(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0016]先ず、当然のことながら、このような実際の態様を開発するにあたって、実施毎に変わり得る、システム関連や業務関連の制約を順守すること等、数多くの実行に特有な決断を行って開発者らの特定の目標を達成していく必要がある。更に、当業者には明らかなように、本明細書に開示の方法は、引用又は具体的に言及された構成部分以外のものを含んでもよい。
【0016】
[0017]発明の概要及び詳細な説明においては、文脈で特に明記されていない限り、各数値は、(明確な修飾が既になされていない場合には)一旦は「約」という用語で修飾して読み取った後、その修飾を外して再度読み取るべきである。また、発明の概要及び詳細な説明においては、当然のことながら、有用な濃度範囲、適切な濃度範囲等と記載されている場合には、その範囲内(終点を含む)のあらゆる濃度が記載されていると考えるべきである。例えば、「1〜10」の範囲の場合には、約1と約10との間の連続体に沿ったありとあらゆる可能な数を示すものとして理解すべきである。従って、その範囲内で所定のデータ点がごくわずかにしか示されていない場合やデータ点が明確に特定されていない場合であっても、当然のことながら、発明者らは、その範囲内のありとあらゆるデータ点が特定されているものとして考慮すべきであることを理解しており、発明者らは、範囲全体及びその範囲内の全ての点に関する知見を有している。
【0017】
[0018]特に明記しない限り、本明細書全体(特許請求の範囲を含む)を通して、次の用語は以下に記された意味を有する。
[0019]本明細書及び特許請求の範囲で用いる「(ある値や場所の)近傍」とは「(その値や場所)自体」を含む。「及び/又は」という用語は、包含的な「及び」の場合と排他的な「又は」の場合の両方を意味するが、本明細書では簡潔にするために用いている。例えば、酢酸及び/又は酢酸メチルを含む混合物は、酢酸のみを含んでもよく、酢酸メチルのみを含んでもよく、酢酸と酢酸メチルの両方を含んでもよい。
【0018】
[0020]特に明記しない限り、全ての割合は、特定の流れ、又はそこに存在する組成の全重量に対する重量%(wt%)で表す。特に明記しない限り、室温は25℃であり、大気圧は101.325kPaである。
【0019】
[0021]本明細書では、
酢酸を「AcOH」と略記し、
アセトアルデヒドを「AcH」と略記し、
酢酸メチルを「MeAc」と略記し、
メタノールを「MeOH」と略記し、
ヨウ化メチルを「MeI」と略記し、
ヨウ化水素を「HI」と略記し、
一酸化炭素を「CO」と略記し、
ジメチルエーテルを「DME」と略記することがある。
【0020】
[0022]HIは、ヨウ化水素分子、又は極性媒体(通常は、少なくとも多少の水を含む媒体)中で少なくとも一部イオン化する際に解離するヨウ化水素酸を意味する。特に明記しない限り、この2つは区別しないで用いられる。特に明記しない限り、HI濃度は、電位差滴定終点を用いた酸−塩基滴定によって求める。特にHI濃度は、標準酢酸リチウム溶液を用いた電位差滴定終点までの滴定によって求める。当然のことながら、本明細書では、HIの濃度は、腐食金属や他の非H
+カチオンの測定値に伴うと思われるヨウ化物の濃度を試料中に存在する全ヨウ化物から差し引いて求めるものではない。
【0021】
[0023]当然のことながら、HI濃度はヨウ化物イオン濃度を意味するものではない。HI濃度は、具体的には、電位差滴定によって求めたHI濃度を意味する。
[0024]上述の減算法は、全ての非H
+カチオン(例えば、FeやNi、Cr、Moのカチオン)がヨウ化物アニオンとのみ結合することを推定しているため、比較的低いHI濃度(即ち、約5重量%未満)を求めるためには、信頼性を欠く不正確な方法である。実際には、この方法における金属カチオンの大部分が酢酸アニオンと結合し得る。更に、このようなカチオンの多くは多価の状態であり、そのため、これらの金属に結合し得るヨウ化物アニオンの量に関する仮定についての信頼性がますます低くなる。結局のところ、HI濃度の直接の指標が得られる簡単な滴定ができることを考慮すれば、この方法で実際のHI濃度を求めるのは信頼性が低い。
【0022】
[0025]本明細書では、蒸留塔の「オーバーヘッド」又は「蒸留物」とは、蒸留塔の頂部又はその近傍(例えば、頂部付近)で留出する低沸点の凝縮性留分の少なくとも1つ、及び/又はその流や組成の凝縮した形態を意味する。最終的には全ての留分が凝縮性であることは明らかであるが、当業者であれば容易に理解できるように、本明細書では、凝縮性留分は本方法における条件下で凝縮可能である。非凝縮性留分の例としては、窒素や水素等が挙げられる。同様に、オーバーヘッド流は、蒸留塔の最上部出口のすぐ下から取り出すことができるが、当業者であれば容易に理解できるように、例えば、最も沸点が低い留分は非凝縮性流又は微少な流れである。
【0023】
[0026]蒸留塔の「ボトム」又は「残渣」とは、蒸留塔の底部又はその近傍で出てくる最も沸点が高い留分の1種以上を意味すると共に、本明細書では、蒸留塔の底部貯留域から流出するものも意味する。当然のことながら、残渣は、蒸留塔の実際の底部出口のすぐ上から取り出すことができるが、当業者であれば容易に理解できるように、例えば、蒸留塔で生成した最も底部の留分は、塩、利用できないタール、固形廃棄物、又は微少な流れである。
【0024】
[0027]本明細書では、蒸留塔は蒸留域と底部貯留域を有する。蒸留域は、底部貯留域の上方(即ち、底部貯留域と塔頂部との間)にある全てのものを含む。本明細書では、底部貯留域とは、高沸点成分の液体貯留層が存在する蒸留塔の下部(例えば、蒸留塔の底部)を意味し、そこから底部流や残渣流が流れて蒸留塔外に排出される。底部貯留域はリボイラや制御装置等を含む。
【0025】
[0028]当然のことながら、蒸留塔の内部構成部分に関連する「通路」や「流路」、「流導管」等の用語は区別しないで用いられて孔や管、溝、スリット、ドレーン等を意味し、これらは、内部構成部分の一方から他方へ液体及び/又は蒸気が移動する経路中に配置される、及び/又はその経路を形成する。蒸留塔の液体分配器等の構造体内に配置される通路の例としては、ドレーン孔やドレーン管、ドレーンスリット等が挙げられるが、これらによって液体が構造体の一方から他方へと流れる。平均滞留時間は、蒸留域内の所定相の全液体容積ホールドアップの総量を、この蒸留域を通る相の平均流量で割ったものである。所定相のホールドアップ容積は、収集器や分配器等を含む蒸留塔の様々な内部構成部分中に含有される液体容積、並びに、トレイ上に、下降管内に、及び/又は構造化された床部又はランダムに充填された床部内に含有される液体も包含し得る。
【0026】
蒸気生成物流
[0029]メタノールのカルボニル化による酢酸の製造は、反応器で反応媒体を形成することと、フラッシュ容器でこの反応媒体をフラッシュさせて液体リサイクル流と蒸気生成物流を形成することを含む。その後、蒸気生成物流を1基以上の蒸留塔で蒸留して副生成物を除去し、酢酸生成物を得る。本発明は、フラッシュ工程で形成される蒸気生成物流中のヨウ化メチル濃度を特定の値に維持することにより副生成物の生成を抑制しつつ、酢酸を製造する方法を提供する。ヨウ化メチルはカルボニル化触媒に有用な促進剤である。しかしながら、分離時に、ヨウ化メチルは反応媒体から分離される酢酸とともに濃縮する傾向がある。従って、逃亡的(fugitive)放出による多大な損失を回避し、かつ酢酸生成物中のヨウ化物不純物を低減するために、ヨウ化メチルを酢酸から分離して反応媒体に戻す必要がある。
【0027】
[0030]本発明によれば、ヨウ化メチル濃度を蒸気生成物中で十分な水準に維持して製造率を高めつつ、蒸気生成物流から回収しなければならないヨウ化メチル量を低減させる。ヨウ化メチル量を低減させると、分離しなければならないヨウ化メチルの量が低減するため、蒸留塔の障害が除去されるという利点がある。蒸留塔の障害が除かれると、製造能力が高まり運転コストが削減されるという利点がある。蒸気生成物中でヨウ化メチルを所望のレベルに維持することにより、下流の蒸留塔のヨウ化水素濃度が低レベルに維持され、その結果、蒸留塔の腐食が最小限に抑えられるという利点も得られる。
【0028】
[0031]一態様では、本発明は、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法に関する。
【0029】
[0032]他の態様では、本発明は、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び0.1〜6重量%のヨウ化メチルを含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法である。
【0030】
[0033]更に他の態様では、本発明は、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む混合物を蒸留すること、及びオーバーヘッド流を凝縮させて、分離した液相を形成することを含む、酢酸を製造する方法である。
【0031】
[0034]米国特許第7,820,855号に示すように、反応器からフラッシュ容器への質量流量に基づくヨウ化メチル濃度が低下するにつれて、製造率も低下する。本発明では、米国特許第7,820,855号に記載されたような質量流量の低下を招くことなく、高い製造率を維持することができる。ヨウ化メチル濃度が24重量%未満であると、製造率が低下し、望ましくない。一方、蒸気生成物流のヨウ化メチル濃度が36重量%またはそれを超える量であると、ヨウ化メチルを除去するのに必要な蒸留塔への負荷が増加し、製造能力に悪影響を及ぼす。フラッシュ容器を用いてヨウ化メチルを蒸気生成物流から排除することはできないため、蒸留塔によってヨウ化メチルを回収する必要がある。蒸気生成物中のヨウ化メチル濃度を24重量%から36重量%未満の範囲に維持することは、ヨウ化メチルの加水分解によるヨウ化水素の生成を制御するのに重要である。ヨウ化水素は、公知の腐食性化合物であるが、蒸気生成物流中のヨウ化メチル濃度が36重量%超になると濃縮することがあり、望ましくない。従って、蒸気生成物流中のヨウ化メチルが24重量%から36重量%未満であると、ヨウ化水素を所望に制御することができる。
【0032】
[0035]オンライン測定技術を用いて蒸気生成物をサンプリングし、ヨウ化メチル含有量を測定し、リアルタイムあるいは準リアルタイムでフィードバックを行ってもよい。オンラインでの蒸気生成物流のサンプリングは、液体反応媒体をサンプリングするよりも容易である。また、蒸気生成物中のヨウ化メチル濃度は、反応器中のヨウ化メチル濃度と相関し、また間接的に反応器中のヨウ化メチル濃度を示している。蒸気生成物流中のヨウ化メチル濃度を一定に維持する能力は、ヨウ化メチルを反応器に添加する計画を立てるのに有益である。例えば、商業的な方法では、逃亡的放出や分離系での各種排気流の使用によって少量のヨウ化メチルが失われる。蒸気生成物中のヨウ化メチル濃度が低下した場合、更にヨウ化メチルを反応器に添加してもよい。逆にヨウ化メチル濃度が高すぎる場合、軽質分留塔からの重質液相の一部を系から除去してもよい。
【0033】
[0036]蒸気生成物流は、ヨウ化メチルに加えて、酢酸、酢酸メチル及び水も含む。ヨウ化水素、アセトアルデヒド、プロピオン酸等の副生成物も蒸気生成物流中に存在することがある。反応物質、即ち、メタノールと一酸化炭素は、消費されなかった場合には、蒸気生成物流中から回収してもよい。一態様では、蒸気生成物流は、蒸気生成物流の総重量に対して45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、及び14重量%またはそれを下回る量の水を含む。蒸気生成物流は、55〜75重量%の酢酸、24〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜8重量%の酢酸メチル、0.5〜14重量%の水、0.01〜0.8重量%のアセトアルデヒド、及び0.5重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含むことがより好ましい。更に好ましい態様では、蒸気生成物流は、60〜70重量%の酢酸、25〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜6.5重量%の酢酸メチル、1〜8重量%の水、0.01〜0.7重量%のアセトアルデヒド、及び0.1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む。
【0034】
