【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、MuLV−Gag遺伝子、MuLV−Pol遺伝子及びGaLV−Env遺伝子を2つのベクターに分けて発現させたベクターシステム、前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルス、前記レトロウイルスを含む異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物、癌予防または治療用組成物、及びMuLV−Gag遺伝子、MuLV−Pol遺伝子及びGaLV−Env遺伝子を2つのベクターに分けて発現させたベクターシステムの製造方法を提供する。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0010】
従来から知られた代表的な異常増殖細胞は、癌細胞であるために、本発明者は、持続的に分裂する細胞である癌細胞をターゲットで本発明のベクターシステムを実験した。異常増殖細胞遺伝子である、癌遺伝子治療でディフェクティブレトロウイルスベクターの癌細胞への遺伝子伝達効率は、全体癌組織内の癌細胞の1%未満であった。このような弱点を克服するために、複製可能レトロウイルスが使われているが、野生型レトロウイルス誘電体に追加的に治療遺伝子を挿入してベクターサイズが大きくなる場合、ベクターの遺伝子組替えによって治療機能を喪失するという問題点があった。これにより、本発明者は、前記問題点を解決するために努力していたところ、本発明のベクターシステムによる時、挿入遺伝子のサイズに制限が少なく、癌細胞への遺伝子伝達効率、特に、動物モデルに構築された癌組織への遺伝子伝達があらゆる分裂中である癌組織で起こることを確認することによって、本発明のベクターシステムが、あらゆる異常増殖細胞に適用可能であるということを確認し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターと、GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターと、を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムを提供する。
【0012】
前記第1組換え発現ベクターは、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含むものであって、その種類において、特に限定されるものではなく、望ましくは、
図1の開裂地図のベクターを含みうる。
【0013】
前記第2組換え発現ベクターは、GaLV−Env遺伝子を含むものであって、その種類において、特に限定されるものではなく、望ましくは、
図2の開裂地図のベクターを含みうる。
【0014】
本発明の複製可能レトロウイルス(RCR)ベクターは、非溶菌性(nonlytic)ウイルスであるために、宿主免疫システムによって細胞損傷が起こらず、ウイルスに対する抗体が生成されないために、ウイルス除去(viral clearance)が起こらなくて、遺伝子伝達体として非常に優れている。
【0015】
前記複製可能(Replication Competent)は、特定のウイルスに対して感染性が高い動物細胞に前記ウイルス遺伝子をトランスファクションまたは前記ウイルスを感染させた場合、その結果から得られた感染あるいは形質転換された細胞からウイルス生産能を有したということを意味する。
【0016】
前記複製可能レトロウイルスは、核膜が壊れる隙間を狙って核内に入るために、分裂する細胞にのみ感染することができて、癌細胞のように分裂する異常増殖細胞に特異的に感染することができる。したがって、挿入遺伝子が他の正常細胞から発現されることを防いで、異常増殖細胞に遺伝子伝達の安全性を提供するだけではなく、ウイルスが複製可能であるために、遺伝子伝達効率も増大させることができる。
【0017】
前記Gag遺伝子は、レトロウイルスのコアの4種のタンパク質を成すポリタンパク質であり、前記Pol遺伝子は、逆転写酵素を表わし、前記Env遺伝子は、外被糖タンパク質を表わすことができる。
【0018】
本発明では、レトロウイルスのEnv遺伝子をGaLV−Env遺伝子に変形することによって、ウイルス増殖及び誘電体伝達効率を高めうる。
一例として、前記第2組換え発現ベクターとして、MuLV外被タンパク質を含んだベクター(sRCR)と、本発明のGaLV外被糖タンパク質を含むベクター(spRCR)と、を製作して、比較した結果、GaLV−Env遺伝子を含んだ発現ベクターを使う場合、さらに高いウイルス感染率と誘電体伝達効率とを有しうる。
【0019】
一実施例に表われたように、ベクターを高い力価(titer)で感染させ、12日経過後、MuLV−Envを含んだベクターは、感染率が80%線に留まっている一方、GaLV−Envを含んだベクターは、ほぼ100%の感染率に行っており、ベクターを低い力価で感染させ、20日経過後、MuLV−Envを含んだベクターは、2%しか感染されない一方、GaLV−Envを含んだベクターは、94%まで占有されているということを確認することができる。
【0020】
