特許第6069591号(P6069591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6069591内燃機関内の燃焼室圧力を検出するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069591
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】内燃機関内の燃焼室圧力を検出するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 23/22 20060101AFI20170123BHJP
   F02P 19/02 20060101ALI20170123BHJP
   G01L 23/14 20060101ALI20170123BHJP
   F23Q 7/00 20060101ALI20170123BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G01L23/22
   F02P19/02 302Z
   G01L23/14
   F23Q7/00 P
   F02D45/00 368S
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-520506(P2016-520506)
(86)(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公表番号】特表2016-527489(P2016-527489A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014063010
(87)【国際公開番号】WO2014206875
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2015年12月22日
(31)【優先権主張番号】102013212468.6
(32)【優先日】2013年6月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】デーリング クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ハス レミギウス
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−164592(JP,A)
【文献】 特許第3177819(JP,B2)
【文献】 特許第4644282(JP,B2)
【文献】 特開2005−43364(JP,A)
【文献】 特開昭57−108728(JP,A)
【文献】 特開昭57−108729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
F02D
F02P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン補機部品(10)内の燃焼室圧力センサ(11)であって、該燃焼室圧力センサ(11)が、ハウジング(12)内に収容されたセンサ支持体(14)を有しており、前記センサ支持体(14)の燃焼室側端部に、圧力センサエレメント(21)が設けられていて、該圧力センサエレメント(21)がダイヤフラム(22)を有している形式の燃焼室圧力センサにおいて、
前記圧力センサエレメント(21)が渦電流センサ(32)として構成され、該渦電流センサ(32)が少なくとも1つの第1のマグネットコイル(34)を有し
前記センサ支持体(14)に、熱膨張補正用の、少なくとも1つの第2のマグネットコイル(50)が配置され、
前記少なくとも1つの第1のマグネットコイル(34)と前記少なくとも1つの第2のマグネットコイル(50)とが前記ハウジング(12)の主軸線(20)を中心にして同心的に配置されている
ことを特徴とする燃焼室圧力センサ(11)。
【請求項2】
エンジン補機部品(10)内の燃焼室圧力センサ(11)であって、該燃焼室圧力センサ(11)が、ハウジング(12)内に収容されたセンサ支持体(14)を有しており、前記センサ支持体(14)の燃焼室側端部に、圧力センサエレメント(21)が設けられていて、該圧力センサエレメント(21)がダイヤフラム(22)を有している形式の燃焼室圧力センサにおいて、
前記圧力センサエレメント(21)が渦電流センサ(32)として構成され、該渦電流センサ(32)が少なくとも1つの第1のマグネットコイル(34)を有し
前記センサ支持体(14)に、熱膨張補正用の、少なくとも1つの第2のマグネットコイル(50)が配置され、
前記少なくとも1つの第1のマグネットコイル(34)と前記少なくとも1つの第2のマグネットコイル(50)とが軸方向で互いに間隔を保って配置されている
