特許第6069411号(P6069411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069411
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】遠心分離器
(51)【国際特許分類】
   B04B 7/06 20060101AFI20170123BHJP
   B04B 5/02 20060101ALI20170123BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20170123BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B04B7/06 A
   B04B5/02 Z
   C12M1/26
   C12M1/00 A
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-106581(P2015-106581)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-13538(P2016-13538A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】10 2014 008 256.3
(32)【優先日】2014年6月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508248818
【氏名又は名称】サーモ エレクトロン エルエーデー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】バルハウゼ,ノーマン
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−001741(JP,U)
【文献】 米国特許第06056684(US,A)
【文献】 実開昭55−153149(JP,U)
【文献】 実開昭63−136746(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B
C12M 1/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離器(1)であって、
前記遠心分離器(1)の内部と外部とを区切る蓋(2)を備えるハウジング(23)と、
ロータ(5)と、
前記ロータ(5)を閉じるためのロータカバー(3)と、
前記ロータカバー(3)が、前記蓋(2)が開くと同時に前記ロータ(5)から持ち上げられ、前記蓋(2)が閉じると同時に前記ロータ(5)上に置かれるように、保持アーム(11)及びホルダ(12)を介して前記ロータカバー(3)及び前記蓋(2)が互いに着脱可能に接続可能とする接続デバイスと、を備え、
前記保持アーム(11)が、前記蓋(2)の開閉時に、着脱可能かつ移動可能なように前記ホルダ(12)内に取り付けられ、前記保持アーム(11)及び前記ホルダ(12)が、前記蓋(2)が閉じている場合、互いにギャップスペース(21)を空けて配置され、
前記保持アーム(11)が広がったヘッド(13)を有し、前記ヘッド(13)が、前記保持アーム(11)及び前記ホルダ(12)が振り子接合(19、19’)を形成するように、前記ホルダ(12)での接合面(18、18’)との形状ロック様式として設計される、前記保持アーム(11)の接合面(17、17’)を有し、
前記蓋(2)がヒンジ取り付け蓋であり、前記ホルダ(12)が前記蓋(2)上に配置され、前記ホルダ(12)がU字形であって、この区域内で前記保持アーム(11)用の取り外し開口部(20)を形成するために前記蓋(2)の自由端部に向かい合う側が開いている、
ことを特徴とする遠心分離器。
【請求項2】
前記保持アーム(11)の一方の端部が前記ロータカバー(3)上に配置され、前記保持アーム(11)の他方の端部が前記蓋(2)上の前記ホルダ(12)内に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の遠心分離器。
【請求項3】
前記接続デバイスが前記蓋(2)及び前記ロータカバー(3)の中心に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の遠心分離器。
【請求項4】
前記ホルダ(12)の前記接合面(18’)が接合ソケットであり、前記保持アーム(11)の前記接合面(17’)が振り子接合(19’)の接合ヘッドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遠心分離器。
