(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献3に記載の結晶レンズの作製方法では、高温での加圧変形処理を行うために特殊な設備が必要となり、さらに、成形型のマクロな形状のみならず、X線反射特性に影響を与えるミクロな形状(成形型の表面粗さ)も成形物に転写されてしまい、X線反射膜や人工累積膜をその上に形成しても所望の性能を得ることができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、成形治具で加熱変形されても凸型成形治具の二重湾曲凸面の表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板の凹面に膜が形成されて、集光性能および/または分光性能が極めて良好である、二重湾曲X線集光素子、二重湾曲X線分光素子およびそれを備える装置ならびにその素子の安価で簡易な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成の二重湾曲X線集光素子は、凸型成形冶具が有する二重湾曲凸面と、凹型成形治具が有する、前記二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面との間に挟まれ、400℃〜600℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形されたガラス板の凹面にX線を反射する反射膜が形成されている。
【0007】
第1構成の二重湾曲X線集光素子によれば、ガラス板が二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面との間に挟まれ、400℃〜600℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形された結果、凸型成形治具の二重湾曲凸面の表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等
の表面粗さを有するガラス板の凹面に反射膜が形成されているので、集光性能が極めて良好である。
【0008】
本発明の第2構成の二重湾曲X線集光素子構成体は、第1構成の二重湾曲X線集光素子と、前記二重湾曲X線集光素子が固着される基台と、を有する。
【0009】
第2構成の二重湾曲X線集光素子構成体によれば、第1構成の二重湾曲X線集光素子を有するので、第1構成の二重湾曲X線集光素子と同様の効果を奏することができる。
【0010】
本発明の第3構成の二重湾曲X線分光素子は、凸型成形冶具が有する二重湾曲凸面と、凹型成形治具が有する、前記二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面との間に挟まれ、400℃〜600℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形されたガラス板の凹面にX線を分光する人工累積膜が形成されている。
【0011】
第3構成の二重湾曲X線分光素子によれば、ガラス板が二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面との間に挟まれ、400℃〜600℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形された結果、凸型成形治具の二重湾曲凸面の表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板の凹面に人工累積膜が形成されているので、集光性能および分光性能が極めて良好である。
【0012】
本発明の第4構成の二重湾曲X線分光素子構成体は、第3構成の二重湾曲X線分光素子と、前記二重湾曲X線分光素子が固着される基台と、を有する。
【0013】
第4構成の二重湾曲X線分光素子構成体によれば、第3構成の二重湾曲X線分光素子を有するので、第3構成の二重湾曲X線分光素子と同様の効果を奏することができる。
【0014】
本発明の第5構成のX線分析装置は、第1構成の二重湾曲X線集光素子、第2構成の二重湾曲X線集光素子構成体、第3構成の二重湾曲X線分光素子および第4構成の二重湾曲X線分光素子構成体のうち少なくとも1つを備える。
【0015】
第5構成のX線分析装置によれば、本発明の第1構成の二重湾曲X線集光素子、第2構成の二重湾曲X線集光素子構成体、第3構成の二重湾曲X線分光素子および第4構成の二重湾曲X線分光素子構成体のうち少なくとも1つを備えるので、集光性能および/または分光性能が良く精度のよい測定をすることができる。
【0016】