[0037]蒸気生成物流中のアセトアルデヒド濃度は、蒸気生成物流の総重量に対して0.005〜1重量%、例えば0.01〜0.8重量%、又は0.01〜0.7重量%であってもよい。ある態様では、アセトアルデヒドは、1重量%またはそれを下回る量、例えば、0.9重量%またはそれを下回る量、0.8重量%またはそれを下回る量、0.7重量%またはそれを下回る量、0.6重量%またはそれを下回る量、又は0.5重量%またはそれを下回る量で存在してもよく、及び/又は、アセトアルデヒドは、0.005重量%またはそれを超える量、例えば、0.01重量%またはそれを超える量、0.05重量%またはそれを超える量、又は0.1重量%またはそれを超える量で存在してもよい。また、アセトアルデヒドに加えて、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合物等、その他の過マンガン酸還元性化合物(「PRC」)が存在していることがある。一態様では、好適な過マンガン酸カリウム試験はJIS K1351(2007)である。これらの化合物が蒸気生成物流中に存在する場合は、一般にアセトアルデヒド濃度と同等又はそれ未満の量である。一態様では、アセトアルデヒド等のPRCを除去し、蒸気生成物流中のPRC濃度を低く維持することが望ましい。これによって、反応器内での不純物/副生成物の生成を抑制することができる。
【0035】
[0038]蒸気生成物流は、蒸気生成物流の総重量に対して1重量%またはそれを下回る量、例えば0.5重量%またはそれを下回る量、又は0.1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含んでいてもよい。範囲に関していえば、ヨウ化水素は、0.0001〜1重量%、例えば、0.0001〜0.5重量%、0.0001〜0.1重量%の量で存在してもよい。ある態様では、ヨウ化水素を反応器内で制御する場合、ヨウ化水素は0.0001重量%未満の量で存在してもよい。このように少ない量は通常、検出限界を僅かに上回る値である。
【0036】
[0039]蒸気生成物流は実質的にプロピオン酸を含まない、即ち、プロピオン酸の含有量が蒸気生成物流の総重量に対して0.0001重量%未満であることが好ましい。
[0040]本発明はまた、特に蒸留工程時に水の純生成量を制御することにより、分離系中の水のバランスを容易に維持するという利点がある。その結果、本発明は、水分の増加を抑制又は防止し、系から水を排出する必要性を抑えるという利点がある。水の排出はまた、ヨウ化メチル等の触媒促進剤が損失するという不利益にもなり得る。例示的態様では、蒸留工程での水の純生成量の増加は、蒸留工程に供給される蒸気生成物流中の水濃度に対して、0.5%またはそれを下回る量、例えば、0.1%またはそれを下回る量、又は0.05%またはそれを下回る量である。これに対して、米国特許第9,006,483号には、水の生成する反応を促進することが記載されており、この場合、蒸留工程に更に水が加わることになる。これら反応の促進と水の添加により水の純生成量が増加し、蒸留装置への負荷が増加すると予想される。
【0037】
[0041]蒸気生成物流は、例えば、第1の塔(軽質分留塔という場合もある)等の蒸留塔に供給される。任意の一態様では、蒸気生成物流の一部を凝縮してもよい。第1の塔では蒸気生成物流を分離してオーバーヘッド流、生成物流を形成し、必要に応じて底部流を形成する。酢酸生成物流を側部取り出し流として、より好ましくは液体側部取り出し流として取り出してもよい。一態様では、酢酸生成物流は主に酢酸を含むが、更に水、ヨウ化メチル、酢酸メチル、又はヨウ化水素を含んでいてもよい。側部取り出し流に引き出された酢酸生成物流は、側部取り出し流の総重量に対して90重量%またはそれを超える量、例えば94重量%またはそれを超える量、又は96重量%またはそれを超える量の酢酸を含むことが好ましい。範囲に関していえば、酢酸生成物流は、90〜99.5重量%、例えば、90〜99重量%、又は91〜98重量%の酢酸を含む。このような濃度であれば、第1の塔に供給された酢酸の大部分を側部取り出し流に回収し更なる精製に付すことができる。第1の塔のオーバーヘッド又は底部に少量の酢酸が存在する場合があるが、そこで酢酸を生成物として回収しないことが好ましい。
【0038】
[0042]本発明の方法は、側部取り出し流中の水濃度を1〜9重量%、例えば1〜3重量%、より好ましくは1.1〜2.5重量%に維持する工程を含むことが好ましい。ある態様では、側部流中の水濃度を1重量%またはそれを超える量、1.1重量%またはそれを超える量、1.3重量%またはそれを超える量、1.5重量%またはそれを超える量、又は2重量%またはそれを超える量に維持し、及び/又は、ある態様では、側部流中の水濃度を3重量%またはそれを下回る量、2.8重量%またはそれを下回る量、2.5重量%またはそれを下回る量、又は2.1重量%またはそれを下回る量に維持する。ある態様では、側部流中のヨウ化水素濃度を300wppmまたはそれを下回る量、例えば、275wppmまたはそれを下回る量、250wppmまたはそれを下回る量、225wppmまたはそれを下回る量、175wppmまたはそれを下回る量、又は50wppmまたはそれを下回る量に維持し、及び/又は、ある態様では、側部流中のヨウ化水素濃度を0.05wppmまたはそれを超える量、例えば、0.1wppmまたはそれを超える量、1wppmまたはそれを超える量、5wppmまたはそれを超える量、10wppmまたはそれを超える量、又は50wppmまたはそれを超える量に維持する。範囲に関していえば、側部取り出し流は、側部取り出し流の総重量に対して0.05〜300wppm、例えば、0.1〜50wppm、又は5〜30wppmのヨウ化水素を含むことが好ましい。ヨウ化水素は、3〜8重量%の水を含む酢酸−水混合物に可溶であり、水濃度が低下するとヨウ化水素の溶解性も低下する。この相関関係はヨウ化水素の揮発性を高め、その結果、塔のオーバーヘッドに回収されるヨウ化水素量は減少する。ヨウ化水素が腐食性を有することが示されているが、所定量のヨウ化水素がある条件下では触媒として有益に作用する場合がある。そのような触媒としては、米国特許第7,223,883号(所定の酢酸分離方法によりジメチルエーテルを生成させる利点が記載されている)に記載のジメチルエーテルを生成させるための触媒が挙げられるが、この特許の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
[0043]側部取り出し流は、酢酸及び水に加え、0.1〜6重量%、例えば、0.5〜5重量%、0.6〜4重量%、0.7〜3.7重量%、又は0.8〜3.6重量%の1種以上のヨウ化C
1−C
14アルキルを更に含んでいてもよい。一態様では、1種以上のヨウ化C
1−C
14アルキルはヨウ化メチルを含む。ヨウ化ヘキシル等、その他のヨウ化アルキルもアセトアルデヒド等のカルボニル不純物から生成することがある。側部取り出し流は、0.5〜3重量%の1種以上のヨウ化C
1−C
14アルキルを含むことがより好ましい。水の存在により、側部取り出し流は、0.1〜6重量%、例えば、0.5〜5重量%、0.6〜4重量%、0.7〜3.7重量%、又は0.8〜3.6重量%の酢酸メチルを含んでいてもよい。
【0040】
[0044]一態様では、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び0.1〜6重量%のヨウ化メチルを含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。この方法は、側部取り出し流中の水濃度を1〜9重量%、例えば、1〜3重量%に維持する工程を含むことが好ましい。一態様では、側部流中のヨウ化水素濃度を300wppmまたはそれを下回る量に維持する。
【0041】
[0045]一態様では、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び0.1〜6重量%の酢酸メチルを含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。この方法は、側部取り出し流中の水濃度を1〜9重量%、例えば、1〜3重量%に維持する工程を含むことが好ましい。一態様では、側部流中のヨウ化水素濃度を300wppmまたはそれを下回る量に維持する。
【0042】
[0046]一態様では、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸、0.1〜6重量%のヨウ化メチル及び0.1〜6重量%の酢酸メチルを含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。この方法は、側部取り出し流中の水濃度を1〜9重量%、例えば、1〜3重量%に維持する工程を含むことが好ましい。一態様では、側部流中のヨウ化水素濃度を300wppmまたはそれを下回る量に維持する。
【0043】
[0047]本明細書に記載のように、ある態様では、側部取り出し流中の他の反応器成分や不純物、例えば、ヨウ化C
1−C
14アルキル(即ち、ヨウ化メチル)や酢酸メチル等の水濃度に対する量を一定としてもよい。量が一定であるとは、1種以上のヨウ化C
1−C
14アルキルの濃度及び酢酸メチルの濃度が、側部流中の水濃度の±0.9重量%の範囲内、例えば、±0.7重量%、±0.6重量%、±0.5重量%、±0.4重量%、±0.3重量%、±0.2重量%、又は±0.1重量%であることを意味する。例えば、水濃度が2.5重量%の場合、ヨウ化C
1−C
14アルキルの濃度は1.6〜3.4重量%であり、酢酸メチルの濃度は1.6〜3.4重量%である。この操作は、軽質液相の一部の反応器へのリサイクル率を制御して行ってもよい。ある態様では、軽質液相の一部の反応器へのリサイクル率を制御して、側部流中のヨウ化メチル濃度を側部流中の水濃度の±0.6重量%の範囲内、例えば、±0.5重量%、±0.4重量%、±0.3重量%、±0.2重量%、又は±0.1重量%の範囲内で一定にしてもよい。
【0044】
[0048]一態様では、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。この方法では、酢酸生成物流はヨウ化メチル及び酢酸メチルを含み、その各々の量は側部流中の水濃度の±0.9重量%である。一態様では、蒸気流は更にアセトアルデヒドを0.005〜1重量%含んでいてもよい。
【0045】
[0049]一態様では、水、ロジウム触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルの存在下、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテル又はこれらの混合物を含む反応物質供給流を反応器内でカルボニル化して反応器内で反応媒体を生成させること、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、0.01〜0.5重量%のロジウム触媒、5〜20重量%のヨウ化リチウム、10〜2500wppmの腐食性金属、60〜90重量%の酢酸、0.5〜5重量%のヨウ化メチル、0.1〜5重量%の酢酸メチル、及び0.1〜8重量%の水を含む液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、15重量%またはそれを下回る量の水、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。この方法では、酢酸生成物流はヨウ化メチル及び酢酸メチルを含み、その各々の量は側部流中の水濃度の±0.9重量%である。一態様では、蒸気流は更にアセトアルデヒドを0.005〜1重量%含んでいてもよい。
【0046】
[0050]蒸気生成物流中のヨウ化メチルを所望の濃度に維持することは、第1の塔に供給される蒸気生成物中の水及び酢酸メチル濃度に着目した他の方法(例えば、米国特許第9,006,483号に記載の方法)に対する改良点である。水や酢酸メチルと異なり、ヨウ化メチルはかなり高価なため、その損失はコストの面でかなりの損失となり得る。本明細書に開示の方法の利点の一つは、ヨウ化メチルを残部から分離して反応器に戻すことによって、この価値の高い触媒促進剤が回収されることである。
【0047】
[0051]側部取り出し流中のヨウ化水素濃度は、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定によって求められる。他の方法では、ヨウ化水素の含有量を計算によって間接的に求める。例えば、米国特許公開第2013/0310603号には、ヨウ化物塩の形態(共触媒及び金属ヨウ化物に由来するヨウ化物を含む)に由来するヨウ化物イオン濃度をヨウ化物イオン(I
