特許第6069622号(P6069622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069622
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】炭素‐シリコン複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/984 20170101AFI20170123BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20170123BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20170123BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170123BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20170123BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20170123BHJP
【FI】
   C01B31/36 601B
   H01M4/38 Z
   H01M4/587
   H01M4/36 A
   H01M4/36 E
   H01M4/133
   H01M4/1393
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-133289(P2015-133289)
(22)【出願日】2015年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-13967(P2016-13967A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2015年7月2日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0083301
(32)【優先日】2014年7月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100156410
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 輝和
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ソンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヨソプ
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ウネ
(72)【発明者】
【氏名】ハ・ジョンヒョン
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−285382(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/074243(WO,A1)
【文献】 特開2011−119207(JP,A)
【文献】 特表2011−527982(JP,A)
【文献】 特開2010−165610(JP,A)
【文献】 特開2011−134534(JP,A)
【文献】 特開2013−073764(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/038609(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00−31/36
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Siスラリーと、高分子モノマーと、架橋剤と、を含むSi‐高分子マトリックススラリーを準備する段階と、
(b)Si‐高分子マトリックススラリーに対して熱処理工程を行って、Si‐高分子炭化マトリックスを製造する段階と、
(c)前記Si‐高分子炭化マトリックスを粉砕して、Si‐高分子炭化マトリックス粒子を製造する段階と、
(d)前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子と第1炭素原料を混合した後、炭化工程を行う段階と、を含む、炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項2】
前記(a)において、Si‐高分子マトリックススラリー中のSiは、粒子分布で50%累積質量粒子径分布直径をD50としたとき、2nm<D50<180nmである、請求項1に記載の炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項3】
前記(a)において、高分子モノマーは、アクリル酸(acrylic acid)、アクリレート(acrylate)、メチルメタクリル酸(methyl methacrylic acid)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリルアミド(acryamide)、ビニルアセテート(vinyl acetate)、マイレン酸(maleic acid)、スチレン(styrene)、アクリロニトリル(acrylonitrile)、フェノール(phenol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、ラウリルメタクリレート(lauryl
methacrylate)及びビニルジフルオライド(vinyl difluoride)からなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項4】
前記(a)において、架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate)、エチレングリコールジアクリレート(ethylene glycol diacrylate)、ジエチレングリコールジメタクリレート(diethylene glycol dimethacrylate)、ジエチレングリコールジアクリレート(diethylene glycol diacrylate)、トリエチレングリコールジアクリレート(triethylene glycol diacrylate)、テトラエチレングリコールジアクリレート(tetraethylene glycol diacrylate)、N,N‐メチレンビスアクリルアミド(N,N‐methylenebisacrylamide)、N,N‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド(N,N‐(1,2‐dihydroxyethylene)bisacrylamide)及びジビニルベンゼン(divinylbenzene)からなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項5】
