特許第6069480号(P6069480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6069480複製可能偽型レトロウイルスベクターシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069480
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】複製可能偽型レトロウイルスベクターシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170123BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170123BHJP
   C07K 14/15 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   A61K48/00
   A61P35/00
   !C07K14/15
【請求項の数】14
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-500345(P2015-500345)
(86)(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公表番号】特表2015-511493(P2015-511493A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】KR2012001818
(87)【国際公開番号】WO2013137495
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0025008
(32)【優先日】2012年3月12日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0025009
(32)【優先日】2012年3月12日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509069788
【氏名又は名称】インジェ・ユニバーシティ・インダストリー−アカデミック・コーポレーション・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】INJE UNIVERSITY INDUSTRY−ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】カン ムン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ア ヨン
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−521405(JP,A)
【文献】 Gene Ther.,1998 Sep,5(9),p.1195-203
【文献】 Int J Cancer.,2000 Oct 1,88(1),p.115-20
【文献】 Gene Ther.,2007 Apr,14(7),p.595-603,Epub 2007 Jan 18
【文献】 Gene Ther.,2006 Oct,13(20),p.1457-70,Epub 2006 May 25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 7/00
C07K 14/15
A61K 48/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターと、
GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターと、
を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムであって、
前記第1組換え発現ベクターは、図1の開裂地図のベクターであり、かつ、
前記第2組換え発現ベクターは、図2の開裂地図のベクターである
複製可能偽型レトロウイルスベクターシステム。
【請求項2】
前記第1組換え発現ベクターまたは第2組換え発現ベクターは、異常増殖細胞治療遺伝子を含む請求項1に記載の複製可能偽型レトロウイルスベクターシステム。
【請求項3】
前記第2組換え発現ベクターは、図3の開裂地図のベクターである請求項2に記載の複製可能偽型レトロウイルスベクターシステム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち何れか一項に記載の複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムを含む異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物。
【請求項5】
前記異常増殖細胞は、癌細胞である請求項に記載の異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物。
【請求項6】
前記癌細胞は、粘液状細胞癌腫、丸い細胞癌腫、局所的進行腫瘍、転移性癌、ユーイング肉腫、癌転移、リンパ性転移、扁平上皮細胞癌腫、食道扁平上皮細胞癌腫、経口癌腫、多発性骨髄腫、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球白血病、慢性骨髄球白血病、毛様細胞性白血病、流出リンパ腫(体腔系リンパ腫)、胸腺リンパ腫肺癌、小細胞肺癌腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、副腎皮質癌、ACTH生成腫瘍、非小細胞肺癌、乳房癌、小細胞癌腫、導管癌腫、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸腫瘍の形成と関連した茸腫、膵臓癌、肝癌、膀胱癌、1次表面膀胱腫瘍、膀胱の侵襲性転移細胞膀胱癌腫、筋浸潤性膀胱癌、前立腺癌、大腸癌、腎臓癌、肝癌、食道癌、卵巣癌腫、子宮頸部癌、子宮内膜癌、絨毛癌、卵巣癌、原発性腹膜上皮新生物、子宮頸管癌腫、膣癌、外陰部癌、子宮癌、卵胞中の固形腫瘍、睾丸癌、陰茎癌、腎臓細胞癌腫、脳癌、頭頸部癌、口頸部癌、神経芽細胞腫、脳幹神経膠腫、神経膠腫、中枢神経系中の転移性腫瘍細胞浸潤、骨腫、骨肉種、悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮細胞癌腫、甲状腺癌、網膜芽腫、神経芽細胞腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍、胆嚢癌、栄養芽細胞腫瘍、血管周囲細胞腫、またはカポジ肉腫由来の細胞である請求項に記載の異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物。
【請求項7】
前記異常増殖細胞は、炎症性疾患または異常増殖血管疾患由来の非癌性異常増殖細胞である請求項に記載の異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物。
【請求項8】
前記炎症性疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、炎症−誘導骨疾患、退行性関節炎、糖尿病、自己免疫筋肉炎、動脈硬化、脳卒中、肝硬化、脳膜炎、炎症性胃潰瘍、胆嚢結石、腎臓結石、副鼻腔炎、鼻炎、結膜炎、喘息、皮膚炎、炎症性腸疾患、炎症性コラーゲン血管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患、リウマチ関節炎、全身性紅斑性ループス、強直性脊椎炎、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、慢性単純苔癬、天疱瘡、ブルース天疱瘡、表皮水泡症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増多、貨幣状皮膚炎、全身性剥脱皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、皮脂腺の疾患、口周囲皮膚炎、ひげ仮性毛嚢炎、薬物発疹、多形紅斑、結節性紅斑、環状肉芽腫、または骨盤炎症性疾患(PID)由来の異常増殖細胞である請求項に記載の異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物。
【請求項9】
前記異常増殖血管疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症及び狭窄症、血管奇形、血液透析と関連した血管通路狭窄、移植後動脈病症、脈管炎、血管炎症疾患、ディジョージ症侯群、遺伝性出血性毛細管拡張症(HHT)、ケロイド性瘢痕、水泡疾患、過増殖性硝子体症侯群、未熟児網膜症、脈絡膜新生血管、黄斑変性、糖尿病性網膜症、眼内新生血管増殖、原発性肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ、炎症性腸及び歯周疾患、子宮内膜症、卵巣嚢、卵巣過剰刺激症候群、関節炎、リウマチ性関節炎、慢性関節リウマチ、潤滑膜炎、骨関節炎、骨髄炎、骨増殖、敗血症、または血管漏出症侯群由来の異常増殖細胞である請求項に記載の異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物。
【請求項10】
異常増殖細胞治療遺伝子、例えば、癌細胞治療遺伝子を挿入した請求項2に記載の複製可能偽型レトロウイルスベクターシステム含む癌予防または治療用組成物。
【請求項11】
前記癌治療遺伝子は、細胞自殺遺伝子、細胞死滅誘導遺伝子、免疫遺伝子、新生血管形成抑制遺伝子、及び癌細胞を死滅させることができる遺伝子沈黙(RNAi)を誘導するshRNA、miRNAまたはsiRNAを発現する塩基配列からなる群から選択された1つ以上を含む請求項10に記載の癌予防または治療用組成物。
【請求項12】
前記細胞自殺遺伝子は、前駆体薬物を活性化させる請求項11に記載の癌予防または治療用組成物。
【請求項13】
前記細胞自殺遺伝子は、ヘルペスシンプレックスウイルスのチミジンキナーゼであり、前駆体薬物であるGCVを活性化させる請求項12に記載の癌予防または治療用組成物。
【請求項14】
MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターを製造する段階と、
GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターを製造する段階と、を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムの製造方法であって、
前記第1組換え発現ベクターは、図1の開裂地図のベクターであり、かつ、
前記第2組換え発現ベクターは、図2の開裂地図のベクターである複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分裂中である異常増殖細胞への効率的な遺伝子伝達を可能にする複製可能偽型レトロウイルスベクターシステム、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
増殖は、1個の細胞を2個の細胞に分裂させる細胞周期を通じる細胞の発達につれて発生する。細胞周期は、G、G、S、G、及びM期である5段階で構成されている。G期の間に、細胞は停止しており、体内ほとんどの細胞は、この段階にある。G期の間に、細胞は分裂するための信号に反応して、DNA合成に必要なRNA及びタンパク質を生成し、S期(S期初期であるSE;S期中期であるSM;及びS期後期のSL)の間の細胞は、DNAを自己複製し、G期の間に、細胞が成長し続け、有糸分裂を準備するためのタンパク質合成が起こり、有糸分裂(M)期の間に、細胞は、2個の娘細胞に分裂される。癌のような、異常増殖細胞は、このような細胞周期進行での変更によって発生するが、これは、遺伝子の過多発現、調節遺伝子の突然変異、またはDNA損傷チェックポイントの欠陷から誘発されうる(Hochhauser D.,Anti−Cancer Chemotherapeutic Agents,8:903,1997)。
【0003】
異常増殖細胞疾患には、多様な類型がある。代表的な異常増殖細胞疾患としては、癌、バクテリア感染、臓器移植の免疫拒否反応、固形腫瘍、ウイルス感染、自己免疫疾患(例えば、関節炎、ループス、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群、多発性硬化症)、またはこれらの組合わせなどによって起こり、このような異常増殖細胞のうち、最も代表的な疾患としては、癌が最もよく知られている。
【0004】
癌とは、一般的に病んだ細胞の非正常な細胞分裂による増殖を特徴とする多様な部類の疾病を概括的に称する。知られたあらゆる類型の癌で一貫した特徴は、癌細胞とその子孫細胞との遺伝物質に異常が発生するということである。細胞が癌性になれば、正常限界とは関係なく増殖して、隣接組織を侵襲または破壊し、さらには転移と呼ばれる過程を通じて、解剖学的遠位部位まで拡散されうる。
【0005】
一方、今まで20年間約1,700余件に達する遺伝子治療臨床試験が許可されて行われた。しかし、最近、一部の単一欠損遺伝子に起因した遺伝性疾患を対象とした成功的な遺伝子治療の成功事例が発表されているが、一方、最も多い遺伝子治療臨床ケースを記録している癌の遺伝子治療のおける結果は、期待したほどではなかった。数年前、大きな期待を受けた腫瘍分解性(oncolytic)アデノウイルスベクターを利用した坑癌遺伝子治療も、一部の頭頸部癌で制限的な治療効果を示しているだけである。
【0006】
このような低い癌遺伝子治療の効果の原因に対する共通の認識は、癌細胞組織への効率的な遺伝子伝達を可能にするベクターの開発が至急であるということである。実際、以前の癌遺伝子治療臨床研究で調査した癌細胞への遺伝子伝達効率は、全体癌組織内の癌細胞の1%未満に表われている。このような非効率的な癌組織への遺伝子伝達効率を高めるために、多種の腫瘍分解性ウイルスが開発されて研究されたが、免疫原性誘発による炎症(inflammation)と迅速なウイルス除去(rapid viral clearance)、複雑なウイルス遺伝子構造による開発の難点、生体内でのウイルス変形と不活性化とによって、その効果は期待したほどには出ていない。
【0007】
しかし、最近、腫瘍分解性ワクシニアウイルスを利用した癌遺伝子治療が、過去の成績よりはさらに希望的な臨床研究結果を示すことを筆頭に、2010年には、米国で複製可能レトロウイルス(RCR:Replication−Competent Retrovirus)を利用した癌遺伝子治療臨床研究が承認を受け、2011年現在、臨床第1相研究が終わり、2相研究が進められている状況であって、今後、このベクターシステムを改良し、実用化するための研究、及びこのシステムを利用した臨床研究が増加すると予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、MuLV(Murine Leukemia Virus)−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターと、GaLV(Gibbonape Leukemia Virus)−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターと、を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムを提供することである。
本発明は、ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを提供することである。
本発明は、前記レトロウイルスを含む異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物を提供することである。
本発明は、前記異常増殖細胞治療遺伝子で癌治療遺伝子を挿入した前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを含む癌予防または治療用組成物を提供することである。
また、本発明は、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターを製造する段階と、GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターを製造する段階と、を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、MuLV−Gag遺伝子、MuLV−Pol遺伝子及びGaLV−Env遺伝子を2つのベクターに分けて発現させたベクターシステム、前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルス、前記レトロウイルスを含む異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物、癌予防または治療用組成物、及びMuLV−Gag遺伝子、MuLV−Pol遺伝子及びGaLV−Env遺伝子を2つのベクターに分けて発現させたベクターシステムの製造方法を提供する。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0010】
従来から知られた代表的な異常増殖細胞は、癌細胞であるために、本発明者は、持続的に分裂する細胞である癌細胞をターゲットで本発明のベクターシステムを実験した。異常増殖細胞遺伝子である、癌遺伝子治療でディフェクティブレトロウイルスベクターの癌細胞への遺伝子伝達効率は、全体癌組織内の癌細胞の1%未満であった。このような弱点を克服するために、複製可能レトロウイルスが使われているが、野生型レトロウイルス誘電体に追加的に治療遺伝子を挿入してベクターサイズが大きくなる場合、ベクターの遺伝子組替えによって治療機能を喪失するという問題点があった。これにより、本発明者は、前記問題点を解決するために努力していたところ、本発明のベクターシステムによる時、挿入遺伝子のサイズに制限が少なく、癌細胞への遺伝子伝達効率、特に、動物モデルに構築された癌組織への遺伝子伝達があらゆる分裂中である癌組織で起こることを確認することによって、本発明のベクターシステムが、あらゆる異常増殖細胞に適用可能であるということを確認し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターと、GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターと、を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムを提供する。
【0012】
前記第1組換え発現ベクターは、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含むものであって、その種類において、特に限定されるものではなく、望ましくは、図1の開裂地図のベクターを含みうる。
【0013】
前記第2組換え発現ベクターは、GaLV−Env遺伝子を含むものであって、その種類において、特に限定されるものではなく、望ましくは、図2の開裂地図のベクターを含みうる。
【0014】
本発明の複製可能レトロウイルス(RCR)ベクターは、非溶菌性(nonlytic)ウイルスであるために、宿主免疫システムによって細胞損傷が起こらず、ウイルスに対する抗体が生成されないために、ウイルス除去(viral clearance)が起こらなくて、遺伝子伝達体として非常に優れている。
【0015】
前記複製可能(Replication Competent)は、特定のウイルスに対して感染性が高い動物細胞に前記ウイルス遺伝子をトランスファクションまたは前記ウイルスを感染させた場合、その結果から得られた感染あるいは形質転換された細胞からウイルス生産能を有したということを意味する。
【0016】
前記複製可能レトロウイルスは、核膜が壊れる隙間を狙って核内に入るために、分裂する細胞にのみ感染することができて、癌細胞のように分裂する異常増殖細胞に特異的に感染することができる。したがって、挿入遺伝子が他の正常細胞から発現されることを防いで、異常増殖細胞に遺伝子伝達の安全性を提供するだけではなく、ウイルスが複製可能であるために、遺伝子伝達効率も増大させることができる。
【0017】
前記Gag遺伝子は、レトロウイルスのコアの4種のタンパク質を成すポリタンパク質であり、前記Pol遺伝子は、逆転写酵素を表わし、前記Env遺伝子は、外被糖タンパク質を表わすことができる。
