特許第6069655号(P6069655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6069655カソード加熱装置の温度を制御するホール効果モータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069655
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】カソード加熱装置の温度を制御するホール効果モータ
(51)【国際特許分類】
   F03H 1/00 20060101AFI20170123BHJP
   H05H 1/54 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F03H1/00 Z
   H05H1/54
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-506720(P2013-506720)
(86)(22)【出願日】2011年4月29日
(65)【公表番号】特表2013-531755(P2013-531755A)
(43)【公表日】2013年8月8日
(86)【国際出願番号】FR2011050980
(87)【国際公開番号】WO2011135271
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年4月8日
(31)【優先権主張番号】1053311
(32)【優先日】2010年4月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170715
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 和道
(72)【発明者】
【氏名】マルシャンディーズ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】オベール ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】コルニュ ニコラ
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0058305(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0193295(US,A1)
【文献】 特開2008−088931(JP,A)
【文献】 特表平08−500930(JP,A)
【文献】 特開2007−071055(JP,A)
【文献】 特開2007−177639(JP,A)
【文献】 William G. Tighe,Performance Evaluation and Life Test of the XIPS Hollow Cathode Heater,41st AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference & Exhibit 10-13 July 2005 (AIAA 2005-4066),米国,American Institute of Aeronautics and Astronautics,2005年 7月12日,p.1−11
【文献】 William G. Tighe,Hollow Cathode Ignition and Life Model,41st AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference & Exhibit 10-13 July 2005 (AIAA 2005-3666),米国,American Institute of Aeronautics and Astronautics,2005年 7月11日,p.1−11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03H 1/00
H05H 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流側開放端部(52)を有する放電チャンネル(50)と、
前記放電チャンネル(50)の外部に配置されるカソード(100)と、
前記放電チャンネル(50)の上流側端部に配置され且つアノードを形成する、ガスの原子を放電チャンネルに注入するのに好適なインジェクタシステム(30)と、
前記カソード(100)を加熱するのに好適な加熱装置(60)と、を備えたホール効果スラスター(1)であって、
該ホール効果スラスター(1)は、
前記加熱装置(60)の温度Tdを測定する測定手段(70)と、
該温度Tdがスラスターの始動可能な閾値温度Ts未満である間に前記加熱装置(60)が加熱を行い、前記閾値温度Tsに到達した後に加熱を止めるように前記温度Tdを調整する調整回路(80)とを更に備える
ことを特徴とするホール効果スラスター(1)。
【請求項2】
前記閾値温度Tsは、前記カソード(100)によって放出される放電電流の臨界振幅Icdの関数であり、該振幅は前記スラスターの始動に対応する
ことを特徴とする請求項1記載のホール効果スラスター(1)。
【請求項3】
前記加熱装置(60)の温度Tdが、前記加熱装置(60)の電気抵抗率を測定することにより求められる
ことを特徴とする請求項1又は2記載のホール効果スラスター(1)。
【請求項4】
