特許第6069699号(P6069699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069699
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】調整部材およびスイッチユニット
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/02 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   H01H9/02 B
   H01H9/02 L
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-288307(P2012-288307)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130760(P2014-130760A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 秀武
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−020911(JP,A)
【文献】 実開昭57−050136(JP,U)
【文献】 特開2011−150870(JP,A)
【文献】 特開2014−007170(JP,A)
【文献】 特表2009−512979(JP,A)
【文献】 特開平09−120742(JP,A)
【文献】 実開平06−082728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/02
H01H 13/04
H01H 15/02
H02B 1/04
H05K 1/18
H01R 9/16
H01R31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチと回路基板との間に介挿される調整部材であって、
第1導電端子および第2導電端子が設けられた第1の面と、
第3導電端子および第4導電端子が設けられた第2の面とを備え、
前記第1導電端子と前記第3導電端子は電気的に接続されており、
前記第2導電端子と前記第4導電端子は電気的に接続されており、
前記第1導電端子および前記第2導電端子は、前記第1の面がスイッチに対向することにより、当該スイッチの備える接続端子群と電気的に接続可能とされており、
前記第3導電端子および前記第4導電端子は、前記第2の面が回路基板に対向することにより、当該回路基板の表面に設けられた接続端子群と電気的に接続可能とされており、
前記第1の面の法線方向と前記第2の面の法線方向は異な
前記第2の面は、前記第3導電端子および前記第4導電端子よりも前記第1の面から離れた位置まで延びる部分を有し、
前記第1の面と前記第2の面がなす角度は鈍角である、調整部材。
【請求項2】
前記第1の面の法線方向は、スイッチが備えるプッシュ式操作部の変位方向に一致するように定められている、請求項1に記載の調整部材。
【請求項3】
前記第1の面の法線方向は、スイッチが備えるスライド式操作部の変位方向と直交するように定められている、請求項1に記載の調整部材。
【請求項4】
前記第3導電端子および前記第4導電端子は、前記第2の面の法線方向に延びている、請求項1からのいずれか一項に記載の調整部材。
【請求項5】
前記第2の面には、前記回路基板の一部にはんだ付け可能とされた第5導電端子が設けられている、請求項1からのいずれか一項に記載の調整部材。
【請求項6】
スイッチと、
回路基板と、
前記スイッチが装着される第1の面、および前記回路基板に装着される第2の面を有する調整部材とを備え、
前記第1の面には、前記スイッチが備える接続端子群と電気的に接続された第1導電端子および第2導電端子が設けられており、
前記第2の面には、前記回路基板が備える接続端子群と電気的に接続された第3導電端子および第4導電端子が設けられており、
前記第1導電端子と前記第3導電端子は電気的に接続されており、
前記第2導電端子と前記第4導電端子は電気的に接続されており、
前記第1の面の法線方向と前記第2の面の法線方向は異な
前記第2の面は、前記第3導電端子および前記第4導電端子よりも前記第1の面から離れた位置まで延びる部分を有し、
前記第1の面と前記第2の面がなす角度は鈍角である、スイッチユニット。
【請求項7】
前記第1の面の法線方向は、前記スイッチが備えるプッシュ式アクチュエータの変位方向に一致している、請求項に記載のスイッチユニット。
