【文献】
Gazzetta Chimica Italiana,1955年,Vol.85,p.1438-1440,+Coverpa
【文献】
Bulletin de la Societe Chimique de France,1966年,Vol.11,p.3612-3617
【文献】
CAPLUS(STN)[online],1984年 5月12日,AN 1974:535415,Doklady - Akademiya Nauk Azerbaidzhanskoi SSR, 1974, Vol.30(3), p.42-44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<酸拡散制御剤>
当該酸拡散制御剤(以下、「酸拡散制御剤(I)」ともいう)は、上記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう)からなる。酸拡散制御剤(I)は、化合物(I)からなることで、これを含有する感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れる。酸拡散制御剤(I)は、化合物(I)を1種又は2種以上含んでいてもよい。酸拡散制御剤(I)が化合物(I)からなることで、上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば、以下のように推察することができる。
化合物(I)は、適度な距離を隔てた2個の窒素原子を有しており、このうち1個は酸と強く相互作用することができ、また、他の1個は隣接する−SO
2−又は−CO−と共にスルホンアミド基又はカルボン酸アミド基を形成しており、この基により、感放射線性樹脂組成物に含有される重合体と適度に相互作用することができる。化合物(I)は、このような特定構造を有するので、従来の窒素原子含有化合物に比べて、化合物(I)はレジスト膜を構成する重合体等との親和性が高くなり、レジスト膜中での偏在が抑制される。また、化合物(I)のレジスト膜中における拡散が適度に抑制されると共にレジスト膜からの昇華が低減される。その結果、化合物(I)を含有する感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れる。
【0016】
<化合物(I)>
化合物(I)は、下記式(1)で表される。
【0018】
上記式(1)中、
R
1は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基であるか、又はR
2若しくはR
3と結合して環員数3〜30の環構造の一部を形成している。
R
2は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基であるか、又はR
1と結合して環員数3〜30の環構造の一部を形成している。
R
3は、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基であるか、又はR
1若しくはR
4と結合して環員数3〜30の環構造の一部を形成している。
R
4は、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基であるか、又はR
3と結合して環員数3〜30の環構造の一部を形成している。
nは、1又は2である。nが2の場合、複数のR
3及びR
4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基であるか、又はR
5及びR
6が互いに結合してこれらが結合している窒素原子と共に環員数3〜30の環構造を形成している。
Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
Xは、単結合又は炭素数1〜20の2価の有機基である。
Yは、−CO−又は−SO
2−である。
【0019】
上記R
1及びR
2で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0020】
上記鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。
これらの中で、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0021】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、1−i−プロピルシクロペンタン−1−イル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、等の単環のシクロアルキル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−i−プロピルアダマンタン−2−イル基等の多環のシクロアルキル基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基などが挙げられる。
これらの中で、シクロアルキル基が好ましく、単環のシクロアルキル基がより好ましく、シクロヘキシル基がさらに好ましい。
【0022】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、メチルアントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらの中で、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0023】
上記R
1及びR
2で表される上記炭化水素基の炭素−炭素間に−O−を含む基としては、例えば、R
α−O−R
β−、R
α−O−R
β−O−R
γ−等が挙げられる。R
αは、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。R
β及びR
γは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。上記R
α及びR
β、R
β及びR
γ並びに/又はR
α及びR
γが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
具体的には、
メトキシメチル基、メトキシエチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、エトキシシクロヘキシル基、フェノキシフェニル基、フェノキシベンジル基、ナフチルオキシメチル基等のオキシ炭化水素基で置換された炭化水素基;
1,3−ジオキサ−2,2−ジメチルシクロペンタン−4−イルメチル基、1,3−ジオキサシクロペンタン−4−イルメチル基等の環状アセタール環(環状ケタール環を含む)を有する基;
7−(1,3−ジオキサ−2,2−ジメチルシクロペンタン−4−イル)−3,3−ジメチル−2,4,8−トリオキサビシクロ[3,3,0]オクタン−6−イル基、7−(1,3−ジオキサ−スピロ[アダマンタン−2,2’]シクロペンタン−4−イル)−スピロ[アダマンタン−3,3’]−2,4,8−トリオキサビシクロ[3,3,0]オクタン−6−イル基等のオキサシクロアルカン構造及び環状アセタール環を有する基等が挙げられる。
【0024】
上記R
1及びR
2で表される上記炭化水素基の炭素−炭素間に−COO−を含む基としては、例えば、R
α−COO−R
β−、R
α−OCO−R
β−、R
α−COO−R
β−COO−R
γ−、R
α−COO−R
β−OCO−R
γ−、R
α−OCO−R
β−OCO−R
γ−、R
α−OCO−R
β−COO−R
γ−等が挙げられる。R
αは、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。R
β及びR
γは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。上記R
α及びR
β、R
β及びR
γ並びに/又はR
α及びR
γが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
具体的には、
メトキシカルボニルメチル基、メチルカルボニルオキシメチル基、シクロヘキシルカルボニルオキシメチル基、エトキシカルボニルシクロヘキシル基、フェノキシカルボニルフェニル基、フェニルカルボニルオキシベンジル基、ナフチルオキシカルボニルメチル基等のオキシカルボニル炭化水素基又はカルボニルオキシ炭化水素基で置換された炭化水素基;
ブチロラクトン−イル基、バレロラクトン−イル基、カプロラクトン−イル基、ノルボルナンラクトン−イル基、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.1
3,8]ウンデカン−イル基等のラクトン構造を有する基;
ノルボルナンラクトン−イルオキシカルボニルメチル基、ブチロラクトン−イルオキシカルボニルメチル基等のラクトン−イルオキシカルボニルアルキル基等のラクトン構造を含む基を有するエステル基含有鎖状基等が挙げられる。
【0025】
上記R
1及びR
2で表される上記炭化水素基の炭素−炭素間に−SO
2O−を含む基としては、例えば、R
α−SO
2O−R
β−、R
α−OSO
2−R
β−、R
α−SO
2O−R
β−SO
2O−R
γ−、R
α−SO
2O−R
β−OSO
2−R
γ−、R
α−OSO
2−R
β−OSO
2−R
γ−、R
α−OSO
2−R
β−SO
2O−R
γ−等が挙げられる。R
αは、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。R
β及びR
γは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。上記R
α及びR
β、R
β及びR
γ並びに/又はR
α及びR
γが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
具体的には、
メトキシスルホニルメチル基、メチルスルホニルオキシメチル基、シクロヘキシルスルホニルオキシメチル基、エトキシスルホニルシクロヘキシル基、フェノキシスルホニルフェニル基、フェニルスルホニルオキシベンジル基、ナフチルオキシスルホニルメチル基等のオキシスルホニル炭化水素基又はスルホニルオキシ炭化水素基で置換された炭化水素基;
ブチロスルトン−イル基、バレロスルトン−イル基、ノルボルナンスルトン−イル基等のスルトン構造を有する基等が挙げられる。
【0026】
上記R
1及びR
2で表される上記炭化水素基の炭素−炭素間に−SO
2NR−を含む基としては、例えば、R
α−SO
2NR−R
β−、R
α−NRSO
2−R
β−、R
α−SO
2NR−R
β−SO
2NR−R
γ−、R
α−SO
2NR−R
β−NRSO
2−R
γ−、R
α−NRSO
2−R
β−NRSO
2−R
γ−、R
α−NRSO
2−R
β−SO
2NR−R
γ−等が挙げられる。R
αは、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。R
β及びR
γは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。Rは、炭素数1〜10の炭化水素基である。上記R
α及びR
β、R
β及びR
γ並びに/又はR
α及びR
γが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
具体的には、
メチルアミノスルホニルメチル基、メチルスルホニルアミノメチル基、シクロヘキシルスルホニルアミノメチル基、エチルアミノスルホニルシクロヘキシル基、フェニルアミノスルホニルフェニル基、フェニルスルホニルアミノベンジル基、ナフチルアミノスルホニルメチル基のアミノスルホニル炭化水素基又はスルホニルアミノ炭化水素基で置換された炭化水素基;
