【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
TM(Transverse Magnetic)波基本伝搬モードの光とTE(Transverse Electric)波基本伝搬モードの光のいずれか一方、あるいは両者が混合された光が入力され、
TM波基本伝搬モードの光に対しては偏波回転しTE波1次伝搬モードに変換して出力し、TE波基本伝搬モードの光に対しては無変換で出力する
偏波回転部と、
いずれも幅テーパ導波路である、中心導波路と2本の側設置導波路を備え、
前記中心導波路の左右には、対称形状の前記側設置導波路が当該中心導波路の導波中心軸に対して対称位置に配置され、
前記中心導波路のTE波1次伝搬モードの伝搬定数と、前記2本の側設置導波路のTE波基本伝搬モードの伝搬定数とが等しくなる個所が設けられている第1領域と、
前記中心導波路のTE波基本伝搬モードの伝搬定数と、前記2本の側設置導波路のTE波基本伝搬モードの伝搬定数とが等しくなる個所が設けられている第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域とを接続する第3領域と
が設けられており、
前記偏波回転部からの出力光が、前記中心導波路に入力され、前記2本の側設置導波路からTE波基本伝搬モードの伝搬光を出力する
光分岐部とを備え、
前記光分岐部の後段に、
当該光分岐部の前記2本の側設置導波路から出力される出力光間にπ/2の位相差を発生させる、第1及び第2干渉アームを備えるマッハ・ツェンダ型干渉計と、
前記第1及び第2干渉アームのそれぞれから出力される出力光を合分岐する光カプラを備え、
前記偏波回転部への入力光がTE波であるかTM波であるかに応じて、前記光カプラによって出力ポートを選択して出力させる
ことを特徴とする偏波識別素子。
前記偏波回転部と前記光分岐部と前記第1及び第2干渉アームと前記光カプラとを構成する導波路コアはシリコンで構成され、当該導波路コアを囲むクラッド層は酸化シリコンで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏波識別素子。
【背景技術】
【0002】
近年、小型化と量産性の観点から、光導波路のコアの素材にシリコンを利用した光導波路素子が注目されている。シリコン導波路コアを、このコア材よりも低屈折率の素材(例えば酸化シリコン)をクラッドとして光導波路構造としたものをシリコン細線導波路と呼ぶ。
【0003】
シリコン細線導波路は、コアとクラッドの屈折率差を極めて大きく取れるので、シリコン導波路コア内に光エネルギーを効率よく閉じ込めることが可能である。そのため、シリコン導波路コアの内径をサブミクロンメートルの寸法にでき、しかも曲率半径を十分小さくして曲げることが可能となる。例えば、シリコン細線導波路を用いれば、曲率半径を1μm程度にすることができるので、コンパクトな素子を実現することが可能である。
【0004】
シリコン細線導波路素子として、光の干渉を利用する波長分離素子が知られている(例えば、非特許文献1及び2、並びに特許文献1参照)。しかしながら、これらの波長分離素子は、その分離動作において偏波依存性がある。
【0005】
偏波無依存で動作可能な素子として、まず入力光を偏波分離して、それぞれの偏波成分ごとに個別に制御して波長分離等の機能を実現させる形態の素子が知られている(非特許文献3参照)。このような形態を採用すると、偏波成分ごとに波長分離等の機能を実現させる独立した機能部分を設ける必要があり、素子の形状が大型化する。
【0006】
また、偏波無依存の導波路を利用する形態の素子も知られている(非特許文献4参照)。この場合、偏波無依存の導波路を偏波ごとにその動作特性が揃うように設計する必要があり、設計が複雑で、素子の作製精度も高い必要がある。
【0007】
