(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、救急隊員の作業負担を軽減し、搬送先病院との搬送前からの円滑な医療連携を可能とする救急医療情報通信ネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の救急医療情報通信ネットワークシステムは、救急隊員が所持する
、表示機能付携帯通信機器である隊員端末装置と、指示指導医師が所持する通話装置と、搬送先病院に設置された病院端末装置と、を含んだ救急医療情報通信ネットワークシステムであって、隊員端末装置が、通話装置を介した指示指導医師からの指示に基づいて救急隊員の施した処置内容または指示指導医師もしくは搬送先病院への報告内容である処置報告内容を音声入力する音声入力手段と、音声入力手段により入力された処置報告内容を音声認識して文字化する音声文字化手段と、音声文字化手段により文字化された処置報告内容に、音声入力手段により当該処置報告内容が音声入力された時刻を付加して経緯情報を作成する経緯情報作成手段と、経緯情報作成手段により作成された経緯情報を記録する経緯情報記録手段と、経緯情報作成手段により作成された経緯情報または経緯情報記録手段により記録された経緯情報を表示する経緯情報表示手段と、経緯情報作成手段により作成された経緯情報を送信する経緯情報送信手段と、経緯情報送信手段を制御して、経緯情報作成手段により作成された経緯情報を病院端末装置へ送信する病院送信制御手段と、を具備
するとともに、
音声を出力する音声出力手段と、音声出力手段を制御して、音声文字化手段により文字化された処置報告内容を合成音声として出力する文字音声出力制御手段と、音声文字化手段により文字化された処置報告内容が予め定められた所定内容であるかを判断する所定内容判定手段と、所定内容判定手段により所定内容であると判定された場合に、音声出力手段を制御して、音声入力手段により当該処置報告内容が音声入力された時刻から所定時間経過後に、当該処置報告内容と経過時間とを音声出力する時間音声出力制御手段と、を具備し、病院端末装置が、病院送信制御手段により送信された経緯情報を受信する病院側受信手段と、病院側受信手段により受信された経緯情報を可視化して逐次出力する病院側逐次出力手段と、病院側受信手段により受信された経緯情報を記録する病院側記録手段と、を具備したことを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、救急隊員の作業負担を軽減し、搬送先病院との搬送前からの円滑な医療連携を可能とする救急医療情報通信ネットワークシステムを提供することが可能となる。詳細には、救急隊員は手を取られることなく、いわゆるハンズフリーで作業報告が可能となり、病院側では太くない回線状況でもテキストベースで要救護者に関する必要最小限の処置経緯等を到着前から動的に把握できる。また、通信が途絶える環境であったとしても、要救護者に関する必要最小限の処置経緯等を病院到着後即時かつ正確に表示および伝達可能となる。このほか、救急隊員が報告書を後刻作成する場合も経緯情報記録手段に記録された経緯情報を参照することができ、この点からも救急隊員の作業負担が軽減され、また、必要に応じて、その報告内容が適正であるかについての確認も病院側記録手段に記録された経緯情報を突き合わせて、客観的におこなうことができる。
また、請求項1に係る発明は、処置報告内容がコールバックされ、正しく音声入力されたことを目視によらず、すなわちアイズフリーで確認でき、救急隊員の作業負担が一層軽減される。加えて、薬剤投与など、特定の処置については、投与30秒後、60秒後、等の所定時間後に指示指導医師へ経過報告する必要があるが、その間、他の作業を行っている場合であっても、音声により注意喚起され、失念することなく適正な報告が可能となる。また、これに関する発話も処置報告内容として記録および送信可能となる。なお、所定時間経過とは、一つの時間に限定されず、上述のように複数の時間が設定されている態様を含むものとする。使用の態様により、「あと○秒で、××から30秒です」という予告通知としてもよい。処置等に優先順位をつけ、コールバックを制御するようにしても良い。
【0011】
なお、隊員端末装置は特に限定されないが、例えば、スマートフォンやPDAなどの表示機能付携帯通信機器を挙げることができる。このとき、ヘッドセットを採用することにより効率的なハンズフリー環境を提供でき、また、音声入力に際してのS/N比を高めることも可能となる。音声入力およびその文字化に際しては、学習機能をもたせることにより、各救急隊員の音声認識率を個別に高めることができる。救急隊員の発話内容ないし使用する単語は、比較的限定されるので、学習機能により特定の単語についての音声認識率を特に高めるように予めチューンナップするようにしておいても良い。なお、救急隊員が所持する、とは、必ずしも装置全部を所持する必要はなく、機能の一部が別体で存在していても良いものとする。この意味において、所持するとは、使用する、と言い換えることができる。
【0014】
また、請求項
2に記載の救急医療情報通信ネットワークシステムは、請求項
1に記載の救急医療情報通信ネットワークシステムにおいて、さらに消防司令本部に設置された本部端末装置を含んだ救急医療情報通信ネットワークシステムであって、隊員端末装置が、経緯情報送信手段を制御して、経緯情報作成手段により作成された経緯情報を本部端末装置へ送信する本部送信制御手段を具備し、本部端末装置が、
本部送信制御手段により送信された経緯情報を受信する本部側受信手段と、本部側受信手段により受信された経緯情報を可視化して逐次出力する本部側逐次出力手段と、本部送信制御手段により送信された経緯情報を記録する本部側記録手段と、本部側受信手段により受信された経緯情報を病院端末装置へ転送する本部側転送手段と、を具備し、病院端末装置が、転送された経緯情報を受信する転送受信手段と、転送受信手段により受信された経緯情報と病院側受信手段により受信された経緯情報とを比較して、病院側受信手段により受信された経緯情報にない経緯情報を転送受信手段により受信された経緯情報から抽出する抽出手段と、病院側逐次出力手段を制御して、病院側受信手段により受信された経緯情報に、抽出手段により抽出された経緯情報を補完して出力をおこなう逐次出力制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項
