特許第6069745号(P6069745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069745
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】錠前用動力変換装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/16 20060101AFI20170123BHJP
   E05B 65/06 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   E05C1/16 B
   E05B65/06 C
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-157707(P2012-157707)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-20048(P2014-20048A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】村上 龍司
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−42300(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3066126(JP,U)
【文献】 特開2001−115713(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/003532(WO,A1)
【文献】 特開2008−190191(JP,A)
【文献】 特開2005−48418(JP,A)
【文献】 特開2000−240340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/16
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の一方の壁面に固定された外側ハンドル用の台座部材、前記扉の他方の壁面に設けられかつ錠止ボルトを錠箱内に完全に戻す作動部材を有する錠前、この錠前と前記外側ハンドル用の台座部材との間に介在し、該台座部材とは別個であると共に前記扉の自由端部の開口部に収納された変換ケースを有する錠前用動力変換装置であって、
該錠前用動力変換装置は、前記変換ケースに回転自在に支持されかつ前記外側ハンドルの操作力で所定量回転するハンドルカムと、このハンドルカムの駆動腕と係合し、該ハンドルカムの駆動力によってかつ復帰バネのバネ力に抗して前記変換ケースの上下方向へ移動するスライダーと、このスライダーにその係合腕が係合すると共に、前記ハンドルカムに連動するように前記変換ケースに回転自在に支持されかつ前記外側ハンドルの操作時に該ハンドルカムの回転角よりも大きく回転する連動カムと、この連動カムの出力軸により作動する該連動カムとは別個の前記錠前の作動部材とを備える錠前用動力変換装置。
【請求項2】
請求項1に於いて、連動カムの回転中心からその係合腕の先端までの距離は、ハンドルカムの回転中心からその駆動腕の先端までの距離よりも短いことを特徴とする錠前用動力変換装置。
【請求項3】
請求項1に於いて、変換ケース内には制御部で制御される駆動源が配設され、該駆動源の駆動力により係止片が作動してハンドルカムを係止する、又はその係止を解くことを特徴とする錠前用動力変換装置。
【請求項4】
請求項1に於いて、扉に設けられた錠前がパニックバーを備え、該パニックバーの操作力で作動する作動部材を介して連動カムを回転させ、錠前の錠止ボルトを錠箱内に完全に戻すことを特徴とする錠前用動力変換装置。
【請求項5】
扉の一方の壁面に固定された外側ハンドル用の台座部材、前記の他方の壁面に設けられかつ錠止ボルトを錠箱内に完全に戻す作動部材を有する錠前、この錠前と前記外側ハンドル用の台座部材との間に介在し、該台座部とは別個であると共に前記扉の自由端部の開口部に収納された変換ケースを有する錠前用動力変換装置であって、
