(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の容器は、内面がオレフィン系樹脂層により形成されており、このオレフィン系樹脂層は、有機系のブリーディング性滑剤を含み、さらに、無機多孔質剤が配合されている。
【0014】
オレフィン系樹脂;
本発明においては、種々の熱可塑性樹脂の中でもオレフィン系樹脂が選択され、これにより、容器内面が形成される。即ち、オレフィン系樹脂は、後述する有機系滑剤に対するブリーディング性に優れ、表面に有機系滑剤を分布させ易いことに加え、可撓性に富んだ容器を形成し易く、特に粘稠な内容物の収容に使用されているダイレクトブローボトル用のポリマーとして好適に使用できるからである。
【0015】
このようなオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体などを挙げることができるが、特にブリーディング性という点で、高密度或いは低密度のポリエチレン、特に密度が0.900〜0.935g/cm
3の範囲にある低密度ポリエチレンが最も好適である。
【0016】
有機系ブリーディング性滑剤;
本発明において、上記のオレフィン系樹脂層(容器の内面層)に含まれる有機系ブリーディング性滑剤(以下、単に滑剤と呼ぶことがある)は、ブリーディングにより、このオレフィン系樹脂層の表面(容器内面)に分布し、これにより、粘稠な内容物に対して滑落性を付与するものである。
【0017】
このような滑剤としては、種々のものが知られており、例えば、以下のものを例示することができる。
(イ)流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス
、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの。
(ロ)パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エルシン酸等の飽和
乃至不飽和脂肪酸系のもの。
(ハ)ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミ
ド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の飽和乃至不飽和
の脂肪族アミド系のもの。
(ニ)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等
の脂肪酸エステル系のもの。
(ホ)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの。
(ヘ)ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン。
(ト)ポリオルガノシロキサン。
(チ)その他の滑剤として、サラダ油、白絞油、コーン油、大豆油、ごま油、菜種油
、ベニバナ油、ひまわり油、こめ油、糠油、椿油、パーム油、ヤシ油、綿実油、麻実
油、葡萄油、けし油、ひまし油、桐油、ナンヨウアブラギリ油、亜麻仁油、カラシ油
、小麦胚芽油、月見草油、紫蘇油、杏仁油、アケビ油、山茶花油、茶油、胡桃油、白
樺油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘ
ーゼルナッツオイル、グレープシードオイル、ローレルオイル、マカダミアナッツオ
イル、アルガンオイル、パンプキンシードオイル、ペカンナッツオイル、ピスタチオ
オイル、ホホバオイル、メドウフォーム油、コーヒー豆油、マルーラナッツオイル、
ブロッコリーシードオイル、モモ核油、チェリー核油、クランベリーシードオイル、
ざくろの種油、ククイナッツオイル、ニーム油、キウイフルーツシードオイル、カカ
オバター、ボリジオイル、シアバター、ババスオイル、バオバブオイル、メロンシー
ドオイル、マンゴバター、サルバター、コクムバター、ローズヒップオイル、モンゴ
ンゴオイル、油瀝青油、チンク油、密陀油、木蝋、キャンデリラワックス、カルナウ
バワックス、精油などの植物性油;卵黄油、肝油、鮫油、牛脚油、蜜蝋、ラード、牛
脂、骨脂、骨油、魚油、鶏油、鴨油、鵞鳥油、蟹油、馬油、鯨油、イルカ油、ラノリ
ン、シュマルツ、バター、エミューオイル、蘇油、ミンクオイル、スクワランなどの
動物性油;パラフィン、セレシン、鉱物ワックス、鉱物油、石油ワックス、シリコン
