特許第6069756号(P6069756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069756
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】回転可能な軸受を有する寛骨臼カップ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/34 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   A61F2/34
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-31755(P2012-31755)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2012-183303(P2012-183303A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年11月19日
(31)【優先権主張番号】13/028,621
(32)【優先日】2011年2月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515115976
【氏名又は名称】アールアール メディカル ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ロドニー・イアン・ウォルター・リチャードソン
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0171817(US,A1)
【文献】 特開2004−195222(JP,A)
【文献】 特開2009−112755(JP,A)
【文献】 特表2008−529613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/32 − A61F 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工股関節移植システムであって、
ステム部、前記ステム部に連結されたネック部、および前記ネック部に連結された部分球ヘッドを有している人工大腿骨部品と、寛骨臼部品と、を備え、
前記寛骨臼部品が、
周方向リム部を備える開端を有する部分球内側軸受面を有し、前記周方向リム部が半径方向内方に延出した周方向フランジを有するハウジングと、
前記ハウジングの前記部分球内側軸受面に係合する第1部分球外面領域(30)を有する軸受要素と、を備え、
前記軸受要素は、前記人工大腿骨部品の前記部分球ヘッドを受容するための第2開端(39)を有する部分球内面領域(36)を有し、
前記軸受要素の前記第1部分球外面領域(30)は、前記第2開端(39)の中心軸の周りに延在し、
前記中心軸は、前記第1部分球外面領域(30)の極および前記第1部分球外面領域(30)の回転中心と交わっており、
前記軸受要素は、前記第2開端(39)の近傍から前記極に向かって延在する第2部分球外面領域(32)を有し、
前記第1部分球外面領域(30)は、前記軸受要素の前記部分球内面領域(36)の中心からの半径方向において前記第2部分球外面領域(32)よりも遠位に位置している、人工股関節移植システム。
【請求項2】
前記軸受要素の前記第1部分球外面領域(30)は、前記第1部分球外面領域(30)と前記第2部分球外面領域(32)との間に延在する周方向接触面の外縁を画定するように、前記極から前記第2開端(39)に向かって延在している、請求項1に記載の人工股関節移植システム。
【請求項3】
前記周方向接触面は、前記第1部分球外面領域(30)および前記第2部分球外面領域(32)の周りに360°にわたって延在している、請求項2に記載の人工股関節移植システム。
【請求項4】
前記周方向接触面は、前記軸受要素において前記極と赤道との中間に配置され、前記赤道は、前記第1部分球外面領域(30)の前記回転中心を通って前記第1部分球外面領域(30)の前記中心軸と直交している、請求項2に記載の人工股関節移植システム。
【請求項5】
前記周方向接触面は、前記軸受要素が前記ハウジングに対して回転したとき、前記人工大腿骨部品の前記ネック部が、前記ハウジングの前記半径方向内方に延出した周方向フランジよりも前に前記軸受要素の前記第2開端(39)に接触するような、前記極と前記赤道との中間の位置に、配置されている、請求項4に記載の人工股関節移植システム。
【請求項6】