該錠前用動力変換装置は、前記変換ケースに回転自在に支持されかつ前記外側ハンドルの操作力で所定量回転する主動ギヤと、この主動ギヤと噛合し、該主動ギヤの駆動力によってかつ復帰バネのバネ力に抗して変換ケースの上下方向へ移動するラックと、このラックに係合すると共に、前記主動ギヤと別個独立し、しかも該主動ギヤに連動するように前記変換ケースに回転自在に支持され、かつ前記外側ハンドルの操作時に該主動ギヤの回転量よりも回転量が大きい従動ギヤ或いは連動カムと、この連動カムの出力軸により作動する該連動カムとは別個の前記錠前の作動部材とを備える錠前用動力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は錠前用動力変換装置に関し、特に、建具としての扉の自由端部に配設される錠前用動力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の扉錠装置は、箱錠のハンドルの操作角度を小さくしても、錠前側のカムも回動角度を変更する必要がない利便さを得るために(発明の課題)、「従来のハブ(ハンドルカム)を一次ハブ43と二次ハブ44とにより構成される2分割構造のハブ42とし、ケースに回動可能に嵌着される一次ハブ43に、偏心軸49とハンドルHの嵌合孔48を設け、ケースに回動可能に嵌着される二次ハブ44に、偏心軸49が挿入される軸挿入孔52と、レトラクタ21の被押動部39を押動する押動部20を設け、一次ハブ43の回動中心から偏心軸49までの距離よりも、二次ハブ44の回動中心から軸挿入孔52の距離を小さくしたもの」である(符号は特許文献1に記載のもの)。
【0003】
この特許文献1の扉錠装置は、ハンドル側の動力を変換する部材の点数を減らすことができるという利点があるものの、変換部材としての一次ハブ43と二次ハブ44の各嵌合孔48、53は、いわば一芯軸上に位置するので、錠前側のカムの位置が限定される。つまり、錠前側のカムの位置を自由に決めることができない。また、ハンドルの角軸が嵌挿する一次ハブ43の中心孔(嵌合孔)48から偏心する偏心軸49を二次ハブ44の挿入孔52に嵌め込む必要があるので、錠前側のカム、作動体等を十分に回転させるためには、二次ハブ44の摺動面50、挿入孔52と嵌合孔53との距離、嵌合孔53の口径等を精密に成形する必要があるという問題点がある。
【0004】
特許文献2は、その用途が駅ホームの安全柵の開閉体(パニックドア)に適用するロック装置である。特許文献2に記載のロック装置は、開閉体1の自由端部の本体ケース2に回転支持されたカム軸8と、本体ケース2の縦長スロット2aに中間部のガイド突起9aが挿入された揺動リンク9と、縦長スロット2aに基端部のガイド枢軸11aが挿入されたスライドリンク11と、揺動リンク9とスライドリンク11を連結する中継リンク10とからなるリンク機構を、カム軸8の偏心突起8aを横長スロット7cに嵌めたスライダー7の上下動によって伸縮駆動し、錠止ロッド12をロック位置へと進退させる。
【0005】
そして、前記開閉体1の電車側の内壁面にパニックレバー6を設け、非常時に該パニックレバー6を押し下げると、前記スライダー7が下方へと移動し、その結果、前記カム軸8及びリンク機構を介して上下方向の錠止ロッド12,12を錠止解除の方向へ移動させる(符号は特許文献2に記載のもの)。
【0006】
しかしながら、特許文献2のパニックドア用ロック装置は、リンク機構を用いるので、構成が複雑である、ホテルの客室の扉に適合しない等の問題点がある。
【0007】
特許文献3には、ホテルの客室の扉に適用することができる出口装置10が開示されている。この特許文献3の図1には、客室の扉の内壁面に固定される左右の支持板13,13と、これらの支持板の間に一体的に設けられた横長状ケース12と、このケースの壁面に間隙を有して設けられたパニックバー(図面上、長尺状のプレート)と、このパニックバーの一端部に設けられたキーシリンダー50と、このキーシリンダー50の出力軸に連結されたブレーカカム52と、このブレーカカム52の回転力によって後退動するデットボルト30が記載されている。なお、デットボルト30を後退動させる具体的な構成は、図6に開示されている。
【0008】