本発明の第6構成の二重湾曲X線集光素子の製造方法は、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下のガラス板を準備する工程と、二重湾曲凸面を有する凸型成形冶具を準備する工程と、前記二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面を有する凹型成形治具を準備する工程と、前記凸型成形冶具の二重湾曲凸面と前記凹型成形治具の二重湾曲凹面との間に前記ガラス板を挟んで400℃〜600℃に加熱して二重湾曲面を有する形状に前記ガラス板を変形させる工程と、変形された前記ガラス板の凹面にX線を反射する反射膜を形成する工程と、を有する。
【0017】
第6構成の製造方法によれば、成形治具で加熱変形されても凸型成形治具の二重湾曲凸面の表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板の凹面に反射膜が形成されるので、集光性能が極めて良好な二重湾曲X線集光素子を安価で簡易に製造することができる。
【0018】
本発明の第7構成の二重湾曲X線集光素子構成体の製造方法は、第6構成の製造方法によって製造された二重湾曲X線集光素子を準備する工程と、前記二重湾曲X線集光素子を
固着する基台を準備する工程と、前記二重湾曲X線集光素子を前記基台に固着する工程と、を有する。
【0019】
第7構成の製造方法によれば、第6構成の製造方法によって製造された二重湾曲X線集光素子を前記基台に固着しているので、第6構成の製造方法と同様の効果を奏することができる。
【0020】
本発明の第8構成の二重湾曲X線集光素子構成体の製造方法は、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下のガラス板を準備する工程と、二重湾曲凸面を有する凸型成形冶具を準備する工程と、前記二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面を有する凹型成形治具を準備する工程と、前記凸型成形冶具の二重湾曲凸面と前記凹型成形治具の二重湾曲凹面との間に前記ガラス板を挟んで400℃〜600℃に加熱して二重湾曲面を有する形状に前記ガラス板を変形させる工程と、変形された前記ガラス板を固着する基台を準備する工程と、変形された前記ガラス板を前記基台に固着する工程と、前記基台に固着された前記ガラス板の凹面にX線を反射する反射膜を形成する工程と、を有する。
【0021】
第8構成の製造方法によれば、成形治具で加熱変形されても凸型成形治具の二重湾曲凸面の表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板の凹面に反射膜が形成されるので、集光性能が極めて良好な二重湾曲X線集光素子構成体を安価で簡易に製造することができる。
【0022】
本発明の第9構成の二重湾曲X線分光素子の製造方法は、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下のガラス板を準備する工程と、二重湾曲凸面を有する凸型成形冶具を準備する工程と、前記二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面を有する凹型成形治具を準備する工程と、前記凸型成形冶具の二重湾曲凸面と前記凹型成形治具の二重湾曲凹面との間に前記ガラス板を挟んで400℃〜600℃に加熱して二重湾曲面を有する形状に前記ガラス板を変形させる工程と、変形された前記ガラス板の凹面にX線を分光する人工累積膜を形成する工程と、を有する。
【0023】
第9構成の製造方法によれば、成形治具で加熱変形されても凸型成形治具の二重湾曲凸面の表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板の凹面に人工累積膜が形成されるので、集光性能および分光性能が極めて良好な二重湾曲X線分光素子を安価で簡易に製造することができる。
【0024】
本発明の第10構成の二重湾曲X線分光素子構成体の製造方法は、第9構成の製造方法によって製造された二重湾曲X線分光素子を準備する工程と、前記二重湾曲X線分光素子を固着する基台を準備する工程と、前記二重湾曲X線分光素子を前記基台に固着する工程と、を有する。
【0025】
第10構成の製造方法によれば、第9構成の製造方法によって製造された二重湾曲X線分光素子を前記基台に固着しているので、第9構成の製造方法と同様の効果を奏することができる。
【0026】