ことを特徴とする燃焼室圧力センサ(11)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1のマグネットコイル(34)と前記ダイヤフラム(22)との間で中空室(37)内に軸方向間隔(39)が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼室圧力センサ(11)。
【請求項4】
前記センサ支持体(14)と前記少なくとも1つの第1のマグネットコイル(34)との間に遮熱性の基板(38)が配置されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の燃焼室圧力センサ(11)。
【請求項5】
前記遮熱性の基板(38)は、
セラミック材料又はプリント基板材料又はPCBにより製作されている
ことを特徴とする請求項に記載の燃焼室圧力センサ(11)。
【請求項6】
前記ダイヤフラム(22)は、
導電性材料又は強磁性材料により製作されている
ことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の燃焼室圧力センサ(11)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1のマグネットコイル(34)は、
環状、矩形、多角形、平面状又は互いに重なり合う複数の平面に構成されている
ことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の燃焼室圧力センサ(11)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1のマグネットコイル(34)と前記少なくとも1つの第2のマグネットコイル(50)との間に分離層(46)が設けられている
ことを特徴とする請求項に記載の燃焼室圧力センサ(11)。
【請求項9】
前記圧力センサエレメント(21)がプリント基板(44)を有しており、該プリント
基板(44)上に前記少なくとも1つの第1のマグネットコイル(34)が配置されている
ことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の燃焼室圧力センサ(11)。
【請求項10】
内燃機関内のグロープラグ(70)において、該グロープラグ(70)が請求項1〜の何れか1項に記載の燃焼室圧力センサ(11)を備えている
ことを特徴とするグロープラグ(70)。
【請求項11】
内燃機関内の点火プラグ(80)において、該点火プラグ(80)が、請求項1〜の何れか1項に記載の燃焼室圧力センサ(11)を備えている
ことを特徴とする点火プラグ(80)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的に、内燃機関のシリンダ内の圧力変化は燃焼室圧力センサによって検出される。このような燃焼室圧力センサを用いて、シリンダ内で行われた燃焼の変化が評価され得る。一般的に、直接測定式の燃焼室圧力センサと間接測定式の燃焼室圧力センサとは異なっている。直接測定式の燃焼室圧力センサにおいては、センサエレメントが燃焼室雰囲気に直接さらされている。このために、燃焼室圧力センサは、600℃の温度においてもなお機能するという性質がある。
【背景技術】
【0002】
間接測定式の燃焼室圧力センサにおいては、燃焼室圧力センサは点火プラグまたはグロープラグまたは燃焼インジェクタ内に組み込まれており、センサエレメントは、燃焼室から離れた位置に配置されているので、間接測定式の燃焼室圧力センサに作用する温度負荷はより僅かである。
【0003】
特許文献1には、自己着火式内燃機関のシリンダ圧力を検出するための装置が開示されている。この装置は、グロープラグのヒータ部を備えた圧力センサを有しており、このヒータ部は、自己着火式内燃機関のシリンダの内室に向けられていて、シリンダ圧力によって負荷可能である。さらに、ヒータ部をグロープラグのボディ内で固定するための固定部材が設けられている。圧力センサは、グロープラグ内でヒータ部と固定部材との間に配置されている。ヒータ部は、シリンダ圧力を圧力センサに伝達するために構成されている。グロープラグの電力供給端子は、ヒータ部を加熱するために電源に接続可能であり、圧力センサの出力信号は、電力供給端子が電源から遮断されると、電力供給端子を介して取り出し可能である。
【0004】