ところで、上記客室の錠部は、客室の扉の外壁面にハンドルユニット(台座、ケース、電源、駆動源、ロック機構など)が設けられ、一方、前記扉の外壁面或いは木口に錠部(錠本体)が設けられ、普通一般に、扉の内外には、前記錠部の錠本体(錠箱)とは別体の内外のハンドルが設けられている。しかし、外国によっては、特許文献3の図1に示すように、内側ハンドルと共に、又は内側ハンドルに代えてパニックバーが設けられている場合がある。
【0009】
そこで、例えばパニックバーが設けられている実施形態の場合、前記デットボルト30を後退動させるためには、該デットボルト30の係合突起と係合するベルクランク(回転体)22を外側ハンドルの回転量よりも大きくする必要がある。また、サムターン摘みでデットボルト30を後退動させる場合も同様である。このように内外の動力伝達手段の回転量が異なる場合には、外側ハンドルの操作力を適切な出力に変換して錠部の作動部材に伝達する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−280321号公報
【特許文献2】特開2001−233198号公報
【特許文献3】US 6,409,232 B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(a)外側ハンドルの作動角が小さくても、錠箱内のリトラクターやダルマを介して、ラッチボルト、デッドボルト等の錠止ボルトを錠箱内に完全に戻すことができることである。また特許文献1の問題点を解決することである。
(b)極力、部品点数を少なくして、前記(a)の目的を達成することができることである。
(c)変換ケースを外側ハンドル用の台座部材又は錠前とは別個に設けることにより、前記台座部材(例えばハンドル用ケース)を極力薄型に製作することができる、或いは錠前の構成を複雑化しなくても済むことである。
(d)例えば遠隔操作により、ハンドルカムを介して外側ハンドルを間接的にロックすることができることである。
(e)例えば扉の内壁面に設けられた錠前がパニックバーを備え、該パニックバーの操作力で連動カムが回転して、錠前の錠止ボルトを錠箱内に完全に戻すことができることである。
(f)その他の目的として、錠止ボルトを備える錠前と、操作ハンドルを備えるハンドルユニット(台座、ケース、電源、駆動源、ロック機構など)が別体の扉錠装置であって、前記操作ハンドルの操作力を錠部の作動部材に適合するように適切な出力に変換して前記錠前の作動部材に伝達することができること、ホテルの客室の扉に適合すること等である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の錠前用動力変換装置は、扉の一方の壁面に固定された外側ハンドル用の台座部材、前記扉の他方の壁面に設けられかつ錠止ボルトを錠箱内に完全に戻す作動部材を有する錠前、この錠前と前記外側ハンドル用の台座部材との間に介在し、該台座部材とは別個であると共に前記扉の自由端部の開口部に収納された変換ケースを有する錠前用動力変換装置であって、該錠前用動力変換装置は、前記変換ケースに回転自在に支持されかつ前記外側ハンドルの操作力で所定量回転するハンドルカムと、このハンドルカムの駆動腕と係合し、該ハンドルカムの駆動力によってかつ復帰バネのバネ力に抗して前記変換ケースの上下方向へ移動するスライダーと、このスライダーにその係合腕が係合すると共に、前記ハンドルカムに連動するように前記変換ケースに回転自在に支持されかつ前記外側ハンドルの操作時に該ハンドルカムの回転角よりも大きく回転する連動カムと、この連動カムの出力軸により作動する該連動カムとは別個の前記錠前の作動部材とを備えることを特徴とする。
【0013】
