(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069746
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】歯科用補綴物製作支援装置及び歯科用補綴物の製作方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/00 20060101AFI20170123BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
A61C13/00 Z
A61C19/04 J
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-197155(P2012-197155)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-50573(P2014-50573A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(72)【発明者】
【氏名】真宮 亮
(72)【発明者】
【氏名】吉本 龍一
(72)【発明者】
【氏名】下曽山 俊
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−515417(JP,A)
【文献】
特開平02−114957(JP,A)
【文献】
特開平08−229057(JP,A)
【文献】
特開2008−149117(JP,A)
【文献】
特開2005−176915(JP,A)
【文献】
特表2004−506187(JP,A)
【文献】
特開2005−334426(JP,A)
【文献】
特開2003−242342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口腔内を撮影する撮影装置と、該撮影装置によって撮影された患者の口腔内の画像である見本画像データの記憶装置と、該見本画像データを表示するモニターと、該見本画像データに基づいて製作される歯科用補綴物を撮影する撮影装置と、該撮影装置によって撮影された歯科用補綴物の製作過程の動画である製作画像データの記憶装置と、該製作画像データを表示するモニターとからなる装置であり、該見本画像データの撮影装置と該製作画像データの撮影装置とが同じ色調再現性を有し、該見本画像データを表示するモニターと該製作画像データを表示するモニターとが同じ色調再現性を有し、該見本画像データを表示するモニター上に表示された見本画像データの色調と該製作画像データを表示するモニター上に表示された製作画像データの色調とをモニター上で比較しながら歯科用補綴物の色調を調整して歯科用補綴物を製作することができることを特徴とする歯科用補綴物製作支援装置。
【請求項2】
前記見本画像データを表示するモニターと前記製作画像データを表示するモニターが一つのモニターである請求項1記載の歯科用補綴物製作支援装置。
【請求項3】
ホワイトバランスが同一になるように調整された撮影場所で同一の色調再現性を有する撮影装置によって撮影された見本画像データと製作画像データとを同一の色調再現性を有するモニターに表示して比較しながら歯科用補綴物を製作する方法において、該見本画像データが患者の口腔内の画像であり、該製作画像データが歯科用補綴物の製作過程の動画であり、該見本画像データに収められた歯牙の画像の該モニターに表示される色調と該製作画像データに収められた動画の歯科用補綴物の該モニターに表示される色調とをモニター上で比較しながら歯科用補綴物の色調を調整して歯科用補綴物を製作することを特徴とする歯科用補綴物の製作方法。
【請求項4】
前記歯牙の前記モニターに表示される色調と前記歯科用補綴物の前記モニターに表示される色調との比較が数値情報を用いた比較である請求項3記載の歯科用補綴物の製作方法。
【請求項5】
前記見本画像データには歯牙周辺組織の画像データが含まれ、前記製作画像データには模型に嵌めた歯科用補綴物の動画データが含まれる請求項3又は4記載の歯科用補綴物の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用補綴製作支援装置及び歯科用補綴物の製作方法に関するものである。
なお、本明細書における「見本画像データ」とは、患者の口腔内を撮影して製作された画像データをいい、「製作画像データ」とは、