本発明の第11構成の二重湾曲X線分光素子構成体の製造方法は、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下のガラス板を準備する工程と、二重湾曲凸面を有する凸型成形冶具を準備する工程と、前記二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面を有する凹型成形治具を準備する工程と、前記凸型成形冶具の二重湾曲凸面と前記凹型成形治具の二重湾曲凹面との間に前記ガラス板を挟んで400℃〜600℃に加熱して二重湾曲面を有する形状に前記ガラス板を変形させる工程と、変形された前記ガラス板を固着する基台を準備する工程と、変形された前記ガラス板を前記基台に固着する工程と、前記基台に固着された前記ガラ
ス板の凹面にX線を分光する人工累積膜を形成する工程と、を有する。
【0027】
第11構成の製造方法によれば、成形治具で加熱変形されても凸型成形治具の二重湾曲凸面の表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板の凹面に人工累積膜が形成されるので、集光性能および分光性能が極めて良好な二重湾曲X線分光素子構成体を安価で簡易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1実施形態である二重湾曲X線集光素子1について説明する。
図1に示す第1実施形態の二重湾曲X線集光素子1は、凸型成形冶具が有する二重湾曲凸面と、凹型成形治具が有する、前記二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面との間に挟まれ、400℃〜600℃、例えば500℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形されたガラス板3の凹面3aに、例えば、真空蒸着によりX線を反射するAu(金)の反射膜5が形成されている。二重湾曲面は、この実施形態の二重湾曲X線集光素子1では、トロイダル面(円環側面)であるが、本発明では、トロイダル面に限らず、回転楕円面、回転対数螺旋面などであってもよい。
【0030】
400℃未満の加熱温度であると、加熱変形に要する時間を長くしても所望の二重湾曲面に成形できないことがある。一方、600℃を超える加熱温度であると、加熱変形に要する時間が短くなるが、凸型成形治具の凸面の表面粗さがガラス板3の凹面3aに転写される恐れがある。よって、変形させるための加熱温度は、400℃〜600℃が好ましく、450〜550℃がより好ましい。
【0031】
変形される前の素材のガラス板3は、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下である。素材のガラス板3は、例えば、顕微鏡観察用や電子機器のディスプレイ用のカバーガラ
スであって、ホウケイ酸ガラスからなる長辺75mm、短辺25mm、厚さ0.15mmの矩形板である。厚さは、薄い方が速く加熱変形して成形が容易であるので、1mm以下が好ましい。素材のガラス板3は、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下であれば、上記以外の他の寸法、形状、材質であってもよい。
【0032】
第1実施形態の二重湾曲X線集光素子1によれば、素材のガラス板3が二重湾曲凸面と整合する二重湾曲凹面との間に挟まれ、400℃〜600℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形された結果、凸型成形治具21の二重湾曲凸面21aの表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板3の凹面3aに反射膜5が形成されているので、集光性能が極めて良好である。さらに、変形されたガラス板3は、その形状をそのまま維持できる自立形状であるので、ガラス板3の凹面3aに反射膜5を形成するだけで、そのままハンドリングできる二重湾曲X線集光素子1として用いることができる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態である二重湾曲X線集光素子構成体について説明する。
図2に示す第2実施形態の二重湾曲X線集光素子構成体6は、第1実施形態の二重湾曲X線集光素子1と、二重湾曲X線集光素子1が固着される基台7と、を有する。基台7は、凹型成形治具が有する二重湾曲凹面と同じ二重湾曲凹面7aを有する凹型のステンレス製であり、二重湾曲X線集光素子1の凸面(ガラス板3の凸面)9が基台7の凹面7aに接着剤で固着されている。
【0034】
二重湾曲X線集光素子1が自立形状であるので、基台7は二重湾曲X線集光素子1を固着できる固定材であればよく、基台7の凹面7aの表面粗さはガラス板3の表面粗さよりも劣っていてもよい。基台7は、
図2に示すような凹型の基台7でなくてもよく、
図3および
図4に示すような平板型や箱型の基台7であってもよい。つまり、
図3に示す変形例のように、二重湾曲X線集光素子構成体6は、二重湾曲X線集光素子1の凸面9の中央部が平板型の基台7の中央部に弾性接着剤で固着されていてもよい。また、