【請求項8】
前記第1の面の法線方向は、前記スイッチが備えるスライド式アクチュエータの変位方向と直交している、請求項に記載のスイッチユニット。
【請求項9】
前記スイッチの一部は、前記回路基板の厚みを規定する端面に対向するように配置されている、請求項からのいずれか一項に記載のスイッチユニット。
【請求項10】
前記スイッチの一部は、前記回路基板に形成された凹部内に配置されている、請求項からのいずれか一項に記載のスイッチユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチと回路基板の間に介挿される調整部材に関する。また当該調整部材を介して一体とされたスイッチと回路基板を備えるスイッチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータの位置に応じて接点同士の接続・非接続状態が切り替わるスイッチが回路基板上に直接実装されることにより、当該スイッチが備える接続端子群が回路基板上に設けられた接続端子群と電気的に接続される構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このようなスイッチユニットは電子機器に搭載され、当該電子機器の筺体に設けられた操作部とスイッチのアクチュエータが結合される。筺体の外部より操作部を操作することにより、筺体内に配置されたスイッチのアクチュエータが変位し、スイッチが備える接点同士の接続・被接続状態が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−120742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば電子機器の筺体にボタンが設けられており、当該ボタンの操作によりプッシュスイッチの押し子(アクチュエータ)が操作される構成の場合、良好な操作感を得るためには、ボタンの変位方向と押し子の変位方向とが一致していることを要する。
【0006】
しかしながらボタンの筺体における位置などの仕様は電子機器ごとに異なり、良好な操作感を得るためには、搭載される電子機器ごとにスイッチユニットの設計をし直す必要がある。汎用品のスイッチを使用しようとすれば回路基板との位置関係等において設計上の制約が生じ、スイッチの標準化を断念すれば製造コストの上昇が避けられない。
【0007】
よって本発明は、製造コストの上昇を伴うことなく電子機器側の仕様変更に容易に対応しつつも、良好なスイッチ操作感を実現しうる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第1の態様は、スイッチと回路基板との間に介挿される調整部材であって、
第1導電端子および第2導電端子が設けられた第1の面と、
第3導電端子および第4導電端子が設けられた第2の面とを備え、
前記第1導電端子と前記第3導電端子は電気的に接続されており、
前記第2導電端子と前記第4導電端子は電気的に接続されており、
前記第1導電端子および前記第2導電端子は、前記第1の面がスイッチに対向することにより、当該スイッチの備える接続端子群と電気的に接続可能とされており、
前記第3導電端子および前記第4導電端子は、前記第2の面が回路基板に対向することにより、当該回路基板の表面に設けられた接続端子群と電気的に接続可能とされており、
前記第1の面の法線方向と前記第2の面の法線方向は異なる。
【0009】
このような構成によれば、搭載される電子機器の仕様変更に応じて第1の面と第2の面のなす角度を定めるのみで、回路基板の実装面とスイッチが装着される面のなす角度を任意に定めることができる。したがって汎用品としてのスイッチおよび回路基板を使用しながらも、操作感が良好なスイッチユニットを構成することができる。
【0010】
すなわち上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第2の態様は、スイッチユニットであって、
スイッチと、
回路基板と、
前記スイッチが装着される第1の面、および前記回路基板に装着される第2の面を有する調整部材とを備え、
前記第1の面には、前記スイッチが備える接続端子群と電気的に接続された第1導電端子および第2導電端子が設けられており、
前記第2の面には、前記回路基板が備える接続端子群と電気的に接続された第3導電端子および第4導電端子が設けられており、
前記第1導電端子と前記第3導電端子は電気的に接続されており、
