(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の停留所を含む所定路線を運行する乗合車両の停留所で、前記複数の停留所のうちの他の停留所と識別可能に図形、記号もしくは文字またはこれらの組合わせにより構成される停留所表示を有する停留所と、
前記乗合車両に搭載される請求項1〜4のいずれか一項に記載の停留所識別装置と、
を含むことを特徴とする停留所識別システム。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の停留所識別装置および停留所識別システムの実施形態について図を参照して説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の停留所識別装置および停留所識別システムを適用するバスの車内設備機器について
図1を参照して説明する。
図1には、停留所識別装置10を搭載したバスの車内設備機器の構成例を示す説明図が図示されている。
図1に示すように、バス100は、乗客が車両後方の乗車口100aから乗車した後、車両前方の降車口100bから降車する際に運賃を支払う「後乗り前降り後払い」方式のワンマンバスである。
【0027】
このバス100には、車内設備機器として、整理券発行機34、運賃表示器35、運賃箱36、放送装置37等が搭載されており、これらの車内設備機器に対して操作盤33が進捗信号や進捗データを出力する。進捗信号や進捗データは、当該バス100が次に停車を予定する停留所に近づいたことを知らせる情報で、単純に停留所の順番を1つ進める「停留所送り信号」や、停留所の名称、番号等の停留所情報を含むデータ等がある。
【0028】
このような進捗信号や進捗データを出力する操作盤33は、例えば、乗務員(運転手)が操作可能に運転席100cの近傍に設けられる。一般に、歩進スイッチ(所定のスイッチ)を有する小型の箱状筐体に構成されており、この歩進スイッチが操作されると操作盤33が進捗信号や進捗データを出力して、整理券発行機34、運賃表示器35等の車内設備機器に送られる。
【0029】
整理券発行機34は、乗客の乗車時に整理券を発行する装置で、車両後方の乗車口100a付近に設けられている。整理券番号は、所定の路線に含まれる始発停留所から終着停留所までの停留所ごとに順番に付与されており、操作盤33から送られて来る進捗信号や進捗データに基づいて発行時に印刷する番号を設定する。なお、始発停留所については、整理券を発行せず2番目の停留所から発行したり、整理券番号を「0(ゼロ)」番に設定したりする場合もある。
【0030】
運賃表示器35は、整理券番号に対応する運賃額を表示する装置で、車両前方の降車口100bの手前上方に設けられる。表示される運賃額は、停車する停留所ごとに異なる場合があるため、操作盤33から送られて来る進捗信号や進捗データに基づいて各整理券番号に対応する運賃額を表示時に更新する。
【0031】
運賃箱36は、乗客が降車時に支払う運賃を収受する装置で、車両前方の降車口100b前の通路に設けられる。乗客が投入した金額と整理券の番号とを照合して適正な運賃額との差額を表示したり釣り銭の返却をしたりする。このため、この運賃箱36にも操作盤33から進捗信号や進捗データが送られてこのような照合等に用いられる。
【0032】
放送装置37は、バス100の乗客に対する車内アナウンスを放送する装置で、例えば、停留所ごとに予め設定されている案内内容等を合成音声によって車内スピーカを介して放送をする。放送は停車を予定する停留所ごとに行われ、操作盤33から進捗信号や進捗データが送られて来るタイミングで放送を開始する。
【0033】
このように車内設備機器は、操作盤33から出力されて送られて来る進捗信号や進捗データに基づいて、それぞれ所定の動作を行う。しかし、乗務員が操作盤33の操作を忘れたり誤操作をした場合には、車内設備機器による案内内容が本来のものと異なってしまう。そこで、第1実施形態に係る停留所識別装置10では、次のように構成してこのような問題を解決する。
【0034】
図1に示すように、第1実施形態に係る停留所識別装置10は、識別ユニット20とカメラ31とを備えている。そして、バス100の付近に存在する停留所の停留所表示を撮影した画像に基づいてこの停留所を他の停留所と識別し、バス100が次に停車を予定する停留所の識別データを整理券発行機34、運賃表示器35等の車内設備機器に自動的に出力する。