−)の総濃度から減じることによりヨウ化物イオン濃度を算出してもよいことが示されている。このような間接的計算技術は通常不正確であり、用いられる基本的なイオン測定方法が不正確であることに大きく影響され、実際のヨウ化水素濃度が精度良く得られない。また、この間接的計算技術では他のヨウ化物の形態を考慮していない。その理由として、金属陽イオンを測定して、この陽イオンがすべてヨウ化物陰イオンとのみ結合することを前提としているが、これは誤りであって、実際にはこれら金属陽イオンは酢酸陰イオンや触媒陰イオン等の他の陰イオンと結合する場合があるからである。これに対して、本発明に係るヨウ化水素濃度の直接測定は、系内の実際のヨウ化水素濃度を反映することができ、0.01%もの低さの確度が得られるという利点がある。一態様では、側部流中のヨウ化水素濃度は、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定によって求めてもよい。
【0048】
反応工程
[0052]一例としての反応及び酢酸回収系100を
図1に示す。図に示すように、メタノール含有供給流101と一酸化炭素含有供給流102を液相カルボニル化反応器105に導入し、カルボニル化反応を行って酢酸が生成される。
【0049】
[0053]メタノール含有供給流101は、メタノール、ジメチルエーテル及び酢酸メチルから成る群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。メタノール含有供給流101は、一部は新たな供給に由来するものであってもよく、あるいは前記系からリサイクルされたものであってもよい。メタノール及び/又はその反応性誘導体の少なくとも数種は、酢酸とのエステル化反応により液体反応媒体中で酢酸メチルに転化してもよい。
【0050】
[0054]カルボニル化の通常の反応温度は150〜250℃であってもよいが、好ましい温度範囲は180〜225℃である。反応器内の一酸化炭素分圧は大きく変動することがあるが、通常は2〜30atm、例えば3〜10atmである。反応器内の水素分圧は、通常は0.05〜2atm、例えば0.25〜1.9atmである。ある態様では、水素分圧を0.3〜2atm、例えば0.3〜1.5atm又は0.4〜1.5atmとして本発明を実施してもよい。副生成物の分圧と含有液体の蒸気圧のため、反応器の全圧は15〜40atmの範囲となり得る。酢酸の製造率は5〜50モル/L・h、例えば10〜40モル/L・h、好ましくは15〜35モル/L・hであってもよい。
【0051】
[0055]カルボニル化反応器105は、攪拌機搭載又は非搭載の機械撹拌容器、エダクタ混合又はポンプ混合(an educted or pump-around mixing)を用いた容器、又は気泡塔式容器であることが好ましい。この反応器内で反応液又はスラリーの含有量を自動的に所定の値に維持することが好ましいが、この値が通常運転時には実質的に一定であることが好ましい。必要に応じて、新たなメタノール、一酸化炭素、及び十分量の水を連続的にカルボニル化反応器105に導入して反応媒体中で好適な濃度を維持させる。
【0052】
[0056]金属触媒はVIII族金属を含んでいてもよい。好適なVIII族触媒としては、ロジウム触媒及び/又はイリジウム触媒が挙げられる。ロジウム触媒を用いる場合、ロジウムが[Rh(CO)
2I
2]陰イオンを含む平衡混合物として触媒溶液中に存在するようにロジウム触媒を当該分野で周知の任意の好適な形態で添加してよい。本明細書に記載した方法の反応混合物中に存在してもよいヨウ化物塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の可溶性塩、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はこれらの混合物の形態である。ある態様では、触媒共促進剤はヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物である。触媒共促進剤は、ヨウ化物塩を生成させる非ヨウ化物塩として添加してもよい。触媒共促進剤は反応系に直接導入してもよい。あるいは、ヨウ化物塩はin−situで生成させてもよい。その理由として、反応系の運転条件下では反応媒体中で様々な非ヨウ化物塩前駆体がヨウ化メチル又はヨウ化水素酸と反応して対応する触媒共促進剤が生成するからである。ロジウム触媒及びヨウ化物塩の生成に関する更なる詳細については、米国特許第5,001,259号、5,026,908号、5,144,068号、及び7,005,541号を参照のこと。これらの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。イリジウム触媒を用いたメタノールのカルボニル化はよく知られており、一般に米国特許第5,942,460号、5,932,764号、5,883,295号、5,877,348号、5,877,347号、及び5,696,284号に記載されている。これらの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
[0057]触媒系のハロゲン含有触媒促進剤としては、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、及びハロゲン化置換アルキル又はハロゲン化置換アリール等の有機ハロゲン化物が挙げられる。ハロゲン含有触媒促進剤はハロゲン化アルキルの形態で存在することが好ましい。ハロゲン含有触媒促進剤は、カルボニル化されている供給アルコールのアルキルラジカルと対応するアルキルラジカルを有するハロゲン化アルキルの形態で存在することがより好ましい。従って、メタノールの酢酸へのカルボニル化において、ハロゲン化物促進剤はハロゲン化メチル、より好ましくはヨウ化メチルを含む。一態様では、蒸気生成物流中のヨウ化メチル濃度を24重量%から36重量%未満の値に維持する。一態様では、反応媒体のヨウ化メチル濃度は7重量%またはそれを下回る量、例えば、4〜7重量%であってもよい。
【0054】
[0058]反応媒体の成分を規定限界範囲内に維持し、充分な量の酢酸を確実に製造する。反応媒体は、例えばロジウム触媒等の金属触媒を200〜3000wppm、例えば800〜3000wppm、又は900〜1500wppmの濃度で含有する。反応媒体中の水濃度を14重量%またはそれを下回る量、例えば0.1重量%〜14重量%、0.2重量%〜10重量%、又は0.25重量%〜5重量%に維持する。反応は水の少ない条件下で行い、反応媒体は0.1〜4.1重量%、例えば0.1〜3.1重量%、又は0.5〜2.8重量%の水を含むことが好ましい。反応媒体中のヨウ化メチル濃度を、3〜20重量%、例えば4〜13.9重量%、又は4〜7重量%に維持する。反応媒体中のヨウ化物塩(例えば、ヨウ化リチウム)の濃度を、1〜25重量%、例えば2〜20重量%、又は3〜20重量%に維持する。反応媒体中の酢酸メチルの濃度を、0.5〜30重量%、例えば0.3〜20重量%、0.6〜9重量%、又は0.6〜4.1重量%に維持する。これらの量は反応媒体の総重量に基づく。反応媒体中の酢酸濃度は、一般に30重量%またはそれを超える量、例えば40重量%またはそれを超える量、又は50重量%またはそれを超える量である。
【0055】
反応媒体中の酢酸リチウム
[0059]ある態様では、酢酸を製造する方法は更に、反応器にリチウム化合物を導入して反応媒体中の酢酸リチウム濃度を0.3〜0.7重量%に維持することを含む。理論に束縛されるものではないが、反応媒体中の酢酸リチウムがこのような濃度であれば、反応媒体中のヨウ化メチルが減少し、本明細書に記載のように蒸気流中のヨウ化メチルを36重量%未満に制御することができる。また、リチウム化合物を反応器に導入することによって、ロジウム触媒の安定化が助長され、その結果、好適な活性を得るのに必要な反応媒体中のヨウ化メチル量が減少する。リチウム化合物を導入しないと、反応媒体中のヨウ化メチル濃度が低下する際に更なるロジウムが必要となるであろう。
【0056】
[0060]ある態様では、所定量のリチウム化合物を反応器に導入して、反応媒体中のヨウ化水素濃度を0.1〜1.3重量%に維持する。ある態様では、カルボニル化反応器に存在する反応媒体の総重量に対し、反応媒体中のロジウム触媒濃度を200〜3000wppmに維持し、反応媒体中の水濃度を0.1〜4.1重量%に維持し、反応媒体中の酢酸メチル濃度を0.6〜4.1重量%に維持する。
【0057】
[0061]ある態様では、反応器に導入するリチウム化合物は、酢酸リチウム、カルボン酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、他の有機リチウム塩、及びこれらの混合物から成る群から選択される。ある態様では、リチウム化合物は反応媒体に可溶である。ある態様では、酢酸リチウム二水和物をリチウム化合物の源として用いてもよい。
【0058】
[0062]酢酸リチウムは次の平衡反応(I)に従ってヨウ化水素と反応し、ヨウ化リチウムと酢酸が生成する。
LiOAc+HI←→LiI+HOAc(I)
[0063]酢酸リチウムは反応媒体に存在する他の酢酸エステル(例えば、酢酸メチル)に比べ、ヨウ化水素濃度の制御を向上させると考えられる。理論に束縛されるものではないが、酢酸リチウムは酢酸の共役塩基であるため、酸−塩基反応によりヨウ化水素に対する反応性が高い。この特性により反応(I)の平衡が、対応する酢酸メチルとヨウ化水素の平衡により生成する以上の反応生成物をもたらすと考えられる。この改良された平衡は、反応媒体中の水濃度が4.1重量%またはそれを下回る量であると都合がよい。また、酢酸リチウムの揮発性は酢酸メチルに比べて相対的に低いため、揮発損失や蒸気粗生成物への少量の同伴を除き、酢酸リチウムを反応媒体中に残すことができる。これに対し、酢酸メチルの揮発性は比較的高いため、材料を蒸留して精製系にすることができるが、酢酸メチルの制御はより困難になる。本発明の方法では、酢酸リチウムによって、容易にヨウ化水素は一定の低い濃度に維持・制御される。従って、反応媒体中のヨウ化水素濃度を制御するのに必要な酢酸メチルの量に比べて、使用する酢酸リチウムの量は相対的に少なくてもよい。ヨウ化メチルのロジウム[I]錯体への酸化的付加を促進する上で、酢酸リチウムは酢酸メチルに比べて少なくとも3倍有効であることが更に分かった。
【0059】
[0064]ある態様では、反応媒体中の酢酸リチウム濃度を0.3重量%またはそれを超える量、0.35重量%またはそれを超える量、0.4重量%またはそれを超える量、0.45重量%またはそれを超える量、又は0.5重量%またはそれを超える量に維持し、及び/又は、ある態様では、反応媒体中の酢酸リチウム濃度を0.7重量%またはそれを下回る量、0.65重量%またはそれを下回る量、0.6重量%またはそれを下回る量、又は0.55重量%またはそれを下回る量に維持する。
【0060】
[0065]一態様では、水、ロジウム触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルの存在下、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテル又はこれらの混合物を含む反応物質供給流を反応器内でカルボニル化して反応器内で反応媒体を生成させること、リチウム化合物を反応器に導入すること、反応媒体中の酢酸リチウム濃度を0.3〜0.7重量%に維持すること、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、及び14重量%またはそれを下回る量の水を含む蒸気生成物流を形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。
【0061】
[0066]反応媒体中の酢酸リチウムが過剰であると、反応媒体中の他の化合物に悪影響を及ぼし、生産性が低下し得ることが分かった。逆に、反応媒体中の酢酸リチウム濃度が0.3重量%未満であると、反応媒体中のヨウ化水素濃度を所望の濃度である1.3重量%未満に維持することができないことが分かった。
【0062】
[0067]ある態様では、リチウム化合物を反応媒体中に連続的又は断続的に導入してもよい。ある態様では、反応器の起動時にリチウム化合物を導入する。ある態様では、リチウム化合物を断続的に導入して同伴損失を補う。
【0063】
[0068]ある態様では、所望のカルボン酸とアルコール、望ましくはカルボニル化に用いるアルコール、及びヨウ化水素として存在するヨウ化物イオンの他に更なるヨウ化物イオン等からなる反応媒体中のエステル濃度を維持することにより、水が低濃度の条件でも所望の反応速度を得ることができる。所望のエステルは酢酸メチルである。更なるヨウ化物イオンはヨウ化物塩であることが望ましく、ヨウ化リチウムが好ましい。水濃度が低いと、酢酸メチル及びヨウ化リチウムは、これらの成分がそれぞれ比較的高い濃度で存在する場合にのみ反応速度促進剤として作用すること、また、これらの成分の両方が同時に存在するときに反応がより促進されることが分かった。