前記カソード(100)の加熱は、前記閾値温度Tsが達成された後、5から60秒で停止される、請求項1乃至3の何れか1項に記載のホール効果スラスター(1)。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のホール効果スラスター(1)を調整する方法であって、 (a)前記加熱装置(60)を用いることにより前記カソード(100)を加熱すると同時に、前記加熱装置(60)の温度Tdを測定するステップと、
(b)前記温度Tdが、前記スラスターの始動できる閾値温度Ts未満である間は前記カソード(100)の加熱を継続するステップと、
(c)前記閾値温度Tsに達した直後に前記加熱を止めるステップと、
を含む
ことを特徴とするホール効果スラスター(1)を調整する方法。
【請求項6】
前記閾値温度Tsは、前記カソード(100)によって放出される放電電流の臨界振幅Icdの関数であり、該振幅は前記スラスターの始動に対応する
ことを特徴とする請求項5記載のホール効果スラスター(1)を調整する方法。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のホール効果スラスター(1)を調整する方法であって、
(a)前記加熱装置(60)を用いることにより前記カソード(100)を加熱すると同時に、前記加熱装置(60)の温度Tdを測定するステップと、
(b)前記温度Tdが、前記スラスターの始動できる閾値温度Ts未満である間は前記カソード(100)の加熱を継続するステップであって、前記閾値温度Tsは、前記カソード(100)から放出される放電電流の臨界振幅Icdの関数であり、前記振幅は、前記スラスターの始動に対応し、
前記加熱装置(60)によって前記閾値温度Tsに達した後、前記カソード(100)によって放出される放電電流の振幅が前記放電電流の臨界振幅Icd未満である間、並びに前記放電チャンネル(50)中のガスの圧力Pgが臨界圧力Pc未満である間に、前記カソード(100)が継続して加熱され、且つガスが前記放電チャンネル(50)内に継続して注入される
ことを特徴とするホール効果スラスター(1)を調整する方法。
【請求項8】
前記加熱装置(60)によって前記閾値温度Tsに達した後、前記カソード(100)によって放出される放電電流の振幅が前記放電電流の臨界振幅Icd未満である間、並びに前記放電チャンネル(50)中のガスの圧力Pgが臨界圧力Pc未満である間に、前記放電電流の振幅が前記の臨界振幅Icdに等しくなり、前記スラスターが始動できるようになるまで、少なくとも1つの電圧パルスが前記カソード(100)に印加されることを特徴とする請求項6記載のホール効果スラスター(1)を調整する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下流側開放端部を備えた放電チャンネルと、放電チャンネルの外部に配置されるカソードと、放電チャンネルの上流側端部に配置され且つアノードを形成する、ガスの原子を放電チャンネルに注入するのに好適なインジェクタシステムと、カソードを加熱するのに好適な加熱装置とを有するホール効果スラスターに関する。
【背景技術】
【0002】
ホール効果スラスターは、例えば、宇宙推進の分野で使用されるスラスターであり、これは、燃料燃焼エンジンを用いて実施できる燃料よりも少ない燃料の質量を用いて宇宙の真空中で物体を推進させることができ、また、数千時間もの長い寿命を提示することに起因している。
【0003】
ホール効果スラスターは公知であるので、その構造及びその動作原理を以下に簡単に要約する。
【0004】
図2は、ホール効果スラスターの部分的に断面状にされた斜視図を示す。長手方向軸線Aに沿って延びる中央コア10の周りに中央磁気コイル12が配置される。環状形状の内側壁20は、中央磁気コイル12及び中央コア10を囲む。内側壁20は、環状形状の外側壁40により囲まれ、これら2つの壁がそれらの間に軸線Aに沿って延びて放電チャンネル50と呼ばれる環状チャンネルを定めるようになる。
【0005】
以下の説明において用語「内側」とは、軸線Aに近接した部分を示し、用語「外側」とは、軸線Aから離れた部分を示す。
【0006】
放電チャンネル50の上流側端部は、ガスの原子を放電チャンネル50内に注入し且つアノードを構成するインジェクタシステム30により閉鎖される。放電チャンネル50の下流側端部52は開放されている。
【0007】
複数の周辺磁気コイル14が外側壁40の周りに配置される。中央磁気コイル12及び周辺磁気コイル14は、放電チャンネル50の下流側端部52に対して最大近接での強度の半径方向磁界Bを生成する役割を果たす。
【0008】
中空カソード100が外側壁40の外部に配置され、カソード100とアノード(インジェクタシステム30)との間に電位差が確立される。中空カソード100は、放電チャンネル50の下流側端部52の近傍で電子を排出するように位置決めされる。
【0009】
放電チャンネル50内では、これらの電子は、カソード100とアノードとの間の電位差により生じる電界の影響を受けてインジェクタシステム30に向けて配向されるが、一部は、放電チャンネル50の下流側開口52の近傍で磁界Bにより捕捉されたままとなる。
【0010】