プロパンスルタム−イル基、ブタンスルタム−イル基、ノルボルナンスルタム−イル基等のスルタム構造を有する基等が挙げられる。
【0027】
上記R
1及びR
2で表される上記炭化水素基の炭素−炭素間に−CONR−を含む基としては、例えば、R
α−CONR−R
β−、R
α−NRCO−R
β−、R
α−CONR−R
β−CONR−R
γ−、R
α−CONR−R
β−NRCO−R
γ−、R
α−NRCO−R
β−NRCO−R
γ−、R
α−NRCO−R
β−CONR−R
γ−等が挙げられる。R
αは、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。R
β及びR
γは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。Rは、炭素数1〜10の炭化水素基である。上記R
α及びR
β、R
β及びR
γ並びに/又はR
α及びR
γが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
具体的には、
メチルアミノカルボニルメチル基、メチルカルボニルアミノメチル基、シクロヘキシルカルボニルアミノメチル基、エチルアミノカルボニルシクロヘキシル基、フェニルアミノカルボニルフェニル基、フェニルカルボニルアミノベンジル基、ナフチルアミノカルボニルメチル基等のアミノカルボニル炭化水素基又はカルボニルアミノ炭化水素基で置換された炭化水素基;
ブチロラクタム−イル基、バレロラクタム−イル基、カプロラクタム−イル基、ノルボルナンラクタム−イル基等のラクタム構造を有する基等が挙げられる。
【0028】
上記R
1が一部となりR
2と結合してこれらが結合している窒素原子と共に形成する環構造としては、例えば、
アザシクロプロパン構造、アザシクロブタン構造、アザシクロペンタン構造(ピロリジン構造)、アザシクロヘキサン構造(ピペリジン構造)、アザシクロヘプタン構造、アザシクロオクタン構造、アザシクロデカン構造等の単環のアザシクロアルカン構造;
アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン構造、アザビシクロ[2.2.2]オクタン構造、アザトリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン構造等の多環のアザシクロアルカン構造;
アザオキサシクロプロパン構造、アザオキサシクロヘキサン構造(モルホリン構造を含む)等のアザオキサシクロアルカン構造等が挙げられる。
これらの中で、単環のアザシクロアルカン構造、アザオキサシクロアルカン構造が好ましく、アザシクロペンタン構造、アザシクロヘキサン構造、アザオキサシクロヘキサン構造がより好ましく、アザシクロヘキサン構造、1,4−アザオキサシクロヘキサン構造(モルホリン構造)がさらに好ましく、1,4−アザオキサシクロヘキサン構造が特に好ましい。
【0029】
上記R
1が一部となりR
3と結合して、R
1が結合している窒素原子、R
3が結合している炭素原子及びYと共に形成する環員数3〜30の環構造としては、例えば、ラクタム環構造、スルタム環構造、イミド環構造、スルホンイミド環構造等が挙げられる。上記R
1が一部となりR
3と結合してR
1が結合している窒素原子、R
3が結合している炭素原子及びYと共に形成する環構造の環員数としては、5〜30が好ましく、5〜20がより好ましい。
これらの中で、ラクタム環構造、スルタム環構造、イミド環構造が好ましい。
【0030】
上記R
1としては、アルキル基であるか、R
1がR
3と結合して環構造を形成していることが好ましく、R
1がR
3に結合して環構造を形成していることがより好ましく、R
1がR
3に結合してラクタム環構造、スルタム環構造又はイミド環構造を形成していることがさらに好ましく、R
1がR
3と結合して環員数5〜20のラクタム環構造、環員数5〜20のスルタム環構造又は環員数5〜20のイミド環構造を形成していることが特に好ましく、R
1がR
3と結合して5員環ラクタム環構造、5員環スルタム環構造、5員環イミド構造を形成していることがさらに特に好ましい。
【0031】
上記R
2としては、炭化水素基であるか、R
2がR
1と結合して環構造を形成していることが好ましく、脂環式炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基であるか、又はR
2がR
1と結合して環員数5〜20のアザオキサシクロアルカン構造を形成していることがより好ましく、シクロアルキル基若しくはアリール基であるか、又はR
2がR
1と結合してアザオキサシクロヘキサン構造を形成していることがさらに好ましく、シクロヘキシル基若しくはフェニル基であるか、又はR
2がR
1と結合して1,4−アザオキサシクロヘキサン構造(モルホリン構造)を形成していることが特に好ましい。
【0032】
上記R
3及びR
4で表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば上記R
1及びR
2として例示した炭化水素基のうち、炭素数1〜10のもの等が挙げられる。
【0033】
上記R
3及びR
4で表される上記炭化水素基の炭素−炭素間に−O−、−COO−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基としては、例えば、上記R
1及びR
2として例示した同様の基のうち、炭化水素基として炭素数1〜10のものを含む基等が挙げられる。
【0034】
上記R
3が一部となりR
4と結合してこれらが結合している炭素原子と共に形成する環員数3〜30の環構造としては、例えば、
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造等のシクロアルカン構造;
オキサシクロブタン構造、オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘキサン構造、オキサノルボルナン構造、オキサアダマンタン構造等のオキサシクロアルカン構造等が挙げられる。上記R
3が一部となりR
4と結合してこれらが結合している炭素原子と共に形成する環構造の環員数としては、5〜30が好ましく、5〜20がより好ましい。
【0035】
上記R
3としては、アルキル基であるか、又はR
3がR
1と結合してR
1が結合している窒素原子、R
3が結合している炭素原子及びYと共に環員数3〜30の環構造を形成していることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であるか、又はR
3がR
1と結合して環員数5〜20のイミド環構造、環員数5〜20のラクタム環構造若しくは環員数5〜20のスルタム環構造を形成していることがより好ましく、メチル基であるか、又はR
3がR
1と結合して5員環のイミド環構造、5員環のラクタム環構造若しくは5員環のスルタム環構造を形成していることがさらに好ましい。
【0036】
上記R
4としては、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0038】
上記R
5及びR
6で表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば、上記R
3及びR
4として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0039】
上記R
5及びR
6で表される上記炭化水素基の炭素−炭素間に−O−、−COO−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基としては、例えば、上記R
3及びR
4として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0040】
上記R
5とR
6とが互いに結合してこれらが結合している窒素原子と共に形成する環員数3〜30の環構造としては、例えば、上記R
1とR
2とが形成する同様の環構造等が挙げられる。R
5とR
6とが互いに結合してこれらが結合している窒素原子と共に形成する環構造の環員数としては、5〜30が好ましく、5〜20がより好ましい。
【0041】
上記R
5及びR
6としては、アルキル基であるか、又はR
5とR
6とが互いに結合してこれらが結合している窒素原子と共に環構造を形成していることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であるか、又はR
5とR
6とが1,4−アザシクロヘキサン構造(ピペリジン構造)を形成していることがより好ましく、エチル基であるか、又はR
5とR
6とがN−ピペリジル基、N−デカヒドロキノリニル基を形成していることがさらに好ましい。
【0042】
上記Xで表される炭素数1〜20の2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の炭化水素基、上記炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部を置換基で置換した置換炭化水素基、上記炭化水素基及び上記置換炭化水素基の炭素−炭素間にヘテロ原子を含む基を有する2価の基等が挙げられる。
【0043】
上記炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、上記R
1及びR
2として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0044】
上記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシロキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0045】
上記炭素−炭素間に含まれていてもよいヘテロ原子を含む基としては、例えば、−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−CS−からなる群より選ばれる1種又は2種以上を組み合わせた基等が挙げられる。R’は、炭素数1〜10の炭化水素基である。
【0046】
上記Xとしては、単結合、2価の炭化水素基が好ましく、単結合、アルカンジイル基が好ましく、単結合、メタンジイル基がさらに好ましい。
【0047】
上記R
1〜R
6の−SO
2NR−及び−CONR−におけるRで表される炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、上記R
1及びR
2として例示した炭化水素基のうち炭素数1〜10のもの等が挙げられる。
【0048】
化合物(I)の好適なものとしては、下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」ともいう)が挙げられる。化合物(2)は、化合物(1)において、nが2であり、R
1がXに隣接する炭素原子に結合しているR
3と結合して、−(Z)
m−R
7(−R
8)
k−となり、Xに隣接する炭素原子、Yに隣接する炭素原子、Y及びR
2が結合する窒素原子と共に環構造を形成した構造を有する。化合物(2)は、マレイミド化合物、ジデヒドロラクタム(α,β−不飽和ラクタム)化合物、ジデヒドロスルタム(α,β-不飽和スルタム)化合物等の窒素原子及び不飽和結合を含有する環状化合物を用いて合成することができる。
【0050】
上記式(2)中、
R
2は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、又はこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基である。
R
3a、R
4a及びR
4bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、又はこれらの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基である。
R
7は、(k+2)価の炭化水素基である。
kは、0〜6の整数である。
pは、0又は1である。
R
8は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、又はこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基である。
kが2以上の場合、複数のR
8は同一でも異なっていてもよい。
Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
Zは、−CO−又は−SO
2−である。
mは、0又は1である。
R
5、R
6、X及びYは、上記式(1)と同義である。
【0051】
上記R
2で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基、及びこの基の炭素−炭素間に−O−、−COO−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基としては、例えば、上記式(1)におけるR
2として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0052】
上記R
3a、R
4a及びR
4bで表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基、及びこの基の炭素−炭素間に−O−、−COO−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基としては、例えば、上記式(1)におけるR
4として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0053】
上記R
7で表される(k+2)価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1及びR
2として例示した炭素数1〜20の1価の炭化水素基から(k+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0054】
kとしては、0〜4の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0055】
R
7としては、(k+2)価の鎖状炭化水素基が好ましく、(k+2)価の鎖状飽和炭化水素基がより好ましく、アルカンジイル基がさらに好ましく、メタンジイル基が特に好ましい。
【0056】
pとしては、化合物(2)の合成容易性及び原料入手容易性の観点からは、0が好ましい。
【0057】
上記R
8で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基、及びこの基の炭素−炭素間に−O−、−COO−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0058】
化合物(I)としては、例えば、下記式(i−1)〜(i−18)で表される化合物(以下、「化合物(i−1)〜(i−18)」ともいう)等が挙げられる。
【0060】
これらの中で、化合物(I)としては、化合物(i−1)〜(i−7)が好ましい。
【0061】
上記化合物(I)は、上記式(1)においてnが2、Xが単結合であり、R
1とR
3とが環構造を形成していない場合の下記化合物(1’)、及び上記式(2)においてXが単結合であり、Yに隣接する炭素原子に結合しているR
3aが水素原子である場合の下記化合物(2’)については、例えば、下記反応スキームに従い、合成することができる。上記方法により、化合物(I)を簡便かつ収率よく合成することができる。これら以外の化合物(I)についても、公知の方法を用いて合成することができる。
【0063】
上記式(i−a)、式(i−b)及び式(1’)中、
R
1は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基であるか、又はR
2と結合して環員数3〜30の環構造の一部を形成している。
R
2は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基であるか、又はR
1と結合して環員数3〜30の環構造の一部を形成している。
R
3a、R
3b及びR
4bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基である。
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基であるか、又はR
5及びR
6が互いに結合してこれらが結合している窒素原子と共に環員数3〜30の環構造を形成している。
Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
Yは、−CO−又は−SO
2−である。)
【0064】
上記式(i−a’)、式(i−b)及び式(2’)中、
R
2は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、又はこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基である。
R
4a及びR
4bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、又はこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基である。
R
7は、(k+2)価の炭化水素基である。
kは、0〜6の整数である。
pは、0又は1である。
R
8は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、又はこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基である。
kが2以上の場合、複数のR
8は同一でも異なっていてもよい。
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、若しくはこの基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
2NR−及び−CONR−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基であるか、又はR
5及びR
6が互いに結合してこれらが結合している窒素原子と共に環構造を形成している。
Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
Yは、−CO−又は−SO
2−である。
Zは、−CO−又は−SO
2−である。
mは、0又は1である。
【0065】
上記式(i−a)で表されるアクリルアミド化合物又はビニルスルホンアミド化合物と、上記(i−b)で表されるアミン化合物とを、トルエン等の溶媒中で反応させることにより、上記式(1’)で表される化合物が得られる。
また、上記式(i−a’)で表される炭素−炭素二重結合と−CO−又は−SO
2−とを含む環状化合物と、上記式(i−b)で表されるアミン化合物とを、トルエン等の溶媒中で反応させることにより、上記式(2’)で表される化合物が得られる。
【0066】
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]酸解離性基を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)、[B]酸発生体及び[C]当該酸拡散制御剤(以下、「[C]酸拡散制御剤」ともいう)を含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、これらの成分以外にも、好適成分として、[D][C]酸拡散制御剤の酸拡散制御剤(以下、「[D]他の酸拡散制御剤」ともいう)、[E]フッ素原子含有重合体及び[F]溶媒をさらに含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
【0067】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を有する重合体である。[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)以外にも、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位(II)及び/又は極性基を有する構造単位(III)をさらに有していることが好ましく、これらの構造単位以外のその他の構造単位をさらに有していてもよい。[A]重合体は、各構造単位をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0068】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。「酸解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の酸性基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。
【0069】
構造単位(I)としては、例えば、下記式(3)で表される構造単位(I−1)等が挙げられる。
【0072】
上記式(3)中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
pは、上記式(p)で表される1価の酸解離性基である。
上記式(p)中、R
p1、R
p2及びR
p3は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20のシクロアルキル基である。但し、R
p2及びR
p3が互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20のシクロアルカンジイル基を形成してもよい。
【0073】
構造単位(I−1)としては、下記式(3−1)〜(3−4)で表される構造単位が好ましい。
【0075】
上記式(3−1)〜(3−4)中、R
A、R
p1、R
p2及びR
p3は上記式(3)と同義である。i及びjは、それぞれ独立して、1〜4の整数である。
【0076】
上記式(3)及び上記式(3−1)〜(3−4)で表される構造単位としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0079】
上記式中、R
Aは、上記式(3)と同義である。
【0080】
構造単位(I)としては、上記式(3−1)で表される構造単位、式(3−2)で表される構造単位が好ましく、1−アルキル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましく、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい。
【0081】
構造単位(I)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜100モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度を向上させることができる。構造単位(I)の含有割合が上記下限未満だと、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0082】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(II)をさらに有することで、現像液への溶解性を調整することができる。また、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
