(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る車両運行管理システム100について説明する。
【0009】
まず、
図1及び
図2を参照して、車両運行管理システム100の構成について説明する。
【0010】
図1に示すように、車両運行管理システム100は、車両1に搭載されて車両1の走行データを収集する車載器10と、車両1の外部に設けられ、車載器10と通信して車両1の走行データを格納可能なサーバ20と、サーバ20と通信可能であり、車両1の外部に持ち出し可能な端末機30とを備える。車両運行管理システム100は、車載器10とサーバ20との通信を利用して車両1の運行を管理するいわゆるテレマティクスシステムである。
【0011】
図2に示すように、車載器10は、車両1の速度やエンジン回転数などの走行データを時系列的に収集するデジタルタコグラフ11と、デジタルタコグラフ11の情報を表示可能な表示部12と、運転者によって操作可能な操作ボタン13と、サーバ20と通信可能な通信モジュール14と、GPS(Global Positioning System)衛星から車両1の位置情報を取得するGPS受信機15とを有する。
【0012】
車載器10は、サーバ20が受信した端末機30の操作信号に基づいて車両1の作業状態の設定を実行可能である。作業状態とは、車両1が運転者によって現在どのような作業に供されている状態であるかを示すものである。作業状態は、例えば、運転者が車両1の運行を開始する始業状態,運転者が車両1の運行を終了した終業状態,及び運転者が休憩をとっている休憩状態などである。
【0013】
デジタルタコグラフ11は、車両1のECU(Electronic Control Unit)2から取得した車両1の速度やエンジン回転数などの走行データを収集して、内部メモリにデジタルデータとして記録する運行記録用計器である。デジタルタコグラフ11は、車両1の走行データとともに、GPS受信機15が取得した車両1の位置情報を内部メモリに記録する。
【0014】
表示部12は、デジタルタコグラフ11の設定に関する情報や、連続運行時間など車両1の運行に関する情報を、運転者に視認可能に表示するものである。
【0015】
操作ボタン13は、運転者によって操作可能に設けられるボタンである。車載器10では、操作ボタン13が設けられることで、運転者による車両1の作業状態の設定操作が可能である。
【0016】
運転者は、車両1の運行を開始する場合には、車両1に乗車してから車載器10の操作ボタン13を操作して始業操作を実行する。具体的には、運転者は、操作ボタン13を操作して自分のID(Identification Data)を入力する。車載器10は、始業操作が実行されると、作業状態が始業状態に設定されて車両1の走行データの収集を開始可能な状態となる。運転者は、車両1の運行を終了する場合には、車両1から降車する前に車載器10の操作ボタン13を操作して終業操作を実行する。車載器10は、終業操作が実行されると、作業状態が終業状態に設定されて車両1の走行データの収集を終了する。
【0017】
このように、通常、始業操作や終業操作などの作業状態の設定は、運転者が車載器10の操作ボタン13を操作することによって実行される。そのため、運転者が操作ボタン13の操作を忘れた場合には、走行データの収集の開始時間と終了時間とを特定できず、正確な走行データを収集できなくなるおそれがあった。そこで、車両運行管理システム100では、端末機30を用いた遠隔操作によって、車両1の作業状態を設定可能としている。この端末機30を用いた遠隔操作については、後で
図3から
図5を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
通信モジュール14は、携帯電話モジュールである。通信モジュール14は、携帯電話の電波を利用してサーバ20との間でデータを送受信する。通信モジュール14は、携帯電話モジュールではなく、PHS(Personal Handy−phone System)モジュールや無線LAN(Local Area Network)モジュールなどであってもよい。
【0019】
通信モジュール14は、デジタルタコグラフ11が収集した車両1の走行データの他に、車両1の燃費情報もサーバ20に送信する。また、通信モジュール14は、車載器10のソフトウェアをアップデートするためのプログラムなどをサーバ20から受信することも可能である。
【0020】