【0035】
識別ユニット20は、カメラ31により撮影した画像に基づいて後述する停留所識別処理を行う情報処理装置で、例えば、乗務員(運転手)が操作可能に運転席100cの近傍に設けられる。なお、この識別ユニット20の構成等については
図2〜
図6を参照して後述する。
【0036】
カメラ31は、CMOSセンサやCCD等の撮像素子を備えたオンボードカメラで、フォーカスや露出調整等が自動または手動で設定可能に構成されている。このカメラ31による画像出力は、例えばUSBインタフェースを介して可能で、識別ユニット20にはUSBケーブルで接続されている。
【0037】
図1に示す構成例では、バス100の進行方向前方の車外風景を撮影可能に車両前方上方にカメラ31が設けられている。カメラ31から出力される画像データ(以下「撮影画像データ」)は、カメラ31が撮影する車外風景を逐次変換したものであり、後述する入出力インタフェース25を介して後述するメモリ23のRAMに格納される。なお、バス100の後方の車外風景を撮影可能に構成する場合には、車両後方上方にこのようなカメラを設けてもよい(
図1に示す符号31’)。カメラ31,31’は、画像取得部に相当する。
【0038】
次に、識別ユニット20のハードウェア構成を
図2に基づいて説明する。
図2には、停留所識別装置10の構成例を示すブロック図が図示されている。なお、
図2に示す一点鎖線で囲まれる範囲が停留所識別装置10を構成するハードウェア、つまり識別ユニット20およびカメラ31で、破線で囲まれる範囲が識別ユニット20を構成するハードウェアである。また、一点鎖線の外側に示される、整理券発行機34、運賃表示器35、運賃箱36および放送装置37は、前述した車内設備機器である。
【0039】
図2に示すように、識別ユニット20は、MPU21、メモリ23、入出力インタフェース25を備え、カメラ31により撮影した画像に基づいて停留所識別処理を可能に構成されている。カメラ31は、バス100の付近に存在する停留所の停留所表示50を撮影する。
【0040】
MPU21は、識別ユニット20を制御する演算処理装置で、システムバスやデータバス等を介して、メモリ23、入出力インタフェース25に接続されている。このMPU21は、メモリ23とともに停留所識別部および出力制御部を構成する。
【0041】
メモリ23は、半導体記憶装置で、MPU21が使用する主記憶空間を構成するものである。第1実施形態では、プログラム領域やデータベース領域を有するROMとワーク領域やデータ領域に割り当てられるRAMとにより構成されている。ROMには、当該識別ユニット20を制御するシステムプログラム(いわゆるOS)やバス100の付近に存在する停留所を識別可能な停留所識別プログラム、さらにはデータベースとして識別データや比較画像データ等が格納されている。また、RAMのワーク領域には、カメラ31による撮影画像データが保持されている。
【0042】
なお、識別データは、例えば、バス100の運行する始発停留所から終着停留所のうち任意の停留所を特定可能な整理券番号やこの整理券番号に対応する停留所の名称等であり、テキスト形式等でROMのデータベース領域に格納されている。また、比較画像データは、バス100の運行する始発停留所から終着停留所のうち任意の停留所を特定可能な停留所表示50に対応する画像データであり、ROMのデータベース領域に格納されている。ROMは情報記憶部に相当する。
【0043】
この識別データと比較画像データは、関連付けがされており、例えば、整理券番号「1」とこの整理券番号に対応する停留所名「○○公園」からなる識別データには、比較画像データ「α」が関連付けられている。また、整理券番号「2」とこれに対応する停留所名「○○町」からなる識別データには、比較画像データ「β」が関連付けられている。このように、始発停留所から終着停留所までのすべての識別データに比較画像データが関連付けられている。
【0044】
入出力インタフェース25は、カメラ31や車内設備機器と、MPU21との間で、シリアルやパラレル通信によりデータのやり取りを仲介するインタフェース装置である。シリアルインタフェースには例えば、USBやIEEE1394があり、またパラレルインタフェースにはSCSIやセントロニクス仕様のものがある。