【0064】
カルボニル化反応
[0069]メタノールの酢酸生成物へのカルボニル化反応は、カルボニル化生成物を得るのに好適な温度及び圧力条件で、ロジウム触媒、ヨウ化メチル促進剤、酢酸メチル、及び更なる可溶性ヨウ化物塩を含有する酢酸溶媒反応媒体中にバブリングされる一酸化炭素ガスと供給メタノールとを接触させて行ってもよい。一般に重要なことは触媒系中のヨウ化物イオン濃度であって、ヨウ化物と結合する陽イオンの濃度ではないこと、及びヨウ化物が所定のモル濃度である場合、陽イオンの性質はヨウ化物濃度の効果ほど重要ではないことが認識されている。塩が十分に反応媒体に可溶であり所望の水準のヨウ化物が得られる限り、どのようなヨウ化金属塩も、又はどのような有機陽イオンもしくはその他の陽イオンのヨウ化物塩、例えば、アミン又はホスフィン化合物に基づく陽イオン(第3級又は第4級陽イオンであってもよい)のヨウ化物塩も反応媒体中で維持させることができる。ヨウ化物が金属塩である場合、オハイオ州クリーブランドのCRCプレスから出版された「化学・物理便覧」2002−03(第83版)に記載されているように、周期表のIA族及びIIA族金属からなる群から選択される金属のヨウ化物塩であることが好ましい。特にアルカリ金属ヨウ化物が有用であり、ヨウ化リチウムは特に好適である。低水分カルボニル化工程では、通常、ヨウ化水素として存在するヨウ化物イオンの他に更なるヨウ化物イオンが触媒溶液に存在し、ヨウ化物イオンの総濃度は1〜25重量%であり、酢酸メチルは通常0.5〜30重量%の量で存在し、ヨウ化メチルは通常1〜25重量%の量で存在する。ロジウム触媒は通常200〜3000wppmの量で存在する。
【0065】
[0070]反応媒体にはまた、副生成物の生成を回避するために制御すべき不純物が含まれる場合がある。このような不純物は蒸気流中で濃縮する傾向がある。反応媒体中の不純物の1種としてヨウ化エチルが挙げられるが、これは酢酸から分離するのが困難である。本出願人は更に、ヨウ化エチルの生成は多くの変動要素、例えば、反応媒体中のアセトアルデヒド、酢酸エチル、酢酸メチル及びヨウ化メチルの濃度に影響を受けることを見出した。更に、メタノール源中のエタノール含有量、水素分圧及び一酸化炭素源中の水素含有量が反応媒体中のヨウ化エチル濃度に影響を及ぼし、その結果、最終酢酸生成物中のプロピオン酸濃度に影響を及ぼすことが分かった。
【0066】
[0071]ある態様では、酢酸生成物からプロピオン酸を除去せずに反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppmまたはそれを下回る量に維持することにより、酢酸生成物中のプロピオン酸濃度を更に250wppm未満に維持してもよい。
【0067】
[0072]ある態様では、反応媒体中のヨウ化エチル濃度と酢酸生成物中のプロピオン酸濃度は重量比で3:1〜1:2であってもよい。ある態様では、反応媒体中のアセトアルデヒド:ヨウ化エチル濃度を重量比で2:1〜20:1に維持する。
【0068】
[0073]ある態様では、反応媒体中の水素分圧、酢酸メチル濃度、ヨウ化メチル濃度、及び/又はアセトアルデヒド濃度の少なくとも1つを制御することにより、反応媒体中のヨウ化エチル濃度を維持してもよい。
【0069】
[0074]ある態様では、反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750wppmまたはそれを下回る量、例えば、650wppmまたはそれを下回る量、550wppmまたはそれを下回る量、450wppmまたはそれを下回る量、又は350wppmまたはそれを下回る量に維持/制御する。ある態様では、反応媒体中のヨウ化エチル濃度を1wppmまたはそれを超える量、例えば、5wppm、10wppm、20wppm又は25wppm、及び650wppmまたはそれを下回る量、例えば、550wppm、450wppm又は350wppmに維持/制御する。
【0070】
[0075]ある態様では、反応媒体中のヨウ化エチルの酢酸生成物中のプロピオン酸に対する重量比は、3:1〜1:2、例えば、5:2〜1:2、2:1〜1:2、又は3:2〜1:2の範囲であってもよい。
【0071】
[0076]ある態様では、反応媒体中のアセトアルデヒドのヨウ化エチルに対する重量比は、20:1〜2:1、例えば、15:1〜2:1又は9:1〜2:1の範囲であってもよい。
【0072】
[0077]通常のカルボニル化工程では、一酸化炭素をカルボニル化反応器内、望ましくは撹拌器の下に連続的に導入し、撹拌器を用いて内容物を撹拌してもよい。供給ガスをこの撹拌手段により反応液全体に十分分散させることが好ましい。反応器の温度を制御してもよく、全反応器圧を所望な値に維持するのに十分な速度で一酸化炭素を供給する。液体反応媒体を含む流れ113は、反応器105から送り出される。
【0073】
[0078]排気流106を反応器105から放出してガス状副生成物の蓄積を防止し、設定された全反応器圧において所定の一酸化炭素分圧を維持することが望ましい。一態様では、気体流106は、1重量%またはそれを下回る量、例えば、0.9重量%またはそれを下回る量、0.8重量%またはそれを下回る量、0.7重量%またはそれを下回る量、0.5重量%またはそれを下回る量の少量のヨウ化水素を含む。ヨウ化水素がこのような値を超えると、ヨウ化水素の排出を防止するスクラバへの負荷が大きくなる。一態様では、反応媒体中の酢酸リチウム濃度を0.3〜0.7重量%に維持することで、反応媒体中のヨウ化水素濃度を0.1〜1.3重量%に制御できるという利点がある。また、反応媒体中のヨウ化水素を低減させることで、気体流中のヨウ化水素を低減させることができるという利点がある。反応媒体中で酢酸リチウムを使用する態様では、ヨウ化水素が低減し、その結果、フラッシュ容器に取り出されるヨウ化水素が低減すると共に、気体流中の水素が低減するというという利点もある。
【0074】
[0079]この更なる態様は、気体流をスクラビングして排気流からヨウ化水素を除去することも含んでもよい。通常、処理系は、スクラバ、ストリッパ又は吸収装置(例えば、圧力スイング吸収装置)である。
【0075】
[0080]一態様では、水、ロジウム触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルの存在下、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテル又はこれらの混合物を含む反応物質供給流を反応器内でカルボニル化して反応器内で反応媒体を生成させること、反応器にリチウム化合物を導入すること、反応媒体中の酢酸リチウム濃度を0.3〜0.7重量%に維持すること、1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む気体流を反応器から放出すること、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、及び14重量%またはそれを下回る量の水を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。
【0076】
[0081]酢酸製造系は、酢酸を回収し、金属触媒、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び他の系の成分をこの工程内でリサイクルさせるのに用いる分離系108を備えることが好ましい。1種以上のリサイクル流を混合した後に、反応器とフラッシュ容器を含む反応系に導入してもよい。分離系はまた、カルボニル化反応器及び系全体の水と酢酸の含有量を制御し、過マンガン酸還元性化合物(PRC)の除去を容易にすることが好ましい。PRCとしては、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合物を挙げることができる。
【0077】
[0082]反応媒体を、カルボニル化反応器105内で一定の水準に維持するのに十分な速度でカルボニル化反応器105から取り出し、流れ113を経由させてフラッシュ容器110に供給する。反応器105とフラッシュ容器110は関連するポンプ、排気口、パイプ、バルブとともに反応系を構成する。フラッシュ分離は、80℃〜280℃の温度で絶対圧力0.25〜10atm、より好ましくは100℃〜260℃、絶対圧力0.3〜10atmで行ってもよい。一態様では、フラッシュ容器を反応器よりも低い圧力下で運転してもよい。フラッシュ容器110では、本明細書に記載のように、フラッシュ分離工程で反応媒体を分離し、酢酸とヨウ化メチルを含む蒸気生成物流112と触媒含有溶液を含む液体リサイクル流111とを得る。触媒含有溶液は、大部分がロジウム及びヨウ化物塩を含む酢酸であり、それより少量の酢酸メチル、ヨウ化メチル及び水を含んでいてもよく、上述のように反応器にリサイクルされる。米国特許第5,731,252号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、液体リサイクル流を反応器に戻す前に、スリップ流(slip stream)をイオン交換床等の腐食性金属除去床を通過させ、任意の同伴する腐食性金属(例えば、ニッケル、鉄、クロム及びモリブデン)を除去してもよい。また、米国特許第8,697,908号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、腐食性金属除去床を用いて、アミン等の窒素化合物を除去してもよい。
【0078】
[0083]蒸気生成物流112は、上述のように、蒸気生成物流の総重量に対して45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、及び14重量%またはそれを下回る量の水を含む。蒸気生成物流中のアセトアルデヒド濃度は、蒸気生成物流の総重量に対して0.005〜1重量%、例えば0.01〜0.8重量%、又は0.01〜0.7重量%であってもよい。蒸気生成物流112は、蒸気生成物流の総重量に対して1重量%またはそれを下回る量、例えば0.5重量%またはそれを下回る量、又は0.1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含んでいてもよい。
【0079】
[0084]液体リサイクル流111は、酢酸、金属触媒、腐食性金属に加えて、その他の様々な化合物を含む。一態様では、液体リサイクル流は、60〜90重量%の酢酸、0.01〜0.5重量%の金属触媒、10〜2500wppmの腐食性金属(例えば、ニッケル、鉄、クロム等)、5〜20重量%のヨウ化リチウム、0.5〜5重量%のヨウ化メチル、0.1〜5重量%の酢酸メチル、0.1〜8重量%の水、1重量%またはそれを下回る量のアセトアルデヒド(例えば、0.0001〜1重量%のアセトアルデヒド)、及び0.5重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素(例えば、0.0001〜0.5重量%のヨウ化水素)を含む。
【0080】
[0085]一態様では、水、ロジウム触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルの存在下、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテル又はこれらの混合物を含む反応物質供給流を反応器内でカルボニル化して反応器内で反応媒体を生成させること、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、0.01〜0.5重量%のロジウム触媒、5〜20重量%のヨウ化リチウム、10〜2500wppmの腐食性金属、60〜90重量%の酢酸、0.5〜5重量%のヨウ化メチル、0.1〜5重量%の酢酸メチル、及び0.1〜8重量%の水を含む液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、15重量%またはそれを下回る量の水、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。
【0081】
