(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置指示器の前記回転角を検出するための信号の送信指示を行う前記コマンドを受信する期間と、前記位置指示器が前記第1の位置指示信号を送信する期間と、前記位置指示器の前記回転角を検出するための信号の送信指示を行う前記コマンドの受信に応じて、前記第1の位置指示信号を送信する前記期間とは異なる、前記第2の位置指示信号を送信する期間を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の位置指示器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための実施例について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施例(基本構成例)
2.第2の実施例(回転角情報を有する位置指示器を使用する例)
3.第3の実施例(ペン先およびイレーサを備えた位置指示器を使用する例)
【0013】
<1.第1の実施例>
[位置検出装置の外観説明]
図1は、本発明の位置検出装置の一実施例としての外観図を示す。本実施例による位置検出装置10は、ペン形状の位置指示器と、タブレットとで構成される。
【0014】
位置指示器は、タブレットの位置検出領域2a上で使用する。この位置検出領域2a上では、位置指示器の指示位置(座標)が検出できるようになっている。また位置指示器には位置指示器の長手方向の上下方向に移動可能なサイドレバー(以下、スライダと称する)1cbを設けてあり、スライダ1cbの位置を調整することにより筆の色や太さ等を設定できるようになっている。また位置指示器は、ペン先部に加えられる筆圧情報が検出できるようになっている。さらに位置指示器には、位置指示器を個々に識別するための固有のID情報が格納されている。
【0015】
スライダ1cbの位置情報(以下、スライダ情報と称する)や、筆圧情報、位置指示器に個別に割り振られたID情報などは、本実施例ではタブレットが位置指示器の指示位置を検出する座標検出期間とは別の期間に、位置指示器からタブレットに対して送信される。
【0016】
タブレットは、外部のコンピュータ装置(図示略)に接続されている。タブレットは、位置指示器が指示した座標位置を検出し、その座標情報や筆圧等の情報をコンピュータ装置に出力する。コンピュータ装置は、タブレットからの座標や筆圧等の情報に基づき必要な処理を行う。
【0017】
本実施例のタブレットは、位置指示器からの信号を検出するタブレットセンサを、ITO(Indium Tin Oxide)膜で構成された複数の透明ループコイル(図示略)によって形成しており、その透明ループコイルを、液晶パネル等で構成された表示部2bの上に配置してある。タブレットからは、位置指示器に対して各種情報を要求するためのコマンドが送信されるが、前述した透明ループコイルの抵抗値は数キロ〜数十キロΩと高いため送信される信号は微弱なものとなる。
【0018】
このため本実施例では、位置指示器側で受信されるタブレットからの信号を増幅することにより、信号の有無を正しく検出できるようにした。このときタブレット側から送信するコマンドは信号の有りまたは無しとして時系列に現すとともに、位置指示器とタブレットとの間で動作のタイミングを合わせることにより、コマンドの送受信が短時間で正確に行われるようにしている。この動作の詳細については後述する。
【0019】
[位置指示器の構成]
次に、
図2を参照して、位置指示器の構成について説明する。位置指示器はペン形状を有しており、1bは芯体で、芯体1bの先端部分は本体1aから突出している。この芯体1bの先端部分をペン先としてタブレット面に接触するようにして操作する。12は中空形状のコイルで、コイル12中を芯体1bが貫いている。さらに芯体1bの先端部分と逆側には可変容量コンデンサ23が配置されている。
【0020】
可変容量コンデンサ23は、芯体1bに加えられる筆圧の大きさに応じてその容量が変化する。可変容量コンデンサ23に加えられた荷重は後述する筆圧検出回路21によって筆圧情報として検出される。
【0021】
また本体1aには、長手方向に所定の長さを持つ溝1caが設けられており、溝1caには、溝1caの端部から端部までを移動可能なスライダ1cbが取り付けられている。溝1ca上でのスライダ1cbのアナログ的な移動情報は後述するスライダ検出回路22によって検出される。
【0022】
図3は、位置指示器の内部構成例を示すブロック図である。位置指示器には、発振回路11、コイル12、コントロール回路13、増幅回路14、スイッチ15、検波回路16、信号強度判定部としてのコンパレータ17、シリアル・パラレル変換回路18(以下、S/P変換回路18と称する)、切替回路19、ID格納メモリ20、筆圧検出回路21、スライダ検出回路22、クロック発生回路25、電源26、が設けられている。
【0023】
発振回路11は、コントロール回路13から供給される発振制御信号Scに基づいてコイル12と共に動作し、所定の周波数のコイル信号Sdをコイル12に発生させる回路である。コイル12は、コイル信号Sdにより交流磁界を発生する。タブレットは、位置指示器のコイル12から発生する交流磁界を検出することにより、位置指示器の指示座標および筆圧等の情報を求める。
【0024】
コントロール回路13は、位置指示器を構成する各部の制御を行う。具体的には、前述した発振回路11への発振制御信号Scの供給、後述するS/P変換回路18へのS/P変換クロックShの供給、後述する筆圧検出回路21及びスライダ検出回路22への連続量検出パルスSsや連続量送出クロックSw等の供給等を行う。これらの各種制御信号の詳細については後述する。コントロール回路13としては、CPU(Central Processing Unit)を用いることができる。
【0025】
増幅回路14は、スイッチ15を介してコイル12に接続されており、コイル12に誘導されるタブレットからの信号を増幅する。検波回路16は、増幅回路14の出力信号のベルに応じた電圧を出力する。コンパレータ17は、検波回路16の出力電圧が一定電圧以上であるかどうかを検出してデジタル信号として出力する。
【0026】
S/P変換回路18は、コンパレータ17から出力されるデジタル信号をコントロール回路13から供給されるS/P変換クロックShの周期毎に読み取り、その結果をパラレルデータに変換して切替回路19に供給する。本実施例ではS/P変換回路18は3ビットの選択信号Skを出力するようにしている。
切替回路19は、S/P変換回路18から出力される選択信号Skに応じて、ID格納メモリ20、筆圧検出回路21、スライダ検出回路22のいずれかを選択して、上記選択した回路からの信号をコントロール回路13に供給する。
【0027】
ID格納メモリ20は、半導体メモリ等で構成され、位置指示器に対して個別に割り振られたID番号を格納する。筆圧検出回路21は、芯体1b(
図2参照)に加えられる筆圧を検出してデジタル値として出力する。スライダ検出回路22は、スライダ1cbによるスライダ情報を検出してデジタル値として出力する。
【0028】
筆圧検出回路21及びスライダ検出回路22は、コントロール回路13から供給される連続量検出パルスSsに基づいて動作する。連続量検出パルスSsは、筆圧又はスライダ1cbの操作情報等の連続量の検出を行う期間を指定するための信号であり、本実施例では後述する連続送信期間中に行うようにしている。
【0029】
筆圧検出回路21には、抵抗211、可変容量コンデンサ212、コンパレータ213、アンドゲート214、カウンタ回路215、P/S変換回路216、が含まれる。
【0030】
可変容量コンデンサ212と抵抗211とは時定数回路を構成しており、この時定数回路に連続量検出パルスSsが入力されると、可変容量コンデンサ212の容量に応じて立ち上がり速度が変化するような信号Stが出力される。
【0031】
コンパレータ213は一定の閾値を有しており、設定された閾値に基づいて信号Stをデジタル信号に変換する。アンドゲート214は、一つの反転入力と一つの非反転入力を持ち、反転入力側の端子にはコンパレータ213からの出力信号が加えられ、非反転入力側の端子には、連続量検出パルスSsが加えられる。このように構成することによって、アンドゲート214からは、可変容量コンデンサ212に加えられる筆圧に応じてパルス幅が変化するような筆圧検出信号Suが出力される。
【0032】
カウンタ回路215には、イネーブル端子ENと、クロック入力端子CKと、リセット端子Rが設けてある。イネーブル端子ENには、アンドゲート214から出力された筆圧検出信号Suが入力され、クロック入力端子CKには、発振回路11からのコイル信号Sdが供給される。またリセット端子Rには連続量検出パルスSsが入力される。
【0033】
カウンタ回路215は、イネーブル端子ENに加えられる筆圧検出信号Suのパルス幅の期間だけ、クロック入力端子CKに入力されるコイル信号Sdをカウントし、その数値をP/S変換回路226に出力する。なお、リセット端子Rに入力される連続量検出パルスSsがロウレベルの期間は、カウンタ回路215によるカウント値がリセットされる。本実施例では筆圧情報を10ビットのデータで示すようにしているため、このカウンタ回路215が出力するデータも10ビットとなっている。なお、本実施例では筆圧情報を10ビットで示す場合を例にあげたが、ビット数はこれに限定されるものではない。
【0034】
P/S変換回路216は、カウンタ回路215から送信される10ビットのデータを、コントロール回路13から供給される連続量検出パルスSsの立ち下がりタイミングで取り込む。その後、P/S変換回路216は、コントロール回路13からの連続量送出クロックSwに同期して、カウンタ回路215からの10ビットのデータを切替回路19に順次出力する。
