(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乳化、分散或いは混合の流体処理を予定する流体を撹拌室の内部に導入する開口部と、前記流体を撹拌室の外部へ吐出する吐出口を設けたスクリーンを備える撹拌室と、前記撹拌室内に配位された回転する撹拌羽根から構成される処理部を前記流体内に配置し、前記攪拌羽根が回転することによって、前記開口部から前記流体が前記攪拌室へ導入され、前記攪拌羽根と前記スクリーンとの間の微小な間隙において行われる前記流体に対するせん断によって、前記流体処理がなされる流体処理装置において、
前記処理部は、前記流体を外部から内部へ吸入する吸入口を有する吸入室を備え、
前記吸入室と前記攪拌室とは隔壁によって区画され、前記隔壁に前記開口部が設けられ、
前記吸入室は、前記開口部を介して前記攪拌室に繋がるものであり、
前記開口部における前記流体の流路断面積を変更する流路調整部を備え、
前記流路調整部は、前記開口部の周囲に設けられた外周側部材を備え、前記外周側部材は前記隔壁とは別部材であって、前記外周側部材を動かすか交換する操作を行なうことによって、前記流路断面積を変更させて、前記流体処理後の前記流体中に含まれる粒子の粒子径を制御することができるように構成したことを特徴とする流体処理装置。
前記流路調整部は、前記開口部の周囲に設けられた外周側部材を備え、前記外周側部材を動かすか交換する操作を行なうことによって、前記流路断面積が変化するものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の流体処理装置。
前記流路調整部は、前記開口部の前記流路断面積と前記攪拌羽根の最大外径により求められる円の面積との比率である開口率を変更し、前記開口率の増減変化に対して前記流体処理後の前記粒子径が増減変化する変化率を負値、正値または零に維持し、前記流体処理後の前記粒子径を制御するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流体処理装置。
乳化、分散或いは混合の流体処理を予定する流体を撹拌室の内部に導入する開口部と、前記流体を撹拌室の外部へ吐出する吐出口を設けたスクリーンを備える撹拌室と、前記撹拌室内に配位された回転する撹拌羽根から構成される処理部を前記流体内に配置した流体処理装置を用い、
前記攪拌羽根を回転させることによって、前記開口部から前記流体を前記攪拌室へ導入し、前記攪拌羽根と前記スクリーンとの間の微小な間隙において前記流体にせん断力を加えることによって、前記流体処理がなされる流体処理方法において、
前記開口部における前記流体の流路断面積を変更することにより、前記流体処理後の前記流体中に含まれる粒子の粒子径を制御することを特徴とする流体処理方法。
【背景技術】
【0002】
流体処理装置、特に被処理流動体の乳化、分散または混合処理に用いる攪拌装置は、流体の乳化、分散または混合処理を行う装置として、種々のものが提案されているが、今日においては、ナノメートルサイズの粒子、いわゆるナノ粒子等の粒子径の小さな物質を含む被処理流動体を良好に処理することが要求されている。
【0003】
例えば、攪拌装置の一種としてビーズミルやホモジナイザーが周知となっている。ところが、ビーズミルでは、粒子の表面の結晶状態が破壊され、傷つけられることによる機能低下が問題となっている。また異物発生の問題も大きい。高圧ホモジナイザーでは、機械の安定稼働の問題や大きな必要動力の問題等が解決されていない。
【0004】
また、回転式ホモジナイザーは、従来プレミキサーとして用いられていたが、ナノ粒子の分散やナノメートルサイズの乳化を行うには、さらにナノ化の仕上げのために仕上げ機を必要とする。
【0005】
これに対して、本発明者は、特許文献1、2に開示される攪拌装置を提案した。この攪拌装置は、複数枚の攪拌羽根を備えたローターと、前記ローターの周囲に敷設されると共に複数のスリットを有するスクリーンとを備えるものである。前記ローターと前記スクリーンとは、相対的に回転することによって、スリットを含むスクリーンの内壁と攪拌羽根との間の微小な間隙において被処理流動体のせん断が行われると共に、前記スリットを通じてスクリーンの内側から外側に被処理流動体が吐出されるものである。
【0006】
この種の攪拌装置は、特許文献2の「<従来の技術>」の項に記載されるように、羽根車(即ちローター)の回転数を調整することによって、攪拌条件を変化させていた。
【0007】