2に係る発明は、消防指令本部でも経緯を把握でき、救急隊員と病院側との通信が途切れる環境にあってもこれを補完して円滑な医療連携が可能となる。ここで、消防無線を利用すれば、隊員端末装置−病院端末装置間の通信網ないしネットワークとは異なる通信網ないしネットワークを介したデータ送受信をおこなうことができ、補完効率が向上する(事実上の通信エリアが広がる)。消防無線による通信をおこなう態様にあっては、本部送信制御手段は、適宜、救急車に搭載される消防無線装置および関連装置も含まれるものとする。また、必要に応じて、救急隊員の報告内容が適正であるかについての確認も本部側記録手段に記録された経緯情報を突き合わせて、客観的におこなうことができる。
【0016】
また、請求項
3に記載の救急医療情報通信ネットワークシステムは、請求項1
または2に記載の救急医療情報通信ネットワークシステムにおいて、隊員端末装置が、経緯情報送信手段を制御して、経緯情報作成手段により作成された経緯情報を通話装置へ送信する医師送信制御手段を具備し、通話装置が、医師送信制御手段により送信された経緯情報を受信する医師側受信手段と、医師側受信手段により受信された経緯情報を可視化して逐次出力する医師側逐次出力手段と、医師側受信手段により受信された経緯情報を病院端末装置へ転送する医師側転送手段と、を具備し、病院端末装置が、転送された経緯情報を受信する転送受信手段と、転送受信手段により受信された経緯情報と病院側受信手段により受信された経緯情報とを比較して、病院側受信手段により受信された経緯情報にない経緯情報を転送受信手段により受信された経緯情報から抽出する抽出手段と、病院側逐次出力手段を制御して、病院側受信手段により受信された経緯情報に、抽出手段により抽出された経緯情報を補完して出力をおこなう逐次出力制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項
3に係る発明は、指示指導医師側でも可視化して経緯を把握でき、状況把握をより確実とし、また、救急隊員と病院側との通信が途切れる環境にあってもこれを補完して、円滑な医療連携が可能となる。
【0018】
また、請求項
4に記載の救急医療情報通信ネットワークシステムは、請求項1〜
3のいずれか一つに記載の救急医療情報通信ネットワークシステムにおいて、隊員端末装置が、通話装置との間で通話制御をおこなう通話制御手段と、通話装置との間の通話内容を音声記録する音声記録手段と、を具備したことを特徴とする。
【0019】
すなわち、請求項4に係る発明は、記録された音声により、文字化できなかった情報や経緯の詳細を把握することが可能となる。これにより、病院到着後必要に応じて速やかに詳細情報を伝達でき、また、報告書をより正確に作成することも可能となる。なお、適宜音声入力ボタンや音声入力タップを設けて、文字化する部分と通話部分とを区別するようにしても良い。
【0020】
なお、以上各発明においては、救急隊員は複数名救急車に搭乗して出動する場合が多いので、各救急隊員がそれぞれ隊員端末装置を携帯し、指示指導医師からの指示は、直接指示を受ける隊員のみならず、他の隊員も隊員端末装置等を介して指示を音声として聞き取ることができるようにしても良いし、経緯情報や経過時間を他の隊員端末装置からも出力(画面表示および合成音声として出力)させるようにして、情報共有化を図っても良い。
【0021】
同様に、病院側端末装置および/または本部端末装置および/または通話装置においても、経緯情報を逐次出力する際に、可視化(画面表示)するだけでなく、合成音声として音声出力するようにしても良い。また、病院側端末装置および/または本部端末装置および/または通話装置における発話者の音声に関しても、音声認識させてテキスト入力するようにしても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、救急隊員の作業負担を軽減し、搬送先病院との搬送前からの円滑な医療連携を可能とする救急医療情報通信ネットワークシステムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態では、救急隊員が所持する隊員端末装置としてヘッドセットを接続したスマートフォンと、指示指導医師が所持する通話装置として携帯電話を、搬送先病院に設置された病院端末装置および消防司令本部に設置された本部端末装置としてコンピュータを採用した救急医療情報通信ネットワークシステムについて説明する。以降では、救急医療情報通信ネットワークシステムを救急医療システムと適宜称することとする。なお、各装置はインターネットを含む通信網に接続されていると共に、救急車内には、救急隊員の携帯するスマートフォンからの経緯情報を本部端末装置へ消防無線を介して送出する変換装置(無線通信装置)が備わっているものとする。
【0025】
<システム概要>
図1は、本発明の救急医療システムの一例を示した概念図である。
図1aは、システム概要図であり、
図1bは、システム運用概念模式図である。
図示したように、救急医療システム1は、隊員端末装置100と、病院端末装置200と、本部端末装置300と、通話装置400と、救急車に搭載される無線通信装置500と、により構成される。なお、無線通信装置500は、物理的には隊員端末装置100と別体であるが、機能的には隊員端末装置100の一部であるものとして説明する。
【0026】
救急医療システムが適用される例を説明する。
・通報→現場到着:
救急隊員Eは、119番通報を受けた消防指令本部Fからの指令を受け、救急車Aに搭乗し現場に駆けつける。
・患者接触→処置:
要救護者Cの容体に応じて、救急隊員Eは、隊員端末装置100から指示指導医師Dの通話装置400に電話をかけ、状況を説明する。これと前後して、隊員端末装置100を用いて、体温、脈拍、などを音声入力し、隊員端末装置100は、音声入力内容を文字化してコールバックする。指示指導医師Dから薬剤投薬の指示を受け、救急隊員Eは薬剤投与すると共にこれを音声入力する(隊員端末装置100はこの内容もコールバックする)。投薬30秒経過後、隊員端末装置100は、経過時間を合成音声により自動出力する。救急隊員Eは、これを受け指示指導医師Dへ状態等を報告し、必要に応じて更なる指示を受け処置を続ける。これらの処置内容または報告内容(発話内容)は、テキスト化され、時間情報と共に経緯情報として逐次病院端末装置200へ送信される。
