(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6069453
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】吊りボルト用振れ止め金具
(51)【国際特許分類】
F16M 13/02 20060101AFI20170123BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20170123BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20170123BHJP
F16B 45/00 20060101ALI20170123BHJP
F24F 13/32 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
F16M13/02 B
F16B7/04 301U
F16B1/00 A
F16B45/00 H
F24F1/00 426
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-198138(P2015-198138)
(22)【出願日】2015年10月6日
【審査請求日】2015年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】株式会社ブレスト工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡
【審査官】
沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5466274(JP,B2)
【文献】
特許第5701426(JP,B1)
【文献】
特開2015−124856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 1/00−13/08
F16B 1/00− 1/04
F16B 7/00− 7/22
F16B 45/00−47/00
F24F 1/00− 1/04
F24F 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸吊物を吊下げる吊りボルトの振れ止めをするように構成され、平面直角になるように屈曲された帯板状の外側挟着体と該外側挟着体の内側に重合される内側挟着体との間に吊りボルトを挟んだ状態で吊りボルトの側面に装着する挟着体と、
吊りボルトを挟んだ外側挟着体と内側挟着体との左右両端部を貫通して挟着体を固定する一対の連結ボルトと、
挟着体の左右両端部に上下揺動自在に連結せしめる長ボルトを挟着体に固定する一対の斜め支持体とを備えた吊りボルト用振れ止め金具において、
斜め支持体は、連結ボルトを挿通する貫通孔が開穿され外側挟着体の外側に重合するように設けられた重合板と、
該重合板の一端から外側挟着体がわに屈曲され長ボルトの長手側面を保持するように設けられた保持片と、
重合板の他端がわから外側挟着体がわに屈曲され外側挟着体に圧着する圧着片とが設けられ、
斜め支持体と挟着体とを重ねて連結ボルトにて連結することで該連結ボルトを中心に長ボルトの角度を調整自在にすると共に、該長ボルトを斜め支持体で挟着体に圧着固定するように構成したことを特徴とする吊りボルト用振れ止め金具。
【請求項2】
前記挟着体は、前記外側挟着体と前記内側挟着体とが連結部により連結され、該挟着体の連結部がわに予め片側の前記斜め支持体を前記連結ボルトで装着するように構成した請求項1記載の吊りボルト用振れ止め金具。
【請求項3】
前記斜め支持体において、前記重合板の前記長ボルト側面に当接する部位に、長ボルトのネジ山に係合する係合突起を突設した請求項1又は2記載の吊りボルト用振れ止め金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルトの振れ止めを極めて合理的且つ安全に行うことができる吊りボルト用振れ止め金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、吊りボルトを使用して物品を懸吊した場合、地震等によって懸吊物が揺れないように、吊りボルトに振れ止め金具を装着している。例えば、天井設置用の空調機器のようなボックス状の懸吊物を4本の吊りボルトで吊下げる場合に、挟着体と斜め支持体とで構成された振れ止め金具が使用されている。この振れ止め金具では、吊りボルトに挟着体を挟み付けて固定すると共に、この挟着体に斜め支持体を介して吊りボルト相互に長ボルトを交差状に連結するものである。