そこで、偏波回転部を設け、この偏波回転部で入力光の偏波方向を統一し、この統一された偏波方向に対して動作する光分岐器あるいは波長分離器を偏波回転部の後段に設ける構造が考えられる。偏波回転部として、従来、高屈折率の上部クラッド及びリブ導波路を利用する素子、又は、低屈折率の上部クラッド及びリブ導波路を利用する素子(例えば、非特許文献4参照)が 開示されている。また、本願の発明者らによって、導波路のコアの垂直断面形状が台形である導波路を利用する偏波回転素子が検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、偏波回転部で偏波方向が統一された出力光を、広い波長帯域にわたって分岐する光分岐素子がなく、偏波回転部の後段に設けるこの光分岐素子の使用可能波長帯域を広げることが課題である。
【0011】
本願の発明者は、光分岐素子を、中心導波路と、この中心導波路に対して左右対称に側設置導波路を配置した構成として、中心導波路及び左右に配置された側設置導波路の合計3本の導波路を幅テーパ型導波路とすることによって、動作波長帯域を広げることが可能であることを見出した。
【0012】
そこで、本発明の目的は、偏波回転部と光分岐部とを備えた偏波無依存型の光分岐素子であって、使用可能波長帯域(動作波長帯域)の幅を広くできる、偏波無依存型光導波路素子を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光導波路素子は偏波回転部と光分岐部とを備えている。
【0014】
偏波回転部には、TM(Transverse Magnetic)波基本伝搬モードの光とTE(Transverse Electric)波基本伝搬モードの光のいずれか一方、あるいは両者が混合された光が入力される。そして、TM波基本伝搬モードの光に対しては偏波回転し、TE波1次伝搬モードに変換して出力する。一方、TE波基本伝搬モードの光に対しては無変換で出力する。
【0015】
光分岐部は、いずれも幅テーパ導波路である、中心導波路と、2本の側設置導波路を備えている。中心導波路の左右には、対称形状の側設置導波路が中心導波路の導波中心軸に対して対称位置に配置されている。そして、第1領域と、第2領域と、第1領域と第2領域とを接続する第3領域が設けられている。
【0016】
第1領域には、中心導波路のTE波1次伝搬モードの伝搬定数(等価屈折率)と、2本の側設置導波路のTE波基本伝搬モードの伝搬定数とが等しくなる個所が設けられている。第2領域には、中心導波路のTE波基本伝搬モードの伝搬定数と、2本の側設置導波路のTE波基本伝搬モードの伝搬定数とが等しくなる個所が設けられている。
【0017】
偏波回転部から出力される出力光は中心導波路に入力され、2本の側設置導波路からTE波基本伝搬モードの伝搬光がそれぞれ出力される。
【0018】
そして、この光導波路素子の光分岐部の後段に、波長分離部を備えれば波長分離素子が形成できる。また、この光導波路素子の光分岐部の後段に、この光分岐部から出力される2つの出力光間にπ/2の位相差を発生させる第1及び第2干渉アームと、この第1及び第2干渉アームから出力される出力光を合分岐する光カプラを備えれば、入力光がTE波であるかTM波であるかに応じて、出力ポートを選択して出力させる偏波識別素子が形成できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光導波路素子によれば、偏波回転部と光分岐部とを備えているので、この偏波回転部で入力光の偏波方向を統一し、この統一された偏波方向に対して動作する光分岐部を偏波回転部の後段に設けた構造となっている。
【0020】
光分岐部は、いずれも幅テーパ導波路である、中心導波路と、2本の側設置導波路を備えている。そのため、中心導波路のTE波1次伝搬モードの伝搬定数と、2本の側設置導波路のTE波基本伝搬モードの伝搬定数とが等しくなる条件を満たす個所、及び中心導波路のTE波基本伝搬モードの伝搬定数と、2本の側設置導波路のTE波基本伝搬モードの伝搬定数とが等しくなる条件を満たす個所を、導波方向に沿って広い範囲に設定し得る。すなわち、幅テーパ型導波路としてあるため、これらの条件を満たす箇所は、波長が変わっても、導波方向に沿って何れかに存在させることができる。その結果、動作波長帯域の幅を広くできる。
【0021】
本発明の光導波路素子は、まず入力光を偏波分離して、後段の光分岐部で波長分離機能を実現させる形態の素子であるが、光分岐部の動作可能波長帯域幅が広められたことに伴って、偏波成分ごとに波長分離機能を実現させる独立した機能部分を設ける必要がなく、素子の形状をコンパクトに収めることが可能である。