前記(a)において、Siスラリー:高分子モノマー:架橋剤は、10:5〜10:1〜5の重量比を有する、請求項1に記載の炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項6】
前記(b)において、熱処理工程は、常圧下で、300〜500℃で0.5〜5時間行われる、請求項1に記載の炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項7】
前記(b)において、Si‐高分子炭化マトリックスは、前記架橋剤によって架橋結合された網状構造を有する、請求項1に記載の炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項8】
前記(d)において、第1炭素原料は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1に記載の炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項9】
(e)前記炭素‐シリコン複合体と第2炭素原料を混合した後、炭化工程を行う段階をさらに含む、請求項1に記載の炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項10】
前記(e)において、第2炭素原料は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項9に記載の炭素‐シリコン複合体の製造方法。
【請求項11】
網目構造を有するSi−高分子炭化マトリックスから形成されたSi−高分子炭化マトリックス粒子と、
第1炭素原料とからなる第1炭素マトリックスと、を含み、
前記Si−高分子炭化マトリックスは、均一に分散しているSi粒子を含み、
前記Si−高分子炭化マトリックス粒子は、前記第1炭素マトリックス内に捕捉されて分散されることを特徴とする、炭素‐シリコン複合体。
【請求項12】
Siに対するCの質量比が、1:99〜10:90である、請求項11に記載の炭素‐シリコン複合体。
【請求項13】
前記高分子炭化マトリックス粒子が、前記第1炭素マトリックスより高い空隙率(porosity)を有する、請求項11に記載の炭素‐シリコン複合体。
【請求項14】
前記第1炭素マトリックスは、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ炭化物、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項11に記載の炭素‐シリコン複合体。
【請求項15】
第2炭素粒子をさらに含む、請求項11に記載の炭素‐シリコン複合体。
【請求項16】
前記第2炭素粒子は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ炭化物、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項15に記載の炭素‐シリコン複合体。
【請求項17】
請求項11に記載の炭素‐シリコン複合体と、導電材と、結合材と、増粘剤と、を含む負極スラリーを負極集電体にコーティングしてなる、二次電池用負極。
【請求項18】
請求項17に記載の二次電池用負極を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素‐シリコン複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IT機器及び自動車のバッテリー用に使用されるためには、高容量を具現することができるリチウム二次電池の負極材料を必要とする。そのため、高容量のリチウム二次電池の負極材料として、シリコンが注目されている。例えば、純粋なシリコンは、4200mAh/gの高い理論容量を有すると知られている。
【0003】
しかし、シリコンは、炭素系材料に比べてサイクル特性が低下することから、未だに実用化に至っておらず、その理由は、負極活物質として、前記シリコンのような無機質粒子をそのままリチウムの吸蔵及び放出物質として使用した場合、充放電過程で体積変化によって活物質間の導電性が低下したり、負極集電体から負極活物質が剥離されるためである。すなわち、負極活物質に含まれたシリコンのような無機質粒子は、充電によりリチウムを吸蔵し、その体積が約300〜400%に至るほど膨張する。また、放電によりリチウムが放出されると、前記無機質粒子は収縮し、このような充放電サイクルを繰り返すと、無機質粒子と負極活物質との間に生じる空間によって電気的絶縁が発生する可能性があり、寿命が急激に低下する特性を有することになるため、二次電池に使用するには深刻な問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、二次電池の充電容量及び寿命特性をより向上させるために、二次電池用負極活物質としての炭素‐シリコン複合体、及び、(a)Siスラリーと、高分子モノマーと、架橋剤と、を含むSi‐高分子マトリックススラリーを準備する段階と、(b)Si‐高分子マトリックススラリーに対して熱処理工程を行って、Si‐高分子炭化マトリックスを製造する段階と、(c)前記Si‐高分子炭化マトリックスを粉砕して、Si‐高分子炭化マトリックス粒子を製造する段階と、(d)前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子と第1炭素原料を混合した後、炭化工程を行う段階と、を含む炭素‐シリコン複合体の製造方法などを提供することを目的とする。
【0006】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、上記で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載より、当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)Siスラリーと、高分子モノマーと、架橋剤と、を含むSi‐高分子マトリックススラリーを準備する段階と、(b)Si‐高分子マトリックススラリーに対して熱処理工程を行って、Si‐高分子炭化マトリックスを製造する段階と、(c)前記Si‐高分子炭化マトリックスを粉砕して、Si‐高分子炭化マトリックス粒子を製造する段階と、(d)前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子と第1炭素原料を混合した後、炭化工程を行う段階と、を含む炭素‐シリコン複合体の製造方法を提供する。
【0008】