オイル、琥珀油、オイルシェールなどの鉱物性油。
これらは、それぞれ、1種単独或いは2種以上を混合して使用することもできる。特に、工業用として市販されている滑剤は、炭素数の異なるものがある程度の割合で含んでいるものが多いため、実用上は、複数種を混合して使用する場合がほとんどである。本発明においては、特に、料理用(食用)として使用される天ぷら油、サラダ油、白絞油、ラー油、葱油などが好適であり、中でもサラダ油、天ぷら油が特に好適である。
【0018】
本発明においては、ブリーディング性が良好であり、特に乳化物に対しても優れた滑落性を示すという点で、上述した滑剤の中でも、飽和乃至不飽和脂肪酸が好適であり、特に融点が50℃以下の範囲にある飽和乃至不飽和脂肪酸が、それぞれ単体或いは複合物(2種以上の混合物)として好適に使用することができる。例えば炭素数がC6〜C12の飽和脂肪酸及びC16〜C22不飽和脂肪酸が最も好適に使用される。融点が上記範囲より高いとブリーディング量が少なくなり滑落性が悪くなる。また、炭素数が上記範囲よりも低いと衛生面で問題があり、上記範囲よりも高いと融点も上昇しブリーディング量が少なくなる。さらに、フレーバーの観点からは飽和脂肪酸が好適に使用される。
【0019】
上述した滑剤は、容器内面、即ち、オレフィン系樹脂層の表面に適度の量でブリーディングして分布しているべきであり、このブリーディング量(表面分布量)は、容器内にn−ヘプタンを充填して表面にブリーディングした滑剤を抽出し、この抽出液の蒸発残留物として算出することができる。試験方法としては、厚生省告示370号の蒸発残留物試験法に準じて行うことが出来、抽出液としてはn−ヘプタンを用い、抽出条件は、25℃−60分間とした。
本発明においては、このn−ヘプタン抽出液での蒸発残留物の量が10〜150μg/ml、特に30〜110μg/mlとなるような量で、上記の滑剤が使用されることが好ましい。蒸発残留物の量(ブリーディング量)が上記範囲よりも少ないと、滑落性の低下が生じ、上記範囲よりも多いと、滑剤の過剰な使用により、成形性が損なわれたり或いはフレーバー保持性が損なわれることがある。
【0020】
尚、上記のようなブリーディング量が確保し得る限りにおいて、滑剤は、容器内面を形成するオレフィン系樹脂層に配合する必要は無く、例えば、この内面のオレフィン系樹脂層に隣接する層に配合することもできる。
【0021】
無機多孔質剤;
本発明においては、容器内面を形成するオレフィン系樹脂層に無機多孔質剤が配合され、かかる無機多孔質剤により、上述した滑剤の使用による内容物のフレーバー性の低下を防止し、内容物のフレーバー性を維持することができる。
【0022】
このような無機多孔質剤としては、ゼオライト、シリカゲル、活性酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、珪藻土、各種クレイなどを例示することができ、これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明においては、前述した飽和乃至不飽和脂肪酸を滑剤として用いたとき、良好なフレーバー保持性を示し、且つ滑落性も損なわれないという観点から、ゼオライトが好適であり、特にシリカアルミナモル比(SiO
2/Al
2O
3)が80以上のハイシリカゼオライトが最も好適である。即ち、このようなゼオライトが有する管状細孔が、容器への成形時に飽和乃至不飽和脂肪酸から発生する低分子量のアルデヒドやケトンの吸着に効果的に作用するためではないかと思われる。
【0023】
上述した無機多孔質剤は、通常、オレフィン系樹脂層中に均一に分散させるため、レーザ回折散乱法で測定した体積換算での平均粒径(D
50)が0.1〜4.9μm程度の粉末の形態で使用される。平均粒径が上記範囲よりも小さいとフレーバ性が不足する虞があり、上記範囲よりも大きいと透明性が損なわれる虞がある。
【0024】
また、このような無機多孔質剤は、容器内面を形成するオレフィン系樹脂層中に、0.2〜3.0質量%、特に0.5〜2.0質量%の量で配合される。この量が少ないと、フレーバー保持性が不満足となり、また、過剰に無機多孔質剤を使用しても、フレーバー保持性がさらに向上することはなく、透明性が損なわれるという不都合が生じるに過ぎない。