一実施例に表われたように、ベクターに細胞自殺遺伝子導入後、前具体薬物であるGCVを10μg/mlの濃度で処理した一日目に、sRCR−TKに感染された細胞でGCV処理一日のみに細胞数が40%減少し、spRCR−TKに感染された細胞では、60%減少するということを確認することができる。
【0021】
一実施例に表われたように、インビボ(in vivo)でのsRCR−FLとspRCR−FLとの癌細胞感染率の比較時、sRCR−FL感染された癌細胞では、蛍光強度も非常に弱く、ウイルスが局所的に感染されている一方、spRCR−FLが感染された細胞では、ウイルスが癌細胞の形状に全体的に鮮明に発現されるということを確認することができる。
【0022】
また、前記ベクターは、レトロウイルスベクターの最も最小機能単位である5´−LTR及び3´−LTRを含み、このLTRの間に運ぼうとする目的遺伝子のヌクレオチド配列を挿入することができる。
【0023】
本発明の発現ベクターは、非正常に分裂する異常増殖細胞に外来遺伝子を伝達するために考案されたものであって、前記第1組換え発現ベクターまたは第2組換え発現ベクターには、外来遺伝子を挿入することができる。
【0024】
従来の発現ベクターは、本来のウイルス誘電体に追加的に外来遺伝子を挿入したために、挿入することができる外来遺伝子のサイズに制限があり、一方、本発明のベクターシステムは、1つのウイルスベクターを2つに分けたために、外来挿入遺伝子を両側ベクターにいずれも入れることができるために、多様な遺伝子をサイズに制限されずに挿入できるだけではなく、1つのウイルスベクターを用いた時ほど複製と増殖とがよく進行しうる。
【0025】
前記外来遺伝子は、特に限定されるものではないが、異常増殖細胞治療遺伝子であり、一例として、癌細胞治療遺伝子であり得る。
【0026】
前記異常増殖細胞は、通常の、適当な、または予測されたコースから逸脱された細胞の増殖で不適切に高いレベルに細胞分裂が起こることを意味する。一例として、異常増殖細胞は、DNAまたはその他の細胞性成分が損傷または欠損された細胞の不適切な増殖を含みうる。
【0027】
前記外来遺伝子は、目的によって非正常に分裂中である異常増殖細胞に伝達しようとするものであって、その種類において、特に限定されるものではなく、ホルモン、酵素、受容体、レポーター遺伝子、異常増殖細胞治療遺伝子などを含みうる。
【0028】
一例として、前記ベクターに異常増殖細胞治療遺伝子を挿入する場合、
図3の開裂地図のベクターで表わすことができ、第2組換え発現ベクターに異常増殖細胞治療遺伝子を挿入することができる。
【0029】
一例として、異常増殖細胞が癌細胞である場合、癌治療遺伝子として細胞自殺遺伝子であるチミジンキナーゼ(Thymidine Kinase;TK)を使うことができるが、従来、TK遺伝子のサイズが大きくて、既存のベクターとしては効果を期待しにくく、サイズが大きな遺伝子をレトロウイルスに適用する場合、組換え(recombination)が起こる問題点があったが、一方、本発明のベクターシステムでは、サイズが大きな外来遺伝子も収容することができるために、前記問題点を起こせずにTK遺伝子を癌細胞に伝達することができる。
【0030】
本発明では、前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを提供することができる。
【0031】
前記細胞株の種類は、特に限定されるものではないが、一例として、ヒト293細胞、ヒーラ(Hela)細胞、ケーナインD17細胞、フィーラインPG4細胞などが挙げられる。
【0032】
前記トランスフェクション方法は、当業者に公知の方法に従い、リポフェクタミン法(Invitrogen社)、微小注入法(Capecchi,M.R.,Cell,22:479(1980))、リン酸カルシウム沈澱法(Graham,F.L.et al.,Virology,52:456(1973))、電気穿孔法(Neumann,E.etal.,EMBO J.,1:841(1982))、リポソーム媒介形質感染法(Wong,T.K.et al.,Gene,10:87(1980))、DEAE−デキストラン処理法(Gopal,Mol.Cell Biol.,5:1188−1190(1985))、及び遺伝子ボンバードメント(Yang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:9568−9572(1990))を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