・搬送→引継ぎ:
要救護者Cは救急隊員Eにより各種処置等を施されながら救急車Aで搬送先病院Hへ搬送される。どの病院を搬送先病院Hとするかは、消防指令本部Fから消防無線により通知される。到着前後から、隊員端末装置100により作成された経緯情報は、病院端末装置200のモニタに出力される。搬送先病院Hでは、経緯情報を順次確認しつつ準備をおこない、要救護者Cの受け入れ、同病院の医師がその後の処置をおこなう。なお、病院端末装置200では、隊員端末装置100との間の回線状況が悪い場合には、適宜、無線通信装置500を介して本部端末装置300から、または、通話装置400からデータを受信し、経緯情報を補完して表示する。
・作業報告:
救急隊員Eは、詰所に帰還し、隊員端末装置100の経緯情報等の記録を見ながら報告書を作成する。
【0027】
次に、救急医療システム1のハードウェア構成をそれぞれ説明する。
<ハードウェア構成:隊員端末装置100>
図2は、隊員端末装置100のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。隊員端末装置100は、そのハードウェア構成として、CPU101と、ROM102と、RAM103と、ストレージ104と、グラフィックスチップ105と、画面106と、通信部107と、マイク181とイヤホン182を備えたヘッドセット108と、を有する。
【0028】
CPU101は、OSと共に隊員端末装置100全体を制御し、音声処理、通信処理、表示処理などをおこなう。具体的には、CPU101は、ストレージ104に格納されているプログラムに従って、ヘッドセット108のマイク181から入力された音声をテキスト化し、これをヘッドセット108のイヤホン182から出力(コールバック)する処理をおこない、そのテキスト内容を画面106に表示する処理をおこなう。また、音声認識によりテキスト化された処置内容や報告内容である処置報告内容に時刻情報を付加して経緯情報を作成し、これを病院端末装置200や、通話装置400や、無線通信装置500を介して本部端末装置300へ送出する。このほかCPU101は、ストレージ104やRAM103に経緯情報を格納し、また、ストレージ104に格納されている各種データをRAM103に一時保存する制御等もおこなう。
【0029】
ROM102は、ブートプログラム等を記憶する。使用の態様によっては、ROM102は、隊員端末装置100の制御プログラムを格納しておいてもよい。また、音声認識エンジンを格納し、音声認識処理の高速化・効率化を図るようにしても良い。RAM103は、CPU101のワークエリアとして使用する。具体的には、ストレージ104から読み出されたデータの内容やプログラム内容などを一時的に格納する。
【0030】
ストレージ104は、オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションプログラム、各種のデータを記憶する。ストレージの構成については後述する。
【0031】
グラフィックスチップ105は、画面106へ出力すべき画像信号を送出する。画面106の表示例は後述するが、多くのスマートフォンが採用しているように、タッチパネルによる入力方式が採用され、救急隊員Eの操作性および作業性を向上するようにしている。
【0032】
通信部107は、Wi−Fi、USB、Bluetooth(登録商標)、HSDPA、TDMA等、各種の通信網や機器と通信可能ないし接続可能にする制御をおこなう。経緯情報の送信は、送信先により適宜切替え処理を行ってもよく、切り替えずに並行送信するようにしても良い。例えば、隊員端末装置100−病院端末装置200間は3GS回線を利用し、隊員端末装置100−本部端末装置300間はWi−Fiにより救急車Aを中継して消防無線を利用し、隊員端末装置100−通話装置400間は、3GS回線を利用するようにしても良い。また、優先順位をつけ、病院端末装置200と不通となった場合だけ、送信先を本部端末装置300に切替え、本部端末装置300も不通である場合に、送信先を通話装置400に切り替えるようにしても良い。接続方式および接続プロトコルは特に限定されず、使用環境に応じた電波規格、電信規格に対応したハードウェアを備えるものとする。
【0033】
ヘッドセット108は、マイク181とイヤホン182を備える。イヤホン182からは合成音声によるコールバックや経過時間通知の音声を出力するほか、通話装置400との通話における指示指導医師Dの音声も出力する。マイク181は、救急隊員Eが発する処置報告内容を入力し、また、指示指導医師Dとの通話における救急隊員Eの発話音声も入力する。ヘッドセット108は、救急隊員Eが頭や耳に装着するので、S/N比が高く、例えば、救急車Aの中にいてサイレン音がなっていても、救急隊員Eの発話を効率よく集音することができ、また、イヤホン182からの音も聞き取りにくくなるようなことがなくなり好適である。
【0034】
なお、音声認識させるべき発話と、指示指導医師Dとの会話における発話とを区別し、処置報告内容だけを音声認識させるように、ヘッドセット108に音声認識ON/OFFの切替ボタンや切替タップを設けるようにすれば、音声認識効率が向上し、また、隊員端末装置100の負荷が軽減する。この切替えは、上記のボタンやタップの他、切替処理自体を音声認識させるようにしても良いし、画面106へのタッチ操作によって切り替えるようにしても良い。また、切替え処理がおこなわれたかを、「ピッ」「ピピッ」といった電子音で通知するようにしても良い。このほか、音声入力が可能なモードとなっているときは、10000Hzの電子音を連続または断続出力し、救急隊員Eがモード認識しながら発話できるようにしても良い。
【0035】
次に、ストレージ104について説明する。ストレージ104は、アプリケーション部110とデータ格納部130とにより構成される。アプリケーション部110は、隊員端末装置100全体を制御するOS111と、音声処理プログラム112と、経緯情報作成プログラム113と、通信プログラム114とにより構成される。
【0036】
データ格納部130は、プリセット単語格納部131と、学習単語格納部132と、経緯情報格納部133、音声データ格納部134とにより構成される。
【0037】
