(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来の薄型表示パネルを備える電子機器では、次の問題が生じる。
【0009】
現在では、キラル高分子等の圧電素子から押圧センサを構成することで、操作面の押圧を検出可能にしたものが考えられる。ところが、キラル高分子等の圧電素子は、複屈折性を有する。例えば、一軸延伸されたL型ポリ乳酸(PLLA)の延伸方向に平行な方向に振動する波の屈折率は1.47である。一方、一軸延伸されたL型ポリ乳酸(PLLA)の延伸方向に垂直な方向に振動する波の屈折率は1.45である。すなわち、リタデーションの特性を有する。
【0010】
このような押圧センサを上述の薄型表示パネルに組み込んだ場合、透過型ならば表面偏光板と裏面偏光板との間に配置した構成や、反射型の場合ならば導光方向に沿って二回の表面偏光板の間に配置された構成となる。このような構成では、押圧センサの複屈折性によって、光波が二方向に分散されてしまい、これらの二方向の光波成分が表面偏光板に入射される。そして、これらの二成分が表面偏光板の通過後に干渉してしまい、押圧センサを配置しない構成と比較して、出射光の色が変化してしまう。これにより、所望とする画像色を得られなくないという問題が生じることがわかった。また、押圧センサを表面偏光板の上に配置した場合は、上述した問題は生じないが、偏光サングラスをかけて画面を見た場合、薄型表示パネルの表側の偏光板とサングラスの偏光により、クロスニコルとなる場合があり、画面の色が変わって見えてしまうという不具合が生じることが分かった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、キラル高分子の圧電素子を用いた押圧センサを備えても所望の色を再現可能な押圧センサ付き表示パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の押圧センサ付き表示パネルは、表面側に出射する光を制御することで表示画像を形成する画像形成パネル、および、該画像形成パネルの表面側に配置された表面偏光板を備える表示パネルと、キラル高分子によって形成された圧電フィルムを有する押圧センサと、を備える。この押圧センサ付き表示パネルは、押圧センサが、圧電フィルムの偏光方向と表面偏光板の偏光方向とが平行または直交するように表示パネルに対して配置されている。
【0013】
この構成では、圧電フィルムで分散された光波の二成分のうち、一方の成分のみが表面偏光板を透過するため、表面偏光板を透過後も色が変化しない。
【0014】
また、この発明の押圧センサ付き表示パネルは、次のいずれかの構成であることが好ましい。押圧センサは、表面偏光板を挟んで画像形成パネルと反対側に配置されている。また、押圧センサは表面偏光板と画像形成パネルとの間に配置されている。
【0015】
この発明では、操作面の近傍に押圧センサが配置されるので、押圧検出感度を高くすることができる。さらに、表面偏光板を押圧センサの保護層としても利用することができる。
【0016】
また、この発明の押圧センサ付き表示パネルでは、次の構成であることが好ましい。圧電フィルムを形成するキラル高分子はポリ乳酸である。ポリ乳酸は少なくとも一軸方向に延伸されており、当該延伸方向が表面偏光板の偏光方向と平行または直交する。
【0017】
この構成では、圧電フィルムとしてポリ乳酸を用いる態様を示している。ポリ乳酸は、主として延伸される方向である一軸延伸方向の屈折率と、当該一軸延伸方向に直交する方向の屈折率が異なる。したがって、一軸延伸方向を偏光方向に平行または直交することで、表示の変色を防止できる。また、一軸延伸されたポリ乳酸を用いることで、押圧量(操作面の押込量)の検出感度が良く、温度特性に優れる押圧センサが得られる。
【0018】
また、この発明では、押圧センサと画像形成パネルとの間に緩衝部材を備えることが好ましい。この構成では、押圧による圧電フィルムの変位を画像形成パネルが阻害することを抑制できる。これにより、押圧センサの検出感度を向上させることができる。
【0019】
また、この発明の押圧センサ付き表示パネルでは、押圧センサにタッチ位置を検出する位置検出センサ機能を備えていてもよい。この構成では、押圧量だけでなくタッチ位置も検出することができる。
【0020】
また、この発明の押圧入力機能付き電子機器は、上述のいずれかに記載の押圧センサ付き表示パネルと、押圧センサの検出信号から押し込み量を検出する演算部と、表示面側が開口し、押圧センサ付き表示パネルと前記演算部とが収納された筐体とを備える。