図4に示すさらなる変形例のように、二重湾曲X線集光素子構成体6は、二重湾曲X線集光素子1の凸面9の四隅が箱型の基台7の四隅に弾性接着剤で固着されていてもよい。二重湾曲X線集光素子構成体6は、
図2から
図4に示した形状の基台7に限らず、二重湾曲X線集光素子1の周囲のみを固着する、周囲固着枠である基台7、方形の孔、円形の孔などを有する基台7に固着されていてもよい。これらの変形例では、基台7の形状加工が容易に行えることに加え、大きな温度変化がある場合でも、基台7とガラス板3との熱膨張係数の違いに起因する変形がほぼ生じないという利点があり、基台7の材料の選択に特に自由度が高いという利点がある。
【0035】
第2実施形態の二重湾曲X線集光素子構成体6によれば、第1実施形態の二重湾曲X線集光素子1を有するので、第1実施形態の二重湾曲X線集光素子1と同様の効果を奏することができる。
【0036】
次に、本発明の第3実施形態である二重湾曲X線分光素子について説明する。
図1に示す第3実施形態の二重湾曲X線分光素子11は、第1実施形態の二重湾曲X線集光素子1と比べて、反射膜5に替えて人工累積膜15が形成されている点が異なるだけであり、他の構成は同じである。つまり、二重湾曲面を有する形状に変形されたガラス板3の凹面3aにX線を分光する人工累積膜15、例えば、C−Kα線用人工累積膜が形成されている。
【0037】
第3実施形態の二重湾曲X線分光素子11によれば、第1実施形態の二重湾曲X線集光素子1と同様に凸型成形治具21の二重湾曲凸面21aの表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板3の凹面3aに人工累積膜15が形成されてい
るので、集光性能および分光性能が極めて良好であり、変形されたガラス板3は、その形状をそのまま維持できる自立形状であるので、ガラス板3の凹面3a(
図1)に人工累積膜15を形成するだけでそのままハンドリングできる二重湾曲X線分光素子11として用いることができる。
【0038】
次に、本発明の第4実施形態である二重湾曲X線分光素子構成体16について説明する。
図2に示す第4実施形態の二重湾曲X線分光素子構成体16は、第3実施形態の二重湾曲X線分光素子11と、二重湾曲X線分光素子11が固着される基台7と、を有する。基台7は、第2実施形態の二重湾曲X線
集光素子構成体6の基台7と同じである。
【0039】
第4実施形態の二重湾曲X線分光素子構成体16によれば、第3実施形態の二重湾曲X線分光素子11を有するので、第3実施形態の二重湾曲X線分光素子11と同様の効果を奏することができる。
【0040】
次に、本発明の第5実施形態であるX線分析装置について説明する。このX線分析装置は、蛍光X線分析装置であって、第4実施形態の二重湾曲X線分光素子構成体16を備える。
図5に示すように、X線分析装置は、試料53に1次X線52を照射するX線源51、試料53から発生した蛍光X線54を分光する二重湾曲X線分光素子構成体16、および二重湾曲X線分光素子構成体16によって分光および集光された蛍光X線56を検出するX線検出器57を備え、その検出したX線強度により定量および/または定性分析を行う分析装置である。
【0041】
第5実施形態であるX線分析装置について、第4実施形態の二重湾曲X線分光素子構成体16を備える蛍光X線分析装置として説明したが、第1実施形態の二重湾曲X線集光素子1、第2実施形態の二重湾曲X線集光素子構成体6、第3実施形態の二重湾曲X線分光素子11および第4実施形態の二重湾曲X線分光素子構成体16のうち少なくとも1つを備えていればよく、蛍光X線分析装置以外のX線分析装置であってもよい。
【0042】
第5実施形態のX線分析装置によれば、第1実施形態の二重湾曲X線集光素子1、第2実施形態の二重湾曲X線集光素子構成体6、第3実施形態の二重湾曲X線分光素子11および第4実施形態の二重湾曲X線分光素子構成体16のうち少なくとも1つを備えるので、集光性能および/または分光性能が良く精度のよい測定をすることができる。
【0043】
次に、本発明の第6実施形態である、二重湾曲X線集光素子1の製造方法について説明する。この製造方法は、
図6に示すように、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下のガラス板3を準備する工程S1と、二重湾曲凸面21aを有する凸型成形冶具21を準備する工程S2と、二重湾曲凸面21aと整合する二重湾曲凹面22aを有する凹型成形治具22を準備する工程S3と、凸型成形冶具21の二重湾曲凸面21aと凹型成形治具22の二重湾曲凹面22aとの間にガラス板3を挟んで400℃〜600℃に加熱して二重湾曲面を有する形状にガラス板3を変形させる工程S4と、変形されたガラス板3の凹面にX線を反射する反射膜5を形成する工程S5A(
