特許第6069494号(P6069494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069494
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】電磁式流量計のライナ固定機構
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/58 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   G01F1/58 A
   G01F1/58 B
【請求項の数】25
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-512667(P2015-512667)
(86)(22)【出願日】2013年5月1日
(65)【公表番号】特表2015-516582(P2015-516582A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】US2013038994
(87)【国際公開番号】WO2013173061
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】13/472,685
(32)【優先日】2012年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ミコリチェック, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース, スティーブン, ブルース
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−016023(JP,U)
【文献】 実開昭55−155924(JP,U)
【文献】 特開2012−008108(JP,A)
【文献】 国際公開第93/009403(WO,A1)
【文献】 特表2011−510326(JP,A)
【文献】 特開昭61−070416(JP,A)
【文献】 特開2009−168539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体の流量を検出する電磁式流量計用センサであって、
前記電磁式流量計用センサの両端に1つずつ設けられ、前記プロセス流体の流路に前記電磁式流量計用センサを接続する2つのセンサ端面と、
2つの前記センサ端面を接続し、前記電磁式流量計用センサを通過する前記プロセス流体の流動を案内する管路と、
前記管路の内側を覆い、前記プロセス流体と前記管路とが物理的に接するのを防止するライナであって、前記管路の全長にわたって延設されると共に、前記電磁式流量計用センサの両端においてそれぞれの前記センサ端面の少なくとも一部を覆うように延設されて前記電磁式流量計用センサの両端のそれぞれに平坦なシール面を形成し、それぞれの端部に複数の孔を有するライナと、
複数の前記孔に貫通して設けられ、前記電磁式流量計用センサの両端に前記ライナを機械的に固定して、前記ライナのずれを防止する複数の機械的固定部材とを備え、
前記機械的固定部材は、前記電磁式流量計用センサの両端のそれぞれにおける前記平坦なシール面より突出することなく設けられる
ことを特徴とする電磁式流量計用センサ。
【請求項2】
前記ライナは、ポリテトラフルオロエチレン製のライナであることを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計用センサ。
【請求項3】
前記流路の流路壁及び前記ライナを貫通して設けられ、前記プロセス流体の流動を横切って生成された電圧を計測する複数の電極を更に備え、
前記電極が前記ライナと物理的に接することにより、前記機械的固体部材が前記電極の移動を防止することを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計用センサ。
【請求項4】
前記機械的固定部材は、2つの前記センサ端面のいずれにもない前記電磁式流量計用センサの面に、機械的に固定されることを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計用センサ。
【請求項5】
2つの前記センサ端面のそれぞれは、
前記センサ端面の第1平面にある第1端面部と、
前記センサ端面の第2平面にある第2端面部であって、ボルト孔用円環を形成するように配置された複数のボルト孔を有する第2端面部とを備え、
前記センサ端面の前記第1平面は、前記センサ端面の前記第2平面に比べ、2つの前記センサ端面の中間点から軸線方向で遠い位置にあり、
前記機械的固定部材は、前記第2平面にある前記第2端面部に機械的に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計用センサ。
【請求項6】
2つの前記センサ端面のそれぞれは、
前記センサ端面の第1平面にある第1端面部であって、ボルト孔用円環を形成するように配置された複数のボルト孔を有する第1端面部と、
前記センサ端面の第2平面にある第2端面部とを備え、
前記センサ端面の前記第1平面は、前記センサ端面の前記第2平面に比べ、2つの前記センサ端面の中間点から軸線方向で遠い位置にあり、
前記機械的固定部材は、前記第2平面にある前記第2端面部に機械的に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計用センサ。
【請求項7】
前記ライナに設けられた複数の前記孔のそれぞれは、
前記機械的固定部材が前記平坦なシール面より突出することがないように、前記機械的固定部材の一部を保持する外側部分と、
センサ端面の一部に機械的に結合するべく前記機械的固定部材を貫通させる内側部分と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計用センサ。
【請求項8】