製作過程の歯科用補綴物を撮影した動画データをいう。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、歯科技工士が歯科用補綴物を製作する場合、従来は、歯科医師がカメラによってシェードガイド(歯科用の色見本)と共に撮影した患者の口腔内の見本写真を受け取って該見本写真を参考にして製作していたが、写真が電子データ化されるようになった近年においては、歯科医師がデジタルカメラによってシェードガイドと共に撮影した患者の口腔内の見本画像データをインターネット経由で受け取って該見本画像データをモニターに表示させて製作することが一般的になっており、このような見本画像データを参考にした歯科用補綴物の製作に関して種々の支援装置が開発されている。
【0003】
例えば、後出特許文献1には、歯科用補綴物が必要な歯牙の状態を撮像した患者画像データを表示するブラウザが動作する歯科医用コンピュータとネットワークを介して接続される歯科用補綴物作製支援装置であって、前記歯科医用コンピュータから送信された前記患者画像データを記憶する記憶部と、前記患者画像データを含む操作画面を前記ブラウザに表示させ、前記操作画面により前記患者画像データに重ねて入力された前記歯科用補綴物を模した歯牙パターンおよび前記歯科用補綴物の色調に関する文字情報を歯科用補綴物画像データとして生成するように前記ブラウザを動作させ、前記歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを受信して前記記憶部に登録するブラウザ制御部とを備えた歯科用補綴物作製支援装置が開示されている。
【0004】
前記特許文献1に開示される歯科用補綴物作製支援装置によれば、歯科医師と歯科技工士とがそれぞれが所有するモニターにネットワークを介して同一の見本画像データの画像を表示させながら、患者の情報に関して意見交換することができるため、歯科医師と歯科技工士との間の意思の疎通を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−209473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示される歯科用補綴物作製支援装置を利用して歯科医師と意見交換を行った歯科技工士は、当該支援装置によって作成された色調に関する文字情報が入った見本画像データに基づく画像をモニターに表示させて歯科用補綴物の製作作業を進めるが、この時、比較対象が平面的な画像と立体的な歯科用補綴物とになるため、非常に比較し難いという問題点があった。
【0007】
また、前記のとおり、歯科技工士は、モニターに映し出される見本画像データに基づく画像を参考にして歯科用補綴物の色調を調整するが、モニターは固有の色調再現性があり、モニターに映し出された見本画像データに基づく画像には、当該モニターが有する固有の色調再現性が反映されるため、最適な色調の歯科用補綴物を製作するには、実際に一度はモニターに映し出される見本画像データに収められたシェードガイドの画像と手元にある実物のシェードガイドとを比較してモニターによる色調の変化を把握した上で、見本画像データを参考にしつつ経験に基づいて歯科用補綴物の色調を判断する必要があった。
【0008】
さらに、歯科医師は撮影装置によって患者の口腔内を撮影して見本画像データを作成するが、撮影装置にも固有の色調再現性があり、撮影装置によって撮影して作成された見本画像データには当該撮影装置が有する固有の色調再現性が反映されるため、歯科技工士は、この点についても考慮して歯科用補綴物を製作しなければならなかった。
【0009】
このように従来の歯科用補綴物の製作現場において、歯科医師から歯科技工士へ患者の口腔内の状態を伝えるために撮影装置やモニターなど機器を介在させると、各機器が有する固有の色調再現性が反映されてしまい歯科技工士はこれらの機器による色調の変化を把握した上で最適な色調の歯科用補綴物を製作しなければならず、また、機器を新しいものに交換した場合にはその都度機器よる色調の変化を把握しなおさなければならないという問題点があり、さらに、比較対象が平面的な画像と立体的な歯科用補綴物となるため、非常に比較し難いという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明者は、見本と歯科用補綴物とを比較し易くし、また、歯科医師から歯科技工士へ患者の口腔内の状態を伝えるために機器を介在させたとしても、当該機器よる色調の変化を十分に把握することなく、最適な色調の歯科用補綴物を製作できる歯科用補綴物製作支援装置及び歯科用補綴物の製作方法を提供することを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試行錯誤的に試作・実験を重ねた結果、歯科用補綴物製作支援装置に、患者の口腔内を撮影して作成された見本画像データに基づいて製作される歯科用補綴物の製作過程の状態を随時撮影する撮影装置と、該撮影装置によって作成された製