前記(a)において、Si‐高分子マトリックススラリー中のSiは、粒子分布で50%累積質量粒子径分布直径をD50としたとき、2nm<D50<180nmであってもよい。
【0009】
前記(a)において、高分子モノマーは、アクリル酸(acrylic acid)、アクリレート(acrylate)、メチルメタクリル酸(methyl methacrylic acid)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリルアミド(acryamide)、ビニルアセテート(vinyl acetate)、マイレン酸(maleic acid)、スチレン(styrene)、アクリロニトリル(acrylonitrile)、フェノール(phenol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、ラウリルメタクリレート(lauryl methacrylate)及びビニルジフルオライド(vinyl difluoride)からなる群から選択される一つ以上であってもよい。
【0010】
前記(a)において、架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate)、エチレングリコールジアクリレート(ethylene glycol diacrylate)、ジエチレングリコールジメタクリレート(diethylene glycol dimethacrylate)、ジエチレングリコールジアクリレート(diethylene glycol diacrylate)、トリエチレングリコールジアクリレート(triethylene glycol diacrylate)、テトラエチレングリコールジアクリレート(tetraethylene glycol diacrylate)、N,N‐メチレンビスアクリルアミド(N,N‐methylenebisacrylamide)、N,N‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド(N,N‐(1,2‐dihydroxyethylene)bisacrylamide)及びジビニルベンゼン(divinylbenzene)からなる群から選択される一つ以上であってもよい。
【0011】
前記(a)において、Siスラリー:高分子モノマー:架橋剤は、10:5〜10:1〜5の重量比を有することができる。
【0012】
前記(b)において、熱処理工程は、常圧下で、300〜500℃で0.5〜5時間行われることができる。
【0013】
前記(b)において、Si‐高分子炭化マトリックスは、前記架橋剤によって架橋結合された網状構造を有することができる。
【0014】
前記(d)において、第1炭素原料は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。
【0015】
(e)前記炭素‐シリコン複合体と第2炭素原料を混合した後、炭化工程を行う段階をさらに含むことができる。
【0016】
前記(e)において、第2炭素原料は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。
【0017】
本発明の一具現例において、Siスラリーと、高分子モノマーと、架橋剤と、を含むSi‐高分子マトリックススラリーから形成されたSi‐高分子炭化マトリックス粒子と、第1炭素マトリックスと、を含み、前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子は、前記第1炭素マトリックス内に捕捉されて分散されることを特徴とする炭素‐シリコン複合体を提供する。
【0018】
前記炭素‐シリコン複合体は、Siに対するCの質量比が、1:99〜10:90であってもよい。
【0019】
前記高分子炭化マトリックス粒子が、前記第1炭素マトリックスより高い空隙率(porosity)を有することができる。
【0020】
前記第1炭素マトリックスは、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ炭化物、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。
【0021】
前記炭素‐シリコン複合体に第2炭素粒子をさらに含むことができる。
【0022】
前記第2炭素粒子は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ炭化物、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。
【0023】
本発明の他の具現例において、前記炭素‐シリコン複合体と、導電材と、結合材と、増粘剤と、を含む負極スラリーを負極集電体にコーティングしてなる二次電池用負極を提供する。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記二次電池用負極を含む二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のSi‐高分子マトリックススラリー中のSiが、非常に均一に分散されて含まれることから、これから形成されたSi‐高分子炭化マトリックスは、架橋剤によって架橋結合された網状構造を有することができ、これを含む炭素‐シリコン複合体を二次電池用負極活物質として使用する場合、二次電池の充電容量及び寿命特性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】エネルギー分散型分析装置(Energy‐dispersive spectroscopy)を使用して得られた実施例1及び比較例1で製造された炭素‐シリコン複合体中のSiに対するEDSイメージである。
図2】実施例1及び比較例1で製造された炭素‐シリコン複合体を用いて二次電池用負極を製造した後、FIB(Focus Ion Bean)で切断した切断面に対する走査型電子顕微鏡(SEM)イメージである。
図3】実施例1及び比較例1〜2で製造された二次電池に対し、サイクル数による放電容量を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具現例を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これにより本発明が制限されず、本発明は、後述する請求項の範疇により定義されるだけである。
【0028】
(炭素‐シリコン複合体の製造方法)
本発明は、(a)Siスラリーと、高分子モノマーと、架橋剤と、を含むSi‐高分子マトリックススラリーを準備する段階と、(b)Si‐高分子マトリックススラリーに対して熱処理工程を行って、Si‐高分子炭化マトリックスを製造する段階と、(c)前記Si‐高分子炭化マトリックスを粉砕して、Si‐高分子炭化マトリックス粒子を製造する段階と、(d)前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子と第1炭素原料を混合した後、炭化工程を行う段階と、を含む炭素‐シリコン複合体の製造方法を提供する。
