特許第6069498号(P6069498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲーコーエヌ エアロスペース スウェーデン アーベーの特許一覧

特許6069498機械部品の寿命消費を決定する方法及びシステム
<>
  • 特許6069498-機械部品の寿命消費を決定する方法及びシステム 図000002
  • 特許6069498-機械部品の寿命消費を決定する方法及びシステム 図000003
  • 特許6069498-機械部品の寿命消費を決定する方法及びシステム 図000004
  • 特許6069498-機械部品の寿命消費を決定する方法及びシステム 図000005
  • 特許6069498-機械部品の寿命消費を決定する方法及びシステム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069498
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】機械部品の寿命消費を決定する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20170123BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20170123BHJP
   B64F 5/00 20170101ALI20170123BHJP
【FI】
   F01D25/00 XZIT
   F02C7/00 A
   F01D25/00 W
   B64F5/00 B
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-518364(P2015-518364)
(86)(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公表番号】特表2015-522747(P2015-522747A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】SE2012000093
(87)【国際公開番号】WO2013191593
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】514144559
【氏名又は名称】ゲーコーエヌ エアロスペース スウェーデン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(72)【発明者】
【氏名】アンデション,マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンマン,フレードリク
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンソン,ペータ
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0137575(US,A1)
【文献】 米国特許第7197430(US,B1)
【文献】 特開2004−162698(JP,A)
【文献】 特開2001−32724(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2390742(EP,A1)
【文献】 特開2011−256734(JP,A)
【文献】 特開2002−303565(JP,A)
【文献】 特表2012−510585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F02C 7/00
F02C 9/00 − 9/28
F01K 23/10
G06F 11/30
G06F 19/00
B64F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の機械部品の重要領域の寿命消費レベルを決定する方法であって、
−前記第一の機械部品の稼働に関連した第一のデータセットを受信する工程(S1)と、
−前記第一の稼働データセットに対応する複数の定常状態条件を決定する工程(S2)と、
−前記複数の決定済み定常条件と前記第一の稼働データセットに基づき、前記第一の機械部品の荷重歴を決定する工程(S3)と、
−前記第一の機械部品の型と前記第一の機械部品の前記重要領域の位置に基づいて、複数の既定の寿命消費計算モデルから、一つを選択する工程であって、同じ機械部品及び同じ重要領域で、二つ以上の寿命消費モデルが利用可能である前記工程(S4)と、
−前記の選択済み寿命消費計算モデルと前記決定済み荷重歴に基づいて、前記第一の機械部品の前記重要領域の寿命消費レベルを決定する工程(S5)と、
−改良されたモデルが利用できる実際の荷重セッションを使用して開発されたときには、複数の寿命消費モデルを更新する工程と、
−更新された寿命消費モデルによって寿命消費を更新する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
第一の機械部品の重要領域の寿命消費レベルを決定する前記工程が、前記寿命消費レベルを計算するために、前記荷重歴を前記の選択済み寿命消費計算モデルに適用する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の選択済み寿命消費計算モデルが、前記第一の機械部品の応力、歪みまたは温度の少なくとも一つを計算するために提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、