音声処理プログラム112は、音声入力された言葉を音声認識してテキスト化し、これを合成音声にて出力する制御をおこなう。音声認識に際しては、プリセット単語格納部131および学習単語格納部132から候補単語(「患者接触」、「AED施行」、「最高血圧」、「キャンセル」、各種数値(115、180)など)に合致するかの判定処理をおこない、認識率を向上させる。音声処理プログラム112は、また、音声認識された言葉が特定の単語、たとえば「薬剤投与」である場合には、所定時間(30秒および60秒)経過後に、「薬剤投与 30秒経過」、「薬剤投与60秒経過」といった、処置報告内容等に経過時間に関する情報を付加した合成音声を出力する。
【0038】
経緯情報作成プログラム113は、音声認識された言葉に、当該音声が入力された時刻を付加して経緯情報を作成する。使用の態様により、負荷を軽減するため、プリセット単語格納部131よび学習単語格納部132に格納されている単語のみを処置報告内容に設定し、これに時刻情報を付加するようにしても良い。
【0039】
なお、音声処理プログラム112または経緯情報作成プログラム113では、適宜キャンセル機能をもたせ、コールバックにより文字変換が適正に行われていないことが分かったとき、その内容を取り消すようにしても良い。キャンセルに際しては音声認識により取消しを行っても良いし、画面106にタッチしてキャンセルを行っても良い。
【0040】
通信プログラム114は、経緯情報を病院端末装置200、無線通信装置500を介した本部端末装置300、通話装置400へ、リアルタイムで送信する。救急医療システム1は、送受信されるデータがテキストベースであるので負荷が生じにくく、また、同内容が複数経路を経て最終的に病院端末装置200へ送信されるので、通信回線が低速であっても、また、通信環境が一部途絶える場合であっても、補完がなされ、円滑な医療連携が可能となる。
【0041】
プリセット単語格納部131は、指示指導医師Dからの指示に基づいて救急隊員Eの施した処置内容または指示指導医師Dもしくは搬送先病院Hへの報告内容である処置報告内容を格納する。これらの単語は語数が比較的少なく、プリセット単語として設定するので、認識候補の順位が高く、認識率を向上させることができる。具体的には、「患者接触」、「CPR開始」、「気道確保開始」、「静脈ルート」、「除細動装置」、「薬剤投与」、「AED施行」、「最高血圧」、「最低血圧」、「体温」といった単語を格納する。
【0042】
学習単語格納部132は、救急隊員Eの声色に応じて上記プリセット単語そのものを学習させた単語群のほか、例えば、体温や血圧の数字「35.0℃」、「35.1℃」、・・・「39.5℃」、「39.6℃」、「72」「73」、・・・「195」「196」を格納する。数字については比較的短い言葉であり、また、発話者のクセがあるので、救急隊員E毎に認識させることにより、音声認識率を向上させることができる。
【0043】
経緯情報格納部133は、経緯情報作成プログラム113により作成された経緯情報を格納する。これにより、万一、現場が総ての通信がおこなえない僻地であっても搬送先病院Hに到着直後に処置等の履歴を速やかにかつ正確に病院側に伝達することが可能となる。また、搬送先病院に近づけば通信が回復するのでその時に欠落している情報を送信する際に利用することもできる。
【0044】
音声データ格納部134は、指示指導医師Dとの会話、および、救急隊員Eの発話内容を総て記録する。これにより、報告書作成の際に状況を思い起こすことができ、正確な報告書を作成できる。使用の態様により、搬送先病院Hに到着時に詳細情報として病院側で確認するようにしてもよい。このほか、出動毎に別途データを保存しておくことにより必要に応じて事後検証等を容易かつ客観的におこなうこともできる。
【0045】
なお、OSの具体例としては、Windows−Mobile OS や Windows7(何れもマイクロソフト社製:登録商標)を挙げることができる。また、ソフトウェアとしては、音声認識エンジンとしてAmiVoice(アドバンスト・メディア製)、VoiceCan Tool(テックシロシステム製)を挙げることができる。
【0046】
<ハードウェア構成:無線通信装置500>
図2には、また、無線通信装置500のハードウェア構成の一例も示している。隊員端末装置100は、本実施の形態ではスマートフォンを想定しており、スマートフォンには一般的に消防無線を用いる通信手段が内蔵されていない一方で、救急車Aには、消防無線装置が搭載されている。本実施の形態では、スマートフォンと消防無線装置とを中継し、消防無線を介した経緯情報の搬送先病院Hへの送出を可能とする無線通信装置500を有する。なお、使用の態様により、無線通信装置500は、隊員端末装置100の接続ポートに物理的に接続して携帯するようにしても良い。いずれにしても、無線通信装置500は、物理的に別体であったとしても、機能的に隊員端末装置100の一部とみなすものとする。
【0047】
無線通信装置500は、Wi−Fi接続部501と、データ変換部502と、プロトコル制御部503と、消防無線装置接続部504と、を有する。
【0048】
Wi−Fi接続部501は、隊員端末装置100と無線LANにより消防無線装置とのネットワーク接続を確立する。データ変換部502は、隊員端末装置100から送出された経緯情報等を消防無線装置で送出するのに適したデータへデータ変換をおこなう。プロトコル制御部503は、消防無線装置が本部端末装置300へデータ変換部502により変換されたデータを送出するのに必要な処理をおこなう。消防無線装置接続部504は、無線通信装置500を消防無線装置に接続し、消防無線装置が本部端末装置300へ経緯情報を送出可能にする処理をおこなう。
【0049】
<ハードウェア構成:病院端末装置200>
次に病院端末装置200のハードウェア構成について説明する。
図3は、病院端末装置200のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。病院端末装置200は、そのハードウェア構成として、CPU201と、ROM202と、RAM203と、ハードディスク(HD)204と、グラフィックスカード205と、モニタ206と、ネットワークインターフェースカード(NIC)207と、マウス208と、キーボード209と、を有する。
【0050】