前記周方向リム部の前記半径方向内方に延出した周方向フランジは、前記軸受要素の前記第1部分球外面領域(30)の最大外径との間に隙間をもたらすように前記最大外径よりも大きい内径であり、かつ、前記第2部分球外面領域の赤道における外径との間に締め代をもたらすように前記外径よりも小さい内径を有している、請求項5に記載の人工股関節移植システム。
【請求項7】
前記赤道における前記第2部分球外面領域(32)の前記外径は、締め付けられた時に、前記ハウジングの前記半径方向内方に延出した周方向フランジの前記内径よりも小さい直径になるように、内方に変形可能になっている、請求項6に記載の人工股関節移植システム。
【請求項8】
前記周方向接触面は、前記赤道から40°から45°の緯度に沿って延在している、請求項5に記載の人工股関節移植システム。
【請求項9】
前記ハウジングは、寛骨臼に接触するシェル内に取り付けられている、請求項1に記載の人工股関節移植システム。
【請求項10】
前記ハウジングは、ネジによって、前記シェルに取り付けられている、請求項9に記載の人工股関節移植システム。
【請求項11】
前記軸受要素は、前記第1部分球外面領域(30)および第2部分球外面領域(32)並びに前記部分球内面領域(36)の前記回転中心である中心点を有している、請求項1に記載の人工股関節移植システム。
【請求項12】
人工股関節移植システムであって、
ステム部、前記ステム部に連結されたネック部、および前記ネック部に連結された部分球ヘッドを有している人工大腿骨部品と、寛骨臼部品と、を備え、
前記寛骨臼部品が、
周方向リム部を備える開端を有する部分球内側軸受面を有し、前記周方向リム部が半径方向内方に延出した周方向フランジを有するハウジングと、
第1部分球外面および第2部分球外面を有する軸受要素と、を備え、
記第1部分球外面が、前記ハウジングの前記部分球内側軸受面上で回転可能であり、かつ、中心から延びる第1の半径によって画定されており、
前記第2部分球外面は、前記中心から延びる前記第1の半径よりも小さい第2の半径によって画定されており、
前記第2部分球外面は、前記軸受要素の開端の近傍から前記第1部分球外面の極に向かって延在している、人工股関節移植システム。
【請求項13】
前記第1部分球外面の端と前記第2部分球外面との間に周方向接触面が延在している、請求項12に記載の人工股関節移植システム。
【請求項14】
前記周方向接触面は、前記第1部分球外面および前記第2部分球外面の周りに360°に亘り延在している、請求項13に記載の人工股関節移植システム。
【請求項15】
前記周方向接触面は、前記中心を通って前記ハウジングの前記開端を横切る面と直交する極軸に対して、40°から45°の間の角度をなす線に沿って延在している、請求項14に記載の人工股関節移植システム。
【請求項16】
前記軸受要素の前記第1部分球外面は、前記第1部分球外面と第2部分球外面との間に延在する周方向接触面の外縁を画定するように、前記極から前記軸受要素の前記開端に向かって延在している、請求項12に記載の人工股関節移植システム。
【請求項17】
前記周方向接触面は、前記軸受要素上において前記極と赤道との中間に配置され、前記赤道は、前記第1部分球外面の回転中心を通って前記第1部分球外面の中心軸と直交している、請求項16に記載の人工股関節移植システム。
【請求項18】
前記周方向接触面は、前記軸受要素が前記ハウジングに対して回転したとき、前記人工大腿骨部品の前記ネック部が、前記ハウジングの前記周方向リム部の前記半径方向内方に延出した周方向フランジよりも前に前記軸受要素の前記開端に接触するような、前記極と前記赤道との中間の位置に、配置されている、請求項17に記載の人工股関節移植システム。
【請求項19】
前記ハウジングの前記周方向リム部の前記半径方向内方に延出した周方向フランジは、前記軸受要素の前記第1部分球外面の最大外径との間に隙間をもたらすように前記最大外径よりも大きい内径であり、かつ、前記第2部分球外面の赤道における外径との間に締め代をもたらすように前記外径よりも小さい内径を有している、請求項18に記載の人工股関節移植システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、寛骨臼内に配置されるように適合された部分球カップを備えている人工股関節移植システムであって、該カップは、大腿骨内に配置される人工ステムに取付け可能な部分球ボールヘッドを受け入れる部分球内側軸受面を有しており、該カップの内側軸受面は、ボールヘッドに対して180°を超える角度にわたって延在している、人工股関節移植システムに関する。