図6の左側の工程)と、を有する。以下、この製造方法について工程順に説明する。
【0044】
工程S1において、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下のガラス板3を準備する。素材のガラス板3は、例えば、顕微鏡観察用や電子機器のディスプレイ用のカバーガラスであって、ホウケイ酸ガラスからなる長辺75mm、短辺25mm、厚さ0.15mmの矩形板である。厚さは、薄い方が速く加熱変形して成形が容易であるので、1mm以下が好ましい。素材のガラス板3は、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下であれば、上記以外の他の寸法、形状、材質であってもよい。
【0045】
工程S2において、所望の二重湾曲凸面21aを有する凸型成形冶具21を準備する。凸型成形冶具21の二重湾曲凸面21aは、この実施形態の製造方法ではトロイダル面である。凸型成形冶具21は、ステンレススチール製で、質量は300gであり、その二重湾曲凸面21aの平面視形状は長辺75mm、短辺25mmの長方形である。
【0046】
工程S3において、二重湾曲凸面21aと整合する二重湾曲凹面22aを有する凹型成形治具22を準備する。二重湾曲凹面22aは、この実施形態の製造方法では、トロイダル面である。凹型成形治具22はステンレススチール製で、その二重湾曲凹面22aの平面視形状は長辺75mm、短辺25mmの長方形である。二重湾曲凸面21aと整合する二重湾曲凹面22aとは、ガラス板3の厚さ分だけ二重湾曲凸面21aからずらした二重湾曲凹面22aをいう。凸型成形冶具21および凹型成形治具22は機械加工された治具であり、それぞれの二重湾曲凸面21aおよび二重湾曲凹面22aは、特別な表面研磨加工がされておらず、表面粗さにおいて素材のガラス板3よりも劣っている。
【0047】
工程S4において、
図7に示すように、凸型成形冶具21の二重湾曲凸面21aと凹型成形治具22の二重湾曲凹面22aとの間にガラス板3を挟んで、例えば500℃で90分間加熱して、ガラス板3を凸型成形冶具21の自重だけで二重湾曲面を有する形状に熱塑性変形させる(
図8)。凸型成形冶具21の自重だけでは変形が不十分の場合には、凸型成形冶具21の上から荷重をかけてもよい。400℃未満の温度で加熱すると、加熱時間を長くしても、あるいは荷重を増やしても、所望の二重湾曲面に成形できないことがあり、一方、600℃を超える温度で加熱すると、変形させるための時間は短くなるが、凸型成形治具21の凸面21aの表面粗さがガラス板3の凹面3aに転写される恐れがあるので、変形させるための加熱温度は、400℃〜600℃が好ましく、450〜550℃がより好ましい。加熱設備としては、高温での加圧変形処理を行うための特殊な設備は必要なく、400℃〜600℃に加熱できる、簡易で安価な電気炉でよい。
【0048】
図6の工程S5Aにおいて、変形されたガラス板3を徐冷した後、変形されたガラス板3の凹面3aに、例えば、真空蒸着によりX線を反射するAu(金)の反射膜5を形成する。以上の工程により、二重湾曲X線集光素子1が製造される。変形されたガラス板3は、その形状をそのまま維持できる自立形状であるので、ガラス板3の凹面3aに反射膜5を形成するだけでそのままハンドリングできる二重湾曲X線集光素子1として製造することができる。二重湾曲面は、この実施形態の製造方法では、トロイダル面(円環側面)であるが、本発明では、トロイダル面に限らず、回転楕円面、回転対数螺旋面などであってもよい。
【0049】
第6実施形態の製造方法によれば、ガラス板3が二重湾曲凸面21aと整合する二重湾曲凹面22aとの間に挟まれ、400℃〜600℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形された結果、凸型成形治具21と凹型成形治具22とで加熱変形されても凸型成形治具21の二重湾曲凸面21aの表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板3の凹面3aに反射膜5が形成されるので、集光性能が極めて良好である二重湾曲X線集光素子1を安価で簡易に製造することができる。
【0050】
次に、本発明の第7実施形態である、二重湾曲X線集光素子構成体6の製造方法について説明する。この製造方法は、
図9に示すように、第6実施形態の製造方法によって製造された二重湾曲X線集光素子1を準備する工程S6Aと、二重湾曲X線集光素子1を固着する基台7を準備する工程S7Aと、二重湾曲X線集光素子1を基台7に固着する工程S8Aと、を有する。以下、この製造方法について工程順に説明する。
【0051】