CPU201は、OSと共に病院端末装置200全体を制御し、経緯情報を順次表示する処理をおこなう。具体的には、CPU201は、隊員端末装置100から送られる経緯情報を順次モニタ206に表示し、また、適宜、本部端末装置300、通話装置400から送られる経緯情報により隊員端末装置100からの経緯情報を補完する制御をおこなう。このほかCPU201は、HD204やRAM203に経緯情報を格納し、また各種データをRAM203に一時保存する制御等もおこなう。
【0051】
ROM202は、ブートプログラム等を記憶する。使用の態様によっては、ROM202は、病院端末装置200の制御プログラムを格納しておいてもよい。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用する。具体的には、HD204から読み出されたデータの内容やプログラム内容などを一時的に格納する。
【0052】
HD204は、オペレーティングシステム(OS)241と、経緯情報の表示や補完の制御をおこなう表示制御プログラム242と、経緯情報を記録するデータ記録部243とを有する。表示制御プログラム242は、経緯情報が補完される場合には、時刻情報に基づき時刻順にソートしなおす。すなわち、時系列に従って経緯情報を表示し直す。このとき、既に表示された経緯情報間に補完する場合には、表示色を適宜変更し、補完情報であることが分かるようにする。
【0053】
グラフィックスカード205は、モニタ206へ出力すべき画像信号を送出する。モニタ206は、経緯情報が順次表示され、また、隊員端末装置100からの電波等が届かない場合には、他から送られる経緯情報を経緯情報中の時刻に従ってソートし補完表示する。
【0054】
NIC207は、インターネットに接続し、隊員端末装置100その他からの経緯情報を入力する。マウス208とキーボード209は通常のPCの入力手段として用いる。このほか、病院端末装置200は、適宜DVDドライブ等を備え、また、搬送先病院Hで待機している医師に情報伝達するため、プリンタ等を接続していても良い。
【0055】
なお、OSの具体例としては、WindowsXPやWindows7(何れもマイクロソフト社製)を挙げることができる。また、ソフトウェアとしては、音声認識エンジンとしてAmiVoice(アドバンスト・メディア製)、VoiceCan Tool(テックシロシステム製)を挙げることができる。
【0056】
本部端末装置300と通話装置400については、システムの機能的構成として説明する。
【0057】
<機能的構成>
次に、救急医療システム1の機能的構成について説明する。
図4は、救急医療システム1の機能的構成の一例を示したブロック図である。
救急医療システム1は、隊員端末装置100の機能的構成として、音声入力部301と、音声出力部302と、通話制御部303と、音声文字化部304と、経緯情報作成部305と、経緯情報送信部306と、文字音声出力制御部307と、所定内容判定部308と、時間音声出力制御部309と、病院送信制御部310と、本部送信制御部311と、医師送信制御部312と、経緯情報記録部313と、経緯情報表示部314と、音声記録部315と、を有する。
【0058】
また、救急医療システム1は、無線通信装置500の機能的構成として、無線側受信部317と、データ変換部318と、無線側逐次送出部319と、を有する。
【0059】
また、救急医療システム1は、病院端末装置200の機能的構成として、病院側受信部321と、病院側逐次出力部322と、転送受信部323と、抽出部324と、逐次出力制御部325と、病院側記録部326と、を有する。
【0060】
また、救急医療システム1は、本部端末装置300の機能的構成として、本部側受信部331と、本部側逐次出力部332と、本部側転送部333と、本部側記録部334と、を有する。
【0061】
また、救急医療システム1は、通話装置400の機能的構成として、医師側受信部341と、医師側逐次出力部342と、医師側転送部343と、を具備する。
【0062】
<機能的構成:隊員端末装置100および無線通信装置500>
音声入力部301は、救急隊員Eが発話した処置報告内容を音声入力する。この処置報告内容は、通話装置400を介した指示指導医師Dとの会話に基づき、指示指導医師Dからの指示に基づいて施した処置内容(例えば、AEDの施行:発話内容「AED施行」)であったり、または指示指導医師Dへの報告内容(例:発話内容「血圧131」)であったり、搬送先病院Hへの報告内容(例:発話内容「心肺停止状態」)である。また、音声入力部301は、指示指導医師Dとの間の通話にも使用する。音声入力部301は、例えば、マイク181と、音声処理プログラム112と、OS111などによりその機能を実現することができる。
【0063】
音声出力部302は、コールバックの合成音声を出力し、また、指示指導医師Dとの間の通話にも使用する。コールバックの内容は、処置報告内容またはこれに付加される経過時間である。使用の態様により、プリセット単語や学習単語以外の適宜発話された内容であってもよい。音声出力部302は、例えば、イヤホン182と、音声処理プログラム112と、OS111などによりその機能を実現することができる。
【0064】
通話制御部303は、通話装置400との間で通話制御をおこなう。処置報告内容とすべき発話内容を、携帯電話としての救急隊員E−指示指導医師D間の会話から切り分けるために、適宜隊員端末装置100のソフトウェア的切替手段またはハードウェア的切替手段を用いて区別するようにしてもよく、通話制御部303にこの処理を担わせるようにしても良い。通話制御部303は、例えば、ヘッドセット108と、OS111と、通信部107と、通信プログラム114などによりその機能を実現することができる。
【0065】
音声文字化部304は、音声入力部301によって入力された処置報告内容を音声認識して文字化(テキスト化)する。テキスト化することにより、音声ファイルをそのまま病院端末装置200に逐次送出するよりも著しくデータ量を低減することができる。また、会話部分はテキスト化せず、処置報告内容のみをテキスト化するようにした場合では、より効率的に必要な情報を提供可能となる。音声認識技術は特に限定されないが、学習機能をもたせ使用頻度の高い用語の認識率を高めるようにする。また、救急隊員Eの声色、イントネーションを加味して認識率を高めるように学習させるようにしても良い。音声文字化部304は、例えば、RAM103と、CPU101と、音声処理プログラム112と、プリセット単語格納部131と、学習単語格納部132などによりその機能を実現することができる。