その記載を引用すると、「例えば、乳化の場合を例に採って考えると、羽根車の前記回転によって、攪拌室の前記吐出口が設けられた内壁と、羽根車の羽根先との間において、流体のせん断がなされ、一方の流体へ他の流体が乳化されるのである。
【0008】
ところで、処理される各種流体の性質の相異や複数流体の組み合わせの相異によって、一つの装置において乳化の処理能力が変動するため、処理しようとする流体に応じて乳化能力の最適条件をあらかじめ検出し、この条件に装置を適合させておく必要がある。
従来この乳化能力の最大点を確保する羽根車の回転数の任意設定によって調整を行ってきた。
これは、乳化の能力を決定する要因は下記の各パラメーターによって与えられることに基づく。
【0009】
即ちせん断強さ、エネルギー量及び通過回数という数値によって処理能力の評価が行われた。このせん断強さ(S)は、羽根車と攪拌室内壁間のせん断力の強さを示す値であり、次式で与えられる。
S=Ns・v=Ns・π・d・n
次にエネルギー量(Pv)は、単位処理量当たりの攪拌エネルギーを示す量であり、次式で与えられる。
【0010】
そして、通過回数(Pn)は、循環数即ち流体が羽根車と攪拌室内壁間との間隙を通過した回数であり、次式で与えられる。
【0011】
【0012】
ここで、vは羽根車の最大周速度(m/sec)であり、dは羽根車の径(m)であり、nは羽根車の 回転数(rps)である。又Pは攪拌所要動力(kw)であり、Npは動力数であり、Nqは吐出係数である。更にQは吐出量(m3/sec)であり、Nsはせん断係数、Vは処理量(m3)である。
Tは処理時間(sec)であり、ρは処理を予定する流体固有の比重量(kg/m3)である。
前記各式から明らかなように、羽根車の回転数(n)を調整することによって、攪拌条件を変化させていたのである。」
【0013】
また、特許文献2に係る発明では、羽根車、回転数制御のみならず攪拌等の処理に所要のエネルギーを一定とし、羽根車の羽根先と、スクリーンの内壁との間のクリアランスを任意の幅に選択することを可能とした攪拌装置を提案するものであり、これによって、流体に応じた能力の向上最適化を図るものであった。
【0014】
しかし、近年微粒子を用いる化学、電子、電気、自動車、食品、色材、医薬などの分野において、より微細な微粒子で且つ粒度分布の揃った均一な粒子が求められており、従来開示された内容の攪拌装置の性能では、微細な微粒子で且つ粒度分布の揃った乳化・分散処理を達成することが難しかった。
【0015】
そのため、現状における乳化分散においても、前記高圧ホモジナイザーやビーズミルが主体となる場合が多く、エネルギーコストや異物発生、不純物混入の問題は解決されておらず、また製造工程が自ずと複雑になりやすかった。
【0016】
出願人による特許文献1、2には、ローターとスクリーンとのせん断力の効果、並びにスクリーンから吐出される断続ジェット流の効果が開示されている。そしてこれに基づいて出願人が製造・販売する攪拌装置は、最小スケールの実験機としてローター径が30mmの場合を標準とするものであるが、まだなお攪拌性能の向上に関して改善の余地を残していた。
【0017】
すなわち、この攪拌装置の処理部は処理流体を装置内部へ吸入する吸入口を備えた吸入室と、内部にローターが収容され、吸入室を経由して流入した処理流体を攪拌し、スクリーンを通じて外部へ吐出する攪拌室との2室から成り、この2室を仕切る隔壁の中央部分に開口部が設けられ、攪拌羽根の回転軸が挿通される構成を採るが、この開口部が攪拌装置の性能に及ぼす影響については、充分な知見が得られていなかった。
【0018】
一方、特許文献3、4で開示するように、攪拌効率を確保するために、攪拌槽の内壁に沿って設けられた中央部に開口部を備える板状部材と攪拌翼に関し、開口部の内径寸法と攪拌翼の直径との大小関係について記載され、各部の寸法比率の好適な範囲が示されるが、この寸法比率を構成が異なる特許文献1、2で開示される攪拌装置に対して適用することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、攪拌羽根が回転することによって、開口部から流体が攪拌室へ導入され、攪拌羽根とスクリーンとの間の微小な間隙において行われる流体に対するせん断によって、流体処理がなされる流体処理装置において、開口部が攪拌性能に及ぼす影響について最適化を図ることができる流体処理装置と流体処理方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、乳化、分散或いは混合の流体処理を予定する流体を撹拌しつの内部に導入する開口部と、前記流体を撹拌室の外部へ吐出する吐出口を設けたスクリーンを備える撹拌室と、前記撹拌室内に配位された回転する撹拌羽根から構成される処理部を前記流体内に配置し、前記攪拌羽根が回転することによって、前記開口部から前記流体が前記攪拌室へ導入され、前記攪拌羽根と前記スクリーンとの間の微小な間隙において行われる前記流体に対するせん断によって、前記流体処理がなされる流体処理装置において、言い換えれば、乳化、分散或いは混合の流体処理を予定する流体内に配置される処理部を備え、前記処理部は、攪拌室と、前記攪拌室内に配位された回転する攪拌羽根を備え、前記攪拌室は、前記流体を前記攪拌室内に導入する導入用の開口部とスクリーンとを備え、前記スクリーンは前記攪拌室から前記流体を吐出する吐出口を備え、前記攪拌羽根が回転することによって、前記開口部から前記流体が前記攪拌室へ導入され、前記攪拌羽根と前記スクリーンとの間の微小な間隙において行われる前記流体に対するせん断によって、前記流体処理がなされる流体処理装置において、下記の手段を備えたものを提供する。
【0022】
本発明の流体処理装置にあっては、前記開口部における前記流体の流路断面積を変更する流路調整部を備え、前記流路調整部を操作して前記流路断面積を変更することにより、前記流体処理後の前記流体中に含まれる粒子の粒子径を制御することができるようにしたものである。
【0023】
従来のこの種の流体処理装置にあっては、攪拌羽根の回転速度を制御することによって、処理後の流体中に含まれる粒子の粒子径を制御できることは知見されていたが、本発明者によって、攪拌羽根の回転速度を変化させずとも、あるいは変化させた場合にあっても、前記開口率を変更することにより、前記流体処理後の前記流体中の粒子の粒子径を制御することができることが知見され、この知見に基づき本発明が完成されたものである。
【0024】
本発明における流体中に含まれる粒子の粒子径とは、例えば油性流体と水性流体との混合流体に対してせん断力を加えることで生成されるエマルションの粒子径を挙げることができる。また、微細な粒子状の材料物質を含む流体に対してせん断力を加えることで粒子状の材料物質をさらに微細化してナノメートルサイズの粒子、いわゆるナノ粒子等にする場合の、微細化された粒子の粒子径を挙げることができる。
前記処理部は、吸入室を設けずに実施することもできるが、流体を外部から内部へ吸入する吸入口を有する吸入室を備えたものとして実施することもできる。
【0025】
前記流路調整部は、前記開口部の周囲に設けられた外周側部材を備え、前記外周側部材を動かすか交換する操作を行なうことによって、前記流路断面積を変化させることができる。
【0026】
また、前記開口部を貫いて配置される回転軸などの貫通部を備えたものにあっては、前記流路調整部は、前記貫通部に設けられた内周側部材を備え、前記内周側部材を動かすか交換する操作を行なうことによって、前記流路断面積が変化するものとして実施することもできる。
前記外周側部材と前記内周側部材とは併用することができる。
【0027】
前記流路調整部は、前記開口部の前記流路断面積と前記攪拌羽根の最大外径により求められる円の面積との比率である開口率を変更し、前記開口率の増減変化に対して前記流体処理後の前記粒子径が増減変化する変化率を負値、正値または零に維持し、前記流体処理後の前記粒子径を制御する。
【0028】
前記処理部は、流体容器の底部に接することがないように配置することもできるし、前記流体容器の内壁面に前記攪拌室を支持させた状態に配置することもできる。
【0029】
また、本発明は、乳化、分散或いは混合の流体処理を予定する流体を撹拌室の内部に導入する開口部と、前記流体を撹拌室の外部へ吐出する吐出口を設けたスクリーンを備える撹拌室と、前記撹拌室内に配位された回転する撹拌羽根から構成される処理部を前記流体内に配置した流体処理装置を用い、前記攪拌羽根を回転させることによって、前記開口部から前記流体を前記攪拌室へ導入し、前記攪拌羽根と前記スクリーンとの間の微小な間隙において前記流体にせん断力を加えることによって、前記流体処理がなされる流体処理方法において、言い換えれば、乳化、分散或いは混合の流体処理を予定する流体内に配置される処理部を備え、前記処理部は、攪拌室と、前記攪拌室内に配位された回転する攪拌羽根を備え、前記攪拌室は、前記流体を前記攪拌室内に導入する導入用の開口部とスクリーンとを備え、前記スクリーンは前記攪拌室から前記流体を吐出する吐出口を備えた流体処理装置を用い、前記攪拌羽根を回転させることによって、前記開口部から前記流体を前記攪拌室へ導入し、前記攪拌羽根と前記スクリーンとの間の微小な間隙において前記流体にせん断力を加えることによって、前記流体処理がなされる流体処理方法において、前記開口部における前記流体の流路断面積を変更することにより、前記流体処理後の前記流体中に含まれる粒子の粒子径を制御することを特徴とする流体処理方法を提供することもできる。