(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術においては、系統連系された蓄電装置に対して、翌日の需給予測に応じた充電要否の判定と、時間帯別電気料金に基づく充電時間帯の特定といった制御を行うことが可能である。ところが、気象条件や需要家動向等の諸要因は時々刻々変化し、電力の需給予測を高精度に行うことは容易でない。それ故、そうした精度の需給予測に基づいて蓄電装置の充放電制御を行う場合、各時点における実際の需給状況と乖離した、過剰な或いは全く不十分な充放電を系統に対して行うことになりかねない。他方、現在利用されている各蓄電装置の容量は、系統を流れる電力量と比して非常に小さい規模でしかない。
【0006】
従って、或る将来について予測した電力需給のアンバランス解消の一手段として、蓄電装置による充放電を計画・実行するとしても、ベースとなる電力需給予測と現実の需給状況とにずれが生じれば、そのずれに応じた電力増減分をそのまま蓄電装置の充放電制御でまかなうことは非常に難しい。また、蓄電装置の充放電制御で対応しきれなくなった電力分については商用系統から高コストで調達することとなり、PPSなど小規模発電事業者にとって無視できない経済的損失につながりかねない。
【0007】
つまり上述の各問題を併せて踏まえると、変化し続ける電力需給状況に対し、容量が限定的である蓄電装置の充放電制御を的確に行うことは出来ておらず、実際のところ実用技術として採用しうる充放電制御手法は提案されていない。
【0008】
そこで本発明の目的は、変化する電力需給状況に応じて、系統連系した蓄電装置における的確な充放電制御を継続的に実行可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の充放電制御システムは、複数の発電装置、蓄電池、および負荷を含む電力網に関して、所定の第1時点で予測した所定の第1期間の電力需給予測情報と、前記第1時点での蓄電池の充電率情報とを格納した記憶装置と、前記第1時点での電力需給予測情報が示す需給関係の変動を最小化する、前記電力網における前記蓄電池の充放電計画を、前記蓄電池の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより生成し、当該生成した前記第1期間に関する充放電計画を記憶装置に格納し、前記第1期間に関する充放電計画に基づき前記蓄電池に対して充放電指示を通知する一次処理と、前記第1時点から所定時間経過した第2時点で、前記電力網に関して得ている所定情報に基づき、所定の第2期間の電力需給予測と、前記第2時点での蓄電池の充電率情報の取得とを所定アルゴリズムにて実行して、前記第2時点で得た前記第2期間の電力需給予測と蓄電池の充電率情報に基づき、前記第2時点での電力需給予測情報が示す需給関係の変動を最小化する、前記電力網における前記蓄電池の充放電計画を、前記蓄電池の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより生成し、当該生成した前記第2期間に関する充放電計画を記憶装置に格納し、前記第2期間に関する充放電計画に基づき前記蓄電池に対して充放電指示を通知する二次処理とを実行する演算装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
これによれば、最新の電力需給予測と各蓄電池の充電率に基づいた、蓄電池の充放電計画生成を、所定時間の間隔で繰り返すことが可能であり、或る時点での充放電計画を固定的に利用することなくアップデートし、変化する電力需給状況にフィットした的確な充放電制御を蓄電池に関して継続的に実行可能となる。
【0011】
なお、上述の充放電制御システムにおいて、前記演算装置は、前記二次処理における各処理を、前記第2時点より将来の未来時点で所定の未来期間に関する未来次処理として、所定イベントの発生に基づいて順次繰り返すものである、としてもよい。
【0012】
これによれば、最新の電力需給予測と各蓄電池の充電率に基づいた、蓄電池の充放電計画生成を、電力需給状況の急変発生やシステム管理者等からの指示受付などといった所定イベントの発生に応じて繰り返すことが可能であり、或る時点での充放電計画を固定的に利用することなく状況に応じて的確にアップデートし、変化する電力需給状況に更に効率的にフィットした的確な充放電制御を蓄電池に関して継続的に実行可能となる。
【0013】
また、上述の充放電制御システムにおいて、前記演算装置は、前記電力網における各蓄電池の充電状態を監視した結果、充電池間における充電状態の偏りが所定時間、所定基準を超えたことを検知した場合と、前記電力需給予測情報が示す電力需要予測と、前記電力網における実際の電力需要量との乖離が所定基準を超えたことを検知した場合と、前記電力需給予測情報が示す再生可能エネルギー発電量予測と、前記電力網における実際の再生可能エネルギー発電量との乖離が所定基準を超えたことを検知した場合と、前記電力網における実際の電力需要量または再生可能エネルギー発電量の時間当たりの変化量が所定基準を超えたことを検知した場合と、の少なくともいずれかの状況となった際に、前記二次処理およびそれ以降の未来時点の各処理の少なくともいずれかの処理を実行するものであるとしてもよい。
【0014】
これによれば、最新の電力需給予測と各蓄電池の充電率に基づいた、蓄電池の充放電計画生成を、蓄電池全体における実際の充電状況の遷移や電力需給関係の基準以上の乖離など、充放電計画再考が必要となる状況に応じて繰り返すことが可能であり、或る時点での充放電計画を固定的に利用することなく、電力網における様々な状況に応じて的確にアップデートし、変化する電力需給状況にさらに効率的にフィットした的確な充放電制御を蓄電池に関して継続的に実行可能となる。
【0015】
また、上述の充放電制御システムにおいて、前記演算装置は、前記一次処理、前記二次処理、および未来次処理の少なくともいずれかの処理に際し、前記需給関係の変動を最小化すべく充放電制御を行う場合に前記蓄電池の容量範囲の制約を守れないことが判明した場合と、前記電力需給予測情報が示す電力供給計画に所定基準以上の変更が生じる場合と、の少なくともいずれかの状況となった際に、所定装置に対してアラームを通知する処理を更に実行するものであるとしてもよい。
【0016】
