度の上昇によって弛緩させられたときでもスペーサ同士が互いに接触を維持する条件下にある、同じディスプレイ組立体4300の一形態を示している。いくつかの実施形態では、スペーサは圧縮性および弾性を有してよく、したがって、周囲温度が低下するかあるいはセルが冷却されたときにセルは収縮することができる。これらの実施形態では、あるいはこのような温度では、開口プレートおよび/または第1の基板上のスペーサ4308および4310の高さは、エッジシール4306の高さと実質的に等しくてもよい。上述のように、スペーサの弾性係数は、任意の適切な硬化方法を使用して変更されてもよい。これらの実施形態では、ディスプレイの中央に位置するスペーサがエッジシールよりも高い圧縮性を有し、したがって、
図19Aに示されているように、温度が低下したときに、ディスプレイの中央と縁部とにギャップの差が存在すると有用である。
【0205】
ディスプレイ組立て方法4000は、室温よりも実質的に低い温度においてディスプレイ組立体の圧縮およびディスプレイ組立体の封止を可能にする(少なくともステップ4012〜ステップ4016)。室温より実質的に低い温度は、室温よりも少なくとも約15℃低く、たとえば約0℃よりも低い任意の温度であってもよい。セルが封止された後、セル組立体を室温に戻すことによってセル組立体のプロセスを完了させる。ディスプレイがステップ4016において封止された後、まずセルプレスをしぼませて減圧するかあるいは解放する(ステップ4018)。セルは、封止されわずかに負の圧力に維持されているので、封止ステップ4016において得られた形状を保持する。後に、セルが室温まで暖められると、流体の体積が増大し、第1の基板と開口プレートが押し広げられる。ウォームアップ相の間、ディスプレイセルは弛緩して圧縮前の形状になる。シール材料は、ステップ4020において所定の時間の間少なくとも部分的に硬化する。所定の時間は、シールエポキシがセルに特定の距離だけ入り込むのに必要な時間に少なくとも部分的に基づく時間である。ステップ4022においてディスプレイを室温まで暖めることができ、その後、フィルホール内のシール材料に最終的な硬化ステップを施すことができる。
【0206】
図20は、本発明の例示的な実施形態による、ディスプレイ組立体4100がプレスから解放され、封止され、再び室温まで暖められた後の状態のディスプレイ組立体4100の別の図である。スペーサ4108とスペーサ4110はもはや接触していない。位置Aの所のセルギャップと位置Bの所のセルギャップは実質的に同じ高さである。ギャップ内の流体は、基板4102または4104の形状および平坦性を大きく凸状に歪ませることなく膨張している。このより平坦な形状は、ディスプレイの光学特性の一様性を向上させる。特に、セルのより平坦な形状は、ディスプレイの軸外コントラスト性能を向上させる。
【0207】
ディスプレイ装置を低温封孔するための上述のプロセスの各々は有利なことに、ディスプレイの予期される動作温度で蒸気気泡が形成されるのを防止することができる。たとえば、MEMSディスプレイの周囲温度が低下したときに、スペーサは、流体がさらに収縮するにつれて(ガラスから形成されてよい)MEMS基板同士が接触するのを防止する。さらに、低温封孔プロセスを実施することによって、一般に封止温度よりも約15℃低い温度で生じる蒸気気泡形成がずっと低い温度で生じる。
【0208】
作動流体
上述のように、第1の基板と第2の基板との間の空間は、気体、液体、または潤滑材などの流体を充填してもよい(セル)ギャップを形成する。作動流体のいくつかの例が、上記にディスプレイ装置500内の流体530に関して記載されている。適切な作動流体のさらなる望ましい特性がTable 2(表2)に示されている。たとえば、流体は低粘度を有するべきである。ディスプレイ内の液体または流体が、分子量が4000グラム/モル未満、好ましくは400グラム/モル未満の材料を含む場合、より低い粘度を実現することができる。
【0210】
また、流体は、純度が高く、温度による粘度の変化が小さく、シールエポキシとの反応性が低く、不燃性であることが望ましい。
【0211】
適切な低粘度流体には、水、アルコール、フッ素化シリコーンオイル、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタン、ジエチルベンゼン、ペルフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、またはそれらの任意の組合せが含まれる、適切な低粘度非極性オイルには、パラフィン、オレフィン、エーテル、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオイル、あるいは他の天然溶剤もしくは合成溶剤または他の天然潤滑材もしくは合成潤滑材が制限なしに含まれる。有用なオイルは、ヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンのようなポリジメチルシロキサン、またはヘキシルペンタメチルジシロキサンなどのアルキルメチルシロキサン、またはそれらの任意の組合せであってもよい。有用なオイルは、オクタンまたはデカンのようなアルカンであってもよい。有用なオイルは、ニトロメタンなどのニトロアルカンであってもよい。有用なオイルは、トルエンまたはジエチルベンゼンのような芳香族化合物であってもよい。有用なオイルは、ブタノンまたはメチルイソブチルケトンのようなケトンであってもよい。有用なオイルは、クロロベンゼンなどのクロロカーボンであってもよい。有用なオイルは、ジクロロフルオロエタンまたはクロロトリフルオロエチレンのようなクロロフルオロカーボンであってもよい。エレクトロウェッティングディスプレイに使用する場合、これらのオイルを染料と混合して、シアン、マゼンタ、および黄色のような特定の色における光吸収性を高めるか、あるいは黒色インクを形成するようにより広範囲のスペクトルにわたって光吸収性を高めることができる。
【0212】
いくつかの実施形態では、上記のオイルの混合物またはその他の流体を組み込むと有用である。たとえば、混合物が様々な分子量を有する分子を含む、アルカン同士の混合物またはポリジメチルシロキサン同士の混合物が有用である場合がある。それぞれの異なる族の流体同士またはそれぞれの異なる特性を有する流体同士を混合することによって特性を最適化してもよい。たとえば、ヘキサメチルジシロキサンの表面濡れ性をブタノンの低粘度と組み合わせて、改良された流体を生成してもよい。
【0213】
いくつかの実施形態では、作動流体は、アルカン、たとえばオクタン、ヘプタン、キシレン(すなわち、ジメチルベンゼンの異性体)、イオン流体、ジビニルベンゼン、トルエン(メチルベンゼンまたはフェニルメタンとも呼ばれる)、アルコール、たとえばペンタノール、ブタノール、およびケトン、たとえばメチルエチルケトン(MEK)、またはそれらの任意の組合せを制限なしに含んでもよい。
【0214】
いくつかの実施形態では、炭素、フッ素、および酸素を含む流体を作動流体として使用してもよい。そのような流体の例には、フルオロケトン、ハイドロフルオロエーテル、エトキシ−ノナフルオロブタン、エチルノナフルオロブチルエーテル、フルオロブタン、フルオロヘキサン、および2−トリフルオロメチル−3−エトキシドデコフルオロヘキサンが含まれる。
【0215】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロカーボンおよび/またはハイドロフルオロエーテルの混合物を使用して改良された流体を生成してもよい。ペルフルオロカーボンにはFLOURINERT Electronic Liquid FC−84が含まれ、一方、ハイドロフルオロエーテルにはNOVEC 7200 Engineering FluidまたはNOVEC 7500 Engineering Fluid(すべて3Mによって製造されておりかつ3Mの登録商標である)が含まれる。適切な混合物の例はTable 3(表3)に示されている。当業者には、作動流体として他の混合物の組合せが適切である場合があることが認識されよう。
【0217】
本発明は、その趣旨または基本的特性から逸脱せずに他の特定の形態で具現化されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本発明を制限するものではなく、すべての点で例示的なものとみなされる。