複数の前記機械的固定部材は、スポット溶接、プロジェクション溶接、アーク溶接、及び抵抗溶接の少なくとも1つにより、前記電磁式流量計用センサに固定されることを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計用センサ。
【請求項9】
複数の前記機械的固定部材は、頭付き溶接スタッド、ずれ止め溶接スタッド、及びネジ山付き溶接スタッドとナットとの組み合わせの少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計用センサ。
【請求項10】
複数の前記機械的固定部材は、螺合により前記電磁式流量計用センサに固定されることを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計用センサ。
【請求項11】
プロセス流体の流量を計測し、前記流量の計測結果を制御システムまたは監視システムに伝送する電磁式流量計システムであって、
制御システムまたは監視システムと通信を行うプロセス伝送器と、
前記プロセス伝送器と電気的に接続され、検出した前記プロセス流体の流量を表す信号を供給する電磁式流量計用センサとを備え、
前記電磁式流量計用センサは、
前記電磁式流量計用センサの両端に1つずつ設けられ、前記プロセス流体の流路に前記電磁式流量計用センサを接続する2つのセンサ端面と、
2つの前記センサ端面を接続し、前記電磁式流量計用センサを通過する前記プロセス流体の流動を案内する管路と、
前記管路の内側を覆い、前記プロセス流体と前記管路とが物理的に接するのを防止するライナであって、前記管路の全長にわたって延設されると共に、前記電磁式流量計用センサの両端においてそれぞれの前記センサ端面の少なくとも一部を覆うように延設されて前記電磁式流量計用センサの両端のそれぞれに平坦なシール面を形成し、それぞれの端部に複数の孔を有するライナと、
複数の前記孔に貫通して設けられ、前記電磁式流量計用センサの両端に前記ライナを機械的に固定して、前記ライナのずれを防止する複数の機械的固定部材とを備え、
前記機械的固定部材は、前記電磁式流量計用センサの両端のそれぞれにおける前記平坦なシール面より突出することなく設けられる
ことを特徴とする電磁式流量計システム。
【請求項12】
前記ライナは、ポリテトラフルオロエチレン製のライナであることを特徴とする請求項11に記載の電磁式流量計システム。
【請求項13】
前記流路の流路壁及び前記ライナを貫通して設けられ、前記プロセス流体の流動を横切って生成された電圧を計測する複数の電極を更に備え、
前記電極が前記ライナと物理的に接することにより、前記機械的固体部材が前記電極の移動を防止することを特徴とする請求項11に記載の電磁式流量計システム。
【請求項14】
前記機械的固定部材は、2つの前記センサ端面のいずれにもない前記電磁式流量計用センサの面に、機械的に固定されることを特徴とする請求項11に記載の電磁式流量計システム。
【請求項15】
2つの前記センサ端面のそれぞれは、
前記センサ端面の第1平面にある第1端面部と、
前記センサ端面の第2平面にある第2端面部であって、ボルト孔用円環を形成するように配置された複数のボルト孔を有する第2端面部とを備え、
前記センサ端面の前記第1平面は、前記センサ端面の前記第2平面に比べ、2つの前記センサ端面の中間点から軸線方向で遠い位置にあり、
前記機械的固定部材は、前記第2平面にある前記第2端面部に機械的に固定される
ことを特徴とする請求項11に記載の電磁式流量計システム。
【請求項16】
2つの前記センサ端面のそれぞれは、
前記センサ端面の第1平面にある第1端面部であって、ボルト孔用円環を形成するように配置された複数のボルト孔を有する第1端面部と、
前記センサ端面の第2平面にある第2端面部とを備え、
前記センサ端面の前記第1平面は、前記センサ端面の前記第2平面に比べ、2つの前記センサ端面の中間点から軸線方向で遠い位置にあり、
前記機械的固定部材は、前記第2平面にある前記第2端面部に機械的に固定される
ことを特徴とする請求項11に記載の電磁式流量計システム。
【請求項17】
前記ライナに設けられた複数の前記孔のそれぞれは、
前記機械的固定部材が前記平坦なシール面より突出することがないように、前記機械的固定部材の一部を保持する外側部分と、
センサ端面の一部に機械的に結合するべく前記機械的固定部材を貫通させる内側部分と
を備えることを特徴とする請求項11に記載の電磁式流量計システム。
【請求項18】
複数の前記機械的固定部材は、スポット溶接、プロジェクション溶接、アーク溶接、及び抵抗溶接の少なくとも1つにより、前記電磁式流量計用センサに固定されることを特徴とする請求項11に記載の電磁式流量計システム。
【請求項19】
複数の前記機械的固定部材は、頭付き溶接スタッド、ずれ止め溶接スタッド、及びネジ山付き溶接スタッドとナットとの組み合わせの少なくとも1つからなることを特徴とする請求項11に記載の電磁式流量計システム。
【請求項20】
複数の前記機械的固定部材は、螺合により前記電磁式流量計用センサに固定されることを特徴とする請求項11に記載の電磁式流量計システム。
【請求項21】
電磁式流量計用センサの管路の内側を覆うと共に、前記電磁式流量計用センサの両端の2つのセンサ端面のそれぞれに重ねて延設され、前記電磁式流量計用センサの両端のそれぞれに平坦なシール面を形成するライナのずれを防止する方法であって、
前記管路内に前記ライナを挿入する工程と、
前記電磁式流量計用センサの前記センサ端面に重なるように前記ライナを外側に広げる工程と、
外側に広げられた前記ライナに設けられた複数の孔のそれぞれに機械的固定部材を挿入する工程と、