【0045】
このように、停留所識別装置10は、識別ユニット20とカメラ31により構成されており、後述する停留所識別処理を行う。ここで、カメラ31が撮影するバス100の付近に存在する停留所の停留所表示50について
図3を参照しながら説明する。
【0046】
図3に示すように、本実施形態の停留所表示50は、図形、記号もしくは文字またはこれらの組合せにより構成されるもので、例えば、所定のバーコードがこれに相当する。ここでは、整理券に印字されるバーコード51,52と同様のものを使用する。このバーコードは、所定路線の各停留所に個別に付与されているもので、例えば先に例示した比較画像データ「α」や「β」等に対応するものである。なお、停留所表示50は、所定の停留所を識別可能であれば、任意の記号や停留所名等の文字や図形でもよい。以下、バーコードの画像(以下「バーコード画像」)を使用した例について説明をする。
【0047】
停留所表示50のサイズは、カメラ31が搭載されたバス100から、例えば10m前後の距離で離れていても認識可能な大きさに設定される。表示位置は、例えば、
図4に示すように、停留所200の標柱201の車道側に面した斜線部分202で、印刷もしくはペイントまたはシールにより表示されている。また表示位置は、バス100のカメラ31が撮影可能な位置であれば、例えば、
図4の破線部分203〜208に示す位置でもよい。停留所表示50を有する表示媒体は、停留所200の屋根もしくは柱またはベンチ等でもよい。
【0048】
次に、
図5を参照して停留所識別処理の流れを説明する。この処理は、バス100の付近の停留所200を識別して識別データを出力するもので、メモリ23に格納された停留所識別プログラムをMPU21が実行することで実現される。例えば、バス100のイグニッションスイッチのオンに連動または乗務員による手動操作等によって、識別ユニット20の電源が投入(オン)されることで、MPU21が起動してプログラムが自動的に実行される。
【0049】
まずステップS101により所定の初期化処理が行われる。この処理では、例えば、メモリ23のワーク領域等をクリアする。次のステップS103では、データベース読出処理が行われる。この処理は、識別データと比較画像データをメモリ23のデータベースから読み出すものである。これにより、比較画像データとして、例えば、始発停留所から終着停留所までの全ての停留所表示50についてのバーコード画像のデータがメモリ23のデータ領域にロードされる。また、比較画像データごとに関連付けられた識別データがロードされる。
【0050】
ステップS105では、画像データ取得処理が行われる。この処理は、カメラ31による撮影画像データとして、メモリ23のワーク領域に格納されている画像データを取得する。ワーク領域に格納されている画像データが複数存在する場合には、最新のデータを選択して取得する。
【0051】
ステップS107では、画像データが一致するか否かを判断する処理が行われる。この処理では、ステップS105により取得した撮影画像データと一致する画像データが、ステップS103によりメモリ23のデータ領域に読み出した比較画像データの中に存在するか否かを判断する。例えば、パターンマッチングにより、比較画像データとして、バーコード画像データと、メモリ23のワーク領域に格納された撮影画像データとの類似度に基づいて、その値が、所定値以上であれば一致すると判断し、所定値未満であれば一致すると判断しない、つまり一致しないと判断する。なお、両データが一致するか否かを判断することができれば、特徴ベースマッチング等の他のマッチング方式でもよい。
【0052】
撮影画像データが一致しないと判断された場合には(S107;No)、ステップS105に処理を移行して画像データ取得処理を再度行う。例えば、停留所表示50とは関係のない車外風景をカメラ31が撮影していた場合である。一方、画像データが一致すると判断された場合には(S107;Yes)、ステップS109に処理を移行して識別データ出力処理を行う。
【0053】