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像を見本画像データに収められた歯牙の画像と比較できるように映し出すモニターとを備えたことにより、歯科用補綴物を製作する際に、比較対象がいずれも平面的な画像となって比較し易く、さらに、同じ色調再現性を有する撮影装置によって両画像データを作成し、両画像データを同じ色調再現性を有するモニターに表示させることにより、歯科技工士は、同じ条件の下で色調が調整(補正)された両画像データを目視することになるため、モニター画面越しに見える両画像データに基づく画像の色調を一致させれば、各機器による色調の変化を十分に把握しなくても、最適な色調の歯科用補綴物を製作できるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0012】
すなわち、本発明に係る歯科用補綴物製作支援装置は、患者の口腔内を撮影する撮影装置と、該撮影装置によって撮影された患者の口腔内の画像である見本画像データの記憶装置と、該見本画像データを表示するモニターと、該見本画像データに基づいて製作される歯科用補綴物を撮影する撮影装置と、該撮影装置によって撮影された
歯科用補綴物の製作過程の動画である製作画像データの記憶装置と、該製作画像データを表示するモニターとからなる装置であり、該見本画像データの撮影装置と該製作画像データの撮影装置とが同じ色調再現性を有し、該見本画像データを表示するモニターと該製作画像データを表示するモニターとが同じ色調再現性を有し、該見本画像データを表示するモニター
上に表示された見本画像データの色調と該製作画像データを表示するモニター上に表示された製作画像データの色調とをモニター上で比較しながら歯科用補綴物の色調を調整して歯科用補綴物を製作することができることを特徴とする歯科用補綴物製作支援装置である。
【0013】
また、本発明は、
前記見本画像データを表示するモニターと前記製作画像データを表示するモニターが一つのモニターである請求項1記載の歯科用補綴物製作支援装置である。
【0015】
また、本発明は、ホワイトバランスが同一になるように調整された撮影場所で同一の色調再現性を有する撮影装置によって
撮影された見本画像データと製作画像データとを同一の色調再現性を有するモニターに表示して比較しながら歯科用補綴物を製作する方法において、該見本画像データが患者の口腔内の画像であり、該製作画像データが歯科用補綴物の製作過程の動画であり、該見本画像データに収められた歯牙の画像の該モニターに表示される色調と
該製作画像データに収められた動画の歯科用補綴物の該モニターに表示される色調とをモニター上で比較しながら歯科用補綴物の色調を調整して歯科用補綴物を製作することを特徴とする歯科用補綴物の製作方法である。
【0016】
また、本発明は、前記歯牙の前記モニターに表示される色調と前記歯科用補綴物の前記モニターに表示される色調との比較が数値情報を用いた比較である請求項
3記載の歯科用補綴物の製作方法である。
【0017】
また、本発明は、前記見本画像データには歯牙周辺組織の画像データが含まれ、前記製作画像データには
模型に嵌めた歯科用補綴物の動画データが含まれる請求項
3又は4記載の歯科用補綴物の製作方法である。
【0018】
さらに、本発明における他の実施の形態としては、前記いずれかの歯科用補綴物製作支援装置において、見本画像データが患部の歯牙及び該患部の歯牙の周辺に位置する歯牙を収めるように撮影して作成されており、製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像を見本画像データに収められた歯牙の画像と比較できるように、製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像を見本画像データに収められた患部の歯牙の画像と置き換えた加工画像データをモニターに映し出すものである。
【0019】
また、前記いずれかの歯科用補綴物製作支援装置において、製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像を見本画像データに収められた歯牙の画像と比較できるように、製作画像データの指定部分と見本画像データの指定部分との色調に関する数値情報又は/及び色差に関する数値情報をモニターに表示するものである。
【0020】
さらに、本発明における他の実施の形態としては、前記いずれかの歯科用補綴物の製作方法において、見本画像データを患部の歯牙及び該患部の歯牙の周辺に位置する歯牙が納まるように撮影して作成し、製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像を見本画像データに収められた歯牙の画像と比較できるように、製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像を見本画像データに収められた患部の歯牙の画像と置き換えた加工画像データをモニターに映し出すものである。