引き続き、形質感染された細胞を適した培地で培養する。本発明で利用される培地は、動物細胞の培養に通用される培地を使い、一例として、Eagles´s MEM(Eagle´s minimum essential medium,Eagle,H.Science 130:432(1959))、a−MEM(Stanner,C.P.et al.,Nat.New Biol.230:52(1971))、Iscove´sMEM(Iscove,N.et al.,J.Exp.Med.147:923(1978))、199培地(Morgan et al.,Proc.Soc.Exp.Bio.Med.,73:1(1950))、CMRL 1066、RPMI 1640(Moore et al.,J.Amer.Med.Assoc.199:519(1967))、F12(Ham,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 53:288(1965))、F10(Ham,R.G.Exp.Cell Res.29:515(1963))、DMEM(Dulbecco´s modification of Eagle´s medium,Dulbecco,R.et al.,Virology 8:396(1959))、DMEMとF12との混合物(Barnes,D.et al.,Anal.Biochem.102:255(1980))、Way−mouth´s MB752/1(Waymouth,C.J.Natl.Cancer Inst.22:1003(1959))、McCoy´s 5A(McCoy,T.A.,et al.,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.100:115(1959))、及びMCDBシリーズ(Ham,R.G.et al.,In Vitro 14:11(1978))などを用途に合わせて選択することができる。培地についての説明は、R.Ian Freshney,Culture of Animal Cells,A Manual of Basic Technique,Alan R.Liss,Inc.,New Yorkを参照することができる。
【0034】
前記培養によって形成された培養物から前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを収得することができる。
本発明は、前記レトロウイルスを含む異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物を提供する。
【0035】
前記レトロウイルスが標的する細胞は、非正常に分裂中であるあらゆる異常増殖細胞を含み、その種類において、特に限定されるものではない。
【0036】
前記のような非正常に分裂する異常増殖細胞は、人体内で多様な疾患を誘発するが、これには、癌疾患、炎症性疾患、異常増殖血管疾患などが含まれうる。
【0037】
前記異常増殖細胞は、癌細胞であり得る。
【0038】
前記癌細胞は、生体組織内で細胞が非正常に無制限に異常増殖して腫瘍を起こす細胞であって、その種類において、特に限定されるものではないが、粘液状細胞癌腫、丸い細胞癌腫、局所的進行腫瘍、転移性癌、ユーイング(Ewing)肉腫、癌転移、リンパ性転移、扁平上皮細胞癌腫、食道扁平上皮細胞癌腫、経口癌腫、多発性骨髄腫、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球白血病、慢性骨髄球白血病、毛様細胞性白血病、流出リンパ腫(体腔系リンパ腫)、胸腺リンパ腫肺癌、小細胞肺癌腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンソングリンパ腫、副腎皮質癌、ACTH生成腫瘍、悚素細胞肺癌、乳房癌、小細胞癌腫、導管癌腫、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸腫瘍の形成と関連した茸腫、膵臓癌、肝癌、膀胱癌、1次表面膀胱腫瘍、膀胱の侵襲性転移細胞膀胱癌腫、筋浸潤性膀胱癌、前立腺癌、大腸癌、腎臓癌、肝癌、食道癌、卵巣癌腫、子宮頸部癌、子宮内膜癌、絨毛癌、卵巣癌、原発性腹膜上皮新生物、子宮頸管癌腫、膣癌、外陰部癌、子宮癌、卵胞中の固形腫瘍、睾丸癌、陰茎癌、腎臓細胞癌腫、脳癌、頭頸部癌、口頸部癌、神経芽細胞腫、脳幹神経膠腫、神経膠腫、中枢神経系中の転移性腫瘍細胞浸潤、骨腫、骨肉種、悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮細胞癌腫、甲状腺癌、網膜芽腫、神経芽細胞腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍、胆嚢癌、栄養芽細胞腫瘍、血管周囲細胞腫、またはカポジ肉腫由来の細胞などが含まれうる。
【0039】
前記異常増殖細胞は、炎症性疾患または異常増殖血管疾患由来の非癌細胞であり得る。
【0040】
前記炎症性疾患は、細胞が異常増殖して炎症を誘発する疾患をいずれも含む概念であって、炎症は、免疫適格細胞が外部個体または抗原性タンパク質に対する反応で活性化される場合に起こり、炎症性反応は、通常、外傷または抗原、例えば、ウイルス性、バクテリア性、原生動物性、または真菌性抗原などによって誘導されうる。
【0041】