−前記第一の機械部品の稼働に関連した第二のデータセットを受信する工程と、
−前記第二の稼働データセットに対応した複数の定常状態条件を決定する工程と、
−前記複数の決定済み定常条件と前記第二の稼働データセットに基づき、前記第一の機械部品の荷重歴を決定する工程と、
−前記の選択済み寿命消費計算モデルと前記決定済み荷重歴に基づいて、前記第一の機械部品の前記重要領域の寿命消費を決定する工程と、
−前記第一の機械部品の前記重要領域の前記第一と第二の稼働データセットに基づいて決定された前記寿命消費を蓄積する工程と、
−前記蓄積に基づいて、前記第一の機械部品の前記重要領域の寿命消費の全体レベルを提供する工程と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の機械部品の前記重要領域の寿命消費レベルの決定が別方法でなされた既定の寿命消費予測に対して、それを、前記寿命消費レベルに基づいて補正する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の既定の寿命消費予測方法が、荷重セッションのサイクル数に基づいたものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の既定の寿命消費予測方法が、前記機械部品の使用時間、実行時間または使用距離の少なくとも一つを測定することに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の既定の寿命消費計算モデルが、一般的な非線形の疲労計算モデルに対応する、部品特異的な線形方程式で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
機械部品を含む機械の稼働中に稼働データを収集する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の機械部品の稼働に関連した前記第一のデータセットが、機械などの時間、出力操縦棹角度、高度、航空機速度、周囲温度、吸込温度、低圧ロータ速度、高圧ロータ速度、燃焼器圧力、タービン出口温度、タービン出口圧力及び制御モードの一つを測定する、少なくとも一つのセンサによって生成されるデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の稼働データセットに対応する定常状態条件を決定する工程が、各々の定常状態条件が既定の稼働データに対応して構築される複数の定常状態条件を含むデータベースから前記定常状態条件を選択することで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記寿命消費計算モデルが、前記第一の機械部品の既定の挙動をマッチングするために構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の機械部品が、稼働中にその寿命を低減させる荷重に晒され、前記第一の稼働データセットが、前記第一の機械部品の荷重セッションより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の機械部品が、稼働中に寿命を低減させる荷重に晒される航空機の部品により形成され、前記第一の稼働データセットが、前記第一の機械部品の荷重セッションより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第一の機械部品の重要領域の寿命消費レベルを決定するシステムであって、前記システムがデータベース(104)と処理装置を含み、前記処理装置が、
−前記第一の機械部品の稼働に関連した第一のデータセットを受信し、
−前記第一の稼働データセットに対応する複数の定常状態条件を決定し、
−前記複数の決定済み定常条件と前記第一の稼働データセットに基づき、前記第一の機械部品の荷重歴を決定し、
−前記第一の機械部品の型と前記第一の機械部品の前記重要領域の位置に基づいて、複数の既定の寿命消費計算モデルから一つを選択し、同じ機械部品及び同じ重要領域で、二つ以上の寿命消費モデルが利用可能であり、
−前記の選択済み寿命消費計算モデルと前記決定済み荷重歴に基づいて、前記第一の機械部品の前記重要領域の寿命消費レベルを決定
−改良されたモデルが利用できる実際の荷重セッションを使用して開発されたときには、複数の寿命消費モデルを更新し、
−更新された寿命消費モデルによって寿命消費を更新する、
ように構築されることを特徴とするシステム。
【請求項16】
前記処理装置が、
−前記第一の機械部品の稼働に関連した第二のデータセットを受信し、
−前記第二の稼働データセットに対応する複数の定常状態条件を決定し、
−前記の複数の決定済み定常条件と前記第二の稼働データセットに基づき、前記第一の機械部品の荷重歴を決定し、
−前記選択済み寿命消費計算モデルと前記決定済み荷重歴に基づいて、前記第一の機械部品の前記重要領域の寿命消費レベルを決定し、
−前記第一の機械部品の前記重要領域の前記第一と第二の稼働データセットに基づいて決定された寿命消費を蓄積し、
−前記蓄積に基づいて、前記機械部品の前記重要領域の寿命消費の全体レベルを提供する、
ようにさらに構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