【0029】
前記(a)は、Siスラリーと、高分子モノマーと、架橋剤と、を含むSi‐高分子マトリックススラリーを準備する段階であって、前記Si‐高分子マトリックススラリーは、Siスラリーを準備し、準備したSiスラリーに高分子モノマー及び架橋剤を添加して分散させることで製造されることができる。
【0030】
この際、前記Si‐高分子マトリックススラリーは、前記Si‐高分子マトリックス粒子を含むスラリーを意味し、前記Si‐高分子マトリックススラリー中のSiは、非常に均一に分散されて含まれることを特徴とする。
【0031】
前記Siスラリーは、Si粒子と、分散媒と、を含むスラリーを意味し、前記Si粒子は、2nm〜200nmの直径を有する球形であってもよく、前記分散媒は、Siスラリーの分散性及び安定性をより向上させるための溶媒であって、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、水、メタノール、エタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される一つ以上であることが好ましいが、これに限定されない。この際、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)溶媒又はテトラヒドロフラン(THF)溶媒を使用した場合、より優れた分散性及び安定性を有する。
【0032】
前記高分子モノマーは、高分子を形成するための出発物質であり、Siの緩衝作用のためのものであって、アクリル酸(acrylic acid)、アクリレート(acrylate)、メチルメタクリル酸(methyl methacrylic acid)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリルアミド(acryamide)、ビニルアセテート(vinyl acetate)、マイレン酸(maleic acid)、スチレン(styrene)、アクリロニトリル(acrylonitrile)、フェノール(phenol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、ラウリルメタクリレート(lauryl methacrylate) 及びビニルジフルオライド(vinyl difluoride)からなる群から選択される一つ以上であることが好ましいが、これに限定されない。本発明では、高分子モノマーとしてアクリル酸(acrylic acid)を使用した。
【0033】
前記架橋剤は、前記高分子モノマーから形成された高分子を互いに架橋結合させることにより、Si‐高分子マトリックス粒子が網状構造を有するようにする役割をするものであって、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate)、エチレングリコールジアクリレート(ethylene glycol diacrylate)、ジエチレングリコールジメタクリレート(diethylene glycol dimethacrylate)、ジエチレングリコールジアクリレート(diethylene glycol diacrylate)、トリエチレングリコールジアクリレート(triethylene glycol diacrylate)、テトラエチレングリコールジアクリレート(tetraethylene glycol diacrylate)、N,N‐メチレンビスアクリルアミド(N,N‐methylenebisacrylamide)、N,N‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド(N,N‐(1,2‐dihydroxyethylene)bisacrylamide)及びジビニルベンゼン(divinylbenzene)からなる群から選択される一つ以上であることが好ましいが、これに限定されない。本発明では、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate)を使用した。
【0034】
前記Si‐高分子マトリックススラリーは、添加剤をさらに含むことができる。この際、添加剤として使用される開始剤は、ラジカル重合開始剤であってもよく、1,1´‐アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(1,1´‐Azobis(cyclohexanecarbonitrile):ABCN)、アゾビスブチロニトリル(Azobisisobutyronitrile:AIBN)、ベンゾフェノン、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン及びベンゾイルパーオキサイドからなる群から選択される一つ以上であることが好ましいが、これに限定されない。本発明では、ラジカル重合開始剤として、1,1´‐アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(1,1´‐Azobis(cyclohexanecarbonitrile):ABCN)を使用した。
【0035】
前記Si‐高分子マトリックススラリー中のSi‐高分子マトリックスは、前記架橋剤によって架橋結合された網状構造を有することができる。本明細書において、「網状構造(Network Structure)」とは、架橋点を有する無定形高分子物質のマイクロ模型として考案された構造であり、結び目とそれを連結する鎖で構成されるものを意味する。
【0036】
この際、Siは、このような網状構造の高分子マトリックス内に分散されているものであって、このような網状構造の高分子マトリックスは、Siの緩衝作用をするための物質として好適である。
【0037】
また、高分子マトリックスにより、Si‐高分子マトリックススラリー中のSiは、非常に均一に分散されて含まれることができる。この際、高分子マトリックスは、架橋剤による架橋結合により、ゲル(gel)タイプの高分子マトリックスに形成されることができる。
【0038】
また、前記Si‐高分子マトリックススラリー中のSiは、粒子分布で50%の累積質量粒子径分布直径をD50としたとき、2nm<D50<180nmであることが好ましいが、これに限定されない。この際、前記高分子マトリックスは、前記架橋剤によって架橋結合された網状構造を有することにより、別の高分子マトリックスを含んでいないSi粒子スラリーに比べて前記Si‐高分子マトリックススラリー中のSiが分散性に優れることから、粒子同士の凝集現象が減少して、前記Si‐高分子マトリックススラリー中のSiは、D50が小さく、且つ粒子間のサイズ偏差が小さい均一な分布を有することになり、結果、前記Si‐高分子炭化マトリックスが、第1炭素マトリックス内でより均一且つ良好に分散されることができる。