この種のカップとして、例えば、超高分子量ポリエチレンのような合成プラスチック材料または金属から作製された単一軸受要素からなるものが知られている。内側軸受面は、インサート上に形成されることもある。インサートは、合成プラスチック材料、セラミック、または金属のいずれから作製されてもよく、外ハウジングに支持されるようになっている。外ハウジングは、共に用いられる寛骨臼に係合し、例えば、セメント、または爪またはネジのような機械的手段によって、適所に保持されるようになっている。このカップは、一般的にはステム、ネック、およびボールヘッドを備える大腿骨部品を大腿骨内に移植する全股関節置換術に関連して用いられている。
【0002】
カップの他の周知の構成として、内側軸受面は、寛骨臼に係合する外側裏当て材と異なる材料から作製された内側ライナーまたはインサート上に設けられることがある。複式(Dual)可動カップまたはバイポーラカップは、一般的に、部分球ボールヘッドを受け入れる内側軸受を備えており、内側軸受自体は、部分球ハウジング内に回転可能に取り付けられている。部分球ハウジングは、寛骨臼に係合するための外面および内側軸受面を有している。軸受外側面は、寛骨臼に係合する外ハウジングの内側軸受面に係合するようになっている。この種のカップは、より大きな角運動を可能にする。このようなカップは、特許文献1および特許文献2に示されている。
【0003】
これらの構造は、いずれも、より具体的には、複式可動カップは、ボールヘッドを内側軸受面に保持するための手段を有していると有利である。ボールヘッドを内側軸受面の内側に保持するいくつかの方法がある。例えば、特許文献1は、内側軸受の円錐状テーパ面に着座するリングを用いている。第2の構成では、ヘッドに2つの平面を設け、該ヘッドをカップに挿入する前に90°回転させ、次いで、ヘッドを再び90°逆に回転させている。この種の構造の欠点は、特殊なヘッドが必要であること、およびヘッドの頂部を切り落していることによって、摩耗が生じるおそれがあることである。この種のシステムは、特許文献3および特許文献4に示されている。
【0004】
寛骨臼内に配置されるように適合されていると共に(大腿骨内に配置されるステムに取付け可能な部分球ボールヘッドを受け入れる)部分球内側軸受面を有している部分球カップ内に、ボールを保持するための他の方法は、カップおよびボールのそれぞれに設けた平面を用いる方法である。カップの部分球内側軸受面は、180°を超える角度で延在しており、この部分球内側軸受面の入口に隣接する部分に、部分球内側軸受面の中心からある半径にある実質的に平坦な面が形成されている。この半径は、カップの残りの半径よりも小さくなっており、ボールヘッドは、その部分球面上に協働作用する実質的に平坦な面を有している。ボールヘッドには、ボールヘッドと共に用いられるステムを受け入れ、かつ保持する構造が設けられている。該ボールヘッドは、ステムに取り付けられる前に、カップ内に配置され、かつ回転されることが可能であり、これによって、カップに保持されることになる。部分球内側軸受面およびボールヘッドの部分球軸受面のそれぞれの寸法および形状は、回転中に、ヘッドを平行移動させ、これによって、両側に三日月状の保持領域が生じるようにヘッドを変位させるように、構成されている。
【0005】
このような構造は、特許文献5に示されている。この構造の利点は、標準的な大きさのボールヘッドを用いることができることである。カップへの挿入は、軸受面に対するボールヘッドの操作が正確になるように、内側軸受面の平面の寸法を決めることによって、厳密に制御することが可能である。
【0006】
好ましい構造では、挿入時にボールヘッドの平面と実質的に平行であるカップの入口の横断軸は、カップの内側軸受面の横断面からずれている。このずれは、10mm未満、例えば、最大5mmとすることができる。
【0007】
本発明は、どのような適切な材料、例えば、合成プラスチック材料、金属、またはセラミックから作製されるカップおよびボールに適用されてもよい。必要ならば、例えば、1mmの任意の部分的ずれ(亜脱臼)が見込まれるようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,798,610号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0143341号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第2,785,525号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0171817号明細書