機械部品の周辺に設置され、時間、出力操縦棹角度、高度、航空機速度、周囲温度、吸込温度、低圧ロータ速度、高圧ロータ速度、燃焼器圧力、タービン出口温度、タービン出口圧力の少なくとも一つを測定することで、前記第一の稼働データセットを生成するように構成される、少なくとも一つのセンサをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記の定常状態条件が、前記データベース内の特定の稼働データセットとマッチングする定常状態を選択することで決定される、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
第一の機械部品の重要領域の寿命消費レベルを処理装置に決定させるための手段としてのコンピュータプログラムが保存されたコンピュータ可読媒体を含む、コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品が、
−前記第一の機械部品の稼働と関連した第一のデータセットを受信するコードと、
−前記第一の稼働データセットに対応する複数の定常状態条件を決定するコードと、
−前記複数の決定済み定常状態と前記第1の稼働データセットに基づいて前記第一の機械部品の荷重歴を決定するコードと、
−前記第一の機械部品の型と前記第一の機械部品の前記重要領域の位置に基づいて、複数の既定の寿命消費計算モデルから一つを選択するコードであって、同じ機械部品及び同じ重要領域で、二つ以上の寿命消費モデルが利用可能である前記コードと、
−前記選択済み寿命消費計算モデルと前記決定済み荷重歴に基づいて、前記第一の機械部品の前記重要領域の寿命消費レベルを決定するコード
−改良されたモデルが利用できる実際の荷重セッションを使用して開発されたときには、複数の寿命消費モデルを更新し、そして更新された寿命消費モデルによって寿命消費を更新するコードと、
を含むことを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、有寿命部品の分野に関し、具体的には、有寿命機械部品の寿命消費を決定する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、機械とりわけ可動部分を有する機械で、各々の部品の寿命消費の予測を向上させる方法及びシステムを開発することに高い関心が寄せられている。この寿命消費は、部品が故障しないで耐久できる損傷の量で定義できる。この方法の精度を向上させると、安全基準の適用が緩和され、不要な部品交換を避けられる。機団全体(軍用航空部隊など)に応用された場合には、稼働寿命を向上しながら経費を大きく節約できる。さらに、従来の方法では楽観的すぎる不測の事態でも、改良された方法により部品の故障を防ぐことができ、稼働中での不慮の停止、さらに重要なことに、事故の発生を防ぐことができる。
【0003】
寿命消費予測を向上させることが有益な興味深い応用例として、航空機、ガス/蒸気タービン、トラック、ローダ、原子力プラント及び風力タービンが挙げられる。
【0004】
従来の機械部品の寿命消費の予測方法は、使用/実行時間や距離のうちの1つまたはその組合せを測定するか、或は既定の荷重セッションや従来の荷重セッションのサイクル数を数える。荷重セッションとは機械が稼働状態にある時間であり、例えば、航空機の荷重セッションは、既定のロータ速度変動でのA地点からB地点までの飛行として定義できる。
【0005】
航空機分野でのエンジンの寿命消費は、しばしば、特定のエンジン部品の使用頻度に注目し、「単純化された」サイクルを数えることで決定される。これより具体的で、少なくともある意味においてより信頼性の高い方法も利用され、例として、特定のエンジン部品などのELCF(等価低サイクル疲労)サイクル数を決定することが挙げられる。このELCFサイクルは、例えば、荷重セッション中に記録された航空機ジェットエンジンの高圧ロータ速度に基づいて計算できる。このサイクルは、高圧ロータ速度がある選ばれた既定のロータ速度を超える回数により決定できる。さらに、ELCFサイクルを計算する場合、サイクルのスケールファクタは既定の荷重セッションに基づいて決定される。しかし、ELCFサイクルの主要な欠点は、特定の部品が経験する実際の荷重セッションが既定の荷重セッションと大きく異なる場合、寿命消費の予測にエラーが生じることである。
【0006】
コスト効率と信頼性への要求が高まるに連れ、寿命消費を予測するより優れたモデルを見つけることへの関心が高くなっている。このことは、従来の方法が全ての重要な荷重サイクルを考慮に入れていないことから、特に顕在化している。例えば、ELCFサイクルを数える方法では、エンジン全体でただ一つのエンジンパラメータを考慮に入れるが、エンジンや機械中の重要部品の寿命消費は、各々の部品の寿命消費にとってどの荷重が最も重要であるかによって変化しうる。
【0007】
エンジンなどの寿命消費をさらに精度よく決定するためには、エンジン中の適切な部品の寿命消費を決定する必要がある。特定部品の寿命消費を決定するためには、エンジンの別個な部分の状態に関するより詳細な知識が必要とされる。
【0008】
特許文献1は、航空機に使われるガスタービンエンジンの有寿命部品のエンジン部品寿命を決定する方法を開示する。この方法は、複数の回転部品と、複数のガスタービンエンジン操作パラメータをモニタリングするように構成された複数のセンサを含むガスタービンエンジンを稼働し、前記複数のセンサからの出力を取得し、少なくとも幾つかの前記出力を利用し、少なくとも一つの有寿命部品の寿命を計算することで、飛行を繰り返すことで消耗されるガスタービンエンジンの個々の有寿命部品の寿命の追跡を容易にする。