【0066】
経緯情報作成部305は、音声文字化部304により文字化された処置報告内容に、音声入力部301により当該処置報告内容が音声入力された時刻を付加して経緯情報を作成する。経緯情報送信部306は、経緯情報作成部305により作成された経緯情報を送信する。送信先は、搬送先病院Hの病院端末装置200、無線通信装置500を介した消防指令本部Fの本部端末装置300、指示指導医師Dの所持する通話装置400であるが、総ての送信先に逐次一斉に送信してもよく、適宜優先順位をつけ、第一順位を病院端末装置200、第二順位を本部端末装置300、第三順位を通話装置400とするようにして、送信先との回線が不通を検知した場合のみ次の優先順位の装置へ送出するように制御しても良い。これにより、隊員端末装置100の処理負荷および最終的な受け手の病院端末装置200の処理負荷が軽減される。
【0067】
すなわち、病院送信制御部310が、経緯情報送信部306を制御して、直接病院端末装置200へ送出するが、常時または必要に応じて、本部送信制御部311が、経緯情報送信部306を制御して、経緯情報作成部305により作成された経緯情報を、Wi−Fi接続されている無線通信装置500を介して本部端末装置300へ送信してもよく(なお、その後、経緯情報は本部端末装置300から病院端末装置200へ転送される)、更に、常時または必要に応じて、医師送信制御部312が、経緯情報送信部306を制御して、経緯情報作成部305により作成された経緯情報を、携帯電話の回線を用いて通話装置400へ送信してもよい(なお、その後、経緯情報は通話装置400から病院端末装置200へ転送される)。
【0068】
経緯情報作成部305は、例えば、経緯情報作成プログラム113と、RAM103と、CPU101などによりその機能を実現することができる。経緯情報送信部306は、例えば、RAM103と、通信部107と、通信プログラム114などによりその機能を実現することができる。
【0069】
病院送信制御部310は、例えば、通信部107と、通信プログラム114などによりその機能を実現することができる。本部送信制御部311は、例えば、通信部107と、通信プログラム114と、Wi−Fi接続部501と、データ変換部502と、プロトコル制御部503と、消防無線装置接続部504などによりその機能を実現することができる。医師送信制御部312は、例えば、通信部107と、通信プログラム114などによりその機能を実現することができる。
【0070】
文字音声出力制御部307は、音声出力部302を制御して、音声文字化部304により文字化された処置報告内容を音声出力する。すなわち、処置報告内容をコールバックする。これにより、救急隊員Eは、隊員端末装置100の画面106を見ることなく、すなわち、アイズフリーで、自分の発話した処置報告内容が正しく音声認識されたか否かを確認できる。文字音声出力制御部307は、例えば、イヤホン182と、音声処理プログラム112と経緯情報作成プログラム113などによりその機能を実現することができる。
【0071】
所定内容判定部308は、音声文字化部304により文字化された処置報告内容が予め定められた所定内容であるかを判断する。時間音声出力制御部309は、所定内容判定部308により所定内容であると判定された場合に、音声出力部302を制御して、音声入力部301により当該処置報告内容が音声入力された時刻から所定時間経過後に、当該処置報告内容と経過時間とを音声出力する。すなわち、この2つの機能部により、薬剤投与などの特定の処置に対する経過報告要求が音声により喚起され、救急隊員Eが並行しておこなう他の作業によって指示指導医師Dへの経過報告を失念してしまうことなく、適正な管理が可能となる。
【0072】
所定内容判定部308は、例えば、CPU101と、経緯情報作成プログラム113と、プリセット単語格納部131と、RAM103などによりその機能を実現することができる。時間音声出力制御部309は、例えば、例えば、CPU101と、経緯情報作成プログラム113と、RAM103などによりその機能を実現することができる。
【0073】
経緯情報記録部313は、経緯情報作成部305により作成された経緯情報を記録する。また、経緯情報表示部314は、経緯情報作成部305により作成された経緯情報または経緯情報記録部313により記録された経緯情報を表示する。これにより、救急隊員Eは、作業途中(例えば搬送中)に、経緯情報を見直すことができ、また、病院到着直後に病院側に経緯情報を伝達できる。また、詰所に戻った後で作業報告書を記録ミスなく作成することができる。なお、記載の客観性も担保でき、必要に応じて検証をおこなうことができる。
【0074】
救急医療システム1では、救急要請現場から搬送先病院Hに到着するまで、通信が切断してしまう環境にあっても、通信が回復したときに、経緯情報記録部313に記録された未送信部分を回復した通信接続先に送出ないし転送するようにしてもよく、病院端末装置200ではこれが補完されるので、要救護者搬送前からの円滑な医療連携が可能となる。すなわち、病院送信制御部310および/または本部送信制御部311および/または医師送信制御部312は、回線接続と回線切断状況をそれぞれ監視し、回線が切断した後、回線の再接続を試み、回線が再開した後、経緯情報記録部313に記録された未送信部分を送出するようにすることで、円滑な医療連携が可能となる。
【0075】
経緯情報記録部313は、経緯情報格納部133とRAM103などによりその機能を実現することができる。経緯情報表示部314は、CPU101とグラフィックスチップ105と、画面106などによりその機能を実現することができる。
【0076】
音声記録部315は、指示指導医師Dとの通話内容を音声記録する。使用の態様により、処置報告内容として発話したものも、または、処置報告内容として発話したもののみを音声記録しても良い。録音内容は、搬送先病院Hでより詳細な経緯を求められたときに再生するようにしてもよいし、報告書を作成するときに利用することもできる。また事後検証が必要となったときに生データとして供出することもできる。音声記録部315は、例えば、音声処理プログラム112と、音声データ格納部134などによりその機能を実現することができる。
【0077】