ステップS109では、識別データ出力処理が行われる。この処理は、撮影画像データと比較画像データが一致すると判断された場合に行われるもので(S107;Yes)、撮影画像データと一致した比較画像データに関連付けられた識別データをそれぞれの車内設備機器に出力する。例えば、先の例示では、カメラ31が「○○町」の停留所表示50を撮影して、その撮影画像データが比較画像データ「β」と一致した場合である。この場合、比較画像データ「β」に関連付けられた識別データ(整理券番号「2」、停留所名称「○○町」)が出力される。
【0054】
これにより、このような識別データを受け取った、整理券発行機34、運賃表示器35、運賃箱36、放送装置37等の車内設備機器は、乗務員の操作による操作盤33からの進捗信号によることなく、識別ユニット20から出力される識別データに基づいて、自動的に表示や放送等の案内内容を更新したり変更したりすることが可能になる。なお、それぞれの車内設備機器に対して識別データを出力するのではなく、例えば、運賃表示器35のみに識別データを出力して、これを受け取った運賃表示器35がこの識別データをその他の車内設備機器に出力してもよい。
【0055】
次に、第1実施形態に係る停留所識別装置10および停留所識別システムの他の構成例として、バス100の後方に搭載されたカメラ31’で停留所表示50を撮影する場合の構成等を
図1〜
図4,
図6を参照して説明する。なお、カメラ31がカメラ31’に置き替わる点が前述した構成と異なる。そのため、その他の構成部分については、前述した構成部分と同一であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
この例では、カメラ31’は、バス100の後部に搭載されていることから、バス100が停留所200を発車または通過した後に停留所表示50が撮影される。このため、
図3に示すような停留所表示50(バーコード51,52)が表示される位置は、
図4に示す破線部分203〜207の反対側(または裏側)の停留所の屋根の側面や柱で、発車または通過したバス100の後方に向けた位置に表示される。
【0057】
この場合の停留所識別処理の流れを
図6に示す。ステップS101,S103,S105,S107は、
図5を参照して述べたとおりで、メモリ23のワーク領域等がクリアされた後(S101)、メモリ23に格納されている識別データおよび比較画像データを読み出す(S103)。そして、カメラ31’による撮影画像データを取得した後(S105)、撮影画像データと比較画像データが一致するか否かを判断する(S107)。
【0058】
なお、この例では、ステップS103によりデータベースから読み出される比較画像データには、先の例とは異なる識別データが関連付けられている。即ち、カメラ31’により撮影される撮影画像データは、次に停車を予定する停留所の1つ前の停留所であることから、比較画像データに関連付けられる識別データはその画像の停留所の次の停留所に関するもの(整理券番号、停留所名称等)になる。
【0059】
ステップS108では、識別データを出力するか否かを判断する処理が行われる。この処理は、識別データを出力するタイミングを決めるもので、例えば、乗車口100aまたは降車口100bの扉の開閉信号を受けてから所定時間(例えば1分)が経過したか否か、もしくは車速パルス等を計測して停留所200から所定距離(例えば50m)を離れたか否か等により判断する。
【0060】
このステップでは、識別データを出力すると判断されるまで(S108;Yes)繰り返す(S108;No)。これにより、識別データを出力するタイミングを任意に設定することができるので、バス100の出発直後に識別データが出力されたり、早すぎるタイミングで出力されることを防止可能になる。
【0061】
ステップS109では、識別データ出力処理が行われる。この処理は、識別データを出力すると判断された場合に(S108;Yes)行われるもので、バス100が次に停車または通過を予定する識別データを車内設備機器へ出力するものである。これにより、車内設備機器には、カメラ31’が撮影した停留所(停留所表示50)の次の停留所に関する識別データが出力される。
【0062】
この例では、停留所を出発または通過してから所定の時間等が経過した後に車内設備機器の表示や放送等を更新したり変更したりできるため、バス100の前方にカメラ31が搭載されている場合に比べて早いタイミングで、表示や放送等を更新したり変更したりすることができる。したがって、有用な情報を適切なタイミングで乗客に提供できる。