【0009】
ELCFサイクルを用いた先行技術の方法に比べて寿命消費の計算は向上しているが、特許文献1による解決法では、完全な飛行任務及びそれに関連した全てのセンサデータを処理する手段が欠けており、言い換えると、ELCFサイクルの決定に対する代替的なサイクル数を決定する上で、飛行任務の条件が異なるにも関わらず、そのスナップショットのみが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,197,430号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、例えば、航空機の有寿命機械部品などの有寿命部品の寿命消費をより完全に決定することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、第一の機械部品の重要領域の寿命消費のレベルを決定する方法により上記の課題は少なくとも部分的に解決され、この方法は、前記第一の機械部品の稼働に関連した第1のデータセットを受理する工程と、前記第1の稼働データセットに対応する複数の定常状態条件を決定する工程と、前記複数の定常状態と前記第1の稼働データセットに基づいて前記第一の機械部品の荷重歴を決定する工程と、前記第一の機械部品の型と前記第一の機械部品の重要領域の位置に基づいて、既定の複数の寿命消費計算モデルから一つを選択する工程、及び選択された前記寿命消費計算モデルと決定済み前記荷重歴に基づいて前記機械部品の重要領域の寿命消費のレベルを決定する工程、を含む。
【0013】
本発明では、各機械部品や部品の重要領域に応じて特化した計算モデルが選択でき、選択された寿命消費計算モデルは、機械部品の既定挙動にマッチするように調節され、好ましくは、寿命消費計算モデルは、機械部品が稼働中に一連の荷重に晒される場合、例えば、機械部品の応力、歪み及び温度を計算するために提供される。このような仕組みを持つ有利な点は、例えば、複数の既定の寿命消費計算モデルのそれぞれを計算速度に関して最適化でき、機械部品の寿命消費レベルを正確に決定するために必要な計算時間を最小限にできることである。従って、言い換えると、より一般的な計算モデルを適用し、入力パラメータ数を制限する代わりに、本発明によれば、基本的には「全ての」稼働データを計算に使用するにも関わらず、「単純化された」計算モデルの決定の際に特定の機械部品とその稼働に対する知識を考慮に入れることで、計算モデルを「単純化」することができる。
【0014】
このような最適化により、寿命消費計算の信頼度をさらに向上させようとする結果、稼働データの量が増加した場合にでもその処理を行うことが可能である。本発明によると、同じ重要領域に対して、二つ以上の既定の寿命消費計算モデルが利用可能である(ある実施態様において、機械部品のノードとして定義される)。従って、目標とする正確性かつ/または計算速度に基づいて、特定の重要領域に対して特定の寿命消費計算モデルを選択でき、計算モデルで使用されるパラメータ数も調整できる。
【0015】
本発明の説明の範囲内において、定常状態条件は既定の機械状態を意味し、稼働データの特定値により定義される特定の時点での、機械部品が含まれる機械の状態として定義される。決定された定常状態条件には、例えば、エンジンなどの機械内で測定されない定常状態荷重データも含まれる。むしろ、この荷重データは可能な全ての機械定常状態条件に応じて予め計算されており、機械部品の荷重状況全体の計算を可能にするために必要なものである。
【0016】
このように、マッチングする機械定常状態条件を決定することで、稼働データセットをより効率良く処理することが可能となる。このようなマッチング手順は、計算を行うことよりも一般的に時間的効率性が高い。別の有利点として、結果が非収束解になるような計算を避けることができる。一実施態様において、特定の機械条件にマッチングする大多数の定常状態条件は、例えば、データベースに保存できる。
【0017】
さらに、本発明の説明の範囲内において、荷重歴は、単一セットの(例えば第一の)測定稼働データに基づき決定された全ての定常状態条件の時刻歴を含むものと理解されるべきである。
【0018】
また、機械の操作とカップルするなどして、稼働データが機密事項である場合には、稼働データを、性能パラメータを開示しないような機密解除処理にかけることが望ましい。例えば、機械が航空機エンジンであり、機械セッションが飛行任務である場合、航空機速度や高度などの任務に特異的なパラメータを明らかにすることなく、第三者が寿命消費を計算するために稼働データを処理できることが望ましい。
【0019】
航空機以外に、機械はどのような型の機械であってもよく、例えば、ガス/蒸気タービン、トラック、ローダ、原子力プラント及び風力タービンから選択されてもよい。さらに、稼働データ(第一及び他の稼働データセットなど)は、例えば、機械部品の近辺に配置される少なくとも一つのセンサによって生成されてよく、そのセンサは、航空機などの機械の時間、出力操縦棹角度、高度、航空機速度、周囲温度、吸込温度、低圧ロータ速度、高圧ロータ速度、燃焼器圧力、タービン出口温度、タービン出口圧力及び制御モードの一つを測定する。本発明のいくつかの実施態様では、単一の稼働データセットは荷重セッションと呼ばれ、航空機では飛行任務などの一稼働サイクルを表す。
【0020】
