(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭素(C)0.9〜1.2重量%、ケイ素(Si)1.0〜1.5重量%、マンガン(Mn)0.4〜0.6重量%、クロム(Cr)0.2〜0.7重量%、硫黄(S)0.015重量%以下(0%を含まない)、リン(P)0.015重量%以下(0%を含まない)、並びに残りは、鉄(Fe)及び不可避な不純物を含む鋼を伸線して鋼線を製造する段階と、
亜鉛メッキ槽において前記鋼線を一次メッキし、前記鉄が拡散され、鉄及び亜鉛が混合された鉄−亜鉛合金層と、前記鉄−亜鉛合金層21上に形成される亜鉛メッキ層22を形成する第1メッキ段階と、
前記鉄−亜鉛合金層21は、鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23に変成され、前記亜鉛メッキ層22は、亜鉛−アルミニウム合金層24に変成されるように、前記第1メッキ段階後、亜鉛−アルミニウムメッキ槽40において二次メッキする第2メッキ段階と、を含み、
前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みは、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23と、前記亜鉛−アルミニウム合金層24と、を合わせた厚みの40%ないし60%であるメッキ鋼線に形成されることを特徴とする架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法。
前記第1メッキ段階は、460℃ないし500℃に維持される前記亜鉛メッキ槽30において、20秒ないし150秒間遂行されることを特徴とする請求項1に記載の架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法。
前記第2メッキ段階は、460℃ないし500℃に維持される前記亜鉛アルミニウムメッキ槽において、20秒ないし150秒間遂行されることを特徴とする請求項1に記載の架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法。
前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層には、20%ないし30%のアルミニウムが含まれたことを特徴とする請求項1に記載の架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法。
前記鋼を伸線する段階において、前記鋼は、伸線加工率が10%ないし20%に加工されることを特徴とする請求項1に記載の架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法。
請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載のところによって製造されたメッキ鋼線を複数本撚って鋼撚線を製造することを特徴とする架空送電線補強用高強度メッキ鋼撚線の製造方法。
【背景技術】
【0002】
最近、産業の発展によって電力需要が急増し、高い電力を送電することができる架空送電線の要求が多くなっている。架空送電線補強用鋼線は、電力を送電する前記架空送電線の補強のために使用される鋼線である。架空送電線補強用鋼線は、架空送電線の電力輸送に支障を与えずに、架空送電線を補強しなければならない。
【0003】
図1は、架空送電線の断面を図示したものである。
図1に図示されているように、架空送電線1は、中心側に補強用鋼線2が配置され、外側に導電性のアルミニウムワイヤ3が配置される。前記中心側の補強用鋼線2は、一般的に、何筋もが撚り合わされた鋼撚線4であり、前記鋼撚線4の外側に、電力輸送のためのアルミニウムワイヤ3が何筋にも配置される。
【0004】
既存の架空送電線補強用鋼線は、炭素含量が0.6ないし0.8重量%含有された鋼線であり、引っ張り強度が1,300ないし1,860Mpaほどに形成される。しかし、かような既存補強用鋼線は、引っ張り強度が低く、中心側に補強用鋼線を多く配置しなければならず、結果として、導電層機能を遂行するアルミニウムワイヤが相対的に縮小され、アルミニウムワイヤの断面積を拡大させるのに限界を有する。
【0005】
かような問題を解決するために、炭素(C)0.6ないし0.8重量%、マンガン(Mn)6.0ないし15.0重量%、ニッケル(Ni)4.0ないし8.0重量%、クロム(Cr)16.0ないし20.0重量%、窒素(N)0.2ないし0.5重量%の組成を有する窒素鋼を使用して引っ張り強度を向上させた試みがあるが、マンガン、ニッケル、クロムが高価であるので、鋼線のコストを急激に引き上げるという短所がある。
【0006】
