(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6069446
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】導電回路付成形品の製造方法および導電回路付プリフォーム
(51)【国際特許分類】
B29C 49/22 20060101AFI20170123BHJP
G09F 3/04 20060101ALI20170123BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
B29C49/22
G09F3/04 Z
G09F3/02 F
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-189242(P2015-189242)
(22)【出願日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年9月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】日本写真印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 忠壮
(72)【発明者】
【氏名】西川 哲
(72)【発明者】
【氏名】中村 晃久
(72)【発明者】
【氏名】中川 英之
(72)【発明者】
【氏名】宮下 修平
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−525330(JP,A)
【文献】
特開2008−297331(JP,A)
【文献】
特表2010−524747(JP,A)
【文献】
特開2014−021824(JP,A)
【文献】
特開2009−048662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/22
G09F 3/02
G09F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォーム上に、延伸性を有するインキを用いて導電回路層を形成し、前記プリフォームをブロー成形して導電回路付成形品を得ることを特徴とする導電回路付成形品の製造方法。
【請求項2】
前記プリフォーム上に前記導電回路層を形成する工程は、
基体シート上に、前記インキを用いて形成された前記導電回路層を含む転写層を形成して転写シートを得る工程と、
前記プリフォーム上に前記転写シートを配置し、前記転写シートに熱と圧力を加えて前記プリフォームに前記転写層を転写し、前記基体シートを取り除く工程と
を含むものである請求項1に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項3】
前記基体シートと前記導電回路層との間に、絵柄層を形成する工程をさらに有するものである請求項2に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項4】
前記基体シートと前記絵柄層との間に、保護層を形成する工程をさらに有するものである請求項3に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項5】
前記プリフォーム上に前記導電回路層を形成する工程は、
前記プリフォーム上に、前記インキを用いて前記導電回路層を印刷する工程を含むものである請求項1に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項6】
前記導電回路層上に、絵柄層を形成する工程をさらに有するものである請求項5に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項7】
前記絵柄層上に、保護層を形成する工程をさらに有するものである請求項6に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項8】
前記導電回路層は、前記プリフォームの伸び率が40%以下の箇所に形成するものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項9】
前記インキは、銀、PEDOT、カーボンブラック、カーボンナノチューブのうちいずれか1つを含むものである請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項10】
前記導電回路層と導通するように、前記プリフォーム上に電子部品を装着する工程をさらに有するものである請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項11】
前記導電回路層と導通するように、前記導電回路付成形品に電子部品を装着する工程をさらに有するものである請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電回路付成形品の製造方法。
【請求項12】
ブロー成形によって導電回路付成形品を得るための導電回路付プリフォームであって、プリフォーム上には、延伸性を有するインキを用いて導電回路層が形成されており、前記インキは、導電性と延伸性を有する粒子と、前記粒子を前記インキ中に分散させるバインダー樹脂とを含み、前記粒子と前記バインダー樹脂との重量比率は20:80〜99:1である、導電回路付プリフォーム。
【請求項13】
前記導電回路層上に、絵柄層を有するものである請求項12に記載の導電回路付プリフォーム。