【0021】
この構成では、複屈折性を有する圧電フィルムを用いた押圧センサを備えていても、表示パネルと表面偏光板による出射光の色を変えることなく、操作者に視覚させる電子機器を実現できる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、複屈折性を有する押圧センサを備える表示パネルであっても、所望の色を再現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施形態に係る押圧入力機能付き電子機器およびこれに備えられた押圧センサ付き表示パネルについて、図を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る押圧入力機能付き電子機器の外観斜視図である。
図2は本発明の第1の実施形態に係る押圧入力機能付き電子機器の断面図である。
図3は本発明の第1の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルの平面図である。
図3(A)は押圧センサの平面図、
図3(B)は表面偏光板の平面図である。
【0025】
図1に示すように、押圧入力機能付き電子機器1は、略直方体形状の筐体50を備える。筐体50の表面側は開口している。なお、以下では、筐体50の幅方向(横方向)をX方向とし、長さ方向(縦方向)をY方向とし、厚み方向をZ方向として説明する。また、本実施形態に説明では、筐体50のX方向の長さが、筐体50のY方向の長さよりも短い場合を示している。しかしながら、X方向とY方向の長さが同じであっても、X方向の長さがY方向の長さより長くてもよい。
【0026】
図2に示すように、筐体50内には、押圧センサ付き表示パネル10、および演算回路モジュール60が配置されている。これらは、筐体50の開口面(表示面)側から順に、Z方向に沿って、押圧センサ付き表示パネル10、演算回路モジュール60の順で配置される。押圧センサ付き表示パネル10は、押圧センサ20と表示パネル30とを備える。
【0027】
ここで、表示パネル30は、平板状の液晶パネル301、表面偏光板302、および裏面反射板303を備える。液晶パネル301は、外部から駆動電極が印加されることで、所定の画像パターンを形成するように液晶の配向状態が変化する。表面偏光板302は、一方向に振動する光波のみを透過させる性質を有する。この透過する方向が偏光方向910である。例えば、
図3に示すように、本実施形態の表示パネル30では、表面偏光板302の偏光方向910は、X方向およびY方向に対して45°の角を成す方向となっている。裏面反射板303は、液晶パネル301側からの光を液晶パネル301側に反射する。
【0028】
このような表示パネル30の液晶パネル301と表面偏光板302との間に、押圧センサ20が配置されている。
図3に示すように、押圧センサ20は、平膜状の圧電フィルム201を備える。圧電フィルム201の両平板面(主面)には、電極202,203が形成されている。電極202,203は、圧電フィルム201の平板面の略全面に形成されている。
【0029】
圧電フィルム201は、キラル高分子から形成されるフィルムである。キラル高分子として、本実施形態では、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)を用いている。PLLAは、一軸延伸されている。
【0030】
このようなキラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向すると圧電性を有する。そして、一軸延伸されたPLLAは、圧電フィルムの平板面が押圧されることにより、電荷を発生する。この際、発生する電荷量は、押圧量(押込量)により平板面が当該平板面に直交する方向へ変位する変位量に依存する。
【0031】
そして、一軸延伸されたPLLAの圧電定数は、高分子中で非常に高い部類に属する。したがって、押圧による変位を高感度に検出することができる。
【0032】