前記第2導電端子と前記第4導電端子は電気的に接続されており、
前記第1の面の法線方向と前記第2の面の法線方向は異なる。
【0011】
上記の各態様において、前記第1の面の法線方向は、スイッチが備えるプッシュ式操作部の変位方向に一致するように定められている構成としてもよい。この場合、プッシュ式操作部の操作に伴う押圧力を確実に受け止めることができる。スイッチとしてスライド式操作部を備えるものを用いる場合、前記第1の面の法線方向は、当該スライド式操作部の変位方向と直交するように定められている構成とすればよい。
【0012】
上記の各態様において、前記第2の面は、前記第3導電端子および前記第4導電端子よりも前記第1の面から離れた位置まで延びる部分を有する構成としてもよい。当該部分は、スイッチの操作によって調整部材を回路基板から剥離しようとする力が作用した場合に、回路基板に押し付けられる部分となる。したがって、調整部材の回路基板からの剥離を生じにくくすることができる。この特徴は、特に前記第1の面と前記第2の面がなす角度は鈍角である場合に有用である。
【0013】
上記の各態様において、前記第3導電端子および前記第4導電端子は、前記第2の面の法線方向に延びている構成としてもよい。この場合、これらの導電端子が回路基板に形成された孔に挿入されて半田付け等がなされるため、調整部材の回路基板に対する固定強度を高めることができる。
【0014】
前記第2の面には、前記回路基板の一部にはんだ付け可能とされた第5導電端子が設けられている構成としてもよい。この場合、当該導電端子が電気的接続に寄与するとしないとに関わらず、調整部材の回路基板に対する固定強度を高めることができる。
【0015】
上記のスイッチユニットにおいて、前記スイッチの一部は、前記回路基板の厚みを規定する端面に対向するように配置されている構成としてもよい。あるいは、前記スイッチの一部は、前記回路基板に形成された凹部内に配置されている構成としてもよい。回路基板の厚みをスイッチの配置スペースに利用することにより、スイッチユニット全体の高さ寸法を小さくすることができ、省スペースの要求に応えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造コストの上昇を伴うことなく電子機器側の仕様変更に容易に対応しつつも、良好なスイッチ操作感を実現しうるスイッチが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る調整部材とスイッチを示す斜視図である。
図2図1のスイッチを示す5面図である。
図3図1の調整部材を用いて構成されるスイッチユニットを示す図である。
図4図3のスイッチユニットの動作を説明するための図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る調整部材を示す5面図である。
図6図5の調整部材を用いて構成されるスイッチユニットを示す図である。
図7】スライドスイッチを用いた変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る調整部材10にプッシュスイッチ20が装着される様子を示す斜視図である。
【0020】
図1の(a)に示すように、調整部材10は、絶縁性の樹脂からなる本体部10aを備えている。本発明の第1の面としての本体部10aの前面10bは傾斜面とされており、その法線方向は斜め下方を向いている。本発明の第2の面としての本体部10aの下面10cは実質的な水平面とされており、その法線方向は鉛直下方を向いている。すなわち前面10bと下面10cの法線方向は異なっている。
【0021】
前面10bには、第1導電端子11および第2導電端子12が設けられている。下面10cには、第3導電端子13、第4導電端子14、および第5導電端子15が設けられている。第1導電端子11と第2導電端子12の表面は、前面10bと実質的に同一平面をなしている。第3導電端子13、第4導電端子14、および第5導電端子15は、それぞれ下面10cより鉛直下方(法線方向)に延びている。また前面10bには、一対の位置決め孔16が形成されている。
【0022】
第1導電端子11と第3導電端子13は、インサート成型により本体部10a内に埋設された図示しないバスバーの両端である。また第2導電端子12と第4導電端子14は、インサート成型により本体部10a内に埋設されたバスバーの両端である。すなわち、第1導電端子11と第3導電端子13は電気的に接続されている。また第2導電端子12と第4導電端子14は、電気的に接続されている。