【請求項14】
前記絵柄層上に、保護層を有するものである請求項13に記載の導電回路付プリフォーム。
【請求項15】
前記粒子は、銀、PEDOT、カーボンブラック、カーボンナノチューブのうちいずれか1つである、請求項12〜14のいずれか一項に記載の導電回路付プリフォーム。
【請求項16】
前記導電回路層と導通するように、前記プリフォーム上に電子部品が装着されているものである請求項12〜15のいずれか一項に記載の導電回路付プリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電回路付成形品の製造方法および導電回路付プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流や在庫の管理などを目的として、外部のリーダーやライターを介してデータを非接触で送受信するICタグが、商品などのパッケージに付けられることが多くなっている。ここでICタグとは、フィルムなどに印刷されたアンテナ回路とICチップからなるものである。
【0003】
その一つの態様として、たとえば特許文献1には、2枚の熱可塑性樹脂フィルムを、ICタグを挟み込むようにして貼り合わせたICラベルと、ICラベルと一体化した成形品の製造方法が開示されている。その製造方法は以下の工程からなる。(1)ICラベルを金型内に固定した後、金型の上方から溶融したパリソンを金型内へ押し出し、型締めをする。(2)圧縮空気をパリソン内に供給し、パリソンを膨張させて金型に密着させ、容器状にするとともにICラベルと融着させ、金型を冷却して型開きする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−048016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術のようなICラベルには延伸性がないため、ICラベルを設ける箇所が平面や2次曲面に限られてしまい、3次曲面の箇所にICラベルを設けることが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ブロー成形をしても導電回路が3次曲面に追従した導電回路付成形品を、容易に得られる導電回路付成形品の製造方法と、そのような導電回路付成形品を得るために用いる導電回路付プリフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0008】
本発明の導電回路付成形品の製造方法は、プリフォーム上に、延伸性を有するインキを用いて導電回路層を形成し、プリフォームをブロー成形して導電回路付成形品を得ることを特徴とするものである。
【0009】
好ましい態様においては、プリフォーム上に導電回路層を形成する工程は、
基体シート上に、インキを用いて形成された導電回路層を含む転写層を形成して転写シートを得る工程と、
プリフォーム上に転写シートを配置し、転写シートに熱と圧力を加えてプリフォームに転写層を転写し、基体シートを取り除く工程と
を含むものである。
【0010】
好ましい態様においては、基体シートと導電回路層との間に、絵柄層を形成する工程をさらに有するものである。
【0011】
好ましい態様においては、基体シートと絵柄層との間に、保護層を形成する工程をさらに有するものである。
【0012】
好ましい態様においては、プリフォーム上に導電回路層を形成する工程は、
プリフォーム上に、インキを用いて導電回路層を印刷する工程を含むものである。
【0013】
好ましい態様においては、導電回路層上に、絵柄層を形成する工程をさらに有するものである。
【0014】
好ましい態様においては、絵柄層上に、保護層を形成する工程をさらに有するものである。
【0015】
これらの好ましい態様においては、導電回路層は、プリフォームの伸び率が40%以下の箇所に形成するものである。
【0016】
これらの好ましい態様においては、インキは、銀、PEDOT、カーボンブラック、カーボンナノチューブのうちいずれか1つを含むものである。
【0017】
これらの好ましい態様においては、導電回路層と導通するように、プリフォーム上に電子部品を装着する工程をさらに有するものである。
【0018】
これらの好ましい態様においては、導電回路層と導通するように、導電回路付成形品に電子部品を装着する工程をさらに有するものである。
【0019】
本発明の導電回路付プリフォームは、ブロー成形によって導電回路付成形品を得るためのプリフォームであって、プリフォーム上には、延伸性を有するインキを用いて導電回路層が形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
好ましい態様においては、導電回路層上に、絵柄層を有するものである。
【0021】
好ましい態様においては、絵柄層上に、保護層を有するものである。
【0022】
これらの好ましい態様においては、インキは、銀、PEDOT、カーボンブラック、カーボンナノチューブのうちいずれか1つを含むものである。
【0023】
これらの好ましい態様においては、導電回路層と導通するように、プリフォーム上に電子部品が装着されているものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の導電回路付成形品の製造方法は、プリフォーム上に、延伸性を有するインキを用いて導電回路層を形成し、プリフォームをブロー成形して導電回路付成形品を得るように構成した。したがって、本発明によれば、導電回路付成形品が3次曲面を有していても、導電回路が3次曲面に追従した導電回路付成形品を容易に得ることができる。