【0063】
以上説明したように、第1実施形態に係る停留所識別装置10やそのシステムによると、複数の停留所を含む所定路線を運行するバス100に搭載され、走行中または停車中のバス100の付近に存在する停留所200を撮影し、その撮影画像データに基づいてこの停留所200を複数の停留所のうちの他の停留所と識別して(S103,S105,S107)、バス100が停車を予定する直近の停留所200の識別データを整理券発行機34、運賃表示器35等の車内設備機器に出力する(S109)。停留所200は、他の停留所と識別可能に図形、記号もしくは文字またはこれらの組合わせにより構成される停留所表示50を有する。
【0064】
これにより、停留所識別装置10から識別データを受け取った車内設備機器は、乗務員の操作による操作盤33からの進捗信号によることなく、停留所識別装置10からの識別データに基づいて、表示や放送等の案内内容を自動的に更新したり変更したりする等の所定の動作を可能に構成することによって、乗務員による停留所送り操作の忘れや乗務員の誤操作による誤った案内を防止することができる。また、停留所送り操作の忘れや誤操作による誤った案内を自動的に修正することもできる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る停留所識別装置10’および停留所識別システムを
図7〜
図9に基づいて説明する。第2実施形態の停留所識別装置10’は、車内設備機器の表示または放送等の案内内容と、識別データとが一致しない場合に識別データを車内設備機器へ出力する点が第1実施形態に係る停留所識別装置10と異なる。そのため、第1実施形態の停留所識別装置10と同様の構成部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
図7に示す運賃表示器35’は、各停留所に関するデータ(整理券番号、停留所名称、運賃情報等)を有する。このため、運賃表示器35’は、操作盤33から出力される進捗信号(停留所送り信号)に基づいて停留所の名称、整理券番号等の停留所情報を含む進捗データを更新して、表示内容を更新したり変更したりする。また、運賃表示器35’は、この進捗データを、整理券発行機34、運賃箱36、放送装置37等の車内設備機器に出力するとともに識別ユニット20’にも出力する。
【0067】
これにより、車内設備機器は、運賃表示器35’から出力された進捗データに基づいて表示や放送等の案内内容を更新したり変更したりする一方で、識別ユニット20’は最新の進捗データを把握する。そして、識別ユニット20’は、運賃表示器35’から出力された、進捗データと識別データが一致しない場合に運賃表示器35’にこの識別データを出力する。この識別データは、カメラ31が撮影した撮影画像データと一致した比較画像データに関連付けられたデータである。
【0068】
図8を参照して第2実施形態における停留所識別処理の流れを説明する。この処理は、バス100の付近の停留所200を識別して識別データを出力するもので、メモリ23に格納された停留所識別プログラムをMPU21が実行することで実現される。例えば、バス100のイグニッションスイッチのオンに連動または乗務員による手動操作等によって、識別ユニット20’の電源が投入(オン)されることで、MPU21が起動してプログラムが自動的に実行される。
【0069】
なお、識別ユニット20’は、停留所識別処理とは別のタスクによって、進捗データ受信処理を所定のタイミングでほぼ常時行っている。これは、乗務員の操作により操作盤33から出力される進捗信号に基づいて、運賃表示器35’が更新する進捗データを、メモリ23のワーク領域に保持する処理である。このワーク領域に保持された進捗データは、一度読み出されたり上書きされたりすると、以前のデータは自動的に消去される。これにより、最新の進捗データがワーク領域に保持される。
【0070】
ステップS101,S103,S105,S107は、第1実施形態で述べたとおりで、所定のワーク領域等がクリアされた後(S101)、メモリ23に格納されている識別データおよび比較画像データを読み出す(S103)。そして、カメラ31による撮影画像データを取得した後(S105)、撮影画像データと比較画像データが一致するか否かを判断する(S107)。