【0021】
また、前記いずれかの歯科用補綴物の製作方法において、製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像を見本画像データに収められた歯牙の画像と比較できるように、製作画像データの指定部分と見本画像データの指定部分との色調に関する数値情報又は/及び色差に関する数値情報をモニターに表示するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、歯科医師が撮影した患者の口腔内の見本画像データに収められた歯牙の画像と該見本画像データに基づいて製作される歯科用補綴物の製作過程の状態を随時撮影した製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像とを比較できるようにモニターに表示させるので、比較対象がいずれも平面的な画像となって比較し易くなる。また、両画像データを表示するモニターや両画像データを作成する撮影装置として同じ色調再現性を有する機器を使用したので、比較対象となる両画像がいずれも同じ条件で色調補正された状態となり、両画像を参照して歯科用補綴物の色調を調整すれば、歯科用補綴物に最適な色調を再現することができる。これにより、歯科用補綴物の色調を調整する際に、歯科技工士の経験による予測が不要となって未熟者であっても歯科用補綴物の色調を容易に調整することができる。また、モニターに写し出された見本画像データと製作画像データを自由に拡大縮小することができ、作成部位を大きくモニターに表示することで容易に補綴物を作製することができる。
【0023】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態1に係る歯科用補綴物製作支援装置を示した説明図である。
【
図2】実施の形態2に係る歯科用補綴物製作支援装置を示した説明図である。
【
図3】実施の形態3の変形例1を説明するための説明図である。
【
図4】実施の形態3の変形例2を説明するための説明図である。
【
図5】実施の形態3の変形例3を説明するための説明図である。
【
図6】実施の形態3の変形例4を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
本実施の形態に係る歯科用補綴物製作支援装置1は、
図1に示すように、歯科医師側に設置されるパーソナルコンピュータ2及び撮影装置3と、歯科技工士側に設置される二台のパーソナルコンピュータ4,5及び撮影装置6とから構成されている。
【0028】
歯科医師側に設置された撮影装置3は、歯科医師がシェードガイドと共に患者7の口腔内、具体的には、患部の歯牙・患部の歯牙の周辺に位置する歯牙・患部と左右対称に位置する歯牙などを撮影して見本画像データを作成するためのものであり、撮影装置3で作成された見本画像データは歯科医師側に設置されたパーソナルコンピュータ2内の記録媒体に保存される。そして、歯科医師側に設置されたパーソナルコンピュータ2は、歯科技工士側に設置された一方のパーソナルコンピュータ4とインターネットによって接続されており、両パーソナルコンピュータ2,4間でインターネットを通じて見本画像データを送受信することができる。
【0029】
歯科技工士側に設置された撮影装置6は、歯科技工士が製作する歯科用補綴物8の製作過程の状態を随時撮影して製作画像データを作成するためのものであり、撮影装置6で作成された製作画像データは歯科技工士側に設置された他方のパーソナルコンピュータ5内の記録媒体に保存される。
【0030】
歯科技工士側の一方のパーソナルコンピュータ4は、インターネットを通じて歯科医師側のパーソナルコンピュータ2から送信されてきた見本画像データに基づく画像を映し出すことができるモニター9を備えており、歯科技工士側の他方のパーソナルコンピュータ5は、撮影装置6で作成された製作画像データに基づく画像を映し出すことができるモニター10を備えており、両モニター9,10は、それぞれのモニター9,10に映し出された画像を比較できるように併設されている。
【0031】
歯科医師側に設置された撮影装置3と歯科技工士側に設置された撮影装置6とは、同じ色調再現性を有するものを用いる。なお、同じ色調再現性を有する撮影装置とは、撮影装置が備えるレンズや撮像素子などの色調に関連する部品(ハード)と色調を補正するソフトに対して同じ色調が再現されるように調整が施されたものであり、例えば、同一機種(同一メーカーで製造された同一品番)の撮影装置を用いることが最も好ましい。同一機種のものであれば、色調に関連する部品や色調を補正するソフトに対して同じ色調を再現するための調整が施されているので、同一の色調再現性を有するからである。
