【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力導波路、入力側スラブ導波路、入力側導波路構造体、異なる光路長を有する複数のチャンネル導波路を含むアレイ導波路、出力側導波路構造体、出力側スラブ導波路及び出力導波路を備え、この順に接続されて構成され、
前記入力側スラブ導波路と前記入力側導波路構造体、及び、前記出力側スラブ導波路と前記出力側導波路構造体が、それぞれ請求項1に記載の光合分波素子である
ことを特徴とするアレイ導波路回折格子型光波長フィルタ。
【背景技術】
【0002】
近年、加入者系光アクセスシステムは、1つの局側光回線終端装置(OLT: Optical Line Terminal)と複数の加入者側光回線終端装置(ONU: Optical Network Unit)を、光ファイバ及びスターカプラを介して接続し、OLTを複数のONUが共有する、受動光ネットワーク(PON: Passive Optical Network)通信システムが主流となっている。この通信システムでは、OLTからONUへ向けた下り通信とONUからOLTに向けた上り通信とが相互に干渉し合わないように、下り通信に使われる光信号波長と上り通信に使われる光信号波長とを違えている。
【0003】
加入者系光アクセスシステムについては、更に、通信に用いる波長の多重度を上げた波長分割多重方式PON(WDM-PON: Wavelength Division Multiplexed-PON)が検討されている。WDM-PONでは、OLTとONUに、複数の波長の光を合分波する光素子が必要となる。
【0004】
このような光素子の一例として、アレイ導波路回折格子(AWG: Arrayed Waveguide Grating)がある。AWGは、入力導波路、入力側スラブ導波路、異なる光路長を有する複数のチャンネル導波路を含むアレイ導波路、出力側スラブ導波路及び出力導波路が、同一の基板上に平板光導波路回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)として形成される。しかし、コアとクラッドの屈折率差が小さい石英系光導波路では、湾曲光導波路の曲率半径を小さくすることが難しく、AWGを小型化できない。
【0005】
そこで、シリコン(Si)を材料とするコアと、シリコンとの屈折率差が大きな酸化シリコン(SiO
2)を材料とするクラッドとを用いたシリコン細線導波路で、AWGを構成する例が報告されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。シリコン細線導波路は、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも非常に大きいので、光の閉じ込めが強い。このため、十分小さい曲率半径の湾曲光導波路を形成できる。また、シリコン電子デバイスの加工技術を利用して製造できるために、極めて微細なサブミクロンの断面構造を実現できる。これらのことから、シリコン細線導波路を用いることでAWGを小型化することができる。
【0006】
しかし、シリコン細線導波路を用いるAWGでは、AWGを構成する入力側及び出力側のスラブ導波路とチャンネル導波路との接続部分で無視できない大きさの放射損失が生じることが知られている。この放射損失を低減する手法の一つとして、AWGを構成する導波路をリブ導波路構造にすることが試みられている。しかしながら、リブ導波路構造を採用すると、湾曲導波路部分の曲率半径を大きくしないと、この部分で無視できない放射損失が生じる。そこで、特殊なリブ導波路を利用して放射損失を低減する試みがなされている(非特許文献3参照)。ただし、非特許文献3に開示されているリブ導波路は、浅いステップエッチング技術が使われており、製造プロセスに高い技術が要請される。
【0007】
特許文献1には、AWGを構成する入力側及び出力側のスラブ導波路とチャンネル導波路の接続部分で発生する放射損失について、チャンネル導波路を構成している複数のそれぞれの導波路で発生する放射損失を等しくするために、導波路モードカプラ(Waveguide mode coupler)を利用する構造が開示されている。ただし、特許文献1に開示されたAWGでは、チャンネル導波路における放射損失を等しくすることが実現されるが、放射損失そのものを低減するという課題は解決されていない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、
図1及び
図5は、この発明の実施形態に係る一構成例を示すものであり、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の構成素材及び設計条件等を用いることがあるが、これら構成素材及び設計条件等は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、