【0022】
本発明の光導波路素子を利用すれば、この光導波路素子から出力される出力光は偏波方向が統一されているので、偏波依存の波長分離部を光導波路素子の光分岐部の後段に接続しても波長分離動作が行える。すなわち、偏波無依存動作する波長分離素子が形成できる。また、この光導波路素子を利用すれば、入力光の偏波状態に関わらず、TE波基本伝搬モード成分とTM波基本伝搬モード成分とを分離して出力させる偏波識別素子が形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を参照して、本発明の実施形態につき説明する。なお、
図1〜
図4、
図6及び
図7は、本発明の実施形態に係る一構成例を示すものであり、本発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の構成素材及び設計条件等を用いることがあるが、これら構成素材及び設計条件等は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、本発明の実施形態に係る一構成例を示す図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。
【0025】
≪光導波路素子≫
図1を参照して本発明の光導波路素子の実施形態について説明する。
図1は、光導波路素子を構成する導波路コアの平面パターンの概略的構成を示す図である。光導波路素子は、偏波回転部10と光分岐部22とを備えている。
【0026】
偏波回転部10には、TM波基本伝搬モードの光とTE波基本伝搬モードの光のいずれか一方、あるいは両者が混合された光が入力導波路21を介して入力される。
図1では、この入力される入力光を入力光L1と示してある。偏波回転部10は、入力されるTM波基本伝搬モードの光に対しては偏波回転してTE波1次伝搬モードに変換して出力する。また、偏波回転部10は、入力されるTE波基本伝搬モードの光に対しては無変換で出力する。
【0027】
光分岐部22は、中心導波路32cと、導波方向に向かって中心導波路32cに対して左側に設けられた側設置導波路32aと、同じく右側に設けられた側設置導波路32bとを備えている。すなわち、光分岐部22は、中心導波路32cと、この中心導波路32cの導波中心軸に対して対称位置に配置された2本の側設置導波路(32a及び32b)を備えている。
【0028】
偏波回転部10から出力される出力光は、幅テーパ導波路31aを介して等幅導波路31bに入力される。幅テーパ導波路31aは、入力光が放射損失を伴わないで等幅導波路31bに入力されるように伝搬モードを変更(導波路幅に対応する伝搬モードに変更)する。そして、伝搬光は等幅導波路31bから、中心導波路32cに入力される。
【0029】
中心導波路32cは、導波方向に沿って導波路幅が徐々に狭まる幅テーパ導波路であり、側設置導波路32a及び32bは、導波方向に沿って導波路幅が徐々に広がる幅テーパ導波路である。
【0030】
光分岐部22を構成している、中心導波路32cと2本の側設置導波路(32a及び32b)は、中心導波路32cのTE波1次伝搬モードの伝搬光を2本の側設置導波路に移行させる第1領域と、中心導波路32cのTE波基本伝搬モードの伝搬光を2本の側設置導波路(32a及び32b)に移行させる第2領域と、第1領域と第2領域とを接続する第3領域が設けられている。第1〜第3領域については、
図4を参照してその詳細を後述する。
【0031】
第1領域では、中心導波路32cのTE波1次伝搬モードの伝搬定数と、2本の側設置導波路(32a及び32b)のTE波基本伝搬モードの伝搬定数とが等しくなる個所が設けられている。また、第2領域では、中心導波路32cのTE波基本伝搬モードの伝搬定数と、2本の側設置導波路(32a及び32b)のTE波基本伝搬モードの伝搬定数とが等しくなる個所が設けられている。ここで、中心導波路32c及び2本の側設置導波路(32a及び32b)が幅テーパ導波路である。このため、第1領域及び第2領域において伝搬定数が等しくなる条件を満たす箇所は、一か所に限定されることなく、波長に応じて導波方向に沿って何れかの位置に設定し得る。すなわち、光分岐部22は分岐動作波長帯域を広い波長帯域にわたって動作が可能となる。