利用可能な全ての実際の荷重セッション(例えば、航空機の「全て」の操作に関連して)に対して、機械部品の寿命消費を高い精度で決定するのに必要な計算時間を短縮するために、機械部品の安全マージンを低減して、部品の寿命消費の限界点を、予測される有寿命に近づくように設定することができる。具体的には、寿命消費を決定するために、現実により多くのデータが処理されれば、不確定要素が減少し、必要なマージンの程度が減少する。
【0021】
第一の機械部品の複数の稼働データセット(例えば、第一、第二、第三など)が本発明の方法により処理されることが好ましい。こうして、例えば、別系統のシステムと連通するような総体的なレベルでの寿命消費を達成するために、異なる稼働データセットに関連した寿命消費が蓄積できる。これから分かるように、本発明概念は、単一の(第一など)機械部品以外にも複数に適用でき、同じ機械中の大多数の部品などにも利用できる。
【0022】
さらに、一実施態様において、決定された寿命消費レベルは、先に説明したELCFサイクル決定法などの、すでに利用可能な寿命消費予測モデルと合わせて利用することができる。従って、例えば、決定された寿命消費レベルは、(利用可能な)寿命消費予測モデル(ELCFなど)を「補正」するために利用されてもよく、これにより、機械部品の稼働条件により正確にマッチングしたサイクル数を得ることができる。従って、本発明の方法は「追加」としての利用が可能で、現時点でより一般的な寿命消費予測モデルが実施されている状況で利用できる。現時点で利用可能な全てのタイプの寿命消費予測方法で使用できることに留意されたく、その例として、機械部品の使用時間、実行時間、或は使用距離の少なくとも一つの測定に基づく予測方法が含まれる。このような場合、例えば、機械部品が道路用車両部品であると、移動距離の計測に基づく寿命消費予測が本発明の方法により補正できる。
【0023】
一実施態様において、機械部品が使用されるすべての「セッション」(例えば、第一と第二の稼働データセットで表されるもの)を補正する必要はない。例えば、機械部品の稼働に関するデータセットが利用できない場合には、現時点で利用可能な寿命消費予測方法の結果を「非補正」としてそのままにしておく必要がある。従って、本方法を保全システムに追加として実施する場合、どのセッションが補正され、どのセッションが非補正のままなのかを把握することが有用である。
【0024】
保守システムは、また、機械部品使用に関連して、異なる機械部品や具体的な構成の動向を把握する目的で使用されることが好ましい。一例として、本発明概念を採用した保守システムでは、機械部品が異なる構成で配置されることが可能となり、一つの特定の機械部品をタービンやエンジンなどの異なる機械間で移転できる。このようなことが可能となると、機械部品の使用のさらなる最適化が図られる。
【0025】
複数の既定の寿命消費計算モデルは、一般的な非線形の疲労計算モデルに対応する、部品特異的な線形方程式で表されることが好ましい。つまり、特定の機械部品の寿命消費計算モデル(例えば疲労に関して)を最適化する計算速度において、特定の稼働状態での特定の部品の挙動とマッチングする線形関係を決定することが望ましい。
【0026】
さらに、本発明概念は、機械部品の稼働に関連して、「現実の」(実際の)或は「模造の」(人工的な)データセットに基づいて寿命消費を決定することに利用できる。言い換えると、本発明概念は、機械部品の一般的な稼働に関連してだけでなく、模造の稼働データなどが入力として使われる機械部品の設計過程においても利用できる。
【0027】
本発明の別の様態によれば、第一の機械部品の重要領域の寿命消費レベルを決定するシステムが提供され、前記システムはデータベースと処理装置を含み、前記処理装置は、前記第一の機械部品の稼働と関連した第一のデータセットを受信し、前記第一の稼働データセットに対応する複数の定常状態条件を決定し、前記複数の決定された定常状態と前記第1の稼働データセットに基づいて前記第一の機械部品の荷重歴を決定し、前記第一の機械部品の型と前記第一の機械部品の前記重要領域の位置に基づいて既定の複数の寿命消費計算モデルから一つを選択し、さらに選択した前記寿命消費計算モデルと決定済み前記荷重歴に基づいて前記機械部品の前記重要領域の寿命消費レベルを決定する、ように構成されている。
【0028】
一実施態様において、データベースにある特定の稼働データセットとマッチングする定常状態を選択することで、定常状態条件が決定される。従って、上述したように、稼働データセットは、処理装置により提供される入力として、データベース中で最も良くマッチングする定常状態条件を同定するために使用される。本発明のこの態様の特徴により、本発明の前態様に関連し説明したものと同様な利点が提供される。
【0029】
本発明のさらなる様態によれば、第一の機械部品の重要領域の寿命消費レベルを処理装置に決定させるための手段としてのコンピュータプログラムが保存されたコンピュータ可読媒体を含む、コンピュータプログラム製品が提供され、前記コンピュータプログラム製品は、前記第一の機械部品の稼働に関連した第一のデータセットを受信するためのコード、前記第一の稼働データセットに対応する複数の定常状態条件を決定するためのコード、前記複数の決定された定常状態と前記第1の稼働データセットに基づいて前記第一の機械部品の荷重歴を決定するためのコード、前記第一の機械部品の型と前記第一の機械部品の前記重要領域の位置に基づいて既定の複数の寿命消費測定モデルから一つを選択するためのコード、さらに、選択された前記寿命消費測定モデルと決定済み前記荷重歴に基づいて前記機械部品の前記重要領域の寿命消費レベルを決定するコード、を含む。