【0083】
構造単位(II)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0087】
上記式中、R
L1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0088】
構造単位(II)としては、これらの中で、ラクトン構造を含む構造単位、スルトン構造を含む構造単位が好ましく、ラクトン構造を含む構造単位がより好ましく、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位がさらに好ましく、ノルボルナンラクトン−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が特に好ましい。
【0089】
構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜80モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、[A]重合体の現像液への溶解性をより適度にすることができる。また、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンと基板との密着性をより向上させることができる。構造単位(II)の含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0090】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、極性基を有する構造単位である(但し、構造単位(II)に該当するものを除く)。[A]重合体は、構造単位(III)をさらに有することで、現像液への溶解性を調整することができる。
【0091】
上記極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基等が挙げられる。これらの中で、ヒドロキシ基、カルボキシ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
【0092】
構造単位(III)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0094】
上記式中、R
Bは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0095】
構造単位(III)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜80モル%が好ましく、20モル%〜75モル%がより好ましく、40モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(III)の含有割合を上記範囲とすることで、[A]重合体の現像液への溶解性をより適度にすることができる。構造単位(III)の含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0096】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)〜(III)以外のその他の構造単位を有していもよい。上記その他の構造単位としては、例えば、非解離性の脂環式炭化水素基を有する構造単位等が挙げられる。上記その他の構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、通常30モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。上記その他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0097】
[A]重合体の含有量としては、当該感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0098】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤を用い、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
【0099】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0100】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類などが挙げられる。
これらの中で、ケトン類、アルコール類が好ましく、2−ブタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらの重合に使用される溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0101】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間、1時間〜24時間が好ましい。
【0102】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上20,000以下がさらに好ましく、5,000以上15,000が特に好ましい。[A]重合体のMwが上記下限未満だと、得られるレジスト膜の耐熱性が低下する場合がある。[A]重合体のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0103】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2.5以下がさらに好ましい。
【0104】
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業製)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0105】
[A]重合体中の低分子量部分(分子量1,000未満の部分をいう)の含有率としては、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。[A]重合体中の低分子量部分の含有率を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度をより向上させることができる。
【0106】
本明細書における重合体の低分子量部分の含有率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、HPLCカラム(Intersil ODS−25μmカラム(4.6mmφ×250mm)、ジーエルサイエンス製)を使用し、以下の条件により測定される値である。
溶出溶媒:アクリロニトリル/0.1質量%リン酸水溶液
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
【0107】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、露光により酸を発生する物質である。この酸により[A]重合体中の酸解離性基が解離してカルボキシ基等の極性基が生成し、その結果[A]重合体の現像液への溶解性が変化する。当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような低分子化合物の形態(以下、適宜「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた酸発生基の形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0108】
[B]酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0109】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0110】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロヘキサン−1−スルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート等が挙げられる。
【0111】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0112】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0113】
N−スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0114】
[B]酸発生剤としては、これらの中でも、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネートがさらに好ましい。
【0115】
[B]酸発生体の含有量としては、[B]酸発生体が[B]酸発生剤の場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性が向上する。[B]酸発生体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0116】
<[C]酸拡散制御剤>
[C]酸拡散制御剤は、当該酸拡散制御剤(I)である。当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生体に加えて、酸拡散制御剤(I)を含有することで、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れる。[C]酸拡散制御剤については、上述の酸拡散制御剤(I)の項で説明している。[C]酸拡散制御剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0117】
[C]酸拡散制御剤の含有量としては、[B]酸発生剤100モル%に対して、1モル%〜100モル%が好ましく、3モル%〜70モル%がより好ましく、5モル%〜50モル%がさらに好ましい。[C]酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度が向上する。
また、[C]酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
【0118】
<任意成分>
[[D]他の酸拡散制御体]
当該感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、[D]他の酸拡散制御体を含有してもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、[C]酸拡散制御剤に加えて、さらに[D]他の酸拡散制御体を含有することで、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度をより向上させることができる。[D]他の酸拡散制御体をさらに含有することで、上記効果をより向上させることができる理由については必ずしも明確ではないが、例えば、酸拡散制御剤を構成する化合物全体としての拡散度合いを調整することができること等が考えられる。[D]他の酸拡散制御体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、後述するような低分子化合物である酸拡散制御剤の形態(以下、適宜「[D]他の酸拡散制御剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた酸拡散制御基の形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0119】