特許文献2は、組み込まれた燃焼室圧力センサを有するグロープラグに関する。有害物質の少ない効果的なエンジン制御を可能にするために、内燃機関の燃焼室内の燃焼室圧力に関する情報が必要とされる。従って、特許文献2によれば、自己着火式内燃機関のためのグロープラグとして構成された、組み込まれた燃焼室圧力センサが提案されている。グロープラグは、ヒータコアとプラグハウジングとを有している。さらに、グロープラグは少なくとも1つの力測定フィルムエレメントを有しており、少なくとも1つの力測定フィルムエレメントは、ヒータコアを介して力が少なくとも1つの力測定フィルムエレメントに伝達可能であるように、ヒータコアに接続されている。特に、少なくとも1つの力測定フィルムエレメントは、少なくとも1つの圧電フィルム、例えば高極性化されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)より成る圧電フィルムを有していてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第19680912号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005026074号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、燃焼室圧力センサのセンサエレメント並びに所属の評価電子回路を、グロープラグ、燃料インジェクタまたは点火プラグ内に組み込むことであり、かつ、無接触の評価によって、燃焼室を圧力センサエレメントに対して温度に合わせて遮断できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、内燃機関のシリンダ内の燃焼室圧力を検出するための装置が提案されており、この装置においては、渦電流センサが、シールエレメントとして用いられるダイヤフラムの後ろに位置決めされていて、このダイヤフラムがシリンダ内に形成される燃焼室圧力の影響下で変形せしめられるようになっている。これによって、内燃機関の燃焼室内に形成された温度レベルに対する、例えば渦電流センサの断熱が得られる。さらに、シリコン抵抗ひずみ計が低融点ガラスはんだによって特殊鋼ダイヤフラムに取り付けられる解決策と比較して、複雑な組み立て技術および結合技術を省くことができる。
【0008】
本発明により提案された解決策によって、燃焼室圧力の影響下でのダイヤフラムの変形を、渦電流測定を介して無接触で検出することができる。
【0009】
本発明により提案された組み込まれた燃焼室圧力センサが、自己着火式内燃機関のシリンダに対応配置された、例えばグロープラグ内に組み込まれる場合、圧力検出のために用いられるコイルの構造のために様々なコイル形状が適している。この場合、コイルとは、磁界を生ぜしめるコイルのことである。本発明によれば、コイル形状は、例えば円形または矩形の幾何学形状を特徴としているが、好適には複雑なコイル形状も使用することができる。例えば、コイルは平面的な形状を有していてよい。本発明の好適な実施例によれば、複数のコイルがリング状に配置されている。さらに、本発明の好適な実施例によれば、少なくとも1つの第1のコイルが、互いに重なり合う複数の平面に形成されていてもよい。
【0010】
本発明の好適な実施例によれば、ダイヤフラムは層状に構成されており、少なくとも1つのコイルに面した、少なくともダイヤフラムの側が導電性に構成されている。このような形式の構造によって、コイルに面した側において、発生した渦電流効果を測定技術的に利用でき、それと同時にインダクタンスを避けることができる。さらに、ダイヤフラムは、周波数評価時に表皮効果を考慮するために、最小厚さを有している。
【0011】
選択的に、ダイヤフラムは、高い磁気的な透磁率μを有する強磁性材料より製作されていてよい。高い磁気的な透磁率を有する強磁性材料より成るダイヤフラムを少なくとも1つのコイルに接近させる際に磁界が集束され、これによりインダクタンスが高められる。
【0012】
本発明に基づく考え方の別の可能な実施形態において、例えば自己着火式内燃機関のためのグロープラグ内に組み込まれた、組み込み式の燃焼室圧力センサは、間隔検出のための第1および第2のコイルを有していてよい。第2のコイルは、金属製のベース体の間隔検出のために、およびひいては例えば温度変化に基づく間隔変化によって発生し得る干渉作用を補正するために用いられる。さらに、1つだけのコイルの代わりに、複数の平面的なコイルをダイヤフラムに向き合って配置する可能性が存在するので、ダイヤフラムの変位を複数のマグネットコイルによって同時に読み取ることができ、それによって冗長性のセンサ信号が得られる。
【0013】
本発明により提案された燃焼室圧力センサは、プリント基板上に直に製作することができ、選択的にシリコンのマイクロマシニング製造法も考えられる。プリント基板を使用した場合、シリコンのマイクロマシニング製造法と比較してコスト的な利点が得られる。燃焼室圧力センサユニットをプリント基板上に直に製作する場合、この製造法は、コイルをより大きい形状で、つまりセンチメートルおよびそれ以上の大きさの直径までの大きい形状で製作することもできる。コイルの形状の実施形態によれば、様々なコイル形状、例えば円形または矩形の幾何学形状が好適であり、複雑なコイル形状も考えられる。