無線側受信部317は、本部送信制御部311により送出された経緯情報を受信する。受信はWi−Fiによりおこなうが、救急車Aに搭載された消防無線装置と隊員端末装置100との送受信に適していればこれに限定されない。無線側受信部317は、例えば、Wi−Fi接続部501とプロトコル制御部503などによりその機能を実現することができる。
【0078】
データ変換部318は、無線側受信部317により受信された経緯情報を、消防無線によるデータ通信に適したデータに変換する。なお、このデータは、言うまでもなく、本部端末装置300により受信および復元できるようにしておくものとする。データ変換部318は、例えば、データ変換部502とプロトコル制御部503などによりその機能を実現することができる。
【0079】
無線側逐次送出部319は、データ変換部318により変換された経緯情報を本部端末装置300へ向けて逐次送出する。消防無線によりデータを送信することにより、病院送信制御部310によっては経緯情報を送信できないエリアであっても経緯情報を本部端末装置300を介して補完できるので、円滑な医療連携が可能となる。無線側逐次送出部319は、プロトコル制御部503と消防無線装置接続部504などによりその機能を実現することができる。
【0080】
<機能的構成:病院端末装置200>
病院側受信部321は、病院送信制御部310により送信された経緯情報を受信する。隊員端末装置100は救急隊員Eが携帯するのでG回線を経由させたネットワークを用いるが、データ送受信が適切におこなわれるのであれば使用する回線ないしネットワークは特に限定されない。病院側受信部321は、例えば、NIC207とOS241とRAM203等によりその機能を実現する孤男ができる。
【0081】
病院側逐次出力部322は、病院側受信部321により受信された経緯情報を可視化して逐次出力する。経緯情報は、時刻情報の順にソートされ表示される。ソート機能を持たせることにより、後刻、本部端末装置300や通話装置400から欠落した経緯情報を時系列に従って間挿することができる。この場合は、表示色を変える様にして注意喚起させるようにしても良い。病院側逐次出力部322は、例えば、モニタ206と表示制御プログラム242などによりその機能を実現することができる。
【0082】
転送受信部323は、転送された経緯情報を受信する。転送元は、本部端末装置300および/または通話装置400である。抽出部324は、転送受信部323により受信された経緯情報と病院側受信部321により受信された経緯情報とを比較して、病院側受信部321により受信された経緯情報にない経緯情報を転送受信部323により受信された経緯情報から抽出する。逐次出力制御部325は、病院側逐次出力部322を制御して、病院側受信部321により受信された経緯情報に、抽出部324により抽出された経緯情報を時系列に従って補完して出力をおこなう。これらの機能部により、複数経路で経緯情報が受信され、隊員端末装置100と病院端末装置200との回線が電波状況等により断絶する場合であっても十全かつ円滑な医療連携が可能となる。
【0083】
転送受信部323は、例えば、NIC207とOS241とRAM203と表示制御プログラム242などによりその機能を実現することができる。抽出部324は、例えば、RAM203と表示制御プログラム242などによりその機能を実現することができる。逐次出力制御部325は、例えば、表示制御プログラム242とモニタ206などによりその機能を実現することができる。
【0084】
病院側記録部326は、病院側受信部321により受信された経緯情報を記録する。これにより、救急隊員Eの報告書の内容が適正であったか否か、または、搬送後の処置等が適正であったか否かの事後検証を必要に応じて客観的におこなうことができる。病院側記録部326は、データ記録部243などによりその機能を実現することができる。
【0085】
<機能的構成:本部端末装置300>
本部側受信部331は、本部送信制御部311により送信された経緯情報を受信する。消防無線を介して経緯情報を受信し、データ復元をおこなうことにより、いわば、隊員端末装置100と病院端末装置200との間のバックアップ機能を果たすことができる。本部側受信部331は、消防指令本部F側の消防無線受信装置と本部端末装置300のOSとRAM等によりその機能を実現することができる。
【0086】
本部側逐次出力部332は、本部側受信部331により受信された経緯情報を可視化して逐次出力する。消防指令本部F側でも救急要請の経緯を把握し、状況により適切な搬送先病院の選定作業や変更通知などをおこなうことができる。本部側逐次出力部332は、例えば、本部端末装置300のモニタおよび処理プログラムによりその機能を実現することができる。
【0087】
本部側転送部333は、本部側受信部331により受信された経緯情報を病院端末装置200へ転送する。この送信はブロードバンドルータおよび適宜サーバを介したネットワークを用いることができる。本部側転送部333は、本部端末装置300の処理プログラムとNICなどによりその機能を実現することができる。
【0088】
本部側記録部334は、本部送信制御部311により送信された経緯情報を記録する。これにより、救急隊員Eが報告書を作成するときに利用でき、また、報告書の内容が適正であったか否かの事後検証を必要に応じておこなうこともできる。本部側記録部334は、本部端末装置300のハードディスクなどによりその機能を実現することができる。
【0089】
隊員端末装置100−病院端末装置200間で利用するネットワークと、隊員端末装置100−本部端末装置300間および本部端末装置300−病院端末装置200間で利用するネットワークは、通常異なるので、事実上の通信エリアを広げることができ、円滑な医療連携が実現される。
【0090】
<機能的構成:通話装置400>
医師側受信部341は、医師送信制御部312により送信された経緯情報を受信する。指示指導医師Dを経由して経緯情報を受信することにより、いわば、隊員端末装置100と病院端末装置200との間のバックアップ機能を果たすことができる。医師側受信部341は、通話装置400のOSとRAM等によりその機能を実現することができる。
【0091】