その際、前記開口部の径が小さくなるに伴って、得られる前記粒子径が小さくなるようにして実施することもできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、攪拌羽根が回転することによって、開口部から流体が攪拌室へ導入され、攪拌羽根とスクリーンとの間の微小な間隙において行われる流体に対するせん断によって、流体処理がなされる流体処理装置において、攪拌羽根の回転速度を変更せずとも、もしくは変更と共に、開口部の流路断面積と攪拌羽根の最大外径により求められる円の面積との比率である開口率を変更することにより、流体処理後の流体中に含まれる粒子の粒子径を制御することができるものである。
【0031】
また、本発明は、攪拌羽根を回転させることによって、開口部から流体を攪拌室へ導入し、攪拌羽根とスクリーンとの間の微小な間隙において流体にせん断力を加えることによって、流体処理がなされる流体処理方法において、攪拌羽根の回転速度を変更せずとも、もしくは変更と共に、開口部の流路断面積と攪拌羽根の最大外径により求められる円の面積との比率である開口率を変更することにより、流体処理後の流体中に含まれる粒子の粒子径を制御することができる流体処理方法を提供することができたものである。
【0032】
具体的には、流体の条件を一定にした状態で、攪拌羽根の回転数を変化させずとも、開口率の増減変化に対して前記流体処理後の前記粒子径が増減変化する変化率を負値に維持することもでき、開口率の増減変化に対して前記流体処理後の前記粒子径が増減変化する変化率を正値に維持することもできる。より具体的には、同一の流体に対する同一の圧力条件下の処理にあっては、攪拌羽根の回転数を変化させずとも、開口率の増減変化により、得られた粒子径を増減させることができる。また、開口率の変化と共に、流体の圧力条件を変化させることによって、より多様な粒子径の制御も可能であり、前記の開口率の増減変化に対する粒子径の変化率を負値、正値とするほか、零に維持することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
(流体について)
まず、本発明の流体処理装置の処理対象物である流体について説明する。この流体としては、例えば油性流体と水性流体との異なる性状の複数の流体を混合した混合流体や、微細な粒子状の材料物質を含む流体を例示し得る。また、流体処理によって得られる粒子としては、エマルションや、粒子状の材料物質を含む流体に対してせん断力を加えることで微小粒子をさらに微細化したナノ粒子などの微細な粒子を挙げることができる。
【0036】
また、流体処理としては、特に限定はされないが、例えばオイルと水との流体による均一な乳化ナノ粒子を得る処理や、顔料やセラミック、金属、半導体、シリカ、薬物のような有機物等の凝集粒子を均一に分散処理したり、例えばセルロースやヒアルロン酸などを水に均一に溶解したりするなどの処理を例示できる。
より具体的には、化粧品・医薬品の原料や食品・合成樹脂などに用いられる、石油の蒸留・精製などで得られる炭化水素類の混合物である流動パラフィンと純水の乳化に有用である。その乳化に用いる処方は、例えば、流動パラフィンを29.4wt%、純水を68.6wt%、乳化剤としてTween80を1.33wt%、Span80を0.67wt%を混合した流体を例示することができる。
塗料、インク、合成樹脂、織物、化粧品、食品などの着色に使われている顔料の分散の場合、銅フタロシアニン顔料や赤色顔料のPR177等を含有した流体があげられる。例えば、赤色顔料PR177を5wt%、分散剤としてBYK−2000(ビックケミ―製)を5wt%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の混合液(PGMEA/PGME=4/1(体積比))を90wt%よりなる流体を例示することができる。
【0037】
(
図1、
図2及び
図7の説明)
発明に係る流体処理装置は、
図1及び
図2に示すように、乳化、分散或は混合の処理を予定する流体内へ配される処理部1と、処理部1内に配置されたローター2とを備えるものである。
【0038】