【0014】
少なくとも1つのコイルは、高い耐食性および温度安定性において優れているセラミック製の基板上に取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明による解決策の主要な利点は、位置が検出されるダイヤフラムの導電性の面と、コイルとの間の接触を省くことができる、という点にある。導電性の面は、燃焼室内に形成される圧力および温度によって負荷されており、これに対して、電気的な接触を省いたことによって、コイルとダイヤフラムとの間の熱的および機械的な遮断が得られる。本発明による燃焼室圧力センサの構造は、特に簡単であり、効果的で安価な製造を可能にする。
【0016】
さらに、本発明による燃焼室圧力センサは簡単な形式で、多数のコイルを備えることができる。これによって、本発明による燃焼室圧力センサは冗長設計されているので、簡単な形式で並行して多くの測定を実施することができる。多くの測定を並行的に実施することによって、正確な測定結果を確実に得ることができる。さらに、冗長性の構造により、本発明による燃焼室圧力センサの高い耐欠陥性および耐故障性を保証する。多数のコイルのうちの1つのコイルの故障が、燃焼室圧力センサの故障を招くことはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による燃焼室圧力センサを備えたエンジン補機部品を示す図である。
図2】本発明の第1実施例による燃焼室圧力センサの概略的な横断面図である。
図3】マグネットコイルの第1実施例の平面図である。
図4】マグネットコイルの第2実施例の平面図である。
図5.1】本発明の第2実施例による燃焼室圧力センサの概略的な横断面図である。
図5.2】圧力センサエレメントの詳細を示す概略的な横断面図である。
図6.1】本発明の第3実施例による燃焼室圧力センサの横断面図である。
図6.2】マグネットコイル装置の概略的な平面図である。
図7】本発明の第4実施例による燃焼室圧力センサ内のマグネットコイルの配置を示す図である。
図8.1】複数の第1のコイルの、本発明による第1の配置を示す図である。
図8.2.】複数の第1のコイルの、本発明による第2の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を用いて本発明を詳しく説明する。
【0019】
図1は、本発明による燃焼室圧力センサ11を備えたエンジン補機部品10の横断面図を示す。概ね円筒形のハウジング12内の中央に、主軸線20に沿ってスリーブ18が収容されており、このスリーブ18内に加熱エレメント16が配置されている。加熱エレメント16は燃焼室40内に延在している。さらに、ハウジング12内にセンサ支持体14が収容されており、このセンサ支持体14の燃焼室側端部に圧力センサエレメント21が配置されていて、この圧力センサエレメント21は環状のダイヤフラム22を有している。さらに、ハウジング12は、円錐体13の形状の燃焼室側端部を有しており、この燃焼室側端部の概ね中央を通って、加熱エレメント16を備えたスリーブ18が延在している。スリーブ18と円錐体13との間に環状の開口17が形成されており、この開口17は、燃焼室40内のガスがダイヤフラム22まで流出することを保証する。ダイヤフラム22は、スリーブ18とハウジング12との間のシールを保証する。燃焼室40内の圧力測定は、本発明による燃焼室圧力センサ11によって行われ、この燃焼室圧力センサ11は破線で限定された領域60内に配置されている。破線で限定された領域60は図2に詳細が示されている。
【0020】
図2には、本発明による燃焼室圧力センサ11の第1実施例が詳しく示されている。本発明による燃焼室圧力センサ11は、エンジン補機部品10内に取り付けられており、このエンジン補機部品10は、概ね円筒形のハウジング12を有している。ハウジング12内で主軸線20に沿ってスリーブ18が収容されており、このスリーブ18内に加熱エレメント16が取り付けられている。さらに、ハウジング12とスリーブ18との間にセンサ支持体14が収容されている。センサ支持体14の燃焼室側端部に、環状のダイヤフラム22が固定されており、このダイヤフラム22は概ねU字形の横断面を有している。ダイヤフラム22の横断面は測定区分24を包含しており、この測定区分24は2つの固定区分26の間に位置決めされている。固定区分26は、スリーブ18とセンサ支持体14との間、またはセンサ支持体14とハウジング12との間に緊締固定されている。この場合、測定区分24は、センサ支持体14の燃焼室側端部をアーチ形に包囲している。センサ支持体14とスリーブ18との間の圧縮作用によって、固定区分26はスリーブ18の外周面に環状の第1のシール面28を形成する。さらに、ダイヤフラム22の半径方向外側に位置する固定区分26は、ハウジング12の内側に押し付けられることによって環状の第2のシール面30を形成する。第1および第2のシール面28,30は、レーザ溶接によって製作されたそれぞれ1つの気密な接続部を成している。