図1及び
図5において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。
【0020】
≪光合分波素子≫
図1を参照して、この発明の光合分波素子の実施形態につき説明する。
図1(A-1)は、光合分波素子を構成する導波路コアの平面パターンの概略的構成を示す図である。また、
図1(A-2)は、光合分波素子を構成する導波路コアの平面パターンの他の例の概略的構成を示す図である。
図1(B-1)は、
図1(A-1)及び(A-2)のI-Iで示す位置で導波方向に垂直な断面で切断した概略的断面図であり、
図1(B-2)は、
図1(A-1)及び(A-2)のII-IIで示す位置で導波方向に垂直な断面で切断した概略的断面図である。
【0021】
光合分波素子はスラブ導波路11と導波路構造体4を備えている。導波路構造体4は、この導波路構造体4とスラブ導波路11とを接続する領域において、スラブ導波路11との接続位置から、MMI導波路カプラ14、第1テーパ導波路15、幅広導波路16、第2テーパ導波路17が、導波方向に沿ってこの順に接続されている。
【0022】
図1(B-1)に示すように、幅広導波路16を構成する導波路コアはクラッド層2に囲まれて、基板1上に形成されている。そして、その導波方向に垂直に切断した断面形状は長方形である。
【0023】
また、
図1(B-2)に示すようにMMI導波路カプラ14を構成する導波路コアは、導波方向に沿って左側導波路領域L、中央導波路領域C、右側導波路領域Rが設定されている。そして、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの厚みが、中央導波路領域Rの厚みより薄く、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rは中央導波路領域Cに対して対称形に形成されている。MMI導波路カプラ14を構成する導波路コアは、クラッド層2に囲まれて、基板1上に形成されている。
【0024】
図1(B-1)及びに示す(B-2)に示す基板1はシリコン基板を利用し、クラッド層2は酸化シリコン材を利用するのが好適である。また、導波路構造体4及びMMI導波路カプラ14を構成する導波路コアは、シリコン材を利用して形成するのが好適である。
【0025】
図1に示す光合分波素子を構成する導波路コアパターン構造体は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を入手して、以下の工程によって形成できる。まず、SOI基板の酸化シリコン層上に形成されているシリコン層に対して、導波路コアとなる部分(導波路コアパターン構造体)を残してドライエッチング等を行い、他の部分のシリコン層を取り除く。ドライエッチングステップに続き、エッチング処理で残された導波路コアパターン構造体を取り囲む酸化シリコン層を化学気相成長(CVD: Chemical Vapor Deposition)法等によって形成する(CVDステップ)。このようにして、光合分波素子を構成する導波路コアを取り囲むクラッド層が形成される。
【0026】
このように、この発明の光合分波素子は、SOI基板を用いて周知のエッチング処理、CVD法等によって形成することが可能であるので、量産性に優れ低コストで簡便に形成することが可能である。
【0027】
図1(A-1)に示すように、第1テーパ導波路15、第1テーパ導波路15との接続部分から幅広導波路16の途中までを構成する導波路コアは、MMI導波路カプラ14と同様に、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの厚みが、中央導波路領域Rの厚みより薄く、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rがステップ部18となるように形成されている。すなわち、MMI導波路カプラ14の導波路方向に沿った両側面はステップ部18である。そして、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rは中央導波路領域Cに対して対称形に形成されている。
【0028】
導波路構造体4は、幅広導波路16の全体にわたって導波路コアの形状を
図1(B-2)に示す形状に形成しても、あるいは幅広導波路16の途中までの導波路コアの形状を
図1(B-2)に示す形状に形成してもよい。また、
図1(A-1)に示すように、ステップ部18が幅広導波路16の途中で徐々に完全になくなる構成としても、あるいは、
図1(A-2)に示すように、ステップ部18を幅広導波路16の途中でステップ状になくなる構成としてもよい。
【0029】
図2を参照して、MMI導波路カプラ14と第1テーパ導波路15における導波光の伝搬形態について説明する。