【0030】
処理装置は、サーバーかそれに類した場所に設置されることが好ましく、コンピュータ可読媒体は、着脱式不揮発性ランダムアクセスメモリ、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、USBメモリ、SDメモリカード、または類似の当業界で周知のコンピュータ可読媒体のどれか一つでよい。
【0031】
このように、本発明のこの態様の特徴から、本発明の前態様に関連し説明したものと同様な利点が提供される。
【0032】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付された特許請求の範囲と以下の説明を精査することで明らかにされよう。当業者であれば、本発明の異なる特徴を組み合わせることによって、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、以下に説明される実施形態以外の実施形態が創造されると認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の様々な態様は、その特筆すべき特徴や利点を含めて、続く詳細な説明と添付図面により容易に理解されるであろう。
図1】航空機の全体的な保全システムを模式的に示した図である。
図2】多くの有寿命部品を含むジェットエンジンの断面図である。
図3図2のジェットエンジンの一部品にメッシュを施した図である。
図4】本発明の一例示的実施形態による寿命消費計算システムの詳細図である。
図5】本発明の現時点で好適な実施態様による方法を実施するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
これより、本発明を現時点で好適な実施態様を示す添付図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は、しかしながら、多様な形で具現化が可能であり、ここに定める実施態様に限定されると解釈されるべきではなく、これらの実施態様は、むしろ、徹底性と完全性を目的に提供されており、当事者に発明の範囲を十分に伝えるためのものである。全体を通じて、同じ参照符号は、同じ構成要素を引用する。明細書全体を通じて、機械部品(mechanical component)と機械部品(mechanical part)の表現は、同義として使用される。
【0035】
図1は、ある機械の保守システム100の全体を模式的に示す。図1では戦闘機102が機械の一例として描かれており、この戦闘機102には複数の機械部品が含まれるが、そのうちの幾つかは重要な有寿命であると規定される。当然であるが、他の機械でも可能で、本発明の範囲内であり、例えば、航空機(一般)、ガス/蒸気タービン、トラック、ローダ、原子力プラント及び風力タービンから選択されてよい。
【0036】
図2には、多くの有寿命部品202を含むジェットエンジン200の断面図が描かれている。ジェットエンジン200は、特に、部品の故障となるような力に晒される。典型的には、有寿命部品のいくつかは、回転部品かつ/または高温や他の荷重に晒される部品である。ジェットエンジン200の多くのパラメータ(つまり稼働データ)は、機械が稼働している時(荷重セッションと定義される)に測定され、パラメータの例として、航空機102などの時間、出力操縦棹角度、高度、航空機速度、周囲温度、吸込温度、低圧ロータ速度、高圧ロータ速度、燃焼器圧力、タービン出口温度、タービン出口圧力及び制御モードが挙げられる。図1の戦闘機102では、複数の稼働データは、戦闘機102に搭載されるコンピュータ記憶媒体(図示せず)に記録、保存されている。
【0037】
図1をさらに参照すると、荷重セッションの記録データは、データベース104などに(有線、無線などで)送信されるが、それは航空機102から離れた場所などに備えられ、「地上」が想定される場所である。飛行中に記録されたデータは荷重セッションによる荷重データ(例えば、第一或は第二の稼働データに相当)と呼ばれる。データベース104に保存されたデータは、寿命消費計算システム106がジェットエンジン200などの部品の寿命消費を予測するために使われる。蓄積された寿命消費の結果は、保全ユニット108に送信できる。保全ユニット108は、部品が寿命に近づいているという指標(例えば、保全ユニット108での決定)に従い適切な保全作業を決定する。保全作業では、例えば、部品を修理したり交換したりすることができる。保全作業が行われた場合、(保全)作業の情報は(即時、定期的、要請に従うなどで)寿命消費計算システム106に送り返さるが、その情報は、例えば、部品が修理されたのか、或は(新しい物などの)別の部品に交換されたのかを含み、それによって寿命消費計算システム106は、部品の現時点での寿命消費の状態に基づき、計算の順応化を行う。また、(わずかに使用された)使用部品も設置することができ、その使用部品に順応した寿命消費の予測が、保全ユニット108から寿命消費計算システム106に同様にして送信される。
【0038】