例えば、上述の各処理の或る時点で各蓄電池での充電が容量上限付近までなされている状況がある一方、その後の未来の或る時点において、蓄電池への充電によって余剰電力等を一旦蓄える必要がある電力網需給状況が想定される場合、上述の制約を踏まえた充放電計画の生成・遂行は出来ないが、本発明であればそうした状況に対応すべく、電気事業者の担当者等に通知を行って、直近から該当未来に至る期間中の発電量を適宜抑制する方策実行を促したり、或いは上述の通知として、電力入札システムに対する入札量抑制指示を行って、該当期間での需給バランスを事前調整して蓄電池への充電ニーズを低減させる、といった対応が可能になる。また、上述の各処理の或る時点で各蓄電池での充電が容量下限付近までしかなされていない状況がある一方、その後の未来の或る時点において、蓄電池からの放電によって電力網での不足電力を一部まかなう必要がある電力網需給状況が想定される場合、上述の制約を踏まえた充放電計画の生成・遂行は出来ないが、本発明であればそうした状況に対応すべく、電気事業者の担当者等に通知を行って、直近から該当未来に至る期間中の発電量を適宜増加させる方策実行を促したり、或いは上述の通知として、電力入札システムに対する入札量増加指示を行って、該当期間での需給バランスを事前調整して蓄電池への放電ニーズを低減させる、といった対応が可能になる。
【0017】
また、上述の充放電制御システムにおいて、前記記憶装置は、前記電力網における各蓄電池について、放電抑制の発生履歴として放電抑制発生時期および放電上限電力値の各データを更に格納するものであり、前記演算装置は、前記一次処理、前記二次処理、および未来次処理の少なくともいずれかの処理の前記充放電計画の生成に際し、各蓄電池に関して決定した充放電時期の情報を、前記放電抑制の発生履歴と比較して、該当充放電時期に放電抑制の発生履歴が判明した蓄電池に関し、該当発生履歴が示す該当蓄電池の放電上限電力値と、該当蓄電池に関して決定した放電予定電力値とを比較して、前記放電予定電力値が前記放電上限電力値を越えている場合、前記放電予定電力値と前記放電上限電力値との差分を算定し、当該差分に対応した電力量の放電を1または複数で可能な他蓄電池を、前記充電率情報が示す放電余力に基づいて特定して、当該特定した1または複数の他蓄電池の放電計画に前記差分の全部または一部に対応した放電を上乗せする処理を更に実行するものである、としてもよい。
【0018】
これによれば、実際の個々の蓄電池の充電可能電力、放電可能電力は、該当蓄電池が接続されている配電線の状況や同じ配電線に連なる需要家の消費電力等に左右される点を踏まえ、充放電制御対象となる蓄電池における放電抑制履歴と計画作成対象時期等に基づき、想定される充放電可能量も考慮に入れた蓄電池の探索・特定と、充放電計画生成が可能となる。ひいては、変化する電力需給状況にさらに効率的かつ高精度にフィットした的確な充放電制御を蓄電池に関して継続的に実行可能となる。
【0019】
また、本発明の充放電制御方法は、複数の発電装置、蓄電池、および負荷を含む電力網に関して、所定の第1時点で予測した所定の第1期間の電力需給予測情報と、前記第1時点での蓄電池の充電率情報とを格納した記憶装置を備える情報処理システムが、前記第1時点での電力需給予測情報が示す需給関係の変動を最小化する、前記電力網における前記蓄電池の充放電計画を、前記蓄電池の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより生成し、当該生成した前記第1期間に関する充放電計画を記憶装置に格納し、前記第1期間に関する充放電計画に基づき前記蓄電池に対して充放電指示を通知する一次処理と、前記第1時点から所定時間経過した第2時点で、前記電力網に関して得ている所定情報に基づき、所定の第2期間の電力需給予測と、前記第2時点での蓄電池の充電率情報の取得とを所定アルゴリズムにて実行して、前記第2時点で得た前記第2期間の電力需給予測と蓄電池の充電率情報に基づき、前記第2時点での電力需給予測情報が示す需給関係の変動を最小化する、前記電力網における前記蓄電池の充放電計画を、前記蓄電池の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより生成し、当該生成した前記第2期間に関する充放電計画を記憶装置に格納し、前記第2期間に関する充放電計画に基づき前記蓄電池に対して充放電指示を通知する二次処理と、を実行することを特徴とする。
【0020】
また、上述の充放電制御方法において、前記情報処理システムが、前記二次処理における各処理を、前記第2時点より将来の未来時点で所定の未来期間に関する未来次処理として、所定イベントの発生に基づいて順次繰り返す、としてもよい。
【0021】
また、上述の充放電制御方法において、前記情報処理システムが、前記電力網における各蓄電池の充電状態を監視した結果、充電池間における充電状態の偏りが所定時間、所定基準を超えたことを検知した場合と、前記電力需給予測情報が示す電力需要予測と、前記電力網における実際の電力需要量との乖離が所定基準を超えたことを検知した場合と、前記電力需給予測情報が示す再生可能エネルギー発電量予測と、前記電力網における実際の再生可能エネルギー発電量との乖離が所定基準を超えたことを検知した場合と、前記電力網における実際の電力需要量または再生可能エネルギー発電量の時間当たりの変化量が所定基準を超えたことを検知した場合と、の少なくともいずれかの状況となった際に、前記二次処理およびそれ以降の未来時点の各処理の少なくともいずれかの処理を実行するとしてもよい。
【0022】
また、上述の充放電制御方法において、前記情報処理システムが、前記一次処理、前記二次処理、および未来次処理の少なくともいずれかの処理に際し、前記需給関係の変動を最小化すべく充放電制御を行う場合に前記蓄電池の容量範囲の制約を守れないことが判明した場合と、前記電力需給予測情報が示す電力供給計画に所定基準以上の変更が生じる場合と、の少なくともいずれかの状況となった際に、所定装置に対してアラームを通知する処理を更に実行する、としてもよい。
【0023】
また、上述の充放電制御方法において、前記情報処理システムが、前記記憶装置において、前記電力網における各蓄電池について、放電抑制の発生履歴として放電抑制発生時期および放電上限電力値の各データを更に格納し、前記一次処理、前記二次処理、および未来次処理の少なくともいずれかの処理の前記充放電計画の生成に際し、各蓄電池に関して決定した充放電時期の情報を、前記放電抑制の発生履歴と比較して、該当充放電時期に放電抑制の発生履歴が判明した蓄電池に関し、該当発生履歴が示す該当蓄電池の放電上限電力値と、該当蓄電池に関して決定した放電予定電力値とを比較して、前記放電予定電力値が前記放電上限電力値を越えている場合、前記放電予定電力値と前記放電上限電力値との差分を算定し、当該差分に対応した電力量の放電を1または複数で可能な他蓄電池を、前記充電率情報が示す放電余力に基づいて特定して、当該特定した1または複数の他蓄電池の放電計画に前記差分の全部または一部に対応した放電を上乗せする処理を更に実行するとしてもよい。