【0003】
従来の振れ止め金具は、長ボルトの連結端部にそれぞれ1個の挟着体が連結されていたので、4本の吊りボルトで吊下げる懸吊物等では振れ止め金具の部品点数が極めて多くなっており部品が落下する虞も多い。しかも、このような作業を天井等の高所で行っているので、作業上の危険性が極めて高いものであった。このような危険な作業を安全にするため、当出願人が先に提案した振れ止め金具が特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0004】
すなわち、これらの振れ止め金具は、吊りボルトに挟着する挟着金具と長ボルトを連結する斜め支持体とを一体化することで、振れ止め金具の部品点数を極めて少なくするように構成したもので、高所での取付け作業を合理的、且つ安全に行うことができるようになっている。しかも、これらの振れ止め金具の有効性は、特に地震対策製品として優秀であることが公的に認められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5466274号公報
【特許文献2】特許第5701426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1及び特許文献2に記載の振れ止め金具においても、吊りボルトに挟着金具をネジ止めする作業と、斜め支持体に長ボルトを連結する作業とが個別に行われている。そのため、例えばボックス状の懸吊物を4本の吊りボルトで吊下げる場合に、1本の吊りボルトに対して2本の長ボルトを連結する作業では、合計4箇所のネジ止め作業が必要になる。したがって、懸吊物を吊下げる4本の吊りボルトに振れ止めを行う場合、上下の連結位置を合計すると32箇所ものネジ止め作業が必要になっていた。
【0007】
しかも、斜め支持体に長ボルトを連結する場合、長ボルトの端部に固定ナットを装着して長ボルトの連結位置を調整しているので、この固定ナットを締め付け過ぎるなど、長ボルトの連結位置調整が適正でなければ、垂直に支持する吊りボルトが傾斜してしまう虞もあった。更に、長ボルトの端部に固定ナットを装着する作業自体に多くの手間を要する上に、端部に装着する固定ナットの位置に合わせて予め長ボルトを切断する必要もあった。このような様々な作業が長ボルトの固定作業を複雑化し、迅速な施工の妨げになっていた。
【0008】
そこで本発明は、上述の特許文献1及び特許文献2に記載されている振れ止め金具の作業性を更に改良すべく創出されたもので、例えば空調機器等のボックス状の懸吊物を吊りボルトで吊下げる際に、吊りボルトの振れ止めを極めて合理的且つ安全に行うことが可能な吊りボルト用振れ止め金具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、懸吊物Rを吊下げる吊りボルトPの振れ止めをするように構成され、平面直角になるように屈曲された帯板状の外側挟着体1Aと該外側挟着体1Aの内側に重合される内側挟着体1Bとの間に吊りボルトPを挟んだ状態で吊りボルトPの側面に装着する挟着体1と、吊りボルトPを挟んだ外側挟着体1Aと内側挟着体1Bとの左右両端部を貫通して挟着体を固定する一対の連結ボルト2と、挟着体1の左右両端部に上下揺動自在に連結せしめる長ボルトQを挟着体1に固定する一対の斜め支持体3とを備えた吊りボルト用振れ止め金具において、斜め支持体3は、連結ボルト2を挿通する貫通孔3Aaが開穿され外側挟着体1Aの外側に重合するように設けられた重合板3Aと、該重合板3Aの一端から外側挟着体1Aがわに屈曲され長ボルトQの長手側面を保持するように設けられた保持片3Bと、重合板3Aの他端がわから外側挟着体1Aがわに屈曲され外側挟着体1Aに圧着する圧着片3Cとが設けられ、斜め支持体3と挟着体1とを重ねて連結ボルト2にて連結することで該連結ボルト2を中心に長ボルトQの角度を調整自在にすると共に、該長ボルトQを斜め支持体3で挟着体1に圧着固定するように構成したことにある。
【0010】
第2の手段において、前記挟着体1は、前記外側挟着体1Aと前記内側挟着体1Bとが連結部1Cにより連結され、該挟着体1の連結部1Cがわに予め片側の前記斜め支持体3を前記連結ボルト2で装着するように構成している。
【0011】