特に本発明では、無機多孔質剤として、前述した80以上のシリカアルミナモル比を使用し、その配合量が0.5質量%以上であり、且つn−ヘプタン蒸発残留物が100μg/ml以下に調整されている場合には、特にフレーバー性に優れ、滑剤分解臭ばかりか、容器ポリ臭も有効に抑制することができる。
【0025】
尚、上記の無機多孔質剤のような無機粒子を容器内面を形成する樹脂層に配合して容器内面を粗面とし、これにより、内容物に対する滑落性を向上させるという技術も知られているが、本発明では、容器内面を粗面とするために無機多孔質剤を配合しているわけではないため、その配合量は少なく、この無機多孔質剤が配合されているオレフィン系樹脂層により形成される容器内面は、通常、平均表面粗さRa(JIS−B−0601−1994)が0.3μm以下の平滑面に設定される。容器内面が、粗面となると、滑落性の点では問題は無いが、容器内面と内容物との間に気泡が巻き込まれるおそれがあり、この気泡が容器の外部から観察されると、容器の外観が損なわれるおそれがある。
【0026】
層構成;
上述した本発明の容器は、容器内面がオレフィン系樹脂層により形成されており、且つ該オレフィン系樹脂層に無機多孔質剤が配合されており、さらに該オレフィン系樹脂層が有機系のブリーディング性滑剤を含んでいる限りにおいて、無機多孔質剤及び滑剤が配合されているオレフィン系樹脂のみにより容器壁が形成された単層構造のみならず、容器内面を形成するオレフィン系樹脂層に他の樹脂層が積層された多層構造とすることもできる。
【0027】
特に、本発明においては、有機系のブリーディング性滑剤が容器内面に選択的にブリーディングするように、容器外面を形成する外面層と容器内面のオレフィン系樹脂層との間に、滑剤遮断層として機能する中間層を設けた多層構造とすることが好ましい。
【0028】
上記の滑剤遮断層として機能する中間層には、当然、滑剤が配合されていないが、滑剤遮断層として機能するために、該中間層は、密度が1.00g/cm
3以上且つガラス転移点(Tg)が35℃以上の樹脂により形成されていることが必要である。即ち、このような樹脂により形成される中間層は緻密な層となり、これにより、該中間層が滑剤遮断層として有効に機能し、該中間層よりも容器内面側の層に配合されている滑剤の外面層への移行が有効に抑制され、この結果、ブリーディングにより容器内面に分布している滑剤の量(前述したn−ヘプタン抽出液の蒸発残留物の量)を所定の範囲に容易に設定することができる。
例えば、密度あるいはガラス転移点(Tg)が上記範囲よりも低い樹脂を用いて中間層を形成する場合には、中間層がルーズな層となってしまい、滑剤遮断層としての機能が発現せず、この結果、中間層よりも内側の層に配合されている滑剤の外面側への移行が抑制されず、容器内面への滑剤のブリーディング量を調節することが困難となってしまう。
【0029】
上記のような中間層を形成する樹脂としては、密度及びガラス転移点(Tg)の両者が上記範囲内である限り特に制限されず、成形可能な任意の熱可塑性樹脂を用いることができるが、一般的には、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)や芳香族ポリアミドなどのガスバリア性樹脂を用いることが好ましく、特にエチレンビニルアルコール共重合体を用いることが最も好適である。即ち、中間層形成用の樹脂としてガスバリア性樹脂を用いることにより、中間層に滑剤遮断性と共に酸素バリア性を付与することができ、特にエチレンビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、酸素透過による油性内容物の酸化劣化をも有効に抑制することができ、優れた滑落性を維持せしめると同時に、優れた内容物保存性を確保することができる。
【0030】
上記のようなエチレンビニルアルコール共重合体としては、一般に、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適であり、これらの中から、密度及びガラス転移点(Tg)が前述した範囲にあるものが選択的に使用される。
【0031】
また、上記の滑剤遮断層として機能する中間層の厚みは、一般に1乃至50μmの範囲、好適には9乃至40μmの範囲にあることが好ましい。この厚みが過度に薄いと、滑剤遮断性が低下してしまい、該中間層よりも容器内面側の層に配合されている滑剤が、容器外面層側へ移行し、内面層の滑剤が不足するおそれがあり、また、厚みが過度に厚いと、滑剤遮断性のさらなる向上は得られず、かえって容器壁の厚みが必要以上に厚くなったり、或いはコストの増大などの点で不都合を生じてしまうからである。