【0032】
偏波回転部10からの出力光が、幅テーパ導波路31a及び等幅導波路31bを経由して中心導波路32cに入力され、2本の側設置導波路(32a及び32b)に接続された曲り導波路34aと曲り導波路34bを介して、導波路23aと導波路23bから、TE波基本伝搬モードの伝搬光がそれぞれ出力される。
【0033】
<偏波回転部>
図2を参照して本発明の光導波路素子の偏波回転部10の第1の実施形態について説明する。
図2(A)は、偏波回転部10の第1の実施形態の構成を示す概略的斜視図であり、
図2(B)は
図2(A)のA-Aで示す位置で導波方向に垂直な断面で切断した概略的断面図である。
【0034】
図2(A)に示すように、偏波回転部10は、入力導波路部4、幅テーパ導波路部5、及び出力導波路部6がこの順序で導波方向に直列に接続された導波路である。
図2(A)では、入力導波路部4、幅テーパ導波路部5、及び出力導波路部6のそれぞれの部分を構成する領域をP、Q、Rで示してある。P、Q、Rで示された領域の導波路コアはシリコン材で形成されており、この導波路コアを囲んで酸化シリコン材で形成されるクラッド層2が形成されている。導波路コアとクラッド層2で形成される導波路構造体は、シリコン基板1上に形成されている。
【0035】
図2(B)に示すように、幅テーパ導波路部5のコアは、導波方向に垂直に切断した断面形状が台形であり、偏波回転が発現する条件を満たす導波路幅となっている個所が存在する。ここで、幅テーパ導波路部5の導波路幅とは等脚台形の下底あるいは上底のいずれか一方を選択してその長さをいう。いずれにしても、Qで示される領域のいずれかの箇所において偏波回転が発現する条件を満たすが、この箇所を指定するために、上底の長さあるいは下底の長さの何れかを用いても確定的に指定することができるので、選択した上底あるいは下底の長さを、幅テーパ導波路部5の導波路幅と定義する。
【0036】
図2(B)に示す例では、幅テーパ導波路部5を構成している導波路コアの断面形状が等脚台形であり、この等脚台形の底辺の両端の直角方向からの傾き角をθとしてある。Qで示される領域において、偏波回転が発現する条件を満たす位置は角θの値に依存する。
【0037】
図2(A)に示すように、入力導波路部4、及び出力導波路部6についても、この部分を構成している導波路コアの導波方向に垂直な方向に切断した断面形状も等脚台形にしてあるが、この部分は、製造工程の都合によるものであり、必ずしも断面形状を等脚台形とする必要はない。入力導波路部4、及び出力導波路部6を、通常の導波路のように矩形にしてもよい。
【0038】
偏波回転部10において、入力導波路部4の入力端S1からTM波基本伝搬モード(TM0)の光とTE波基本伝搬モード(TE0)の光のいずれか一方、あるいは両者が混合された入力光L1が入力される。そして、偏波回転部10は、TM波基本伝搬モードの光に対しては偏波回転させてTE波1次伝搬モード(TE1)に変換して、あるいはTE波基本伝搬モード(TE0)の光に対しては無変換で、出力導波路部6の出力端S2から出力光L2として出力する。
【0039】
次に、
図3を参照して本発明の光導波路素子の偏波回転部10の第2の実施形態について説明する。
図3(A)は、偏波回転部10の第2の実施形態の構成を示す概略的斜視図であり、
図3(B)は
図3(A)のA-Aで示す位置で導波方向に垂直な断面で切断した概略的断面図である。
【0040】
偏波回転部10は、
図3(A)に示すように、入力導波路部4、幅テーパ導波路部5、及び出力導波路部6をこの順序で導波方向に直列に接続された導波路である。
図3(A)で入力導波路部4、幅テーパ導波路部5、及び出力導波路部6のそれぞれの部分を構成する領域をP、Q、Rで示してある。偏波回転部10の第2の実施形態においても、P、Q、Rで示された領域の導波路コアはシリコン材で形成されており、この導波路コアを囲んで酸化シリコン材で形成されるクラッド層2が形成されている。導波路コアとクラッド層2で形成される導波路構造体は、シリコン基板1上に形成されている。
【0041】