また、ステンレス鋼線や、鉄(Fe)とニッケル(Ni)との合金に、炭素(C)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)などを複合添加したインバールワイヤ(invar wire)が高送電電力ケーブルに適用されているが、それも、いずれも高価な元素が含まれてコストを引き上げてしまうという短所がある。なお、関連先行技術文献として、特許文献1がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような問題点を解決するために創出されたものであり、特に、高強度でありながら電気抵抗が低く、電力損失を低減させる架空送電線補強用高強度メッキ鋼線、及び鋼撚線の製造方法、並びにそれによって製造された鋼線及び鋼撚線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するための本発明の一側面による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法は、炭素(C)0.9〜1.2重量%、ケイ素(Si)1.0〜1.5重量%、マンガン(Mn)0.4〜0.6重量%、クロム(Cr)0.2〜0.7重量%、硫黄(S)0.015重量%以下(0%を含まない)、リン(P)0.015重量%以下(0%を含まない)、並びに残りは、鉄(Fe)及び不可避な不純物を含む鋼を伸線して鋼線を製造する段階と、亜鉛メッキ槽で、前記鋼線を一次メッキし、前記鉄が拡散され、鉄及び亜鉛が混合された鉄−亜鉛合金層と、前記鉄−亜鉛合金層上に形成される亜鉛メッキ層と、を形成する第1メッキ段階と、前記鉄−亜鉛合金層が鉄−亜鉛−アルミニウム合金層に変成され、前記亜鉛メッキ層が亜鉛−アルミニウム合金層に変成されるように、前記第1メッキ段階後、亜鉛−アルミニウムメッキ槽において二次メッキを行う第2メッキ段階と、を含み、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層の厚みは、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層と、前記亜鉛−アルミニウム合金層とを合わせた厚みの40%ないし60%であるメッキ鋼線に形成されることを特徴とする。
【0010】
また、前記第1メッキ段階は、460℃ないし500℃に維持される前記亜鉛メッキ槽において、20秒ないし150秒間遂行されることが望ましい。
【0011】
また、前記第2メッキ段階は、460℃ないし500℃に維持される前記亜鉛アルミニウムメッキ槽において、20秒ないし150秒間遂行されることが望ましい。
【0012】
また、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層には、20%ないし30%のアルミニウムが含まれていることが望ましい。
【0013】
また、前記鋼を伸線する段階において、前記鋼は、伸線加工率が10%ないし20%に加工されることが望ましい。
【0014】
また、前記メッキ鋼線は、引っ張り強度2,000MPa以上を有することが望ましい。
【0015】
また、前記メッキ鋼線の電気抵抗は、3.2×10
−7Ωm以下であることが望ましい。
【0016】
一方、本発明の他の側面において、架空送電線補強用高強度メッキ鋼撚線の製造方法は、前記メッキ鋼線を何筋も撚って製造される。
【0017】
一方、本発明のさらに他の側面による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線は、炭素(C)0.9〜1.2重量%、ケイ素(Si)1.0〜1.5重量%、マンガン(Mn)0.4〜0.6重量%、クロム(Cr)0.2〜0.7重量%、硫黄(S)0.015重量%以下(0%を含まない)、リン(P)0.015重量%以下(0%を含まない)、並びに残りは、鉄(Fe)及び不可避な不純物を含む鋼線;及び前記鋼線の外周面にメッキされ、鉄と亜鉛とアルミニウムとが混合された鉄−亜鉛−アルミニウム合金層と、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層の外周面にメッキされ、亜鉛とアルミニウムとが混合された亜鉛−アルミニウム合金層と、を有する合金層;を含み、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層の厚みは、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層と、前記亜鉛−アルミニウム合金層とを合わせた厚みの40%ないし60%に形成されることを特徴とする。
【0018】
ここで、引っ張り強度は、2,000Mpa以上であることが望ましい。
【0019】
ここで、電気抵抗は、3.2×10
−7Ωm以下であることが望ましい。
【0020】
ここで、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層には、20%ないし30%のアルミニウムが含まれていることが望ましい。
【0021】
一方、本発明のさらに他の側面による架空送電線補強用高強度メッキ鋼撚線は、前記高強度メッキ鋼線が何筋にも撚られたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線、及び鋼撚線の製造方法、並びにそれによって製造された鋼線及び鋼撚線は、高強度でありながら電気抵抗が低く、電力損失を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、架空送電線補強用高強度メッキ鋼線、及び鋼撚線の製造方法、並びにその製造方法によって製造された鋼線及び鋼撚線に関するものである。該架空送電線は、電力輸送のために使用されるものであり、補強用高強度メッキ鋼線及び鋼撚線は、前記架空送電線の補強のために使用されるものである。