図2(A)は、MMI導波路カプラ14及び第1テーパ導波路15にステップ部18が形成されていない構造における導波光の伝搬の様子を示している。また、
図2(B)は、MMI導波路カプラ14及び第1テーパ導波路15にステップ部18が形成されたこの発明の構造における導波光の伝搬の様子を示している。
【0030】
図2(A)及び(B)では、スラブ導波路11、MMI導波路カプラ14、及び第1テーパ導波路15を伝搬する導波光伝搬形態を、光電場強度の分布を示す曲線21〜24によって示している。これらの曲線21〜24は、光電場強度0を底辺(L-0)にして、光電場強度の大きさに比例してL-0から離れるように描いてある。曲線21は、スラブ導波路11を伝搬する導波光の強度分布を示している。スラブ導波路11を伝搬する導波光は球面波であるが局所的にみると平面波とみなせ、曲線21はほぼ直線である。このため、曲線21に対しては、光電場強度の最小値を示す底辺(L-0)を省略してある。
【0031】
ステップ部18が形成されていない場合は、
図2(A)に示すように、MMI導波路カプラ14を伝搬する導波光は、曲線22で示す形態の伝搬光となる。一方ステップ部18が形成されている場合は、
図2(B)に示すように、MMI導波路カプラ14を伝搬する導波光は、曲線24で示す形態の伝搬光となる。
【0032】
MMI導波路カプラ14を伝搬光が伝搬している間に伝搬モードが変換され、第1テーパ導波路15に等強度曲線23に示す形態の伝搬モードで入力される。等強度曲線23で示される導波光は、第1テーパ導波路15を基本伝搬モードで伝搬する。
【0033】
導波路構造体4は、スラブ導波路11の出力端に並列されて複数設置される。そのため、隣接する導波路構造体4を構成するMMI導波路カプラ14も一定の隙間をあけて隣接して配置されることになる。この隣接するMMI導波路カプラ14の隙間Gの部分を隣接間ギャップ14gとする。
【0034】
スラブ導波路11の伝搬光はMMI導波路カプラ14に入力されると、隣接間ギャップ14gから漏れ出し放射損失となる。MMI導波路カプラ14の導波光は、伝搬モードが変換されて第1テーパ導波路15に入力されるが、第1テーパ導波路15に入力される伝搬光のエネルギーには、MMI導波路カプラ14を伝搬中に隣接間ギャップ14gに漏れ出ていたエネルギー成分も含まれる。
【0035】
隣接間ギャップ14gでは光電場強度が弱くなっているため、隣接間ギャップ14gにおける曲線22g、24gは、底辺(L-0)に近い位置にある。これは、隣接間ギャップ14gに漏れ出る伝搬光が多く、ここで発生する放射損失が大きいことを意味している。
【0036】
ここで、隣接するMMI導波路カプラ14の隙間である隣接間ギャップ14gにおける光電場強度を、ステップ部18が形成されていない場合(曲線22g)と形成されている場合(曲線24g)とで比較すると、ステップ部18が形成されている場合の方が強いことがわかる。
【0037】
MMI導波路カプラ14の導波光が、伝搬モードが変換されて第1テーパ導波路15に入力されるとき、隣接間ギャップ14gにおける光電場強度が強いほど、第1テーパ導波路15に入力される伝搬光のエネルギーも大きくなる。すなわち、ステップ部18が形成されている場合、隣接間ギャップ14gにおける光電場強度が、ステップ部18が形成されていない場合より強いので、第1テーパ導波路15に入力される伝搬光の光電場強度も強くなる。
【0038】
以上、スラブ導波路11から導波路構造体4に向けて導波光が進行し、スラブ導波路11に入力された導波光が、複数の導波路構造体4に分波される場合(光分波器として利用される場合)を説明した。逆に、複数の導波路構造体4を伝搬して、スラブ導波路11に合波される場合(光合波器として利用される場合)は、分波される場合とは逆の過程が起き、第1テーパ導波路15を伝搬する基本伝搬モードの伝搬光がMMI導波路カプラ14とスラブ導波路11の接続位置で、等強度曲線22で表される伝搬モードに変換されて、スラブ導波路11を伝搬する等強度曲線21で表される伝搬モードとカップリングする。したがって、光合波器として利用される場合にも、ステップ部18を備える構成のほうが好ましいことがわかる。
【0039】
<動作特性のシミュレーション>
図3を参照して、3次元BPM(Beam Propagation Method)を使用して光合分波素子の動作をシミュレーションした結果について説明する。
図3(A)は、
図2(A)を参照して説明したMMI導波路カプラ14及び第1テーパ導波路15にステップ部18が形成されていない構造の光合分波素子における導波光の伝搬の様子を示している。
図3(B)は、
図2(B)を参照して説明した、MMI導波路カプラ14及び第1テーパ導波路15にステップ部18が形成されたこの発明の構造における導波光の伝搬の様子を示している。