図3(B)に示すように、幅テーパ導波路部5のコアは、導波方向に垂直に切断した断面形状が長方形である。この幅テーパ導波路部5の両側に、テラス状構造14が設けられている。幅テーパ導波路部5の導波路幅とテラス状構造14の導波路幅の寸法と、幅テーパ導波路部5とテラス状構造14の高さの差である段差Dとによって決まる、偏波回転が発現する条件を満たす個所が存在する。ここで、幅テーパ導波路部5の導波路幅とは、
図3(B)でW
1と示す寸法を意味する。また、幅テーパ導波路部5とテラス状構造14とを合わせた幅を、
図3(B)でW
2と示す。テラス状構造14の導波路幅は、(W
2-W
1)/2で与えられる。Qで示される領域のいずれかの箇所において偏波回転が発現する条件を満たす。Qで示される領域において、偏波回転が発現する条件を満たす位置は、寸法W
1、W
2、及び段差Dの値に依存する。
【0042】
偏波回転部10の第2の実施形態において、入力導波路部4の入力端S1からTM波基本伝搬モード(TM0)の光とTE波基本伝搬モード(TE0)の光のいずれか一方、あるいは両者が混合された入力光L1が入力される。そして、出力導波路部6の出力端S2からTM波基本伝搬モードの光に対しては偏波回転させてTE波1次伝搬モード(TE1)に変換して、あるいはTE波基本伝搬モード(TE0)の光に対しては無変換で、出力光L2として出力される。
【0043】
<光分岐部>
図4を参照して本発明の光導波路素子の光分岐部22の実施形態について説明する。
図4は、光分岐部22を構成する導波路コアの平面パターンの概略的構成を示す図である。
【0044】
光分岐部22においては、中心導波路32cを伝搬するTE波1次伝搬モードを2本の側設置導波路(32a及び32b)に移行するための第1領域41と、TE波基本伝搬モードを中心導波路32cから2本の側設置導波路(32a及び32b)に移行するための第2領域42と、第1領域41と第2領域42とを接続する第3領域43が設けられている。したがって、中心導波路32cはマルチモード導波路である。第1領域41において、中心導波路32cのTE波1次伝搬モードの伝搬定数が側設置導波路(32a及び32b)のTE波基本伝搬モードの伝搬定数と一致する個所が存在するように設計する。また、第2領域42において、中心導波路32cのTE波基本伝搬モードの伝搬定数が側設置導波路(32a及び32b)のTE波基本伝搬モードの伝搬定数と一致する箇所が存在するように設計する。光分岐部22を広波長帯域で動作可能なようにするために、第1領域41と第2領域42において、中心導波路32cと2本の側設置導波路(32a及び32b)には、幅テーパ導波路が採用されている。
【0045】
図4においては、2本の側設置導波路(32a及び32b)の入力端が中心導波路32cの入力端よりEだけずらせて配置されているが、両者の入力端をそろえて(Eの領域を設けないで)形成してもよい。
【0046】
光分岐部22は、中心導波路32c及び2本の側設置導波路(32a及び32b)で構成された第1〜第3領域(第1領域41、第2領域42、第3領域43)の導波路コアがシリコン材で形成され、この導波路コアを囲んでクラッド層(図示を省略する。)が酸化シリコン材で形成されている。導波路コアとクラッド層で構成される導波路構造体はシリコン基板上に形成されている。
【0047】
ここで、光分岐部22の動作について説明する。
図4において、符号13で示す曲線は中心導波路32cを伝搬するTE波1次伝搬モードの等位相面での光強度を示し、符号44aで示す曲線は側設置導波路32aを伝搬するTE波基本伝搬モードの等位相面での光強度を示し、符号44bで示す曲線は側設置導波路32bを伝搬するTE波基本伝搬モードの等位相面での光強度を示す。また、符号12で示す曲線は中心導波路32cを伝搬するTE波基本伝搬モードの等位相面での光強度を示し、符号45aで示す曲線は側設置導波路32aを伝搬するTE波基本伝搬モードの等位相面での光強度を示し、符号45bで示す曲線は側設置導波路32bを伝搬するTE波基本伝搬モードの等位相面での光強度を示す。
【0048】
第1領域41では中心導波路32cを伝搬するTE波1次伝搬モード13の伝搬定数が2本の側設置導波路(32a及び32b)を伝搬するTE波基本伝搬モード44a, 44bの伝搬定数と一致する(位相整合する)。このため、中心導波路32cのTE波1次伝搬モード13は、互いに位相が反転したTE波基本伝搬モード44a, 44bに移行する。