従って、電子は、放電チャンネル50においてその下流側開口52で円周方向の軌跡を描くようにされる。これらの電子は、放電チャンネル50内での上流側から下流側に流れる不活性ガスの原子(一般にキセノンXe)と衝突する結果として当該原子を電離させ、これによりイオンが発生する。更に、これらの電子は、アノード(チャンネル80の底部のインジェクタシステム30)から下流側開口52に向けてイオンを加速する軸方向電界Eを生成し、これらのイオンが放電チャンネル50からその下流側端部52を介して超高速で排出され、これによりスラスターの推進力が生じるようになる。
【0011】
スラスターを始動させるには、放電チャンネル50内の不活性ガス原子を電離するのに十分な臨界放電電流Icdを放電チャンネル50で確立するのに必要となる電子の量をカソードが放出することができる閾値温度まで、加熱装置60によりカソード100を予熱する必要がある。放電電流Icdが確立されることで、スラスターの始動が引き起こされる。
【0012】
一般に、この閾値温度に達すると、放電電流Icdを確立するのに十分である。
【0013】
特定の好ましくない動作条件下において放電電流Icdを確立するためには、閾値温度に到達した後、1つ又はそれ以上の電圧パルスをカソードに送信する必要がある。
【0014】
実際に、閾値温度は、スラスターの外の外部条件に応じて、詳細にはスラスターの外部の温度(例えば、−50℃から+70℃の範囲になる可能性がある)に応じて決まる。全ての条件下でスラスターの始動を確保するために、最高閾値温度、すなわち最も望ましくない外部条件に対応する温度に到達するのに十分長い固定の予熱持続時間が選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、ほとんどの状況下では、好ましい条件又はあまり好ましくない条件に対応して長すぎる持続時間の間予熱が継続される。この結果、高すぎる温度までカソードを無意味に過熱してカソードを損傷させ、これによりスラスターの寿命が短くなる。
【0016】
本発明は、これらの欠点を改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、本出願によりスラスターの動作条件とは無関係に予熱の持続時間が最適化され、その結果、スラスターの始動時にカソードの無意味な過熱が生じないホール効果スラスターを提供する。
【0018】
この目的は、ホール効果スラスターが更に、加熱装置の温度Tdを測定する測定手段と、この温度Tdがスラスターの始動可能な閾値温度Ts未満である間加熱装置が加熱を行い、閾値温度Tsに到達した直後に加熱を止めるように温度Tdを調整する調整回路とを備えることにより達成される。
【0019】
このように構成することによって、カソードは、スラスターが始動可能な温度に相当する閾値温度を超えて長い期間加熱されることがない。したがって、各スラスター動作条件において、カソードは、スラスターの始動に必要な時間長だけ加熱される。この結果、カソードへの損傷が最小限にされ、ホール効果スラスターの寿命が延びることになる。
【0020】
本発明はまた、下流側開放端部を有する放電チャンネルと、該放電チャンネルの外側に配置されるカソードと、ガスのイオンを放電チャンネルに注入するのに好適で且つ放電チャンネルの上流側端部に配置されてカソードを形成するインジェクタシステムと、カソードを加熱するのに好適な加熱装置とを含むホール効果スラスターを調整する方法を提供する。
【0021】
本発明によれば、本方法は、(a)加熱装置を用いることによりカソードを加熱すると同時に、加熱装置の温度Tdを測定するステップと、(b)温度Tdが、スラスターの始動できる閾値温度Ts未満である間はカソードの加熱を継続するステップと、(c)閾値温度Tsに達した直後に前記加熱を止めるステップと、を含む。
【0022】
本発明は、非限定的な例証として示した実施形態に以下の詳細な説明を読むと十分に理解され、その利点を明らかにすることができる。本明細書は添付図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の方法の一連のステップを示すフローチャートである。
図2】ホール効果スラスターの全体構造を示す断面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ホール効果スラスターの一般的な動作は、図2を参照して上記で説明した。
【0025】
さらに、本発明のホール効果スラスターにおいて、スラスターの動作は、以下で説明するようにスラスターを始動させるのに必要な長さだけカソードを加熱するよう最適化される。
【0026】
したがって、ホール効果スラスターは、加熱装置60の温度Tdを測定する測定手段70と、加熱装置60の温度Tdを調整する調整回路80とを含む。
【0027】
この調整回路80がどのように作動するかに関する説明を行う。
【0028】
図1は、ホール効果スラスターを始動する一連のステップの一例を示すフローチャートであり、これらのステップは、ホール効果スラスターを始動させる本発明のステップを含む。一連のステップは、簡易的なものであり、例えば、スラスターの始動中の誤った運転モードの識別、及び必要に応じてスラスターの停止の機能を果たす実施可能な機構を含んでいない。矩形は動作を示し、菱形は試験を示し、長円は状態を示す。試験の出口では、下向きの矢印が試験を満足したことを示し、左向きの矢印が試験を満足しなかったことを示す。
【0029】
始動中のステップは以下の通りとなる。
ステップS1:カソード加熱をオンにする
ステップS2:上流側ガスインジェクタバルブを開く
ステップS3:閾値温度Tsに達したか?