医師側逐次出力部342は、医師側受信部341により受信された経緯情報を可視化して逐次出力する。指示指導医師D側でも可視化して指示指導医師の実施した処置等の経緯を把握し、より適切な指示を送ることが可能となる。要救護者が複数いる場合に、どの患者にどのような処置を指示したかを峻別できるので、このような場合には特に利便性が高まる。なお、患者毎に表示色を異ならせるようにしても良い。医師側逐次出力部342は、例えば、通話装置400の画面および処理プログラムによりその機能を実現することができる。
【0092】
医師側転送部343は、医師側受信部341により受信された経緯情報を病院端末装置200へ転送する。この送信は適宜携帯電話の回線を用いることができるが、適正にデータ送信ができるのであればこれに限定されない。医師側転送部343は、通話装置400の処理プログラムと通信部などによりその機能を実現することができる。
【0093】
隊員端末装置100−病院端末装置200間で利用するネットワークと、隊員端末装置100−通話装置400間および通話装置400−病院端末装置200間で利用するネットワークは、通常異なるので、事実上の通信エリアを広げることができ、円滑な医療連携が実現される。
【0094】
<隊員端末装置100の画面>
次に、隊員端末装置100の画面遷移例について説明する。
図5は隊員端末装置100の起動画面の例を示した画面構成図である。画面106は、メニューボックス401と、実行決定ボタン402と、数値入力テキストボックス403と、キャンセルチェックボックス404と、直前操作キャンセルボタン405と、履歴表示窓406等を有する(
図5(a))。
【0095】
救急隊員Eは、メニューボックス401を押下しプリセットメニュー「救急」「消防」のいずれかを選択する。選択中のメニューは表示色を反転するなどする。選択内容は合成音声により出力(コールバック)される。なお、音声入力して選択することもできる。これにより経緯情報その他の業務履歴の記録が開始されると共に履歴表示窓406に逐次その内容が出力される。また、録音も開始される(
図5(b))。
【0096】
メニューボックス401は、「救急」が選択されると次のメニューに切り替わり、再度メニューボックス401を押下すると、プルダウンメニューが表示される。
図6(a)では、「患者接触」「CPR開始」「気道確保開始」「静脈ルート」「除細動装着」「薬剤投与」が表示され、適宜スクロールバーを操作することにより他のメニューの表示も可能となる。これらのメニューも音声入力により選択できる。また、選択中のメニューは反転表示される。「患者接触」と発話されたときの画面例を
図6(b)に示した。
【0097】
救急隊員Eが、体温を報告する場合、「体温 36.5度」と発話する。このとき、メニューボックス401は、「体温」メニューが選択され、数値入力テキストボックス403には、「36.5」が入力される。数値に関しては、別途、数値入力テキストボックス403を押下し、救急隊員Eが指等で数値入力するようにしても良い。体温報告および血圧報告の画面表示例を
図7(a)と
図7(b)にそれぞれ示した。
【0098】
作業単位のキャンセルの場合は、「(メニュー内容)+キャンセル」と発話する。
図8は、CPR開始から30秒経過後にCPR作業をキャンセルする態様を示している。救急隊員Eは、「CPR開始 キャンセル」と発話し、CPR開始から30秒後の自動読み上げ後に当該操作をキャンセルしている。なお、これらの操作はキャンセルチェックボックス404を押下することによっても実行可能である。
【0099】
図示は省略するが、自動読み上げの時間(上述の場合は30秒)は、適宜事前に設定可能であることは言うまでもない。これらは、アプリケーションの設定画面等により各種調整可能である。
【0100】
直前作業のキャンセルについては、単に「キャンセル」と発話する。
図9は、気道確保のキャンセル時の画面例を示している。「気道確保開始」の項目を「キャンセル」と発話することにより取り消す様子を示している。このキャンセル作業は直前操作キャンセルボタン405を押下することによっても実行可能である。
【0101】
業務を終了する際は、画面106の左下を押下することにより「業務終了ボックス」を表示させ、これを押下する。これにより、経緯情報の作成・記録および録音が終了する。
【0102】
救急医療システム1は、上述のように、救急隊員Eからメモ書き等の作業を開放し、音声入力やコールバックにより、アイズフリー・ハンズフリーの作業環境を提供し、作業負担を軽減すると共に、これらの記録内容から事後の報告書作成作業も容易化する。また、経緯情報を、患者の到着前から病院端末装置200で出力するので、円滑な医療連携が可能となる。また、搬送先または搬送途中で、経緯情報が病院側装置200へ送信できない電波状況、回線状況であっても、本部端末装置300や通話装置400を経由して別経路で送信するバックアップ処理がおこなわれるので、経緯情報の欠落が生じない。また、万一、何れの通信も断絶する僻地環境であったとしても、病院に近づいたときには復帰する回線を経由して、隊員端末装置100に記録された経緯情報を送出することにより、到着前から経緯情報を病院側装置200で認識可能となる。経緯情報は、適宜時系列に従って補完・整理されるので、経緯が明確化・明瞭化される。
【0103】
換言すれば、本発明の救急医療システム1は、単なる救急医療のIT(Information Technology)化でなく、いわゆる、ICT(Infomation あんd Communication Technology)化、すなわち、コミュニケーションを重視したシステムであって、IT化による効率化はもとより、119を受け取り、救急隊員Eに連絡する救急指令本部F(含:連絡を受け救急車Aを出動させる消防局)と、要救護者Cを搬送する救急車Aの救急隊員Eと、要救護者Cを受け入れる搬送先病院Hと、指示指導医師Dとの四位一体の情報通信ネットワークシステムの構築を可能とするものであるといえる。
【0104】
なお、救急医療システム1は、上記の態様に限定されない。例えば、救急隊員Eは、携帯電話を別途所持し、指示指導医師Dとは携帯電話にて会話を行い、処置等をおこなう場合等だけ、隊員端末装置100を用いて音声入力するようにしても良い。また、隊員端末装置100にバーコードリーダを取り付けて、各処置内容等がバーコード表示されたシートを用いてバーコードリーダを補助的に用いて処置報告内容を入力するようにしても良い。同様に、電子ペンやタッチパネル、RFIDなどを用いて処置報告内容を入力するようにしても良い。