【0049】
第2領域42における中心導波路32cの幅が、第1領域41における幅とは異なっていてTE波1次伝搬モードが伝搬しない。このため、第2領域42に入力されたTE波基本伝搬モード44a, 44bは、そのまま側設置導波路(32a及び32b)の終端から出力される。中心導波路32cのTE波1次伝搬モード13は、互いに位相が反転したTE波基本伝搬モード44a, 44bに移行するため、第2領域42の出力端では、TE波基本伝搬モード44aとTE波基本伝搬モード44bは互いに反対位相となっている。
【0050】
一方、中心導波路32cのTE波基本伝搬モード12は、第1領域41では位相整合しないのでそのまま第2領域42に入る。第2領域42では、中心導波路32cの導波路幅と側設置導波路(32a及び32b)の導波路幅がほぼ等しくなっている個所があるので、TE波基本伝搬モード12は側設置導波路(32a及び32b)のTE波基本伝搬モード45a, 45bと位相整合して2本の側設置導波路(32a及び32b)の終端から出力される。このため、中心導波路32cにTE波基本伝搬モードが入力された場合は、第2領域42の出力端では、TE波基本伝搬モード45aとTE波基本伝搬モード45bは互いに同位相となっている。
【0051】
図5を参照して、3次元BPM(Beam Propagation Method)を使用して光分岐部22の動作をシミュレーションした結果について説明する。光分岐部22を構成するシリコン導波路コアの厚みは第1〜第3領域の全てにおいて、220nmである。入力光L1として波長が1.55μmと1.31μmの2波長のTE波を使用した。入力光L1として、
図5(A)は波長1.55μmの基本伝搬モード(TE0)を使い、
図5(B)は波長1.55μmの1次伝搬モード(TE1)を使い、
図5(C)は波長1.31μmの基本伝搬モード(TE0)を使い、
図5(D)は波長1.31μmの1次伝搬モード(TE1)をそれぞれ使った場合の光強度分布を示している。
【0052】
図5(A)〜(D)において、縦軸を光の伝搬方向であるz方向にとり、横軸を光の伝搬方向に対して直交するx方向にとって、それぞれμm単位で目盛って示してある。光分岐部22の全長は10μm(
図4に示すEの領域を含めてある)、中心導波路32cの導波路幅は、440 nmから100 nmまで変えてある。中心導波路32cと側設置導波路(32a及び32b)との間隔(ギャップ33a,33b)は100 nmとなるように、幅テーパ導波路である側設置導波路(32a及び32b)の導波路幅を光の進行方向に沿って設定してある。中心導波路32cはE(=1μm)だけ側設置導波路(32a及び32b)より先行して形成してあり、中心導波路32cの入力端(z=0μm)での導波路幅は440 nmとなっている。中心導波路32cの第1領域41においては、マルチモード導波路となっている。
【0053】
図5(A)〜(D)に示すように、中心導波路32cに入力された入力光は、側設置導波路32aと側設置導波路32bに分離されて導波している。
図5(A)〜(D)では光強度の濃淡に応じて白〜黒に至る灰色の濃淡で示してあるが、光強度の濃淡に応じて赤〜青に至る色識別表示で示せば一層明瞭に読み取れる。
【0054】
また、
図5(A)と
図5(B)、又は、
図5(C)と
図5(D)を比較するとわかるように、同一波長であれば1次伝搬モードの方が基本伝搬モードよりも先に、二方向に分離している。また、1次伝搬モードは一端分離されれば再び中心導波路32cに戻ることはない。更に、図示は省略するが、光分岐部22を構成するシリコン導波路コアの厚みを300 nmとして、中心導波路32cと側設置導波路(32a及び32b)とのギャップ33a,33bを200 nmとしたものでも1.55〜1.31μmの波長で良好な動作が得られることを確認している。
【0055】
3次元BPMによるシミュレーションで示されたように、第2領域42では、2本の側設置導波路(32a及び32b)と中央導波路32cが位相整合条件にあっても、第1領域41で中心導波路32cのTE波1次伝搬モードから側設置導波路(32a及び32b)に移行した光は、第2領域42で側設置導波路(32a及び32b)から中央導波路32cに戻ることはない。この事実は、本願の発明者によって初めて得られた知見であり、本発明の光分岐部22における上述の動作が実現される為の重要な法則である。