【0035】
スライダ検出回路22は、可変抵抗221と、コンデンサ222と、コンパレータ223と、アンドゲート224と、カウンタ回路225と、P/S変換回路226とで構成される。この可変抵抗221は、スライダ1cbの操作によって抵抗値が変化するようになっている。可変抵抗221とコンデンサ222とは時定数回路を構成しており、この時定数回路に連続量検出パルスSsが入力されると、可変抵抗221の抵抗値に応じて立ち上がり速度が変化するような信号が、前述した筆圧検出回路21の場合と同様に出力される。以下の各回路の動作は筆圧検出回路21と同一であるため、説明は省略する。なお、可変抵抗221の代わりに、可変容量コンデンサやインダクタンス素子等を用いてもよい。
【0036】
クロック発生回路25は、クロック信号Saを発生しコントロール回路13に供給する。コントロール回路13は、このクロック信号Saによって各種動作のタイミングを作成している。このクロック信号Saとしては、比較的低い周波数、例えば8KHz程度を採用するものとする。電源26は、上述した各回路を駆動するための電源としての電池である。
【0037】
[タブレットの構成]
次に、
図4を参照して、タブレットの構成について説明する。タブレットは、液晶パネル等よりなる表示部2bの上面にセンサガラス206が重ねられて構成される。センサガラス206には、フレキシブル基板202〜フレキシブル基板205が接続されている。
【0038】
センサガラス206は、例えば厚さ0.4mm程度のガラスを2枚張り合わせたものとなっており、各ガラスにはITO膜によってループコイル群30(図示略)のパターンが形成されている。ループコイル群30は、X軸方向に配列されたループコイルX1〜X40と、Y軸方向に配列されたループコイルY1〜Y30(
図4においてはいずれも図示略)とによって構成されている。
【0039】
そして、2枚のガラスの一方にはX軸方向に配列されるループコイルのパターンが、もう一方にはY軸方向に配列されるループコイルのパターンが、それぞれエッチングによって形成されている。これらのガラスは、ITO膜の面を互いに向き合わせて、間に透明な絶縁シートを挟むようにして作られている。なお、各ループコイルの配置の詳細については、
図5を参照して後述する。
【0040】
フレキシブル基板202は、例えばポリイミド材をベースにしたフレキシブル基板であり、センサガラス206のループコイルX1〜X40の各ラインのパターンに接続され、ループを形成するための折り返し部分のパターンが配置されている。フレキシブル基板203も、例えばポリイミド材をベースにしたフレキシブル基板であり、センサガラス206のループコイルX1〜X40の各ラインのパターンに接続される。そして、フレキシブル基板203に取り出された端子は、後述する選択回路31へ接続されている。
【0041】
同様に、フレキシブル基板204も例えばポリイミド材をベースにしたフレキシブル基板であり、センサガラス206のループコイルY1〜Y30の各ラインのパターンに接続され、ループを形成するための折り返し部分のパターンが配置されている。さらに、フレキシブル基板205も例えばポリイミド材をベースにしたフレキシブル基板であり、センサガラス206のループコイルY1〜Y30の各ラインのパターンに接続される。そして、フレキシブル基板205に取り出された端子は、後述する選択回路31へ接続されている。
【0042】
次に、
図5を参照して、タブレットの内部構成について説明する。タブレットは、ループコイル群30と、選択回路31、CPU33(制御部)、切替回路34、増幅回路35、バンドバスフィルタ36(以下、BPF36と称する)、検波回路37、S/H回路38、A/D変換回路39、スイッチ40、信号発生回路41、より構成されている。ループコイル群30は、前述したようにX軸方向およびY軸方向にそれぞれ、ループコイルX1〜X40及び、ループコイルY1〜Y30して配置されている。
【0043】
なお、
図5では一つのループコイルにつきその両端を、AおよびBの符号を付加して表示している。たとえば、ループコイルX1の両端をX1AおよびX1Bとして表示する。
【0044】
ループコイル群30によって構成される位置検出領域2a(
図1参照)は、ちょうど表示部2bの表示エリアと一致するようにループコイル群30の寸法や配列ピッチが決定されている。そして、ループコイル群30を形成するループコイルX1〜X40と、ループコイルY1〜Y30の始端と終端は、各ループコイルを選択する選択回路31に接続されている。選択回路31は、CPU33から供給されるコイル選択信号Spに基づいて、これらのX方向及びY方向の各ループコイルの中から一組の端子をラインLa及びラインLbとして選択する。
【0045】
選択回路31によって選択されたラインLa及びラインLbは、切替回路34に接続される。切替回路34は、CPU33から供給される送受切替信号SmによってラインLa及びラインLbの接続先をそれぞれ、送信側(T)または受信側(R)に切替えることができるようになっている。
【0046】
切替回路34が受信側(R)に切替えられた際には、選択回路31によって選択されたループコイルはラインLa及びラインLbを介して増幅回路35に接続され、位置指示器のコイル12から送信される信号を受けてこれを増幅する。
【0047】
増幅回路35の出力は、BPF36に接続され、BPF36は、増幅回路35の出力信号の中から目的の周波数の成分のみを抽出して信号Sqとして出力する。BPF36からの出力信号Sqは検波回路37に供給され、検波回路37はBPF36からの出力信号Sqのレベルに応じた電圧を出力する。
【0048】
S/H回路38とA/D変換回路39は、CPU33からの制御に基づいて、検波回路37から出力される検波出力Srの電圧を定期的にデジタル値に変換する。
【0049】
切替回路34が送信側(T)に切替えられた際には、選択回路31によって選択されたループコイルはスイッチ40を介して信号発生回路41に接続され、スイッチ40がオンのときに選択されたループコイルに交流電流が流れるようになっている。スイッチ40は、CPU33から供給される送信制御信号Snに基づいて、そのオンとオフとが切り替えられる。スイッチ40のオンとオフとが時系列に切替えられることにより、位置指示器に対して制御信号が送信される。
【0050】
この制御信号には、ID情報を要求する場合(本実施例では“100”)や、筆圧情報を要求する場合(本実施例では“101”)や、スライダ情報を要求する場合(本実施例
は“110”)などのコマンド情報が含まれる。なお、コマンドはこれらに限定されるものではなく、位置指示器が筆圧、ID、スライダ以外の他の情報を有している場合には、これらの他の情報を取得する他のコマンドを使用してもよい。
【0051】
[実施例の動作]
次に、本実施例の動作について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
(1)座標検出期間
(2)コマンド送信期間
(3)タイミング抽出期間
(4)データ受信期間
(5)位置指示器がタブレット上に降ろされたときの初期動作
実際の動作は、(5)、(1)〜(4)の順に行われるが、説明を分かりやすくするために、説明は上記の順番で行うものとする。
【0052】
図6は、位置指示器に対する制御信号としてのコマンド“101”を送信することにより、位置指示器の筆圧情報を検出する動作を示したものである。
図7は、位置指示器に対する制御信号としてのコマンド“100”を送信することにより、位置指示器のID情報を検出する動作を示したものである。
図8は、位置指示器に対する制御信号としてのコマンド“110”を送信することにより、位置指示器のスライダ情報を検出する動作を示したものである。これらの
図6〜
図8において、クロック信号Sa〜Srの横軸は時間を示し、それぞれ
図3および
図5の同一記号で表示された箇所の信号波形を示している。
【0053】
なお、
図6〜
図8では、位置指示器が、タブレットのセンサガラス206上のループコイルX11とループコイルY8の交点付近に置かれているものとし、後述する初期動作によって、CPU33は位置指示器がループコイルX11とループコイルY8の交点付近に置かれていることが予め認識されているものとして説明をする。
【0054】
(コマンド“101”を送信した場合の動作)
図6に基づき、タブレットから位置指示器に対して筆圧情報を要求するコマンド“101”を送信した場合の動作について説明する。
【0055】
(1)座標検出期間
位置指示器のコントロール回路13は、タブレットで座標を検出するために必要な時間、例えば1mS以上の間、コイル12から連続して信号を送信するよう、発振制御信号Scを発振回路11に供給する。これにより、発振制御信号Scが供給されている間、コイル12にはコイル信号Sdが発生し、このコイル信号Sdによる交流磁界が送信されるようになる。この動作を連続送信動作と呼ぶことにする。位置指示器が連続送信動作を行う期間は、タブレットにおいて座標検出が行われる期間であると同時に、位置指示器においては後述する筆圧情報およびスライダ情報を検出する期間でもある。
【0056】
タブレットのCPU33は、位置指示器からの連続送信動作が開始されるタイミングを検出するため予め、選択回路31に対してループコイルX11(またはY8)を選択するためのコイル選択信号Spを送出する。また、CPU33は、切替回路34を受信側(R)に切替えるような送受切替信号Smを送出する。
【0057】
このとき、位置指示器のコイル12からコイル信号Sdが送信されていれば、タブレット内の検波回路37からの検波出力Srには、電圧が発生するはずである。