GPS受信機15は、GPS衛星から取得した車両1の位置情報をデジタルタコグラフ11に送信する。GPS受信機15として、車両1に搭載されるナビゲーションシステムのGPSアンテナを共用してもよい。
【0021】
サーバ20は、車載器10と無線通信可能である。サーバ20には、運転者の操作に応じて端末機30から出力される操作信号が送信される。サーバ20には、車両1の作業状態が終業状態に設定されたときに、車載器10に記録された車両1の走行データや燃費情報が送信される。サーバ20は、車載器10から受信した車両1の走行データや燃費情報を格納する。
【0022】
サーバ20には、複数の車両1の走行データや燃費情報などが格納される。そのため、サーバ20では、複数の車両1の燃費情報に基づいた燃費ランキングや、エコ運転の度合いを評価するエコスコアなど、他の車両1と比較した相対的なデータを作成可能である。
【0023】
端末機30は、運転者が持ち運び可能な携帯電話などの情報通信端末である。端末機30は、サーバ20と無線通信可能である。端末機30は、運転者によって操作されると、操作に応じた操作信号をサーバ20に出力する。情報通信端末に代えて、事務所に設置されたパソコンを端末機30として用いてもよい。
【0024】
以下、
図3から
図5を参照して、端末機30を利用した遠隔操作による車両1の作業状態の設定について説明する。
【0025】
まず、
図3を参照して、車両1の作業状態を始業状態に設定する始業操作について説明する。
【0026】
図3の処理は、運転者が車両1に乗車する前に、例えば、事務所における始業点呼時に端末機30を操作して実行するものである。
【0027】
まず、ステップ301において、運転者は、端末機30を操作して、サーバ20にログインする。このとき、運転者は、端末機30にてIDとパスワードとを入力してサーバ20に送信する。サーバ20は、端末機30から受信したIDとパスワードとから運転者を特定する。
【0028】
ステップ302では、サーバ20は、その運転者の前回運行時の燃費情報に基づく燃費ランキングやエコスコアなどを端末機30に送信する。ステップ303では、受信した燃費ランキングやエコスコアなどが端末機30に表示される。これにより、運転者は、前回運行時の自分の運転の評価を知ることができる。このとき、端末機30には、入力したIDに基づく運転者の氏名が表示される。よって、運転者が誤ったIDを入力することが防止される。
【0029】
ステップ304では、サーバ20は、IDとパスワードとから特定された運転者のデータに基づいて、その運転者が所属する事業所が所有する車両の情報を端末機30に送信する。端末機30には、運転者が乗車可能な車両一覧が表示される。
【0030】
ステップ305において、運転者は、車両一覧の中からその日に乗車する車両1を選択する。そして、ステップ306において、運転者は、運転者のIDと運転者が乗車する車両1の車両番号とを端末機30に入力して、遠隔始業操作を実行する。
【0031】
ステップ307では、端末機30は、ステップ306にて入力された運転者のIDと運転者が乗車する車両1の車両番号とをサーバ20に送信する。そして、ステップ308では、サーバ20は、端末機30による遠隔始業操作を受けて、車載器10に起動指示を送信する。これにより、ステップ309にて、車載器10の遠隔起動が実行される。
【0032】
そして、車載器10の遠隔起動が開始されてから実際に起動するまで待った後、ステップ310では、サーバ20は、車両1に運転者のIDを送信する。これにより、ステップ311では、車載器10の遠隔始業が実行される。ステップ312では、車載器10は、遠隔始業による始業イベントをサーバ20に送信する。よって、従来は運転者が車両1に乗車してから実行していた始業操作を、運転者が端末機30を操作することによって、車両1に乗車する前に実行することができる。
【0033】
このように、端末機30では、車両1の運行を開始する始業操作を実行可能であり、車載器10は、端末機30にて始業操作が実行された場合には、作業状態が始業状態に設定されて車両1の走行データの収集を開始可能な状態となる。
【0034】
以上のように、車両運行管理システム100では、車両1の外部に持ち出し可能な端末機30によって車両1の作業状態を始業状態に設定可能である。そのため、運転者が車両1に乗車する前に、端末機30を使用して車両1の作業状態を始業状態に設定することができる。したがって、車両1に乗車していなくても作業状態を始業状態に設定することが可能であるため、車両1の作業状態の設定忘れを防止することができる。
【0035】