前記電磁式流量計用センサの両端のそれぞれにおける前記平坦なシール面より前記機械的固定部材が突出しないようにして、前記機械的固定部材を前記電磁式流量計用センサに固定する工程と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記機械的固定部材を前記電磁式流量計用センサに固定する工程は、スポット溶接、プロジェクション溶接、アーク溶接、及び抵抗溶接の少なくとも1つにより、前記機械的固定部材を前記電磁式流量計用センサに溶接する工程を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記機械的固定部材を前記電磁式流量計用センサに固定する工程は、スタッド溶接ガンとコンデンサ放電式スタッド溶接機との少なくとも一方を用いて、前記機械的固定部材を前記電磁式流量計用センサに溶接する工程を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記機械的固定部材を前記電磁式流量計用センサに固定する工程は、前記機械的固定部材を前記電磁式流量計用センサに螺合する工程を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記センサ端面に重なるように前記ライナを外側に広げる前に前記ライナを加熱する工程を更に備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業プロセスの計測及び制御のための電磁式流量計に関するものであり、具体的には、ライナを有した電磁式流量計用センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁式流量計は、当該流量計の流量計用センサ内の管路を通過する導電性流体の流量を検出するものである。電磁式流量計は、流量計用センサ内に生成された磁界を導電性流体が通過する際に、導電性流体の流動に直交する方向に導電性流体を横切って生成された電圧を計測する。この電圧は、管路の内壁面の対向する位置に配置されて導電性流体に接する2つの電極間で計測される。管路を構成する管路壁は非導電性とする必要があり、導電性である場合には、導電性流体を横切って生成される電圧を短絡してしまわないように、非導電性のライナが必要となる。また、管路壁が導電性である場合には、2つの電極も、管路壁から電気的に絶縁されている必要があり、生成された電圧を正確に計測できるように、非導電性のライナを貫通している必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、永続性を有すると共に化学的浸食に対して極めて優れた耐久性を有することから、電磁式流量計のライナ用に選択される一般的な材料である。電磁式流量計用センサの管路内に筒状のPTFE製ライナを挿入し、このライナを加熱し、管路の両端において、このライナを外側に広げてセンサ端面のシール面に重ねることにより、PTFE製のライナが電磁式流量計用センサに密着して装着される。センサ端面は、計測対象の流体を搬送するプロセス配管に電磁式流量計を接続する部位である。しかしながら、このようなライナを広げる処理は、シール面に対してライナを平坦な状態のまま維持するものとはならない。PTFEの弾性的な性質により、広げたライナが元に戻り、シール面から離れて、広げられたライナとシール面との間に隙間が残る。組み付けが行われると、このような隙間は、プロセス配管のフランジに電磁式流量計のシール面を結合するフランジボルトの締め付け力により閉じる。しかしながら、電磁式流量計の組み付けが完了する前で、電磁式流量計を取り扱う際や、電磁式流量計の組み付けを行う際には、この取り扱いや組み付けが正しく行われないと、ライナがずれやすくなる。ライナが少しでもずれると、ライナを貫通する電極を移動させてしまう可能性があり、電極の周囲からプロセス流体が漏洩したり、電極が管路壁に短絡したりするおそれがある。
【0004】
このような問題に対する解決策の1つは、接着剤を用い、外側に広げたライナをシール面に固定することであった。この解決策では、接着剤による接着に適した面を形成するため、化学的浸食に対してPTFEが本来有している耐久性を阻害する可能性のある特殊な薬品を使用する必要がある。残念なことに、このような特殊な薬品は、人間及び環境の少なくとも一方に有害であることが多い。
【0005】
もう1つの解決策は、シール面へのライナの接着を全く行わずに、電磁式流量計の適切な取り扱い及び組み付けについて、明快且つ具体的で詳細な指示書に頼ることにより、有害な薬品の危険性を回避するものである。しかしながら、この解決策は、そのような指示書に従って電磁式流量計を取り扱い、組み付ける者に依存する。指示書がいかに優れたものであっても、常にその指示が守られるとは思えない。従って、どのような場合でもライナのずれを防止すると共に人間や環境に有害な薬品を用いることのない解決策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、プロセス流体の流量を検出する電磁式流量計用センサである。この電磁式流量計用センサは、2つのセンサ端面、管路、管路の内側を覆うライナ、及び機械的固定部材を備えている。センサ端面は、電磁式流量計用センサをプロセス流体の流路に接続するために電磁式流量計用センサの両端に設けられる。管路は、これら2つのセンサ端面を接続し、電磁式流量計用センサを通過するプロセス流体の流動を案内する。管路の内側を覆うライナは、プロセス流体と管路との物理的な接触を防止する。ライナは、管路の全長にわたって延設されると共に、電磁式流量計用センサの両端において、それぞれのセンサ端面の少なくとも一部を覆うように延設され、電磁式流量計用センサの両端のそれぞれに平坦なシール面を形成する。ライナは、機械的固定部材が貫通してライナを電磁式流量計用センサに機械的に固定することでライナのずれを防止するための孔を備える。機械的固定部材は、平坦なシール面より突出することがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るフランジ形式の電磁式流量計用センサを備え、プロセス流体の流量を計測して、流量の計測結果を制御システムまたは監視システムに伝送するための電磁式流量計システムを示す図である。