【0058】
CPU33は、A/D変換回路39からの出力結果を調べて、検波出力Srに一定時間、例えば128μS以上の期間継続して電圧が発生した際に位置指示器からの連続送信動作が開始されたものと判断する。この動作は、後述するデータ受信期間における位置指示器から間欠的に送信される信号と区別するためのものである。CPU33は、続いて座標検出動作を行う。
【0059】
CPU33は、ループコイルX11を中心とする5本のループコイルについて位置指示器からの信号レベルを求めるため、ループコイルX9〜X13を順次選択するようにコイル選択信号Spを送出する。このコイル選択信号Spは、1本のループコイルについて例えば64μSの期間ずつ順次選択するように送出される。
【0060】
このとき、検波回路37からの検波出力Srには、選択したループコイルと位置指示器のコイル12との距離に応じた電圧が現れる。すなわち、位置指示器に最も近いループコイルX11を選択した際に最も高い電圧が得られるような電圧分布となる。(
図6のSr)この電圧分布におけるピークレベルと隣り合うコイルの電圧とから、位置指示器の指示位置のX座標を求めることができる。
【0061】
続いて、CPU33は、ループコイルY8を中心とする5本のループコイルについて位置指示器からの信号レベルを求めるため、ループコイルY6〜X10を順次選択するようにコイル選択信号Spを送出する。ここでもX軸ループコイルを選択したときと同様に、1本のループコイルについて64μSの期間ずつ順次選択する。このとき、検波回路37からの検波出力Srには、選択したループコイルと位置指示器のコイル12との距離に応じた電圧が現れる。すなわち、位置指示器に最も近いループコイルY8を選択した際に最も高い電圧が得られるような電圧分布となる。(
図6のSr)この電圧分布におけるピークレベルと隣り合うコイルの電圧とから、位置指示器の指示位置のY座標を求めることができる。
【0062】
次にCPU33は、位置指示器からの連続送信動作が終了するのを待つため、選択回路31に対して、ループコイルX11(またはY8)を選択するためのコイル選択信号Spを送出する。このとき、前述した座標検出動作においてピーク電圧が発生したループコイル(中心コイルと呼ぶ)が隣接するコイルに移動していた場合には、位置指示器の指示位置が移動したものと判断して、更新された中心コイルを選択するようにする。位置指示器からの連続送信が終了すると、検波出力Srの電圧はしだいに低下するので、CPU33は検波出力Srの電圧が一定の閾値Vth以下になった時点で連続送信が終了したと判断して、次に説明するコマンド送信動作に移行する。
【0063】
タブレットでの座標検出動作が行われている間、すなわち、位置指示器からコイル信号Sdの連続送信が行われている間は、位置指示器内の筆圧検出回路21による筆圧検出動作およびスライダ検出回路によるスライダ検出動作も行われる。本実施例では、筆圧検出動作とスライダ検出動作は同時に行われるが、以下、筆圧検出動作について説明する。
【0064】
位置指示器のコントロール回路13は、前述した連続送信動作を開始すると、発振回路11の発振出力が十分に安定するまでの時間、例えば64μS経過してから、連続量検出パルスSsを送出する。コントロール回路13から筆圧検出回路21に対して連続量検出パルスSsが入力されると、前述した時定数回路の出力側には、筆圧に応じて立ち上がり速度が変化するような信号Stが現れる。また、アンドゲート214からは、筆圧に応じてパルス幅が変化するような筆圧検出信号Suが出力される。
【0065】
筆圧検出信号Suはカウンタ回路215のイネーブル端子ENに入力され、筆圧検出信号のパルス幅の期間だけ、カウンタ回路215のクロック入力端子CKに入力されるコイル信号Sdの波の数がカウントされる。カウントされた数値は10ビットの筆圧情報としてP/S変換回路216から出力される。
【0066】
(2)コマンド送信期間
タブレットのCPU33は、検波出力Srの電圧が一定の閾値Vth以下となることにより連続送信の終了を検出すると、コマンド送信動作に移行する。このとき、選択回路31は位置指示器に最も近いループコイルが選択されたままの状態を維持する。
CPU33は、切替回路34を送信側(T)に切替えるような送受切替信号Smを送出する。さらにCPU33は、スイッチ40に対して送信制御信号Snを送出する。この送信制御信号Snは例えば128μS毎に、「1」、「0」、「1」と順次出力する。
【0067】
送信制御信号Snが「1」の期間は、選択回路31によって選択されたループコイルに信号発生回路41が接続され、ループコイルには交流電流が流れる。ループコイルはITO膜により形成されているので、抵抗値は数キロΩから数十キロΩ程度と高いため流れる電流は少なが、位置指示器のコイル12とループコイルとの距離は比較的近いので、位置指示器のコイル12には、例えば数ミリボルト程度の信号は発生するものである。
【0068】
位置指示器のコントロール回路13は、連続送信動作を終了すると、クロック信号Saの3サイクルの期間だけ、スイッチ15をオンとするような制御信号Seを出力する。この期間にタブレットのループコイルから信号が送信されていると、増幅回路14の出力には、増幅器出力Sfが現れ、これに伴い、コンパレータ17からの出力Sgが「1」となる。
【0069】
このとき、タブレットから1ビットの信号を送信する期間(ここでは128μS)を、位置指示器でのクロック信号Saの周期とおよそ一致させておけば、クロック信号Saに同期して、タブレットから送信された信号を抽出することができる。
【0070】
すなわち、
図6に示すようにクロック信号Saの立下りタイミングでコンパレータ17の出力Sgの値を読めば、タブレットから送信された信号を、「1」、「0」、「1」の順に抽出することができる。S/P変換回路18から“101”が選択信号Skとして切替回路19に供給されると、切替回路19は筆圧検出回路21からの出力データを選択して送信データSbとして送出するようになる。
【0071】
即ち、位置指示器においては、連続送信動作の終了後に送信停止期間を設けて、この間にタブレットからの信号をコマンドとして受信するようにしている。一方タブレットにおいては、位置指示器からの連続送信動作の終了を検出すると、直ちに位置指示器へのコマンドの送信を開始するようにしている。これらの動作は本発明の特徴の一つである。
【0072】
(3)タイミング抽出期間
位置指示器において、タブレットからの3ビットのコマンドが検出されると、位置指示器のコントロール回路13は、クロック信号Saに同期して2回の信号送信を行う。具体的には、コントロール回路13はクロック信号Saが「1」の期間に発振制御信号Scも「1」となるように制御して、
図6に示すようにコイル12からはクロック信号Saに同期した間欠的な信号が2回送信される。
【0073】
タブレット側では、3ビットのコマンド(ここでは“101”)の送信を終了すると、CPU33は、切替回路34を受信側(R)に切替えるような送受切替信号Smを送出する。これにより、選択回路31により選択されたループコイルは増幅回路35に接続され、前述した位置指示器からの2回の送信による信号が検出され、検波出力Srが
図6のように現れる。
【0074】
このときCPU33では、A/D変換回路39の結果が一定の閾値Vthを超えた時刻を2回計測することにより、2回の計測時刻の間隔を「td」として求める。この時間tdは、位置指示器のクロック信号Saの周期とほぼ一致するはずである。CPU33は、それ以降、時間td毎に信号を検出することにより、位置指示器から送信されるデータを正確に抽出することができるのである。
【0075】
(4)データ受信期間
位置指示器では、2回の信号送信を終了すると、筆圧検出回路21は、続くクロック信号Saの立ち上がりに同期して、筆圧情報を送信データSbとして送出する。
【0076】
図6では、筆圧情報が「1011001010」の10ビットで現される場合の例を示してあり、筆圧情報を示す送信データSbは、
図6のようにクロック信号Saに同期して1ビットずつ出力される。
【0077】
このとき、コントロール回路13は、送信データSbが「1」のときはコイル信号Sdを送出し、送信データSbが「0」のときにはコイル信号Sdを送出しない。また、このデータ送出の間隔は、タブレット側で求めた時間tdとほぼ一致する。
【0078】
タブレットでは、引き続きループコイルX11(またはY8)からの信号が検出されるが、位置指示器からの送信データが「1」のときは検波出力Srには一定の閾値Vth以上の電圧が発生する。一方、送信データが「0」のときは検波出力Srには電圧が発生しない。
【0079】
CPU33は、前述したタイミング抽出期間において2回目に検波出力Srが一定の閾値Vthを超えた時刻よりも少し遅れた時刻を基点として、時間tdの整数倍に当たる時刻に、A/D変換回路39の出力結果を調べ、この出力が前記一定の閾値Vthを超えていれば「1」を保存し、Vth未満であれば「0」を保存する。この動作を10回繰り返すことにより、CPU33は位置指示器から送信された10ビットの筆圧情報の受信を完了する。ここでいう「2回目に検波出力Srが一定の閾値Vthを超えた時刻よりも少し遅れた時刻」には、例えばクロック信号Saの4分の1のサイクル等が設定してあるものとする。
【0080】
位置指示器のコントロール回路13は、筆圧情報の送信を終了すると、タブレットでの座標検出を続けて行うため、再び前述した連続送信動作を開始する。
【0081】
(コマンド“100”を送信した場合の動作)
図7は、タブレットから位置指示器に対してコマンド“100”を送信して、ID情報を検出する場合の動作について示したものである。
【0082】
図7が