【0025】
以下、本発明による望ましい実施例について、添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図2は、本発明の実施例による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造工程の概念図であり、
図3は、
図2の工程による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の断面図である。
【0027】
まず、
図2及び
図3を参照し、本発明の一側面による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法について説明する。
【0028】
本発明の一実施例による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法は、鋼を伸線して鋼線10を製造する段階、第1メッキ段階、及び第2メッキ段階を含む。
【0029】
前記鋼を伸線して鋼線10を製造する段階は、炭素(C)0.9〜1.2重量%、ケイ素(Si)1.0〜1.5重量%、マンガン(Mn)0.4〜0.6重量%、クロム(Cr)0.2〜0.7重量%、硫黄(S)0.015重量%以下(0%を含まない)、リン(P)0.015重量%以下(0%を含まない)、並びに残りは、鉄(Fe)及び不可避な不純物を含む鋼を伸線して鋼線10を製造する段階である。
【0030】
本実施例によれば、前記鋼は、伸線加工率が10%ないし20%に加工される。伸線加工率が10%ないし20%に加工されるので、前記鋼は、最初直径に比べ、80%ないし90%の範囲内に直径が縮小されるように伸線加工される。
【0031】
すなわち、伸線加工量が80%ないし90%に加工される。伸線加工量が80%未満である場合、本発明が確保しようとする引っ張り強度2,000MPa以上が確保されず、伸線加工量が90%を超えれば、鋼線10の電気抵抗が増加し、電力損失が多くなるので望ましくない。
【0032】
前記炭素(C)は、鋼の強度を高める最も効果的でありながら経済的な元素であり、本発明の実施例によれば、炭素含量を0.9重量%以上にし、2,000MPa以上の高引っ張り強度を確保する。
【0033】
炭素含量が1.2重量%を超える場合、伸線に必要な軟性が急激に低下するために、炭素の含量範囲は、0.9重量%ないし1.2重量%にする。
【0034】
ケイ素(Si)は、パーライト中のフェライトを固溶強化する元素であり、高強度化に効果的であり、後述する第1メッキ段階(亜鉛メッキ槽30でのメッキ)及び第2メッキ段階(亜鉛−アルミニウムメッキ槽40でのメッキ)の遂行時、セメンタイトの分解を抑制し、強度低下を防止する役割を行う。
【0035】
従って、高強度化のために、1.0重量%以上に添加することが必要であり、1.5重量%を超える場合には、フェライトの軟性を急激に低下させ、表面組織欠陥を誘発してしまうので、その上限を1.5重量%にする。
【0036】
マンガン(Mn)は、鋼の強度を増大させ、小粒性を上昇させてパーライト変態を遅延させる元素であり、若干遅い冷却速度でも、微細パーライト組織を確保しやすくするために、0.4重量%以上を添加し、過度なマンガンは、中心に偏析が発生し、中心部にマルテンサイト組織を発生させて伸線性を阻害するために、その上限を0.6%にする。
【0037】
クロム(Cr)は、パーライトラメラ層状間隔を微細化させ、強度及び軟性を同時に上昇させる効果がある。クロムの含量が0.2重量%未満である場合には、十分な強度を得ることができず、0.7重量%超過時には、恒温変化終了時間が長くなって生産性が落ち、マルテンサイト組織を誘発する可能性が高くなる。従って、クロムは、0.2〜0.7重量%範囲で添加する。
【0038】
硫黄(S)は、0.015重量%を超える場合、低融点析出物の形態で、結晶粒界に析出して熱間脆化を誘発するので、0.015重量%以下で添加することが望ましい。
【0039】
リン(P)は、0.015重量%を超える場合、柱状晶間に偏析され、熱間脆化を起こし、冷間伸線中に亀裂を誘発するので、0.015重量%以下で添加することが望ましい。
【0040】
前記第1メッキ段階は、前記鋼線10を亜鉛メッキ槽30で一次的にメッキする段階である。
【0041】
前記亜鉛メッキ槽30において、前記鋼線10の外周面には、鉄−亜鉛合金層21と、前記鉄−亜鉛合金層21の外周面に、亜鉛メッキ層22と、が形成される。前記鋼線10が、前記亜鉛メッキ槽30に投入されれば、まず鉄が拡散され、鉄及び亜鉛が混合された鉄−亜鉛合金層21が形成され、前記鉄−亜鉛合金層21上に亜鉛がメッキされた亜鉛メッキ層22が形成される。
【0042】
本実施例によれば、前記亜鉛メッキ槽30は、460℃ないし500℃に維持される。前記鋼線10は、前記亜鉛メッキ槽において、20秒ないし150秒間収容されてメッキされる。