【0032】
また、上記のようなガスバリア性樹脂を中間層として用いる場合には、内外層との接着性を高め、デラミネーションを防止するために、接着層を介して中間層を設けることが好ましい。これにより、中間層をしっかりと内外層に接着固定することができる。このような接着層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。このような接着層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよく、一般的には0.5乃至20μm、好適には1乃至8μm程度の厚みでよい。尚、このような接着層も、前述した密度及びガラス転移点の条件を満足すれば、滑剤遮断層として機能し得る。
【0033】
さらに、上記のような滑剤遮断性の中間層を設けた多層構造において、容器外面を形成する外面層は、種々の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂)により形成することができるが、容器にスクイズ性を付与し、容器内容物を絞り出しにより容器から取り出すようにするには、容器内面と同様、オレフィン系樹脂層により形成することが好ましい。
勿論、この外面層にも、各種のブリーディング性添加剤を配合し、例えば容器同士の付着或いは搬送用ベルトへの付着などを抑制し、容器の搬送性を高めることができる。即ち、外面層に配合されたブリーディング性の添加剤は、滑剤遮断層として機能する中間層が存在しているため、容器内面にブリーディングすることはなく、容器内面の滑落性に悪影響を与えることはない。
【0034】
また、本発明においては、上記のような中間層を設けた多層構造においては、この容器の成形時に発生するスクラップ樹脂をバージンのポリオレフィン系樹脂とブレンドしたリグラインド層を、滑剤遮断層として機能する中間層と容器内面層或いは容器外面層との間に設けることもできる。この場合、成形性を維持しつつ、資源の再利用化を図るという観点から、スクラップ樹脂の量は、バージンのポリオレフィン系樹脂100質量部当り10乃至60質量部程度の量とするのがよい。
【0035】
さらに、上記のリグラインド層は、容器内面を形成するオレフィン系樹脂層と同様、高いブリーディング性を示す。従って、このリグラインド層を滑剤遮断性の中間層と容器内面層(オレフィン系樹脂層)との間に設けた場合には、このリグラインド層に、前述した有機系のブリーディング性滑剤を配合することもできる。即ち、このリグラインド層に配合された滑剤は、容器内面を形成するオレフィン系樹脂を通って容器内面にブリーディングすることとなる。このため、容器内面のオレフィン系樹脂層に滑剤が配合されていなくとも、容器内面のオレフィン系樹脂層は滑剤を含み、容器内面には滑剤がブリーディングして分布することとなる。
従って、容器内面を形成するオレフィン系樹脂層或いはリングラインド層の何れに滑剤を配合する場合にも、前述したn−ヘプタン抽出液中の蒸発残留物の量が所定の範囲となるように、滑剤の配合量が設定されることとなる。一般に、前述したブリーディング量を実現するためには、滑剤が配合される層や該層を形成する樹脂の種類等によって異なり、一概に規定することはできないが、一般的には、内面のオレフィン系樹脂層或いはリグラインド層の何れに滑剤が配合される場合においても、滑剤の配合量は0.1〜20質量%程度の範囲である。
【0036】
上述したように、本発明の容器は、種々の層構成を取り得るが、最もシンプルな層構造としては、接着層をADとして、
(イ)オレフィン系樹脂単層(無機多孔質剤及び滑剤含有)
(ロ)内面層(無機多孔質剤及び滑剤含有)/AD/滑剤遮断層/AD/外面層
(ハ)内面層(無機多孔質剤含有)/リグラインド層(滑剤含有)/AD/滑剤遮
断層/AD/外面層
などが挙げられる。
上記の層構造において、内面層は、オレフィン系樹脂により形成された層であり、外面層は、好ましくは、内面層と同様のオレフィン系樹脂により形成された層である。
【0037】
尚、前述した各層には、各層に要求される特性を損なわない範囲において、それ自体公知の各種の配合剤、例えば、顔料、紫外線吸収剤等が必要により配合されていてよい。