【請求項5】
前記ロータ(5)上又は前記保持アーム(11)の前記ロータ側端部のいずれかに配置され、前記蓋(2)が閉じている場合、補足的に形成されるチャネル(14)を係合するセンタリングピン(10)が備えられ、前記チャネル(14)は前記保持アーム(11)の前記ロータ側端部内又は前記ロータ(5)内のいずれかに配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の遠心分離器。
【請求項6】
前記チャネル(14)は、前記センタリングピン(10)と向かい合うその端部方向に広がっていることを特徴とする、請求項5に記載の遠心分離器。
【請求項7】
前記センタリングピン(10)が、その自由端部に先細センタリング面(16)を有することを特徴とする、請求項5又は6に記載の遠心分離器。
【請求項8】
前記センタリング面(16)が丸く形成されたことを特徴とする、請求項7に記載の遠心分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに従った遠心分離器に関する。本発明は、具体的には遠心分離器に関し、特に、遠心分離器の内部と外部とを区切る蓋を伴うハウジング、ロータ、及びロータを閉じるためのロータカバーを備える実験室用遠心分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
こうした遠心分離器は、特に生命科学及び関連分野における研究室で幅広く使用されている。これらは、例えば懸濁液、乳濁液、又は気体の混合物など、物質の混合物の分離に使用される。有機物及び無機物に加えて、例えば微生物又は細胞を懸濁液から分離することができる。分離されることになる混合物はロータ上のコンテナ内に固定され、円軌道で加速される。質量慣性が異なるため、密度の高い混合物の成分は密度の低い成分から分離される。
【0003】
従来技術の遠心分離器は、通常、大抵の場合は上方に折り畳んで開けることが可能なヒンジ取り付け蓋として配置構成された遠心分離器蓋を備えた外部ハウジングを有する。ロータはハウジング内部に配置され、ロータ内部では、分離されることになる混合物を適切なコンテナ内に挿入することができる。ロータは、しばしば別のロータカバーによって閉じることができる。ロータカバーは、一方では分離されることになる混合物質がロータから漏れるのを防ぎ、他方ではロータ上側の表面ができる限り滑らかになることを保証する。表面が滑らかになることにより、動作中のロータの空気摩擦は大幅に低減され、結果として遠心分離器の要するエネルギーが減少する。特に、大量の混合物の分離に使用される大型の遠心分離器では、ロータカバーを用いてロータを閉じることにより、電力消費量を半分以下に減らすことができる。しかしながら、こうしたロータカバーは、ロータ上に配置し、オペレータが手動で取り外さなければならないという点で不利である。大型の遠心分離器の場合、カバーの重量は2から3キログラムになる可能性があり、多くの場合、ロータ上への取り付け及び取り外しには人間工学的に見て好ましくない姿勢を取る必要がある。更に、ロータが開いている場合に、ロータカバーを置いておく格納スペースも確保しなければならない。オペレータにとって、ロータカバーの取り外し又はロータ上への取り付けは厄介であり多くの時間を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術のこうした欠点を取り除くことである。具体的に言えば、本発明の目的は、ロータカバーを用いることから生じる利点の恩恵を受け、ユーザにとって厄介又は時間のかかる動作などの欠点を回避する、上記タイプの遠心分離器を提供することである。言い換えれば、本発明によって、一般的な遠心分離器の動作は簡略化及び加速されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、特徴記述部分の機能を有する請求項1のプリアンブルに従った遠心分離器によって達成される。好ましい実施形態は、従属項に記載されている。
【0006】
したがって、本発明は遠心分離器に関し、具体的には、蓋を備え遠心分離器の内部と外部とを区切るハウジング、ロータ、及びロータを閉じるためのロータカバーを備える、実験室用遠心分離器に関する。更に、ロータカバーが、遠心分離器の蓋が開くと同時にロータから持ち上げられ、遠心分離器の蓋が閉じると同時にロータ上に置かれるように、保持アーム及びホルダを介してロータカバー及び遠心分離器の蓋が互いに着脱可能に接続可能とする接続デバイスが提供される。保持アームは、遠心分離器の蓋の開閉時に、可能かつ移動可能なようにホルダ内に取り付けられ、保持アーム及びホルダは、遠心分離器の蓋が閉じている場合、互いにギャップスペースを空けて配置される。