第3の手段は、前記斜め支持体3において、前記重合板3Aの前記長ボルトQ側面に当接する部位に、長ボルトQのネジ山に係合する係合突起3Abを突設したことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1のごとく、斜め支持体3と挟着体1とを重ねて連結ボルト2にて連結することで該連結ボルト2を中心に長ボルトQの角度を調整自在にすると共に、該長ボルトQを斜め支持体3で挟着体1に圧着固定するように構成したことにより、連結ボルト2のみの締付作業で長ボルトQの角度を調整しながら吊りボルトPに固定することができる。
【0013】
この結果、従来では、懸吊物の四隅を吊下げる4本の吊りボルトに夫々2本の長ボルトQを連結する場合、合計32箇所ものネジ止め作業が必要になっていたのに対し、本発明では僅か16箇所のネジ止め作業で完了する。したがって、吊りボルトの振れ止めを更に合理的且つ安全に行うことが可能になった。
【0014】
また、従来のように、長ボルトの端部に固定ナットを装着して長ボルトの連結位置を調整する必要がなく、長ボルトQの側面に沿った斜め支持体3を締め付けるだけの簡単な作業で長ボルトQを最適な位置に固定することができる。更に、現場において長ボルトQを切断する際に、端部に固定ナットをネジ止めする必要がないので、長さの精度は要求されず施工の迅速化に貢献できるものである。
【0015】
請求項2のように、挟着体1は、外側挟着体1Aと内側挟着体1Bとが連結部1Cにより連結され、該連結部1Cがわの挟着体1に予め片側の斜め支持体3を連結ボルト2で装着するように構成したことで、ネジ止め作業を更に簡略化し、高所での作業を安全にすることができる。
【0016】
請求項3のごとく、斜め支持体3において、前記重合板3Aの前記長ボルトQ側面に当接する部位に、長ボルトQのネジ山に係合する係合突起3Abを突設したことにより、斜め支持体3と長ボルトQとの固定強度を高めることができ、安全な使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】本発明の挟着体と斜め支持体とを連結した状態を示す平面図である。
【
図4】本発明の挟着体の一実施例を示す平断面図である。
【
図5】本発明の重合板の係合突起を示す要部拡大断面図である。
【
図6】(イ)乃至(ハ)は本発明の斜め支持体の他の実施例を示す斜視図である。
【
図8】(イ)乃至(ハ)は本発明の装着手順を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明振れ止め金具は、例えば空調機等のボックス状の懸吊物Rの四隅を吊下げる4本の吊りボルトPに対して長ボルトQをブレース状に装着する振れ止め金具として使用する(
図7参照)。
【0019】
本発明の主な構成として、挟着体1、連結ボルト2、斜め支持体3を備えている(
図1参照)。挟着体1は、吊りボルトPの側面を挟着する一対の板状金具であり、外側挟着体1Aと内側挟着体1Bとで構成されている。これら外側挟着体1A及び内側挟着体1Bは、それぞれ吊りボルトPに当接する長手中央から平面略直角になるように屈曲されている(
図3参照)。
【0020】
そして、1本の吊りボルトPに挟着体1を取り付け、挟着体1の左右両端部がわに斜め支持体3を重合し、この斜め支持体3に計2本の長ボルトQを傾斜した状態で連結する(
図1参照)。外側挟着体1Aと内側挟着体1Bとの左右両端部には、それぞれ貫通孔1Aa、1Baが開穿されている(
図4参照)。これらの貫通孔1Aa、1Baに連結ボルト2を貫通させて固定する。
【0021】
図示の挟着体1は、前記外側挟着体1Aと前記内側挟着体1Bとが連結部1Cにより連結されている(
図4参照)。更に、連結作業時において、この連結部1Cがわの挟着体1に、予め斜め支持体3を装着しておくことで作業効率を高めることができる(
図8(イ)参照)。
【0022】
また、外側挟着体1Aには、吊りボルトPに接触する部分に挟着突起1Abを設けている(
図4参照)。この挟着突起1Abは、吊りボルトPのねじ山に係止する突起で、外側挟着体1Aの固定力を高めている。
【0023】
連結ボルト2は、吊りボルトPを挟んだ外側挟着体1Aと内側挟着体1Bとの左右両端部を貫通して挟着体を固定する一対のネジ状部材である(
図3参照)。図示例では、挟着体1の内側挟着体1B側から外側挟着体1A及び斜め支持体3を貫通してネジ止めしている。連結ボルト2のネジ止め手段は、