また、運転者が車両1に乗車する前に始業操作を完了できるため、運転者は、車両1に乗車してからすぐに運行を開始することが可能である。したがって、運転者が車両1に乗車してから運行を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0036】
次に、
図4を参照して、車両1の作業状態を休憩状態に設定する休憩操作について説明する。
【0037】
まず、ステップ401において、運転者は、車両1のイグニッションスイッチをオフに操作する。
図4における処理は、運転者が、作業状態を始業状態から変更せずにイグニッションスイッチをオフに操作した場合に実行される。即ち、
図4における処理は、運転者が車載器10の操作ボタン13を操作して作業状態を休憩状態に設定してからイグニッションスイッチをオフに操作した場合には実行されない。
【0038】
ステップ402では、車載器10は、サーバ20に対して作業状態を設定するように促す要求を送信する。そして、ステップ403では、サーバ20は、端末機30に、作業状態の設定の変更を促す通知を行う。具体的には、サーバ20は、端末機30に、作業状態の設定の変更を促す旨のメールを送信する。
【0039】
このように、車載器10は、作業状態の設定を変更する操作が行われずに車両1のイグニッションスイッチがオフに切り換えられた場合には、サーバ20を介して端末機30に、作業状態の設定の変更を促す通知を行う。
【0040】
ステップ404において、運転者は、ステップ403にてサーバ20から送られてきたメールを見て、端末機30を操作してサーバ20にログインする。そして、ステップ405において、運転者は、端末機30を操作して遠隔作業状態設定操作を実行する。具体的には、運転者が休憩をとる場合には、作業状態を休憩状態に設定する操作を実行する。
【0041】
ステップ406では、端末機30は、サーバ20に作業状態を休憩状態に設定する指示を送信する。そして、ステップ407では、サーバ20は、車載器10に作業状態を休憩状態に設定する指示を送信する。これにより、ステップ408にて、車載器10の遠隔作業状態設定が実行される。
【0042】
ステップ409では、車載器10は、遠隔作業状態設定による作業イベントをサーバ20に送信する。このように、端末機30では、運転者が休憩する場合の休憩操作を実行可能であり、車載器10は、端末機30にて休憩操作が実行された場合には、作業状態が休憩状態に設定されて休憩時間を計測する。
【0043】
以上のように、車両運行管理システム100では、車両1の外部に持ち出し可能な端末機30によって車両1の作業状態を休憩状態に設定可能である。そのため、運転者が作業状態を休憩状態に設定する前に車両1から降車した場合にも、端末機30を使用して車両1の作業状態を休憩状態に設定することができる。したがって、車両1に乗車していなくても作業状態を休憩状態に設定することが可能であるため、車両1の作業状態の設定忘れを防止することができる。
【0044】
また、運転者が車両1の作業状態を休憩状態に変更せずに車両1のイグニッションスイッチをオフにした場合には、車載器10は、サーバ20を介して端末機30に、作業状態の設定の変更を促すメールを送信する。よって、休憩時における車両の作業状態の設定忘れを防止することができる。
【0045】
ステップ406にて端末機30からサーバ20に作業状態設定指示が送信されると、ステップ410では、車両1のそれまでの連続走行時間を端末機30に送信する。ステップ411では、端末機30に連続走行時間が表示される。
【0046】
これにより、運転者は、端末機30に表示された連続走行時間を見て、必要な休憩時間を知ることができる。よって、運転者が適切なタイミングで必要な時間だけ休憩を取ることができるようになり、安全運転が促進される。
【0047】
ステップ409にて車載器10からサーバ20に作業イベントが送信されると、ステップ412では、サーバ20は、そこまでの運行時の燃費情報に基づく燃費ランキングやエコスコアなどを端末機30に送信する。そして、ステップ413では、エコスコアの履歴が端末機30に表示される。
【0048】
このように、端末機30では、作業状態の設定の変更を実行した場合に、車両1の燃費ランキングやエコスコアを確認可能である。よって、運転者が自分の運転の評価を知ることができるため、省燃費運転が促進される。
【0049】
次に、
図5を参照して、車両1の作業状態を終業状態に設定する終業操作について説明する。
【0050】
図5の処理は、運転者が車両1から降車した後に、例えば、事務所における終業点呼時に端末機30を操作して実行するものである。