[0086]蒸気生成物流112及び液体リサイクル流111の各々の流量は変動してもよく、例示的な一態様では、フラッシュ容器110への流れの15%〜55%が蒸気生成物流112として取り出され、45%〜85%が液体リサイクル流111として取り出される。触媒含有溶液は、大部分が金属触媒(例えば、ロジウム及び/又はイリジウム)とヨウ化物塩を含む酢酸であり、それより少量の酢酸メチル、ヨウ化メチル、及び水を含んでいてもよく、上述のように反応器105にリサイクルされる。米国特許第5,731,252号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、液体リサイクル流を反応器に戻す前に、スリップ流をイオン交換床等の腐食性金属除去床を通過させて任意の同伴する腐食性金属を除去してもよい。また、米国特許第8,697,908号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、腐食性金属除去床を用いて、アミン等の窒素化合物を除去してもよい。
【0082】
[0087]蒸気生成物流112は、酢酸、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドに加えて、酢酸メチル、水、ヨウ化水素及び他のPRC(例えば、クロトンアルデヒド)を含んでいてもよい。反応器105から送り出されてフラッシュ容器110に供給される溶解ガスは、一酸化炭素の一部を含んでいるが、メタン、水素及び二酸化炭素等のガス状副生成物を含んでいてもよい。このような溶解ガスは、蒸気生成物流112の一部としてフラッシュ容器110から送り出される。一態様では、排気流106中の一酸化炭素をフラッシュ容器110の底部に供給してロジウムの安定性を高めてもよい。
【0083】
酢酸の回収
[0088]酢酸の蒸留及び回収は本発明の目的のために特に限定されない。一態様では、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ること、低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、凝縮流を二相分離して重質液相と軽質液相を形成すること、及び酢酸生成物流を第2の塔で蒸留して酢酸生成物を得ることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。
【0084】
第1の塔
[0089]
図1に示すように、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチルを含む蒸気生成物流112を第1の塔120(軽質分留塔とも言う)に導入する。一態様では、蒸気生成物流112は、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドに加えて、他の不純物(例えば、ヨウ化水素及び/又はクロトンアルデヒド)及び/又は副生成物(例えば、プロピオン酸)を含む。蒸留によって、低沸点オーバーヘッド蒸気流122と、精製酢酸生成物(好ましくは、側部取り出し流123を経由して取り出される)と、高沸点残渣流121とが得られる。酢酸の大部分は、側部取り出し流123に取り出されるが、高沸点残渣流121からは酢酸がほとんど回収されないか、あるいは全く回収されないことが好ましい。高沸点残渣流121中の酢酸濃度は比較的高い場合もあるが、高沸点残渣流121の質量流量は側部流123に比べて非常に低い。ある態様では、高沸点残渣流121の質量流量は側部流123の0.75%またはそれを下回る量、例えば、0.55%またはそれを下回る量又は0.45%またはそれを下回る量である。
【0085】
[0090]一態様では、低沸点オーバーヘッド蒸気流122は、5重量%またはそれを超える量、例えば、10重量%またはそれを超える量、又は25重量%またはそれを超える量の水を含んでいる。範囲に関していえば、低沸点オーバーヘッド蒸気流112は、5重量%〜80重量%、例えば、10重量%〜70重量%、又は25重量%〜60重量%の水を含んでいてもよい。水濃度が5重量%未満に低下すると、反応系に戻される酢酸リサイクル流が増加し、精製系全体のリサイクル流が増加するため通常は有益でない。低沸点オーバーヘッド蒸気流122は水に加えて、酢酸メチル、ヨウ化メチル、及びPRC等のカルボニル不純物を含んでいてもよいが、これらをオーバーヘッド蒸気流中で濃縮させ、側部取り出し流123中の酢酸から除去することが好ましい。
【0086】
[0091]図示するように、低沸点オーバーヘッド蒸気流122を凝縮し、オーバーヘッドデカンタ124として示すオーバーヘッド相分離ユニットに導入することが好ましい。一旦デカンタ124で凝縮された低沸点オーバーヘッド蒸気流122が分離して軽質液相133と重質液相134を形成するように条件を維持することが望ましい。相分離は、2つの分離相を維持し、これらの相の間に第3の相、即ち、エマルジョンが形成されないように行う必要がある。オフガス成分を、ライン132経由でデカンタ124から放出してもよい。ある態様では、オーバーヘッドデカンタ124内での凝縮低沸点オーバーヘッド蒸気流122の平均滞留時間は1分またはそれを超える時間、例えば、3分またはそれを超える時間、5分またはそれを超える時間、10分またはそれを超える時間であり、及び/又は、平均滞留時間は60分またはそれを下回る時間、例えば、45分またはそれを下回る時間、30分またはそれを下回る時間、又は25分またはそれを下回る時間である。
【0087】
[0092]軽質液相133の具体的な組成は大きく変動し得るが、いくつかの例示的な組成を以下の表1に示す。
【0089】
[0093]一態様では、界面水準を低く維持し、ヨウ化メチルの過剰なホールドアップを防ぐようにオーバーヘッドデカンタ124を配置・構成する。重質液相134の具体的な組成は大きく変動し得るが、いくつかの例示的な組成を以下の表2に示す。
【0091】
[0094]重質液相134の密度は、1.3〜2、例えば、1.5〜1.8、1.5〜1.75、又は1.55〜1.7としてもよい。米国特許第6,677,480号に記載のように、重質液相134で測定した密度は、反応媒体中の酢酸メチル濃度と相関し得る。密度の低下に伴って、反応媒体中の酢酸メチル濃度は上昇する。本発明の一態様では、重質液相134を反応器にリサイクルし、軽質液相133を同一のポンプでリサイクルするように制御する。ポンプへの障害とならない軽質液相133の一部をリサイクルし、軽質液相133と重質液相の混合物の密度を1.3またはそれを超える値、例えば、1.4またはそれを超える値、1.5またはそれを超える値又は1.7またはそれを超える値に維持することが望ましい場合もある。本明細書に記載のように、重質液相134の一部を処理してアセトアルデヒド等の不純物を除去してもよい。
【0092】
[0095]表1及び2に示すように、軽質液相133中の水濃度は重質液相134よりも高いため、本発明では、軽質液相のリサイクルによって側部流中の水濃度を制御することができる。側部取り出し流123中の成分(水及び/又はヨウ化水素等)の濃度を、反応系への軽質液相133のリサイクル率によって制御してもよい。ライン135を経由する軽質液相133の第1の塔への還流比(即ち、重質液相134(全てリサイクルするかどうかは問わない)と軽質液相133の両方を含む塔120の塔頂から送り出される総質量流量で除した還流液の質量流量)は、好ましくは0.05〜0.4、例えば、0.1〜0.35又は0.15〜0.3である。一態様では、還流比を低下させるため、側部取り出し流と第1の塔の塔頂との間の理論段数は5より多くてもよく、例えば、10より多いことが好ましい。一態様では、還流比を低下させるため、側部流と第1の塔の塔頂との間の理論段数は5以上でもよく、例えば、10以上であることが好ましい。一態様では、流量バルブ及び/又は流量モニター(図示されていない)を用いて、ライン135中の還流とライン136中のリサイクル流を制御してもよい。
【0093】
[0096]一態様では、ライン136中の軽質液相を反応器105へ戻すリサイクル率は、塔オーバーヘッド(還流及びリサイクル流)から凝縮された軽質液相133の総量の20%以下、例えば10%以下である。範囲に関していえば、ライン136中の軽質液相のリサイクル率は、低沸点オーバーヘッド蒸気流(還流及びリサイクル流)から凝縮された軽質液相133の総量の0〜20%、例えば、0.1〜20%、0.5〜20%、1〜15%又は1〜10%であってもよい。残りの部分は軽質分留塔で還流として用いてもよく、あるいはPRC除去系に供給してもよい。例えば、ライン136中のリサイクル流を液体リサイクル流111と合流させて反応器105に戻してもよい。一態様では、ライン136中のリサイクル流を、例えば、反応器105やフラッシュ容器110等の反応系にリサイクルされている他の流れと合流させてもよい。乾燥塔125からの凝縮オーバーヘッド流138を相分離して水相と有機相を形成する場合、ライン136中のリサイクル流を好ましくは水相と合流させることができる。あるいは、ライン136中のリサイクル流の全部又は少なくとも一部を重質液相134及び/又はオーバーヘッド流138からの有機相と合流させてもよい。
【0094】
PRC除去系
[0097]図示はしていないが、軽質液相133及び/又は重質液相134の一部を分離し、アセトアルデヒド又はPRC除去系に導入し、アルデヒド除去工程中でヨウ化メチルと酢酸メチルを回収してもよい。表1及び2に示すように、軽質液相133及び/又は重質液相134は各々PRCを含んでいるため、本発明の方法は、酢酸生成物の品質を損なうアセトアルデヒド等のカルボニル不純物を除去することを含んでいてもよい。このようなカルボニル不純物は、米国特許第6,143,930号、6,339,171号、7,223,883号、7,223,886号、7,855,306号、7,884,237号、8,889,904号、及び米国特許公開第2006/0011462号に記載された好適な不純物除去塔や不純物吸収装置により除去してもよい。これら特許の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。アセトアルデヒド等のカルボニル不純物をヨウ化物触媒促進剤と反応させて、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル等のヨウ化アルキルを生成させてもよい。また、不純物の多くはアセトアルデヒドに由来するので、軽質液相からカルボニル不純物を除去することが望ましい。
【0095】
[0098]アセトアルデヒド又はPRC除去系に供給される軽質液相133及び/又は重質液相134の一部は、軽質液相133及び/又は重質液相134の質量流量の1〜99%の範囲、例えば、1〜50%、2〜45%、5〜40%、5〜30%又は5〜20%で変動してもよい。また、ある態様では、軽質液相133及び重質液相134の両方の一部をアセトアルデヒド又はPRC除去系に供給してもよい。アセトアルデヒド又はPRC除去系に供給されない軽質液相133の一部は、本明細書に記載のように、第1の塔に還流させてもよく、反応器にリサイクルしてもよい。アセトアルデヒド又はPRC除去系に供給されない重質液相134の一部は反応器にリサイクルしてもよい。重質液相134の一部を第1の塔に還流させてもよいが、ヨウ化メチルが濃縮された重質液相134を反応器に戻すことがより望ましい。
【0096】
[0099]一態様では、軽質液相133及び/又は重質液相134の一部を蒸留塔に供給するが、その蒸留塔のオーバーヘッドではアセトアルデヒド及びヨウ化メチルが濃縮される。構成に応じて、2つの別々の蒸留塔が存在する場合があり、第2の塔のオーバーヘッドでアセトアルデヒド及びヨウ化メチルが濃縮されていてもよい。in−situで生成し得るジメチルエーテルがオーバーヘッドに存在していてもよい。オーバーヘッドに対し1段以上の抽出操作を行い、ヨウ化メチルが濃縮された抽残液(raffinate)及び抽出剤を除去してもよい。抽残液の一部を蒸留塔、第1の塔、オーバーヘッドデカンタ及び/又は反応器に戻してもよい。例えば、重質液相134をPRC除去系で処理する際には、抽残液の一部を蒸留塔又は反応器に戻すことが望ましい場合がある。また、例えば、軽質液相133をPRC除去系で処理する際には、抽残液の一部を第1の塔、オーバーヘッドデカンタ又は反応器に戻すことが望ましい場合がある。ある態様では、抽出剤を更に蒸留して水を除去し、1段以上の抽出操作に戻してもよい。軽質液相133よりも多くの酢酸メチル及びヨウ化メチルを含む塔のボトム留分を反応器105にリサイクルしてもよく、及び/又は第1の塔120に還流させてもよい。
【0097】
[00100]一態様では、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ること、オーバーヘッド流を凝縮し、凝縮したオーバーヘッドを相分離して軽質液相と重質液相を形成すること、及び重質液相の一部を処理して、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合物から成る群から選択される少なくとも1種の過マンガン酸還元性化合物を除去することを含む、酢酸を製造する方法が提供される。