図2A図1の電磁式流量計用センサの一実施形態を示す図である。
図2B図1の電磁式流量計用センサの一実施形態を示す図である。
図3A図1の電磁式流量計用センサのもう1つの実施形態を示す図である。
図3B図1の電磁式流量計用センサのもう1つの実施形態を示す図である。
図4A図1の電磁式流量計用センサのもう1つの実施形態を示す図である。
図4B図1の電磁式流量計用センサのもう1つの実施形態を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るウェハー形式の電磁式流量計用センサを備え、プロセス流体の流量を計測して、流量の計測結果を制御システムまたは監視システムに伝送するためのもう1つの電磁式流量計システムを示す図である。
図6A図5の電磁式流量計用センサの一実施形態を示す図である。
図6B図5の電磁式流量計用センサの一実施形態を示す図である。
図7A図5の電磁式流量計用センサのもう1つの実施形態を示す図である。
図7B図5の電磁式流量計用センサのもう1つの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の電磁式流量計用センサ及び電磁式流量計システムは、電磁式流量計を取り扱う際や組み付けの作業中にずれることがないように固定されたライナを備えている。従来の技術とは異なり、本発明は、有害な薬品や接着剤をライナの固定に用いることはなく、ライナのずれを防止するように作成された指示書に正しく従って電磁式流量計の取り扱いや組み付けを行う者に依存することもない。
【0009】
本発明は、ライナを電磁式流量計用センサに固定する機械的固定部材を用いることにより、ライナのずれを防止する。機械的固定部材が電磁式流量計用センサの両端の平坦なシール面より突出しないように、機械的固定部材を固定することが重要である。従って、電磁式流量計用センサとプロセス流体が通過する管フランジとの間の有効なシールが、機械的固定部材によって阻害されることはない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るフランジ形式の電磁式流量計用センサを備え、プロセス流体の流量を計測して、流量の計測結果を制御システムまたは監視システムに伝送するための電磁式流量計システムを示す図である。図1には、電磁式流量計システム12及びプロセス配管14を備えたプロセス計測ポイントまたはプロセス制御ポイント10が示されている。電磁式流量計システム12は、電磁式流量計用センサ16及びプロセス伝送器18を備える。電磁式流量計用センサ16は、当該電磁式流量計用センサ16の両端のそれぞれにセンサ端面22を有する。図1の実施形態では、これらセンサ端面22がフランジ形式の端面となっている。プロセス配管14は管フランジ20を備えている。また、図1には、制御システムまたは監視システム24が示されている。プロセス配管14は、流動するプロセス流体Fを収容する。プロセス流体Fは導電性を有している。電磁式流量計システム12は、プロセス配管14の2つの区画の間に介装され、センサ端面22のそれぞれは、フランジボルト26によって管フランジ20に接合され、プロセス流体Fの流動が電磁式流量計用センサ16を通過するようになっている。プロセス伝送器18は、通信手段28を介して制御システムまたは監視システム24に接続されている。通信手段28は、例えば2線式の4−20mA制御ループである。
【0011】
作動時には、電磁式流量計用センサ16により、プロセス流体Fの流動方向に直交する方向に磁界が生成される。この磁界により、プロセス流体Fの流動方向及び磁界の方向の双方に直交する方向にプロセス流体の流動を横切るように電圧が誘起される。誘起される電圧の大きさは、電磁式流量計用センサ16を通過するプロセス流体Fの流速に比例したものとなる。こうして誘起された電圧は、電極30(図2A及び図2Bに示す)によって検知され、電圧信号が生成される。この電圧信号は、プロセス伝送器18に伝達され、プロセス伝送器18は、検出された電圧を流量計測値に変換し、通信手段28を介して制御システムまたは監視システム24に、この流量計測値を伝送する。
【0012】
図2A及び図2Bは、図1の電磁式流量計用センサ16の一実施形態を示す図である。図2Aは電磁式流量計用センサ16の一実施形態の端面図である。図2Aに示すように、電磁式流量計用センサ16は、センサ端面22、電極30、管路32、ライナ34、機械的固定部材36、及びボルト孔38を備える。センサ端面22は、第1端面部40(図2Bに示す)、及び第2端面部42を有する。上述したように、本実施形態のセンサ端面22は、フランジ形式の端面となっている。ボルト孔38は、ボルト孔用円環39に沿って並ぶように円環状に配置されている。ボルト孔38は、図1に基づき上述したように、電磁式流量計用センサ16をプロセス配管14の管フランジ20に結合した状態のフランジボルト26を収容する。ライナ34は、ライナ34の一部として、第1端面部40を越えて第2端面部42まで延設されたライナ延設部44を有する。また、ライナ34は、図2Bに基づき後述するような平坦なシール面45も有している。
【0013】
図2Aに示すように、ライナ延設部44は、複数の部位、即ち複数のタブとして延設され、互いに隣り合うボルト孔38の間のそれぞれに1つずつタブが位置している。タブの採用により、ボルト孔38内に設けられたフランジボルト26の機能を阻害することがなくなる。但し、本発明においてライナ延設部44は、ボルト孔38内に設けられたフランジボルト26の機能を阻害することがなければ、タブを採用せずに、ライナ34を完全な円環状に延設するようにしてもよいことは明らかである。また、互いに隣り合うボルト孔38の間のそれぞれに全てライナ延設部44のタブを延設した実施形態だけではなく、互いに隣り合うボルト孔38の間のうちの一部のみにライナ延設部44のタブを延設した実施形態も、本発明に含まれることも明らかである。
