(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本発明の停止スイッチ装置1を、遠隔制御装置(テレコン装置)101に用いた例を示している。遠隔制御装置101は、複数の押しボタンのいずれかを押下して、ホイスト式クレーンやタワークレーンなどの制御対象機器を無線で遠隔操作する装置である。
【0015】
遠隔制御装置101は、筐体2の表面(操作面)2Mに停止スイッチ装置1と、押しボタン111〜121と、を備えている。
【0016】
押しボタン111〜121のいずれかを操作して制御対象機器を遠隔操作中に、制御対象機器を非常停止させるときには、停止スイッチ装置1のツマミ4を押し下げる。遠隔制御装置101は、制御対象機器は、この電波を受信すると停止する。
【0017】
まず、停止スイッチ装置1の概略を説明する。
【0018】
図2(A)に示すように、停止スイッチ装置1は、筐体2と、筐体2Bと、軸3と、ツマミ4と、停止スイッチ5を備えている。
【0019】
停止スイッチ5は、光を照射する発光部と、発光部が照射した光を受光する受光部と、を有するフォトセンサ(フォトインタラプタ)であり、プリント基板6に取り付けられている。
【0020】
図2(B)に示すように、筐体2には、その表面2Mの下端側に、軸受け孔21が形成されている。軸受け孔21の内径は、一例として8.0mmである。軸受け孔21の周囲には、円筒形の壁(第1の壁)22が形成されている。円筒形の壁22の内径は、一例として、19mmである。壁22の上縁には、内周側に延出した爪23と爪24が形成されている。また、壁22の円筒の中心に、爪23は、爪24よりも広い幅に形成されている。
【0021】
図3(A)に示すように、軸3は、円柱形で、その側面の中央部に円形の溝が形成されており、この溝にOリング30が取り付けられている。軸3の直径は、一例として7.9mmである。Oリング30は、軸受け孔21からの水の侵入を防ぐために取り付けられている。軸3の外周面には、一方の端部(
図3における上側)から、J字形に切除された2つのJ字溝31AとJ字溝31Bが、中心点Oに対して点対称に形成されている。J字溝31AとJ字溝31Bは、第1の掛合部に相当する。J字溝31Aは、軸3の端面3M側に開口部31AKを有し、中間部に、移動部材である突起31ATが形成されている。J字溝31Bは、軸3の端面3M側に開口部31BKを有し、中間部に、移動部材である突起31BTを備えている。軸3の端面3Mには、凸部であるリブ36A〜36Cが+型に形成されている。
【0022】
軸3の他方の端部(
図3における下側)の近傍には、側面に中心線CLに沿って2つの凹部32A,33Aと凹部32B,33Bが、中心線CLに対して線対称に形成されている。
【0023】
軸3の他方の端部とOリング30との間には、軸3を引き出したときの位置を規制するための突起である規制部34が形成されている。軸3において、規制部34と反対の方向には、停止スイッチ5をオン/オフするための突起である遮光部(遮光部材)35が延出している。
【0024】
図3(B)に示すように、筐体2の軸受け孔21に軸3を取り付けた状態、すなわち、軸3が第1の位置のときには、円筒形の壁22の高さH1(例えば、6.5mm)は、軸受け孔21から延出している軸3の高さH2(例えば、6.0mm)よりも高い。また、円筒形の壁22と軸3との間隔S(例えば、6.0mm)は、遠隔制御装置101のユーザである大人の人差し指の太さよりも小さい。
【0025】
このように、円筒形の壁22は、その高さ及び軸との間隔が、軸3が第1の位置のときに、軸3を指で引き出すことができない寸法に形成されている。そのため、
図3(B)に示した状態で、軸3の先を人差し指と親指でつまんで引き出そうとしても、引き出すことができない。また、軸3が第1の状態のときには、遠隔制御装置101の裏面側の筐体2Bに当接しているので、軸3を押し込んでも、軸3を移動させることはできない。