【0043】
前記亜鉛メッキ槽30は、460℃未満にする場合、前記鉄−亜鉛合金層21の厚みを十分に確保することができず、500℃以上では、引っ張り強度が2,000Mpaより低くなるために、前記亜鉛メッキ槽30は、460℃ないし500℃の範囲で維持されることが望ましい。
【0044】
前記鉄−亜鉛合金層21の厚みを十分に確保しなければならない理由について、さらに説明する。前記第1メッキ段階が遂行された後、亜鉛−アルミニウムメッキ槽40で、第2メッキ段階が遂行される。このとき、前記鉄−亜鉛合金層21にアルミニウムが拡散され、鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23を形成する。
【0045】
前記アルミニウムは、前記鉄−亜鉛合金層21に拡散するだけであり、前記鉄−亜鉛合金層21の厚みを増大させないために、第2メッキ段階を経て形成される鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みは、前記鉄−亜鉛合金層21の厚みと同一である。
【0046】
従って、鉄−亜鉛合金層21の厚みを十分に確保してこそ、最終的に電気抵抗が低い鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23を得ることができるので、亜鉛メッキ槽30を460℃ないし500℃に維持し、鉄−亜鉛合金層21の厚みを十分に確保するようにする。
【0047】
前記第2メッキ段階は、前記第1メッキ段階後、亜鉛−アルミニウムメッキ槽40で二次メッキする段階である。
【0048】
前記亜鉛−アルミニウムメッキ槽40において、前記鉄−亜鉛合金層21は、鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23に変成され、前記亜鉛メッキ層22は、亜鉛−アルミニウム合金層24に変成される。
【0049】
具体的には、第1メッキ段階で形成された亜鉛メッキ層22は、亜鉛−アルミニウムメッキ槽40で瞬間的に溶解され、前記鉄−亜鉛合金層21にアルミニウムが拡散され、前記鉄−亜鉛合金層21は、鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23に変わり、前記亜鉛メッキ層22は、亜鉛−アルミニウム合金層24に変わる。
【0050】
本実施例によれば、前記亜鉛−アルミニウムメッキ槽40は、前記亜鉛メッキ槽30と同様に、460℃ないし500℃に維持される。第1メッキ段階を経た前記鋼線10は、前記亜鉛−アルミニウムメッキ槽40において、20秒ないし150秒間収容されてメッキされる。
【0051】
前記亜鉛−アルミニウムメッキ槽40の温度範囲、及び前記亜鉛−アルミニウムメッキ槽40でのメッキ遂行時間を、前記亜鉛メッキ槽30と同一の範囲で維持し、作業者が、第1メッキ段階及び第2メッキ段階を遂行するとき、第1メッキ段階及び第2メッキ段階の制御を容易にすることができる。
【0052】
前記亜鉛−アルミニウムメッキ槽40での温度及びメッキ処理時間が、前記亜鉛メッキ槽30での条件と異なって設定されることも可能であるということは言うまでもない。例えば、前記亜鉛−アルミニウムメッキ槽40の温度は、亜鉛−アルミニウムが溶融状態で存在するほどに維持されることも可能である。
【0053】
前記のような工程を経て、前記鋼は、メッキ処理されたメッキ鋼線100に形成される。
【0054】
本実施例によれば、前記鋼を伸線して鋼線10に製造した後、第1メッキ段階及び第2メッキ段階を経て、亜鉛より電気抵抗が低いアルミニウムを含む鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23と、亜鉛−アルミニウム合金層24とを形成し、電気抵抗を低下させることにより、電力損失量を低減させる。
【0055】
具体的には、本実施例によれば、前記メッキ鋼線100において、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みが、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23と、前記亜鉛−アルミニウム合金層24とを合わせた厚みの40%ないし60%に形成される。
【0056】
前述のように、鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みは、前記亜鉛−メッキ槽で形成される鉄−亜鉛合金層21の厚みに依存し、前記亜鉛メッキ槽30の温度範囲及びメッキ処理時間によって、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みは、総合金層20(鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23と、亜鉛−アルミニウム合金層24とを含むものを意味する)の厚みに対して、40%ないし60%に形成される。
【0057】