【0014】
図2Bは、図2Aの電磁式流量計用センサ16の断面図である。図2Bには、2つのセンサ端面22の間に延びる金属製の管路壁48を備え、この管路壁48によって管路32が形成された電磁式流量計用センサ16が示されている。図2Bに示すように、ライナ34が管路32の内側を覆っており、このライナ34は、電磁式流量計用センサ16の両端のセンサ端面22上に達するように、管路32の外側まで延設されている。上述したように、それぞれのセンサ端面22では、ライナ延設部44が第1端面部40を越えて第2端面部42に達するように、ライナ34が第1端面部40を横切って延設されている。ライナ34が第1端面部40を横切って延設されている箇所には、電磁式流量計用センサ16の両端にそれぞれシール平面P0を規定する平坦なシール面45が形成されている。平坦なシール面45は、電磁式流量計用センサ16の組み付けが行われると、プロセス配管14の管フランジ20に管路32を物理的に結合してシールを行う、電磁式流量計用センサ16の面となる。従って、平坦なシール面45より突出して、管フランジ20への電磁式流量計用センサ16の物理的な結合及びシールに干渉する可能性のあるものは何もないことが必須である。
【0015】
また、図2Bに示すように、ライナ34は複数の孔46も有している。これらの孔46は、機械的固定部材36が貫通してライナ34を第2端面部42に固定するためにライナ延設部44に設けられた貫通孔である。図2Bに示すように、本実施形態では、第1端面部40が第1平面P1にあって、第2端面部42が第2平面P2にあるような段付きフランジ形式の接続を採用している。図2A及び図2Bを共に参照すると、ボルト孔38は、第2平面P2においてセンサ端面22に達している。第1平面P1及び第2平面P2は、いずれも管路32の軸線に直交する。第1平面P1は、第2平面P2に比べて、2つのセンサ端面22の中間点Mから軸線方向に遠い位置にある。本実施形態では、第2端面部42にライナ34を固定することにより、機械的固定部材36がライナ34から突出していてもよいが、シール平面P0にある平坦なシール面45よりも突出することはない。図2A及び図2Bに示す実施形態では、互いに隣り合うボルト孔38の間に延設されたライナ延設部44のそれぞれに対し、1つの機械的固定部材36と1つの孔46とが示されているが、互いに隣り合うボルト孔38の間に延設されたライナ延設部44のそれぞれに対して、複数の機械的固定部材36と複数の孔46とを有した実施形態が本発明に含まれることは明らかである。
【0016】
機械的固定部材36は、第2端面部42に固定される下部と、孔46より大きな径を有する上部とを有した略T字状とすることにより、第2端面部42に対してライナ延設部44を所定位置に保持するようにするのが好ましい。上部は、図2Bに示すように、ライナ延設部44に平坦な状態で接していてもよいし、図4Bに基づいて後述するように、機械的固定部材36のいかなる部分も、平坦なシール面45より突出しないという要求を満たすべく、窪みの中に位置するようにしてもよい。溶接によって固定される機械的固定部材36の例には、頭付き溶接スタッド(釘の頭状の上部を有した溶接スタッド)や、ずれ止め溶接スタッドが含まれる。これらの溶接スタッドの保持能力は、T字形状の上部とライナ延設部44との間にワッシャを設けて、T字形状の上部でワッシャを押し付け、上部より大きな表面積を有したワッシャでライナ延設部44を押し付けるようにすることによって高めることができる。
【0017】
作動時には、プロセス流体Fが管路32を通過する際に、管路32の軸線に直交すると共に、2つの電極30を結ぶ線に直交する方向に、電磁式流量計用センサ16内の磁気コイル(図示せず)が磁界を生成する。この磁界により、プロセス流体Fの流速に比例した電圧がプロセス流体中に誘起され、この電圧が電極30によって検知されることにより、電圧信号が生成される。電極30に接続された電線(図示せず)が、図1に基づき前述したように、この電圧信号をプロセス伝送器18に伝達する。電極30は、管路壁48及びライナ34の両方を貫通している。管路壁48は導電性を有するため、電極30と管路壁48との間には絶縁材50が必要となる。ライナ34は、電極30の外面に密着しいるため、電磁式流量計用センサ16の組み付けを行う前または組み付け中に、ライナ34が少しでもずれると、電極30が移動してしまうことになる。このように電極30が移動すると、電磁式流量計用センサ16を組み付けて作動させている際に、電極30の周囲からのプロセス流体Fの漏洩、絶縁材50の破損、或いは絶縁材からのずれ及び管路壁48への短絡が生じるおそれがある。しかしながら、本発明では、機械的固定部材36がライナ34を第2端面部42に固定して、電磁式流量計用センサ16の組み付けを行う前または組み付け中におけるライナ34のずれを防止している。機械的固定部材36が第2端面部42に固定されているので、機械的固定部材36のいかなる部分も平坦なシール面45よりも突出することがなく、これら機械的固定部材36のいかなる部分も、管フランジ20に対する電磁式流量計用センサ16のシールを阻害しないことが重要である。
【0018】