【0071】
ステップS201では、識別データ取得処理が行われる。この処理は、ステップS107により撮影画像データと比較画像データが一致すると判断された場合に行われるもので(S107;Yes)、撮影画像データと一致した比較画像データに関連付けられている識別データをメモリ23のデータ領域から取得する。
【0072】
次のステップS203では、進捗データ取得処理が行われる。この処理では、前述した進捗データ受信処理によりメモリ23のワーク領域に保持されている最新の進捗データを取得する。
【0073】
ステップS205では、ステップS201で取得した識別データと、ステップS203で取得した進捗データとが一致するか否かを判断する。例えば、識別データの内容が整理券番号「2」とこの整理券番号に対応する停留所名「○○町」である場合、進捗データの内容がこれと同じまたはこれに相当するものであれば一致すると判断される。これに対して進捗データの内容が、例えば、整理券番号「1」とこの整理券番号に対応する停留所名「○○公園」等であった場合には一致するとは判断されない。
【0074】
これらの両データが一致すると判断された場合には(S205;Yes)、運賃表示器35’からは、適正な進捗データが整理券発行機34、運賃箱36等の各車内設備機器に出力されているため、ステップS105に処理を移行して画像データ取得処理を再度行う。例えば、乗務員による操作忘れや誤操作が発生していない場合である。
【0075】
一方、これらの両データが一致すると判断されない場合、つまり一致しない場合には(S205;No)、運賃表示器35’からは、不適切な進捗データが整理券発行機34、運賃箱36等の各車内設備機器に出力されているため、ステップS109に処理を移行して識別データ出力処理を行う。例えば、乗務員による操作忘れや誤操作が発生している場合である。
【0076】
ステップS109では、識別データ出力処理が行われる。この処理は、ステップS205により両データが一致しないと判断された場合に行われるもので(S205;No)、ステップS201で取得した適正な情報として、識別データを運賃表示器35’へ出力する。例えば、先の例示では、進捗データの内容が、例えば、整理券番号「1」とこの整理券番号に対応する停留所名「○○公園」等であった場合、整理券番号「2」とこの整理券番号に対応する停留所名「○○町」を識別データとして運賃表示器35’に出力する。
【0077】
これにより、停留所識別装置10’は、乗務員による停留所送り操作の忘れや乗務員の誤操作があった場合に適正な情報として識別データを出力する。このため、停留所識別装置10’から識別データを受け取った運賃表示器35’は、停留所識別装置10’からの識別データに基づいて、表示内容を自動的に更新したり変更したり、また整理券発行機34等の他の車内設備機器に出力する進捗データを自動的に更新したり変更したりすることが可能になる。
【0078】
なお、停留所識別装置10’から識別データを受け取る車内設備機器は、整理券発行機34、運賃箱36、放送装置37であってもよい。この場合には、最初に識別データを受け取った機器が別の機器に進捗データを出力する。また、特定の車内設備機器に識別データを出力するのではなく、例えば、整理券発行機34、運賃表示器35’、運賃箱36、放送装置37それぞれに識別データを出力するように構成してもよい。
【0079】
次に、第2実施形態に係る停留所識別装置10’および停留所識別システムの他の構成例として、バス100の後方に搭載されたカメラ31’で停留所表示50を撮影する場合の構成等を
図7,
図9を参照して説明する。なお、カメラ31がカメラ31’に置き替わる点が前述した構成と異なる。そのため、その他の構成部分については、前述した構成部分と同一であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
この場合の停留所識別処理の流れを
図9に示す。ステップS101,S103,S105,S107,S109,S201,S203,S205は、
図5および
図8を参照して述べたとおりである。また、ステップS108は、
図6を参照して第1実施形態で述べたとおりである。そのため、
図5、
図6、
図8に示す停留所識別処理との相違点は、要約すると、次のとおりである。
【0081】