なお、延伸倍率は3〜8倍程度が好適である。延伸後に熱処理を施すことにより、ポリ乳酸の延びきり鎖結晶の結晶化が促進され圧電定数が向上する。尚、二軸延伸した場合はそれぞれの軸の延伸倍率を異ならせることによって一軸延伸と同様の効果を得ることが出来る。例えば第1の軸方向に8倍、第1の軸方向に直交する第2の軸方向に2倍の延伸を施した場合、圧電定数に関してはおよそ第1の軸方向に4倍の一軸延伸を施した場合とほぼ同等の効果が得られる。すなわち、上述の一軸延伸方向とは、圧電フィルムが複数方向に延伸された場合も含めて、最も延伸された方向を意味する。そして、単純に一軸延伸したフィルムは延伸軸方向に沿って裂け易いため、前述したような二軸延伸を行うことにより幾分強度を増すことができる。
【0033】
また、PLLAは、延伸等による分子の配向処理で圧電性を生じ、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDFやPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、PLLAには、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性が生じない。さらに、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。したがって、周囲環境に影響されることなく、押圧による変位を高感度に検出することができる。
【0034】
また、PLLAは比誘電率が約2.5と非常に低いため、dを圧電定数とし、ε
Tを誘電率とすると、圧電出力定数(=圧電g定数、g=d/ε
T)が大きな値となる。ここで、誘電率ε
33T=13×ε
0,圧電定数d
31=25pC/NのPVDFの圧電g定数は、上述の式から、g
31=0.2172Vm/Nとなる。一方、圧電定数d
14=10pC/NであるPLLAの圧電g定数をg
31に換算して求めると、d
14=2×d
31であるので、d
31=5pC/Nとなり、圧電g定数は、g
31=0.2258Vm/Nとなる。したがって、圧電定数d
14=10pC/NのPLLAで、PVDFと同様の押し込み量の検出感度を十分に得ることができる。そして、本願発明の発明者らは、d
14=15〜20pC/NのPLLAを実験的に得ており、当該PLLAを用いることで、さらに非常に高感度で押圧を検出することが可能になる。
【0035】
電極202,203は、ITO、ZnO、銀ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン等の無機系の電極、ポリチオフェン、ポリアニリン等を主成分とする有機系の電極のいずれかを用いるのが好適である。これらの材料を用いることで、透光性の高い導体パターンを形成できる。このような電極202,203を設けることで、圧電フィルム201が発生する電荷を電位差として取得でき、押圧量に応じた電圧値の圧電検出信号を外部へ出力することができる。圧電検出信号は、図示しない配線を介して演算回路モジュール60に出力される。演算回路モジュールは、圧電検出信号から押し込み量を算出する。
【0036】
このようなPLLAは、複屈折性を有する。具体的には、PLLAは、延伸方向の屈折率は約1.47であり、延伸方向に直交する方向の屈折率は約1.45である。したがって、圧電フィルム201すなわち押圧センサ20を透過する光は、延伸方向の成分と延伸方向に直交する方向の成分(直交成分)との間でリタデーションを生じる。
【0037】
このような構成からなる押圧センサ20は、直交するX方向とY方向とに伸長する矩形状で形成される。そして、この押圧センサ20の圧電フィルム201の一軸延伸方向900を、X方向およびY方向に対して45°としている。
【0038】
したがって、
図3(A)に示すように、押圧センサ付き表示パネル10を表示面側から視て、表面偏光板302の偏光方向910と、圧電フィルム201の一軸延伸方向900が平行になる。言い換えれば、圧電フィルム201の一軸延伸方向900と表面偏光板302の偏光方向との角度差Δθは0°(180°)である。
【0039】
このような構成からなる押圧センサ付き表示パネル10および押圧入力機能付き電子機器1では、次に示すような原理で、操作者が表示画面を見ることができる。筐体50の表示面(操作面)側から入射した光は、表面偏光板302を介して押圧センサ20に入射される。押圧センサ20を透過した光は、液晶パネル301に入射される。液晶パネル301に入射され、裏面反射板303で反射し、再度液晶パネル301を透過して表面側に戻ってきた光は、表面偏光板302との組合せにより、所定の色およびパターンの表示画像を形成するような光(表示画像形成光)となっている。表示画像形成光は、押圧センサ20を透過して表面偏光板302側に出射される。
【0040】