また、各層の厚みは、容器内面への滑剤のブリーディングが損なわれない範囲において、各層の機能が効果的に発揮され且つ必要以上に厚くならない程度に設定される。
【0038】
また、本発明において、滑剤を含み且つ無機多孔質剤が配合されているオレフィン系樹脂層により形成される内面層は、無機多孔質剤が配合されているにもかかわらず、その平均表面粗さRa(JIS−B−0601−1994)が0.3μm以下に設定される。先にも述べたように、この無機多孔質剤は、粗面化剤として使用されるものではないからである。
特にブリーディング性が高い低密度ポリエチレンを内面層形成用のオレフィン系樹脂として使用した場合には、容器への成形時にメルトフラクチャーが発生し易く、表面にシャークスキンと呼ばれる肌荒れが発生することがあるが、成形金型の鏡面仕上げ等により、表面粗さを上記範囲に調整することにより、上記の外観不良を有効に回避することができる。
【0039】
<容器の形態>
本発明の容器は、例えばフィルム、シート、ボトル、キャップ、チューブ形成用パリソン乃至はパイプ、ボトル乃至チューブ成形用プリフォーム等の形を採ることができ、それ自体公知の方法で製造される。
例えば、各層に応じた数の押出機や射出成形機を用い、共押出成形法、共射出法、逐次射出法等により、フィルム、シート、キャップ、チューブ形成用パリソン乃至はパイプ、ボトル乃至チューブ成形用プリフォーム等を製造することができる。また得られたフィルムを二軸延伸して延伸フィルムとすることもできる。
パリソン、パイプ或いはプリフォームからのボトルの形成は、例えば押出物を一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹き込むことにより容易に行なわれる。
また、パイプ乃至はプリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ボトル等を得ることができる。
更には、フィルム乃至シートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の形状の包装容器が得られる。
尚、これら成形に際しては、内面層を確定する金型表面を鏡面加工しておくことにより、容器内面層の平均表面粗さRaを0.3μm以下にすることができる。
【0040】
図1には、本発明の容器の最も好適な形態であるダイレクトブローボトルが示されている。
図1において、全体として10で示されるこのボトルは、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有している。かかるボトル10では、胴部壁15をスクイズすることにより、内部に収容された粘稠な物質を排出するというものである。かかるボトル10では、アルミ箔等のシール箔19によって口部がシールされ、さらにキャップ20が装着されて市販に供される。
【0041】
このようなボトル10において、本発明では、ボトルの内面に、前述した有機系のブリーディング性滑剤がブリーディングにより分布しており、これにより内容物に対する優れた滑落性を示し、さらに、容器内面のオレフィン系樹脂層に無機多孔質剤が配合されているため、内容物に対するフレーバー保持性も良好なものとなっている。
従って、かかるボトル10に代表される本発明の容器は、粘稠な物質の収容に好適に使用される。
【0042】
本発明の容器は、内容物に対して優れた滑落性を示すことから、例えば、粘度(25℃)が1260mPa・s以上の高粘性物質を収容する容器に好適である。また、乳化物、特に油分(脂質)含量の少ない乳化物では、滑落性が低下する傾向があるが、本発明では、低油分の乳化物に対しても優れた滑落性を示し、さらに、内容物のフレーバーも保持できることから食品関係の内容物に好適であり、特に高粘性のケチャップのような非油性物質のみならず、マヨネーズ様食品や各種ドレッシング、特にローカロリーマヨネーズなどの乳化物を内容物とする容器として、極めて好適に適用される。
【実施例】
【0043】
本発明を次の実施例にて説明する。
尚、実施例及び比較例における各種特性の測定或いは評価は、次の方法で行った。
【0044】
<n−ヘプタン抽出蒸発残留物測定>
得られたボトルについて、厚生省告示370号の蒸発残留物試験法に準じて、n−ヘプタンを抽出液とし、25℃−60分間を溶出条件として、蒸発残留物を測定した。