【0018】
本発明では、レトロウイルスのEnv遺伝子をGaLV−Env遺伝子に変形することによって、ウイルス増殖及び誘電体伝達効率を高めうる。
一例として、前記第2組換え発現ベクターとして、MuLV外被タンパク質を含んだベクター(sRCR)と、本発明のGaLV外被糖タンパク質を含むベクター(spRCR)と、を製作して、比較した結果、GaLV−Env遺伝子を含んだ発現ベクターを使う場合、さらに高いウイルス感染率と誘電体伝達効率とを有しうる。
【0019】
一実施例に表われたように、ベクターを高い力価(titer)で感染させ、12日経過後、MuLV−Envを含んだベクターは、感染率が80%線に留まっている一方、GaLV−Envを含んだベクターは、ほぼ100%の感染率に行っており、ベクターを低い力価で感染させ、20日経過後、MuLV−Envを含んだベクターは、2%しか感染されない一方、GaLV−Envを含んだベクターは、94%まで占有されているということを確認することができる。
【0020】
一実施例に表われたように、ベクターに細胞自殺遺伝子導入後、前具体薬物であるGCVを10μg/mlの濃度で処理した一日目に、sRCR−TKに感染された細胞でGCV処理一日のみに細胞数が40%減少し、spRCR−TKに感染された細胞では、60%減少するということを確認することができる。
【0021】
一実施例に表われたように、インビボ(in vivo)でのsRCR−FLとspRCR−FLとの癌細胞感染率の比較時、sRCR−FL感染された癌細胞では、蛍光強度も非常に弱く、ウイルスが局所的に感染されている一方、spRCR−FLが感染された細胞では、ウイルスが癌細胞の形状に全体的に鮮明に発現されるということを確認することができる。
【0022】
また、前記ベクターは、レトロウイルスベクターの最も最小機能単位である5´−LTR及び3´−LTRを含み、このLTRの間に運ぼうとする目的遺伝子のヌクレオチド配列を挿入することができる。
【0023】
本発明の発現ベクターは、非正常に分裂する異常増殖細胞に外来遺伝子を伝達するために考案されたものであって、前記第1組換え発現ベクターまたは第2組換え発現ベクターには、外来遺伝子を挿入することができる。
【0024】
従来の発現ベクターは、本来のウイルス誘電体に追加的に外来遺伝子を挿入したために、挿入することができる外来遺伝子のサイズに制限があり、一方、本発明のベクターシステムは、1つのウイルスベクターを2つに分けたために、外来挿入遺伝子を両側ベクターにいずれも入れることができるために、多様な遺伝子をサイズに制限されずに挿入できるだけではなく、1つのウイルスベクターを用いた時ほど複製と増殖とがよく進行しうる。
【0025】
前記外来遺伝子は、特に限定されるものではないが、異常増殖細胞治療遺伝子であり、一例として、癌細胞治療遺伝子であり得る。
【0026】
前記異常増殖細胞は、通常の、適当な、または予測されたコースから逸脱された細胞の増殖で不適切に高いレベルに細胞分裂が起こることを意味する。一例として、異常増殖細胞は、DNAまたはその他の細胞性成分が損傷または欠損された細胞の不適切な増殖を含みうる。
【0027】
前記外来遺伝子は、目的によって非正常に分裂中である異常増殖細胞に伝達しようとするものであって、その種類において、特に限定されるものではなく、ホルモン、酵素、受容体、レポーター遺伝子、異常増殖細胞治療遺伝子などを含みうる。
【0028】
一例として、前記ベクターに異常増殖細胞治療遺伝子を挿入する場合、図3の開裂地図のベクターで表わすことができ、第2組換え発現ベクターに異常増殖細胞治療遺伝子を挿入することができる。
【0029】
一例として、異常増殖細胞が癌細胞である場合、癌治療遺伝子として細胞自殺遺伝子であるチミジンキナーゼ(Thymidine Kinase;TK)を使うことができるが、従来、TK遺伝子のサイズが大きくて、既存のベクターとしては効果を期待しにくく、サイズが大きな遺伝子をレトロウイルスに適用する場合、組換え(recombination)が起こる問題点があったが、一方、本発明のベクターシステムでは、サイズが大きな外来遺伝子も収容することができるために、前記問題点を起こせずにTK遺伝子を癌細胞に伝達することができる。
【0030】
本発明では、前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを提供することができる。
【0031】
前記細胞株の種類は、特に限定されるものではないが、一例として、ヒト293細胞、ヒーラ(Hela)細胞、ケーナインD17細胞、フィーラインPG4細胞などが挙げられる。
【0032】
前記トランスフェクション方法は、当業者に公知の方法に従い、リポフェクタミン法(Invitrogen社)、微小注入法(Capecchi,M.R.,Cell,22:479(1980))、リン酸カルシウム沈澱法(Graham,F.L.et al.,Virology,52:456(1973))、電気穿孔法(Neumann,E.etal.,EMBO J.,1:841(1982))、リポソーム媒介形質感染法(Wong,T.K.et al.,Gene,10:87(1980))、DEAE−デキストラン処理法(Gopal,Mol.Cell Biol.,5:1188−1190(1985))、及び遺伝子ボンバードメント(Yang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:9568−9572(1990))を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
引き続き、形質感染された細胞を適した培地で培養する。本発明で利用される培地は、動物細胞の培養に通用される培地を使い、一例として、Eagles´s MEM(Eagle´s minimum essential medium,Eagle,H.Science 130:432(1959))、a−MEM(Stanner,C.P.et al.,Nat.New Biol.230:52(1971))、Iscove´sMEM(Iscove,N.et al.,J.Exp.Med.147:923(1978))、199培地(Morgan et al.,Proc.Soc.Exp.Bio.Med.,73:1(1950))、CMRL 1066、RPMI 1640(Moore et al.,J.Amer.Med.Assoc.199:519(1967))、F12(Ham,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 53:288(1965))、F10(Ham,R.G.Exp.Cell Res.29:515(1963))、DMEM(Dulbecco´s modification of Eagle´s medium,Dulbecco,R.et al.,Virology 8:396(1959))、DMEMとF12との混合物(Barnes,D.et al.,Anal.Biochem.102:255(1980))、Way−mouth´s MB752/1(Waymouth,C.J.Natl.Cancer Inst.22:1003(1959))、McCoy´s 5A(McCoy,T.A.,et al.,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.100:115(1959))、及びMCDBシリーズ(Ham,R.G.et al.,In Vitro 14:11(1978))などを用途に合わせて選択することができる。培地についての説明は、R.Ian Freshney,Culture of Animal Cells,A Manual of Basic Technique,Alan R.Liss,Inc.,New Yorkを参照することができる。
【0034】
前記培養によって形成された培養物から前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを収得することができる。
本発明は、前記レトロウイルスを含む異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物を提供する。
【0035】
前記レトロウイルスが標的する細胞は、非正常に分裂中であるあらゆる異常増殖細胞を含み、その種類において、特に限定されるものではない。
【0036】
前記のような非正常に分裂する異常増殖細胞は、人体内で多様な疾患を誘発するが、これには、癌疾患、炎症性疾患、異常増殖血管疾患などが含まれうる。
【0037】
前記異常増殖細胞は、癌細胞であり得る。
【0038】
前記癌細胞は、生体組織内で細胞が非正常に無制限に異常増殖して腫瘍を起こす細胞であって、その種類において、特に限定されるものではないが、粘液状細胞癌腫、丸い細胞癌腫、局所的進行腫瘍、転移性癌、ユーイング(Ewing)肉腫、癌転移、リンパ性転移、扁平上皮細胞癌腫、食道扁平上皮細胞癌腫、経口癌腫、多発性骨髄腫、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球白血病、慢性骨髄球白血病、毛様細胞性白血病、流出リンパ腫(体腔系リンパ腫)、胸腺リンパ腫肺癌、小細胞肺癌腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンソングリンパ腫、副腎皮質癌、ACTH生成腫瘍、悚素細胞肺癌、乳房癌、小細胞癌腫、導管癌腫、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸腫瘍の形成と関連した茸腫、膵臓癌、肝癌、膀胱癌、1次表面膀胱腫瘍、膀胱の侵襲性転移細胞膀胱癌腫、筋浸潤性膀胱癌、前立腺癌、大腸癌、腎臓癌、肝癌、食道癌、卵巣癌腫、子宮頸部癌、子宮内膜癌、絨毛癌、卵巣癌、原発性腹膜上皮新生物、子宮頸管癌腫、膣癌、外陰部癌、子宮癌、卵胞中の固形腫瘍、睾丸癌、陰茎癌、腎臓細胞癌腫、脳癌、頭頸部癌、口頸部癌、神経芽細胞腫、脳幹神経膠腫、神経膠腫、中枢神経系中の転移性腫瘍細胞浸潤、骨腫、骨肉種、悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮細胞癌腫、甲状腺癌、網膜芽腫、神経芽細胞腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍、胆嚢癌、栄養芽細胞腫瘍、血管周囲細胞腫、またはカポジ肉腫由来の細胞などが含まれうる。