図6と異なっている点は、コマンド送信期間においてタブレットのループコイルから送信する3ビットのデータが、“100”となっている点である。位置指示器のコンパレータ出力Sgには、信号が「1」、「0」、「0」の順に抽出され、S/P変換回路18は、この“100”の情報を選択信号Skとして切替回路19に供給する。切替回路19は、コマンド“100”に対応するID格納メモリ20からの信号を選択して送信データSbとしてコントロール回路13に供給する。
図7では、ID格納メモリ20に格納されたID情報が「0011100110」の10ビットで現される場合について示している
【0083】
(コマンド“110”を送信した場合の動作)
図8は、タブレットから位置指示器に対してコマンド“110”を送信して、スライダ情報を要求する動作について示したものである。
【0084】
図8が
図6と異なっている点は、コマンド送信期間においてタブレットのループコイルから送信する3ビットのデータが、“110”となっている点である。位置指示器のコンパレータ出力Sgには、信号が「1」、「1」、「0」の順に抽出され、S/P変換回路18は、この“110”の情報を選択信号Skとして切替回路19に供給する。切替回路19は、コマンド“110”に対応するスライダ検出回路22からの信号を選択して送信データSbとしてコントロール回路13に供給する。
図8では、スライダ検出回路22からのスライダ情報が「0101000101」の10ビットで現される場合について示している。なお、
図8には図示していないが、スライダ検出回路22は、
図6の連続量検出パルスSs〜Swに示した筆圧検出回路21と同様な動作を行い、前述したスライダ情報を検出するようにしている。
【0085】
(5)位置指示器がタブレット上に降ろされたときの初期動作
次に、位置指示器がタブレット上に無い状態からタブレット上に降ろされたときに、前述した
図6〜8に示した動作にどのようにして移行するのかについて説明する。本実施例では、位置指示器がタブレット上に無い状態として、第1実施形態および第2実施形態について説明する。
【0086】
(5)−1 初期動作の第1実施形態
図9は、位置指示器がタブレット上に降ろされたときの初期動作の第1の実施形態について示したものである。
図9において、クロック信号Sa〜Srの横軸は時間を示し、それぞれ
図3および
図5の同一記号で表示された箇所の信号波形を示している。
【0087】
本実施形態では、位置指示器はあらかじめ
図6で説明したのと同様な、連続送信動作と、タブレットからのコマンドを受信するためのコマンド受信動作とを交互に繰り返す。コマンド受信動作を行っている期間(以下、コマンド受信期間と称する)中に、信号が受信(受信データが“000”以外)されれば、位置指示器はタブレット上に置かれているものと判断する。そして、受信したコマンドの内容に応じて、ID格納メモリ20又は筆圧検出回路21又はスライダ検出回路22からの出力データに応じた信号をタブレットに送信する。
【0088】
一方、コマンド受信期間中に信号が受信されない(受信データが“000”)場合は、位置指示器はタブレット上に無いものと判断して連続送信動作を繰り返す。
【0089】
タブレットでは、位置指示器からの信号を検出するため、CPU33は、切替回路34の接続先を受信側(R)に切替えるような送受切替信号Smを送出する。また、CPU33は、選択回路31に対してループコイルY1〜Y30を1本のループコイルについて例えば64μSの期間ずつ順次選択するようなコイル選択信号Spを出力する。
【0090】
このとき、タブレット上に位置指示器が降ろされると、
図9に示すように、位置指示器が降ろされた付近のループコイルを選択した際の検波出力Srのレベルが高くなる。CPU33は、最も高い電圧が現れたループコイルの番号(ここではY8)を保存する。続けて、CPU33は、ループコイルX1〜X40を1本のループコイルについて例えば64μSの期間ずつ順次選択するようなコイル選択信号Spを出力する。このときCPU33は、最も高い電圧が現れたループコイルの番号(ここではX11)を保存する。
【0091】
図9において、ループコイルX11を選択したときに高い電圧を検出し、続けてループコイルX12、ループコイルX13と選択した際に検出される電圧がしだいに低くなってゆくことが示されている。これによりCPU33は、位置指示器がループコイルX11の上にあることを認識することができる。
【0092】
このためCPU33は、ループコイルの選択をループコイルX13までで終了して、最も強い信号が検出されたループコイルX11(またはY8)を選択するようなコイル選択信号Spを出力する。その後、CPU33は位置指示器からの連続送信動作の開始を待ち、連続送信動作の開始を検出した時点で、
図6〜8における座標検出期間の動作に移行する。
【0093】
なお、
図9において、位置指示器に最も近いループコイルを選択した時刻がちょうど位置指示器からの送信の停止期間(位置指示器におけるコマンド受信期間)に当たった場合には、タブレットのCPU33は信号を検出することができない。しかし、ループコイルY1〜Y30及びループコイルX1〜X40を一通り選択する周期が、位置指示器からの連続送信動作を繰り返す際の周期の整数倍とならないようにこれらのタイミングを決めておけば、少なくとも2回目の処理までには、位置指示器からの信号を検出することができるようになる。
【0094】
(5)−2 初期動作の第2実施形態
図10は、位置指示器がタブレット上に降ろされたときの初期動作の第2の実施形態について示したものである。
図10において、クロック信号Sa〜Srの横軸は時間を示し、それぞれ
図3および
図5の同一記号で表示された箇所の信号波形を示している。
本実施形態では、位置指示器は信号を送信せず、位置指示器のコントロール回路13は、スイッチ15をオンとするような制御信号Seを送出して増幅回路14を動作させておく。(以下、休止状態と呼ぶ)
【0095】
タブレットのCPU33は、選択回路31に対して、ループコイルY1〜Y30を順次切替えて選択するようなコイル選択信号Spを出力する。このとき、1本のループコイルを選択している時間は、位置指示器のクロック信号Saの周期よりも十分長くするものとする。
【0096】
CPU33は、1つのループコイルが選択されている期間に、送受切替信号Smを送信側(T)から受信側(R)に切替えると同時に、送信制御信号Snをオンからオフに切り替えるような制御を行う(
図10参照)。これにより、一つのループコイルが選択された際に、送信に続けて受信動作が行われるようになる。
【0097】
タブレット上に位置指示器が降ろされる(ここではループコイルY8上)と、その付近のループコイルを選択したときに位置指示器のコイル12にはコイル信号Sdが現れる。このときのコイル信号Sdは、発振回路11が動作したときの信号と比べて極めて弱いが、この信号がスイッチ15を介して増幅回路14に入力されると、増幅回路14からは増幅器出力Sfが、コンパレータ17からはコンパレータ出力Sgがそれぞれ
図10のように現れる。ここでは、ループコイルY7を選択した際にコンパレータ出力Sgが立ち上がっている。
【0098】
位置指示器のコントロール回路13は、図示しない経路によりこのコンパレータ出力S
gを検出すると、直ちにスイッチ15をオフとするような制御信号Seを送出して増幅回路14の動作を停止し、続けて、発振回路11に対して発振制御信号Scを出力して連続送信動作を開始する。この動作により、位置指示器は前述した第1実施形態における初期動作と同じ動作、即ち連続送信を繰り返す動作を行うようになる。この動作は本発明の特徴の一つである。
【0099】
位置指示器のこの連続送信動作は、タブレット側がループコイルY7を選択している期間に開始されるため、この期間にタブレットの検波出力Srが
図10のように現れる。CPU33は、この検波出力Srを検出することにより位置指示器がタブレット上に置かれたことを認識する。
【0100】
さらに、CPU33は、位置指示器に最も近いループコイルを調べるため、続けてループコイルY8、ループコイルY9と、ループコイルの選択を切り替える。この場合、位置指示器からの信号送信は既に開始されているため、送信は行わず受信のみを行えば良い。
【0101】
図10において、ループコイルY8を選択した際に最も高い電圧が検出されるが、CPU33は、ループコイルY9、ループコイルY10、ループコイルY11と切替えるにつれて検波出力Srの電圧がしだいに低くなっていることから、位置指示器がループコイルY8上に存在することを認識することができる。
【0102】
CPU33は、ループコイルY11までの選択を終了すると、位置指示器がX軸のどのループコイル付近に置かれているかを求めるため、ループコイルX1〜X40を順次選択して受信動作を行う。
【0103】
すなわち、ループコイルX11を選択した際に最も高い検波出力Srを検出し、続けてループコイルX12、ループコイルX13と切替えるにつれて検波出力Srの電圧がしだいに低くなってゆくことより、CPU33は位置指示器がループコイルX11の上に存在することを認識することができる。このため、CPU33は、ループコイルの選択をX13で終了し、最も強い信号が検出されたループコイルX11(またはY8)を選択する。
図10ではループコイルX13の選択を終えた時刻がちょうど位置指示器からの連続送信が終了するタイミングと一致しているが、このとき位置指示器からの連続送信がまだ継続
していれば、CPU33がループコイルX11(またはY8)を選択することにより、検波出力Srが再び発生するようになる。CPU33は、この検波出力Srの電圧を見ながら、位置指示器からの連続送信が一旦終了するのを待った後、再び連続送信が開始されるタイミングを検出する。このようにして、CPU33は