前記炎症性疾患は、その種類において、特に限定されるものではないが、前記炎症性疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、炎症−誘導骨疾患、退行性関節炎、糖尿病、自己免疫筋肉炎、動脈硬化、脳卒中、肝硬化、脳膜炎、炎症性胃潰瘍、胆嚢結石、腎臓結石、副鼻腔炎、鼻炎、結膜炎、喘息、皮膚炎、炎症性腸疾患、炎症性コラーゲン血管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患、リウマチ関節炎(rheumatoid arthritis)、全身性紅斑性ループス(Systemic lupus erythematosus)、強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis)、ベーチェット病(Behcet’s disease)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、クローン病(Crohn disease)、乾癬(psoriasis)、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、接触性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬(lichen planus)、慢性単純苔癬(lichen simplex chronicus)、天疱瘡(pemphigus)、ブルース天疱瘡、表皮水泡症(Epidermolysis Bullosa)、蕁麻疹(Urticaria)、血管浮腫(angioedema)、脈管炎(vasculitis)、紅斑、皮膚好酸球増多症(Eosinophilia)、貨幣状皮膚炎(nummular dermatitis)、全身性剥脱皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、皮脂腺の疾患、口周囲皮膚炎、ひげ仮性毛嚢炎、薬物発疹、多形紅斑(erythema multiforme)、結節性紅斑(Erythema nodosum)、環状肉芽腫(Granuloma annulare)、または骨盤炎症性疾患(PID:Pelvic Inflammatory Disease)由来の異常増殖細胞であり得る。
【0042】
前記炎症−誘導骨疾患は、骨発生疾患、骨の骨折、骨の老人性損失、軟骨異栄養症、高カルシウム血症、過骨化症、不完全骨形成症、骨軟化症、骨髄炎、骨多孔症、ページェット病、骨関節炎、またはくる病などを含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
一例として、炎症性疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、リウマチ関節炎患者の異常増殖滑 膜細胞であり得る。
【0044】
前記異常増殖血管疾患は、血管に存在する細胞、特に、血管平滑筋細胞の過度な増殖によって引き起こされる疾患などを意味する。
【0045】
前記異常増殖血管疾患由来の非癌性異常増殖細胞は、その種類において、特に限定されるものではなく、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症及び狭窄症、血管奇形、血液透析と関連した血管通路狭窄、移植後動脈病症(transplant arteriopathy)、脈管炎、血管炎症疾患、ディジョージ症侯群、遺伝性出血性毛細管拡張症(HHT)、ケロイド性瘢痕、水泡疾患、過増殖性硝子体症侯群、未熟児網膜症、脈絡膜新生血管、黄斑変性、糖尿病性網膜症、眼内新生血管増殖、原発性肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ(nasal polyps)、炎症性腸及び歯周疾患、子宮内膜症、卵巣嚢、卵巣過剰刺激症候群、関節炎、リウマチ性関節炎、慢性関節リウマチ、潤滑膜炎、骨関節炎、骨髄炎、骨増殖、敗血症、または血管漏出症侯群由来の異常増殖細胞であり得る。
【0046】
一例として、前記炎症性疾患由来の異常増殖細胞は、動脈硬化の原因となる異常増殖血管内皮細胞、慢性骨髄増殖疾患を起こす異常増殖赤血球、顆粒球、血小板、血管濾胞瘍リンパ腺増殖症(angiofollicular lymphoid hyperplasia)と知られた異常増殖リンパ細胞であり得る。
【0047】
前記レトロウイルスベクターに挿入される遺伝子は、実験する目的によって選択可能なものであって、その種類において、特に限定されるものではなく、ホルモン、酵素、受容体または異常増殖細胞治療用薬物(drug)を発現する遺伝子などを含みうる。
【0048】
本発明の組成物は、癌細胞のような非正常に分裂中である異常増殖細胞に外来遺伝子を伝達する伝達体として多くの長所を有している。前記レトロウイルスは、非溶菌性ウイルスであるために、宿主免疫システムによって細胞損傷が起こらず、ウイルスに対する抗体が生成されないために、ウイルス除去が起こらなくて、遺伝子伝達体として非常に優れ、分裂する細胞にのみ感染することができるために、癌細胞のような分裂中である異常増殖細胞に特異的に感染して、治療遺伝子が他の正常細胞から発現されることを防いで、細胞治療者にさらに安全性を提供するだけではなく、ウイルスが複製可能であるために、遺伝子伝達効率も増大させることができる。
【0049】
一実施例に表われたように、本発明のベクターの遺伝子伝達効率を確認するために、ベクターによる感染率を確認した時、GaLV−Envを含んだベクターをヌードマウスの移植された脳腫瘍に注入させた場合、MuLV−Envを含んだベクターよりも遥かに強度も高く、全体癌組織に鮮明に増殖されていることを確認できるだけではなく、癌組織を境界にして正常脳細胞では、如何なるウイルスの感染も確認されなくて、本発明の組成物が、癌細胞のような異常増殖細胞標的性遺伝子伝達用の組成物として有用であるということを確認することができる。