【0021】
ハウジング12は、燃焼室側端部に円錐体13を有しており、この円錐体13を通って主軸線20に沿ってスリーブ18が延在している。スリーブ18と円錐体13との間に環状の開口17が形成されており、この開口17は、燃焼室40から環状のダイヤフラム22へのガスの流出を可能にする。
【0022】
さらに、センサ支持体14の燃焼室側端部に、セラミック材料より成る基板38が収容されており、この基板38に渦電流センサ32が固定されており、この渦電流センサ32は第1のコイル34を含有している。U字形のダイヤフラム22は第1のコイル34をアーチ形に包囲しており、第1のコイル34とダイヤフラム22の測定区分24との間に、中空室37が形成されている。中空室37は、測定区分24の変形を可能にする内法高さ39を有している。
【0023】
さらに、燃焼室40は圧力にさらされているので、圧力42がダイヤフラム22の測定区分24に作用する。圧力42が発生すると、第1のコイル34とダイヤフラム22との間の内法高さ39の変化が発生し、この変化が第1のコイル34によって検出される。ダイヤフラム22は、測定区分24の運動が第1のコイル34によって生ぜしめられる磁界36との相互作用を引き起こすように、構成されている。この場合、渦電流が発生し、この渦電流は、第1のコイル34と測定区分24との間の無接触の間隔測定のために検出される。全体として、ダイヤフラム22を有する第1のコイル34の配置が渦電流センサの原理を実現する。
【0024】
さらに、第1のコイル34はセラミック製の基板38上に配置されており、この基板38は、センサ支持体14と渦電流センサ32との間の断熱を保証する。
【0025】
図3は、基板38上に配置された第1のコイル34の第1実施例の概略的な平面図を示す。この場合、第1のコイル34は概ね長方形に構成されている。複数の、図3に示した第1のコイル34が、例えば図示していないスリーブ18を環状に取り囲んで配置されてよい。さらに図4には、概ね円形または渦巻き状に構成された第1のコイル34の第2実施例が示されている。図4に示した第1のコイル34は、図示していないスリーブ18をリング状に取り囲んでいるか、またはこのような形式の複数の第1のマグネットコイル34が、スリーブ18を巡って環状にまたはリング状に配置されていてよい。
【0026】
図5.1には、本発明により提案された燃焼室圧力センサ11の第2実施例の横断面図が概略的に示されている。本発明による燃焼室圧力センサ11は、エンジン補機部品10内に取り付けられており、このエンジン補機部品10は、概ね円筒形のハウジング12を有している。ハウジング12内で主軸線20に沿ってスリーブ18が収容されており、このスリーブ18内に加熱エレメント16が取り付けられている。さらに、ハウジング12とスリーブ18との間にセンサ支持体14が収容されている。さらに、センサ支持体14の燃焼室側端部にダイヤフラム22が固定されており、このダイヤフラム22は概ねU字形の横断面を有している。ダイヤフラム22の横断面は測定区分24を含有しており、この測定区分24は、2つの固定区分26間に位置決めされている。固定区分26は、スリーブ18とセンサ支持体14との間、またはセンサ支持体14とハウジング12との間で半径方向に緊締固定されている。この場合、測定区分24は、センサ支持体14の燃焼室側端部をアーチ状に包囲している。センサ支持体14とスリーブ18との間の圧縮作用によって、固定区分26はスリーブ18の外周面に環状の第1のシール面28を形成する。さらに、ダイヤフラム22の半径方向外側に位置する固定区分26は、ハウジング12の内側に押し付けられることによって環状の第2のシール面30を形成する。第1および第2のシール面28,30は、レーザ溶接によって製作されたそれぞれ1つの気密な接続部を成している。
【0027】
ハウジング12は、燃焼室側端部に円錐体13を有しており、この円錐体13を通って主軸線20に沿ってスリーブ18が延在している。スリーブ18と円錐体13との間に環状の開口17が形成されており、この開口17は、燃焼室からダイヤフラム22へのガスの流出を可能にする。
【0028】