【0024】
また、本発明の充放電制御プログラムは、複数の発電装置、蓄電池、および負荷を含む電力網に関して、所定の第1時点で予測した所定の第1期間の電力需給予測情報と、前記第1時点での蓄電池の充電率情報とを格納した記憶装置を備える情報処理システムに、前記第1時点での電力需給予測情報が示す需給関係の変動を最小化する、前記電力網における前記蓄電池の充放電計画を、前記蓄電池の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより生成し、当該生成した前記第1期間に関する充放電計画を記憶装置に格納し、前記第1期間に関する充放電計画に基づき前記蓄電池に対して充放電指示を通知する一次処理と、前記第1時点から所定時間経過した第2時点で、前記電力網に関して得ている所定情報に基づき、所定の第2期間の電力需給予測と、前記第2時点での蓄電池の充電率情報の取得とを所定アルゴリズムにて実行して、前記第2時点で得た前記第2期間の電力需給予測と蓄電池の充電率情報に基づき、前記第2時点での電力需給予測情報が示す需給関係の変動を最小化する、前記電力網における前記蓄電池の充放電計画を、前記蓄電池の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより生成し、当該生成した前記第2期間に関する充放電計画を記憶装置に格納し、前記第2期間に関する充放電計画に基づき前記蓄電池に対して充放電指示を通知する二次処理とを実行させることを特徴とする。
【0025】
また、上述の充放電制御プログラムは、前記情報処理システムに、前記二次処理における各処理を、前記第2時点より将来の未来時点で所定の未来期間に関する未来次処理として、所定イベントの発生に基づいて順次繰り返させるとしてもよい。
【0026】
また、上述の充放電制御プログラムは、前記情報処理システムに、前記電力網における各蓄電池の充電状態を監視した結果、充電池間における充電状態の偏りが所定時間、所定基準を超えたことを検知した場合と、前記電力需給予測情報が示す電力需要予測と、前記電力網における実際の電力需要量との乖離が所定基準を超えたことを検知した場合と、前記電力需給予測情報が示す再生可能エネルギー発電量予測と、前記電力網における実際の再生可能エネルギー発電量との乖離が所定基準を超えたことを検知した場合と、前記電力網における実際の電力需要量または再生可能エネルギー発電量の時間当たりの変化量が所定基準を超えたことを検知した場合と、の少なくともいずれかの状況となった際に、前記二次処理およびそれ以降の未来時点の各処理の少なくともいずれかの処理を実行させるとしてもよい。
【0027】
また、上述の充放電制御プログラムは、前記情報処理システムに、前記一次処理、前記二次処理、および未来次処理の少なくともいずれかの処理に際し、前記需給関係の変動を最小化すべく充放電制御を行う場合に前記蓄電池の容量範囲の制約を守れないことが判明した場合と、前記電力需給予測情報が示す電力供給計画に所定基準以上の変更が生じる場合と、の少なくともいずれかの状況となった際に、所定装置に対してアラームを通知する処理を更に実行させるとしてもよい。
【0028】
また、上述の充放電制御プログラムは、前記記憶装置において、前記電力網における各蓄電池について、放電抑制の発生履歴として放電抑制発生時期および放電上限電力値の各データを更に格納した前記情報処理システムに、前記一次処理、前記二次処理、および未来次処理の少なくともいずれかの処理の前記充放電計画の生成に際し、各蓄電池に関して決定した充放電時期の情報を、前記放電抑制の発生履歴と比較して、該当充放電時期に放電抑制の発生履歴が判明した蓄電池に関し、該当発生履歴が示す該当蓄電池の放電上限電力値と、該当蓄電池に関して決定した放電予定電力値とを比較して、前記放電予定電力値が前記放電上限電力値を越えている場合、前記放電予定電力値と前記放電上限電力値との差分を算定し、当該差分に対応した電力量の放電を1または複数で可能な他蓄電池を、前記充電率情報が示す放電余力に基づいて特定して、当該特定した1または複数の他蓄電池の放電計画に前記差分の全部または一部に対応した放電を上乗せする処理を更に実行させるとしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、変化する電力需給状況に応じて、系統連系した蓄電装置における的確な充放電制御を継続的に実行可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の充放電制御システムを適用する電力網1の例を示す図である。
図1に示す電力網1は、一般電気事業者から安定的に供給される電力を受けて従来同様に需要家施設(負荷4)に配電すると共に、特定規模電気事業者など独立系の発電事業者によって各種方式で発電された電力も受け入れ、蓄電池10による需給変動調整を行いつつ、上述の負荷4に提供可能となっている電力網である。
【0033】
この電力網1には、例えば一般電気事業者および特定規模電気事業者の各発電装置2、3、複数の蓄電池10、および需要家施設の電気機器たる負荷4が接続されている。
図1に示す電力網1の例では、一般電気事業者の発電装置として火力発電装置2を例示している。この火力発電装置2は天候や温湿度などの自然条件や時間帯に関わらず事前計画通りの発電が可能な発電装置である。こうした安定的な発電が可能な発電装置としては、この他にも原子力発電装置、地熱発電装置など各種想定出来る。
【0034】
一方、特定規模電気事業者の発電装置としても、上述の一般電気事業者と同様の安定的な発電が可能な装置を想定出来るが、本実施形態では再生可能エネルギーによる発電装置たる太陽光発電装置3を示すものとする。太陽光発電装置3は、夜間は発電出来ず、また昼間であっても日照条件に応じて発電量が大きく変動する発電装置である。こうした再生可能エネルギーによる発電装置としては、他にも、風力発電装置や潮力発電装置等を想定出来る。
【0035】
また、電力網1に系統連系する蓄電池10は、NAS電池(ナトリウム・硫黄電池)やレドックス・フロー電池、リチウムイオン電池など、大型、小型を含めた様々なタイプの蓄電池を想定している。