【0056】
≪波長分離素子≫
図6を参照して、
図1〜
図5を参照して説明した上述の光導波路素子を利用して形成される波長分離素子の実施形態について説明する。
図6に示す波長分離素子は、偏波回転部10と光分岐部22から構成される上述の光導波路素子の、光分岐部22の後段に、波長分離部50を備えている。波長分離部50は、例えば、2つの第1分岐器52a及び52bと、4つの第2分岐器54a-1、54a-2、54b-1及び54b-2を備えて構成される。これら、第1分岐器52a及び52bと、第2分岐器54a-1、54a-2、54b-1及び54b-2は、1入力2出力の素子で、入力された光を所望の波長に分離して出力する。
【0057】
光分岐部22の後段に導波路23a及び23bが設けられている。1つの第1分岐器52aは、導波路23aに接続され、第1分岐器52aの2つの出力に、それぞれ第2分岐器54a-1及び54a-2が接続されている。同様に、もう1つの第1分岐器52bは、導波路23bに接続され、第1分岐器52bの2つの出力に、それぞれ第2分岐器54b-1及び54b-2が接続されている。
【0058】
入力導波路21から入力される入力光L1は、偏波回転部10に入力されてTE波に変換され、光分岐部22に入力される。光分岐部22に入力されると上述したように、光分岐部22の2本の側設置導波路(32a及び32b)に接続された導波路23aと導波路23bから、それぞれTE波基本伝搬モードの伝搬光がそれぞれ出力される。
【0059】
光分岐部22の二つの出力を異なる導波路23a及び23bに伝搬させる。導波路23aを伝搬した光は第1分岐器52aに入力され、導波路23bを伝搬した光は第1分岐器52bに入力される。第1分岐器52aから出力される2つの出力光は一方が第2分岐器54a-1に入力され、他方は第2分岐器54a-2に入力される。また、第1分岐器52bから出力される2つの出力光は一方が第2分岐器54b-1に入力され、他方は第2分岐器54b-2に入力される。第2分岐器54a-1からは出力光L2a-1とL2a-2が出力され、第2分岐器54a-2からは出力光L2a-3とL2a-4が出力され、第2分岐器54b-1からは出力光L2b-1とL2b-2が出力され、第2分岐器54b-2からは出力光L2b-3とL2b-4が出力される。
【0060】
すなわち、入力導波路21から入力された入力光L1は、波長分離されて8分割されて出力光L2a-1、L2a-2、L2a-3、L2a-4、L2b-1、L2b-2、L2b-3、L2b-4が出力される。第1分岐器52a及び52b、並びに第2分岐器54a-1、54a-2、54b-1、54b-2としては例えばマッハ・ツェンダ干渉器を利用して形成できる。入力導波路21から入力される入力光L1は、偏波回転部10を通過すれば、すべて同一の偏波(TE偏波)なので、光分岐部22、並びに第1及び第2分岐器は、一方の偏波(ここではTE偏波)での動作が保証されていれば良いことになる。
【0061】
≪偏波識別素子≫
図7を参照して、
図1〜
図5を参照して説明した上述の光導波路素子を利用して形成される偏波識別素子の実施形態について説明する。
図7に示す偏波識別素子は、偏波回転部10と光分岐部22から構成される上述の光導波路素子の、光分岐部22の後段に、偏波分離して出力させる偏波識別部60を備えている。
【0062】
入力導波路21から入力される入力光L1は、偏波回転部10に入力されてTE波に変換され、光分岐部22に入力される。光分岐部22に入力されると上述したように、光分岐部22の2本の側設置導波路(32a及び32b)に接続された、曲り導波路34aと曲り導波路34bから、それぞれTE波基本伝搬モードの伝搬光がそれぞれ出力される。
【0063】