図3A及び図3Bは、図1の電磁式流量計用センサのもう1つの実施形態を示す図である。図2A及び図2Bに示す実施形態で例示した段付きフランジ形式の接続とは異なり、本実施形態においては、平坦フランジ形式の接続を採用している。図3A及び図3Bの実施形態は、以下に述べる部分を除き、図2A及び図2Bに示した実施形態と同様に構成される。参照符号が同じ部材は、いずれも図1、並びに図2A及び図2Bに基づいて上述したものと同じである。図3Aは電磁式流量計用センサ116の端面図である。図3Bは、図3Aの電磁式流量計用センサ116の断面図である。図3A及び図3Bを共に参照すると、電磁式流量計用センサ116は、センサ端面122及びライナ134を除き、電磁式流量計用センサ16と同様に構成される。センサ端面122は、第1端面部140、第2端面部142、及び凹部143を備えている。ライナ134は、ライナ134の一部として第1端面部140を越えて延設されたライナ延設部144を有する。また、ライナ134は、ライナ134が第1端面部140を越えて延設されている箇所に形成された平坦なシール面145を有しており、これにより、電磁式流量計用センサ116の両端に、それぞれシール平面P0が規定される。平坦なシール面145は、電磁式流量計用センサ116の組み付けが行われると、プロセス配管14の管フランジ20に管路32を物理的に結合してシールを行う、電磁式流量計用センサ116の面となる。従って、平坦なシール面145より突出して、管フランジ20への電磁式流量計用センサ116の物理的な結合及びシールに干渉する可能性のあるものは何もないことが必須である。
【0019】
図3A及び図3Bに示して上述したように、本実施形態では、第1端面部140が第1平面P1にあって、第2端面部142が第2平面P2にあるような平坦フランジ形式の接続を採用している。ボルト孔38は、第1平面P1においてセンサ端面122に達している。第1平面P1は、第2平面P2に比べ、2つのセンサ端面122の中間点Mから軸線方向に遠い位置にある。第2端面部142は、センサ端面122に形成された凹部143の底面であり、図示するように、凹部143は円錐台状の形状であるのが好ましい。これに代えて、例えば円筒状または半球状といった、別の形状の凹部143を採用することも可能である。ライナ134は、管路32の内側を覆い、電磁式流量計用センサ116の両端のセンサ端面122上に達するように、管路32の外側まで延設されている。それぞれのセンサ端面122では、ライナ134が第1端面部140を越えて延設され、ライナ延設部144が、凹部143内に延設されて、凹部143の底面の第2端面部142まで延設されている。従って、ライナ134を、第2端面部142においてセンサ端面122に固定することにより、機械的固定部材36は、ライナ134より突出するとしても、シール平面P0にある平坦なシール面145より突出することがない。
【0020】
固定する手段を含めた機械的固定部材36の特徴だけでなく、図3A及び図3Bの実施形態の作動も、上述した図2A及び図2Bの実施形態と同じである。機械的固定部材36は、ライナ134を第2端面部142に固定し、電磁式流量計用センサ116の組み付け前及び組み付け中におけるライナ134のずれを防止する。機械的固定部材36のいかなる部分も、シール平面P0にある平坦なシール面145より突出しないので、これら機械的固定部材36が、管フランジ20に対する電磁式流量計用センサ116のシールを阻害しないことが重要である。
【0021】
図4A及び図4Bは、図1の電磁式流量計用センサのもう1つの実施形態を示す図である。図3A及び図3Bの実施形態と同様に、図4A及び図4Bの実施形態も平坦フランジ形式の接続を採用している。図4A及び図4Bに示す実施形態は、以下に述べる部分を除き、図2A及び図2Bに示した実施形態と同様に構成される。参照符号が同じ部材は、いずれも図1、並びに図2A及び図2Bに基づいて上述したものと同じである。図4Aは電磁式流量計用センサ216の端面図である。図4Bは、図4Aの電磁式流量計用センサ216の断面図である。図4A及び図4Bを共に参照すると、電磁式流量計用センサ216は、センサ端面222及びライナ234を除き、電磁式流量計用センサ16と同様に構成される。ライナ234は、センサ端面222の一部を覆うように延設される。ライナ234は、ライナ234がセンサ端面222を覆って延設される箇所に形成された平坦なシール面245を有しており、これにより電磁式流量計用センサ216の両端のそれぞれに、シール平面P0が規定される。また、ライナ234は孔246も有している。平坦なシール面245は、電磁式流量計用センサ216の組み付けが行われると、プロセス配管14の管フランジ20に管路32を物理的に結合してシールを行う、電磁式流量計用センサ216の面となる。従って、平坦なシール面245より突出して、管フランジ20への電磁式流量計用センサ216の物理的な結合及びシールに干渉する可能性のあるものは何もないことが必須である。
【0022】
図4A及び図4Bに示すように、センサ端面222は第1平面P1にあり、ボルト孔38は第1平面P1においてセンサ端面222に達している。図2A図2B図3A、及び図3Bに示した孔46とは異なり、孔246のそれぞれは、平坦なシール面245に形成された凹部247を有する。これら凹部247は、機械的固定部材36の拡径された上部(上述したように、ワッシャを選択的に含む)を収容する大きさとなっているが、ライナ234の厚みより浅く形成されている。従って、凹部247は、平坦なシール面245に平行な方向に沿う断面積の方が、センサ端面222側に位置する孔246の断面積より大きい。機械的固定部材36の下部がセンサ端面222に固定されると、機械的固定部材36の上部の方が孔246より大きな径を有するので、ライナ234が、凹部247とセンサ端面222との間で、センサ端面222に対して所定位置に保持される。凹部247は、図4Bに示すように、円筒状の形状であるのが好ましい。これに代えて、例えば円錐台状や半球状といった、別の形状を凹部247に採用することも可能である。本実施形態では、ライナ234の窪みに機械的固定部材36の上部を入れてシール平面P0より低い位置とし、機械的固定部材36のいかなる部分も、平坦なシール面245より突出しないようになっている。
【0023】