処理部1は、中空のハウジングであり、支持管3に支持されることによって、被処理流動体を収納する流体容器4或は被処理流動体の流路に配設される。この例では、処理部1は支持管3の先端に設けられ、流体容器4の上部から内部下方へ挿入されたものを示しているが、この例に限定するものではなく、例えば、
図7に示すように、処理部1は流体容器4の底面から上方へ突出するように支持されるものであっても実施可能である。
【0039】
処理部1は、被処理流動体を外部から内部へ吸入する吸入口5を有する吸入室6と、吸入室6に導通する攪拌室7とを備える。攪拌室7は、吐出口であるスリット8を複数有するスクリーン9によって、その外周が規定されている。なお、
図7(C)に示すように、吸入室6は省略して実施することもできるし、図示は省略するが、簡単な枠組のみで吸入室6を形成するものであってもよい。
【0040】
この吸入室6と攪拌室7とは、両室6、7間の区画部である隔壁10によって区画されると共に、隔壁10に設けられた導入用の開口部11を介して導通している。この例では、区画部は両室6、7間を比較的短い距離を隔てて区画する隔壁10として実施しているが、比較的長い距離を隔てて区画する狭隘な筒状の管体として実施するものであってもよい。
図7(C)のように、吸入室6を設けない場合には、開口部11は、直接流体容器4の内部に開口するようになる。
【0041】
なお、
図2の例では、支持管3の先端(図の下端)に吸入室6の基端(図の上端)が螺合され、吸入室6の先端に攪拌室7(スクリーン9)の基端が螺合されており、隔壁10は吸入室6の下端に一体に形成されているが、これらの部材の構成や結合状態は種々変更して実施することができる。
【0042】
前記ローター2は、周方向に複数枚の攪拌羽根12を備えた回転体であり、攪拌羽根12とスクリーン9との間に微小なクリアランスを保ちつつ、回転する。ローター2を回転させる構造には種々の回転駆動構造が採用できるが、この例では、回転軸13の先端にローター2が設けられ、攪拌室7内に回転可能に収容されている。より詳しくは、回転軸13は、支持管3の内部に挿通されている。さらに、回転軸13は、吸入室6から、隔壁10の開口部11を通って攪拌室7に達するように配設されており、その先端(図では下端)にローター2が取り付けられている。従って、この回転軸13が、開口部11を貫通する貫通部となる。
【0043】
回転軸13の基端は、モータ14などの回転駆動装置に接続されている。モータ14は数値制御などの制御系統を有するもの或はコンピュータの制御下に置かれるものを用いることが好適である。
【0044】
この流体処理装置は、ローター2が回転することによって、回転する攪拌羽根12がスクリーン9の内壁面を通過する際、両者間に存在する被処理流動体に加えられるせん断力によって、乳化、分散或は混合がなされる。これと共に、ローター2の回転によって、被処理流動体に運動エネルギーが与えられ、この被処理流動体がスリット8を通過することで、さらに加速されて、断続ジェット流を形成しながら攪拌室7の外部に流出する。この断続ジェット流により、速度界面で液−液のせん断力が発生することでも乳化、分散或は混合の処理が行われる。
【0045】
なお、
図1、
図2に示すように、回転軸13を吸入室6から隔壁10の開口部11を貫いて攪拌室7に挿入し、攪拌室7内の攪拌羽根12を回転させるようにしてもよく、
図7に示すように、流体容器4の外側にモータ14及び支持管3を配置し、回転軸13を、攪拌室7の底部側から、攪拌室内に挿入してもよい。これによって、回転軸13を、吸入室6から隔壁10の開口部11を貫いて攪拌室7に挿入するようにせずとも、回転軸13を攪拌室7内のみに配置して攪拌羽根12を回転させることができる。
【0046】
(
図3及び
図4の説明)
スクリーン9は、
図3及び
図4に示すように、断面円形の筒状をなす。このスクリーン9は、軸方向において径の一定な円筒形であってもよいが、例えば、円錐形の表面形状のように、導入用の開口部11から遠ざかるに従って(
図2の例では下方に向かうに従って)、漸次その径が小さくなるようにすることが望ましい。軸方向に一定径とした場合には、導入用の開口部11に近いところ(
図2では上方)ではスリット8からの吐出量が多く、逆に、遠いところは吐出量が減る(
図2では下方)。その結果、コントロールできないキャビテーションが発生する場合があり、機械故障に繋がる恐れがある。
【0047】