工程S6Aにおいて、第6実施形態の製造方法によって製造された二重湾曲X線集光素子1を準備する。
【0052】
工程S7Aにおいて、二重湾曲X線集光素子1を固着する基台7を準備する。第2実施形態の二重湾曲X線集光素子構成体6と同じ基台7、例えば、凹型成形治具22が有する二重湾曲凹面22aと同じ二重湾曲凹面7aを有する凹型のステンレス製の基台7を準備する。
【0053】
工程S8Aにおいては、まず、基台7の凹面7a(
図2)の全体に、例えば、エポキシ樹脂である接着剤を塗布する。次に、接着剤が塗布された基台7の凹面7aに二重湾曲X線集光素子1の凸面9(
図2)を重ね合わせる。次に、凸型成形冶具21の二重湾曲凸面21aで二重湾曲X線集光素子1を軽く押しながら、二重湾曲X線集光素子1の凸面9を基台7の凹面7aに接着する。自立形状である二重湾曲X線集光素子1の凸面9と基台7の凹面7aとの形状は合致するので、二重湾曲X線集光素子1は変形することなく基台7に固着される。以上の工程により、二重湾曲X線分光素子構成体6が製造される。
【0054】
第7実施形態の製造方法によれば、第6実施形態の製造方法によって製造された二重湾曲X線集光素子1を基台7に固着するので、第6実施形態の製造方法と同様の効果を奏することができる。
【0055】
次に、本発明の第8実施形態である、二重湾曲X線集光素子構成体6の製造方法について説明する。この製造方法は、
図10に示すように、表面粗さが二乗平均粗さで0.5nm以下のガラス板3を準備する工程S1と、二重湾曲凸面21aを有する凸型成形冶具21を準備する工程S2と、二重湾曲凸面21aと整合する二重湾曲凹面22aを有する凹型成形治具22を準備する工程S3と、凸型成形冶具21の二重湾曲凸面21aと凹型成形治具22の二重湾曲凹面22aとの間にガラス板3を挟んで400℃〜600℃に加熱して二重湾曲面を有する形状にガラス板3を変形させる工程S4と、変形されたガラス板3を固着する基台7を準備する工程S5Cと、変形されたガラス板3を基台7に固着する工程S6Cと、基台7に固着されたガラス板3の凹面3aにX線を反射する反射膜5を形成する工程S7C(
図10の左側の工程)と、を有する。以下、この製造方法について工程順に説明する。
【0056】
第8実施形態の製造方法の工程S1〜S4は、第6実施形態の製造方法の工程S1〜S4と同じであり、同様にしてガラス板3を加熱変形させる。
【0057】
工程S5Cにおいて、変形されたガラス板3を固着する基台7を準備する。第7実施形態の製造方法と同じ基台7、例えば、凹型成形治具22が有する二重湾曲凹面22aと同じ二重湾曲凹面7aを有する凹型のステンレス製の基台7を準備する。
【0058】
工程S6Cにおいては、まず、凸型成形治具21と変形されたガラス板3とを、後述するパラフィンの融点まで加熱し、凸型成形治具21の凸面21aにパラフィンを塗布して、これに変形されたガラス板3の凹面3aを重ね合わせた状態で徐冷し、ガラス板3をパラフィンの付着力により凸型成形治具21の凸面21aに保持する。次に、基台7の凹面7aの全体に、例えば、エポキシ樹脂である接着剤を塗布し、凸型成形治具21の凸面21aに付着保持されたガラス板3の凸面9を基台7の凹面7aに重ね合わせて接着し、固着する。
【0059】
変形されたガラス板3の固着後、凸型成形治具21、ガラス板3および基台7が重なった状態のまま全体をパラフィンの融点まで加熱し、凸型成形治具21をガラス板3から分離し、ガラス板3の凹面3aに残留しているパラフィンを除去する。ここで用いるパラフィンは接着剤の劣化を招かない程度の低い温度、例えば50〜60℃の融点を持つものが望ましい。
【0060】
工程S7Cにおいて、基台7に固着された変形されたガラス板3の凹面3aに、例えば、真空蒸着によりX線を反射するAu(金)の反射膜5を形成する。以上の工程により、二重湾曲X線集光素子構成体6が製造される。
【0061】
第8実施形態の製造方法によれば、第6実施形態の製造方法と同様に、ガラス板3が二重湾曲凸面21aと整合する二重湾曲凹面22aとの間に挟まれ、400℃〜600℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形された結果、凸型成形治具21の二重湾曲凸面21aの表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板3の凹面3aに反射膜5が形成されるので、第6実施形態の製造方法と同様の効果を奏することができる。
【0062】
次に、本発明の第9実施形態である、二重湾曲X線分光素子の製造方法について説明する。この製造方法の工程は、
図6に示すように、第6実施形態の製造方法と比べて、変形されたガラス板3の凹面3aにX線を反射する反射膜5を形成する工程S5Aに替えて、変形されたガラス板3の凹面3aにX線を分光する人工累積膜15を形成する工程S5B(