【0036】
他方、これら各種の発電装置2、3や蓄電池10による電力を電力網1を介して受電し、消費する負荷4は、一般家庭、オフィスビル、工場といった各種施設に備わるものである。各負荷4における電力消費傾向は、時間帯、天候、気温、湿度、施設内人員の構成、数、電気機器のタイプなど様々な要因によって異ってくる。
−−−システム構成−−−
【0037】
次に、上述の電力網1に対して適用する充放電制御システム100の構成について説明する。
図2は、本実施形態の充放電制御システム100を含むネットワーク構成図である。
図2に示す充放電制御システム100は、変化する電力需給状況に応じて、系統連系した蓄電装置における的確な充放電制御を継続的に実行可能とするコンピュータシステムである。
【0038】
本実施形態の充放電制御システム100は、例えば特定規模電気事業者が管理、運用するサーバ装置である。特定規模電気事業者からすれば、充放電制御システム100を利用することで、電力網1において一般電気事業者が提供する系統電源からの不本意な買電を出来るだけ回避し、サービス品質の維持・向上とコスト削減とを併せて図ることを指向している。
【0039】
こうした充放電制御システム100は、インターネットなど適宜な公衆回線網であるネットワーク5を介して、上述した一般電気事業者の火力発電装置2、特定規模電気事業者の太陽光発電装置3、蓄電池10、および負荷4を備えた需要家施設6と、気象データ提供サーバ200、電気事業者の担当者が操作するユーザ端末300、電力売買の電子市場に対応した電力入札システム350などに、直接または他事業者を介して間接的にデータ通信可能に結ばれている。
【0040】
このうち火力発電装置2および太陽光発電装置3は、一般的な発電機構の他に、一定時間ごとの実際の発電状況に関する計測データや、該当電気事業者が作成した発電計画などを含む発電情報25、35を、ネットワーク5を介して充放電制御システム100に送信する機能を備えている。そのため各発電装置は、発電量のモニタリング装置、そのモニタリング値を時系列で格納する記憶装置、および、ネットワーク5のプロトコルに対応した通信装置を備えている。なお、本構成では発電計画などの発電情報は該当発電装置側に存在しているが、複数の事業者間で情報共有している場合もある。
【0041】
また、各蓄電池10は、一般的な蓄電池機能の他に、一定時間ごとに自身の充電率を計測し、そのデータをネットワーク5を介して充放電制御システム100に送信する機能を備えている。そのため各蓄電池10は、充電率のモニタリング装置、そのモニタリング値を時系列で格納する記憶装置、および、ネットワーク5のプロトコルに対応した通信装置を備えている。
【0042】
また、各需要家施設6には、上述の負荷4に電力供給を行う分電盤41が備わっている。この分電盤41は、該当施設における負荷4で消費された電力の量すなわち消費電力量を、電力量計42により計測している。上述の分電盤41は通信機能を具備し、ネットワーク5を介して本実施形態の充放電制御システム100を実現するサーバ装置と通信可能に結ばれている。この分電盤41は、電力量計42により所定時間分計測された消費電力量のデータを負荷情報45とし、これを所定時間毎に充放電制御システム100に送信している。なお、スマートメーターのような通信機能を持つ電力量計を利用する場合には、電力量計42は分電盤41と系統の間に位置する。
【0043】
また、気象データ提供サーバ200は、例えば現時点から24時間以内の1時間毎ないし3時間毎の天気、気温、湿度、風向、風速、日照といった各種気象現象に関する予測データを充放電制御システム100に提供するサーバ装置である。気象予測の手法等については既存のものを適宜備えているものとする。
【0044】
また、ユーザ端末300は、上述した一般電気事業者や特定規模電気事業者の担当者らが操作する情報処理端末であり、一般的なPCを想定する。このユーザ端末300も、ネットワーク5を介して充放電制御システム100とデータ通信可能である。
【0045】
また、電力入札システム350は、電力売買の電子市場に対応したサーバシステムであり、やはりネットワーク5を介して充放電制御システム100とデータ通信可能に結ばれている。
−−−ハードウェア構成−−−
【0046】
続いて本実施形態の充放電制御システム100のハードウェア構成について説明する。
図3は本実施形態における充放電制御システム100のハードウェア構成例を示す図である。
図3で例示する充放電制御システム100は、ハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される記憶装置101、RAMなど揮発性記憶素子で構成されるメモリ103、記憶装置101に保持されるプログラム102をメモリ103に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPUなどの演算装置104、特定規模電気事業者の担当者などユーザからのキー入力や音声入力を受け付ける入力装置105、処理データの表示を行うディスプレイ等の出力装置106、ネットワーク5と接続し他装置との通信処理を担う通信装置107、を備えている。なお、記憶装置101内には、本実施形態の充放電制御システム100として必要な機能を実装する為のプログラム102の他、後述するデータベース125〜130が少なくとも記憶されている。
−−−機能−−−
【0047】
続いて、本実施形態の充放電制御システム100が備える機能について説明する。上述したように、以下に説明する機能は、例えば充放電制御システム100が備えるプログラム102を実行することで実装されるものである。なお、充放電制御システム100の記憶装置101には、上述の各発電装置2、3、各蓄電池10、および各負荷4を含む電力網1に関して、所定の第1時点で予測した所定の第1期間の電力需給予測情報を格納した需給予測情報データベース129と、上述の第1時点での各蓄電池10の充電率情報を格納した蓄電池情報データベース128が記憶されているものとする(いずれのデータベースも詳細は後述)。
【0048】