【0098】
[0100]他の態様では、水、ロジウム触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルの存在下、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテル又はこれらの混合物を含む反応物質供給流を反応器内でカルボニル化して反応器内で反応媒体を生成させること、反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、0.01〜0.5重量%のロジウム触媒、5〜20重量%のヨウ化リチウム、10〜2500wppmの腐食性金属、60〜90重量%の酢酸、0.5〜5重量%のヨウ化メチル、0.1〜5重量%の酢酸メチル、及び0.1〜8重量%の水を含む液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、15重量%またはそれを下回る量の水、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ること、オーバーヘッド流を凝縮し、凝縮したオーバーヘッドを相分離して軽質液相と重質液相を形成すること、及び重質液相の一部を処理して、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合物から成る群から選択される少なくとも1種の過マンガン酸還元性化合物を除去することを含む、酢酸を製造する方法が提供される。
【0099】
[0101]ある態様では、前記方法は、異なる流れ中の種々の成分の濃度を測定するための1種以上のオンライン分析計を備える。例えば、試料排気流等の試料流をオンライン分析計(図示されていない)に供給することにより、側部取り出し流123中のヨウ化水素濃度をオンライン分析計を用いて求めてもよい。
【0100】
第2の塔
[0102]側部取り出し流123を経由して取り出される酢酸を更に第2の塔125(乾燥塔とも言う)等で精製することが好ましい。第2の塔では、側部取り出し流123を、主に水を含む水性オーバーヘッド流126と、主に酢酸から成る生成物流127とに分離する。側部流からの水は水性オーバーヘッド流にて濃縮されるが、水性オーバーヘッドは、側部流中の水の90%またはそれを超える量、例えば、95%またはそれを超える量、97%またはそれを超える量、又は99%またはそれを超える量を含む。水性オーバーヘッド流126は、水を50〜90重量%、例えば、50〜85重量%、55〜85重量%、60〜80重量%、又は60〜75重量%含んでいてもよい。ある態様では、水性オーバーヘッド流は、水を90重量%またはそれを下回る量、例えば、75重量%またはそれを下回る量、70重量%またはそれを下回る量、又は65重量%またはそれを下回る量含んでいてもよい。酢酸メチル及びヨウ化メチルも側部流から取り出して、オーバーヘッド流で濃縮する。生成物流127は酢酸を含むか又は本質的に酢酸から成ることが好ましく、第2の塔125の底部で取り出してもよく、底部付近の側部流で取り出してもよい。底部付近の側部流として取り出す場合、側部流は液体流であってもよく、蒸気流であってもよい。好ましい態様では、生成物流127は酢酸を90重量%またはそれを超える量、例えば、95重量%またはそれを超える量、又は98重量%またはそれを超える量含む。生成物流127に対し、例えば、イオン交換樹脂中を通過させる等の更なる処理を行った後、貯蔵又は輸送して商業的利用に備えてもよい。
【0101】
[0103]同様に、第2の塔125からの水性オーバーヘッド流126はヨウ化メチル、酢酸メチル及び水等の反応成分を含むが、これらの反応成分を工程内で保持することが好ましい。水性オーバーヘッド流126を熱交換器で凝縮して流れ138とし、この流れを反応器105にリサイクルする、及び/又は第2の塔125に還流させる。オフガス成分を凝縮低沸点オーバーヘッド蒸気流126からライン137経由で放出してもよい。第1の塔120からの凝縮低沸点オーバーヘッド蒸気流と同様に、凝縮オーバーヘッド流138も分離して水相と有機相を形成してもよく、必要に応じて、これらの相をリサイクル又は還流させて反応媒体中の濃度を維持してもよい。
【0102】
[0104]一態様では、側部流の水濃度を制御して第1の塔及び第2の塔の両方における水量を安定させる。反応媒体中で14重量%またはそれを下回る量の水(より好ましくは4.1重量%またはそれを下回る量の水)を使用する場合、第2の塔を安定的に運転するのに十分な水がこの塔内に存在しないことがある。側部流中の水濃度を1重量%未満に低下させることも可能であるが、この場合、第2の塔内が不安定になり、酢酸を回収することがより困難になるため、生成物が規格外となり得る。また、側部流中に水が存在することによって、第2の塔はこの水を水性オーバーヘッドに取り出すことができる。第1の塔からの軽質液相と第2の塔からの水性オーバーヘッドとのリサイクル比は、反応器内の水分濃度を所望な値に維持するのに役立つ一方、第1及び第2の蒸留塔の運転を安定に維持させる。一態様では、反応器にリサイクルされる軽質液相の質量流量の反応器にリサイクルされる水性オーバーヘッドの質量流量に対するリサイクル比は2であるか又はそれを下回り、例えば、1.8であるか又はそれを下回り、1.5であるか又はそれを下回り、1であるか又はそれを下回り、0.7であるか又はそれを下回り、0.5であるか又はそれを下回り、0.35であるか又はそれを下回り、0.25であるか又はそれを下回りであり、及び/又は、反応器にリサイクルされる軽質液相の質量流量の反応器にリサイクルされる水性オーバーヘッドの質量流量に対するリサイクル比は0であるか又はそれを超え、例えば、0.05であるか又はそれを超え、0.1であるか又はそれを超え、0.15であるか又はそれを超え又は0.2であるか又はそれを超えである。
【0103】
[0105]従って、一態様では、反応媒体をフラッシュ容器内で分離し、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ること、第2の低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮して90重量%またはそれを下回る量の水を含む水性リサイクル流を得ること、及び第2の低沸点オーバーヘッド蒸気流を反応器にリサイクルすることを含む、酢酸を製造する方法が提供される。この方法では、反応器にリサイクルされる軽質液相の質量流量の反応器にリサイクルされる水性リサイクル流の質量流量に対するリサイクル比は2であるか又はそれを下回り、例えば0〜2である。
【0104】
[0106]放出流、特にライン106、132及び137から残渣液体を回収するために、これらのラインをスクラバに供給してもよい。スクラバは、冷却メタノール及び/又は酢酸を用いて運転し、酢酸メチルとヨウ化メチルを除去する。好適なスクラバは米国特許第8,318,977号に記載されているが、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
[0107]本発明の蒸留塔は、従来の蒸留塔、例えば、棚段塔、充填塔及びその他の塔であってもよい。棚段塔としては、多孔板塔、泡鐘塔、キッテルトレイ塔、ユニフラックストレイ又はリップルトレイ塔を挙げることができる。棚段塔の場合、理論段数は特に限定されず、分離される成分の種類に依存しており、80段以下、例えば、2〜80段、5〜60段、5〜50段としてもよいが、より好ましくは7〜35段である。蒸留塔は様々な蒸留装置の組み合わせを備えてもよい。例えば、泡鐘塔と多孔板塔の組み合わせと共に、多孔板塔と充填塔の組み合わせを用いてもよい。
【0106】
[0108]蒸留系における蒸留温度及び圧力は、目的とするカルボン酸の種類、蒸留塔の種類、又は供給流の組成に従って低沸点不純物及び高沸点不純物から選択される除去対象物等の条件に応じ、好適に選択することができる。例えば、蒸留塔によって酢酸の精製を行う場合、蒸留塔の内部圧力(通常は塔頂部の圧力)は、ゲージ圧で0.01〜1MPa、例えば、0.02〜0.7MPaとしてもよいが、より好ましくは0.05〜0.5MPaである。また、蒸留塔の蒸留温度、即ち、塔の内部温度(塔頂部の温度)は、塔の内部圧力を調整して制御することができ、例えば、20〜200℃、例えば、50〜180℃としてもよいが、より好ましくは100〜160℃である。
【0107】
[0109]塔、バルブ、凝縮器、受器、ポンプ、リボイラ、内部構造物及び各種ライン(これらの各々は蒸留系に連通している)を含む蒸留系に関連する各部位又はユニットの材料は、ガラス、金属、セラミック又はこれらの組み合わせ等の好適な材料で形成され、特に特定のものには限定されない。本発明によれば、上述の蒸留系及び各種ラインの材料は、遷移金属又は鉄合金等の遷移金属基合金、例えば、ステンレス鋼、ニッケル又はニッケル合金、ジルコニウム又はジルコニウム合金、チタン又はチタン合金、又はアルミニウム合金である。好適な鉄基合金としては、鉄を主成分として含む合金、例えば、クロム、ニッケル、モリブデン及び他の金属も含むステンレス鋼が挙げられる。好適なニッケル基合金としては、ニッケルを主成分とし、クロム、鉄、コバルト、モリブデン、タングステン、マンガン及び他の金属の1種以上を含む合金、例えば、HASTELLOY(商標)やINCONEL(商標)が挙げられる。蒸留系及び各種ラインの材料として耐食性金属が特に好適な場合もある。
【0108】
ガード床(Guard bed)
[0110]精製酢酸生成物中のヨウ化物の総濃度が低い、例えば5wppm以下、例えば1wppm以下である場合、ガード床を用いてヨウ化物を除去することができる。1つ以上のガード床を用いて残留ヨウ化物を除去すると、精製酢酸生成物の品質が大きく改善する。ハロゲン化物及び/又は腐食性金属で汚染されたカルボン酸流(例えば酢酸流)を様々な運転条件下でイオン交換樹脂組成物と接触させてもよい。イオン交換樹脂組成物はガード床中に設けられていることが好ましい。ガード床を用いて汚染カルボン酸流を精製することは、当該分野ではよく実証されており、例えば、米国特許第4,615,806号、5,653,853号、5,731,252号、及び6,225,498号に記載されているが、これらの全内容が参照により本明細書に組み込まれる。一般に、汚染液体カルボン酸流をイオン交換樹脂組成物と接触させるが、このイオン交換樹脂組成物はガード床中に設けられていることが好ましい。ヨウ化物汚染物質等のハロゲン化物汚染物質を金属と反応させて金属ヨウ化物を生成させる。ある態様では、ヨウ化物と結合し得る炭化水素部位(例えば、メチル基)は、カルボン酸をエステル化することがある。例えば、ヨウ化メチルで汚染された酢酸の場合であれば、ヨウ化物除去の副生成物として酢酸メチルが生成するであろう。このエステル化物の生成は通常、処理されたカルボン酸流に悪影響を及ぼすことはない。
【0109】
[0111]一態様では、前記イオン交換樹脂は金属交換イオン交換樹脂であり、銀、水銀、パラジウム及びロジウムから成る群から選択される少なくとも1種の金属を含んでもよい。一態様では、前記金属交換樹脂の強酸交換部位の少なくとも1%は銀で占められている。他の態様では、前記金属交換樹脂の強酸交換部位の少なくとも1%は水銀で占められている。本発明の方法は更に、精製酢酸生成物を陽イオン交換樹脂で処理して銀、水銀、パラジウム又はロジウムのいずれかを回収することを含んでもよい。
【0110】
[0112]接触工程時の圧力は主に樹脂の物理的強度によって制限される。一態様では、この接触を0.1MPa〜1MPa、例えば、0.1MPa〜0.8MPa、又は0.1MPa〜0.5MPaの範囲の圧力で行う。しかし、便宜上、圧力と温度の両方を規定して、汚染カルボン酸流を液体として処理することが好ましい場合がある。従って、例えば、一般に経済的な考慮に基づいて好ましいとされる大気圧での運転の場合、温度は17℃(酢酸の凝固点)〜118℃(酢酸の沸点)の範囲であってもよい。他のカルボン酸化合物を含む生成物流に対して同様の範囲を定めることは当業者の理解の範囲内である。接触工程の温度を比較的低く保って樹脂の劣化を最小限にすることが好ましい。一態様では、この接触を25℃〜120℃、例えば25℃〜100℃、又は50℃〜100℃の範囲の温度で行う。数種の陽イオン性マクロ網状樹脂は、通常150℃の温度で劣化し始める(酸触媒の芳香族脱スルホン化の機構による)。炭素数が5以下、例えば3以下のカルボン酸は、上述の温度では液体のままである。従って、接触時の温度は用いる樹脂の劣化温度より低く維持しなければならない。ある態様では、運転温度を樹脂の温度限界より低く保ち、ハロゲン化物除去のための所望の反応速度及び液相操作との整合性をとる。