【0039】
前記Siスラリー:高分子モノマー:架橋剤は、10:5〜10:1〜5の重量比を有することが好ましく、10:5:1の重量比を有することがより好ましいが、これに限定されない。
【0040】
前記(b)は、Si‐高分子マトリックススラリーに対して熱処理工程を行って、Si‐高分子炭化マトリックスを製造する段階である。
【0041】
この際、前記Si‐高分子炭化マトリックスは、Si‐高分子マトリックススラリーに対して熱処理工程を行って製造されたものであって、前記架橋剤によって架橋結合された網状構造のみ残すことを特徴とする。
【0042】
すなわち、前記Si‐高分子炭化マトリックスは、架橋剤によって架橋結合された網状構造を有することにより、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が第1炭素マトリックスとともに複合体を形成する製造過程中にSi‐高分子炭化マトリックス粒子が凝集しないようにして、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が大きく凝集して形成されず、且つ第1炭素マトリックス内に均一且つ良好に分散されるように形成されることができる。したがって、Si‐高分子炭化マトリックスで二次電池用負極活物質を製造する場合、二次電池は、初期充電容量を著しく高め、且つ数回のサイクル後にも充填容量低下の問題を著しく改善して、寿命特性をより向上させることができる。
【0043】
また、前記熱処理工程は、前記Si‐高分子マトリックススラリーを50〜600℃の温度で熱処理して行われることができ、圧力条件として0.5bar〜10barで低圧乃至高圧条件で、目的に応じて行われることができ、熱処理工程は、0.5〜5時間行われることができる。前記熱処理工程は、目的とする用途に応じて、一つの段階で行われてもよく、多段階で行われてもよい。
【0044】
好ましくは、前記熱処理工程は、常圧下で、300〜500℃で0.5〜5時間行われ、より好ましくは、前記熱処理工程は、常圧下で、400℃で1時間行われる。
【0045】
前記(c)は、前記Si‐高分子炭化マトリックスを粉砕して、Si‐高分子炭化マトリックス粒子を製造する段階であって、前記Si‐高分子炭化マトリックスを粉砕することにより、製造されるSi‐高分子炭化マトリックス粒子が第1炭素原料に均一に混合されるようにする。
【0046】
前記(d)は、前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子と第1炭素原料を混合した後、炭化工程を行う段階である。
【0047】
この際、前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子と第1炭素原料を粒子状に混合し、前記第1炭素原料は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましいが、これに限定されない。具体的に、前記第1炭素原料は、一般的に、石炭系コールタールピッチ又は石油系ピッチを商業的に入手して使用することができる。前記第1炭素原料は、後続する炭化工程により炭化されて、結晶質炭素、非晶質炭素又はこれらすべてを含む炭素マトリックスとして形成される。前記第1炭素原料は、伝導性及び非伝導性の場合を区別せずに、すべて使用されることができる。
【0048】
前記混合溶液中のSiに対するCの質量比が1:99〜10:90になるように、Si‐高分子炭化マトリックス粒子と第1炭素原料を混合することができる。前記範囲内の質量比でSiとCが含まれるように、Si‐高分子炭化マトリックス粒子と第1炭素原料を適切な含有量で混合する。これにより製造された前記炭素‐シリコン複合体は、二次電池の負極活物質の用途に適用する場合、高容量のシリコン特性を効果的に発揮させ、且つ充放電の際に体積膨張の問題を緩和することで、二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0049】
本発明において、「炭化工程(Carbonization Process)」とは、炭素原料を高温で焼成して無機物として炭素を残存させる工程を意味し、前記炭化工程により、第1炭素原料が第1炭素マトリックスを形成する。
【0050】
例えば、前記炭化工程において、前記第1炭素マトリックスの炭化収率は、40〜80重量%であってもよい。このような炭素‐シリコン複合体を製造する方法のうち炭化工程の炭化収率を高めることで揮発分の発生を低減することができ、その処理が容易となり、環境にやさしい工程になることができる。
【0051】
前記炭化工程は、前記混合溶液を400〜1400℃の温度で熱処理して行われることができ、圧力条件として1bar〜15barで低圧乃至高圧条件で、目的に応じて行われることができ、炭化工程は、1〜24時間行われることができる。前記炭化工程は、目的とする用途に応じて、一つの段階で行われてもよく、多段階で行われてもよい。
【0052】
(e)前記炭素‐シリコン複合体と第2炭素原料を混合した後、炭化工程を行う段階をさらに含むことができる。
【0053】
この際、前記炭素‐シリコン複合体と第2炭素原料を粒子状に混合し、前記第2炭素原料は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0054】
前記炭化工程により、第2炭素原料が第2炭素粒子を形成することができ、前記炭化工程の具体的な条件は、上述の(d)において言及したとおりである。
【0055】
(炭素‐シリコン複合体)
なお、本発明は、Siスラリーと、高分子モノマーと、架橋剤と、を含むSi‐高分子マトリックススラリーから形成されたSi‐高分子炭化マトリックス粒子と、第1炭素マトリックスと、を含み、前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子は、前記第1炭素マトリックス内に捕捉されて分散されることを特徴とする炭素‐シリコン複合体を提供する。
【0056】
前記第1炭素マトリックスは、第1炭素原料から形成されたものであって、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ炭化物、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0057】