スリット8は、回転軸13の軸方向に(図の例では上下方向)に直線状に伸びるものを示したが、スパイラル状など、湾曲して伸びるものであってもよい。また、スリット8の形状は、必ずしも細長い空間である必要はなく、多角形や円形や楕円形などであってもよい。また、周方向において、スリット8は等間隔に複数個が形成されているが、間隔をずらして形成することもでき、複数種類の形状や大きさのスリット8を設けることを妨げるものでもない。
【0048】
(
図5及び
図6の説明)
ローター2の攪拌羽根12は、
図5及び
図6に示すように、横断面(回転軸13の軸方向に直交する断面)において、ローター2の中心から放射状に一定の幅で直線状に伸びるものを図示したが、外側に向かうに従って漸次幅が広くなるものであってもよく、湾曲しながら外側に伸びるものであってもよい。
【0049】
また、回転軸13の軸方向においては、これらの攪拌羽根12は、回転軸13の回転軸を含む平面に沿って、直線状に伸びるものを示したが、スパイラル状など、上下方向に湾曲して伸びるものであってもよい。これらの個々の構成部材の形状は、ローター2の回転によって、攪拌羽根12とスクリーン9との間で被処理流動体のせん断が可能なものであり、且つ、前記のジェット流が生ずるように被処理流動体に運動エネルギーを与えることができることを条件に、種々変更することが可能である。
【0050】
スクリーン9と攪拌羽根12とのクリアランスは、前記のせん断とジェット流が生ずる範囲で適宜変更できるが、通常約0.2〜2.0mmであることが望ましい。また、このクリアランスは、攪拌室7とローター2との少なくとも何れか一方を軸方向に移動可能としておくことで、調整できるようにしてもよい。
【0051】
(
図8の説明)
流体容器4内の被処理流動体の全体の攪拌均一化を行なうために、流体容器4内に別個の攪拌装置を配置することもできる。そして、
図8に示すように、このような流体容器4内全体の攪拌のための攪拌翼15を、攪拌室7と同体に回転するように、設けることもできる。この場合、攪拌翼15と、スクリーン9を含む攪拌室7とは、共に回転させられる。その際、攪拌翼15及び攪拌室7の回転方向は、ローター2の回転方向とは、同一であってもよく、逆方向であってもよい。
【0052】
(
図9の説明)
また、前述の
図1〜
図8を参照して説明した例では、スクリーン9を含む攪拌室7を実質的に回転させない(低速で回転させるものを含む)ものであったが、
図9に示すように、スクリーン9を高速回転させるものであってもよい。具体的には、攪拌室7を支持管3に対して回動可能とし、攪拌室7の先端に、第2モータ16の回転軸を接続することによって、高速回転可能とするものである。このスクリーン9の回転方向は、攪拌室7の内部に配置されたローター2の回転方向とは逆方向に回転させる。これによって、スクリーン9とローター2との相対的回転速度が増加する。
【0053】
(
図10の説明)
上述した処理部1において、本発明は、下記の形態を備えたものとして実施することができる。
前述の隔壁10は、
図10に示すような流路調整部20を有する。この流路調整部20は、開口部11における流体の流路断面積と、攪拌羽根12の最大径により求められる円の面積との比率である開口率を変更するものである。具体的には、
図10(B)に示すように、この流路調整部20は、隔壁10に設けられた外周側部材として実施され、さらに具体的には、動かすことで開度を調整できる環状シャッタ21として実施することができる。この環状シャッタ21は、隔壁10の上流側(吸入室6側)に配置されてもよく、下流側(攪拌室7側)に配置されてもよい。環状シャッタ21は、
図10(C)に示す可動片22を複数枚備えており、可動片22を動かすことによって、開口部11の開口面積を変更する。可動片22を動かす具体的機構は、この種の環状シャッタ21の開閉機構を適宜採用することができる。
【0054】
可動片22は、
図10(D)に示すように、より少ない枚数(最少枚数は1枚)でも実施することができるが、より多くの可動片22を有するものの方が、開口部11の形状を円形に近づけることが容易である。開口部11の形状は、多角形であってもよいが、円形に近い方が、流体の流れの均一性を高めることができる点で有利である。
【0055】
なお、開口部11の中央には、前述の回転軸13が貫通部として配置される。従って、流体の流路断面積は、可動片22によって構成される環状の開口部11の面積(開口の直径aより求められる面積)から、回転軸13の外径bより求められる断面積を差し引いた面積となる。
【0056】
もちろん、