【0026】
なお、日本の指輪の規格では、最も小さい1号サイズで、内径約13mmである。指輪をはめる薬指の太さと、軸をつまむときに使う人差し指の太さは、あまり差がない。また、指先の太さは、指の第2関節(近位指節間関節)の太さの約1/2〜2/3である。したがって、円筒形の壁22と軸3との間隔Sを6.5mm(=13mm×1/2)以下にするとよい。また、壁22の高さを、軸3の軸受け孔21から突出している部分の高さ以上にするとよい。これにより、指が細いユーザであっても、軸3を指先でつまむことにより引き出すことはできない。
【0027】
図4(A)に示すように、ツマミ4の表面は、ユーザが操作するための操作面であり、平面状に形成され、円板40の中央に「停止」という文字46が刻印され、円板40の周縁部に矢印(三角形)47が刻印されている。円板40の周縁部には、ユーザがツマミ4を保持するための凹部48A,48Bが設けられている。また、円板40の周縁部には、キーホルダやひもなどを取り付けるためのストラップ孔49が形成されている。
【0028】
図4(B)に示すように、ツマミ4の裏面側には、円板40上に円筒形の壁41が設けられている。壁41の中央部には、円形の凹部42が設けられている。壁41の周囲には溝43をはさんで、円筒形の壁44が設けられている。
【0029】
図4(C)と
図4(D)に示すように、凹部42にはその周縁部である壁41から中心方向に、第2の掛合部である突起421,422が延出している。また、凹部42の底面には、その中央部に、第1の弾性部材である凸部427が設けられている。凹部42の底面には、その周縁部から中心方向に、第2の弾性部材であるリブ423〜426が延出している。リブ423〜426と凸部427は、弾性部材であるエラストマーにより形成されている。
【0030】
図4(B)、
図4(E)、
図4(F)に示すように、壁41の外周部には、J字形に切除された2つのJ字溝411とJ字溝412が、中心点CPに対して点対称に形成されている。但し、J字溝411は、J字溝412よりも幅が広くなっている。J字溝411は、壁41の上縁側に開口部411Kを有し、中間部に、規制部材である突起411Tが形成されている。J字溝412は、壁41の上縁側に開口部412Kを有し、中間部に、規制部材である突起412Tが形成されている。
【0031】
図5(A)と
図5(B)に示すように、筐体2にツマミ4を取り付ける場合には、筐体2の爪23とツマミ4のJ字溝411を掛合させ、筐体2の爪24とツマミ4のJ字溝412を掛合させる。このとき、ツマミ4の突起421が、軸3のJ字溝31Aと掛合し、ツマミ4の突起422が軸3のJ字溝31Bと掛合する。また、凹部42の中央部に設けた凸部427が軸3の端部中央であるリブ36A〜36Cの中央部と当接する。また、凹部42に設けたリブ423〜426は、軸3の端面3Mに設けたリブ36A〜36Cには当接せず、端面3Mのリブ36A〜36C以外の部分に対向する。
【0032】
前記のように、筐体2の爪23と爪24は幅が異なり、ツマミ4のJ字溝411は爪23を挿入できる幅であり、J字溝412は爪24を挿入できる幅である。そのため、ツマミ4の向きを逆にしても、筐体2に取り付けることはできず、誤装着を防止できる。
【0033】
なお、筐体2の円筒形の壁22には1つの爪を設け、ツマミ4の円筒形の壁41に1つのJ字溝を設けても、誤装着を防止できる。
【0034】
図5(C)に示すように、ツマミ4を筐体2に取り付けると、
図5(D)に示すように、ツマミ4を時計回りに停止位置まで回転させる。
【0035】
ツマミ4を
図5(D)に示す停止位置まで回転させると、筐体2の爪23が、ツマミ4のJ字溝411の突起411Tよりも終端側に位置する。また、筐体2の爪24が、ツマミ4のJ字溝411の突起412Tよりも終端側に位置する。
【0036】