前記炭素‐シリコン複合体は、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が第1炭素マトリックスとともに複合体を形成する製造過程中にSi‐高分子炭化マトリックス粒子が凝集しないようにして、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が大きく凝集して形成されず、且つ第1炭素マトリックス内に均一且つ良好に分散されるように形成される。このように、前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子は、前記炭素‐シリコン複合体の第1炭素マトリックスの全体にわたり均一に分散されて形成されることができる。このような炭素‐シリコン複合体は、二次電池の負極活物質の用途に適用する場合、高容量のシリコン特性を効果的に発揮させ、且つ充放電の際に体積膨張の問題を緩和することで、二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0058】
前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子がより均一且つ良好に分散された炭素‐シリコン複合体は、同一含有量のシリコンを含んでも、より優れた容量を具現することができる。例えば、シリコン理論容量の約80%以上に具現されることができる。
【0059】
具体的に、前記炭素‐シリコン複合体は、球形又は球形に近い粒子に形成されることができ、前記炭素‐シリコン複合体の粒子径が0.5μm〜50μmであってもよい。前記範囲の粒子径を有する炭素‐シリコン複合体は、二次電池の負極活物質として適用する場合、高容量のシリコン特性による充電容量を効果的に発揮させ、且つ充放電の際に体積膨張の問題を緩和することで、二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0060】
前記炭素‐シリコン複合体は、Siに対するCの質量比が、1:99〜10:90であってもよい。前記炭素‐シリコン複合体は、前記数値範囲内でも高含有量でSiを含有することができるという利点があり、高含有量のSiを含有し、且つSi‐高分子炭化マトリックス粒子が良好に分散されていることから、Siを負極活物質として使用する場合に問題となる充放電の際の体積膨張の問題を改善することができる。
【0061】
前記炭素‐シリコン複合体は、例えば、二次電池の性能を低下させうる酸化物をほとんど含まないため、酸素含有量が非常に低い。具体的に、前記炭素‐シリコン複合体は、酸素含有量が0重量%〜1重量%であってもよい。また、前記第1炭素マトリックスは、他の不純物及び副産物の化合物をほとんど含まず、ほぼ炭素で構成されており、具体的に、前記第1炭素マトリックス中の炭素含有量が、70重量%〜100重量%であってもよい。
【0062】
上述のように、前記炭素‐シリコン複合体は、第1炭素マトリックスの内部の全領域にSi‐高分子炭化マトリックス粒子が分布し、表面側だけでなく内部にも良好に分散されて存在する。内部にも良好に分散されて存在するということは、具体的に、前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子が、前記炭素‐シリコン複合体の半径の5%に該当する深さ以上の内部に捕捉されて存在することを意味することができる。より具体的に、前記炭素‐シリコン複合体の半径の1%〜100%に該当する深さに前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子が存在するという点で、半径の5%未満の深さに該当する表面側にのみSi‐高分子炭化マトリックス粒子が分布される炭素‐シリコン複合体とは区別される。当然、前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子が、前記炭素‐シリコン複合体の半径の1%〜100%に該当する深さに存在するということが、前記炭素‐シリコン複合体の半径の0%〜1%に該当する深さに存在するという意味を排除することではない。
【0063】
また、通常、炭化工程を行う際に原料として使用されたSi‐高分子炭化マトリックス粒子同士が凝集してSi‐高分子炭化マトリックス粒子が塊になることから、前記炭素‐シリコン複合体は、前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子同士が凝集して形成されたSi‐高分子炭化マトリックス塊粒子を含むことができる。
【0064】
本明細書において、Si‐高分子炭化マトリックス粒子の分散が均一且つ良好に行われたということは、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が第1炭素マトリックスの全体にわたり均一に分布することを意味し、また、Si‐高分子炭化マトリックス塊粒子が均一に形成されて、各Si‐高分子炭化マトリックス塊粒子の直径の統計学的分析の面で偏差値が小さいことを意味し、具体的に、Si‐高分子炭化マトリックス塊粒子の直径の最大値として、処理水準以下の結果が得られることを意味する。
【0065】
すなわち、前記炭素‐シリコン複合体は、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が良好に分散され、これに伴い、このようなSi‐高分子炭化マトリックス塊粒子も相対的に小くなる。具体的に、前記第1炭素マトリックス内で前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子が凝集して形成されたSi‐高分子炭化マトリックス塊粒子の直径が20μm以下に形成されることができる。
【0066】
また、前記高分子マトリックス粒子の場合、炭化の際に前記高分子マトリックス粒子内の炭素以外の酸素又は水素などの他の不純物及び副産物の化合物は炭化されず気化されて、炭素以外の酸素又は水素などの他の不純物及び副産物の化合物が存在していた場所は空間として残り、これにより、前記高分子炭化マトリックス粒子は、ほぼ炭素のみからなる前記第1炭素マトリックスに比べて高い空隙率(porosity)を有することができる。
【0067】
具体的に、前記高分子マトリックス粒子の炭化収率は5%〜30%であることが好ましく、前記第1炭素マトリックスの炭化収率は40%〜80%であることが好ましいが、これに限定されない。前記第1炭素マトリックスは、他の不純物及び副産物の化合物をほとんど含まず、ほぼ炭素のみからなっており、炭化の際に炭化収率に著しく優れ、前記高分子マトリックス粒子は、炭素以外の酸素又は水素などの他の不純物及び副産物の化合物を含んでおり、炭化の際に炭化収率に劣る。
【0068】
本明細書において、粒子の直径とは、粒子の重心を通過する直線が、粒子の表面と接して定義される二つの点の間の距離を意味する。
【0069】
前記粒子の直径は、公知の方法にしたがって様々な方法で測定されることができ、例えば、X‐線回折分析(XRD)を利用したり、走査型電子顕微鏡(SEM)イメージを分析して測定されることができる。
【0070】
さらに、前記炭素‐シリコン複合体は、球形又は球形に近い粒子状に形成され、前記第2炭素粒子とともに球形化されることができる。この際、前記炭素‐シリコン複合体と前記第2炭素粒子との間に空隙が形成されて含まれることができる。