[D]他の酸拡散制御剤としては、例えば、下記式(4)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0121】
上記式(4)中、R
15、R
16及びR
17は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0122】
含窒素化合物(I)としては、例えば、n−ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0123】
含窒素化合物(II)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0124】
含窒素化合物(III)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。
【0125】
アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0126】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
【0127】
含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン等のピリジン類、ピラジン、ピラゾール等があげられる。
【0128】
また上記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えば、N―(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン、N―(t−ブトキシカルボニル)イミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)ベンズイミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)−2−フェニルベンズイミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)ジ−n−オクチルアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0129】
また、[D]他の酸拡散制御体として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば、下記式(5−1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(5−2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0131】
上記式(5−1)及び式(5−2)中、R
18〜R
22は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。E
−及びQ
−は、それぞれ独立して、OH
−、R
α−COO
−、R
α−SO
3−又は下記式(6−3)で表されるアニオンである。但し、R
αは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0133】
上記式(5−3)中、R
23は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。uは0〜2の整数である。
【0134】
[D]他の酸拡散制御体の含有量としては、[D]他の酸拡散制御体が[D]他の酸拡散制御剤である場合、[B]酸発生剤100モル%に対して、0モル%〜300モル%が好ましく、5モル%〜250モル%がより好ましく、10モル%〜200モル%がさらに好ましい。[D]他の酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度をより向上させることができる。[D]他の酸拡散制御剤の含有量が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物の感度が低下する場合がある。
また、[D]他の酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0〜10質量部が好ましく、0.1質量部〜8質量部がより好ましく、0.3質量部〜5質量部がさらに好ましい。
【0135】
[[E]フッ素原子含有重合体]
当該感放射線性樹脂組成物は、[E]フッ素原子含有重合体([A]重合体に該当するものを除く)を含有してもよい。当該感放射線性樹脂組成物が、[E]フッ素原子含有重合体を含有することで、レジスト膜を形成した際に、レジスト膜中の[E]フッ素原子含有重合体の撥油性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があり、液浸露光時における酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、この[E]フッ素原子含有重合体の撥水性的特徴により、レジスト被膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。このように当該感放射線性樹脂組成物が[E]フッ素原子含有重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト被膜を形成することができる。
【0136】
[E]フッ素原子含有重合体としては、フッ素原子を有する重合体である限り、特に限定されないが、当該感放射線性樹脂組成物中の[A]重合体よりも、フッ素原子含有率(質量%)が高いことが好ましい。[A]重合体よりもフッ素原子含有率が高いことで、上述の偏在化の度合いがより高くなり、得られるレジスト膜の撥水性及び溶出抑制性等の特性が向上する。
【0137】
[E]フッ素原子含有重合体のフッ素原子含有率としては、1質量%以上が好ましく、2質量%〜60質量%がより好ましく、4質量%〜40質量%がさらに好ましく、7質量%〜30質量%が特に好ましい。[E]フッ素原子含有重合体のフッ素原子含有率が上記下限未満だと、レジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。なお、重合体のフッ素原子含有率(質量%)は、
13C−NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0138】
[E]フッ素原子含有重合体としては、下記構造単位(Ea)及び構造単位(Eb)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。[E]フッ素原子含有重合体は、構造単位(Ea)及び構造単位(Eb)をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
【0139】
[構造単位(Ea)]
構造単位(Ea)は、下記式(6a)で表される構造単位である。[E]フッ素原子含有重合体は構造単位(Ea)を有することでフッ素原子含有率を調整することができる。
【0141】
上記式(6a)中、R
Cは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−O−、−SO
2−O−NH−、−CO−NH−又は−O−CO−NH−である。R
Dは、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の1価の鎖状炭化水素基又は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基である。
【0142】
上記R
Dで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の鎖状炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロi−プロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロi−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。これらの中で、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基が好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基がより好ましい。
【0143】
上記R
Dで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、モノフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、モノフルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシルメチル基、フルオロノルボルニル基、フルオロアダマンチル基、フルオロボルニル基、フルオロイソボルニル基、フルオロトリシクロデシル基、フルオロテトラシクロデシル基等が挙げられる。
【0144】
上記構造単位(Ea)を与える単量体としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロノルボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロアダマンチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロイソボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロトリシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロテトラシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
これらの中で、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0145】
構造単位(Ea)の含有割合としては、[E]フッ素原子含有重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜60モル%がより好ましく、15モル%〜40モル%がさらに好ましい。構造単位(Ea)の含有割合を上記範囲とすることで、液浸露光時においてレジスト被膜表面のより高い動的接触角を発現させることができる。
【0146】
[構造単位(Eb)]
構造単位(Eb)は、下記式(6b)で表される構造単位である。[E]フッ素原子含有重合体は、構造単位(Eb)を有することで疎水性が上がるため、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト膜表面の動的接触角をさらに向上させることができる。
【0148】
上記式(6b)中、R
Eは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
24は、炭素数1〜20の(s+1)価の炭化水素基であり、R
24のR
25側の末端に酸素原子、硫黄原子、−NR’−、カルボニル基、−CO−O−又は−CO−NH−が結合された構造のものも含む。R’は、水素原子又は1価の有機基である。R
25は、単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数4〜20の2価の脂肪族環状炭化水素基である。X
2は、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である。A
1は、酸素原子、−NR”−、−CO−O−*又は−SO
2−O−*である。R”は、水素原子又は1価の有機基である。*は、R
26に結合する結合部位を示す。R