【0023】
プッシュスイッチ20は、図2に示す周知の構成を有するものである。図2において(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は背面図、(e)は右側面図である。左側面から見た形状は右側面図に示したものと対称であるため、図示を省略している。
【0024】
プッシュスイッチ20の底面20aには、導電材料からなる第1接続端子21a、21b、第2接続端子22、第3接続端子23、および絶縁材料からなる一対の位置決め突起24が設けられている。第1接続端子21aは、底面20aより上方に折り曲げられて、その先端部が左側面20bに面している。第1接続端子21bは、底面20aより上方に折り曲げられて、その先端部が前面20dに面している。第2接続端子22は、底面20aより上方に折り曲げられて、その先端部が右側面20cに面している。第3接続端子23は、底面20aより上方に折り曲げられて、その先端部が右側面20cに面している。
【0025】
プッシュスイッチ20の上面20eには、本発明のプッシュ式アクチュエータとしての押し子25が設けられている。押し子25が押圧されることにより、第1接続端子21a、21bと第2接続端子22とが電気的に接続される構成とされている。第3接続端子23は、共通電位を提供するための電極であり、必要に応じて接地電極などとして用いられる。
【0026】
位置決め突起24を調整部材10の前面10bに形成された位置決め孔16に挿入することにより、図1の(b)に示すように、プッシュスイッチ20が調整部材10の前面10bに装着される。このとき第1接続端子21aは第1導電端子11に対向するように配置され、第2接続端子22は第2導電端子12に対向するように配置される。本実施形態においては、第1接続端子21bおよび第3接続端子23はオープンとされている。
【0027】
次いで半田付け処理がなされることにより、第1接続端子21aと第2接続端子22が、それぞれ第1導電端子11と第2導電端子12と電気的に接続されるとともに、プッシュスイッチ20が調整部材10の前面10b上に固定される。すなわち、調整部材10の第1導電端子11と第2導電端子12は、前面10bがプッシュスイッチ20に対向することにより、当該プッシュスイッチ20の備える第1接続端子21aおよび第2接続端子22と電気的に接続可能とされている。
【0028】
図3の(a)は、上記の調整部材10およびプッシュスイッチ20が実装される回路基板30の一部を示す平面図である。回路基板30の厚みを規定する端面30aには、凹部30bが形成されている。凹部30bの内側には、回路基板30の上面30cと下面30dを連通する3つの挿通孔31が形成されている。下面30dにおける各挿通孔31の周囲には、導電材料からなる接続端子32が形成されている。
【0029】
図3の(b)は、プッシュスイッチ20が装着された調整部材10が回路基板30に実装された状態を示す、図3の(a)における線IIIB−IIIBに沿う断面図である。調整部材10の第3導電端子13、第4導電端子14、および第5導電端子15が、それぞれ対応する挿通孔31に装着されることにより、調整部材10が回路基板30の上面30c上に載置される。
【0030】
次いではんだ付け処理がなされることにより、第3導電端子13、第4導電端子14、および第5導電端子15が、それぞれ接続端子32と電気的に接続されるとともに、調整部材10が回路基板30に対して固定される。すなわち、調整部材10の第3導電端子13と第4導電端子14は、下面10cが回路基板30に対向することにより、当該回路基板30の表面に設けられた接続端子群32と電気的に接続可能とされている。
【0031】
これにより、プッシュスイッチ20、回路基板30、およびこれらの間に介挿される調整部材10によってスイッチユニット1が構成される。このときプッシュスイッチ20の一部(第1接続端子21bを含む下方に位置する部分)は、回路基板30に形成された凹部30b内に収容され、回路基板30の厚みを規定する端面30aに対向している。換言すると、調整部材10の前面10bにおける高さ方向の寸法は、当該前面10bに装着されたプッシュスイッチ20の同方向における寸法よりも小さい。プッシュスイッチ20の一部を回路基板30の厚みを利用して収容することにより、スイッチユニット1全体の高さ寸法を小さくすることができ、省スペースの要求に応えることができる。
【0032】