【特許文献5】米国特許第7,520,902号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、内側軸受面が内側軸受要素上に設けられたカップ、または内側軸受要素が(裏当て材内の他の軸受面内でセメント固定されたまたはセメント固定されていないカップに対して移動可能である)インサートとして形成された複式可動カップまたはバイポーラカップに適用可能である。本発明の人工股関節移植システムは、ステム部、ステム部に連結されたネック部、およびネック部に連結された部分球ヘッドを有する人工大腿骨部品を備えている。ハウジングを有する寛骨部品が設けられている。ハウジングは、周方向リム部を備える開端を有する部分球内側軸受面を有している。リム部は、半径方向内方に延出した周方向フランジを有している。軸受要素が、ハウジング内に受け入れられており、該軸受要素は、ハウジングの部分球内側軸受面に係合している第1部分球外面軸受面を有している。軸受要素は、大腿骨部品のネックに取り付けられたヘッドを受け入れるための開端を有する部分球内側軸受面領域を有している。軸受要素の第1部分球外面領域は、内面開端の中心軸の周りに延在している。中心軸は、軸受要素の第1部分球外面軸受領域の極および回転中心と交わっている。軸受要素は、開端の近傍から極に向かって延在している第2部分球外面領域を有している。第1の外面領域は、軸受要素の部分球内面の中心から第2部分球面領域よりも半径方向にさらに延在している。軸受要素の中心点は、第1および第2部分球外面領域および部分球内面領域の回転中心であるとよい。この中心点は、極軸に沿って位置している。
【0010】
軸受要素の第1部分球外面領域は、第1部分球面と第2の外面との間に略半径方向に延在する周方向延在接触面を画定するように、極から開端に延在している。周方向接触面は、好ましくは、第1部分球外面と第2部分球外面の周りに360°にわたって延在している。周方向接触面は、間隙によって分離された2つ以上の区域に分断されていてもよい。周方向接触面は、軸受要素上において極と赤道との中間に配置されており、赤道は、第1部分球外面領域の回転中心を通って極軸と直交している。接触面は、内側軸受面の極軸に対して傾斜していてもよいし、または該極軸と直交し、かつ第1部分球外面の中心軸と直交していてもよい。周方向接触面は、軸受要素がハウジングに対して回転したとき、大腿骨部品のネックがハウジングの内方に延出した周方向リム部よりも前に軸受要素の開端に接触するような、極と赤道との中間の位置に配置されている。リムの内方に延出した周方向フランジは、軸受要素の第1部分球外面領域の外径よりも小さい内径であって、ハウジング内への軸受要素の挿入時にわずかな締め代をもたらすために、第2部分球外面領域の赤道における軸受要素の外径よりも小さい内径を有している。ハウジングの極領域の方を向いているリム表面は、軸受要素の接触面と適合する表面を有している。周方向接触面における第1部分球外面部の外径は、リムと接触するとき、ハウジングまたはシェルの内方に延出したフランジ部の内径よりも小さい直径になるように内方に変形可能になっている。周方向接触面は、赤道から約40°から45°の緯度に沿って延在しているとよい。ハウジングおよび/またはシェルは、寛骨臼に接触するシェル内に取り付けられるようになっていてもよい。ハウジングは、金属であってもよく、寛骨臼内にセメント固定されるかまたはネジによって寛骨臼に取り付けられるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】回転可能な軸受要素が内部に取り付けられたハウジングを有する寛骨臼カップの分解図である。
図2図1の回転可能な軸受要素が組み込まれている寛骨臼カップハウジングを示す図である。
図2a図1,2のハウジングの底面図である。
図3】十分に回転された位置における軸受要素内に取り付けられた大腿骨部品のヘッドおよびネックを備えている図2の組み立てられたカップの断面図である。
図4】係止用割リングを備えている、中心位置における図1−3の寛骨臼カップおよび回転可能な軸受要素の組立図である。
図5a】外側シェルと軸受要素を受け入れるためにシェルに固定された内ハウジングとを備える2部品裏当て材を有する代替的実施形態の分解図である。
図5b図5aのシェル、ハウジング、および軸受要素を有する3部品カップの組立図である。
図5c図5a,5bの組み立てられた代替的3部品アセンブリの断面図である。