また本願発明の錠前用動力変換装置は、扉の一方の壁面に固定された外側ハンドル用の台座部材、前記の他方の壁面に設けられかつ錠止ボルトを錠箱内に完全に戻す作動部材を有する錠前、この錠前と前記外側ハンドル用の台座部材との間に介在し、該台座部とは別個であると共に前記扉の自由端部の開口部に収納された変換ケースを有する錠前用動力変換装置であって、該錠前用動力変換装置は、前記変換ケースに回転自在に支持されかつ前記外側ハンドルの操作力で所定量回転する主動ギヤと、この主動ギヤと噛合し、該主動ギヤの駆動力によってかつ復帰バネのバネ力に抗して変換ケースの上下方向へ移動するラックと、このラックに係合すると共に、前記主動ギヤと別個独立し、しかも該主動ギヤに連動するように前記変換ケースに回転自在に支持され、かつ前記外側ハンドルの操作時に該主動ギヤの回転量よりも回転量が大きい従動ギヤ或いは連動カムと、この連動カムの出力軸により作動する該連動カムとは別個の前記錠前の作動部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
外側操作部材の軸部で回転する駆動部材(例えばハンドルカム)の軸孔と、該駆動部材の軸孔と該駆動部材の駆動力を受ける連動部材((例えば連動カム)の軸孔が同軸上に位置していない場合であっても、外側ハンドルの操作力を適切な出力に変換して錠部の作動部材に伝達させることができる。付言すると、外側ハンドルの作動角が小さくても、変換ケースに回転自在に装着された連動カムを介して錠前の作動部材(例えば錠箱内のリトラクター、ダルマ等)の移動量、或いは回転量を大きくすることができる。
【0015】
また、リンク機構を用いていないので、極力、部品点数を少なくすることができる。さらに、台座部材と変換ケースが別部材なので台座部材を極力薄型に製作することができる、或いは錠前と変換ケースが別部材なので、変換ケースの中に変換部材を組み込み、錠前の構成をシンプル化することができる。また、外側ハンドルのロック装置を制御する制御部が、例えばホテルの管理室に設けられている実施形態の場合には、遠隔操作により、ハンドルカムを介して外側ハンドルをロックすることができることができる。さらに、扉に設けられた錠前が、例えばパニックバーの操作力で連動カムを回転させて、錠前の錠止ボルトを錠箱内に完全に戻すことができる。加えて、錠止ボルトを備える錠前と、操作ハンドルを備えるハンドルユニットが別体の扉錠装置であっても、前記操作ハンドルの操作力を適切な出力に変換して前記錠前側の作動部材に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1乃至図11は本発明の第1実施形態を示す各説明図、図12及び図13は本発明の第2実施形態を示す各説明図、図14及び図15は本発明の第3実施形態を示す各説明図、図である。
図1】本発明の使用態様の一例を示す斜視図。
図2】平面視からの横断面概略説明図。
図3】木口側からの縦断面概略説明図。
図4】ハンドルロック装置を加味した正面視側からの概略説明図。
図5】錠前用動力変換装置の主要部材の説明図。
図6】錠前用動力変換装置を構成する主要部材の説明図。
図7】外側ハンドルと、錠前用動力変換装置を示す斜視図。
図8】サムターン摘み、又は/及びパニックバーと、錠前用動力変換装置を示す斜視図。
図9】錠前用動力変換装置と、該動力変換装置とは別個の錠前の錠止ボルトを示す説明図。
図10】外側ハンドルを操作したときの動力変換装置の作動状態を示す説明図。(a)はハンドルカム12の初期状態、(b)はハンドルカム12が所定量回転した状態。
図11】サムターン摘み、或いはパニックハンドルを操作した時の作動状態を示す説明図。(a)は連動カム22の初期状態、(b)は連動カム22が所定量回転した状態。この時、ハンドルカム12は動かない。
図12】第2実施形態を示す主要部の概略説明図。
図13図12の作動状態を示す概略説明図。
図14】第3実施形態を示す主要部の概略説明図。
図15図14の作動状態を示す概略説明図。
図16】内側操作部材の一例を操作した時の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて第1実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の使用態様の斜視図である。この図に於いて、まず1は建具としての扉で、例えばホテルの客室の出入り口に設けられている。もちろん、扉1はホテルの客室用に限定されない。手前側の見える一方の垂直壁面は扉の外壁面1a(客室の外)である。一方、向う側の見えない他方の垂直壁面は、扉の内壁面1bである。
【0018】