ここで、上述のように、表面偏光板302の偏光方向910と圧電フィルム201の一軸延伸方向900とが平行であるので、表面偏光板302を透過する光は、表面偏光板302の偏光方向910の成分、すなわち、圧電フィルム201の一軸延伸方向900の成分だけである。したがって、表面偏光板302を透過して操作面側に出射される光は、圧電フィルム201のリタデーションの影響を受けない。
【0041】
これにより、操作者は、押圧センサ20を備えていても、表示パネル30によって再現したい所望の色をそのまま視覚することができる。
【0042】
さらに、本実施形態の構成を用いることで、押圧量の検出感度を高くすることができる。
図4は、押圧センサに用いるPLLAの検出特性を示す図である。
図4(A)は撓み検出特性を示し、
図4(B)は捻れ検出特性を示す。
図4(C)は、
図4(A),(B)の特性を計測したテストプレート(Test Plate)の形状を示す外観斜視図である。
【0043】
図4(C)に示すように、上述の特性は、矩形平板状のベース基板90、および、平面視した形状が矩形の電極付き圧電フィルム91,92を備える。ベース基板90は、アクリル板(PMMA)からなり、長さが150mm、幅が70mm、厚さが2mmである。圧電フィルム91,92は、L型ポリ乳酸PLLAからなり、長さが80mm、幅が30mm、厚さが0.07mmである。圧電フィルム91,92の圧電応力定数d
14は6.7pC/Nであり、一軸延伸方向の引張弾性定数は5.9GPaであり、一軸延伸方向に直交する方向の引張弾性定数は3.3GPaである。
【0044】
圧電フィルム91,92は、ベース基板90を平面した略中央に、それぞれの長さ方向が一致するように配置されている。この際、圧電フィルム91はベース基板90の一方の平板面に配置され、圧電フィルム92はベース基板90の他方の平板面に配置されている。
【0045】
圧電フィルム91の一軸延伸方向901は、長手方向および幅方向に対して45°の角度を成す。圧電フィルム92の一軸延伸方向902は、長手方向に対して平行である。
【0046】
撓みの検出特性を測定する場合には、ベース基板90の長手方向の両端を固定し、ベース基板90の平板面の中央部に押圧力を加える。捻れの検出特性を測定する場合には、ベース基板90の長手方向の一方端を固定し、他方端を回転させる(捻れさせる)。
図4(A)の横軸は中央部の変位量を示し、
図4(B)の横軸は固定端(固定された一方端)に対する自由端(捻れを加えられた他方端)の回転角度を示している。
図4(A)、
図4(B)は、撓みや捻れによって生じる電荷量を示している。
【0047】
図4(A)に示すように、ベース基板90が撓むと、圧電フィルム91の発生する電荷量は変化し、圧電フィルム92の電荷量は殆ど変化しない。さらに、圧電フィルム91の発生する電荷量は、撓みの大きさと方向に応じて変化する。すなわち、固定辺に対して一軸延伸方向が45°を成す場合、撓みおよび撓み量を検出し、捻れを検出しない。これにより、押圧および押圧量を検出することができ、他のノイズとなる捻れを検出しない。さらに、押圧量にしたがって電荷量も線形に変化する。
【0048】
図4(B)に示すように、ベース基板90が捻れると、圧電フィルム91の発生する電荷量は殆ど変化せず、圧電フィルム92の電荷量は変化する。さらに、圧電フィルム92の発生する電荷量は、捻れの大きさと方向に応じて変化する。すなわち、固定辺に対して一軸延伸方向が90°を成す場合、捻れおよび捻れ量を検出し、歪みを検出しない。
【0049】
なお、固定辺に対して一軸延伸方向の成す角が45°からずれると、ずれ量に応じて発生する電荷量が低下していくことは、他の実験で確認している。
【0050】
したがって、上述のように、筐体50に対して押圧センサ20の各辺を固定し、平面視して45°の方向を一軸延伸方向900とすることで、上述の表示画像に対する効果が得られるとともに、押圧を高感度に検出することができ、押圧量を高精度に検出することができる。さらに、捻れ等の他の応力による誤検出を抑制することができる。
【0051】