<滑落性評価>
得られたプラスチックボトル(容器)に室温(23℃)にて規定量(500g)のローカロリーマヨネーズを充填した。充填直後及び23℃に1ヵ月(経時)保管後のボトルについて、胴部を押し、ボトル口部を通して内容物を最後まで搾り出した後、ボトル内に空気を入れ形状を復元させた。
次いで、このボトルを冷蔵庫に倒立(口部を下側)にして1日保管した後のボトル胴部の内容物滑落程度を測定し、次の式で内容物滑落率を計算した。
内容物滑落率(%)
=(内容物が滑落している表面積/ボトル胴部壁表面積)×100
上記で測定された内容物滑落率から、滑落性を次の基準で評価した。
◎:内容物滑落率が90%以上
○:内容物滑落率が70%以上で90%未満
△:内容物滑落率が50%以上で70%未満
×:内容物滑落率が50%未満
【0045】
<フレーバー性評価>
得られたボトルの口部をアルミ箔でヒートシールして密封したボトルを、23℃に1ヵ月保管した。次いで、このボトルのアルミ箔を剥がし、ボトル内の臭気を官能評価した。評点は次の基準で評価した。
◎:滑剤分解臭がない、かつ容器ポリ臭がない
○:滑剤分解臭がない、かつ容器ポリ臭がある
△:滑剤分解臭がわずかにあるが許容範囲内、かつ容器ポリ臭がある
×:滑剤分解臭がある、かつ容器ポリ臭がある
【0046】
<透明性評価>
得られたボトルの胴壁から縦40mm×横40mmの試験片を切り出した。この試験片について、日本電色工業(株)製濁度計NDH1001でHaze(%)を測定した。評点は次の基準で評価した。
◎:20%未満
○:20%以上〜30%未満
△:30%以上〜40%未満
×:40%以上
【0047】
<表面粗さ測定>
得られたボトルの胴壁から縦40mm×横40mmの試験片を切り出した。この試験片のボトル内面側について、JIS―B―0601―1994に準じて、(株)東京精密製SURFCOM2000SD3で測定速度0.3mm/sで算術平均表面粗さRaを測定した。
<有機系ブリーディング性滑剤融点測定>
有機系ブリーディング性滑剤の融点は、示差走査熱量測定計(DSC)で測定した。溶融ピークがブロードの場合には、ピーク最大値での温度を使用した。
<無機多孔質剤の平均粒径の測定>
無機多孔質剤の平均粒径は、レーザ回折散乱法で測定した体積換算での平均粒径(D
50)である。
【0048】
<実施例1>
5つの押出機を用い、5種6層の多層パリソンを成形し、次いで、この多層パリソンを用いてのダイレクトブロー成形により、
図1に示す形状を有し、下記の5種6層構成のプラスチックボトル(内容積:500ml)を得た。尚、内面層では押出し前に、下に示す樹脂ペレット、有機系ブリーディング性滑剤、無機多孔質剤を混合させた。
外面層(75μm)/接着層(2.4μm)/ガスバリア層(10μm)/接着層(2.4μm)/メイン層(180.2μm)/内面層(30μm)
【0049】
各層の使用材料は、次のとおりである。
外面層;低密度ポリエチレン(LDPE)、密度:0.921g/cm
3
接着層;酸変性ポリエチレン
ガスバリア層;EVOH共重合体
メイン層;低密度ポリエチレン(LDPE)、密度:0.921g/cm
3
内面層;
低密度ポリエチレン(LDPE)、密度:0.921g/cm
3
有機系ブリーディング性滑剤:サラダ油(融点=−20℃)、配合量5.0質量%
無機多孔質剤:ハイシリカゼオライト
シリカ/アルミナ比=80
平均粒子径=4.5μm
配合量1.0質量%
【0050】
このボトルについて、n−ヘプタン抽出蒸発残留物量、滑落性、フレーバー性、透明性、内表面の表面粗さRaの評価を行った。ボトル内面層仕様と評価結果を表1に示す。
【0051】
<実施例2>
内面層の滑剤をエルシン酸(融点=34℃)にし、配合量を10.0質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0052】
<実施例3>
内面層の滑剤をラウリン酸(融点=45℃)にし、配合量を10.0質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0053】
<実施例4>
内面層の滑剤を脂肪酸エステルである中鎖脂肪酸トリグリセライド(融点=−6℃以下)に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0054】