26は、水素原子又は1価の有機基である。sは、1〜3の整数である。但し、sが2又は3の場合、複数のR
25、X
2、A
1及びR
26はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0149】
上記R
26が水素原子であると、[E]フッ素原子含有重合体のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる点で好ましい。
【0150】
上記R
26で表される1価の有機基としては、例えば、酸解離性基、アルカリ解離性基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基等が挙げられる。
【0151】
上記構造単位(Eb)としては、例えば、下記式(6b−1)〜(6b−3)で表される構造単位等が挙げられる。
【0153】
上記式(6b−1)〜(6b−3)中、R
24’は、炭素数1〜20の2価の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。R
E、X
2、R
26及びsは、上記式(6b)と同義である。sが2又は3である場合、複数のX
2及びR
26はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0154】
上記構造単位(Eb)の含有割合としては、[E]フッ素原子含有重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜90モル%が好ましく、0モル%〜80モル%がより好ましく、10モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(Eb)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト膜表面は、アルカリ現像において動的接触角の低下度を向上させることができる。
【0155】
[構造単位(Ec)]
[E]フッ素原子含有重合体は、上記構造単位(Ea)及び(Eb)以外にも、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(Ec)」ともいう。)を有してもよい(但し、構造単位(Eb)に該当するものを除く)。[E]フッ素原子含有重合体が構造単位(Ec)を有することで、レジスト膜中の[E]フッ素原子含有重合体の現像液への溶け残りを抑制することができ、その結果、得られるレジストパターンの現像欠陥の発生を抑制することができる。構造単位(Ec)としては、上述した[A]重合体における構造単位(I)等が挙げられる。
【0156】
上記構造単位(Ec)の含有割合としては、[E]フッ素原子含有重合体を構成する全構造単位に対し、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜85モル%がより好ましく、25モル%〜80モル%がさらに好ましい。構造単位(Ec)の含有割合が上記下限未満だと、レジストパターンにおける現像欠陥の発生を十分に抑制できない場合がある。構造単位(Ec)の含有割合が上記上限を超えると、得られるレジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。
【0157】
[他の構造単位]
また、[E]フッ素原子含有重合体は、上記構造単位以外にも、例えば、アルカリ可溶性基を含む構造単位、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含む構造単位、非酸解離性の脂環式基を含む構造単位等の他の構造単位を有していてもよい。上記アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホンアミド基、スルホ基等が挙げられる。ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する構造単位としては、上述した[A]重合体における構造単位(II)等が挙げられる。
【0158】
上記他の構造単位の含有割合としては、[E]フッ素原子含有重合体を構成する全構造単位に対して、通常30モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。上記他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0159】
当該感放射線性樹脂組成物における[E]フッ素原子含有重合体の含有量としては、[A]重合体の100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0.5質量部〜15質量部がより好ましく、1質量部〜10質量部がさらに好ましい。[E]フッ素原子含有重合体の含有量が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0160】
<[F]溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は、通常、[F]溶媒を含有する。[F]溶媒は、少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体及び[C]酸拡散制御剤、並びに所望により含有される[D]他の酸拡散制御体等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0161】
[F]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0162】
アルコール系溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0163】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0164】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン(メチル−n−ペンチルケトン)、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0165】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0166】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル等の酢酸エステル系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒;
ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒;
ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどが挙げられる。
【0167】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0168】
これらの中で、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒、環状ケトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンがさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、[F]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0169】
[その他の任意成分]
当該感放射線性樹脂組成物は、上記[A]〜[F]以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0170】
(偏在化促進剤)
偏在化促進剤は、[E]フッ素原子含有重合体を、より効率的にレジスト膜表面に偏析させる効果を有するものである。当該感放射線性樹脂組成物にこの偏在化促進剤を含有させることで[E]フッ素原子含有重合体の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度等の特性を損なうことなく、レジスト膜から液浸液への成分の溶出をさらに抑制したり、高速スキャンにより液浸露光をより高速に行うことが可能になり、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制するレジスト膜表面の疎水性を向上させることができる。このような偏在化促進剤として用いることができるものとしては、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物を挙げることができる。このような化合物としては、具体的には、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等が挙げられる。
【0171】
上記ラクトン化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等が挙げられる。
【0172】
上記カーボネート化合物としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0173】
上記ニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル等が挙げられる。
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン等が挙げられる。
【0174】
偏在化促進剤としては、これらの中で、ラクトン化合物が好ましく、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
【0175】
当該感放射線性樹脂組成物における偏在化促進剤の含有量としては、重合体の総量100質量部に対して、10質量部〜500質量部が好ましく、15質量部〜300質量部がより好ましく、20質量部〜100質量部がさらに好ましい。
【0176】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;市販品としては、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、DIC製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子製)等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物における界面活性剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0177】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0178】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば
1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常5質量部以下である。
【0179】
(増感剤)
増感剤は、[B]酸発生剤等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0180】
増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。当該感放射線性樹脂組成物における増感剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0181】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば、[A]重合体、[B]酸発生体、[C]酸拡散制御剤、必要に応じて含有される任意成分及び[F]溶媒を所定の割合で混合することにより調製できる。当該感放射線性樹脂組成物は、混合後に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。当該感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%がさらに好ましい。