1cは扉の自由端部で、該自由端部1cの中央部には開口部1dが形成されている。扉1は取付け端部側の丁番を介して水平方向に開閉する。
【0019】
次に、2は扉1の外壁面1aに配設されたハンドルユニットである。このハンドルユニットは、例えばハンドル用の台座機能を有するユニットケース2aと、該ユニットケース2a内に組み込まれた図示しないカードリーダ、該カードリーダが読み込んだ情報を制御する制御部、該制御部の制御情報を出力する出力部等で構成された情報制御装置2bと、前記ユニットケース2aの軸孔に軸部が嵌め込まれた外側の操作部材としての外側ハンドル(この実施形態では、L型のレバーハンドル)2cとで構成され、前記ユニットケース2aの上端部には、客室の識別情報を有するカードキー(情報媒体)3を差し込むことができる挿入口(或いは差し込み口)4が設けられている。
【0020】
次に、5は扉1の内壁面1bに配設された錠部(錠前)で、この錠前の錠箱5aには、図3に示す錠止ボルト出没機構5bが内設され、該錠止ボルト出没機構(錠前の作動部材)5bの作動によって、ラッチボルト、デットボルト等の錠止ボルト5cが水平方向に進退動する。
【0021】
6(6a,6b)は、扉1の内壁面1bに配設された内側の操作部材としてのサムターン摘み6a又は/及びパニックバー6b(図8参照)で、この実施形態では、サムターン摘み6aが錠箱5aの外壁面に直接又は間接的に設けられている。サムターン摘み6aを所定量(例えば略90度)回すと、錠前の作動部材5bを介して錠止ボルト5cを錠箱5a内に完全に引っ込めることができる。
【0022】
次に、Xは本発明の主要部である錠前用動力変換装置で、該錠前用動力変換装置Xは、本実施形態では、扉の自由端部1cの開口部1dに収納されている。すなわち、図1乃至図3で示すように、扉の一方の壁面に固定された外側ハンドル用の台座部材2aと、前記扉1の他方の壁面に設けられた錠前5と、この錠前と前記台座部材2aとの間に介在(開口部1dに位置)し、かつ、錠前用動力変換装置の主要部材(図5参照)を収納する変換ケース11とで構成されている。
【0023】
ここで、図4乃至図8を参照にして、錠前用動力変換装置Xの主要部材を説明する。図4はハンドルロック装置Yを加味した正面視側からの概略説明図、図5は錠前用動力変換装置の主要部材の説明図である。これらの図に於いて、11は前述した変換ケースで、この変換ケース11は、フロントを有するケース本体11aと、該ケース本体11aの側壁開口を閉鎖する蓋体11bとから構成さていれる。なお、変換ケース11には、軸用貫通孔、ガイド部材用取付け孔、錠止ボルト用案内窓等が適宜に形成されている。
【0024】
12は駆動部材としてのハンドルカムで、このハンドルカム12は、前記変換ケース11の中央部に回転自在に支持され、かつ、外側ハンドル2cの操作力で所定量回転する(例えば30度、35度、40度など)。
【0025】
しかして、ハンドルカム12は、外側ハンドルの角軸(軸部)2dが嵌挿するハブ部分12aと、該ハブ部分12aから半径外方に延在する駆動腕(駆動部分)12bと、この駆動腕12bの反対側で半径外方向に指状に突出する係合部12cとから成り、前記駆動腕12bの先端部の下面は、後述するスライダー14の受部14bに当接している(図5図7参照)。
【0026】
14はスライダーで、このスライダーはハンドルカム12の駆動腕12bと係合し、該ハンドルカム12の駆動力によって、かつ変換ケース11に内装された復帰バネ13のバネ力に抗して変換ケース11の上下方向(実施形態では下方向)へ移動する。
【0027】
例えば図7を参照にすると、スライダー14は縦長状のプレートであり、その垂直板部分14aの上下端部には垂直案内長孔15、15がそれぞれ形成されている。また、スライダー14の中央部には、一側面から外方向に突出する受部14bが設けられている。本実施形態では、前記受部14bは、前述した駆動腕12bと係合する上面が山形状の係合部分16と、復帰バネ13の一端部(上端部)を収納するバネ端支持部17とを有する。18は前記垂直板部分14aの上端部寄りの部位或いは中央部に形成された連動カム用の被係合部(係合溝、係合孔、切欠など)である。19は変換ケース11の後壁に沿うように配設された復帰バネ13の下端部を支持するバネ受けである。そして、20は上下の垂直案内長孔15、15に係合する案内手段としての一対のガイドピンである。