また、上述のように、押圧センサ20の操作面側に絶縁性を有する表面偏光板302を配置することで、押圧センサ20の電極202が操作面側に露出することを防止できる。これにより、押圧センサ20に対する外部環境からの保護膜を別途も受けなくてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、表面偏光板302と液晶パネル301との間に押圧センサ20を配置した例を示したが、液晶パネル301と裏面反射板303との間に押圧センサ20を配置することもできる。ただし、表面偏光板302と液晶パネル301との間に押圧センサ20を配置することで、操作面から表面偏光板302のみを介して押圧センサ20が配置されるので、操作面の押圧による押圧センサ20の圧電フィルム201の撓みを大きく取ることができる。これにより、押圧量の検出感度を向上させることができる。
【0053】
また、このような構成を用いれば、押圧センサ20を操作開始のトリガ入力部としても利用することができる。これにより、別途筐体に孔を設けて操作スイッチを設ける必要が無く、防水性およびデザイン性に優れる押圧入力機能付き電子機器1を実現できる。
【0054】
なお、上述の構成では、圧電フィルム201の一軸延伸方向900と表面偏光板302の偏光方向910が平行な場合を示したが、
図5に示すような関係であってもよい。
図5は本発明の第1の実施形態に係る押圧センサの別の態様を示す平面図である。
【0055】
図5に示す態様では、一軸延伸方向900と偏光方向910とが直交している。すなわち、一軸延伸方向900と偏光方向910の角度差Δθが90°である。このような態様であっても同様に、押圧センサ20が有するリタデーションの影響を抑圧して、操作者は、表示パネル30によって再現したい所望の色をそのまま視覚することができる。
【0056】
なお、上述の一軸延伸方向900と偏光方向910とが平行もしくは直交する概念は、角度差Δθが略0°もしくは略90°を含む概念であり、許容される角度差Δθの範囲は、押圧入力機能付き電子機器1の仕様によって適宜設定でき、例えば±5°程度等に設定することも可能である。
【0057】
次に、本発明の第2の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルについて、図を参照して説明する。なお、本実施形態の押圧入力機能付き電子機器の外形形状等の基本構造は、第1の実施形態の押圧入力機能付き電子機器1と同じであり、押圧センサ付き表示パネルの構造のみが第1の実施形態の押圧センサ付き表示パネルと異なる。したがって、第1の実施形態の押圧センサ付き表示パネルと異なる箇所のみを具体的に説明する。
【0058】
図6は本発明の第2の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルの平面図である。
図6(A)は押圧センサの平面図、
図6(B)は表面偏光板の平面図である。
【0059】
図6に示すように、本実施形態の押圧センサ付き表示パネルの表面偏光板302Aは、偏光方向910Aが第1方向に平行である。
【0060】
押圧センサ20Aの圧電フィルム201は、一軸延伸方向900Aが第1方向に平行である。すなわち、表面偏光板302Aの偏光方向910Aと、圧電フィルム201Aの一軸延伸方向900Aは、ともに第1方向に平行であり、互いに平行である。このような構成とすることで、表面偏光板302Aの偏光方向910Aが第1方向に平行な表示パネルに対しても、表示パネルによって再現したい所望の色をそのまま操作者に視覚させることができる。
【0061】
また、押圧センサ20Aの一方主面には、四つの電極2021,2022,2023,2024が形成されている。これら電極2021,2022,2023,2024は、第1の実施形態に示した電極202を、平面視して、当該電極202の中心を通り、第1方向に伸長する分割部(電極非形成部)と第2方向に伸長する分割部(電極非形成部)で分割した形状である。なお、図示しないが、他方主面の電極(第1の実施形態における電極203に対応する電極)は、電極2021,2022,2023,2024のように分割してもよく、分割しなくてもよい。
【0062】
このような構成とすることで、一軸延伸方向900Aが第1方向に平行であっても、操作面の中央すなわち圧電フィルム201Aの中央を押圧した場合に、全面に亘る電極では相殺されて検出できなかった電荷を検出することができる。具体的には、操作面の中央(圧電フィルム201Aの中央)が押圧された場合、各電極2021,2022,2023,2024が配置された領域毎に圧電フィルム201Aで発生する電荷は異なり、それぞれに電荷量を検出できる。したがって、これら電極2021,2022,2023,2024を用いて検出した電荷量を、単に加算するのではなく、相殺しないように加算(演算上は加算もしくは減算)することで、押圧量を検出することができる。このような演算処理は、例えば演算処理モジュール60で実行すればよい。