【0007】
一方で、本目的は、ロータカバーが、遠心分離器の蓋が開くと同時にロータから持ち上げられ、遠心分離器の蓋が閉じると同時にロータ上に置かれるように、それを介してロータカバー及び遠心分離器の蓋が互いに着脱可能に接続できる、接続デバイスを提供することによって、一般的な遠心分離器内で達成される。したがって接続デバイスは、ロータカバーと遠心分離器の蓋との間に着脱可能な接続を確立する。この接続によってロータカバーは、例えば遠心分離器の蓋を開く及び/又は閉じる間、遠心分離器の蓋の動きに追従する。したがって、遠心分離器の蓋がオペレータによって開かれる、すなわち上方に畳まれる場合、接続デバイスは、ロータカバーが遠心分離器の蓋と共に開かれ、ロータから持ち上げられるように動作する。遠心分離器の蓋が開かれた状態では、オペレータがロータに自由にアクセスし、分離されることになる混合物を担持しているコンテナを挿入又は取り外しできるように、ロータカバーは接続デバイスを介して遠心分離器の蓋から懸垂される。同様に、ロータカバーは、閉じられてロータ上に置かれている場合、遠心分離器の蓋に追従する。遠心分離器の蓋が閉じている場合、ロータカバーはロータの上に載っており、遠心分離器は作動準備ができている。ロータカバーの開閉は、オペレータがロータカバーをロータから手動で取り外すか又はその上に置くことを別々に実行する必要がないという意味で、自動的に実行される。オペレータは、単に遠心分離器の蓋を従来のように開き、接続デバイスは遠心分離器の蓋の開く方向に沿ってロータカバーを運搬するキャリアとして動作する。オペレータによるそれ以上の動作を必要とせずに、ロータにアクセスすることができる。オペレータは、遠心分離器の蓋を閉じる前に、ロータカバーをロータ上に置く必要もない。その代わりに、オペレータが遠心分離器の蓋を閉じる場合、ロータカバーは自動的にロータ上に置かれる。
【0008】
一般に、遠心分離動作中にロータを閉じておくためには、遠心分離器の蓋をロータ上に置くことで十分である。ロータカバーはロータを密封しないため、ロータが加速している時に、空気はロータカバーを通ってロータから漏れ出し、ロータ内部に負圧を生成する。この負圧がロータカバーをロータ上に引き付け、通常であればロータカバーをロータに更に固定する必要のないようにしっかりと固定する。したがって、通常、遠心分離動作中にロータカバーがロータから外れて事故を起こす危険性はない。しかしながら、本発明の範囲内では、例えばスナップ接続又は同様の方法でロータカバーをロータに固定すること、及び、遠心分離器の蓋が作動すると同時にロータカバーをロータに固定している接続を解放するための手段を提供することも可能である。
【0009】
本発明によれば、接続デバイスは保持アーム及びホルダを備え、保持アームは、遠心分離器の蓋の開閉中に、ホルダ内に着脱可能かつ移動可能に取り付けられている。保持アームは、遠心分離器が閉じている場合、遠心分離器の蓋とロータカバーとの間の距離を埋める。保持アームは、着脱可能な接続が閉じている場合、形状ロック様式でホルダ内に適切に取り付けられる。移動可能な取り付けは、遠心分離器の蓋を閉じてロータカバーをロータ上に置く場合、許容誤差を補償する目的で働く。
【0010】
一般に、保持アームをロータカバー上、及びホルダを遠心分離器の蓋の上に配置すること、又は、保持アームを遠心分離器の蓋の上、ホルダをロータカバー上に配置することの、いずれかが可能である。保持アームの一方の端部がロータカバー上に配置され、保持アームの他方の端部が遠心分離器の蓋の上のホルダ内に配置される場合、特に有利である。このように、遠心分離器の蓋によるロータカバーの特に精密な誘導が達成可能である。更にこの設計は、以下で説明する他の実施形態を可能にするため、特に多用途である。
【0011】