【0039】
前記異常増殖細胞は、炎症性疾患または異常増殖血管疾患由来の非癌細胞であり得る。
【0040】
前記炎症性疾患は、細胞が異常増殖して炎症を誘発する疾患をいずれも含む概念であって、炎症は、免疫適格細胞が外部個体または抗原性タンパク質に対する反応で活性化される場合に起こり、炎症性反応は、通常、外傷または抗原、例えば、ウイルス性、バクテリア性、原生動物性、または真菌性抗原などによって誘導されうる。
【0041】
前記炎症性疾患は、その種類において、特に限定されるものではないが、前記炎症性疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、炎症−誘導骨疾患、退行性関節炎、糖尿病、自己免疫筋肉炎、動脈硬化、脳卒中、肝硬化、脳膜炎、炎症性胃潰瘍、胆嚢結石、腎臓結石、副鼻腔炎、鼻炎、結膜炎、喘息、皮膚炎、炎症性腸疾患、炎症性コラーゲン血管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患、リウマチ関節炎(rheumatoid arthritis)、全身性紅斑性ループス(Systemic lupus erythematosus)、強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis)、ベーチェット病(Behcet’s disease)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、クローン病(Crohn disease)、乾癬(psoriasis)、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、接触性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬(lichen planus)、慢性単純苔癬(lichen simplex chronicus)、天疱瘡(pemphigus)、ブルース天疱瘡、表皮水泡症(Epidermolysis Bullosa)、蕁麻疹(Urticaria)、血管浮腫(angioedema)、脈管炎(vasculitis)、紅斑、皮膚好酸球増多症(Eosinophilia)、貨幣状皮膚炎(nummular dermatitis)、全身性剥脱皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、皮脂腺の疾患、口周囲皮膚炎、ひげ仮性毛嚢炎、薬物発疹、多形紅斑(erythema multiforme)、結節性紅斑(Erythema nodosum)、環状肉芽腫(Granuloma annulare)、または骨盤炎症性疾患(PID:Pelvic Inflammatory Disease)由来の異常増殖細胞であり得る。
【0042】
前記炎症−誘導骨疾患は、骨発生疾患、骨の骨折、骨の老人性損失、軟骨異栄養症、高カルシウム血症、過骨化症、不完全骨形成症、骨軟化症、骨髄炎、骨多孔症、ページェット病、骨関節炎、またはくる病などを含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
一例として、炎症性疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、リウマチ関節炎患者の異常増殖滑 膜細胞であり得る。
【0044】
前記異常増殖血管疾患は、血管に存在する細胞、特に、血管平滑筋細胞の過度な増殖によって引き起こされる疾患などを意味する。
【0045】
前記異常増殖血管疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、その種類において、特に限定されるものではなく、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症及び狭窄症、血管奇形、血液透析と関連した血管通路狭窄、移植後動脈病症(transplant arteriopathy)、脈管炎、血管炎症疾患、ディジョージ症侯群、遺伝性出血性毛細管拡張症(HHT)、ケロイド性瘢痕、水泡疾患、過増殖性硝子体症侯群、未熟児網膜症、脈絡膜新生血管、黄斑変性、糖尿病性網膜症、眼内新生血管増殖、原発性肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ(nasal polyps)、炎症性腸及び歯周疾患、子宮内膜症、卵巣嚢、卵巣過剰刺激症候群、関節炎、リウマチ性関節炎、慢性関節リウマチ、潤滑膜炎、骨関節炎、骨髄炎、骨増殖、敗血症、または血管漏出症侯群由来の異常増殖細胞であり得る。
【0046】
一例として、前記炎症性疾患由来の異常増殖細胞は、動脈硬化の原因となる異常増殖血管内皮細胞、慢性骨髄増殖疾患を起こす異常増殖赤血球、顆粒球、血小板、血管濾胞瘍リンパ腺増殖症(angiofollicular lymphoid hyperplasia)と知られた異常増殖リンパ細胞であり得る。
【0047】
前記レトロウイルスベクターに挿入される遺伝子は、実験する目的によって選択可能なものであって、その種類において、特に限定されるものではなく、ホルモン、酵素、受容体または異常増殖細胞治療用薬物(drug)を発現する遺伝子などを含みうる。
【0048】
本発明の組成物は、癌細胞のような非正常に分裂中である異常増殖細胞に外来遺伝子を伝達する伝達体として多くの長所を有している。前記レトロウイルスは、非溶菌性ウイルスであるために、宿主免疫システムによって細胞損傷が起こらず、ウイルスに対する抗体が生成されないために、ウイルス除去が起こらなくて、遺伝子伝達体として非常に優れ、分裂する細胞にのみ感染することができるために、癌細胞のような分裂中である異常増殖細胞に特異的に感染して、治療遺伝子が他の正常細胞から発現されることを防いで、細胞治療者にさらに安全性を提供するだけではなく、ウイルスが複製可能であるために、遺伝子伝達効率も増大させることができる。
【0049】
一実施例に表われたように、本発明のベクターの遺伝子伝達効率を確認するために、ベクターによる感染率を確認した時、GaLV−Envを含んだベクターをヌードマウスの移植された脳腫瘍に注入させた場合、MuLV−Envを含んだベクターよりも遥かに強度も高く、全体癌組織に鮮明に増殖されていることを確認できるだけではなく、癌組織を境界にして正常脳細胞では、如何なるウイルスの感染も確認されなくて、本発明の組成物が、癌細胞のような異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物として有用であるということを確認することができる。
【0050】
本発明は、前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを含む異常増殖細胞惹起疾患予防、または治療用組成物を提供する。
【0051】
前記異常増殖細胞は、通常の、適当な、または予測されたコースから逸脱された細胞の増殖で不適切に高いレベルに細胞分裂が起こることを意味する。一例として、異常増殖細胞は、DNAまたはその他の細胞性成分が損傷または欠損された細胞の不適切な増殖を含みうる。
【0052】
前記異常増殖細胞惹起疾患は、不適切に高いレベルに細胞分裂が起こり、また、これによって引き起こされ、媒介または招かれる疾病、障害と関連した特徴の細胞増殖を含みうる。このような疾病、または障害は、例えば、癌性または非癌性、悪性または良性が含まれ、これについては、前述されたことを参照することができる。
【0053】
また、本発明は、異常増殖細胞治療遺伝子で癌細胞治療遺伝子を挿入した前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを含む癌予防または治療用組成物を提供する。
【0054】
本発明の第1組換え発現ベクターまたは第2組換え発現ベクターは、細胞治療遺伝子で癌治療遺伝子を含むものであって、癌治療遺伝子の種類は、特に限定されるものではないが、望ましくは、細胞自殺遺伝子、細胞死滅誘導遺伝子、免疫遺伝子、新生血管形成抑制遺伝子、及び癌細胞を死滅させることができる遺伝子沈黙(RNAi)を誘導するshRNA、miRNAまたはsiRNAを発現する塩基配列からなる群から選択された1つ以上を含みうる。
【0055】
前記細胞自殺遺伝子は、その種類において、特に限定されるものではなく、一例として、ヘルペスシンプレックス(herpes simplex)ウイルスのチミジンキナーゼ(thymidine kinase)、バクテリアや酵母のシトシンデアミナーゼ(cytosine deaminase)などを含みうる。
【0056】
前記細胞自殺遺伝子は、前駆体薬物を活性化させることができるが、一例として、細胞自殺遺伝子導入後、前駆体薬物(prodrug)を投与すれば、細胞自殺遺伝子によって前駆体薬物が活性化されうる。
【0057】
前記細胞自殺遺伝子としてヘルペスシンプレックスウイルスのチミジンキナーゼ(Herpes SimplexVirus Thymidine Kinase;HSV−TK)を使い、前記ヘルペスシンプレックススウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−TK)によって前駆体薬物であるGCV(Ganciclovir)が活性化されうる。
【0058】
前記ヘルペスシンプレックススウイルスのチミジンキナーゼは、他の哺乳類のチミジンキナーゼよりもGCVを1000倍以上効果的にリン酸化させるために、癌細胞の死滅効果を高めうる。
【0059】
HSV−TKは、ヌクレオシド類似体(nucleoside analogs)であるガンシクロビル(ganciclovir;GCV)をリン酸化基質として用いて三リン酸(triphosphate)の形態に変換させる。リン酸化されたGCVは、細胞のDNA合成時に利用されて、超突然変異(hypermutation)でDNAに損傷を与えて細胞周期停止(cell cycle arrest)を起こし、結局、細胞を死滅を起こしうる。また、TK遺伝子が発現されない細胞でも、TK遺伝子が発現する細胞のギャップジャンクション(gap junction)を通じてリン酸化されたGCVが伝達されることによって、同じ細胞死滅効果が表われる。
【0060】