本実施形態の充放電制御システム100は、上述の需給予測情報データベース129から第1時点での電力需給予測情報を読み出し、この電力需給予測情報が示す需給関係の変動を最小化する、電力網1における各蓄電池10の充放電計画を、各蓄電池10の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより生成し、当該生成した第1期間に関する充放電計画を、記憶装置101の充放電計画データベース130に格納し、また、上述の第1期間に関する各蓄電池10の充放電計画に基づき、該当各蓄電池10のそれぞれに対して充放電指示を通知する機能を有する。この機能により実行される処理は一次処理と称する。
【0049】
また、充放電制御システム100は、上述の第1時点から所定時間経過した第2時点で、電力網1に関して得ている、各発電装置2、3の直近所定期間での発電量、負荷4を抱える各需要家施設6での直近所定期間の電力消費量、該当電力網1の所在エリアに関する気候予測情報などといった各種情報に基づき、所定の第2期間の電力需給予測と、上述の第2時点での各蓄電池10の充電率情報の取得とを所定アルゴリズムにて実行して、第2時点で得た第2期間の電力需給予測と各蓄電池10の充電率情報に基づき、第2時点での電力需給予測情報が示す需給関係の変動を最小化する、電力網1における各蓄電池10の充放電計画を、各蓄電池10の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより生成し、当該生成した、第2期間に関する各蓄電池10の充放電計画を、記憶装置101の充放電計画データベース130に格納し、また、上述の第2期間に関する各蓄電池10の充放電計画に基づき、該当各蓄電池10のそれぞれに対して充放電指示を通知する機能を有する。この機能により実行される処理は二次処理と称する。
【0050】
また、充放電制御システム100は、上述の二次処理における各処理を、第2時点より将来の未来時点で所定の未来期間に関する未来次処理として、所定イベントの発生に基づいて順次繰り返す機能を有する。この所定イベントとは、以下のものとなる。
【0051】
1つは、上述の電力網1における各蓄電池10から得た充電率情報15に基づいて、各蓄電池10の充電状態を監視した結果、充電池間における充電状態の偏りが所定時間、所定基準を超えたことを検知したイベントである。
【0052】
また、1つは、上述の電力需給予測情報が示す電力需要予測と、電力網1における実際の電力需要量との乖離が所定基準を超えたことを検知したイベントである。
【0053】
また、1つは、上述の電力需給予測情報が示す再生可能エネルギー発電量予測(本実施形態では太陽光発電装置3における発電量予測の情報)と、電力網1における実際の再生可能エネルギー発電量との乖離が所定基準を超えたことを検知したイベントである。
【0054】
また、1つは、電力網1における実際の電力需要量または再生可能エネルギー発電量の時間当たりの変化量が所定基準を超えたことを検知したイベントである。
【0055】
また、充放電制御システム100は、上述の一次処理、二次処理、および未来次処理の少なくともいずれかの処理に際し、電力網1における電力需給関係の変動を最小化すべく充放電制御を行う場合に、各蓄電池10の容量範囲の制約を守れないことが判明した場合と、電力需給予測情報が示す電力供給計画に所定基準以上の変更が生じる場合と、の少なくともいずれかの状況となった際に、電気事業者の担当者等が操作するユーザ端末300や電力入札システム350といった所定装置に対してアラームを通知する機能を有する。このアラームには、発電量の抑制または増加の対策実施要請や、電力入札市場における入札量の抑制または増加の指示等を含むとしてもよい。
【0056】
また、充放電制御システム100は、記憶装置101の蓄電池情報データベース128において、電力網1における各蓄電池10について、放電抑制の発生履歴として放電抑制発生時期および放電上限電力値の各データを保持するものとする。この場合、充放電制御システム100は、上述の一次処理、二次処理、および未来次処理の少なくともいずれかの処理での充放電計画の生成に際し、各蓄電池10に関して決定した充放電時期の情報を、蓄電池情報データベース128における該当蓄電池10の放電抑制の発生履歴と比較して、該当充放電時期に放電抑制の発生履歴が判明した蓄電池10に関し、該当発生履歴が示す該当蓄電池10の放電上限電力値と、該当蓄電池10の充放電計画で決定した放電予定電力値とを比較して、放電予定電力値が放電上限電力値を越えている場合、放電予定電力値と放電上限電力値との差分を算定し、当該差分に対応した電力量の放電を1または複数で可能な他蓄電池を、蓄電池情報データベース128における各蓄電池10の充電率情報が示す放電余力に基づいて特定して、当該特定した1または複数の他蓄電池の放電計画に、上述の差分の全部または一部(差分を他蓄電池間で按分したもの)に対応した放電を上乗せする機能を有する。
−−−データ構造例−−−
【0057】
次に、本実施形態の充放電制御システム100が用いるデータの構造例について説明する。
図4は本実施形態における気候予測データベース125のデータ構成例を示す図である。この気候予測データベース125は、充放電制御システム100が、気象データ提供サーバ200から得た情報を格納するデータベースであり、電力網1の所在地域に関する少なくとも所定時間以内の気候予測データを格納している。この気候予測データベース125は、例えば予測対象日ごとに、予測対象とした時間帯をキーとして、天気、気温、湿度、風向、日照時間、太陽高度といった情報を対応付けたレコードの集合体となっている。こうした気候予測データベース125は、例えば1時間ごとに気象データ提供サーバ200から提供されるデータに基づいて常に最新のデータに更新される。
【0058】
図5は本実施形態における発電情報データベース126のデータ構成例を示す図である。本実施形態の発電情報データベース126は、各電気事業者の発電装置(発電所)から取得した、各時間帯ごとの発電量を定めた発電計画および直近所定期間における実際の発電量の各データを格納したデータベースである。この発電情報データベース126は、例えば発電装置を一意に特定する装置IDをキーとして、該当発電装置の種別、発電計画の作成日時、発電計画、最新の発電量データの取得日時、発電量データを格納した発電状況といったデータを対応付けたレコードの集合体となっている。発電情報データベース126が格納するこうした情報は、例えば火力発電装置2から得た発電情報25、太陽光発電装置3から得た発電情報35にそれぞれ含まれているものとする。
【0059】