本発明に従った遠心分離器のロータは、動作時に回転する。接続デバイスがロータの中心の外側に配置される場合、ロータは常に、接続デバイスが遠心分離器の蓋及びロータカバーを解放可能に接続できるような向きの同じ位置で停止することを保証する、追加の手段を提供することが必要となる。できる限り単純な構造を維持し、こうした追加の手段をできる限り避けるために、遠心分離器の蓋及びロータカバーの中心に接続デバイスを配置することが好ましい。したがって、接続デバイスもロータの中心に配置される。「中心」又は「蓋/ロータカバーの中心」という用語は、この文脈では、ロータの回転軸上にあるそれぞれの部分の任意のポイントを指す。したがって、ロータの中心並びに遠心分離器の蓋及びロータカバーの中心は、互いの上の垂直な直線上にある。したがって、接続デバイスは少なくとも部分的に遠心分離器及びロータの回転軸上にあるか、又は少なくとも部分的にそれを取り囲んでいる。したがって、接続デバイスは、ロータ及びロータカバーのそれぞれの回転位置とは無関係であるのみならず、遠心分離器の蓋を閉じる動きを介して、ロータカバーを置く間に、ロータカバーをロータ上に正確に位置決めすることを容易にする。
【0012】
ロータカバー及び保持アームと共にロータの自由回転を実行可能にするために、保持アームとホルダは、遠心分離器の蓋が閉じている時に互いにギャップスペースが空けられる。したがって、遠心分離器の蓋が閉じられると、保持アームとホルダとの間に距離又はギャップスペースが存在するように、保持アームとホルダとの間の着脱可能な接続は切り離されるはずであり、これによって、遠心分離器の作動及びロータの回転中に、保持アームとホルダが衝突すること又は他の方法で互いに接触することが回避される。ギャップスペースは、特に加速プロセス中に共振をトラバースする場合、保持アームとホルダとの間の接触を発生させることなく、ロータ及びロータカバーの不均一な動き又は振動を可能にするのに十分な大きさでもなければならない。実際にはこのギャップスペースは、遠心分離器の蓋が完全に閉じる前にロータカバーが既にロータ上に置かれるように保持アーム及びホルダを設計することによって、達成される。ロータカバーがロータ上に置かれた後に、遠心分離器の蓋が引き続き閉じられる動きが実行されることにより、保持アームとホルダとの間の着脱可能な接続が解放され、保持アームはホルダから持ち上げられ、外される。ホルダと保持アームとの間のスペースはギャップスペースを形成する。動作後に遠心分離器の蓋が開かれると、保持アーム及びホルダは初期に、接続デバイスの2つの部分が最終的に互いに係合するまでいかなる接触もせずに、互いに沿ってある範囲まで移動し、着脱可能な接続を生成する。遠心分離器の蓋が完全に開くまで更に開かれる場合、ロータカバーは接続デバイスによって運ばれ、遠心分離器の蓋の動きに追従する。遠心分離器の蓋が完全に開くと、ロータカバーは着脱可能な接続を介して遠心分離器の蓋から懸垂される。遠心分離器の蓋が完全に閉じると、ギャップスペースを介してロータカバーから切り離され、着脱可能な接続は解放される。したがって、本発明に従ったギャップスペースは、遠心分離器の適切な動作を実行可能にし、その安全性に寄与する。
【0013】
要するに遠心分離器の蓋は、このように3つの位置間を移動することができる。第1の位置は開位置であり、ロータカバーは接続デバイスを介して遠心分離器の蓋に着脱可能に接続され、ユーザはロータにアクセスすることができる。第2の位置は結合位置であり、接続デバイスの着脱可能な接続は、遠心分離器の蓋の移動方向に応じて解放又は確立されたばかりである。第3の位置は閉位置であり、遠心分離器の蓋はハウジングを閉じ、ロータカバーはロータを閉じる。遠心分離器の蓋の開閉時には3つの位置をすべて通過するが、ユーザは通常、結合位置には気付かない。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、保持アームは広がったヘッドを有し、当該ヘッドは、好ましくは保持アーム及びホルダが共に振り子接合(pendulum joint)を形成するように、ホルダの接合面と形状ロックされるように設計される。広がったヘッドを伴う保持アームはホルダを係合する。ホルダは、遠心分離器の蓋が開くと同時に保持アームのヘッドに隣接し、遠心分離器の蓋が更に開く動きの間に保持アーム及びロータカバーを運ぶキャリアとして設計される。保持アームのヘッドとホルダの隣接する接合面は互いに向き合っている。接合面が互いにもたれ合うと、それらは保持アームとホルダの間に着脱可能かつ移動可能な接続を形成する。保持アームとホルダとの間の振り子接合の配置構成により、ロータカバーの重みを用いてロータ上でロータカバーをセンタリングすることができる。このように、剛性結合の場合よりもロータ上のロータカバーのより精密な位置決めが可能となる。保持アームの長さは、ロータカバーの可能な揺動軌道のサイズに決定的に影響する。保持アームが長いほど、ロータカバーの可能な揺動運動は大きくなる。一般に、ロータカバーの過度な揺動を防ぐために、可能な限り短い保持アームを使用することが好ましい。同時に、ロータカバーをそれ自体の重みを介してロータ上に正確に位置決めするために、最小長さの保持アームが必要である。遠心分離器の蓋をロータカバーと共にエラーなしで開閉するためには、ロータカバーが遠心分離器の蓋に対して揺動可能であるが、この揺動運動は可能な限り小さく維持されることが有利である。