一実施例に表われたように、HSV−TK遺伝子を本発明のベクターに挿入して生存実験を進行した結果、GCV濃度が10〜30μg/mlである時、正常細胞に損傷を与えずとも、spRCR−TK感染U−87MGで細胞毒性(cytotoxicity)が観察され、癌組織以外の他の組織では、ウイルスが発見されなくて、本発明の組成物が安全性を有するということを確認し、また、動物実験の結果、対照群のマウスは、癌移植後、40日前後でいずれも死亡し、治療群のマウスは、毎日注射を受け、癌移植後、研究が進行中である現在である、70日までいずれも生存しているだけではなく、体重も正常に保持するということを確認することができる。
【0061】
前記結果は、本発明の組成物の安定性が高く、分裂する癌細胞に効果的に癌治療遺伝子を伝達することができるということを確認することができる。
【0062】
前記癌細胞の種類は、特に限定されるものではなく、粘液状細胞癌腫、丸い細胞癌腫、局所的進行腫瘍、転移性癌、ユーイング肉腫、癌転移、リンパ性転移、扁平上皮細胞癌腫、食道扁平上皮細胞癌腫、経口癌腫、多発性骨髄腫、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球白血病、慢性骨髄球白血病、毛様細胞性白血病、流出リンパ腫(体腔系リンパ腫)、胸腺リンパ腫肺癌、小細胞肺癌腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンソングリンパ腫、副腎皮質癌、ACTH生成腫瘍、悚素細胞肺癌、乳房癌、小細胞癌腫、導管癌腫、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸腫瘍の形成と関連した茸腫、膵臓癌、肝癌、膀胱癌、1次表面膀胱腫瘍、膀胱の侵襲性転移細胞膀胱癌腫、筋浸潤性膀胱癌、前立腺癌、大腸癌、腎臓癌、肝癌、食道癌、卵巣癌腫、子宮頸部癌、子宮内膜癌、絨毛癌、卵巣癌、原発性腹膜上皮新生物、子宮頸管癌腫、子宮内膜癌、膣癌、外陰部癌、子宮癌、卵胞中の固形腫瘍、睾丸癌、陰茎癌、腎臓細胞癌腫、脳癌、頭頸部癌、口頸部癌、神経芽細胞腫、脳幹神経膠腫、神経膠腫、中枢神経系中の転移性腫瘍細胞浸潤、骨腫、骨肉種、悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮細胞癌腫、甲状腺癌、網膜芽腫、神経芽細胞腫、腹膜流出、悪性肋膜流出、中皮腫、ウィルムス腫瘍、胆嚢癌、栄養芽細胞腫瘍、血管周囲細胞腫、カポジ肉腫などを含み、望ましくは、脳腫瘍、大腸癌、肺癌、肝癌、乳房癌であり得る。
【0063】
既存の抗癌剤治療が癌細胞だけではなく、全身に作用されて副作用をもたらす一方、このような自殺遺伝子/前駆体薬物システムは、癌細胞のみを目標とすることができて、正常細胞には、前駆体薬物が全く影響を与えないだけではなく、悪性腫瘍の局所部位の壊死(necrosis)や低酸素化(hypoxia)の状態でも、傍観者効果(bystander effect)によってベクターが到逹することができないとしても癌治療の範囲が増大しうる。
【0064】
本発明の前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを含む癌予防または治療用薬学組成物を製造する場合、前記レトロウイルスは、組成物総重量に対して、0.01〜99重量%で含みうるが、本発明の範囲が、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明の癌予防または治療用組成物は、文献[Remington´s Pharmaceutical Science,最新版;Mack Publishing Company,Easton PA]を参照して薬剤学的組成物として製造可能であり、この際、含まれる薬剤学的に許容される担体は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微小結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0066】
また、本発明の組成物は、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含みうる。
【0067】
前記薬学組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路に投与される。投与のあらゆる方式は、予想されうるが、一例として、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、気管支内吸入、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)などに注射によって投与される。
【0068】
本発明の組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様であり、通常、熟練された医師は、所望する治療または予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。
【0069】
本発明の組成物は、当業者が容易に実施することができる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することによって、単位容量の形態で製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造可能である。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳液の形態であるか、エクストラクト剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、またはカプセル剤の形態でもあり、分散剤または安定化剤をさらに含みうる。
【0070】
本発明は、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターを製造する段階と、GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターを製造する段階と、を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムの製造方法を提供する。
【0071】
前記第1組換え発現ベクターは、その種類において、特に限定されるものではないが、図1の開裂地図のベクターを含みうる。
前記第2組換え発現ベクターは、その種類において、特に限定されるものではないが、図2の開裂地図のベクターを含みうる。
前記第1組換え発現ベクターまたは第2組換え発現ベクターは、癌細胞標的とする外来遺伝子を挿入し、前記外来遺伝子は、癌治療遺伝子を含みうる。
前記癌治療遺伝子を含む発現ベクターの例としては、図3の開裂地図のベクターを含みうる。
【発明の効果】
【0072】
本発明では、異常増殖細胞標的性ベクターである、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターとGaLV−Envを含む第2組換え発現ベクターとの両側にいずれも治療遺伝子を入れることができるために、挿入遺伝子のサイズに制限されずに多様な治療用外来遺伝子を挿入し、前記ベクターは、癌のような非正常な細胞分裂を行う異常増殖細胞に94〜100%の高い感染率で感染されて外来遺伝子を伝達することができるが、このような伝達は、特異的に正常細胞には影響を及ぼさず、異常増殖細胞部位にのみ外来遺伝子を伝達することができるてめに、安全であり、一例として、異常増殖細胞である癌細胞に治療遺伝子を挿入した本発明のベクターを用いた場合、効果的に癌組織細胞のみを殺傷して、あらゆる実験体の生存期間を観察終了時点までいずれも生存を保持させることによって、本発明のベクターシステムは、癌のような異常増殖細胞惹起疾患予防または治療に効果的であるということを確認して、これを異常増殖細胞疾患予防または治療用薬学組成物として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】Gag遺伝子及びPol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターの開裂地図を示した図面である。
図2】GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターの開裂地図を示した図面である。
図3】前記第2組換え発現ベクターに治療遺伝子が追加されたものを示した図面である。
図4】sRCRgp−RFPのサブクローニングに関するものであって、FvGEL199Env配列を除去するために、pRCR(FvGEL199)をScaI、PmeIに分解し、T4 DNAポリメラーゼで処理した後、自己結合させたものである。
図5】sRCRgp−RFPのサブクローニングに関するものであって、マーカー遺伝子(RFP)を挿入するために、sRCRgpプラスミドをEcoRIに分解し、pLentiM1.4−monomerRFPからPCR−で増幅させたmCMVプロモーター−RFP切片を挿入したものである。
図6】spRCRe(GaLV−Env)GFPのサブクローニングに関するものであって、図6のAは、mCMVプロモーターとGFP配列とを挿入するために、pMFG−eGFP−PuroをXhoIとClaIとに分解した後、PCRによってpLenti−M1.4−eGFPから増幅させたmCMVプロモーター−eGFP切片と結合させたものであり、図6のBは、次にpMYK−ef1−GaLV−EnvのGaLV−Env配列を増幅させ、pMFG−mCMV−GFP2(図6のA)のPmeIに分解された地域に挿入したものである。
図7】spRCRe(GalV−Env)TKのサブクローニングに関するものであって、図7のAは、spRCR (GaLV−Env)MCSをサブクローニングするために、spRCRe(GaLV−Env)−GFP上のeGFPを制限酵素に分解して除去させ、自己結合させた後、PCR増幅(spRCR(GaLV−Env)MCS)によってマルチクローニング位置を挿入させ、spRCR(GaLV−Env)MCSをPmeIに分解させて、TK配列を挿入したものであり、図7のBは、pSXLC−TKからPmeIに分解されたTK切片をspRCR(GaLV−Env)MCSに挿入させたものである。