図7の例のように、回転軸13を開口部11に貫通させずとも、前述のローター2を回転させることも可能であり、その場合には、可動片22によって構成される環状の開口部11の面積(開口の直径aより求められる面積)が、流体の流路断面積となる。
【0057】
前記開口率は、前記の開口部11における流体の流路断面積と、攪拌羽根12の最大外径cにより求められる円の面積との比率を言う。この例では、吸入室6の下流端(隔壁10の上面位置)が近い部分が最も外径が大きく、最大断面積を示すものであるが、図示上下方向(回転軸13の軸方向)のいずれの位置が最大断面積を示すものであってもよい。
【0058】
(
図11の説明)
図11の例は、流路調整部20として、隔壁10に設けられた外周側部材として実施され、具体的には、交換することで開度を調整できるものである。より具体的には、
図11(B)〜(E)に示す中央の開口部11の面積が異なる環状盤31を、複数種類、交換可能に着脱できるようにしたものである。この環状盤31は、隔壁10の上流側か下流側に配置されてボルトや係止具などで着脱可能に固定される。複数の環状盤31は、外径や固定位置を一定にし、中央の開口部11の開口面積が異なるようにし、これを交換することで、開口面積及び開口率を変更する。なお
図10の説明のとおり、開口部11における流体の流路断面積は、回転軸13が貫通している場合には、その横断面積を差し引いた面積となる。
【0059】
なお、図示は省略するが、開口部11の面積が異なる複数種類の隔壁10を準備して、隔壁10を吸入室6と攪拌室7との間に着脱交換可能に配置することもできる。
【0060】
さらに、
図2に示すように、隔壁10を一体に形成した吸入室6を、支持管3の先端と、攪拌室7(スクリーン9)とにそれぞれ螺合したものにあっては、中央の開口部11の開口面積が異なる隔壁10を一体に形成した吸入室6を複数種類用意して、支持管3の先端と攪拌室7(スクリーン9)の基端との間に交換可能に螺合して配置してもよい。
【0061】
(
図12の説明)
図12の例は、流路調整部20として、貫通部である回転軸13に設けられた内周側部材として実施され、具体的には、交換することで流路断面積を調整できるものである。さらに具体的には、開口部11の中央に、回転軸13等の貫通部を有する場合の例であり、この例では、回転軸13の外側に、内周側部材としてスリーブ41を着脱可能に配置する。このスリーブ41は、
図12(B)〜(E)に示すように、外径が異なる複数種類を用意して、これを開口部11の中央位置に配置することで、開口面積及び開口率を変更するものである。言い換えれば、この実施の形態では、流路断面積は、開口部11の面積からスリーブ41の断面積を差し引いた面積であり、スリーブ41の外径を複数種類に変更することで、流路断面積を変更するものである。
【0062】
なお、スリーブ41は、円筒体をなして、その中空内部に回転軸13を挿通するものであってもよいが、円筒体を2つ割にして回転軸13の外側に装着して固定するものであってもよく、その着脱の具体的手段は適宜変更して実施することができる。さらに、図示は省略するが、前記内周側部材を動かすことで開度を調整できるものとして実施することもできる。例えば、回転軸13に開度の変化による拡径縮径する部材を設けておき、その開度を調整することで拡径縮径を行うようにしてもよい。
【0063】
(各例の組合せ)
以上の各例は、単独で用いてよく、複数の例を組み合わせて実施することもできる。また、流体処理方法としては、開口部11の開口率が異なる複数の流体処理装置を準備し、流体処理装置を変更することで、開口部11における流路断面積及び開口率を変更してもよい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の理解を高めるために、実施例を示すが、本発明はこの実施例に限定して理解されるべきではない。
本発明の
図1、
図2で図示される形態の攪拌羽根を有する流体処理装置を用いて流動パラフィンの分散試験を、
図13図に示すフローにて行った。
【0065】
実施例1〜6に用いた流体は、流動パラフィン29.4wt%、純水を68.6wt%、界面活性剤としてTween80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.33wt%及びSpan80(ソルビタンオレイン酸 モノエステル)0.67wt%とを混合したものである。前記処方液800gを
図13図に示すように、スターラ102にて攪拌するように配置された容器101(1000ccトールビーカー)に投入した。