さらに、センサ支持体14の燃焼室側端部に、セラミック製の基板38が収容されており、この基板38に渦電流センサ32が固定されており、この渦電流センサ32は第1のコイル34を含有している。U字形のダイヤフラム22は第1のコイル34をアーチ形に包囲しており、第1のコイル34とダイヤフラム22の測定区分24との間に、中空室37が形成されている。中空室は、ダイヤフラム22の測定区分24の変形を可能にする内法高さ37を有している。
【0029】
さらに、燃焼室40内に、ダイヤフラム22の測定区分24に影響を及ぼす圧力42を生ぜしめる圧力および圧力変動が発生する。圧力42が発生すると、コイル34とダイヤフラム22との間の内法高さの変化が発生し、この変化が第1のコイル34によって検出される。ダイヤフラム22は導電性材料より製作されているので、測定区分24の変形により、第1のコイル34によって生ぜしめられる磁界36との相互作用が発生する。この際に、渦電流が発生し、この渦電流が、第1のコイル34と測定区分24との間の無接触の間隔測定のために検出される。全体として、ダイヤフラム22を有する第1のコイル34の配置が渦電流センサの原理を実現する。
【0030】
さらに、第1のコイル34は、プリント基板44の、燃焼室に向いた側に取り付けられており、このプリント基板44内に第2のコイル50が収容されている。第1のコイル34および第2のコイル50は、主軸線20に沿って軸方向に相前後して配置されている。この場合、第1のコイル34とプリント基板44内の第2のコイル50との間に、分離層46が設けられている。分離層46は、導電性材料、例えば銅より製作されていて、第1および第2のコイル34,50によって生ぜしめられる磁界36を分離する。これによって、第1および第2のコイル34,50の磁界36間の相互作用が避けられる。
【0031】
第2のコイル50は、第2のコイル50とセンサ支持体14との間の間隔を測定する渦電流センサの原理を実現する。ハウジング12、センサ支持体14、スリーブ18およびダイヤフラム22における種々異なる温度は、それぞれの構成部材の熱膨張を生ぜしめ、この熱膨張により中空室37の内法高さ39の変化を引き起こす。十分な技術的手段なしでは、このような、中空室37の内法高さ39の変化によって、第1のコイル34による正確な測定がもはや不可能となる。第2のコイル50によって、プリント基板44の軸方向のずれが検出される。この第2のコイル50の測定値に基づいて、第1のコイル34の測定値が修正され、それによって燃焼室40内に形成される圧力が正確に検出される。
【0032】
さらに、図5.2は、第1のコイル34および、プリント基板44の第2のコイル50の配置の詳細を示す。第1のコイル34は、プリント基板44の、燃焼室に向いた側に取り付けられていて、第2のコイル50はプリント基板44内に収容されている。第1のコイル34と第2のコイル50との間に分離層46が取り付けられている。分離層46は、導電材料、例えば銅より製作されていて、第1のコイル34および第2のコイル50の磁界36の干渉を阻止する。第2のコイル50は、同様に、渦電流センサの原理を実現し、この渦電流センサによって、第2のコイル50とセンサ支持体14との間の間隔が検出される。第2のコイル50によって検出された間隔変化に基づいて、圧力センサエレメント21の領域内で発生した、第1のコイル34による測定を妨げる熱膨張が補正され得る。図5.2に示した構成によって、変化する熱条件において、燃焼室40内で正確な無接触の圧力測定を実施することができる。
【0033】
図6.1には、本発明の第3実施例による燃焼室圧力センサ11が概略的に示されており、この燃焼室圧力センサ11はエンジン補機部品10内に収容されている。この場合、概ね円筒形のハウジング12内の中央にセンサ支持体14が収容されている。ハウジング12は、燃焼室40に向けられた端部に円錐体13を有しており、この円錐体13は、ダイヤフラム22と一体的に構成されている。ダイヤフラム22内にはさらに、主軸線20の領域内で中央に測定領域24が形成されており、この測定領域24は減少された厚みを有している。さらに、センサ支持体14の、燃焼室に向いた側の端部にセラミック製の基板38が取り付けられている。このセラミック製の基板38上で主軸線20の回りに第1のコイル34および第2のコイル50が配置されている。第1のコイル34は、第2のコイル50によって取り囲まれていて、ダイヤフラム22の測定区分24に向き合って配置されている。ダイヤフラム22およびその測定領域24は、導電性の材料、例えば鋼より製作されており、測定区分24は燃焼室内の圧力42によって運転中に変形される。さらに、第1のコイル34によって磁界36が生ぜしめられ、この磁界36は測定区分24の変形によって影響を受ける。これによって、第1のコイル34は渦電流センサの原理を実現し、この渦電流センサは、第1のコイル34とダイヤフラム22の測定区分24との間に形成された、中空室37の内法高さ39を無接触で検出する。