図8】蛍光マーカータンパク質を発現するセミ−複製可能レトロウイルスベクターの構造を示したものであって、図8のAは、sRCRgp−RFPが両末端のLTRだけではなく、Gag−Pol発現構造及びRFP配列を含有したものであり、sRCRe(MuLV−Env)−GFPは、発現マーカーだけではなく、MuLV−Env発現構造及びGFP配列を含有したものであり、図8のBは、sRCRe(MuLV−Env)−GFP内のMuLV−Env遺伝子をGaLV−Env遺伝子に交換したものである。
図9】high titer sRCR(MuLV−Env)−FL及びspRCR(GaLV−Env)−FLの複製キネティックを示したものであって、図9のA、図9のBは、ヒト神経膠腫細胞(Human glioma cell)である、U−87MGを2.5X10ゲノムコピー(genomic copies)からsRCR−FLまたはspRCR−FLに感染させたものであり、感染後、多様な時間点で、細胞を蛍光顕微鏡下で観察し、GFPまたはRFPを発現する細胞のパーセンテージを決定するために、柔細胞分析器によって蛍光を測定したものである。
図10】high titer sRCR(MuLV−Env)−FL及びspRCR(GaLV−Env)−FLの複製キネティックを示したものであって、柔細胞分析器によって測定されたGFPまたはRFPを発現する細胞のパーセンテージを示した図面である。
図11】high titer sRCR(MuLV−Env)−FL及びspRCR(GaLV−Env)−FLの複製キネティックを示したものであって、図11のA、図11のBは、Envベクター及びGag−Polベクターによって発現されるGFPまたはRFPのパーセンテージを示した図面である。
図12】high titer sRCR(MuLV−Env)−FL及びspRCR(GaLV−Env)−FLの複製キネティックを示したものであって、spRCRe(GaLV−Env)−GFPの複製キネティックをsRCRe(MuLV−Env)−GFPと比較したものである。
図13】low titer sRCR(MuLV−Env)−FL及びspRCR(GaLV−Env)−FLの複製キネティックに関するものであって、図13のA、図13のBは、ヒト神経膠腫細胞である、U−87MGを1.5X10ゲノムコピーのsRCR−FLまたはspRCR−FLに感染させ、以後、多様な時間点で細胞を蛍光顕微鏡下で観察したものであり、GFPまたはRFPを発現させる細胞のパーセンテージを決定するために、柔細胞分析器によって測定された蛍光を示した図面である。
図14】low titer sRCR(MuLV−Env)−FL及びspRCR(GaLV−Env)−FLの複製キネティックに関するものであって、柔細胞測定器によって測定されたGFPまたはRFPを発現する細胞のパーセンテージを示した図面である。
図15】low titer sRCR(MuLV−Env)−FL及びspRCR(GaLV−Env)−FLの複製キネティックに関するものであって、Envベクター及びGag−Polベクターによって発現されるGFPまたはRFPのパーセンテージを示した図面である。
図16】low titer sRCR(MuLV−Env)−FL及びspRCR(GaLV−Env)−FLの複製キネティックに関するものであって、spRCRe(GaLV−Env)−GFPの複製キネティックをsRCRe(MuLV−Env)−GFPと比較したものである。
図17】発現するセミ−複製可能レトロウイルスベクターの構造を示したものであって、図17のA、図17のBは、各EnvベクターでGFP遺伝子がヘルペスシンプレックススウイルスタイプIチミジンキナーゼ遺伝子に置き換えられたものである。
図18】TKを発現するセミ−複製可能レトロウイルスベクターのTK遺伝子の発現を示したものであって、ウェスタンブロッティングによってA549細胞でHSV−TK発現を観察したものである。レーン1(Lane1)は、処理されていない(untreated)A549を、レーン2(lane2)は、spRCR(GaLV−Env)−TKウイルスで感染されたA549細胞を、レーン3(lane3)は、sRCR(MuLV−Env)−TKウイルスで感染されたA549細胞を、レーン4(lane4)は、spRCR(GaLV−Env)−TKプラスミドでトランスフェクションされたgp293細胞を示した図面である。
図19】U−87MGでsemi−RCR−TK/GCVの細胞毒性を示したものであって、spRCR(GaLV−Env)−TK transduced U−87MGを0日に0から70μg/mlに至る多様な濃度でGCV処理し、細胞の生存をMTT分析で決定したものである。
図20】U−87MGでsemi−RCR−TK/GCVの細胞毒性を示したものであって、spRCR(GaLV−Env)−FL、sRCR(MuLV−Env)−TK、spRCR(GaLV−Env)−TK trasnduced U−87MGを10μg/ml GCVで処理し、細胞の生存をMTT分析で決定したものである。
図21】生体内ヒト神経膠腫(human gliomas)でsemi−RCRウイルスの拡散を示すものであって、図21のAは、ヌードマウスの線条体(striatum)内にヒト神経膠腫(Human glioma)U−87MGを注入して癌を形成させ、7日後で、各semi−RCR−FLベクター1.5X10ゲノムコピー(10TU)を異種移植された癌内に注入し、ウイルス注入18日後で、凍結切片(cryosection)したものであり、図21のB、図21のCは、sRCR(MuLV−Env)−FL(図21のB)またはspRCR(GaLV−Env)−FL(図21のC)拡散によるGFPとRFPとの発現の統合されたイメージを示した図面である。
図22】脳腫瘍移植ヌードマウスで腫瘍にspRCR−TKを感染させた後、生存期間を調査したものである。
図23】qPCR反応の標準曲線を描くために、100ngのマウスゲノムDNAに一定量のコピー数を添加した後、PCRを行った結果を示した図面である。3回の実験を行って計算した標準偏差を含んだデータを示す。
図24】ヌードマウスの移植された脳腫瘍にspRCR−GFPを腫瘍内注入(intratumoral injection)した後、各臓器のDNA 100ngを試料でqPCRを行ってCt値をグラフで示した図面である。3回の実験を行って計算した標準偏差を含んだデータを示す。
図25】PCRを用いて100ngのマウスゲノムDNAに存在するspRCR−GFPゲノムの存在を確認した写真である。ヌードマウスの移植された脳腫瘍にspRCR−GFPを腫瘍内注入した後、各臓器のDNA 100ngを試料でPCRを行って電気泳動した結果を示す。
図26】ヌードマウスの移植された脳腫瘍にspRCR−TKを感染させた後、ウイルスの増殖を通じる癌組織内でのウイルス拡散をPET−CTを使って撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明は、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターと、GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターと、を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムを提供する。
【0075】
前記第1組換え発現ベクターは、図1の開裂地図のベクターを含みうる。
【0076】
前記第2組換え発現ベクターは、図2の開裂地図のベクターを含みうる。
【0077】
前記第1組換え発現ベクターまたは第2組換え発現ベクターは、異常増殖細胞治療遺伝子を含みうる。
【0078】
前記第2組換え発現ベクターは、図3の開裂地図のベクターを含みうる。
【0079】
本発明は、前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを提供する。
【0080】
本発明は、前記レトロウイルスを含む異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物を提供する。
【0081】
前記異常増殖細胞は、癌細胞であり得る。
【0082】
前記癌細胞は、粘液状細胞癌腫、丸い細胞癌腫、局所的進行腫瘍、転移性癌、ユーイング肉腫、癌転移、リンパ性転移、扁平上皮細胞癌腫、食道扁平上皮細胞癌腫、経口癌腫、多発性骨髄腫、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球白血病、慢性骨髄球白血病、毛様細胞性白血病、流出リンパ腫(体腔系リンパ腫)、胸腺リンパ腫肺癌、小細胞肺癌腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンソングリンパ腫、副腎皮質癌、ACTH生成腫瘍、悚素細胞肺癌、乳房癌、小細胞癌腫、導管癌腫、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸腫瘍の形成と関連した茸腫、膵臓癌、肝癌、膀胱癌、1次表面膀胱腫瘍、膀胱の侵襲性転移細胞膀胱癌腫、筋浸潤性膀胱癌、前立腺癌、大腸癌、腎臓癌、肝癌、食道癌、卵巣癌腫、子宮頸部癌、子宮内膜癌、絨毛癌、卵巣癌、原発性腹膜上皮新生物、子宮頸管癌腫、膣癌、外陰部癌、子宮癌、卵胞中の固形腫瘍、睾丸癌、陰茎癌、腎臓細胞癌腫、脳癌、頭頸部癌、口頸部癌、神経芽細胞腫、脳幹神経膠腫、神経膠腫、中枢神経系中の転移性腫瘍細胞浸潤、骨腫、骨肉種、悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮細胞癌腫、甲状腺癌、網膜芽腫、神経芽細胞腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍、胆嚢癌、栄養芽細胞腫瘍、血管周囲細胞腫、またはカポジ肉腫由来の細胞であり得る。
【0083】
前記異常増殖細胞は、炎症性疾患または異常増殖血管疾患由来の非癌細胞であり得る。
【0084】