図6〜8における座標検出期間の動作に移行する。
【0104】
本実施形態においても、位置指示器に最も近いX軸ループコイルを選択した時刻がちょうど送信の停止期間(コマンド受信期間)に当たった場合には、CPU33はX軸コイルからの信号を検出することができない。しかし、ループコイルX1〜X40をもう一通り続けて繰り返すことにより、位置指示器からの信号を検出することができるものである。また、位置指示器が休止状態から通常動作に移行するときの初回の連続送信の時間を十分に長くすることにより、タブレット側で全てのループコイルを選択することができるようにしても良い。
【0105】
本実施形態では、
図6〜
図8に示した動作中に、タブレットからのコマンドが例えば3回連続して検出されなかった場合には、位置指示器はタブレット上から取り去られたものと判断する。そして位置指示器のコントロール回路13は、休止状態、即ち信号は送信せず、スイッチ15をオンとするような制御信号Seを送出して増幅回路14を動作させてタブレットからの信号の検出を待つ動作に入る。
【0106】
[第1の実施例による効果]
前述した第1の実施例によれば、位置指示器は、連続送信動作終了後にタブレットからのコマンド信号を受信可能な状態とし、タブレットは、位置指示器からの連続送信終了タイミングを検波出力Srの低下という形で認識した後に、位置指示器へのコマンド送信を開始する。すなわち、連続送信動作の終了時刻が位置指示器とタブレットとの間で共有され、互いに共通する時間にコマンドの通信が短時間で行われる。
【0107】
このため、位置指示器内にある複数の情報の中から、特定の情報を選択して送信させることが可能となり、位置指示器からタブレットへの情報の転送速度が落ちることがなくなるため、座標検出時のサンプリング速度が落ちてしまうこともなくなる。
【0108】
また、本実施例では、タブレットからの信号を位置指示器で増幅するようにしたため、タブレットからの信号が微弱であってもコマンドとして正確に抽出できるようになる。従って、タブレットのループコイルを抵抗値の高いITO膜等で形成することが可能となり、透明のループコイルを有するセンサガラス206を表示部2bの前面に配置することができるようになる。
【0109】
これにより、位置指示器に対するコマンドをセンサガラス206上から送信することが可能となり、表示部2bが大型化した場合にも、固有のID情報や筆圧情報などの複数の情報を有する位置指示器のこれらの情報を、タブレット上で高速に検出することができるようになる。
【0110】
また、本実施例によれば、位置指示器からタブレットに送信する筆圧情報やスライダ情報等の情報が複数ビットよりなるデジタルデータで構成され、このデジタルデータの値に応じて発振回路11が制御されることにより、コイル信号Sdの出力/非出力という形で時系列に伝送される。このため、タブレットではノイズ等に影響されることなく、位置指
示器から送られてくる情報を正確に抽出することができる。
【0111】
また、本実施例によれば、位置指示器からタブレットに対して情報の送信が行われる前に、クロック発生回路25から供給されるクロック信号Saと同期したタイミングで、コイル信号Sdが2回送信される。そして、2回の信号送信が終了した後に、タブレット2への情報の送信がクロック信号Saに同期して行われる。一方タブレットでは、2回のコイル信号Sdの送信間隔が計測され、計測された送信間隔に基づいてその後に送られてくるデジタルデータが検出される。このようにすることにより、位置指示器からタブレットへの1ビット当たりの通信時間を短くすることが可能となり、サンプリング速度の速い位置検出装置を実現することができる。
【0112】
また、本実施例の第2の実施形態によれば、位置指示器がタブレット上に位置しない場合には、位置指示器からの信号送信が行われないため、位置指示器の消費電力を節減することができる。すなわち、位置指示器の電池交換や充電を頻繁に行わなくても済むようになる。
【0113】
なお、上述した実施の形態では、タイミング抽出期間を位置指示器1からの連続送信動作の終了後に設けた例を挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、位置指示器1からの10ビットのデータの送信終了後(位置指示器1による連続送信動作開始前)や、位置指示器1からタブレット2に対してデータ送信を行っている最中(例えば、5ビット目までの送信が終了した時点等)、もしくは連続送信動作期間中等に設けるようにしてもよい。
【0114】
さらに、本実施例ではタブレットにおけるループコイルを、センサガラス206上にITO膜によって形成したが、これに限定されるものではない。例えば、ペットフィルム上にカーボンなどの導電物質を印刷することでループコイルを形成してもよい。
【0115】
また、本実施例ではタブレットと表示装置とを一体にしているが、表示装置を設けない構成としてもよい。
【0116】
<2.第2の実施例>
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2実施例では、タブレット面に垂直方向を軸とした位置指示器の回転角を求めることができるようにした例について示す。出願人は、このような位置検出装置について特開平8−30374号公報として既に開示している。本実施例は、これに改良を加えることにより、抵抗値の高いITO膜等で形成したループコイルを用いたタブレット面においても、位置指示器の回転角を求めることができるようにした例について示す。本実施例では、タブレットは
図4および
図5に示した第1実施例で用いたものと同じ構成とする。
【0117】
[位置指示部の構造]
図11は、本実施例における位置指示器の位置指示部の構造を示す断面図である。
図11に示すように、位置指示部には磁性体コア51と磁性体コア52の2本の磁性体コアが設けられている。これらの磁性体コア51及び52に使用する材料としてはフェライト材が望ましいが、他の材料を使用してもよい。また、コアを設けない構成としてもよい。
【0118】
磁性体コア51に対してはコイル53(第2コイル)及びコイル54(第1コイル)が巻かれている。コイル53は磁性体コア51にのみ巻かれており、コイル54は、磁性体コア51と磁性体コア52とを束ねるようにして巻かれている。この構造は、特開平8−30374号公報に開示されたものと同じである。
【0119】
[位置指示器の内部構成]
図12は、本実施例による位置指示器の内部構成を示した図である。
図12において、
図3および
図11と同一の構成箇所には同一の符号を付してある。位置指示器には、発振回路11と、コイル53及びコイル54と、コントロール回路13、増幅回路14、スイッチ15、検波回路16、コンパレータ17、S/P変換回路18、切替回路19、ID格納メモリ20、筆圧検出回路21、クロック発生回路25、電源26、が設けられている。
【0120】
発振回路11は、コントロール回路13から供給される発振制御信号Scに基づいてコイル54と共に動作し、所定の周波数のコイル信号Sdをコイル54に発生させる回路である。コイル54は、コイル信号Sdにより交流磁界を発生する。タブレットは、位置指示器のコイル54から発生する交流磁界を検出することにより、位置指示器の指示座標および筆圧等の情報を求める。
【0121】
コイル53は、その両端がスイッチ55に接続されており、スイッチ55はコントロール回路13から供給される第2コイル制御信号Sjによってオンまたはオフ状態に制御される。
スイッチ55がオフ状態のときにはコイル53の両端は開放されるので、コイル53はコイル54から発生する磁界に対して影響を与えない。従って、タブレットでは磁性体コア51と磁性体コア52との中間位置の座標が検出される。
【0122】
また、スイッチ55がオン状態のときにはコイル53の両端は短絡される。短絡されたコイル53には、磁性体コア51を通過する磁束の変化を打ち消すような方向に起電力が発生する。このため、磁性体コア51には交流磁界が通りにくくなり、コイル54を通過する磁束は磁性体コア52のみに集中するようになる。従って、タブレットでは磁性体コア52に対応した座標が検出される。
従って、スイッチ55がオフ状態のときにタブレットで検出される座標値と、スイッチ55がオン状態のときにタブレットで検出される座標値とによって、タブレット面に垂直方向を軸とする位置指示器の回転角を求めることができる。
【0123】
その他の構成については
図3と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0124】
[実施例の動作]
次に、
図13を参照して、本実施例の動作について説明する。
図13は、タブレット2から位置指示器に対してコマンド“110”を送信して、位置指示器のタブレット面に垂直方向を軸とする回転角を検出する動作の様子を示したものである。
図13において、クロック信号Sa〜Srの横軸は時間を示し、それぞれ
図5および
図12の同一記号で表示された箇所の信号波形を示している。
【0125】
本実施例でも、タブレットのCPU33は初期動作によって位置指示器がループコイルX11とループコイルY8の交点付近に置かれていることが判っているものとし、それ以降の動作について説明を行う。なお、本実施例では、タブレットからの制御信号としてのコマンドが“101”および“100”、で現される場合は第1の実施例の場合と同様であり、それぞれ
図6および
図7を参照して説明した動作と同一の動作が行われる。また、位置指示器がタブレット上に無い状態からタブレット上に降ろされたときの初期動作についても、
図9および
図10を参照して説明した動作と同じである。
【0126】