【0015】
好ましい実施形態において、保持アームのヘッドは円錐形又は円錐台形である。円錐形の側面は、保持アームの接合面を形成する。これにより、ホルダに対する保持アームの傾斜に応じて、ホルダの接合面上に2点又は3点支持を形成することができる。この支持は、振り子接合を確立するために必要な可動性を提供する。しかしながら、本発明の特に好ましい実施形態によれば、ホルダの接合面は接合ソケットであり、保持アームの接合面は振り子接合の接合ヘッドである。ホルダと向かい合う側面上で、保持アームのヘッドはこのために、ヘッドの接合面を構成する球状キャップの形を取る。補足として、ホルダの接合面は球状くぼみとして設計される。遠心分離器の蓋とロータカバーとの間に振り子接合としてボール接合を配置することにより、ロータカバーの揺動を特に精密に事前決定された軌道内で維持することができる。したがって振り子接合は、ロータ上でのロータカバーの特に精密な位置決めを可能にする。これにより、遠心分離器のエラーのない動作を保証し、その安全性を強化する。
【0016】
時折、作業サイクルの間に遠心分離器を完全に清掃することが必要である。これは特に、ロータ、ロータ室、遠心分離器の蓋、及びロータカバーに適用される。したがって、遠心分離器の蓋とロータカバーとの間の接続が手動で解放できることが有利である。したがってロータカバーは、オペレータが取り外せるように遠心分離器の蓋に取り付けられる。その後、ロータカバーは別の部分として清掃することができる。その後、ロータカバーは遠心分離器の蓋に再度取り付けることができる。その後、本発明に従ったデバイスは再度動作可能であり、ロータカバーは遠心分離器の蓋と共に自動的に再度閉じることが可能であり、ロータ上に置くことができる。加えて、ロータカバーをロータ上に手動で置くことも、依然として可能である。
【0017】
遠心分離器の蓋は好ましくはヒンジ取り付け蓋であり、ホルダは遠心分離器の蓋上に配置され、ホルダは本来U字形であって、保持アーム用の取り外し開口部を形成するために遠心分離器の蓋の自由端部に向かい合う側が開いている。U字形のホルダの2本のアームは、それらの自由端部を用いて、遠心分離器の蓋の自由端部に向かっている。遠心分離器の蓋とは反対側を向いたホルダの側面上で、アームの端部は互いに垂直方向に湾曲し、遠心分離器の蓋の表面と平行に配置されたこの領域内にレールを形成する。保持アームのヘッドはこのレールの後方に係合し、それによって遠心分離器の蓋に固定される。言い換えれば、ロータカバーはレールの後方で、U字形のホルダ内の保持アームのヘッドを用いて懸垂される。U字形のホルダの開口側には、保持アームをホルダから取り外すことが可能な取り外し開口部が形成されるため、ロータカバーを遠心分離器の蓋から取り外すことができる。したがって、遠心分離器の蓋が開いている場合、オペレータは、遠心分離器の蓋の自由側の方向に持ち上げるだけで、懸垂されている遠心分離器の蓋からロータカバーを外すことができる。ロータカバーを遠心分離器の蓋に再度取り付けるためには、ホルダのレールによってロータカバーが遠心分離器の蓋に懸垂されているそのレールの後方に、保持アームのヘッドを誘導するだけでよい。このようにしてロータカバーは、遠心分離器の蓋から容易に分離して清掃することができる。オペレータはロータカバーを遠心分離器の蓋から手動で分離するオプションを依然として有するため、本発明に従ったデバイスから、オペレータにとっての不利益は一切生じない。
【0018】