【0025】
本発明の導電回路付プリフォームは、ブロー成形によって導電回路付成形品を得るためのプリフォームであって、プリフォーム上には、延伸性を有するインキを用いて導電回路層が形成されているように構成した。したがって、本発明の導電回路付プリフォームは、導電回路付プリフォームをブロー成形して導電回路付成形品を製造する際に、導電回路付成形品が3次曲面を有していても、導電回路が3次曲面に追従できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の導電回路付成形品の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る導電回路付プリフォームの側面図である。
【
図3】本発明の導電回路付プリフォームの製造方法の一例を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る導電回路付プリフォームの断面図である。
【
図6】電子部品が装着されたプリフォームの斜視図である。
【
図7】電子部品が装着された転写シートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、導電回路付成形品の製造方法と、導電回路付成形品を得るために用いる導電回路付プリフォームについて、実施形態の一例を説明する。
【0028】
本発明の導電回路付成形品の製造方法は、プリフォーム上に、延伸性を有するインキを用いて導電回路層を形成し、プリフォームをブロー成形して導電回路付成形品を得ることを特徴とするものである。したがって、本発明の導電回路付成形品7は、次のような製造方法によって製造することができる(
図1(a)〜(d)参照)。
(1)導電回路層24を形成した導電回路付プリフォーム1を、ヒーター4で加熱して軟化する
(2)軟化した導電回路付プリフォーム1を金型5にセットし、延伸ロッド6で導電回路付プリフォーム1を延伸する
(3)延伸ロッド6から導電回路付プリフォーム1内に圧縮空気を供給し、導電回路付成形品7を得る
【0029】
ここで、導電回路付プリフォームは、ブロー成形によって導電回路付成形品を得るためのプリフォームであって、プリフォーム上には、延伸性を有するインキを用いて導電回路層が形成されていることを特徴とするものである(
図2参照)。
【0030】
プリフォーム11は、ブロー成形において用いられる予備成形体であり、主に樹脂で製造する。本発明のプリフォームの材質は特に限定されず、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンなどを用いることができる。プリフォーム11の製造方法は特に限定されず、射出成形やプレス成形など公知の方法を用いることができる。
【0031】
本発明で導電回路層24の形成に用いるインキは、導電性と延伸性とを有する材質を含むものである。そのような材質としては、銀、PEDOT(ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン))、カーボンブラック、カーボンナノチューブのうちいずれか1つを含むものとすることができる。PEDOTを用いる場合は、PEDOTが水や溶媒に難溶であるため、PSS(ポリスチレンスルホン酸)を添加することが好ましい。これらの材質は粒子としてインキに分散される。インキ中にはバインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂によって上記粒子がインキ中に分散されるとともに、バインダー樹脂に粒子が担持される。また、バインダー樹脂が含まれることで、インキが塗布面にしっかりと密着することができる。なお、インキは、硬化剤や溶剤その他添加剤を含んでもよい。
【0032】
バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エラストマー樹脂などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2つ以上を混ぜて使用してもよい。上記粒子とバインダー樹脂との重量比率は、20:80〜99:1が好ましく、より好ましくは60:40〜80:20である。粒子の重量比率が20未満であると、形成した導電回路層における導電率の低下や抵抗値の上昇などの不具合が生じる。一方、バインダー樹脂の重量比率が1未満であると、粒子が均一に分散されないため、導電率低下や抵抗値上昇などの不具合が生じる。また、インキ塗布面への密着力低下により、導電回路層24が形成されたプリフォームをブロー成形した際、回路の断線やプリフォームからの回路の剥離などの不具合も生じる。
【0033】
ヒーター4による加熱温度は、50℃〜150℃にするとよく、金型5は100℃〜250℃に調温するとよい(
図1(a)、
図1(b)参照)。
【0034】
導電回路層24は、ブロー成形した際に、プリフォーム11の伸び率が40%以下の箇所に形成することが好ましい。伸び率が40%を超える箇所に形成すると、ブロー成形による変形に導電回路層24が追随できず、導電回路の断線などの不具合が生じる。プリフォームの伸び率が40%以下の箇所としては、たとえば、ブロー成形品がボトルの場合は、ボトルの口部、底部、くびれ部に相当する箇所である。
【0035】