図6の右側の工程)を有する点が異なるだけであり、他の工程は同じであり、変形されたガラス板3の凹面3aにX線を分光する人工累積膜15、例えば、C−Kα線用人工累積膜15を形成して二重湾曲X線分光素子11を製造する。変形されたガラス板3は、その形状をそのまま維持できる自立形状であるので、ガラス板3の凹面3aに人工累積膜15を形成するだけでそのままハンドリングできる二重湾曲X線分光素子11として製造することができる。二重湾曲面は、この実施形態の製造方法では、トロイダル面(円環側面)であるが、本発明では、トロイダル面に限らず、回転楕円面、回転対数螺旋面などであってもよい。
【0063】
第9実施形態の製造方法によれば、ガラス板3が二重湾曲凸面21と整合する二重湾曲凹面22との間に挟まれ、400℃〜600℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形された結果、凸型成形治具21の二重湾曲凸面21aの表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板3の凹面3aに人工累積膜15が形成されるので、集光性能および分光性能が極めて良好である二重湾曲X線分光素子11を安価で簡易に製造することができる。
【0064】
次に、本発明の第10実施形態である、二重湾曲X線分光素子構成体16の製造方法について説明する。この製造方法は、
図11に示すように、第9実施形態の製造方法(
図6)によって製造された二重湾曲X線分光素子11を準備する工程S6Bと、二重湾曲X線分光素子11を固着する基台7を準備する工程S7Bと、二重湾曲X線分光素子11を基台7に固着する工程S8Bと、を有する。以下、この製造方法について工程順に説明する。
【0065】
工程S6Bにおいて、第9実施形態の製造方法(
図6)によって製造された二重湾曲X線分光素子11を準備する。
【0066】
工程S7Bにおいて、二重湾曲X線分光素子11を固着する基台7を準備する。第2実施形態の二重湾曲X線集光素子構成体6と同じ基台7、例えば、凹型成形治具22が有する二重湾曲凹面22aと同じ二重湾曲凹面7aを有する凹型のステンレス製の基台7を準備する。
【0067】
工程S8Bにおいては、まず、基台7の凹面7a(
図2)の全体に、例えば、エポキシ樹脂である接着剤を塗布する。次に、接着剤が塗布された基台7の凹面7aに二重湾曲X線分光素子11の凸面9(
図2)を重ね合わせる。次に、凸型成形冶具21の二重湾曲凸
面21aで二重湾曲X線分光素子11を軽く押しながら、二重湾曲X線分光素子11の凸面9を基台7の凹面7aに接着する。自立形状である二重湾曲X線分光素子11の凸面9と基台7の凹面7aとの形状は合致するので、二重湾曲X線分光素子11は変形することなく基台7に固着される。以上の工程により、二重湾曲X線分光素子構成体16が製造される。
【0068】
第10実施形態の製造方法によれば、第9実施形態の製造方法によって製造された二重湾曲X線分光素子11を基台7に固着するので、第9実施形態の製造方法と同様の効果を奏することができる。
【0069】
次に、本発明の第11実施形態である、二重湾曲X線分光素子構成体16の製造方法について説明する。この製造方法は、
図10に示すように、第8実施形態の製造方法と比べて、基台7に固着されたガラス板3の凹面3aにX線を反射する反射膜5を形成する工程S7Cに替えて、基台7に固着されたガラス板の凹面3aにX線を分光する人工累積膜15を形成する工程S7D(
図10の右側の工程)を有する点が異なるだけであり、他の工程は同じであり、基台7に固着されたガラス板の凹面3aにX線を分光する人工累積膜15、例えば、C−Kα線用人工累積膜15を形成して二重湾曲X線分光素子構成体16を製造する。
【0070】
第11実施形態の製造方法の工程S1〜S6Cは、第8実施形態の製造方法の工程S1〜S6Cと同じであり、同様にして加熱変形されたガラス板3を基台7に固着する。
【0071】
工程S7Dにおいて、基台7に固着されたガラス板の凹面3aにX線を分光する人工累積膜15、例えば、C−Kα線用人工累積膜15を形成する。以上の工程により、二重湾曲X線分光素子構成体16が製造される。
【0072】
第11実施形態の製造方法によれば、第
9実施形態の製造方法と同様にガラス板3が二重湾曲凸面21aと整合する二重湾曲凹面22aとの間に挟まれ、400℃〜600℃に加熱されて二重湾曲面を有する形状に変形された結果、凸型成形治具21の二重湾曲凸面21aの表面粗さの影響を受けずに加熱変形前と同等の表面粗さを有するガラス板3の凹面3aに人工累積膜15が形成されるので、集光性能および分光性能が極めて良好である二重湾曲X線分光素子構成体16を安価で簡易に製造することができる。