【0032】
また、歯科技工士側に設置されたモニター9,10は、同じ色調再現性を有するものを用いる。なお、同じ色調再現性を有するモニターとは、液晶方式モニターであれば、バックライトやフィルターなどの色調に関連する部品や色調を補正するソフトに対して同じ色調を再現するための調整が施されたものであり、プラズマ方式モニターやブラウン管方式モニターであれば、蛍光体などの色調に関連する部品や色調を補正するソフトに対して同じ色調を再現するための調整が施されたものであり、例えば、同一機種(同一メーカーで製造された同一品番)のモニターを用いることが最も好ましい。同一機種のものであれば、色調に関連する部品や色調を補正するソフトに対して同じ色調を再現するための調整が施されているので、同一の色調再現性を有するからである。
【0033】
なお、見本画像データと製作画像データとは、静止画であってもよく、また、動画であってもよい。
【0034】
次に、前記歯科用補綴物製作支援装置1を用いて歯科用補綴物8を製作する過程を説明する。
【0035】
歯科医師は、撮影装置3によってシェードガイドと共に患者の口腔内を撮影して見本画像データを作成し、当該見本画像データをパーソナルコンピュータ2内の記録媒体に保存する。続いて、パーソナルコンピュータ2内の記録媒体に保存された見本画像データを電子メールによって歯科技工士側に設置された一方のパーソナルコンピュータ4に送信する。
【0036】
一方、歯科技工士は、二つのモニター9,10に備えられた表示の設定(コントラスト、色調などの設定)を一致させる。続いて、歯科医師から電子メールによって送信されたシェードガイドと共に患者の口腔内を撮影して作成された見本画像データを一方のパーソナルコンピュータ4で受信し、当該見本画像データに基づく画像を一方のパーソナルコンピュータ4に接続されたモニター9に表示する。
【0037】
次に、歯科技工士は、歯科用補綴物の製作作業を進める際には、製作過程の状態にある歯科用補綴物を随時撮影装置6にて撮影して製作画像データを作成し、当該製作画像データを他方のパーソナルコンピュータ5の記録媒体に保存すると共に、当該製作画像に基づく画像を他方のパーソナルコンピュータ5に接続されたモニター10に表示させる。そして、一方のパーソナルコンピュータ4のモニター9に表示された見本画像データに収められた歯牙の画像と他方のパーソナルコンピュータ5のモニター10に表示された製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像とを参照しながら、歯科用補綴物の色調を調整する。この時、画像データを表示させるソフトウェアなどにより、モニターに写し出された見本画像データと製作画像データを自由に拡大縮小し、作成部位を大きくモニターに表示することもできる。
【0038】
なお、歯科用補綴物の製作作業は、石膏などの材料で作成された患者の歯牙の並びを再現した模型に歯科用補綴物を着脱させながら進められる。このため、歯科用補綴物を撮影して製作画像データを作成する際には、歯科用補綴物を模型に嵌め込んだ状態で撮影しても良く、また、歯科用補綴物を模型から取り外した状態で撮影しても良い。
【0040】
本実施の形態は前記実施の形態1における歯科技工士側に設置されたパーソナルコンピュータの変形例であり、
図2において、
図1と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0041】
本実施の形態においては、歯科技工士側に設置されるパーソナルコンピュータが1台になっている。従って、歯科技工士側に設置されるパーソナルコンピュータ11の記録媒体には、歯科医師側に設置されたパーソナルコンピュータ2から受信する歯科医師がシェードガイドと共に患者の口腔内を撮影して作成した見本画像データと歯科技工士が製作過程の状態の歯科用補綴物を撮影して作成した製作画像データとが共に保存される。そして、パーソナルコンピュータ11の記録媒体に保存された両画像データは、パーソナルコンピュータ11に接続されたモニター12に表示させるが、この時、モニター12の画面を二分割し、一方側に見本画像データに収められた歯牙の画像が表示され、他方側に製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像が表示される。
【0042】
本実施の形態においては、歯科技工士が歯科用補綴物の製作に当たって参照する二つの画像データを一つ