図6】軸受要素の第1部分球部分とハウジングのリムの内方に延在するフランジとの間の挿入隙間を示す図である。
図7】フランジの先端と軸受要素の第2部分球外面の赤道領域との間の挿入中のわずかな締め代を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、10で総称的に示されている2部品寛骨臼カップの分解図が示されている。寛骨臼カップ10は、外ハウジング12および軸受要素14を有している。ハウジング12は、骨ネジ孔16を有するものとして示されており、軸受要素14は、2つの部分球面区域30,32を有するものとして示されている。図2は、組み立てられた部品12,14を示している。図2aは、図1に示されているハウジングの底面図である。ハウジングは、中心29を有する円開口28を有している。図2aに示されているように、ハウジング12は、外ハウジング12を寛骨臼に保持するネジ(図示せず)を受け入れるための複数の貫通孔16を備えているとよい。もし寛骨臼への圧入が用いられるなら、孔16は、なくてもよい。軸受要素14は、一体品であり、好ましくは、超高分子量ポリエチレンから作製されているとよいが、セラミックから作製されていてもよい。
【0013】
図3,4を参照すると、部分球外面18および部分球内側軸受面20を有するハウジング12を示す、図1の組み立てられた寛骨臼カップの断面図が示されている。面18,20は、単一の中心35を有していてもよいし、または互いにずれた中心を有していてもよい。ハウジング12は、周方向リム22を備えており、該リム22は、フランジ24を備えている。フランジ24は、半径方向内方に延在しており、円開口28を画定する先端25を有している。円開口28は、ハウジング121の極軸上に位置する中心29を有している。フランジ24は、上向き周面27を有している。軸受要素14が、開口28内に取り付けられた状態で示されている。軸受要素14は、ハウジング12の内側軸受面20に係合している第1部分球軸受面領域30を有している。第1部分球面領域30は、軸受面領域20上において任意の方向に回転することができ、31で総称的に示されている大腿骨部品の運動の結果として、ハウジング12内において反時計方向に回転されている状態で示されている。大腿骨部品31は、軸受要素14の部分球軸受面36内に取り付けられたヘッド38を有している。
【0014】
軸受要素14は、第2部分球面領域32をさらに備えている。第2部分球面領域32は、部分球軸受領域30から延在しているが、より小さい半径を有しており、面20から半径方向内方に離間している。従って、面32と面20との間に接触が生じることはない。好ましい実施形態では、部分球軸受面30,32は、同心であり、同一の中心、例えば、中心35を有しており、これによって、これらの間に段差または接触面34が形成されている。接触面34は、軸受要素14の外面の周りを360°延在している。また、第1部分軸受面30を、例えば、狭幅溝によって分離された2つ以上の区分に形成し、これによって、連続的な接触面30を断続させることも可能である。
【0015】
軸受要素14は、大腿骨部品31のヘッド38の外側軸受面37を受け入れるように設計された内側軸受面36を備えている。部分球軸受面36は、開端39を有しており、該開端39を通して、全関節が組み立てられるときにヘッド38が挿入されるようになっている。大腿骨部品のヘッド38は、一体構造として、または第2のテーパの付いた雄/雌相互接続部に一体形成されるかまたは接続されるテーパの付いた雄/雌相互接続部を介して、ネック部42に連結され、これによって、髄内ステム44を形成している。このようなモジュール式大腿骨部品の設計は、よく知られている。ステム44は、大腿骨の骨髄管内に受け入れられるように意図されているが、患者が骨腫瘍を患っている場合には、ステム44が大腿骨近位部の全体を形成するようになっていてもよい。加えて、大腿骨部品31は、トライアル大腿骨部品であってもよく、カップ10は、トライアル寛骨臼カップであってもよい。典型的には、ヘッド38は、軸受要素14の部分球軸受面36に嵌め込まれ、任意の方向に回転可能になっている。
【0016】