曲り導波路34aから出力された出力光は、マッハ・ツェンダ型干渉計を構成する第1干渉アーム61aを通過して光カプラ62に入力され、曲り導波路34bから出力された出力光は、同じくマッハ・ツェンダ型干渉計を構成する第2干渉アーム61bを通過して光カプラ62に入力される。ここで、第1干渉アーム61aに対する第2干渉アーム61bの光路長差は、第1干渉アーム61aを通過する光と第2干渉アーム61bを通過する光との間にπ/2の位相差が発生するように設定されている。
【0064】
上述したように、中心導波路32cにTE波1次伝搬モードが入力されると、第2領域42の出力端では、TE波基本伝搬モード44aとTE波基本伝搬モード44bは互いに反対位相となっており、中心導波路32cにTE波基本伝搬モードが入力されると第2領域42の出力端では互いに同位相となっている。中心導波路32cにTE波1次伝搬モードが入力されるのは偏波回転部10にTM波基本伝搬モードが入力された場合であり、中心導波路32cにTE波基本伝搬モードが入力されるのは偏波回転部10にTE波基本伝搬モードが入力された場合である。このように、TE波1次伝搬モードが入力されるか、あるいはTE波基本伝搬モードが入力されることによって、第2領域42の出力端におけるTE波基本伝搬モード44aとTE波基本伝搬モード44bの位相は、反対位相となるか同位相となる。
【0065】
このため、干渉アームによる移相と合わせて光カプラ62の作用で、入力導波路21から入力される入力光L1がTE波であれば、第1及び第2干渉アーム(61a及び61b)から出力された出力光は光カプラ62で合波された後、一方の出力ポート63aから出力され、入力光L1がTM波であれば、他方の出力ポート63bから出力される。このように、入力導波路21から入力される入力光L1がTE波であるかTM波であるかによって、出力ポートが選択されて出力される、偏波識別素子が形成される。
【0066】
≪製造方法≫
上述の光導波路素子、波長分離素子、及び偏波識別素子を構成する導波路コアパターン構造体は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を入手して、以下の工程によって形成できる。SOI基板は、広く市販品として入手可能であり、シリコン基板に酸化シリコン層、及びこの酸化シリコン層上に光導波路パターンの厚みの寸法に等しい厚みのシリコン層が形成されている。まず、このSOI基板を用意するステップを実行する。
【0067】
次に、以下のドライエッチングステップを実行する。すなわち、SOI基板の酸化シリコン層上に形成されているシリコン層に対して、導波路コアとなる部分(導波路コアパターン構造体)を残してドライエッチング等を行い、他の部分のシリコン層を取り除く。
【0068】
ドライエッチングステップに続き、エッチング処理で残された導波路コアパターン構造体を取り囲む酸化シリコン層を化学気相成長(CVD: Chemical Vapor Deposition)法等によって形成する(CVDステップ)。そして、酸化シリコン層の上面が平坦になるように研磨し、更にこの上に酸化シリコン層を形成する。このように研磨工程を挟んでCVDステップを実行することによって、
図2及び
図3に示すクラッド層2が形成される。また、波長分離素子、及び偏波識別素子における光導波路素子を構成する導波路コア部分以外である波長分離部、及び偏波識別部についても同様である。
【0069】
このように、本発明の光導波路素子、波長分離素子、及び偏波識別素子は、SOI基板を用いて周知のエッチング処理、CVD法等によって形成することが可能であるので、量産性に優れ低コストで簡便に形成することが可能である。
【解決手段】偏波無依存型光導波路素子は、偏波回転部10と光分岐部22とを備える。偏波回転部10は、TM波基本伝搬モード光とTE波基本伝搬モード光のいずれか一方、あるいは両者が混合された光が入力されると、入力光がTM波基本伝搬モードであればTE波1次伝搬モードに変換して、TE波基本伝搬モードの光であれば無変換で、光分岐部22に入力される。光分岐部22は、いずれも幅テーパ導波路である、中心導波路32cと2本の側設置導波路32a、32bを備えており、中心導波路32cのTE波1次伝搬モードの伝搬定数若しくはTE波基本伝搬モードと、2本の側設置導波路32a、32bのTE波基本伝搬モードとが等しくなる領域が設けられて、2本の側設置導波路32a、32bからTE波基本伝搬モードの伝搬光を出力する。