のモニターに表示させることができる。よって、必然的に二つの画像データに基づく画像に対してはモニターに表示させる際に同じ色調の補正が行われる。
【0044】
本実施の形態は前記実施の形態1又は2における見本画像データ及び製作画像データのモニターへの表示方法の変形例であり、変形例1乃至3は実施の形態2の変形例であり、変形例4は実施の形態1の変形例である。なお、
図3〜
図6において、
図1又は
図2と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0045】
変形例1:本変形例は、患者の患部の歯牙を補うための歯科用補綴物を製作する場合に使用されるものである。本変形例においては、歯科医師は、患者の口腔内を撮影する際に、シェードガイドと共に患者の患部の歯牙及び該患部の歯牙の周辺に位置する歯牙が納まるように撮影して見本画像データ13を作成し、歯科技工士は、見本画像データ13を参考にして製作する歯科用補綴物16を随時撮影して製作画像データ14を作成する。なお、本変形例における製作画像データ14は、歯科用補綴物16を模型に嵌め込んだ状態で撮影して作成したものである。そして、歯科技工士が両画像データ13,14を比較する際に、
図3に示すように、見本画像データ13に収められた患部の歯牙15の画像を製作画像データ14に収められた歯科用補綴物16の画像(
図3中、射線にて示す部分)に置き換えるように合成した加工画像データ17をモニター12に表示させる。
【0046】
本変形例によれば、実際に患者の口腔内に歯科用補綴物を装着した状態を擬似的に再現することができるため、患者の患部周辺の色調と歯科用補綴物の色調とのバランスが確認し易くなる。
【0047】
変形例2:本変形例も、前記変形例1と同様に患者の歯牙を補うための歯科用補綴物を製作する場合に使用されるものである。本変形例においては、歯科医師は、患者の患部の歯牙を含む歯牙の並びが見えるように笑った表情の口元を撮影して見本画像データ18を作成し、歯科技工士は、見本画像データを参考にして製作する歯科用補綴物16を随時撮影して製作画像データ14を作成する。なお、本変形例における製作画像データ14は、歯科用補綴物16を模型から取り外した状態で撮影して作成したものである。そして、歯科技工士が両画像データ14,18を比較する際に、
図4に示すように、見本画像データ18に収められた患部の歯牙19の画像を製作画像データ14に収められた歯科用補綴物16の画像に置き換えるように合成した加工画像データ20をモニター12に表示させる。
【0048】
本変形例によれば、実際に患者の口腔内に歯科用補綴物を装着した状態を擬似的に再現することができ、患者の唇(スマイルライン)を含めた患部周辺の色調と歯科用補綴物の色調とのバランスが確認し易くなる。
【0049】
変形例3:本変形例は、前記実施例1及び2と同様に患者の歯牙を補うための歯科用補綴物を製作する場合に使用されるものである。本変形例においては、歯科医師は、患者の口腔内を撮影する際に、シェードガイドと共に患者の患部の歯牙及び該患部の歯牙の周辺に位置する歯牙が納まるように撮影して見本画像データ21を作成し、歯科技工士は、見本画像データ21を参考にして製作する歯科用補綴物を随時撮影して製作画像データ14を作成する。なお、本変形例における製作画像データ14は、歯科用補綴物16を模型に嵌め込んだ状態で撮影して作成したものである。そして、歯科技工士が両画像データ14,21を比較する際に、
図5に示すように、見本画像データ21に収められた患部の歯牙22と隣接する歯牙23の一部の画像と製作画像データ14に収められた歯科用補綴物16の一部の画像とを組み合わせて一つの歯牙になるように合成した加工画像データ24(
図5においては、向かって左半分が見本画像データ21に収められた患部の歯牙22と隣接する歯牙23の一部の画像になっていると共に向かって右半分が製作画像データ14に収められた歯科用補綴物16の一部の画像になっている。)をモニター12に表示させる。
【0050】
本変形例によれば、患者の患部の歯牙に隣接する歯牙と歯科用補綴物との色調の違いを比較し易くなる。
【0051】
変形例4:本変形例は、審美修復を行うための歯科用補綴物を製作する場合に使用されるものである。本変形例においては、歯科医師は、患者の口腔内を撮影する際に、シェードガイドと共に患者の審美修復を施す歯牙(患部の歯牙)及び該審美修復を施す歯牙(患部の歯牙)の周辺に位置する歯牙が納まるように撮影して見本画像データ21を作成し、歯科技工士は、見本画像データを参考にして製作する歯科用補綴物を随時撮影して製作画像データ14を作成する。なお、本変形例における製作画像データ14は、歯科用補綴物16を模型に嵌め込んだ状態で撮影して作成したものである。そして、歯科技工士が両画像データ14,21を比較する際に、