【0050】
本発明は、前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを含む異常増殖細胞惹起疾患予防、または治療用組成物を提供する。
【0051】
前記異常増殖細胞は、通常の、適当な、または予測されたコースから逸脱された細胞の増殖で不適切に高いレベルに細胞分裂が起こることを意味する。一例として、異常増殖細胞は、DNAまたはその他の細胞性成分が損傷または欠損された細胞の不適切な増殖を含みうる。
【0052】
前記異常増殖細胞惹起疾患は、不適切に高いレベルに細胞分裂が起こり、また、これによって引き起こされ、媒介または招かれる疾病、障害と関連した特徴の細胞増殖を含みうる。このような疾病、または障害は、例えば、癌性または非癌性、悪性または良性が含まれ、これについては、前述されたことを参照することができる。
【0053】
また、本発明は、異常増殖細胞治療遺伝子で癌細胞治療遺伝子を挿入した前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを含む癌予防または治療用組成物を提供する。
【0054】
本発明の第1組換え発現ベクターまたは第2組換え発現ベクターは、細胞治療遺伝子で癌治療遺伝子を含むものであって、癌治療遺伝子の種類は、特に限定されるものではないが、望ましくは、細胞自殺遺伝子、細胞死滅誘導遺伝子、免疫遺伝子、新生血管形成抑制遺伝子、及び癌細胞を死滅させることができる遺伝子沈黙(RNAi)を誘導するshRNA、miRNAまたはsiRNAを発現する塩基配列からなる群から選択された1つ以上を含みうる。
【0055】
前記細胞自殺遺伝子は、その種類において、特に限定されるものではなく、一例として、ヘルペスシンプレックス(herpes simplex)ウイルスのチミジンキナーゼ(thymidine kinase)、バクテリアや酵母のシトシンデアミナーゼ(cytosine deaminase)などを含みうる。
【0056】
前記細胞自殺遺伝子は、前駆体薬物を活性化させることができるが、一例として、細胞自殺遺伝子導入後、前駆体薬物(prodrug)を投与すれば、細胞自殺遺伝子によって前駆体薬物が活性化されうる。
【0057】
前記細胞自殺遺伝子としてヘルペスシンプレックスウイルスのチミジンキナーゼ(Herpes SimplexVirus Thymidine Kinase;HSV−TK)を使い、前記ヘルペスシンプレックススウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−TK)によって前駆体薬物であるGCV(Ganciclovir)が活性化されうる。
【0058】
前記ヘルペスシンプレックススウイルスのチミジンキナーゼは、他の哺乳類のチミジンキナーゼよりもGCVを1000倍以上効果的にリン酸化させるために、癌細胞の死滅効果を高めうる。
【0059】
HSV−TKは、ヌクレオシド類似体(nucleoside analogs)であるガンシクロビル(ganciclovir;GCV)をリン酸化基質として用いて三リン酸(triphosphate)の形態に変換させる。リン酸化されたGCVは、細胞のDNA合成時に利用されて、超突然変異(hypermutation)でDNAに損傷を与えて細胞周期停止(cell cycle arrest)を起こし、結局、細胞を死滅を起こしうる。また、TK遺伝子が発現されない細胞でも、TK遺伝子が発現する細胞のギャップジャンクション(gap junction)を通じてリン酸化されたGCVが伝達されることによって、同じ細胞死滅効果が表われる。
【0060】
一実施例に表われたように、HSV−TK遺伝子を本発明のベクターに挿入して生存実験を進行した結果、GCV濃度が10〜30μg/mlである時、正常細胞に損傷を与えずとも、spRCR−TK感染U−87MGで細胞毒性(cytotoxicity)が観察され、癌組織以外の他の組織では、ウイルスが発見されなくて、本発明の組成物が安全性を有するということを確認し、また、動物実験の結果、対照群のマウスは、癌移植後、40日前後でいずれも死亡し、治療群のマウスは、毎日注射を受け、癌移植後、研究が進行中である現在である、70日までいずれも生存しているだけではなく、体重も正常に保持するということを確認することができる。
【0061】
前記結果は、本発明の組成物の安定性が高く、分裂する癌細胞に効果的に癌治療遺伝子を伝達することができるということを確認することができる。
【0062】