図6は本実施形態における負荷情報データベース127のデータ構成例を示す図である。本実施形態の負荷情報データベース127は、各需要家施設6の分電盤41から負荷4に関して取得した消費電力量(電力需要)のデータを格納したデータベースである。この負荷情報データベース127は、各負荷4を一意に特定する負荷IDをキーとして、最新の消費電力量の取得日時、および、消費電力量データを格納した需要状況といったデータを対応付けたレコードの集合体となっている。負荷情報データベース127が格納するこうした情報は、各需要家施設6の負荷4から得た負荷情報45にそれぞれ含まれているものとする。
【0060】
図7は本実施形態における蓄電池情報データベース128のデータ構成例を示す図である。本実施形態の蓄電池情報データベース128は、各蓄電池10から取得した充電率情報15と、各蓄電池10における放電抑制の発生履歴である放電抑制発生時期および放電上限電力値の各データとを格納するデータベースである。具体的には、蓄電池10を一意に特定する蓄電池IDをキーとして、該当蓄電池10の蓄電容量、最新の充電率の取得日時、充電率、放電抑制発生日時、および放電上限電力値といったデータを対応付けたレコードの集合体となっている。
【0061】
図8は本実施形態における需給予測情報データベース129のデータ構成例を示す図である。本実施形態の需給予測情報データベース129は、充放電制御システム100が電力網1における各発電装置2、3等の発電計画と実際の発電量、気候予測情報、需要家施設6の負荷4における実際の消費電力量などの各種情報に基づき行った電力需給予測の情報を格納するデータベースである。この需給予測情報データベース129は、需給予測を実行した日時と予測対象期間に対し、需給予測を対応付けたレコードの集合体となっている。また需給予測の情報からは、負荷4の電力需要予測の情報を含む、需給予測に用いた各種情報が引き出せるようになっている。
【0062】
図9は本実施形態における充放電計画データベース130のデータ構成例を示す図である。充放電計画データベース130は、充放電制御システム100が生成した、電力網1の各蓄電池10に関する充放電計画を格納するデータベースである。本実施形態の充放電計画データベース130は、蓄電池10を一意に特定する蓄電池IDをキーとして、最新の充放電計画を作成した日時、最新の充放電計画の対象期間、および充放電計画の各データを対応付けたレコードの集合体となっている。
−−−処理手順例1−−−
【0063】
以下、本実施形態における充放電制御方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明する充放電制御方法の各処理は、充放電制御システム100がメモリ等に読み出して実行するプログラム102によって実現される。そして、このプログラム102は、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0064】
図10は、本実施形態における充放電制御方法の処理手順例1を示すフロー図であり、
図11は本実施形態の充放電制御方法における時間概念を示す説明図である。ここで、充放電制御システム100は、これから始まる或る一日に対応した24時間に関して充放電計画を生成するものとする。この場合、
図11で例示するように午後11時30分の現時点(第1時点)において、直近のデータ取得期間(午後9時30分から現時点までの2時間)に関して、各発電装置2、3から該当期間での発電量(実績値)と発電計画を、負荷4を抱える各需要家施設6から該当期間での消費電力量(実績値)を、気象データ提供サーバ200から該当電力網1の所在エリアに関する気候予測情報を、各蓄電池10から現時点において充電率の情報をそれぞれ取得し、記憶装置101において対応するデータベースに格納する(s100)。
【0065】
次に充放電制御システム100は、上述のステップs100で得た各種情報に基づき、現時点から30分後の午前零時ちょうどから始まる24時間(第1期間)に関する電力需給予測を所定アルゴリズムにて実行して、この午後11時30分時点(第1時点)で得た翌日の午前零時からの24時間(第1期間)の電力需給予測データを生成し、これを需給予測情報データベース129に格納する(s101)。なお、上述のアルゴリズムは、電力網1に含まれる発電装置での発電実績と発電計画、再生可能エネルギーによる発電装置の仕様とその発電実績、各負荷4での消費電力量の実績、気候予測情報といった電力需給に関わる各種情報と、過去の実際の電力需給状況の情報との相関を特定し、その相関を予想対象期間である第1期間の条件に適用して需給関係を推定する既存のアルゴリズムを採用すればよい。
【0066】
続いて充放電制御システム100は、記憶装置101の需給予測情報データベース129から午後11時30分(第1時点)での電力需給予測情報を読み出し、この電力需給予測情報が示す上述の24時間(第1期間)における需給関係の変動を最小化する、各蓄電池10の充放電計画を、各蓄電池10の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより生成する(s102)。このアルゴリズムとしては、例えば上述の容量範囲の制約下で、目的関数たる需給関係の変動を最小化する、各蓄電池10の充放電内容を決定する、いわゆる数理計画法に対応したアルゴリズムを採用できる。
【0067】
また、充放電制御システム100は、上述のステップs102による充放電計画生成に関して、電力網1における電力需給関係の変動を最小化すべく充放電制御を行う場合に、各蓄電池10の容量範囲の制約(充電容量の上下限内で充放電する)を守れるか判定する(s103)。なお、充放電制御システム100は、この判定において、今次すなわち上述の午後11時30分時点で行った充放電計画の生成によれば、電力需給予測情報(ステップs101より以前の電力需給予測実行時に得ているもの)が示す電力供給計画にて、所定基準以上の変更(例:或る発電装置における或る時間帯の発電量を10%以上変更、など)が必要となるかについてもOR条件として判定するとしてもよい。
【0068】
こうした判定の結果、上述の容量範囲の制約を守れないことが判明した場合(s103:n)、充放電制御システム100は、電気事業者の担当者等が操作するユーザ端末300や電力入札システム350といった所定装置に対してアラームを通知し(s104)、次の充放電計画生成の開始タイミング(第2時点)まで待機する(s105)。なお、このアラームには、該当蓄電池10を充放電制御対象として次の処理時に利用出来るようにすべく、つまり、充放電計画生成時に上述の容量範囲の制約を守りやすくなるよう、電力網1における発電量の抑制または増加の対策実施要請や、電力入札市場における入札量の抑制または増加の指示等を含むとすれば好適である。