図6に示すように、一方のモニター9に映し出した見本画像データ21の所定部分を指定して該所定部分の色調に関する数値情報25を表示することができ、また、他方のモニター10に映し出した製作画像データ14の所定部分を指定して該所定部分の色調に関する数値情報26を表示することができるようになっている。
【0052】
なお、数値情報としては、前記のとおり、両画像データの所定部分の色調を表すL*a*b*表色系のような数値を表示してもよく、また、両画像データの所定部分の色調を比較して一致度合いを表すΔE(色差)のような数値を表示してもよい。
【0053】
本変形例によれば、両画像データの色調の一致度合いを視覚的に比較するだけでなく、数値的に比較できる。
【0054】
なお、前記各実施の形態においては、歯科医師がシェードガイドと共に患者の口腔内を撮影して作成した見本画像データを、歯科医師側に設置されたパーソナルコンピュータから歯科技工士側に設置されたパーソナルコンピュータへ電子メールにて送信しているが、歯科医師から歯科技工士への見本画像データの受け渡し方法はこれに限定されず、例えば、歯科医師が見本画像データを記録したCD‐Rやメモリなどの移動可能な記録媒体を歯科技工士へ送付し、歯科技工士が当該記録媒体に記録された見本画像データをパーソナルコンピュータを介してモニターに表示させてもよい。
【0055】
また、モニターとしては、前記各実施の形態において例示した液晶方式モニター、プラズマ方式モニター又はブラウン管方式モニターに限定されず、他の方式のモニターを使用してもよい。
【0056】
また、画像編集ソフトの機能を用いて見本画像データや製作画像データの背景を黒色に編集して歯牙の表示が強調されるようにしてもよい。また、製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像に対しては、歯肉の色調が反映するような色調補正を行うことが好ましい。
【0057】
前記各実施の形態においては、歯科医師側に設置された撮影装置で見本画像データを作成し、歯科技工士側に設置された撮影装置で製作画像データを作成しているが、両画像データを同一の撮影装置で作成してもよい。この場合には、歯科医師は、患者の口腔内を撮影して作成した見本画像データが記録された撮影装置自体を歯科技工士に引き渡すことになる。
【0058】
なお、歯科医師が患者の口腔内を撮影する際の撮影環境と歯科技工士が製作過程の状態の歯科用補綴物を撮影する際の撮影環境とを可能な限り一致させる必要がある。撮影装置として一眼レフカメラを使用し、口腔内のホワイトバランスと技工物(歯科用補綴物)を製作する作業現場のホワイトバランスとが一致又は近づくようにホワイトバランスを調整すれば照明の影響を受け難くなるため、撮影環境の影響を受け難くなる。
【0059】
また、前記各実施の形態においては、両画像データを表示させるモニターとして同じ色調再現性を有するものを使用し、かつ、両画像データを作成する撮影装置として同じ色調再現性を有するものを使用しているが、これに限定されず、少なくとも両画像データを表示させるモニターが同じ色調再現性を有するものであればよい。この場合には、両画像データを作成する撮影装置が同じ色調再現性を有しないため、両画像データを作成する際に、撮影時に撮影環境や撮影装置の設定を調整することや、撮影後に色調補正ソフトを用いて色調補正を行なうことにより、異なる色調再現性を有する撮影装置によって作成された両画像データが同じ色調に再現されるように調整する必要がある。また、モニター画像の色調整を行なえる装置やソフトを用いて、色調を調整し色調再現性を実現できる場合は、両画像データを表示させるモニターが同じ色調再現性を有しなくてもよい。但し、同じ機種を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0060】
1 歯科用補綴物製作支援装置
2 パーソナルコンピュータ
3 撮影装置
4,5 パーソナルコンピュータ
6 撮影装置
7 患者
8 歯科用補綴物
9,10 モニター
11 パーソナルコンピュータ
12 モニター
13 見本画像データ
14 製作画像データ
15 見本画像データに収められた患部の歯牙の画像
16 製作画像データに収められた歯科用補綴物の画像
17 加工画像データ
18 見本画像データ
19 見本画像データに収められた患部の歯牙の画像
20 加工画像データ
21 見本画像データ
22 見本画像データに収められた患部の歯牙の画像
23 見本画像データに収められた患部の歯牙に隣接する歯牙の画像
24 加工画像データ
25 数値情報
26 数値情報