【0071】
前記炭素‐シリコン複合体と前記第2粒子を球形化するために公知の様々な方法及び機器を使用することができる。
【0072】
前記第2炭素粒子は、第2炭素原料から形成されたものであって、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ピッチ炭化物、焼成されたコークス、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0073】
好ましくは、前記第1炭素マトリックスは、非晶質炭素であり、前記第2炭素粒子は、結晶質炭素であってもよい。例えば、前記第2炭素粒子が黒鉛である場合、板状又は切片状であってもよく、球形に形成された前記炭素‐シリコン複合体とともに球形化されて、重なっている第2炭素粒子の間に球形の炭素‐シリコン複合体が捕捉されて分散された状態に球形化されることができる。前記第2炭素粒子が黒鉛である場合、具体的に、平坦面での平均直径が0.5μm〜500μmで、厚さが0.01μm〜100μmである板状又は切片状であってもよい。
【0074】
前記炭素‐シリコン複合体は、追加的に、最外層として非晶質炭素コーティング層をさらに含むことができる。
【0075】
(二次電池用負極)
本発明は、前記炭素‐シリコン複合体と、導電材と、結合材と、増粘剤と、を含む負極スラリーを負極集電体にコーティングしてなる二次電池用負極を提供する。
【0076】
前記二次電池用負極は、前記炭素‐シリコン複合体と、導電材と、結合材と、増粘剤と、を含む負極スラリーを負極集電体にコーティングし、乾燥及び圧延して形成される。
【0077】
前記導電材としては、炭素系物質、金属物質、金属酸化物及び電気伝導性高分子からなる群から選択される一つ以上が使用されることができ、具体的に、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンファイバー、フラーレン、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、酸化コバルト、酸化チタン、ポリフェニレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール及びポリアニリンなどが使用されることができる。
【0078】
前記結合材としては、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR、Styrene‐Butadiene Rubber)、カルボキシメチルセルロース(CMC、Carboxymethyl Cellulose)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)などの各種のバインダー高分子が使用されることができ、前記増粘剤は、粘度調節のためのものであって、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどが使用されることができる。
【0079】
前記負極集電体としては、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、又はこれらの合金などが使用されることができ、これらのうち銅又は銅合金が最も好ましい。
【0080】
(二次電池)
本発明は、前記二次電池用負極を含む二次電池を提供する。
【0081】
前記二次電池は、二次電池用負極活物質として、ナノサイズのSi‐高分子炭化マトリックス粒子が非常に均一に分散されて含まれた炭素‐シリコン複合体を使用したところ、充電容量及び寿命特性がより向上したことを特徴とする。
【0082】
前記二次電池は、前記二次電池用負極と、正極活物質を含む正極と、分離膜と、電解液と、を含んで形成される。
【0083】
前記正極活物質として使用される材料としては、LiMn、LiCoO、LiNIO、LiFeOなど、リチウムを吸蔵、放出することができる化合物などが使用されることができる。
【0084】
前記負極と正極との間で前記電極を絶縁させる分離膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系多孔性フィルムが使用されることができる。
【0085】
また、前記電解液としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、γ‐ブチロラクトン、ジオキソラン、4‐メチルジオキソラン、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2‐ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジエチレングリコール、又はジメチルエーテルなどの一つ以上の非プロトン性溶媒に、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ただし、x、yは、自然数)、LiCl、LiIなどのリチウム塩からなる一つ以上の電解質を混合して溶解したものが使用されることができる。
【0086】
前記二次電池の多数を電気的に連結して含む中大型電池モジュール又は電池パックを提供することができるが、前記中大型電池モジュール又は電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)と、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)と、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)と、を含む電気自動車;電気トラック;電気商用車;又は電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として用いられることができる。
【0087】
以下、本発明を容易に理解するために、好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであって、下記実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
【0088】
[実施例]
(実施例1)
(Si‐高分子炭化マトリックス粒子の製造)
平均粒径が50nmであるSi粒子1gをN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)分散媒9gに分散させて、Siスラリーを準備した。準備したSiスラリーに、アクリル酸5g、エチレングリコールジメタクリレート1g、1,1´‐アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)0.5gを添加した後、70℃の温度で12時間攪拌して、Si‐高分子マトリックススラリーを準備した。