図5は、本発明のもう1つの実施形態に係る電磁式流量計用センサを備え、プロセス流体の流量を計測して、流量の計測結果を制御システムまたは監視システムに伝送するためのもう1つの電磁式流量計システムを示す図である。図1図2A及び図2B図3A及び図3B、並びに図4A及び図4Bの各実施形態では、電磁式流量計用センサがフランジ形式のセンサであったが、図5図6A及び図6B、並びに図7A及び図7Bの実施形態では、電磁式流量計用センサがウェハー形式のセンサとなっている。参照符号が同じ部材は、いずれも図1図2A及び図2B図3A及び図3B、並びに図4A及び図4Bに基づいて上述したものと同じである。図5には、電磁式流量計システム312及びプロセス配管14を備えたプロセス計測ポイントまたはプロセス制御ポイント310が示されている。電磁式流量計システム312は、電磁式流量計用センサ316及びプロセス伝送器18を備える。電磁式流量計用センサ316は、当該電磁式流量計用センサ316の両端のそれぞれに、センサ端面322を有する。図5の実施形態では、センサ端面322がウェハー形式の端面となっている。電磁式流量計システム312は、プロセス配管14の2つの区画の間に介装され、センサ端面322のそれぞれは、フランジボルト326によって管フランジ20に接合され、プロセス流体Fの流動が電磁式流量計用センサ316を通過するようになっている。ウェハー形式の電磁式流量計用センサ316の取り付けにおいては、フランジボルト326が、電磁式流量計用センサ316の全長にわたって延設され、2つの管フランジ20間に固定されるので、フランジボルト326は、フランジボルト46よりもかなり長くなっている。図5の実施形態の作動は、前述した図1の実施形態と同様である。
【0024】
図6A及び図6Bは、図5に示した電磁式流量計用センサ316の一実施形態を示す図である。図6Aは電磁式流量計用センサ316の端面図である。参照符号が同じ部材は、いずれもこれまでに述べたものと同じである。図6Aに示すように、電磁式流量計用センサ316は、センサ端面322、電極30、管路32、ライナ334、機械的固定部材36、及びハウジング341を備えている。ハウジング341は、電磁式流量計用センサ316の側部に設けられる。上述したように、本実施形態では、センサ端面322がウェハー形式の端面となっている。ライナ334は、ライナ334の一部としてセンサ端面322を越えて延設されるライナ延設部344を有する。また、ライナ334は、図6Bに基づき後述するような、平坦なシール面345も備えている。
【0025】
図6Bは、図6Aの電磁式流量計用センサ316の断面図である。図6Bは、2つのセンサ端面322の間に延びて管路32を形成する金属製の管路壁48を、電磁式流量計用センサ316が更に備えることを示している。図6Bに示すように、ライナ334は管路32の内側を覆い、電磁式流量計用センサ316の両端のセンサ端面322上に達するように、管路32の外側まで延設されている。また、ライナ334は、ライナ334がセンサ端面322を覆って延設される箇所に形成された平坦なシール面345を有しており、これにより電磁式流量計用センサ316の両端のそれぞれに、シール平面P0が規定される。平坦なシール面345は、電磁式流量計用センサ316の組み付けが行われると、プロセス配管14の管フランジ20に管路32を物理的に結合してシールを行う、電磁式流量計用センサ316の面となる。従って、平坦なシール面345より突出して、管フランジ20への電磁式流量計用センサ316の物理的な結合及びシールに干渉する可能性のあるものは何もないことが必須である。
【0026】
上述したように、それぞれのセンサ端面322では、ライナ334がセンサ端面322に重なるように延設される。図6Bに示すように、ライナ延設部344は、センサ端面322を越えてハウジング341まで延設されている。また、ライナ334は、複数の孔46を有する。これらの孔46は、機械的固定部材36が貫通してライナ334をハウジング341に固定するためにライナ延設部344に設けられた貫通孔である。図6A及び図6Bに示すように、本実施形態ではウェハー形式の接続を採用しており、平坦なシール面345が、機械的固定部材36でライナ334を電磁式流量計用センサ316に固定するための僅かな箇所を残し、センサ端面322のほぼ全域を覆っている。電磁式流量計用センサ316の側面において、機械的固定部材36をハウジング341に固定することにより、ライナ334が電磁式流量計用センサ316に固定され、電磁式流量計用センサ316の組み付け前及び組み付け中におけるライナ334のずれが防止される。センサ端面322と平坦なシール面345とから離間したハウジング341に機械的固定部材36が固定されるので、これら機械的固定部材36によって、管フランジ20に対する電磁式流量計用センサ316のシールが阻害されないことが重要である。
【0027】
図7A及び図7Bは、図5の電磁式流量計用センサのもう1つの実施形態を示す図である。図6A及び図6Bに示した実施形態と同じく、図7A及び図7Bの実施形態もウェハー形式の電磁式流量計用センサとなっている。図7A及び図7Bに示す実施形態は、以下に述べる部分を除き、図6A及び図6Bに示した実施形態と同様に構成される。参照符号が同じ部材は、いずれもこれまでに述べたものと同じである。図7Aは電磁式流量計用センサ416の端面図である。図7Bは、図7Aの電磁式流量計用センサ416の断面図である。図7A及び図7Bを共に参照すると、電磁式流量計用センサ416は、センサ端面422及びライナ434を除いて、電磁式流量計用センサ316と同様に構成される。ライナ434は、センサ端面422の一部を覆うように延設される。ライナ434は、ライナ434がセンサ端面422を覆って延設される箇所に形成された平坦なシール面445を有しており、これにより電磁式流量計用センサ416の両端のそれぞれに、シール平面P0が規定される。また、ライナ434は孔446も有している。平坦なシール面445は、電磁式流量計用センサ416の組み付けが行われると、プロセス配管14の管フランジ20に管路32を物理的に結合してシールを行う、電磁式流量計用センサ416の面となる。従って、平坦なシール面445より突出して、管フランジ20への電磁式流量計用センサ416の物理的な結合及びシールに干渉する可能性のあるものは何もないことが必須である。
【0028】