ステップS4:放電チャンネルに向けて下流側ガスインジェクタバルブを開く
ステップS5:臨界放電電流Icdに達したか?
ステップS6−1:スラスターの自己点火
ステップS7:カソード加熱を停止
ステップS6−2:放電チャンネルのガス圧力が臨界圧力Pcよりも高いか?
ステップS6−3:電圧パルスをカソードに送る
ステップS6−4:臨界放電電流Icdに達したか?
ステップS7:カソード加熱を停止又は低減
【0030】
最初に、加熱装置60がオンにされ、カソード100の加熱を開始するようにする(ステップS1=ステップa)。次いで、上流側ガスインジェクタバルブを開き(ステップS2)、エンクロージャ(図示せず)にガスを送給し、放電チャンネル50に注入できる状態にする。
【0031】
加熱装置60が加熱している間、カソード100の温度を連続的又は一定間隔で測定し、この温度が閾値温度Tsに達する時点を検出するようにする(ステップS3)。
【0032】
実際には、カソード温度は直接的には測定されない。カソードを加熱している加熱装置60の温度Tdを測定して、この温度を閾値温度Tsと比較しており、加熱装置60の温度Tdとカソード100の温度は実質的に等しいことが理解される。例えば、加熱装置60は、図2に示すようにカソード100の内部に組み込むことができる。
【0033】
加熱装置60はまた、カソード100を囲むことができる。
【0034】
加熱装置60の温度Tdは、測定手段70により求められる。
【0035】
例えば、加熱装置60の電気抵抗率を測定することができる。従って、測定手段70は、電気抵抗率を測定する手段である。加熱装置60がカソード100を加熱する加熱素子を含む場合、加熱素子の電気抵抗率が測定される。
【0036】
他の測定手段(例えば、加熱装置の温度を測定する機能を有する熱電対)も実施可能である。
【0037】
閾値温度Tsに到達すると(ステップb)、ガスを収容するエンクロージャと放電チャンネル50との間に配置される下流側インジェクタバルブが開放され、放電チャンネル50内にガスを注入するようにする(ステップS4)。
【0038】
特定の状況下では、この下流側インジェクタバルブは、ガスを限定流量でエンクロージャから放電チャンネル内に自動的に通過させることができるリミッターで置き換えられ、この流量は、エンクロージャ内の圧力の関数である。このような状況下では、加熱装置60の温度Tdの増大率が既知であるとすると、上流側インジェクタバルブは、加熱装置60の温度が閾値温度Tsに達したときにリミッターを通るガスの流量がスラスターを始動可能にするのに十分であるように計算される時間で開放される。
【0039】
閾値温度Tsは、ホール効果スラスターを始動できるようにするためにカソード100が通常到達すべき温度である。スラスターの好ましい動作条件下では、閾値温度Tsに達すると、当該カソード100から放出される放電電流(電子束)の振幅は、放電チャンネル50内に注入される不活性ガス原子が電離する放電電流の臨界振幅以上となり(ステップS5)、これによりスラスターの自動始動を生じさせる(スラスターの自己点火−ステップS6−1)。この第1の始動モードは図1に示される。
【0040】
従って、閾値温度Tsは、放電電流の臨界振幅Icdの関数である。
【0041】
閾値温度Tsは、カソードが作られる材料によって決まる。スラスターは、カソードが放電電流の臨界振幅Icd(すなわち、臨界電子束)を放出するときに始動する。所与の電圧下でカソードの単位面積当たりに放出される電子密度は、カソードが作られる材料の関数であり、また、カソードの形状の関数でもある。好ましい動作条件下では、六ホウ化ランタン(LaB6)で作られたカソードにおいて、特定の形状対して閾値温度Tsは約1700℃である。
【0042】