図13において、位置指示器のコントロール回路13は、タブレットで座標を検出するために必要な時間、例えば1mS以上の間、コイル54から連続して信号を送信するよう、発振制御信号Scを発振回路11に供給する。これにより位置指示器は連続送信動作を行う。
【0127】
タブレットのCPU33は、位置指示器からの連続送信動作が開始されるタイミングを検出するため予め、選択回路31に対してループコイルX11(またはY8)を選択するためのコイル選択信号Spを送出する。また、CPU33は、切替回路34を受信側(R)に切替えるような送受切替信号Smを送出する。
CPU33は、A/D変換回路39からの出力結果を調べて、検波出力Srに一定時間、例えば128μS以上の期間継続して電圧が発生した際に位置指示器からの連続送信動作が開始されたものと判断し、続けて、
図6および
図7の場合と同様な座標検出動作を行う。
【0128】
即ち、CPU33は、ループコイルX11を中心とする5本のループコイルについて位置指示器からの信号レベルを求めるため、ループコイルX9〜X13を順次選択するようにコイル選択信号Spを送出する。このコイル選択信号Spは、1本のループコイルについて例えば64μSの期間ずつ順次選択するように送出される。続いて、CPU33は、ループコイルY8を中心とする5本のループコイルについて位置指示器からの信号レベルを求めるため、ループコイルY6〜X10を順次選択するようにコイル選択信号Spを送出する。
このとき、検波回路37からの検波出力Srには、選択したループコイルと位置指示器のコイル54との距離に応じた電圧が現れる。すなわち、位置指示器に最も近いループコイルX11およびループコイルY8を選択した際に最も高い電圧が得られるような電圧分布となる。この電圧分布におけるピークレベルと隣り合うコイルの電圧とから、位置指示器の指示位置のX座標値およびY座標値を求めることができる。このとき求められる座標値は、磁性体コア51と磁性体コア52との中間位置を示すものとなる。以下の説明においては、この座標を第一座標と称する。
【0129】
次にCPU33は、位置指示器からの連続送信動作が終了するのを待つため、選択回路31に対して、ループコイルX11(またはY8)を選択するためのコイル選択信号Spを送出する。このとき、前述した座標検出動作においてピーク電圧が発生したループコイルが隣接するコイルに移動していた場合には、位置指示器の指示位置が移動したものと判断して、更新された中心コイルを選択するようにする。位置指示器からの連続送信が終了すると、検波出力Srの電圧はしだいに低下するので、CPU33は検波出力Srの電圧が一定の閾値Vth以下になった時点で連続送信が終了したと判断して、コマンド送信動作に移行する。
【0130】
タブレットから位置指示器へのコマンド送信も、
図6および
図7の場合と同様に行われる。即ち、位置指示器に最も近いループコイル(ここではX11)が選択されたままの状態で、CPU33は、切替回路34を送信側(T)に切替えるような送受切替信号Smを送出する。さらにCPU33は、スイッチ40に対して送信制御信号Snを送出する。この送信制御信号Snは例えば128μS毎に、「1」、「1」、「0」と順次出力する。送信制御信号Snが「1」の期間は、選択回路31によって選択されたループコイルには交流電流が流れる。
【0131】
位置指示器のコントロール回路13は、連続送信動作を終了すると、クロック信号Saの3サイクルの期間だけ、スイッチ15をオンとするような制御信号Seを出力する。この期間にタブレットのループコイルから信号が送信されていると、増幅回路14の出力には、増幅器出力Sfが現れ、これに伴い、コンパレータ17からの出力Sgが「1」となる。
このとき、タブレットから1ビットの信号を送信する期間(ここでは128μS)を、位置指示器でのクロック信号Saの周期とおよそ一致させておけば、クロック信号Saに同期して、タブレットから送信された信号を抽出することができる。すなわち、
図13に示すようにクロック信号Saの立下りタイミングでコンパレータ17の出力Sgの値を読めば、タブレットから送信された信号を、「1」、「1」、「0」の順に抽出することができる。ここまでの動作は、
図6および
図7の場合と全く同様に行われる。
【0132】
位置指示器のコントロール回路13は、タブレットからのコマンドが“110”すなわち回転角検出のための動作を要求していることを認識すると、スイッチ55をオンとするような第2コイル制御信号Sjを送出する。これによってコイル53は短絡される。
【0133】
コントロール回路13は、タブレットで座標を検出するために必要な時間、例えば1mS以上の間、コイル54から連続して信号を送信するよう、発振制御信号Scを発振回路11に供給する。これにより位置指示器は連続送信動作を行う。このとき、コイル53はスイッチ55によって短絡されているので、コイル54に流れる交流電流によって発生する磁界は磁性体コア51には殆ど通らなくなり、磁性体コア52に集中する。
【0134】
一方タブレットでは、前述した第一座標検出動作の時と同様にして、ループコイルX11を中心とする5本のループコイルおよび、ループコイルY8を中心とする5本のループコイルについて順次信号レベルの検出が行われる。そしてこれにより、磁性体コア52に相当する座標位置(以下、第二座標と称する)が求められる。
【0135】
CPU33は、これらの2つの座標値(第一座標および第二座標)からタブレット面に垂直方向を軸とする位置指示器の回転角を求めることができる。言い換えれば、位置指示器に対して制御信号を送信したことによるコイルを通過する磁束分布の変化を、信号強度の変化又は座標位置の変化として検出することが行われる。
本実施例では、タブレットからのコマンドが“110”のときに回転角検出のための動作を行うようにしたが、他のコマンドを割り当ててもよい。
【0136】
[第2の実施例による効果]
本実施例によれば、前述した第1実施例による効果に加えて以下のような効果が得られる。すなわち、第2実施例では、タブレットから位置指示器へのコマンドの通信を短時間で行うことができるので、タブレット面に垂直方向を軸とする位置指示器の回転角の検出が可能で、かつサンプリング速度の速い位置検出装置を実現することができる。
また、本実施例においても、タブレットからの信号を位置指示器で増幅するようにしたため、タブレットからの信号が微弱であってもコマンドとして正確に抽出できるようになる。従って、タブレットのループコイルを抵抗値の高いITO膜等で形成することが可能となり、透明のループコイルを有するセンサガラス206を表示部2bの前面に配置することができるようになる。
【0137】
<3.第3の実施例>
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例では、位置指示器に2つの位置指示部(ペン側およびイレーサ側)を設け、タブレット面に向けられている位置指示器の方向を検出するようにしたものである。
【0138】
本実施例の位置指示器は、第1実施例や第2実施例のように複数種類の情報は持ってお
らず、ペン側又はイレーサ側の筆圧情報のみを有する。
【0139】
[位置指示器の構造]
図14は、本実施例による位置指示器の構造を示す断面図である。本実施例も位置指示器はペン形状をしており、芯体1bの先端部分は本体1aから突出している。この芯体1bの先端部分をタブレット面に接触するようにして操作する。62は中空形状のコイルで、コイル62中を芯体1bが貫いている。さらに芯体1bの先端部分と逆側には可変容量コンデンサ73が配置されている。
【0140】
可変容量コンデンサ73は、芯体1bに加えられる筆圧の大きさに応じてその容量が変化する。可変容量コンデンサ73に加えられた荷重は後述する筆圧検出回路64によって筆圧情報として検出される。
【0141】
ペン側の他端にはイレーサ側が設けられ、イレーサ側にはイレーサ芯1eが本体1aから突出している。このイレーサ芯1eの先端部分をタブレット面に接触するようにして操作する。79は中空形状のコイルで、コイル79中をイレーサ芯1eが貫いている。さらにイレーサ芯1eの先端部分と逆側には可変容量コンデンサ75が配置されている。 可変容量コンデンサ75は、イレーサ芯1eに加えられる筆圧の大きさに応じてその容量が変化する。可変容量コンデンサ75に加えられた荷重は後述する筆圧検出回路76によって筆圧情報として検出される。また、位置指示器の中央部分には電源78が設けられている。
【0142】
[位置指示器の内部構成]
図15は、本実施例による位置指示器の内部構成について示した図である。位置指示器を構成する各部は、ペン先側の動作に関する部分とイレーサ側の動作に関する部分とが含まれる。そしてこれらのブロックは、コントロール回路56によって制御される。
【0143】
ペン先側の動作に関する部分には、発振回路61、コイル62、増幅回路65、スイッチ66、検波回路67、コンパレータ68、可変容量コンデンサ73、筆圧検出回路64とが含まれる。イレーサ側の動作に関する部分には、発振回路63、コイル79、増幅回路69、スイッチ70、検波回路71、コンパレータ72、可変容量コンデンサ75、筆圧検出回路76とが含まれる。
【0144】
ペン先側の発振回路61は、コントロール回路56から供給される発振制御信号Sc1に基づいてコイル62と共に動作し、所定の周波数のコイル信号Sd1をコイル62に発生させる回路である。タブレットは、位置指示器のコイル62から発生する交流磁界を検出することにより、位置指示器のペン先側の指示座標および筆圧等の情報を求める。
【0145】
増幅回路65は、スイッチ66を介してコイル62に接続されており、コイル62に誘導されるタブレットからの信号を増幅する。検波回路67は、増幅回路65の出力信号のレベルに応じた電圧を出力する。コンパレータ68は、検波回路67の出力電圧が一定電圧以上であるかどうかを検出してデジタル信号として出力する。これらの構成は、発振回路61の停止期間にコイル62に信号が現れるかどうかを検出することによって、位置指示器のペン先側がタブレット上に存在するかどうかを検出するためのものである。