ロータ上でのロータカバーの位置決めの信頼性を更に向上させるために、遠心分離器の蓋を閉じる間、ロータ上にロータカバーをセンタリングするセンタリングデバイスが提供されることが有利である。基本的には、こうしたセンタリングは異なる方法で達成可能である。しかしながら、ロータ上又は保持アームのロータ側端部上のいずれかに配置され、遠心分離器の蓋が閉じている場合、補足的に配置されるチャネルを係合するセンタリングピンを有することが好ましく、このチャネルは、保持アームのロータ側端部内又はロータ内のいずれかに配置され、好ましくはセンタリングピンと向かい合うその端部方向に広がっている。センタリングピン、及びセンタリングピンに対して補足的に配置されたチャネルは、ロータ上のチャネル内でのセンタリングピンの係合によってロータカバーをセンタリングする。センタリングピンがロータカバー上及びロータ上のチャネル上に配置されているかどうか、又はチャネルピンがロータ上及びロータカバー上のチャネル上に配置されているかどうかは、重要でない。重要な態様は、センタリングピンがチャネル内に挿入される時に、意図された位置内のロータ上にロータカバーが正確に載るように、センタリングピン及びチャネルが互いに対して位置決めされることである。センタリングピンがチャネルの開口に向かって精密に適合する方法で移動していない場合であっても、センタリングピンに向かい合うその端部でのチャネルの好ましい広がりが、許容誤差を補償するため、及び正確な位置決めを達成するために働く。広がった部分は好適な漏斗形の傾斜面を有し、遠心分離器の蓋を閉じる間、これがセンタリングピンをチャネル内に誘導する。遠心分離器の蓋に対してロータカバーの揺動運動によって生じる誤差も、このように補償される。
【0019】
この効果を更にサポートするために、センタリングピンがその自由端部に、先細で、特に丸く形成されたセンタリング面を有することが好ましい。具体的には、漏斗として配置されたチャネルの広がった部分と組み合わせられ、その傾斜面に沿ってセンタリングピンのセンタリング面がスライド可能であり、チャネル内のセンタリングピンの信頼できる係合が達成可能である。ロータカバーはロータ上に正確に位置決めされ、例えば揺動運動によって発生する許容誤差が補償される。結果として、ウェッジング(wedging)が防止され、本発明に従った遠心分離器のエラーのない開閉が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】閉じた状態の遠心分離器を示す側断面図である。
図2】半分開き、半分閉じた状態の図1の遠心分離器を示す図である。
図3】開いた状態の図1の遠心分離器を示す図である。
図4】オペレータの視点からロータを見ている、図3の遠心分離器を示す図である。
図5】保持アーム及びホルダの実施形態を示す透視断面図である。
図6】保持アーム及びホルダの別の実施形態を示す透視断面図である。
図7】保持アーム及びホルダの実施形態を示す詳細図である。
図8】保持アーム及びホルダの別の実施形態を示す詳細図である。
図9図5及び図6のセクタAを示す詳細図である。
図10】ホルダを示す透視側背面図である。
図11】ロータカバーが解放された図10のホルダを示す透視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を、図面内に示されるいくつかの例示の実施形態を参照しながら以下でより詳細に説明するが、本発明はこれらの例示の実施形態に制限されることはない。同じ参照番号は同じ要素を指定する。繰り返し示される要素は、各図面内で別々に指定していない。
【0022】
図1は、蓋2を備えるハウジング23を伴う遠心分離器1を示す。遠心分離器の蓋2はヒンジ取り付け蓋であり、ヒンジ8を介して上方に開くか又は折り畳まれて開くことができる。バースト保護として設計されたガードリング24、及びロータ5が、ハウジング23内に配設されている。駆動モータ、冷却コンプレッサ、及び換気システムなどの、図示されていない他のコンポーネントもハウジング23内に配設されるが、これらのコンポーネントは対応する従来技術のデバイスと異ならないため、本発明にとってそれほど重要ではない。ロータ5は、駆動モータの駆動シャフト(いずれも図示せず)用のレセプタクル7を有する。ロータ5は、駆動モータにより、回転軸27を中心に回転することができる。ロータ5は、ロータクロス6、容器4、及びサンプル容器を収容するための遠心分離器バケット9を有する。更に、以下でより詳細に説明するセンタリングピン10が、ロータ5上に配置される。
【0023】
図1に示される遠心分離器1は、閉じた状態である。すなわち、ロータカバー3がロータ5上の中心に載っている。保持アーム11の端部がロータカバー3の中心に取り付けられ、ロータカバー3から上方に突出し、遠心分離器の蓋2の中心に配置されたホルダ12内に他方の端部が挿入される。ホルダ12及び保持アーム11は互いに係合するが、それらは互いに間隔が空けられ、切り離されている。遠心分離器1は作動準備ができており、ロータ5は加速可能である。
【0024】