また、凹部42に設けたリブ423〜426は、軸3の端面3Mに設けたリブ36A〜36Cに当接するので、ツマミ4が軸3に対してがたつくのを防止できる。
【0037】
図6(A)に示すように、軸3は、筐体2から延出する保持部26Aと保持部26Bにより、凹部32Aと凹部32Bが保持されている。この状態は、ツマミ4の取り付け前後で変わらない。
【0038】
図5(C)に示したように、ツマミ4を筐体2に取り付けた状態から、
図5(D)に示したように、ツマミ4を時計回りに回転させているときには、ツマミ4の突起421が軸3のJ字溝31Aの中間部に形成された突起31ATと当接する。また、ツマミ4の突起422が軸3のJ字溝31Bの中間部に形成された突起31BTと当接する。このとき、
図6(A)に示す状態から
図6(B)に示すように、軸3がツマミ4の方向に移動し、保持部26A,26Bの先端は、凹部32Aと凹部32Bからずれて、凹部32Aと凹部33Aの間の膨らんだ部分、及び凹部32Bと凹部33Bの間の膨らんだ部分を保持することになる。そのため、保持部26A,26Bが軸3を保持する力が強くなり、軸を回転させる際に、反力が発生する。
【0039】
ツマミ4を
図5(D)に示す停止位置まで回転させると、ツマミ4の突起421が軸3のJ字溝31Aの終端部に当接する。また、ツマミ4の突起422が軸3のJ字溝31Bの終端部に当接する。すなわち、ツマミ4と軸3が掛合した状態になる。
【0040】
このとき、軸3がツマミ4と逆方向に移動して、
図7(A)に示した状態になる。すなわち、
図6(A)に示した状態と同様に、軸3は、筐体2から延出する保持部26Aと保持部26Bにより、凹部32Aと凹部32Bが保持される。
【0041】
このように、停止スイッチ装置1は、回転させる際に反力が発生するように構成しているので、ツマミ4が容易に回転しないようにすることができる。また、ツマミ4を回転させた際には、反力が徐々に強くなり、しばらく回転させると、反力が徐々に弱くなるので、ツマミ4が停止位置まで回転したかを感触で把握できる。
【0042】
なお、ツマミ4を、
図5(D)に示した状態から、
図5(C)に示した状態に回転させるときも回転途中では、同様に反力が発生する。
【0043】
また、上記のように、保持部26Aと保持部26Bにより軸3の凹部32Aと凹部32Bが保持されており、軸2を移動させると反力が発生するので、
図3に示したように、ツマミ4を軸3に取り付けていない状態において、軸3を指で引き出そうとしても容易に引き出すことができない。
【0044】
図7(B)に示すように、ツマミ4を時計回りに停止位置まで回転させた状態、すなわち、ツマミ4を押し込んだ状態では、軸3は、第1の位置に位置し、軸3の遮光部35は、停止スイッチ5の発光部と受光部の間に挿入された状態である。このとき、停止スイッチ5は、オフ状態である。
【0045】
ユーザがツマミ4を引き出すと、
図7(C)に示すように、軸3は、第1の位置から第2の位置に移動する。すなわち、筐体2から延出する保持部26Aと保持部26Bにより、凹部33Aと凹部33Bが保持される。また、
図7(D)に示すように、軸3の規制部34が筐体2に当接する。このとき、軸3の遮光部35は、停止スイッチ5の発光部と受光部の間からずれた位置に移動し、発光部が照射する光を受光部に入光させ、停止スイッチ5は、オン状態になる。
図7(B)と
図7(D)に示したように、停止スイッチ5は、軸3の遮光部35と非接触なので、接触式のスイッチと比較して劣化しにくく長寿命である。また、ツマミ4を押し込むと、軸3が押されて遮光部35が、停止スイッチ5を遮光するので、停止スイッチ5をオン状態からオフ状態に確実に切り替えることができ、停止スイッチ装置1の信頼性を向上できる。
【0046】
ツマミ4を引き出すときや、ツマミ4を押し込むときには、保持部26A,26Bの先端が、凹部32Aと凹部33Aの間、及び凹部32Bと凹部33Bの間の膨らんだ部分を一時的に保持することになる。そのため、保持部26A,26Bが軸3を保持する力が強くなり、反力が発生する。