上記の導電回路付成形品7は、導電回路層24が延伸性を有するインキを用いて形成されているため、成形品が3次曲面を有するものであっても、導電回路層24が3次曲面に追随できる。また、導電回路層24は導電回路付プリフォーム1の伸び率が40%以下の箇所に形成されているため、ブロー成形しても導電回路層24が断線することがない。
【0036】
なお、本実施形態では延伸ロッド6を使用しているが、圧縮空気の供給のみによってブロー成形することもできる。
【0037】
上述したインキを用いて、プリフォーム11上に導電回路層24を形成する工程には、次のような工程を含むことができる(
図3、
図4参照)。
(1)基体シート21上に、保護層22を形成する工程
(2)保護層22の上に、絵柄層23を形成する工程
(3)絵柄層23の上に、上述のインキを用いて導電回路層24を形成する工程
(4)導電回路層24の上に、接着層25を形成して転写シート2を得る工程
(5)プリフォーム11上に転写シート2を配置し、転写シート2に熱と圧力を加えてプリフォーム11に転写層20を転写し、基体シート21を取り除く工程
【0038】
基体シート21の材質は特に限定されるものではなく、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩ビ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂などの熱可塑性樹脂およびこれらの積層品を挙げることができる。基体シート21の厚みは、15μm〜600μmとすることができる。なお、基体シート21上には、基体シートと保護層との離型性を高めるために、離型層を形成してもよい。
【0039】
保護層22は、転写層20をプリフォーム上に転写し、基体シート21を取り除いた後、導電回路付プリフォームの最表面となる層である。保護層22を形成することによって、絵柄層23や導電回路層24に耐水性や耐久性を付与できる。保護層22の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などの他、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン―酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。保護層22に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いるとよい。保護層22の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法を用いるとよい。
【0040】
絵柄層23は、保護層22上に全面的に形成してもよく、部分的に形成してもよい。絵柄層23の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。絵柄層23の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法を用いるとよい。
【0041】
導電回路層24は、上述した導電性と延伸性を有するインキを用いて形成する。形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法を用いるとよい。
【0042】
接着層25はプリフォーム11上に上記の各層を接着するために形成する。接着層25としては、プリフォームの材質に適した感熱性または感圧性の樹脂を適宜選択して用いるとよい。たとえば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン‐酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体系樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂などを挙げることができる。接着層25の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法を用いるとよい。
【0043】
なお、上記の各層を形成する際の乾燥温度は、50℃〜200℃にすることができる。
【0044】
上記の転写シート2を、プリフォーム11上に配置する(
図3参照)。加熱したローラー3とプリフォーム11を、互いに逆方向に回転させながら、ローラー3で転写シート2をプリフォーム11に押し付ける。転写時の温度は100℃〜250℃、転写時の圧力は0.1MPa〜20MPaとするとよい。このときの熱と圧力によって、転写シート2の転写層20をプリフォーム11の円周上に転写することができる。転写後、基体シート21を取り除き、導電回路付プリフォーム1を得ることができる。なお、本実施形態ではローラー3によって転写する方法を示したが、これに限定されるものではなく、たとえば、ローラーに代えて平板でもよい。この場合、加熱した平板で転写シート2をプリフォーム11に押し付けながら、プリフォーム11を回転させて図の左右いずれかの方向に移動する。このときの熱と圧力によって、転写層20をプリフォーム11上へ転写することができる。
【0045】
導電性と延伸性を有するインキを用いて、プリフォーム11上に導電回路層24を形成する工程には、次のような工程を含むことができる(
図5参照)。
(1)プリフォーム11上に、上述のインキを用いて導電回路層24を形成する工程
(2)導電回路層24上に、絵柄層23を形成する工程
(3)絵柄層23上に、保護層22を形成する工程