【0069】
一方、上述の判定の結果、容量範囲の制約を守れることが判明した場合(s103:y)、充放電制御システム100は、上述のステップs102で生成した第1期間に関する充放電計画を、記憶装置101の充放電計画データベース130に格納する(s106)。
【0070】
また充放電制御システム100は、上述の第1期間に関する各蓄電池10の充放電計画に基づき、該当各蓄電池10のそれぞれに対して、ネットワーク5を介して充放電指示を通知する(s107)。
【0071】
その後、例えば6時間など予め定めた計画間隔分の時間が経過した午前5時30分(第2時点)に至ったか、或いは、この第2時点到来前の午前3時30分(イベント検知時点)に所定イベントの発生を検知した場合(s108:y)、充放電制御システム100は、第2時点またはイベント検知時点において、例えば直近2時間のデータ取得期間に関して、各発電装置2、3から該当期間での発電量(実績値)と発電計画を、負荷4を抱える各需要家施設6から該当期間での消費電力量(実績値)を、気象データ提供サーバ200から該当電力網1の所在エリアに関する気候予測情報を、各蓄電池10から現時点において充電率の情報をそれぞれ取得し、記憶装置101において対応するデータベースに格納する(s109)。なお、上述のイベント発生の検知に関しては、別のフローを用いて詳細を後述するものとする。
【0072】
続いて充放電制御システム100は、上述のステップs109で得た各種情報に基づき、第2時点から30分後の午前6時ちょうどから午後12時までの18時間(第2期間)、またはイベント検知時点から30分後の午前4時ちょうどから午後12時までの20時間(第2期間)に関する電力需給予測を所定アルゴリズムにて実行して、午前5時30分(第2時点)または午前3時30分(イベント検知時点)で得た、午前6時から午後12時までの間(第2期間)の電力需給予測データを生成し、これを需給予測情報データベース129に格納する(s110)。
【0073】
続いて充放電制御システム100は、記憶装置101の需給予測情報データベース129から上述のステップs110で得た第2期間に関する電力需給予測情報を読み出し、この電力需給予測情報が示す18時間または20時間(いずれも第2期間)における需給関係の変動を最小化する、各蓄電池10の充放電計画を、各蓄電池10の容量範囲の制約下で所定アルゴリズムにより上述のステップs102と同様に生成する(s111)。
【0074】
また、充放電制御システム100は、上述のステップs111による充放電計画生成に関して、電力網1における電力需給関係の変動を最小化すべく充放電制御を行う場合に、各蓄電池10の容量範囲の制約(充電容量の上下限内で充放電する)を守れるか判定する(s112)。なお、充放電制御システム100は、この判定において、今次すなわち上述の午前5時30分時点または午前3時30分時点で行った充放電計画の生成によれば、電力需給予測情報(第1時点で得ているもの)が示す電力供給計画にて、所定基準以上の変更が必要となるかについてもOR条件として判定するとしてもよい。
【0075】
こうした判定の結果、上述の容量範囲の制約を守れないことが判明した場合(s112:n)、充放電制御システム100は、電気事業者の担当者等が操作するユーザ端末300や電力入札システム350といった所定装置に対してアラームを通知し(s113)、次の充放電計画生成の開始タイミング(第3時点)まで待機する(s114)。
【0076】
一方、上述の判定の結果、容量範囲の制約を守れることが判明した場合(s112:y)、充放電制御システム100は、上述のステップs111で生成した第2期間に関する充放電計画を、記憶装置101の充放電計画データベース130に格納する(s115)。
【0077】
また充放電制御システム100は、上述の第2期間に関する各蓄電池10の充放電計画に基づき、該当各蓄電池10のそれぞれに対して、ネットワーク5を介して新たな充放電指示を通知する(s116)。
【0078】
以降、充放電制御システム100は、上述のステップs108〜s116と同様の処理を、第2時点以降の未来に関しても繰り返し実行し(s117)、例えば、当日の所定時刻(例:午後10時)の到来、またはユーザ端末300からの指示等に応じて(s118:y)、該当日に関する充放電計画生成の処理を終了する。
−−−処理手順例2−−−
【0079】
次に、上述のフローのうちステップs108に関して説明した、所定イベントの発生を検知する処理について図に基づき説明する。
図12は、本実施形態における充放電制御方法の処理手順例2を示すフロー図である。ここで説明する処理は、一例として第2時点において実行する状況を想定したものとするが、他の時点に関して行うステップs108と同様の処理に関しても適用可能である。
【0080】
この場合、充放電制御システム100は、上述の第2時点到来までの直近所定時間に、上述の電力網1における各蓄電池10から充電率情報15を取得し(s200)、この各蓄電池10の充電率情報に基づいて各蓄電池10の充電状態を監視した結果、電力網1の充電池間における充電状態の偏りが所定時間、所定基準を超えたか判定する(s201)。この蓄電池間での充電状態の偏りが所定基準を超えるとは、例えば電力網1に系統連系する複数の蓄電池10全てまたは7割以上において、充電率が上限基準75%を上回った状態または下限基準20%を下回った状態、を指す。こうした状態が例えば2時間以上継続していたとすれば、この「偏った」状態が更にその程度を進める傾向にあると推定されるため、充放電制御システム100は、充放電計画の再生成が早急に必要であると判定するのである。
【0081】
上述の判定の結果、電力網1の充電池間における充電状態の偏りが所定時間、所定基準を超えたことが判明した場合(s201:y)、充放電制御システム100は、処理を上述のフローのステップs109に進め、当該フローを終了する。他方、上述の判定の結果、電力網1の充電池間における充電状態の偏りが所定時間、所定基準を超えた事実はないことが判明した場合(s201:n)、充放電制御システム100は、処理をステップs202に進める。
【0082】