図3は、図2の有寿命部品302の一つを図示したものである。部品の3Dモデルに基づいたメッシュ304も図示される。メッシュは多くの要素306を含む格子網であり、格子網の各交差点がノード308で、各々のノードは点である。要素306は、各交差点のノード以外に、他のノードを有してもよい。複数のノード310は、潜在的に有寿命(つまり重要領域)として選択される。潜在的に有寿命であるノード310は、図3でも図示される。部品の3Dモデルとして構築されたメッシュ304は、メッシュに基づく数値的方法で温度と機械的応力パターンを計算することで、部品302の温度と機械的応力の解析に使用できる。温度と機械的応力パターンは、有限要素ソフトウェアなどを用いて、有限要素解析法により計算できる。要素の規模が温度と応力解析の精度に影響を及ぼす。部品の要素306の数が大きいと、計算の精度が向上する。
【0039】
機械的および熱的荷重が計算されると、熱的および機械的応力パターンが、機械的応力と温度が周辺より高いゾーンを一つ或は複数表示する。応力と温度は、熱的および機械的荷重がかかる各点で計算される。さらに、要素306内の機械的および温度荷重は、要素306に近いノードの荷重を考慮に入れることで決定できる。例えば、要素内の機械的および熱的荷重は、その要素に近いノード308の荷重を平均化することで受け取れる。
【0040】
図4を参照すると、図1に示した寿命消費計算システム106の詳細図が描かれている。データベース104に保存された荷重セッションは、寿命消費計算システム106により受信され、そこでデータは最初に定常状態条件ユニット402により処理される。航空機では、セッションは飛行任務であろうし、計測されるパラメータには、速度、高度、周囲温度、タービン速度などが含まれるであろう。測定されたパラメータ値は、既定の公差範囲に対して検証でき、値が外れている場合には警告が発せられるか、手作業で該当する機械状態から取り除かれる。
【0041】
定常状態条件ユニット402において、各々の機械状態は定常状態条件とマッチングされるが、その定常状態条件は、例えば、関連するデータベースに保存されている。定常状態条件の作成は、稼働中の機械の機械状態から計算される、保存されている機械状態パラメータを基におこなわれる。従って、定常状態条件の結果は、稼働中の機械の各々の機械状態の計算を行う代わりに、機械で測定されたデータを、該当する既定のパラメータ値セットとマッチングさせることで得られる。上述したように、一般に、このようなマッチング手順は計算を行うことに比べて時間効率性が高い。機械状態は、測定データの特定値により規定される特定の時点での機械の状態として定義される。さらなる有利点として、結果が非収束解になるような計算を避けることができる。
【0042】
典型的には、測定パラメータ値のサブセットを格子網とマッチングさせることで、マッチング工程の速度を向上させることができ、すべての測定パラメータがマッチングしない場合にでも十分な精度が得られる。上述したように、データベースは定常状態条件に対応する過去の測定パラメータ値を蓄積し、各々の測定パラメータが格子網の区間に相当するような格子網を形成する。しかしながら、格子網内のパラメータ値を可能な全ての組み合わせで計算することは不可能であるため、完全な格子網を含むデータベースを構築することは不可能であろう。従って、測定パラメータ値に対応する格子点間で補間が行われ、データベースが埋め合わされる。全ての機械状態が最も近い定常状態条件にマッチングされると、定常状態条件の識別子を含む出力が提供される。出力は、典型的には、対時間定常状態条件識別子を含むファイルに含まれる。出力には、測定荷重データと、任務かつ/またはエンジン及びエンジン部品を特定するメタデータも含まれる。
【0043】
定常状態条件の結果に基づき、各々の定常状態条件識別子に対応する機械状態パラメータが、関連するデータベースからも含めて、取り出される。機械状態パラメータには、典型的には、エンジンの異なる位置およびエンジンの様々な部品に関連して、その計算された圧力、質量流量、温度、トルクなどが含まれる。エンジンやタービンなどにおける個別の部品の寿命消費を精度よく計算するためには数千のパラメータが必要とされるであろう。ある特定の荷重セッションにおける部品の寿命消費を決定する一工程として、得られた機械状態パラメータと測定荷重データに基づき、温度と機械的荷重(つまり荷重歴)が計算できる。
【0044】
定常状態条件ユニット402による前処理データは、寿命消費計算ユニット404に転送される。寿命消費計算ユニット404は、定常状態条件を受信し、荷重歴を計算し、その荷重歴を、複数の寿命消費モデルから選択された一つに適用するように設計されている。図示された実施態様において、寿命消費モデルは、モデルユニット406で決定される。
【0045】
モデルユニット406は、寿命消費モデルを開発し決定する。寿命消費モデルは、商品開発段階で使用される仮想モデルを用いて作成できる。検証済み寿命消費モデルは、計算エンジンを用いて、人工的な荷重セッションを対象に予測される寿命消費を計算する。検証済み寿命消費モデルは、利用できる実際の荷重セッションを対象にさらに開発される。荷重セッションによる実際の荷重データは、テスト環境中で実際の飛行任務を行うことや、航空機が多数のパラメータを測定できるようなさらなるセンサ(一般飛行の航空機が通常持つセンサ以上)を搭載している場合の飛行任務により得ることができる。徹底した分析に基づき、寿命消費モデルのための信頼性限界及び安全率が決定される。この工程の後、寿命消費モデルが見直され、正常に機能するか検証される。これで、実際の荷重データに基づく検証済み寿命消費モデルは、実際に使用されるための準備が整う。
【0046】