なお、プリフォーム11と導電回路層24との密着性を上げるため、プリフォーム11上に表面処理を施してもよい。そのような表面処理方法としては、ガスフレーム法、コロナ放電処理などが挙げられる。プリフォーム11上の各層は、転写法で説明したような材質や方法で形成することができる。
【0046】
導電回路層24を含む各層を、プリフォーム11に転写し、または印刷することによって、プリフォーム11上に容易に導電回路層24を設置することができる。
【0047】
本発明の導電回路付成形品の製造方法は、導電回路層24と導通するように、プリフォーム11上に電子部品を装着する工程をさらに有することができる。電子部品としては、たとえば、ICチップが挙げられる。この場合、プリフォーム11上に、ICチップ12と導通する形状にパターニングしたアンテナ13を、上述のインキを用いて印刷法で形成する(
図6参照)。アンテナ13は、リーダー/ライターから発生している磁束がアンテナ13を通過したときに生じる電流が流れる部分である。この電流がアンテナ13からICチップ12に供給されてICチップ12が起動し、リーダー/ライターとの間で情報のやり取りができるようになる。次に、アンテナ13とICチップ12の回路とを、導電性接着剤などによって電気的に導通接続する。絵柄層や保護層を順次形成して導電回路付プリフォーム1を得る。この導電回路付プリフォーム1をブロー成形して、導電回路付成形品7を得ることができる。
【0048】
なお、プリフォーム11上に導電回路層24を含む各層を、印刷によって形成する場合においては、耐熱性のあるICチップ12を選定したり、絵柄層23や保護層22の厚みや材質を適切に選定したりすることによって、各層を乾燥する際の熱からICチップ12を保護することができる。
【0049】
電子部品の装着は、導電回路層24を含む各層をプリフォーム11上に転写する場合においても実施できる(
図7参照)。この場合は、基体シート21上に保護層や絵柄層を形成し、さらにICチップ12と導通する形状にパターニングしたアンテナ13(導電回路層)を、上述のインキを用いて印刷する。次に、アンテナ13とICチップ12の回路とを、導電性接着剤などによって電気的に導通接続して、転写シート2を得る。接着層25は、得られた転写シート2に形成してもよく、プリフォーム11に形成してもよい。転写シート2をプリフォーム11に転写し、導電回路付プリフォーム1をブロー成形すると、導電回路付成形品を得ることができる。または、ICチップ12をプリフォーム11上に装着して、プリフォーム11に
図4のような転写シート2を転写することで導電回路付プリフォーム1を得ることもできる。この方法において、ICチップ12の回路と接する接着層25上には導電性接着剤を塗布するとよい。このようにすると、転写時の熱と圧力によって導電性接着剤が融着し、ICチップ12の回路とアンテナ13とを導通接続することができる。
【0050】
なお、耐熱性や耐久性のあるICチップ12を選定したり、基体シート21、転写層20の各層の厚みや材質を適切に選定したりすることによって、転写時の熱や圧力からICチップ12を保護することができる。
【0051】
本発明の導電回路付成形品の製造方法は、導電回路層24と導通するように、導電回路付成形品に電子部品を装着する工程をさらに有することができる。電子部品としては、たとえばICチップが挙げられる。この場合、導電回路層24は、
図6または
図7に示すようなコイル状のアンテナ13として形成する。導電回路付成形品7に保護層22や絵柄層23が形成されていない場合は、たとえばアンテナ13上に塗布した導電性接着剤を介してICチップ12を装着することで、アンテナ13とICチップ12を導通接続することができる。導電回路付成形品7に保護層22や絵柄層23が形成されている場合は、たとえば、次のような方法でアンテナ13とICチップ12を導通接続することができる。(1)保護層22と絵柄層23を貫通してアンテナ13に到達する穴を設け、(2)穴に導電ペーストを充填し、(3)導電ペースト上に塗布した導電性接着剤を介してICチップ12を装着する。
【0052】
なお、電子部品としてはICチップの他に、ディスプレイモジュール、タッチパネル、太陽電池、各種センサー(ガスセンサー、熱センサー、圧力センサー)などを利用することもできる。
【0053】
以上のようにして、本発明の導電回路付成形品と導電回路付プリフォームを得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 :導電回路付プリフォーム
11 :プリフォーム
12 :ICチップ
13 :アンテナ
2 :転写シート
20 :転写層
21 :基体シート
22 :保護層
23 :絵柄層
24 :導電回路層
25 :接着層
3 :ローラー
4 :ヒーター
5 :金型
6 :延伸ロッド
7 :導電回路付成形品
【要約】
【課題】ブロー成形をしても導電回路が3次曲面に追従した導電回路付成形品を、容易に得られる導電回路付成形品の製造方法と、そのような導電回路付成形品を得るために用いる導電回路付プリフォームを提供する。
【解決手段】本発明の導電回路付成形品の製造方法は、プリフォーム上に、延伸性を有するインキを用いて導電回路層を形成し、プリフォームをブロー成形して導電回路付成形品を得るように構成した。また、本発明の導電回路付プリフォームは、ブロー成形によって導電回路付成形品を得るためのプリフォームであって、プリフォーム上には、延伸性を有するインキを用いて導電回路層が形成されているように構成した。
【選択図】
図1