前記炎症性疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、炎症−誘導骨疾患、退行性関節炎、糖尿病、自己免疫筋肉炎、動脈硬化、脳卒中、肝硬化、脳膜炎、炎症性胃潰瘍、胆嚢結石、腎臓結石、副鼻腔炎、鼻炎、結膜炎、喘息、皮膚炎、炎症性腸疾患、炎症性コラーゲン血管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患、リウマチ関節炎、全身性紅斑性ループス、強直性脊椎炎、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、慢性単純苔癬、天疱瘡、ブルース天疱瘡、表皮水泡症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増多症、貨幣状皮膚炎、全身性剥脱皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、皮脂腺の疾患、口周囲皮膚炎、ひげ仮性毛嚢炎、薬物発疹、多形紅斑、結節性紅斑、環状肉芽腫、または骨盤炎症性疾患(PID)由来の異常増殖細胞であり得る。
【0085】
前記異常増殖血管疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症及び狭窄症、血管奇形、血液透析と関連した血管通路狭窄、移植後動脈病症、脈管炎、血管炎症疾患、ディジョージ症侯群、遺伝性出血性毛細管拡張症(HHT)、ケロイド性瘢痕、水泡疾患、過増殖性硝子体症侯群、未熟児網膜症、脈絡膜新生血管、黄斑変性、糖尿病性網膜症、眼内新生血管増殖、原発性肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ、炎症性腸及び歯周疾患、子宮内膜症、卵巣嚢、卵巣過剰刺激症候群、関節炎、リウマチ性関節炎、慢性関節リウマチ、潤滑膜炎、骨関節炎、骨髄炎、骨増殖、敗血症、または血管漏出症侯群由来の異常増殖細胞であり得る。
【0086】
本発明は、異常増殖細胞治療遺伝子で癌細胞治療遺伝子を挿入した前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを含む癌予防または治療用組成物を提供する。
【0087】
前記癌治療遺伝子は、細胞自殺遺伝子、細胞死滅誘導遺伝子、免疫遺伝子、新生血管形成抑制遺伝子、及び癌細胞を死滅させることができる遺伝子沈黙(RNAi)を誘導するshRNA、miRNAまたはsiRNAを発現する塩基配列からなる群から選択された1つ以上を含みうる。
【0088】
前記細胞自殺遺伝子は、前駆体薬物を活性化させることができる。
【0089】
前記細胞自殺遺伝子は、ヘルペスシンプレックスウイルスのチミジンキナーゼであり、前駆体薬物であるGCVを活性化させることができる。
【0090】
本発明は、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターを製造する段階と、GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターを製造する段階と、を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムの製造方法を提供する。
【0091】
本発明は、MuLV−Gag遺伝子、MuLV−Pol遺伝子及びGaLV−Env遺伝子を2つのベクターに分けて発現させたベクターシステム、前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルス、前記レトロウイルスを含む異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物、癌予防または治療用組成物、及びMuLV−Gag遺伝子、MuLV−Pol遺伝子及びGaLV−Env遺伝子を2つのベクターに分けて発現させたベクターシステムの製造方法を提供するものであって、下記の実施例によってさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示したものであって、本発明の内容が、実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0092】
実施例1:細胞培養
293T(human embryonic kidney)細胞、U−87MG(human glioma)細胞は、10%ウシ胎児血清(Invitrogen)と抗生剤(Invitrogen)とを入れたDulbecco´ミニマムエッセンシャル培地(DMEM、Thermo Hyclone)で培養した。あらゆる実験で、細胞は、細胞培養容器(100mm dish、6well plate)に5% CO培養器で培養され、細胞頻度が70〜80%程度満ちれば、1:5で継代培養した。
【0093】
実施例2:ベクターの製作
マーカー遺伝子、RFPが入っているsRCRgp−RFPベクター(図4図5参照)を作るために、pRCR(FvGEL199Env)のFvGel199EnvをScaIとPmeIとに切り、pLenti M1.4−momomerRFPベクターのmCMVプロモーターからRFPまで部分をPpuMIとNotIとに切って、非粘着末端連結(blunt end ligation)を行った。
マーカー遺伝子、GFPが入っているspRCRe(GaLV−Env)−GFPベクター(図6参照)を作るために、MFG−eGFP−Puro vectorのgag後のXhoI siteと3‘LTRの前のClaI siteとを切り、pLenti M1.4−eGFPのmCMVからeGFPまでPCRして切り取った位置に貼り付けた(Forward:SalI−PmeI−mCMV、Reverse:ClaI−GFP)。作られたMFG−mCMV−GFP2ベクターのGagとmCMVとの間にGaLV−Env配列を入れるために、MYK−ef1−GaLV−Envを鋳型(template)で両側プライマーいずれもPmeI位置が含まれたプライマーを用いてPCRし、前で作られたベクターをPmeIに切って挿入体(Insert)と結合(ligation)した。
マーカー遺伝子の代わりに、所望の治療遺伝子を入れるために、eGFPをBamHIとClaIとに切り取り、マルチクローニング位置(Multi cloning site)を入れて、spRCR(GaLV−Env)−MCSベクターを作った。
spRCR(GaLV−Env)−MCSにTK遺伝子(図7参照)を入れるために、pSXLC−TK vectorをNcoIとXhoIとに切ってT4 DNAポリメラーゼ(TAKARA)でblunt endを作り、spRCR(GaLV−Env)−MCSをPmeIに切ってCIAP処理後、挿入体と結合した。
sRCRe(MuLV−Env)ベクターを作るために、前で作ったMFG−mCMV−GFP2のmCMV前部をPmeIに切った。Amphotropic MuLV−Env insertを作るために、EQPAM−AmのMuLV−Env部分を前方(forward)、逆方(reverse)2つともPmlI位置を含んだプライマーでPCRして結合した。
sRCR(MuLV−Env)−RFPでTK遺伝子を入れるために、RFPをHpaIに両側を切り、spRCR(GaLV−Env)−TKでHpaI、ClaIにTKを切って非粘着(blunt)に作った後、結合した。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
実施例3:ウイルスの生産
293T細胞をトランスフェクション(transfection)一日前6ウェルプレートに6×10個/wellの細胞を接種した。翌日培地をFBSが入っていないDMEMで1mlずつ取り替えた。細胞培養器にプレート(plate)を再び入れ、2個の1.5mlチューブにそれぞれDMEMを100μl/wellずつ入れた。1つのチューブ(tube)に前記の表にあるDNA(total 1μg)とPLUS reagent(Invitrogen)5μl/well、他の1つには、リポフェクタミン(Invitrogen)3μl/wellを入れ、10秒間ボルテックス(vortex)する。15分間常温で培養した後、リポフェクタミンが入っているチューブの溶液をPLUSが入っているチューブに入れ、再び10秒間ボルテックスした。20分間常温で培養した後、細胞が敷かれているプレートを取り出して208μl/wellを細胞が落ちないようにぽたぽた落とした。細胞培養器に入れた後、4時間後で細胞培地を除去し、3% FBSが入っているDMEMを気をつけて入れた。動物実験に使われるウイルスは、FBSを添加しなかった。48時間後、培地を収穫してチューブに集めた。ウイルス濃縮と精製とのために、Amicon 100K(Millipore)に収穫したウイルスを入れ、4℃で3,000rpmで10×になるまで遠心分離(centrifugation)した。1.5mlチューブに作った日付を表示し、100μlずつ分周して、−80℃に保管した。
ウイルス定量のために、リアルタイムPCRのためのレトロウイルス力価セット(Retrovirus Titer Set for Realtime PCR、TaKaRa)を利用した。このキット(kit)のプライマーは、MuLVパッキング信号部分(packaging signal region)を認識し、SYBR GreenIをマーカープローブ(marker probe)で有している。ウイルスをトランスフェクション時、過量のDNAを使うので、これを除去するために、次のようにDNaseI過程[総25μl(Virus Supernatant 12.5μl、10×DNase Buffer 2.5μl、DNase(5U/μl)2.0μl、RNase Inhibitor(40U/μl)0.5μl、RNase−Free Water 7.5μl);37℃、30分/70℃、10分]を経た。
Kitに入っているRNA対照群鋳型(Control Template)で一連に希釈(serial dilution)して、基準サンプル(standard sample)を準備した(103、104、105、106、107、108copies/μl)。次のようにリアルタイム(real time)PCRを行った[総25μl(2×One Step SYBR RT−PCR BufferIII 12.5μl、TaKara Ex Taq HS(5u/μl)0.5μl、PrimeScript RT Enzyme MixII 0.5μl、Forwaard Titer Primer FRT−1(10pmol/μl)0.5μl、Reverse Titer Primer FRT−1(10pmol/μl)0.5μl、Virus supernatantまたはstandard sample 2μl、RNase−Free Water 8.5μl;Reverse transcription、42℃、5分/95℃、10秒;PCR、40cycle、95℃、5秒/60℃ 30秒;Dissociation、95℃、15秒/60℃、30秒/95℃、15秒]。