また、充放電制御システム100は、上述の第2時点到来での最新の電力需給予測情報を、需給予測情報データベース129から取得し、また、第2時点到来までの直近所定時間に、上述の電力網1における各負荷4の需要家施設6から消費電力量(実績値)を取得し(s202)、ここで得た電力需給予測情報が示す電力需要予測と、電力網1における実際の電力需要量との乖離が所定基準を超えたか判定する(s203)。
【0083】
上述の判定の結果、電力需要予測と電力需要量との乖離が所定基準を超えたことが判明した場合(s203:y)、充放電制御システム100は、処理を上述のフローのステップs109に進め、当該フローを終了する。他方、上述の判定の結果、電力需要予測と電力需要量との乖離が所定基準を超えていないことが判明した場合(s203:n)、充放電制御システム100は、処理をステップs204に進める。
【0084】
また、充放電制御システム100は、第2時点到来までの直近所定時間に電力網1における太陽光発電装置3から、実際の発電量の情報を取得する(s204)。また、充放電制御システム100は、この太陽光発電装置3の実際の発電量と、上述のステップs202で得た第2時点到来での最新の電力需給予測情報が示す再生可能エネルギー発電量予測(本実施形態では太陽光発電装置3における発電量予測の情報)とを比較して、その乖離が所定基準を超えたか判定する(s205)。
【0085】
上述の判定の結果、太陽光発電装置3の発電量(実績)と発電量予測との乖離が所定基準を超えたことが判明した場合(s205:y)、充放電制御システム100は、処理を上述のフローのステップs109に進め、当該フローを終了する。他方、上述の判定の結果、太陽光発電装置3の発電量(実績)と発電量予測との乖離が所定基準を超えていないことが判明した場合(s205:n)、充放電制御システム100は、処理をステップs206に進める。
【0086】
また、充放電制御システム100は、第2時点到来までの直近所定時間に電力網1における各負荷4の需要家施設6から実際の消費電力量(電力需要量の実績)の情報を取得する(s206)。また、充放電制御システム100は、ステップs206で得た電力網1における実際の消費電力量、または、上述のステップs204で得た太陽光発電装置3の実際の発電量の少なくともいずれかについて、時間当たりの変化量が所定基準を超えたか判定する(s207)。
【0087】
上述の判定の結果、電力網1における消費電力量および太陽光発電装置3の実際の発電量の少なくともいずれかの時間あたりの変化量が所定基準を超えていた場合(s207:y)、充放電制御システム100は、処理を上述のフローのステップs109に進め、当該フローを終了する。他方、上述の判定の結果、電力網1における消費電力量および太陽光発電装置3の実際の発電量の少なくともいずれかの時間あたりの変化量が所定基準を超えていなかった場合(s207:n)、充放電制御システム100は、処理を上述のフローにおけるステップs108に戻し、当該フローを終了する。
【0088】
以上、上述のフローのうちステップs108における、所定イベントの発生を検知する処理について説明した。
−−−処理手順例3−−−
【0089】
次に、各蓄電池10の放電抑制の発生履歴を踏まえて、充放電計画を生成する処理について図に基づき説明する。ここでまず、蓄電池10が自身の充電率や置かれた環境によっては充放電計画通りに放電出来ないケースが存在することについて説明する。
図13は本実施形態における系統連系中の蓄電池10の放電概念を示す説明図である。
【0090】
図13に例示するように、6000Vなど高圧電力が流れる系統60は、柱上トランスなどの適宜な変圧器65を介して、低圧線70の負荷4および蓄電池10と電気的に結ばれている。この低圧線70における電圧は101±6V、202±20Vの範囲に収めなければならない。そこで蓄電池10から低圧線70に対して放電する場合、系統60の電圧やインピーダンスによっては、蓄電池10からの放電によって電圧の上限(107V,222V)を超えてしまう場合には、放電を抑制しなければならない。つまり状況によっては蓄電池10から放電できる電力は制限される。従って、各蓄電池10の充放電計画を生成する場合、こうした蓄電池10における放電抑制の事象についても踏まえる必要がある。
【0091】
図14は、本実施形態における充放電制御方法の処理手順例3を示すフロー図である。こうした状況を踏まえて充放電計画を生成する充放電制御システム100は、上述の一次処理、二次処理、および未来次処理の少なくともいずれかの処理での充放電計画の生成に際し、各蓄電池10に関して充放電計画として決定した充放電時期の情報(例:曜日と時間帯)を、蓄電池情報データベース128における該当蓄電池10の放電抑制の発生履歴と比較して、該当充放電時期と同じ曜日および時間帯について、放電抑制の発生履歴が登録されている蓄電池10が存在するか判定する(s300)。
【0092】
上述の判定の結果、該当充放電時期と同じ曜日および時間帯について、放電抑制の発生履歴が登録されている蓄電池10の存在が判明した場合(s301:y)、充放電制御システム100は、該当発生履歴が示す該当蓄電池10の放電上限電力値と、該当蓄電池10の充放電計画で決定した放電予定電力値とを比較して、放電予定電力値が放電上限電力値を越えているか判定する(s302)。
【0093】
上述の判定の結果、放電予定電力値が放電上限電力値を越えていることが判明した場合(s303:y)、充放電制御システム100は、その放電予定電力値と放電上限電力値との差分を算定する(s304)。
【0094】
次に充放電制御システム100は、上述のステップs304で算定した差分に対応した電力量の放電を、1または複数で可能な他蓄電池を、蓄電池情報データベース128における各蓄電池10の充電率情報が示す放電余力に基づいて特定する(s305)。
【0095】
また、充放電制御システム100は、上述のステップs305で特定した1または複数の他蓄電池の放電計画を充放電計画データベース130から取得し、該当放電計画に、上述の差分の全部または一部(差分を他蓄電池間で按分したもの)に対応した放電を上乗せし、該当放電計画を更新し(s306)、処理を終了する。以上、各蓄電池10における放電抑制の事象についても踏まえて、各蓄電池10の充放電計画の生成を行う処理について説明した。
【0096】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0097】
こうした本実施形態によれば、変化する電力需給状況に応じて、系統連系した蓄電装置における的確な充放電制御を継続的に実行可能となる。