前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みが総合金層20の厚みに比べて40%以下に形成される場合、メッキ鋼線100の電気抵抗が3.2×10
−7Ωm以下に維持されずに望ましくない。
【0058】
また、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みが、総合金層の厚みに比べて60%を超えて形成することは、商用工程上、第1メッキ段階及び第2メッキ段階の工程制御が入り組んでしまい、コストが上昇するという短所がある。
【0059】
例えば、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みを60%以上に形成するために、亜鉛メッキ槽30及び亜鉛−アルミニウムメッキ槽40の温度を極端に上昇させ、メッキ処理時間を顕著に延長させなければならないので、コスト上昇をもたらすという短所がある。
【0060】
また、前記のような工程を経て、前記メッキ鋼線100は、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23には、20%ないし30%のアルミニウムが含まれ、電気抵抗は、3.2×10
−7Ωm以下になり、引っ張り強度2,000MPa以上を有するように形成される。
【0061】
第2メッキ段階が遂行されながら、アルミニウムは、前記第1メッキ工程によって形成された鉄−亜鉛合金層21及び亜鉛メッキ層22に拡散する。特に、アルミニウムは、亜鉛メッキ層22より鉄−亜鉛合金層21にさらに多くの量が拡散されて固溶される。鉄−亜鉛合金層21に、20%ないし30%アルミニウムが拡散されて固溶され、亜鉛メッキ層22には、5%前後のアルミニウムが固溶される。
【0062】
以下、具体的な実験例に基づいて、本発明の作用及び効果について具体的に説明する。
【0063】
まず、炭素(C)0.9〜1.2重量%、ケイ素(Si)1.0〜1.5重量%、マンガン(Mn)0.4〜0.6重量%、クロム(Cr)0.2〜0.7重量%、硫黄(S)0.015重量%以下(0%を含まない)、リン(P)0.015重量%以下(0%を含まない)、並びに残りは、鉄(Fe)及び不可避な不純物を含む素材のロッド(rod)を使用し、恒温変態熱処理後、3.2mmで引き抜き伸線を行った後、亜鉛メッキ槽30及び亜鉛−アルミニウムメッキ槽40で、連続して第1メッキ段階及び第2メッキ段階を遂行してメッキ鋼線100を製造し、前記メッキ鋼線100を7本撚って鋼撚線200を製造した。
【0065】
前述の表1で、前記伸線加工量は、鋼の伸線程度をパーセントで示したものであり、亜鉛メッキ槽30の温度は、第1メッキ段階において、亜鉛メッキ槽30の温度を表記したものである。
【0066】
また、鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の比率は、第2メッキ段階を遂行して形成される鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の総合金層20(鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23及び亜鉛−アルミニウム合金層24を含んだもの)に対する比率をパーセントで示したものである。電気抵抗は、各実験において、与えられた値に10
−7Ωmを乗じた値で与えられ、引っ張り強度の単位は、MPaである。
【0067】
前記表1から分かるように、実験1ないし実験3は、鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の比率が40%未満に形成されて不適であり、実験1及び実験2は、電気抵抗が3.2×10
−7Ωmより大きくて不適である。
【0068】
また、実験7から分かるように、亜鉛メッキ槽30の温度を510℃に維持した場合、引っ張り強度は、1,920MPaであり、引っ張り強度が2,000MPa以上に確保されずに不適である。
【0069】
また、伸線加工量と係わり、実験8を参照すれば、伸線加工量が75%であるとき、引っ張り強度が2,000PMa以下であって不適であり、実験11を参照すれば、伸線加工量が92%であるとき、電気抵抗が高くなって不適である。
【0070】
従って、本発明によれば、伸線加工量は、80%ないし90%に維持し、亜鉛メッキ槽の温度は、460℃ないし500℃の範囲で維持するとき、2,000MPa以上の高強度メッキ鋼線100を確保しながら、電気抵抗は、3.2×10
−7Ωm以下に形成され、架空送電線を安定して補強しながら、電力損失を減らして送電量を増加させることができる。
【0071】
一方、本発明によれば、架空送電線補強用高強度メッキ鋼線を提供する。前記高強度メッキ鋼線100は、前述の架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法によって製造される。
【0072】
本実施例による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線は、鋼線10と合金層20とを含む。
【0073】