【0146】
イレーサ側の発振回路63は、コントロール回路56から供給される発振制御信号Sc2に基づいてコイル79と共に動作し、所定の周波数のコイル信号Sd2をコイル79に発生させる回路である。タブレットは、位置指示器のコイル79から発生する交流磁界を検出することにより、位置指示器のイレーサ側の指示座標および筆圧等の情報を求める。
【0147】
イレーサ側の増幅回路69は、スイッチ70を介してコイル79に接続されており、コイル79に誘導されるタブレットからの信号を増幅する。検波回路71は、増幅回路69の出力信号のレベルに応じた電圧を出力する。コンパレータ72は、検波回路71の出力電圧が一定電圧以上であるかどうかを検出してデジタル信号として出力する。これらの構成は、発振回路63の停止期間にコイル79に信号が現れるかどうかを検出することによって、位置指示器のイレーサ側がタブレット上に存在するかどうかを検出するためのものである。
【0148】
ペン先側の可変容量コンデンサ73は、ペン先側に加えられる筆圧に応じて容量が変化するコンデンサである。筆圧検出回路64は、可変容量コンデンサ73の容量値をデジタル値に変換して、ペン先側の筆圧情報Sb1としてコントロール回路56に供給する。同様に、筆圧検出回路76は、可変容量コンデンサ75の容量値をデジタル値に変換して、イレーサ側の筆圧情報Sb2としてコントロール回路56に供給する。筆圧検出回路64及び筆圧検出回路76は、第1の実施例において説明したものと同一の構成である。
【0149】
クロック発生回路77は、クロック信号Saを発生しコントロール回路56に供給する。コントロール回路56は、このクロック信号Saによって各種動作のタイミングを作成している。このクロック信号Saとしては、比較的低い周波数、例えば8KHz程度を採用するものとする。電源78は、上述した各回路を駆動するための電源としての電池である。
【0150】
[タブレットの構成]
図16は、本実施例のタブレット内部構成例について示した図である。
図16において、
図5と同一構成の箇所には同一の符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
図16に示すタブレットも、ループコイル群30と、選択回路31、CPU33、切替回路34、増幅回路35、BPF36、検波回路37、S/H回路38、A/D変換回路39、信号発生回路41、より構成されている。即ち、本実施例でのタブレットには第1実施例におけるスイッチ40が無い。これは位置指示器がタブレットに送信する情報が、ペン側又はイレーサ側の筆圧情報のみであるため、タブレットから位置指示器に対してコマンドを送信する必要が無いためである。
【0151】
[実施例の動作]
次に、本実施例の動作について以下の順序で説明する。
(1)ペン先側がタブレット上に置かれたときの初期動作
(2)ペン先側がタブレット上に置かれたときの座標及び筆圧検出動作
(3)イレーサ側がタブレット上に置かれたときの初期動作
(4)イレーサ側がタブレット上に置かれたときの座標及び筆圧検出動作
【0152】
(1)ペン先側がタブレット上に置かれたときの初期動作
本実施例では、位置指示器がタブレット上に無い状態(初期状態)では、位置指示器はコイル62およびコイル79のどちらからも信号送信をせず、位置指示器のコントロール回路56は、スイッチ66およびスイッチ70を共にオンとすることにより、ペン先側とイレーサ側のどちらからでもタブレットからの信号が受信できるようになっている。
【0153】
図17は、位置指示器のペン先側がタブレット上に降ろされたときの初期動作を示すタイミングチャートである。
図17において、クロック信号Sa〜Srの横軸は時間を示し、それぞれ
図15および
図16の同一記号で表示された箇所の信号波形を示している。
【0154】
タブレットのCPU33は、選択回路31に対して、ループコイルY1〜Y30を順次切替えて選択するようなコイル選択信号Spを出力する。このとき、1本のループコイルを選択している時間は、位置指示器のクロック信号Saの周期よりも十分長くするものとする。
【0155】
CPU33は、1つのループコイルが選択されている期間に、送受切替信号Smを送信側(T)から受信側(R)に切替える。これにより、一つのループコイルが選択された際に、送信に続けて受信動作が行われるようになる。
【0156】
タブレット上に位置指示器のペン先側が降ろされる(ここではループコイルY8上)と、その付近のループコイルを選択したときに位置指示器のペン先側のコイル62にはコイル信号Sd1が現れる。このときのコイル信号Sd1は、発振回路61が動作したときの信号と比べて極めて弱いが、この信号がスイッチ66を介して増幅回路65に入力されると、増幅回路65からは増幅器出力Sf1が、コンパレータ68からはコンパレータ出力Sg1がそれぞれ
図17のように現れる。ここでは、ループコイルY7を選択した際にコンパレータ出力Sg1が立ち上がっている。
【0157】
位置指示器のコントロール回路56は、コンパレータ出力Sg1を検出すると、直ちにスイッチ66をオフとするような制御信号Se1を送出して増幅回路65の動作を停止する。これと同時に、コントロール回路56は、スイッチ70をオフとするような制御信号Se2を送出して増幅回路69の動作を停止する。続けて、コントロール回路56は、発振回路61に対して発振制御信号Sc1を出力してペン先側から連続送信動作を開始する。この動作は本発明の特徴の一つである。
【0158】
位置指示器のこの連続送信動作は、タブレット側がループコイルY7を選択している期間に開始されるため、この期間にタブレットの検波出力Srが
図17のように現れる。CPU33は、この検波出力Srを検出することにより位置指示器がタブレット上に置かれたことを認識する。
【0159】
さらに、CPU33は、位置指示器1に最も近いループコイルを調べるため、続けてループコイルY8、ループコイルY9と、ループコイルの選択を切り替える。この場合、位置指示器からの信号送信は既に開始されているため、送信は行わず受信のみを行えば良い。
【0160】
図17において、ループコイルY8を選択した際に最も高い電圧が検出されるが、CPU33は、ループコイルY9、ループコイルY10、ループコイルY11、ループコイルY12と切替えるにつれて検波出力Srの電圧がしだいに低くなっていることから、位置指示器がループコイルY8上に存在することを認識することができる。
【0161】
CPU33は、ループコイルY12までの選択を終了すると、位置指示器がX軸のどのループコイル付近に置かれているかを求めるため、ループコイルX1〜X40を順次選択して受信動作を行う。すなわち、ループコイルX11を選択した際に最も高い検波出力Srを検出し、続けてループコイルX12、ループコイルX13、ループコイルX14と切替えるにつれて検波出力Srの電圧がしだいに低くなってゆくことより、CPU33は位置指示器がループコイルX11の上に存在することを認識することができる。このため、CPU33は、ループコイルの選択をX14で終了し、最も強い信号が検出されたループコイルX11(またはY8)を選択する。CPU33がループコイルX11(またはY8)を選択すると検波出力Srが再び発生するようになる。CPU33は、この検波出力Srの電圧を見ながら、位置指示器からの連続送信が一旦終了するのを待った後、再び連続送信が開始されるタイミングを検出する。このようにして、CPU33は後述する座標及び筆圧検出動作に移行する。
【0162】
(2)ペン先側がタブレット上に置かれたときの座標および筆圧検出動作
図18は、前述した初期動作によって位置指示器がループコイルX11とループコイルY8の交点付近に存在することが判明した後に、座標および筆圧検出動作を繰り返し行う際の動作について示したものである。
【0163】
タブレットのCPU33は、位置指示器からの連続送信動作が開始されるタイミングを検出するため、選択回路31に対してループコイルX11(またはY8)を選択するためのコイル選択信号Spを送出する。また、CPU33は、切替回路34を受信側(R)に切替えるような送受切替信号Smを送出する。
【0164】
CPU33は、A/D変換回路39からの出力結果を調べて、検波出力Srに一定時間、例えば128μS以上の期間継続して電圧が発生した際に位置指示器からの連続送信動作が開始されたものと判断する。この動作は第1実施例と同様で、位置指示器から間欠的に送信される信号と区別するためのものである。CPU33は、続いて座標検出動作を行う。
【0165】
座標検出動作は、第1実施例の
図6〜8において説明したのと同様に行われ、位置指示器のX座標およびY座標が求められる。
【0166】
次にCPU33は、位置指示器からの連続送信動作が終了するのを待つため、選択回路31に対して、ループコイルX11(またはY8)を選択するためのコイル選択信号Spを送出する。このとき、前述した座標検出動作においてピーク電圧が発生したループコイルが隣接するコイルに移動していた場合には、位置指示器の指示位置が移動したものと判断して、更新された中心コイルを選択するようにする。位置指示器からの連続送信が終了すると、検波出力Srの電圧はしだいに低下するので、CPU33は検波出力Srの電圧が一定の閾値Vth以下になった時点で連続送信が終了したと判断して、次に説明するタブレット信号送信期間の動作に移行する。
【0167】