【0063】
このように、本実施形態の構成を用いることで、表示パネルの表面偏光板の偏光方向が45°でなくても、押圧量を確実に検出することができる。そして、第1の実施形態の構成と第2の実施形態の構成を元に、圧電フィルム201に形成する電極パターンを適宜設定すれば、筐体に対する表面偏光板の偏光方向がいずれの方向であっても、表示パネルによって再現したい所望の色をそのまま操作者に視覚させ、押圧量を確実に検出することができる。
【0064】
次に、本発明の第3の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルについて、図を参照して説明する。なお、本実施形態の押圧入力機能付き電子機器1Bの外形形状等の基本構造は、第1の実施形態の押圧入力機能付き電子機器1と同じであり、押圧センサ付き表示パネル10Bの構造のみが異なる。したがって、第1の実施形態の押圧センサ付き表示パネル10と異なる箇所のみを具体的に説明する。
図7は本発明の第3の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルの断面図である。
図8本発明の第3の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルの平面図であり、
図8(A)は位置検出センサの平面図、
図8(B)は押圧センサの平面図である。
【0065】
図7に示すように、本実施形態の押圧センサ付き表示パネル10Bは、位置検出センサ70を備える。位置検出センサ70は、平板状の絶縁性基板701を備える。絶縁性基板701は、透光性を有し、複屈折性を有さない材料からなる。
図8(A)に示すように、絶縁性基板701の一方の平板面には、複数の電極702が形成されている。複数の電極702は長尺状であり、長尺方向がY方向に沿う形状からなる。複数の電極702は、X方向に沿って間隔を空けて配置されている。絶縁性基板701の他方の平板面には、複数の電極703が形成されている。複数の電極703は長尺状であり、長尺方向がX方向に沿う形状からなる。複数の電極703は、Y方向に沿って間隔を空けて配置されている。複数の電極702,703は、上述の押圧センサ20の電極202,203と同様に、透光性を有する材料からなる。
【0066】
位置検出センサ70は、操作者の指が近接した際に生じる静電容量変化を、電極702,703で検出し、この静電容量検出信号を演算回路モジュール60に出力する。演算回路モジュール60は、静電容量検出信号が検出された電極702,703の組合せから、操作位置を検出する。
【0067】
図7に示すように、位置検出センサ70は、押圧センサ20と表面偏光板302との間に配置されている。このような構成であっても、上述の第1の実施形態と同様に、表示パネルで表示した所望の色を、操作者に提供することができる。さらに、本実施形態の構成を用いることで、押し込み量のみでなく、操作位置も検出することができる。
【0068】
次に、本発明の第4の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルについて、図を参照して説明する。なお、本実施形態の押圧入力機能付き電子機器の外形形状等の基本構造は、第3の実施形態の押圧入力機能付き電子機器1Bと同じであり、押圧センサ付き表示パネル10Cの構成のみが異なる。したがって、第3の実施形態の押圧センサ付き表示パネル10Bと異なる箇所のみを具体的に説明する。
図9は本発明の第4の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルの断面図である。
【0069】
本実施形態の押圧センサ付き表示パネル10Cは、押圧センサ20Cを備える。押圧センサ20Cは、圧電フィルム201を備える。
【0070】
圧電フィルム201の第1平板面には、圧電検出用電極202Pおよび静電容量検出用電極202Dが形成されている。圧電検出用電極202Pおよび静電容量検出用電極202Dは、互いに導通しないように、それぞれ複数形成されている。
【0071】
圧電フィルム201の第2平板面には、圧電検出用電極203Pおよび静電容量検出用電極203Dが形成されている。圧電検出用電極203Pおよび静電容量検出用電極203Dは、互いに導通しないようにそれぞれ複数形成されている。
【0072】