図3の(b)において、符号Nは、調整部材10の前面10bの法線を示している。法線Nの方向すなわち前面10bの傾斜角は、プッシュスイッチ20の押し子25の変位方向に一致するように定められている。したがって前面10bの傾斜角を適宜に定めることにより、回路基板30の実装面と押し子25の変位方向がなす角度を任意に定めることができる。
【0033】
図4の(a)は、上記のスイッチユニット1が電子機器90に搭載された状態を模式的に示す図である。電子機器90の筺体の角部には、ボタン91が設けられている。スイッチユニット1は、プッシュスイッチ20の押し子25の変位方向がボタン91の変位方向に一致するように、筺体の内部に配置されている。換言すると、電子機器90に設けられたボタン91の変位方向に押し子25の変位方向が一致するように、調整部材10の前面10bの法線方向すなわち傾斜角が定められている。これによりボタン91の押し子25に対する接触状態を最適化することができる。
【0034】
例えば図4の(b)に示す第1の比較例のように、汎用品のプッシュスイッチ20および回路基板30のみで構成されたスイッチユニット101が、筺体の角部にボタン91が設けられた電子機器90に搭載される場合を考える。省スペースの観点からは図示のような配置が望ましいが、ボタン91の変位方向と押し子25の変位方向が一致していないため、良好な操作感が得られないのみならず、応力集中による破損のおそれが生ずる。
【0035】
スイッチユニット101を用いて図4の(a)に示すようなボタン91と押し子25の最適接触状態を得るためには、回路基板30を傾斜させてその法線方向をボタン91の変位方向に一致させる必要がある。またはボタン91と押し子25の対向面が互いに平行となるように追加加工を施す必要がある。このような設計変更は、部品レイアウト上の制約や製造コストの上昇を伴うことを避けられない。
【0036】
また図4の(c)に示す第2の比較例のように、汎用品の回路基板30に専用品のプッシュスイッチ120が実装されたスイッチユニット102が、筺体の角部にボタン91が設けられた電子機器90に搭載される場合を考える。プッシュスイッチ120は、回路基板30に実装されたときに押し子125の変位方向がボタン91の変位方向と一致するように調整された形状を有する本体120aを備えている。このような構成によれば、ボタン91と押し子125の最適な接触状態は得られるものの、搭載される電子機器の仕様変更ごとに本体120aの形状を設計し直す必要があり、部品コストおよび製造コストの上昇が避けられない。
【0037】
一方、本実施形態に係る調整部材10を用いることにより、上記のような問題を回避することができる。搭載される電子機器90の仕様変更に応じて調整部材10の形状を設計変更するのみで、汎用品としてのプッシュスイッチ20および回路基板30を使用しながらも、操作感が良好なスイッチユニット1を構成することができる。
【0038】
本実施形態においては、押し子25の変位方向と調整部材10の前面10bの法線方向が一致しているため、ボタン91の操作による押圧力を確実に受け止めることができる。
【0039】
また本実施形態においては、調整部材10の下面10cは、第3導電端子13および第4導電端子14よりも前面10bから離れた位置まで延びる部分10dを有している。当該部分10dは、押し子25の操作によって調整部材10を回路基板30から剥離しようとする力が作用した場合に、回路基板30の上面30cに押し付けられる部分となる。したがって、調整部材10の回路基板30からの剥離を生じにくくすることができる。
【0040】
この特徴は、特に本実施形態のように、調整部材10の前面10bと下面10cのなす角度が鈍角である場合(前面10bが斜め下方を向いている場合)に有用である。押し子25を押圧する力は調整部材10を回路基板30から剥離する向きに作用するものの、この力により生ずる回転モーメントは、部分10dを回路基板30に押し付ける力として作用するためである。
【0041】
本実施形態においては、第5導電端子15は、電気的接続に関与しないダミー端子である。第3導電端子13と第4導電端子14の間に配置され、回路基板30の一部である接続端子32にはんだ付けされることにより、調整部材10がより堅固に回路基板30に対して固定されうる。この特徴も調整部材10の回路基板30からの剥離防止に寄与する。
【0042】