前記癌細胞の種類は、特に限定されるものではなく、粘液状細胞癌腫、丸い細胞癌腫、局所的進行腫瘍、転移性癌、ユーイング肉腫、癌転移、リンパ性転移、扁平上皮細胞癌腫、食道扁平上皮細胞癌腫、経口癌腫、多発性骨髄腫、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球白血病、慢性骨髄球白血病、毛様細胞性白血病、流出リンパ腫(体腔系リンパ腫)、胸腺リンパ腫肺癌、小細胞肺癌腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンソングリンパ腫、副腎皮質癌、ACTH生成腫瘍、悚素細胞肺癌、乳房癌、小細胞癌腫、導管癌腫、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸腫瘍の形成と関連した茸腫、膵臓癌、肝癌、膀胱癌、1次表面膀胱腫瘍、膀胱の侵襲性転移細胞膀胱癌腫、筋浸潤性膀胱癌、前立腺癌、大腸癌、腎臓癌、肝癌、食道癌、卵巣癌腫、子宮頸部癌、子宮内膜癌、絨毛癌、卵巣癌、原発性腹膜上皮新生物、子宮頸管癌腫、子宮内膜癌、膣癌、外陰部癌、子宮癌、卵胞中の固形腫瘍、睾丸癌、陰茎癌、腎臓細胞癌腫、脳癌、頭頸部癌、口頸部癌、神経芽細胞腫、脳幹神経膠腫、神経膠腫、中枢神経系中の転移性腫瘍細胞浸潤、骨腫、骨肉種、悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮細胞癌腫、甲状腺癌、網膜芽腫、神経芽細胞腫、腹膜流出、悪性肋膜流出、中皮腫、ウィルムス腫瘍、胆嚢癌、栄養芽細胞腫瘍、血管周囲細胞腫、カポジ肉腫などを含み、望ましくは、脳腫瘍、大腸癌、肺癌、肝癌、乳房癌であり得る。
【0063】
既存の抗癌剤治療が癌細胞だけではなく、全身に作用されて副作用をもたらす一方、このような自殺遺伝子/前駆体薬物システムは、癌細胞のみを目標とすることができて、正常細胞には、前駆体薬物が全く影響を与えないだけではなく、悪性腫瘍の局所部位の壊死(necrosis)や低酸素化(hypoxia)の状態でも、傍観者効果(bystander effect)によってベクターが到逹することができないとしても癌治療の範囲が増大しうる。
【0064】
本発明の前記ベクターシステムで細胞株をトランスフェクションさせて生産されたレトロウイルスを含む癌予防または治療用薬学組成物を製造する場合、前記レトロウイルスは、組成物総重量に対して、0.01〜99重量%で含みうるが、本発明の範囲が、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明の癌予防または治療用組成物は、文献[Remington´s Pharmaceutical Science,最新版;Mack Publishing Company,Easton PA]を参照して薬剤学的組成物として製造可能であり、この際、含まれる薬剤学的に許容される担体は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微小結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0066】
また、本発明の組成物は、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含みうる。
【0067】
前記薬学組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路に投与される。投与のあらゆる方式は、予想されうるが、一例として、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、気管支内吸入、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)などに注射によって投与される。
【0068】
本発明の組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様であり、通常、熟練された医師は、所望する治療または予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。
【0069】
本発明の組成物は、当業者が容易に実施することができる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することによって、単位容量の形態で製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造可能である。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳液の形態であるか、エクストラクト剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、またはカプセル剤の形態でもあり、分散剤または安定化剤をさらに含みうる。
【0070】
本発明は、MuLV−Gag遺伝子及びMuLV−Pol遺伝子を含む第1組換え発現ベクターを製造する段階と、GaLV−Env遺伝子を含む第2組換え発現ベクターを製造する段階と、を含む複製可能偽型レトロウイルスベクターシステムの製造方法を提供する。
【0071】
前記第1組換え発現ベクターは、その種類において、特に限定されるものではないが、
図1の開裂地図のベクターを含みうる。
前記第2組換え発現ベクターは、その種類において、特に限定されるものではないが、
図2の開裂地図のベクターを含みうる。
前記第1組換え発現ベクターまたは第2組換え発現ベクターは、癌細胞標的とする外来遺伝子を挿入し、前記外来遺伝子は、癌治療遺伝子を含みうる。
前記癌治療遺伝子を含む発現ベクターの例としては、
図3の開裂地図のベクターを含みうる。