【0182】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターンの形成方法は、
(1)当該感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を有する。
【0183】
当該レジストパターン形成方法によれば、上述した当該感放射線性樹脂組成物を用いているので、広い焦点深度を発揮しつつ、LWRが小さく、断面形状の矩形性に優れかつ高い解像度のレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0184】
[(1)工程]
(1)工程では、当該感放射線性樹脂組成物を用いて、レジスト膜を形成する。レジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウェハ、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウェハ等が挙げられる。感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の方法が挙げられる。上記塗布により形成された塗膜をプレベーク(PB)することにより塗膜中の溶媒を蒸発除去することが好ましい。PB温度としては、通常60℃〜140℃であり、80℃〜120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0185】
[(2)工程]
(2)工程では、(1)工程で形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、フォトマスク等(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)を介して露光光を照射して行う。露光光としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、極端紫外線、電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV(13.5nm)、電子線がより好ましく、ArFエキシマレーザー光、電子線がさらに好ましい。
【0186】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[B]酸発生体から発生した酸による[A]重合体の酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光された部分(露光部)と露光されていない部分(未露光部)の現像液に対する溶解性の差を確実に生じさせることができる。PEB温度としては、通常50℃〜180℃であり、80℃〜130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0187】
液浸露光を行う場合は、(2)工程の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液に不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、(3)工程の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(例えば特開2006−227632号公報参照)、(3)工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えばWO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0188】
[(3)工程]
(3)工程では、(2)工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンが形成される。上記現像の方法としては、アルカリ現像でも、有機溶媒現像でもよい。通常、アルカリ現像によりポジ型のレジストパターンが、有機溶媒現像によって、ネガ型のレジストパターンが形成される。上記現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0189】
上記現像液としては、
アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
また、有機溶媒現像の場合、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、又は有機溶媒を含有する溶媒が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、上述の感放射線性樹脂組成物の[F]溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2−ヘプタノンがより好ましい。
【0190】
<化合物>
当該化合物は、化合物(I)である。当該化合物は、上述の性質を有するので、酸拡散制御剤として好適に用いることができ、これを含有する感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れる。
【0191】
<化合物の製造方法>
本発明の化合物の製造方法は、
上記式(i−a)で表される化合物と、上記式(i−b)で表される化合物とを反応させる工程を有する上記式(1’)で表される化合物の製造方法、及び
上記式(i−a’)で表される化合物と、上記式(i−b)で表される化合物とを反応させる工程を有する下記式(2’)で表される化合物の製造方法である。
当該化合物の製造方法は、上記工程を有するので、上記化合物を簡便かつ収率よく得ることができる。
当該化合物及び当該化合物の製造方法については、上記酸拡散制御剤(I)の項で説明している。
【実施例】
【0192】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0193】
[Mw、Mn及びMw/Mn]
重合体のMw及びMnは、GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本、東ソー製)を使用し、以下の分析条件によるGPCにより測定した。また、Mw/Mnは、Mw及びMnの測定結果より算出した。
(分析条件)
溶離液: テトラヒドロフラン
流量: 1.0mL/分
試料濃度: 1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器: 示差屈折計
標準物質: 単分散ポリスチレン
【0194】
[低分子量部分含有率]
[A]重合体中の低分子量部分(分子量1,000未満の部分をいう)の含有率(質量%)は、HPLCカラム(Intersil ODS−25μmカラム(4.6mmφ×250mm)、ジーエルサイエンス製)を使用し、以下の分析条件によるHPLCにより測定した。
(分析条件)
溶出溶媒:アセトニトリル/0.1質量%リン酸水溶液
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
【0195】
[
1H−NMR分析及び
13C−NMR分析]
化合物の
1H−NMR分析及び
13C−NMR分析、重合体の各構成単位含有率及びフ
ッ素原子含有率を求めるための
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子製)を使用して測定した。
【0196】
<化合物(I)の合成>
化合物(I)は、以下の反応スキームに従い、合成した。下記化合物(i−1)〜(i−6)は下記スキーム(A)に従い、下記化合物(i−7)は下記スキーム(B)に従い合成した。
【化24】
【0197】
上記スキーム(A)中、
R
2は、シクロヘキシル基又はフェニル基である。
R
5及びR
6は、エチル基であるか、又は互いに結合してこれらが結合している窒素原子と共に、ピペリジン基又はデカヒドロキノリン基を形成している。
Yは、−CO−又は−SO
2−である。
Lは、−CO−又は−CH
2−である。
【0198】
上記スキーム(B)中、
R
1及びR
2は、互いに結合してこれらが結合している窒素原子と共にモルホリン構造を形成している。
R
3は、メチル基である。
R
5及びR
6は、互いに結合してこれらが結合している窒素原子と共にピペリジン構造を形成している。
Yは、−CO−である。
【0199】
[実施例1]
100mLのナスフラスコにN−シクロヘキシルマレイミド3.58g(20mmol)、ピペリジン1.87g(22mmol)及びトルエン10gを仕込み、室温で28時間攪拌して反応させた。得られた反応液に水を加えてから分液操作を行うことによる水洗浄を合計5回行った。水洗浄後の反応溶液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留去することで淡黄色油状物を得た。得られた淡黄色油状物をカラムクロマトグラフィで精製することにより、下記式(i−1)で表される化合物(i−1)を無色油状物として4.33g得た(収率81.9%)。
【0200】
【化25】
【0201】
[実施例2〜4]
実施例1において、N−シクロヘキシルマレイミドの代わりに、N−フェニルマレイミドを用い、アミン化合物として、ピペリジン、ジエチルアミン又はデカヒドロキノリンを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(i−2)〜(i−4)で表される化合物をそれぞれ合成した。
【0202】
[実施例5及び6]
実施例1において、N−シクロヘキシルマレイミドの代わりに、N−シクロヘキシル−4,5−ジデヒドロブチロラクタム又はN−シクロヘキシル−4,5−ジデヒドロプロパンスルタムを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(i−5)及び下記式(i−6)で表される化合物をそれぞれ合成した。
【0203】
[実施例7]
実施例1において、N−シクロヘキシルマレイミドの代わりに、N−メタクリロイルモルホリンを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(i−7)で表される化合物を合成した。
【0204】
【化26】
【0205】
<重合体の合成>
[A]重合体、[E]フッ素原子含有重合体の合成に用いた各単量体を下記に示す。
【0206】
【化27】
【0207】
[[A]重合体の合成]
[合成例1]
上記化合物(M−1)9.01g(50モル%)及び化合物(M−2)10.99g(50モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、さらにラジカル重合開始剤としてのAIBN0.81g(上記化合物の合計モル数に対して5モル%)を溶解させて単量体溶液を調製した。20gの2−ブタノンを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗を用い3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却した。400gのメタノール中に冷却した重合反応液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を80gずつのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−1)を合成した(15.6g、収率78%)。重合体(A−1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは1.52であった。