なお、タブレットでの座標検出動作が行われている間、すなわち、位置指示器からの連続送信が行われている間は、位置指示器内の筆圧検出回路64による筆圧検出動作が第1実施例と同様に行われる。前述した初期動作によって、位置指示器のコントロール回路56はペン先側がタブレット上に置かれたことを既に認識しているので、コントロール回路56は、図示しない経路により、筆圧検出回路76は動作せずに筆圧検出回路64のみを動作させるように制御する。
【0168】
タブレットのCPU33は、検波出力Srの電圧が一定の閾値Vth以下となることにより連続送信の終了を検出すると、タブレット信号送信期間の動作に移行する。選択回路31は、位置指示器に最も近いループコイルを選択したままの状態で切替回路34をたとえば128μSの期間、送信側(T)に切替えるような送受切替信号Smを送出する。これによって、選択されたループコイルは信号発生回路41と接続されて、ループコイルには交流電流が流れる。ループコイルはITO膜により形成されているので、抵抗値は数キロΩから数十キロΩ程度と高いため流れる電流は少ないが、位置指示器のペン先側のコイル62には、例えば数ミリボルト程度の信号は発生するものである。
【0169】
位置指示器のコントロール回路56は、連続送信動作を終了すると、タブレットからの信号を受信するため、クロック信号Saの2サイクルの期間だけ、スイッチ66をオンとするような制御信号Se1を出力する。この期間にタブレットのループコイルから信号が送信されていると、増幅回路65の出力には、増幅器出力Sf1が現れ、これに伴い、コンパレータ68からの出力Sg1が「1」となる。このことにより、コントロール回路56は、位置指示器が引き続きタブレット上に置かれていることを認識する。
【0170】
位置指示器のコントロール回路56は、前述したタブレット信号送信期間においてコンパレータ68からの出力Sg1を検出すると、第1実施例と同様なタイミング抽出期間の動作に入る。すなわち、位置指示器のコントロール回路56は、クロック信号Saに同期してペン先側のコイル62より2回の信号送信を行う。
【0171】
なお、前述したタブレット信号送信期間にコンパレータ68からの出力Sg1が検出されなかった場合には、位置指示器がタブレット上から取り去られたものと判断して、位置指示器のコントロール回路56は前述した初期動作状態になるように各信号を制御する。
【0172】
タブレット側では、ループコイルからの信号送信を終了するとタイミング抽出期間の動作に移行する。CPU33は、第1実施例と同様にA/D変換回路39の結果が一定の閾
値Vthを超えた時刻を2回計測することにより、2回の計測時刻の間隔を「td」として求める。この時間tdは、位置指示器のクロック信号Saの周期とほぼ一致するはずである。CPU33は、それ以降、時間td毎に信号を検出することにより、位置指示器から送信されるデータを正確に抽出することができる。
【0173】
位置指示器において前述した2回の送信が終了すると、コントロール回路56は、ペン先側の発振回路61に対して、その発振制御信号Sc1として、後述する11ビットのデータを順次送出する。この11ビットデータは、クロック信号Saの立ち上がりに同期して出力されるもので、データが「1」のときには発振制御信号Sc1が「1」、データが「0」のときには発振制御信号Sc1が「0」として出力される。この11ビットデータの最初のビットは位置指示器のタブレット面に向けられている方向を示すものであり、
図18ではペン先側を示す「0」となっている。また、本実施例ではペン先側の筆圧情報が「1011001010」である場合について示している。
【0174】
タブレットでは、引き続きループコイルX11(またはY8)からの信号が検出されるが、位置指示器からの送信データが「1」のときは検波出力Srには一定の閾値Vth以上の電圧が発生する。一方、送信データが「0」のときは検波出力Srには電圧が発生しない。
【0175】
CPU33は、前述したタイミング抽出期間において2回目に検波出力Srが一定の閾値Vthを超えた時刻よりも少し遅れた時刻を基点として、時間tdの整数倍に当たる時刻に、A/D変換回路39の出力結果を調べ、この出力が前記一定の閾値Vthを超えていれば「1」を保存し、Vth未満であれば「0」を保存する。この動作を11回繰り返すことにより、CPU33は位置指示器から送信された11ビットのデータの受信を完了する。
図18において、位置指示器から送られてくる最初のデータが「0」であることから、CPU33は、ペン先側がタブレットに向けられていることを認識することができる。この動作は本発明の特徴の一つである。
【0176】
位置指示器のコントロール回路56は、筆圧等のデータの送信を終了すると、タブレットでの座標検出を続けて行うため、再び前述した連続送信動作を開始する。
【0177】
(3)イレーサ側がタブレット上に置かれたときの初期動作
図19は、位置指示器のイレーサ側がタブレット上に降ろされたときの初期動作を示すタイミングチャートである。
図19において、クロック信号Sa〜Srの横軸は時間を示し、それぞれ
図15および
図16の同一記号で表示された箇所の信号波形を示している。イレーサ側がタブレット上に降ろされたときの初期動作は、ペン先側の場合と全く同様に行われる。
【0178】
すなわち、タブレットのCPU33は、選択回路31に対して、ループコイルY1〜Y30を順次切替えて選択するとともに、1つのループコイルを選択している間に、送信および受信を続けて行う。
【0179】
タブレット上に位置指示器のイレーサ側が降ろされる(ここではループコイルY17上)と、その付近のループコイルを選択したときに位置指示器のイレーサ側のコイル79にはコイル信号Sd2が現れる。このときのコイル信号Sd2は、発振回路63が動作したときの信号と比べて極めて弱いが、この信号がスイッチ70を介して増幅回路69に入力されると、増幅回路69からは増幅器出力Sf2が、コンパレータ72からはコンパレータ出力Sg2がそれぞれ
図19のように現れる。ここでは、ループコイルY16を選択した際にコンパレータ出力Sg2が立ち上がっている。
【0180】
位置指示器のコントロール回路56は、コンパレータ出力Sg2を検出すると、直ちにスイッチ70をオフとするような制御信号Se2を送出して増幅回路69の動作を停止する。これと同時に、コントロール回路56は、スイッチ66をオフとするような制御信号Se1を送出して増幅回路65の動作を停止する。続けて、コントロール回路56は、発振回路63に対して発振制御信号Sc2を出力してイレーサ側から連続送信動作を開始する。
【0181】
位置指示器のこの連続送信動作は、タブレット側がループコイルY16を選択している期間に開始されるため、この期間にタブレットの検波出力Srが
図19のように現れる。CPU33は、この検波出力Srを検出することにより位置指示器がタブレット上に置かれたことを認識する。以下、タブレットのCPU33は、
図17において説明したのと同様にして位置指示器が置かれているタブレット上のおよその位置を求める。本実施例では位置指示器のイレーサ側がループコイルX22とループコイルY17の交点付近に置かれた場合について示している。
【0182】
続いてCPU33は、最も強い信号が検出されたループコイルX22(またはY17)を選択する。CPU33がループコイルX22(またはY17)を選択すると検波出力Srが再び発生するようになる。CPU33は、この検波出力Srの電圧を見ながら、位置指示器からの連続送信が一旦終了するのを待った後、再び連続送信が開始されるタイミングを検出する。このようにして、CPU33は後述する座標及び筆圧検出動作に移行する。
【0183】
(4)イレーサ側がタブレット上に置かれたときの座標及び筆圧検出動作
図20は、前述した初期動作によって位置指示器がループコイルX22とループコイルY17の交点付近に存在することが判明した後に、座標および筆圧検出動作を繰り返し行う際の動作について示したものである。この動作は、
図18において説明したペン先側の動作と全く同様に行われる。
図20において、
図18と異なるのは、位置指示器から送信される11ビットのデータの内容のみである。
図20において、タブレット側で検出される11ビットデータのうち最初のデータが「1」であることから、CPU33は、イレーサ側がタブレットに向けられていることを認識することができる。
図20では、イレーサ側の筆圧情報が「1101000101」である場合について示している。
【0184】
[第3の実施例による効果]
本実施例によれば、位置指示器がタブレット上に存在しない場合には、位置指示器からの信号送信が行われないため、位置指示器の消費電力を節減することができる。すなわち、位置指示器の電池交換や充電を頻繁に行わなくても済むようになる。
【0185】
また、本実施例によれば、タブレットからの信号が入力された方向により位置指示器のタブレットに向けられている方向を判定して、タブレットに向けられている方向のみから位置指示信号を送信するようにしたため、位置指示器に複数の位置指示部を設けても、位置指示器の消費電力が増えることが無い。すなわち、位置指示器の電池交換や充電を頻繁に行わなくても済む。
【0186】
また、本実施例においても、タブレットからの信号を位置指示器で増幅するようにしたため、表示装置の前面に配置したセンサガラスによって位置指示器に信号を送信することが可能となり、大型の表示装置であっても複数の位置指示部を設けた位置指示器の指示方向を検出することができる。
【0187】
本実施例では、ペン先側とイレーサ側の両方に増幅回路と検波回路とコンパレータを設けたが、これらは1つだけとして、ペン側とイレーサ側とを切り替えて、それぞれの筆圧情報を時分割で検出するように構成してもよい。
【0188】
本実施例では、タブレットに向けられている方向を示すデータを筆圧データよりも先に送信したが、この逆であっても良い。