図1図2、及び図3は、遠心分離器1の開又は閉プロセスを示す。遠心分離器1は図1では閉じているが、図2に示される遠心分離器の蓋2はわずかに開いているか、又はほぼ閉じた状態である。保持アーム11及びホルダ12は互いに接触しており、ロータカバー3は遠心分離器の蓋2が開く動きによってロータ5から持ち上げられ、上方に取り外されているか、或いは、図1に示された位置におくために、遠心分離器の蓋2が閉じる動きによってロータ5の方向にそれぞれが移動される。図3及び図4では、遠心分離器1は遠心分離器の蓋2が完全に開いた状態で示されている。図4では、図を簡明にするためにハウジング23は示されていない。図4の遠心分離器1は、サンプル容器を収容するための前記遠心分離器バケット9を備えるロータ5を見ているオペレータの視点から示されている。ロータカバー3は、遠心分離器の蓋2のホルダ12から保持アーム11を介して懸垂されている。遠心分離器の蓋2が図1に示された閉位置からオペレータによって開けられる場合、初めに図2に示される状況になり、その後図3に示される状況になる。ロータカバー3は、オペレータがロータカバー3に触れる必要は一切なしに、遠心分離器の蓋2の動きに追従する。遠心分離器の蓋2が図3の状況から閉じられる場合、ロータカバー3がロータ5上に載り、遠心分離器の蓋2が閉じられるまで、図2及び図1に示される段階を逆順に通過する。ここでも、オペレータがロータカバー3に触れる必要はない。代わりに、ロータ5から持ち上げること及びその上に置くことは、保持アーム11及びロータカバー3をそれぞれ運ぶ、遠心分離器の蓋2及び遠心分離器の蓋2上に配置されたホルダ12の動きによって、自動的に実行される。
【0025】
図5及び図6は、ホルダ12及び保持アーム11を介してカットされた透視断面図、並びに遠心分離器1のロータ5の一部を示す。保持アーム11は、ヘッド13、本体26、及び基部29を有する。基部29を用いて、保持アーム11はロータカバー3に取り付けられる。図5及び図6は、保持アーム11及びホルダ12が互いにもたれ合い、ロータカバー3が、保持アーム11及びホルダ12を介して遠心分離器の蓋2(図5及び図6では図示せず)から懸垂されている状況を示す。保持アーム11はホルダ12と係合し、そのヘッド13を用いてホルダ12のレール28上に載っている。図5によれば、ヘッド13は具体的に言えば円錐台の形状を有し、その側面である接合面17を用いて、ホルダ12の接合面18上に載っている。保持アーム11とホルダ12との間の相対角度に応じて、接合面18上での接合面17の支持は2点又は3点支持として生じる。接合面17、18は共に振り子接合19を形成し、これを介してロータカバー3は遠心分離器の蓋2に接続される。
【0026】
図6は、ヘッド13が球状キャップの形を有し、接合面17’を表すその丸い側面を用いてホルダ12の接合面18’に載っている、別の実施形態を示す。接合面18’は、球状の接合面17’に対して補足的に形成され、接合ソケットを形成する。2つの接合面17’、18’は振り子接合19’を形成し、これは図6によればボール接合として配置されるため、遠心分離器の蓋2及びロータ5に対するロータカバー3の特に精密な揺動運動を可能にする。遠心分離器の蓋2とロータカバー3との間の着脱可能な接続は、図5及び図6では閉じられている。ロータカバー3は、振り子接合19、19’を介して、遠心分離器の蓋2からのその全体の重みで懸垂されている。遠心分離器の蓋2が更に閉じられるか又は開かれる場合、ロータカバー3は遠心分離器の蓋2の動きに追従する。
【0027】
図7及び図8は、遠心分離器の蓋2が完全に閉じた場合の、ホルダ12に対する保持アーム11の位置を示す。遠心分離器の蓋2とロータカバー3との間の着脱可能な接続が外される。図示された状況では、ロータカバー3はロータ5上に載っている。見やすいように、遠心分離器の蓋2は図示されていない。保持アーム11は、ギャップスペース21を介してホルダ12から間隔を空けられている。ギャップスペース21は、垂直突出22及び水平間隔25で構成される。垂直突出22は、保持アーム11、特に保持アーム11の本体26の、余分な長さによって達成される。水平間隔25は、保持アーム11、特に保持アーム11の本体26が、U字形のホルダ12の中央くぼみよりも薄いことによって作成される。したがって、保持アーム11は、ホルダ12からギャップスペース21を介して水平並びに垂直の両方に間隔が空けられる。これによって保持アーム11は、遠心分離器1の作動中に、保持アーム11がホルダ12と衝突するか又は他の方法で接触することなしに、ロータ5及びその上に載っているロータカバー3と共に回転することができる。
【0028】