図5a−5cを参照すると、200で総称的に示されている回転可能な軸受を有する代替的な3部品寛骨臼カップが示されている。寛骨臼カップ200は、寛骨臼に接触するための外面211を有する外シェル210を備えている。シェル210は、その極にネジ孔209を備えている。別体のハウジング212が、シェル210内に取り付けられ、ネジ213をハウジング212の孔215を通してシェル210のネジ孔209に挿入し、テーパ部217をシェル/ハウジング組合せの開端214の近くにかみ合わせることによって、シェル210内に保持される。軸受インサートまたは軸受要素219が、ハウジング212内に取り付けられるようになっている。ハウジング212は、ネジ213を受け入れるための孔215およびリム222の周囲に外側雄テーパ面217を設けていることを除けば、ハウジング12と同じである。軸受要素219は、あらゆる点で、前述した軸受要素14と同じである。
【0017】
寛骨臼カップ200の利点は、シェル210の孔216を通るネジの頭が、ハウジング212の外面226によって覆われることである。いったん組み立てられると、シェル210およびハウジング212は、互いに対して回転することができず、従って、同軸の極軸を有することになる。前述したように、ネジ孔209,215は、極軸を中心として配置されている。
【0018】
図3,4に示されているように、ハウジング12は、その極を通る軸(極軸)80を有している。この軸80は、ハウジングの部分球内面20の中心21を通る赤道と直交しており、この赤道は、寛骨臼の開口を横切る面と平行である。好ましい実施形態では、ハウジングの赤道面は、ハウジング12の開口28によって画定された面とも平行であり、極軸80は、開口28の中心29を通っている。
【0019】
また、軸受要素の部分球面部30は、極軸81を有している、極軸81は、軸受要素14の外面30,32の中心35を通る赤道面83と直交している。この赤道面は、軸受インサート14の開端39の面86と平行になっているとよい。好ましい実施形態では、極軸81は、軸80,81が図4に示されているよう合されたとき、開口39の面とも直交している。もし部分球面がハウジング12および/または軸受14の片側において他の側よりも大きい角度で拡がると、極軸80,81に対するハウジング12および軸受要素14のそれぞれの開口面は、それらの間に角度が付けられることになる(例えば、米国特許第5,108,455号明細書に記載されている寛骨臼カップを参照されたい)。
【0020】
図3に示されているように、部分球ヘッド38は、中心35を通る赤道と直交する軸84を有している。好ましい実施形態では、軸84は、ネック42の軸と同軸である。
【0021】
図4を参照すると、軸80,81を合わせて、軸受14が部分的にハウジング12内に挿入されている状態が示されている。図示されている実施形態では、軸受要素14の内面36は、外側に延在している凹部52を備えている。凹部52は、凹部52の外壁56に向かって横方向(外方)に延在している上端壁54を有している。外壁56は、(ヘッド38が挿入される)開口39に向かって下方かつ内方に傾斜している。外壁54は、下端壁59で終端している。下端壁59は、横方向(内方に)に延在しており、軸受要素14の開口39の一部を形成している周方向縁壁59aと連接している。壁59aは、開口39の面86から内方に離間しており、面取り面90によって、面86に接続されている。
【0022】
米国特許第4,798,610号明細書に示されているように、割リング60は、リング60を半径方向に拡張可能および収縮可能とする割部分62を有している。割リング60は、好ましくは、軸受要素14を作製するのに用いられたのと同様の超高分子量ポリエチレンから作製されている。なお、この特許は、参照することによって、本明細書に含まれるものとする。リング60は、上端壁64および下方かつ内方に傾斜している外壁66を備えている。外壁66の傾斜は、凹部52の外壁56に嵌合するために、該外壁56の傾斜と同じになっている。組立時に、ヘッド38は、軸受要素14の開口39内に軸方向に挿入され、壁59aを超え、リング60を通過するようになっており、これによって、リング60は、凹部52内の上側位置に向かって軸方向(上方)に持ち上げられ、拡張することになる。いったんヘッド38の赤道または最大直径がリング60内に押し込まれ、軸受要素14の部分球軸受面36に係合したなら、リング60は、収縮する。ボールが部分球内面36に接触すると、リング60は、収縮し、傾斜壁56,66に沿って下方にすべり、ヘッド38を軸受要素14内に捕捉することになる。米国特許第7,455,694号明細書に示されているような、ボールを軸受要素に保持する他の方法が用いられてもよい。この特許は、参照することによって、本明細書に含まれるものとする。
【0023】