なお、寿命消費モデルは、既定の荷重セッションで予測される寿命消費を評価することで、部品のさらなる開発や再設計のために利用できることに留意されたい。また、モデルの改良が行われた場合には、寿命消費モデルは常に更新される。荷重セッションからの荷重データが、更新された寿命消費モデルによって再計算され、寿命消費が更新される。
【0047】
上述したように、機械部品の既定の挙動にマッチングするように、複数の寿命消費モデルから一つの寿命消費モデルが選択される。こうして、各々の機械部品や可能であればそれぞれの部品の重要領域(ノード)に応じて、特化した計算モデルが選択できる。このような仕組みを持つ有利な点は、例えば、複数の既定の寿命消費計算モデルの各々を、計算速度に関して最適化でき、機械部品の寿命消費レベルを正確に決定するために必要な計算時間を最小限にできることである。このような最適化により、より多くの稼働データを処理することが可能となり(例えば、同じ部品内でより多くのノードの計算を行うことが可能)、その結果、寿命消費計算の信頼性がさらに向上する。また、同じ機械部品で、二つ以上の寿命消費モデルが利用可能である。従って、目標とする正確性かつ/または計算速度に基づいて、特定の寿命消費計算モデルを選択することが可能であり、計算モデルで使用されるパラメータの数も調整できる。
【0048】
寿命消費計算システム106の一つの例示的な実施態様では、選択された特定の計算モデルとそれに対応する前処理済み荷重セッションは、寿命消費計算ユニット404から計算エンジン408(クラスタ化したサーバ環境であろう)へと転送され、そこで寿命消費の予測が計算される。さらに、寿命消費モデルは、計算エンジン408によって使われた設定を含んでよく、モデルなどは、XMLファイルとして保存される。パラメータには、部品番号、安全率、素材データ、フィルタ設定、熱モデル設定、応力モデル設定、故障モード設定及び信頼性限界を含んでよい。故障モード設定と素材データは、部品の素材に関するデータや、さらなるデータが収集されるテスト環境などで集められたデータの特性を含んでもよい。
【0049】
寿命消費計算ユニット404は、計算エンジン408からの結果を受信し、予測される寿命消費を保存する。望ましい実際の荷重セッションが全て計算された場合、寿命消費計算ユニット404から保全ユニット108に、蓄積された寿命消費予想が提供される。保全作業が実行される場合、保全ユニット108中のこの作業に関わる情報は、寿命消費計算ユニット406に送信される。部品が交換された場合、この特定の部品の寿命消費の保存されたデータは補正される。
【0050】
寿命消費計算システム106はハードウエアとソフトウエア的な要素を組み合わさったものと認識されてよい。特に、ブロック402〜408のどれか或はその全ては、一つ或は複数の処理装置によって実行されるコンピュータプログラムコードと認識できる。処理装置は、大型コンピュータサーバシステムの一部を構成してもよいし、相互接続したプロセッサのネットワークを含んでもよい。コンピュータプログラムコードは、着脱式不揮発性ランダムアクセスメモリ、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、USBメモリ、SDメモリカードなどのコンピュータ可読媒体、或は当業界で周知の類似のコンピュータ可読媒体で保存されてよい。
【0051】
サマリーとして図5を参照すると、現時点で好適な本発明の一実施態様によると、S1で、定常状態条件ユニット402が、戦闘機102のジェットエンジン200の部品などの、選択された機械部品の稼働に関連した第一のデータセット(例えば、第一の飛行任務に関連したデータ)を受信する。それから、S2で、定常状態条件ユニット402が、第一の稼働データセットに応じて複数の定常状態条件を決定する。S3で、定常状態と稼働データの結果に基づき、機械部品の荷重歴が、複数の決定された定常状態と第一の稼働データセットに応じて決定される。
【0052】
次に、S4で、寿命消費計算ユニット404が、機械部品の型と機械部品の重要領域の位置に依存して、複数の既定の寿命消費計算モデルのうちの一つを選択する。こうして、S5で、選択された寿命消費計算モデルと荷重歴に基づき、機械部品の重要領域に対する寿命消費が決定される。さらに、第二の稼働データセット(例えば、第二の飛行任務に関連した)が同じ機械部品用に受信され、寿命消費が同様に決定される。これ以降、S6で、寿命消費(この例では二つであるが、一般に実施される場合には、当然大多数となる)が蓄積され、機械部品の重要領域に対する寿命消費が全体レベルで決定される。
【0053】
S7で、重要領域に対する全体レベルでの寿命消費が、寿命消費計算ユニット404から保全ユニット108へと提供され、そこで、機械部品の保守に関して適切な取り扱いが可能となる。
【0054】
本発明概念により、利用可能な実際の荷重セッションの全ての場合において、機械部品の寿命消費を高精度で決定するのに必要な計算時間の短縮が可能となり、機械部品の安全マージンが低減され、これにより、寿命消費の臨界極限を、部品の予想される寿命により近く設定できる。
【0055】
本発明を具体的な例示的実施態様を参照しながら説明したが、当業者には多様な変形形態や変更形態などが明らかであろう。開示された実施態様への変形は、請求項に係る発明を実践し、図面、説明及び添付請求項を精査することで、当業者が理解し実践できるものである。さらに、請求項において、「comprising」という表現は他の要素や工程を排除せず、不定冠詞「a」或は「an」は、複数形を排除しない。
図1
図2
図3
図4
図5