図3(A)及び(B)において、スラブ導波路11に複数の導波路構造体4が並列してアレイ状に配列された構造を設定してシミュレーションしてある。すなわち、光合分波素子をAWG型光波長フィルタに応用する場合を想定し、MMI導波路カプラ14の隙間である隣接間ギャップ14gにおける放射損失の状況を確認した。
【0040】
図3(A)及び(B)において、横軸(X軸)をMMI導波路カプラ14が並べられた配列方向にとってあり、縦軸(Z軸)を導波光の導波方向にとってある。また、スラブ導波路11、MMI導波路カプラ14及び第1テーパ導波路15に相当する箇所を「11」、「14」、「15」と区切って示してある。
【0041】
図3(A)及び(B)に示すように、スラブ導波路11で発現する基本伝搬モードと2次伝搬モードの干渉による光電場分布が中央に集中する。そして、隣接間ギャップ14gの光電場強度を比較すると
図3(A)に示す光電場分布よりも
図3(B)に示す光電場分布が強いことが見て取れる。すなわち、
図3(B)に示すようにステップ部18を形成することによって、MMI導波路カプラ14の隙間である隣接間ギャップ14gから放射損失される量を少なくし、隣接間ギャップ14gの光電場成分を有効に第1テーパ導波路15にカップリングさせることができる。
【0042】
図4を参照して、シミュレーションにおいて比較対象とした導波路構造体4に相当する箇所の構造を説明する。導波路構造体4に相当する箇所は、長さL
tの幅テーパ導波路20と、入力側曲線導波路5aが接続されている。まず、
図4に示す形態の導波路構造体4に相当する箇所にステップ部18を設けた場合と設けない場合とを比較した。表1にステップ部を設けていない形態(Wire(L
t25μm)と示す)とステップ部を設けた形態(Rib(L
t50μm)と示す)とにおいて放射損失量を示した。
【0043】
また、
図1(A-1)に示すスラブ導波路11との接続位置から、MMI導波路カプラ14、第1テーパ導波路15、幅広導波路16、第2テーパ導波路17、が導波方向に沿ってこの順に接続された導波路構造体4において、ステップ部18を設けた場合と設けない場合とを比較した。表1にステップ部18を設けていない形態(MMI-Wireと示す)とステップ部18を設けた形態(MMI-ribと示す)とにおいて放射損失量を示した。
【0045】
シミュレーションは、波長は1.55μmを中心とした前後±数nmの幅の波長帯域とし、TE偏波を用いて、以下の条件下で行った。
【0046】
図4を参照して説明した導波路構造体4の幅テーパ導波路20の長さL
tを、ステップ部18を設けていない形態では25μmとし、ステップ部18を設けた形態では50μmとした。
図4を参照して説明した導波路構造体4において、導波路コアの厚みが220 nmと300 nmの2通りの条件を設定した。また、幅テーパ導波路20の最大幅(表1では開口と示してある)が1.5μmの場合と、5μmの場合の2通りの条件を設定した。隣接間ギャップ20gは500nmとした。
【0047】
また、
図1(A-1)に示す導波路構造体4に対するシミュレーションでは、MMI導波路カプラ14の幅を1.5μm、隣接するMMI導波路カプラ14の隣接間ギャップ14gを500 nmとした。MMI導波路カプラ14の長さは、ステップ部18を設けていない形態で2.5μm、設けた形態では3.5μmとし、MMI導波路カプラ14の導波路コアの厚みは300 nm、ステップ部18を構成する段差Dを80 nmとした。導波路構造体4における導波路コアの厚みが220 nmと300 nmの2種類でシミュレーションした。また、MMI導波路カプラ14の幅(表1では開口と示してある)が1.5μmの場合と、5μmの場合の2通りの条件を設定した。
【0048】
表1に示す放射損失量に幅が存在するのは、シミュレーションに利用した波長帯域に幅を持たせたことによる波長依存性に基づくものである。
図4に示す導波路構造体4に対してステップ部18を設けた形態と設けない形態との比較、及び
図1(A-1)に示した導波路構造体4にステップ部18を設けた形態と設けない形態との比較において、放射損失量が最小となるように、幅テーパ導波路20の長さL
t、及びMMI導波路カプラ14、第1テーパ導波路15、幅広導波路16、第2テーパ導波路17の導波路長を設定してシミュレーションした。
【0049】
表1に示すように、この発明の構造であるステップ部18を設けたMMI-ribで、導波路コアの厚みが220 nm、MMI導波路カプラ14の幅が1.5μmの場合において0.65 dB〜1.0 dBとなっており、また、導波路コアの厚みが300 nmにおいて0.74 dB〜0.93 dBとなっていて、他の条件と比べて最も放射損失量が小さいことが分かる。これに次いで放射損失量が小さいのが、MMI導波路カプラ14の幅が5μmの場合である。なお、MMI導波路カプラ14の幅が1.5μmの場合においては、放射損失量が1 dBを下回っており極めて小さいことがわかる。この様に、MMI導波路カプラ14にステップ部18を設けることによって、放射損失量を大幅に低減できることが確かめられた。