図3に示すごとく、斜め支持体3がわに配置する連結ナット4や、斜め支持体3に設けるブラインドナット(図示せず)等に連結ボルト2をネジ止めする他、斜め支持体3の貫通孔3Aaにネジ山を形成し、斜め支持体3に直接ネジ止めすることも可能である(図示せず)。
【0024】
斜め支持体3は、挟着体1の両端部に重合して夫々長ボルトQを固定するように構成した圧着部材である(
図1参照)。この斜め支持体3は、重合板3A、保持片3B、圧着片3Cを備えている。
【0025】
重合板3Aは、連結ボルト2を挿通する貫通孔3Aaが開穿され外側挟着体1Aの外側に重合するように設けられた板状を成す(
図1、
図2参照)。図示の重合板3Aは平面略三角形状を成しているが、この形状は任意に変更することができる。例えば
図6に示す如く、矩形状(同図(イ)参照)や半円形状(同図(ロ)参照)、円形状(同図(ハ)参照)などのごとくである。
【0026】
また、重合板3Aの長ボルトQ側面に当接する部位に係合突起3Abを突設している(
図2参照)。この係合突起3Abは、長ボルトQのネジ山に係合する突起で、重合板3Aと外側挟着体1Aとの間に挟着した長ボルトQを強固に固定するものである(
図5参照)。
【0027】
保持片3Bは、重合板3Aの一端から外側挟着体1Aがわに屈曲された部位で、長ボルトQの長手側面を保持するように設けられている(
図1参照)。図示の保持片3Bは、重合板3Aの端部を直角に屈曲した帯状であるが、この保持片3Bは重合板3Aの形状に合わせて任意の形状に設けることができる(
図6参照)。したがって、保持片3Bが長ボルトQの長手側面に当接する部位は、保持片3Bが帯状の場合は面状になるが(
図6(イ)、(ロ)参照)、この他、保持片3Bを円弧形状に形成した場合のように点状で当接させても良い(同図(ハ)参照)。
【0028】
圧着片3Cは、重合板3Aの他端がわから外側挟着体1Aがわに屈曲された部位で、外側挟着体1Aに当接して圧着する部位となる(
図1参照)。この圧着片3Cも前述の保持片3Bと同様に重合板3Aの形状に合わせて形成する(
図6参照)。圧着片3Cが外側挟着体1Aに当接する部位は、点状や線状、あるいは面状でも良い。
【0029】
本発明では、斜め支持体3と挟着体1とを重ねて連結ボルト2にて連結することで該連結ボルト2を中心に長ボルトQの角度を調整自在にする。またこの調整と共に、長ボルトQを斜め支持体3で挟着体1に圧着固定する構成である。
【0030】
長ボルトQを連結する装着手順を
図8に示している。まず、同図(イ)の如く、挟着体1を吊りボルトPの所定位置に固定する。このとき、挟着体1の片側に斜め支持体3を装着した状態で挟着体1を吊りボルトPに仮止めしておくと、更に作業を簡略化することができる。次に、同図(ロ)の如く、連結する長ボルトQの角度に合わせて一方の斜め支持体3の圧着片3Cの角度を調整し、圧着片3Cの内側に長ボルトQを係止する。そして、そのまま連結ボルト2を締め付けることで、一方の長ボルトQが挟着体1に固定される。最後に同図(ハ)のごとく、他方の長ボルトQも同様の手順で固定する。
【0031】
このように、本発明では、1本の連結ボルト2で1本の長ボルトQをネジ止めする作業で、長ボルトQの角度調整作業と固定作業とを同時に行うように構成したものである。
【0032】
尚、本発明振れ止め金具では、例えば空調機等のボックス状の懸吊物Rを懸吊する吊りボルトP用の振れ止め金具として説明しているが、吊りボルトPで懸吊する懸吊物Rはこの例に限られるものではない。また、本発明の構成は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由である。
【符号の説明】
【0033】
P 吊りボルト
Q 長ボルト
R 懸吊物
1 挟着体
1A 外側挟着体
1Aa 貫通孔
1Ab 挟着突起
1B 内側挟着体
1Ba 貫通孔
1C 連結部
2 連結ボルト
3 斜め支持体
3A 重合板
3Aa 貫通孔
3Ab 係合突起
3B 保持片
3C 圧着片
4 連結ナット
【要約】
【課題】吊りボルトを合理的且つ安全に振れ止めすることができる吊りボルト用振れ止め金具を提供する。
【解決手段】外側挟着体1Aの外側に重合するように設けられた重合板3Aを設ける。重合板3Aから屈曲され長ボルトQの長手側面を保持する保持片3Bを設ける。重合板3Aから屈曲され外側挟着体1Aに圧着する圧着片3Cを設ける。斜め支持体3と挟着体1とを重ねて連結ボルト2にて連結する。連結ボルト2を中心に長ボルトQの角度を調整自在にする。連結ボルト2の締付で長ボルトQを挟着体1に圧着固定する。
【選択図】
図1