【0111】
[0113]酢酸精製系内のガード床の構成は大きく変わってもよい。例えば、乾燥塔の後にガード床を設けてもよい。それに加えて、あるいはそれに代えて、ガード床を重質分除去塔又は最終塔の後に設けてもよい。酢酸生成物流の温度が低い、例えば120℃またはそれを下回る温度、又は100℃またはそれを下回る温度である位置にガード床を設けることが好ましい。上述した利点の他に、運転温度が低いと、運転温度が高い場合に比べて腐食が抑制される。運転温度が低いと、上述のように樹脂の総寿命を短くする可能性がある腐食性金属汚染物質の生成が抑制される。また、運転温度が低いと、腐食が抑制されるため、容器を高価な耐食性金属で作製する必要がないという利点があり、例えば、一般的なステンレス鋼等の低グレード金属を用いることができる。
【0112】
[0114]一態様では、ガード床内の流量は、0.1床体積/時間(bed volumes per hour)(BV/hr)〜50BV/hrの範囲、例えば1BV/hr〜20BV/hr、又は6BV/hr〜10BV/hrである。有機媒体の床体積は、樹脂床が占める体積と等しい媒体の体積である。流量が1BV/hrであるとは、樹脂床が占める体積と等しい量の有機液体が1時間で樹脂床を通過することを意味する。
【0113】
[0115]総ヨウ化物濃度が高い精製酢酸生成物により樹脂が消耗するのを回避するため、一態様では、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下、例えば、好ましくは1wppm以下の場合に底部流127中の精製酢酸生成物をガード床に接触させる。例示的な一態様では、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度は0.01wppm〜5wppm、例えば0.01wppm〜1wppmであってもよい。ヨウ化物濃度が5wppmを超えると、規格外酢酸の再処理が必要になる場合がある。総ヨウ化物濃度には、ヨウ化C
1〜C
14アルキル等の有機物及びヨウ化水素等の無機物の双方に由来するヨウ化物が含まれる。ガード床で処理した結果、精製酢酸組成物が得られる。一態様では、精製酢酸組成物は100wppb未満、例えば90wppb未満、50wppb未満、又は25wppb未満のヨウ化物を含む。一態様では、精製酢酸組成物は1000wppb未満、例えば、750wppb未満、500wppb未満、又は250wppb未満の腐食性金属を含む。本発明では、ニッケル、鉄、クロム、モリブデン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される金属が腐食性金属に含まれる。範囲に関しては、精製酢酸組成物は0〜100wppb、例えば1〜50wppbのヨウ化物、及び/又は0〜1000wppb、例えば1〜500wppbの腐食性金属を含んでいてもよい。他の態様では、ガード床により、粗酢酸生成物からヨウ化物の少なくとも25重量%、例えば、少なくとも50重量%、又は少なくとも75重量%が除去される。一態様では、ガード床により、粗酢酸生成物から腐食性金属の少なくとも25重量%、例えば、少なくとも50重量%、又は少なくとも75重量%が除去される。
【0114】
[0116]他の態様では、生成物流を陽イオン交換体と接触させてリチウム化合物を除去してもよい。酸性陽イオン交換体は、酸性樹脂、例えば、強酸陽イオン交換マクロ網状樹脂、マクロ多孔質樹脂又はメソ多孔質樹脂を含む。理論に束縛されるものではないが、10wppmまたはそれを超える量のリチウム化合物を含む生成物流をイオン交換樹脂に供給すると、処理生成物中の金属が置換される。イオン交換樹脂の上流で陽イオン交換体を用いるとこのような問題を克服できるという利点がある。陽イオン交換体に接触させた後、生成物流中のリチウムイオン濃度は、50重量ppb(wppb)またはそれを下回る量、例えば10wppbまたはそれを下回る量、又は5wppbまたはそれを下回る量となり得る。
【0115】
[0117]生成物流をイオン交換樹脂に接触させてヨウ化物を除去してもよいが、生成物流をフラッシュさせないか、又は活性炭を含む吸着系に生成物流を接触させることが好ましい。生成物流をフラッシュさせることは、生成物流から酢酸の50%超を回収するのに十分な圧力低下が生じないため効率が悪い。従って、一態様では、生成物流のフラッシュしない部分をイオン交換床に供給してヨウ化物を除去する。
【0116】
[0118]上述の図面や説明から明らかなように、様々な態様が意図されている。
E1.反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び
該蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法。
E2.該蒸気生成物流は、55〜75重量%の酢酸、24〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜8重量%の酢酸メチル、0.5〜14重量%の水、0.01〜0.8重量%のアセトアルデヒド、及び0.5重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E1に記載の方法。
E3.該蒸気生成物流は、60〜70重量%の酢酸、25〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜6.5重量%の酢酸メチル、1〜8重量%の水、0.01〜0.7重量%のアセトアルデヒド、及び0.1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E1又はE2のいずれか1態様に記載の方法。
E4.該酢酸生成物流は50wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E1〜E3のいずれか1態様に記載の方法。
E5.該酢酸生成物流は0.1〜6重量%のヨウ化メチルを含む、態様E1〜E4のいずれか1態様に記載の方法。
E6.該酢酸生成物流は0.1〜6重量%の酢酸メチルを含む、態様E1〜E5のいずれか1態様に記載の方法。
E7.該酢酸生成物流中の水濃度を1〜9重量%に維持する、態様E1〜E6のいずれか1態様に記載の方法。
E8.該蒸留工程における水の純生成量の増加は、該蒸留工程に供給される該蒸気生成物流中の水濃度に対して0.5%またはそれを下回る量である、態様E1〜E7のいずれか1態様に記載の方法。
E9.該液体リサイクル流は、0.01〜0.5重量%の金属触媒、5〜20重量%のヨウ化リチウム、10〜2500wppmの腐食性金属、60〜90重量%の酢酸、0.5〜5重量%のヨウ化メチル、0.1〜5重量%の酢酸メチル、0.1〜8重量%の水、0.0001〜1重量%のアセトアルデヒド、及び0.0001〜0.5重量%のヨウ化水素を含む、態様E1〜E8のいずれか1態様に記載の方法。
E10.該オーバーヘッド流を相分離し軽質液相と重質液相を形成させる、態様E1〜E9のいずれか1態様に記載の方法。
E11.該軽質液相は、1〜40重量%の酢酸、10重量%またはそれを下回る量のヨウ化メチル、1〜50重量%の酢酸メチル、40〜80重量%の水、5重量%またはそれを下回る量のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E10に記載の方法。
E12.該軽質液相は、5〜15重量%の酢酸、3重量%またはそれを下回る量のヨウ化メチル、1〜15重量%の酢酸メチル、70〜75重量%の水、0.1〜0.7重量%のアセトアルデヒド、及び0.001〜0.5重量%のヨウ化水素を含む、態様E10に記載の方法。
E13.反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び
該蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び0.1〜6重量%のヨウ化メチルを含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法。
E14.該蒸気生成物流は、55〜75重量%の酢酸、24〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜8重量%の酢酸メチル、0.5〜14重量%の水、0.01〜0.8重量%のアセトアルデヒド、及び0.5重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E13に記載の方法。
E15.該酢酸生成物流は300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E13又はE14のいずれか1態様に記載の方法。
E16.該酢酸生成物流は0.1〜6重量%の酢酸メチルを含む、態様E13〜E15のいずれか1態様に記載の方法。
E17.該酢酸生成物流中の水濃度を1〜9重量%に維持する、態様E13〜E16のいずれか1態様に記載の方法。
E18.該液体リサイクル流は、0.01〜0.5重量%の金属触媒、5〜20重量%のヨウ化リチウム、10〜2500wppmの腐食性金属、60〜90重量%の酢酸、0.5〜5重量%のヨウ化メチル、0.1〜5重量%の酢酸メチル、0.1〜8重量%の水、0.0001〜1重量%のアセトアルデヒド、及び0.0001〜0.5重量%のヨウ化水素を含む、態様E1〜E17のいずれか1態様に記載の方法。
E19.45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、14重量%またはそれを下回る量の水、0.005〜1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む混合物を蒸留すること、及び
該オーバーヘッド流を凝縮させて、分離した液相を形成することを含む、酢酸を製造する方法。
E20.該混合物の一部から酢酸を含む側部取り出し流を分離することを更に含み、側部取り出し流中の水濃度を1〜3重量%に維持し、側部取り出し流中のヨウ化水素濃度を300wppmまたはそれを下回る量に維持する、態様E19に記載の方法。
E21.水、ロジウム触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルの存在下、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテル又はこれらの混合物を含む反応物質供給流を反応器内でカルボニル化して反応器内で反応媒体を生成させること、
反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、0.01〜0.5重量%のロジウム触媒、5〜20重量%のヨウ化リチウム、10〜2500wppmの腐食性金属、60〜90重量%の酢酸、0.5〜5重量%のヨウ化メチル、0.1〜5重量%の酢酸メチル、及び0.1〜8重量%の水を含む液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、15重量%またはそれを下回る量の水、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流とを形成すること、及び
該蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法。
E22.該蒸気生成物流は0.005〜1重量%のアセトアルデヒドを含む、態様E21に記載の方法。
E23.該蒸気生成物流は0.01〜0.8重量%のアセトアルデヒドを含む、態様E21又はE22のいずれか1態様に記載の方法。
E24.該蒸気生成物流は、55〜75重量%の酢酸、24〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜8重量%の酢酸メチル、0.5〜14重量%の水、及び0.5重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E21〜E23のいずれか1態様に記載の方法。
E25.該蒸気生成物流は0.01〜0.7重量%のアセトアルデヒドを含む、態様E21〜E24のいずれか1態様に記載の方法。
E26.該蒸気生成物流は、60〜70重量%の酢酸、25〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜6.5重量%の酢酸メチル、1〜8重量%の水、0.01〜0.7重量%のアセトアルデヒド、及び0.1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E25に記載の方法。