【0051】
まず、ステップ501において、運転者は、車両1のイグニッションスイッチをオフに操作する。
図5における処理は、運転者が、作業状態を始業状態から変更せずにイグニッションスイッチをオフに操作した場合に実行される。即ち、
図5における処理は、運転者が車載器10の操作ボタン13を操作して作業状態を終業状態に設定してからイグニッションスイッチをオフに操作した場合には実行されない。
【0052】
ステップ502では、車載器10は、サーバ20に対して作業状態を設定するように促す要求を送信する。そして、ステップ503では、サーバ20は、端末機30に、作業状態の設定の変更を促す通知を行う。具体的には、サーバ20は、端末機30に、作業状態の設定の変更を促す旨のメールを送信する。
【0053】
このように、車載器10は、作業状態の設定を変更する操作が行われずに車両1のイグニッションスイッチがオフに切り換えられた場合には、サーバ20を介して端末機30に、作業状態の設定の変更を促す通知を行う。
【0054】
ステップ504において、運転者は、ステップ503にてサーバ20から送られてきたメールを見て、端末機30を操作してサーバ20にログインする。そして、ステップ505において、運転者は、端末機30を操作して遠隔終業操作を実行する。
【0055】
ステップ506では、端末機30は、サーバ20に作業状態を終業状態に設定する指示を送信する。そして、ステップ507では、サーバ20は、車載器10に作業状態を終業状態に設定する指示を送信する。これにより、ステップ508にて、車載器10の遠隔終業操作が実行される。
【0056】
ステップ509では、車載器10は、遠隔終業操作による作業イベントをサーバ20に送信する。このとき、車載器10は、始業から終業までの車両1の走行データを位置情報とともにサーバ20に送信する。このように、端末機30では、車両1の運行を終了する終業操作を実行可能であり、車載器10は、端末機30にて終業操作が実行された場合には、作業状態が終業状態に設定されて車両1の走行データの収集を終了する。
【0057】
以上のように、車両運行管理システム100では、車両1の外部に持ち出し可能な端末機30によって車両1の作業状態を終業状態に設定可能である。そのため、運転者が作業状態を終業状態に設定する前に車両1から降車した場合にも、端末機30を使用して車両1の作業状態を終業状態に設定することができる。したがって、車両1に乗車していなくても作業状態を終業状態に設定することが可能であるため、車両1の作業状態の設定忘れを防止することができる。
【0058】
また、運転者が車両1の作業状態を終業状態に変更せずに車両1のイグニッションスイッチをオフにした場合には、車載器10は、サーバ20を介して端末機30に、作業状態の設定の変更を促すメールを送信する。よって、終業時における車両の作業状態の設定忘れを防止することができる。
【0059】
ステップ509にて車載器10からサーバ20に作業イベントが送信されると、ステップ510では、サーバ20は、その日の始業から終業までの燃費情報に基づく燃費ランキングやエコスコアなどを端末機30に送信する。そして、ステップ511では、エコスコアの履歴が端末機30に表示される。このように、端末機30では、作業状態の設定の変更を実行した場合に、車両1の燃費ランキングやエコスコアを確認可能である。これにより、運転者は、その日の始業から終業までの自分の運転の評価を知ることができる。
【0060】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0061】
車両運行管理システム100では、車両1の外部に持ち出し可能な端末機30によって車両1の作業状態を設定可能である。そのため、運転者が車両1に乗車する前や車両1から降車した後であっても、端末機30を使用して車両1の作業状態を設定することができる。したがって、車両1に乗車していなくても作業状態を設定することが可能であるため、車両の作業状態の設定忘れを防止することができる。
【0062】
また、運転者が車両1の作業状態を変更せずに車両1のイグニッションスイッチをオフにした場合には、車載器10は、サーバ20を介して端末機30に、作業状態の設定の変更を促すメールを送信する。よって、休憩時や終業時における車両の作業状態の設定忘れを防止することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0064】
この発明の実施例が包含する排他的性質又は特徴は、以下のようにクレームされる。