【0034】
さらに、第2のコイル50は基板38上で半径方向外側に配置されていて、第1のコイル34を包囲する。この場合、第2のコイル50はダイヤフラム22の固定区分26に向き合って配置されていて、この固定区分26は、測定区分24よりも大きい厚さを有している。第2のコイル50は磁界36を生ぜしめ、この磁界36は、第2のコイル50とダイヤフラム22の固定区分26との間の内法高さ39によって影響を受ける。第2のコイル50の固定領域内の内法高さ39の変化が検出される。この場合、第2のコイル50が渦電流センサの原理を実現し、この渦電流センサによって無接触の間隔測定が可能である。測定区分24内の材料厚さよりも、固定区分26内の材料厚さが大きいことに基づいて、圧力42が発生すると、中空室37の内法高さ39の僅かな変化しか発生しない。第2のコイル50は、センサ支持体14およびハウジング12の異なる熱膨張によって引き起こされる、中空室37の内法高さ39の変化を検出する。それによって、第1のコイル34および第2のコイル50を用いて算出された、測定区分24および固定区分26に対する間隔は、燃焼室圧力センサ11内の熱膨張作用の補正を可能にし、広い動作条件の範囲内で高い測定精度を保証する。
【0035】
図6.2は、図6.1に示した燃焼室圧力センサ11内の第1のコイル34および第2のコイル50の配置の概略的な平面図を示す。第1のコイル34および第2のコイル50は、同心的に配置されていて、第2のコイル50が第1のコイル34を取り囲んでいる。
【0036】
図7には、本発明により提案された燃焼室圧力センサの第4実施例が概略的に示されている。図7に示した燃焼室圧力センサにおいて、燃焼室40内で形成された圧力は、燃焼室近傍の、図示されていない別個のシールダイヤフラムに作用する。燃焼室近傍の、図示されていない別個のシールダイヤフラムに作用する圧力は、図示されていないタペットを介してダイヤフラム22に機械的に伝達される。主軸線20を中心にして、第1のコイル34および第2のコイル50は同心的に配置されていて、これらの第1および第2のコイル34,50はそれぞれ磁界36を生ぜしめる。図示されていないタペットは、主軸線20に沿って配置されている。さらに、第1のコイル34に向き合って、導電性材料より製作されたダイヤフラム22が配置されている。このダイヤフラム22は環状に構成されていて、内法高さ39を有する中空室37によってコイル34,50から分離されている。コイル34,50は、それぞれ渦電流センサの原理を実現し、この渦電流センサによって、主軸線20に沿った中空室37の内法高さ39が測定される。この場合、コイル50は、燃焼室圧力センサに影響を及ぼす干渉作用を補正するために使用される。干渉作用は、燃焼室40内で発生する圧力によって影響されない、第1のコイル34とダイヤフラムとの間の間隔変化であってよい。このような干渉作用は、特に温度変化であってよい。
【0037】
図8.1には、基板38上に取り付けられた複数の第1のコイル34の配置の第1実施例が示されている。図8.1.に示した4つの第1のコイル34は、主軸線20を中心にしてリング状に均一に配置されており、それによって、詳細に図示されていない燃焼室圧力センサ11の冗長設計が保証される。この場合、第1のコイル34はそれぞれ平面的に構成されていて、概ねアーチセグメントの形状を有している。
【0038】
図8.2には、基板38上に取り付けられた複数の第1のコイル34の配置の第2実施例が示されている。図8.1.に示した8つの第1のコイル34は、主軸線20を中心にしてリング状に均一に配置されており、それによって、詳細に図示されていない燃焼室圧力センサ11の冗長設計が保証される。第1のコイル34は、それぞれ平面的であって、概ね矩形に構成されている。
【符号の説明】
【0039】
10 エンジン補機部品
11 燃焼室圧力センサ
12 ハウジング
13 円錐体
14 センサ支持体
16 加熱エレメント
17 環状の開口
18 スリーブ
20 主軸線
21 圧力センサエレメント
22 ダイヤフラム
24 測定区分、測定領域
26 固定区分
28 第1のシール面
30 第2のシール面
32 渦電流センサ
34 第1のマグネットコイル
36 磁界
37 中空室
38 基板
39 軸方向間隔、内法高さ
40 燃焼室
42 圧力
44 プリント基板
46 分離層
50 第2のマグネットコイル
60 破線で限定された領域
70 グロープラグ
80 点火プラグ
図1
図2
図3
図4
図5.1】
図5.2】
図6.1】
図6.2】
図7
図8.1】
図8.2】