カソードが、タングステンマトリクスに含浸された酸化バリウムから作られる場合、閾値温度Tsは約1300℃である。
【0043】
特定の好ましくない条件下では、カソード100により放出される放電電流は、カソード温度100が閾値温度Tsよりも高くなったときに放電電流の臨界振幅Icdに到達していない。スラスターの始動を開始するために、カソード100からより多くの電子を抽出し、放電電流の臨界振幅Icdよりも小さくない振幅を有する放電電流に到達する(ステップS6−4)ように電圧パルスをカソード100に送ることが必要となり(ステップS6−3)、その結果、スラスターは自動的に始動するようになる(ステップS6−1)。この振幅が第1の電圧パルスの後に到達されない場合、更に電圧パルスが必要な場合には、振幅に到達するまで第2の電圧パルスが伝送される。
【0044】
それでもなお、このようなパルスの送信は、放電チャンネル50内のガスの圧力Pgが臨界圧力Pcよりも大きい(ステップS6−2)場合にだけ有効である。ホール効果スラスターとの関連及び公知の方法において、放電チャンネル中のガスの圧力Pgは、直ぐ上流側に配置され且つ放電チャンネル50に開放される(上記を参照)エンクロージャ中の圧力に関連付けられる。エンクロージャ中のこのガス圧力が直接測定される。
【0045】
従って、電圧パルスは、放電チャンネル50中のガス圧力に関するこの追加条件が満たされる間のみ、カソード100に送信される(ステップS6−3)。放電チャンネル50中のガスの圧力Pgが臨界圧力Pc未満のままである限り、カソード100は継続して加熱され、ガスは放電チャンネル50内に引き続き注入される。
【0046】
この状態は、臨界放電電流Icdに最終的に到達した(この場合、スラスターは自動的に点火する(ステップS6−1))ことに起因して、或いは、放電チャンネル50中のガスの圧力Pgが臨界圧力Pcよりも大きくなった(この場合、電圧パルスをカソード100に送信し始める)ことに起因して、終了する。この第2の動作モードが図1に示されている。
【0047】
全ての状況下(第1のモード又は第2のモード)で、カソード100が閾値温度Tsに達した直後にスラスターが始動すると、カソード100の加熱は、オフにされるか、又は低減される(ステップS7=ステップc)。したがって、カソード100は、無駄に加熱されず、よってカソードの寿命が延びることになる。例えば、スラスターは、閾値温度Tsに達して数十秒後に始動する。
【0048】
従って、カソード100の加熱は、閾値温度Tsに達した後の数秒から数十秒(例えば、5秒から300秒、好ましくは5秒から60秒)で停止する。
【0049】
第2のモードの特定の状況において、スラスター1が始動した後に最大で数分の間カソード100を継続して加熱することが必要となる場合がある。これは、放電電流がその臨界振幅Icdに達することなくスラスターが始動した状況、及び最終ガス供給が使用されていることに起因して上流側ガス圧力が低い状況である。その結果、カソード100の加熱は、これら最終ガス供給を有効に利用するために、ガス圧力が増大している間にスラスター1が始動した後数分間継続される。
【0050】
図1のフローチャートは、単に、ホール効果スラスターを本発明に従ってどのように作動させることができるかに関する一例に過ぎない。本発明の範囲及び技術的思想から逸脱することなく、スラスターのタイプに応じて始動シーケンスの変形形態を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ホール効果スラスター
10 中央コア
12 中央磁気コイル
14 周辺磁気コイル
20 内側壁
30 インジェクタシステム
40 外側壁
50 放電チャンネル
60 加熱装置
100 カソード
図1
図2