図13図に示すように、容器101、ポンプ103、流体容器4、圧力計104を含む循環経路を形成して、流体容器4内に、
図1、
図2で図示される形態の処理部1を挿入した。前記流体をポンプ103(送り量:2500g/分)にて循環させながら、処理部1内のローターを、20000rpmで回転させて分散処理した。
【0066】
実施例1〜3では、攪拌羽根が回転軸から遠ざかるに従って回転軸の回転方向と逆方向に湾曲して伸びるものを用いた。実施例4〜6では、攪拌羽根が回転軸の半径方向に直線状に伸びたものを用いた。
【0067】
実施例1と4は流体容器内圧力を0.00MPaG、実施例2と5は流体容器内圧力を0.05MPaG、実施例3と6は流体容器内圧力を0.10MPaGに設定した。
【0068】
各実施例について、開口部の内径を変化させることによって、流路断面積及び開口率を表1のように変化させた。この、開口部の内径の変化については、
図2に示すように、隔壁10を一体に形成した吸入室6を、支持管3の先端と、攪拌室7(スクリーン9)とにそれぞれ螺合したものを用いて、中央の開口部11の開口面積が異なる隔壁10を一体に形成した吸入室6を4種類用意して、支持管3の先端と攪拌室7(スクリーン9)の基端との間に交換可能に螺合して配置した。
【0069】
表1において、流路断面積は、開口部の内径より求められた面積から、回転軸径より求められた横断面積を差し引いた面積であり、開口率は、流路断面積の攪拌羽根の最大外径より求められた面積に対する、流路断面積の比率である。
【0070】
【表1】
【0071】
(実施例1〜3)
実施例1〜3のそれぞれについて、所定の処理時間後に得られた分散粒子の粒度分布測定結果におけるメディアン径D50及びD90の値を表2及び表3に記載する。また、
図14及び
図15に、横軸に開口率、縦軸にメディアン径D50、D90をとったグラフとして示す。
実施例1〜3に使用したローター/スクリーンの仕様、ローター回転数、攪拌時間及び実験実施時の温度等の条件について記す。
・攪拌羽根仕様 攪拌羽根の形状:ねじり羽根、攪拌羽根の枚数:6枚
・スクリーン仕様 スリットの幅:0.8mm、スリットの数:48本
・攪拌条件 ローター回転数:20000rpm、攪拌時間:30分
・流体容器内温度:20℃
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
(実施例4〜6)
実施例4〜6のそれぞれについて、所定の処理時間後に得られた分散粒子の粒度分布測定結果におけるメディアン径D50及びD90の値を表4及び表5に記載する。また、
図16及び
図17に、横軸に開口率、縦軸にメディアン径D50、D90をとったグラフとして示す。
実施例4〜6に使用したローター/スクリーンの仕様、ローター回転数、攪拌時間及び実験実施時の温度等の条件について記す。
・攪拌羽根仕様 攪拌羽根の形状:直線羽根、攪拌羽根の枚数:6枚
・スクリーン仕様 スリットの幅:1.0mm、スリットの数:36本
・攪拌条件 ローター回転数:20000rpm、攪拌時間:10分
・流体容器内温度:20℃
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
実施例1〜3にあっては、流体の圧力条件を一定にした状態で、開口率の増減変化に対して前記流体処理後の前記粒子径が増減変化する変化率が負値に維持された。
実施例4にあっては、流体の圧力条件を一定にした状態で、開口率の増減変化に対して前記流体処理後の前記粒子径が増減変化する変化率が負値に維持された。
【0078】
実施例5、6にあっては、流体の圧力条件を一定にした状態で、開口率の増減変化に対して前記流体処理後の前記粒子径が増減変化する変化率が正値に維持された。
【0079】
これは、被処理物の種類と流体の圧力条件による変化であると考えられるが、何れの場合にあっても、同一の流体と同一の圧力条件下にあっては、攪拌羽根12の回転数を変化させずとも、開口率の増減変化により、得られた粒子径が制御され得ることが確認された。このように、本発明では、同一の流体と同一の圧力条件下にあっては、回転数を固定した状態であっても、開口率を変化させることによって、粒子径の制御が可能であることが確認された。また、流体の圧力条件を変化させることによって、粒子径の制御が可能であることも確認されたものであり、開口率の変化と流体の圧力条件の変化とを組合せることによって、より多様な粒子径の制御も可能であり、前記の開口率の増減変化に対する粒子径の変化率を負値、正値とするほか、零に維持することも可能である。