【0028】
最後に、22はハンドルカム12の上方(本実施形態)或いは下方に併設された連動カムで、この連動カム22は、断面四角形或いは異径状の変換軸(出力軸)23が嵌挿するハブ部分22aと、該ハブ部分22aから半径外方に延在する短杆状の係合腕22bと、この係合腕22bの側壁から水平方向に突出し、かつスライダー14の被係合部18に係合する係合ピン22cとから成り、図6で示すように、連動カム22の回転中心からその係合腕22bの先端までの距離aは、ハンドルカム12の回転中心からその駆動腕12bの先端までの距離bよりも短い。
【0029】
付言すると、連動カム22は、スライダー17の被係合部18にその係合腕22bが係合すると共に、ハンドルカム12と別個独立していると共に、該ハンドルカムに連動するように前記変換ケース11に回転自在に支持され、かつ前記外側ハンドル2cの操作時に該ハンドルカムの回転角よりも大きく回転する(例えば70度、80度、90度など)。
【0030】
ここで、図4を参照にして、付加的要件であるハンドルロック装置Yについて簡単に説明する。ハンドルロック装置Yは、例えばホテルの管理室側に配設された制御部31と、この制御部31で制御される駆動源(駆動モータ)32と、この駆動源の駆動力により作動する係止片33とから構成され、前記駆動源32は変換ケース11内に横設されている。また、駆動源32に交差する係止片33の下端部は、ハンドルカム12の指状係合部12cと係脱する。なお、変換ケース11には、ハンドルロック装置Y用の電源(電池)34が設けられている。
【0031】
次に、図9は錠前用動力変換装置Xと、該動力変換装置とは別個の錠前の錠止ボルト5cを示す説明図、図10は外側ハンドルを操作したときの動力変換装置の作動状態を示す説明図、図11はサムターン摘み6aあるいは、パニックハンドル6bを操作した時の作動状態を示す説明図である。
【0032】
前述したように、図9で示す錠止ボルト5cは、変換ケース11ではなく、錠箱5aに出没自在に設けられている。図10は外側ハンドル2cを操作した場合に於いて、錠止ボルト5cが錠箱5a内に完全に後退動する説明図である。図10(a)の初期状態では、錠止ボルト5cが錠箱5aから完全に突出している。復帰バネ13は伸長している。駆動部材としてのハンドルカム12の駆動腕12bは角軸2dの中心よりも右上に位置している。また、連動部材としての連動カム22の係合腕22bの係合ピン22cも、ハンドルカム12の駆動腕12bと同様に変換軸(出力軸)23の中心よりも右上に位置している。そして、外側ハンドル2cの操作部分は水平状態である。
【0033】
一方、図10(b)は外側ハンドル2cの操作部分を所要量押し下げ状態を示す。外側ハンドル2cを操作すると、その操作力は駆動腕12b及び受部14bを介してスライダー14に伝わり、スライダー14は復帰バネ13のバネ力に抗して矢印で示す下方へと移動する。したがって、復帰バネ13は収縮する。この時、連動カム22は略同期して、或いは設計如何によっては、若干遅延してハンドルカム12と同じ方向へ回転するが、本実施形態では、連動カム22の回転中心からその係合腕22bの先端(実施形態では係合ピン)までの距離aは、ハンドルカム12の回転中心からその駆動腕12bの先端(実施形態では先端部分)までの距離bよりも短いので、例えばハンドルカム12が30度、40度等回転すると、連動カム22が70度、90度等回転する。このように、錠前用動力変換装置Xによって、外側ハンドル2cの操作力を適切な出力に変換することができる。
【実施例】
【0034】
図12乃至図15に示す本発明の他の実施形態について説明する。なお、他の実施形態の説明に当って、第1実施形態と同一の部分には同一又は同様の符号を付して重複する説明を割愛する。
【0035】