【0089】
この際、Si‐高分子マトリックススラリーに対して動的光散乱法(Dynamic light scattering)(測定機器:ELS‐Z2、Otsuka Electronics社製)によってSiの分布特性を測定した結果、D50は120nmである。
【0090】
準備したSi‐高分子マトリックススラリーに対して、電気炉で400℃の温度で1時間さらに熱処理を行って、Si‐高分子炭化マトリックスを製造し、250rpmで30分間プラネタリーミルを用いて粉砕して、Si‐高分子炭化マトリックス粒子を製造した。
【0091】
(炭素‐シリコン複合体の製造)
前記Si‐高分子炭化マトリックス粒子に350℃で蒸発された石炭系ピッチを粒子状で約12時間混合した。石炭系ピッチ:Si‐高分子炭化マトリックス粒子を97.5:2.5の重量比で混合した。次に、10℃/minで昇温して900℃の温度で5時間炭化を行って、炭素‐シリコン複合体を形成した。形成された炭素‐シリコン複合体を250rpmで1時間プラネタリーミルを用いて粉砕した後、分級過程を経て50μm以下の粒径を有する粒子のみを選別した粉末を得た。
【0092】
(二次電池用負極の製造)
前記炭素‐シリコン複合体粉末を負極活物質として使用し、負極活物質:カーボンブラック(CB):カルボキシメチルセルロース(CMC):スチレンブタジエン(SBR)を91:5:2:2の重量比で水に混合して、負極スラリー用組成物を製造した。これを銅集電体にコーティングし、110℃オーブンで約1時間乾燥及び圧延して二次電池用負極を製造した。
【0093】
(二次電池の製造)
前記二次電池用負極、分離膜、電解液(エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート(1:1の重量比)の混合溶媒として、1.0M LiPF添加)、リチウム電極の順に積層して、コインセル(coin cell)形態の二次電池を製造した。
【0094】
(比較例1)
前記Si‐高分子マトリックススラリーの代わりにSiスラリーを単独で使用した以外は、実施例1と同じ方法で炭素‐シリコン複合体粉末及びこれを適用した二次電池用負極と二次電池を製造した。
【0095】
(比較例2)
前記炭素‐シリコン複合体粉末の代わりに350℃で蒸発された石炭系ピッチを単独で使用した以外は、実施例1と同じ方法で炭素‐シリコン複合体粉末及びこれを適用した二次電池用負極と二次電池を製造した。
【0096】
図1はエネルギー分散型分析装置(Energy‐dispersive spectroscopy)を使用して得られた実施例1及び比較例1で製造された炭素‐シリコン複合体中のシリコンに対するEDSイメージである。
【0097】
図1に示すように、炭素‐シリコン複合体をエネルギー分散型分光器(energy dispersive spectroscopy)で測定した結果、実施例1で製造された炭素‐シリコン複合体は、Si:Cを2.5:97.5の重量比で含むことを確認することができた。また、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が、第1炭素マトリックスの内部に全体的に均一に分散されて形成され、Si‐高分子炭化マトリックス塊粒子は、直径が約20μm以下に形成されることを確認することができた。
【0098】
一方、比較例1で製造された炭素‐シリコン複合体は、Si:Cを2.5:97.5の重量比で含むことを確認することができた。また、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が第1炭素マトリックスの内部に凝集して形成され、Si‐高分子炭化マトリックス塊粒子は、直径が約20μmを超えて形成されることを確認することができた。
【0099】
図2は実施例1及び比較例1で製造された炭素‐シリコン複合体を用いて二次電池用負極を製造した後、FIB(Focus Ion Bean)で切断した切断面に対する走査型電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【0100】
図2に示すように、FIB(Focus Ion Bean)で切断した切断面に対する走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、実施例1で製造された炭素‐シリコン複合体は、第1炭素マトリックスの内部に空隙率(porosity)の低い部分が均一に形成され、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が、第1炭素マトリックスの内部に全体的に均一に分散されて形成されることを確認することができた。
【0101】
一方、比較例1で製造された炭素‐シリコン複合体は、第1炭素マトリックスの内部に空隙率(porosity)の低い部分が不均一に形成され、Si‐高分子炭化マトリックス粒子が、第1炭素マトリックスの内部に凝集して形成されることを確認することができた。
【0102】
(実験例)
実施例1及び比較例1〜2で製造された二次電池に対して、下記の条件で充放電実験を行った。
【0103】
1g重量当たり300mAを1Cと仮定したとき、充電条件として0.2Cで0.01Vまで定電流、0.01Vで0.01Cまで定電圧で制御し、放電条件として0.2Cで1.5Vまで定電流で測定した。
【0104】
図3は実施例1及び比較例1〜2で製造された二次電池に対して、サイクル数による放電容量を測定した結果を示すグラフであり、初期充電容量(mAh/g)の結果、及び初期充電容量に対する21サイクル後の充電容量維持率を%に換算した21サイクル後の充電容量維持率(%)の結果を下記表1に記載した。
【0105】
【表1】
【0106】
図3及び表1を参照すると、実施例1で製造された二次電池は、Si‐高分子炭化マトリックス粒子を含む炭素‐シリコン複合体を負極活物質として使用したところ、高容量のシリコンにより初期充電容量が著しく高く、且つ21サイクル後にも充電容量低下の問題を著しく改善したことを確認することができる一方、比較例1で製造された二次電池は、21サイクル後、充電容量が大幅に低下して、シリコン使用の際に典型的に発生する容量低下の問題が現れた。
【0107】
一方、比較例2で製造された二次電池は、シリコンを含まないことから、シリコンに起因したサイクルによる容量低下の問題はあまり発生しなかったが、実施例1及び比較例1に比べて初期充電容量が著しく低いことを確認することができた。
【0108】
上述の本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形することができることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであって限定的なものではないことを理解すべきである。
図3
図1
図2