圧電検出用電極202P,203Pは、圧電フィルム201の湾曲によって発生する電荷による電圧を検出可能な形状で形成されている。静電容量検出用電極202D,203Dは、操作者による操作面への操作によって生じる静電容量の変化を検出可能な形状で形成されている。
【0073】
圧電検出用電極202P,203P、および静電容量検出用電極202D,203Dは、透光性を有する材料からなる。
【0074】
このような構成とすることで、押し込み量の検出と操作位置の検出を、単一の圧電フィルム201を用いた押圧センサ20Bで実現することができる。
【0075】
そして、このような構成であっても、上述の各実施形態と同様に、表示パネルで表示した所望の色を、操作者に提供することができる。さらに、押し込み量と操作位置の検出が可能な押圧センサ付き表示パネルおよび押圧入力機能付き電子機器を薄型に形成することができる。
【0076】
次に、本発明の第5の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルについて、図を参照して説明する。なお、本実施形態の押圧入力機能付き電子機器の外形形状等の基本構造は、第1の実施形態の押圧入力機能付き電子機器1と同じであり、押圧センサ付き表示パネル10Dの構成のみが異なる。したがって、第1の実施形態の押圧センサ付き表示パネル10と異なる箇所のみを具体的に説明する。
図10は本発明の第5の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルの断面図である。
【0077】
押圧センサ付き表示パネル10Dでは、押圧センサ20と液晶パネル301との間に緩衝部材80が配置されている。緩衝部材80は、絶縁性、透光性を有し、複屈折性を有さない材料からなる。緩衝部材80は、弾性の低い材料からなる。
【0078】
このような構成であっても、上述の各実施形態と同様に、表示パネルで表示した所望の色を、操作者に提供することができる。また、緩衝部材80を備えることで、操作面が広くなり、押圧センサ20が大面積になっても、平板面を平坦に維持することができ、且つ、操作による押し込みによる押圧センサ20の撓みを阻害しない。したがって、さらに高感度に押圧量を検出することができる。
【0079】
次に、本発明の第6の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルについて、図を参照して説明する。なお、本実施形態の押圧入力機能付き電子機器1Eの外形形状等の基本構造は、第1の実施形態の押圧入力機能付き電子機器1と同じであり、表示パネル30tが透過型の表示パネルである点で異なる。
図11は本発明の第6の実施形態に係る押圧センサ付き表示パネルの断面図である。
【0080】
図11に示すように、表示パネル30tは、液晶パネル301、表面偏光板302、裏面偏光板303tを備える。表示パネル30tの演算回路モジュール60側には、バックライト310が配置されている。裏面側偏光板303tの偏光方向は、表面側偏光板302の偏光方向と直交する。
【0081】
このような透過型の表示パネルを用いる場合でも、上述の実施形態と同様に、表示パネルで表示した所望の色を、操作者に提供することができる。なお、液晶がTN液晶である場合は90°ツイストであるので、本実施形態の態様を用いることができるが、STN液晶のようにツイスト角が90°を超える場合は、例えばツイスト角が180°のものを用い、裏面側偏光板の偏光方向を表面側偏光板の偏光方向と平行にすればよい。
【0082】
なお、上述の各実施形態では、キラル高分子の圧電フィルムとして、PLA,PLLAを例に説明したが、PDLA等の他の複屈折性を有する圧電フィルムを用いる場合にも、上述の構成を適用することができる。
【0083】
また、上述の各実施形態では、1枚の圧電フィルム(押圧センサ)を用いる場合を示したが、複数枚の圧電フィルム(押圧センサ)を積層して用いてもよい。この場合、各圧電フィルムの一軸延伸方向が表面偏光板や裏面偏光板の偏光方向と平行になるように、配置すればよい。このように、複数枚の圧電フィルム(押圧センサ)を用いることで、これらの発生する電荷(電圧)を相殺しないように積算すれば、全体としての検出電荷量(電圧)を向上させることができる。
【0084】
また、上述の各実施形態では、表面偏光板と液晶パネルとの間に押圧センサを配置した例を示したが、表面偏光板を挟んで液晶パネルと反対側に押圧センサを配置してもよく、同様の作用効果を得ることができる。