<実施例5>
内面層の滑剤配合量を10.0質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0055】
<実施例6>
内面層の滑剤配合量を7.0質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0056】
<実施例7>
内面層の滑剤配合量を2.0質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0057】
<実施例8>
内面層の滑剤配合量を0.5質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0058】
<実施例9>
内面層の無機多孔質剤を、シリカ/アルミナのモル比が33のハイシリカゼオライトに変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0059】
<実施例10>
内面層の無機多孔質剤配合量を3.0質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0060】
<実施例11>
内面層の無機多孔質剤配合量を0.2質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0061】
<実施例12>
内面層の無機多孔質剤を、平均粒子径0.5μmのハイシリカゼオライトに変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0062】
<実施例13>
内面層の無機多孔質剤を、平均粒子径が0.5μmのハイシリカゼオライトにし、配合量を0.2質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0063】
<実施例14>
内面層樹脂を、密度0.903g/cm
3の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0064】
<実施例15>
内面層樹脂を、密度0.935g/cm
3の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0065】
<実施例16>
内面層の無機多孔質剤を、平均粒子径が5.0μmのA型合成ゼオライト(シリカ/アルミナ比=2)に変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
<実施例17>
内面層の無機多孔質剤を、平均粒子径が5.0μmの天然シリカに変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0067】
<比較例1>
5つの押出機を用い、5種7層の多層パリソンを成形し、次いで、この多層パリソンを用いてのダイレクトブロー成形により、
図1に示す形状を有し、下記の5種7層構成のプラスチックボトル(内容積:500ml)を得た。尚、内面層では押出し前に、下に示す樹脂ペレット、有機系ブリーディング性滑剤、無機多孔質剤を混合させた。
外面層(75μm)/接着層(2.4μm)/ガスバリア層(10μm)/接着層
(2.4μm)/メイン層(177.8μm)/接着層(2.4μm)/内面層(3
0μm)
各層の使用材料は、次のとおりである。
外面層;低密度ポリエチレン(LDPE)、密度:0.921g/cm
3
接着層;酸変性ポリエチレン
ガスバリア層;EVOH共重合体
メイン層;低密度ポリエチレン(LDPE)、密度:0.921g/cm
3
内面層;
非晶性ポリエステル(PETG)、密度1.27g/cm
3
有機系ブリーディング性滑剤:サラダ油(融点=−20℃)、配合量5.0質量%
無機多孔質剤;ハイシリカゼオライト
シリカ/アルミナ比=80
平均粒子径=4.5μm
配合量1.0質量%
【0068】
<比較例2>
内面層にブリーディング性滑剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0069】
<比較例3>
内面層に無機多孔質剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作成し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0070】
【表1】