13C−NMR分析の結果、(M−1)に由来する構造単位及び(M−2)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ50.2モル%及び49.8モル%であった。重合体(A−1)における低分子量部分の含有率は0.04質量%であった。
【0208】
[合成例2]
上記化合物(M−4)55.0g、化合物(M−5)45.0g、ラジカル重合開始剤としてのAIBN4g及び連鎖移動剤としてのt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合反応を行った。重合反応終了後、重合反応液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、生成重合体を凝固精製した。次いで、この重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、さらに、メタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末の重合体(A−2)を得た(65.7g、収率76.6%)。重合体(A−2)は、Mwが10,000、Mw/Mnが2.1であった。
13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位及び(M−5)に由来する構造単位の含有割合は、65.4モル%及び34.6モル%であった。重合体(A−2)における低分子量部分の含有率は0.05質量%であった。
【0209】
[[E]フッ素原子含有重合体の合成]
[合成例3]
上記化合物(M−1)79.9g(70モル%)及び化合物(M−3)20.91g(30モル%)を、100gの2−ブタノンに溶解し、さらにラジカル重合開始剤としてのジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート4.77gを溶解させて単量体溶液を調製した。100gの2−ブタノンを入れた1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却した。重合反応液を2L分液漏斗に移液した後、150gのn−ヘキサンでその重合反応液を均一に希釈し、600gのメタノールを投入して混合した。次いで、30gの蒸留水を投入し、さらに振とうして30分静置した。次いで、下層を回収した後、溶媒置換を行い、重合体(E−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(収率60%)。重合体(E−1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは2.00であった。
13C−NMR分析の結果、(M−1)に由来する構造単位及び(M−3)に由来する構造単位の含有割合は、71.1モル%及び28.9モル%であった。重合体(E−1)の低分子量部分含有率は0.07質量%であった。
【0210】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
感放射線性樹脂組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
【0211】
[[B]酸発生剤]
B−1:トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート(下記式(B−1)で表される化合物)
【0212】
【化28】
【0213】
[[C]酸拡散制御剤]
上記式(i−1)〜(i−7)で表される化合物、並びに下記式(ci−1)及び式(ci−2)で表される化合物
【0214】
【化29】
【0215】
[[F]溶媒]
F−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
F−2:シクロヘキサノン
【0216】
[[G]偏在化促進剤]
G−1:γ−ブチロラクトン
【0217】
[実施例8]
[A]重合体としての(A−1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)8.5質量部、[C]酸拡散制御剤としての(i−1)30モル%([B]酸発生剤100モル%に対するモル比)、[E]フッ素原子含有重合体としての(E−1)3質量部、[F]溶媒としての(F−1)2,240質量部及び(F−2)960質量部、並びに[G]偏在化促進剤としての(G−1)30質量部を混合し感放射線性樹脂組成物(J−1)を調製した。
【0218】
[実施例9〜14並びに比較例1及び2]
表1に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、実施例8と同様にして、感放射線性樹脂組成物(J−2)〜(J−7)並びに(CJ−1)及び(CJ−2)を調製した。
【0219】
【表1】
【0220】
<レジストパターンの形成>
[ArF露光の場合]
(アルカリ現像)
12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ARC66、ブルワーサイエンス製)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して各感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR−S610C、NIKON製)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L1S)マスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%TMAH水溶液により現像し、水で洗浄、乾燥し、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0221】
(有機溶媒現像)
上記[アルカリ現像]によるレジストパターンの形成において、現像液としての2.38質量%TMAH水溶液の代わりに酢酸n−ブチルを用い、かつ水での洗浄を行わなかった以外は、上記[アルカリ現像]の場合と同様にして、ネガ型のレジストパターンを形成した。
【0222】
<評価>
上記アルカリ現像の場合及び有機溶媒現像の場合それぞれにおいて、形成した各レジストパターンの測定により、各感放射線性樹脂組成物の評価を行った。それぞれの場合において、上記40nm1L1Sマスクパターンを介した露光により、40nm1L1Sパターンを形成する露光量を最適露光量(Eop)とした。なお、この方法で形成したレジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(S−9380、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。下記評価において実施例と比較する「比較例」としては、実施例1〜4及び7については比較例1、実施例5及び6については比較例2とした。評価結果を表2に示す。表2中の「−」は、評価の基準であることを示す。
【0223】
[LWR性能]
上記Eopにおいて形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能(nm)とした。LWR性能は、その値が小さいほど良好であることを示す。LWR性能は、比較例と比べて、10%以上のLWR性能向上(LWR性能の値が90%以下になることをいう)が見られたものを「良好」と、10%未満のLWR性能向上であったものを「不良」と評価した。
【0224】
[解像性]
上記Eopにおいて解像される最小のレジストパターンの寸法を解像性(nm)とした。解像性は、その値が小さいほど良好であることを示す。解像性は、比較例と比べて、10%以上の解像性向上(解像性の値が90%以下になることをいう)が見られたものを「良好」と、10%未満の解像性向上であったものを「不良」と評価した。
【0225】
[断面形状の矩形性]
上記Eopにおいて解像されるレジストパターンの断面形状を観察し、レジストパターンの高さ方向の中間での線幅Lbと、レジスト膜の上部での線幅Laを測定した。断面形状の矩形性は、0.9≦(La/Lb)≦1.1である場合を「良好」と、(La/Lb)<0.9又は1.1<(La/Lb)である場合を「不良」と評価した。
【0226】
[焦点深度]
上記Eopにおいて解像されるレジストパターンにおいて、深さ方向にフォーカスを変化させた際の寸法を観測し、ブリッジや残渣が無いままパターン寸法が基準の90%〜110%に入る深さ方向の余裕度を焦点深度(nm)とした。焦点深度は、その値が大きいほど良好であることを示す。焦点深度は、比較例と比べて、10%以上の焦点深度向上(焦点深度の値が110%以上になることをいう)が見られたものを「良好」と、10%未満の焦点深度向上であったものを「不良」と評価した。
【0227】
【表2】
【0228】
表2の結果から明らかなように、ArF露光において、実施例の感放射線性樹脂組成物は、比較例の感放射線性樹脂組成物に比べて、アルカリ現像及び有機溶媒現像の場合とも、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れるといえる。
【0229】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
[電子線照射の場合]
[実施例15]
[A]重合体としての(A−2)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)20質量部、[C]酸拡散制御剤としての(i−1)30モル%([B]酸発生剤に対するモル比)、並びに[F]溶媒としての(F−1)4,280質量部及び(F−2)1,830質量部を混合して感放射線性樹脂組成物(J−8)を調製した。
【0230】
[実施例16〜21並びに比較例3及び4]
下記表3に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は実施例1と同様に操作して、各感放射線性樹脂組成物(J−9)〜(J−14)並びに(CJ−3)及び(CJ−4)を調製した。
【0231】
<レジストパターンの形成>
8インチのシリコンウェハ表面にスピンコーター(CLEAN TRACK ACT8、東京エレクトロン製)を使用して、各感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、簡易型の電子線描画装置(HL800D、日立製作所製、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm
2)を用いて電子線を照射した。照射後、130℃で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%TMAH水溶液を用いて23℃で30秒間現像し、水で洗浄、乾燥し、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0232】
形成した各レジストパターンについて、上記[ArF露光]における評価のうち、LWR性能、解像性及び断面形状の矩形性について、上記同様の方法で測定を行い、感放射線性樹脂組成物の評価を行った。実施例の比較対象とする「比較例」としては、実施例15〜18及び21については比較例3、実施例19及び20については比較例4とした。評価結果を表3に合わせて示す。表3中の「−」は、評価の基準であることを示す。
【0233】
【表3】
【0234】
表3の結果から明らかなように、電子線照射の場合、実施例の感放射線性樹脂組成物は、比較例の感放射線性樹脂組成物に比べて、LWR性能、解像性及び断面形状の矩形性に優れるといえる。