図12及び図13は本発明の第2実施形態を示す各説明図である。この第2実施形態が第1実施形態と主に異なる点は、縦長状のバネ受け部材25を変換ケース11の後壁に沿って固定的に設けた点、このバネ受け部材25の手前側の垂直壁25a、該垂直壁に対向する向こう側の不番の垂直壁に弧状の案内長孔26を形成した点、このバネ受け部材25の上端部にストッパー機能及びケース蓋取り付け機能を有する横柱27を設けた点、バネ受け部材25はケース状に形成され、該ケース状のバネ受け部材25の垂直壁25aの外側にハンドルカム12の駆動腕12bの先端部(駆動部分)が位置している点、前記駆動腕12bの先端部に駆動ピン28が設けられ、この駆動ピン28は前記弧状案内長孔26に嵌挿されていると共に、ケース状バネ受け部材25内に入り込んだスライダー14の突起状受部14bの貫通孔29を貫通している点、ケース状バネ受け部材25に復帰バネ13の上端部に外嵌合するキャップ状の付勢体30が内装されている点、ケース状バネ受け部材25に内装された復帰バネ13は、駆動腕12bの駆動ピン28に圧接する前記付勢体30を介して伸縮する点である。この第2実施形態は、実施化レベルのもので、付勢手段13、30をスムースに作動させる利点がある。
【0036】
図14及び図15は本発明の第3実施形態を示す各説明図である。この第3実施形態が第1実施形態を回避するために設計変更したものである。これらの図に於いて、12Aは駆動部材としての主動ギヤで、該主動ギヤ12Aはハンドルカムに相当する。12bはハブ部分12aに扇状に連設する駆動部分に弧状に形成された駆動歯12bで、該駆動歯12bは駆動腕12bの先端部に相当する。14Aは主動ギヤ12Aに同期的に連動するラックで、このラック14Aは、前記駆動歯12bと係合(噛合)する一方(下方)の第1係合歯14bと、従動ギヤ22Aに係合(噛合)する他方(上方)の第2係合歯18とを有する。このラック14Aはスライダー14に相当する。なお、5b、5cは錠部の構成部材である。
【0037】
したがって、この第3実施形態の錠前用動力変換装置X1は、変換ケース11に回転自在に支持されかつ外側ハンドル2cの操作力で所定量回転する主動ギヤ12Aと、この主動ギヤ12Aと噛合し、該主動ギヤ12Aの駆動力によってかつ復帰バネ13のバネ力に抗して変換ケース11の上下方向へ移動するラック14Aと、このラック14Aに係合すると共に、前記主動ギヤ12Aと別個独立し、しかも該主動ギヤに連動するように前記変換ケース11に回転自在に支持され、かつ前記外側ハンドル2cの操作時に該主動ギヤ12Aの回転量よりも回転量が大きい従動ギヤ(或いは第1実施形態の連動カム)22Aから成る。
【0038】
図16は、内側操作部材の一例を操作した時の説明図である。内側操作部材6は、長杆状のパニックバー6b(図8参照)である。このパニックバー6bは、図面左側の基端部が長尺状の取付け基板40の架設された垂直軸41に軸支され、一方、折り曲げ形成された自由端部42は、錠箱5aに設けられた垂直軸43に回転自在に軸支された第1作動板44の扇状係合部44aの一端面に押圧可能である。なお、パニックバー6bを手で押し込むと、パニックバー6bは、図示しないバネ部材のバネ力に抗して矢印方向(錠箱5a側)に接近する。すなわち、パニックバー6bを矢印方向へプッシュすると、その自由端部42が扇状係合部44aの端面を押圧するので、第1作動板44は垂直軸43を中心にして矢印方向へと回転する。そうすると、錠箱5aに設けられた変換軸23を有する第2作動体45が回転する。この時第2作動体45の突起部分45aの端面に第1作動板44の扇状係合部44aの他端面が当たる。その結果、変換軸23と協働する錠前の作動部材(例えばサムターンダルマ)が回転し、錠止ボルト5cが錠箱5a内へ後退する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は錠前及び建具の分野で利用される。
【符号の説明】
【0040】
X、X1…錠前用動力変換装置、1…扉、2…台座部材(ハンドルユニット)、2c…外側ハンドル、5…錠前、6…内側操作部材、11…変換ケース、12、12A…駆動部材(ハンドルカム、主動ギヤ)、12b…駆動部分(駆動腕、駆動歯)、13…復帰バネ、14…スライダー、14A…ラック、Y…ハンドルロック装置、22…連動カム。
図1
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