基準カーブ(Standard curve)を、そして、サンプル(sample)値を計算した。
【0098】
【表4】
【0099】
実施例4:実験室(In vitro)でspRCRベクターの経時的な複製の態様
既存に使うMuLVに基づいたRCRベクターは、1つのベクターでGag−Pol、MuLV−Env、そして、その後で、レポーター遺伝子(または、治療遺伝子)が発現するものであった。しかし、本研究で使われたセミ−複製可能偽型レトロウイルス(semi−pseudotyped replication competent retrovirus;spRCR)は、Gag−PolとGaLV−Env、レポーター遺伝子(または、治療遺伝子)が2つのベクターで分けて発現される。sRCRgpベクターは、Gag−Pol遺伝子を発現し、RFPで細胞内発現を確認することができる。sRCRe(MuLV−Env)、spRCRe(GaLV−Env)ベクターは、それぞれMuLV−Env、GaLV−Envが発現され、GFPで確認することができる(図8)。
ウイルスは、2つのベクターを293T細胞に一時的トランスフェクト(transient transfect)もさせて、上層培地を通じて生産された。このウイルスでquantitative real time PCRを行って、ゲノムコピー(genomic copy)を算出した。2.5×10、1.5×10gc(0.01MOI、0.0005MOI)のspRCR−FLとsRCR−FLとをU−87MG細胞に感染させて、2〜3日ごとに継代培養する前に蛍光写真を撮り、培養し、残った細胞は、FACS分析を行った。FACSデータによれば、まず、高い力価(genome copy、gc)を感染させた時を見れば、感染速度や蛍光強度がspRCR(GaLV−Env)がsRCR(MuLV−Env)よりも比較的高かった。感染後、12日目のsRCR(MuLV−Env)は、まだ80%線に留まっている一方、spRCR(GaLV−Env)は、ほぼ100%の感染率に行っていた(図9図12)。低い力価で感染させれば、spRCR(GaLV−Env)とsRCR(MuLV−Env)との感染速度差がさらに顕著であった。低い力価で感染させた時の初期感染速度は、2つとも遅れるが、感染後、20日になった時、sRCR(MuLV−Env)は、2%しか感染されない一方、spRCR(GaLV−Env)は、94%まで占有されていた(図13図16)。
【0100】
実施例5:spRCR−TKから発現されるチミジンキナーゼタンパク質の確認
レポーター遺伝子を発現するEnvベクターでGFP遺伝子を除去し、治療遺伝子であるチミジンキナーゼ遺伝子をクローニングした(図17)。spRCR−TKベクターで実際にTKタンパク質が発現されるかを確認するために、ウェスタンブロッティング(western blotting)を行った。
図18で示すように、何らの処理もしていないA549細胞では、バンドが出ず、TK遺伝子を発現するspRCR−TK、sRCR−TK、pRCR−TKを感染させた細胞やトランスタクション(transduction)させた細胞では、バンドを観察することができた。
【0101】
実施例6:GCV濃度によるspRCR−TK感染細胞の敏感度
実験室(In vitro)でspRCR−TKに感染された細胞がGCVを処理した時、ある程度の細胞毒性を示すかを測定するために、MTTアッセイを行った。まず、EnvベクターのGFPの代わりに、治療遺伝子であるTKが入ったベクターを作って、293T細胞にGag−polベクターと共にトランスフェクションさせて、spRCR−TKを作った。U−87MG細胞に、これらウイルスを感染させて、14日間保持させた後、96ウェルプレートに感染させた細胞と感染させていない細胞とを接種した。翌日GCVの濃度を0、10、20、30、40、50、60、70μg/mlに漸次的に増やして処理した。GCVを処理した期間を1、2、3、4日に分けて、その度にMTTアッセイを進行した。
GCV 10μg/mlの濃度処理一日目、sRCR−TKに感染された細胞でGCV処理一日のみ細胞数が40%減少し、spRCR−TKに感染された細胞では、60%減少した。正常細胞では、GCV 70μg/mlの濃度から細胞毒性を表わした(図19図20)。
【0102】
実施例7:癌組織でspRCR−FL、sRCR−FLの拡散の態様
spRCR−FL、sRCR−FLが、実際ヌードマウスの癌組織で広がる態様を調べるために、ヌードマウス脳の線条体に3×10 U−87MG細胞を植えた。癌移植7日後、1.5×10gc(≒10 TU)/10μlウイルスベクターが癌に注入(injection)させた。ウイルス注入後、18日後、癌組織を蛍光顕微鏡で観察した。
正常細胞と癌細胞とを境界にして鮮明に癌細胞にのみ蛍光が観察され、脳(brain)のどちらでもウイルスの感染された所はなかった。sRCR−FL感染された癌細胞では、蛍光強度も非常に弱く、ウイルスが局所的に感染されている一方、spRCR−FLが感染された細胞では、ウイルスが癌細胞の形状に全体的に鮮明に発現された(図21)。
【0103】
実施例8:脳腫瘍移植ヌードマウスで腫瘍にspRCR−TK感染時(+GCV注射)の生存期間
前記のような方法でヌードマウスの線条体にU−87MG細胞を移植した。一週間後、1.5×10gc(≒10 TU)/10μlのspRCR−TKと10μl PBS(control)とを癌内注入(intratumoral injection)した。癌細胞移植後、21日後から51日までPBSまたはGCV(100mg/kg)を腹腔注射した。
対照群のマウス(N=13)は、癌移植後、40日前後でいずれも死亡し、治療群のマウス(N=21)は、毎日100mg/kg GCV注射を受け、観察を終了した癌移植後、70日までいずれも生存しているだけではなく、体重も正常に保持した(図22)。
【0104】
実施例9:spRCRベクターの安全性
6週齢、雌ヌードマウスの線条体に3×10個のU−87MG細胞を移植してから7日後、10gc spRCR−FLベクターを腫瘍内注入する。注入後、7日後、マウスを貫流(perfusion)し、癌(tumor)横の正常な脳、腫瘍(tumor)、心臓、肺、肝、腎臓、脾臓、腸、卵巣、骨髄(bone marrow)、手術部位の皮膚を滅菌された条件で取り外した。組織フリーキット(Tissue prep kit、GeneAll)でゲノムDNAをprepした。
Quantitative PCRのために、表5のようにプライマー(primer)をデザインした。
【0105】
【表5】
【0106】
PCR反応のための組成は、2XIQ Supermix(2X)10μl、センスプライマー(Sense Primer、10pmol/μl)0.4μl、アンチセンスプライマー(anti−sense primer、10pmol/μl)0.4μl、gDNA(50ng/μl)2μl、FAMプローブ(100pmol/μl)0.03μl、滅菌水(Sterilized water)7.2μlで総20.03μlにした。
CFX real time PCR C1000 Thermo(Bio−Rad)で95℃で3分、95℃で20秒、58℃で60秒で40サイクル(cycle)反応を進行し、反応終了後、データを分析した。
前記と同じ組織の一般PCR遂行のために、0.5μgサンプルDNA、0.5μM各プライマー(each primer)、5units TaKaRa Ex Taqポリメラーゼを20μl準備し、30サイクル、94℃1分、60℃30秒、72℃1分PCRした。ベクターのpolとGFPとを認識するプライマーを用いた。生産物のサイズは、3.5kbであり、プライマー配列は、表6のようである。
【0107】
【表6】
【0108】
PCR productを1%アガロースゲル(agarose gel)に100V、40分間電気泳動した。
正常脳、脳腫瘍、心臓、肺、肝、腎臓、脾臓、腸、卵巣、骨髄、手術部位の皮膚でのゲノムDNAを抜き出して、qPCRとPCR分析を行った結果、腫瘍組織でのみGFP配列が確認され、他のあらゆる組織では、GFP配列が確認されなかった(図23図25)。
【0109】
実施例10:脳腫瘍内HSV−TK発現マウスのPET−CT撮影
前記のような方法でヌードマウスの線条体にU−87MG細胞を移植した。(n=6)一週間後、1.5×10gc(≒104 TU)/10μlの比較群spRCRe−TK(複製不能)または複製可能spRCR−TKウイルスを癌組織内に注入(intratumoral injection)した。ウイルスを注入した後、3、7、10、14、17日に、次のようにPET−CT撮影を行った。[18F]FHBGをマウス一匹当たり500μCi/50μlをしっぽ静脈(tail vein;i.v.)注入した後、1時間後で、animal PET−CT(eXplore VISTA CT、GE)を撮影する過程に進められた。CTの撮影条件は、250μA、40KAであり、PET撮影は、5分間映像を得た後、2D OSEM再構造(reconstruction)過程を経て完成することができた。このように得られた映像は、Osirix imagingソフトウェア(The Osirix Foundation,Geneva,Switzerland)を使って分析及び具現した(図26)。
図26に表われたように、複製不能ウイルスの場合、癌組織への拡散がほとんど起こっていない一方に、複製可能spRCR−TKウイルスは、非常に効率的に癌組織内での拡散が起こるということが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、複製可能偽型レトロウイルスベクターシステム関連の分野に適用可能である。
図1
図2
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図17A
図17B
図18
図21A
図21B
図21C
図3
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図19
図20
図22
図23
図24
図25
図26