図6,7を参照すると、ポリエチレン製軸受要素14をハウジング12内に挿入するための方法の詳細が示されている。この方法は、図3,4または図5A−5Cにそれぞれ示されている2部品設計または3部品設計に同じように適用されるものである。フランジ24の先端25によって形成された開口28の直径は、軸受要素14をハウジング12内に部分的に挿入させることを可能にする極めて小さい隙間を生じさせるために、(第1の球面部30と第2の球面部32との間で軸受要素14の周方向に延在している)段差または接触面34の先端89が開口の直径よりもいくらか小さい直径を有するように、設計されている。第2の球面部32の最大直径、すなわち、赤道における直径は、組立中に、インサート14がハウジング12内に完全に挿入される直前に、「スナップ(snap)」嵌めが生じるように、開口の直径に対してわずかな締め代を生じる直径を有している。
【0024】
好ましい実施形態では、第1部分球面領域30、第2部分球面領域32、および部分内面36は、全て、同心であり、従って、同一の中心35を有しているが、互いに異なる半径を有している。従って、中心35を通って軸受の赤道面83と直交する軸80,81は、前述したように、内側部分球面36および第1部分球面30とそれらの球面の極において交差することになる。
【0025】
本発明の一実施形態では、第1部分球面は、極軸81から約40°から45°の緯度まで延在しており、接触面34も、面30,32間において同様の角度で延在している。
【0026】
使用中に、軸受要素14は、ハウジング12内の面30上で回転し、ヘッド38およびネック42は、軸受要素14内の面36上で回転することになる。ネック42は、軸受要素14に接触するとき、軸受要素14の開口39の周りに延在している周方向面取り面90に係合する。ネック42が面90に係合すると、軸受要素14は、ハウジング12内で回転することになる。この回転は、接触面34とフランジ24の上面27との係合によって、制限される。この時点で、この回転方向において、大腿骨部品40のネック42に対する相対的な回転を行うことができない。接触面34は、大腿骨部品40の回転がフランジ24の先端25からネック42の表面を離間させている点で停止されるような、ハウジング12の極80に対する寛容域に配置されている。その結果、ネック42は、常に、ハウジング12の金属ではなく、超高分子量ポリエチレン製軸受要素14に係合することになる。好ましくは、接触面34は、軸受要素14の極軸81から45°の緯度に沿って周方向に延在している。接触面は、面30,32間でどのような角度で延在していてもよいが、好ましくは、軸受要素の中心83と交差する角度で延在しているとよい。
【0027】
本明細書では、特定の実施形態を参照して、本発明を説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示にすぎないことを理解されたい。従って、添付の請求項に記載されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく、例示的実施形態に対する多くの修正形態がなされてもよいし、他の構成が考案されてもよいことを理解されたい。
[発明の例]
[例1]
人工股関節移植システムであって、
ステム部、前記ステム部に連結されたネック部、および前記ネック部に連結された部分球ヘッドを有している人工大腿骨部品と、寛骨臼部品と、を備え、
前記寛骨臼部品が、
周方向リム部を備える開端を有する部分球内側軸受面を有し、前記リム部が半径方向内方に延出した周方向フランジを有するハウジングと、
前記ハウジングの前記部分球内側軸受面に係合する第1部分球外側軸受面領域を有する軸受要素と、を備え、
前記軸受要素は、前記大腿骨部品の前記ヘッドを受容するための開端を有する部分球内側軸受面領域を有し、前記軸受要素の前記第1部分球外面領域は、前記内面開端の中心軸の周りに延在し、前記中心軸は、前記部分球外面領域の極および前記第1部分球外面領域の回転中心と交わっており、前記軸受要素は、前記開端の近傍から前記極に向かって延在する第2部分球外面領域を有し、前記第1外面領域は、前記軸受要素の前記部分球内面の中心から前記第2部分球面領域よりも遠位に拡がっている、人工股関節移植システム。
[例2]
前記軸受要素の前記第1部分球外面領域は、前記第1部分球面領域と前記第2外面領域との間に延在する周方向接触面の外縁を画定するように、前記極から前記開端に向かって延在している、例1に記載の人工移植システム。
[例3]
前記周方向接触面は、前記第1部分球外面領域および前記第2外面領域の周りに360°にわたって延在している、例2に記載の人工股関節移植システム。