【0050】
≪アレイ導波路回折格子型光波長フィルタ≫
図5を参照して、この発明のAWG型光波長フィルタの実施形態につき説明する。この発明のAWG型光波長フィルタは、入力導波路12、入力側スラブ導波路11a、入力側導波路構造体4a、異なる光路長を有する複数のチャンネル導波路で構成されるアレイ導波路30、出力側導波路構造体4b、出力側スラブ導波路11b及び出力導波路13を備え、この順に接続されて構成されている。
【0051】
出力導波路13は複数本アレイ状に形成されている。すなわち、
図5に示すAWG型光波長フィルタは、入力導波路12に入力された入力光が波長ごとに分波されて出力導波路13から出力される構成の光波長フィルタである。入力側スラブ導波路11aと入力側導波路構造体4a、及び、出力側スラブ導波路11bと出力側導波路構造体4bは、上述の光合分波素子を用いて形成されている。
【0052】
アレイ導波路30を構成する複数のチャンネル導波路のそれぞれは、入力側曲線導波路5a、第1直線導波路6、第1曲線導波路7、第2直線導波路8、第2曲線導波路9、第3直線導波路10、出力側曲線導波路5bがこの順に接続されている。なお、以下の説明において、入力側導波路構造体4a及び出力側導波路構造体4bをアレイ導波路30に含めることもある。
【0053】
入力光は、入力導波路12から入力側スラブ導波路11aに入力され、出力光は出力側スラブ導波路11bから出力導波路13を介して外部に出力される。入力側スラブ導波路11aと出力側スラブ導波路11bは、入力側スラブ導波路11aの対称中心軸S1と出力側スラブ導波路11bの対称中心軸S2とが互いに平行となるように配置されている。
【0054】
アレイ導波路30を構成する複数のチャンネル導波路のそれぞれにおいて、入力側導波路構造体4aの全長と、出力側導波路構造体4bの全長の和は互いに等しく設定されている。また、対となる入力側曲線導波路5aと出力側曲線導波路5bの互いの曲げ部分の曲率半径は等しく設定されている。これは曲率半径が異なると等価屈折率も異なり、位相誤差が発生する原因となるからである。
【0055】
アレイ導波路30を構成する複数のチャンネル導波路ごとに、第1曲線導波路7及び第2曲線導波路9は同一構造にして、この曲線導波路部分で位相誤差が発生しないように考慮されている。また、第1直線導波路6、第2直線導波路8、第3直線導波路10は、この直線導波路部分で発生する位相誤差がAWG型光波長フィルタの特性に与える効果を小さくするため、導波路幅を0.7μm〜1μmの範囲に設定する。
【0056】
一方、入力側曲線導波路5a、出力側曲線導波路5b、第1曲線導波路7及び第2曲線導波路9の導波路幅は、この導波路部分で伝搬モードの変換が生じないように、基本伝搬モードが保証される導波路幅を300 nm〜500 nmに設定する。なお、直線導波路部分と曲線導波路部分を接合する結合領域は、両者の導波路幅の差を滑らかに解消するように幅テーパ導波路を用いる。
【0057】
また、第2直線導波路8はアレイ導波路30の中心に配置され、第1直線導波路6と第3直線導波路10は、第2直線導波路8に対して対称の関係となる位置に配置される。第1曲線導波路7と第2曲線導波路9も、第2直線導波路8に対して対称の関係となる位置に配置される。
【0058】
図5に示すAWG型光波長フィルタによれば、入力側スラブ導波路11aと入力側導波路構造体4a、及び、出力側スラブ導波路11bと出力側導波路構造体4bに、
図1を参照して説明した光合分波素子を用いている。このため、両接続領域において発生する放射損失が低減されるので、全体として放射損失が低減されたAWG型光波長フィルタが実現される。
【解決手段】スラブ導波路11と導波路構造体4を備えた光合分波素子である。導波路構造体4は、スラブ導波路11との接続位置から、MMI導波路カプラ14、第1テーパ導波路15、幅広導波路16、第2テーパ導波路17が導波方向に沿ってこの順に接続されている。MMI導波路カプラ14、第1テーパ導波路15、及びこの第1テーパ導波路15との接続部分から幅広導波路16の途中までを構成する導波路コアは、導波方向に沿って左側導波路領域L、中央導波路領域C、右側導波路領域Rが設定されている。そして、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの厚みが、中央導波路領域Cの厚みより薄く、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rは中央導波路領域Cに対して対称形に形成されている。