図7及び図8は、保持アーム11の広がったヘッド13がレール28の背面で係合し、遠心分離器の蓋2を開くこと及びホルダ12を本質的に垂直に持ち上げることが、結果として互いに隣接するヘッド13の接合面17、17’及びホルダ12の接合面18、18’を生じさせることになるように、ホルダ12の2つのU字形アーム間の領域を狭くする、ホルダ12のレール28を更に示す。遠心分離器の蓋2の折り畳み動作及びロータカバー3の重みによって、後者は、遠心分離器の蓋2が開いている場合、U字形のホルダ12の閉じられた側の方向に引き付けられる。保持アーム11のヘッド13は、レール28によって区切られ、遠心分離器の蓋2とは反対を向いている、U字形のホルダ12の開口部よりも大きい。したがって、保持アーム11はホルダ12内に懸垂され、遠心分離器1を閉じるか又は開く間にそれ自体がホルダ12から滑り落ちる可能性はない。
【0029】
図9は、図5及び図6のセクタAの詳細図であり、本発明に従ったセンタリングデバイスを伴う保持アーム11のロータ側端部の拡大断面図を示す。保持アーム11の本体26内部にチャネル14が備えられ、このチャネル14内にロータ5上に配置されたセンタリングピン10を挿入することができる。チャネル14は、一方の端部から他方の端部へと保持アーム11を介して完全に延在する。しかしながらチャネル14は、チャネル14が保持アーム11内に盲端を有するように、保持アーム11の一部を介してのみ延在することも可能である。図示された例示の実施形態では、保持アーム11は基部29を伴うロータカバー3を貫通している。しかしながら、保持アーム11をロータカバー3の一方の側のみに配置することも可能である。この場合、チャネル14は同様にロータカバー3を介して延在するか又はロータ5上に配置されるが、センタリングピン10はロータカバー3上に配置される。
【0030】
図1は、センタリングピン10がチャネル14内に挿入された場合を示す。センタリングピン10をチャネル14内に挿入することによって、ロータカバー3はロータ5上の中心で位置合わせされ、正しい、すなわち意図された位置でロータ5上に配置される。図5図6及び図9は、チャネル14内にセンタリングピン10を挿入する直前の状況を示す。チャネル14は、センタリングピン10と向き合うその端部に、広がったセクション15を有する。この広がったセクション15は、ロータカバー3又は保持アーム11がそれぞれセンタリングピン10の上に正確に位置決めされていない場合であっても、センタリングピン10をチャネル14に誘導するための、漏斗の形状及び機能を有する。ロータ5に対するロータカバー3の正確な位置決めは、センタリングピン10の補足としてチャネル14を配置すること、及び、ロータ5上にロータカバー3を置く間、センタリングピン10がチャネル14の内面に沿って密接にスライドするような、センタリングピン10の直径に対応する直径を有することによって、達成される。このように、ロータカバー3はロータ5の上に位置決め又はセンタリングされる。
【0031】
チャネル14にセンタリングピン10を挿入することを更に簡略化するため、及び、特にウェッジング及びジャミングを防止するために、センタリングピン10はその自由端部にセンタリング面16を有し、これを用いてチャネル14内に入る。センタリング面16はセンタリングピン10の丸いセクションを構成し、チャネル14の広がったセクション15の漏斗形面に沿ってスライドする。このように、ロータカバー3がロータ5の上に正確に位置決めされていない場合であっても、ロータ5の精密なセンタリング及び安全に閉じることが達成される。
【0032】
図10及び図11は、図10及び図11では例示のために透明として示されている遠心分離器の蓋2から、U字形のホルダ12の開口側の取り外し開口部20を介し、オペレータによってロータカバー3を取り外すオプションを示す。このためにオペレータは、ロータカバー3を遠心分離器の蓋2の自由端部の方向に持ち上げるだけでよい。保持アーム11の広がったヘッド13は、保持アーム11がホルダ12から分離され、取り外すことができるようになるまで、ホルダ12のレール28に沿って、又はレール28を過ぎて誘導される。その後、ロータカバー3、及びホルダ12を伴う遠心分離器の蓋2の表面を清掃することができる。ロータカバー3を遠心分離器の蓋2上に再度取り付けるために、保持アーム11は、逆順に処理することによって単にホルダ12内に懸垂される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11