前記鋼線10は、炭素(C)0.9〜1.2重量%、ケイ素(Si)1.0〜1.5重量%、マンガン(Mn)0.4〜0.6重量%、クロム(Cr)0.2〜0.7重量%、硫黄(S)0.015重量%以下(0%を含まない)、リン(P)0.015重量%以下(0%を含まない)、並びに残りは、鉄(Fe)及び不可避な不純物を含む。前記鋼線10は、前記成分を含んだ素材の鋼を、伸線加工量が80%ないし90%になるように伸線して製造される。
【0074】
前記合金層20は、鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23と、亜鉛−アルミニウム合金層24と、を含む。
【0075】
前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23は、前記鋼線10の外周面にメッキされ、鉄と亜鉛とアルミニウムとが混合された層である。前記亜鉛−アルミニウム合金層24は、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の外周面にメッキされ、亜鉛とアルミニウムとが混合された層である。
【0076】
前述の高強度メッキ鋼線の製造方法と比較して説明すれば、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23及び前記亜鉛−アルミニウム合金層24は、前記第1メッキ段階及び第2メッキ段階を経て最終的に形成される。すなわち、亜鉛メッキ槽30において一次的にメッキされ、続いて、亜鉛−アルミニウムメッキ槽40において二次的にメッキされ、最終的に前記合金層20が形成される。
【0077】
本実施例による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線において、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みは、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23と、前記亜鉛−アルミニウム合金層24とを合わせた厚みの40%ないし60%に形成され、前記高強度メッキ鋼線100の引っ張り強度は、2,000Mpa以上を有し、電気抵抗は、3.2×10
−7Ωm以下に形成される。また、前記鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23には、20%ないし30%のアルミニウムが含まれる。
【0078】
本実施例による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線100は、前記高強度メッキ鋼線の製造方法によって製造されたものであり、その作用及び効果は、すでに説明したので、その具体的な説明は省略する。
【0079】
一方、本発明によれば、架空送電線補強用高強度メッキ鋼撚線の製造方法を提供する。前記高強度メッキ鋼撚線の製造方法は、前述のメッキ鋼線の製造方法によって製造されたメッキ鋼線100を何筋も撚って鋼撚線200を製造するものである。メッキ鋼線100を何筋も撚る方法は、一般的に公知されたところによるので、その具体的な説明は省略する。
【0080】
図4は、本発明の実施例による架空送電線補強用高強度メッキ鋼撚線が適用された架空送電線300の断面図である。
図4に図示されているように、前記鋼撚線200は、前記架空送電線300の中心に配置され、前記メッキ鋼線100が7本撚られている。本実施例において、7本鋼撚線200を例として挙げたが、鋼撚線200を構成する前記メッキ鋼線100の数が多様に変更されるということは言うまでもない。
【0081】
架空送電線補強用高強度メッキ鋼撚線の製造方法は、架空送電線補強用高強度メッキ鋼線の製造方法と実質的に同一の作用及び効果を提供するので、その具体的な説明は省略する。
【0082】
そのように、本発明による架空送電線補強用高強度メッキ鋼線、及び鋼撚線の製造方法、並びにそれによって製造された鋼線及び鋼撚線は、引っ張り強度を2,000MPa以上であり、高強度鋼線及び鋼撚線を提供する。
【0083】
従って、架空送電線300は、補強用高強度メッキ鋼撚線200が内側に配置され、外側にアルミニウムワイヤ310が配置されるが、高強度のメッキ鋼撚線200を使用することにより、内側に配置される高強度メッキ鋼撚線200の断面積を狭めながらも、外側に配置されるアルミニウムワイヤ310の断面積を拡大させ、電力輸送量を増大させることができる。
【0084】
また、鉄−亜鉛−アルミニウム合金層23の厚みを厚くし、アルミニウム含量を増大させ、電気抵抗を低くすることにより、電力損失を低減させながら送電量を増やすようにする。
【0085】
また、高価の元素を添加せずにも、引っ張り強度を向上させ、電気抵抗を低くすることにより、コストを節減するという効果を提供する。
【0086】
以上、本発明について、望ましい実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の範疇をはずれない範囲内で、さまざまな多くの変形が提供される。従って、本発明の真の技術的保護範囲を、特許請求の範囲の技術的思想によって定められるものである。