この例では、カメラ31’がバス100の後方に設けられているため、カメラ31’により撮影される撮影画像データは、バス100が既に出発または通過した停留所、つまり次に停車を予定する停留所の1つ前の停留所のものである。そのため、ステップS201により取得された識別データは、撮影画像データと一致する比較画像データに関連付けられているもので、その画像の停留所の次の停留所に関する整理券番号や停留所名称等のデータである。このような識別データを、所定のタイミングで(S108;Yes)、運賃表示器35’に出力する(S109)。
【0082】
これにより、乗務員による停留所送り操作の忘れや乗務員の誤操作があった場合、停留所識別装置10’は、停留所を出発または通過してから任意のタイミングで適正な情報として識別データを運賃表示器35’に出力する。このため、有用な情報を適切なタイミングで乗客に提供できる。
【0083】
以上説明したように、第2実施形態に係る停留所識別装置10’やそのシステムによると、複数の停留所に個別に表示される図形、記号もしくは文字またはこれらの組合わせにより構成される停留所表示50でバス100の付近に存在する停留所200の停留所表示50を撮影して画像データを取得するカメラ31,31’と、複数の停留所のうち任意の停留所200を特定可能な識別データおよびこの識別データに対応して停留所表示50に合致可能な各停留所ごとの比較画像データを記憶するメモリ23と、カメラ31,31’が取得した画像データとメモリ23に記憶された比較画像データとが一致するか否かに基づいて画像データの停留所200を複数の停留所のうちの他の停留所と識別して、識別した停留所200の識別データを整理券発行機34、運賃表示器35等の車内設備機器に出力するCPU21と、を備える。
【0084】
これにより、停留所識別装置10’は、走行中または停車中のバス100の付近に存在する停留所200の識別データを取得し(S201)、整理券発行機34、運賃表示器35等の車内設備機器が出力する進捗データを取得する(S203)。この識別データと進捗データが一致するか否かを判断し(S205)、一致していない場合(S205;No)、車内設備機器に識別データを出力する(S109)。このため、停留所識別装置10’からの識別データに基づいて、表示内容を自動的に更新したり変更したりし得るように、また整理券発行機34等の他の車内設備機器に出力する進捗データを自動的に更新したり変更したりし得るように、運賃表示器35’を構成することによって、乗務員による停留所送り操作の忘れや乗務員の誤操作による誤った案内を防止することができる。また、停留所送り操作の忘れや誤操作による誤った案内を自動的に修正することもできる。
【0085】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る停留所識別装置10”および停留所識別システムを
図8〜
図10に基づいて説明する。第3実施形態の停留所識別装置10”は、操作盤33’が出力する進捗データを取得して、この進捗データと識別データとが一致しない場合に操作盤33’にこの識別データを出力する点が第2実施形態に係る停留所識別装置10’と異なる。そのため、第2実施形態の停留所識別装置10’と同様の構成部分については、同一符号を付して説明を省略する。また、停留所識別装置10”を構成する識別ユニット20”により実行される停留所識別処理については、
図8および
図9に示す各フローチャートを流用する。
【0086】
図10に示す操作盤33’は、
図7を参照して説明した操作盤33と異なり各停留所に関する進捗データ(整理券番号、停留所名称、運賃情報等)を有する。この進捗データを乗務員の操作に基づき運賃表示器35”、整理券発行機34等の車内設備機器に出力するとともに識別ユニット20”に出力する。これにより、車内設備機器は、操作盤33’から出力される進捗データに基づいて表示や放送等の案内内容を更新したり変更したりする。操作盤33’は進捗情報出力装置に相当する。
【0087】
図8を参照して第3実施形態における停留所識別処理の流れを説明する。なお、識別ユニット20”も、第2実施形態と同様に、停留所識別処理とは別のタスクによって、進捗データ受信処理を所定のタイミングでほぼ常時実行している。この処理では、操作盤33’から出力される進捗データをメモリ23のワーク領域に保持している。