【0047】
このように、停止スイッチ装置1は、ツマミ4を引き出すときや押し込むときに反力が発生するように構成しているので、ツマミ4が容易に移動しないようにすることができる。
【0048】
図5(C)に示したように、ツマミ4を筐体2に取り付けた状態
(第1の回転位置)から、
図5(D)に示したように、ツマミ4を時計回りに回転させているとき
(第2の回転位置)には、ツマミ4の突起421が軸3のJ字溝31Aの中間部に形成された突起31ATと当接する。また、ツマミ4の突起422が軸3のJ字溝31Bの中間部に形成された突起31BTと当接する。このとき、
図6(A)に示す状態から
図6(B)に示すように、軸3がツマミ4の方向に移動し、保持部26A,26Bの先端は、凹部32Aと凹部32Bからずれて、凹部32Aと凹部33Aの間の膨らんだ部分、及び凹部32Bと凹部33Bの間の膨らんだ部分を保持することになる。そのため、保持部26A,26Bが軸3を保持する力が強くなり、軸を回転させる際に、反力が発生する。
【0049】
遠隔制御装置101は、ツマミ4が取り外された状態では、軸3が第1の位置にあり、停止スイッチ5が遮光部35に遮光されており、停止スイッチ5はオフ状態である。このときには、押しボタン111〜121のいずれを操作しても、操作は受け付けられない。
【0050】
遠隔制御装置101に、ツマミ4が取り付けられて、
図5(D)に示すように、時計回りに回転させると、ツマミ4が軸3に固定されて、ツマミ4は引き出し可能になる。ツマミ4が引き出されると、軸3が第2の位置に移動し、停止スイッチ5が遮光部35に遮光されなくなり、オン状態になる。このときには、電源スイッチのボタンである押しボタン111を操作すると、遠隔制御装置101に電源が投入されて、押しボタン111〜121のいずれも操作可能となる。ツマミ4は、表面が平面状であるため、キースイッチのカギのように上面側に突き出て邪魔になることがなく、押しボタン111〜121を容易に操作することができる。
【0051】
また、制御対象機器を非常停止させる場合には、ツマミ4を押し込むと、軸3が第2の位置から第1の位置に移動し、停止スイッチ5が遮光部35に遮光されて、停止スイッチ5はオフ状態となる。このとき、遠隔制御装置101は、制御対象機器に非常停止信号を含む電波を出力して、制御対象機器を停止させる。
【0052】
また、ツマミ4を反時計回りに回転させると、ツマミ4は軸3から固定された状態が解除されて、軸3から離脱可能になる。
【0053】
遠隔制御装置101からツマミ4を取り外すと、前記のとおり、押しボタン111〜121のいずれを操作しても、操作は受け付けられない。
【0054】
また、ツマミ4を取り外した状態では、前記のとおり、円筒形の壁22と軸3の間に指先を入れることができないため、ユーザは、軸3を引き出して、停止スイッチ5をオン状態にすることができない。
【0055】
このように、ユーザは、ツマミ4の引き出しと押し込みを行うことで、停止スイッチ5をオン状態またはオフ状態に切り替えることができる。
【0056】
また、ツマミ4は、軸3に対して着脱することができ、ツマミ4を取り外した状態では、軸3を引き出せず、軸3にツマミ4を取り付けないと、軸3を引き出した状態に変えることができない。そのため、ツマミ4を特定の者が管理して、遠隔制御装置101に着脱することで、カギとして使用することができる。
【0057】
以上のように、停止スイッチ装置1では、ツマミ4に、停止スイッチの押しボタンの機能と、カギの機能と、を持たせることができる。したがって、本発明の停止スイッチ装置を用いることで、従来のように押しボタンスイッチとキースイッチを設ける必要がなく、部品点数と重量を削減できる。
【0058】
なお、ツマミ4を軸3に固定するときに、ツマミ4を時計回りに回転させるものとしたが、反時計回りに回転させるものしても良い。