次に図5および図6を参照しつつ、本発明の第2の実施形態に係る調整部材50について説明する。図5は、調整部材50の外観を示す5面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は背面図、(e)は左側面図である。右側面から見た形状は左側面図に示したものと対称であるため、図示を省略している。
【0043】
本実施形態の調整部材50は、絶縁性の樹脂からなる本体部50aを備えている。側面視L字状の外観を呈する本体部50aは、本発明の第1の面としてのスイッチ装着面50b、および本発明の第2の面としての基板装着面50cを備えている。スイッチ装着面50bと基板装着面50cの延びる方向は直交している。すなわちスイッチ装着面50bと基板装着面50cの法線方向は異なっている。
【0044】
スイッチ装着面50bには、第1導電端子51および第2導電端子52が設けられている。基板装着面50cには、第3導電端子53および第4導電端子54が設けられている。第1導電端子51と第2導電端子52の表面は、スイッチ装着面50bと実質的に同一平面をなしている。第3導電端子53と第4導電端子54の表面は、基板装着面50cと実質的に同一平面をなしている。
【0045】
第1導電端子51と第3導電端子53は、インサート成型により本体部50a内に埋設された図示しないバスバーの両端である。また第2導電端子52と第4導電端子54は、インサート成型により本体部50a内に埋設されたバスバーの両端である。すなわち、第1導電端子51と第3導電端子53は電気的に接続されている。また第2導電端子52と第4導電端子54は、電気的に接続されている。
【0046】
図6の(a)に示すプッシュスイッチ60は、周知の構成を有するものである。プッシュスイッチ60の図示しない底面には、導電材料からなる第1接続端子61および第2接続端子62が設けられ、左右の側面より突出するように延びている。プッシュスイッチ60は、本発明のプッシュ式アクチュエータとしての押し子65を備えている。押し子65が押圧されることにより、第1接続端子61と第2接続端子62が電気的に接続される構成とされている。
【0047】
プッシュスイッチ60が調整部材50のスイッチ装着面50bに装着されると、第1接続端子61は第1導電端子51に対向するように配置され、第2接続端子62は第2導電端子52に対向するように配置される。
【0048】
次いで半田付け処理がなされることにより、第1接続端子61と第2接続端子62が、それぞれ第1導電端子51と第2導電端子52と電気的に接続されるとともに、プッシュスイッチ60が調整部材50のスイッチ装着面50b上に固定される。すなわち、調整部材50の第1導電端子51と第2導電端子52は、スイッチ装着面50bがプッシュスイッチ60に対向することにより、当該プッシュスイッチ60の備える第1接続端子61および第2接続端子62と電気的に接続可能とされている。
【0049】
図6の(b)は、プッシュスイッチ60が装着された調整部材50が回路基板70に載置された状態を示している。このとき調整部材50の第3導電端子53および第4導電端子54が、それぞれ回路基板70の表面に設けられた対応する接続端子71と対向するように配置される。
【0050】
次いではんだ付け処理がなされることにより、第3導電端子53および第4導電端子54が、それぞれ接続端子71と電気的に接続されるとともに、調整部材50が回路基板70に対して固定される。すなわち、調整部材50の第3導電端子53と第4導電端子54は、基板装着面面50cが回路基板70に対向することにより、当該回路基板70の表面に設けられた接続端子群71と電気的に接続可能とされている。
【0051】
これにより、プッシュスイッチ60、回路基板70、およびこれらの間に介挿される調整部材50によってスイッチユニット1Aが構成される。このときプッシュスイッチ60の一部は、回路基板70の厚みを規定する端面70aに対向するように配置されている。通常は部品が配置されることのない端面70aを利用することにより、スイッチユニット1A全体の高さ寸法を小さくすることができ、省スペースの要求に応えることができる。
【0052】
また本実施形態においては、スイッチ装着面50bと回路基板70の厚みを規定する端面70aが平行となるように、調整部材50が配置されている。換言すると、端面70aおよびスイッチ装着面50bの法線方向と、押し子65の変位方向が一致している。そのため押し子65の操作に伴う押圧力を確実に受け止めることができる。
【0053】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0054】