【0088】
ステップS101,S103,S105,S107,S109,S201,S203,S205は、
図5および
図8を参照して第2実施形態で述べたとおりである。そのため、第2実施形態に示す停留所識別処理との相違点は、要約すると、次のとおりである。
【0089】
この例では、操作盤33’が進捗データを有し、運賃表示器35”、整理券発行機34等の車内設備機器に出力するため、識別ユニット20”は、操作盤33’が出力する進捗データを取得し(S203)、この進捗データと、ステップS201により取得された識別データと、が一致するか否かを判断する(S205)。そしてこれらの両データが一致しない場合に(S205;No)、識別データを操作盤33’に出力する(S109)。
【0090】
これにより、操作盤33’は、適正な情報として識別データを識別ユニット20”から受け取るので、その識別データに基づいて、進捗データを更新したり変更したりした後、再度、運賃表示器35”、整理券発行機34等の車内設備機器に出力することが可能になる。したがって、これらの車内設備機器は、操作盤33’から出力される進捗データに基づいて自動的に表示内容を更新したり変更したりすることが可能になる。
【0091】
次に、第3実施形態に係る停留所識別装置10”および停留所識別システムの他の構成例として、バス100の後方に搭載されたカメラ31’で停留所表示50を撮影する場合の構成等を
図9,
図10を参照して説明する。なお、カメラ31がカメラ31’に置き替わる点が前述した構成と異なる。そのため、その他の構成部分については、前述した構成部分と同一であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0092】
この場合の停留所識別処理の流れを
図9に示す。ステップS101,S103,S105,S107,S109,S201,S203,S205は、
図5および
図8を参照して述べたとおりである。また、ステップS108は、
図9を参照して第2実施形態で述べたとおりである。
【0093】
この例では、カメラ31’がバス100の後方に設けられているため、カメラ31’により撮影される撮影画像データは、次に停車を予定する停留所の1つ前の停留所のものである。そのため、ステップS201により取得された識別データは、撮影画像データと一致する比較画像データに関連付けられているもので、その画像の停留所の次の停留所に関する整理券番号や停留所名称等のデータである。このような識別データを、所定のタイミングで(S108;Yes)、操作盤33’に出力する(S109)。
【0094】
これにより、乗務員による停留所送り操作の忘れや乗務員の誤操作があった場合、停留所識別装置10”は、停留所を出発または通過してから任意のタイミングで適正な情報として識別データを操作盤33’に出力する。この識別データを受け取った操作盤33’が、識別データに基づいた進捗データを運賃表示器35”や整理券発行機34等の車内設備機器に出力し得るように、操作盤33’を構成することによって、車内設備機器は表示や放送等を更新したり変更したりすることが可能になる。したがって、有用な情報を適切なタイミングで乗客に提供できる。
【0095】
なお、第1〜3実施形態において、バス100の後方にカメラ31’が搭載されている場合に、データベースから読み出される比較画像データに関連付けられる識別データとして、カメラ31’により撮影される撮影画像データと一致した比較画像データの次の停留所に関するもの(整理券番号、停留所名称等)を対応させた。しかし、バス100の前方にカメラ31が搭載されている場合と同様に、比較画像データには、その停留所に関するものを識別データとして関連付けて、後方のカメラ31’で撮影した撮影画像データと一致する比較画像データの次の比較画像データに関連付けられた識別データを出力可能に構成してもよい(S109)。
【0096】
また、第1〜3実施形態では、停留所識別装置10、10’、10”やこれらのシステムを、「後乗り前降り後払い」方式のバス100の車内設備機器に適用した構成を例示して説明したが、「前乗り後降り先払い」方式のバスの車内設備機器に適用してもよい。この場合の車内設備機器には、例えば、放送装置37や、次に停車を予定する停留所を表示する表示器等が挙げられる。