[例4]
前記周方向接触面は、前記軸受要素上において前記極と赤道との中間に配置され、前記赤道は、前記第1部分球外面領域の前記回転中心を通って前記第1部分球外面領域の前記中心軸と直交している、例2に記載の人工股関節移植システム。
[例5]
前記周方向接触面は、前記軸受要素が前記ハウジングに対して回転したとき、前記大腿骨部品の前記ネックが、前記ハウジングの前記内方に延出した周方向フランジ部よりも前に前記軸受要素の前記開端に接触するような、前記極と前記赤道との中間の位置に、配置されている、例4に記載の人工股関節移植システム。
[例6]
前記ハウジングリム部の前記内方に延出した周方向フランジは、前記軸受要素の前記第1部分球外面領域の最大外径との間に隙間をもたらすように前記最大外径よりも大きい内径であり、かつ、前記第2部分球外面領域の赤道における外径との間に締め代をもたらすように前記外径よりも小さい内径を有している、例5に記載の人工股関節移植システム。
[例7]
前記赤道における前記第2部分球外面領域の前記外径は、締め付けられた時に、前記ハウジングの前記内方に延出したフランジ部の前記内径よりも小さい直径になるように、内方に変形可能になっている、例6に記載の人工股関節移植システム。
[例8]
前記周方向接触面は、前記赤道から40°から45°の緯度に沿って延在している、例5に記載の人工股関節移植システム。
[例9]
前記ハウジングは、寛骨臼に接触するシェル内に取り付けられている、例1に記載の人工股関節移植システム。
[例10]
前記ハウジングは、ネジによって、前記シェルに取り付けられている、例9に記載の人工股関節移植システム。
[例11]
前記軸受要素は、前記第1および第2部分球外面領域および前記部分球内面領域の前記回転中心である中心点を有している、例1に記載の人工股関節移植システム。
[例12]
人工股関節移植システムであって、
ステム部、前記ステム部に連結されたネック部、および前記ネック部に連結された部分球ヘッドを有している人工大腿骨部品と、寛骨臼部品と、を備え、
前記寛骨臼部品が、
周方向リム部を備える開端を有する部分球内側軸受面を有し、前記リム部が半径方向内方に延出した周方向フランジを有するハウジングと、
第1および第2部分球外面を有する軸受要素と、を備え、
前記軸受要素は、前記第1部分球外面が、前記ハウジングの前記内側軸受面上で回転可能であり、かつ、中心から延びる第1の半径によって画定されており、前記第2部分球面は、前記中心から延びる前記第1の半径よりも小さい第2の半径によって画定されている、人工股関節移植システム。
[例13]
前記第1部分球外面の端と前記第2部分球外面との間に周方向接触面が延在している、例12に記載の人工股関節移植システム。
[例14]
前記周方向接触面は、前記第1部分球外面領域および前記第2外面領域の周りに360°に亘り延在している、例13に記載の人工股関節移植システム。
[例15]
前記周方向接触面は、前記中心を通って前記ハウジングの前記開端を横切る面と直交する極軸に対して、40°から45°の間の角度をなす線に沿って延在している、例14に記載の人工股関節移植システム。
[例16]
前記軸受要素の前記第1部分球外面領域は、前記第1部分球面領域と第2外面領域との間に延在する周方向接触面の外縁を画定するように、前記極から前記開端に向かって延在している、例12に記載の人工移植システム。
[例17]
前記周方向接触面は、前記軸受要素上において前記極と赤道との中間に配置され、前記赤道は、前記第1部分球外面領域の前記回転中心を通って前記第1部分球外面領域の前記中心軸と直交している、例16に記載の人工股関節移植システム。
[例18]
前記周方向接触面は、前記軸受要素が前記ハウジングに対して回転したとき、前記大腿骨部品の前記ネックが、前記ハウジングの前記内方に延出した周方向フランジ部よりも前に前記軸受要素の前記開端に接触するような、前記極と前記赤道との中間の位置に、配置されている、例17に記載の人工股関節移植システム。
[例19]
前記ハウジングリム部の前記内方に延出した周方向フランジは、前記軸受要素の前記第1部分球外面領域の最大外径との間に隙間をもたらすように前記最大外径よりも大きい内径であり、かつ、前記第2部分球外面領域の赤道における外径との間に締め代をもたらすように前記外径よりも小さい内径を有している、例18に記載の人工股関節移植システム。
図1
図2
図2a
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7