調整部材10、50とプッシュスイッチ20、60の組合せは任意である。したがって、調整部材10の前面10bにプッシュスイッチ60を装着してもよく、調整部材50のスイッチ装着面50bにプッシュスイッチ20を装着してもよい。プッシュスイッチは周知の構成を有する任意のものを装着することができ、端子の数や形状に応じて調整部材10の前面10に設けられる第1導電端子11と第2導電端子12、または調整部材50のスイッチ装着面50bに設けられる第1導電端子51と第2導電端子52の形状や配置は、適宜に変更可能である。
【0055】
また調整部材10、50に装着されるスイッチは、プッシュスイッチに限られるものではない。例えば図7に示すように、スライドスイッチ80が調整部材50に装着される構成を採用することができる。周知の構成を有するスライドスイッチ80は、図中左右方向に変位可能なスライド式操作部85を備えており、その位置に応じて第1接続端子81と第2接続端子の接続・非接続状態が変化する構成とされている。
【0056】
この場合、調整部材50のスイッチ装着面50bの法線方向は、スライド式操作部85の変位方向と直交する向きに定められる。調整部材10の前面10bの法線方向についても同様である。
【0057】
調整部材10、50と回路基板30、70の組合せもまた任意である。したがって、回路基板30の凹部30内にスイッチ装着面50bの一部が収容されるように、調整部材50を配置してもよい。但し調整部材50の第3導電端子53および第4導電端子54と電気的に接続される接続端子を、回路基板30の上面30cに設けることを要する。一方、調整部材10の第3導電端子13、第4導電端子14、および第5導電端子15が挿入される挿通孔を回路基板70に形成し、端縁70aに形成された凹部内に調整部材10が配置される構成としてもよい。一般に挿通孔に導電端子を挿入して電気的接続および固定を行なう方が、調整部材が回路基板から剥離しにくい構成とすることができる。
【0058】
凹部30bは、必ずしも回路基板30の厚み寸法を規定する端面30aに形成されることを要しない。回路基板30の厚みをスイッチの一部を収容するために利用可能な限りにおいて、凹部30bは回路基板30の上面30cに形成されていてもよい。
【0059】
調整部材10における第5導電端子15は、必ずしも電気的接続に関与しないダミー端子であることを要しない。本体部10aの内側または外側に導電経路を設け、プッシュスイッチ20の第1接続端子21bや第3接続端子23が接続される構成としてもよい。いずれの端子をどのような目的で使用するかは、スイッチユニット1が搭載される電子機器の仕様に応じて適宜に決定されうる。
【0060】
調整部材10の前面10bが下面10cとなす角度、および調整部材50のスイッチ装着面50bが基板装着面50cとなす角度は、スイッチユニット1、1Aが搭載される電子機器の仕様に応じて適宜に決定されうる。各実施形態において示した鈍角、直角に限らず、鋭角とされてもよい。すなわち前面10bおよびスイッチ装着面50bは上方に傾斜していてもよい。
【0061】
調整部材10の本体部10a、および調整部材50の本体部50aは、必ずしもインサート成型により得られるモノリシックな構造であることを要しない。スイッチが装着される面に設けられた導電端子と、基板に装着される面に設けられた導電端子とが電気的に接続されうるならば、それぞれが導電経路を備える2つ以上のブロックを適宜に組合せ、任意の形状の調整部材が組み立てられる構成としてもよい。
【0062】
上記の説明における「上方」「下方」という表現は、図面を参照した説明において便宜上用いたに過ぎず、製品の使用時における方向を限定する意図ではない。「上方」および「下方」は、各々「回路基板から離間する方向」および「回路基板に接近する方向」と言い換えることができる。
【符号の説明】
【0063】
1:スイッチユニット、10:調整部材、10b:前面、10c:下面、10d:第3導電端子および第4導電端子よりも前面から離れた位置まで延びる部分、11:第1導電端子、12:第2導電端子、13:第3導電端子、14:第4導電端子、15:第5導電端子、20:プッシュスイッチ、21a、21b:第1接続端子、22:第2接続端子、23:第3接続端子、25:押し子、30:回路基板、30a:回路基板の厚みを規定する端面、30b:凹部、32:接続端子群、N:前面の法線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7