E27.フラッシュ容器内に供給した該反応媒体の15%〜55%を該蒸気生成物流として取り出す、態様E21〜E26のいずれか1態様に記載の方法。
E28.フラッシュ容器内に供給した該反応媒体の45%〜85%を該液体リサイクル流として取り出す、態様E21〜E27のいずれか1態様に記載の方法。
E29.該酢酸生成物流は50wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E21〜E28のいずれか1態様に記載の方法。
E30.該酢酸生成物流は0.1〜6重量%のヨウ化メチルを含む、態様E21〜E29のいずれか1態様に記載の方法。
E31.該酢酸生成物流は0.1〜6重量%の酢酸メチルを含む、態様E21〜E30のいずれか1態様に記載の方法。
E32.該酢酸生成物流中の水濃度を1〜9重量%に維持する、態様E21〜E31のいずれか1態様に記載の方法。
E33.該オーバーヘッド流を相分離し軽質液相と重質液相を形成させる、態様E21〜E32のいずれか1態様に記載の方法。
E34.該軽質液相は、1〜40重量%の酢酸、10重量%またはそれを下回る量のヨウ化メチル、1〜50重量%の酢酸メチル、40〜80重量%の水、5重量%またはそれを下回る量のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、態様E33に記載の方法。
E35.該軽質液相は、5〜15重量%の酢酸、3重量%またはそれを下回る量のヨウ化メチル、1〜15重量%の酢酸メチル、70〜75重量%の水、0.1〜0.7重量%のアセトアルデヒド、及び0.001〜0.5重量%のヨウ化水素を含む、態様E33に記載の方法。
E36.該重質液相の一部を処理して、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合物から成る群から選択される少なくとも1種の過マンガン酸還元性化合物を除去する、態様E33に記載の方法。
E37.該軽質液相の一部を該反応器にリサイクルする、態様E33に記載の方法。
E38.該腐食性金属は、鉄、ニッケル、クロム及びモリブデンの1種以上を含む、態様E21〜E37のいずれか1態様に記載の方法。
E39.該反応媒体中の酢酸リチウム濃度を0.3〜0.7重量%に維持することを更に含む、態様E21〜E38のいずれか1態様に記載の方法。
E40.該酢酸生成物流はヨウ化メチル及び酢酸メチルを含み、その各々の量は該側部流中の水濃度の±0.9重量%の範囲内である、態様E21〜E39のいずれか1態様に記載の方法。
【0117】
[0119]本発明を詳細に説明したが、当業者であれば本発明の精神及び範囲内での変更が容易に自明であろう。上述の説明を考慮して、当該分野での関連する知見、背景技術及び発明を実施するための形態に関連した上述の参考文献、開示内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。更に、当然のことながら、本発明の側面及び様々な態様の部分、以下の記述及び/又は添付の特許請求の範囲で列挙した様々な特徴は、その全体又は一部を組み合わせたり、入れ替えたりしてもよい。当業者であれば、様々な態様に関する上述の説明において、他の態様に言及する態様は別の態様と適切に組み合わせてもよいことが理解されよう。更に、当業者であれば、上述の説明は単なる例示であって本発明を限定するものではないことが理解されよう。
【実施例】
【0118】
[0120]本発明は以下の非限定的な実施例によって十分に理解されよう。
実施例1
[0121]ロジウムヨウ化カルボニル化合物としてのロジウム(約900重量ppm)、ヨウ化メチル(約9重量%)、ヨウ化リチウム、水、及び酢酸メチルを含む反応器にメタノール、一酸化炭素、及び水素を供給して水素分圧を少なくとも約0.27atm(即ち、少なくとも約4psi)に維持した。水濃度は4重量%未満であった。反応器を約190℃〜200℃の温度に維持し、約28atm超(即ち、約400psig超)の圧力で運転した。反応器内の液面を感知する液位制御装置により、液体反応媒体を連続的に取り出し、約150℃、約3.2atm(即ち、32.3psig)で運転している単一トレイフラッシュ容器に供給した。反応器の排出口から回収した一酸化炭素を、取り出した反応媒体に散布し、その後フラッシュ容器に投入した。反応媒体の約28%を蒸気生成物流として送り出し、残りの量を液体として反応器に戻す。蒸気生成物流を約50℃の温度で取り出した。蒸気生成物流の組成は、66.35重量%の酢酸、25.01重量%のヨウ化メチル、5.97重量%の酢酸メチル、1.53重量%の水、0.1重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%未満のヨウ化水素であった。
【0119】
[0122]蒸気生成物流を軽質分留塔に供給してオーバーヘッドと側部取り出し流を得た。0.01Mの酢酸リチウムのアセトン(50ml)溶液で十分な量の側部取り出し流試料を滴定して、典型例である側部取り出し流中のHI濃度を求めた。pH電極をMetrohm 716 DMS Titrinoと共に用いて動的当量点滴定モードで終点を求めた。酢酸リチウム滴定試薬の消費量に基づき、次の式からHI濃度を重量%で算出した。
【0120】
【数1】
【0121】
[0123]このHI滴定方法を用いて、約1.9重量%の水、約2.8重量%のヨウ化メチル、及び約2.5重量%の酢酸メチルを含む側部取り出し流組成物試料を試験した。オーバーヘッド軽質留分からの軽質液相を反応系にリサイクルした場合、HI濃度は50wppmから300wppmまで変化した。こうして、蒸気生成物流中のヨウ化メチル濃度を維持することによって、軽質分留塔でのHI濃度を制御することができた。
【0122】
実施例2
[0124]反応媒体中のヨウ化メチルを約12重量%とし、フラッシュ容器の圧力をわずかに低い約3.1atm(即ち、30.8psig)とした以外は実施例1の反応を繰り返した。反応媒体の約31%を蒸気生成物流として送り出し、残りの量を液体として反応器に戻した。蒸気生成物流の組成は、61.97重量%の酢酸、30.34重量%のヨウ化メチル、5.05重量%の酢酸メチル、1.54重量%の水、0.09重量%のアセトアルデヒド、及び1重量%未満のヨウ化水素であった。
【0123】
[0125]軽質留分オーバーヘッドからの軽質液相の一部を反応系にリサイクルした。側部
取り出し流は、1.5重量%の水、3.6重量%の酢酸メチル、2.1重量%のヨウ化メ
チル、及び25wppm未満のHIを含んでおり、残部は酢酸を含んでいた。HI濃度が
低すぎたため、滴定により直接測定することはできなかった。側部取り出し流に他の陽イ
オンが存在したため、HIを直接測定することが困難であった。無機ヨウ化物の総量、即
ち、最大限のHI総量を直接測定した。他の無機ヨウ化物は、ヨウ化リチウムに加えて腐
食性金属のヨウ化物を含んでいることがある。実施例2でも、蒸気生成物流中のヨウ化メ
チル濃度を維持することによって、軽質分留塔中、そして最終的には側部取り出し流中の
HI濃度を制御できるという利益が得られた。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
水、ロジウム触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルの存在下、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテル又はこれらの混合物を含む反応物質供給流を反応器内でカルボニル化して反応器内で反応媒体を生成させること、
反応媒体をフラッシュ容器内で分離して、0.01〜0.5重量%のロジウム触媒、5〜20重量%のヨウ化リチウム、10〜2500wppmの腐食性金属、60〜90重量
%の酢酸、0.5〜5重量%のヨウ化メチル、0.1〜5重量%の酢酸メチル、及び0.1〜8重量%の水を含む液体リサイクル流と、45〜75重量%の酢酸、24重量%から36重量%未満のヨウ化メチル、9重量%またはそれを下回る量の酢酸メチル、15重量%またはそれを下回る量の水、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む蒸気生成物流を形成すること、及び
該蒸気生成物流の少なくとも一部を第1の塔で蒸留して、酢酸及び300wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む酢酸生成物流と、ヨウ化メチル、水及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流を得ることを含む、酢酸を製造する方法。
[請求項2]
該蒸気生成物流は0.005〜1重量%のアセトアルデヒドを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
該蒸気生成物流は0.01〜0.8重量%のアセトアルデヒドを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
該蒸気生成物流は、55〜75重量%の酢酸、24〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜8重量%の酢酸メチル、0.5〜14重量%の水、及び0.5重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、請求項1に記載の方法。
[請求項5]
該蒸気生成物流は0.01〜0.7重量%のアセトアルデヒドを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項6]
該蒸気生成物流は、60〜70重量%の酢酸、25〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜6.5重量%の酢酸メチル、1〜8重量%の水、0.01〜0.7重量%のアセトアルデヒド、及び0.1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、請求項5に記載の方法。
[請求項7]
フラッシュ容器内に供給した該反応媒体の15%〜55%を該蒸気生成物流として取り出す、請求項1に記載の方法。
[請求項8]
フラッシュ容器内に供給した該反応媒体の45%〜85%を該液体リサイクル流として取り出す、請求項1に記載の方法。
[請求項9]
該酢酸生成物流は50wppmまたはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、請求項1に記載の方法。
[請求項10]
該酢酸生成物流は0.1〜6重量%のヨウ化メチルを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項11]
該酢酸生成物流は0.1〜6重量%の酢酸メチルを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項12]
該酢酸生成物流中の水濃度を1〜9重量%に維持する、請求項1に記載の方法。
[請求項13]
該オーバーヘッド流を相分離し軽質液相と重質液相を形成させる、請求項1に記載の方法。
[請求項14]
該軽質液相は、1〜40重量%の酢酸、10重量%またはそれを下回る量のヨウ化メチル、1〜50重量%の酢酸メチル、40〜80重量%の水、5重量%またはそれを下回る量のアセトアルデヒド、及び1重量%またはそれを下回る量のヨウ化水素を含む、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
該軽質液相は、5〜15重量%の酢酸、3重量%またはそれを下回る量のヨウ化メチル、1〜15重量%の酢酸メチル、70〜75重量%の水、0.1〜0.7重量%のアセトアルデヒド、及び0.001〜0.5重量%のヨウ化水素を含む、請求項13に記載の方法。
[請求項16]
該重質液相の一部を処理して、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合物から成る群から選択される少なくとも1種の過マンガン酸還元性化合物を除去する、請求項13に記載の方法。
[請求項17]
該軽質液相の一部を該反応器にリサイクルする、請求項13に記載の方法。
[請求項18]
該腐食性金属は、鉄、ニッケル、クロム及びモリブデンの1種以上を含む、請求項1に記載の方法。
[請求項19]
該反応媒体中の酢酸リチウム濃度を0.3〜0.7重量%に維持することを更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項20]
該酢酸生成物流はヨウ化メチル及び酢酸メチルを含み、その各々の量は該側部流中の水濃度の±0.9重量%の範囲内である、請求項1に記載の方法。