図7A及び図7Bに示すように、センサ端面422は第1平面P1にある。図6A及び図6Bに示す孔46とは異なり、孔446のそれぞれは、平坦なシール面445に形成された凹部447を有する。これら凹部447は、機械的固定部材36の拡径した上部(上述したように、ワッシャを選択的に含む)を収容する大きさとなっているが、ライナ434の厚みより浅く形成されている。従って、凹部447は、平坦なシール面445に平行な方向に沿う断面積が、センサ端面422側に位置する孔446の断面積より大きい。機械的固定部材36の下部がセンサ端面422に固定されると、機械的固定部材36の上部の方が孔446より大きな径を有するので、ライナ434が、凹部447とセンサ端面422との間で、センサ端面422に対して所定位置に保持される。凹部447は、図7Bに示すように、円筒状の形状であるのが好ましい。これに代えて、例えば円錐台状や半球状といった、別の形状を凹部447に採用することも可能である。本実施形態では、ライナ434の窪みに機械的固定部材36の上部を入れてシール平面P0より低い位置とし、機械的固定部材36のいかなる部分も、平坦なシール面445より突出しないようになっている。
【0029】
電磁式流量計用センサの管路の内側を覆うと共に、電磁式流量計用センサの両端のセンサ端面のそれぞれに重なるように延設され、電磁式流量計用センサの両端のそれぞれに平坦なシール面を形成するライナのずれを防止するための、本発明の方法については、図2A及び図2Bに基づき説明するが、この方法は、全ての実施形態に適用することが可能である。この方法は、電磁式流量計用センサ16の管路32内にライナ34を挿入することで開始される。当初、ライナ34は、両端部分に孔46を有した筒状の管となっている。管路32内に挿入されると、ライナ34は外側に向けてセンサ端面22に重なるように広げられる。機械的固定部材36が複数の孔46のそれぞれに挿入され、電磁式流量計用センサ16の両端において機械的固定部材36のいかなる部分も、平坦なシール面45より突出することがないようにして、機械的固定部材36が電磁式流量計用センサ16に固定される。管路32への挿入後、ライナ34を外側に向けセンサ端面22に重なるように広げる前に、必要に応じてライナ34を加熱するようにしてもよい。
【0030】
機械的固定部材36は、溶接によって固定されるのが好ましい。溶接には、抵抗スポット溶接のような抵抗溶接、及びスタッド溶接ガンを用いたアーク溶接のいずれを採用してもよい。機械的固定部材36の下部から突設した金属製の小突起に、アークまたは抵抗発熱の極大点を限定する場合には、プロジェクション溶接を採用するのが好ましい。この小突起は、迅速且つ調整可能に溶融し、比較的僅かな影響しか電磁式流量計用センサ16に与えずに、堅牢な溶接結合が得られる。プロジェクション溶接に必要な安定した量のエネルギが迅速に得られるコンデンサバンクを充電して用いるコンデンサ放電式スタッド溶接機を採用することにより、溶接の更なる調整が可能である。
【0031】
これに代えて、電磁式流量計用センサ16に孔を開けてネジ山を形成し、これに対応してネジ山を設けた機械的固定部材36を取り付けるようにしてもよい。但し、例えば図2A及び図2Bに基づき前述した実施形態のように、センサ端面22に機械的固定部材36を取り付ける場合、センサ端面22がフランジ形式の端面であり、その強度について、独立した機関の認証が必要となることがあるため、このような方法はあまり好ましくない。センサ端面22への穿孔により、フランジ接合の認証が無効となる可能性がある。これに対し、機械的固定部材36の溶接は、このような改変をせずにすみ、センサ端面22の構造に対する悪影響を最小限とすることができる。このような効果は、プロジェクション溶接により機械的固定部材36を固定する場合に特に顕著となる。
【0032】
電磁式流量計用センサの流路の内側を覆うライナのずれを防止するための、本発明のもう1つの方法は、ネジ山付き溶接スタッドをナットと共に用いた、機械的固定部材36のもう1つの例を採用するものである。上述した機械的固定部材36の例とは異なり、ネジ山付き溶接スタッドは、まず最初に、電磁式流量計用センサ16の所定位置に溶接することが可能であり、次にライナ34を加熱し、外側に向けセンサ端面22に重なるようにライナ34を広げ、ネジ山付き溶接スタッドを孔46に挿通させることができる。その後、ナットをネジ山付き溶接スタッドに螺合させ、ライナ34を所定位置に固定することができる。
【0033】
本発明においては、センサ端面のシール面を越えて電磁式流量計用センサの非シール面まで、管路用のライナを延設することにより、取り扱いの際や組み付け時にずれることがないようにライナが固定される電磁式流量計センサを、電磁式流量計システムが備えている。ライナに形成された孔を介し、機械的固定部材がライナを非シール面に固定する。ライナを非シール面に固定することにより、電磁式流量計センサと、プロセス流体が流動する管フランジとの間の有効なシールが、機械的固定部材によって阻害されることはない。従来の技術とは異なり、本発明では、有害な薬品や接着剤をライナの固定に用いることもなく、ライナのずれを防止するために作成された指示書に正しく従って電磁式流量計の取り扱い及び組み付けを行う者に依存することもない。
【0034】
具体的な実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であると共に、均等物で本発明の各構成要素を置き換えることが可能であることが当業者に理解されよう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況やものを本発明の教示に適合させるためのさまざまな変形が可能である。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての態様を含むものである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B